JP2012047087A - スペーサ - Google Patents
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Abstract
【課題】シリンダボア全体において、冷却性能をシリンダボア毎に略均等化すること。
【解決手段】スペーサ10は、(1番気筒♯1を覆う排気側及び吸気側におけるスペーサ10の断面積の和)≒(2番気筒♯2を覆う排気側及び吸気側におけるスペーサ10の断面積の和)≒(3番気筒♯3を覆う排気側及び吸気側におけるスペーサ10の断面積の和)≒(4番気筒♯4を覆う排気側及び吸気側におけるスペーサ10の断面積の和)、という等式の関係が成立するように設定されている。
【選択図】図1
【解決手段】スペーサ10は、(1番気筒♯1を覆う排気側及び吸気側におけるスペーサ10の断面積の和)≒(2番気筒♯2を覆う排気側及び吸気側におけるスペーサ10の断面積の和)≒(3番気筒♯3を覆う排気側及び吸気側におけるスペーサ10の断面積の和)≒(4番気筒♯4を覆う排気側及び吸気側におけるスペーサ10の断面積の和)、という等式の関係が成立するように設定されている。
【選択図】図1
Description
本発明は、例えば、車両用エンジン等の内燃機関を冷却するウォータージャケット内に挿入されるスペーサに関する。
従来から、例えば、水冷式多気筒内燃機関を構成するシリンダブロック及びシリンダヘッドには、内部を空洞化したウォータージャケットが形成され、前記ウォータージャケット内に冷却水を流通させることにより、燃焼室周りや点火プラグ周りのシリンダブロック及びシリンダヘッドの所定部位を適宜冷却している。
例えば、特許文献1には、シリンダボア周囲に形成されるウォータージャケット内にスペーサを挿入し、シリンダボア間よりもスラスト・反スラスト側のスペーサの熱伝導率を材料又は構造上低くすることによって、シリンダボア壁温を均一化し前記シリンダボアが不均一に変形することを低減するようにしたシリンダブロックの冷却構造が開示されている。
しかしながら、特許文献1では、スペーサによって単一のシリンダボア壁温の高低を均等化することが開示されているが、複数の各シリンダボア間における冷却作用を均等化することについては、何ら開示乃至示唆されていない。この結果、特許文献1に開示された冷却構造では、各シリンダボア間において冷却差が発生するおそれがある。
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、シリンダボア全体において、冷却性能をシリンダボア毎に略均等化することが可能なスペーサを提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明は、内燃機関の直列に連なる複数のシリンダボアの周囲に形成されるウォータージャケット内に挿入され、前記ウォータージャケットの深さ方向の中間位置を覆うスペーサであって、前記スペーサの、前記シリンダボアの側方を覆う箇所の断面積の和が略等しく設定され、前記スペーサの断面積は、冷却水流れの上流側から下流側に向けて漸増するように設定されることを特徴とする。
本発明によれば、スペーサの、シリンダボアの側方を覆う箇所の断面積の和が略等しく設定されるため、シリンダボア全体において、冷却性能をシリンダボア毎に略均等化することができる。また、スペーサの断面積を、冷却水流れの上流側から下流側に向けて漸増することで、冷却水が流れる流路を徐々に狭めて流速の低下を抑制し、冷却効率の低下を抑えることができる。この場合、ウォータージャケットの容量は、ウォータージャケットの気筒間部位で略一定に設定されていると共に、前記気筒間部位を除いた一般部位においても略一定に設定されているものとする。
本発明において、スペーサの断面積の和が略等しい範囲とは、各気筒番号に対応するスペーサの断面積の和の平均値を求め、この平均断面積から±20パーセント以内の断面積をいう。このような平均断面積から±20パーセント以内の断面積の範囲内であっても、シリンダボア毎の冷却性能にそれほど大差がなく、シリンダボア毎の冷却性能の略均等化を達成することができるからである。
なお、シリンダボアの側方を覆う箇所におけるスペーサの断面積の和とは、例えば、排気弁が配置された排気側の部位におけるシリンダボアを覆うスペーサの断面積と、吸気弁が配置された吸気側の部位におけるシリンダボアを覆うスペーサの断面積との合計をいう。また、断面積とは、シリンダボアの中心軸線T2を通り、スペーサを鉛直面で切断したときの切断面(縦断面)の面積をいう。
本発明によれば、スペーサは、ウォータージャケットの深さ方向の上縁部が冷却水流れの上流側から下流側に向けて上方へ傾斜し、ウォータージャケットの深さ方向の下縁部が冷却水流れの上流側から下流側に向けて下方へ傾斜することにより、スペーサの上縁部に沿って流れる冷却水の流路及びスペーサの下縁部に沿って流れる冷却水の流路が徐々に狭まり、より一層確実に冷却水の流速低下を抑制することができる。
本発明によれば、シリンダボア全体において、冷却性能をシリンダボア毎に略均等化することが可能なスペーサを得ることができる。
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るスペーサが組み込まれたエンジンの概略斜視図、図2は、前記エンジンを構成するシリンダブロック及びスペーサの分解斜視図、図3(a)は、図1に示されるスペーサの斜視図、図3(b)は、図3(a)の矢印Z側からみた斜視図である。
図1に示されるように、本発明の実施形態に係るスペーサ10が組み込まれたエンジン(内燃機関)12は、気筒列方向(シリンダボア列方向、図1中の一点鎖線T1参照)に沿って4つの気筒(シリンダボア)が直線状に配置された直列4気筒エンジンからなり、図示しない車両のエンジンルーム内に設置される。この4つの気筒は、後記する冷却水入口20aに近接する側から、順に、1番気筒♯1、2番気筒♯2、3番気筒♯3、4番気筒♯4として、以下説明する(図2(b)、図6参照)。このエンジン12は、例えば、アルミニウム合金製のシリンダブロック14と、前記シリンダブロック14の上側に組み付けられる、例えば、アルミニウム合金製のシリンダヘッド16と、前記シリンダヘッド16の上側に装着される図示しないヘッドカバーとによって構成される。
図1において、気筒列方向(T1)に沿った一方側は、図示しないチェーンケース内にタイミングベルト(タイミングチェーン)等が収納された「タイミングトレーン側」を示し、気筒列方向(T1)に沿った他方側は、図示しないディファレンシャル機構が配設された「トランスミッション側」を示している。また、図1において、気筒列方向(T1)と直交する一側は、図示しない吸気弁が配置される「吸気側」を示し、気筒列方向(T1)と直交する他側は、図示しない排気弁が配置される「排気側」を示している。
なお、本実施形態では、スペーサ10が組み込まれるエンジンとして、直列4気筒エンジンを例に挙げて以下説明するが、これに限定されるものではなく、例えば、Vバンクに沿って複数の気筒が配置されたV型多気筒エンジンや水平対向エンジン等にも適用されると共に、単気筒や複数気筒等の気筒数も問わない。図1中の一点鎖線T1は、後記するクランクシャフト62(図7参照)と平行な方向を示している。
以下の説明において、上下方向とは、シリンダボアの軸線方向(図1中の一点鎖線T2参照、シリンダボアの中心軸線T2ともいう、)をいい、シリンダヘッド16側を上側として説明する。また、内側方向とは、シリンダボアの中心軸線T2に接近する方向をいい、外側方向とは、前記シリンダボアの中心軸線T2から離間する方向をいう。さらに、周方向とは、前記シリンダボアの中心軸線T2又はシリンダボアを囲む方向をいう。さらにまた、気筒列方向(T1)とシリンダボアの軸線方向(T2)の両方に直交する方向を、ボア直交方向(図1中の一点鎖線T3参照)という。またさらに、シリンダボアの中心軸線T2と平行で、後記するピストン60がシリンダボアに沿って摺動変位する方向をピストン摺動方向(図19(a)参照)という。
シリンダブロック14の内部には、シリンダブロック14のデッキ面に開口するオープンデッキタイプからなり、冷却水が流通するウォータージャケット18が設けられる。なお、シリンダヘッド16側のウォータージャケットは図示を省略している。また、シリンダブロック14の気筒列方向に沿った一端側には、図示しないウォーターポンプを介して、図示しないラジエータから送給された冷却水をウォータージャケット18内へ供給する冷却水入口20aと、前記冷却水入口20aから導入された冷却水がウォータージャケット18に沿って複数の気筒を周回した後、シリンダヘッド16側の図示しないウォータージャケットへ冷却水を導出する複数の冷却水出口20bと、前記冷却水入口20aから導入された冷却水がウォータージャケット18側への流通が回避(バイパス)されて、冷却水がシリンダヘッド16側へ直接的に導出される冷却水出口20cとが設けられる。なお、前記複数の冷却水出口20b、20cは、後記するガスケット70に形成された孔部によって構成される(図2参照)。
シリンダブロック14のウォータージャケット18は、図6に示されるように(図2も併せて参照)、平面視して、気筒列方向に沿った4つのシリンダボアの略外周を囲繞するように連続し、且つ周回するように形成される。前記シリンダブロック14の上下方向において、前記ウォータージャケット18の上端部は、開口して形成されると共に、前記ウォータージャケット18の下端部(底壁)は、シリンダブロック14の内部で閉塞するように形成される。
図7は、シリンダボアの中心軸線に沿ったシリンダブロックの縦断面図である。この場合、図7に示されるように、ウォータージャケット18は、シリンダブロック14の上端面に開口部18aを有し、シリンダブロック14の内部で所定間隔離間し相互に対向して形成された内側側壁(シリンダボア側に位置する内壁)18b及び外側側壁(シリンダブロック14の外壁側に位置する外壁)18cと、前記内側側壁18b及び前記外側側壁18cを下部側で連結する底壁18dとによって形成された空間部によって構成される。
また、ウォータージャケット18は、シリンダブロック14の上下方向に沿った縦断面において、シリンダブロック14の上端面から下端面(底面)に向かってシリンダブロック14の内側側壁18bと外側側壁18cとの離間間隔D(図7参照)が徐々に幅狭となって先細りするテーパ形状に形成されている。換言すると、ウォータージャケット18は、シリンダブロック14の開口部18aから深さ方向に向かう底壁18dまで徐々に先細りとなるように形成されている。
シリンダボアには、薄肉の円筒体からなり、シリンダボア側壁として機能するシリンダライナ22が装着されている。また、シリンダブロック14とシリンダヘッド16との間には、ガスケット70(図2参照)が介装され、前記ガスケット70によってシリンダブロック14の上端面がシールされる。
シリンダブロック14のウォータージャケット18内には、樹脂製のスペーサ10が挿入され、前記スペーサ10とウォータージャケット18の各壁面とガスケット70との間で、冷却水を流通させるための流路が形成される。この流路は、ウォータージャケット18において、多量の、または大部分の冷却水を流通させるための主流路として機能する上部側流路24a及び下部側流路24bと、前記上部側流路24aと前記下部側流路24bとの間に形成され副流路として機能する中間流路24cとから構成される(後記する図7〜図14参照)。なお、本実施形態では、図示しない成形金型を用いて射出成形により製造された樹脂製のスペーサ10を例示しているが、例えば、鋳造成形やブロー成形等によって形成された金属製のスペーサを用いてもよい。
前記スペーサ10は、図3又は図6に示されるように、平面視して4つの帯状円環が連続して一体的に結合された筒状体からなり、内方に向って相互に近接するようにくびれたくびれ形状部25を有するスペーサ本体10aと、気筒列方向に沿った前記スペーサ本体10aの両端部の長溝26(図2参照)に装着される複数の弾性体28とを備える。
スペーサ本体10aは、図3、図5、図8、図10、図12及び図14に示されるように、中間部100と、前記中間部100の上方に設けられた上傾斜部102aと、前記中間部100の下方に設けられた下傾斜部102bと、前記上傾斜部102aの上方に設けられた上延出部104aと、前記下傾斜部102bの下方に設けられた下延出部104bとを有する。なお、スペーサ本体10aの各部位における厚さ寸法及びシリンダボアの中心軸線に沿った長さ等は、後記で詳細に説明する。
スペーサ本体10aの上面11であって気筒列方向に沿った一端部(図1のタイミングプレート側)には、上方向に向かって延在する第1延出部30が設けられ、気筒列方向に沿った他端部(図1のトランスミッション側)には、前記第1延出部30と対向する第2延出部32が上方向に向かって延在して設けられる。なお、気筒列方向の両端部に設けられた前記第1延出部30及び第2延出部32は、それぞれ同一の高さ寸法に設定される(図4参照)。
図2又は図3に示されるように、1番気筒♯1を囲繞するスペーサ本体10aにおいて、前記第1延出部30から延在し冷却水入口20aに近接する部位には、前記スペーサ本体10aから(図1の矢印で示される)排気側に向かって所定長だけ突出してウォータージャケット18の外側側壁18cに当接することにより、冷却水入口20a側の流路と冷却水排出口20b側の流路とを仕切る仕切り用壁部34が設けられる。
この仕切り用壁部34は、図4(a)に示されるように、シリンダボアの中心軸線を通る鉛直面に対して、交差する傾斜面を有し、ウォータージャケット18への入口側の流路と出口側の流路とを仕切る機能を発揮するものである。冷却水入口20aから導入された冷却水は、前記仕切り用壁部34が障害となってスペーサ本体10aの外面とウォータージャケット18の外側側壁18cとの間に沿って流通することが阻止されると共に、仕切り用壁部34を所定角度だけ傾斜させることにより、直近で上方に設けられた冷却水出口20cへの流れを促進して、冷却水出口20bを迂回したバイパス流路を形成するものである。
前記仕切り用壁部34に近接するスペーサ本体10aの下面13には、略半円状に湾曲して形成された切り欠き部35が設けられる。この切り欠き部35は、ボア直交方向T3において冷却水入口20aと対応する位置に設けられ、冷却水入口20aの形状に対応してスペーサ本体10aの一部を略半円状に切り欠くことにより冷却水入口20aから導出される冷却水の流れを妨げることなく、冷却水の圧力損失を抑制することができる。
図1の排気側の方向におけるスペーサ本体10aの側面であって、1番気筒♯1と2番気筒♯2との間の気筒間部位から2番気筒♯2と3番気筒♯3との間の気筒間部位までの範囲には、傾斜勾配が異なる2段の傾斜面を有する第1スロープ37及び第2スロープ39が設けられる(図2〜図5参照)。この第1スロープ37及び第2スロープ39は、冷却水入口20aから導入された冷却水をガスケット70側のスペーサ本体10aの上面11方向へ誘導するために設けられるものである。
この場合、図4に示されるように、第1スロープ37のスタート位置37aを、第1気筒♯1と第2気筒♯2との間の気筒間部位に設け、第2スロープ39のエンド位置39bを、第2気筒♯2と第3気筒♯3との間の気筒間部位に設けることにより、冷却水が傾斜面に沿って流れることによって発生する圧力損失を抑制することができる。各気筒間の気筒間部位では、気筒間部位を除いた一般部位と比較してウォータージャケット18の流路幅が広くなり冷却水の流通量が増大して圧力損失を抑制することができるからである。
また、第1スロープ37の傾斜面を比較的緩やかな傾斜勾配とし、第2スロープ39の傾斜面を比較的急な傾斜勾配に設定することにより、冷却水入口20aから導入された冷却水が最初の傾斜面である第1スロープ37に沿って流れやすくなるようにしている。
さらに、傾斜勾配が異なる多段スロープ(第1スロープ37及び第2スロープ39)とすることにより、スタート位置37aとエンド位置39bが同一で傾斜勾配が一定の単一のスロープ(図示せず)で形成した場合と比較して、第1スロープ37の傾斜勾配を小さく設定して第1スロープ37側への冷却水の流れを促進させることができる。
さらにまた、第1スロープ37と第2スロープ39との傾斜勾配の切換位置(図4(a)に示される第1スロープ37のエンド位置37bと第2スロープ39のスタート位置39aとの間)は、冷却水の流れがスペーサ10側に向かって密接するように流通する、第2気筒♯2のシリンダボアの中心軸線T2(図4(a)参照)よりも上流側に設定されるとよい。仮に、第2気筒♯2のシリンダボアの中心軸線T2(図4(a)参照)よりも下流側に設定した場合、冷却水の流れがウォータージャケット18の外側側壁18cに沿って流れようとするため、冷却水の流れ方向を上方に向って変更しようとする作用が低減されるからである。
図3に示されるように、スペーサ本体10aの内壁で後記する中間部100(図19参照)には、シリンダボアの中心軸線と略平行に延在する複数の縦リブ41が膨出形成される。この縦リブ41は、ボア直交方向(図1のT3参照)に対向して設けられ、中間流路24cにおけるウォータージャケット18の内側側壁18bとスペーサ本体10aとの間を流通する冷却水の流れを遮る(妨害する)ことにより、主流路として機能する上部側流路24a及び下部側流路24b側の方向へ冷却水を誘導する作用をなす。
図4に示されるように、スペーサ本体10aの上面11を徐々に上方に向かう傾斜面に設定することにより、ウォータージャケット18内の上部側流路24aを流通する冷却水をシリンダヘッド16側に向かって上昇させることができる。この結果、スペーサ本体10aの上面11を上方に向かう傾斜面で上げていくことにより、シリンダブロック14側の冷却水の流速が低下することを回避して、特に、下流側における上部側流路24aの冷却水の流速低下を減少させることができる。換言すると、冷却水がガスケット70に形成された孔部を介してシリンダヘッド16側のウォータージャケットへ導出されることにより、シリンダブロック14側のウォータージャケット18を流通する冷却水の流量が低下し、冷却水の流速も低下するが、スペーサ本体10aの上面11を徐々に上げていくことにより、冷却水の流速低下を減らすことができる。
これとは反対に、スペーサ本体10aの下面13をウォータージャケット18の底壁18dに向けて徐々に下がる傾斜面とすることにより、特に、下流側における下部側流路24bの冷却水の流速低下を減少させることができる。なお、図4(a)、(b)等において示される「G面」は、ガスケット70の下面を示し、他の図面においても同様である。
具体的には、スペーサ10の上面11は、図4に示されるように、ウォータージャケット18に沿って流れる冷却水の上流側(第2スロープ39のエンド位置39b近傍部位)から下流側(冷却水出口20b)に向けて徐々にシリンダブロック14のウォータージャケット18の開口部18aへ近づくように上方向に向かって一定の勾配で傾斜する傾斜面で形成される。一方、スペーサ10の下面13は、前記上面11とは反対に、ウォータージャケット18に沿って流れる冷却水の上流側(第2スロープ39のスタート位置39a)から下流側(冷却水出口20b)に向けて徐々にシリンダブロック14のウォータージャケット18の底壁18dに近づくように下方向に向って一定の勾配で傾斜する傾斜面で形成される。
スペーサ10の上面11及び下面13をこのような上方向及び下方向に向かう一定勾配の傾斜面とすることにより、ウォータージャケット18の上流から下流へ向う冷却水の流れによってスペーサ10を下方側へ向って押圧する力と上方側へ向かって押圧する力とがそれぞれ発生して相殺される。この場合、上面11の傾斜角度を下面13の傾斜角度よりも大きく設定することによりスペーサ10を下方側へ向って押圧する力が作用し、前記スペーサ10を安定させることができる。なお、図4中では、スペーサ10の上面11を、便宜上、スペーサ10の上流側の上面11aと下流側の上面11bとに分けて示し、同様に、スペーサ10の下面13を、スペーサ10の上流側の下面13aと下流側の下面13bとに分けて示している。
図3に示されるように、スペーサ本体10aの下部には、前記第1延出部30の下方側に向かって延在する単一の脚部36aと、前記第2延出部32の下方側に向かって延在し気筒列方向で対向する一対の他の脚部36b、36bとを有する。上下方向に沿って連続する第1延出部30及び単一の脚部36aには、上部側と下部側とにそれぞれ矩形状の窓部40が貫通して形成され、前記各窓部40には、後記する弾性体28の係止部28d(図17参照)がそれぞれ係止される。
また、他の一対の脚部36b、36bは、周方向に分岐して設けられ、分岐する一方の脚部36bと他方の脚部36bとの間には、上下方向に沿って矩形状に延在するスリット38が形成される(図3参照)。前記スリット38の上部には、矩形状の窓部40が貫通して形成され、前記窓部40には、後記する弾性体28の係止部28d(図18参照)が係止される。
スペーサ本体10aの気筒列方向に沿った一端部側(タイミングトレーン側)には、上下方向に沿って延在しウォータージャケット18の内側側壁18bに向かって膨出する膨出部からなり、一対の弾性体28、28が上部側及び下部側にそれぞれ同軸状に装着される弾性体装着部43が設けられる。また、スペーサ本体10aの気筒列方向に沿った他端部(トランスミッション側)の中央部には、スリット38を介して単一の弾性体28が装着される弾性体装着部45が設けられる。
なお、タイミングトレーン側の弾性体装着部43は、近接部位に冷却水入口20a及び冷却水出口20b、20cが設けられて位置精度をだすために、上下方向に沿った同軸状に所定間隔離間して一対の弾性体28、28が装着されることが好ましいが、トランスミッション側の弾性体28と同様に、単一の弾性体28が上下方向の中央に装着されるようにしてもよい。
図17及び図18は、弾性体装着部における弾性体の装着構造を示したものである。なお、前記弾性体装着部43、45における弾性体28の装着構造は、それぞれ同一構造からなるため、膨出部からなる弾性体装着部43に弾性体28が装着される場合を例示して、その他の説明を省略する。
弾性体装着部43には、図17(b)に示されるように、水平方向に沿った横断面が略T字状からなり上下方向に沿って延在する長溝26が形成される。この長溝26は、図17(c)に示される横断面において、ウォータージャケット18の内側側壁18bに向って開口する縦長開口部26aと、前記縦長開口部26aを間にして連続する一対の側方溝部26bとから構成される。
弾性体28は、例えば、ゴム製材料で形成された矩形体からなり、図17(a)に示されるように、中心軸線Hの両側に前記中心軸線Hに沿って延在する薄肉状の薄肉側部28a、28aと、前記薄肉側部28a、28aの間に設けられ中心軸線Hに沿って延在する厚肉状の厚肉矩形部28bと、前記厚肉矩形部28bに突出して設けられる突条部28cと、前記突条部28cが設けられた側と反対側(背面側)に設けられ、中心軸線Hと直交する方向に延在する係止部28dとを有する。前記弾性体28の横断面形状は、図17(c)に示されるように、長溝26に合致する(長溝26の形状に対応する)略T字状に形成される。
弾性体28の突条部28cは、厚肉矩形部28bから外方に向って突出する頂部を有し、ウォータージャケット18の内側側壁18bに対して接触する直線状の稜線部28eが設けられる。なお、突条部28cの稜線部28eとウォータージャケット18の内側側壁18bとの接触具合(接触状態)については、後記する。この突条部28cは、三角柱状に形成され(図17(c)参照)、密着部として機能するものである。前記突条部28cの稜線部28eに沿った傾斜角度は、ウォータージャケット18の内側側壁18bの縦断面(シリンダボアの中心を通る縦断面)における傾斜角度と異なるように設定されている。換言すると、突条部28cの稜線部28eにおける稜線は、ウォータージャケット18の内側側壁18bの縦断面(シリンダボアの中心を通る縦断面)と非平行で交差状に設定されている。
この場合、弾性体28の突条部28cは、スペーサ本体10aの長溝26内に装着された際、縦長開口部26aを通じて内周側に露呈して、ウォータージャケット18を構成する内側側壁18bに対して接触するように設けられる。
また、突条部28cの稜線部28eにおける稜線を、ウォータージャケット18の内側側壁18bの縦断面と非平行で交差状に設定することにより、前記突条部28cのウォータージャケット18の内側側壁18bに対する密着度及び荷重がスペーサ10の挿入具合に応じて徐々に増加するようにしているため、挿入性を良好とすることができる共に、突条部28cを有する弾性体28の変形を極力阻止して弾性体28への影響を抑制することができる。
例えば、弾性体28が装着されたスペーサ10をウォータージャケット18内へ挿入する際、ウォータージャケット18の上部側の開口部18aの部位では、内側側壁18bと弾性体28の突条部28cとの当たり始めが点接触状態であるのに対し、スペーサ10をウォータージャケット18の下部側へ向って徐々に挿入するにつれて弾性体28の突条部28cが内側側壁18bに対して点接触状態から線接触状態に変化し、終局的には、弾性体28の突条部28cが弾性変形して内側側壁18bに対して面接触状態となる。このように、スペーサ10のウォータージャケット18内への挿入荷重が最初から大きくならず、ウォータージャケット18の奥部に向けてのスペーサ10の挿入具合に対応して接触荷重が徐々に増大するように設けられることにより、スペーサ10の挿入時における荷重(摺動抵抗)を低減して良好な挿入性を得ることができ、組付性を向上させることができる。
さらに、弾性体28において、ウォータージャケット18の内側側壁18bとの接触部位は、厚肉矩形部28bで支持された突条部28cに限定され、前記突条部28cの頂部に形成された稜線部28e乃至その近傍のみがウォータージャケット18の内側側壁18bと接触(点接触→線接触→面接触)するように設けられるため、弾性体28自体における変形量を小さく抑制して耐久性を向上させることができる。
さらにまた、スペーサ10は、シリンダ列方向に沿ったスペーサ本体10aの両端部にそれぞれ設けられた複数の弾性体28によって、ウォータージャケット18内の所定位置に保持固定される。例えば、冷却水の水圧やエンジン振動等によってスペーサ10が予め設置された所定位置からずれて、仮に、後記する第1延出部30、第2延出部32のいずれかがガスケット70の下面(G面)に当接する場合であっても、ウォータージャケット18の内側側壁18bと弾性体28との間で発生する摩擦抵抗によりガスケット70へ付与される当接荷重を好適に緩和することができる。
突条部28cの背面側に設けられた係止部28dは、弾性体28がスペーサ本体10aの長溝26内に組み付けられるときに弾性変形し、スペーサ本体10aに形成された窓部40(図2参照)に係止される。このようにスペーサ本体10aの窓部40に対して弾性体28の係止部28dが係止されることにより、組付時において長溝26内に挿入された弾性体28がスペーサ本体10aの所定位置に位置決めされる。
なお、弾性体28は、前記とは表裏を逆転させて外周側に突条部28cを露呈させ、ウォータージャケット18を構成する外側側壁18cに対して前記突条部28cが点接触又は線接触するようにしてもよい。この場合、係止部28dが係止される窓部40はスペーサ本体10aの内側に設けられる。
本実施形態によれば、気筒列方向に沿った一端部側(タイミングトレーン側)で上下方向に沿った上部及び下部に一対の弾性体28、28を装着すると共に、気筒列方向に沿った他端側(トランスミッション側)の略中央に単一の弾性体28を装着することにより、ウォータージャケット18内に挿入されたスペーサ10を3点で所定位置に位置決めした状態で安定して支持することができる。また、気筒列方向に沿った一端部側(タイミングトレーン側)で上下方向に沿った上部及び下部に一対の弾性体28、28を装着することにより、内側側壁18bと接触する弾性体28、28の面圧を上昇させてスペーサ10の上下方向への移動を好適に規制することができる。
図3に戻って、第2延出部32は、スペーサ本体10aの上面11から突出し気筒列方向に沿った他端側で弾性体28の上方に設けられる。スペーサ10に設けられる第1延出部30及び第2延出部32は、それぞれ、シリンダボアの周方向に沿って形成されることにより、冷却水の流通方向と同一乃至略同一方向に延在して冷却水の流れを阻害しないように構成されている。なお、第2延出部32は、気筒列方向に沿った端部で冷却水の流速が比較的遅い部位(後記する冷却水のUターン部位)に設けられているため(図1参照)、冷却水の流れを極力阻害しないようにすることができる。
スペーサ本体10aの上面11に上方に向かって突出する第1延出部30及び第2延出部32を設けることにより、仮に、冷却水の水圧やエンジン振動等によってスペーサ10がウォータージャケット18内の所定位置からずれた場合であっても、前記第1延出部30、第2延出部32がガスケット70に当接して、その位置ずれを規制することができる。
図3(b)及び図6に示されるように、気筒列方向に沿った一端側のスペーサ本体10a、第1延出部30及び脚部36aの内壁であって膨出形成された弾性体装着部43に隣接する部位には、上下方向に沿って延在し外壁側に向かって窪む直線状凹部47a、47bが設けられる。この直線状凹部47a、47bは、ガスケット70に形成された冷却水出口20bの真下方向の位置に設けられ(図6参照)、スペーサ10の内側側壁18bに沿って流通した冷却水を冷却水出口20b側の方向へ誘導してシリンダヘッド16側に冷却水を流通させる通路として機能するものである。
図7は、シリンダボアの中心軸線に沿った縦断面であって、エンジンに適用されたオフセットシリンダを示す説明図である。図7に示されるように、シリンダボアの中心軸線T2を、クランクシャフト62の回動中心Oに対してクランクシャフト62の回動方向(図7に示す矢印方向)にオフセットさせ、ピストン60の変位速度におけるピーク速度を上死点側にずらすこと(偏位させること)により、ピストン60の摺動抵抗を低減させることができる。
なお、図7中において、クランクシャフト62は、クランクアーム64及びクランクピン66を介してコネクティングロッド68(大端部)と連結され、前記コネクティングロッド68(小端部)がピストン60に連結されている。また、シリンダボアの中心軸線T2と、クランクシャフト62の回動中心Oとは、いずれか一方を相対的にオフセットさせればよい。
本実施形態に係るスペーサ10が組み込まれたエンジン12は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
先ず、スペーサ10を内燃機関の冷却構造として組み付ける組付工程について説明する。なお、弾性体28は、例えば、合成ゴム又は天然ゴム等のゴム製材料によって、図17(a)及び図18(a)に示される所定形状に予め製造されているものとする。
図示しない成形金型によって樹脂成形されたスペーサ10の気筒列方向に沿った両端部には、それぞれ、上下方向に沿った長溝26が形成されている。そこで、図17(b)及び図18(b)に示されるように、弾性体28を長溝26に沿ってスライドさせ、前記長溝26内に弾性体28を挿入する。この場合、長溝26の縦長開口部26aに対して弾性体28の厚肉矩形部28bが係合し、長溝26の側方溝部26bに対して弾性体28の薄肉側部28aが係合する。
このようにして弾性体28を長溝26に沿ってスライドさせ、弾性体28の背面に形成された係止部28dがスペーサ本体10aに形成された窓部40内に係止されることにより、弾性体28が所定位置で位置決めされた状態でスペーサ本体10aに装着される。
複数の弾性体28がスペーサ本体10aの気筒列方向に沿った両端部に装着されてスペーサ10が完成した後、この完成したスペーサ10をシリンダブロック14のウォータージャケット18内に挿入する。スペーサ10のウォータージャケット18内への挿入は、例えば、直交するXYZ軸等を含む複数軸に沿って変位可能な図示しないロボットハンドを用いてウォータージャケット18内へ押圧してもよいし、又は、例えば、手作業でスペーサ10をウォータージャケット18の上面開口部18aに挿入した後、図示しない治具を用いてスペーサ10をウォータージャケット18の奥部まで押圧するようにしてもよい。
スペーサ10のウォータージャケット18内への挿入は、例えば、スペーサ10の下部に設けられた脚部36a、36a及び他の脚部36bがウォータージャケット18の底壁18dに当接することによって規制される。その際、スペーサ本体10aは、ウォータージャケット18の底壁18dに当接することがなく、スペーサ10の内周側に設けられた複数の弾性体28がウォータージャケット18の内側側壁18bに当接することによって、ウォータージャケット18の深さ方向中間位置に固定される。
スペーサ10をウォータージャケット18内に挿入する際、スペーサ10の気筒列方向に沿った両端部にそれぞれ弾性体28が配置され、この弾性体28の突条部28cがウォータージャケット18の内側側壁18bに密着してスペーサ10を気筒列方向の外径側に向かって押圧する力によってスペーサ10がウォータージャケット18内に保持される。
この場合、ウォータージャケット18の内側側壁18bに対する、スペーサ10の気筒列方向の両端部に配設された弾性体28の変形代(変形量)を調整することにより、スペーサ10を均一に保持することができる。
また、ウォータージャケット18の上下方向に沿った縦断面が上面11の開口部18a側から底壁18dに向かって徐々に幅狭となる先細り形状に形成されているため、ウォータージャケット18の下部側流路24bにおける離間間隔Dと比較してウォータージャケット18の上部側流路24aにおける離間間隔Dが大きくなり、前記上部側流路24aにおける離間間隔Dの設定を容易に行うことができる。
次に、スペーサ10がシリンダブロック14のウォータージャケット18内に挿入された状態における冷却水の流通経路(冷却通路構造)について説明する。
図示しないウォーターポンプを介してシリンダブロック14の冷却水入口20aへ供給された冷却水は、一方の気筒列方向(図1中における手前側)に沿ってウォータージャケット18内を流通し、冷却水入口20aから遠い気筒列方向の端部でUターンした後、他方の気筒列方向(図1中における奥側)に沿ってウォータージャケット18内を流通し、複数の冷却水出口20bからシリンダヘッド16側の図示しないウォータージャケットへ導出される。このようにウォータージャケット18に沿って冷却水が流通することにより、シリンダボアまわりのボア壁が冷却され、図示しない燃焼室を外部から好適に冷却することができる。なお、冷却水入口20aから導入された一部の冷却水は、仕切り用壁部34に沿って上方に向かって流れ、冷却水出口20cを介してシリンダヘッド16側へ直接導出される。
図示しないウォーターポンプを介してシリンダブロック14の冷却水入口20aへ供給された冷却水は、一方の気筒列方向(図1中における手前側)に沿ってウォータージャケット18内を流通し、冷却水入口20aから遠い気筒列方向の端部でUターンした後、他方の気筒列方向(図1中における奥側)に沿ってウォータージャケット18内を流通し、複数の冷却水出口20bからシリンダヘッド16側の図示しないウォータージャケットへ導出される。このようにウォータージャケット18に沿って冷却水が流通することにより、シリンダボアまわりのボア壁が冷却され、図示しない燃焼室を外部から好適に冷却することができる。なお、冷却水入口20aから導入された一部の冷却水は、仕切り用壁部34に沿って上方に向かって流れ、冷却水出口20cを介してシリンダヘッド16側へ直接導出される。
換言すると、シリンダブロック14の気筒列方向に沿った一端部側の冷却水入口20aから導入された冷却水は、ウォータージャケット18の上流側に沿って流通し、気筒列方向に沿った他端部側でUターンした後、ウォータージャケット18の下流側に沿って流通して気筒列方向に沿った一端部側の冷却水出口20bからシリンダヘッド16側へ導出され、直列に連なる4つのシリンダボアの周方向の全周を一筆書きで1周するように流通する。
なお、冷却水の流通経路は、上記に限定されるものではなく、例えば、シリンダボア列方向に沿ったシリンダブロック14の一端部から導入され、複数のシリンダボアを間にしてシリンダボア列方向に沿ったウォータージャケット18の両側(両脇)を並行に流通した後、シリンダボア列方向に沿ったシリンダブロック14の他端部から導出するようにしてもよい。
次に、スペーサ10が挿入されたウォータージャケット18内の所定部位における冷却水の流通状態について以下説明する。
図7に示されるように、気筒間部位を除いた一般部位では、シリンダボアの軸線方向に沿った上死点近傍部位(ピストン60の上死点位置を実線で図示)と下死点近傍部位(ピストン60の下死点位置を2点鎖線で図示)との間の中間部位にスペーサ10(スペーサ本体10a)が配置され、前記上死点近傍部位及び下死点近傍部位ではスペーサ10(スペーサ本体10a)が何ら設けられていない空間部となっている。従って、ウォータージャケット18において、前記空間部で形成されたスペーサ本体10aの上部側及び下部側に冷却水が流通する主流路(上部側流路24a及び下部側流路24b)がそれぞれ形成される。換言すると、シリンダボア内を摺動変位するピストン60の上死点位置及び下死点位置に対応して、上部側流路24a及び下部側流路24bがそれぞれ形成される。
図7に示されるように、気筒間部位を除いた一般部位では、シリンダボアの軸線方向に沿った上死点近傍部位(ピストン60の上死点位置を実線で図示)と下死点近傍部位(ピストン60の下死点位置を2点鎖線で図示)との間の中間部位にスペーサ10(スペーサ本体10a)が配置され、前記上死点近傍部位及び下死点近傍部位ではスペーサ10(スペーサ本体10a)が何ら設けられていない空間部となっている。従って、ウォータージャケット18において、前記空間部で形成されたスペーサ本体10aの上部側及び下部側に冷却水が流通する主流路(上部側流路24a及び下部側流路24b)がそれぞれ形成される。換言すると、シリンダボア内を摺動変位するピストン60の上死点位置及び下死点位置に対応して、上部側流路24a及び下部側流路24bがそれぞれ形成される。
この場合、スペーサ本体10aの上部側流路24a及び下部側流路24bで冷却水の流通量が大きく設定され、スペーサ本体10aが配置された上死点近傍部位と下死点近傍部位との間の中間部位(中央部位)に設けられた中間流路24cでは、冷却水の流通量が小さく設定されている。
この結果、冷却水の流通量が小さく設定された中間部位(中央部位)では、上死点及び下死点と比較してピストンの変位速度が速い範囲におけるボア壁がスペーサ10(スペーサ本体10a)で囲繞されて暖められる(保温される)ことにより、シリンダボア内を摺動変位するピストン60とボア壁との間のクリアランスが拡大され、ピストン60及びボア壁間に発生するフリクション(摩擦抵抗)を低減させることができる。また、中間部位(中央部位)では、上死点及び下死点と比較してピストン60の変位速度が速い範囲におけるボア壁がスペーサ10で暖められる(保温される)ことにより、ピストン60とボア壁との間の潤滑油の粘性(粘度)を低下させ摺動抵抗を低減することができる。なお、本実施形態のように、ウォータージャケット18内にスペーサ10を挿入した場合には、スペーサ10を挿入しない場合と比較して、冷却水全体の容量を低減させることができ、エンジン12の始動時における早期の暖機を遂行することができる。
図6は、シリンダブロックのウォータージャケット内にスペーサが挿入された状態における平面図、図8は、図6のA−A線に沿った縦断面図、図9は、図6のB−B線に沿った縦断面図、図10は、図6のC−C線に沿った縦断面図、図11は、図6のD−D線に沿った縦断面図、図12は、図6のE−E線に沿った縦断面図、図13は、図6のF−F線に沿った縦断面図、図14は、図6のG−G線に沿った縦断面図である。
図8〜図14の各縦断面図に示されるように、スペーサ本体10aの各種部位における厚さ(肉厚)及びシリンダの中心軸線に沿った長さがそれぞれ異なるように設定されている。
次に、シリンダボア壁に沿って摺動変位するピストン60の変位速度と、スペーサ10の厚さ寸法(肉厚寸法)及びシリンダの中心軸線に沿った長さとの関係について、以下詳細に説明する。
図19(a)は、スペーサ本体の厚さとシリンダの中心軸線に沿った長さとの関係を示す説明図、図19(b)は、ピストンの変位速度とピストン位置との関係を示す特性図である。なお、ピストン位置は、ガスケット70の下面(G面)からの離間距離で示している。
ピーク速度を含み、ピストン60の変位速度が最も速い領域(図19(b)中のR1領域)では、スペーサ本体10aで十分に被覆してウォータージャケット18内を流通する冷却水の流速を低くする。このため、スペーサ本体10aの肉厚が最も厚く設定された中間部100として形成され、この中間部100におけるピストン摺動方向の長さL1は、スペーサ本体10aの全周にわたって略均一に設定されている。なお、前記中間部100は、外側の肉部を減らして薄肉に形成された1番気筒♯1及び2番気筒♯2の上流側の部分を除いて(図8〜図10参照)、ピストン摺動方向に沿って肉厚が略均一となるように設定されている。
また、ピストン60の変位速度が中間部100の次に速い領域(図19(b)中のR2a領域及びR2b領域)では、ピストン60の変位速度が速い領域(図19(b)中のR1領域)に近接する程、冷却水の流量が多くなるように設定する。具体的には、前記中間部100におけるピストン60の上死点側に連なり、前記中間部100から上死点側に向けてシリンダボア側壁(シリンダライナ22)から徐々に離間すると共に、スペーサ本体10aの肉厚(S1)を上死点側に向かって徐々に薄くした(漸減した)上傾斜部102aと、前記中間部100におけるピストン60の下死点側に連なり、前記中間部100から下死点側に向けてシリンダボア側壁(シリンダライナ22)から徐々に離間すると共に、スペーサ本体10aの肉厚(S2)を下死点側に向かって徐々に薄くした(漸減した)下傾斜部102bとが形成される。
本実施形態では、上傾斜部102a及び下傾斜部102bにおけるピストン摺動方向の長さL2a、L2bを、それぞれ、スペーサ本体10aの全周にわたって略均一に設定しているが、これに限定されるものではなく、例えば、上傾斜部102a及び下傾斜部102bにおけるピストン摺動方向の長さL2a、L2bが、ウォータージャケット18の上流側から下流側にかけて徐々に増大するように設定してもよい。これにより、スペーサ10の上部側流路24a及び下部側流路24bを流通する冷却水の流通速度を略一定又は下流側に向けて増大させることができ、ウォータージャケット18の上流側と下流側で略均一な冷却効果を得ることができる。
本実施形態では、ピストン60の変位速度が最も速いピストン摺動範囲の中間領域(図19(b)中のR1領域)を、スペーサ本体10aの中間部100を近接させて覆い、さらに、ピストン60の変位速度が上死点及び下死点に向けて漸減する領域(図19(b)中のR2a領域及びR2b領域)をスペーサ本体10aの上傾斜部102a及び下傾斜部102bで覆うことで、ピストン60の変位速度に合わせて効果的な保温作用及び冷却作用を発揮させることができる。
より具体的には、ピストン摺動範囲の中間領域を、スペーサ本体10a中で肉厚が最大の中間部100で最も保温してオイル粘度を下げると共に、シリンダボアを拡径してピストン摺動抵抗を低減し、ピストン60の変位速度が低下するにつれて摺動抵抗を減らす効果が減少する反面、ピストン60がシリンダボアへ接触する時間が増えて伝熱量が増加するため、冷却水による冷却量を増やしていくことで、シリンダボアの冷却とピストン摺動抵抗の低減とを効果的に調和させることができる。
この場合、シリンダボアの中心軸線T2をクランクシャフト62の回動中心Oに対して前記クランクシャフト62の回動方向(図7に示す矢印方向)にオフセットしたオフセットシリンダ(図7参照)を用いることにより、ピストン60の変位速度におけるピーク速度が上死点側にずれるため(図19(b)におけるオフセットシリンダ無しのグラフと上昇工程のグラフにおけるピーク速度を比較参照)、このピーク速度のずれに対応したスペーサ形状とする必要がある。
そこで、本実施形態では、ピストン60の変位速度におけるピーク速度のずれに対応して、スペーサ本体10aにおける下傾斜部102bのピストン摺動方向の長さ(L2b)が、上傾斜部102aのピストン摺動方向の長さ(L2a)よりも大きく設定されている(L2a<L2b)。ピーク速度が上死点側にオフセットすると、ピストン上昇工程で上死点に向かうピストン60の減速速度が大きくなり(図19(b)参照)、下傾斜部102bと比較して上傾斜部102aの長さを短縮することが可能となるからである。この結果、オフセットシリンダによるピストン60のピーク速度のずれに対応した冷却及び保温性能を得ることができる。
さらに、ピストン60の変位速度が上傾斜部102aよりも遅い領域(図19(b)中のR3a領域)では、前記上傾斜部102aから上死点側に向けて延出し前記上傾斜部102aの肉厚よりも一層薄肉に形成された上延出部104aが設けられる。一方、ピストン60の変位速度が下傾斜部102bよりも遅い領域(図19(b)中のR3b領域)では、前記下傾斜部102bから下死点側に向けて延出し前記下傾斜部102bの肉厚よりも一層薄肉に形成された下延出部104bが設けられる。
この場合、上延出部104a及び下延出部104bは、冷却水の上流側(1番気筒♯1及び2番気筒♯2の上流側を除いた上流側)から下流側にかけてそのピストン摺動方向の長さ(L3a、L3b)が漸増するように設定されている(図8、図10、図12参照)。スペーサ本体10aの中間部100、上傾斜部102a及び下傾斜部102bと比較して、ピストン60の変位速度が比較的遅い範囲を被覆する上延出部104a及び下延出部104bにおけるピストン摺動方向の長さを、冷却水の流れ方向に沿って漸増させることで、長さの違いにおける摺動抵抗の影響を小さく抑制して、冷却水の流れ方向における各シリンダボア間の冷却性能の均等化を達成することができる。
図20は、3番気筒と4番気筒との気筒間部位における下流側の拡大平面図である。
図20に示されるように(併せて、図9、図11、図13を参照)、スペーサ本体10aの気筒間部位における上端面に略三角形状の突起72を設け、前記突起72によって上部側流路24aの流路幅が徐々に狭まるように形成される。この結果、気筒間部位に流入する冷却水の流速を増大させて強制的に気筒間部位に冷却水を流すことが可能となり、隣接するシリンダボア間で特に高温となる部位(上死点近傍部位)を好適に冷却することができる。
図20に示されるように(併せて、図9、図11、図13を参照)、スペーサ本体10aの気筒間部位における上端面に略三角形状の突起72を設け、前記突起72によって上部側流路24aの流路幅が徐々に狭まるように形成される。この結果、気筒間部位に流入する冷却水の流速を増大させて強制的に気筒間部位に冷却水を流すことが可能となり、隣接するシリンダボア間で特に高温となる部位(上死点近傍部位)を好適に冷却することができる。
また、図9、図11、図13及び図20に示されるように、気筒間部位には、ウォータージャケット18の内側側壁18bの上部近傍部位に、縦断面略ハの字状に傾斜する一対の傾斜面からなるテーパ面74が形成されている。このテーパ面74は、前記テーパ面74の下部とスペーサ10の上面11とが水平方向で略一致又は近接する位置に設定され、冷却水がウォータージャケット18の上部側流路24aに沿って流通する際、冷却水がテーパ面74(傾斜面)に沿って上部側流路24aの内側を迂回し大きくカーブするように流通することにより冷却水の流通量(流路面積)を増大させ、隣接するシリンダボア間で特に高温となる部位(上死点近傍部位)をより一層好適に冷却することができる。
次に、図6及び図8〜図14に基づいて、シリンダボアの側方を覆うスペーサ10の各部位における縦断面積と冷却性能との関係について、以下詳細に説明する。
ここで、図8に示されるA−A断面は、シリンダボアの中心軸線T2を通り1番気筒♯1の一般部位におけるスペーサ10の縦断面、図10に示されるC−C断面は、シリンダボアの中心軸線T2を通り2番気筒♯2の一般部位におけるスペーサ10の縦断面、図12に示されるE−E断面は、シリンダボアの中心軸線T2を通り3番気筒♯3の一般部位におけるスペーサ10の縦断面、図14に示されるG−G断面は、シリンダボアの中心軸線T2を通り4番気筒♯4の一般部位におけるスペーサ10の縦断面を、それぞれ示したものである。
このようなスペーサ10の各縦断面に基づいて、シリンダボアの排気側(側方)を覆うスペーサ10の縦断面積と、シリンダボアの吸気側(側方)を覆うスペーサ10の縦断面積との合計をシミュレーションしたところ、各シリンダボアにおける排気側及び吸気側の縦断面積の和がそれぞれ略等しいことがわかった。この場合、ウォータージャケット18の容量は、ウォータージャケット18の気筒間部位で略一定に設定されていると共に、前記気筒間部位を除いた一般部位においても略一定に設定されているものとする。
すなわち、本実施形態では、
(1番気筒♯1を覆う排気側及び吸気側におけるスペーサ10の断面積の和)≒(2番気筒♯2を覆う排気側及び吸気側におけるスペーサ10の断面積の和)≒(3番気筒♯3を覆う排気側及び吸気側におけるスペーサ10の断面積の和)≒(4番気筒♯4を覆う排気側及び吸気側におけるスペーサ10の断面積の和)
という等式の関係が成立する。
すなわち、本実施形態では、
(1番気筒♯1を覆う排気側及び吸気側におけるスペーサ10の断面積の和)≒(2番気筒♯2を覆う排気側及び吸気側におけるスペーサ10の断面積の和)≒(3番気筒♯3を覆う排気側及び吸気側におけるスペーサ10の断面積の和)≒(4番気筒♯4を覆う排気側及び吸気側におけるスペーサ10の断面積の和)
という等式の関係が成立する。
なお、スペーサ10の断面積の和が略等しい範囲とは、各気筒番号に対応するスペーサ10の断面積(シリンダボアの排気側及び吸気側の縦断面積の和)の平均値を求め、この平均断面積から±20パーセント以内の断面積をいう。このような平均断面積から±20パーセント以内の断面積であっても、シリンダボア毎の冷却性能にそれほど大差がなく、冷却性能の略均等化を達成することができるからである。
従って、本実施形態では、スペーサ10の、シリンダボアの側方を覆う箇所の断面積の和が略等しく設定されるため、シリンダボア全体において、冷却性能をシリンダボア毎に略均等化することができる。
また、冷却水入口20aから導入された冷却水が各シリンダボアの周囲を1周した後、前記冷却水入口20aに近接して設けられた仕切り用壁部34によって仕切られた冷却水出口20bからシリンダヘッド16側へ導出するように冷却水を流した場合、冷却水流れの上流側から下流側に向けてスペーサ10の断面積が漸増するように設定されている。
すなわち、本実施形態では、
(1番気筒♯1における排気側のスペーサ10の縦断面積)<(2番気筒♯2における排気側のスペーサ10の縦断面積)<(3番気筒♯3における排気側のスペーサ10の縦断面積)<(4番気筒♯4における排気側のスペーサ10の縦断面積)<(4番気筒♯4における吸気側のスペーサ10の縦断面積)<(3番気筒♯3における吸気側のスペーサ10の縦断面積)<(2番気筒♯2における吸気側のスペーサ10の縦断面積)<(1番気筒♯1における吸気側のスペーサ10の縦断面積)
という不等式の関係が成立する。
(1番気筒♯1における排気側のスペーサ10の縦断面積)<(2番気筒♯2における排気側のスペーサ10の縦断面積)<(3番気筒♯3における排気側のスペーサ10の縦断面積)<(4番気筒♯4における排気側のスペーサ10の縦断面積)<(4番気筒♯4における吸気側のスペーサ10の縦断面積)<(3番気筒♯3における吸気側のスペーサ10の縦断面積)<(2番気筒♯2における吸気側のスペーサ10の縦断面積)<(1番気筒♯1における吸気側のスペーサ10の縦断面積)
という不等式の関係が成立する。
本実施形態では、スペーサ10の断面積を、冷却水流れの上流側から下流側に向けて漸増することで、冷却水が流れる流路を徐々に狭めて流速の低下を抑制し、冷却効率の低下を抑えることができる。なお、上記の不等式の関係から了解されるように、1番気筒♯1における排気側のスペーサ10の縦断面積が最小で、1番気筒♯1における吸気側のスペーサ10の縦断面積が最大となるように設定されている。
さらに、本実施形態では、ウォータージャケット18の深さ方向におけるスペーサ10の上縁部(上面11)が冷却水流れの上流側から下流側に向けて上方へ傾斜し、ウォータージャケット18の深さ方向におけるスペーサ10の下縁部(下面13)が冷却水流れの上流側から下流側に向けて下方へ傾斜することにより、スペーサ10の上縁部に沿って流れる冷却水の流路及びスペーサ10の下縁部に沿って流れる冷却水の流路が徐々に狭まり、より一層確実に冷却水の流速低下を抑制することができる。
10 スペーサ
10a スペーサ本体
11 上面(上縁部)
12 エンジン(内燃機関)
13 下面(下縁部)
14 シリンダブロック
18 ウォータージャケット
10a スペーサ本体
11 上面(上縁部)
12 エンジン(内燃機関)
13 下面(下縁部)
14 シリンダブロック
18 ウォータージャケット
Claims (2)
- 内燃機関の直列に連なる複数のシリンダボアの周囲に形成されるウォータージャケット内に挿入され、前記ウォータージャケットの深さ方向の中間位置を覆うスペーサであって、
前記スペーサの、前記シリンダボアの側方を覆う箇所の断面積の和が略等しく設定され、
前記スペーサの断面積は、冷却水流れの上流側から下流側に向けて漸増するように設定されることを特徴とするスペーサ。 - 前記スペーサは、前記ウォータージャケットの深さ方向の上縁部が冷却水流れの上流側から下流側に向けて上方へ傾斜し、前記ウォータージャケットの深さ方向の下縁部が冷却水流れの上流側から下流側に向けて下方へ傾斜することを特徴とする請求項1記載のスペーサ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010189172A JP2012047087A (ja) | 2010-08-26 | 2010-08-26 | スペーサ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2010189172A JP2012047087A (ja) | 2010-08-26 | 2010-08-26 | スペーサ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2012047087A true JP2012047087A (ja) | 2012-03-08 |
Family
ID=45902230
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2010189172A Pending JP2012047087A (ja) | 2010-08-26 | 2010-08-26 | スペーサ |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2012047087A (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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-
2010
- 2010-08-26 JP JP2010189172A patent/JP2012047087A/ja active Pending
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