詳細な説明
本開示は、抗IL-1β抗体またはその断片の1回または複数回の用量を対象に投与する段階を含む、対象における痛風(例えば、急性痛風、慢性痛風、難治性痛風)の治療のための方法および関連製品を対象とする。現行の治療に伴う問題のために、利用可能な薬学的アプローチを置き換えるか、または補完する、痛風を治療するための新たな治療法が必要とされている。本明細書に開示される方法は、例えば、抗IL-1β抗体またはその断片を投与する段階を含む。抗体、特に高親和性を呈する抗体を用いてIL-1βリガンドを直接的に標的とする方法は、IL-1β受容体アンタゴニスト(例えば、IL-1Ra、アナキンラ、Kineret(登録商標))などの他の考えられる治療方法を上回る利点を与える。IL-1受容体アンタゴニストを基にした治療薬の難題は、そのような治療薬が多数の受容体を占有する必要があることであり、このことはこれらの受容体が赤血球を例外とするすべての細胞上で広く発現されることから、対処が困難な課題である(Dinarello, Curr. Opin. Pharmacol. 4:378-385, 2004)。本明細書に開示された疾患のような、ほとんどの免疫媒介性疾患では、体液中で測定可能な、または活性化された細胞に付随するIL-1βサイトカインの量が相対的に少ない。以下の実施例で説明されているように、本発明者らは驚いたことに、本明細書に開示されたものなどの抗体を用いて、極めて低用量を含む、広範囲にわたる用量にわたって所望のレベルの活性を達成することができることを見いだした。したがって、IL-1βリガンドを直接的に標的とする治療および/または予防の方法は、より優れた戦略をもたらすはずである。
IL-1βは、単球およびマクロファージを含むいくつかの異なる細胞型によって分泌される炎症誘発性サイトカインである。IL-1βは炎症反応の一部として放出されると、主にコルチコトロピン、血小板第4因子、プロスタグランジンE2(PGE2)、IL-6、およびIL-8などの他の炎症性メディエータの誘導を通して媒介される一連の生物学的作用を引き起こす。IL-1βは、ほぼすべての細胞型に見出されるIL-1受容体の活性化を通して、局所的および全身的炎症作用の両方を誘導する。
インターロイキン-1(IL-1)ファミリーのサイトカインは、関節リウマチ(RA)、変形性関節症、クローン病、潰瘍性大腸炎(UC)、敗血症性ショック、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、移植片対宿主病、アテローム性動脈硬化、成人T細胞白血病、多発性骨髄腫、多発性硬化症、卒中発作、およびアルツハイマー病などのいくつかの疾患状態に関連づけられている。IL-1ファミリーメンバーには、IL-1α、IL-1β、およびIL-1Raが含まれる。IL-1受容体(IL-1R1、IL-1R2)に結合する能力によって関連しているが、これらのサイトカインはそれぞれ異なる遺伝子によって発現され、異なる一次アミノ酸配列を有する。さらに、これらのサイトカインの生理的活性も互いに区別され得る。
IL-1受容体シグナル伝達を破壊する化合物が、例えば上記の疾患のいくつかなどのIL-1介在性疾患を治療する治療薬として検討されてきた。これらの化合物には、組換えIL-1Ra(Amgen Inc.、カリフォルニア州、サウザンドオークス)、IL-1受容体「捕捉」ペプチド(Regeneron Inc.、ニューヨーク州、タリタウン)に加えて、動物由来IL-1β抗体および組換えIL-1β抗体ならびにそれらの断片が含まれる。
上記したように、IL-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)ポリペプチドが、関節リウマチ(RA)の治療において使用されてきたが、関節リウマチを治療するためのより有効な手段、頻繁な(特に毎日の)反復注射を必要としない手段の必要性が依然として残る。IL-1受容体アンタゴニストに基づく治療薬のさらなる課題は、そのような治療薬が多数の受容体を占有する必要性であり、これらの受容体は赤血球を除くすべての細胞で広く発現されていることから、これは厄介な課題である(Dinarello, Curr. Opin. Pharmacol. 4:378-385, 2004)。大部分の免疫介在性疾患において、体液中で測定可能な、または活性化細胞と会合しているIL-1βサイトカインの量は比較的少ない。したがって、IL-1βリガンドを直接標的化する治療および/または予防方法は、特に高親和性を有するIL-1β抗体を投与する場合、優れた戦略である。
本開示は、IL-1βに特異的な抗体またはその断片を使用する、対象(例えば、哺乳動物、ヒト)における関節リウマチの治療および/または予防のための方法ならびに関連する組成物および製品を提供する。以下に示すように、きわめて高い親和性を有する抗体がIL-Ra(例えば、アナキンラ、Kineret(登録商標))よりもはるかに強力なIL-1経路の阻害薬となり得、また組換えIL-1Raなどの他の薬剤に必要なよりも少ない用量で、および/または低い頻度の投与で治療効果を達成するために使用された。
IL-1β抗体または断片による本明細書に記載するような方法は、RAに罹患している対象の治療を含み得る。本方法は、関節リウマチの発生の予防、またはリスクのある対象におけるそれらの発生の予防も含み得る。
抗体、ヒト化抗体、およびヒト型に設計された抗体
本開示のIL-1(例えばIL-1β)結合抗体またはその断片は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、組換え抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、完全なヒト抗体、一本鎖抗体、および/または二重特異性抗体、ならびに酵素的切断、ペプチド合成、もしくは組換え技法を含むがこれらに限定されない公知の技法によって提供されるそれらの変種および誘導体を含む断片として提供され得る。
抗体は一般に重鎖ポリペプチド2本および軽鎖ポリペプチド2本を含むが、重鎖1本および軽鎖1本を有する単一ドメイン抗体、ならびに軽鎖を欠く重鎖抗体もまた意図される。重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、およびミューと称される5種類の重鎖が存在する。これらの異なる種類の重鎖により、IgGの4つのサブクラス、すなわちIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む5つのクラスの抗体、それぞれIgA(IgA1およびIgA2を含む)、IgD、IgE、IgG、およびIgMが生じる。同様に、定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)またはラムダ(λ)と称される2種類の軽鎖が存在する。全長抗体は、定常ドメインおよび可変ドメインを含む。抗体の抗原結合断片に、定常領域が存在する必要はない。本明細書に開示する抗体の抗原結合断片には、Fab、Fab'、F(ab')2、およびF(v)抗体断片が含まれ得る。以下にさらに詳述するように、IL-1β結合断片は、IL-1βと結合する抗体断片および抗原結合ポリペプチドを包含する。
抗体またはその抗原結合断片の重鎖および軽鎖配列はそれぞれ、3つの相補性決定領域(CDR)および非CDRフレームワーク領域(FR)を有する可変領域を含む。本明細書で使用する「重鎖」および「軽鎖」という用語は、特記しない限り、それぞれ重鎖可変領域および軽鎖可変領域を意味する。重鎖CDRは、本明細書においてCDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3と称する。軽鎖CDRは、本明細書においてCDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3と称する。抗体配列中の可変領域およびCDRは、(i) 当技術分野において開発された一般規則に従って、または(ii) 公知の可変領域のデータベースに対して配列を整列させることによって同定することができる。これらの領域を同定する方法は、Kontermann and Dubel, eds., Antibody Engineering, Springer, New York, NY, 2001、およびDinarello et al., Current Protocols in Immunology, John Wiley and Sons Inc., Hoboken, NJ, 2000に記載されている。抗体配列のデータベースは、www.bioinf.org.uk/absの「The Kabatman」データベース(ロンドン大学ユニバーシティーカレッジ、生化学&分子生物学学科、英国、ロンドンのA.C. Martinによって維持されている)、およびRetter et al., Nucl. Acids Res., 33(Database issue): D671-D674 (2005)に記載されているwww.vbase2.orgのVBASE2に記載されており、これらを通じてアクセスすることができる。「Kabatman」データベースウェブサイトはまた、CDRを同定するための一般的経験則も含んでいる。本明細書で使用する「CDR」という用語は、特記しない限り、Kabat et al., Sequences of Immunological Interest, 5th ed., U.S. Department of Health and Human Services, 1991において定義されるものと同様である。
ポリクローナル抗体は好ましくは、関連抗原およびアジュバントを複数回皮下(sc)または腹腔内(ip)注射することによって動物で産生される。二官能性剤または誘導体化剤、例えばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基による結合)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、または当技術分野で公知の他の薬剤を用いて、免疫する種において免疫原性であるタンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン、またはダイズトリプシンインヒビターに関連抗原を結合させることによって、向上した抗体応答を得ることができる。
例えばタンパク質またはコンジュゲート100μgまたは5μg(それぞれ、ウサギまたはマウスの場合)を3倍量のフロイント完全アジュバントと混合し、この溶液を複数部位に皮内注射することによって、動物を抗原、免疫原性コンジュゲート、または誘導体に対して免疫する。1カ月後、フロイント完全アジュバント中の初回量の1/5〜{割合(1/10)}のペプチドまたはコンジュゲートを複数部位に皮下注射することにより、動物を追加免疫する。追加免疫注射の7〜14日後に、動物から採血し、血清を抗体価についてアッセイする。力価がプラトーに達するまで、動物を追加免疫する。好ましくは、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なるタンパク質に、および/または異なる架橋試薬によって結合させたコンジュゲートで、動物を追加免疫する。コンジュゲートは、タンパク質融合物として組換え細胞培養で作製することもできる。また、免疫応答を増強させるために、ミョウバンなどの凝集剤も適切に用いられる。
モノクローナル抗体とは、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を指す。モノクローナル抗体は一般的に高度に特異的であり、典型的に異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、単一の抗原性部位に対して指向され得る。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、均一な培養により合成され、異なる特異性および特徴を有するその他の免疫グロブリンが混入していないという点で有利である。
本開示に従って使用するモノクローナル抗体は、Kohler et al., (Nature, 256:495-7, 1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製することもできるし、または組換えDNA法によって作製することもできる(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)。モノクローナル抗体は、例えばClackson et al., (Nature 352:624-628, 1991)およびMarks et al., (J. Mol. Biol. 222:581-597, 1991)に記載されている技法を用いて、ファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
ハイブリドーマ法では、マウスまたはその他の適切な宿主動物、例えばハムスターもしくはマカクザルなどを本明細書に記載する通りに免疫して、免疫化に使用したタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するか、または産生し得るリンパ球を誘発する。または、リンパ球をインビトロで免疫してもよい。次いで、ポリエチレングリコールなどの適切な融合剤を用いて、リンパ球を骨髄腫細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成させる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp. 59-103 (Academic Press, 1986))。
このようにして調製したハイブリドーマ細胞を、好ましくは融合していない親骨髄腫細胞の増殖または生存を阻害する1つまたは複数の物質を含む適切な培養液に播種し、増殖させる。例えば、親骨髄腫細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合には、ハイブリドーマ用の培養液は典型的に、HGPRT欠損細胞の増殖を妨げる物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含む(HAT培地)。
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定した高レベル産生を支持し、培地に対して感受性のある細胞である。ヒト骨髄腫細胞株およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞系もまた、ヒトモノクローナル抗体の産生に関して記載されている(Kozbor, J. Immunol., 133: 3001 (1984);Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。例示的なマウス骨髄腫株には、Salk Institute Cell Distribution Center、米国、カリフォルニア州、サンディエゴから入手可能なMOP-21およびM.C.-11マウス腫瘍に由来する株、ならびにアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、米国、メリーランド州、ロックビルから入手可能なSP-2またはX63-Ag8-653細胞が含まれる。
ハイブリドーマ細胞が増殖している培養液を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイする。好ましくは、ハイブリドーマ細胞により産生されたモノクローナル抗体の結合特異性を、免疫沈降により、または放射性免疫測定法(RIA)もしくは酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)などのインビトロ結合アッセイ法により決定する。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばスキャッチャード解析により決定することができる(Munson et al., Anal. Biochem., 107:220 (1980))。
所望の特異性、親和性、および/または活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、限界希釈手順によりクローンをサブクローニングし、標準的な方法により増殖させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp. 59-103 (Academic Press, 1986))。この目的に適した培養液には、例えばDMEMまたはRPMI-1640培地が含まれる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖させることもできる。サブクローンにより分泌されたモノクローナル抗体は、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製手順により、培養液、腹水、または血清から適切に分離する。
本開示の抗体を、当技術分野で周知であり、本明細書に記載される抗体のより小さな抗原結合断片として使用できることがさらに意図される。
本開示は、全長重鎖2本および全長軽鎖2本を含むIL-1(例えばIL-1β)結合抗体を包含する。あるいは、IL-1β結合抗体は、IL-1βに対する結合活性を保持する一本鎖抗体または「ミニ」抗体のような構築物であってよい。そのような構築物は、例えば、大腸菌(E. coli)で発現させるための一本鎖抗体のPCRによるクローニングおよび組み立てなど、当技術分野において公知の方法により調製することができる(Antibody Engineering, The practical approach series, J. McCafferty, H. R. Hoogenboom, and D. J. Chiswell, editors, Oxford University Press, 1996に記載されている)。この種の構築物では、抗体分子の重鎖および軽鎖の可変部分をcDNAからPCR増幅する。次いで、得られた単位複製配列を、例えば第2PCR段階において、アミノ酸GlyおよびSerから構成される可動性のタンパク質リンカーをコードするリンカーDNAを介して組み立てる。このリンカーによって、抗原結合ポケットが再生されて、多くの場合に親の全長二量体免疫グロブリン分子に匹敵する親和性で抗原に結合するように、重鎖および軽鎖の可変部分が折りたたまれる。
本開示のIL-1(例えばIL-1β)結合抗体および断片は、本明細書に開示する例示的な抗体、断片、および配列の変種を包含する。変種には、本明細書に開示する例示的な抗体、断片、および配列の1つまたは複数と同じまたは実質的に同じ親和性およびエピトープ結合の特異性を有する、1つまたは複数のアミノ酸配列置換、欠失、および/または付加を含むペプチドおよびポリペプチドが含まれる。したがって、変種には、本明細書に開示する例示的な抗体、断片、および配列に対する、親和性およびエピトープ結合の特異性に実質的な変化をもたらさない1つまたは複数のアミノ酸配列置換、欠失、および/または付加を含むペプチドおよびポリペプチドが含まれる。例えば、抗体または断片の変種は、抗体または断片に対する1つまたは複数の変化に由来してよく、この場合、変化した抗体または断片は開始配列と同じまたは実質的に同じ親和性およびエピトープ結合の特異性を有する。変種は、対立遺伝子変種もしくはスプライス変種のように天然に生じるものであってよく、または人為的に構築することもできる。変種は、そのような変種をコードする対応する核酸分子から調製することができる。本抗体およびIL-1β結合断片の変種は、軽鎖および/または重鎖アミノ酸配列中に、天然に生じた、または組換えDNA技法を用いる天然配列のインビトロ操作によって導入された変化を有し得る。天然に生じる変種には、外来抗原に対する抗体応答の生成中に、対応する生殖系列ヌクレオチド配列においてインビボで生成される「体細胞」変種が含まれる。
IL-1(例えばIL-1β)結合抗体および結合断片の変種はまた、突然変異誘発技法によって調製することも可能である。例えば、抗体コード領域の至るところにアミノ酸変化を無作為に導入することができ、得られた変種をIL-1βに対する結合親和性または別の特性に関してスクリーニングすることができる。あるいは、軽鎖および/もしくは重鎖CDR、ならびに/またはフレームワーク領域などの、IL-1β抗体の選択される領域にアミノ酸変化を導入することができ、得られた抗体をIL-1βに対する結合または他の何らかの活性に関してスクリーニングすることができる。アミノ酸変化は、単一のアミノ酸相違から、CDR3のような所与のCDR内へのアミノ酸の複数置換の導入に及ぶ、CDRにおける1つまたは複数のアミノ酸置換を包含する。別の方法では、CDR内の少なくとも1つの残基をアラニンで置換することによって、CDR内の各残基のIL-1β結合に対する寄与を評価することができる。Lewis et al. (1995), Mol. Immunol. 32: 1065-72。次いで、より最適な配列を決定するために、IL-1βに対する結合に最適でない残基を変化させることができる。CDR3などのCDRの大きさを増加させるために、アミノ酸を挿入することによって作製された変種もまた包含する。例えば、大部分の軽鎖CDR3配列は9アミノ酸長である。9残基より短い抗体中の軽鎖配列は、CDRの長さを増加させるために適切なアミノ酸を挿入することによって、IL-1βに対する結合に関して最適化することができる。
軽鎖または重鎖の「チェーン(鎖)シャフリング」によって変種を調製することも可能である。Marks et al. (1992), Biotechnology 10: 779-83。単一の軽鎖(または重鎖)を、重鎖(または軽鎖)のレパートリーを有するライブラリーと組み合わせることができ、得られた集団を、IL-1βに対する結合などの所望の活性に関してスクリーニングする。これによって、重鎖および軽鎖両方のレパートリーを含むライブラリーで可能であるよりも、単一の軽鎖(または重鎖)と組み合わせた異なる重鎖(または軽鎖)のより多くの試料をスクリーニングすることが可能になる。
本開示のIL-1(例えばIL-1β)結合抗体および断片は、本明細書に開示する例示的な抗体、断片、および配列の誘導体を包含する。誘導体には、化学的に修飾されたポリペプチドもしくはペプチド、またはその変種、断片、もしくは誘導体が含まれる。例には、1つもしくは複数のポリマー(水溶性ポリマーなど)、N-結合型もしくはO-結合型糖鎖、糖類、リン酸、および/または他のこのような分子の共有結合が含まれる。誘導体は、結合する分子の種類または位置が天然のまたは開始のペプチドまたはポリペプチドと異なるように修飾される。誘導体は、ペプチドまたはポリペプチド上に天然に存在する1つまたは複数の化学基の欠失をさらに含む。
本開示のIL-1β結合抗体および断片は二重特異性であってよい。二重特異性抗体または断片は、いくつかの立体配置のものであってよい。例えば、二重特異性抗体は、単一の抗体(または抗体断片)に似ているが、2つの異なる抗原結合部位(可変領域)を有し得る。二重特異性抗体は、化学的技法によって(Kranz et al. (1981), Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78: 5807)、「ポリドーマ(polydoma)」技法によって(米国特許第4,474,893号)、または組換えDNA技法によって作製することができる。本開示の二重特異性抗体は、その少なくとも1つがIL-1βのエピトープである、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有し得る。IL-1β結合抗体および断片はまた、ヘテロ抗体であってもよい。ヘテロ抗体とは、互いに連結された、それぞれ異なる特異性を有する2つまたはそれ以上の抗体または抗体結合断片(Fab)である。
モノクローナル抗体の作製を回避して、抗体分子の抗原結合領域の組換えDNA型を作製する技法が、本IL-1(例えばIL-1β)結合抗体および断片に関して意図される。DNAを細菌発現系にクローニングする。本開示の実施に適したこのような技法の一例では、発現されたFabタンパク質を細胞膜周辺腔(細菌細胞膜と細胞壁の間)に移行させるかまたは分泌させるリーダー配列を有するバクテリオファージλベクター系を用いる。IL-1βと結合するものに関して、多数の機能的Fab断片を迅速に作製し、スクリーニングすることができる。このようなIL-1β結合剤(IL-1βポリペプチドに対する特異性を有するFab断片)は、本開示のIL-1β結合抗体および断片の範囲内に明確に包含される。
本IL-1(例えばIL-1β)結合抗体および断片は、ヒト化抗体またはヒト型に設計された抗体であってよい。本明細書で使用するヒト化抗体またはその抗原結合断片とは、非ヒト抗体に由来する抗原結合部位の部分、ならびにヒト抗体のフレームワークおよび/または定常領域の部分を含む組換えポリペプチドである。ヒト型に設計された抗体または抗体断片とは、ヒトにおける改変抗体の検出可能な免疫原性を減少させるまたは除去するために、特定の位置のアミノ酸を改変する(例えば、欠失、挿入、または置換する)ことによって操作された非ヒト(例えば、マウス)抗体である。
ヒト化抗体には、キメラ抗体およびCDR移植抗体が含まれる。キメラ抗体とは、ヒト定常領域に連結された非ヒト抗体可変領域を含む抗体である。したがってキメラ抗体では、可変領域は主に非ヒトであり、定常領域はヒトである。キメラ抗体およびそれらを作製する方法は、Morrison, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6841-6855 (1984)、Boulianne, et al., Nature, 312: 643-646 (1984)、および国際公開公報 WO 86/01533に記載されている。キメラ抗体はマウスモノクローナル抗体よりも免疫原性が低いと考えられるが、キメラ抗体の投与は、抗体の非ヒト部分に対するヒト抗マウス抗体応答(HAMA)と関連している。キメラ抗体はまた、適切な抗原結合特異性を有するマウス抗体分子由来の遺伝子と、ヒト補体を活性化するおよびADCCを媒介する能力などの適切な生物活性を有するヒト抗体分子由来の遺伝子をつなぎ合わせることによって作製することもできる。Morrison et al. (1984), Proc. Natl. Acad. Sci., 81: 6851;Neuberger et al. (1984), Nature, 312: 604。一例として、Fc領域の、異なるアイソタイプのFc領域との置換が挙げられる。
CDR移植抗体とは、ヒト「レシピエント」抗体のフレームワーク領域に連結された、非ヒト「ドナー」抗体由来のCDRを含む抗体である。一般に、CDR移植抗体は、ヒト抗体に由来する定常領域配列および可変領域(フレームワーク)配列の両方を含むため、キメラ抗体よりも多くのヒト抗体配列を含む。したがって、例えば、本開示のCDR移植ヒト化抗体は、ヒト抗体のフレームワーク領域(例えば、ヒト抗体のFR-1、FR-2、またはFR-3)に由来する連続したアミノ酸配列(例えば、約5個もしくはそれ以上、10個もしくはそれ以上、またはさらには15個もしくはそれ以上の連続したアミノ酸残基)を含んでよく、任意には、ヒト抗体の全フレームワーク領域の大部分またはすべてを含み得る。CDR移植抗体およびそれらを作製する方法は、Jones et al., Nature, 321: 522-525 (1986)、Riechmann et al., Nature, 332: 323-327 (1988)、およびVerhoeyen et al., Science, 239: 1534-1536 (1988)に記載されている。ヒト化抗体を作製するために使用できる方法はまた、米国特許第4,816,567号、第5,721,367号、第5,837,243号、および第6,180,377号に記載されている。CDR移植抗体は、非ヒト抗体部分に対する免疫応答を誘導する可能性がキメラ抗体よりも低いと考えられる。しかし、おそらくはこれらのフレームワーク配列がドナー抗体の抗原結合部分の折りたたみに影響するために、ドナー抗体の結合親和性および/または特異性にはドナー抗体のフレームワーク配列が必要であることが報告されている。したがって、ドナーの非ヒトCDR配列を未改変のヒトフレームワーク配列に移植すると、得られたCDR移植抗体は、場合によって元の非ヒトドナー抗体と比較して結合親和性の減少を示し得る。例えば、Riechmann et al., Nature, 332: 323-327 (1988)、およびVerhoeyen et al., Science, 239: 1534-1536 (1988)を参照されたい。
ヒト型に設計された抗体には、例えば「張り合わせ(veneered)」抗体およびHUMAN ENGINEERING(商標)技術(例えば、U.S. Patent 5,766,886および5,869,619を参照されたい)を用いて調製された抗体が含まれる。HUMAN ENGINEERING(商標)技術は市販されており、これは、ヒトにおける免疫原性が低減されるが、それでもなお元の非ヒト抗体の所望の結合特性を保持する改変抗体を生じるように、抗体のアミノ酸配列に対して特定の変化をもたらすことによって、マウスもしくはキメラ抗体または抗体断片などの非ヒト抗体または抗体断片を改変する段階を含む。一般に、この技法は、非ヒト(例えば、マウス)抗体のアミノ酸残基を「低リスク」、「中程度リスク」、または「高リスク」残基に分類する段階を含む。分類は、置換が、得られた抗体の折りたたみおよび/または抗原結合特性に影響するリスクに対して、特定の置換を作製することの予測される利点(例えば、ヒトにおける免疫原性に関して)を評価する全体的なリスク/恩恵算出を用いて行う。したがって、低リスク位置とは、抗原結合特性に有意に影響することなく免疫原性が低減されることが予測されるために、置換が有利であると予測される位置である。中程度リスク位置とは、置換によって免疫原性が低減されると予測されるが、タンパク質折りたたみおよび/または抗原結合に影響する可能性がより高い位置である。高リスク位置は、適切な折りたたみまたは抗原結合に関与する可能性が最も高い残基を含む。一般に、非ヒト抗体における低リスク位置をヒト残基で置換し、高リスク位置はめったに置換することなく、中程度リスク位置におけるヒト化置換は、無差別ではないにしても行う場合もある。非ヒト抗体可変領域配列内のプロリンを有する位置は通常、少なくとも中程度リスク位置として分類される。
非ヒト(例えば、マウス)抗体配列の所与の低リスクまたは中程度リスク位置において置換する特定のヒトアミノ酸残基は、非ヒト抗体の可変領域に由来するアミノ酸配列を、特定のまたは共通のヒト抗体配列の対応する領域と整列させることによって選択することができる。非ヒト配列における低リスクまたは中程度リスク位置におけるアミノ酸残基は、整列化に従ってヒト抗体配列中の対応する残基と置換することができる。ヒト型に設計されたタンパク質を作製する技法は、Studnicka et al., Protein Engineering, 7: 805-814 (1994)、米国特許第5,766,886号、第5,770,196号、第5,821,123号、および第5,869,619号、ならびに国際公開公報 WO 93/11794にさらに詳述されている。
「張り合わせ(ベニア;veneered)」抗体とは、免疫原性をさらに減少させるまたは機能を増強するために、特定の溶媒露出アミノ酸残基を置換するよう操作された非ヒトまたはヒト化(例えば、キメラまたはCDR移植抗体)抗体である。キメラ抗体の表面残基は正確な抗体折りたたみに影響する可能性が低く、免疫応答を誘発する可能性が高いと推定されるため、キメラ抗体の張り合わせは、例えば、キメラ抗体の非ヒトフレームワーク領域における溶媒露出残基を同定する段階、およびそれらのうちの少なくとも1つをヒトフレームワーク領域に由来する対応する表面残基で置換する段階を含み得る。張り合わせは、上記のHUMAN ENGINEERING(商標)技術の使用を含む、任意の適切な操作技法によって達成することができる。
異なるアプローチでは、CDR移植抗体を「脱ヒト化」することによって、結合親和性の回復を達成することができる。脱ヒト化は、ドナー抗体のフレームワーク領域に由来する残基をCDR移植抗体に復帰させる段階を含み、それによって正確な折りたたみが復元され得る。同様の「脱ヒト化」は、(i) 「レシピエント」抗体中に「ドナー」フレームワーク領域の一部を含めるか、または(ii) レシピエント抗体に「ドナー」抗体フレームワーク領域の一部を移植する(移植するドナーCDRと共に)ことによって達成することができる。
抗体、ヒト化抗体、ヒト型に設計された、およびそれらを調製する方法のさらなる考察に関しては、Kontermann and Dubel, eds., Antibody Engineering, Springer, New York, NY, 2001を参照されたい。
例示的なヒト化抗体またはヒト型に設計された抗体には、IgG、IgM、IgE、IgA、およびIgD抗体が含まれる。本抗体は、任意のクラス(IgG、IgA、IgM、IgE、IgDなど)またはアイソタイプのものであってよく、カッパまたはラムダ軽鎖を含み得る。例えば、ヒト抗体は、アイソタイプ、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4のうちの少なくとも1つのような、IgG重鎖または既定の断片を含み得る、さらなる例として、本抗体または断片はIgG1重鎖およびIgG1軽鎖を含み得る。
本抗体および断片は、IL-1βポリペプチドと結合し、かつヒト生殖系列免疫グロブリン核酸配列の天然体細胞変種である核酸配列によってコードされる抗体のようなヒト抗体、ならびにその断片、合成変種、誘導体、および融合物であってよい。このような抗体は、哺乳動物染色体において天然免疫グロブリンレパートリーがヒトV-遺伝子で置換されているトランスジェニック哺乳動物(トランスジェニックマウスなど)を使用するなど、当技術分野において公知である任意の方法によって産生され得る。このような哺乳動物は、正常な様式でヒト生殖系列抗体遺伝子のVDJ組換えおよび体細胞超変異を起こすと考えられ、よって完全なヒト配列を有する高親和性抗体が産生される。
標的タンパク質に対するヒト抗体は、内因性免疫グロブリン産生を有さず、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むように操作されたトランスジェニック動物を用いて産生させることもできる。例えば、WO 98/24893はヒトIg遺伝子座を有するトランスジェニック動物を開示しており、この動物は内因性の重鎖および軽鎖遺伝子座の不活化のために機能的な内因性免疫グロブリンを産生しない。WO 91/00906もまた、免疫原に対する免疫応答を開始することができるトランスジェニック非霊長類哺乳動物宿主を開示しており、この場合、抗体は霊長類定常領域および/または可変領域を有し、内因性免疫グロブリンをコードする遺伝子座は置換されるかまたは不活化されている。WO 96/30498および米国特許第6,091,001号は、定常領域または可変領域のすべてまたは一部を置換して改変抗体分子を形成するためなど、哺乳動物における免疫グロブリン遺伝子座を改変するためのCre/Lox系の使用を開示している。WO 94/02602号は、不活化内因性Ig遺伝子座および機能的ヒトIg遺伝子座を有する非ヒト哺乳動物宿主を開示している。米国特許第5,939,598号は、内因性重鎖を欠き、1つまたは複数の異種定常領域を含む外因性免疫グロブリン遺伝子座を発現するトランスジェニックマウスを作製する方法を開示している。米国特許第6,114,598号、同第6,657,103号、および同第6,833,268号も参照されたい。
上記のトランスジェニック動物を使用して、選択された抗原性分子に対して免疫応答を生じさせることができ、抗体産生細胞を動物から取り出して、ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作製するために使用することができる。免疫化プロトコール、アジュバント等は当技術分野で公知であり、例えばWO 96/33735に記載されているようにトランスジェニックマウスの免疫化において使用される。この公開は、IL-6、IL-8、TNFa、ヒトCD4、Lセレクチン、gp39、および破傷風毒素を含む様々な抗原性分子に対するモノクローナル抗体を開示している。モノクローナル抗体は、対応するタンパク質の生物活性または生理的効果を阻害または中和する能力について試験することができる。WO 96/33735は、IL-8で免疫したトランスジェニックマウスの免疫細胞に由来するIL-8に対するモノクローナル抗体が、好中球のIL-8誘導性機能を阻止したことを開示している。トランスジェニック動物を免疫するために使用した抗原に対する特異性を有するヒトモノクローナル抗体は、WO 96/34096および米国特許出願第20030194404号;ならびに米国特許出願第20030031667号にも開示されている。
モノクローナル抗体を作製するために有用なさらなるトランスジェニック動物には、米国特許第5,770,429号およびFishwild, et al. (Nat. Biotechnol. 14:845-851, 1996)に記載されている、ヒト抗体の重鎖および軽鎖をコードする非再編成ヒト抗体遺伝子に由来する遺伝子配列を含むMedarex HuMAb-MOUSE(登録商標)が含まれる。HuMAb-MOUSE(登録商標)の免疫化により、標的タンパク質に対する完全ヒトモノクローナル抗体の産生が可能になる。
また、Ishida et al. (Cloning Stem Cells. 4:91-102, 2002)は、ヒトDNAのメガ塩基サイズのセグメントを含み、ヒト免疫グロブリン(hIg)遺伝子座全体を組み入れたTransChromo Mouse(TCMOUSE(商標))を記載している。TCMOUSE(商標)は、IgGのすべてのサブクラス(IgG1〜G4)を含む、hIgの十分に多様なレパートリーを有する。種々のヒト抗原でTC MOUSE(商標)を免疫すると、ヒト抗体を含む抗体応答が生じる。
Jakobovits et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:2551 (1993);Jakobovits et al., Nature, 362:255-258 (1993);Bruggermann et al., Year in Immunol., 7:33 (1993);および米国特許第5,591,669号、米国特許第5,589,369号、米国特許第5,545,807号;および米国特許出願公開第20020199213号も参照されたい。米国特許出願公開第20030092125号は、所望のエピトープに対する動物の免疫応答にバイアスをかける方法を記載している。ヒト抗体はまた、インビトロ活性化B細胞により作製してもよい(米国特許第5,567,610号および同第5,229,275号を参照されたい)。
ヒト抗体はまた、抗体ディスプレイライブラリーのインビトロスクリーニングにより作製することもできる。Hoogenboom et al. (1991), J. Mol. Biol. 227: 381;およびMarks et al. (1991), J. Mol. Biol. 222: 581を参照されたい。種々の抗体含有ファージディスプレイライブラリーが記載されており、容易に調製することができる。ライブラリーは、適切な標的に対してスクリーニングすることができる、ヒトFab、Fv、およびscFv断片などの多様なヒト抗体配列を含み得る。ファージディスプレイライブラリーは、IL-1βの選択的結合剤を同定するためにスクリーニングすることができる抗体以外のペプチドまたはタンパク質を含んでもよい。
組換えヒト抗体遺伝子のレパートリーを作製する技術の開発、およびコードされる抗体断片の糸状バクテリオファージの表面上での提示により、ヒト抗体を直接作製するための手段が提供された。ファージ技術によって作製される抗体は、細菌において抗原結合断片‐通常はFvまたはFab断片‐として産生され、したがってエフェクター機能を欠いている。エフェクター機能は、2つの戦略のうちの1つによって導入することができる:哺乳動物細胞における発現のために、断片を完全抗体になるよう操作するか、またはエフェクター機能を誘発できる第2の結合部位を用いて二重特異性抗体断片に操作することができる。
本開示は、ヒト抗体のライブラリーをファージ上で合成する段階、標的タンパク質またはその部分を用いてライブラリーをスクリーニングする段階、標的に結合するファージを単離する段階、およびファージから抗体を獲得する段階を含む、標的特異的抗体またはその抗原結合部分を作製する方法を意図する。一例として、ファージディスプレイ技法で使用するための抗体ライブラリーを調製する1つの方法は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含む非ヒト動物を標的抗原またはその抗原性部分で免疫して免疫応答を生じさせる段階、免疫した動物から抗体産生細胞を採取する段階、採取した細胞からRNAを単離する段階、RNAを逆転写してcDNAを作製する段階、プライマーを用いてcDNAを増幅する段階、および抗体がファージ上で発現されるようにcDNAをファージディスプレイベクターに挿入する段階を含む。本開示の組換え標的特異的抗体は、このようにして得ることができる。
ファージディスプレイ過程は、糸状バクテリオファージの表面上に抗体レパートリーを提示し、続いて選択された抗原に対するその結合によってファージを選択することにより、免疫選択を模倣する。1つのそのような技法はWO 99/10494に記載されており、これは、そのようなアプローチを使用した、MPLおよびmsk受容体に対する高親和性かつ機能的アゴニスト抗体の単離を記載している。本開示の抗体は、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリー、好ましくは、ヒトリンパ球由来のmRNAから調製されたヒトVLおよびVHのcDNAを用いて調製したscFvファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることにより単離することができる。このようなライブラリーを調製およびスクリーニングするための方法論は、当技術分野で公知である。例えば、米国特許第5,969,108号を参照されたい。ファージディスプレイライブラリーを作製するためのキットが市販されている(例えば、Pharmacia Recombinant Phage Antibody System、カタログ番号27-9400-01;およびStratagene SurfZAP(商標)ファージディスプレイキット、カタログ番号240612)。抗体ディスプレイライブラリーを作製およびスクリーニングする際に使用することができる他の方法および試薬も存在する(例えば、Ladner et al. 米国特許第5,223,409号;Kang et al. WO 92/18619;Dower et al. WO 91/17271;Winter et al. WO 92/20791;Markland et al. WO 92/15679;Breitling et al. WO 93/01288;McCafferty et al. WO 92/01047;Garrard et al. WO 92/09690;Fuchs et al. (1991) Bio/Technology 9:1370-1372;Hay et al. (1992) Hum. Antibod. Hybridomas 3:81-85;Huse et al. (1989) Science 246:1275-1281;McCafferty et al., Nature (1990) 348:552-554;Griffiths et al. (1993) EMBO J 12:725-734;Hawkins et al. (1992) J. Mol. Biol. 226:889-896;Clackson et al. (1991) Nature 352:624-628;Gram et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:3576-3580;Garrad et al. (1991) Bio/Technology 9:1373-1377;Hoogenboom et al.(1991) Nuc Acid Res 19:4133-4137;およびBarbas et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7978-7982を参照されたい)。
1つの態様では、所望の特徴を有する標的抗原に特異的なヒト抗体を単離するために、ヒトVHおよびVLライブラリーをスクリーニングして、所望の特異性を有する抗体断片を選択する。この方法で使用する抗体ライブラリーは、好ましくは、本明細書および当技術分野で記載される通りに調製およびスクリーニングされるscFvライブラリーである(McCafferty et al.、WO 92/01047、McCafferty et al., (Nature 348:552-554, 1990);およびGriffiths et al., (EMBO J 12:725-734, 1993)。scFv抗体ライブラリーは、好ましくは標的タンパク質を抗原として用いてスクリーニングする。
または、抗体のFd断片(VH-CH1)および軽鎖(VL-CL)をPCRにより別々にクローニングし、コンビナトリアルファージディスプレイライブラリーにおいてランダムに組換え、その後特定の抗原に対する結合について選択することができる。Fab断片をファージ表面上で発現させ、すなわちそれらをコードする遺伝子に物理的に関連づける。したがって、抗原結合によりFabを選択すると、Fabコード配列も同時に選択され、続いてこれを増幅することができる。パニングと称される手順である抗原結合および再増幅を数ラウンド行うことにより、抗原に特異的なFabが濃縮され、最終的に単離される。
1994年に、「誘導選択(guided selection)」と称される、抗体をヒト化するためのアプローチが記載された。誘導選択は、マウスモノクローナル抗体をヒト化するためにファージディスプレイ技法の威力を利用する(Jespers, L. S., et al. Bio/Technology 12, 899-903 (1994)を参照されたい)。このために、マウスモノクローナル抗体のFd断片をヒト軽鎖ライブラリーと組み合わせて提示することができ、次いで生じたハイブリッドFabライブラリーを抗原で選択することができる。こうして、マウスFd断片は、選択を誘導するための鋳型を提供する。その後、選択されたヒト軽鎖をヒトFd断片ライブラリーと組み合わせる。生じたライブラリーを選択することにより、完全なヒトFabが得られる。
ファージディスプレイライブラリーからヒト抗体を導出するための様々な手順が記載されている(例えば、Hoogenboom et al., J. Mol. Biol., 227:381 (1991);Marks et al., J. Mol. Biol, 222:581-597 (1991);米国特許第5,565,332号および同第5,573,905号;Clackson, T., and Wells, J. A., TIBTECH 12, 173-184 (1994)を参照されたい)。特に、ファージディスプレイライブラリーに由来する抗体のインビトロでの選択および進化は、強力な手段となっている(Burton, D. R., and Barbas III, C. F., Adv. Immunol. 57, 191-280 (1994);Winter, G., et al., Annu. Rev. Immunol. 12, 433-455 (1994);米国特許出願公開第20020004215号およびWO 92/01047;米国特許出願公開第20030190317号;ならびに米国特許第6,054,287号および同第5,877,293号を参照されたい)。
Watkins, 「Screening of Phage-Expressed Antibody Libraries by Capture Lift,」 Methods in Molecular Biology, Antibody Phage Display: Methods and Protocols 178: 187-193 (2002)、および2003年3月6日に公開された米国特許出願公開第20030044772号は、固体支持体への候補結合分子の固定化を含む方法である捕獲リフト(capture lift)により、ファージ発現抗体ライブラリーまたは他の結合分子をスクリーニングする方法を記載している。
Fv断片は、ファージタンパク質融合物(例えば、M13遺伝子IIIとの)として発現される1本鎖と、可溶性断片として発現される相補鎖の会合により、ファージの表面上に提示される。ファージは、クラスIファージ:fd、M13、f1、If1、1ke、ZJ/Z、Ffのうちの1つ、ならびにクラスIIファージXf、Pf1、およびPf3のうちの1つなどの糸状ファージであってよいことが意図される。ファージはM13であってもよく、又はfd若しくはその派生体であってもよい。
最初のヒトVLおよびVHセグメントが選択されたならば、「混合および適合(mix and match)」実験を行い、最初に選択されたVLおよびVHセグメントの様々な対を標的結合についてスクリーニングして、好ましいVL/VH対の組み合わせを選択する。加えて、抗体の質をさらに改善するために、天然の免疫応答において抗体の親和性成熟を担うインビボ体細胞変異過程に類似した過程で、好ましいVL/VH対のVLおよびVHセグメントを、好ましくはVHおよび/またはVLのCDR1、CDR2、またはCDR3領域のいずれかの内部でランダムに変異させることができる。このインビトロ親和性成熟は、それぞれVH CDR1、CDR2、およびCDR3またはVL CDR1、CDR2、およびCDR3に相補的なPCRプライマーを用いて、VLおよびVH領域を増幅することによって達成することができる。これらのプライマーには、結果として生じるPCR産物が、VHおよび/またはVL CDR3領域中にランダムな変異が導入されたVLおよびVHセグメントをコードするように、特定の位置に4種のヌクレオチド塩基のランダムな混合物が「添加」してある。これらのランダムに変異させたVLおよびVHセグメントを、標的抗原への結合について再度スクリーニングすることができる。
組換え免疫グロブリンディスプレイライブラリーから標的特異的抗体をスクリーニングおよび単離した後、選択された抗体をコードしている核酸をディスプレイパッケージから(例えば、ファージゲノムから)回収し、標準的な組換えDNA技法により他の発現ベクターにサブクローニングすることができる。必要に応じて、後述するように核酸をさらに操作して、本開示の他の抗体形態を創出することもできる。コンビナトリアルライブラリーのスクリーニングにより単離した組換えヒト抗体を発現させるには、本明細書に記載するように、抗体をコードするDNAを組換え発現ベクターにクローニングし、哺乳動物宿主細胞に導入する。
細菌または宿主細胞の突然変異誘発株でファージディスプレイ法を実施できることが意図される。突然変異誘発株は、その内部で複製されるDNAをその親DNAに関して変異させる遺伝子欠陥を有する宿主細胞である。例示的な突然変異誘発株は、NR9046mutD5およびNR9046 mut T1である。
ヘルパーファージを用いてファージディスプレイ法を実施できることも意図される。これは、欠陥ファージゲノムを含む細胞に感染させるために用いられ、欠陥を補足するように機能するファージである。欠陥ファージゲノムは、何らかの機能をコードする遺伝子配が除去されているファージミドまたはファージであってよい。ヘルパーファージの例は、M13K07、M13K07遺伝子III no. 3;およびキャプシドタンパク質に融合された結合分子を提示またはコードするファージである。
抗体はまた、WO 92/01047に開示されているような階層的二重組み合わせアプローチを使用するファージディスプレイスクリーニング法により作製される。この方法では、H鎖またはL鎖クローンのいずれかを含む個々のコロニーを使用して、他方の鎖(LまたはH)をコードするクローンの完全なライブラリーを感染させ、結果として生じた2鎖の特異的結合メンバーを、その文献に記載されているようなファージディスプレイ技法に従って選択する。この技法は、Marks et al, (Bio/Technology, 10:779-783, 1992)にも記載されている。
抗原特異的抗体を同定するために、酵母および微生物細胞の表面上にペプチドを提示させる方法も用いられている。例えば、米国特許第6,699,658号を参照されたい。抗体ライブラリーを凝集素などの酵母タンパク質に結合させて、免疫系におけるB細胞による抗体の細胞表面提示を効果的に模倣することができる。
ファージディスプレイ法に加えて、抗体は、リボソームmRNAディスプレイ法および微生物細胞ディスプレイ法を用いて単離することもできる。リボソームディスプレイを使用するポリペプチドの選択は、Hanes et al., (Proc. Natl Acad Sci USA, 94:4937-4942, 1997)、ならびにKawasakiに発行された米国特許第5,643,768号および同第5,658,754号に記載されている。リボソームディスプレイは、抗体の迅速大規模突然変異解析にも有用である。選択的突然変異誘発アプローチもまた、リボソームディスプレイ技法を用いて選択することができる活性が向上した抗体を作製する方法を提供する。
IL-1(例えばIL-1β)結合抗体および断片は、IL-1βと結合しないが、代わりに循環半減期、直接的細胞毒性効果、検出可能な標識、またはレシピエントの内因性補体カスケードもしくは内因性細胞傷害性の活性化などのその他の機能に関与する1つまたは複数の部分を含み得る。抗体または断片は、抗体の定常領域のすべてまたは一部を含んでよく、IgA(例えば、IgA1またはIgA2)、IgD、IgE、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)、またはIgMを含む任意のアイソタイプのものであってよい。定常領域を含むことに加えてまたはその代わりに、本開示の抗原結合化合物は、エピトープタグ、サルベージ受容体エピトープ、診断もしくは精製目的のための標識部分、または放射性核種もしくは毒素などの細胞毒性部分を含み得る。
本抗体および断片の定常領域(存在する場合)は、γ1、γ2、γ3、γ4、μ、β2、またはδ、またはε型のもであってよく、好ましくはγ型、より好ましくはy型のものであってよく、ヒト軽鎖の定常部分はκまたはλ型(λ1、λ2、およびλ3サブタイプを含む)のものであってよいが、好ましくはκ型のものである。
変種には、野生型Fc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸改変を含む改変されたFc領域を含む抗体または断片もまた含まれる。変種Fc領域は、野生型Fc領域を含む匹敵する分子と比較して、より高いまたはより低い親和性でFc受容体に結合するように設計することができる。
例えば、本IL-1β結合抗体および断片は、改変Fc領域を含み得る。Fc領域とは、IgGのパパイン消化によって生成される、IgG C末端ドメインと相同的な天然または合成ポリペプチドを指す。IgG Fcは、約50 kDの分子量を有する。本抗体および断片では、全Fc領域を用いることもできるし、または半減期延長部分のみを用いることもできる。さらに、天然の活性がすべての場合において必要であるとも望ましいとも限らないため、アミノ酸配列中の多くの改変も許容される。
Fc領域は、必要に応じて、補体を結合する能力およびFc受容体と高親和性で結合する能力を阻害するために、変異させることができる。マウスIgG Fcでは、Glu 318、Lys 320、およびLys 322をAla残基と置換すると、このタンパク質はADCCを引き起こすことができなくなる。Leu 235をGluに置換すると、高親和性でFc受容体に結合するこのタンパク質の能力は阻害される。ヒトIgGに関する種々の変異もまた知られている(例えば、Morrison et al., 1994, The Immunologist 2: 119 124、およびBrekke et al., 1994, The Immunologist 2: 125を参照されたい)。
いくつかの態様においては、例えば血清半減期またはインビトロアッセイによって測定される半減期といった、生物環境における抗体または断片の半減期が延長されるように天然Fc領域が改変された改変Fc領域を有する本抗体または断片が提供される。IgGのFc領域の元の形態を改変する方法もまた、米国特許第6,998,253号に記載されている。
特定の態様では、例えば、半減期を延長するためにPEGまたは多糖ポリマーを含むその他の水溶性ポリマーなどの分子を抗体断片に付加するなど、血清半減期を延長するために抗体または断片を改変することが望ましい場合がある。これはまた、例えば抗体断片にサルベージ受容体結合エピトープを組み入れることによって(例えば、抗体断片中の適切な領域の変異により、またはペプチドタグにエピトープを組み入れ、次いでこれを抗体断片のいずれかの末端または中央に融合させることにより(例えば、DNAまたはペプチド合成により))達成することができる(WO96/32478を参照されたい)。サルベージ受容体結合エピトープとは、IgG分子のインビボ血清半減期の延長に関与する、IgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4)のFc領域のエピトープを指す。
サルベージ受容体結合エピトープは、Fcドメインの1つまたは2つのループに由来する任意の1つまたは複数のアミノ酸残基が、抗体断片の類似の位置に移行される領域を含み得る。さらにより好ましくは、Fcドメインの1つまたは2つのループに由来する3つまたはそれ以上の残基を移行させる。さらにより好ましくは、Fc領域(例えばIgGの)のCH2ドメインからエピトープを得て、抗体のCH1、CH3、もしくはVH領域、または2つ以上のそのような領域に移行させる。あるいは、Fc領域のCH2ドメインからエピトープを得て、抗体断片のCL領域もしくはVL領域またはその両方に移行させる。Fc変種およびそれらのサルベージ受容体との相互作用について記載しているWO 97/34631およびWO 96/32478もまた参照されたい。
Fc受容体結合部位内の残基の変異は、ADCCもしくはCDC活性の変化または半減期の変化など、エフェクター機能の変化をもたらし得る。可能な変異には、アラニンとの置換、保存的置換、非保存的置換、または異なるIgGサブクラスに由来する同じ位置の対応するアミノ酸残基との置換(例えば、IgG1残基を、その位置の対応するIgG2残基で置換する)を含む、1つまたは複数の残基の挿入、欠失、または置換が含まれる。例えば、IgG4のアミノ酸241位におけるセリンをプロリン(IgG1およびIgG2のその位置に見出される)に変異させることによって、均一な抗体が産生され、元のキメラIgG4と比較して血清半減期が延長され、組織分布が改善されることが報告されている(Angal et al., Mol Immunol. 30:105-8, 1993)。
抗体断片とは、無傷の抗体の抗原結合領域または可変領域などの、無傷の全長抗体の一部である。抗体断片の例には、Fab、Fab'、F(ab')2、およびFv断片;ダイアボディ(diabody);直鎖状抗体:一本鎖抗体分子(例えば、scFv);二重特異性、三重特異性、および多特異性抗体などの多特異性抗体断片(例えば、ダイアボディ、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody));ミニボディ(minibody);キレート化組換え抗体;トリボディ(tribody)またはバイボディ(bibody);イントラボディ(intrabody);ナノボディ(nanobody);小モジュール免疫薬剤(SMIP)、アドネクチン、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質;ラクダ化抗体;VHH含有抗体;および抗体断片から形成される任意の他のポリペプチドが含まれる。
本開示は、上記の重鎖または軽鎖配列のいずれかを含み、かつIL-1βと結合するIL-1β結合抗体断片を包含する。本明細書で使用する断片という用語は、抗体の任意の3個またはそれ以上の連続したアミノ酸(例えば、4個もしくはそれ以上、5個もしくはそれ以上、6個もしくはそれ以上、8個もしくはそれ以上、またはさらには10個もしくはそれ以上の連続したアミノ酸)を指し、Fab、Fab'、F(ab')2、およびF(v)断片、または個々の軽鎖もしくは重鎖可変領域またはその一部を包含する。IL-1β結合断片には、例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fv、およびscFvが含まれる。これらの断片は無傷の抗体のFc断片を欠いており、無傷の抗体よりも迅速に循環から除去され、非特異的組織結合が低い可能性がある。Wahl et al. (1983), J. Nucl. Med., 24: 316-25を参照されたい。これらの断片は、例えば、パパイン(Fab断片を生成するため)またはペプシン(F(ab')2断片を生成するため)などの酵素でタンパク質切断するなど、周知の方法を用いて無傷の抗体から生成することができる。
I型IL-1受容体(IL-1R1)に対するIL-1βの結合を測定する際に用いるインビトロアッセイ法および細胞に基づくアッセイ法は、IL-1βまたはIL-1RIに結合する分子(抗体、アンタゴニスト、またはその他のインヒビターなど)の存在下で測定するアッセイ法を含め、当技術分野において十分に記載されている。(例えば、Evans et al., (1995), J. Biol. Chem. 270:11477-11483;Vigers et al., (2000), J. Biol. Chem. 275:36927-36933;Yanofsky et al., (1996), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:7381-7386;Fredericks et al., (2004), Protein Eng. Des. Sel. 17:95-106;Slack et al., (1993), J. Biol. Chem. 268:2513-2524;Smith et al., (2003), Immunity 18:87-96;Vigers et al., (1997), Nature 386:190-194;Ruggiero et al., (1997), J. Immunol. 158:3881-3887;Guo et al., (1995), J. Biol. Chem. 270:27562-27568;Svenson et al., (1995), Eur. J. Immunol. 25:2842-2850;Arend et al., (1994), J. Immunol. 153:4766-4774を参照されたい)。そのようなアッセイのための、ヒトI型IL-1受容体を含む組換えI型IL-1受容体は、様々な市販供給元(例えば、R&D Systems、SIGMAを参照されたい)から容易に入手することができる。I型IL-1受容体はまた、標準的な分子生物学および当技術分野で公知のトランスフェクション技法を用いて、適切な宿主細胞に導入された発現構築物またはベクターから発現させることもできる。次いで、発現されたI型IL-1受容体を、結合アッセイにおいて使用するために単離および精製することができ、またはあるいは細胞結合型として直接使用することもできる。
例えば、I型IL-1受容体に対するIL-1βの結合は、IL-1β結合抗体を固定化し、IL-1βを固体化抗体と接触させて、IL-1βが抗体に結合したかどうかを決定し、可溶型IL-1RIを結合しているIL-1β/抗体複合体と接触させて、可溶性IL-1RIが複合体に結合したかどうかを決定することによって判定することができる。この手順はまた、可溶性IL-1RIを、IL-1βと接触させる前に固定化抗体と接触させて、可溶性IL-1RIが固定化抗体に結合しないことを確認する段階をさらに含み得る。この手順は、結合相互作用の反応速度解析用のBiacore(登録商標)装置を用いて行うことができる。このような手順を用いて、抗体またはその他の分子が、IL-1βのI型IL-1受容体への結合を許容するかまたは遮断するかを判定することもできる。
その他のIL-1β/IL-1RI結合アッセイでは、IL-1β抗体またはそのIL-1β結合断片の存在下または非存在下において、IL-1RIに対するIL-1βの結合を比較することによって、I型IL-1受容体に対するIL-1β結合の許容または遮断を判定することができる。遮断は、アッセイ読み取り値において、対応する緩衝液または希釈液を含むがIL-1β抗体またはそのIL-1β結合断片を含まない対照試料と比較した場合の、抗IL-1β抗体またはそのIL-1β結合断片の存在下におけるI型IL-1受容体に対するIL-1β結合の減少表示として同定される。アッセイ読み取り値は、遮断の存在もしくは非存在を示して定性的と見なされてもよいし、または抗体もしくは断片の存在に起因する結合のパーセント減少もしくは減少倍率を示して定量的と見なされてもよい。
あるいはまたはさらに、IL-1β結合抗体またはIL-1β結合断片がIL-1RIに対するIL-1β結合を実質的に遮断する場合、IL-1RIに対するIL-1β結合は、抗体または断片の非存在下における同濃度のIL-1βとIL-1RIの結合と比較して、少なくとも10倍、あるいは少なくとも約20倍、あるいは少なくとも約50倍、あるいは少なくとも約100倍、あるいは少なくとも約1000倍、あるいは少なくとも約10000倍、またはそれ以上減少する。別の例として、IL-1β結合抗体またはIL-1β結合断片がIL-1RIに対するIL-1β結合を実質的に許容する場合、IL-1RIに対するIL-1β結合は、抗体または断片の非存在下における同濃度のIL-1βとIL-1RIの結合の少なくとも約90%、あるいは少なくとも約95%、あるいは少なくとも約99%、あるいは少なくとも約99.9%、あるいは少なくとも約99.99%、あるいは少なくとも約99.999%、あるいは少なくとも約99.9999%、あるいはその結合と実質的に同一である。
本開示は、ある態様において、本明細書に記載された例示的な抗体の1つまたは複数と同じエピトープまたは実質的に同じエピトープと結合する、IL-1β結合性抗体またはIL-1β結合性断片を範囲に含みうる。代替的または追加的に、IL-1β結合性抗体またはIL-1β結合性断片は、米国特許出願第11/472813号またはWO 2007/002261号に記載されたAB7の可変領域配列(以下に示された配列)を有する抗体の結合と競合する。代替的または追加的に、本開示は、AB5およびAB7と命名された抗体(米国特許出願第11/472813号、WO 2007/002261号)が結合するエピトープである、アミノ酸配列
中に含まれるエピトープと結合するIL-1β結合性抗体および断片を範囲に含む。本明細書で想定しているように、IL-1β結合性抗体または断片が、例えばAB7と命名された抗体のような例示的な抗体の1つまたは複数と同じエピトープまたは実質的に同じエピトープと結合するか否かは、当技術分野におけるいくつかの公知の方法のいずれかを用いて容易に判定することができる。
例えば、IL-1β結合抗体または断片が結合する重要なアミノ酸残基(エピトープ)は、例えばPepSpot(商標)ペプチドアレイ(JPT Peptide Technologies、ドイツ、ベルリン)などのペプチドアレイを用いて決定することができる。PepSpot(商標)ペプチドアレイでは、全IL-1βアミノ酸配列に及び、各ペプチドが前のペプチドと11アミノ酸重複する12アミノ酸ペプチドのスキャンが膜上に直接合成される。次いでペプチドを保有する膜を、エピトープ結合情報を探索する例えば2μg/ml濃度の抗体で、室温で2時間プロービングする。膜結合ペプチドに対する抗体の結合は、二次HRP結合ヤギ抗ヒト(またはしかるべき場合にはマウス)抗体、次いで高感度化学発光(ECL)を用いて検出することができる。抗体結合に関して陽性を表す、成熟IL-1βタンパク質の特定のアミノ酸残基または配列に対応するペプチドスポットが、特定の抗体が結合したエピトープを示す。
あるいはまたはさらに、抗体競合実験を行うことができ、このようなアッセイ法は当技術分野において周知である。例えば、抗体または断片が、成熟IL-1βタンパク質の残基83〜105に相当するアミノ酸
を含むペプチド配列中に含まれるエピトープに結合するかどうかを判定するため、特異性が未知である抗体を、この配列内に含まれるエピトープと結合することが判明している本開示の例示的な抗体(例えば、AB7)のいずれかと比較することができる。結合競合アッセイは、例えば、結合相互作用の反応速度解析用のBiacore(登録商標)装置を用いて、またはELISAによって行うことができる。そのようなアッセイ法では、エピトープ特異性が未知である抗体を、公知の比較抗体(例えば、AB7)に対する結合を競合する能力について評価する。特定のエピトープに対する結合の競合は、公知の比較抗体(例えば、AB7)のIL-1βエピトープに対する結合の少なくとも約50%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約99%、または約100%の減少によって決定される。
例示的な抗体におけるIL-1β結合領域および/または開示する抗体によって認識されるエピトープの本開示における同定を考慮して、本開示の態様に匹敵する、類似の結合特性および治療または診断有用性を有するさらなる抗体を作製できることが意図される。
抗体の抗原結合断片には、一般に抗体の抗原結合部分を維持することによって、抗原に特異的に結合する能力を保持する断片が含まれる。抗体の抗原結合機能が全長抗体の断片によって遂行され得ることが十分に確立されている。抗原結合部分の例には、(i) VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価の断片であるFab断片;(ii) ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価の断片であるF(ab')2断片;(iii) VHおよびCH1ドメインであるFd断片;(iv) 抗体の単一アームのVLおよびVHドメインであるFv断片、(v) VHドメインであるdAb断片(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546);および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。一本鎖抗体もまた、抗体の抗原結合部分という用語の範囲内に含まれる。本開示のIL-1β結合抗体および断片はまた、一価もしくは多価、または単量体もしくは多量体(例えば四量体)、足場(例えば、タンパク質または炭水化物足場)を含むもしくは含まないCDR由来結合ドメインもまた包含する。
本開示のIL-1β結合抗体または断片は、抗体または抗体部分と1つまたは複数の他のタンパク質またはペプチドとの共有結合または非共有結合によって形成された、より大きな免疫接着分子の一部であってよい。そのような免疫接着分子の例には、四量体scFv分子を作製するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov, S. M., et al. (1995) Human Antibodies and Hybridomas 6:93-101)、ならびに二価およびビオチン化scFv分子を作製するためのシステイン残基、マーカーペプチド、およびC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanov, S. M., et al. (1994) Mol. Immunol. 31:1047-1058)が含まれる。免疫接着分子を含む抗体および断片は、本明細書に記載する標準的な組換えDNA技法を用いて得ることができる。好ましい抗原結合部分は、完全なドメインまたは完全なドメインの対である。
本開示のIL-1β結合抗体および断片はまた、VHドメインからなるドメイン抗体(dAb)断片(Ward et al., Nature 341:544-546, 1989)を包含する。本開示のIL-1β結合抗体および断片はまた、ダイアボディを包含する。ここでダイアボディとは、VHおよびVLドメインを単一のポリペプチド鎖上に発現するが、同一鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、そのドメインを別の鎖の相補的ドメインと対形成させて、2つの抗原結合部位を創出する二価抗体である(例えば、EP 404,097;WO 93/11161;Holliger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448, 1993、およびPoljak et al., Structure 2:1121-1123, 1994を参照されたい)。ダイアボディは二重特異性または単一特異性であってよい。
本開示のIL-1β結合抗体および断片はまた、IL-1βに結合する一本鎖抗体断片(scFv)を包含する。scFvは、抗体軽鎖可変領域(VL)に機能的に連結された抗体重鎖可変領域(VH)を含み、重鎖可変領域および軽鎖可変領域は一緒にまたは個別に、IL-1βと結合する結合部位を形成する。scFvはアミノ末端にVH領域を含み、カルボキシ末端にVL領域を含み得る。あるいは、scFvはアミノ末端にVL領域を含み、カルボキシ末端にVH領域を含み得る。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHは別個の遺伝子によってコードされているものの、組換え法を用いて、それらをVLおよびVH領域が対形成して一価分子を形成する単一のタンパク質鎖とすることのできる合成リンカーにより、それらを結合することができる(一本鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423-426;およびHuston et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照されたい)。
scFvは任意に、重鎖可変領域と軽鎖可変領域の間にポリペプチドリンカーをさらに含み得る。そのようなポリペプチドリンカーは一般に、1〜50アミノ酸、あるいは3〜12アミノ酸、あるいは2アミノ酸を含む。scFvにおける重鎖と軽鎖を連結するためのリンカーペプチドの例は、5アミノ酸配列Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(SEQ ID NO:2)を含む。その他の例は、リンカーを創出するために、この配列の1回または複数回の縦列反復(例えば、Gly-Gly-Gly-Gly-Ser(SEQ ID NO:2)の2〜4回の反復を含むポリペプチド)を含む。
本開示のIL-1β結合抗体および断片はまた、重鎖抗体(HCAb)を包含する。通常の抗体のH2L2構造の例外は、ラクダ科動物(ラクダ、ヒトコブラクダ、およびラマ;Hamers-Casterman et al., 1993 Nature 363: 446;Nguyen et al., 1998 J. Mol. Biol. 275: 413)、オオセザメ(wobbegong shark)(Nuttall et al., Mol Immunol. 38:313-26, 2001)、コモリザメ(nurse shark)(Greenberg et al., Nature 374:168-73, 1995;Roux et al., 1998 Proc. Nat. Acad. Sci. USA 95: 11804)、およびスポッテッドラットフィッシュ(spotted ratfish)(Nguyen, et al., 「Heavy-chain antibodies in Camelidae; a case of evolutionary innovation」, 2002 Immunogenetics 54 (1): 39-47)に見出される免疫グロブリンのいくつかのアイソタイプで生じる。これらの機能的抗体は重鎖のみの二量体であることから、これらの抗体は明らかに、重鎖のみを用いて抗原結合領域を形成し得る(「重鎖抗体」または「HCAb」と称される)。したがって、本IL-1β結合抗体および断片のいくつかの態様は、IL-1βに特異的に結合する重鎖抗体であってよい。例えば、IgGのクラスであり軽鎖を欠いている重鎖抗体は、ラクダ、ヒトコブラクダ、およびラマを含むラクダ科属の動物によって産生される(Hamers-Casterman et al., Nature 363:446-448 (1993))。HCAbは、通常のIgG抗体の分子量が約160 kDaである代わりに、約 95 kDaという分子量を有する。その結合ドメインは重鎖可変ドメインのみからなり、多くの場合、通常のVHと区別するためにVHHと称される。Muyldermans et al., J. Mol. Recognit. 12:131-140 (1999)。重鎖抗体の可変ドメインは、場合によってナノボディと称される(Cortez-Retamozo et al., Cancer Research 64:2853-57, 2004)。Conrath et al., (Antimicrob Agents Chemother 45: 2807-12, 2001)に記載されているように、免疫化したヒトコブラクダから、または組換え法を用いて、ナノボディライブラリーを作製することができる。
第1定常ドメイン(CH1)が存在しないため(スプライス共通シグナルがないために、mRNAプロセシング中にスプライス除去される)、可変ドメイン(VHH)の後にすぐヒンジ領域、CH2およびCH3ドメインが続く(Nguyen et al., Mol. Immunol. 36:515-524 (1999);Woolven et al., Immunogenetics 50:98-101 (1999))。報告によれば、ラクダ科動物VHHは、ヒンジ、CH2、およびCH3ドメインを含みCH1ドメインを欠くIgG2およびIgG3定常領域と組み合わさる(Hamers-Casterman et al.、前記)。例えば、ラマIgG1は、VHがヒンジ、CH1、CH2、およびCH3ドメインを含む定常領域と組み合わさる通常の(H2L2)抗体アイソタイプであるが、ラマIgG2およびIgG3は、CH1ドメインを欠き、かつ軽鎖を含まない重鎖のみのアイソタイプである。
HCAbは軽鎖を欠いているが、抗原結合レパートリーを有する。HCAbの遺伝子生成機構は、Nguyen et al. Adv. Immunol 79:261-296 (2001)、およびNguyen et al., Immunogenetics 54:39-47 (2002)に概説されている。コモリザメを含むサメも、抗原受容体を含む同様の単一の単量体Vドメインを示す。Irving et al., J. Immunol. Methods 248:31-45 (2001);Roux et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:11804 (1998)。
VHHは、小さな無傷の抗原結合断片(例えば、約15 kDa、118〜136残基である断片)を含む。ラクダ科動物VHHドメインは高親和性で抗原に結合することが認められており(Desmyter et al., J. Biol. Chem. 276:26285-90, 2001)、VHHの親和性は典型的にナノモルの範囲であり、FabおよびscFv断片に匹敵する。VHHは非常に可溶性が高く、scFvおよびFab断片の対応する誘導体よりも安定である。VH断片は可溶型として生成することが比較的難しかったが、フレームワーク残基をよりVHH様に改変することで溶解度および特異的結合が改善され得る。(例えば、Reichman et al., J Immunol Methods 1999, 231:25-38を参照されたい)。VHHは、VHHをより親水性にし、通常は折りたたみおよび会合の際に小胞体(ER)内でH鎖に結合し、その後L鎖に置き換えられるBiP(免疫グロブリン重鎖結合タンパク質)との相互作用の持続を妨げるアミノ酸置換を有する。VHHは親水性が高いため、ERからの分泌が改善される。
機能的なVHHは、免疫化したラクダ科動物のHCAbのタンパク質切断により、免疫化したラクダ科動物のB細胞からVHH遺伝子を直接クローニングして組換えVHHをもたらすことにより、またはナイーブもしくは合成ライブラリーから得ることができる。所望の抗原特異性を有するVHHはまた、ファージディスプレイ法によって得ることもできる。ファージディスプレイにおいてVHHを用いることは、機能的な抗原結合断片を得るために1つのドメインしかクローニングして発現させる必要がないため、FabまたはscFvと比較して非常に簡単でかつより効率的である。Muyldermans, Biotechnol. 74:277-302 (2001);Ghahroudi et al., FEBS Lett. 414:521-526 (1997);およびvan der Linden et al., J. Biotechnol. 80:261-270 (2000)。ラクダ科動物重鎖を有する抗体を作製する方法はまた、米国特許出願公開第20050136049号および第20050037421号に記載されている。
リボソームディスプレイを用いて、所望の結合活性および親和性を有するscFvおよび/またはVHH分子を同定および単離することもできる。Irving et al., J. Immunol. Methods 248:31-45 (2001)。リボソームの提示および選択は、大きなライブラリー(1014)を作製し提示する可能性を有する。
他の態様は、溶解度を改善し非特異的結合を防ぐために、ヒトVHHなどの非ラクダ科VHを改変することにより、ラクダ化の過程を通して作製されたVHH様分子を提供する。これは、VHのVL側の残基をVHH様残基で置換して、より溶解度の高いVHH断片を模倣することによって達成される。ラクダ化VH断片、特にヒトのフレームワークに基づくものは、インビボで患者に投与した場合に免疫応答が大幅に低減されると考えられ、したがって治療用途に著しく有利であると考えられる。Davies et al., FEBS Lett. 339:285-290 (1994);Davies et al., Protein Eng. 9:531-537 (1996);Tanha et al., J. Biol. Chem. 276:24774-24780 (2001);およびRiechmann et al., Immunol. Methods 231:25-38 (1999)。
Fab断片、scFv、およびVHHを含むIL-1β断片の産生には、多種多様な発現系が利用可能である。例えば、原核生物および真核生物起源の発現系を、抗体断片および抗体融合タンパク質の大量生産に用いることができる。特に有利であるのは、大量の抗体断片を培地に分泌させることができる発現系である。
二重特異性Fab-scFv(「バイボディ」)および三重特異性Fab-(scFv)(2)(「トリボディ」)の作製は、Schoonjans et al. (J Immunol 165:7050-57, 2000)、およびWillems et al. (J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci. 786:161-76, 2003)に記載されている。バイボディまたはトリボディでは、scFv分子がVL-CL(L)鎖およびVH-CH1(Fd)鎖の一方または両方に融合されており、例えばトリボディを作製するには、2つのscFvをFabのC末端に融合し、バイボディの場合には、1つのscFvをFabのC末端に融合する。ペプチドリンカー(ヒンジなし)を介して、またはIgGヒンジを介してCH3に融合されたscFvからなる「ミニボディ」は、Olafsen, et al., Protein Eng Des Sel. 2004 Apr;17(4)315-23に記載されている。
イントラボディとは、細胞内発現を示し、細胞内タンパク質機能を操作できる一本鎖抗体である(Biocca, et al., EMBO J. 9:101-108, 1990;Colby et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 101:17616-21, 2004)。細胞内領域に抗体構築物を保持する細胞シグナル配列を含むイントラボディは、Mhashilkar et al (EMBO J 14:1542-51, 1995)、およびWheeler et al. (FASEB J. 17:1733-5. 2003)に記載されているように作製することができる。トランスボディとは、タンパク質導入ドメイン(PTD)を一本鎖可変断片(scFv)抗体と融合させた細胞透過性抗体である Heng et al., (Med Hypotheses. 64:1105-8, 2005)。
本開示のIL-1β結合抗体および断片はまた、標的タンパク質に特異的なSMIPまたは結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質である抗体を包含する。これらの構築物は、抗体エフェクター機能を実行するのに必要な免疫グロブリンドメインに融合された抗原結合ドメインを含む一本鎖ポリペプチドである。例えば、WO03/041600、米国特許出願公開第20030133939号、および米国特許出願公開第20030118592号を参照されたい。
本開示のIL-1β結合抗体および断片はまた、イムノアドヘシンを包含する。1つまたは複数のCDRを共有結合または非共有結合により分子内に組み入れることによって、その分子をイムノアドヘシンにすることができる。イムノアドヘシンは、より大きなポリペプチド鎖の一部としてCDRを組み入れてもよく、CDRを別のポリペプチド鎖に共有結合させてもよく、または非共有結合によりCDRを組み入れてもよい。本明細書に開示するCDRによって、イムノアドヘシンがIL-1βに特異的に結合できるようになる。
本開示のIL-1β結合抗体および断片はまた、有機または分子足場(タンパク質または炭水化物足場など)上に構築された1つまたは複数のIL-1β結合部分を含む抗体模倣物を包含する。一般にタンパク質足場と称される、比較的明確な三次元構造を有するタンパク質を、抗体模倣物を設計するための試薬として用いることができる。これらの足場は典型的に、特定のまたは無作為な配列変化を受け入れる1つまたは複数の領域を含み、そのような配列の無作為化は多くの場合、そこから所望の生成物を選択することができるタンパク質のライブラリーを作製するために行われる。例えば、抗体模倣物は、各ループに挿入された親抗体由来の異なるCDRを含む2つまたはそれ以上の溶媒露出ループを有する足場を含む免疫グロブリン様ドメインを有し、かつ親抗体が結合するリガンドに対して選択的結合活性を示すキメラ非免疫グロブリン結合ポリペプチドを含み得る。非免疫グロブリンタンパク質足場は、新規結合特性を有するタンパク質を得るために提唱された。(Tramontano et al., J. Mol. Recognit. 7:9, 1994;McConnell and Hoess, J. Mol. Biol. 250:460, 1995)。他のタンパク質もフレームワークとして試験されており、αヘリックス表面上の無作為化された残基(Nord et al., Nat. Biotechnol. 15:772, 1997;Nord et al., Protein Eng. 8:601, 1995)、αヘリックス束中のαヘリックス間のループ(Ku and Schultz, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:6552, 1995)、および小さいプロテアーゼインヒビターのループのようなジスルフィド架橋により拘束されたループ(Markland et al., Biochemistry 35:8045, 1996;Markland et al., Biochemistry 35:8058, 1996;Rottgen and Collins, Gene 164:243, 1995;Wang et al., J. Biol. Chem. 270:12250, 1995)を提示するために用いられている。抗体模倣物に足場を用いる方法は、米国特許第5,770,380号、ならびに米国特許出願公開第2004/0171116号、第2004/0266993号、および第2005/0038229号に開示されている。
本開示に従って使用するための好ましいIL-1β抗体または抗体断片は、一般的に、例えば約10 nMもしくはそれ未満、約5 nMもしくはそれ未満、約1 nMもしくはそれ未満、約500 pMもしくはそれ未満、またはより好ましくは約250 pMもしくはそれ未満、約100 pMもしくはそれ未満、約50 pMもしくはそれ未満、約25 pMもしくはそれ未満、約10 pMもしくはそれ未満、約5 pMもしくはそれ未満、約3 pMもしくはそれ未満、約1 pMもしくはそれ未満、約0.75 pMもしくはそれ未満、約0.5 pMもしくはそれ未満、もしくは約0.3 pMもしくはそれ未満のIL-1βに対する平衡結合解離定数(KD)といった高親和性で(例えば、BIACORE及び/又はKinexaで決定される)ヒトIL-1βに結合する。
本開示の抗体または断片は、例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により測定して、約10 nMもしくはそれ未満、約5 nMもしくはそれ未満、約2 nMもしくはそれ未満、約1 nMもしくはそれ未満、約0.75 nMもしくはそれ未満、約0.5 nMもしくはそれ未満、約0.4 nMもしくはそれ未満、約0.3 nMもしくはそれ未満、またはさらには約0.2 nMもしくはそれ未満のIC50でIL-1βに結合し得る。好ましくは、本開示の抗体または抗体断片は、IL-1以外のいかなる標的とも交差反応しない。例えば、本抗体および断片はIL-1βに結合し得るが、IL-1αには検出可能な程度に結合しないか、またはIL-1αのその結合に対してIL-1βのその結合において少なくとも約100倍(例えば、少なくとも約150倍、少なくとも約200倍、またはさらには少なくとも約250倍)高い選択性を有する。本開示に従って使用する抗体または断片は、特定の態様において、本開示の抗体または断片を投与していないIL-1β刺激動物における血清IL-6のレベルと比較して、動物における血清IL-6のIL-1β誘導性発現を少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、またはさらには少なくとも80%)阻害する。抗体はIL-1βと結合し得るが、結合したIL-1βリガンドのIL-1受容体I型(IL-1RI)への結合を許容し得るか、または実質的に許容し得る。IL-1βのIL-1RIへの結合を阻止するかまたは実質的に妨げる多くの公知のIL-1β結合抗体とは対照的に、AB5およびAB7と命名された抗体(米国特許出願第11/472813号、WO 2007/002261)はIL-1βリガンドに選択的に結合するが、結合したIL-1βリガンドのIL-1RIへの結合を許容する。例えば、AB7と命名された抗体はIL-1βエピトープに結合するが、結合したIL-1βのIL-1RIに対する結合をなお許容する。特定の態様において、抗体は、結合したIL-1βのIL-1RIに結合する相互作用の親和性を減少させ得る。したがって、本開示は関連局面において、上記の特徴の少なくとも1つを有するIL-1β結合抗体またはIL-1β結合抗体断片の使用を提供する。本開示の前述の抗体、抗体断片、またはポリペプチドはいずれも、本明細書に記載するようにヒト化またはヒト型に設計できる。
例えば以下の特許および特許出願に記載されるか、または記載される方法を用いて導出された抗体を含む、当技術分野で公知の様々なIL-1(例えば、IL-1β)抗体および断片を、本明細書に提供する方法に従って使用することができる:US 4,935,343;US 2003/0026806;US 2003/0124617;WO 2006/081139;WO 03/034984;WO 95/01997;WO 02/16436;WO 03/010282;WO 03/073982、WO 2004/072116、WO 2004/067568、EP 0 267 611 Bl、EP 0 364 778 Bl、および米国特許出願第11/472813号。非限定的な例として、抗体AB5およびAB7(米国特許出願第11/472813号、WO2007/002261)を本開示に従って使用することができる。AB5およびAB7(XOMA 052とも呼ばれる)の可変領域配列は以下の通りである:
AB5
軽鎖
下線の配列は、(左側から右側に向かって)CDR 1、2、および3を示す。
重鎖
下線の配列は、(左側から右側に向かって)CDR 1、2、および3を示す。
AB7
軽鎖
下線の配列は、(左側から右側に向かって)CDR 1、2、および3を示す。
重鎖
下線の配列は、(左側から右側に向かって)CDR 1、2、および3を示す。
本明細書に記載する抗体および抗体断片は、任意の適切な方法により調製することができる。そのような抗体および抗体断片を調製する適切な方法は、当技術分野において公知である。抗体および抗体断片を調製する他の方法は、本明細書の一部として本明細書に記載されている。本明細書に記載する本開示の抗体、抗体断片、またはポリペプチドは、任意の程度まで単離または精製することができる。本明細書で使用する単離された化合物とは、その天然環境から取り出された化合物である。精製された化合物とは、その化合物が(i) その天然環境において、または(ii) 実験室条件下で最初に合成および/もしくは増幅された際に存在するよりも純粋な形態で存在するように、純度が増加した化合物であり、「純度」とは相対語であって、必ずしも「絶対純度」を意味する必要はない。
薬学的組成物
本開示に従って使用するためのIL-1(例えば、IL-1β)結合抗体および抗体断片は、本明細書の方法において使用するための組成物、特に薬学的組成物に製剤化することができる。そのような組成物は、適切な担体、例えば薬学的に許容される薬剤との混合物中に、本開示のIL-1β結合抗体若しくは抗体断片の治療的または予防的有効量を含む。典型的に、本開示のIL-1β結合抗体および抗体断片は、動物への投与のために十分に精製してから薬学的組成物中に製剤化する。
薬学的に許容される薬剤には、担体、賦形剤、希釈剤(diluent)、抗酸化剤、保存剤、着色剤、香味剤、および希釈剤(diluting agent)、乳化剤、懸濁剤、溶媒、増量剤、膨張剤、緩衝液、送達媒体、等張化剤、共溶媒、湿潤剤、錯化剤、緩衝剤、抗菌剤、および界面活性剤が含まれる。
中性緩衝生理食塩水またはアルブミンと混合した生理食塩水は、例示的な適切な担体である。薬学的組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤;低分子量ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む単糖類、二糖類、およびその他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;マンニトールもしくはソルビトールなどの糖アルコール;ナトリウムなどの塩形成対イオン;ならびに/またはTween、プルロニック、もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含み得る。同様に一例として、適切な等張化増進剤には、ハロゲン化アルカリ金属(好ましくは、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム)、マンニトール、ソルビトールなどが含まれる。適切な保存剤には、塩化ベンザルコニウム、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸などが含まれる。過酸化水素もまた、保存剤として用いることができる。適切な共溶媒には、グリセリン、プロピレングリコール、およびPEGが含まれる。適切な錯化剤には、カフェイン、ポリビニルピロリドン、β-シクロデキストリン、またはヒドロキシ-プロピル-β-シクロデキストリンが含まれる。適切な界面活性剤または湿潤剤には、ソルビタンエステル、ポリソルベート80などのポリソルベート、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサポールなどが含まれる。緩衝液は、酢酸、ホウ酸、クエン酸、リン酸、炭酸水素、またはTris-HClなどの従来の緩衝液であってよい。酢酸緩衝液はpH 約4〜5.5であってよく、Tris緩衝液はpH 約7〜8.5であってよい。さらなる薬学的薬剤が、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, A. R. Gennaro, ed., Mack Publishing Company, 1990に記載されている。
組成物は、液体形態であっても、または凍結乾燥もしくはフリーズドライ形態であってもよく、1つまたは複数の凍結乾燥保護剤、賦形剤、界面活性剤、高分子量構造添加物、および/または膨張剤を含み得る(例えば、米国特許第6,685,940号、第6,566,329号、および第6,372,716号を参照されたい)。1つの態様においては、スクロース、ラクトース、またはトレハロースなどの非還元糖である凍結保護剤を含める。一般的に含める凍結保護剤の量は、再構成した際に生じる製剤が等張になるようなものであるが、高張なまたはわずかに低張な製剤もまた適している場合がある。さらに、凍結保護剤の量は、凍結乾燥時のタンパク質の許容できない量の分解および/または凝集を防ぐのに十分であるべきである。凍結乾燥前の製剤中の糖類(例えば、スクロース、ラクトース、トレハロース)の例示的な凍結保護剤濃度は、約10 mM〜約400 mMである。別の態様においては、例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80);ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188);ポリ(エチレングリコール)フェニルエーテル(例えば、Triton);ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);ラウリル硫酸ナトリウム;オクチルグリコシドナトリウム;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、またはステアリル-スルホベタイン;ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、またはステアリル-サルコシン;リノレイル-、ミリスチル-、またはセチル-ベタイン;ラウロアミドプロピル-、コカミドプロピル-、リノールアミドプロピル-、ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、またはイソステアラミドプロピル-ベタイン(例えば、ラウロアミドプロピル);ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、またはイソステアラミドプロピル-ジメチルアミン;ナトリウムメチルココイル-、または二ナトリウムメチルオフェイル-タウレート;ならびにMONAQUAT(商標)系(Mona Industries, Inc.、ニュージャージー州、パターソン)、ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、およびエチレンとプロピレングリコールの共重合体(例えば、Pluronic、PF68など)などの非イオン性界面活性剤およびイオン性界面活性剤といった界面活性剤を含める。凍結乾燥前の製剤中に存在し得る界面活性剤の例示的な量は、約0.001〜0.5%である。高分子量構造添加物(例えば、増量剤、結合剤)には、例えば、アカシア、アルブミン、アルギン酸、リン酸カルシウム(二塩基性)、セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、結晶セルロース、デキストラン、デキストリン、デキストレート、スクロース、チロース、アルファ化デンプン、硫酸カルシウム、アミロース、グリシン、ベントナイト、マルトース、ソルビトール、エチルセルロース、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二ナトリウム、ピロ硫酸二ナトリウム、ポリビニルアルコール、ゼラチン、グルコース、グアーガム、液体グルコース、圧縮糖、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、マルトデキストリン、ポリエチレンオキシド、ポリメタクリル酸、ポビドン、アルギン酸ナトリウム、トラガカント結晶セルロース、デンプン、およびゼインが含まれ得る。高分子量構造添加物の例示的な濃度は、0.1重量%〜10重量%である。他の態様においては、膨張剤(例えば、マンニトール、グリシン)を含めてもよい。
組成物は、非経口投与に適切であってよい。例示的な組成物は、関節内、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、病巣内、直腸内、経皮的、経口、および吸入経路などの当業者に利用可能な任意の経路によって、動物に注射または注入するのに適している。非経口製剤は典型的に、薬学的に許容される保存剤を任意に含んで、無菌であり発熱物質を含まない等張水溶液である。
非水性溶媒の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルがある。水性担体には、水、アルコール/水溶液、乳濁液、または生理食塩水および緩衝培地を含む懸濁液が含まれる。非経口媒体には、塩化ナトリウム溶液、ブドウ糖加リンゲル液、ブドウ糖および塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル液、または固定油が含まれる。静脈内媒体には、液体および栄養補充剤、電解質補充剤(ブドウ糖加リンゲル液に基づくものなど)などが含まれる。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなどの保存剤およびその他の添加剤もまた存在してよい。一般的には、参照により本明細書に組み入れられる、Remington's Pharmaceutical Science, 16th Ed., Mack Eds., 1980を参照されたい。
本明細書に記載する薬学的組成物は、持続放出性の産物の局所濃度(例えば、ボーラス、デポー効果)、および/または特定の局所環境における安定性もしくは半減期の増加を提供する様式で、制御または持続送達用に製剤化することができる。本開示は、特定の態様において、そのような組成物は最初の貯蔵物中に有意に大量の抗体または断片を含み得るが、任意の時点で実際に放出され利用可能な抗体または断片の有効量は、本明細書の開示に従って、最初の貯蔵物よりもはるかに少ない量であることを意図する。組成物は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのポリマー化合物、ならびに生分解性マトリックス、注射用微粒子、マイクロカプセル粒子、マイクロカプセル、生浸食性粒子ビーズ、リポソーム、および後にデポー注射として送達することができる、活性薬剤の制御または持続放出を提供する埋め込み型送達装置のような薬剤と共に、本開示のIL-1β結合抗体、抗体断片、核酸、またはベクターの製剤を含み得る。そのような持続または制御送達手段を製剤化する技法は公知であり、種々のポリマーが開発され、薬物の制御放出および送達に用いられている。そのようなポリマーは典型的に生分解性であり、かつ生体適合性である。鏡像体ポリマーまたはポリペプチドの部分と、温度またはpH感受性特性を有するヒドロゲルとの複合体形成によって形成されるものを含むポリマーヒドロゲルは、生物活性タンパク質剤(例えば、抗体)の捕捉に関与する穏やかな水性条件に起因して、薬物デポー効果を提供するのに望ましいと考えられる。例えば、PCT出願公報WO 93/15722における薬学的組成物を送達するための制御放出多孔性ポリマー微粒子の記載を参照されたい。
この目的に適した物質には、ポリ乳酸(例えば、米国特許第3,773,919号を参照されたい)、ポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(EP 133,988A)などのポリ-(a-ヒドロキシカルボン酸)のポリマー、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタミン酸の共重合体(Sidman et al., Biopolymers, 22: 547-556 (1983))、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリル酸)(Langer et al., J. Biomed. Mater. Res., 15: 167-277 (1981)、およびLanger, Chem. Tech., 12: 98-105 (1982))、エチレン酢酸ビニル、またはポリ-D(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。その他の生分解性ポリマーには、ポリ(ラクトン)、ポリ(アセタール)、ポリ(オルトエステル)、およびポリ(オルト炭酸)が含まれる。持続放出組成物はまたリポソームを含んでもよく、リポソームは当技術分野で公知のいくつかの方法のいずれかによって調製することができる(例えば、Eppstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 3688-92 (1985)を参照されたい)。担体自体またはその分解産物は、標的組織において非毒性であるべきであり、状態をさらに悪化すべきでない。これは、標的疾患の動物モデルにおいて、またはそのようなモデルが利用できない場合には正常動物において、日常的なスクリーニングにより決定することができる。
持続放出のための組換えタンパク質のマイクロカプセル化は、ヒト成長ホルモン(rhGH)、インターフェロン-(rhIFN--)、インターロイキン-2、およびMN rgp120で行われ成功している。Johnson et al., Nat. Med., 2:795-799 (1996);Yasuda, Biomed. Ther., 27:1221-1223 (1993);Hora et al., Bio/Technologv. 8:755-758 (1990);Cleland, 「Design and Production of Single Immunization Vaccines Using Polylactide Polyglycolide Microsphere Systems」, Vaccine Design: The Subunit and Adjuvant Approach, Powell and Newman, eds, (Plenum Press: New York, 1995), pp. 439-462;WO 97/03692、WO 96/40072、WO 96/07399;および米国特許第5,654,010号。これらのタンパク質の持続放出製剤は、その生体適合性および広範囲の生物分解性特性に起因して、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)ポリマーを用いて開発された。PLGAの分解産物である乳酸およびグリコール酸は、ヒトの身体から速やかに除去され得る。さらに、このポリマーの分解性はその分子量および組成に依存する。Lewis, 「Controlled release of bioactive agents from lactide/glycolide polymer」, M. Chasin and R. Langer (Eds.), Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems (Marcel Dekker: New York, 1990), pp. 1-41。持続放出組成物のさらなる例には、例えば、EP 58,481A、米国特許第3,887,699号、EP 158,277A、カナダ特許第1176565号、U. Sidman et al., Biopolymers 22, 547 [1983]、R. Langer et al., Chem. Tech. 12, 98 [1982]、Sinha et al., J. Control. Release 90, 261 [2003]、Zhu et al., Nat. Biotechnol. 18, 24 [2000]、およびDai et al., Colloids Surf B Biointerfaces 41, 117 [2005]が含まれる。
生体接着ポリマーもまた、本開示の組成物中でのまたは組成物との使用に意図される。生体接着剤とは、長期間にわたり生体基質に接着することができる合成物質および天然物質である。例えば、カルボポールおよびポリカルボフィルはいずれも、ポリ(アクリル酸)の合成架橋誘導体である。天然物質に基づく生体接着送達系は、例えば、ヒアルロナンとしても知られるヒアルロン酸を含む。ヒアルロン酸は、D-グルクロン酸およびN-アセチル-D-グルコサミンの残基からなる天然ムコ多糖である。ヒアルロン酸は、結合組織、さらに滑液ならびに眼球の硝子体液および房水を含む、脊椎動物の細胞外組織基質に見出される。ヒアルロン酸のエステル化誘導体は、生体適合性かつ生分解性である、送達に使用するための微粒子を生成するために用いられている(例えば、Cortivo et al., Biomaterials (1991) 12:727-730;欧州特許出願公開第517,565号;WO 96/29998;Illum et al., J. Controlled Rel. (1994) 29:133-141を参照されたい)。本開示の組成物を含む例示的なヒアルロン酸は、ヒアルロン酸ポリマーに対してIL-1β結合抗体または断片が約0.1%〜約40% (w/w)という量のヒアルロン酸エステルポリマーを含む。
本開示にしたがって組成物を送達するために生分解性および非生分解性ポリマーマトリックスを用いることができ、このようなポリマーマトリックスは天然または合成ポリマーを含み得る。生分解性マトリックスが好ましい。放出が起こる時間はポリマーの選択に基づく。典型的に、数時間から3〜12ヵ月の期間にわたる放出が最も望ましい。生分解性送達系を形成するために使用できる例示的な合成ポリマーには、乳酸とグリコール酸のポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリ-ビニルハロゲン化物、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリ無水物、ポリウレタン、およびそれらの共重合体、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、アクリルエステルとメタクリルエステルのポリマー、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ-プロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシルエチルセルロース、三酢酸セルロース、硫酸セルロースナトリウム塩、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、ポリ(アクリル酸オクタデシル)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ならびにポリビニルピロリドンが含まれる。例示的な天然ポリマーには、アルギン酸ならびにデキストランおよびセルロースを含むその他の多糖類、コラーゲン、その化学的誘導体(例えばアルキル、アルキレンといった化学基の置換、付加、水酸化、酸化、および当業者により日常的に行われるその他の修飾)、アルブミンおよびその他の親水性タンパク質、ゼインならびにその他のプロラミン類および疎水性タンパク質、それらの共重合体および混合物が含まれる。一般に、これらの物質は、インビボにおいて酵素的加水分解または水への曝露によって、表面浸食またはバルク浸食により分解する。ポリマーは任意に、水中でその重量の約90%まで吸収し得るヒドロゲル(例えば、WO 04/009664、WO 05/087201、Sawhney, et al., Macromolecules, 1993, 26, 581-587を参照されたい)の形態であり、さらに、任意に多価イオンまたはその他のポリマーと架橋されている。
送達系にはまた、コレステロール、コレステロールエステルなどのステロール、ならびに脂肪酸、またはモノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドなどの中性脂肪を含む脂質である非ポリマー系;ヒドロゲル放出系;シラスティック系;ペプチドに基づく系;ワックスコーティング;従来の結合剤および賦形剤を用いる圧縮錠剤;部分的に融解した植込錠などが含まれる。具体例には、これらに限定されないが、(a) 米国特許第4,452,775号、第4,675,189号、および第5,736,152号に記載されているような、産物がマトリックスに収まる形態で含まれている浸食系、ならびに(b) 米国特許第3,854,480号、第5,133,974号、および第5,407,686号に記載されているような、産物が制御された速度でポリマーから浸透する拡散系が含まれる。産物を含むリポソームは、例えば(DE 3,218,121;Epstein et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 3688-3692 (1985);Hwang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 4030-4034 (1980);EP 52,322;EP 36,676;EP 88,046;EP 143,949;EP 142,641;日本国特許出願第83-118008号;米国特許第4,485,045号および第4,544,545号;ならびにEP 102,324)などの公知の方法によって調製することができる。
IL-1β結合抗体または抗体断片を含む薬学的組成物は、例えば乾燥粉末としてなど、吸入用に製剤化することができる。吸入用溶液を、エアロゾル送達のための液化噴霧剤中に製剤化することもできる。さらなる別の製剤では、溶液が噴霧され得る。肺投与のためのさらなる薬学的組成物には、例えば、化学修飾されたタンパク質の肺送達について開示しているPCT出願公報WO 94/20069に記載されているものが含まれる。肺送達するためには、粒子の大きさは、遠位肺への送達に適したものでなければならない。例えば、粒子の大きさは1μm〜5μmであってよいが、各粒子がかなり多孔性である場合には、より大きい粒子を用いることも可能である。
本開示のIL-1β結合抗体または抗体断片を含む特定の製剤は、経口投与することができる。この様式で投与する製剤は、錠剤およびカプセルなどの固体剤形の配合に通例用いられる担体を伴いまたは伴わずに製剤化することができる。例えば、カプセルは、生物学的利用能が最大となり、全身移行前の分解が最小限に抑えられる時点で、消化管の所定の箇所において製剤の活性部分を放出するように設計することができる。選択的結合剤の吸収を促進するために、さらなる薬剤を含めることができる。希釈剤、香味剤、低融点ワックス、植物油、潤滑剤、懸濁剤、錠剤崩壊剤、および結合剤を用いることもできる。
別の調製物は、錠剤の製造に適した非毒性添加剤との混合物中に、本発明のIL-1β結合抗体または抗体断片の有効量を含み得る。錠剤を滅菌水または別の適切な媒体中に溶解することにより、溶液を単位剤形として調製することができる。適切な賦形剤には、これらに限定されないが、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムもしくは炭酸水素ナトリウム、ラクトース、またはリン酸カルシウムなどの不活性希釈剤;またはデンプン、ゼラチン、もしくはアカシアなどの結合剤;またはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、もしくはタルクなどの潤滑剤が含まれる。
適切なおよび/または好ましい薬学的組成物は、意図する投与経路、送達形式、および所望の投与量に応じて、本開示および製剤化技術の一般的知識を考慮して決定することができる。投与様式にかかわらず、患者の体重、体表面積、または臓器の大きさに従って有効量を計算することもできる。本明細書中に記載の製剤をそれぞれ含む治療に適した投与量を決定するための計算のさらなる微調整は、当技術分野において日常的に行われ、これは当技術分野において日常的に行われる仕事の範囲内である。適切な用量-応答データを用いて、適切な投薬量を確認することができる。
本開示に照らしてさらなる製剤が明らかになると考えられ、これには、1つまたは複数の他の治療薬と組み合わせて、本発明のIL-1β結合抗体および断片を含む製剤が含まれる。例えば、いくつかの製剤では、本発明のIL-1β結合抗体、抗体断片、核酸、またはベクターを、IL-1シグナル伝達経路の第2のインヒビターと共に製剤化する。代表的な第2のインヒビターには、これらに限定されないが、例えばUS 6899878、US 2003022869、US 20060094663、US 20050186615、US 20030166069、WO/04022718、WO/05084696、WO/05019259に記載されているような抗体、抗体断片、ペプチド、ポリペプチド、化合物、核酸、ベクター、および薬学的組成物が含まれる。例えば、組成物は、別のIL-1β結合抗体、断片、またはそのような抗体もしくは断片をコードする核酸もしくはベクターと組み合わせて、本発明のIL-1β結合抗体、抗体断片、核酸、またはベクターを含み得る。
薬学的組成物は、他の活性薬剤と組み合わせて、IL-1β結合抗体または断片を含み得る。このような組み合わせは、意図した目的に有用なものである。本発明の一部である組み合わせは、例えば本明細書に記載するようなIL-1β抗体および断片と、少なくとも1つの付加的薬剤であってよい。以下に記載する、組み合わせて使用できる活性薬剤の例は、例示を目的としており、限定を意図するものではない。組み合わせはまた、形成された組成物がその意図する機能を果たし得る組み合わせである場合には、2つ以上の付加的薬剤、例えば2つまたは3つの付加的薬剤を含み得る。
本発明は、1つまたは複数の他の活性薬剤を含む薬学的組成物を、IL-1β結合抗体または断片と別々に投与することができ、そのような別々の投与は、例えば同じ日または別の日など、同じ時点または異なる時点で実施できることをさらに意図する。他の活性薬剤の投与は、当技術分野で公知の標準的な医療行為に従ってよく、または本明細書に開示するようなIL-1β結合抗体または断片の投与と併用する場合には、投与を変更することができる(例えば、間隔の延長、投与量の低減、開始の遅延)。
本抗体または断片に付随する活性薬剤または組み合わせには、インドメタシン、アスピリン、イブプロフェン、および他のプロピオン酸誘導体(アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブクロクス酸、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルプロフェン、フルルビプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸、およびチオキサプロフェン)、酢酸誘導体(インドメタシン、アセメタシン、アルクロフェナック、クリダナク、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、フェンクロジン酸、フェンチアザク、フイロフェナク、イブフェナク、イソキセパック、オキシピナク、スリンダク、チオピナク、トルメチン、ジドメタシン、およびゾメピラック)、フェナム酸誘導体(フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸、およびトルフェナム酸)、ビフェニルカルボン酸誘導体(ジフルニサルおよびフルフェニサール)、オキシカム(イソキシカム、ピロキシカム、スドキシカム、およびテノキシカム)、サリチル酸(アセチルサリチル酸、スルファサラジン)、ならびにピラゾロン(アパゾン、ベズピペリロン、フェプラゾン、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾン、フェニルブタゾン)などの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が含まれる。他の組み合わせは、メトトレキセート、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)インヒビター、抗TNF剤(たとえば、アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ)並びに抗IL-1剤、抗IL-15剤、抗IL-18剤、及び抗IL-21剤を含む。組み合わせるためのその他の活性薬剤には、プレドニゾロン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、またはヒドロコルチゾンなどのステロイドが含まれる。本抗体および断片と組み合わせて患者を治療する場合に必要なステロイド用量が減少することによって、ステロイドの1つまたは複数の副作用が軽減され得るまたはさらには除去され得るために、そのような組み合わせは特に有利であると考えられる。
本発明に従って対象に投与する抗IL-1β抗体または断片を、例えば上記の活性薬剤のいずれかなどの少なくとも1つの付加的活性薬剤による治療と併用して投与できることがさらに意図される。1つの態様では、少なくとも1つの活性薬剤による治療を維持する。別の態様では、IL-1β抗体治療(例えば、抗IL-1β抗体または断片による)を一定の投与計画で維持している間、少なくとも1つの活性薬剤による治療を減らすかまたは中止(例えば、対象が安定している場合)する。別の態様では、少なくとも1つの活性薬剤による治療を減らすかまたは中止し(例えば、対象が安定している場合)、抗IL-1β抗体または断片による治療も減らす(例えば、用量の低減、投薬頻度の低減、治療計画の短縮)。別の態様では、少なくとも1つの活性薬剤による治療を減らすかまたは中止し(例えば、対象が安定している場合)、抗IL-1β抗体または断片による治療を増やす(例えば、用量の増加、投薬頻度の増加、治療計画の延長)。さらに別の態様では、少なくとも1つの活性薬剤による治療を維持し、抗IL-1β抗体または断片による治療を減らすかまたは中止する(例えば、用量の低減、投薬頻度の低減、治療計画の短縮)。さらに別の態様では、少なくとも1つの活性薬剤による治療および抗IL-1β抗体または断片による治療を減らすかまたは中止する(例えば、用量の低減、投薬頻度の低減、治療計画の短縮)。
本願において使用される薬学的組成物は、IL-1β結合抗体または断片の治療的有効量または予防的有効量を含み得る。治療的有効量とは、必要な投与量および期間で、所望の治療結果を達成するのに有効な量を指す。抗体または抗体部分の治療的有効量は、個体の病状、年齢、性別、および体重などの要因、ならびに個体において所望の応答を誘発する抗体または抗体部分の能力に応じて異なり得る。治療的有効量とはまた、治療上有益な効果が、抗体または抗体部分のいかなる毒性または有害効果も上回るものでもある。予防的有効量とは、必要な投与量および期間で、所望の予防結果を達成するのに有効な量を指す。
IL-1β結合抗体または断片を含む薬学的組成物の治療的または予防的有効量は、例えば、組成物を用いる対象となる徴候などの治療目的、投与経路、および対象の状態に依存する。薬学的組成物は、IL-1関連状態を治療するために、治療的または予防的有効量で投与する。
使用方法
本明細書に提供するような抗IL-1β抗体は、対象における関節リウマチの治療および/または予防のために用いることができる。そのような方法は、関節リウマチに罹患している哺乳動物対象(例えば、ヒト)を治療するため、またはリスクのある対象におけるそれの発生を予防するために用いることができる。そのような方法はまた、新生児期発症多臓器性炎症性疾患(NOMID/CINCA)、全身型若年性特発性関節炎、変形性関節症、アテローム性動脈硬化症、重症筋無力症、CIAS1関連周期熱症候群(CIAS1 Associated Periodic Syndromes)(CAPS)、スチル病、またはマックル-ウェルズ症候群の治療および/または予防のために用いることもできる。
本明細書で使用する「予防」、「予防する」、「予防すること」、「抑制」、「抑制する」、「抑制すること」、「阻害する」、および「阻害」という用語は、疾患状態または病態の臨床所見の発生を一時的にまたは永久に予防する、抑制する、または低減する様式で(例えば、疾患状態または病態の臨床症状の発生の前に)開始する行動過程(化合物または薬学的組成物の投与など)を指す。そのような予防、抑制、または低減は、絶対的に有用である必要はない。
本明細書で使用する「治療」、「治療する」、および「治療すること」という用語は、疾患状態または病態の臨床所見または進行を一時的にまたは永久に解消する、軽減する、抑制する、または改善するために、疾患状態または病態の臨床症状の発生後に開始する行動過程(化合物または薬学的組成物の投与など)を指す。そのような治療は、絶対的に有用である必要はない。
本明細書で使用する「治療を必要とする」という用語は、患者が治療を必要とするかまたは治療から恩恵を受けるという、介護者によってなされた判断を指す。この判断は、介護者の専門知識の域にあるが、本開示の方法または化合物によって治療可能な病態の結果として患者が病気であるまたは病気になるという知識を含む様々な要因に基づいてなされる。
本明細書で使用する「予防を必要とする」という用語は、患者が予防を必要とするかまたは予防から恩恵を受けるという、介護者によってなされた判断を指す。この判断は、介護者の専門知識の域にあるが、本開示の方法または化合物によって予防可能な病態の結果として患者が病気になるかまたは病気になる恐れがあるという知識を含む様々な要因に基づいてなされる。
本明細書で使用する「治療有効量」という用語は、患者に投与した場合に(例えば、1回または複数回用量として)、疾患状態または病態の任意の症状、局面、または特徴に任意の検出可能なプラスの効果を及ぼし得る、単独のまたは薬学的組成物の一部としての化合物(例えば、抗体)の量を指す。そのような効果は、絶対的に有益である必要はない。
1つの態様では、関節リウマチを有する対象に抗IL-1β抗体または断片を投与し、対象はまた、疾患、病態、または合併症の少なくとも1つの他の医学的に許容される治療(例えば、薬物療法、薬物、治療薬、活性薬剤)の投与を受ける。別の態様では、疾患、病態、または合併症の少なくとも1つの他の医学的に許容される治療を減らすか中止し(対象が安定している場合)、抗IL-1β抗体または断片による治療を一定の投薬計画で維持する。別の態様では、疾患、病態、または合併症の少なくとも1つの他の医学的に許容される治療を減らすかまたは中止し(例えば、対象が安定している場合)、抗IL-1β抗体または断片による治療も減らす(例えば、用量の低減、投薬頻度の低減、治療計画の短縮)。別の態様では、疾患、病態、または合併症の少なくとも1つの他の医学的に許容される治療を減らすかまたは中止し(例えば、対象が安定している場合)、抗IL-1β抗体または断片による治療を増やす(例えば、用量の増加、投薬頻度の増加、治療計画の延長)。さらに別の態様では、疾患、病態、または合併症の少なくとも1つの他の医学的に許容される治療を維持し、抗IL-1β抗体または断片による治療を減らすかまたは中止する(例えば、用量の低減、投薬頻度の低減、治療計画の短縮)。さらに別の態様では、疾患、病態、または合併症の少なくとも1つの他の医学的に許容される治療および抗IL-1β抗体または断片による治療を減らすかまたは中止する(例えば、用量の低減、投薬頻度の低減、治療計画の短縮)。
関節リウマチを治療または予防する好ましい方法において、抗IL-1β抗体またはその断片は、上記した用量回数、用量当たりの量、および/または投薬間の間隔に従って対象に投与する。または、抗IL-1β抗体または断片は、1回または複数回のその後の用量よりも少ない上記の量の1回または複数回の初回用量として投与することができる。より少ない量の初回用量を提供することにより、治療の有効性および/または許容性を増強することができる。例えば、本開示の非限定的な態様では、抗体または断片の量≦1 mg/kg(例えば、≦0.9 mg/kg、≦0.8 mg/kg、≦0.7 mg/kg、≦0.6 mg/kg、≦0.5 mg/kg、≦0.4 mg/kg、≦0.3 mg/kg、≦0.2 mg/kg、≦0.1 mg/kg、≦0.05 mg/kg、≦0.03 mg/kg、≦0.01 mg/kg)の1回または複数回の初回用量(例えば、1、2、3、4、5回)を投与し、続いて初回用量よりも多い量(例えば、≧0.01 mg/kg、≧0.03 mg/kg、≧0.1 mg/kg、≧0.3 mg/kg、≧0.5 mg/kg、≧0.6 mg/kg、≧0.7 mg/kg、≧0.8 mg/kg、≧0.9 mg/kg、≧1.0 mg/kg、≧1.5 mg/kg、≧2 mg/kg、≧2.5 mg/kg、≧3 mg/kg、≧3.5 mg/kg、≧4 mg/kg、≧4.5 mg/kg、≧5 mg/kg)の1回または複数回のその後の用量を投与することができる。本開示は、抗体または断片の各用量を、一または複数部位に投与できることを意図する。
本開示による疾患または病態を治療または予防する方法は、抗体または断片の投与に所定のまたは「日常的な」スケジュールを使用することができる。本明細書で使用する日常的なスケジュールとは、用量投与間の所定の指定された期間を指す。日常的なスケジュールは、スケジュールが予め定められている限り、同じ長さまたは異なる長さの期間を包含し得る。適切なスケジュールが特定の日における投与を含むことが前もって決定されている限り、任意の特定の組み合わせが日常的なスケジュールによって網羅されると考えられる。
本開示はさらに、本明細書において提供する方法に従って使用するIL-1β抗体または断片を、より伝統的な治療法および薬学的組成物(例えば、活性薬剤)と併用して投与できることをさらに意図する。そのような組成物には、例えば、疾患適応症に対する任意の承認された治療法が含まれうる。特定の態様において、本開示に従って使用する抗体および断片は、付加的治療法または薬学的組成物の必要性を防ぐかまたは遅延させることができる。他の態様において、抗体または断片は、付加的治療法または薬学的組成物の量、頻度または継続期間を減少させることができる。
本開示による疾患または病態を治療または予防する方法は、1回または複数回のその後の用量をいつ投与すべきかを決定するための手段としての疾患症状の存在および/または本明細書における評価のいずれかにおける変化に基づいた、抗体または断片の投与のためのスケジュールを使用することができる。同様に、このアプローチは、以前の用量の効果に基づいて、その後の用量を増加させるべきかまたは減少させるべきかを決定するための手段として用いることもできる。
患者におけるそのような疾患もしくは病態の、または代替的にはそのような疾患もしくは病態を発症するリスクの診断は、当技術分野で公知の標準的な医療行為に従いうる。抗IL-1β抗体または断片の投与後の、関節リウマチに及ぼす治療効果または予防効果の臨床的評価は当技術分野で周知であり、本開示の方法の有効性をモニターする手段として使用することができる。例えば、RAの治療に対する反応は、例えば、病状を正確に見積もるための手段としてのACRコア反応基準のような臨床的評価に基づいて評価することができる。ACRコア反応基準は以下の構成要素を含む:圧痛関節数および腫脹関節数、対象による疼痛評価、対象による全般的評価、医師による全般的評価、健康評価質問票(Health Assessment Questionnaire)[HAQ]を用いた対象の自己評価による身体障害度、および急性期反応物質(ESRまたはCRP)。ACRコア反応基準の構成要素は、ACR反応基準(すなわち、ACR20、ACR50およびACR70)および疾患活動度スコア(DAS)28-CRPの両方を用いて分析することができる。1つの態様においては、治療の効力を、関節痛の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または約100%の軽減によって評価する。もう1つの態様において、関節痛の軽減は、約48時間未満、約36時間未満、約24時間未満で起こる。
治療の効力を評価するために、1つまたは複数の二次エンドポイント、例えば、C反応性タンパク質(CRP)レベルおよび/または赤血球沈降速度(ESR)などを決定することもできる。CRPレベルの0.2mg/L以上、0.4mg/L以上、0.6mg/L以上、0.8mg/L以上、1.0mg/L以上、1.4mg/L以上、1.8mg/L以上、2.2mg/L以上、2.6mg/L以上、3.0mg/Lの低下;または治療前レベルからの20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超の低下は、治療効果を指し示す。ESRの治療前レベルからの20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、90%超、95%超、98%超の低下は、治療効果を指し示す。
以下の実施例は、本開示の実施をさらに説明することを単に意図しており、その範囲をいかようにも限定するものと解釈されるべきでない。本明細書内に引用するすべての特許および科学文献の開示は、参照により全体として本明細書に明白に組み入れられる。
実施例1
読み取り値としてIL-8のIL-1誘導性産生を使用するインビトロの細胞ベースのアッセイにおける高親和性IL-1β抗体を用いたIL-1βの阻害
IL-1β特異的抗体の阻害効果を、IL-1経路の非抗体阻害薬、組換えIL-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)であるKineret(登録商標)(アナキンラ)と比較した。健常ドナーから、新鮮なヘパリン処理末梢血を採取した。全血180μlを96ウェルプレートにプレーティングし、種々の濃度の抗体AB7(US出願番号11/472,813, WO2007/002261)および100 pM rhIL-1βと共にインキュベートした。Kineret(登録商標)処理試料に関しては、Kineret(登録商標)とrhIL-1βを1:1で混合してから、血液と混合した。試料を37℃、5% CO2にて6時間インキュベートした。次いで、全血を2.5% Triton X-100 50μlで溶解した。清澄化溶解液中のインターロイキン-8(IL-8)の濃度を、製造業者の説明書に従ってELISA(QuantikineヒトIL-8 ELISAキット、R&D Systems)によりアッセイした。AB7およびKineret(登録商標)処理試料中のIL-8濃度を、抗KLH対照で処理した対照試料と比較した。結果を図1に示し、表6に要約する。IC50は、IL-1β刺激によって放出されるIL-8の50%を阻害するのに必要な抗体の濃度である。
これらの結果から、IL-8のIL-1β刺激性放出の阻害によって測定される、AB7のインビトロでの効力が実証される。Kineret(登録商標)と比較してより高い効力を示すこれらの結果から、抗体がインビボにおいてIL-1β阻害効果を有することが示唆される。
実施例2
IL-6のIL-1β刺激性放出に及ぼす影響によって測定する、IL-1β特異的抗体を用いたヒトIL-1βの生物活性のインビボ阻害
AB7のインビボ有効性を確認するため、マウスにおいて、ヒトIL-1βの生物活性を阻止するその能力について試験した。アッセイの詳細は、Economides et al., Nature Med., 9: 47-52 (2003)に記載されている。簡潔に説明すると、雄C57/Bl6マウス(Jackson Laboratory、メイン州、バーハーバー)に、滴定量のAB7、別のIL-1β抗体、AB5、または対照抗体を腹腔内注射した。抗体注射の24時間後に、マウスに1μg/kg用量の組換えヒトIL-1β(rhIL-1β)(PeproTech Inc.、ニュージャージー州、ロッキーヒル)を皮下注射した。rhIL-1β注射の2時間後(IL-6のピーク応答時間)に、マウスを屠殺し、血液を回収して血清用に処理した。血清IL-6レベルを、製造業者のプロトコールに従ってELISA(BD Pharmingen、ニュージャージー州、フランクリンレイクス)によりアッセイした。対照動物血清において検出されたIL-6に対する実験動物血清中に検出されたIL-6の比(100を乗じる)から、阻害率を算出した。
結果を図2Aに示す。IL-1βのインビボ活性を阻害する能力は、血清中のIL-1β刺激性IL-6レベルに応じて評価した。図2Aによって示されるように、AB7およびAB5抗体は、ヒトIL-1βのインビボ活性の阻害に関して効果的であった。これらの結果から、AB7またはAB5の単回注射がIL-1β刺激に対する全身作用を阻止し得ること、およびそのような抗体がインビボにおけるIL-1β活性の阻害に有用であることも示される。
マウスIL-1βをインビボで中和するAB7の能力をさらに実証して、マウス疾患モデルにおけるこの抗体の使用を支持するために、同様の実験を行った。AB7が、マウスIL-1βに対する親和性よりも約10,000倍高いヒトIL-1βに対する親和性、およびマウスIL-1βに対するよりも約1,000倍高い、D10.G4.1アッセイにおけるインビトロ効力を有することが決定されていた。IL-6読み取り値を用いるC57BL/6マウスモデルにおいて、マウスにAB7(3または300 ug)またはPBS媒体対照をi.p.注射し、24時間後にヒト(図2B、パネルA)またはマウス(図2B、パネルB)IL-1β(20 ng)をs.c.注射した。2時間後に血液を採取し、血清試料をELISAによりIL-6レベルについて解析した。これらのデータから、3μgでの、ヒトIL-1βによって誘導されるIL-6レベルの最大抑制(約75%)(パネルA)が示される一方、マウスIL-1βによって誘導されるIL-6レベルの最大下抑制(約50%)が、300μgで実証された(パネルB)。これらの結果は、AB7抗体の、マウスIL-1βと比較してヒトIL-1βに対するより高い親和性およびインビトロ効力の知見と一致する。加えて、データから、この抗体は、抗体がはるかに優れた親和性および効力を有する場合のヒト対象の治療に必要とされるよりも適切に高い用量で、マウスインビボ疾患モデルで使用できることが示される。マウスIL-1βに対して有意により低い親和性およびインビトロ効力を示さない、例えば本明細書に開示するおよび/または引用する他の抗体などの他のIL-1β抗体の場合には、マウスモデルにおいて高いレベルへ用量を調節することは必要でないと考えられる。
実施例3
抗IL-1β抗体の薬物動態
薬物動態プロファイルを調べるため、AB7と命名されたIL-1β抗体を、0.1、1.0、もしくは10 mg/kg用量(それぞれ群1、2、および3)での尾静脈への静脈内(IV)ボーラスとして、または1.0 mg/kgでの肩甲骨間の皮下(SC)用量として(群4)、成体雄ラットに投与した。投薬後91日までの特定の時点で、頸静脈カニューレまたは後眼窩洞を介して血液試料を回収した。血液試料を遠心分離して、血清を得た。以下の通りにアルカリフォスファターゼベースのELISAアッセイ法を用いて、試料を抗IL-1β抗体の濃度について解析した。
IL-1β(Preprotech)をPBSで0.5μg/mLに希釈し、この溶液50μLをNunc-Immuno Maxisorpマイクロタイタープレート(VWR)のウェルに添加し、2〜8℃で一晩インキュベートした。抗原溶液を除去し、ブロッキング緩衝液[0.05% Tween 20を含む1×PBS中の1%ウシ血清アルブミン(BSA)] 200μLを全ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。ブロッキング後、ウェルを洗浄緩衝液(0.05% Tween 20を含む1×PBS)で3回洗浄した。標準物質、試料、および対照を、試料希釈液(1% BSAおよび0.05% Tween 20を含む1×PBS中の25%ラット血清)で希釈した。抗IL-1β抗体標準物質溶液は、2000〜0.24 ng/mlの系列2倍希釈物として調製した。標準物質、試料、および対照の各複製物および希釈物(50μL)を、ブロッキングしたマイクロタイタープレートに移し、37℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、ウェルを洗浄緩衝液で3回洗浄した。アルカリホスファターゼ結合ヤギ抗ヒトIgG(H+L)抗体(Southern Biotech Associates Inc、アラバマ州、バーミングハム)をコンジュゲート希釈液(0.05% Tween 20を含む1×PBS中の1% BSA)で1/1000に希釈した。希釈したコンジュゲート50μLをブランクウェルを除く全ウェルに添加し、ブランクウェルにはコンジュゲート希釈液50μLのみを添加した。プレートを37℃で1時間インキュベートした後、全ウェルを洗浄緩衝液で3回、および脱イオン水で3回洗浄した。基質p-ニトロフェニルリン酸(10%ジエタノールアミン緩衝液、pH 9.8中の1 mg/mL)を全ウェルに添加し、室温で1時間かけて発色を進行させ、その後1 N NaOH 50μLを添加した反応を停止した。SPECTRAmax M2プレートリーダー(Molecular Devices、カリフォルニア州、メンロパーク)を使用して405 nmの吸光度を決定し、次いでA405対ng/mL抗体標準物質として検量線をプロットした。回帰分析を行い、検量線からの内挿により、試料および対照について濃度を決定した。定量の限界は40 ng/mLであった。
図3に示すように、IV用量群において、血清濃度は二相性(bi-exponentially)の指数関数的に低下した。個々の動物データにおいてコンパートメント解析を行い、得られた薬物動態パラメータを、RAHA応答が生じた動物を除いて各用量群について平均化した。抗IL-1β抗体の血清レベルは、平均α相半減期0.189±0.094〜0.429±0.043日(4.54〜10.3時間)およびβ相半減期9.68±0.70〜14.5±1.7日で低下した。AB7の1 mg/kg皮下用量の投与を受けたラットでは、血清レベルは2〜3日目までに4.26±0.065μg/mLのピークまで増加し、半減期2.59±0.25日で低下した。
静脈内(IV)単回ボーラス注射として抗IL-1β抗体を投与されたカニクイザルにおける薬物動態についても測定した。単回用量0.3および3 mg/kg群では、血清抗IL-1β抗体レベルは、平均α相半減期9.40±2.00時間およびその後のβ相半減期13.3±1.0日で低下した(図3)。30 mg/kgの単回IV注射の投与を受けたカニクイザルでは、抗体の血清レベルは、α相半減期10.9±3.2時間およびその後のβ相半減期7.54±1.79日で、より急速に低下した。5カ月間隔で投与した0.1、0.3、1、および10 mg/kg用量の血漿濃度-時間プロファイルのモデリングも実施し、これを図4に示す。
実施例4
IL-1β抗体によるヒト全血におけるサイトカイン産生の阻害
疾患または疾患の治療中に血中のサイトカインを測定することは、疾患の重症度または治療に対する応答を決定するのに有用であり得る。通常、サイトカインレベルは血清中で測定するが、本方法は必ずしも総サイトカインを測定しない。多くのサイトカインは細胞の内部(細胞内)に存在し得る。加えて、細胞がサイトカインを産生する能力は、循環サイトカインのレベルよりも有用な情報であると考えられる。
全血を刺激する方法を用いて、サイトカイン産生および抗IL-1β抗体による処理の効果を決定した。滅菌ヘパリンチューブ中に血液を採取し、次いで全血250 ulを、以下の通りに準備した各4 mLオレンジトップCorning滅菌クリオチューブに添加した。
対照系列
全チューブにRPMI 550 ulを予め満たした。チューブ1(対照)にRPMI 200 ulを添加し、チューブ2〜10に100 ulのさらなるRPMIを添加した。チューブ2〜10のそれぞれに、抗IL-1β抗体(AB7)の希釈物100 ulを添加した。
試験系列
上記に詳述した通りに、同様の抗体希釈物系列を準備した。
全チューブを10秒間ボルテックスすることにより十分に混合した。次に対照系列チューブA1〜10にRPMI100 ulをさらに添加し、10秒間ボルテックスし、ねじ蓋をしっかりと閉めてチューブをインキュベーターに入れた。試験系列チューブB1〜10に、熱殺菌した表皮ブドウ球菌 100 ul(保存液を最終濃度1:1000にすると、細菌:白血球比は10:1となる)を添加し、次いでチューブを10秒間ボルテックスし、蓋を閉めて37℃のインキュベーターに入れた。24時間インキュベートした後、培養物をTriton X(最終0.5%)ですべて溶解して細胞内容物を放出させ、溶解物を凍結した。全血培養物を溶解した後、チューブを凍結融解サイクルに供し、ヒトTNFα、IL-6、IFNγ、IL-8、IL-1α、IL-1Ra、およびIL-1βの標準的なサイトカインELISAアッセイ法(R&D Systems、ミネソタ州、ミネアポリス)により、サイトカインレベルを測定する。
無菌培養液および抗体(表示の場合)のみを含む対照系列チューブで測定されたサイトカインは、刺激の自発性レベルを反映する。健常対象では、24時間のインキュベーション後に測定した場合、非常に低レベルの種々のサイトカインが認められる。未治療の疾患を有する患者では、レベルはより高くなり得る。試験系列のチューブは、いくつかのサイトカインの産生を促進する規定量の熱殺菌表皮ブドウ球菌をさらに含んだ。抗IL-1β抗体処理が効果的であるならば、これはサイトカイン産生の低下によって反映される。
図5に示すように、高親和性抗IL-1β抗体AB7は、ヒト血液におけるIL-1β産生を阻害する上で非常に効果的であった。3つのヒト試料を平均すると、抗体は、表皮ブドウ球菌によって誘導されるIL-1βの産生を0.1 pMでは50%、および3 pMでは75%阻害した。100 pMでは、阻害は100%であった。インターフェロンγ(IFNγ)は表皮ブドウ球菌によって誘導され、AB7は表皮ブドウ球菌によって誘導されるIFNγを100 pMで75%阻害した。
実施例5
ヒトへの単回静脈内投与後の抗IL-1β抗体の薬物動態
前述の特性を有するIL-1β抗体の薬物動態が、ヒトでの第I相臨床試験において示された。具体的には、二重盲検プラセボ対照ヒト臨床試験を2型糖尿病患者において実施し、AB7と命名されたIL-1β抗体(上記)を0.01mg/kgの用量で一定速度での静脈内注入を介して投与された5人の患者から初めに入手したデータを薬物動態の検討に用いた。
試験第1日に、抗体を、30分間にわたる一定速度での静脈内注入を介して投与した。有害事象、身体診察、生命徴候、臨床検査(例えば、血液化学、血液学、尿分析)、血漿サイトカインレベルおよび心電図(ECG)の記録を含む安全性評価を、当技術分野において公知の標準的な医療行為を用いて実施した。IL-1β抗体レベル(薬物動態)を評価するために、血液試料を薬物投与の前、ならびに投与後の第0日、1日、2日、3日、4日、7日、9±1日、11±1日、14±1日、21±2日、28±2日、42±3日および56±3日に採取した。用量0.01mg/kgの単回IV投与を受けた対象におけるIL-1β抗体の薬物動態の予備分析により、消失半減期が22日で、クリアランスが2.9mL/日/kgで、中央コンパートメントの分布容積が50mL/kgで血清容積と極めて類似しているという血清中濃度-時間プロフィールが示された(図6)。
0.01、0.03、0.1、0.3または1.0mg/kg用量群にわたる対象におけるAB7(XOMA 052)の単回用量のIV投与後の薬物動態データの中間解析により、終末半減期が22日で、クリアランスが2.54mL/日/kgで、中心コンパートメントの分布容積が血清容積とほぼ同じ41.3mL/kgであるという血清濃度-時間プロファイルがさらに裏づけられた(図7)。
同様に、試料を単回用量SC投与群についても分析した。図2に示すように、0.03、0.1および0.3mg/kg用量レベルでの抗体の投与は、終末半減期が22.7日で、クリアランスが2.4mL/日/kgで、中心コンパートメントの分布容積が40.7mL/kgであるというプロファイルをもたらした。
実施例6
ヒト対象におけるCRPに対するIL-1β抗体の効果
PK試料と同じ時点で、ヒト対象における抗体の活性を明らかにするために、血清中のC反応性タンパク質(CRP)も測定した。XOMA 052の単回IV投与は、多数の疾患に付随する全身性炎症の標準的な尺度の1つであり、心臓リスクの指標の1つでもある超高感度C反応性タンパク質(usCRP)レベルを、投与を行った用量群のすべてにおいてプラセボと比較して低下させた。図8に示すように、XOMA 052の単回投与から28日後の時点で、usCRPの低下率の中央値は0.01、0.03、0.1、0.3および1.0mg/kg用量群でそれぞれ33、46、47、36および26パーセントであり、これに対してプラセボでは4パーセントであった。用量0.01mg/kgでの抗体の単回投与によって生じた活性は、さらに低用量でも用いうることを指し示している。
実施例7
RAのマウスモデルにおけるコラーゲン誘導関節炎からの防御
前述の特性を有するIL-1β抗体または断片を、RAの治療的処置および/または予防のために対象に投与することができる。具体的には、一例を挙げると、IL-1β抗体XOMA 052を、関節リウマチのマウスモデルであるコラーゲン誘導関節炎(CIA)の誘導を予防するその能力に関して検証した。雄性DBA/1マウスに対して、疾患誘導の前に、アイソタイプ対照抗体またはXOMA 052の腹腔内注射による処置を行った(第-1日)。抗体は第-1日から試験終了時(7〜8週)まで週2回投与した。
完全フロイントアジュバント中に乳化した100μgのウシII型コラーゲンの皮下免疫処置により、第0日にマウスにおいて疾患を誘導した。第21日に、不完全フロイントアジュバント中にある50μgのウシII型コラーゲンによる追加免疫処置の投与を行った。体重および疾患進行を週2回モニターした。表2に列記した基準を用いて、各足蹠(paw)に0〜4の疾患スコアを付与した。4つの足蹠すべての疾患スコアを加算することにより、0〜16の関節炎指数(arthritic index)を各動物個体に付与した。
(表2)CIA疾患スコア(CIA Disease Sore)
1mg/kg、5mg/kgおよび15mg/kgで投与したXOMA 052は、関節炎指数によって計測した罹患状態を有意に抑制した(図9)。平均関節炎スコアは、アイソタイプ対照に比して最大で67%抑制された(p<0.05、ANOVA後のテュキー検定)。0.3mg/kgで投与したXOMA 052は、疾患に対して、測定可能ではあるが統計学的に有意ではない効果を及ぼした。対照IgG2を投与したマウスの平均関節炎指数が10を上回る第52日の時点で、XOMA 052は1、5および15mg/kgの用量で疾患スコアを66%と有意に改善した(図10)。第-1日に開始して疾患を予防することに加えて(予防的投薬)、XOMA 052はまた、成立したCIAにおける関節炎も予防した(治療的投薬)。XOMA 052投与を症状の発症まで遅らせた場合にも、疾患スコアは依然として有意に低下した(図11A、11B)。
RAにおける炎症は破骨細胞形成および骨再吸収を誘導する。骨病態に対するXOMA 052の効果を評価するために、予防的CIA試験の終了時にマウスから下肢足蹠を採取した。放射線画像の分析により、XOMA 052は、CIAによって引き起こされる骨びらんおよび骨膜性骨増殖を予防しうることが示された(図12)。同じ足蹠をさらに処理し、切片をヘマトキシリン-フロキシン-サフラン(HPS)またはサフラニンOで染色した(図13)。アイソタイプ対照抗体を投与したマウス由来の足蹠は、関節炎性関節における広範な炎症性浸潤(図13B)および軟骨損失(図13E)を示した。これはXOMA 052の投与によって大半が予防された(図13C、13F)。
実施例8
関節リウマチの治療におけるIL-1β抗体の使用
前述の特性を有するIL-1β抗体または断片を、関節リウマチ(RA)の治療的処置および/または予防のために、対象(例えば、ヒト患者)に投与することができる。具体的には、一例を挙げると、IL-1β抗体の1つであるXOMA 052(上記)を、RAの徴候および症状を呈している患者の治療的処置のために用いる。RAに対するIL-1β抗体の安全性および有効性は、例えば、中等度ないし重度のRAの対象における以下のデザインの治験を含む、1つまたは複数のヒト臨床試験で実証される。
XOMA 052の安全性およびPKに関する二重盲検プラセボ対照用量漸増試験を、活動性で安定した中等度ないし重度のRAを有する対象において実施する。6例ずつの対象で構成される並行用量群(複数の実薬群および1つのプラセボ群)における対象を、以下の表に示した用量レベルでの被験薬(IL-1β抗体またはプラセボ)の単回IV注入を受けるように組み入れる。
すべての適格基準を満たす対象を組み入れ、用量群の1つに無作為割り付けし、第0日から被験薬(抗体またはプラセボ)の投薬を行う。例えば、1つの治験デザインでは、対象が、以下の7つの基準のうち4つが存在しなければならないとされる、RAに関するACR診断基準のすべてを満たすならば、彼らを含めることができる:
・朝のこわばりが1時間以上(最低でも6週間存在)
・以下の関節の3つまたはそれ以上の関節炎(最低でも6週間存在):右または左のPIP、MCP、手首、肘、膝、足首、MTP関節
・手首、MCPまたはPIP関節の関節炎(最低でも6週間存在)
・関節の対称性罹患(最低でも6週間存在)
・骨隆起部または伸筋表面上の、または関節近接領域内のリウマトイド結節
・血清リウマトイド因子が陽性
・罹患関節に局在または隣接するびらんまたは骨脱石灰化を含む放射線像の変化。
加えて、中等度ないし重度の疾患を有する患者は、以下のように定義される:
・少なくとも6つの圧痛関節および6つの腫脹関節(関節数28;補遺6参照)、ならびに
・ESR>28mm/hrまたはCRP>1.0mg/dL
または、抗体の安全性およびPKに関する二重盲検プラセボ対照用量漸増試験を、活動性で安定した中等度ないし重度のRA(例えば、上記と同様のもの)を有する対象において実施する。この試験は2つのパートを有する。
パート1では、9例の対象(6例が実薬、3例がプラセボ)が、0.3mg/kgで静脈内(IV)投与される被験薬の単回投与を受ける。パート2では、7例ずつの対象(5例が実薬、2例がプラセボ)で構成される3つの用量群が、この試験のパート1および他の裏づけ試験、例えば上記のものなどからのデータの検討後に決定された用量レベルでの被験薬の週1回のIV注入を4回受ける。パート2における開始用量は、パート1で投与した用量よりも低い。この試験に関する投薬レジメンは以下の表にまとめており、同様の試験を抗体のSC投与を用いて行うこともできる。
単回投与群(群A)における対象を組み入れて、第0日にIV投与を行い、追跡評価を第56日まで行う。安全性は、投与前および投与後の生命徴候の連続測定、臨床検査評価および有害臨床イベントの記録によって評価する。PKデータは定期的な時点で収集して分析する。用量群Aにおける最後の対象が第28日までの試験手順を完了した後に、用量群AにおけるXOMA 052を投与された対象のうち複数が用量規定毒性(DLT)を来さず、かつ、DSMBが臨床的に重大な安全性の問題を全く見いださなければ、DSMBはこの試験のパート2における3つの漸増IV用量を推奨するものとし、組み入れが始められる。
多回投与群(例えば、用量群B、CおよびD)における対象は、3つの逐次的に高くなる用量レベルのうち1つで、XOMA 052の週1回のIV注入を4回受ける。モニタリングはパート1と同様に進めるが、ただし、次に高い用量への漸増の前に、用量群における対象は、用量群における対象が用量規定毒性(DLT)を1例も来していないか、または1例が来しているかに応じて、それぞれ第35日または第49日までの試験手順を完了していなければならないものとする。多回投与群における対象は全員、第77日まで追跡評価を受けるものとする。パート1の場合と同じく、安全性は、投与前および投与後の生命徴候の連続測定、臨床検査評価および有害臨床イベントの記録によって評価する。PKデータはさまざまな時点で収集して分析する。
RAの対象における抗体投与の生物学的活性を評価するためには、CRPおよびESRを炎症マーカーとして測定し、医学的に認められている標準的なAmerican College of Rheumatology(ACR)コア反応基準を、投与後の病状を正確に見積もるための手段として用いる。ACRコア基準評価は、スクリーニング時ならびに第0日(投薬前)、7日、14日、21日、28日、42日および56日に行う。
RAの病状を評価するためのACRコア基準は、以下の評価を含む:
・圧痛関節数(28関節)
・腫脹関節数(28関節)
・対象による疼痛評価
・対象による全般的評価
・医師による全般的評価
・PROMIS HAQ(著作権)による対象の自己評価による身体障害度
・急性期反応物質(ESRまたはCRP)。
圧痛関節数および腫脹関節数は、標準的なフックス28(Fuchs 28)関節指数に基づく。対象による疼痛評価、対象による全般的評価、および医師 による全般的評価は、100mmの視覚的アナログ尺度を用いる。PROMIS HAQ(著作権)は、一般に認められている健康評価質問票である。急性期反応物質(ESRおよびCRP)はいずれも、第0日からの試験受診後のたびに評価する。
ACRコア基準の構成要素は、標準的なACR反応基準(すなわち、ACR20、ACR50およびACR70)ならびにDAS28-CRPの両方を用いて分析する。DAS(疾患活動度スコア)28計算法(calculator)は、関節リウマチの重症度および活動度を計測するために用いられる本来のDAS計算モデルの、妥当性が実証された簡略物である。この試験には、ESRの結果ではなくCRPの結果を計算に組み込む、DAS 28の一型(DAS28-CRP)を用いることができる。DAS28-CRPは、以下の4つの変数の加重スコアに基づく:
・(TEN28):28関節のうちの有痛関節数
・(SW28):28関節のうちの腫脹関節数
・(CRP):mg/L単位でのCRP測定値
・(GH):100mm視覚的アナログ尺度(VAS)での、対象による疾患活動度の全般的評価
DAS28-CRP法によって疾患活動度を判定するためには、臨床医が、有痛および/または腫脹関節の数をフックス28関節指数(補遺6参照)を用いて判定する。CRPレベルは臨床検査によって決定する。対象の疾患の一般的状態は、100mm VASを用いて評価する。続いて、これらの検査の結果を、以下の式に入力する:
0.56*sqrt(TEN28)+0.28*sqrt(SW28)+0.36*Ln(CRP+1)+0.014*GH+0.96
式中、Sqrt=平方根
TEN28=有痛関節数
SW28=腫脹関節数
Ln=自然対数
CRP=mg/L単位でのCRP測定値
GH=100mm VASでの、対象による疾患活動度の全般的評価
出典:http://www.das-score.nl/www.das-score.nl/DAS_CRP.htmlからの式
DAS28-CRPの結果は1から10までの範囲にわたり、2.6未満のスコアは緩解を指し示し、2.6〜3.2の間のスコアは疾患活動度が低レベルであることを表し、5.1を上回るスコアは高い疾患活動度を指し示す。
さらに、全血試料を収集し、TNFα、IL-6、IFNγ、IL-8およびIL-1αを非限定的に含むサイトカインに関してアッセイする。
0.3mg/kgの抗体を投与された2例およびプラセボを投与された1例という3例の対象からの中間データにより、抗体を投与された対象における急性期反応物質(例えば、CRP)の着実かつ持続的な改善が示されたが、プラセボ対象ではそうではなかった。さらに、抗体を投与された対象はいずれもACRスコア基準の下で治療効果の証拠を示し、うち1例の対象は後の時点でACR70基準を満たした。
最初の臨床試験から得られた結果に基づいて、さらなる治験を行うことができる。そのような治験は、前述の投与量および投薬レジメンの1つまたは複数に加えて、または代替的に、IL-1β抗体の1つまたは複数の投与量、代替的な投与経路、より長い治療および/または観察期間、ならびに1群当たりより多数の患者(例えば、少なくとも約10例、50例、100例、200例、300例、400例、500例、750例、1000例)を含むことができる。
本明細書において引用した出版物、特許出願、および特許を含む参考文献はすべて、各参考文献が個別にかつ具体的に参照により組み入れられことが示され、その全体が本明細書中に記載されるのと同程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
本願明細書(特に添付の特許請求の範囲)では、「1つの(a)」および「1つの(an)」および「その」および類似の指示対象は、特に断りがないかぎりまたは文脈上明らかに矛盾しない限り、単一または複数のいずれも含むものと解釈されるべきである。「含む」、「有する」、「包含する」、および「含有する」は特に指定のない限り、オープンエンドの用語(すなわち、「含むがこれに限定されない」を意味する)として、解釈されるべきである。オープンエンドの用語を本発明の特徴および要素を記載するために使用できる場合であれば、発明の要旨および範囲から離れることなく、オープンエンドの用語の位置にクローズドエンドの用語を使用することができることが具体的に意図される。本願明細書の値の範囲の列挙は、特に断りがない限り、その範囲内に入る個々具体的な値についてそれぞれ言及する簡便な方法とすることを単に意図し、本願明細書で個別に列挙されるように、個々の値は明細書に組み入れられる。明細書に記載する全ての方法は、特に断りがない限り、あるいは明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順で実施可能である。本願明細書の任意のまたは全ての例示、または例示の用語(例えば「例えば(such as)」の使用は、単に理解を容易にする目的であって、特に断りがない限り、本願発明の範囲を制限するものではない。本明細書中のいかなる用語も、請求項に記載されていない要素を本発明の実施に必須であると示すものとは解釈されるべきでない。
本願の好ましい態様が本願明細書に記載され、本願発明を実施するために発明者に知られる最良の態様を含む。このような好ましい態様の改変態様は、本願明細書を読めば、当業者に明らかになるだろう。このような適切な改変を当業者であれば実施しうると発明者は予測し、発明者は本願明細書に明示される以外で実施される発明を意図する。したがって、本願発明は、添付の特許請求の範囲の請求項に記載の主題の、適用される法律が許す全ての改変ならびに同等の範囲を含む。さらに、その可能な改変における上記要素の任意の組み合わせが、特に断りがない限り、または矛盾しない限り、含まれる。