JP2012041503A - 皮革加工方法及び皮革素材、並びにその皮革素材を用いて生産された皮革製品 - Google Patents

皮革加工方法及び皮革素材、並びにその皮革素材を用いて生産された皮革製品 Download PDF

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Abstract

【課題】 模造品と真正品の真贋判定を効率的かつ効果的に行うことができる皮革の加工方法を提供する。
【解決手段】 なめし工程、染色・加脂工程、仕上げ工程等の皮革製造工程において、炭素、酸素、水素、窒素から選択される少なくとも1つの安定同位体が、天然存在比を超えて含有されている溶剤を用いて処理する。また、加工された皮革素材は、安定同位体が天然存在比を超える比率で含有されてなる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、安定同位体を用いた皮革加工方法及び皮革素材、並びにその皮革素材を用いて生産された皮革製品に関し、特に、真贋判定を可能にする皮革加工方法及び皮革素材、並びにその皮革素材を用いて生産された皮革製品に関する。
紙幣等の貨幣や小切手、株券、債権等の有価証券、各種金券、さらに契約書等の印刷物は、それ自身が財産的な経済価値と信頼性を有しており、通貨と同様に流通させることが可能であることから、従来から専ら偽造の対象とされてきた。また、最近は、クレジットカードやプリペイドカードの普及により、通貨と同等の利用が可能なこれらのカード類にも偽造被害が及んでいる。
さらに、近年の高級志向に伴って、有名ブランド品や宝石類等の高価格品、特産品、嗜好品等の付加価値の高い食品、あるいは芸術品等の偽造・模倣品が世界各地で出回り、多くの被害を齎している。
このような状況下において、これら偽造・模倣対象物に対して真贋を明確に判定し、偽造品と真正品とを区別するための認証技術の開発が求められている。
従来、紙幣、各種金券、各種カード、ブランド品等の真贋判定のために付与する識別手段に関して、種々の技術が適用されており、例えば、真正品に透かしやホログラムを用いたり、特殊ラベルの貼付や特殊印刷を施す等、目視による判別が可能な識別手段を用いることにより、市販の複写機や画像取り込み機器等を用いて作られた偽造品に対する真贋判定を容易にしている。具体的には、特許文献1乃至3において、この種の技術が提案されている。
ここで、上述のように、道具や機械を用いずに人間の五感のみで行う認識は、知覚認識(first-line inspection)と呼ばれ、特に目視認識により識別する手段が広く用いられている。なお、目視認識ものとしては、透かし、穿孔、エンボス、凹版印刷、シースルーレジスタ、プランシェット、ホログラム、セキュリティスレッド、ファイバ、地紋印刷、彩紋印刷、マイクロ文字、スクリーントラップ、スキャントラップ、レイテントイメージ、DOVID(Diffractive Optically Variable Image Devices;光の回折現象が利用される)、ISIS(Interference Security Image Structure;光の干渉現象が利用される)、光沢パターン等がある。
これらの手段を採用することにより、目視により真贋判定等を行うことができるようになるが、一方では印刷技術の発達等により、これらの識別手段自体をも模倣あるいは偽造することが比較的容易となったため、これら判定手段における信頼性が漸減している。
また、高級な皮革製品やブランド品等、デザイン性が重視される製品に、目視認識が可能となるような加工、処理を施すと、折角の優れたデザイン性が阻害されたり、特徴ある美感が損なわれたりして、商品としての価値を低下させてしまうこともある。よって、これら製品については、その商品価値等を低下させることなく、効率的かつ効果的に真贋判定を行えるような模倣品対策を講じる必要がある。
特開平11−254869号公報 特開2004−354430号公報 特開2007−72188号公報
そこで、本発明はこのような実情に鑑みて提案されたものであり、特に近年、効果的な模造品対策が求められる製品、特に皮革製品について、効率的かつ効果的に真贋を判定し、真正品と模倣品とを確実に識別するために有効な皮革の加工方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、皮革の製造工程において、安定同位体の含有比率を天然(自然)存在比率と異なる含有比率値に制御した溶剤を使用することにより、天然存在比以上に安定同位体を含んでいる皮革を製造できることを見出した。
すなわち、本発明は、皮革製造工程において、安定同位体が天然存在比を超える比率で含有されている溶剤を用いて処理することを特徴とする皮革加工方法である。
ここで、上記安定同位体としては、炭素、酸素、水素、窒素から選択される少なくとも1つの安定同位体である。
また、本発明は、上述した皮革加工方法により加工された皮革素材であって、安定同位体が天然存在比を超える比率で含有されてなることを特徴とする皮革素材である。
また、本発明は、上述した皮革素材を用いて生産された皮革製品である。
また、本発明は、上述した皮革素材を用いて皮革製品を製造する際に発生する革屑を用いて生産された再生皮革である。
また、本発明は、上述した皮革素材を用いて皮革製品を製造する際に発生する革屑を用いて生成されたにかわである。
本発明によれば、皮革の製造工程において、安定同位体の含有比率が天然(自然)存在比率を上回るように制御された溶剤を使用することにより、天然存在比を超えた含有比率で安定同位体を含む皮革を製造することができる。そして、これにより、例えば安定同位体検出装置を用いた機械認識を行うことによって、安定同位体比率に基づく皮革製品等の真贋判定を効果的に行うことが可能となる。
皮革の製造方法における工程の一例を示す図である。
以下、本発明に係る皮革の加工方法を適用した具体的な実施の形態(以下、「本実施の形態」という)について、図面を参照して詳細に説明する。
本実施の形態に係る皮革の加工方法は、皮革の製造工程において、安定同位体が天然(自然)存在比率を超える比率で含有されている溶剤を用いて処理するものである。より具体的には、皮革製造工程中のなめし工程、再なめし工程、染色・加脂工程、仕上げ工程の何れか1つ以上の工程において使用する溶剤として、安定同位体が天然(自然)存在比率を上回る比率で含有されている溶剤を用いて処理する。
このようにして加工製造された皮革素材には、通常のものとは異なり、その皮革全体において、安定同位体が天然存在比を超えた比率で含有される。通常の加工方法では、このような皮革素材を製造することは困難であるため、上述した方法により加工された皮革素材は、特殊な皮革素材として識別することが可能となる。
また、同様なことがその皮革素材を用いて製造した皮革製品等についてもいえ、これらの皮革製品等は、通常の皮革製造工程を経て製造された製品等とは安定同位体の含有比率が大きく異なっているため、安定同位体検出装置等を用いてその製品等における安定同位体比率を機械的に検出し、その結果に基づいて適確に真贋判定を行うことができる。
以下、図面に示す皮革製造における各工程を順に説明しながら詳細に説明する。一般的に、皮革の製造工程は、準備工程S1と、なめし工程S2と、再なめし工程S3、染色・加脂工程S4と、仕上げ工程S5とを有する。本実施の形態に係る皮革の加工方法では、上述したなめし工程S2、再なめし工程S3、染色・加脂工程S4、仕上げ工程S5の何れか1つ以上の工程において、安定同位体の含有比率を天然(自然)存在比を超える値に制御した物質からなる溶剤を用いる。
<準備工程>
準備工程S1では、牛、馬、山羊、羊、鹿等の動物の原皮に対して、例えば、水漬け、水戻し、石灰漬け、脱毛、再石灰漬け、脱灰、酵解等の処理が行われる。なお、この準備工程S1では、これらの処理を全て行う必要はなく、原皮の種類等に応じて適宜選択された処理がなされる。
<なめし工程>
なめし工程S2では、準備工程S1を経て得られた原皮を化学的、物理的操作によって処理することにより、原皮の硬化や腐敗を防ぐと共に、皮を柔らかくして耐久性や可塑性を与え、原皮から皮革として利用できるように改質を図る。
具体的には、なめし剤を水性媒体に溶解させた溶剤に、準備工程S1で処理された原皮を浸漬、攪拌し、原皮になめし剤を吸収させる。ここで、このなめし剤は、原皮のコラーゲン物質に架橋を生じさせて、原皮に耐熱性を付与するとともに、微生物や化学物質に対する抵抗性を与え、加えて柔軟性も付与する。
なお、なめし工程S2において施されるなめし処理は、特に限定されることはなく、例えば、クロム塩を用いたクロムなめし、天然の植物を用いたタンニンなめし、2種類以上のなめし剤の特徴を生かした混合なめし、動物の油を用いる油なめし等を挙げることができ、それぞれのなめし処理では、なめし剤として、クロムなめし剤、合成タンニン剤、アルミニウムなめし剤、樹脂なめし剤等が用いられる。本実施の形態に係る皮革の加工方法においては、このなめし処理に際して使用するなめし剤において、安定同位体含有比率を天然存在比を超える値に制御した溶剤を用いることができる。
具体的には、例えばクロムなめし剤としては、塩基性硫酸クロム塩[Cr(OH)SOCr]2+等のクロム錯体が用いられる。本実施の形態においては、このクロムなめし剤として、例えば酸素の安定同位体(O17、O18)の比率を、天然存在比率を超える値に制御したものを用い、溶剤を皮革に付着させる。このようにして、安定同位体の含有比率を、天然存在比を超える値に制御したなめし剤によってなめし処理を行うことによって、天然存在比を上回る比率で、皮革全体に安定同位体を行き渡らせることができる。
<再なめし工程>
再なめし工程S3では、なめし工程S2を経て得られた皮革に対して、合成なめし剤、天然タンニン等のなめし剤を使用し、皮を各種用途に適した性質の皮にする。この再なめし工程S3においては、上述のように、合成なめし剤等を使用して処理するが、適宜、なめし工程S2において使用したクロムなめし剤等を用いることができる。
本実施の形態に係る皮革の加工方法においては、この再なめし処理に際して使用するなめし剤において、同位体含有比率を、天然存在比を超える値に制御した溶剤を用いることができる。このようにして、安定同位体の含有比率を、天然存在比を超える値に制御したなめし剤によって再なめし処理を行うことによって、皮革全体に、天然存在比を上回る比率で存在する安定同位体を吸収させることができる。
なお、この再なめし工程の回数としては、特に限定されず、複数回行うようにしてもよい。
<染色・加脂工程>
染色・加脂工程S4は、再なめし工程S3を経て得られた皮に対して、染料を用いて皮を所望とする色に染める染色処理と、精製された製油や合成油脂を用いて皮に柔軟性や豊満性等の感触と特性を付与し、また繊維を疎水化する加脂処理とからなる。
染色処理では、再なめし工程S3を経て得られる皮に対して、染料を用いて染色する。染色剤としては、例えば酸性水性染料を用いることができる。
加脂処理では、染色された皮に対して、加脂剤を皮フィブリル間に充填して表面に付着させる。なめし処理等の湿潤作業を終えた湿潤皮の内部構造中のフィブリル間には、多くの水が介在しており、これが皮に柔軟性を与えている。皮が乾燥されて、この水が除去されるとフィブリル同士が膠着して組織の硬化が起きる。湿潤皮中に介在する水の一部を他の物質で置換してから乾燥させると、フィブリルの膠着を防止できることから、加脂処理において加脂剤を革フィブリル間に充填して表面に付着させる。また、脂肪膜による皮繊維のコーティングは、相互摩擦を減少させて、組織の柔軟性及び弾性を改善する。コーティングは、弾性材料において、引張応力に暴露したときに多くの繊維が応力を加えた方向に整列するため、皮の引裂強さに積極的な効果を有し、脆性材料における同じ繊維よりも高い引裂耐性をもたらす。また、皮に含まれる水の置換を伴うことから、なめし効果は疎水化処理を通じて得られることとなる。
加脂剤としては、一般に植物及び動物油、脂肪及びワックス、化学転化によってこれらの物質から得られる加水分解、スルホン化、酸化及び水素化生成物、並びにミネラル加脂製剤が挙げられる。
本実施の形態に係る皮革の加工方法においては、この染色・加脂工程S4において使用する染色剤や加脂剤として、安定同位体含有比率を、天然存在比を超える値に制御した溶剤を用いることができる。これにより、皮革全体に、天然存在比を上回る比率で存在する安定同位体を吸収させることができる。
なお、この染色・加脂工程S4における加脂処理の回数としては、特に限定されず、複数回行うようにしてもよい。
<仕上げ工程>
仕上げ工程S5では、皮の表面に塗膜形成材料を用いて塗装及び着色を施し、皮の表面を保護するとともに、皮の美観を高める。仕上げ処理としては、様々の方法があるが、溶媒の違い、塗膜の透明度、機械的な仕上げ操作、仕上げ剤の種類等によって分類される。
仕上げ剤としては、ワックスを主原料としたワックスやオイル、熱可塑性ポリマー(アクリル系、ブタジエン系、ポリウレタン系)、ニトロセルロース、セルロールエステル、ポリウレタン等が挙げられる。
本実施の形態に係る皮革の加工方法においては、この仕上げ工程S5において使用する仕上げ剤として、安定同位体含有比率を、天然存在比を超える値に制御した溶剤を用いることができる。これにより、皮革全体に、天然存在比を上回る比率で存在する安定同位体を吸収させることができる。
以上のように、本実施の形態に係る皮革の加工方法においては、皮革の製造工程中のなめし工程S2、再なめし工程S3、染色・加脂工程S4、仕上げ工程S5の何れか1つ以上の工程において使用する溶剤として、安定同位体含有比率を、天然存在比を超える値に制御した物質からなる溶剤を使用する。これらの溶剤を皮革に付着、浸透させることにより、天然存在比を超える比率で存在する安定同位体が皮革に吸収され、皮革全体に天然存在比を超えて安定同位体を行き渡らせることができる。
同位体含有比率を、天然存在比を超える値に制御してなる物質としては、安定同位体含有比率を天然存在比を超える値に制御することができる安定同位体元素を含有するものであればよい。また、その安定同位体元素としては、例えば、H、Li、11B、13C、15N、17O、18O、29Si、33S、43Ca、47Ti、57Fe、63Cu、67Zn、77Se、79Br、109Ag、115Sn、129Xe、199Hg等を挙げることができる。その中でも、炭素(13C)、窒素(15N)、酸素(17O)及び水素(N)から選ばれた少なくとも1種の元素を含む物質が、コスト等の観点から好適に用いられる。
具体的に、炭素(13C)、窒素(15N)、酸素(17O)及び水素(N)から選ばれた少なくとも1種の元素を含む物質としては、(1)C、N、O、H等を構成成分として含む無機物質、例えばNaHCO等、(2)C、N、O、H等を構成成分として含む有機物質、例えば脂肪酸、アルコール類、尿素等のアミド類、アミノ酸類、グルコース類、芳香族化合物、あるいはそれらの塩等の誘導体を挙げることができる。
ここで、炭素、窒素、酸素及び水素の天然同位体比率は、それぞれ、12C:13C=98.89:1.11、14N:15N=99.63:0.366、16O:17O:18O=99.76:0.038:0.204、H:H=99.985:0.015である。
本実施の形態における皮革の加工方法では、炭素、窒素、酸素及び水素等の安定同位体のうちの少なくとも1種の元素について、その含有比率を、天然存在比を超える値に制御してなる物質からなる溶剤を用いる。すなわち、本実施の形態においては、上述した元素を含有し、且つ、それら元素の安定同位体の含有比率を、天然存在比を超える値に制御されている物質からなる溶剤を用いる。例えば、炭素の安定同位体の含有比率としては、安定同位体の検出効率や経済性等の観点から、12C:13C=50:50〜10:90となるように制御した溶剤とする。
上述した炭素、窒素、酸素、水素等の元素のうち、炭素、窒素、酸素は、生体に無害であり、安定同位体比率を制御するに際して安全性高く使用することができる点で好ましい。また、水素を含有する物質の種類は多いため、添加物として選定、製造するのが容易であり、コストの面でも有利である。
また、窒素の安定同位体比率を制御した場合、15Nで標識された化合物は、分析精度の観点及びコスト面からトレーサーとして優れていることから特に好ましい。窒素は、原料となる動物皮において、炭素や水素等と比べて存在比率が少ないことから、効果的に有意差を検出することができ、高い精度で安定同位体比率の検出を行うことができる。
このようにして、安定同位体の含有比率を、天然存在比を上回る値に制御した物質からなる溶剤を使用して皮革を加工製造することにより、皮革に対して効率的に、天然存在比を超える割合で安定同位体を取り込ませることができる。
そして、こうして製造された皮革及び皮革製品は、最終製品製造時において、安定同位体が天然存在比を超えるように含有されていることから、機械検査等によって安定同位体の比率を検査することにより、容易に真贋判定を行うことが可能となる。
なお、溶剤中に複数種の元素の安定同位体が含有されている場合には、そのうちの少なくとも1種の安定同位体の含有比率を、天然存在比を超える値に制御すれがよいが、特に、2種以上の安定同位体の存在比率を、天然存在比を上回るように制御することにより、模倣品の製造をより困難にし、高い精度で真贋判定を行うことを可能にする。
次に、安定同位体比率の検出方法について説明する。安定同位体、例えば13Cの含有比率を、天然存在比を超える値に制御した物質の赤外吸収/ラマンスペクトルは、対応する天然物質の赤外吸収/ラマンスペクトルに対して異なることが知られている。本実施の形態において使用する溶剤を構成する物質は、安定同位体の含有比率が天然存在比を超えるようにしているので、対応する天然存在比の物質とは、振動スペクトル(赤外吸収スペクトル及びラマンスペクトル)やNMR信号スペクトルが異なるものとなる。この差異は、例えば炭素の場合、12Cと13Cの含有比率により個々に異なるので、その差異を赤外分光法やラマン分光法により測定することにより、12Cと13Cの含有比率を検知することができる。また、NMR法を用いて検知することもできる。
このように、本実施の形態においては、赤外分光光度計やラマン分光光度計、あるいはNMR装置等による機械認識により、各種物品の真贋判定を行う。
ところで、皮革の製造おいては、原料となる動物皮から製品を加工するまでにおいて、7割近くの副廃棄物が発生することが知られている。例えば、上述した準備工程S1では、水漬け、石灰漬け等の処理を行うことによって、フレッシング屑と呼ばれる副廃棄物が約15〜20%生じる。また、なめし工程S2では、シェービング屑と呼ばれる副産物が約20%程度生じる。このように、皮革の製造においては、歩留まりが多く、その副産物を有効に活用する方法が試みられている。
具体的には、例えば、クロムを用いたなめし工程において、副産物として生成したシェービング屑は、コラーゲンやゼラチン、肥料、油脂、レザーボード、にかわ等として再利用されている。これらのうち、例えば、コラーゲンやゼラチン等は、皮革製品の製造に再利用されたり、工業用にかわの原料として使用されるようになっている。
上述のように、本実施の形態に係る皮革の加工方法においては、製造工程において使用する溶剤の安定同位体比率が天然存在比を超えるように制御されているので、各工程において処理された皮革に効率的に取り込ませることができ、その結果、副産物となってしまうシェービング屑等にも、天然存在比を上回る比率の安定同位体が取り込まれることとなる。したがって、本実施の形態に係る皮革の加工方法により皮革が製造される過程において生成する副産物も、皮革と同様に、安定同位体比率が天然存在比を超えたものとなる。
このことから、その副産物を、例えばコラーゲンやゼラチン等にすることによって、安定同位体比率が天然(自然)存在比を超えるコラーゲンやゼラチンを生成することができる。または、副産物を工業用にかわとして再利用することによって、安定同位体比率が天然存在比を超えるにかわを生成することができる。そしてこれにより、そのコラーゲン等を用いて皮革製品を用いた場合には、改めて安定同位体を添加しなくても、天然存在比を超える比率で安定同位体を含有した皮革製品を、安価に製造することができる。
また、近年では、環境対策として、皮革の製造工程のうち、なめし工程において使用したクロムなめし剤の排水処理等にも多くの技術が提案されている。具体的には、クロムなめし剤が含有されている排水を循環利用する方法や、クロムなめし剤を構成するクロム塩を回収後、再利用する方法等のような、いわゆるクロムリサイクル技術が注目されている。
本実施の形態に係る皮革の加工方法では、上述したように、なめし工程S3において、例えばなめし処理剤として、安定同位体比率が天然存在比を超える硫酸クロム等のなめし処理剤を用いて処理する。この場合に、なめし処理後に排出されるクロム塩を回収し、クロムリサイクル工程を経てなめし処理剤として再生し、再びなめし工程において使用すれば、新たに天然存在比を超える安定同位体を含むなめし処理剤を合成することなく、効率的に、天然存在比を超える安定同位体を含むなめし処理剤によるなめし処理を行うことが可能となる。
このように、本発明によれば、クロムリサイクルを効率的に行い、環境対策に寄与しながら、真贋判定を効果的に行うことが可能な皮革製品を製造することができる。
以下、本発明の一実施の形態について、実施例を用いてさらに詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
手袋用の原料革として、厚さ0.5mmのグルタルアルデヒド・アルミなめし剤で白なめししたジャージー革(半裁1枚=1.0kg)を使用した。この原料革に、下記のようにして再なめし処理と加脂処理をそれぞれ2回施した。なお、以下に記載する重量%は、革の重量を基準とした重量%である。
(第1の再なめし処理)
まず、試験用なめしドラム中に、100重量%の水を入れ、この水を35℃に保ちつつ、クロム塩混合型なめし剤(ヨークシャケミカル社製 パーポールPCNR)1重量%を溶解した。得られた溶液に、上述した原料革を20分間攪拌下で浸漬した。
次に、アミノシリコン樹脂(日華化学工業社製 ニッカシリコンAM202)2重量%を溶液に添加して、さらに40分間攪拌下で浸漬した。この後、溶液に酢酸ナトリウム1.5重量%と炭酸水素ナトリウム0.7重量%を添加して、溶液を中和した。さらに、溶液のpHが5.3となるように、炭酸水素ナトリウムを0.7重量%添加して、40分間攪拌下で浸漬した。得られた革を流水によりドラム中で水洗した。
(第2の再なめし処理)
まず、40℃に保たれた100重量%の水に、芳香族スルホン酸系合成なめし剤であるゼネカ社製シクネタンWFを3重量%、ゼネカ社製シクネタンPNを3重量%、亜硫酸化油(泰光油脂化学工業社製 ターコンFA−200)5重量%を溶解させた。得られた溶液に、革を60分間攪拌下で浸漬した。次に、溶液に蟻酸(12C:13C=10:90)を0.5重量%添加して、革を15分間攪拌下で浸漬した。得られた革を流水によりドラム中で水洗した。
(第1の加脂処理)
まず、50℃に保たれた150重量%の水に、白革用硫酸化油(ゼネカ社製コリレンF326)10重量%、白革用スルホン化油(サンプラス社製SKオイルHF)5重量%、亜硫酸化油(泰光油脂化学工業社製ターコンFA−200)3重量%、中性油(泰光油脂化学工業社製RNオイル)1重量%を溶解させた。得られた溶液に、革を90分間攪拌下で浸漬した。次に、溶液に蟻酸を1重量%添加して、革を15分間攪拌下で浸漬した。さらに、溶液に蓚酸を0.5重量%添加して、革を15分間攪拌下で浸漬した。得られた革を取り出し、水洗、馬かけ、ガラ干し、ミーリングを施した。
(第2の加脂処理)
まず、50℃に保たれた200重量%の水に、アンモニア水を1重量%添加した溶液に革を40分間攪拌下で浸漬した(水戻し)。次に、蟻酸(12C:13C=10:90)0.5重量%を含む50℃の水100重量%を上記溶液に添加し、革を20分間攪拌下で浸漬した。
さらに、溶液に白革用硫酸化油(ゼネカ社製 コリレンF326)7重量%、白革用スルホン化油(サンプラス社製 SKオイルHF)5重量%、中性油(泰光油脂化学工業社製 RNオイル)1重量%溶解し、革を60分間攪拌下で浸漬した。次に、溶液に蟻酸(12C:13C=10:90)を1重量%添加して、革を15分間攪拌下で浸漬した。更に、溶液に蓚酸を0.5重量%添加して、革を15分間攪拌下で浸漬した。
この後、溶液にカチオン加脂剤(クラリアント社製 カタリックスPNS)を2重量%加え、革を10分間攪拌下で浸漬した。得られた革を取り出し、充分水洗し、馬かけ、セッター、バキューム(低温)、ミーリング、ネット張り、ステーキングを施した。得られた革に、赤色のアニオン系水性染料を用いて、インクジェットプリンタ(キャノン社製 BJC−820J)の改造機により加色した。
以上のように、再なめし処理及び加脂処理において用いる溶剤として、安定同位体である13Cの存在比率が天然存在比を超える比率である、12C:13C=10:90の割合で含有する溶剤を用いて皮革を加工した。このようにして加工された皮革を、赤外分光光度計を用いて赤外線吸収スペクトルにより、13Cの存在比率を測定した。
その結果、皮革のどの部分を赤外線吸収スペクトルで分析しても、13Cを検知することができる皮革を製造することができた。これにより、この皮革素材を用いて皮革製品を製造することにより、13Cの存在に基づいて、真正品と模倣品の真贋判定を行うことができることが分かった。

Claims (10)

  1. 皮革製造工程において、安定同位体が天然存在比を超える比率で含有されている溶剤を用いて処理する皮革加工方法。
  2. 上記皮革製造工程中のなめし工程において、安定同位体が天然存在比を超える比率で含有されているなめし剤を用いることを特徴とする請求項1に記載の皮革加工方法。
  3. 上記皮革製造工程中の再なめし工程において、安定同位体が天然存在比を超える比率で含有されているなめし剤を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載の皮革加工方法。
  4. 上記皮革製造工程中の染色及び加脂工程において、安定同位体が天然存在比を超える比率で含有されている染色剤又は加脂剤を用いることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の皮革加工方法。
  5. 上記皮革処理工程中の仕上げ工程において、安定同位体が天然存在比を超える比率で含有されている仕上げ剤を用いることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の皮革加工方法。
  6. 上記安定同位体は、炭素、酸素、水素、窒素から選択される少なくとも1つの安定同位体であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の皮革加工方法。
  7. 上記請求項1乃至5の何れかに記載の皮革加工方法により加工された皮革素材であって、安定同位体が天然存在比を超える比率で含有されてなることを特徴とする皮革素材。
  8. 上記請求項7記載の皮革素材を用いて生産された皮革製品。
  9. 上記請求項7記載の皮革素材を用いて皮革製品を製造する際に発生する革屑を用いて生産された再生皮革。
  10. 上記請求項7記載の皮革素材を用いて皮革製品を製造する際に発生する革屑を用いて生成されたにかわ。
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