JP2012010707A - テルペン類を酸化する方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】テルペンおよびシクロアルケンを酵素的に酸化する方法を提供する。
【解決手段】非環式もしくは環式テルペンまたはシクロアルケンである物質またはそれらの置換誘導体を酸化するプロセスに用いられる、活性部位のアミノ酸のより極性の低い側鎖を有するアミノ酸による置換が含まれる、P450camまたはP450BM-3である、突然変異体。及び、前記プロセスプロセスを実施することができるかまたは有利な突然変異酵素を選択するのに使用できる細胞または細胞のライブラリー。
【選択図】なし

Description

本発明は、テルペンおよびシクロアルケンを酵素的に酸化する方法に関する。
テルペノイド化合物は生物系に広く分布しており、天然物の最も大きなクラスの一つをなしている。それらは精油の主要成分であり、中には香味料および香料工業において極めて価値の高いものがある。また、多くのテルペノイドは生物学的活性である。中には抗細菌剤や抗真菌剤であるものがあり、従って、製薬業界での関心が高い。実際に、テルペノイドは、最も付加価値の高い薬品の一部を占めている。
商業的な関心の対象となるテルペノイドは、通常、テルペンそのものではなく、むしろ、親テルペンのアリル性および非活性炭素-水素結合における立体選択的官能化が一般に必要となる誘導体である。このタイプの化学変換は、従来の化学合成法により行うことが最も困難な反応の一つである。この場合、所要の高反応性化学酸化剤は非選択性であることを要し、典型的には、それらは、より活性な炭素-水素結合や反応性の官能基、例えば、テルペン中に一般に存在するオレフィン性二重結合を優先的に攻撃するであろう。
本発明は、テルペンおよびシクロアルケンの酵素的酸化に関する。この技術により、多くの場合、単一ステップでヒドロキシル化テルペン(およびシクロアルケン)を合成することが可能であり、しかも、基質と酵素との対応が正しければ、この酸化反応は、高度に化学選択性(何らかの他の反応性官能基ではなく非活性C-H結合のような特定の官能基を攻撃する)かつ立体選択性でありうる。従来の試薬を用いた場合、基質酸化に対する基質特異性および選択性を微調整したり改変したりすることは非常に困難である。
図1は、P450camのC334A突然変異体(プラスミドSGB++から発現される)による樟脳の酸化を示す。線A、B、C、DおよびEは、2分、10分、20分、40分および100分における樟脳のターンオーバーを表わす。5.28のピークは樟脳、11.82は5-エキソ-ヒドロキシ樟脳、7.45は5-ケト樟脳、そして16.07のピークは内部標準である。 図2は、野性型P450BM-3を用いたR-およびS-リモネンを示す。 図3は、野性型および突然変異型P450BM-3によるNADH消費を示す。 図4は、プラスミドpCWSGB+により発現されるY96F-F87W-V247L突然変異体によるα-ピネンの全細胞大腸菌酸化を示す。
本発明は、非環式もしくは環式テルペンもしくはシクロアルケンである物質またはそれらの置換誘導体を酸化する方法を提供する。この方法には、これらの化合物を突然変異ヘム含有酵素で酸化することが含まれ、この突然変異体には、より極性の低い側鎖を有するアミノ酸による活性部位のアミノ酸の置換が含まれる。
本発明に使用されるテルペンは、一般的には、式(C5H8)n〔式中、nは、2以上、特に、2、3、または4である。〕を有するであろうが、「テルペン」という用語は、一般にメチル基であるフラグメントの欠失またはシフトを含めて厳密には「テルペノイド」と呼ばれる化合物にまで拡張されるものと解釈すべきである。従って、例えば、本発明に使用可能なセスキテルペン(nが3である場合)は、15個ではなく例えば単に14個の炭素原子を含むものであってよい。一般的には、テルペンとは、イソプレン単位から構成可能なテルペンである。テルペンは、環式であっても非環式であってもよい。
モノテルペン(nが2である場合)は、一般的には10個の炭素原子を有すると共に、典型的には1〜3個の二重結合、特に1または2個の環二重結合、および典型的には0〜2個の環を有するであろう。これらの環のうちの1個は、典型的には0または1個の炭素原子を含有する架橋として形成可能である。言い換えれば、存在する環の2個の炭素原子間を直接連結するかまたは中間のメチレン基で連結することによって形成可能である。テルペンが非環式である場合、一般に、少なくとも2個、通常は3個の二重結合が含まれるであろう。
セスキテルペンは、普通は14または15個の炭素原子を含有すると共に、典型的には0〜2個の二重結合、ならびに縮合環および/または架橋環の可能性がある典型的には1〜3個の環を有するであろう。
テルペン中に存在しうる環は、典型的には3〜9個の炭素原子、特に5または6個の炭素原子を有するであろう。従って、特に、テルペンは、シクロヘキサン環またはシクロヘキサジエン環を含有するであろう。
テルペンは、一般的には、合計で3または4個の環外のメチル基またはメチレン基、例えば、モノテルペンの場合、2個のメチル基と1個のメチレン基、または3個のメチル基、セスキテルペンの場合、3個のメチル基と1個のメチレン基、または4個のメチル基を含有するであろう。
モノテルペンは、典型的には、リモネン、ピネン、テルピネン、サビネン、ツジェン、ミルセン(mercene)、オシメン(ocimeme)、ネロール、またはゲラニオールであり、例えば、表1に示される通りである。
セスキテルペンは、一般的には、3個のイソプレン単位を頭-尾配置することによって形成される。セスキテルペンは、典型的には、アロマデンドレン、カリオフィレン、ロンギフォレン、バレンセン、イソバッザネン、シルフィネン、イシュワラン、イソパトククラ-3-エン(isopatchchoul-3-ene)、またはイソセスキカレンであり、例えば、表2に示される通りである。
ジテルペン(nが4である場合)は、典型的には、カスベン、レチナール、アビエチン酸、またはジベレリンである。
シクロアルケンは、一般的には、9個までの環員を含み、具体的には、5、6、7、8、9員、またはそれ以上の環である。シクロアルケンは、典型的には、シクロヘキセンである。
任意の上記テルペンまたはシクロアルケンの置換誘導体を使用してもよい。典型的には、1、2、3個、またはそれ以上の置換基が存在する。以下の置換基の任意の組み合わせが存在してよい。置換基は、典型的には、ハロゲン原子であるか、あるいは一般に1〜6個の炭素を有するアルキル基またはアルケニル基であり、場合により、置換基は、1個以上のハロゲンで置換されている。それは一般的にはフェニルシクロヘキセンではない。実際には、本発明で使用されるすべての基質に対して、フェニルのような芳香環の存在は回避される。
置換基は、典型的には、式CnHkXm〔式中、Xはハロゲンであり、nは、1、2、3、またはそれ以上であり、mは、1、2、3、4、またはそれ以上であり、そしてkは、置換基CnHkXmの原子価が満足されるように適切な値を有する整数である。〕を有する。アルキル置換基の場合、k+m=2n+1である。典型的には、kは、1、2、3、4、またはそれ以上であり、0であってもよい。すなわち、置換基がペルハロアルキル基であってもよい。ハロゲンは、典型的には、フッ素、塩素、または臭素である。
また、置換基は、1、2個、またはそれ以上の酸素原子を含んでいてもよく、例えば、アルコール基、アルデヒド基、ケトン基、またはエポキシド基であってもよい。
酸化が起こると、一般的には炭素-水素結合の酸化によりヒドロキシドとしてC-O結合が化合物中に形成されるが、C=C結合の酸化によりエポキシドを形成し得る。従って、酸化により、ヒドロキシ基、アルデヒド基、ケトン基、またはエポキシド基を導入することが可能である。このほか、酸化により、酸素含有基の更なる酸化、例えば、ヒドロキシ基からアルデヒド基またはケトン基への変換を起こすことも可能である。同一基質分子中において、1、2個、またはそれ以上の炭素原子を攻撃してもよい。
酸化が起こると、典型的には、1、2種、またはそれ以上の酸化生成物が形成される。これらの異なる生成物は、異なる炭素原子を攻撃することによりおよび/または所定の炭素原子において異なる度合いで酸化を行うことにより得ることが可能である。
酸化は、環炭素原子または置換基炭素原子のいずれか一方あるいはそれらの両方で行うことが可能である。少なくとも、初期の酸化には、活性化されていても活性化されていなくてもよいC-H結合の攻撃または炭素-炭素二重結合の攻撃(典型的には、エポキシドが得られる)が関与するであろう。一般的には、活性C-H結合は、炭素原子がベンジル位またはアリル位に存在する場合に生じる。芳香環およびオレフィン性二重結合は、ラジカル中間体の安定化または反応経路中で発生する電荷の任意の蓄積を行うことによって、攻撃対象のC-H結合を活性化する。C-H結合の炭素は、第一級、第二級、または第三級の炭素であってよい。
酸化の際、典型的には、立体異性が保存される。従って、基質が単一の立体異性体から構成されている場合、生成物は、典型的には、単一の対応する立体異性体から構成されているか、または対応する立体異性体を多く含有する可能性がある。
この方法で使用される酵素は、一般的には、P450酵素、典型的には、真核生物または原核生物に由来するP450酵素である。酵素は、一般的には、細菌、真菌、酵母、植物、または動物に由来するものであり、従って、Pseudomonas属の細菌に由来するものであってよい。酵素は、典型的には、モノオキシゲナーゼである。酵素の非突然変異形態は、テルペンおよび/またはシクロアルケンを酸化できるものであってもできないものであってもよい。
本明細書中に論じられている突然変異は、一般的には、酵素の部位特異的突然変異誘発法、PCR法、および遺伝子シャフリング法のような当技術分野で周知の方法を用いて、または部位特異的突然変異誘発のサイクル中で複数種の突然変異誘発性オリゴヌクレオチドを用いて、酵素中に導入される。この場合、特定方向にまたはランダムに突然変異を導入することが可能である。こうして、突然変異誘発法を用いると、1種以上の異なる突然変異体をコードする1種以上のポリヌクレオチドが産生される。典型的には、突然変異酵素のライブラリーを作製するのに使用可能な突然変異オリゴヌクレオチドのライブラリーが作製される。
「活性部位の」アミノ酸とは、触媒作用中に基質が結合する部位に並ぶ(line)かまたは該部位を規定するアミノ酸、あるいは基質が触媒部位に達する前に通過しなければならない部位に並ぶかまたは該部位を規定するアミノ酸である。従って、このようなアミノ酸は、典型的には、触媒部位への進入時または触媒作用時に基質と相互作用する。このような相互作用は、典型的には、静電的相互作用(荷電基または極性基の間)、疎水的相互作用、水素結合、またはファンデルワールス力によって生じる。
活性部位のアミノ酸は、当業者にはごく普通の方法により同定可能である。こうした方法としては、基質に接触するアミノ酸を改変(「標識」)する基質に酵素を結合させる標識付け研究が挙げられる。このほか、活性部位のアミノ酸を推定するために、結合した基質を有する酵素の結晶構造を取得することもできる。
酵素は、置換、挿入、または欠失のような他の突然変異を、1、2、3、4、5〜10、10〜20個、またはそれ以上有していてもよい。他の突然変異は、活性部位にあってもよいし活性部位の外部にあってもよい。典型的には、突然変異は、活性部位の1個以上のアミノ酸の位置または配向に影響または接触する「第2範囲」残基に存在する。挿入は、典型的には、Nおよび/またはC末端に存在し、従って、酵素は、融合タンパク質の一部分であってよい。欠失には、一般に、触媒作用に関与しないアミノ酸、例えば、活性部位の外部のアミノ酸の欠失が包含される(この場合、酵素は、天然に存在する酵素の突然変異断片である。)。従って、酵素は、酸化活性に必要なアミノ酸だけを含むものであってよい。
活性部位の他の突然変異は、典型的には、活性部位に結合したときの基質の位置および/または立体配座を変化させる。突然変異により、酸化させるべき基質上の部位が更にヘム基に接近できるようになる。この場合、突然変異は、大きさがより小さいかもしくはより大きい側鎖または極性がより大きいかもしくはより小さい側鎖を有するアミノ酸との置換であってよい。
他の突然変異は、典型的には、タンパク質の安定性を増大させるかまたはタンパク質の精製をより容易にする。典型的には、こうした突然変異は、典型的にはタンパク質からシステイン残基を除去することによって(例えば、P450camの334位または相同体中の等価な位置にあるシステインを好ましくはアラニンと置換することによって)、タンパク質の二量化を防止する。突然変異を用いると、例えば、欠失またはポリヒスチジンタグの導入によって、またはN末端膜アンカー配列の突然変異によって、可溶性形態でタンパク質を調製することが可能になる。突然変異は、典型的には、タンパク質表面上の疎水性パッチ間の接触により生じるオリゴマー化のようなタンパク質のオリゴマー化を防止する。
かくして、突然変異酵素は、典型的には、アミノ酸同一性に基づいて、天然に存在するヘム含有酵素に対して少なくとも70%の相同性を有する。
本明細書中に記載の相同性タンパク質(すなわち、他のタンパク質に対して相同性があると記載されたタンパク質)はいずれも、典型的には、関連タンパク質に対して、少なくとも20個、好ましくは少なくとも30個、例えば、少なくとも40、60、もしくは100個、またはそれ以上の連続するアミノ酸にわたり、少なくとも70%または少なくとも80もしくは90%の相同性を有し、より好ましくは少なくとも95%、97%、または99%の相同性を有する。連続するアミノ酸には、活性部位が含まれていてもよい。この相同性は、連続するアミノ酸にわたって測定するのではなく、そのかわりに、活性部位のアミノ酸だけについて測定してもよい。
相同性は、周知の方法により測定可能である。例えば、UWGCGパッケージには、相同性を計算するのに使用できる(例えば、そのデフォルト設定で使用できる) BESTFITプログラムが用意されている(Devereuxら(1984) Nucleic Acids Research 12, p387-395)。PILEUPおよびBLASTアルゴリズムを用いると、相同性の計算または配列の整列を行うことができる(典型的には、該プログラムのデフォルト設定が用いられる)。これについては、例えば、Altschul S. F. (1993) J Mol Evol 36:290-300; Altschul, S. Fら(1990) J Mol Biol 215:403-10に記載されている。
BLAST解析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を介して公的に入手可能である。このアルゴリズムには、データベース配列中の同一長の文字列とのアライメントを行ったときに、いくらか正の値をとる閾値スコアTと一致するかまたはそれを満たす長さWの短い文字列を問合せ配列中で同定することによって、高スコア配列対(HSP)を最初に同定することが含まれる。Tは、検索対象(neibourhood)文字列スコア閾値と呼ばれる(Altschulら, 前掲)。こうした初期の検索対象文字列ヒットは、検索を開始するためのシードとして機能し、これを用いて、シードを含有するHSPの探索が行われる。文字列ヒットは、累積アライメントスコアが増大可能である限り、各配列に沿って両方向に伸長される。累積アライメントスコアがその最大到達値から数量Xだけ離れた位置にくる場合、1個以上の負スコア残基アライメントの累積により累積スコアがゼロもしくはそれ以下になる場合、またはいずれかの配列の末端に達した場合に、各方向における文字列ヒットの伸長を停止させる。BLASTアルゴリズムのパラメーターW、T、およびXによって、アライメントの感度および速度が決定される。BLASTプログラムでは、デフォルトとして、文字列の長さ(W) 11、BLOSUM62スコアリングマトリックス(HenikoffおよびHenikoff (1992) Proc. Natl. Acd. Sci. USA 89: 10915-10919を参照されたい)アライメント(B) 50、期待値(E) 10、M=5、N=4、および両方の鎖の比較が用いられる。
BLASTアルゴリズムでは、2個の配列間の類似性について統計解析が行われる。例えば、KarlinおよびAltschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5787を参照されたい。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の尺度の一つは、2個のヌクレオチド配列間またはアミノ酸配列間での一致が偶然に起こりうる確率の指標となる最小合計確率(P(N))である。例えば、第一の配列と第二の配列との比較において最小合計確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合、配列はもう一方の配列と類似しているとみなされる。
典型的には、相同タンパク質は、タンパク質全体または先に記載の連続するアミノ酸の任意の長さにわたって比較した場合、少なくとも1、2、5、または10個の突然変異(置換、挿入、もしくは欠失)が存在する点で関連タンパク質と異なっている。
本発明の方法に使用される酵素は、好ましくは、P450camの突然変異体(例えば、表7に示されている配列の突然変異体)またはP450camの天然に存在する相同体の突然変異体、典型的には、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)由来のP450BM-3の突然変異体(例えば、表8に示されている配列の突然変異体)、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp)由来のP450terpの突然変異体、およびサッカロポリスポラ・エリスレア(Saccharopollyspora erythraea)由来のP450eryFの突然変異体、更にまたストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)株由来のP450 105 D1 (CYP105)の突然変異体である。P450BM-3に対して表8に示されているアミノ酸の番号付けは、この酵素中の突然変異を示すための説明に使用されている番号付けと対応していないことに留意されたい。表8に示されている配列には、追加の1アミノ酸がN末端に含まれている。これは通常in vivoで切断される。従って、表に示されている各アミノ酸番号は、常に、慣例的な番号付けで使用される(本説明に使用されているような)番号よりも1大きい。
P450cam(例えば、P450BM-3)の天然に存在する相同体は、P450camまたはP450BM-3と実質的に同じ活性を有していることもある。相同体は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)由来のP450cam、またはP450BM-3の種相同体であってもよいし対立遺伝子変異体であってもよい。相同体の活性部位のアミノ酸は、P450camまたはP450BM-3の活性部位のものと同じであってよい。典型的には、該相同体において、P450camの96位に等価な位置にあるアミノ酸はチロシンである。
P450camの突然変異体またはP450camの相同体の突然変異体は、典型的には、アミノ酸96または相同体中の等価なアミノ酸が、より極性の低い側鎖を有するアミノ酸に変更されたものである。相同体がP450BM-3である場合、突然変異体は、典型的には、47および/または51および/または42および/または75および/または354および/または264および/または263および/または181位に置換(より極性の低いアミノ酸への置換)を有し、そして典型的には、P450camの96に等価な部位に突然変異を有していない(P450BM-3の好ましい突然変異体は、少なくとも、47および51位または相同体中の等価な部位に突然変異を有している)。
この場合、典型的には、置換は、表3中の元のアミノ酸よりも上に記載されるアミノ酸への置換であり、具体的には、表4および表5に示されている好ましい突然変異が挙げられる。
相同体中の「等価な」側鎖とは、相同な位置にある側鎖である。これは、2種の配列間の相同性に基づいてP450camまたはP450BM-3の配列および相同体の配列を整列させることによって推定可能である。配列を整列させるために、PILEUPおよびBLASTアルゴリズムを使用することができる。等価なアミノ酸は、一般的には、相同体の活性部位中の位置のうち、本明細書中に記載の特定のアミノ酸のいずれか、例えば、P450camのアミノ酸96と同様の位置に存在するであろう。
以下の説明では、P450camおよびP450BM-3で置換を行いうる位置の例を示す。相同体中の等価な位置で同じ置換を行うことが可能である。標準的な命名法を用いて突然変異を表す。天然の形態で存在するアミノ酸の文字に続いて位置が記され、次に、突然変異体中のアミノ酸が記される(これらの位置は、表8のアミノ酸の番号付けに関する先に記載の但し書きを考慮して、表7および8に示されている番号付けと対応させることができる)。同一タンパク質中の複数の突然変異を表すために、各突然変異は、ハイフンで分離させて列挙されている。この命名法を用いて以下で論じられている突然変異は、P450camまたはP450BM-3中の天然アミノ酸を特定するものであるが、等価な位置に異なるアミノ酸を有する相同体に対しても(同じ)突然変異を起こすことが可能であるものと解釈しなければならない。
追加の突然変異は、典型的には、P450camのアミノ酸87、98、101、185、244、247、248、296、395、396(またはこれらの組み合わせ、例えば、表4に示されている組み合わせ)におけるアミノ酸置換である。
P450camの場合、以下の組み合わせの置換が好ましい。
(i) 異なる側鎖体積を有するアミノ酸への87位における置換、例えば、A、L、I、およびWへの置換(典型的にはFの置換)と、(典型的にはYから) A、L、F、およびWのような異なる側鎖体積を有するアミノ酸への96位における置換との組み合わせ。こうした組み合わせを用いると、野生型酵素と比較して、例えば、Y96W-F87W (空間が少ない)からY96A-F87A (空間がより多い)へ、基質ポケットの上部の利用可能な空間が変化し、更に、例えば、Y96F-F87A中の一方の側からY96A-F87W中の他方の側へ、空間の位置が変化する。
(ii) 96位におけるFへの置換と185位および395位における置換との組み合わせ。T185およびI395はいずれも基質ポケットの上部に存在し、Aで置換すると、より多くの空間が形成され、Fで置換すると、利用可能な空間が減少し、基質がヘムの近くに追いやられるであろう。
(iii) 96位におけるA、L、F、およびWへの置換と、101、244、247、295、296、および396位を含むヘムにより近い残基におけるA、L、F、またはWへの置換との組み合わせ。こうした組み合わせを用いると、様々な側鎖の領域で空間が形成または削減され、様々なサイズを有する基質が、様々な結合配向をとるようになるであろう。例えば、組み合わせY96W-L244AおよびY96L-V247Wを用いると、R-リモネンの結合に対して非常に異なる基質ポケットが提供されるであろう。
(iv) 87、96、244、247、295、296、395、および396位を組み合わせた位置におけるA、L、F、およびWを組み合わせた3個の置換。この目的は、疎水性基質結合ポケットのサイズおよび形状を変化させることである。例えば、Y96A-F87A-L244Aの組み合わせを用いると、Y96F-F87W-V396Lの組み合わせと比較して、より多くの空間が形成されるので、より大きなテルペンが前者に結合できるようなるが、後者の場合には、より小さなテルペンの利用可能な結合配向が制限される。組み合わせY96F-F87W-V247LおよびY96F-F87W-V295Iは、同様の基質ポケット体積を有するが、基質結合に利用しうる空間の位置は、非常に異なっている。組み合わせY96F-F87L-V247Aは、96位において、組み合わせY96L-F87L-V247Aよりも僅かに大きな側鎖体積を有するが、96位のL側鎖は、より一層フレキシビリティーが大きいので、これらの2種の三重突然変異体に対する基質結合配向は、異なるであろう。
(v) 基質酸化の選択性に変化を生じさせるべく、基質体積、種々の側鎖の様々なフレキシビリティー、およびテルペン結合に対する基質ポケット中の利用可能な空間の位置を操作する類似の原理を用いて、4または5個の置換を有する突然変異体を設計した。
本発明はまた、突然変異:F87A-Y96G-F193A、F87A-Y96G-F193A-C334A、またはT101M-T185F-V247Mだけを有するP450camの突然変異体を除いて、先に論じたように、P450camの突然変異体またはP450camの相同体(例えば、P450BM-3)の突然変異体を提供する。
突然変異酵素は、実質的に単離された形態および/または実質的に精製された形態であってよく、この場合、酵素には一般に、その調製時、タンパク質が、(例えば、およそまたは少なくとも)90%、具体的には、(例えば、およそまたは少なくとも) 95%、98%、または99%含まれるであろう。
本発明はまた、本発明の突然変異酵素をコードする配列を含むポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドは、典型的には、DNAまたはRNAであり、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。ポリヌクレオチドは、本明細書中で論じられている任意の突然変異体の天然に存在する形態をコードするポリヌクレオチド(それぞれ、表7または8に示されているポリヌクレオチド)とハイブリダイズすることのできるものでありうる。それは、典型的には、バックグラウンドよりも顕著に高いレベルで関連ポリヌクレオチドとハイブリダイズする。相互作用により生成するシグナルレベルは、典型的には、「バックグラウンド」ハイブリダイゼーションの少なくとも10倍、好ましくは少なくとも100倍の強度である。相互作用の強度は、例えばプローブを32Pなどで放射性標識することによって測定可能である。選択的ハイブリダイゼーションは、典型的には、中程度〜高度のストリンジェンシー条件(例えば、0.03M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム、約50℃〜約60℃)を用いて行われる。
本発明のポリヌクレオチドは、組換え複製ベクター中に組み込むことができる。このベクターを用いて適合宿主細胞中で核酸を複製することが可能である。この場合、本発明のポリヌクレオチドを作製する一つの方法には、本発明のポリヌクレオチドを複製ベクター中に導入すること、ベクターを適合宿主細胞中に導入すること、およびベクターの複製を引き起こす条件下で宿主細胞を増殖させることが含まれる。ベクターは、宿主細胞から回収可能である。好適な宿主細胞については、発現ベクターと関連させて以下で説明する。
好ましくは、ベクター中の本発明のポリヌクレオチドは、宿主細胞によるコード配列の発現を提供しうる調節配列に機能しうる形で連結されている。すなわち、このベクターは発現ベクターである。
「機能しうる形で連結される」という用語は、記載の構成要素が、意図されるように機能できる関係で存在する並置状態を意味する。コード配列に「機能しうる形で連結された」調節配列は、調節配列と適合する条件下でコード配列の発現が行われるようにライゲートされる。
このようなベクターは、突然変異酵素の発現を提供するのに好適な宿主細胞中に形質転換することが可能である。
ベクターは、例えば、複製起点、場合により該ポリヌクレオチドを発現させるためのプロモーター、および場合によりプロモーターのレギュレーターを備えたプラスミドベクター、ウイルスベクター、またはファージベクターであってよい。ベクターには、1種以上の選択可能なマーカー遺伝子、例えば、細菌プラスミドの場合にはアンピシリン耐性遺伝子、哺乳動物ベクターの場合にはネオマイシン耐性遺伝子が含まれる。ベクターは、例えば、RNAの産生のために、in vitroで使用してもよいし、宿主細胞をトランスフェクトまたは形質転換するために使用してもよい。
プロモーターおよび他の発現調節シグナルは、発現ベクターの設計を合わせた宿主細胞に適合するように選択することが可能である。例えば、大腸菌(E.Coli)プロモーターとしては、lac、tac、trc、trp、およびT7プロモーターが挙げられ、酵母プロモーターとしては、S.セレビシエ(S. cerevistiae)GAL4およびADHプロモーター、S.ポンブ(S. pombe)nmtlおよびadhプロモーターが挙げられる。哺乳動物プロモーターとしては、カドミウムのような重金属に応答して誘導されるメタロチオネインプロモーターが挙げられる。発現ベクターは、昆虫または哺乳動物の細胞中での使用が可能である。昆虫細胞中で使用するためには、ポリヘドリンプロモーターのような強力なバキュロウイルスプロモーターが好ましい。哺乳動物細胞中で発現させるために、SV40ラージT抗原プロモーター、CMVプロモーター、またはアデノウイルスプロモーターのような強力なウイルスプロモーターを使用してもよい。これらのプロモーターはいずれも、当技術分野で容易に入手可能である。
本発明の発現ベクターは、典型的には、リン酸カルシウム沈降法、DEAE-デキストラントランスフェクション法、またはエレクトロポレーション法を含む、慣例の技法を用いて宿主細胞中に導入される。
発現ベクターは、選択可能なマーカーを含有してもよく、および/またはこのような選択可能なマーカーは、発現ベクターと共トランスフェクトして安定なトランスフェクト細胞を選択してもよい。
好適な細胞としては、上記のベクターを発現しうる細胞が挙げられる。このような細胞は、原核細胞であっても真核細胞であってもよい。こうした細胞には、微生物細胞、典型的には細菌、例えば、大腸菌(好ましくはDH、JM109、NM522、およびBL21DE3株)、またはシュードモナス属(Pseudomonas)(典型的にはプチダ種(putida)、哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞、COS7細胞、またはHeLa細胞)、昆虫細胞、あるいは酵母(例えば、サッカロミセス属(Saccharomyces))が包含される。バキュロウイルスまたはワクシニア発現系を使用してもよい。
細胞培養は、標準的な条件下で行うことができる。一般的には、細胞は、同化可能な炭素および窒素の供給源の存在下で培養される。細胞培養用の市販の培養培地は、広く入手可能であり、製造業者の取扱い説明書に従って使用可能である。
典型的には、本発明の方法は、in vitroで、例えば、無細胞系で、行われる。本発明の方法は、細胞中においてin vivoで行ってもよい。
典型的には、酵素(a)および基質に加えて、電子伝達レダクターゼ(b)、電子伝達レドキシン(c)、酵素の補因子、および酸素供与体の存在下で、本発明の方法が行われる。この系では、電子の流れは、典型的には、補因子→(b)→(c)→(a)である。しかしながら、P450BM-3のように、特定の酵素は、電子伝達レダクターゼ(electron reductase)および電子伝達レドキシンの存在を必要としない。以下の論述は、特にレダクターゼまたはレドキシンを必要とする酵素に関するものであるが、これらを必要としない酵素についても当てはまる(例えば、種々の濃度、条件、および速度は、これらの酵素にも適している)。
間違いなくレダクターゼおよびレドキシンを必要とする酵素の場合、(b)は、一般的には、補因子から(c)への電子の伝達を媒介しうる電子伝達レダクターゼ、例えば、天然に存在するレダクターゼ、または天然に存在するレダクターゼに対して相同性、例えば、少なくとも70%の相同性を有するタンパク質であるか、あるいはこうしたレダクターゼまたは相同体の断片である。この場合、(b)は、ヘム含有酵素の起源でありうる上記の微生物のいずれからの由来であってよい。(b)は、典型的には、プチダレドキシンレダクターゼのようなフラビン依存性レダクターゼである。
(c)は、一般的には、(b)を介して補因子から(a)への電子の伝達を媒介しうる電子伝達レドキシンである。(c)は、典型的には、天然に存在する電子伝達レドキシン、または天然に存在する電子伝達レドキシンに対して相同性、例えば、少なくとも70%の相同性を有するタンパク質であるか、あるいはこうしたレドキシンまたは相同体の断片である。この場合、(c)は、ヘム含有酵素の起源でありうる上記の微生物のいずれからの由来であってよい。(c)は、典型的には、プチダレドキシンのような二鉄/二硫黄レドキシンである。
補因子は、電子を(b)に供与しうる任意の化合物、例えば、NADHである。酸素供与体は、酸素を(a)に供与しうる任意の化合物、例えば、ジオキシゲンである。
本発明の方法において、(a)、(b)または(c)の濃度は、典型的には10-8〜10-2M、好ましくは10-6〜10-4Mである。典型的には、(a):(b)および/または(a):(c)の濃度の比は、1:0.1(0.1:01)〜1:10、好ましくは1:0.5〜1:2、または1:0.8〜1:1.2である。通常、該方法は、該酵素が機能できる(例えば該酵素が少なくとも20%、50%、80%またはそれ以上のピーク活性を有する場合などの)温度および/またはpHで行う。典型的には、該pHは3〜11、例えば5〜9または6〜8、好ましくは7〜7.8または7.4である。典型的には、該温度は15〜90℃、例えば25〜75℃または30〜60℃である。1つの実施形態では、該方法は、過酸化水素副生成物を除去できる物質(例えばカタラーゼ)の存在下で行う。
あるいはまた、本発明の方法は、酵素、基質および酸素原子供与体(例えば過酸化水素またはt-ブチルヒドロペルオキシド)の存在下で行うことができる。したがって、該方法は、ペルオキシドシャントを用いて行ってもよい。
典型的には、該方法において、少なくとも20ターンオーバー/分が起こり、例えば少なくとも50、100、200、300、500またはそれ以上のターンオーバーである(ターンオーバーは、酵素1ナノモル当たり形成される生成物のナノモルとして測定される)。
本発明はまた、幾つかのタイプの細胞を提供する。第1のタイプは、
該方法において用い得る酵素であって、その天然に存在する形態において電子伝達レダクターゼドメインを有する該酵素を発現するか、あるいは
(a)本発明の方法で用いられる突然変異型ヘム含有酵素;
(b)電子伝達レダクターゼ;および
(c)電子伝達レドキシン
を発現する。
第2のタイプの細胞は、
(a) (i)P450camもしくはその断片;または
(ii)P450camの天然に存在する相同体もしくはその断片;または
(iii) P450camの突然変異体;または
(iii)(i)もしくは(ii)と少なくとも70%のアミノ酸相同性を有し、かつ場合によっては本明細書中で述べる突然変異の組合せのいずれかを有するポリペプチド;ならびに
(b)電子伝達レダクターゼ;および
(c)電子伝達レドキシン
を発現するが、但し、発現されるP450camの突然変異体が以下の中に包含される大腸菌DH5α細胞は除外する:
H2N-P450cam-TDGTSST-プチダレドキシンレダクターゼ-TDGASSS-プチダレドキシン-COOH、
H2N-P450cam-TDGTRPGPGPGPGPSST-プチダレドキシンレダクターゼ-TDGASSS-プチダレドキシン-COOH、
H2N-P450cam-TDGTRPGPGPGPGPGPGPSST-プチダレドキシンレダクターゼ-TDGASSS-プチダレドキシン-COOH、
H2N-プチダレドキシンレダクターゼ-TDGASSS-プチダレドキシン-PLEL- P450cam-COOH。
しかし、除外された大腸菌DH5α細胞は、後記で述べるライブラリーの作製には用いることができると理解されたい。
好ましい細胞(第2のタイプ)は、以下を発現する細胞である:
a) (i)P450BM-3もしくはその断片;または
(ii)P450BM-3の天然に存在する相同体もしくはその断片;または
(iii)突然変異型P450BM-3もしくはその突然変異型相同体。
本発明により提供される細胞は、典型的には、本発明のヌクレオチドが発現され得る、上記の種からの細胞である。該細胞は、ミューテーター細胞であってもよい。そのような細胞は通常、主要なDNA修復経路(例えば、大腸菌経路mutS、mutDもしくはmutT、または他の生物におけるそれらの等価物)の1つ以上に欠陥があり、そのために、高い突然変異率を有している。そのような細胞を単に培養することにより、(a)をコードするDNAが突然変異を起こすようになる。該細胞は、大腸菌XL1 Redミューテーター株のものであってもよい。
本発明の細胞は、実質的に単離された形態および/または実質的に精製された形態のものであってもよく、その場合、それは通常、該細胞または調製物の質量(通常は乾燥質量として測定される)の(例えば、少なくとも、または約)90%、(例えば、少なくとも、または約)95%、98%または99%を含む。
該細胞は、天然では(a)、(b)または(c)を発現しないものであってもよい。該細胞は、(a)、(b)または(c)が天然に存在する細胞におけるよりも高いレベルで発現されるものであってもよい。(a)は(b)または(c)と同じ生物から生じるものであってもよい。
該細胞において、(a)、(b)および(c)は、同じベクターから発現されてもよいし、あるいは異なるベクターから発現されてもよい。それらは、3種の異なるポリペプチドとして発現されてもよい。あるいはまた、それらは融合タンパク質の形態で発現されてもよい。典型的には、構成要素 (a)、(b)および(c)は全て、同じ融合タンパク質中に存在する。あるいはまた、それら構成要素の中の2つだけが、好ましくは(b)と(c)が融合タンパク質中に存在してもよい。典型的には、それらの構成要素は、融合タンパク質中で連続しており、リンカーペプチドは存在しない。
あるいはまた、リンカーがそれら構成要素の間に存在してもよい。該リンカーは通常、バルキーな側鎖を有さず、そのために該タンパク質のサブユニットのフォールディングを妨げないアミノ酸を含む。好ましくは、該リンカー中のアミノ酸は荷電していない。該リンカー中の好ましいアミノ酸は、グリシン、セリン、アラニンまたはトレオニンである。1つの実施形態において、該リンカーは、配列N-Thr-Asp-Gly-Gly-Ser-Ser-Ser-Cを含む。該リンカーは典型的には、少なくとも5個のアミノ酸長、例えば少なくとも10、30もしくは50またはそれ以上のアミノ酸長である。
第1のタイプの細胞は、宿主細胞を本発明のポリヌクレオチドまたはベクターで形質転換またはトランスフェクトすることにより得ることができる。
本発明の突然変異酵素は、第1のタイプの細胞を、該突然変異酵素の発現をもたらす条件下で培養すること、および場合により発現した突然変異酵素を回収すること、を含む方法により調製することができる。
本発明の方法は、本発明の第1のタイプの細胞内または第2のタイプの細胞内で行うことができるが、但しこれは、それが該基質またはそれを含む培地を酸化できる場合である。通常、そのような方法は、該細胞内に該基質を提供すること、該基質を本発明の方法で酸化させること、および場合により酸化生成物をそこから(例えば抽出により)得ること、を含む。該基質は、典型的には、該基質を該細胞の外側に添加して、それを該細胞へ侵入させることにより、該細胞に提供される。あるいはまた、該基質は、該細胞内で前駆体から合成することができる。
本発明はまた、P450camの突然変異体またはP450camの相同体の突然変異体のライブラリーを作製するための方法であって、第2のタイプの細胞を突然変異原と接触させること、および/または、該細胞がミューテーター細胞である場合、該細胞を突然変異体が生じる条件下で培養すること、を含んでなる該方法を提供する。該突然変異原は、該細胞と、該細胞を培養する前に接触させてもよいし、または培養の間に接触させてもよい。したがって、該突然変異原は、該細胞の複製または該細胞のゲノムの複製の間に存在させることができる。
該突然変異原は通常、(a)をコードするポリヌクレオチド配列中でランダム突然変異を引き起こす。該突然変異原は、典型的には化学的突然変異原であり、例えばニトロソメチルグアニジン、メチル-またはエチルメタンスルホン酸、ニトリル、ヒドロキシルアミン、DNA塩基類似体、およびアクリジン色素(例えばプロフラビン)が挙げられる。それは、典型的には、260nm(DNAの吸収極大)での紫外線放射およびX線のような電磁波である。それは典型的にはイオン化放射である。
典型的には、該ライブラリーは、突然変異誘発により本発明の細胞から誘導される細胞の形態であり、該細胞は、突然変異酵素を含んでいる。通常、各細胞は、1つの特定の突然変異酵素だけを発現する。該ライブラリーは、典型的には、少なくとも500の突然変異体、例えば少なくとも1,000または5,000の突然変異体、好ましくは少なくとも10,000の異なる突然変異体を含む。
該ライブラリーは、典型的には、ランダムな突然変異体の集団を含む。該ライブラリーは、作製されながら1ラウンド以上の選択を受けてもよく、したがって、ランダムな集団を含んでいなくてもよい。選択のラウンドの間に、該ライブラリー中の細胞を複製させてもよく、またそれらは突然変異原と接触させてもよい。
突然変異体は、該ライブラリーから、該突然変異体の特定の特性に基づいて選択できる。その特性は、次の特徴の1つ以上を含み得る:
(i) 特定の基質を(場合によっては特定の酸化生成物または特定の活性を有する生成物へと)酸化する能力、
(ii) 増大した速度で基質の酸化を行う能力、
(iii) 特定の基質に対する酸化活性の低下、
(iv) 特定の基質の生成の低下。
典型的には、(i)における生成物の活性は、該ライブラリーの細胞にとって致死的である物質(agent)の作用の遮断である。これは、該ライブラリーを該物質の存在下で増殖させることにより選択できる。該物質は、典型的には、該ライブラリーの細胞内で発現される。
その活性は、特定の物質(例えばタンパク質)への該生成物の結合であってもよい。その物質は、典型的には該ライブラリーの細胞内に存在し、および/または、典型的には疾患を引き起こす標的もしくは治療的な標的である。典型的には該物質に結合する指示物質(indicator)を用いて、該物質への該生成物の結合を検出する。1つの実施形態では、該指示物質は、該物質に結合でき、かつ結合すると変化する特性(例えば色の変化)を有する。したがって、該指示物質を該物質から移動させる生成物は、その特性の変化を測定することにより検出できる。
本発明はまた、酸化生成物のライブラリーを作製する方法であって、基質を突然変異酵素のライブラリーに提供すること、および該基質を酸化させること、を含む該方法を提供する。
本発明の方法において生産される生成物、または該ライブラリーを用いて同定、選択、作製もしくは設計される生成物は、治療または診断に用いることができる。したがって、本発明は、疾患に罹患している宿主を治療する方法であって、該宿主に治療上有効な量の該生成物を投与することを含む該方法を提供する。したがって、該疾患に罹患しており、かつ該生成物を必要とする患者の症状は、該生成物の投与により改善できる。該生成物はまた、典型的には該疾患の危険がある、または該疾患に罹患しやすい宿主に予防薬として与えることもできる。
本発明は、治療によるヒトまたは動物の体の処置方法における使用のための該生成物を提供する。本発明はまた、ヒトまたは動物の体について実施される診断方法における使用のための該生成物を提供する。本発明はまた、疾患を治療するための医薬の製造における該生成物の使用を提供する。
生物による感染症の予防または治療において用いるための該生成物の処方は、同定される生成物の性質、薬学的な使用を意図しているのかまたは獣医学的な使用を意図しているのか、などの要因に応じて決まる。患者に投与するためには、該化合物は、該生成物および製剤学上許容される担体もしくは希釈剤を含有する医薬組成物の形態で提供される。好適な担体および希釈剤としては、リン酸緩衝化食塩水のような等張塩溶液が挙げられる。典型的な経口投与組成物としては、錠剤、カプセル剤、溶液剤(liquid solutions)および液状懸濁剤が挙げられる。例えば、それは、非経口、静脈内、筋肉内、皮下、経皮または経口投与のために処方され得る。
生成物の投与量は、種々のパラメーターにしたがって、特に用いられる物質;治療しようとする患者の年齢、体重および症状;投与の経路;ならびに必要とされるレジュメにしたがって決定できる。医師であれば、任意の特定の患者について必要な投与経路および投与量を決定できる。しかし、好適な用量は、体重kg当たり0.1から100mg、例えば体重kg当たり1から40mgを、例えば1日当たり1から3回摂取するものであり得る。
本発明を、添付の図面により説明するが、該図面は各種の酸化反応についてのガスクロマトグラフィーの結果を示している。図面において、特記しない限り、y軸はmVを示し、x軸は時間(分)を示す。
本発明を実施例によっても説明する。
実施例1
in vitro研究のための突然変異体の発現
P450cam酵素は、ベクターpRH1091(Baldwin, J.E., Blackburn, J.M., Heath, R.J.,およびSutherland, J.D. Bioorg. Med. Chem. Letts., 1992, 2, 663-668)を用いて発現させた。このベクターはtrcプロモーター(trpおよびlacプロモーターの融合体)を利用するものであった。このベクターには強力なリボゾーム結合部位(RBS)が組み込まれており、発現させようとする遺伝子は該遺伝子の5′末端にあるNdeI部位を用いてクローニングする。本発明者らは、camC遺伝子の3′末端でのクローニング部位としてHindIIIを用いた。タンパク質発現のための手順は次のとおりである:細胞を30℃で、OD600nmが1.0〜1.2に達するまで増殖させ、温度を37℃まで上昇させ、樟脳を1Mストック(エタノール溶液)として最終濃度1mMまで添加する。培養物を37℃でさらに6時間インキュベートする。P450camタンパク質は細胞質内で高レベルまで発現されると、その細胞は赤色から赤橙色を帯びる。
本発明者らはまたpRH1091の変異体を(PCRにより)調製した。この変異体はRBSとNdeI部位との間に追加のXbaI部位を有する。このことは、M13においてNdeIがユニークではないので重要であり、この制限部位は、レダクターゼ遺伝子ならびにin vivo系のために用いられるpGLW11ベクターのバックボーンにも存在する。XbaIはM13のポリリンカー領域においてはユニークであるが、P450cam系における全3種のタンパク質の遺伝子および発現ベクターには存在しない。したがって、それにより、camC遺伝子が突然変異ベクターと発現ベクターとの間で移動可能となる。
バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)由来のP450BM-3酵素はpGLW11ベクターまたはpCWベクターを用いて発現させた。P450BM-3遺伝子がこれらのベクターのいずれかに挿入されている組換えプラスミドを大腸菌DH5α株に形質転換し、アンピシリン選択下で増殖させた。次に、シングルコロニーを30℃にてアンピシリンを加えたLB培地中で、600nmにおけるODが約1に達するまで増殖させ、1MストックからのIPTGを最終濃度1mMまで添加することによりタンパク質発現を誘導した。6〜8時間後、遠心分離により細胞を収集したところ、発現レベルは高かった(これは該細胞の赤橙色の着色により示された)。
突然変異体の作製方法
オリゴヌクレオチドに対する部位特異的突然変異誘発を、Kunkel法(Kunkel, T.A. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1985, 82, 488-492)によりBio-Rad突然変異キットを用いて、またPCRによりStratagene社製のQuikChangeキットを用いて行った。Kunkel法の推奨手順をまとめると以下のようになる。P450camをコードするcamC遺伝子のM13 mp19サブクローンを、大腸菌CJ236株内で増殖させた。この株はdut-ung-表現型を有しており、そのためにDNA分子中でチミジンの代わりにウラシルが含まれることを許容する。3サイクル感染させた後で、ウラシル含有一本鎖(USS)M13 DNAは、増殖培地に排出された成熟M13ファージ粒子のフェノール抽出により容易に単離された。1種または複数の突然変異オリゴヌクレオチドをT4ポリヌクレオチドキナーゼでリン酸化し、次に該USS鋳型にアニーリングした。4種のヌクレオチド、DNAポリメラーゼ、DNAリガーゼ、ATPおよび他の化学的構成要素を添加し、第2の鎖をin vitroで合成した。こうして得た二本鎖形態のものでdut+ung+大腸菌MV1190株を形質転換した。この大腸菌株は、ウラシル含有鋳型鎖を分解し、in vitroで合成された突然変異鎖を増やすはずである。プラークを拾い、突然変異体である可能性のあるファージを大腸菌MV1190株またはTG1株で増殖させた。これらからの一本鎖DNAを配列決定して、突然変異誘発反応がうまくいったか否かを判定した。突然変異の効率は50〜80%であった。NdeIおよびHindIIIを用いた制限消化により突然変異camC遺伝子をM13サブクローンから切り出し、適切な大きさの断片を、同様のNdeI/HindIII消化により調製した発現ベクターのバックボーンに連結する。
QuikChangeキットは、メチル化されたDNAを選択的に切断するDpnI制限酵素の特性に基づくものである。突然変異は、PCRにより、二本鎖プラスミドDNAを用いて導入し、したがって、一本鎖鋳型調製物は必要ない。このPCR反応は、2つのオリゴヌクレオチドを用いて行う。その一方はコード鎖に結合し、他方はセンス鎖に結合する。各オリゴヌクレオチドは、突然変異部位のいずれかの側に相補性であるポリヌクレオチドの短いストレッチを含んでいる。非メチル化dNTPを用いたPCRによるin vitro合成の後、各鎖に重複しているニックを有するプラスミドDNAをDpnIで消化して、出発点である鋳型を選択的に除去した − 大部分の大腸菌株から単離されるプラスミドDNAはメチル化された塩基を含むが、新たに合成されたDNAはメチル化された塩基を有しない。消化の後、該DNAを超コンピーテントな大腸菌XL1 Blue細胞に形質転換し、増殖させた。突然変異体である可能性のあるもの(これは抗生物質選択下で寒天プレート上で増殖する)からプラスミドDNAを単離し、配列決定して突然変異誘発を確認した。この新たな突然変異体の全配列を確認して偽突然変異がないことが確証されたら、この細胞は次にタンパク質発現に用いることができる。
複数の突然変異体を、さらなる突然変異誘発、そしてまたKunkel法により、あるいは該配列中での該部位の配置が許す場合には単純なクローニングステップにより調製した。camC遺伝子内には2つのユニークな制限部位が存在するが、これらは発現ベクターには存在しない。1つは残基121〜123にわたっているSphIであり、もう1つは残基338〜339にわたっているSalIである。したがって、全ての突然変異(例えば残基87、96、98および101におけるもの)は、突然変異型camC遺伝子のNdeI/SphIおよびSphI/HindIIIによる制限消化物からの適切な断片を発現ベクターのNdeI/SphI消化物のバックボーン断片と連結することにより、それより多い番号の残基における突然変異と容易に組み合わされる。例えば395および396における突然変異は、SphIがSalIで置き換えられている消化物により同様に組み込むことができる。
ユニークなXbaI部位を導入するための基本原理は現在では明らかになっている:複数の突然変異を有する多くの突然変異体を上記のクローニング法により調製した。もしXbaI部位がなければ、これらの複数の突然変異体についての遺伝子を、さらなるラウンドの突然変異誘発のために発現ベクターからM13にクローニングすることは不可能であろう。もちろん、これらの問題は、例えばPCRにより突然変異誘発を行うことにより克服できる。
実施例2
基質酸化のプロトコール:in vitro反応
構成要素 最終濃度
P450cam酵素 1μM
プチダレドキシン 10μM
プチダレドキシンレダクターゼ 1μM
ウシ肝カタラーゼ 20μg/ml
KCl 200mM
基質 典型的には1mM
NADH 250〜400μM
*50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)を添加して、容量を調整する。
*場合により温度は30℃に調節した。
*NADHターンオーバー速度は、340nmにおける吸光度を経時的にモニターすることにより求めることができた。
*カタラーゼは、基質の酸化反応を触媒しないが、それは、P450camを変性させる可能性があるあらゆる過酸化水素副生成物を除去するために存在する。
該方法は、分光法による特性決定のためのHPLCによる十分な生成物の精製を可能にするために、規模を、例えば全インキュベーション容量20mlまで拡大することができる。全反応時間(典型的には3時間)において、新しい基質(1mM)およびNADH(1〜2mM)を一定間隔で(例えば20分毎に)添加する。
実施例3
in vivo系
in vivo系は、プラスミドpKK223(Brosuis, J.およびHoly, A. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1984, 81, 6929-6933)の誘導体であるベクターpGLW11を用いて発現させた。発現はtacプロモーターにより指令し、該ベクターには抗生物質アンピシリンに対する耐性を付与する遺伝子が組み込まれている。
2つの系を構築した。第1のものは、電子伝達タンパク質プチダレドキシンレダクターゼ(camA遺伝子)およびプチダレドキシン(camB遺伝子)を、7個のアミノ酸からなるペプチドリンカーを有する融合タンパク質として発現し、P450cam酵素(camC遺伝子)は同じベクターにより発現されたが、それは電子タンパク質には融合されていなかった。第2の系は、大腸菌宿主内でそれら3種のタンパク質を別々のものとして発現した。両者の系は、in vivoにおける基質の酸化に対して触媒的にコンピーテントであった。
一般的な戦略は次のとおりとした。該3種のタンパク質の遺伝子を、隣接部位としてEcoRIおよびHindIIIを用いてクローニングした(この場合、EcoRIは5′末端にある)。両者のin vivo系では、融合構築物においてレダクターゼ遺伝子とレドキシン遺伝子との間を含む遺伝子間に制限部位が存在する。これらの制限部位は、以下に詳細に説明するように、PCRにより導入した。しかし、第1の作業は、サイレント突然変異を行ってレダクターゼのcamA遺伝子内のHindIII部位を取り除くことであった。camA遺伝子内のAAGCTTというHindIII認識配列をAAGCCTに変えた。GCTとGCCは共にアラニンをコードするので、これはサイレント突然変異である。この遺伝子を完全に配列決定して、偽突然変異がないことを確証した。
1.融合タンパク質系
1.a PCRによるcamA遺伝子の操作
camA遺伝子について、下記のプライマーを該遺伝子の5′末端において用いて、EcoRIクローニング部位を導入し、かつ最初のコドンをGTGから強力な開始コドンATGへと変えた。
Figure 2012010707
camAの3′末端において、該プライマーは、15個の塩基がcamAの最後の5個のアミノ酸残基のヌクレオチド配列と相同になるように設計した。最後のアミノ酸についてのGCCコドンの直ぐ後ろの停止コドンを取り除き、次に、BamHIクローニング部位(GGATCC=Gly Ser)を含む7個のアミノ酸からなるリンカー(Thr Asp Gly Gly Ser Ser Ser)の一部を導入した。したがって、コード配列は次のとおりであった。
Figure 2012010707
以下に示すプライマー配列はPCRに用いられる逆相補体(reverse complement)である。
Figure 2012010707
1.b PCRによるcamB遺伝子の操作
camB遺伝子について、5′末端におけるプライマーには、レダクターゼタンパク質とレドキシンタンパク質との間にペプチドリンカーの後ろ半分と、それら2つの増幅遺伝子を共に結合させるための制限部位BamHIとが組み込まれていた。
Figure 2012010707
camBの3′末端において、該プライマーには、camBの末端に相補的な12個のヌクレオチドと、それに続く停止コドンTAAと、GGAGリボゾーム結合部位の前に6個のヌクレオチドからなるスペーサーとが組み込まれている。次に、XbaI部位およびHindIII部位を付加して、必要があればcamC遺伝子のクローニングができるようにした。したがって、コード鎖の配列は以下のとおりであった。
Figure 2012010707
以下に示すプライマーは、PCRに用いるための逆相補体である。
Figure 2012010707
1.c 全融合構築物の調製
camA遺伝子およびcamB遺伝子をPCRにより上記のプライマーを用いて増幅した。この新たなcamAはEcoRIおよびBamHIで消化し、この新たなcamBはBamHIおよびHindIIIで消化した。pGLW11発現ベクターをEcoRIおよびHindIIIで消化した。全3種をアガロースゲル電気泳動により精製し、該ゲルからそれぞれの断片を含む3つのゲルスライスを切り出し、共に連結し、次に大腸菌DF5αに形質転換した。該断片の全てがうまく連結されたこと、特に新しいユニークなXbaI部位の存在を、一連の制限消化実験により確認した。該インサートのEcoRI部位からHindIII部位までの全配列を決定して、該配列の全てが正しいものであることを確証した。
この新たなプラスミド(pSGBFと命名)を大腸菌に形質転換し、レダクターゼタンパク質およびレドキシンタンパク質の発現をIPTGにより誘導した。精製されたP450cam酵素を無細胞抽出物に添加した場合、各種の基質について基質の酸化が見られた。
camC遺伝子をXbaIおよびHindIII制限部位を用いてpSGBFプラスミドにクローニングすると、こうして作製された新たな組換えプラスミドは同じmRNA分子から、レダクターゼとレドキシンとを融合タンパク質として、そしてP450cam酵素をオペレート部分(operate entity)として発現する。このin vivo系は、全細胞におけるテルペン酸化に対して触媒的にコンピーテントである。
2.別個に発現されるタンパク質を有するin vivo系
2.a 基本的戦略
in vivo系におけるこの調製の出発点は、プチダレドキシンレダクターゼのcamA遺伝子の発現に用いられた組換えプラスミドであった。camA遺伝子は、pGLW11プラスミドにEcoRIおよびBamHI制限部位を用いてクローニングし、この場合、EcoRIは該遺伝子の5′末端にあった。便利なことに、pGLW11ベクターのポリリンカー領域は、BamHI部位の下流にHindIII部位を有している。したがって、camB遺伝子をPCRにより操作して、該遺伝子をBamHIおよびHindIII部位を用いてpGLW11にクローニングできるようにした。この新たなプラスミドは、レダクターゼおよびレドキシンを別個のタンパク質として発現する。
本発明者らの概略的なin vitro基質酸化の研究のために、camB遺伝子を、BamHIおよびHindIIIクローニング部位によりpUC118にクローニングして、プチダレドキシンを発現させた。したがって、camB遺伝子の3′末端におけるPCRプライマーは、リボゾーム結合部位およびXbaI制限部位をHindIII部位の上流に導入して、camC遺伝子をXbaIおよびHindIII部位を用いてcamBの下流に挿入できるように設計した。したがって、これら3種の遺伝子は、融合せずにpGLW11発現ベクターにクローニングされ、5’-camA-camB-camC-3’の順序で配置され、各遺伝子はタンパク質合成を開始するためにそれ自体のRBSを有する。
2.b camB遺伝子の操作
本発明者らは、camB遺伝子内の内部のユニークな制限部位MluI(認識配列ACGCGT)を開始点として用いて、PCR産物がPCR鋳型断片とは異なる大きさを有するようにした。プライマーは以下のとおりであった。
Figure 2012010707
但し、配列中、MluI部位は太字で示す。
camB遺伝子の3′末端にある所望のコード配列は以下のとおりであった。
Figure 2012010707
停止コドンの後ろには、P450cam酵素の合成を開始するのに用いられるRBSの前に35塩基のスペーサーがある。そのスペーサーの中には、RBSとcamC遺伝子の開始コドン(このプライマー中ではない)との間にXbaIクローニング部位が位置する。用いたPCRプライマーは上記の配列の逆相補体であった。PCRを行い、適切な大きさの増幅断片をアガロースゲル電気泳動により精製し、ゲルスライスを切り出した。
この新たなプラスミドの構築を完成させるためには、1つの追加のステップが必要であった。融合タンパク質in vivo系のためのプラスミドをMluIおよびHindIII制限酵素を用いて消化し、アガロースゲル電気泳動により精製し、小さなcamB断片についてのゲルスライスを切り出した。camB発現のためのpUC118プラスミドを同様に消化し、バックボーンについてのゲルスライスを切り出した。これら2つの断片を共に連結することにより、camBの停止コドンの下流にXbaI部位とそれに続くHindIII部位とを有する新たなpUC118ベースのプラスミドを調製した。この新たなプラスミドをMluIおよびXbaI酵素で消化し、バックボーンを上記の新たなcamB断片と連結して、基本構成要素(key components)が以下のように並んでいるプラスミドを作製した。
・・lacプロモーター・・BamHI・・camB遺伝子・・スペーサー・・RBS・・XbaI・・HindIII・・
2.c in vivo系プラスミドの調製
XbaIおよびHindIII制限部位ならびに適切なスペーサーを有する改変camBを調製したら、これをcamA遺伝子(レダクターゼタンパク質)を発現させるのに用いたpGLW11ベースのプラスミドに、BamHIおよびHindIII部位を用いてクローニングすることによりin vivo系を構築した。この新たなin vivo系ベクターでは、基本構成要素が以下のように並んでいる。
・・tacプロモーター・・EcoIRI・・RBS・・camA遺伝子・・スペーサー・・BamHI・・RBS・・camB遺伝子・・スペーサー・・RBS・・XbaI・・HindIII・・。
この新たなプラスミド(pSGBと命名)を大腸菌に形質転換し、レダクターゼタンパク質およびレドキシンタンパク質の発現をIPTGにより誘導した。精製したP450cam酵素を無細胞抽出物に添加し、各種の基質について基質の酸化を観察した。
camC遺伝子をXbaIおよびHindIII制限部位を用いてこのpSGCプラスミドにクローニングすると、こうして作製された新たな組換えプラスミドは3種のタンパク質を別々に、各々それ自体のRBSの指令下で、しかし同じmRNAから発現する。こうして、本発明者らのテルペン酸化の研究の大部分において用いられるin vivo系を構築する。
3.pRH1091へのXbaI部位の導入
これは、2つのクローニング部位XbaIおよびHindIIIを用いてcamC遺伝子をin vivo系にクローニングできるようにするための最終ステップである。XbaI部位は、2つのプライマーを用いた全pRH1091プラスミドのPCRにより付加した。これら2つの部位の存在はまた、camC遺伝子のM13へのクローニングも可能にする。何故ならば、XbaIおよびHindIIIは共にcamCおよびM13においてユニークなものだからである。
以下に示すプライマーは、HindIIIクローニング部位AAGCTTを保持している。
Figure 2012010707
他方の末端において、所望のコード配列は以下のものであった。
Figure 2012010707
この配列は、NdeIおよびHindIII部位を保持していたが、新たなXbaI部位がNdeI部位の上流に導入されていた。用いたPCRプライマーは上記所望の配列の逆相補体であった。
Figure 2012010707
次に、PCR産物をアガロースゲル電気泳動により精製し、HindIIIで消化し、T4 DNAリガーゼで環化した。PCR法の成功は、形質転換体から単離したプラスミドDNA中に新らしくユニークなXbaI部位が存在することにより示された。
4.camCのin vivo系へのクローニング
全ての既存のcamC突然変異体を、pRH1091ベースの発現プラスミドからNdeIおよびHindIIIで切り出した。新たなベクターを同じ制限酵素で同様に切断し、T4 DNAリガーゼを用いてcamC遺伝子をこのプラスミドにクローニングした。このDNAを大腸菌JM109に形質転換し、次いでこれを増殖させてP450camを発現させることができる。
camC遺伝子は、この新たなベクターからXbaIおよびHindIII制限酵素を用いて切り出し、突然変異誘発のためにin vivoベクター系またはM13mp19のいずれかにクローニングした。
5.in vivo発現および基質ターンオーバー
タンパク質の発現のために、細胞をLBamp培地(トリプトン10g/リッター、酵母エキス5g/リッター、NaCl 10g/リッター、50μg/mlアンピシリン)で30℃にて、OD600nmが1.0〜1.2に達するまで増殖させる。IPTG(イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド)を(H2O中での1Mストックから)最終濃度1μMまで添加し、培養物を30℃で一夜インキュベートした。
簡単にスクリーニングするために、基質を該培養物に添加することができ、インキュベーションを継続した。しかし、培養培地からの不純物のため、細胞は通常、0.5容量の緩衝液P(KH2PO4 6.4g、K2HPO4・3H2O 25.8g、H2Oで4リッターとする、pH7.4)で2回洗浄し、24mMのグルコースを含有する0.25容量の酸素飽和緩衝液Pに再懸濁した。基質を1mMまで添加し、インキュベーションを30℃で継続した。反応は、基質およびグルコースを一定間隔毎に添加しながら24時間行った。
この反応は、1mlのインキュベーション混合物を250μlの酢酸エチルで抽出することにより分析した。微量遠心分離機で13,000gで2分間遠心分離した後、2μlの有機抽出物をFisons GC8000シリーズのガスクロマトグラフの0.25mm×30mのDB-1ガスクロマトグラフィーカラムに注入した。サンプルはヘリウムキャリアガスを用いて該カラムに通塔し、存在する化合物は化学炎イオン化検出器を用いて検出した。
各種の基質について種々の温度プログラムを用いて、ターンオーバー生成物を分解した。
モノテルペン類
注入器の温度 150℃
検出器の温度 250℃
オーブンの温度 120℃で15分間→25℃/分で200℃に上昇させ、200℃で1分間。
セスキテルペン類
注入器の温度 250℃
検出器の温度 250℃
オーブンの温度 150℃→5℃/分で230℃に上昇させ、230℃で1分間。
特定の酸化反応についての結果を表6および図に示す。
図1は、樟脳を用いた酸化反応の結果を示す。5-ケト樟脳は、5-エキソ-ヒドロキシ樟脳をさらに酸化することにより生じる。見てわかるように、驚くべきことに、樟脳の存在下でさらなる酸化はほとんど起こっていない。
実施例4
第2のin vivo発現系
実施例3に記載のP450cam系の3種のタンパク質の発現のための遺伝子のクラスターは、pCWベクターを用いて全大腸菌細胞内でも発現させた。このベクターは、タンパク質の発現を増大させるために、並んで配置されている2つのtacプロモーターを利用する。それは、RBSを有し、かつ抗生物質アンピシリンに対する耐性を付与した遺伝子(Barnes, H.J. Methods Enzymol. 1996, 272, 3-14)を含んでいる。
実施例3に記載の触媒的にコンピーテントなP450cam系を発現させる両者の方法は、pCWベクターを用いて成功した。したがって、融合系では、プチダレドキシンレダクターゼおよびプチダレドキシンはオリゴペプチドリンカーを有する融合タンパク質として発現されたが、P450camモノオキシゲナーゼは発現されたものの、電子伝達タンパク質には融合されていなかった。この第2の系は、同じ大腸菌宿主内で全3種のタンパク質を別個のものとして発現した。
1.融合タンパク質系
新たなプラスミドを、電子伝達タンパク質の融合のための遺伝子をpCWにクローニングすることにより構築して、異なるP450cam突然変異体がクローニングにより該系に導入できるようにした。camA遺伝子のPCR増幅のために用いた5′末端のオリゴヌクレオチドは、pGLW11ベクターへのクローニングのためのEcoRI部位だけでなく、該遺伝子のATG開始コドンに及ぶNdeI部位も導入した(実施例3、第1a節を参照)。pCWベクターでは、発現させようとする遺伝子のクローニングのためのRBSの下流に位置するNdeI部位が存在する。camA-camB融合遺伝子を含むpGLW11ベクターをNdeIおよびHindIIIで消化し、インサートをアガロースゲル電気泳動により精製した。pCWベクター系もまた、これらの2種の酵素で消化し、線状化したベクターを同じ方法により精製した。これら2つの断片をDNAリガーゼで連結して、pCWベクターに基づく新たなpCWSGBFプラスミドを作製した。これは電子伝達タンパク質の融合体を発現した。pGLW11ベースのプラスミドから切り出されたインサートは、既にタンパク質発現のためのRBSとHindIII部位の直ぐ上流のXbaI部位とを含んでおり(実施例3、第2.c節を参照)、そのために、P450cam突然変異体をコードするcamC遺伝子がこれら2つの部位を用いてクローニングされて、RBSを用いずに発現できるようになっていた。したがって、P450cam突然変異体をコードする遺伝子は、この改変pRH系から切り出され、XbaI部位およびHindIII部位を用いて該新たなpCWSGBFプラスミドにクローニングできる。
2.別個に発現される3種のタンパク質
この系は、融合系と全く同じ方法で作製した。つまり、pSGB+プラスミドをNdeIおよびHindIII制限酵素で消化し、このインサートをpCWベクターにクローニングした。この新たなプラスミドpCWSGB+は、プチダレドキシンレダクターゼおよびプチダレドキシンを、pCWベクターの1対のtacプロモーターを用いずに別個のものとして発現した。このP450cam突然変異体を、XbaIおよびHindIII部位を用いてこのベクターに導入した。
3.in vivo発現および基質ターンオーバー
下記の条件を、実験室における振盪フラスコ中での試験の目的で用い、それは最適化しなかった。より高い発現およびバイオマスを有する適切な発酵装置の条件下では、生成物の最終収量は非常に増大するだろう。
触媒的にコンピーテントなP450cam系のいずれか一方を保有する大腸菌DH5α細胞を、1LのLBamp培地中で寒天プレート上での単一コロニーから、OD600nmが約1に達するまで30℃で増殖させた。IPTGを(水中での1Mストックから)最終濃度1mMまで添加し、培養物をさらに6時間増殖させた。最終のOD600nmは2.0〜2.5の範囲であった。細胞を、5000gでの遠心分離により収集し、40mMリン酸緩衝液(pH 7.4)で一回洗浄した。細胞ペレットを500mlの40mMリン酸緩衝液(pH 7.4)に再懸濁した。グルコースを2Mストックとして最終濃度100mMまで添加し、1mLの基質(α-ピネンまたはR-リモネン)を添加して反応を開始した。この混合物を、軌道インキュベーター(orbital incubator)内の開口した2L容の三角フラスコ中で200rpmで振盪した。24時間毎にさらにグルコースを添加し(500mL容量に対して最終濃度が100mM、2Mストックから)、12時間毎にさらに基質(1mL)を添加した。反応の進行をGCによりモニターしたところ、全細胞系は周囲温度において少なくとも5日間にわたって活性であり、第5日目が終わった時点での最小収量(反応培地のクロロホルムによる抽出およびGCによる分析によりアッセイしたもの)は、生成物の大気への揮発および液体レベルを超えるフラスコへの凝集を考慮に入れなければ、生成物100mgであった。さらに、基質が存在する場合、別の炭素原子におけるさらなるヒドロキシル化から生じる化合物は見られなかった。
実施例5
P450 BM-3 によるin vitroおよびin vivo基質酸化
in vitro(任意で30℃での温度調節)における典型的な反応では、1.5mLのインキューベーション混合物は、40mMリン酸緩衝液(pH8.0)、1μM P450BM-3、50μg/mLのカタラーゼを含むものとし、テルペン基質を1Mストック(エタノール溶液)として最終濃度2mMまで添加した。NADPHを典型的には最終濃度400μMまで添加し、反応速度は340nmでモニターできた。全てのNADPHが消費された後、該混合物を0.5mLのクロロホルムでボルテックスすることにより抽出し、遠心分離により相を分離し、有機相は実施例3に記載のプログラムを用いてGCにより分析できた。
カタラーゼは、この基質の酸化反応を触媒しないが、該酵素を変性させる可能性があるあらゆる水素副生成物を除去するために存在する。この方法は、規模を、例えば全インキュベーション容量20mLまで拡大して、分光法による特性決定のためのHPLCによる十分な生成物の精製を可能にするようにできる。新しい基質(1mM)およびNADPH(1〜2mM)は、全反応時間(典型的には3時間)において、一定間隔で(例えば20分毎に)添加する。
P450BM-3酵素は触媒的に自給自足型(self-sufficient)であるので(すなわち、モノオキシゲナーゼと電子伝達ドメインとが1つのポリペプチド中にあるので)、大腸菌内で発現された酵素は、全細胞性のin vivo基質酸化に用いることができる。P450cam酵素によるin vivo基質酸化について実施例3で記載した手順は、P450BM-3酵素の場合にも用いることができる。
Figure 2012010707
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Claims (10)

  1. 明細書に記載の表8に示されるアミノ酸配列からなる、P450BM-3の突然変異体を含むタンパク質であって、該突然変異体が47位および51位の活性部位におけるアミノ酸のより極性の低い側鎖を有するアミノ酸による置換を含む、上記タンパク質。
  2. P450BM-3の突然変異体が、突然変異 R47L-Y51Fを含む、請求項1に記載のタンパク質。
  3. P450BM-3の突然変異体が、42, 75, 87, 181, 263, 264 および 354位に1個以上の置換を含む、請求項1または2に記載のタンパク質。
  4. P450BM-3の突然変異体が、R47L-Y51F-F42A, R47L-Y51F-F42L, R47L-Y51F-F87A, R47L-Y51F-F87W, R47L-Y51F-I263A, R47L-Y51F-I263F, R47L-Y51F-I263L, R47L-Y51F-I263W, R47L-Y51F-A264V, R47L-Y51F-A264L, R47L-Y51F-A264I, R47L-Y51F-M354L, R47L-Y51F-M354A, R47L-Y51F-L181A, R47L-Y51F-L181W, R47L-Y51F-L75A-M354L, R47L-Y51F-L75A-M354A, R47L-Y51F-F87W-A264L, R47L-Y51F-F87W-A264I, R47L-Y51F-F87W-A264F, R47L-Y51F-I263F-A264L または R47L-Y51F-I263W-A264I から選択される突然変異を含む、請求項3に記載のタンパク質。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のタンパク質をコードする配列を含むポリヌクレオチド。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に定義されるP450BM-3の突然変異体を発現する細胞。
  7. 環式テルペンである基質を酸化する方法であって、該基質をヘム含有酵素の突然変異体で酸化することを含み、該突然変異体は、より極性の低い側鎖を有するアミノ酸による活性部位のアミノ酸の置換を含み、該基質は請求項6に記載の細胞内で酸化される、上記方法。
  8. 環式テルペンである基質を酸化する方法であって、該基質を請求項1〜4のいずれか1項に記載のタンパク質を用いて酸化することを含む、上記方法。
  9. 前記テルペンが、モノテルペン、セスキテルペンおよびジテルペンより選択される、請求項7または8に記載の方法。
  10. 前記テルペンが、リモネン、ピネン、テルピネン、サビネン、ツジェン、ミルセン(mercene)、オシメン(ocimeme)、ネロール、ゲラニオール、アロマデンドレン、カリオフィレン、ロンギフォレン、バレンセン、イソバッザネン、シルフィネン、イシュワラン、イソパトククラ-3-エン(isopatchchoul-3-ene)、イソセスキカレン、カスベンおよびレチナールより選択される、請求項9に記載の方法。
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