JP2012096963A - 多孔質ガラス焼結体及びその製造方法 - Google Patents

多孔質ガラス焼結体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】通気性を有すると共に、軽量でありながら優れた機械的強度を有し、低コストで製造でき、さらに、焼結体における気孔の寸法形状や気孔率を広い範囲で制御でき、多用途に使用可能であること。
【解決手段】多孔質ガラス焼結体1は、ガラス粒子2と、ゼオライト粒子3と、木粉4と、炭酸カルシウム5と、蛙目粘土粉6とを精密分散混合機で均一に分散混合して焼結原料混合物7とし(S1)、更に、この焼結原料混合物7にバインダ8を添加して、精密分散混合機で均一に分散混合してバインダ混合物9とし(S2)、その後、このバインダ混合物9を常温でプレス成形してプレス成形体10とし(S3)、そして、このプレス成形体10を1000℃〜1200℃の範囲内で焼結して(S4)製造したものである。
【選択図】図1

Description

本発明は、ガラスを原料として焼結した多孔質ガラス焼結体及びその製造方法に関するもので、特に、通気性を有すると共に、軽量でありながら優れた機械的強度を有し、多用途に使用可能な多孔質ガラス焼結体及びその製造方法に関するものである。
ガラス粒子を高温で加熱して焼結することにより焼結ガラスが得られるが、焼結ガラスの物理特性等を向上させるために、従来から、ガラス以外の材料を共存させて焼結することが行われてきた。その一例として、ガラス粒子に発泡剤を添加して焼結させることで軽量化を図ったガラス発泡体が知られている。このようなガラス発泡体は、ガラスに気泡が形成されていることから多孔質であるが、内部の空隙群は独立気泡として連通していないため、通気性がなく、吸水性・保水性にも乏しかった。このため、多孔質であってもフィルタ等としては使用することができず、その用途は限られていた。
そこで、特許文献1には、ガラス粒子、発泡剤、並びに粉状粘性鉱物質の混合物を加熱して焼結させる方法が提案されている。特許文献1の記載によれば、液状化したガラス内に形成された気泡間の隔壁に粉状粘性鉱物質の固形粒子が介在し、これが気泡間の隔壁を部分的に破壊して独立気泡の形成を阻止するため、近接する気泡同士がそれぞれ部分的に連通して連続気泡が形成されるとある。
特開平2003−55064号公報
ところが、特許文献1の技術においては、粉状粘性鉱物質の固形粒子によって連続気泡が存在するものの、発泡剤からのガスが外部へと抜け出すことなくガラスを発泡させるものであるから通気性を有さないと思われる。また、基本的には、発泡剤によって気孔を形成させているため、得られる気泡(空隙)の大きさや形状は限られたものとなる。さらに、発泡剤によるガスの発生分布や発生量等を制御することが困難であるため、気泡分布にもばらつきが生じ、そのために安定した機械的強度が得られないという問題点がある。
また、ガラスが軟化する温度で焼結する場合、ガラス同士の融着度合いが低く、得られる焼結体は緻密性に欠け、脆くて機械的強度が小さいものとなってしまう。一方で、ガラスが溶融する温度で焼結する場合には、高温とするのにかなりのエネルギが必要とされることから、製造コストが極めて高いものとなってしまう。
したがって、特許文献1に記載の発明においては、多孔質ガラス焼結体として応用できる分野が狭い分野に限られる。
そこで、本発明は、かかる不具合を解決すべくなされたものであって、通気性を有すると共に、軽量でありながら優れた機械的強度を有し、低コストで製造でき、さらに、焼結体における気孔の寸法形状や気孔率を広い範囲で制御でき、多用途に使用可能な多孔質ガラス焼結体及びその製造方法の提供を課題とするものである。
請求項1の多孔質ガラス焼結体は、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子と、多孔質の鉱物質粒子と、前記ガラス粒子の軟化点以上の温度で分解する発泡剤と、有機バインダ及び/または無機バインダとが混合された混合物を、常温でプレス成形し、1000℃〜1200℃の範囲内で焼結してなるものである。
ところで、「ガラス粒子」は、酸化ケイ素(SiO2)を主成分とするものであり、ここでは、800℃未満の軟化点を有するものであればよく、例えば、ソーダ石灰ガラス等のケイ酸塩ガラスや、低融点ガラス等の粒子が使用される。
また、「多孔質の鉱物質粒子」としては、例えば、ゼオライト粒子、瓦粉末等の陶磁器粒子、岩石粉末、珪藻土粉末等の天然無機物粒子や、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZiO2)、窒化ケイ素(Si34)、炭化ケイ素(SiC)等のセラミックス粒子を用いることができる。これらは、必要とする強度、気孔の寸法形状等によって最適なものが選定されるが、特に、ゼオライト粒子や、瓦粉末等の陶磁器粒子が安価であることから好ましい。
「発泡剤」は、焼成過程において、前記ガラス粒子の軟化点以上の温度で分解してガス(炭酸ガス等)を発生するものであればよく、例えば、炭酸カルシウム、ドロマイト(苦土石灰)、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸アルミニウム化合物、炭化ケイ素等が挙げられ、これらを混同して用いることも可能であるが、中でも、安価に入手でき、比較的高温で熱分解する炭酸カルシウム、ドロマイトが好ましい。
なお、上記発泡剤におけるガラス粒子の軟化点以上の温度で分解とは、必ずしもガラス粒子の軟化点以上の温度で熱分解が開始されるものであることを意味するものではなく、ガラス粒子の軟化点以上の温度でも熱分解されてガスを発生するものであればよいことを意味する。換言すれば、ガラス粒子の軟化点未満では分解が終了ない発泡剤であることを意味する。
また、「有機バインダ及び/または無機バインダ」とは、有機バインダのみを単独で用いても良いし、無機バインダのみを単独で用いても良く、有機バインダと無機バインダの両方を併用しても良いという意味である。
「有機バインダ」としては、例えば、合成樹脂、澱粉、合成糊、砂糖等を使用することができ、これらの有機バインダを二種類以上混合して用いることもできる。また、合成樹脂には熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂があり、熱可塑性樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ポリウレタン系樹脂等を用いることができ、熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリオール樹脂、イソシアネート樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタンプレポリマー等を用いることができ、さらにこれらの合成樹脂を二種類以上混合して用いることもできる。
また、「無機バインダ」としては、水、セメント等の水硬性材料、磁器(タイル)・陶器の原料でもある蛙目粘土、カオリン、ベントナイト等の粘土、ρ−アルミナ(Al23 ・nH2 O:n≒0.5)、ケイ酸ナトリウム、水溶性アルカリケイ酸、(株)ジャパンナノコート製のシリカバインダ、グランデックス(株)製のシリカバインダである汎用バインダFJ294等を単独で、または混合して用いることができる。
さらに、「常温」とは、JIS Z 8703で規定されるように、20℃±15℃(5℃〜35℃)の範囲内の温度をいう。
そして、「1000℃〜1200℃の範囲内で焼結」とは、本発明者が、鋭意実験研究を重ねた結果、焼結の温度を1000℃以上とすることで、軟化したガラス同士が十分に融着して強固に結合した緻密性の高い焼結体が得られるが、1200℃を超えると、ガラスの流動性が過剰になり気孔が塞がれて通気性を確保できなくなることを見出し、この知見に基づいて設定されたものである。
なお、上記1000℃〜1200℃の範囲内とは、厳格に1000℃〜1200℃の範囲内であることを要求するものではなくて約1000℃〜約1200℃の範囲内であればよく、当然、加熱炉の種類等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。好ましくは、1000℃〜1100℃の範囲内の温度である。
請求項2の多孔質ガラス焼結体は、請求項1の構成において、前記混合物に、更に、有機化合物粉が混合されたものである。
ところで、「有機化合物粉」の「有機化合物」とは、『炭素の酸化物や金属の炭酸塩など少数の簡単なもの以外のすべての炭素化合物の総称。』(長倉三郎他・編「岩波理化学辞典(第5版)」1392頁,1998年2月20日株式会社岩波書店発行)であり、「有機化合物粉」としては、1000℃〜1200℃の範囲内の温度まで昇温する過程で焼失して気孔を形成するものであればよく、具体的には、大鋸屑(おがくず)、間伐材のチップ、小径木、製材端材、樹皮等の木屑を粉砕機で微粉砕した所謂「木粉」や、椰子殻、胡桃殻や、穀物粉や、熱硬化性樹脂の粒子や、紙、合成繊維、木綿・麻・絹等の天然繊維、精製セルロース(CMC)等を微粉砕したもの等が使用できる。特に、木粉が安価に入手できるためコスト的に適している。
請求項3の多孔質ガラス焼結体は、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子と、鉱物質粒子と、有機化合物粉と、前記ガラス粒子の軟化点以上の温度で分解する発泡剤と、有機バインダ及び/または無機バインダとが混合された混合物を、常温でプレス成形し、1000℃〜1200℃の範囲内で焼結してなるものである。
ここで、請求項1及び請求項2と相違する要件についてのみ説明すると、「鉱物質粒子」としては、ゼオライト粒子、瓦粉末等の陶磁器粒子、珪藻土粉末等の天然無機物粒子や、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZiO2)、窒化ケイ素(Si34)、炭化ケイ素(SiC)等のセラミックス粒子の多孔質のものに限定されず、タルク(滑石)、マイカ(雲母)等の岩石粉末等の天然無機物粒子や、陶器粉末、磁器粉末等のセラミックス粒子の無孔質のものも用いることができる。これらは、必要とする強度等によって最適なものが選定されるが、特に、ゼオライト粒子、瓦粉末等の陶磁器粒子が安価であることから好ましい。
請求項4の多孔質ガラス焼結体は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記混合物に、更に、粘土質鉱物粉が混合されたものである。
ここで、「粘土質鉱物粉」は、焼結過程における型崩れ等の寸法形状変化を防止できるものであればよく、例えば、蛙目粘土、カオリン、ベントナイト等の粘土粉末等が挙げられ、これらを混同して用いることも可能である。
請求項5の多孔質ガラス焼結体は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つの構成における前記混合物において、前記ガラス粒子の含有量が15重量%〜60重量%の範囲内、好ましくは、20重量%〜55重量%の範囲内であり、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子の含有量が10重量%〜60重量%の範囲内、好ましくは、15重量%〜55重量%の範囲内であり、前記発泡剤の含有量が5重量%〜30重量%の範囲内、好ましくは、7重量%〜25重量%の範囲内であり、前記有機バインダ及び/または無機バインダの含有量が5重量%〜50重量%の範囲内、好ましくは、7重量%〜45重量%の範囲内であるものである。
なお、各材料の配合割合は、最終的には、必要とする強度、気孔率等を考慮して設定される。また、上記数値は、厳格なものでなく概ねで、当然、原材料の種類等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
請求項6の多孔質ガラス焼結体は、請求項2、請求項4または請求項5のいずれか1つの構成における前記混合物において、前記有機化合物粉の含有量が50重量%以下、好ましくは、30重量%以下であるものである。
なお、上記数値も、厳格なものでなく概ねで、当然、原材料の種類等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
請求項7の多孔質ガラス焼結体は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つの構成において、前記ガラス粒子のふるい試験法による粒子径が500μm未満であり、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子のふるい試験法による粒子径が4mm未満であるものである。
ここで、前記ガラス粒子における「ふるい試験法による粒子径が500μm未満」とは、JIS Z 8801に規定される試験用ふるいのうち、第1部:金属製網ふるい(JIS Z 8801−1)に規定される公称目開き500μmのふるいを通過する粒子径をいう。なお、上記500μm未満とは、厳格に500μm未満であることを要求するものではなくて約500μm未満であればよく、当然、原材料の種類や測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。好ましくは、450μm未満である。
同様に、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子における「ふるい試験法による粒子径が4mm未満」も、JIS Z 8801に規定される試験用ふるいのうち、第1部:金属製網ふるい(JIS Z 8801−1)に規定される公称目開き4mmのふるいを通過する粒子径をいう。そして、上記4mm未満も、厳格に4mm未満であることを要求するものではなくて約4mm未満であればよく、当然、原材料の種類や測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。好ましくは、3.5mm未満である。
請求項8の多孔質ガラス焼結体は、請求項1乃至請求項7のいずれか1つの構成において、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子として、ゼオライト粒子及び/または瓦粉末を使用したものである。
ところで、「ゼオライト(zeolite)」とは、結晶中に微細孔を持つアルミノケイ酸塩の総称であり、一般式 Mx/n [(AlO2 )x(SiO2 )y]・ωH2 O で表される。但し、Mはナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の周期表のIA族及びIIA族の元素、n は陽イオンMの価数、ωは単位格子あたりの水分子数、x,y は単位格子あたりの四面体の全個数である(塩川二朗・監修「カーク・オスマー化学大辞典」700頁〜701頁,1988年9月20日丸善株式会社発行)。
そして、「ゼオライト粒子」としては、天然ゼオライトまたは合成ゼオライトを粉砕してなるものを用いることができる。
天然ゼオライトとしては、アミサイト、アンモニウム白榴石、方沸石、バレル沸石、菱沸石系、斜プチロル沸石系、ダキアルディ沸石系、エリオン沸石系、フェリエ沸石系、グメリン沸石系、輝沸石系、レビ沸石系、十字沸石系、束沸石系等がある(1997年、国際鉱物学連合(IMA)の小委員会による分類)。
また、合成ゼオライトとしては、A型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、L型ゼオライト、オメガ型ゼオライト、ZSM−5等がある(塩川二朗・監修「カーク・オスマー化学大辞典」701頁,1988年9月20日丸善株式会社発行)。
これらのうち、菱沸石系、斜プチロル沸石系、エリオン沸石系、及びレビ沸石系のモルデナイトは、天然に多量に存在しかなり純度も高く、低コストで入手できることから、原材料として好ましい。
請求項9の多孔質ガラス焼結体は、請求項2乃至請求項8のいずれか1つの構成において、前記有機化合物粉のふるい試験法による粒子径が500μm未満、好ましくは、450μm未満であるものである。
なお、上記数値も、厳格なものでなく概ねで、当然、原材料の種類や測定等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
請求項10の多孔質ガラス焼結体は、請求項2乃至請求項9のいずれか1つの構成において、前記有機化合物粉として、木粉を用いたものである。
ところで、「木粉」は、鋸で木材を切る際に出る切り屑である大鋸屑(おがくず)、木材に鉋をかける際に生ずる削り屑である鉋屑(かんなくず)、木片を薄くスライスしてできる薄片である木片チョップ、間伐材等のチップ、小径木、製材端材、樹皮等の木屑を粉砕機で微粉砕したもの、即ち、木材を細かく粉砕した粉のことであり、気孔形成の一因を担うものである。
請求項11の多孔質ガラス焼結体は、請求項1乃至請求項10のいずれか1つの構成において、前記発泡剤として、炭酸カルシウム及び/またはドロマイトを用いたものである。
ところで、「炭酸カルシウム(CaCO3)」は、通常、約650℃〜約850℃間で緩慢、かつ、連続的に酸化カルシウム(CaO)と二酸化炭素(CO2)に熱分解されてガス(CO2)を発生する。
また、「ドロマイト(CaCO3・MgCO3)」は、通常、約600℃〜約800℃間で緩慢、かつ、連続的に酸化マグネシウム(MgO)と二酸化炭素(CO2)に熱分解されてガス(CO2)を発生する。
請求項12の多孔質ガラス焼結体は、請求項4乃至請求項11のいずれか1つの構成において、前記粘土質鉱物粉として、蛙目粘土の粉末、ベントナイトの粉末、カオリンの粉末から選ばれる少なくとも1つを用いたものである。
ところで、「蛙目粘土」は、花崗岩が風化し堆積してできた風化残留粘土であり、カオリナイトという鉱物を主成分とし、石英粒子が点在するものである。
また、「ベントナイト」は、海底・湖底に堆積した火山灰や溶岩が変質することでできたもので、モンモリロナイトという鉱物を主成分とする粘土である。
さらに、「カオリン」は、長石質母岩の風化でできたもので、カオリナイト及びハロサイトを鉱物として含む粘土である。
請求項13の多孔質ガラス焼結体は、請求項1乃至請求項12のいずれか1つの構成において、前記プレス成形の圧力が、50kg/cm2 〜350kg/cm2 の範囲内、好ましくは100kg/cm2〜250kg/cm2の範囲内であるものである。
なお、上記50kg/cm2 〜350kg/cm2 、100kg/cm2〜250kg/cm2の範囲内とは、厳格に50kg/cm2 〜350kg/cm2 、100kg/cm2〜250kg/cm2の範囲内であることを要求するものではなくて約50kg/cm2 〜約350kg/cm2、約100kg/cm2〜約250kg/cm2の範囲内あればよく、当然、プレス機の種類等による誤差を含む概略値であり、数割の誤差を否定するものではない。
請求項14の多孔質ガラス焼結体は、請求項1乃至請求項13のいずれか1つの構成において、前記混合物の作製に、精密分散混合機を用いたものである。
ここで、「精密分散混合機」としては、周速5m/秒〜80m/秒の範囲内、好ましくは、周速20m/秒〜30m/秒の範囲内の高速攪拌分散機等を始めとする精密分散混合機を用いることができる。このような高速攪拌分散機としては、例えば、ホソカワミクロン(株)製の横型タービュライザ(登録商標)等がある。
請求項15の多孔質ガラス焼結体の製造方法は、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子と、多孔質の鉱物質粒子と、前記ガラス粒子の軟化点以上の温度で分解する発泡剤とを混合して焼結原料混合物とする焼結原料混合工程と、前記焼結原料混合物を有機バインダ及び/または無機バインダと混合してバインダ混合物とするバインダ混合工程と、前記バインダ混合物をプレス金型に充填して常温でプレス成形し、プレス成形体とするプレス成形工程と、前記プレス成形体を1000℃〜1200℃の範囲内で焼結する焼結工程とを具備するものである。
請求項16の多孔質ガラス焼結体の製造方法は、請求項15の構成において、前記焼結原料混合物に、更に、有機化合物粉が混合されたものである。
請求項17の多孔質ガラス焼結体の製造方法は、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子と、鉱物質粒子と、有機化合物粉と、前記ガラス粒子の軟化点以上の温度で分解する発泡剤とを混合して焼結原料混合物とする焼結原料混合工程と、前記焼結原料混合物を有機バインダ及び/または無機バインダと混合してバインダ混合物とするバインダ混合工程と、前記バインダ混合物をプレス金型に充填して常温でプレス成形し、プレス成形体とするプレス成形工程と、前記プレス成形体を1000℃〜1200℃の範囲内で焼結する焼結工程とを具備するものである。
請求項18の多孔質ガラス焼結体の製造方法は、請求項15乃至請求項17のいずれか1つの構成において、前記焼結原料混合物に、更に、粘土質鉱物粉が混合されたものである。
請求項19の多孔質ガラス焼結体の製造方法は、請求項15乃至請求項18のいずれか1つの構成における前記バインダ混合物において、前記ガラス粒子の含有量が15重量%〜60重量%の範囲内、好ましくは、20重量%〜55重量%の範囲内であり、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子の含有量が10重量%〜60重量%の範囲内、好ましくは、15重量%〜55重量%の範囲内であり、前記発泡剤の含有量が5重量%〜30重量%の範囲内、好ましくは、7重量%〜25重量%の範囲内であり、前記有機バインダ及び/または無機バインダの含有量が5重量%〜50重量%の範囲内、好ましくは、7重量%〜45重量%の範囲内であるものである。
請求項20の多孔質ガラス焼結体の製造方法は、請求項16、請求項18または請求項19のいずれか1つの構成における前記バインダ混合物において、前記有機化合物粉の含有量が50重量%以下、好ましくは、30重量%以下であるものである。
請求項21の多孔質ガラス焼結体の製造方法は、請求項15乃至請求項20のいずれか1つの構成において、前記ガラス粒子のふるい試験法による粒子径が500μm未満、好ましくは、450μm未満であるものであり、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子のふるい試験法による粒子径が4mm未満、好ましくは、3.5mm未満であるものである。
請求項22の多孔質ガラス焼結体の製造方法は、請求項15乃至請求項21のいずれか1つの構成において、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子として、ゼオライト粒子及び/または瓦粉末を用いたものである。
請求項23の多孔質ガラス焼結体の製造方法は、請求項16乃至請求項22のいずれか1つの構成において、前記有機化合物粉のふるい試験法による粒子径が500μm未満、好ましくは、450μm未満であるものである。
請求項24の多孔質ガラス焼結体の製造方法は、請求項16乃至請求項23のいずれか1つの構成において、前記有機化合物粉として、木粉を用いたものである。
請求項25の多孔質ガラス焼結体の製造方法は、請求項15乃至請求項24のいずれか1つの構成において、前記発泡剤として、炭酸カルシウム及び/またはドロマイトを用いたものである。
請求項26の多孔質ガラス焼結体の製造方法は、請求項18乃至請求項25のいずれか1つの構成において、前記粘土質鉱物粉として、蛙目粘土の粉末、ベントナイトの粉末、カオリンの粉末から選ばれる少なくとも1つを用いたものである。
請求項27の多孔質ガラス焼結体の製造方法は、請求項15乃至請求項26のいずれか1つの構成において、前記プレス成形工程におけるプレス成形の圧力が、50kg/cm2 〜350kg/cm2 の範囲内、好ましくは、100kg/cm2〜250kg/cm2の範囲内であるものである。
請求項28の多孔質ガラス焼結体の製造方法は、請求項15乃至請求項27のいずれか1つの構成において、前記焼結原料混合工程及び前記バインダ混合工程において、精密分散混合機を用いて混合したものである。
請求項1の発明に係る多孔質ガラス焼結体は、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子と、多孔質の鉱物質粒子と、前記ガラス粒子の軟化点以上の温度で分解する発泡剤と、有機バインダ及び/または無機バインダとが混合された混合物を、常温でプレス成形し、1000℃〜1200℃の範囲内で焼結してなる。
ここで、ガラス粒子と多孔質の鉱物質粒子と発泡剤と有機バインダ及び/または無機バインダ(以下、有機バインダ及び/または無機バインダの両者を合わせて単に「バインダ」ともいう。)とを混合すると、バインダによって各原料が互いに結合された状態になり、これらの混合物を常温でプレス成形すると、強固で緻密な固形状態(プレス成形体)となる。
かかる混合物のプレス成形体を加熱していくと、ガラスの軟化点においてガラス粒子が軟化して鉱物質粒子間に流れ込み、更に1000℃〜1200℃の範囲内に加熱されることで、軟化したガラス同士が十分に融着し、その後(温度が下がると)、ガラスによって鉱物質粒子同士が強固に結合されると共に、ガラス同士も強固に結合される。
そして、このとき、混合物に混合されている発泡剤がガラス粒子の軟化点以上の温度で熱分解されることでガスが発生し、多孔質である鉱物質粒子の気孔や、有機バインダが含まれている場合に有機バインダが焼成過程にて焼失することで形成される気孔を介して、このガスが外部へと抜け出すため、軟化したガラスによってこれら気孔が塞がれるのが阻止され、連通した気孔が確保される。特に、焼結前の混合物において、原料が均一に分散混合されている場合には、全体に略均一に気孔が分布される。
なお、バインダが無機バインダの場合には、焼失せずに焼成されることになるが、無機バインダは鉱物質粒子と支え合って構造を維持して焼結過程における形状変形を防止し、(ガスの抜け道を確保して)気孔を確保する。
このようにして得られた焼結体は、上述の如く、ガラス粒子、多孔質の鉱物質粒子、発泡剤及びバインダを混合してなる混合物を加圧した後、焼結してなるものであり、焼結によって、軟化したガラスがバインダとして機能して鉱物質粒子同士が強固に結合されると共に、1000℃〜1200℃の範囲内に加熱されることで、軟化したガラス同士が十分に融着して強固に結合されたものであるから、機械的強度に優れている。
また、鉱物質粒子の気孔や有機バインダが焼失されることで形成される気孔を介して、発泡剤からのガスが外部へと抜け出すことで、これら気孔が軟化したガラスによって塞がれるのが阻止され、連通した気孔が確保されるため、得られた焼結体は多孔質で軽量であり、通気性や、吸水性・保水性を有する。更には、無機質材料であるガラス及び鉱物質からなるため、加熱にも強くて耐熱性を有する。
加えて、発泡剤によるガス発生及び多孔質である鉱物質粒子や有機バインダの焼失によって、連通した気孔を確保するものであるため、焼結体における気孔の寸法形状や気孔率を広い範囲で制御でき、さらに、これらの添加量を調節したり種類を選択したり等することによって、焼結体における気孔の寸法形状や気孔率をより広い範囲で制御することが可能となる。
したがって、通気性が必要とされるフィルタ等や、通気性に加え高い強度が必要とされる真空チャック等の吸着用治具、ブリッジ防止分散板等や、通気性や高強度に加え軽量性が必要な空気浮揚搬送盤、空気浮揚エアスライダ等や、その他にも、触媒保持体、防音材(遮音材)、断熱材等、種々の用途に応用が可能である。また、気孔の寸法形状や気孔率を広い範囲で制御することができるため、上記用途としての使用範囲も広がる。さらに、耐熱性を有し高い温度条件下でも使用できるため、例えば、フィルタとして使用する場合において、耐熱性が必要とされる高熱焼却炉等のガス吸着、空気濾過バグフィルタ等として、その応用分野を広げることも可能である。更には、多孔質であって吸水性や保水性を有するため、育苗床等にも適する。
また、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子を使用し、1000℃〜1200℃の範囲内と低い温度で焼結するため、焼結時のエネルギが少なくて済み、低コストで製造が可能である。
このようにして、通気性を有すると共に、軽量でありながら優れた機械的強度を有し、低コストで製造でき、さらに、焼結体における気孔の寸法形状や気孔率を広い範囲で制御でき、多用途に使用可能な多孔質ガラス焼結体となる。
請求項2の発明に係る多孔質ガラス焼結体によれば、前記混合物には、更に、有機化合物粉が混合されたことから、焼結過程においてこの有機化合物粉が炭化焼失して(有機化合物粉として、例えば、木粉を用いた場合には、250℃〜350℃付近で炭化焼失して)気孔が形成される。そして、かかる気孔を介してガスが外部へと抜け出すことで、それによっても連通した気孔が確保される。したがって、請求項1に記載の効果に加えて、焼結体における気孔の寸法形状や気孔率を一段と広い範囲で制御でき、さらに、この有機化合物粉の粒子径及び粒度分布並びに含有量を調節することで、焼結体における気孔の寸法形状や気孔率を更に広い範囲で制御することも可能となる。また、有機化合物粉の繊維質等により成形時における成形固化の強度が増すため、安定した形状や強度を確保できる。
請求項3の発明に係る多孔質ガラス焼結体は、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子と、鉱物質粒子と、有機化合物粉と、前記ガラス粒子の軟化点以上の温度で分解する発泡剤と、有機バインダ及び/または無機バインダとが混合された混合物を、常温でプレス成形し、1000℃〜1200℃の範囲内で焼結してなる。
ここで、ガラス粒子と鉱物質粒子と有機化合物粉と発泡剤と有機バインダ及び/または無機バインダ(以下、有機バインダ及び/または無機バインダの両者を合わせて単に「バインダ」ともいう。)とを混合すると、バインダによって各原料が互いに結合された状態になり、これら混合物を常温でプレス成形すると、強固で緻密な固形状態(プレス成形体)となる。
かかる混合物のプレス成形体を加熱していくと、通常、初めに、有機化合物粉や、有機バインダが含まれている場合にはこの有機バインダが燃焼して炭化焼失し(有機化合物粉として、例えば、木粉を用いた場合には、250℃〜350℃付近で炭化焼失し)、気孔が形成される。続いて、ガラスの軟化点においてガラス粒子が軟化して鉱物質粒子間に流れ込み、更に1000℃〜1200℃の範囲内に加熱されることで、軟化したガラス同士が十分に融着し、その後(温度が下がると)、ガラスによって鉱物質粒子同士が強固に結合されると共に、ガラス同士も強固に結合される。
そして、このとき、混合物に混合されている発泡剤がガラス粒子の軟化点以上の温度で熱分解されることでガスが発生し、有機化合物粉や有機バインダの焼失により形成された気孔や、鉱物質粒子が多孔質である場合にはその気孔を介して、このガスが外部へと抜け出すため、軟化したガラスによってこれら気孔が塞がれるのが阻止され、連通した気孔が確保される。特に、焼結前の混合物において、これら原料が均一に分散混合されている場合には、全体に略均一に気孔が分布される。
なお、バインダが無機バインダの場合には、焼失せずに焼成されることになるが、無機バインダは鉱物質粒子と支え合って構造を維持して焼結過程における形状変形を防止し、(ガスの抜け道を確保して)気孔を確保する。
このようにして得られた焼結体は、上述の如く、ガラス粒子、鉱物質粒子、有機化合物粉、発泡剤及びバインダを混合してなる混合物を加圧した後、焼結してなるものであり、焼結よって、軟化したガラスがバインダとして機能して鉱物質粒子同士が強固に結合されると共に、1000℃〜1200℃の範囲内に加熱されることで、軟化したガラス同士が十分に融着して強固に結合されたものであるから、機械的強度に優れている。
また、有機化合物粉や有機バインダが焼失することで形成された気孔や、鉱物質粒子が多孔質である場合にはその気孔を介して、発泡剤からのガスが外部へと抜け出すことで、これら気孔が軟化したガラスによって塞がれるのが阻止され、連通した気孔が確保されるため、得られた焼結体は多孔質で軽量であり、通気性や、吸水性・保水性を有する。さらに、無機質材料であるガラス及び鉱物質からなるため、加熱にも強くて耐熱性を有する。
加えて、発泡剤によるガス発生及び有機化合物粉や有機バインダの焼失、また、鉱物質粒子が多孔質である場合には多孔質の鉱物質粒子によって、連通した気孔を確保するものであるため、焼結体における気孔の寸法形状や気孔率を広い範囲で制御でき、さらに、これらの添加量を調節したり種類を選択したり等することによって、焼結体における気孔の寸法形状や気孔率をより広い範囲で制御することが可能となる。
したがって、通気性が必要とされるフィルタ等や、通気性に加え高い強度が必要とされる真空チャック等の吸着用治具、ブリッジ防止分散板等や、通気性や高強度に加え軽量性が必要な空気浮揚搬送盤、空気浮揚エアスライダ等や、その他にも、触媒保持体、防音材(遮音材)、断熱材等、種々の用途に応用が可能である。また、気孔の寸法形状や気孔率を広い範囲で制御することが可能であるため、上記用途としての使用範囲も広がる。更に、耐熱性を有し高い温度条件下でも使用できるため、例えば、フィルタとして使用する場合において、耐熱性が必要とされる高熱焼却炉等のガス吸着、空気濾過バグフィルタ等として、その応用分野を広げることも可能である。更には、多孔質であって吸水性・保水性を有するため、育苗床等にも適する。
また、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子を使用し、1000℃〜1200℃の範囲内と低い温度で焼結するため、焼結時のエネルギが少なくて済み、低コストで製造が可能である。
このようにして、通気性を有すると共に、軽量でありながら優れた機械的強度を有し、低コストで製造でき、さらに、焼結体における気孔の寸法形状や気孔率を広い範囲で制御でき、多用途に使用可能な多孔質ガラス焼結体となる。
請求項4の発明に係る多孔質ガラス焼結体によれば、前記混合物には、更に、粘土質鉱物粉が混合されたため、この粘土質混合物粉が水分等と反応して粘着性を発揮し、成形体において可塑性を有する。このため、焼結過程における型崩れ等の寸法形状変化が防止され、構造が保持される。したがって、請求項1乃至請求項3に記載の効果に加えて、安定した通気性及び高強度を確保することができる。
請求項5の多孔質ガラス焼結体によれば、前記混合物において、前記ガラス粒子の含有量が15重量%〜60重量%の範囲内であり、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子の含有量が10重量%〜60重量%の範囲内であり、前記発泡剤の含有量が5重量%〜30重量%の範囲内であり、前記有機バインダ及び/または無機バインダの含有量が5重量%〜50重量%の範囲内である。
ここで、本発明者は、より確実に通気性と高強度を兼ね備え純度の高い多孔質ガラス焼結体を得るための原料配合比について、鋭意実験研究を重ねた結果、前記混合物において、前記ガラス粒子の含有量が15重量%〜60重量%の範囲内、好ましくは、20重量%〜55重量%の範囲内であり、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子の含有量が10重量%〜60重量%の範囲内、好ましくは、15重量%〜55重量%の範囲内であり、前記発泡剤の含有量が5重量%〜30重量%の範囲内、好ましくは、7重量%〜25重量%の範囲内であり、前記有機バインダ及び/または無機バインダの含有量が5重量%〜50重量%の範囲内、好ましくは、7重量%〜45重量%の範囲内で混合することによって、上記目的を達成できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
即ち、前記混合物において、前記ガラス粒子の含有量を15重量%未満とすると、ガラス粒子が少な過ぎて、鉱物質粒子同士が十分に結合されず、強度や純度が低下してしまう恐れがあり、一方、前記ガラス粒子の含有量が60重量%を超えると、ガラス粒子が多過ぎて軟化したガラスにより通気性が損なわれてしまったり、また発泡が多く強度が低下してしまったりする可能性がある。
また、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子の含有量を10重量%未満とすると、鉱物質粒子が少な過ぎて、強度が低下してしまう可能性があり、一方、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子の含有量が60重量%を超えると、鉱物質粒子が多過ぎて、鉱物質粒子同士が十分に結合されず、焼結体の強度や純度が低下してしまう恐れがある。
さらに、前記発泡剤の含有量を5重量%未満とすると、発泡量が少な過ぎるために気孔が軟化したガラスによって塞がれ、通気性が損なわれてしまう可能性があり、一方、前記発泡剤の含有量が30重量%を超えると、発泡量が多過ぎて、ガラス内の独立気孔が増ええ、焼結体の強度が低下してしまう恐れがある。
加えて、前記バインダの含有量を5重量%未満とすると、バインダが少な過ぎて焼結前または焼結中にプレス成形体が破損してしまう可能性がある。一方、前記バインダの含有量が50重量%を超えると、バインダが多過ぎて有機バインダの場合はプレス成形時に内部から空気やガスが抜けずにひび割れを発生して焼成時に割れてしまう恐れがあり、無機バインダの場合は焼結体の純度が低下してしまう可能性がある。
したがって、この発明の多孔質ガラス焼結体によれば、請求項1乃至請求項4に記載の効果に加えて、確実に通気性と高強度を兼ね備えており、純度が高いのものとなる。
なお、前記混合物において、前記ガラス粒子の含有量が20重量%〜55重量%の範囲内で、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子の含有量が15重量%〜55重量%の範囲内で、前記発泡剤の含有量が7重量%〜25重量%の範囲内で、前記有機バインダ及び/または無機バインダの含有量が7重量%〜45重量%の範囲内であることによって、更に確実に高強度と通気性とを兼ね備えた高純度の焼結体を得ることができるため、より好ましい。
請求項6の発明に係る多孔質ガラス焼結体によれば、前記混合物において、前記有機化合物粉の含有量が50重量%以下である。
ここで、前記混合物において、前記有機化合物粉の含有量が50重量%を超えると、有機化合物粉が多過ぎるために焼結中にプレス成形体が破損してしまったり、ガラスや鉱物質粒子の結合が少なく、焼結体の強度が低下してしまったりする恐れがある。
したがって、この発明の多孔質ガラス焼結体によれば、請求項2、請求項4及び請求項5に記載の効果に加えて、確実に安定した高強度が確保される。
なお、前記混合物において、前記有機化合物粉の含有量が30重量%以下であることによって、焼結体において確実に安定した高強度が確保できるため、より好ましい。
請求項7の発明に係る多孔質ガラス焼結体によれば、前記ガラス粒子はふるい試験法による粒子径が500μm未満であり、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子はふるい試験法による粒子径が4mm未満である。
ここで、前記ガラス粒子のふるい試験法による粒子径が500μm以上であると、ガラス粒子の粒子径が大きくて十分に軟化してガラス同士が強固に結合されない恐れがあり、強度が低下する可能性がある。
また、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子のふるい試験法による粒子径が4μm以上であると、鉱物質粒子の粒子径が大きくて均一に分散混合されず焼結体において安定した強度が得られない可能性がある。
したがって、この発明の多孔質ガラス焼結体によれば、請求項1乃至請求項6に記載の効果に加えて、焼結体においてより確実に安定した高強度を確保することができる。
なお、特に、前記ガラス粒子はふるい試験法による粒子径が450μm未満、更に好ましくは250μm未満であることによって、また、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子はふるい試験法による粒子径が3.5mm未満、更に好ましくは2mm未満であることによって、更に確実に安定した高強度を確保できる。
請求項8の発明に係る多孔質ガラス焼結体によれば、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子として、ゼオライト粒子及び/または瓦粉末を用いており、ゼオライト粒子や瓦粉末は入手が容易で安価であることから、請求項1乃至請求項7に記載の効果に加えて、低コスト化を図ることができる。また、ゼオライト粒子や瓦粉末は水分子等の吸着放出能にも優れていることから、焼結体において高い吸水性・保水性を確保できる。特に、ゼオライト粒子はイオン交換能を有することから、例えば、得られる焼結体は、食用油のろ過フィルタ等として用いることも可能である。
請求項9の発明に係る多孔質ガラス焼結体によれば、前記有機化合物粉はふるい試験法による粒子径が500μm未満である。
ここで、前記ガラス粒子のふるい試験法による粒子径が500μm以上であると、有機化合物粉が均一に分散混合され難くて気孔を均一に分布させることができない恐れがあり、また、鉱物質粒子やガラス粒子の充填性が低下する恐れがある。即ち、焼結体において安定した通気性及び高強度を確保できない可能性がある。
したがって、この発明の多孔質ガラス焼結体によれば、請求項2乃至請求項8に記載の効果に加えて、焼結体においてより確実に安定した通気性及び高強度を確保することができる。
なお、特に、前記有機化合物粉はふるい試験法による粒子径が450μm未満、より好ましくは250μm未満であることによって、気孔をより均一に分布させ、また、鉱物質粒子やガラス粒子の充填性を向上させることができるため、焼結体において更に確実に安定した通気性及び高強度を確保できる。
請求項10の発明に係る多孔質ガラス焼結体は、前記有機化合物粉として、木粉を用いたものである。
ここで、木粉は、間伐材等として大量にしかも非常に安価に入手でき、また、木粉として間伐材等を用いた場合には環境保全にも貢献することにもなるため、本発明に係る有機化合物粉として適している。
したがって、請求項2乃至請求項9に記載の効果に加えて、更に低コスト化を図ることができる。
請求項11の発明に係る多孔質ガラス焼結体によれば、前記発泡剤として、炭酸カルシウム及び/またはドロマイトを用いており、これら発泡剤は比較的高温で熱分解されるものであるから、1000℃〜1200℃の範囲内で焼結する焼結過程において、発泡剤としての機能を十分に無駄なく発揮させることができる。したがって、請求項1乃至請求項10に記載の効果に加えて、より確実に安定した通気性及び高純度を確保できる。
請求項12の発明に係る多孔質ガラス焼結体によれば、前記粘土質鉱物粉として、蛙目粘土の粉末、ベントナイトの粉末、カオリンの粉末から選ばれる少なくとも1つを用いており、これらの粘土質鉱物粉は、入手が容易で安価であり、また、焼結過程おける寸法形状変化の防止にも優れることから、請求項4乃至請求項11に記載の効果に加えて、更なる低コスト化が可能であり、また、仕上がり寸法精度が高いのものとなる。
請求項13の発明に係る多孔質ガラス焼結体によれば、前記プレス成形の圧力は、50kg/cm2 〜350kg/cm2 の範囲内である。
ここで、前記プレス成形の圧力が50kg/cm2未満であると、混合物が十分に圧縮されないため、焼結体の強度が弱くなる可能性がある。一方、前記プレス成形の圧力が350kg/cm2を超えると、混合物に圧力がかかり過ぎて連通した気孔が形成されにくくなり、通気性が損なわれる恐れがある。
したがって、この発明の多孔質ガラス焼結体によれば、請求項1乃至請求項12に記載の効果に加えて、より確実に安定した通気性及び高強度を確保することができる。
なお、プレス成形の圧力を100kg/cm2〜250kg/cm2の範囲内とすることによって、高強度と通気性とを兼ね備えた焼結体がより確実に得られるため、より好ましい。
請求項14の発明に係る多孔質ガラス焼結体によれば、前記混合物の作製に、精密分散混合機を用いたことから、原料がより確実に均一に分散混合されることになる。よって、請求項1乃至請求項13に記載の効果に加えて、更に確実に安定した通気性及び高強度を確保することができ、純度がより高いのものとなる。
請求項15の発明に係る多孔質ガラス焼結体の製造方法によれば、まず、焼結原料混合工程において、ガラス粒子と、多孔質の鉱物質粒子と、発泡剤とが混合されて焼結原料混合物となり、更に、バインダ混合工程において、この焼結原料混合物と有機バインダ及び/または無機バインダ(以下、有機バインダ及び/または無機バインダの両者を合わせて単に「バインダ」ともいう。)とが混合されてバインダ混合物となり、続いて、プレス成形工程において、このバインダ混合物が金型に充填され常温でプレス成形されてプレス成形体となる。
ここで、焼結原料混合工程及びバインダ混合工程にて、ガラス粒子と多孔質の鉱物質粒子と発泡剤とバインダとを混合するとバインダによって各原料が互いに結合された状態になり、これら混合物を常温でプレス成形すると、強固で緻密な固形状態のプレス成形体となる。
続いて、焼結工程において、このプレス成形体は1000℃〜1200℃の範囲内で焼結される。
ここで、かかる混合物のプレス成形体を加熱していくと、ガラスの軟化点においてガラス粒子が軟化して鉱物質粒子間に流れ込み、更に1000℃〜1200℃の範囲内に加熱されると、軟化したガラス同士が十分に融着し、その後(温度が低下すると)、ガラスによって鉱物質粒子同士が強固に結合されると共に、ガラス同士も強固に結合される。
そして、このとき、混合物に混合されている発泡剤がガラス粒子の軟化点以上の温度で熱分解されることでガスが発生し、多孔質である鉱物質粒子の気孔や、有機バインダが含まれている場合に有機バインダが焼結過程にて焼失されることで形成される気孔を介して、ガスが外部へと抜け出すため、軟化したガラスによってこれら気孔が塞がれるのが阻止され、連通した気孔が確保される。特に、焼結前の混合物において、これら原料が均一に分散混合されている場合には、全体に略均一に気孔が分布される。
なお、バインダが無機バインダの場合には、焼失せずに焼成されることになるが、無機バインダは鉱物質粒子と支え合って構造を維持して焼結過程における形状変形を防止し、(ガスの抜け道を確保して)気孔を確保する。
このように、請求項16の発明に係る多孔質ガラス焼結体の製造方法によれば、ガラス粒子、多孔質の鉱物質粒子、発泡剤及びバインダを混合してなる混合物が加圧した後に焼結されるものであり、焼結によって、軟化したガラスがバインダとして機能して鉱物質粒子同士が強固にされると共に、1000℃〜1200℃の範囲内に加熱されることで、軟化したガラス同士が十分に融着して強固に結合されるものであるから、機械的強度に優れた焼結体が得られる。
また、鉱物質粒子の気孔や有機バインダが焼失されることで形成される気孔を介して、発泡剤からのガスが外部へと抜け出すことで、これら気孔が軟化したガラスによって塞がれるのが阻止され、連通した気孔が確保されるため、得られる焼結体は多孔質で軽量であり、通気性や、吸水性・保水性を有する。更には、無機質材料であるガラス及び鉱物質からなるため、加熱にも強くて耐熱性を有する。
加えて、発泡剤によるガス発生及び多孔質である鉱物質粒子や有機バインダの焼失によって、連通した気孔を確保するものであるため、焼結体における気孔の寸法形状や気孔率を広い範囲で制御でき、さらに、これらの添加量を調節したり種類を選択したり等することによって、焼結体における気孔の寸法形状や気孔率をより広い範囲で制御することが可能となる。
したがって、得られた焼結体は、通気性が必要とされるフィルタ等や、通気性に加え高い強度が必要とされる真空チャック等の吸着用治具、ブリッジ防止分散板等や、通気性や強度に加え軽量性が必要な空気浮揚搬送盤、空気浮揚エアスライダ等や、その他にも、触媒保持体、防音材(遮音材)、断熱材等、種々の用途に応用が可能である。また、気孔の寸法形状や気孔率を広い範囲で制御することができるため、上記用途としての使用範囲も広がる。さらに、耐熱性を有し高い温度条件下でも使用できるため、例えば、フィルタとして使用する場合において、耐熱性が必要とされる高熱焼却炉等のガス吸着、空気濾過バグフィルタ等として、その応用分野を広げることが可能である。更には、多孔質であって吸水性や保水性を有するため、育苗床等にも適する。
また、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子を使用し、1000℃〜1200℃の範囲内と低い温度で焼結するため、焼結時のエネルギが少なくて済み、低コストで製造が可能である。
このようにして、通気性を有すると共に、軽量でありながら優れた機械的強度を有し、低コストで製造でき、さらに、焼結体における気孔の寸法形状や気孔率を広い範囲で制御でき、多用途に使用可能な多孔質ガラス焼結体の製造方法となる。
請求項16の発明に係る多孔質ガラス焼結体の製造方法によれば、前記焼結原料混合物には、更に、有機化合物粉が混合されたことから、焼結過程においてこの有機化合物粉が炭化焼失して(有機化合物粉として、例えば、木粉を用いた場合には、250℃〜350℃付近で炭化焼失して)気孔が形成される。そして、かかる気孔を介してガスが外部へと抜け出すことで、それによっても連通した気孔が確保される。したがって、請求項15に記載の効果に加えて、焼結体における気孔の寸法形状や気孔率を一段と広い範囲で制御でき、さらに、この有機化合物粉の粒子径及び粒度分布並びに含有量を調節することで、焼結体における気孔の寸法形状や気孔率を更に広い範囲で制御することも可能となる。また、有機化合物粉の繊維質等により成形時における成形固化の強度が増すため、多孔質ガラス焼結体において安定した形状や強度を確保できる。
請求項17の発明に係る多孔質ガラス焼結体の製造方法によれば、まず、焼結原料混合工程において、ガラス粒子と、鉱物質粒子と、有機化合物粉と、発泡剤とが混合されて焼結原料混合物となり、更に、バインダ混合工程において、この焼結原料混合物と有機バインダ及び/または無機バインダ(以下、有機バインダ及び/または無機バインダの両者を合わせて単に「バインダ」ともいう。)とが混合されてバインダ混合物となり、続いて、プレス成形工程において、このバインダ混合物が金型に充填され常温でプレス成形されてプレス成形体となる。
ここで、焼結原料混合工程及びバインダ混合工程にて、ガラス粒子と鉱物質粒子と発泡剤と有機化合物粉とバインダとを混合するとバインダによって各原料が互いに結合された状態になり、これら混合物を常温でプレス成形すると、強固で緻密な固形状態のプレス成形体となる。
続いて、焼結工程において、このプレス成形体は1000℃〜1200℃の範囲内で焼結される。
ここで、かかる混合物のプレス成形体を加熱していくと、通常、初めに、有機化合物粉や、有機バインダが含まれている場合にはこの有機バインダが燃焼して炭化焼失し(有機化合物粉として、例えば、木粉を用いた場合には、250℃〜350℃付近で炭化焼失し)、気孔が形成される。続いて、ガラスの軟化点においてガラス粒子が軟化して鉱物質粒子間に流れ込み、更に1000℃〜1200℃の範囲内に加熱されることで、軟化したガラス同士が十分に融着し、その後(温度が下がると)、ガラスによって鉱物質粒子同士が強固に結合されると共に、ガラス同士も強固に結合される。
そして、このとき、混合物に混合されている発泡剤がガラス粒子の軟化点以上の温度で熱分解されることでガスが発生し、有機化合物粉や有機バインダの焼失により形成された気孔や、鉱物質粒子が多孔質である場合にはその気孔を介して、このガスが外部へと抜け出すため、軟化したガラスによってこれら気孔が塞がれるのが阻止され、連通した気孔が確保される。特に、焼結前の混合物において、これら原料が均一に分散混合されている場合には、全体に略均一に気孔が分布される。
なお、バインダが無機バインダの場合には、焼失せずに焼成されることになるが、無機バインダは鉱物質粒子と支え合って構造を維持して焼結過程における形状変形を防止し、(ガスの抜け道を確保して)気孔を確保する。
このように、請求項17の発明に係る多孔質ガラス焼結体の製造方法によれば、ガラス粒子、鉱物質粒子、有機化合物粉、発泡剤及びバインダを混合してなる混合物は加圧した後に焼結されるものであり、焼結によって、軟化したガラスがバインダとして機能して鉱物質粒子同士が強固に結合されると共に、1000℃〜1200℃の範囲内に加熱されることで、軟化したガラス同士が十分に融着して強固に結合されるものであるから、機械的強度に優れた焼結体が得られる。
また、有機化合物粉や有機バインダが焼失することで形成された気孔や、鉱物質粒子が多孔質である場合にはその気孔を介して、発泡剤からのガスが外部へと抜け出すことで、これら気孔が軟化したガラスによって塞がれるのが阻止され、連通した気孔が確保されるため、得られる焼結体は多孔質で軽量であり、通気性や、吸水性・保水性を有する。さらに、無機質材料であるガラス及び鉱物質からなるため、加熱にも強くて耐熱性を有する。
加えて、発泡剤によるガス発生及び有機化合物粉や有機バインダの焼失、更に鉱物質粒子が多孔質である場合には多孔質の鉱物質粒子によって、連通した気孔を確保するものであるため、焼結体における気孔の寸法形状や気孔率を広い範囲で制御でき、さらに、これらの添加量を調節したり種類を選択したり等することによって、焼結体における気孔の寸法形状や気孔率をより広い範囲で制御することが可能となる。
したがって、得られた焼結体は、通気性が必要とされるフィルタ等や、通気性に加え高い強度が必要とされる真空チャック等の吸着用治具、ブリッジ防止分散板等や、通気性や強度に加え軽量性が必要な空気浮揚搬送盤、空気浮揚エアスライダ等や、その他にも、触媒保持体、防音材(遮音材)、断熱材等、種々の用途に応用が可能である。また、気孔の寸法形状や気孔率を広い範囲で制御することが可能であるため、上記用途としての使用範囲も広がる。更に、耐熱性を有し高い温度条件下でも使用できるため、例えば、フィルタとして使用する場合において、耐熱性が必要とされる高熱焼却炉等のガス吸着、空気濾過バグフィルタ等として、その応用分野を広げることが可能である。更には、多孔質であって吸水性・保水性を有するため、育苗床等にも適する。
また、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子を使用し、1000℃〜1200℃の範囲内と低い温度で焼結するため、焼結時のエネルギが少なくて済み、低コストで製造が可能である。
このようにして、通気性を有すると共に、軽量でありながら優れた機械的強度を有し、低コストで製造でき、さらに、焼結体における気孔の寸法形状や気孔率を広い範囲で制御でき、多用途に使用可能な多孔質ガラス焼結体の製造方法となる。
請求項18の発明に係る多孔質ガラス焼結体の製造方法によれば、前記焼結原料混合物には、更に、鉱物質粒子が混合されるため、これら粘土質混合物粉が水分等と反応して粘着性を発揮し、成形体において可塑性を有する。このため、焼結過程における型崩れ等の寸法形状変化が防止され、構造が保持される。したがって、請求項15乃至請求項17に記載の効果に加えて、得られる焼結体において安定した通気性及び強度を確保することができる。
請求項19の発明に係る多孔質ガラス焼結体の製造方法によれば、前記バインダ混合物において、前記ガラス粒子の含有量が15重量%〜60重量%の範囲内であり、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子の含有量が10重量%〜60重量%の範囲内であり、前記発泡剤の含有量が5重量%〜30重量%の範囲内であり、前記有機バインダ及び/または無機バインダの含有量が5重量%〜50重量%の範囲内である。
ここで、本発明者は、より確実に通気性と高強度を兼ね備え純度の高い多孔質ガラス焼結体を得るための原料配合比について、鋭意実験研究を重ねた結果、前記バインダ混合物において、前記ガラス粒子の含有量が15重量%〜60重量%の範囲内、好ましくは、20重量%〜55重量%の範囲内であり、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子の含有量が10重量%〜60重量%の範囲内、好ましくは、15重量%〜55重量%の範囲内であり、前記発泡剤の含有量が5重量%〜30重量%の範囲内、好ましくは、7重量%〜25重量%の範囲内であり、前記有機バインダ及び/または無機バインダの含有量が5重量%〜50重量%の範囲内、好ましくは、7重量%〜45重量%の範囲内で混合することによって、上記目的を達成できることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
即ち、前記バインダ混合物において、前記ガラス粒子の含有量を15重量%未満とすると、ガラス粒子が少な過ぎて、鉱物質粒子同士が十分に結合されず、強度や純度が低下してしまう恐れがあり、一方、前記ガラス粒子の含有量が60重量%を超えると、ガラス粒子が多過ぎて軟化したガラスにより通気性が損なわれてしまったり、また発泡が多く強度が低下してしまったりする可能性がある。
また、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子の含有量を10重量%未満とすると、鉱物質粒子が少な過ぎて、強度が低下してしまう可能性があり、一方、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子の含有量が60重量%を超えると、鉱物質粒子が多過ぎて、鉱物質粒子同士が十分に結合されず、焼結体の強度や純度が低下してしまう恐れがある。
さらに、前記発泡剤の含有量を5重量%未満とすると、発泡量が少な過ぎるために気孔が軟化したガラスによって塞がれ、通気性が損なわれてしまう可能性があり、一方、前記発泡剤の含有量が30重量%を超えると、発泡量が多過ぎて、ガラス内の独立気孔が増ええ、焼結体の強度が低下してしまう恐れがある。
加えて、前記バインダの含有量を5重量%未満とすると、バインダが少な過ぎて焼結前または焼結中にプレス成形体が破損してしまう可能性がある。一方、前記バインダの含有量が50重量%を超えると、バインダが多過ぎて有機バインダの場合はプレス成形時に内部から空気やガスが抜けずにひび割れを発生して焼成時に割れてしまう恐れがあり、無機バインダの場合は焼結体の純度が低下してしまう可能性がある。
したがって、この発明に係る多孔質ガラス焼結体の製造方法によれば、請求項15乃至請求項18に記載の効果に加えて、確実に通気性と高強度を兼ね備えており、純度が高い焼結体を得ることができる。
なお、前記バインダ混合物において、前記ガラス粒子の含有量が20重量%〜55重量%の範囲内で、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子の含有量が15重量%〜55重量%の範囲内で、前記発泡剤の含有量が7重量%〜25重量%の範囲内で、前記有機バインダ及び/または無機バインダの含有量が7重量%〜45重量%の範囲内であることによって、更に確実に高強度と通気性とを兼ね備えた高純度の焼結体を得ることができるため、より好ましい。
請求項20の発明に係る多孔質ガラス焼結体の製造方法によれば、前記バインダ混合物において、前記有機化合物粉の含有量が50重量%以下である。
ここで、前記バインダ混合物において、前記有機化合物粉の含有量が50重量%を超えると、有機化合物粉が多過ぎるために焼結中にプレス成形体が破損してしまったり、ガラスや鉱物質粒子の結合が少なく、焼結体の強度が低下してしまったりする恐れがある。また、有機化合物粉の燃焼により発生するガスや臭い処理が困難となる。
したがって、この発明に係る多孔質ガラス焼結体の製造方法によれば、請求項16、請求項18及び請求項19に記載の効果に加えて、焼結体において安定した高強度が確保される。
なお、前記バインダ混合物において、前記有機化合物粉の含有量が30重量%以下であるによって、焼結体において確実に安定した高強度を確保できるため、より好ましい。
請求項21の発明に係る多孔質ガラス焼結体の製造方法によれば、前記ガラス粒子はふるい試験法による粒子径が500μm未満であり、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子はふるい試験法による粒子径が4mm未満である。
ここで、前記ガラス粒子のふるい試験法による粒子径が500μm以上であると、ガラス粒子の粒子径が大きくて十分に軟化してガラス同士が強固に結合されない恐れがあり、強度が低下する可能性がある。
また、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子のふるい試験法による粒子径が4mm以上であると、鉱物質粒子の粒子径が大きくて均一に混合分散されず焼結体において安定した強度が得られない可能性がある。
したがって、この発明に係る多孔質ガラス焼結体の製造方法によれば、請求項15乃至請求項20に記載の効果に加えて、焼結体において、より確実に安定した高強度を確保することができる。
なお、特に、前記ガラス粒子はふるい試験法による粒子径が450μm未満、更に好ましくは250μm未満であることによって、また、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子はふるい試験法による粒子径が3.5mm未満、更に好ましくは2mm未満であることによって、焼結体において、更に確実に安定した高強度を確保できる。
請求項22の発明に係る多孔質ガラス焼結体の製造方法によれば、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子として、ゼオライト粒子及び/または瓦粉末を用いており、ゼオライト粒子や瓦粉末は入手が容易で安価であることから、請求項15乃至請求項21に記載の効果に加えて、低コスト化を図ることができる。また、ゼオライト粒子や瓦粉末は水分子等の吸着放出能にも優れていることから、焼結体において高い吸水性や保水性を確保できる。特に、ゼオライト粒子はイオン交換能を有することから、例えば、得られる焼結体は、食用油のろ過フィルタ等としても用いることも可能である。
請求項23の発明に係る多孔質ガラス焼結体によれば、前記有機化合物粉はふるい試験法による粒子径が500μm未満である。
ここで、前記ガラス粒子のふるい試験法による粒子径が500μm以上であると、有機化合物粉が均一に分散混合され難くて気孔を均一に分布させることができない恐れがあり、また、鉱物質粒子やガラス粒子の充填性が低下する恐れがある。即ち、焼結体において安定した通気性及び高強度を確保できない可能性がある。
したがって、この発明に係る多孔質ガラス焼結体の製造方法によれば、請求項16乃至請求項22に記載の効果に加えて、焼結体において、より確実に安定した通気性及び高強度を確保することができる。
なお、特に、前記有機化合物粉はふるい試験法による粒子径が450μm未満、更に好ましくは250μm未満であることによって、気孔をより均一に分布させ、また、鉱物質粒子やガラス粒子の充填性を向上させることができるため、焼結体において、更に確実に安定した通気性及び高強度を確保できる。
請求項24の発明に係る多孔質ガラス焼結体の製造方法は、前記有機化合物粉として、木粉を用いたものである。
ここで、木粉は、間伐材等として大量にしかも非常に安価に入手でき、また間伐材等を用いた場合には環境保全にも貢献することにもなるため、本発明に係る有機化合物粉として適している。
したがって、請求項16乃至請求項23に記載の効果に加えて、更に低コスト化を図ることができる。
請求項25の発明に係る多孔質ガラス焼結体の製造方法によれば、前記発泡剤として、炭酸カルシウム及び/またはドロマイトを用いており、これら発泡剤は比較的高温で熱分解されるものであるから、1000℃〜1200℃に焼結過程において、発泡剤としての機能を十分に無駄なく発揮させることができる。したがって、請求項15乃至請求項24に記載の効果に加えて、焼結体において、より確実に安定した通気性及び高純度を確保できる。
請求項26の発明に係る多孔質ガラス焼結体の製造方法によれば、前記粘土質鉱物粉として、蛙目粘土の粉末、ベントナイトの粉末、カオリンの粉末から選ばれる少なくとも1つを用いており、これらの粘土質鉱物粉は、入手が容易で安価であり、また、焼結過程おける形状変化の防止にも優れることから、請求項18乃至請求項25に記載の効果に加えて、更なる低コスト化が可能であり、また、仕上がり寸法精度が高い焼結体を得ることが可能となる。
請求項27の発明に係る多孔質ガラス焼結体の製造方法によれば、前記プレス成形の圧力は、50kg/cm2 〜350kg/cm2 の範囲内である。
ここで、前記プレス成形の圧力が50kg/cm2未満であると、混合物が十分に圧縮されないため、焼結体の強度が弱くなる可能性があり、一方、前記プレス成形の圧力が350kg/cm2を超えると、混合物に圧力がかかり過ぎて連通した気孔が形成されにくくなり、通気性が損なわれる恐れがある。
したがって、この発明に係る多孔質ガラス焼結体の製造方法によれば、請求項15乃至請求項26に記載の効果に加えて、焼結体において、より確実に安定した通気性及び高強度を確保することができる。
なお、プレス成形の圧力を100kg/cm2〜250kg/cm2の範囲内とすることによって、高強度と通気性とを兼ね備えた焼結体が更に確実に得られるため、より好ましい。
請求項28の発明に係る多孔質ガラス焼結体の製造方法によれば、前記混合物の作製に、精密分散混合機を用いたことから、原料がより確実に均一に分散され混合されることになる。よって、請求項15乃至請求項27に記載の効果に加えて、焼結体において、より安定した通気性及び高強度を確保することができる。また、より確実に純度の高い焼結体を得ることができる。
図1は本発明の実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体の製造方法を示すフローチャートである。 図2は本発明の実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体の焼結工程における昇温プログラムを示すグラフである。 図3は本発明の実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体を使用して植物を栽培した状態の写真である。 図4は本発明の実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体(丸パイプ形状のもの)の写真である。 図5は本発明の実施の形態の実施例2に係る多孔質ガラス焼結体(板状のもの)の写真である。 図6(a)は、本発明の実施の形態の実施例2に係る多孔質ガラス焼結体の焼結前の状態(プレス成形体)を示す光学式顕微鏡写真(250倍)であり、図6(b)は本発明の実施の形態の実施例2に係る多孔質ガラス焼結体(焼結後)の光学式微鏡写真(250倍)である。 図7は本発明の実施の形態の実施例3に係る多孔質ガラス焼結体(板状のもの)の写真である。 図8(a)は、本発明の実施の形態の実施例3に係る多孔質ガラス焼結体の焼結前の状態(プレス成形体)を示す光学式顕微鏡写真(250倍)であり、図8(b)は本発明の実施の形態の実施例3に係る多孔質ガラス焼結体(焼結後)の光学式顕微鏡写真(250倍)である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、本実施の形態において、同一の記号及び同一の符号は同一または相当する機能部分を意味するものであるから、ここでは重複する詳細な説明を省略する。
本発明の実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体及びその製造方法について、主に、図1乃至図4を参照して説明する。
本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1及びその製造方法を実施するに際しては、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子2、鉱物質粒子としてのゼオライト粒子3、有機化合物粉としての木粉4、発泡剤としての炭酸カルシウム5、粘土質鉱物粉としての蛙目粘土粉6及びバインダ8が必要となる。即ち、本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1は、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子2、ゼオライト粒子3、木粉4、炭酸カルシウム5、蛙目粘土粉6及びバインダ8を原料として製造されるものである。
図1のフローチャートに示されるように、本発明の実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1の製造方法においては、最初に、焼結原料混合工程にて、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子2、鉱物質粒子としてのゼオライト粒子3、有機化合物粉としての木粉4、発泡剤としての炭酸カルシウム5、粘土質鉱物粉としての蛙目粘土粉6が混合され、焼結原料混合物7となる(ステップS1)。
本実施の形態では、これらの混合に精密分散混合機が用いられ、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子2、ゼオライト粒子3、木粉4、炭酸カルシウム5及び蛙目粘土粉6が均一に分散混合されて焼結原料混合物7となっている。
ここで、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子2としては、ソーダ石灰等からなるガラス粉が用いられ、このガラス粉には、環境保全に繋がることになるガラス瓶や液晶ガラス等の廃ガラスを利用したガラスカレット等のリサイクルガラスを使用することも可能であるが、ふるい試験法による粒子径が500μm未満であるものを用いることが好ましい。ガラス粒子2のふるい試験法による粒子径が500μmm以上であると、ガラス粒子2の粒子径が大きくて後述の焼結過程において十分に軟化してガラス同士が強固に結合されない恐れがあり、得られる多孔質ガラス焼結体1において、強度が低下する可能性があるからである。よって、ふるい試験法による粒子径が500μm未満であるガラス粒子2を用いることで、得られる多孔質ガラス焼結体1において、安定した高強度を確保することができる。なお、より好ましくは、ふるい試験法による粒子径が450μm未満であるものであり、更には、250μm未満であるものが特に好ましい。これにより、得られる多孔質ガラス焼結体1において、より安定した高強度を確保することができる。
また、鉱物質粒子としてのゼオライト粒子3には、市販の天然ゼオライト粒子を用いることができ、このような天然ゼオライト粒子は、東ソー(株)、東新化成(株)、サン・ゼオライト工業(株)、フジワラ化学(株)、日揮触媒化成工業(株)等から発売されているが、ふるい試験法による粒子径が4mm未満であるものを用いることが好ましい。ゼオライト粒子3のふるい試験法による粒子径が4mm以上であると、ゼオライト粒子3の粒子径が大きくて均一に分散混合されず得られる多孔質ガラス焼結体1において強度にばらつきが生じる可能性がある。よって、ふるい試験法による粒子径が4mm未満であるガゼオライト粒子3を用いることで、得られる多孔質ガラス焼結体1において、安定した高強度を確保することができる。なお、より好ましくは、ふるい試験法による粒子径が3.5mm未満であるものであり、更には、2mm未満であるものが特に好ましい。これにより、得られる多孔質ガラス焼結体1において、より安定した高強度を確保することができる。
有機化合物粉としての木粉4には、大鋸屑、間伐材のチップ、小径木、製材端材、樹皮等の木屑を粉砕機で微粉砕したものが使用されるが、ふるい試験法による粒子径が500μm未満であるものを用いることが好ましい。木粉4のふるい試験法による粒子径が500μm以上であると、木粉4が均一に分散混合され難くて気孔を均一に分布させることができない恐れがあり、また、ガラス粒子2や鉱物質粒子としてのゼオライト粒子3の充填性が低下する恐れがある。即ち、得られる多孔質ガラス焼結体1において、安定した通気性及び高強度を確保できない可能性がある。よって、ふるい試験法による粒子径が500μm未満である木粉4を用いることで、得られる多孔質ガラス焼結体1において、安定した通気性及び高強度を確保することができる。なお、より好ましくは、ふるい試験法による粒子径が450μm未満であるものであり、更には、250μm未満であるものが特に好ましい。これにより、得られる多孔質ガラス焼結体1において、より安定した通気性及び高強度を確保することができる
因みに、粒子径が500μm未満の木粉4を経済的に得るには、間伐材、小径木、樹皮、製材端材、大鋸屑等の木屑を、水分20重量部以下に乾燥した後に、微粉砕することが好ましい。木屑を水分20重量部以下に乾燥することによって、粉砕物がスラリー化して微粉砕を妨げることを防止できるからである。また、乾燥した木屑を微粉砕して、粒子径が500μm未満の木粉4とするためには、周速50m/秒〜80m/秒の範囲内の微粉砕機を用いるのが好ましく、このような微粉砕機としては、例えば河本鉄工(株)製のミクロンコロイドミル等がある
発泡剤としての炭酸カルシウム(CaCO3)5は、ガラス粒子2の軟化点以上の温度でも分解するものであり、例えば、日東粉化工業(株)白石工業(株)竹原化学工業(株)から発売されているものを使用することができる。
また、粘土質鉱物粉としての蛙目粘土粉6は、焼成時における型崩れ等の寸法形状変化を防止するためのものであり、例えば、(株)ヤマス、共立マテリアル(株)等から発売されているものを用いることができる。
そして、バインダ混合工程において、この800℃未満の軟化点を有するガラス粒子2、ゼオライト粒子3、木粉4、炭酸カルシウム5及び蛙目粘土粉6が均一に分散混合された焼結原料混合物7にバインダ8が混合され、バインダ混合物9となる(ステップS2)。このようにして得られたバインダ混合物9は、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子2、ゼオライト粒子3、木粉4、炭酸カルシウム5及び蛙目粘土粉6がバインダ8によって互いに結合された状態になっている。
本実施の形態では、これらの混合にも、精密分散混合機が用いられ、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子2、ゼオライト粒子3、木粉4、炭酸カルシウム5、蛙目粘土粉6及びバインダ8が均一に分散混合されてバインダ混合物9となっている。なお、焼結原料混合工程(ステップS1)及びバインダ混同工程(ステップS2)において原料を混合する際に用いられる精密分散混合機としては、周速20m/秒〜30m/秒の範囲内の高速攪拌分散機を用いるのが好ましく、このような高速攪拌分散機としては、例えば、ホソカワミクロン(株)製の横型タービュライザ(登録商標)等がある。
ここで、バインダ8としては、有機バインダ及び/または無機バインダが使用され、有機バインダとしては、合成樹脂(熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂)、澱粉、合成糊、砂糖等を使用することができるが、中でも、イソシアネート樹脂を用いた場合にはイソシアネート樹脂がガラス粒子2や木粉4等における水酸基(−OH)との間に、また、ポリオール樹脂及びイソシアネート樹脂の2種類の合成樹脂を併用した場合にはイソシアネート樹脂がガラス粒子2や木粉4等における水酸基(−OH)及びポリオール樹脂との間に、強固なウレタン結合を形成するため、後述のプレス成形体10は確実に強固で緻密な状態になる。そして、後述の焼結過程において、この緻密なプレス成形体10を焼結することによって、木粉4と有機バインダとが焼失して確実に連通した気孔が形成される。このため、得られる多孔質ガラス焼結体1において、通気性を損なうことなく強度を向上させることができる。さらに、イソシアネート樹脂やポリオール樹脂は安価に入手できることから、低コスト化を図ることが可能である。なお、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子2、ゼオライト粒子3、木粉4、炭酸カルシウム5及び蛙目粘土粉6が混合された焼結原料混合物7が一定以上の水分を有している場合には、イソシアネート樹脂のみでもプレス成形体10において十分な結合力を得ることができる。特に、本発明者らの実験研究によれば、蛙目粘土粉6等の粘土質鉱物粉が用いられることで、イソシアネート樹脂と水を加えるだけで後述のプレス成形体10において強く固化し、1〜3mm程度の薄い板状のものでも焼成することが可能であることが確認されている。
ここで、イソシアネート樹脂とは、分子中に−N=C=Oというイソシアネート基を有する高分子化合物であり、イソシアネート樹脂として、例えば、日本ポリウレタン工業(株)のトリレンジイソシアネート(TDI)である「コロネート(登録商標)」シリーズや4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)である「ミリオネート(登録商標)」シリーズ及びヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、三井化学(株)の芳香環を持つ脂肪族ジイソシアネートである「タケネート(登録商標)700」及びシクロヘキサン環を有する脂肪族一級ジイソシアネートである「タケネート(登録商標)600」、BASF INOAC ポリウレタン(株)のポリエチレンポリフェニールポリイソシアネートである「ルプラネート(登録商標)M−20S」等が使用できる。
また、ポリオール樹脂としては、(株)ADEKAのエポキシポリオール樹脂である「アデカレジンEP−6000シリーズ」、DIC(株)のエポキシポリオール樹脂である「EPICLON」、山本商会(株)のアクリルポリオール樹脂である「ノックス・コートN−100」、三洋化成工業(株)のポリオキシプロピレングリセルエーテルである「サンニックス(登録商標)GP−400」、その他にも、ポリオキシエチレングリセルエーテル、ポリオキシブチレングリセルエーテル等がある。
なお、合成樹脂バインダとして、ポリオール樹脂とイソシアネート樹脂を用いる場合には、両者を混合すると温度によっては直ちに反応が起こってウレタン結合が生じ始めるが、ポリオール樹脂のみを、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子2、ゼオライト粒子3、木粉4、炭酸カルシウム5及び蛙目粘土粉6が混合された焼結原料混合物7に混合しても反応は起こらないため、本発明を実施する場合には、焼結原料混合工程(ステップS1)においてポリオール樹脂を初めに混合しておくことも可能である。そして、後述のプレス成形工程(ステップS3)を実施する直前に、バインダ混合工程(ステップS2)としてイソシアネート樹脂を加えて混合すれば良い。
なお、長期間保存が可能なアクリル樹脂やエポキシ樹脂等を用いた場合にも、上記と同じ良好な結果が得られることが確認されている。
一方、無機バインダとしては、グランデックス(株)製のシリカバインダである汎用バインダFJ294、ケイ酸ナトリウム、水溶性アルカリケイ酸、(株)ジャパンナノコート製のシリカバインダ、水、セメント等の水硬性材料、磁器(タイル)・陶器の原料に用いられる粘土等がある。
特に、本実施の形態によれば、粘土質鉱物粉としての蛙目粘土粉6が混合されており、バインダ8として水を使用するだけでも、蛙目粘土粉6が粘性を有してバインダとして機能し、原料同士が強固に結合される。なお、本発明を実施する場合においては、陶器の製造のように、無機バインダとして水を使用し、スラリー状のバインダ混合物9として石膏型に流して固めたのちに、後述のプレス成形工程(ステップS3)に供することも可能である。また、セラミックや磁器(タイル)の製造のように、バインダ混合物9をスプレードライヤーによって乾燥させた後、後述のプレス成形工程(ステップS3)に供することも可能である。何れにせよ、後述するプレス成形過程及び焼成過程においても形状が保持される程度に結合されたバインダ混合物9が作製できれば、バインダの種類や原料同士を結合させる手段は特に限定されない。
次に、このようにして得られたバインダ混合物9が、プレス成形工程において、プレス成形金型に投入された後、プレス成形機によって常温でプレス成形され、プレス成形体10となる(ステップS3)。そして、このようにして得られたプレス成形体10は、強固で緻密な固形状態になっている。
このとき、プレス成形の圧力は、50kg/cm2 〜350kg/cm2 の範囲内とするのが好ましい。プレス成形の圧力が50kg/cm2未満であると、バインダ混合物9が十分に圧縮されないため、得られる多孔質ガラス焼結体1の強度が弱くなる恐れがあり、一方、プレス成形の圧力が350kg/cm2を超えると、バインダ混合物9に圧力がかかり過ぎ、後述の焼結過程において連通した気孔が形成されにくくなり、得られる多孔質ガラス焼結体1の通気性が損なわれる可能性があるからである。よって、プレス成形の圧力を、50kg/cm2 〜350kg/cm2の範囲内とすることで、安定した通気性及び高強度を兼ね備えた多孔質ガラス焼結体1を得ることができる。なお、100kg/cm2〜250kg/cm2 の範囲内とすることで、より安定した通気性及び高強度を兼ね備えた多孔質ガラス焼結体1を得ることができるため、より好ましい。
続いて、焼結工程において、このプレス成形体10が、温度制御電気炉内で1000℃〜1200℃の範囲内で焼結される(ステップS4)。なお、この焼結工程においては、木粉4(及びバインダ8として有機バインダを用いた場合には有機バインダ)を確実に燃焼させるために温度制御電気炉内に空気を供給して酸化雰囲気下とするのが望ましい。
ここで、本実施の形態における焼結工程の昇温プログラムとしては、例えば、図2に示すように、まず室温から300℃まで約50℃/hrで6時間かけて昇温して300℃で2時間保持し、木粉4(及びバインダ8として有機バインダを用いた場合には有機バインダ)の大部分を燃焼して炭化することでプレス成形体10内に気孔を形成さる。さらに、300℃から600℃まで約50℃/hrで6時間かけて昇温して600℃で2時間保持し、続いて、600℃から900℃まで約50℃/hrで6時間かけて昇温して900℃で2時間保持し、木粉4(バインダ8として有機バインダを用いた場合は有機バインダも)を更に炭化させて焼失させる。また、ガラス粒子2を軟化させると共に、炭酸カルシウム5を熱分解させてガスを発生させる。そして、900℃から1080℃まで約45℃/hrで4時間かけて昇温して1080℃で2時間保持して、軟化したガラス同士を十分に融着させる。その後は、5時間程度で100℃まで徐冷し、温度制御電気炉内から取り出す。因みに、温度が1200℃を超えると、ガラスの流動性が過剰になり気孔が塞がれ通気性を確保できなくなるため1200℃が焼結温度の上限となる。
なお、本発明を実施する場合には、焼結工程の昇温プログラムは、上記に限定されるものではなく、焼結温度や、時間や、昇温速度等は、各原材料の種類、粒子径、配合量等によって予め実験等によって最適値が設定される。
このようにして、本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1が得られる。
このようにして得られた多孔質ガラス焼結体1は、各原料や、各原料を混合してプレス成形したプレス成形体10よりもその強度が増大しており、厚みが約10mm程度と薄い板状(厚さ)のものであっても人が踏みつけても割れない程度の高い機械的強度を有していた(曲げ強度15Mpa以上)。これは、本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1が、上述の如く、ガラス粒子2、ゼオライト粒子3、炭酸カルシウム5及びバインダ8等を混合してなる混合物を加圧した後、焼結してなるものであり、焼結によって、軟化したガラスがバインダとして機能してゼオライト粒子3が強固に結合されると共に、1000℃〜1200℃の範囲内に加熱されることで、軟化したガラス同士が十分に融着して強固に結合されるためである。特に、ガラスによる結合なので、磁器製やアルミナ製のものと比べてもかなり強度が高いものである。
また、このようにして製造された本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1を顕微鏡で観察したところ、開口した多数の気孔が略均一に分布して多孔質であり、気孔率が高い焼結体であることが分かった(図6(b)及び図8(b)参照)。そして、この多孔質ガラス焼結体1の約100mm×約100mmの面にエアコンプレッサによる圧縮空気をエアガンで吹き付けたところ、圧縮空気が多孔質ガラス焼結体1を通り抜け、通気性を有することが明らかになった。これは、1000℃〜1200℃の範囲内まで昇温する焼結過程において、約600℃〜約850℃間で、炭酸カルシウム5が緩慢、かつ、連続的に酸化カルシウム(CaO)と二酸化炭素(CO2)に熱分解されることでガス(CO2)が発生し、このガスが、木粉4及びバインダ8として有機バインダを用いた場合は有機バインダが250℃〜350℃付近で燃焼して炭化することによって形成された気孔や、多孔質であるゼオライト粒子3の気孔を介して外部へと抜け出すことで、これら気孔が軟化したガラスによって塞がれるのが阻止され、連通した気孔が確保されたためである。
加えて、本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1は、数μm〜数十μmと広い範囲の気孔径を有しており、気孔の形状も様々であった。これは、本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1は、炭酸カルシウム5によるガス発生及び木粉4や有機バインダの焼失、更に多孔質であるゼオライト粒子3によって気孔を確保するものであるからである。特に、木粉4や多孔質であるゼオライト粒子3に粒子径や粒度分布等のものが用いられることで種々の大きさ形状の気孔が形成され、また、有機バインダの焼失によっても様々な寸法形状の気孔が形成され、さらに、炭酸カルシウム5が緩慢かつ連続的に熱分解されることでガラスの軟化度合いに応じて経時的に異なる量のガスが外部へと抜け出すため、そのことによっても多様な寸法形状の気孔を確保することになる。更には、これらの添加量を調節したり、種類を選択したりすることによって、焼結体における気孔の寸法形状や気孔率をより広い範囲で制御することも可能である(図6(b)及び図8(b)参照)。なお、無機バインダの場合には、焼失せずに焼成されることになるが、無機バインダは、焼結過程における形状変形を防止して気孔を確保する。
そして、本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1は、このように多孔質であるため、軽量であり、また、吸水性や.保水性、断熱性や保温性、防音性(遮音性)や吸音性を有していた。
因みに、本発明者の実験研究によれば、炭酸カルシウム5等の発泡剤を用いずに焼成した場合、軟化したガラスによって気孔が塞がれ表面がのっぺりとしたガラス質になったり、ガラスが発泡体になったりして、通気性を確保できないが、炭酸カルシウム5等の発泡剤を加えることで、連通した気孔が確保されると共に、表面におけるのっぺりとしたガラス質が解消されることが確認されている。

更に、1000℃未満で焼成した場合、ガラス同士の融着が弱くて脆いものとなり、また、1200℃を超える温度で焼成した場合、ガラスの流動性が過剰になり気孔が塞がれるため、上述のように通気性と高強度を兼ね備えた多孔質ガラス焼結体1を得ることができないことも確認されている。
このように本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1は、軽量でありながら優れた機械的強度を有すると共に、通気性を有している。また、このように機械的強度に優れているため、取扱いが極めて容易である。
したがって、通気性が必要とされるフィルタ、ベント管等や、通気性に加え高い強度が必要とされる真空チャック等の吸着用治具(真空吸着盤)、ブリッジ防止分散板等や、通気性や強度に加え軽量性が必要な空気浮揚搬送盤、空気浮揚エアスライダ等の種々の用途に応用が可能である。
また、無機質材料であるガラス及び鉱物質からなるため、加熱にも強くて耐熱性を有し、高い温度条件下でも使用可能である。このため、例えば、フィルタ、ブリッジ防止分散板として使用する場合において、更にその応用分野を広げることができる。即ち、耐熱性を有することから、例えば、耐熱性が必要とされる高熱焼却炉等のガス吸着や、ヒートシンクや、高温状態の排ガスから微細粉塵等を除去する高温濾過が可能なバグフィルタ、耐熱性が必要とされる粉体輸送用のブリッジ防止及び付着防止の分散板等としても利用することができるようになる。殊に、本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1は、上述の如く、高い機械的強度を有することから、例えば、バグフィルタとして利用した場合、繊維製のバグフィルタと比べて、逆洗に際しての目開きの変化、繊維の折損等のトラブルもなく、火炎したり逆洗したりすることで、長く使用することができ、更に、熱衝撃による破損を招く可能性も極めて少なく、急激な温度変化にも十分に耐えることができるので耐久性に優れる。また、フィルタの肉厚を薄くして通気抵抗を低くすることもでき、その結果、通気量を大きくしても通気圧損に十分耐えることができるようになるので、フィルタの小型化を図ることも可能になる。
さらに、後述するように、通水性を有することから、液体の不純物除去用のフィルタとしての使用も可能である。特に、鉱物質粒子としてのゼオライト粒子3はそれ自体イオン交換能を有することから、得られる多孔質ガラス焼結体1を食用油のろ過フィルタ等としても用いることも期待できる。
加えて、本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1に水を注ぐと、吸水して焼結体全体で保水し、更に水を注ぐと保水量を超えた水分は焼結体から排除されて滴り落ちることから、水分調節機能を有している。特に、鉱物質粒子としてのゼオライト粒子3は水分子等の吸着放出能にも優れていることから、本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1においては高い吸水性や保水性を確保できる。因みに、本発明者の実験研究によって、本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1によれば、その体積と同程度の吸水性(約50%の吸水率)を確保できることが確認されている。
このため、例えば、育苗床として使用するのにも最適である。特に、本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1によれば、その表面を鉱物質粒子としてのゼオライト3の粒子形状によって凹凸を有する状態(ざらざらした状態)に形成可能なため、植物の根を絡み易くすることができるし、大きな気孔には根を張ることもできることから、植物の成長を妨げることなく促進させることができる。しかも、上述の如く、耐熱性を有するため、使用後は熱水消毒や煮沸消毒、更には、火炎消毒を行うことによって繰り返しの使用が可能である。参考までに、本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1の上にカイワレ大根の種を蒔いて栽培したカイワレ大根の写真を図3に示す。図3に示されるように、本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1の表面には、ぎっしりとカイワレ大根が生育している。
また、吸水性や保水性を有していることから、雨水を一時的に貯留する貯水材として、水害の防止に貢献し、晴天時には貯留した雨水の蒸発冷却作用によって、周囲環境の温度上昇を抑制するといった用途としての使用も期待できる。
さらに、上述の如く、断熱性や保温性を有しているため、建造物の内外壁等の断熱材や蓄熱体として、また、防音性(遮音性)や吸音性を有しているため、防音材(遮音材)や吸音体(音響吸収体)として、加えて、鉱物質粒子としてのゼオライト3の粒子形状によって凹凸を有する状態(ざらざらした状態)に形成可能なため、階段・道路等に敷設される滑り止め付きタイル、陶器や瓦等として、その他にも多孔質であることから触媒保持体として、様々な用途への使用が可能である。特に、連通した気孔が形成されているため、吸音体としては、その共振点が広い周波数域に分散し、広い周波数域の音波を吸音できることが期待される。
そして、本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1によれば、上述の如く、気孔の寸法形状や気孔率を広い範囲で制御可能であるため、上記用途としての使用範囲は更に広がることになる。
また、本実施の形態によれば、粘土質鉱物粉としての蛙目粘土粉6が混合されているため、蛙目粘土粉6が水分等と反応して粘性を発揮し、プレス成形体10において可塑性を有し、更に焼結過程において焼き固まることによって、型崩れ等の寸法形状変化が防止される。
したがって、本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1によれば、平板状のみならず、図4に示したように、丸パイプ形状等の曲面形状や立体形状等の複雑な形状とすることも可能であり、所望の形状に形成するのが容易で、高い寸法精度を得ることができる。このため、更に多用途に使用することが可能となる。特に、図4に示すようなパイプ形状とすることで、バグフィルタや水質浄化フィルタの使用に好適である。また、焼成時でもより強固に形状を保持できるため、立てて焼成することが可能で焼結スペースを小さくできる。
そして、本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1は、このように、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子2を使用し、1000℃〜1200℃の範囲内と低い温度で焼結するため、焼結時のエネルギが少なくて済む。また、鉱物質粒子として安価な材料であるゼオライト3や、有機化合物粉として安価に入手できる木粉4や、粘土質鉱物粉として入手が容易で安価である蛙目粘土粉6を用いている。このため、製造コストが安価である。また、各原料が取扱い易いものでもあるため、製造が容易である。
このようにして、通気性を有すると共に、軽量でありながら優れた機械的強度を有し、低コストで製造でき、さらに、焼結体における気孔の寸法形状や気孔率を広い範囲で制御でき、多用途に使用可能な多孔質ガラス焼結体1となる。
なお、本実施の形態によれば、上述の如く、プレス金型を加熱したり冷却したりする必要がないので、プレス成形装置が簡単な構成で済むから、更に、低コスト化を図ることが可能である。また、常温でプレスするため、比較的厚めのものであっても容易に成形できて、厚みのある多孔質ガラス焼結体1を得ることができる。
また、本発明においては、ゼオライト3粒子等の鉱物質粒子の粒子径や粒子形状を変化させることで、表面の状態が比較的平滑なものから凹凸を有するものまで、多孔質ガラス焼結体1の表面形状を様々なものとすることが可能である。
以下、本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体及びその製造方法を更に具体化した実施例について、図1、図2、図5乃至図8を参照して説明する。
[実施例1]
最初に、本実施の形態の実施例1に係る多孔質ガラス焼結体及びその製造方法について説明する。
図1のフローチャートで示したように、まず、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子2、鉱物質粒子としてのゼオライト粒子3、有機化合物粉としての木粉4、発泡剤としての炭酸カルシウム5、粘土質鉱物粉としての蛙目粘土粉6を均一に混合して焼結原料混合工程(ステップS1)を実施し、次に、この焼結原料混合工程において得られた焼結原料混合物7にバインダ8を均一に混合するバインダ混合工程を実施してバインダ混合物9を得た(ステップS2)。これらの混合には精密分散混合機であるホソカワミクロ(株)製の横型タービュライザ(登録商標)TCX−8を用いた。
本実施例1においては、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子2として、ガラスカレットを粉末にしたものを使用した。このガラスカレット粉の粒子径をふるい試験で測定したところ、200μm未満であった。
また、ゼオライト粒子3としては、サン・ゼオライト工業(株)製の斜プチロル沸石系に属するサン・ゼオライトで、50メッシュアンダー〜150メッシュオーバーのもの(ふるい試験による粒子径は約200μm未満)を用いた。
木粉4としては、スギの間伐材・小径木・製材端材・樹皮・大鋸屑等の木屑を、破砕機(木材用クラッシャー)で粗粉砕して、この粗粉砕木粉を、熱風乾燥機によって水分20重量部以下に熱風乾燥し、微粉砕機で微粉砕してなる木粉を使用した。
ここで、微粉砕機としては、河本鉄工(株)製のミクロンコロイドミルを使用して、粉砕タービン羽の周速を50m/秒〜80m/秒として、微粉砕を行った。得られた木粉4の粒子径をふるい試験で測定したところ、100μm未満であった。
炭酸カルシウム5としては、日東粉化工業(株)製のNS#100(平均粒子径2.12μm)を用いた。
また、蛙目粘土粉6としては、(株)ヤマス製の土岐口特級蛙目粘土粉(通常、陶器に使用されるもの)を用いた。
そして、バインダ8としては、有機バインダであるポリオール樹脂及びイソシアネート樹脂を用いた。ポリオール樹脂としては、ポリオキシプロピレングリセルエーテルである三洋化成工業(株)製の「サンニックス(登録商標)GP−400」を使用した。また、イソシアネート樹脂としては、ポリエチレンポリフェニールポリイソシアネートであるBASF INOAC ポリウレタン(株)製の「ルプラネート(登録商標)M−20S」を使用した。
次に、こうして得られたバインダ混合物9を、プレス成形金型に投入して、プレス成形工程を実施した(ステップS3)。プレス成形機としては、(株)タナカカメの150トン粉末成形プレス機を使用して、プレス圧力を150kg/cm2 として常温でプレス成形した。これによって、プレス成形体10が得られた。特に、本実施例1で使用したプレス機によれば、成形途中にガス抜きが出来る機構が付いているため、より安定した高強度を有するプレス成形体10を成形することができ、多孔質ガラス焼結体1においてより安定した高強度を確保することができる。
なお、本実施例1においては、厚さ25mmの板状のプレス成形体10を成形したが、常温でプレス成形できるため、金型を大きくすれば、この150トンのプレス機を使用して、400mm×400mm×50mm厚までのプレス成形体10を得ることができる。また、キャビティ形状を有する金型等を使用して、プレス成型体10の表面に溝を複数本平行に形成することも可能である。
続いて、こうして得られたプレス成形体10を金型から離型し、温度制御電気炉を用いて焼結させる焼結工程を実施した(ステップS4)。この焼結工程においては、温度制御電気炉を開放系にし、温度制御電気炉内に常に空気が供給されるようにした。
本実施例1においては、図2に示したように、焼結工程の昇温プログラムとして、まず室温から300℃まで約50℃/hrで6時間かけて昇温して300℃で2時間保持し、更に、300℃から600℃まで50℃/hrで6時間かけて昇温して600℃で2時間保持し、続いて、600℃から900℃まで約50℃/hrで6時間かけて昇温して900℃で2時間保持し、最後に、900℃から1080℃まで約45℃/hrで4時間かけて昇温して1080℃で2時間保持した。そして、5時間程度で100℃まで徐冷した後、温度制御電気炉内から取り出した。
以上の工程によって、本実施の形態の実施例1に係る多孔質ガラス焼結体1を製造した。
このようにして製造された本実施例1に係る多孔質ガラス焼結体1は、通気性を有すると共に、軽量でありながら優れた機械的強度を有していた。
特に、本実施例1では、バインダ8として、ポリオール樹脂及びイソシアネート樹脂を使用したことから、ガラス粒子2、木粉4、ポリオール樹脂等との間に、強固なウレタン結合が形成され、それによって、プレス成形体10は確実に強固で緻密な状態になる。そして、この緻密なプレス成形体を焼結することによって、合成樹脂バインダが焼失し確実に連通した気孔が形成される。したがって、通気性を損なうことなく機械的強度を向上させることが可能である。
ここで、各原料についての配合例を比較例と比較しながら表1に示す。
表1に示されるように、実施例1に係る多孔質ガラス焼結体1は、通気性を有すると共に、優れた機械的強度を有しており、また、焼結過程における型崩れ等の寸法形状変化も防止されているのに対し、比較例1では、安定した高強度及び通気性を兼ね備えた焼結体を得ることが困難であった。また、焼結過程において型崩れ等の寸法形状変化が生じていることがあった。
具体的には、表1の比較例1−1乃至比較例1−8において示されるように、バインダ混合物9において、ガラス粒子2の含有量が15重量%未満であるとき、ガラス粒子2が少な過ぎて、ゼオライト粒子3同士が十分に結合されず、強度や純度が低下してしまうことがあり、一方、ガラス粒子2の含有量が60重量%を超えると、ガラス粒子2が多過ぎて軟化したガラスにより通気性が損なわれてしまったり、また発泡が多く強度が低下してしまったりすることがあった。
また、ゼオライト粒子3の含有量が10重量%未満であるとき、ゼオライト粒子3が少な過ぎて、強度が低下してしまうことがあり、一方、ゼオライト粒子3の含有量が60重量%を超えると、ゼオライト粒子3が多過ぎて、ゼオライト粒子3同士が十分に結合されず、焼結体の強度や純度が低下してしまうことがあった。
さらに、炭酸カルシウム5の含有量が5重量%未満であるとき、発泡量が少な過ぎるために気孔が軟化したガラスによって塞がれ、通気性が損なわれてしまうことがあり、炭酸カルシウム5の含有量が30重量%を超えると、発泡量が多過ぎて、ガラス内の独立気孔が増え、焼結体の強度が低下してしまうことがあった。
加えて、バインダ8の含有量が5重量%未満であるとき、バインダ8が少な過ぎてプレス成形体10が固まらず焼結前または焼結中にプレス成形体10が破損してしまうことがあり、バインダ8の含有量が50重量%を超えると、バインダ8が多過ぎて成形中に内部の空気やガスが抜けずにひび割れが生じることがあったり、また、焼結中にプレス成形体10が割れたり変形してしまったりすることがあった。
このため、バインダ混合物9において、ガラス粒子2の含有量が15重量%〜60重量%の範囲内であり、ゼオライト粒子3の含有量が10重量%〜60重量%の範囲内であり、炭酸カルシウム5の含有量が5重量%〜30重量%の範囲内であり、バインダ8の含有量が5重量%〜50重量%の範囲内であることで、確実に通気性と高強度を兼ね備え高純度の多孔質ガラス焼結体1を得ることができる。
なお、好ましくは、バインダ混合物9において、ガラス粒子2の含有量が20重量%〜55重量%の範囲内であり、ゼオライト粒子3の含有量が15重量%〜55重量%の範囲内であり、炭酸カルシウム5の含有量が7重量%〜25重量%の範囲内であり、バインダ8の含有量が7重量%〜45重量%の範囲内であることで、より確実に通気性と高強度を兼ね備え高純度の多孔質ガラス焼結体1を得ることができる。
また、表1の比較例1−9において示されるように、木粉4の含有量が50重量%を超えると、木粉4が多過ぎるために焼結中にプレス成形体10が破損してしまったり、ガラスやゼオライト粒子3の結合が少なく、焼結体の強度が低下してしまったりすることがあった。また、木粉4の燃焼により発生するガスや臭いが多く、それらの処理に手間がかかった。
このため、バインダ混合物9において木粉4の含有量が50重量%以下であることで、より確実に高強度の多孔質ガラス焼結体1を得ることができる
更には、木粉4の含有量が30重量%以下であることによって、より確実に安定した高強度を有する多孔質ガラス焼結体1を得ることができるため、より好ましい。
[実施例2]
続いて、本実施の形態の実施例2に係る多孔質ガラス焼結体及びその製造方法について説明する。
本実施例2に係る多孔質ガラス焼結体の製造方法は、上述した実施例1の製造方法とほぼ同様である。異なるのは、ポリオール樹脂及びイソシアネート樹脂の代わりに水を使用した点である。その他は、上記実施例1と同じであるから、その詳細な説明を省略する。
即ち、本実施例2においても、図1に示したように、まず、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子2、鉱物質粒子としてのゼオライト粒子3、有機化合物粉としての木粉4、発泡剤としての炭酸カルシウム5、粘土質鉱物粉としての蛙目粘土粉6を均一に混合して焼結原料混合工程(ステップS1)を実施し、次に、この焼結原料混合工程において得られた焼結原料混合物7にバインダ8としての水(水道水)を均一に混合するバインダ混合工程を実施してバインダ混合物9を得た(ステップS2)。これらの混合にも精密分散混合機であるホソカワミクロン(株)製の横型タービュライザ(登録商標)TCX−8を用いた。
ここで、本実施例2においては、バインダ8として水道水を用いたが、粘土質鉱物粉としての蛙目粘土粉6は水が加えられることで粘性を有するため、バインダとしても機能することになる。
その後の製造工程は、上記実施例1と同様にして実施し、本実施例2に係る多孔質ガラス焼結体1を得た。
なお、粘土質鉱物粉として蛙目粘土粉6を用い、バインダ8として水を使用した場合でも、プレス成形体10は、成形後に殆ど発熱せず、自然乾燥するので強制的に乾燥する必要も無く、直ぐに燒結炉へ入れて燒結可能である。
このようにして得られた本実施例2に係る多孔質ガラス焼結体1も、上記実施例1に係る多孔質ガラス焼結体1と同様に、通気性を有すると共に、軽量でありながら優れた機械的強度を有していた。
特に、本実施例2によれば、粘土質鉱物粉としてとして安価に入手できる蛙目粘土粉6と安価な水を使用するだけで、蛙目粘土がバインダとしても機能して原料同士が強固に結合するから、安価な材料で多孔質ガラス焼結体1を製造できることになる。また、作業性も良好である。
念のため、本実施例2における、各原料についての配合例を表2に示す。
本実施例2に係る多孔質ガラス焼結体1においても、バインダ混合物9において、ガラス粒子2の含有量が15重量%〜60重量%の範囲内であり、ゼオライト粒子3の含有量が10重量%〜60重量%の範囲内であり、炭酸カルシウム5の含有量が5重量%〜30重量%の範囲内であり、バインダ8の含有量が5重量%〜50重量%の範囲内であることで、確実に通気性と高強度を兼ね備え高純度の多孔質ガラス焼結体1を得ることができる。
また、参考までに、本実施例2に係る多孔質ガラス焼結体1の写真を図5に、焼結前後の光学式顕微鏡写真を図6に示す。図5及び図6に示されるように、本実施例2においては、鉱物質粒子として50メッシュアンダー〜150メッシュオーバーの粗いゼオライト粒子3を用いたため、粗いゼオライト粒子3が分布して、表面に凹凸が比較的多い焼結体となっていた。なお、図5において、右側の焼結体は、プレス成型工程(ステップS4)において、表面に格子状の凹凸を成形できるプレス金型を用いて成形されたものであり、表面に格子状の凹凸が形成されている。
[実施例3]
次に、本実施の形態の実施例3に係る多孔質ガラス焼結体及びその製造方法について説明する。
本実施例3に係る多孔質ガラス焼結体の製造方法は、上述した実施例2の製造方法とほぼ同様である。異なるのは、ゼオライト粒子3として、300メッシュアンダーの実施例2より細かい粒子径のものを使用した点である。その他は、上記実施例2と同じであるから、その詳細な説明を省略する。
300メッシュアンダーのゼオライト粒子3(ふるい試験法による粒子径は約50μm未満)を用いて、上述した実施例2と同じ製造方法で製造した本実施例3に係る多孔質ガラス焼結体1も、上記実施例2に係る多孔質ガラス焼結体1と同様に、通気性を有すると共に、軽量でありながら優れた機械的強度を有していた。
本実施例3においては、鉱物質粒子として300メッシュアンダーの細かいゼオライト粒子3を用いたため、図7及び図8に示されるように、焼結体の表面の凹凸が比較的平滑になっている。なお、図7において、右側の焼結体は、プレス成型工程(ステップS4)において、表面に格子状の凹凸を成形できるプレス金型を用いて成形されたものであり、表面に格子状の凹凸が形成されている。
なお、図6(b)と図8(b)とを比較すると、形成されている気孔の大きさが多少異なっている。このことから、ゼオライト粒子3の粒子径を変えることによっても、気孔の大きさを変化させることが可能であることが分かる。因みに、図6(b)と図8(b)に示した焼結体の各原料の配合量は共に、表2における実施例2−1に示した配合量である。
このように、本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1は、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子2と、鉱物質粒子としてのゼオライト粒子3と、有機化合物粉としての木粉4と、ガラス粒子2の軟化点以上の温度で分解する発泡剤としての炭酸カルシウム5と、バインダ8とが混合された混合物を、常温でプレス成形し、1000℃〜1200℃の範囲内で焼結してなるものである。
また、本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1の製造方法は、800℃未満の軟化点を有するガラス粒子2と、鉱物質粒子としてのゼオライト粒子3と、有機化合物粉としての木粉4と、ガラス粒子2の軟化点以上の温度で分解する発泡剤としての炭酸カルシウム5とを混合して焼結原料混合物7とする焼結原料混合工程(ステップS1)と、焼結原料混合物7をバインダ8と混合してバインダ混合物9とするバインダ混合工程(ステップS2)と、バインダ混合物9をプレス金型に充填して常温でプレス成形し、プレス成形体10とするプレス成形工程(ステップS3)と、プレス成形体10を1000℃〜1200℃の範囲内で焼結する焼結工程(ステップS4)とを具備するものである。
したがって、本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1及びその製造方法によれば、通気性を有すると共に、軽量でありながら優れた機械的強度を有するものとなり、多用途に使用可能でその応用範囲を拡大することができる。また、焼結時のエネルギが少なくて済み、低コストで製造が可能である。
特に、本実施の形態に係る多孔質ガラス焼結体1及びその製造方法によれば、粘土質混合物粉としての蛙目粘土粉6が混合されているため、焼結過程における型崩れ等の寸法形状変化を防止することができ、焼結体において安定した通気性及び高強度を確保することができる。
また、本実施の形態においては、原料の混合に精密分散混合機を用いたため、焼結前の混合物(焼結原料混合物7、バインダ混合物9)にて、原料が均一に分散混合され易い。よって、安定した通気性及び高強度が確保され純度が高い多孔質ガラス焼結体1を確実に得ることができる。
さらに、本実施の形態に係る実施例1乃至実施例3の多孔質ガラス焼結体1及びその製造方法によれば、バインダ混合物9において、ガラス粒子2の含有量が15重量%〜45重量%の範囲内であり、ゼオライト粒子3の含有量が7重量%〜40重量%の範囲内であり、炭酸カルシウム5の含有量が5重量%〜30重量%の範囲内であり、バインダ8の含有量が5重量%〜55重量%の範囲内である。
また、ガラス粒子2はふるい試験法による粒子径が500μm未満であり、ゼオライト粒子3はふるい試験法による粒子径が4mm未満であり、木粉4はふるい試験法による粒子径が500μm未満である。
加えて、プレス成形の圧力は、50kg/cm2 〜350kg/cm2 の 範囲内である。
したがって、安定した通気性及び高強度が確保され純度が高い多孔質ガラス焼結体1をより確実に得ることができる。
ここで、上記実施の形態及び実施例においては、鉱物質粒子としてゼオライト粒子3を使用し、有機化合物粉としての木粉4が配合されたものについて説明したが、ゼオライト粒子3は多孔質であるため、有機化合物粉としての木粉4及び有機バインダを混合していなくても、得られる焼結体は連通した気孔が確保されていて通気性を有するものとなる。即ち、本発明において、鉱物質粒子として多孔質であるものを用いない場合は、連通した気孔を確保するために、焼成過程において焼失して気孔を形成する木粉4のような有機化合物粉は必須の配合成分となるが、鉱物質粒子としてゼオライト粒子3のように多孔質のものを用いる場合、木粉4のような有機化合物粉は必須の配合成分とならない。しかし、鉱物質粒子としてゼオライト粒子3のように多孔質のものを用いる場合においても、木粉4のような有機化合物粉を加えることで、焼結体における気孔の寸法形状や気孔率を一段と広い範囲で制御でき、更に粒子径や流度分布や含有量を調節することによって、焼結体における気孔の寸法形状や気孔率をより広い範囲で制御することも可能となる。また、有機化合物粉の繊維質等により成形時における成形固化の強度が増すため、安定した形状や強度を確保できる。更には、プレス時のガスや空気抜きが容易となる。
なお、鉱物質粒子としては、ゼオライト粒子3の他に、例えば、瓦粉末等の陶磁器粉砕粒子、珪藻土粉末等の天然無機物粒子や、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al23)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZiO2)、窒化ケイ素(Si34)、炭化ケイ素(SiC)等のセラミックス粒子等の多孔質のもの、タルク(滑石)、マイカ(雲母)等の岩石粉末の天然無機物粒子や、磁器粉末等のセラミックス粒子等の無孔質のものも使用が可能である。特に、本発明者らの実験研究によって、入手が容易で安価である瓦粉末を用いた場合でも、ゼオライト粒子3と同じ良好な結果が得られることが確認されている。ゼオライト粒子3と同じく、瓦粉末も水分子等の吸着放出能に優れていることから、瓦粉末を用いることで焼結体において高い吸水性・保水性を確保できる。さらに、瓦粉末を使用することで、ゼオライト粒子3と同じく、バインダ8としてポリオールを用いた場合でもそれによって混合物が固まりにくくなることもない。なお、瓦粉末とは、瓦を細かく粉砕したものであって、この瓦粉末には、廃瓦粉砕品を用いることも可能である。
また、上記実施の形態及び実施例においては、有機化合物粉として木粉4を用いた場合について説明したが、1000℃〜1200℃の範囲内の温度まで昇温する焼結過程で焼失して気孔を形成するものであれば木粉4に限定されるものではなく、有機化合物粉として、例えば、椰子殻、胡桃殻や、穀物粉や、熱硬化性樹脂の粒子や、紙、合成繊維、木綿・麻・絹等の天然繊維、精製セルロース(CMC)等を微粉砕したもの等を使用することも可能である。しかし、有機化合物粉として、大鋸屑、間伐材のチップ、小径木、製材端材、樹皮等の木屑を粉砕機で微粉砕した、所謂、木粉4を用いた方がコストダウンや環境保全の貢献にも繋がるため好ましい。
さらに、上記実施の形態及び実施例においては、発泡剤として炭酸カルシウム5を用いた場合について説明したが、本発明を実施する場合には、焼成過程において、ガラス粒子2の軟化点以上の温度で熱分解してガスを発生させるものであればよく、例えば、ドロマイト(苦土石灰)、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸アルミニウム化合物、炭化ケイ素等も使用可能であり、これらを併用して用いることも可能である。しかし、中でも、炭酸カルシウムやドロマイトは、安価に入手でき、更に、比較的高温で熱分解されるものである。よって、これらを用いた方が、1000℃〜1200℃に焼結過程において、発泡剤としての機能を十分に無駄なく発揮させることができ、焼結体において安定した通気性及び高純度を確保できることから、好ましい。
また、上記実施の形態及び実施例においては、焼結過程における型崩れ等の寸法形状変化を防止可能な粘土質鉱物粉として蛙目粘土粉6を用いた場合について説明したが、本発明を実施する場合には、寸法形状変化を防止できるものであればよく、例えば、ベントナイト、カオリン、スメクタイト、モンモリロナイト等の粘土粉末を用いることも可能である。特に、ベントナイト、カオリンの粘土粉末は、蛙目粘土粉6と同様、入手が容易で安価であり、また、焼結過程おける形状変化の防止にも優れることから、これらを用いても仕上がり寸法精度が高い焼結体を得ることが可能である。なお、粘土質鉱物粉には、焼結体において刃物等による切削が容易とされるように、大きい粒子物等の不純物が少ないものを選択することが望ましい。
なお、本発明の実施の形態及び実施例で挙げている数値は、その全てが臨界値を示すものではなく、ある数値は実施に好適な適正値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
1 多孔質ガラス焼結体
2 ガラス粒子
3 ゼオライト粒子(鉱物質粒子)
4 木粉(有機化合物粉)
5 炭酸カルシウム(発泡剤)
6 蛙目粘土粉(粘土質鉱物粉)
7 焼結原料混合物
8 バインダ
9 バインダ混合物
10 プレス成形体

Claims (28)

  1. 800℃未満の軟化点を有するガラス粒子と、多孔質の鉱物質粒子と、前記ガラス粒子の軟化点以上の温度で分解する発泡剤と、有機バインダ及び/または無機バインダとが混合された混合物を、常温でプレス成形し、1000℃〜1200℃の範囲内で焼結してなることを特徴とする多孔質ガラス焼結体。
  2. 前記混合物には、更に、有機化合物粉が混合されたことを特徴とする請求項1に記載の多孔質ガラス焼結体。
  3. 800℃未満の軟化点を有するガラス粒子と、鉱物質粒子と、有機化合物粉と、前記ガラス粒子の軟化点以上の温度で分解する発泡剤と、有機バインダ及び/または無機バインダとが混合された混合物を、常温でプレス成形し、1000℃〜1200℃の範囲内で焼結してなることを特徴とする多孔質ガラス焼結体。
  4. 前記混合物には、更に、粘土質鉱物粉が混合されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の多孔質ガラス焼結体。
  5. 前記混合物において、前記ガラス粒子の含有量が15重量%〜60重量%の範囲内であり、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子の含有量が10重量%〜60重量%の範囲内であり、前記発泡剤の含有量が5重量%〜30重量%の範囲内であり、前記有機バインダ及び/または無機バインダの含有量が5重量%〜50重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の多孔質ガラス焼結体。
  6. 前記混合物において、前記有機化合物粉の含有量が50重量%以下であることを特徴とする請求項2、請求項4または請求項5の何れか1つに記載の多孔質ガラス焼結体。
  7. 前記ガラス粒子はふるい試験法による粒子径が500μm未満であり、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子はふるい試験法による粒子径が4mm未満であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1つに記載の多孔質ガラス焼結体。
  8. 前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子として、ゼオライト粒子及び/または瓦粉末を用いたことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1つに記載の多孔質ガラス焼結体。
  9. 前記有機化合物粉は、ふるい試験法による粒子径が500μm未満であることを特徴とする請求項2乃至請求項8の何れか1つに記載の多孔質ガラス焼結体。
  10. 前記有機化合物粉として、木粉を用いたことを特徴とする請求項2乃至請求項9の何れか1つに記載の多孔質ガラス焼結体。
  11. 前記発泡剤として、炭酸カルシウム及び/またはドロマイトを用いたことを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか1つに記載の多孔質ガラス焼結体。
  12. 前記粘土質鉱物粉として、蛙目粘土の粉末、ベントナイトの粉末、カオリンの粉末から選ばれる少なくとも1つを用いたことを特徴とする請求項4乃至請求項11の何れか1つに記載の多孔質ガラス焼結体。
  13. 前記プレス成形の圧力は、50kg/cm2 〜350kg/cm2 の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項12の何れか1つに記載の多孔質ガラス焼結体。
  14. 前記混合物の作製に、精密分散混合機を用いたことを特徴とする請求項1乃至請求項13の何れか1つに記載の多孔質ガラス焼結体。
  15. 800℃未満の軟化点を有するガラス粒子と、多孔質の鉱物質粒子と、前記ガラス粒子の軟化点以上の温度で分解する発泡剤とを混合して焼結原料混合物とする焼結原料混合工程と、
    前記焼結原料混合物を有機バインダ及び/または無機バインダと混合してバインダ混合物とするバインダ混合工程と、
    前記バインダ混合物をプレス金型に充填して常温でプレス成形し、プレス成形体とするプレス成形工程と、
    前記プレス成形体を1000℃〜1200℃の範囲内で焼結する焼結工程と
    を具備することを特徴とする多孔質ガラス焼結体の製造方法。
  16. 前記焼結原料混合物には、更に、有機化合物粉が混合されたことを特徴とする請求項15に記載の多孔質ガラス焼結体の製造方法。
  17. 800℃未満の軟化点を有するガラス粒子と、鉱物質粒子と、有機化合物粉と、前記ガラス粒子の軟化点以上の温度で分解する発泡剤とを混合して焼結原料混合物とする焼結原料混合工程と、
    前記焼結原料混合物を有機バインダ及び/または無機バインダと混合してバインダ混合物とするバインダ混合工程と、
    前記バインダ混合物をプレス金型に充填して常温でプレス成形し、プレス成形体とするプレス成形工程と、
    前記プレス成形体を1000℃〜1200℃の範囲内で焼結する焼結工程と
    を具備することを特徴とする多孔質ガラス焼結体の製造方法。
  18. 前記焼結原料混合物には、更に、粘土質鉱物粉が混合されたことを特徴とする請求項15乃至請求項17の何れか1つに記載の多孔質ガラス焼結体の製造方法。
  19. 前記バインダ混合物において、前記ガラス粒子の含有量が15重量%〜60重量%の範囲内であり、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子の含有量が10重量%〜60重量%の範囲内であり、前記発泡剤の含有量が5重量%〜30重量%の範囲内であり、前記有機バインダ及び/または無機バインダの含有量が5重量%〜50重量%の範囲内であることを特徴とする請求項15乃至請求項18の何れか1つに記載の多孔質ガラス焼結体の製造方法。
  20. 前記混合物において、前記有機化合物粉の含有量が50重量%以下であることを特徴とする請求項16、請求項18または請求項19の何れか1つに記載の多孔質ガラス焼結体の製造方法。
  21. 前記ガラス粒子はふるい試験法による粒子径が500μm未満であり、前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子はふるい試験法による粒子径が4mm未満であることを特徴とする請求項15乃至請求項20の何れか1つに記載の多孔質ガラス焼結体の製造方法。
  22. 前記多孔質の鉱物質粒子または前記鉱物質粒子として、ゼオライト粒子及び/または瓦粉を用いたことを特徴とする請求項15乃至請求項21の何れか1つに記載の多孔質ガラス焼結体の製造方法。
  23. 前記有機化合物粉は、ふるい試験法による粒子径が500μm未満であることを特徴とする請求項16乃至請求項22の何れか1つに記載の多孔質ガラス焼結体の製造方法。
  24. 前記有機化合物粉として、木粉を用いたことを特徴とする請求項16乃至請求項23の何れか1つに記載の多孔質ガラス焼結体の製造方法。
  25. 前記発泡剤として、炭酸カルシウム及び/またはドロマイトを用いたことを特徴とする請求項15乃至請求項24の何れか1つに記載の多孔質ガラス焼結体の製造方法。
  26. 前記粘土質鉱物粉として、蛙目粘土の粉末、ベントナイトの粉末、カオリンの粉末から選ばれる少なくとも1つを用いたことを特徴とする請求項18乃至請求項25の何れか1つに記載の多孔質ガラス焼結体の製造方法。
  27. 前記プレス成形工程におけるプレス成形の圧力は、50kg/cm2 〜350kg/cm2 の範囲内であることを特徴とする請求項15乃至請求項26の何れか1つに記載の多孔質ガラス焼結体の製造方法。
  28. 前記焼結原料混合工程及び前記バインダ混合工程においては、精密分散混合機を用いて混合したことを特徴とする請求項15乃至請求項27の何れか1つに記載の多孔質ガラス焼結体の製造方法。
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WO2014003490A1 (ko) * 2012-06-28 2014-01-03 단국대학교 산학협력단 유색발포유리의 제조방법 및 그 방법에 의해 제조된 유색발포유리
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