JP2012016606A - 光学活性体の濃度を測定する非侵襲的測定システム及び方法 - Google Patents

光学活性体の濃度を測定する非侵襲的測定システム及び方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
光学活性体の濃度、特に、人間の血流中のブドウ糖の濃度を非侵襲的に測定する
【解決手段】
被験者の光学活性体の濃度を非侵襲的に測定する方法及びシステムが開示される。このシステムは、光を或る濃度の光学活性体を有する被験者又は物体に向かって送る光源と、光源と被験者との間に配置された偏光子と、像取込みデバイスと、プロセッサとを有する。像取込みデバイスは、被験者から反射された光を受け取ってこの光から測定画像を生じさせるよう位置決めされている。測定画像は、測定された光強度データを定める。プロセッサは、測定光強度データの選択部分に基づいて光学活性体の濃度を計算するよう構成されている。
【選択図】図4

Description

本発明は、光学活性体の濃度、特に、人間の血流中のブドウ糖の濃度を非侵襲的に測定する方法及びシステムに関する。
或る特定の状況では、人の血流中の特定の物質の濃度を測定することが必要である。かかる濃度を測定するために一般に用いられている試験手技は、侵襲性であって、血液の引き出しを必要とする。これは、頻繁な間隔で濃度測定値を得る必要がある人にとって特に不快な場合がある。例えば、糖尿病患者は、自分の血流中のブドウ糖のレベルをモニタする必要があり、毎日、しばしば1日に数回、かかる侵襲的測定手技を受ける必要がある。典型的には、測定は、血液を引き出すフィンガープリック(finger prick)により行われ、この血液を試験ストリップ上に置き、次にこれをブドウ糖モニタ装置内に挿入する。
侵襲的試験の問題を回避するため、関心のある血流中の成分、例えばブドウ糖の濃度を測定する非侵襲的方法が開発された。ブドウ糖及び他の或る特定の化合物は、「光学活性」化合物と呼ばれている。本明細書で用いる「光学活性」という用語が指す化合物は、かかる化合物を含む溶液に光を通したときに偏光を回転させる化合物のことである。光学活性は又、化学式及び化学構造が同一の異性体と関連しているが、これらの原子は、対の構成員が互いに鏡像関係をなすように空間向きが異なっている。異性体の光学活性対の両方の員が混合物中に等しい割合で存在している場合、この混合物は、「ラセミ体(racemic)」と呼ばれ、これは、各異性体の回転効果が互いに打ち消し合うので偏光の正味の回転を呈さないであろう。しかしながら、当業者には知られているように、哺乳動物では、ブドウ糖及び他の或る特定の光学活性体は、これらの光学活性異性体のうちの1つの形態でしか存在せず、それにより、ラセミ体混合物により生じる回転の打ち消しが回避される。
光学活性体、例えばブドウ糖の光学活性を人体中のこれらの濃度を非侵襲的に測定する手段として利用することが望ましい。平面偏光の回転は、以下の関係式に従って光の通る溶液中の光学活性体の濃度に比例することが知られている。
α=[α]D[C]l
上式において、Cは、光学活性体の濃度、lは、光路長(即ち、平面偏光が通る流体の長さ)、[α]Dは、溶液の温度及び用いられる光の波長で変化する光学活性体に特有なパラメータである比旋光度である。
非侵襲的ブドウ糖測定を行うのに適した1つの場所は、目の眼房水である。眼房水中のブドウ糖の濃度は、血流中のブドウ糖の濃度に直接関連している。しかしながら、眼房水中のブドウ糖の濃度と眼房水を透過した偏光の回転度との間の関係は、血流中のブドウ糖の濃度を求める目的に用いるには困難である。1つには、この問題は、光路長(l)を正確に測定することが目の幾何学的形状とほぼ同じほど複雑な機械的形状を有する構造では困難であるということに起因している。加うるに、平面偏光の回転角度を測定する公知の技術は、実験室環境、特に、かかる非侵襲的試験が患者又は技術者により行われる環境の外部で信頼性をもって実施するのは困難である。その結果、上述の問題に取り組む方法及びシステムの開発が要望されている。
本発明の一特徴によれば、光を或る濃度の光学活性体を有する被験者又は物体に向かって送る光源を有する装置が提供される。この装置は、偏光子と、第1の像取込みデバイスと、プロセッサとを更に有する。偏光子は、光源と被験者との間に配置される。第1の像取込みデバイスは、被験者から反射された光を受け取ってこの光から測定画像を生じさせるよう位置決めされている。測定画像は、測定された光強度データを定める。プロセッサは、測定された光強度データの選択部分に基づいて光学活性体の濃度を計算するよう構成されている。
光学活性体は、好ましくはブドウ糖である。好ましい実施形態では、本装置は、ハウジングを更に有し、光源、偏光子、第1の像取込みデバイス、及びプロセッサは、ハウジング内に収納されている。より好ましくは、この装置は、携帯可能であり、この装置は、手持ち型装置であることが特に好ましい。好ましい実施形態では、物体は、虹彩を備えた人間の目であり、測定画像は、虹彩の測定画像である。
別の好ましい実施形態によれば、光学活性体に関する所定濃度データ及び所定光強度データを含むデータベースが提供される。プロセッサは、測定光強度データの選択された部分、所定の濃度データの選択された部分、及び所定の光強度データの選択された部分に基づいて光学活性体の濃度を計算するよう構成されている。
他の好ましい実施形態によれば、物体は、虹彩を有する人間の目であり、偏光子は、光源からの光を虹彩に向かって送って送られた光が或る入射角で虹彩に接触し、当該入射角が1つ又はそれより多い種類の角度を有し(such that the transmitted light contacts the iris at one or more angles of incidence)、それにより物体から反射された光の部分が作られるように位置決めされている。当該1つ又はそれより多い種類の角度の入射角の少なくとも1つが、前記虹彩(18)から反射された光の一部の偏光を生じさせるために十分であることが特に好ましい。
本発明の別の特徴によれば、光学活性体の溶液を収容した物体中の光学活性体の濃度を計算する方法が提供される。この方法は、物体の少なくとも1つの測定画像像を提供するステップを有し、各前記測定画像は、物体から反射された光の測定強度のアレイを構成する。この方法は、物体から反射された光の測定強度の少なくとも1つの比を計算するステップと、光強度の少なくとも1つの測定比に基づいて光学活性体の濃度を計算するステップとを更に有する。物体は、好ましくは、虹彩を備えた人間の目である。
好ましい実施形態では、光学活性体の濃度を計算するステップは、測定画像中に複数の計算空間を定めるステップと、各計算空間中の計算空間比を計算するステップとを有する。計算空間は、好ましくは、第1及び第2の領域から成り、これら領域は、より好ましくは、「L字形」を形成する。
さらに他の好ましい実施形態では、この方法は、各々が光学活性体の既知の濃度に対応した基準物体の複数の所定の画像を提供するステップと、物体から反射された光の所定の強度のアレイを構成するステップと、所定の強度の各アレイ内の強度の少なくとも1つの所定の比を計算するステップとを有する。光学活性体の濃度は、測定強度の少なくとも1つ及び基準物体から反射された光の所定の強度の各アレイ内の強度の所定の比のうちの少なくとも1つの比に基づいて計算される。
さらに好ましい実施形態では、基準物体から反射された光の所定強度の各アレイ内の少なくとも1つの所定の光強度比を計算するステップは、各所定の画像中の少なくとも1つの所定の計算空間を定めるステップと、各所定の計算空間内の所定の計算空間比を計算するステップとを有し、少なくとも1つの所定の光強度比は、所定の計算空間比のうちの少なくとも1つを含む。
他の好ましい実施形態では、この方法は、オフセット誤差アレイを生成するステップを有する。追加の好ましい実施形態では、この方法は、最小オフセット誤差アレイを生成するステップを有する。
本発明の別の特徴によれば、光学活性体の溶液を収容した物体中の光学活性体の濃度を計算する方法が提供される。この方法は、物体の測定画像を提供するステップを有する。測定画像は、物体から反射された光の強度のアレイを定める。測定画像を複数の回転位置に回転させ、それにより、物体から反射された光の複数の回転測定強度を生じさせる。光学活性体の濃度は、物体から反射された光の測定強度及び物体から反射された光の回転測定強度に基づいて計算される。
本発明の追加の特徴によれば、光学活性体の溶液を収容した物体中の光学活性体の濃度を計算する方法が提供される。この物体は、複数個の物体領域を含む。この方法は、物体から反射された光の複数の測定強度値を提供するステップを有し、各測定強度値は、物体の領域のうちの1つに対応している。光学活性体の溶液を収容した基準物体から反射された光の複数の所定の強度も又提供される。基準物体は、複数の基準物体領域を含み、各所定の光強度は、基準物体の領域のうちの1つ及び光学活性体の既知の濃度に対応している。基準物体から反射された光の複数の所定の強度の一部を選択する。光学活性体の濃度は、物体から反射された光の測定強度のうちの1つ又は2つ以上及び物体から反射された光の複数の所定の強度の選択された部分に基づいて計算される。好ましい実施形態では、基準物体から反射された光の複数の所定の強度の一部を選択するステップは、1つ又は2つ以上の統計学的信頼パラメータに基づいて行われる。
本発明の別の特徴によれば、光学活性体の溶液を収容した物体中の光学活性体の濃度を計算する方法が提供される。この方法は、物体の測定画像を提供するステップを有し、測定画像は、測定光強度データを構成する。光学活性体の溶液を収容した基準物体の複数の所定の画像が提供される。各所定の画像は、光学活性体の既知の濃度に対応している。複数の所定の画像は、所定の光強度データのアレイを構成する。複数の所定の光強度データは、所定の光強度データの複数のサブアレイを構成する。この方法は、測定画像を複数の回転位置まで回転させ、それにより回転光強度データを作成するステップと、サブアレイのうちの1つを選択するステップとを有する。物体中の光学活性体の濃度は、測定光強度データ、回転光強度データ、及び所定の光強度データの選択されたサブアレイに基づいて計算される。
本発明の別の特徴によれば、光学活性体の溶液を収容した物体中の光学活性体の濃度を計算する指令を有するコンピュータにより読み取り可能な媒体が提供される。この方法は、測定光強度データを定める物体の測定画像を受け取るステップを有する。
光学活性体の溶液を収容した基準物体の複数の所定像を受け取る。これら像は各々、光学活性体の既知の濃度に対応し、複数の所定の像は、所定の光強度データのアレイを構成し、このアレイは、所定の光強度データの複数のサブアレイを更に構成する。測定画像を複数の回転位置まで回転させて回転光強度データを作成する。所定の光強度データのサブアレイのうちの1つを選択し、物体中の光学活性体の濃度は、測定光強度データ、回転光強度光データ、及び所定の光強度データの選択されたサブアレイに基づいて計算される。
本発明は、添付の図面を参照することにより容易に理解できる。
本発明の好ましい実施形態に従って光学活性体の濃度を測定する方法を説明するために用いられる目の略図である。 本発明の好ましい実施形態に従って光学活性体の濃度を測定するシステムの略図である。 本発明の好ましい実施形態による目の虹彩の像の略図である。 本発明の好ましい実施形態に従って所定の光強度データ及び所定の濃度データを生成する方法を示す流れ図である。 本発明の好ましい実施形態に従って光学活性体の濃度を測定する方法を示す流れ図である。 本発明の別の好ましい実施形態に従って光学活性体の濃度を測定する方法を示す流れ図である。
本発明は、被験者としての人の血流中のブドウ糖レベルを人の目の虹彩の種々の領域から反射された光の強度の比と相関させることができるという驚くべき発見に関している。これとは対照的に、ブドウ糖濃度の非常に大幅な変化により、偏光をブドウ糖含有溶液、例えば人の目の眼房水に通したときに偏光の比較的僅かな回転度が生じることが判明している。かくして、濃度レベルと偏光回転との間の関係は、特に実験室環境の外部でブドウ糖レベルを確実に(信頼性を持って)予測する上で満足のいくものでないことが判明した。しかしながら、虹彩からの光の強度の比を用いることにより、ここの不感受性の問題が回避されることが発見された。
図1は、本発明の種々の実施形態の説明に用いられる被験者の目30の略図である。眼30は、水晶体22と眼房水と呼ばれる流体32で満たされた角膜26により画定された前眼房14を有している。眼は、瞳孔16を構成する中央アパーチュアを備えた虹彩18を更に有している。虹彩18は、強膜24(即ち、眼の「白目」)によって包囲されている。結膜28が、強膜24の上部及び下部を覆っている。
図2を参照すると、光学活性体の濃度を測定するシステムが提供されている。このシステムは、血流中に光学活性体の濃度を有する被験者の目30の虹彩に向かって光15を送るようになった光源10を有している。光源10は、好ましくは、瞳孔16の前に置かれ、この光源は、好ましくは、発光ダイオード(“LED”)又は各々が光を互いに異なる波長で放出する発光ダイオードの組み合わせである。例えば、以下の波長、即ち、470nm(青色)、525nm(緑色)、625nm(赤色)、及び940nm(近赤外)を用いるのがよい。1つの波長だけを用いる場合、近赤外が好ましい。多数の波長を用いる場合、青色、緑色、赤色、及び近赤外が好ましい。
目30の虹彩18の前には眼房水32が位置しており、この眼房水は、種々のレベルの溶解ブドウ糖を収容している。偏光子20が、好ましくは、光源10及び瞳孔16と一線をなすと共に光源10と目30との間に位置決めされていて、光15が、目30への途中で偏光子20を通過するようになっている。その結果、目30に到達した光は、偏光される。像取込み又は像捕捉デバイス40が、目30から反射された光を受け取るよう位置決めされている。好ましくは、像取込みデバイス40は、電荷結合デバイス(“CCD”)、例えば日本国ジェイエーアイ・コーポレイション(JAI Corporation)により製造されたCV-M50 IR CCD又は目30から反射された光から像を作るようになった別の公知の像取込みデバイスである。CCDは、画素と呼ばれる光強度検出ロケーションのアレイを有している。かくして、光がCCDにより受け取られると、強度測定値のアレイが作られる。CCDのアレイ構造により、CCDは、虹彩から反射された光の強度を測定することにより虹彩の像を得ることができる。
画像化効率を高めるため、好ましくは、レンズ38が設けられ、このレンズは、光源10から約1mm〜約5mmの距離のところに且つ像取込みデバイス40から約15mm〜約30mmの距離のところで光源10と像取込みデバイス40との間に位置決めされている。好ましい実施形態では、レンズ38は、Fが1.4の25mmレンズである。像取込みデバイス40に対するレンズ38の位置は、好ましくは、像のフォーカスを向上させるよう調節できる。
好ましくは、光源10及び偏光子20は、互いに且つ瞳孔16と一線をなして位置決めされる。これらは、互いに間隔を置いた別個のコンポーネントから成るのがよいが、より好ましくは、偏光子20及び光源10は、一体形ユニットを形成し、別体としない。光源10は、好ましくは、目30から約15mm〜約30mmの距離のところに配置され、20mmという距離は、特に好ましい。
偏光子20、光源10、像取込みデバイス40、プロセッサ42、及びメモリ44を一体形ハウジング(図示せず)、より好ましくは、携帯用の手持ち型ユニットの形態で提供されるのがよいが、このようにするかどうかは任意である。システム25のコンポーネントは又、一体形ハウジングを用いないで別々に接続できる。また、コンポーネントのうち2つ又は3つ以上を単一のハウジング内に組み合わせ、次に別々に残りのコンポーネントに接続し又は残りのコンポーネントと共に用いてもよい。
図2に示す実施形態によれば、光源10及び偏光子20は、光が1又は2以上の入射角で目30の虹彩に当たるよう位置決めされている。光の少なくとも一部は、像取込みデバイス40の方へ反射される光の何割かを偏光するのに十分な角度で虹彩に当たる。本発明の範囲を何ら制限するものではないが、目の曲率により、偏光が多くの種々の入射角で虹彩に当たり、散乱効果を生じさせることが理論化される。当業者には理解されるように、光が表面に当たると、反射係数が入射面に平行な光の成分についてはゼロになるブルースター角と呼ばれる入射角が生じる。その結果、ブルースター角で反射された光は、その振動平面が入射平面に対して直角をなした状態で偏光される。かくして、虹彩に当たった光の少なくとも一部が散乱及び(又は)ブルースターの反射の効果によりもう1度(最初は、偏光子20により行われる)偏光されることが理論化される。
この場合も又、本発明の範囲を何ら限定するものではなく、上述の2重偏光効果の結果として、虹彩から反射された光の強度を偏光の平面を目の前方部分内に入っているブドウ糖によって回転させる程度の間接的な尺度として使用できることが理論化される。
図2に示すように、像取込みデバイス40は、オプションとしてプロセッサ42に接続されており、このプロセッサは、以下に詳細に説明するようにブドウ糖濃度を計算するよう構成されている。
パターン照合(マッチング)表の作成
図2のシステムは、プロセッサ42に作動的に結合されていて、所定のブドウ糖濃度データ及び所定の光強度データを格納したメモリ44を更に有している。メモリ44は、好ましくは、所定の光強度データと既知のブドウ糖濃度のパターン照合表を有する。一実施形態では、パターン照合表は、これを用いて自分のブドウ糖濃度を予測する被験者の各々について作成される。
図4は、パターン照合表を作成する方法の好ましい実施形態を示す流れ図である。ステップ410において、ブドウ糖を被験者に供給してその人のブドウ糖濃度を調節する。ブドウ糖を例えば患者に果汁のグルコラ(glucola)を摂取させることにより供給するのがよい。ブドウ糖が血流に入るのに要する時間、例えば10分間待った後、ステップ420において被験者の血流中のブドウ糖の濃度を公知の侵襲法により測定する。
既知の濃度をいったん定めると、光源10からの光を、偏光子20を介して目30に差し向ける。ステップ430において、目30から反射された光を像取込みデバイス40により受け取り、所定の像を取り込む。パターン照合表を作成する一部として得られた画像を、本明細書においては、これら画像を、ブドウ糖又は他の光学活性体の未知の濃度を測定する目的で生成される画像から区別するために「所定(の)画像」と称する。未知の濃度で得られた画像を「測定(された)画像」と称する。
ステップ430において、光源10、偏光子20、及び像取込みデバイス40を、好ましくは、目30の虹彩に当たった光のうちの或る量が二次偏光を生じ、その結果、像取込みデバイス40により検出されるように位置決めする。光源10は、好ましくは、偏光子20と一体であり、この光源を目30から約15mm〜約30mmの距離のところに配置し、20mmという距離が、特に好ましい。光源10及び偏光子20を好ましくは瞳孔16の前に配置する。レンズ38を、好ましくは、光源10から約1mm〜約5mmの距離のところで光源10、偏光子20、及び瞳孔16と一線をなして位置決めする。像取込みデバイス40を、好ましくは、レンズ38から約15mm〜約30mmの距離のところで光源10、偏光子20、レンズ38、及び瞳孔16と一線をなして位置決めする。
像取込みデバイス40は、装置内の種々の強度測定ロケーションのところで、例えば、CCD内の画素ロケーションのところで受け取った光の強度を測定することにより目30の虹彩の像を取り込む。その結果、虹彩の画像が作られる。この画像は、像取込みデバイス40により得られた強度測定値のアレイから成る。好ましくは、この画像は、単一波長の光15を用いて作られる。多数の波長の光が用いられる場合、後で説明するように、かかる波長は、好ましくは、各々が単一の波長に基づく一連の互いに異なる画像を生成するために用いられる。
目30の瞳孔16は、虹彩18内に位置しているので、虹彩18の画像は、この中に位置する瞳孔の画像を更に含むことになる。しかしながら、瞳孔は、目の中の構造体ではなく、これとは異なり、虹彩の内周により画定されるアパーチュアである。かくして、瞳孔の画像は、瞳孔領域中に送られてこれから反射される光の量は比較的僅かなので、虹彩画像よりも実質的に暗いであろう。しかしながら、以下に更に説明するように、瞳孔画像は、好ましくは、光学活性体濃度を計算するのに用いられることはない。
図3は、図1の像取込みデバイス40から取り込まれる目50の像の作図である。
図3を参照すると、目50の画像は、強膜60、虹彩70、及び瞳孔130を含む。上述したように、画像50は、1組の画素値によって定められる。各画素の強度値は、代表的には、0〜255の考えられる256個の値を持つ8ビットバイトとして表されることになる。好ましくは、図4のステップ440において、まず最初に目に光が差し向けられない場合の目の画像を得ることによりダークフレーム較正法又は手順を実施する。次に、較正画像は、各画素について基準値を生じさせ、この基準値は、後でその画素について測定される強度から差し引かれる。ダークフレーム較正により、各画素は、画像を得る最も暗い条件でゼロ強度を有することになり、それにより、0〜255範囲の有効又は有用部分を拡張する。加うるに、画像引き伸ばしを利用して8ビットバイトの有効範囲を拡張するのがよいが、このようにするかどうかは任意である。画像引き伸ばしは、ダークフレーム較正後に最大強度値及び最小強度値を識別することにより行う。次に、各画素値に255/(最大強度−最小強度)の比を乗算して最も高い測定強度が255の画素値を有し、最も低い画素値が0の画素値を有するようにする。このような画像引き伸ばしは、画像の外観を向上させる上で特に有用である。
ステップ450において、ボックス80(図3)により表されたデータセットを、虹彩画像70を含むが、強膜画像60を排除するように選択する。好ましい実施形態では、強膜画像60を取り込んだ画像から除外するのに、画像取込みデバイス40の視野を大抵の被験者にとって代表的である虹彩直径よりも小さな又はこれに等しい直径にあらかじめ設定する。しかしながら、他の方法、例えばしきい値検出を用いて強膜画像60の存在場所を突き止め、これをボックス80から排除してもよい。
ステップ460によれば、虹彩画像70中に多数の計算空間90,100,110,120を定め、これら計算空間の各々は、虹彩の特定の領域に対応している。図3に示すように、計算空間90は、第1の領域92及び第2の領域94を有している。他の計算空間100,110,120も同様に、これらそれ自体のそれぞれの第1及び第2の領域を有している。第1及び第2の領域は、好ましくは、性質として矩形であり、「L字形」計算空間を形成するよう互いに対して位置決めされている。
第1の領域92及び第2の領域94は、好ましくは、長さが画素150個分及び幅が画素20個分である。第1の領域92は、好ましくは、ボックス80の近くのコーナー部の水平方向及び垂直方向内方に配置された17個の画素である。瞳孔130は、虹彩70内に位置し、かくして、虹彩の画像は、瞳孔を含む。しかしながら、瞳孔は、光学活性体の濃度を計算するのには用いられず、計算空間90,100,110又は120内には位置していない。
上述したように、本発明は、被験者から反射された偏光の強度の比を用いると、ブドウ糖濃度を予測できるという発見に関している。しかしながら、かかる比は、ブドウ糖濃度と共に周期的に変わることが判明した。また、光強度測定値は、患者の目30に対する像取込みデバイス40、光源10、及び偏光子20の位置合わせ状態が首尾一貫しないので「ピッチ・アンド・ヨー(pitch and yaw)」誤差を受ける場合があることが判明した。この結果、パターン照合表を作成するために用いられる画像と未知の濃度を測定するために用いられる画像との間に不一致が生じる場合がある。多数の計算空間を用いることにより、少なくとも或る程度は、強度比とブドウ糖及びピッチ・アンド・ヨー誤差との間の関係の周期性がアドレスされることが理論化される。
ステップ470において、所定の画像を用いて、第1の領域92の画素値の全てを互いに加算して所定の強度の第1の和を得ると共に第2の領域94の画素値の全てを互いに加算して所定の強度の第2の和を得る。ステップ480において、所定の強度の第1の和を所定の強度の第2の和で除算して計算空間90について所定の強度比を得る。次に、同じ手順を残りの計算空間100,110,120について用いてこれらのそれぞれの所定の強度比を生じさせる。
ステップ490に示すように、所望の数の既知の濃度の各々に対応した所定の画像を得ることによりこの手順を繰り返し、表1に示すようにパターン照合表を作成する。表1及び本明細書に記載している残りの表のデータは、参考目的で提供されており、これらのデータは、実験結果に基づく実際のデータを反映するものではない。加うるに、表に示された計算空間比値に105を乗算し、それにより、かかる値を整数表記に変換してパターン照合表がコンピュータで実行したときに計算効率を向上させる。
Figure 2012016606
好ましくは、被験者の目30の瞳孔の直径は、連続した各々の所定の画像及び既知のブドウ糖濃度について一定の値に保ち、それにより、計算空間が首尾一貫して同一の虹彩位置に位置決めされるように一層よく保証すると共に瞳孔直径のばらつきにより生じる光の反射のばらつきを減少させる。
未知のブドウ糖値の計算
パターン照合表をいったん得ると、未知の濃度値を図2のシステムの使用により求めることができる。目30の測定画像の取り込みに先立って被験者の瞳孔は、好ましくは、パターン照合表の作成と関連して所定の画像を取り込んだ時点でその直径に一致するよう調節される。
図5は、本発明の好ましい実施形態に従って光学活性体の濃度を測定する方法を示す流れ図である。この方法によれば、測定画像、例えば図3に示す測定画像を、パターン照合表を作成するのに所定の画像を得たのと同一の仕方でステップ510において得る。ステップ520では、ダークフレーム較正を上述したように実行する。ステップ530に示すように、ボックス80で表されたデータセットを虹彩画像70を含むが強膜画像60を排除するよう選択する。
ステップ540において、計算空間90,100,110,120を測定画像中に定めてこれら計算空間が、パターン照合表を作成するために用いられた所定画像中に用いられた計算空間に対応するようにする。
ステップ550において、測定画像から、計算空間90の第1の領域92中の画素の全てを合計して測定光強度データの第1の和を得ると共に第2の領域94中の画素の全てを合計して測定光強度データの第2の和を得る。ステップ560において、第1の和を第2の和で除算して計算空間90について測定強度の比を得る。同様な仕方で、測定強度の比を計算空間90,100,110,120について得る。
次に、ステップ570,580において、最小オフセット誤差を各計算空間について計算する。本明細書で用いる「オフセット誤差」という用語は、測定光強度の比と所定の光強度の比の差の絶対値を指している。最小オフセット誤差を各計算空間について計算するため、まず最初に、各計算空間に関する測定光強度と同じ計算空間に対応するパターン照合表中の所定の光強度比の各々との差の絶対値を計算することにより各計算空間についてのオフセット誤差を求める。
表2は、計算空間90についてのオフセット誤差の計算結果を示している。例えば、表1のデータを用いると、計算空間90の測定光強度比が111000である場合、オフセット誤差は次の通りである。
Figure 2012016606
かくして、計算空間90に関し、最小オフセット誤差は、10000であり、これは、100mg/dlの既知のブドウ糖濃度に相当している。注目されるように、オフセット誤差を計算するために用いられた所定光強度比は、表1の「計算空間90」の列からの比である。同様に、オフセット誤差及び最小オフセット誤差を計算空間100,110,120について計算する。最小オフセット誤差は各々、計算空間と既知のブドウ糖濃度の両方に対応している。
本発明の一実施形態によれば、ステップ590において、一連のクラスタ又はグループを定め、各クラスタ又はグループは、固有の組をなす計算空間又は虹彩領域を有する。クラスタを用いることにより、光学活性体の濃度を互いに最も一致している計算空間に基づかせる手段が得られ、それにより、首尾一貫性の最も低い計算空間が取り除かれる。例えば、クラスタを次のように定めるのがよい。
クラスタ1:計算空間90,100,110
クラスタ2:計算空間100,110,120
クラスタ3:計算空間90,100,120
クラスタ4:計算空間90,110,120
この実施形態によれば、ステップ600において、各クラスタを有する計算空間について最小オフセット誤差を合計し、最小オフセット誤差の合計が最も小さなクラスタを識別する。識別されたクラスタは、各々がパターン照合表中の既知の濃度値に相当する最小オフセット誤差を有する3つの計算空間を有することになる。次に、3つの既知の濃度値をステップ610において平均し、それにより被験者に関する測定濃度値を得る。
例えば、計算空間90の測定強度比が、110000であり、計算空間100,110,120の測定強度比がそれぞれ、125000,150000,160000である場合、以下のように表1のデータから以下の最小オフセット誤差及びこれに対応した既知ブドウ糖濃度が得られる。
Figure 2012016606
次に、各クラスタに関する最小オフセット誤差和は、次の通りである。
Figure 2012016606
かくして、最小オフセット誤差和を有するクラスタは、クラスタ1である。クラスタ1を有する計算空間は、既知のブドウ糖濃度100,300,300に相当する最小オフセット誤差を有し、これらの平均は、700/3=233mg/dlである。
画像の回転
本発明の別の特徴は、光学活性体の濃度を計算するために回転画像データの任意的な使用に関している。上述したように、像取込みデバイスを首尾一貫して位置決めする際の問題の結果として、「ピッチ・アンド・ヨー」誤差が生じる場合があり、その結果、パターン照合表を作成するために得られる画像が未知の濃度を測定するために用いられる画像に対して一貫性のない状態で位置決めされるようになる。本発明のこの特徴によれば、複数個の回転画像を得て最も首尾一貫した結果が複数の計算空間の中から得られた回転を識別する。
好ましくは、画像取込みデバイスにより1つの画像を取り込み、測定光強度データを変換してこれを各所望の回転に対応させることにより回転画像データを作成する。かかる回転変換を行う方法は、当業者には知られており、かかる方法は、市販のソフトウェアパッケージ、例えば、テキサス州オースチン所在のナショナル・インストラメンツ・コーポレイション(National Instruments Corporation)により市場に出されているプログラムであるLABVIEW(登録商標)によって実施できる。回転は、基準座標系に関し約−3°〜約+3°の範囲であることが好ましい。さらに好ましくは、60個の回転画像を約0.1°の間隔で作成する。
各々が被験者の虹彩の領域に対応した複数の計算空間を基準座標系に関して定める。計算空間は座標系に対して固定されたままなので、画像の回転及び関連のデータ変換は、各計算空間内に位置する測定強度データのシフト又はずれに対応している。その結果、各計算空間についての測定光強度値は、回転位置で変わることになる。
各回転位置では、最小オフセット誤差を上述した仕方で各計算空間について求める。その結果、多数の最小オフセット誤差が生じるが、これらは各々、回転位置、計算空間及びパターン照合表からの既知の濃度値に対応している。任意的に、データを多数のロケーションを有するアレイとして表すことができ、かかるロケーションは各々、回転位置に対応した行及び計算空間に対応した列によって定められる。表5は、60個の回転画像について作成されたかかるアレイの一部を示している。
Figure 2012016606
上記において与えられた例の場合と同様、各最小オフセット誤差は、光強度の測定比とパターン照合表中の光強度の所定比との間の差の絶対値が最小である既知の濃度値に対応している。
この実施形態によれば、好ましい回転位置は今や、どの回転位置が最小オフセット誤差和を有するかを求めることにより選択される。表5のアレイ構造を用いて各行を合計して回転画像の個数に対応した列の数を有する最小オフセット誤差和ベクトルを得る。この場合も又、表5の例を用いて、以下の最小オフセット誤差和ベクトルを次のようにして作成することができる。
Figure 2012016606
かくして、表6の例によれば、図示のデータについての最小オフセット誤差和は、5200であり、これは、好ましい回転が+3.0°であることを指示している。
次に、計算空間を各々が計算空間の総数の固有のサブセットを有するクラスタの状態にグループ分けする。この例の目的に関し、クラスタは、この場合も又、次のように定められる。
クラスタ1:計算空間90,100,110
クラスタ2:計算空間100,110,120
クラスタ3:計算空間90,100,120
クラスタ4:計算空間90,110,120
好ましい回転(即ち、表5から+3°の行)を用いて、最小オフセット誤差を合計して各々がクラスタを有する計算空間について最小オフセット誤差の和を有するクラスタの和を得る。この場合も又、図2の例を用いると、+3.0°の選択された回転におけるクラスタ和は、次の通りである。
クラスタ1の和=950+1050+1000=3000
クラスタ2の和=1050+1000+2200+=4250
クラスタ3の和=950+1050+2200+=4200
クラスタ4の和=950+1000+2200+=4150
かくして、クラスタ1は、最小クラスタ和を有し、このクラスタ1は、ブドウ糖濃度を計算する目的で選択されたクラスタである。上述したように、各最小オフセット誤差は、表1からの所定光強度比及び表1からの既知の濃度値に相当している。かくして、表2に戻ってこれを参照すると、計算空間90,100,110についての950,1050,1000の最小オフセット誤差に相当する既知の濃度をパターン照合表(例えば表1)から検索して取り出し、平均してブドウ糖濃度を得る。
パターン照合表内のウィンドウ生成
上述したように、虹彩から反射された光の強度の比がブドウ糖濃度と共に周期的に変化することが発見された。さらに、周期は、用いられた光の波長と共に変化することが発見された。例えば、940nm光源を用いた場合、1サイクル全体が、被験者のブドウ糖レベルが40mg/dlから475mg/dlに変化したときに測定光強度比の変化中に観察される。525nm光源を用いた場合、ほぼ2回のサイクルが、同一のブドウ糖範囲にわたって観察される。本発明の範囲を何ら限定しないで、この周期性は、ブドウ糖レベルが変化すると、虹彩から反射される強度が空間依存的に変化するので生じると理論化される。その結果、互いに異なる虹彩領域が、ブドウ糖レベルが変化するにつれて明るくなり又は薄暗くなるように見えることになる。これら反射強度の変化が、湾曲面、即ち、目の表面で生じるので、周期的関係が観察されると考えられる。
被験者のブドウ糖の変化の幅が十分に狭い場合、僅かなグルコース濃度範囲についてパターン照合表を作成することができ、周期性に関する問題を最小限に抑えることができる。しかしながら、被験者のブドウ糖レベルが強度比の周期とブドウ糖濃度の関係よりも広い範囲内で変化する場合、周期性を考慮に入れた技術を採用することが望ましい。
かくして、本発明の別のオプションとしての特徴は、パターン照合表を副表に細分することに関する。図6は、本発明の好ましい実施形態に従って副表を用いて光学活性体の濃度を計算する方法の好ましい実施形態を示す流れ図である。この図を参照すると、ステップ710〜740において、回転画像データを上述した仕方で作成する。ステップ750において、測定光強度の一連の比を多くの計算空間及び回転位置について作成する。ステップ760において、パターン照合表を互いにオーバラップするウィンドウの状態に細分する。以下に詳細に説明する或る特定の統計学的信頼パラメータを用いてステップ780において、ウィンドウのうちの1つを選択し、ステップ790において、ブドウ糖濃度をパターン照合表全体に基づくのではなく、選択したウィンドウに基づいて予測する。
以下の表7は、本発明のこの特徴を実証するために用いられる例示のパターン照合表である。
Figure 2012016606
この実施形態によれば、一連の副表又は「ウィンドウ」は、パターン照合表から選択される。大きな表に関し、3つの行副表を用い、これに対し、小さな表に関しては、2つの行副表が好ましい。副表は、互いにオーバラップすることが好ましい。互いにオーバラップした副表を用いることは、種々の計算空間とパターン照合表との間のあてはまり又は照合(マッチング)の質の良好な指標を提供すると考えられる。この例の目的に関し、2つの行の互いにオーバラップした副表が用いられる。かくして、第1の副表は、行1,2から成り、第2の副表は、行2,3から成り、第3の副表は、行3,4から成り、第4の副表は、行4,5から成り、第5の副表は、行5,6から成り、第6の副表は、行6,7から成り、第7の副表は、行7,8から成る。
虹彩の画像を取り込んだ後、画像を回転させて上述したような複数個の回転画像を作る。各回転時に、最小オフセット誤差を各計算空間について計算するが、選択した副表の行のみを用いる。例えば、特定の回転時に、計算空間90が195000の測定強度比を有する場合、種々の副表中のその最小オフセット誤差は、次の通りである。
副表1:195000−130000=65000であり、これは、ブドウ糖の200mg/dlに相当する。
副表2:195000−145900=49100であり、これは、ブドウの250mg/dlに相当する。
副表3:200000−195000=5000であり、これは、ブドウ糖の300mg/dlに相当する。
副表4:200000−1950000=5000であり、これは、ブドウ糖の300mg/dlに相当する。
副表5:195000−140000=55000であり、これは、ブドウ糖の350mg/dlに相当する。
副表6:195000−180000=15000であり、これは、ブドウ糖の450dg/dlに相当する。
副表7:195000−180000=15000であり、これは、ブドウ糖の450mg/dlに相当する。
各副表に関する上述の技術を用いて、数回転好ましくは60回転で各計算空間について最小オフセット誤差を生成する。この操作の結果として、各副表は、これと関連して最小オフセット誤差のアレイを有することになり、各行は、回転に対応し、各列は、計算空間に対応する。この時点において、好ましい回転を上述したのと同一の仕方で識別する。ただし、これを関心のある副表にのみ基づいて識別する場合を除く。かくして、各副表内において、最小オフセット誤差を各回転時における計算空間の全てにわたって合計する。最小オフセット誤差和を有する回転を好ましい回転として識別する。その結果、各副表は、好ましい回転及びこれと関連した最小オフセット誤差和を有することになる。この操作は、表8のデータによって示されている。回転を好ましくは−30°〜+30°の回転指数によって表すことができるが、このようにするかどうかは任意である。
Figure 2012016606
各好ましい回転指数における各最小オフセット誤差和は、各計算空間について1つずつの1組の最小オフセット誤差に相当している。各計算空間のそれぞれの最小オフセット誤差も又、パターン照合表からの既知の濃度値に対応している。したがって、各副表内において、クラスタ誤差和が最も小さいクラスタを識別し、上述したように識別されたクラスタを含む計算空間について対応の既知のブドウ糖値の平均値を計算することにより好ましい回転時にブドウ糖の数を計算することができる。
統計学的信頼パラメータ
本発明の追加の特徴としては、統計学的信頼パラメータを用いて未知のブドウ糖濃度を計算する目的で幾つかの副表のうちどの副表を選択すべきかを突き止めることが挙げられる。一般的に言って、計算空間の存在場所及び画像回転に対する予測ブドウ糖濃度の感受性を評価する。以下に、幾つかの統計学的信頼パラメータの説明が記載され、かかるパラメータを種々の組み合わせで用いると、ブドウ糖濃度を計算するのに好ましい副表を突き止めることができる。
関心のある第1の統計学的信頼パラメータは、「アレイ偏差」と呼ばれている。本明細書で用いる「アレイ偏差」という用語は、以下のステップに従って各副表について計算されたアレイを指している。
1.各回転時に、全ての計算空間全体にわたって最小オフセット誤差和を計算し、それにより最小オフセット誤差和のベクトルを作成する。ベクトルは、回転の数に等しい多くの値を有し、各最小オフセット誤差和は、回転及び副表に対応する。
2.各ベクトル内において、ベクトル値の標準偏差を計算して選択した副表に対応した標準偏差を得る。
次に、上述のステップを各副表について繰り返し実施する。ゼロのアレイ偏差が好ましく、このことは、一般に、特定の副表に関する結果が画像回転の変化に対する感受性が比較的低いことを指示している。
関心のある第2の統計学的信頼パラメータは、「クラスタ和の偏差」と呼ばれている。本明細書で用いるクラスタ和の偏差という表現は、次のステップに従って各副表について計算された変数を指している。
1.各副表について好ましい回転を識別する。
2.好ましい回転及び選択した副表に対応する回転画像データを用いて、クラスタを含む計算空間について最小オフセット誤差を加えることにより各クラスタについて最小オフセット誤差和を計算する。これにより、1組のクラスタ和の値が生じることになる。
3.クラスタ和の値の標準偏差を計算して各副表について単一の標準偏差を得る。
好ましくは、クラスタの数は、計算空間の数に等しいであろう。かくして、4つの計算空間が用いられる場合、標準偏差は、4つのクラスタ和を利用した4点標準偏差であろう。
関心のある第3の統計学的信頼パラメータは、「クラスタ近接度偏差」と呼ばれている。本明細書で用いる「クラスタ近接度偏差」という表現は、次のステップに従って各副表について計算された変数を指している。
1.各回転時に、各計算空間について最小オフセット誤差を計算する(表5の例で示されているように)。
2.各クラスタについて、そのクラスタを有する計算空間について最小オフセット誤差の標準偏差を計算する。これにより、回転位置の数に等しい数の行及びクラスタの数に等しい数の列を有する標準偏差のアレイが得られる。
3.クラスタ近接度偏差は、上述のアレイ中の最も低い標準偏差に等しいであろう。
例えば、表5のデータを用いると、−2.8°におけるクラスタ1についての標準偏差は、10500,9200,8100の3点標準偏差、即ち、1201である。この手順を全てのクラスタ及び回転について繰り返し行った後、最も低い標準偏差をクラスタ近接度偏差として選択する。次に、クラスタ近接度偏差を各副表について同一の仕方で計算する。
関心のある次の統計学的信頼パラメータは、「クラスタ近接度偏差比」である。本明細書で用いる「クラスタ近接度偏差比」という表現は、副表のクラスタ近接度偏差をそのクラスタ和の偏差で除算することにより各副表について計算された数を指している。
関心のある次の統計学的信頼パラメータは、「アレイ偏差比」と呼ばれている。本明細書で用いる「アレイ偏差比」という表現は、以下の方法に従って各副表について計算された数を指している。
1.各副表内において、全ての回転位置のところでの各計算空間について最小オフセット誤差を計算して各計算空間について最小オフセット誤差のベクトルを得る。各ベクトルは、回転位置の数に等しい数の要素を有する。
2.各ベクトルにおける値の標準偏差を計算して各計算空間について1つの標準偏差を得る。
3.すると、関心のある副表についてのアレイ標準比は、上述の標準偏差の中で最も大きなものをこれらの中で最も小さなもので除算して得られた値に等しいであろう。
一例として4つの計算空間及び60の回転位置を用いると、ステップ1により、4つの計算空間の各々について1つずつ、最小オフセット誤差について60個の要素から成る4つのベクトルが得られる。ステップ2において、60の要素の標準偏差をベクトルごとの方式で取り、4つの標準偏差値を得る。次に、アレイ偏差を計算するのに4つの標準偏差のうちで最も高い値をこれらのうちで最も低い値で除算する。低いアレイ偏差が一般に好ましい。というのは、これは、種々の計算空間相互間において比較的優れた一致性を指示するからである。
関心のある次の統計学的信頼パラメータは、「分散」と呼ばれる。本明細書で用いる「分散」という用語は、次の方法に従って各副表について計算された数を指している。
1.上述の方法を用いて関心のある副表について好ましい回転を突き止める。
2.各副表内において、好ましい回転時における各計算空間について最小オフセット誤差を突き止める。各最小オフセット誤差は、パターン照合表中の既知の濃度値に対応し、したがって、表中の行の値に対応する。
3.各計算空間について識別された最小オフセット誤差に対応するパターン照合表中の索引(即ち、行番号)を突き止める。
4.計算空間の各クラスタについて、そのクラスタを含む計算空間について最小オフセット誤差に対応したパターン照合表の索引の標準偏差を計算する。
5.上述の標準偏差のうち最も低いものが、分散である。
例えば、所与の副表中の好ましい回転時に、計算空間90がパターン照合表の行2に対応した最小オフセット誤差を有し、計算空間100が、行3に対応した最小オフセット誤差を有し、計算空間110,120が各々、行6に対応した最小オフセット誤差を有している場合、分散を表9に示すように計算する。
Figure 2012016606
かくして、この例では、分散は、1.732である。低い分散値が好ましい。というのは、このような分散値は、一般に、互いに異なる計算空間相互間の比較的優れた一致度を指示しているからである。
関心のある次の統計学的信頼パラメータは、「近接度Q係数」であり、これは、2つのパラメータ“Qc”及び“Qv”によって定められる。本明細書で用いられる“Qv”という用語は、以下の方法に従って各副表について計算された数を指す。
1.各回転位置に関し、最小オフセット誤差の最も低い計算空間を突き止める。突き止めた最小オフセット誤差は、パターン照合表中の表索引に対応する。
2.識別した計算空間を含むクラスタのうちの任意の1つを選択する。
3.各回転位置の選択されたクラスタに関し、そのクラスタを含む各計算空間について最小オフセット誤差に対応した既知のブドウ糖濃度を平均することによりブドウ糖濃度を計算する。これにより、回転位置の数に等しい数の要素を有するブドウ糖濃度のベクトルが得られる。
4.上述のベクトルを含むデータ値からヒストグラムを作成し、任意の1つのブドウ糖値に対応したベクトルロケーションの最大数を突き止める。Qvは、ベクトルロケーションの突き止められた最大数である。
高いQv係数値が好ましい。というのは、これらは、回転空間全体を通じ予測ブドウ糖値が一貫することを指示しているからである。最大ピークに加えて、上述のヒストグラム中に他のピークを観察することができ、これらピークを変数Qv1,Qv2等に割り当てることができる。回転向きの最善あてはめにより、0度の回転箇所の近くでヒストグラム中にピークが生じる。これとは対照的に、回転中の多数のピークは、曖昧さを実証しており、オフセンタ状態にある(即ち、0度の箇所から遠くに位置する)ピークは、パターン照合表を作成するために用いられる所定の画像に対する画像向き誤差を指示している。
上述したように、Qvに加えて、近接度Q係数は、別の変数“Qc”を有する。本明細書で用いる“Qc”は、上述したように作成されたヒストグラムに基づいてQvが生じる回転位置を指している。
図6のステップ780に示すように、上記統計学的パラメータを用いて被験者のブドウ糖濃度を計算する目的でパターン照合表から特定の副表を選択する。パラメータを種々の仕方で用いて副表を選択することができる。しかしながら、パラメータを用いる好ましい実施形態は、以下の方法によって構成される。
1.2つの最も低いアレイ偏差値を有する副表を選択する。
2.以下の基準を表10に特定された順序で適用することによりブドウ糖計算の基礎となる副表を選択する。
Figure 2012016606
この実施形態による統計学的信頼パラメータの適用例が表11及び表12のデータによって示されている。
Figure 2012016606
Figure 2012016606
この実施形態によると 共に表11及び表12のデータに基づくと、2つの最小アレイ偏差値は、副表2,7で生じる。副表2,7は、それぞれ1.57及び1.61という事実上同一のクラスタ近接度偏差比を有している。かくして、副表を選択するのに追加の基準が必要である。したがって、次に近接度Q係数を比較する。副表7のQvは、44であり、副表2の近接度Qvは、25である。かくして、Qvの値の中心が比較的良好に0度の回転箇所に位置していると仮定すれば、グルコース濃度を計算する目的で副表7を選択する。
副表7を選択すると、次にこれを用いて好ましい回転時(これは、この場合、+0.3°(回転指数3に対応している)である)最も低い最小オフセット誤差を有するクラスタに基づいてブドウ糖濃度を計算する。上述したように、まず最初に各段階について最小オフセット誤差を計算するが、これらは、副表7のデータにのみ基づいている。次に、各クラスタについて最小オフセット誤差を合計し、最小オフセット誤差の和の最も低いクラスタを選択する。次に、選択したクラスタを含む計算空間について最小オフセット誤差に対応した副表7(図示せず)から既知のブドウ糖値を平均して最終のブドウ糖濃度を得るが、これは、表12の例では、438mg/dlである。
多波長光源の使用
本発明の別の好ましい実施形態によれば、多種多様な波長の光により得られる画像を用いてブドウ糖計算を行う。上述したように、虹彩から反射された光の強度の比は、ブドウ糖濃度に従って周期的に変化する。その結果、或る範囲の濃度にわたり、同一の強度比は、多種多様な濃度に対応する場合がある。光の多くの波長により作成される画像を用いると、周期性の問題をアドレスする追加の手段が得られる。
この実施形態によれば、図1の光源10は、光を複数の互いに異なる波長で送るようになっている。変形例として、互いに異なる画像を互いに異なる波長で作成するのに複数の互いに異なる光源を用いてもよい。赤色(625nm)、緑色(525nm)及び近赤外(940nm)を用いて画像を作成することが好ましい。
反射光強度比の周期とブドウ糖濃度との関係は、光の波長の関数である。光の互いに異なる波長により得られた種々の画像を用いることにより、周期性に関する問題を解決することができる。というのは、実際のブドウ糖の数は、用いられる全ての波長に関して強度比とブドウ糖濃度との間の関係を満足させなければならないからである。かくして、所与の波長で測定された強度比は多種多様なブドウ糖濃度に対応している場合があるが、これら濃度のうちの1つだけが、他の波長について測定された強度に対応することになる。かくして、周期性に関する問題を最小限に抑えることができ、しかも、予測した固有のブドウ糖濃度を得ることができる。
この実施形態によれば、パターン照合表を互いに異なる波長の各々で作成した後、対応の波長を用いて測定画像を作成する。対応の測定画像及びパターン照合表を用いて、上述した方法の使用によりブドウ糖濃度を計算する。各波長に基づいてブドウ糖濃度をいったん計算すると、結果を平均して最終の予想ブドウ糖濃度を得る。
上記実施形態は、本発明の単なる例示である。当業者であれば、本発明の精神及び範囲から逸脱することなくかかる実施形態の多くの用途及び変形例を想到できよう。したがって、本発明の範囲は、かかる実施形態によっては何ら限定され又は特定されず、これとは異なり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載にのみ基づいて定められる。

Claims (3)

  1. 光学的に活性な物質の溶液を含む物体における光学的に活性な物質の濃度を計算する方法であって、
    a.少なくとも1つの前記物体の像を準備するステップであって、当該測定された像の各々が、前記物体から反射された、測定された光の強度の配列(array)を規定するものであり、
    b.前記物体から反射された、前記測定された光の強度の配列から、測定された光の強度の、少なくとも1つの比(ratio)を計算するステップと、
    c.測定された強度の、前記少なくとも1つの比に基づいて、前記光学的に活性な物質の濃度を計算するステップと、
    を含み、更に、
    c.複数の所定の基準物体(reference object)の像を提供するステップであって、当該所定の像の各々が、前記光学的に活性な物質の既知の濃度に対応し、前記物体から反射された、所定の光の強度の配列を規定するものであり、
    d.前記物体から反射された、所定の強度の光の前記配列の各々の中(within)の、少なくとも1つの所定の強度の比を計算するステップ、
    を含み、
    前記光学的に活性な物質の濃度を計算する前記ステップが、
    測定された強度の前記少なくとも1つの比、及び、
    前記物体から反射された、所定の強度の光の前記配列の各々の中(within)の、少なくとも1つの所定の強度の比、に基づいて、前記光学的に活性な物質の濃度を計算するサブステップを含む。
    方法。
  2. 光学的に活性な物質の溶液を含む物体内の当該光学的に活性な物質の濃度を計算するための命令を含む、コンピュータにより読み取り可能な媒体であって、当該命令が、
    a.前記物体の、測定された像を受信することであって、当該測定された像が、測定された光強度データを規定するものと、
    b.前記光学的に活性な物質の溶液を含む、基準物体の複数の所定の像を受信することであって、当該所定の像の各々が、前記光学的に活性な物質の既知の濃度に対応し、当該複数の所定の像が、所定の光強度データの配列(array)を規定し、当該所定の光強度データの配列が、更に、所定の光強度データの複数の副配列(subarrays)を規定するものと、
    c.前記測定された像を、複数の回転位置に回転させることによって、回転された光強度データを生成することと、
    d.所定の光強度データの前記副配列の1つを選択することと、
    e.前記測定された光強度データ、前記回転された光強度データ、及び、前記選択された所定の光強度データの副配列に基づいて、前記物質内の、前記光学的に活性な物質の濃度を計算することと、
    を含む、
    コンピュータにより読み取り可能な媒体。
  3. 光学的に活性な物質の溶液を含む物体から反射される光に基づいて、当該光学的に活性な物質の濃度を計算するための装置であって、当該装置が、
    a.所定の濃度データ及び所定の光強度データを含むメモリと、
    b.前記物体から反射された、測定された光強度データを捕捉する(capture)ための手段と、
    c.前記測定された光強度データ、前記所定の濃度データ、及び、前記所定の光強度データ、に基づいて、前記光学的に活性な物質の濃度を計算するための手段と、
    を備え、
    前記測定された光強度データが、1つ又はそれより多い、光の波長に対応する、
    装置。
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