JP2012018891A - 正極活物質、正極及び非水二次電池 - Google Patents

正極活物質、正極及び非水二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】サイクル特性に優れた非水二次電池を与える正極活物質を提供することを課題とする。
【解決手段】Lixy1-zSiz4(ここで、Mは、Fe及びMnのいずれか一方又は両方と、Co、Ni、Zr、Sn、Al及びYからなる群から選択される少なくとも1種の元素との組み合わせ又はFeとMnとの組み合わせ、0≦x≦2、0.8≦y≦1.2、0<z≦1)で表される主成分としてのリチウム含有金属酸化物と、ハロゲン元素とを含むことを特徴とする正極活物質により上記課題を解決する。
【選択図】図1

Description

本発明は、正極活物質、正極及び非水二次電池に関する。更に詳しくは、本発明は、サイクル特性に優れた非水二次電池を与えうる正極活物質、それを用いた正極及び非水二次電池に関する。
非水二次電池として、リチウム二次電池が実用化されており、広く普及している。更に近年、リチウム二次電池は、ポータブル電子機器用の小型のものだけでなく、車載用や電力貯蔵用等の大容量のデバイスとしても注目されている。そのため、安全性やコスト、寿命等の要求がより高くなっている。
リチウム二次電池は、その主たる構成要素として正極、負極、電解液、セパレータ、及び外装材を有する。また、上記正極は、正極活物質、導電材、集電体及びバインダー(結着剤)により構成される。
一般に、正極活物質としては、コバルト酸リチウム(LiCoO2)に代表される層状遷移金属酸化物が用いられている。しかしながら、層状遷移金属酸化物は、満充電状態において、150℃前後の比較的低温で酸素脱離を起こし易く、酸素脱離により電池の熱暴走反応が起こり得る。従って、このような正極活物質を有する電池をポータブル電子機器に用いる場合、電池の発熱、発火等の事故が発生する恐れがある。
このため、構造が安定し異常時に酸素を放出せず、LiCoO2より安全なオリビン型構造を有するリチウム含有複合酸化物、例えばリン酸鉄リチウム(LiFePO4)が期待されている。リン酸鉄リチウムは、地殻存在度が低いコバルトを含まないため、比較的安価であるという利点もある。また、リン酸鉄リチウムは、層状遷移金属酸化物よりも、構造的に安定であるという利点もある。
しかしながら、リン酸鉄リチウムは電気抵抗が大きいため、十分な放電容量が得られないという問題がある。これに対し、リン酸鉄リチウムに金属元素及びハロゲン元素を含有させることによりリン酸鉄リチウムの導電性を向上させる(電気抵抗を低減させる)方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
WO2005/041327
しかしながら、特許文献1の方法では、十分なサイクル特性が得られていなかった。そのため、充放電における平均電位を低下させることなく、サイクル特性に優れた正極活物質を提供することが望まれていた。
かくして本発明によれば、下記一般式(1)
Lixy1-zSiz4 …(1)
(ここで、Mは、Fe及びMnのいずれか一方又は両方と、Co、Ni、Zr、Sn、Al及びYからなる群から選択される少なくとも1種の元素との組み合わせ又はFeとMnとの組み合わせ、0≦x≦2、0.8≦y≦1.2、0<z≦1)
で表される主成分としてのリチウム含有金属酸化物と、ハロゲン元素とを含むことを特徴とする正極活物質が提供される。
また、本発明によれば、上記正極活物質と、導電材と、バインダーとを含むことを特徴とする正極が提供される。
更に、本発明によれば、上記正極と、負極と、電解質と、セパレータとを有することを特徴とする非水電解質二次電池が提供される。
本発明によれば、リン酸鉄リチウムに金属元素及びSiを含有させたリチウム含有金属酸化物と、ハロゲン元素とを含む正極活物質により、導電性を向上でき、充放電に伴う体積変化を抑制できるため、サイクル特性が改善した正極及び非水二次電池を提供できる。また、充放電に伴う体積変化の抑制と充放電の平均電位の低下の抑制を両立できる。
また、ハロゲン元素が、正極活物質中、0.1〜10atm%含まれている場合、サイクル特性が改善され、充放電に伴う体積変化が抑制され、充放電の平均電位の低下が抑制された正極及び非水二次電池を提供できる。
更に、ハロゲン元素が、一般式(1)中のSiのモル数に対して5〜40モル%含まれている場合、サイクル特性が改善され、充放電に伴う体積変化が抑制され、充放電の平均電位の低下が抑制された正極及び非水二次電池を提供できる。
また、zが、0.001〜0.05の範囲である場合、サイクル特性が改善され、充放電に伴う体積変化が抑制され、充放電の平均電位の低下が抑制された正極及び非水二次電池を提供できる。
更に、Mが、主成分としてFeを含むである場合、サイクル特性が改善され、充放電に伴う体積変化が抑制され、充放電の平均電位の低下が抑制された正極及び非水二次電池を提供できる。
また、Mが、主成分としてのFeと、1atm%以上のFe以外の他の元素とを含む場合、サイクル特性が改善され、充放電に伴う体積変化が抑制され、充放電の平均電位の低下が抑制された正極及び非水二次電池を提供できる。
二次電池の概略断面図である。
以下、本発明について詳しく説明する。
(I)正極活物質
正極活物質は、リチウム含有金属酸化物と、ハロゲン元素とを含む。
(1)リチウム含有複合酸化物
リチウム含有複合酸化物は、下記一般式(1)で表される。
Lixy1-zSiz4 …(1)
式中、Mは、Fe及びMnのいずれか一方又は両方と、Co、Ni、Zr、Sn、Al及びYからなる群から選択される少なくとも1種の元素との組み合わせ又はFeとMnとの組み合わせである。これらの組み合わせからMを選択することで、充放電の繰り返し(Liの挿入脱離)に伴うリチウム含有複合酸化物の物理的なストレス(体積収縮膨張)を防止できるので、より寿命の長い正極活物質を提供できる。
また、Mの価数は、特に限定されない。具体的には、Mnは2〜7価を、Feは2〜4価及び6価を、コバルト及びニッケルは1〜4価を、Zr及びTiは2〜4価を、Snは2価及び4価を、Al及びYは3価を、Nb及びVは2〜5価を取り得る。Mは、単一の価数の元素を使用することもでき、複数の価数の元素の混合物も使用できる。Sn及びZrについては、リチウム含有金属酸化物の製造時及び充放電時に価数の変化が少ないという観点から、4価のものを使用することが好ましい。Y及びAlは3価のもののみであるので、これらを使用すれば、リチウム含有金属酸化物の製造時及び充放電時に価数の変化を少なくすることができる。Feについては、Liの挿入及び脱離性を向上させる観点から、2価のものを使用することが好ましい。なお、混合物を使用する場合、便宜上一般式(1)中のyを規定するための価数は、平均値を意味する。
更に、MにはFe及び/又はMnが主成分として含まれていることが好ましい。Fe及び/又はMnを含むことで、リチウム含有複合酸化物の製造に、より安価な原料を使用できる。なお、主成分とは50atm%以上を意味する。
また、xは0≦x≦2の範囲である。また、xは、リチウム含有複合酸化物を構成するLi以外の元素の種類や、充電や放電により増減する。好ましくは、xの範囲は0.8≦x≦1.2である。
また、yは0.8≦y≦1.2の範囲である。この範囲であれば充放電が可能なオリビン構造を有するリチウム含有複合酸化物を提供できる。好ましくは、yの範囲は0.9≦y≦1.1である。
また、zは0<z≦1の範囲である。この範囲であれば、充放電が可能なオリビン構造を有するリチウム含有複合酸化物を提供できる。好ましくは、zの範囲は0.1≦z≦0.5である。
リチウム含有複合酸化物の具体例としては、
Lix(Fe,Ni)y1-zSiz4
(0.8≦x≦1.2、0.8≦y≦1.2、0<z≦0.5)、
Lix(Fe,Mn)y1-zSiz4
(0.8≦x≦1.2、0.8≦y≦1.2、0<z≦0.5)、
Lix(Fe,Zr)y1-zSiz4
(0.8≦x≦1.2、0.8≦y≦1.2、0<z≦0.5)、
Lix(Fe,Sn)y1-zSiz4
(0.8≦x≦1.2、0.8≦y≦1.2、0<z≦0.5)、
Lix(Fe,Y)y1-zSiz4
(0.8≦x≦1.2、0.8≦y≦1.2、0<z≦0.5)、
Lix(Fe,Ti)y1-zSiz4
(0.8≦x≦1.2、0.8≦y≦1.2、0<z≦0.5)、
Lix(Fe,Nb)y1-zSiz4
(0.8≦x≦1.2、0.8≦y≦1.2、0<z≦0.5)、
Lix(Fe,V)y1-zSiz4
(0.8≦x≦1.2、0.8≦y≦1.2、0<z≦0.5)、
Lix(Mn,Ni)y1-zSiz4
(0.8≦x≦1.2、0.8≦y≦1.2、0<z≦0.5)、
Lix(Mn,Zr)y1-zSiz4
(0.8≦x≦1.2、0.8≦y≦1.2、0<z≦0.5)、
Lix(Mn,Sn)y1-zSiz4
(0.8≦x≦1.2、0.8≦y≦1.2、0<z≦0.5)、
Lix(Mn,Y)y1-zSiz4
(0.8≦x≦1.2、0.8≦y≦1.2、0<z≦0.5)、
Lix(Mn,Ti)y1-zSiz4
(0.8≦x≦1.2、0.8≦y≦1.2、0<z≦0.5)、
Lix(Mn,Nb)y1-zSiz4
(0.8≦x≦1.2、0.8≦y≦1.2、0<z≦0.5)、
Lix(Mn,V)y1-zSiz4
(0.8≦x≦1.2、0.8≦y≦1.2、0<z≦0.5)、
等を挙げることができる。Mが複数の元素から構成されている場合、それぞれの原子%の値は、M全量に対して、0原子%より多く、100原子%未満の範囲のいずれの値をも取り得る。
正極活物質として使用する観点から、特に好ましいリチウム含有複合酸化物は、
Lix(Fe,Zr)y1-zSiz4
(0.8≦x≦1.2、0.8≦y≦1.2、0<z≦0.5)、
Lix(Fe,Sn)y1-zSiz4
(0.8≦x≦1.2、0.8≦y≦1.2、0<z≦0.5)、
Lix(Fe,Y)y1-zSiz4
(0.8≦x≦1.2、0.8≦y≦1.2、0<z≦0.5)、
Lix(Fe,Ti)y1-zSiz4
(0.8≦x≦1.2、0.8≦y≦1.2、0<z≦0.5)、
Lix(Fe,Nb)y1-zSiz4
(0.8≦x≦1.2、0.8≦y≦1.2、0<z≦0.5)、
Lix(Fe,V)y1-zSiz4
(0.8≦x≦1.2、0.8≦y≦1.2、0<z≦0.5)、
である。なお、上記具体例において、Mを構成するFe及び/又はMnの割合は、全Mの0.75〜0.99atm%であることが好ましく、0.85〜0.95atm%であることがより好ましい。
リチウム含有複合酸化物は、通常粒子の形状で使用される。一次粒子の粒径は、リチウムイオンの挿入脱離の効率を高めるために、好ましくは1μm以下、より好ましくは10nm〜1μmである。一次粒子の粒径の下限は、10nm程度が挿入脱離の効率と製造コストとの兼ね合いから現実的である。なお、一次粒子の粒径は、SEMによる直接観察及びレーザー回折・散乱法による粒度分布測定装置により測定できる。
二次粒子の粒径は、リチウムイオンの挿入脱離の効率を高めるために、好ましくは100μm以下、より好ましくは10nm〜100μmである。なお、二次粒子の粒径は、SEMによる直接観察及びレーザー回折・散乱法による粒度分布測定装置により測定できる。
(2)ハロゲン元素
正極活物質は、ハロゲン元素を含有していることにより、充放電における平均電位を低下させることなく、サイクル特性を向上できる。
ここで、ハロゲン元素は、リチウム含有金属酸化物の粒子表面に主に存在していると発明者等は推測している。そのため、粒子表面の被覆されている炭素中にもハロゲン元素が含有されていると推測している。このことにより、粒子表面を被覆している炭素の結晶性を向上させるような触媒作用をハロゲン元素が付与していると推測している。
ハロゲン元素としては、フッ素、塩素、臭素等が挙げられる。この内、焼成後に含有するハロゲン元素量の制御が行いやすいこと、および前駆体作製時の安定性の観点から塩素が好ましい。
ハロゲン元素は、正極活物質中、0.1〜10atm%含まれていることが好ましい。ハロゲン元素の正極活物質中の割合は、蛍光X線により検出できる。本発明の正極活物質は、ハロゲン元素の有無によるリチウム含有金属酸化物の構造変化は確認されていない。なお、構造変化は、X線回折装置による構造解析により観察できる。ハロゲン元素の割合の上限は、リチウム含有金属酸化物の構造変化を抑制する観点から、正極活物質中、リチウム含有金属酸化物が主成分となる量であることが好ましい。ここで、主成分とは、例えば、50重量%以上を意味する。ハロゲン元素が正極活物質中に含まれている割合は、0.1〜5atm%の範囲であることがより好ましい。
また、ハロゲン元素は、一般式(1)中に含有するSiのモル数に対して5〜40モル%の割合で正極活物質中に含まれていることが好ましい。ハロゲン元素の含有割合の上限は、リチウム含有金属酸化物が正極活物質中に主成分となりうる値である。5モル%以上の場合、充放電の平均電位の低下を抑制できる。より好ましい割合は、10モル%以上である。更に、リチウム含有金属酸化物の構造変化を抑制する観点から、ハロゲン元素の割合は、20モル%以下がより好ましい。
(3)正極活物質の製造方法
正極活物質は、例えば、原料を溶媒に溶解させる工程(以下、溶解工程という)、得られた溶液をゲル化させる工程(以下、ゲル化工程という)、得られたゲルを焼成する工程(以下、焼成工程という)を少なくとも含む。なお、必要に応じて、溶液に導電性炭素粒子を添加する工程(以下、導電性炭素粒子添加工程という)、ゲル化工程で得られたゲルから溶媒を除去する工程(以下、乾燥工程という)や、焼成前のゲルを粉砕する工程(以下、粉砕工程という)や、焼成前のゲルに炭素源となる物質を混合する工程(以下、炭素源混合工程という)を設けることもできる。以下では、Lix(Fe,Zr)y1-zSiz4を例にして説明するが、Mが他の元素でも製法は同様である。
(i)溶解工程
原料であるリチウム源、M源、リン源及びSi源は、溶媒に溶解しうる物質であれば特に限定されない。これらの物質は、100gの溶媒に10mmol以上溶解する物質であることが好ましい。ここで、ハロゲン元素は、これら原料から由来してもよく、別途添加されるハロゲン化物に由来してもよい。この内、原料から由来することが簡便である。
(リチウム源)
リチウム源には、リチウムの無機塩、水酸化物、有機酸塩、金属アルコキシド及びこれら塩の水和物を用いることができる。具体的には、無機塩としては、弱酸との塩(以下、弱酸塩という。)である炭酸リチウム(Li2CO3)、強酸との塩(以下、強酸塩という。)である硝酸リチウム(LiNO3)、塩化リチウム(LiCl)を挙げることができる。また、有機塩としては、弱酸塩である、酢酸リチウム(LiCH3COO)、シュウ酸リチウム(COOLi)2を挙げることができる。また、金属アルコキシドとしては、リチウムメトキシド(LiOCH3)、リチウムエトキシド(LiOC25)、リチウム−n−プロポキシド(LiO−n−C37)、リチウム−i−プロポキシド(LiO−i−C37)、リチウム−n−ブトキシド(LiO−n−C49)、リチウム−t−ブトキシド(LiO−t−C49)、リチウム−sec−ブトキシド(LiO−sec−C49)等を挙げることができる。無機塩及び有機塩については、水和物であってもよい。これらの中でも、大気雰囲気下で均一な溶液を作製しやすい、安価であるという観点から弱酸塩又は強酸塩が好ましく、その中でも酢酸リチウム又は硝酸リチウムが好ましい。なお、本発明において「均一な溶液」とは、目視観察により目視観察により沈殿物の生成が認められず、2相以上に分離していない状態をいう。
以下、溶媒にエタノールを用いた場合について説明する。
リチウム源として、弱酸塩の無水物を用いる場合は、エタノールへの溶解性が低いため、M源を溶解した後に溶解させることが好ましい。M源を加える前に溶解させる場合は、予め水に溶解させておくことが好ましい。あるいは、弱酸塩の無水物が溶解するのに必要な量の水をエタノールへ添加しておいてもよい。弱酸塩の無水物を溶解させる水の量としては、Liのモル数の1〜100倍の水が好ましく、より好ましくは4〜20倍である。
また、弱酸塩の無水物は、M源、シリコン源との任意の組合せにおいて、任意の順番で溶解させても均一な溶液を得ることができる。得られた均一な溶液を予め反応させた後に、残りの原料を加えてもよい。弱酸塩の無水物はM源と予め反応させておくことが好ましい。弱酸塩の無水物とM源を予め反応させることにより、リン酸を加えた際に沈殿物ができるのを抑制できる。
また、弱酸塩の無水物はテトラメトキシシランもしくはテトラエトキシシランと予め反応させておくことが好ましく、特にテトラメトキシシランと反応させることが好ましい。このときの混合の手順としては、弱酸塩の無水物を水に溶解させた後、エタノールを加え、テトラメトキシシランもしくはテトラエトキシシランを加えることが好ましい。これらを混合した後に30℃から60℃に加熱することで、より反応を促進できる。加熱の時間は特に限定されないが、30分から12時間程度が適当である。弱酸塩の無水物とシリコン源を予め反応させることにより、焼成後の不純物の発生やリチウム複合酸化物におけるLiサイトへのFeの置換を抑制できる。
(M源)
M源となる物質には、Mの無機塩、水酸化物、有機酸塩、金属アルコキシド及びこれら塩の水和物を用いることができる。以下では、M源としての鉄源及びジルコニウム源を詳説する。
(a)鉄源
鉄源としては、無機塩として、弱酸塩である炭酸鉄(II)(Fe(CO3))、強酸塩である硝酸鉄(II)(Fe(NO3)2)、硝酸鉄(III)(Fe(NO3)3)、塩化鉄(II)(FeCl2)及び塩化鉄(III)(FeCl3)を挙げることができる。また、有機塩としては、弱酸塩である、シュウ酸鉄(II)(FeC24)、シュウ酸鉄(III)(Fe2(C24)3)、酢酸鉄(II)(Fe(CH3COO)2)及び酢酸鉄(III)(Fe(CH3COO)3)を挙げることができる。好ましくは強酸塩の水和物、より好ましくは硝酸鉄(III)の9水和物である。
以下、溶媒にエタノールを用いた場合について説明する。
強酸塩の水和物は、リチウム源、ジルコニウム源、シリコン源との任意の組合せにおいて、任意の順番に溶解させても均一な溶液を得ることができる。得られた均一な溶液を予め反応させた後に、残りの原料を加えてもよい。強酸塩の水和物はリン酸よりも先に溶媒に加えることが好ましい。強酸塩の水和物のみを予め反応させることにより、焼成後の不純物の生成を抑制できるので、強酸塩の水和物は、強酸塩の水和物のみをエタノール中に溶解させた後に、沈殿物が生じない程度に熱をかけることにより予め反応させてもよい。
(b)ジルコニウム源
ジルコニウム源となる物質には、ジルコニウムの無機塩、有機酸塩、金属アルコキシド及びこれら塩の水和物を用いることができる。ジルコニウム源としては、無機塩として、ジルコニウムハロゲン化物である塩化ジルコニウム(ZrCl4)、臭化ジルコニウム(ZrBr4)、ヨウ化ジルコニウム(ZrI4)、オキシジルコニウム塩である、オキシ塩化ジルコニウム(ZrOCl2)、オキシ硝酸ジルコニウム(ZrO(NO3)2)を挙げることができる。また、金属アルコキシドとしては、ジルコニウムメトキシド(Zr(OCH34)、ジルコニウムエトキシド(Zr(OC254)、ジルコニウム−n−プロポキシド(Zr(O−n−C374)、ジルコニウム−i−プロポキシド(Zr(O−i−C374)、ジルコニウム−n−ブトキシド(Zr(O−n−C484)、ジルコニウム−t−ブトキシド(Zr(O−t−C484)、ジルコニウム−sec−ブトキシド(Zr(O−t−C484)等を挙げることができる。好ましくはジルコニウムハロゲン化物、その中でも塩化ジルコニウムが好ましい。
ジルコニウムハロゲン化物は、リチウム源、鉄源、シリコン源との任意の組合せにおいて、任意の順番に溶解させても均一な溶液を得ることができる。ジルコニウムハロゲン化物を、強酸塩の水和物からなる鉄源と予め反応させておくことが好ましい。ジルコニウムハロゲン化物を強酸塩の水和物からなる鉄源と予め反応させることにより、焼成後にジルコニアやリン酸ジルコニウム等の不純物が形成するのを抑制できる。また、ジルコニウムハロゲン化物はテトラメトキシシランもしくはテトラエトキシシランと予め反応させておくことが好ましく、特にテトラメトキシシランと反応させることが好ましい。ジルコニウムハロゲン化物とシリコン源を予め反応させることにより、焼成後の不純物の発生やリチウム複合酸化物におけるLiサイトへのFeの置換を抑制できる。
(リン源)
リン源となる物質には、リン酸(H3PO4)、リン酸水素アンモニウム((NH4)2HPO4)、リン酸二水素アンモニウム(NH42PO4)等を挙げることができる。これらの中でも、リン酸が好ましい。
以下、リン源の溶解方法について、溶媒にエタノールを用いた場合について説明する。
リン酸は、少なくともリチウム源、鉄源及びジルコニウム源を溶解させた後で、投入する必要がある。リン酸をリチウムの弱酸塩無水物やジルコニウムハロゲン化物と混合すると、沈殿物が生成するからである。リン酸を加える際は、過剰にリン酸を加えてもよい。リン酸を過剰に加えることにより、焼成後の不純物の発生やリチウム複合酸化物におけるLiサイトへのFeの置換を抑制できる。過剰にリン酸を加える場合、化学量論比のリン酸に対して5〜20重量%の範囲で、より好ましくは5〜15重量%の範囲で過剰に加えることができる。
(シリコン源)
シリコン源となる物質には、シリコンの金属アルコキシドを用いることができる。具体例としては、テトラエトキシシラン(Si(OC25)4)、テトラメトキシシラン(Si(OCH3)4)、メチルトリエトキシシラン(CH3Si(OC25)3)、メチルトリメトキシシラン(CH3Si(OCH3)3)、エチルメトキシシラン(C25Si(OCH3)3)、エチルトリエトキシシラン(C25Si(OC25)3)等の種々のシリコンアルコキシドを挙げることができる。好ましくは、テトラエトキシシランあるいはテトラメトキシシランである。
以下、シリコン源の溶解方法について、溶媒にエタノールを用いた場合について説明する。
シリコンアルコキシドは、リチウム源、鉄源、ジルコニウム源との任意の組合せにおいて、任意の順番に溶解させても均一な溶液を得ることができる。シリコンアルコキシドの反応を促進するため、水を加えてもよい。加える水の量としては、好ましくはシリコンのモル数の1〜100倍、より好ましくは2〜20倍である。水を加えることにより加水分解が進み、反応を促進できる。シリコンアルコキシドをリン酸と予め反応させることもできる。テトラエトキシシランを用いる場合は、40〜80℃で反応をさせることが好ましく、50〜80℃で反応させることがより好ましい。テトラメトキシシランを用いる場合は、20〜60℃で反応させることが好ましい。テトラメトキシシランと、リチウム源となる弱酸塩の無水物を反応させる場合、(リチウム源のLiのモル数/シリコン源のSiのモル数)≧2であることが好ましい。
溶媒には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール及びn−ブタノールからなる群から選択された少なくとも1種のアルコールを用いることができる。好ましくは、エタノールである。なお、アルコールへの溶解性が低い原料を溶解させるために、必要に応じて水との混合溶媒としてもよい。溶媒の量は、全原料を溶解できれば特に限定されない。但し、溶媒の回収コストを考慮すると、溶媒の量は、全原料の総モルに対して、1〜100倍のモル比の範囲、より好ましくは、2〜15倍のモル比の範囲である。
(溶解方法)
溶解工程においては、原料を溶解させる順番によっては沈殿物が生成して均一な溶液ができない場合がある。そのため、原料を溶解させる順番を適宜調整することが好ましい。例えば、リン酸をジルコニウム源と混合すると沈殿物が生成するが、鉄イオンが存在するとジルコニウムイオンは安定化され沈殿物の生成が抑制される。そのため、少なくとも鉄源及びジルコニウム源を溶解させた溶媒にリン源を溶解させることが好ましい。シリコン源は、リン源を溶解させる前に溶解させてもよく、あるいはリン源を溶解させた後に溶解させてもよい。
なお、原料を溶解させる順番とは、溶媒に順次原料を投入する場合には、投入する原料の順番をいうが、予め複数の原料を溶媒に溶解させた溶液を準備し、その溶液を混合する場合には、その混合する順番をいう。
鉄源及びジルコニウム源を溶解させた溶媒を調製する順番としては、ジルコニウムイオンを鉄イオンにより安定化できれば特に限定されない。ジルコニウムイオンを鉄イオンにより安定化させる方法としては、溶媒中に鉄の強酸塩水和物を溶解させた後に、ジルコニウムハロゲン化物を溶解させる方法や、溶媒中にジルコニウムハロゲン化物を溶解させた後に、鉄の強酸塩水和物を溶解させる方法や、溶媒中に鉄の強酸塩水和物とジルコニウムハロゲン化物を同時に溶解させる方法を挙げることができる。なお、鉄源とジルコニウム源の溶解の順番は特に限定されず、いずれが一方を先に溶解させても、あるいは両者を同時に溶解させてもよい。
また、リチウム源に塩無水物、例えば酢酸リチウムを用いると、溶媒中に水が含まれていないと溶解しない。そのため、リチウム源に無水塩を用いる場合には、鉄の塩の水和物とジルコニウムの塩の水和物を溶媒に溶解させた後に投入して、溶解させることが好ましい。
原料を溶媒に溶解させる際、室温以上となるように加熱してもよい。加熱温度としては、室温から使用する溶媒の沸点の範囲、好ましくは30〜80℃、より好ましくは30〜60℃である。なお、本発明では、室温とは20±10℃の範囲をいう。
なお、上記の溶解工程の説明では、元素Mに鉄とジルコニウムを用いた例について説明したが、上記一般式(1)に含まれる元素Mであって、全原料を溶媒に均一に溶解できる組合せであれば特に限定されない。
(ii)導電性炭素粒子添加工程
本工程では、溶解工程で調製した溶液に、導電性炭素粒子を添加して分散させてもよい。溶液中に分散させることにより、導電性炭素粒子がゲル中に均一に分散して、リチウム含有複合酸化物の導電性を向上させる。
導電性炭素粒子としては、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラックや、天然黒鉛、人造黒鉛、ニードルコークス、炭素繊維、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナンファイバー等を用いることができる。アセチレンブラックや気相成長炭素繊維が好ましい。これらの導電性炭素粒子を2種以上用いてもよい。導電性炭素粒子の添加量は、予測される生成物に対し、1〜40重量%である。この範囲内であれば、十分な導電性と容量を確保できる。また、導電性炭素粒子の平均粒径は、50nm〜100μmである。
(iii)ゲル化工程
本工程では、溶解工程により得られた溶液をゲル化させる。ゲル化は、原料元素、例えばLi、Fe、Zr、P及びSiが酸素原子を介して結合する一群の集合体となり、この集合体がゲル中で数nmから数十nmの粒径の微粒子として析出することで溶液の粘度が上昇することにより行われると発明者等は考えている。
ゲル化は、溶液を静置した状態、あるいは溶液を攪拌した状態で行ってもよい。また、ゲル化を促進させるため、室温以上の温度に加熱してもよい。加熱温度は、室温から使用する溶媒の沸点の範囲であり、好ましくは30℃〜80℃、より好ましくは40℃〜60℃である。また、加熱時間は、好ましくは10分〜48時間、より好ましくは30分〜24時間である。
(iv)乾燥工程
本工程では、ゲルから残留する溶媒を除去する。溶媒の除去方法としては、室温で静置する方法や、30〜80℃に加熱して溶媒を除去する方法や、ロータリーポンプ等用いたチャンバー内にゲルを設置し、減圧して溶媒を除去する方法等を用いることができる。また、溶液調製時に使用した溶媒よりも揮発性の高い溶媒や表面張力の異なる溶媒と溶媒交換を行った後に前述と同じ方法で溶媒を除去してもよい。溶媒交換に用いる溶媒としてはトルエン、ベンゼン、ヘキサン、テトラヒドロフラン、イソプロパノール及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。また、本工程で得られたゲルを超臨界状態の二酸化炭素に浸して溶媒を抽出することで溶媒を除去することもできる。これらの除去した溶媒は工業的観点から回収して再利用することが好ましい。
(v)粉砕工程
得られたゲルを機械的に粉砕することで二次粒子のサイズを制御してもよい。粉砕方法は特に限定されず、必要に応じて加温、冷却及び雰囲気制御をする方法を挙げることができる。
粉砕方法としては、遊星式ボールミル、ボールミル、ビーズミル、振動ミル、ピンミル、アトマイザー、ホモジナイザー、ローターミル、ローラーミル、ハンマーミル、ジェットミル等を挙げることができるが、これらに限定されない。
なお、本工程において、導電性炭素粒子を更に添加して粉砕してもよい。一次粒子の凝集を抑制して二次粒子の粗大化を抑制させる効果を更に向上できる。
(vi)炭素源混合工程
糖類、油脂類や合成樹脂材料を、粉砕したゲルと混合してもよい。これら化合物は、焼成時に炭化することにより正極材料の表面に炭素被覆を形成し、正極材料の導電性を向上できる。糖類としては、スクロース、フルクトース等を用いることができる。また、合成樹脂材料としては、ポリエーテル類としてはポリエチレングリコールやポリプロピレングリコール等のポリエーテル類や、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、ポリ酢酸ビニル等を用いることができる。
(vii)焼成工程
本工程では、得られたゲルを焼成することでリチウム含有複合酸化物を得る。焼成は、好ましくは400〜700℃、より好ましくは400〜600℃の温度範囲で、例えば1〜24時間をかけて行う。焼成時の雰囲気は、不活性雰囲気(アルゴン、窒素、真空等の雰囲気)又は還元性雰囲気(水素含有不活性ガス、一酸化炭素等の雰囲気)を用いることができる。均一に焼成を行うため、ゲルを攪拌してもよく、焼成時にNOxやSOx、塩素等の有毒なガスが発生する場合は、除去装置を設けてもよい。
(vii)その他の工程
得られたリチウム含有複合酸化物は、必要に応じて、粉砕工程及び/又は分級工程に付すことで、所望の粒径に調製してもよい。
ハロゲン元素の含有量は、前駆体の作製に用いる材料を変更することで変更可能となる。フッ化物、塩化物、臭化物等の化合物を原料として、合成することにより、ハロゲンの含有量を増加させることが可能である。また、焼成時の雰囲気として、ハロゲンガスを含有する雰囲気に制御することにより、含有量を調整することも可能である。
(3)用途
得られたリチウム含有複合酸化物は、非水電解質二次電池の正極活物質に使用できる。正極活物質には、上記リチウム含有複合酸化物以外に、LiCoO2、LiNiO2、LiFeO2、LiMnO2、LiMn24、Li2MnO3、LiCoPO4、LiNiPO4、LiMnPO4、LiFePO4等の他の酸化物が含まれていてもよい。
(II)正極
上記正極活物質は、非水二次電池用の正極に使用できる。正極は、上記正極活物質と、導電材と、バインダーとを含む。以下、各構成材料について説明する。
正極は、公知の方法を用いて作製できる。例えば、正極活物質と導電材とバインダーとを有機溶剤を用いて混練分散してペーストを得、ペーストを集電体に塗布することによって作製できる。なお、得られた正極活物質が十分に高い導電性を有する場合には、導電材は必ずしも添加する必要はない。
バインダーとしては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルクロライド、エチレンプロピレンジエンポリマー、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース、スチレンーブタジエンゴム等を用いることができる。必要に応じてカルボキシメチルセルロース等の増粘材を使用することもできる。
導電材としては、アセチレンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、ニードルコークス等を用いることができる。
集電体としては、連続孔を持つ発泡(多孔質)金属、ハニカム状に形成された金属、焼結金属、エキスパンドメタル、不織布、板、孔開きの板、箔等を用いることができる。
有機溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、トルエン、シクロヘキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等を用いることができる。バインダーに水溶性のものを使用する場合は溶媒として水を用いることもできる。
正極の厚さは、0.01〜20mm程度が好ましい。厚すぎると導電性が低下し、薄すぎると単位面積当たりの容量が低下するので好ましくない。なお、塗布並びに乾燥によって得られた正極は、活物質の充填密度を高めるためローラープレス等により圧密してもよい。
(III)非水二次電池
非水二次電池は、上記正極と、負極と、電解質と、セパレータとを有する。
(i)負極
負極は公知の方法により作製できる。例えば、負極活物質とバインダーと導電材とを混合し、得られた混合粉末をシート状に成形する。得られた成形体を集電体、例えばステンレス又は銅製のメッシュ状集電体に圧着して作製できる。また、正極の欄で説明したようなペーストを用いる方法を用いて作製できる。その場合、負極活物質と導電材とバインダーとを有機溶剤を用いて混練分散してペーストを得、ペーストを集電体に塗布することによって作製できる。
負極活物質としては公知の材料を用いることができる。高エネルギー密度電池を構成するためには、リチウムの挿入/脱離する電位が金属リチウムの析出/溶解電位に近いものが好ましい。その典型例は、粒子状(鱗片状、塊状、繊維状、ウィスカー状、球状、粉砕粒子状等)の天然もしくは人造黒鉛のような炭素材料である。
人造黒鉛としては、メソカーボンマイクロビーズ、メソフェーズピッチ粉末、等方性ピッチ粉末等を黒鉛化して得られる黒鉛を挙げることができる。また、非晶質炭素を表面に付着させた黒鉛粒子も使用できる。これらの中で、天然黒鉛は、安価でかつリチウムの酸化還元電位に近く、高エネルギー密度電池が構成できるため好ましい。
また、リチウム遷移金属酸化物、リチウム遷移金属窒化物、遷移金属酸化物、酸化シリコン等も負極活物質として使用可能である。これらの中では、Li4Ti512は電位の平坦性が高く、かつ充放電による体積変化が小さいため好ましい。
(ii)電解質
電解質としては、例えば、有機電解液、ゲル状電解質、高分子固体電解質、無機固体電解質、溶融塩等を用いることができる。
有機電解液を構成する有機溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート等の鎖状カーボネート類、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン等のラクトン類、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等のフラン類、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジオキサン等のエーテル類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、ギ酸メチル、酢酸メチル等を挙げることができ、これらの1種以上を混合して用いることができる。
また、PC、EC及びブチレンカーボネート等の環状カーボネート類は高沸点溶媒であるため、GBLと混合する溶媒として好適である。
有機電解液を構成する電解質塩としては、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、トリフルオロ酢酸リチウム(LiCF3COO)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド(LiN(CF3SO22)等のリチウム塩を挙げることができ、これらの1種以上を混合して用いることができる。電解液の塩濃度は、0.5〜3mol/Lが好適である。
(iii)セパレータ
セパレータとしては、多孔質材料や不織布等の公知の材料を用いることができる。セパレータの材質としては、電解液中の有機溶媒に対して溶解したり膨潤したりしないものが好ましい。具体的には、ポリエステル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、エーテル系ポリマー、ガラス繊維等を挙げることができる。
(iv)他の部材
電池容器のような他の部材についても公知の各種材料を使用でき、特に制限はない。
(v)二次電池の製造方法
二次電池は、例えば、正極と負極と、それらの間に挟まれたセパレータとからなる積層体を備えている。積層体は、例えば短冊状の平面形状を有していてもよい。また、円筒型や扁平型の電池を作製する場合は、積層体を巻き取って巻回体としてもよい。
積層体は、その1つ又は複数が電池容器の内部に挿入される。通常、正極及び負極は電池の外部導電端子に接続される。その後に、正極、負極及びセパレータを外気より遮断するために電池容器を密閉する。
密封の方法は、円筒電池の場合、電池容器の開口部に樹脂製のパッキンを有する蓋をはめ込み、電池容器と蓋とをかしめる方法が一般的である。また、角型電池の場合、金属性の封口板と呼ばれる蓋を開口部に取りつけ、溶接を行う方法を使用できる。これらの方法以外に、結着剤で密封する方法、ガスケットを介してボルトで固定する方法も使用できる。更に、金属箔に熱可塑性樹脂を貼り付けたラミネート膜で密封する方法も使用できる。なお、密封時に電解質注入用の開口部を設けてもよい。有機電解液を用いる場合、その開口部から有機電解液を注入し、その後でその開口部を封止する。封止の前に通電し発生したガスを取り除いてもよい。
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
<i.溶解工程>
リチウム源であるLiCH3COOを0.9899gとして、Li:Fe:Zr:P:Si=1:0.85:0.15:0.7:0.3(モル比)、となるように各原料(鉄源、ジルコニウム源、リン源、シリコン源)を秤量した。次に、以下のように、鉄源、リチウム源、ジルコニウム源、シリコン源、リン源の順番で溶媒に溶解させた。
Liのモル量に対して30倍のモル量のエタノールに、鉄源としてFe(NO33・9H2Oを完全に溶解するまで撹拌した。完全に溶解したことを確認した後、リチウム源としてLiCH3COO、ジルコニウム源としてZrCl4、シリコン源としてSi(OC254を、順に溶解させていき、均一溶液を調製した。最後にリン源としてH3PO4(85重量%)を均一な溶液になるまで撹拌した。得られた均一な溶液を、室温でスターラーにて2時間攪拌した。
<ii.ゲル化工程>
室温で1時間攪拌した均一な溶液を60℃の恒温槽にて24時間、保管することにより、ゲル化を行った。ゲル化時には、容器に蓋をして、溶媒の蒸発を抑制した。
<iii.乾燥工程>
ゲル化工程後、容器の蓋を開け、60℃の恒温槽にて12時間放置することにより、ゲルに含まれる溶媒を揮発させて、前駆体を得た。
<iv.粉砕工程>
得られた前駆体を、乳鉢で粉砕した。
<v.炭素源混合工程>
粉砕した前駆体に、水に溶かした炭素源を加えた。炭素源としては、スクロースを使用した。加えた量としては、前駆体の重量に対して15重量%とした。スクロースを加えた前駆体を乾燥後、乳鉢で粉砕した。
<vi.焼成工程>
粉砕工程により得られた前駆体を550℃で12時間焼成した。焼成は、まず炉内を真空にした後、窒素をフローし、200℃/hの昇温速度で加熱することにより行った。降温速度は、炉冷とした。得られた試料をA1とする。
実施例2
原料比をLi:Fe:Zr:P:Si=1:0.875:0.125:0.75:0.25(モル比)としたこと以外、実施例1と同様の手順で試料A2を得た。
実施例3
原料比をLi:Fe:Zr:P:Si=1:0.9:0.1:0.8:0.2(モル比)としたこと以外、実施例1と同様の手順で試料A3を得た。
実施例4
原料比をLi:Fe:Zr:P:Si=1:0.925:0.075:0.85:0.15(モル比)としたこと以外、実施例1と同様の手順で試料A4を得た。
実施例5
原料比をLi:Fe:Zr:P:Si=1:0.95:0.05:0.9:0.1(モル比)としたこと以外、実施例1と同様の手順で試料A5を得た。
比較例1
原料比をLi:Fe:P=1:1:1(モル比)としたこと以外、実施例1と同様の手順で試料B1を得た。
(結果)
(1)組成分析
得られた複合酸化物について、波長分散型の蛍光X線装置(島津製作所社製XRF−1800)を用いて、組成分析を行った。組成分析の定量値を得るためにFP法を用いた。A1〜A5及びB1において得られた結果を表1に示す。
(2)体積変化率の測定
各試料について以下の方法で、電池を作製した。
A1〜A5及びB1をそれぞれ約1g秤量しメノウ乳鉢にて粉砕した。粉砕物に、正極活物質に対して、導電材として約10重量%のアセチレンブラック(商品名:「デンカブラック」、電気化学工業社製)と、バインダーとして約10重量%のポリビニリデンフルオライド樹脂粉末(クレハ社製KFポリマー)とを混合した。混合物を溶剤としてのN−メチル−2−ピロリドンに分散させてスラリーを得た。スラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔の両面にドクターブレード法で塗布した。塗布量としては約5mg/cm2となるようにした。塗膜を乾燥した後に、プレスを行って正極を得た。
体積比が1:2のエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合液に1mol/lとなるようにLiPF6を溶解させて電解質を得た。約30mlの電解質を50mlのビーカー中に注入した。ビーカー中に、2cm×2cmの上記正極と、参照電極としての金属リチウムと、対極としての金属リチウムを浸漬することで電池(ビーカーセル)を作製した。
電池を25℃の環境下で初回充電した。充電電流は0.1mAとし、電池の電位が4Vに到達した時点で充電を終了させた。充電が終了後0.1mAで放電を行い電池の電位が2.0Vに到達した時点で放電を終了した。
電池を更に、0.1mAの電流で4Vまで充電を行い、Liを脱離させた状態としたのちに、正極を取り出した。この正極を粉末X線回折測定することで、リチウム脱離後の格子定数を求めた。
充電前の格子定数と充電後の格子定数から体積変化率を求めた。体積変化率に関しては、下記の式により求めた。
体積変化率(%)=(V0−V1)/V0×100
(式中、V0はLiがあるときの体積であり、V1はLiが抜けたときの体積である)A1〜A5及びB1において得られた結果を表1に示す。
(3)容量保持率の評価)
<電池の作製>
負極活物質として、天然黒鉛粉を使用した。この負極活物質にバインダーとして約10重量%のポリビニリデンフルオライド樹脂粉末を混合した。この混合物をN−メチル−2−ピロリドンに溶解してスラリーを得た。スラリーを厚さ20μm銅箔の両面に塗布し、乾燥した後に、塗膜をプレスすることで負極を作製した。
各実施例及び比較例にて作製した正極と、上述の負極とをそれぞれ30mm×30mmに大きさに切り抜いた。電池の電流導入端子として正極には幅3mm×長さ50mmのアルミニウム製タブを、負極には幅3mm×長さ50mm銅製タブを溶接した。
タブ付正極と負極との間に多孔質ポリエチレン製のセパレータ(ポリポア社製2500)を挟むことで積層体を得た。積層体を、2枚の金属箔に熱可塑性樹脂を貼り付けたラミネート膜の間にはさみ、ラミネート膜の周囲を、電解質注入用の開口部を残して、熱溶着で密封することにより、電池の外装を得た。
体積比が1:1のエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合液に1mol/lとなるようにLiPF6を溶解させて電解質を得た。約30mlの電解質を開口部から電池内部に注入した。この後、開口部を封止して二次電池を得た。
得られた二次電池の概略断面図を図1に示す。なお、図1中、1は正極であり、2は負極であり、3はセパレータであり、4は正極及び負極タブであり、5はラミネートである。
<容量保持率の評価>
二次電池を25℃の環境下で初回充電した。充電電流は0.2mAとし、電池の電位が4Vに到達した時点で充電を終了させた。充電が終了後0.2mAで放電を行い電池の電位が2.0Vに到達した時点で放電を終了し、この電池の初回容量とした。更に、0.2mAの電流にて充放電を繰返し、300回目の放電容量を計測し、下記式にて容量保持率を求めた。
容量保持率=300回目の放電容量/初回の放電容量
容量保持率及び充放電時の平均放電電位を表2に示す。
Figure 2012018891
Figure 2012018891
表1及び2から、以下のことが分かる。
試料A1〜A5とB1とから、正極活物質が塩素を含むことで、容量保持率(サイクル特性)を顕著に向上できることが分かる。
試料A1〜A5とから、Zrの割合が多くなることで平均放電電位が下がり、容量保持率が上がる傾向があることが分かる。
試料A1〜A5とから、Pの割合が多くなることで平均放電電位が上がり、容量保持率が下がる傾向があることが分かる。

Claims (8)

  1. 下記一般式(1)
    Lixy1-zSiz4 …(1)
    (ここで、Mは、Fe及びMnのいずれか一方又は両方と、Co、Ni、Zr、Sn、Al及びYからなる群から選択される少なくとも1種の元素との組み合わせ又はFeとMnとの組み合わせ、0≦x≦2、0.8≦y≦1.2、0<z≦1)
    で表される主成分としてのリチウム含有金属酸化物と、ハロゲン元素とを含むことを特徴とする正極活物質。
  2. 前記ハロゲン元素が、前記正極活物質中、0.1〜10atm%含まれている請求項1に記載の正極活物質。
  3. 前記ハロゲン元素が、前記一般式(1)中に含有するSiのモル数に対して5〜40モル%含まれている請求項1又は2に記載の正極活物質。
  4. 前記zが、0.001〜0.05の範囲である請求項1〜3のいずれか1つに記載の正極活物質。
  5. 前記Mが、主成分としてFeを含む請求項1〜4のいずれか1つに記載の正極活物質。
  6. 前記Mが、主成分としてのFeと、1atm%以上のFe以外の他の元素とを含む請求項1〜5のいずれか1つに記載の正極活物質。
  7. 請求項1〜6のいずれか1つに記載の正極活物質と、導電材と、バインダーとを含むことを特徴とする正極。
  8. 請求項7に記載の正極と、負極と、電解質と、セパレータとを有することを特徴とする非水二次電池。
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