JP2012026361A - ガスタービンエンジン - Google Patents

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Abstract

【課題】ファンを備えるガスタービンエンジンにおいて、着氷しない環境におけるファンの空力性能の低下を防止しつつ、着氷環境においてファン翼間の氷による閉塞を防止する。
【解決手段】環状に配列される複数のファン翼の上流側に位置すると共に、防氷コーティングが施されたコーティング領域R1と当該防氷コーティングが施されていない露出領域R2とによってパターニングされたパターニング領域Rを備え、ファン翼の翼弦方向から見て、コーティング領域R1のファン翼側の端部である翼側端部R1aは、隣り合うファン翼の前縁間に位置しかつ幅が当該前縁間よりも狭い。
【選択図】図2

Description

本発明は、ガスタービンエンジンに関するものである。
ガスタービンエンジンのなかにはファンを備え、当該ファンの駆動によって空気を取込むものがある。例えば、旅客機に搭載されるガスタービンエンジンの一種であるジェットエンジンは、一般的に、ファンを備えている。
このようなファンは、通常、ファン翼として、環状に配列されて回転駆動される複数のファン動翼や、同じく環状に配列されて空気の整流を行うファン静翼等を備えている。
ところで、このようなガスタービンエンジンは、航空機や船舶に搭載され、零度以下の低温環境に晒されることがあり、ファン翼に着氷する場合がある。このようにファン翼に着氷し、この着氷した氷が成長すると、ファン翼間を塞ぎ、ファンにおける圧力損失が高くなり、ファン性能が低下する。
このため、特許文献1では、ジェットエンジンにおいて、ファン動翼の上流側に設置されるノーズコーンの表面に複数のフィンを立てて流路を形成し、ファン動翼に流れ込む空気流をファン動翼に直接触れにくい構成を採用することによって、ファン動翼への着氷を防止する技術が提案されている。
米国特許第3794444号明細書
しかしながら、ノーズコーンの表面に流路を形成するフィンを立てた場合には、ノーズコーンの表面における空気の流れを規制することなり、ノーズコーンの表面が滑らかである場合と比較して、圧力損失が大きくなる。
ノーズコーンの表面における圧力損失の増大よりも、ファン動翼間の閉塞の方が性能への影響が大きいことから、着氷環境においては、ノーズコーンにフィンを立てるメリットが大きい。ところが、周囲の温度が氷点よりも高い場合には、ノズルコーンの表面に立てたフィンのメリットはなく、フィンは、圧力損失を増大させてファンの性能を低下することのみに機能する。
なお、着氷による翼間の閉塞は、ジェットエンジンのファン動翼のみにおける問題ではなく、着氷環境に晒されるガスタービンエンジン全般における問題である。また、ファンの動翼に限らず、静翼においても同様の問題が生じる可能性がある。
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ファンを備えるガスタービンエンジンにおいて、着氷しない環境におけるファンの空力性能の低下を防止しつつ、着氷環境においてファン翼間の氷による閉塞を防止することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
第1の発明は、ファンを備えるガスタービンエンジンであって、環状に配列される複数のファン翼の上流側に位置すると共に、防氷コーティングが施されたコーティング領域と当該防氷コーティングが施されていない露出領域とによってパターニングされたパターニング領域を備え、前記ファン翼の翼弦方向から見て、前記コーティング領域の前記ファン翼側の端部である翼側端部は、隣り合う前記ファン翼の前縁間に位置しかつ幅が当該前縁間よりも狭いという構成を採用する。
第2の発明は、上記第1の発明において、前記ファン翼が動翼であり、前記翼側端部にて前記コーティング領域と前記露出領域との境界が、前記動翼の翼弦方向から見て、前記動翼の正圧面から離間して配置されているという構成を採用する。
第3の発明は、上記第2の発明において、上記翼側端部にて上記コーティング領域と上記露出領域との境界線と、上記動翼のハブ端のキャンバラインの接線とが直線で接続されているという構成を採用する。
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、前記パターニング領域が、ノーズコーンの表面に設けられているという構成を採用する。
第5の発明は、上記第4の発明において、前記コーティング領域が、前記ノーズコーンの回転方向に中央部が突出して湾曲しているという構成を採用する。
第6の発明は、上記第1〜第5いずれかの発明において、前記コーティング領域は、前記ファン翼の前縁間ごとに設けられているという構成を採用する。
本発明によれば、ファン翼の上流側に位置するパターニング領域において、防氷コーティングが施されたコーティング領域と当該防氷コーティングが施されていない露出領域とが設けられている。このため、着氷環境に晒されると、パターニング領域において、コーティング領域には着氷せず、露出領域のみ着氷して氷が成長し氷壁が形成される。この結果、コーティング領域を挟んで氷壁が形成され、これらの氷壁により、流路が形成される。
さらに、本発明によれば、コーティング領域のファン翼側の端部である翼側端部は、ファン翼の翼弦方向から見て、隣り合うファン翼の前縁間に位置し、さらに幅が当該前縁間よりも狭い。このため、露出領域に氷が付着して成長すると、隣り合う氷壁によって形成される流路の側壁は、ファン翼の少なくとも一方の翼面から離間して配置されることとなる。
そして、このような氷壁による流路が形成された結果、ファン翼(例えばハブ側)の翼面に吹き付けられる空気量が減少し、ファン翼への着氷を抑制することができる。
つまり、本発明によれば、着氷環境において、ファン翼間の氷による閉塞を防止することができる。
また、本発明によれば、着氷環境でなければ、パターニング領域に氷壁が形成されず、パターニング領域がフラットな状態となる。
このため、本発明によれば、着氷しない環境におけるファンの空力性能の低下を防止することができる。
このように本発明によれば、ファンを備えるガスタービンエンジンにおいて、着氷しない環境におけるファンの空力性能の低下を防止しつつ、着氷環境においてファン翼間の氷による閉塞を防止することが可能となる。
本発明の一実施形態におけるジェットエンジンの概略構成を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態におけるジェットエンジンが備えるノーズコーンを含む拡大図である。 本発明の一実施形態におけるジェットエンジンが備えるノーズコーンを模式的に示す断面図である。
以下、図面を参照して、本発明に係るガスタービンエンジンの一実施形態について説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。また、以下の説明においては、ガスタービンエンジンの一例として、2軸のジェットエンジンを挙げて説明を行う。
図1は、本実施形態のジェットエンジンS1の概略構成を模式的に示す断面図である。この図に示すように、本実施形態のジェットエンジンS1は、アウターカウル1と、インナーカウル2と、ファン3と、低圧圧縮機4と、高圧圧縮機5と、燃焼器6と、高圧タービン7と、低圧タービン8と、シャフト9と、主ノズル10を備えている。
アウターカウル1は、ジェットエンジンS1のなかで最も上流側に配置された円筒形部材であり、空気の流れ方向の上流端及び下流端が開口端とされ、上流端が空気取込口1aとして機能するものである。
そして、アウターカウル1は、図1に示すように、その内部にインナーカウル2の上流側及びファン3を収容している。
インナーカウル2は、アウターカウル1よりも小径の円筒形部材であり、アウターカウル1と同様に、空気の流れ方向の上流端及び下流端が開口端とされている。
このインナーカウル2は、ジェットエンジンS1の主要部である低圧圧縮機4と、高圧圧縮機5と、燃焼器6と、高圧タービン7と、低圧タービン8と、シャフト9と、主ノズル10等を内部に収容している。
なお、インナーカウル2の内部は、アウターカウル1に取込まれた空気の一部及び燃焼器6で生成される高温ガスが通る流路(以下、コア流路11と称する)とされている。
また、図1に示すように、アウターカウル1とインナーカウル2とは、空気の流れ方向から見て同心円状に配置されており、隙間を空けて配置されている。そして、アウターカウル1とインナーカウル2との隙間は、アウターカウル1内に取込まれた空気のうち、コア流路11に流れこまない残部を外部に排出するバイパス流路12とされている。
また、アウターカウル1及びインナーカウル2は、不図示のパイロンにより航空機の機体に取り付けられている。
ファン3は、アウターカウル1内に流れ込む空気流を形成するものであり、シャフト9に固定される複数のファン動翼3aと、バイパス流路12に配置される複数のファン静翼3bと、ノーズコーン3cとを備えている。
なお、後に詳説するシャフト9は、空気の流れ方向から見て、半径方向に2つに分割されている。より詳細には、シャフト9は、芯部である中実の第1シャフト9aと、第1シャフト9aを囲って外側に配置される中空の第2シャフト9bとによって構成されている。ファン動翼3aは、シャフト9の第1シャフト9aに固定されている。
ノーズコーン3cは、ファン動翼3aの上流側に設置されており、アウターカウル1の中央に取込まれた空気をファン動翼3aに案内するものである。このノーズコーン3cは、上流側に頂点が向けられた円錐形状を有している。
図2は、ノーズコーン3cを含む拡大図であり、(a)が斜視図、(b)が側面図である。
図2に示すように、本実施形態のジェットエンジンにおいては、ノーズコーン3cの表面3c1が、防水コーティングが施されたコーティング領域R1と防水コーティングが施されていない露出領域とR2とによってパターニングされたパターニング領域Rとされている。このパターニング領域Rは、空気の流れ方向においてファン動翼3aの設置領域と隣接されている。
コーティング領域R1は、ファン動翼3aの数だけ設けられている。すなわち、コーティング領域R1は、ファン動翼3aの前縁間ごとに複数設けられている。
各コーティング領域R1は、ノーズコーン3cの先端からノーズコーン3cの全長に亘って設けられている。
また、図2に示すように、コーティング領域R1は、ノーズコーン3cの回転方向に膨らんで湾曲しており、これによって上流端側はファン3の回転軸に沿い、下流端側がファン動翼3aのハブ端のキャンバラインに沿う形状とされている。
そして、図2(b)に示すように、コーティング領域R1のファン動翼3a側の端部である翼側端部R1aは、隣り合うファン動翼3aの前縁間に位置し、かつ、幅が当該前縁間よりも狭い。
より詳細には、翼側端部R1aにおいて、2つある露出領域との境界K1,K2のうち、ノーズコーン3cの回転方向上流側の境界K1は、同じく回転方向上流側に位置するファン動翼3aの負圧面3a2(翼面)と一致して配置されている。また、ノーズコーン3cの回転方向下流側の境界K2は、同じく回転方向下流側に位置するファン動翼3aの正圧面3a1(翼面)から離間して配置されている。
なお、図2(b)に示すように、翼側端部R1aにおいて、境界K1側におけるコーティング領域R1と露出領域R2との境界線は、ファン動翼3aの翼弦方向から見て、ファン動翼3aのハブ端のキャンバラインの接線と真っ直ぐに接続されている。つまり、境界K1側におけるコーティング領域R1と露出領域R2との境界線は、ファン動翼3aのハブ端のキャンバラインに対して滑らかに接続されている。
なお、コーティング領域R1に塗布される防氷コーティングの形成方法は、例えば、特開2007−296511号公報に詳細に記載されているため、ここでの説明は割愛する。
また、防氷コーティングの材料としては、上記特開2007−296511号公報に記載された材料の他、例えば、特開2007−196383号公報、特開平9−279056号公報または以下のURLに記載された超撥水材料を用いることができる。
1.http://rnavi.ndl.go.jp/mokuji_html/000003660472.html
2.http://keytech.ntt-at.co.jp/environ/prd_4001.html
3.http://www.toeidenki.co.jp/html_page/chou_hassui.htm
4.http://www.nipponpaint.co.jp/r&d/tc17/s3.pdf
5.http://www.shochou-kaigi.org/sysimg/research/16.pdf
6.http://www-surface.phys.s.u-tokyo.ac.jp/sssj/Vol26/26-09/9g559-563.pdf
7.http://www.iis-net.or.jp/files/wing21/011/20080324102716502.pdf
8.http://www.nims.go.jp/news/press/2008/01/200801230/p200801230.pdf
なお、図2に示すように、露出領域R2は、防氷コーティングの施されていないノーズコーン3cの裸面が露出する領域であり、コーティング領域R1同士の間に設けられている。
図1に戻り、低圧圧縮機4は、高圧圧縮機5よりも上流側に配置されており、ファン3によってコア流路11に送り込まれた空気を圧縮するものである。
この低圧圧縮機4は、シャフト9の第1シャフト9aに固定される動翼4aと、インナーカウル2の内壁に固定される静翼4bとを備えている。
なお、動翼4aは、環状に等間隔で複数配列されて1つの動翼列を構成している。また、静翼4bも環状に等間隔で複数配列されて1つの静翼列を構成している。そして、低圧圧縮機4では、空気の流れ方向において、静翼列から始まり、静翼列と動翼列とが交互に複数配置されている。
高圧圧縮機5は、図1に示すように、低圧圧縮機4よりも下流側に配置されており、低圧圧縮機4から送り込まれた空気をさらに高圧に圧縮するものである。
この高圧圧縮機5は、シャフト9の第2シャフト9bに固定される動翼5aと、インナーカウル2の内壁に固定される静翼5bとを備えている。
なお、低圧圧縮機4と同様に、動翼5aは、環状に等間隔で複数配列されて1つの動翼列を構成している。また、静翼5bも環状に等間隔で複数配列されて1つの静翼列を構成している。そして、空気の流れ方向において、静翼列と動翼列とが交互に複数配置されている。
燃焼器6は、高圧圧縮機5の下流側に配置されており、高圧圧縮機5から送り込まれる圧縮空気と、不図示のインジェクタから供給される燃料との混合気を燃焼することによって高温ガスを生成するものである。
高圧タービン7は、燃焼器6の下流側に配置されており、燃焼器6から排出される高温ガスから回転動力を回収するものである。
この高圧タービン7は、シャフト9の第2シャフト9bに固定される複数のタービン動翼7aと、コア流路11に固定される複数のタービン静翼7bとを備えており、タービン静翼7bに整流された高温ガスをタービン動翼7aで受けて第2シャフト9bを回転駆動する。
低圧タービン8は、高圧タービン7の下流側に配置されており、高圧タービン7を通過した高温ガスからさらに回転動力を回収するものである。
この低圧タービン8は、シャフト9の第1シャフト9aに固定される複数のタービン動翼8aと、コア流路11に固定される複数のタービン静翼8bとを備えており、タービン静翼8bによって整流された高温ガスをタービン動翼8aで受けて第1シャフト9aを回転駆動する。
シャフト9は、空気の流れ方向に向いて配置される棒状部材であり、タービン(高圧タービン7及び低圧タービン8)にて回収された回転動力をファン3及び圧縮機(低圧圧縮機4及び高圧圧縮機5)に伝達するものである。
このシャフト9は、上述のように、半径方向に分割されて、第1シャフト9aと、第2シャフト9bとによって構成されている。
そして、第1シャフト9aは、上流側にファン3のファン動翼3a及び低圧圧縮機4の動翼4aが取り付けられ、下流側に低圧タービン8のタービン動翼8aが取り付けられている。
また、第2シャフト9bは、上流側に低圧圧縮機4の動翼4a及び高圧圧縮機5の動翼5aが取り付けられ、下流側に高圧タービン7のタービン動翼7aが取り付けられている。
主ノズル10は、低圧タービン8のさらに下流側に設けられると共に、ジェットエンジンS1の後方に向けて低圧タービン8を通過した高温ガスを噴射するものである。
そして、この主ノズル10から高温ガスが噴射される際の反作用によってジェットエンジンS1の推力が得られる。
このような構成を有する本実施形態のジェットエンジンS1においては、定常状態では、ファン3の駆動によってアウターカウル1内に空気が取込まれ、その一部がコア流路13に流入する。
そして、コア流路13に流入した空気は、低圧圧縮機4及び高圧圧縮機5によって順次圧縮され、燃焼器6に供給される。
燃焼器6に供給された圧縮空気は、燃料と混合されて混合気とされる。そして、当該混合気が燃焼器6によって燃焼されることによって高温ガスが生成される。
燃焼器6において生成された高温ガスは、高圧タービン7及び低圧タービン8を通過して主ノズル10からジェットエンジンS1の後方に噴射される。これによって推進力が得られる。
なお、高温ガスが高圧タービン7を通過する際に、高圧タービン7によって回転動力が回収され、第2シャフト9bを介して高圧圧縮機5の動翼5aが回転駆動される。
また、高温ガスが低圧タービン8を通過する際に、低圧タービン8によって回転動力が回収され、第1シャフト9aを介してファン3のファン動翼3a及び低圧圧縮機4の動翼4aが回転駆動される。
ここで、本実施形態のジェットエンジンS1においては、ファン動翼3aの上流側に位置するパターニング領域Rであるノーズコーン3cの表面3c1に、防氷コーティングが施されたコーティング領域R1と当該防氷コーティングが施されていない露出領域R2とが設けられている。このため、ジェットエンジンS1が氷点下等の着氷環境に晒されると、ノーズコーン3cの表面3c1において、図3に示すように、コーティング領域R1には着氷せず、露出領域R2のみに着氷して氷が成長し氷壁Xが形成される。この結果、コーティング領域R2を挟んで氷壁Xが形成され、これらの氷壁Xにより、流路Yが形成される。
さらに、本実施形態のジェットエンジンS1においては、コーティング領域R1のファン動翼3a側の端部である翼側端部R1aは、ファン動翼3aの翼弦方向から見て、隣り合うファン動翼3aの前縁間に位置し、さらに幅が当該前縁間よりも狭い。このため、露出領域R2に氷が付着して成長すると、隣り合う氷壁Xによって形成される流路Yの側壁(すなわち氷壁Xの側面)は、ファン動翼3aの一方の翼面(本実施形態においては正圧面3a1)から離間して配置されることとなる。
そして、上述のような氷壁Xによる流路Yが形成された結果、ファン動翼3aの翼面に吹き付けられる空気量が減少し、ファン動翼3aの着氷を抑制することができる。
また、本実施形態のジェットエンジンS1によれば、着氷環境でなければ、ノーズコーン3cの表面3c1に氷壁Xが形成されず、ノーズコーン3cの表面3c1がフラットな状態となる。
このため、本実施形態のジェットエンジンS1によれば、着氷しない環境におけるファン3の空力性能の低下を防止することができる。
このように本実施形態のジェットエンジンS1によれば、着氷しない環境におけるファン3の空力性能の低下を防止しつつ、着氷環境においてファン動翼3a間の氷による閉塞を防止することが可能となる。
また、一般的には、ファン動翼のハブ側の正圧面が空気中に含まれる過冷却水を多く受け、また遠心力小さく氷が剥がれ難いため着氷しやすい。これに対して、本実施形態のジェットエンジンS1においては、ノーズコーン3cの回転方向下流側の境界K2(コーティング領域R1と露出領域R2との境界)が、同じく回転方向下流側に位置するファン動翼3aの正圧面3a1(翼面)から離間して配置されている。
このため、流路Yの側壁がファン動翼3aの正圧面3a1から離間することとなり、最も着氷しやすいファン動翼3aの正圧面3a1に空気流が触れることを防止し、ファン動翼3aへの着氷をより効果的に防止することができる。
また、本実施形態のジェットエンジンS1においては、翼側端部R1aにおいて、境界K1側におけるコーティング領域R1と露出領域R2との境界線と、ファン動翼3aのハブ端のキャンバラインの接線とが直線で接続されている。
このため、流路Yを流れる空気流をファン動翼3a間にスムーズに導くことができ、ファン3における圧力損失が増大することを防止することができる。
また、本実施形態のジェットエンジンS1においては、各コーティング領域R1が、ノーズコーン3cの回転方向に中央部が突出して湾曲している。
このため、コーティング領域R1は、上流端側はファン3の回転軸に沿い、下流端側がファン動翼3aのハブ端のキャンバラインに沿う形状とすることができる。
コーティング領域R1を、上述の形状とすることによって、ファン3の回転軸方向からノーズコーン3cに流入する空気流をスムーズにファン動翼3aに導くことができ、ファン3における圧力損失が増大することを防止することができる。
また、本実施形態のジェットエンジンS1においては、コーティング領域R1がファン動翼3aの前縁間ごとに設けられている。
このため、全てのファン動翼3a間が、氷によって閉塞することを防止することができる。
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上記実施形態においては、ファン動翼3aの翼弦方向から見て、全てのファン動翼3a間にコーティング領域R1が形成されている構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、1つでもコーティング領域R1があれば効果を期待できるため、全てのファン動翼3a間にコーティング領域R1が設けられている必要はない。
また、上記実施形態においては、パターニング領域Rがノーズコーン3cの表面3c1全体である構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、ノーズコーン3cの表面3c1の一部の領域をパターニング領域とすることも可能である。
また、上記実施形態においては、本発明のファン翼がファン動翼3a(動翼)である構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明のファン翼をファン静翼3bとして適用することも可能である。この場合には、ファン静翼3bの上流側に位置するアウターカウル1あるいはインナーカウル2の壁面をパターニング領域とすれば良い。
また、上記実施形態においては、本発明のガスタービンエンジンをジェットエンジンに適用した例について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、他のガスタービンエンジンに適用することも可能であり、例えば、船舶に搭載されるガスタービンエンジンに適用することもできる。
S1……ジェットエンジン(ガスタービンエンジン)、3……ファン、3a……ファン動翼(ファン翼)、3a1……正圧面(翼面)、3a2……負圧面(翼面)、3b……静翼(ファン翼)、R……パターニング領域、R1……コーティング領域、R1a……翼側端部、R2……露出領域、K1,K2……境界、X……氷壁、Y……流路

Claims (6)

  1. ファンを備えるガスタービンエンジンであって、
    環状に配列される複数のファン翼の上流側に位置すると共に、防氷コーティングが施されたコーティング領域と当該防氷コーティングが施されていない露出領域とによってパターニングされたパターニング領域を備え、
    前記ファン翼の翼弦方向から見て、前記コーティング領域の前記ファン翼側の端部である翼側端部は、隣り合う前記ファン翼の前縁間に位置しかつ幅が当該前縁間よりも狭いことを特徴とするガスタービンエンジン。
  2. 前記ファン翼が動翼であり、
    前記翼側端部にて前記コーティング領域と前記露出領域との境界が、前記動翼の翼弦方向から見て、前記動翼の正圧面から離間して配置されていることを特徴とする請求項1記載のガスタービンエンジン。
  3. 前記翼側端部にて前記コーティング領域と前記露出領域との境界線と、前記動翼のハブ端のキャンバラインの接線とが直線で接続されていることを特徴とする請求項2記載のガスタービンエンジン。
  4. 前記パターニング領域は、ノーズコーンの表面に設けられていることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のガスタービンエンジン。
  5. 前記コーティング領域は、前記ノーズコーンの回転方向に中央部が突出して湾曲していることを特徴とする請求項4記載のガスタービンエンジン。
  6. 前記コーティング領域は、前記ファン翼の前縁間ごとに設けられていることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載のガスタービンエンジン。
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