JP2011517664A - 低酸素誘導性写因子を阻害する薬学的組成物、ならびに血管新生、発癌、炎症、アポトーシス、および細胞治療の薬学的プロセスの修飾因子 - Google Patents

低酸素誘導性写因子を阻害する薬学的組成物、ならびに血管新生、発癌、炎症、アポトーシス、および細胞治療の薬学的プロセスの修飾因子 Download PDF

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Abstract

本発明は、薬学および医化学の分野に属し、一般式(I)によって表わされる新規な分子(特にFM19G11と呼ばれる分子)およびこれらの分子を含有する薬学的組成物に関連する。上記薬理学的に最適化された組成物は、低酸素誘導性写因子(HIF)によって修飾された、癌、炎症、組織修復、幹細胞の分化、および再生医療に関連する病理的プロセスに直接的および/または間接的に関与する、遺伝子の転写を修飾および/または阻害することができる。本発明は、さらに上記分子(I)を合成する方法に関連し、また、上述の病理的プロセスを治療するための薬物の製造における該分子(I)の使用方法にも関連する。

Description

発明の詳細な説明
〔技術分野〕
本発明は、薬学および医化学の分野に属し、一般式(I)によって表わされる新規な分子(特にFM19G11と呼ばれる分子)およびこれらの分子を含有する薬学的組成物に関する。上記薬学的に最適化された組成物は、低酸素誘導性写因子(;以後“HIF”)によって修飾された、癌、炎症、組織修復、幹細胞の分化、および再生医療に関連する病理的プロセスに直接的および/または間接的に関与する、遺伝子の転写を修飾および/または阻害することができる。
本発明は、さらに上記分子(I)の合成方法に関するとともに、上述の病理的プロセスを治療するための薬物の製造における該分子(I)の使用方法にも関する。
〔背景技術〕
実質的に、生物の細胞はすべて、栄養分のレベルの変化に対して敏感であって、中でも酸素は、細胞生理学において最も重要である。細胞の酸素レベルの低下は、例えば、新しい血管を形成する内皮細胞における細胞増殖(つまり、血管新生として知られる現象)における酸素の重要性に密接に関連している。腫瘍細胞は、酸素の枯渇に対して、一連の特徴的な遺伝子を活性化することによって応答する。これにより、腫瘍細胞は、この悪条件に対して生き延び、反応することができるようになる。最近、低酸素誘導性写因子(HIF)が、酸素の欠如に対する細胞応答の主要制御因子として、複数の研究の対象となっている。また、科学文献において、HIFは、癌、炎症、心血管病理および神経変性病理、ならびに一般に血管新生病理と称される病理(例えば、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、動脈硬化プラーク、子宮内膜症、クローン病、乾癬、良性前立腺肥大、および癌など)の病理的プロセスに広く関連している(Folkman, “Angiogenesis: an organizing principle for drug discovery? “ Nat. Rev. Drug Disc., 2007; 6, 273-286; Mazure, “Hypoxia signalling in cancer and approaches to enforce tumour regression" Nature, 2006; 44, 437- 443)。治療は、特に癌の治療の場合、異なる作用様式および非蓄積的な毒性を有する複数の活性化合物の混合物である組成物を、ますます利用するようになってきている。したがって、併用療法を実施するためには、腫瘍学的な疾病に対する治療において、非常に多くの効果的な化合物の特性を特定することが必要であり、現在の個別化医療の傾向をさらに考慮すれば、この必要性は特に大きい。
幹細胞は、診療において応用できる潜在的な可能性だけでなく、腫瘍のプロセスの病因の研究に特に関連している。ある種の脳腫瘍(例えば、神経膠芽腫、髄芽腫、および星状細胞腫)は、例えば、ある種の神経の前駆体と同様の多分化能を有する細胞を含有している、という証拠がある。低酸素が、成体幹細胞の未分化プロセスに密接に関連する因子であることは、最近検証された。実際に、いくつかの成体幹細胞の位置は、低酸素領域および/または高度に血管新生した領域に一致する(Palmer et al. “Vascular niche for adult hippocampal neurogenesis, "The Journal of Comparative Neurology 2000; 425, 479-494.; Maurer et al., “Expression of vascular endothelial growth factor and its receptors in rat neural stem cells" Neurosci. Lett. 2003; 344, 165-168)。同じ組織に由来する幹細胞は、同じ微小環境に曝されることによって易感染性となり、また影響を受け、このような幹細胞を使用することが、病変した細胞系の再生のためのアッセイにおいて効率的な代替策となり得る。したがって、本発明は、さらに、再生医学の現代の分野に潜在的に関連する。
〔HIFおよび癌〕
低酸素現象の根底にある細胞および分子的な基礎は、複雑かつ多様であるが、鍵となる分子がいくつか知られるようになってきた。酸素レベルの低下(低酸素状態)に対する細胞の適応応答は、特徴的な遺伝子発現パターンを誘導することによって行われる。低酸素に対する細胞応答を調節する、鍵となるこれら分子のうちの1つが、低酸素誘導性写因子(HIF)である。HIFは、2つのサブユニットからなるヘテロ二量体である。これらサブユニットは、恒常的に発現(HIF 1β)することも、低酸素に誘導されて発現(HIF1α、HIF2α)することもある。正常酸素条件下では、HIF1αおよびHIF2αは、ユビキチン化プロセスおよびプロテアソームによる急速な分解プロセスを介して制御されるため、検出不可能である。VHL発癌遺伝子タンパク質は、E3ユビキチンリガーゼ複合体の認識基質として作用する。E3ユビキチンリガーゼ複合体は、HIF1αおよびHIF2αにシグナルを送り、HIF1αおよびHIF2αは、プロテアソームによって分解される。VHL/HIF1α複合体およびVHL/HIF2α複合体は、どちらも、タンパク質内に配置された2つのプロリン残基に特異的な水酸化に依存する。なお、この水酸化は、2−オキソグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼ(プロリル−ヒドロキシラーゼ)の新しいファミリーによって触媒される(Semenza G.L. "Targeting HIF-1 for cancer therapy" Nature Rev. 2003; 3, 721-732; Lando D. et al. “Oxygen-dependent regulation of hypoxia-inducible factors by prolyl and asparaginyl hydroxylation" Eur J Biochem. 2003; 270, 781-90)。これら酵素における酸素が触媒反応に必要であるので、後者が、酸素の存在に対する実際のセンサーであり、HIF1α/HIF2αの細胞質レベルを調節すると、一般に認容されている。細胞が正常酸素圧下にあり、かつ能動態的な増殖をしているという条件では、その増殖、および増殖因子によってトリガーされる生存経路は、PI3K/AktおよびRas/RAF/MEKKシグナル経路の活性化により、HIF1α/HIF2αの発現を誘導することが観察される(Poulaki V. et al. “Acute intensive insulin therapy exacerbates diabetic blood-retinal barrier breakdown via hypoxia-inducible factor-1alpha and VEGF" J Clin Invest. 2002 ; 109, 805-15; Hudson C.C. et al. "Regulation of hypoxia-inducible factor 1alpha expression and function by the mammalian target of rapamycin" Mol Cell Biol. 2002; 22:7004-14; Guba M. et al., "Rapamycin inhibits primary and metastatic tumor growth by antiangiogenesis: involvement of vascular endothelial growth factor" Nat. Med 2002 ; 8, 128-35)。細胞が酸素欠乏に直面すると、HIF1α/HIF2αがサイトゾルに蓄積し、この蓄積によって、HIF1α/HIF2αは、HIF1βと相互作用し、核に転位する。そして、200を超える互いに異なる遺伝子が活性化する。これら遺伝子は、HIFの標的遺伝子として記述され、これら転写因子によって誘導される細胞応答を媒介する。(Semenza G.L. "Targeting HIF-1 for cancer therapy" Nature Rev. 2003; 3, 721-732; Paul S.A et al., “HIF at the crossroads between ischemia and carcinogenesis" J. Cel. Physiol. 2004; 200, 20-30)。HIFにより誘導される遺伝子の一部は、増殖因子として知られている分子因子に含まれる。この増殖因子の例をいくつか挙げると、血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor; VEGF)、インスリン様増殖因子(insulin growth factor; IGF)、およびトランスフォーミング増殖因子β(tissue growth factor β; TGFβ)などがある。能動態的な細胞増殖のプロセスに、細胞中の酸素欠乏の発生が直接的または間接的に関与していることを考慮すれば、低酸素は、生理的な特徴として考えてもよい。細胞の酸素レベルの低下、およびその結果として起こる、細胞質HIFタンパク質の安定化は、骨髄由来の循環内皮細胞の補充、ならびに虚血性プロセスおよび腫瘍プロセスにおいて血管新生を促進する血管内皮細胞の増殖などの効果を生じる(Harris et al., “Hypoxia a key regulatory factor in tumour growth." Nat Rev Cancer. 2002; 2, 38-47; Takahashi T. et al., “Ischemia- and cytokine-induced mobilization of bone marrow-derived endothelial progenitor cells for neovascularization" Nat Med. 1999; 5, 434-8)。HIFは、エネルギー、生存、血管新生、細胞遊走、および細胞接着代謝に関連する反応を媒介する多種多様な遺伝子によって調節され得る。また、腫瘍増殖プロモーターとしてのHIFの重要性は、実証されている(Mazure, “Hypoxia signalling in cancer and approaches to enforce tumour regression", Nature 2006; 44, 437- 443; Semenza G.L. "Targeting HIF-1 for cancer therapy" Nature Rev. 2003; 3, 721-732)。HIFは、酸素恒常性の「コントローラ」として作用すること、および細胞の生存および増殖を促進することに加えて、プログラム細胞死(アポトーシス)誘導因子としての機能を有し、低酸素にある組織内に存在する応答であり得るアポトーシス促進性の遺伝子を誘導する(Pouyssegur et al., “Hypoxia signalling in cancer and approaches to enforce tumour regression" Nature 2006; 441, 437-443)。
また、KeithおよびSimonは、幹細胞におけるHIF活性の低減により、その幹細胞の分化が促進し、放射線療法および化学療法後における悪性の表現型を有する細胞の再増殖が減少するであろうと提案している(Keith, B and Simon, MC, (2007) Hypoxia-inducible factors, stem cells, and cancer. Cell 129: 465-72.)。HIFの安定化は、血管新生促進性のサイトカイン(例えば、血管内皮増殖因子)の放出またはアポトーシスによって、放射線療法に対する腫瘍の脈管構造の耐性を促進する(Moeller BJ, Cao Y, Li CY, Dewhirst MW. Radiation activates HIF-1 to regulate vascular radiosensitivity in tumors: role of reoxygenation, free radicals, and stress granules. Cancer Cell. 2004 May;5(5):429-41.); Moeller BJ, Dreher MR, Rabbani ZN, Schroeder T, Cao Y, Li CY, Dewhirst MW, Pleiotropic effects of HIF-1 blockade on tumor radiosensitivity. Cancer Cell. 2005 Aug;8(2):99-110)。したがって、HIFの活性化をブロックすることは、ある病理学では、複数の研究者によって非常に望ましいと考えられている。HIFが活性化されて腫瘍増殖を促進する方法について、考察しているレビューもある(Rankin EB, Giaccia AJ. The role of hypoxia-inducible factors in tumorigenesis. Cell Death Differ. 2008 Apr;15(4):678-85. Epub 2008 Feb 15; Peinado H, Cano A. A hypoxic twist in metastasis. Nat Cell Biol. 2008 Mar;10(3):253-4; Bertout JA, Patel SA, Simon MC. The impact of O2 availability on human cancer. Nat Rev Cancer. 2008 Dec;8(12):967-75)。これらの理由により、HIFのタンパク質が薬学的な標的として考えられ、新薬を発見するために、複数の戦略が立てられている。ただし、それに続く規制当局による薬の認可には必要とされる毒性プロファイルにおいて、薬学的な要件に適応しない阻害剤が多い。徹底した調査が20年を超える時間をかけてなされてきたが、それでもなお、HIFの転写活性およびタンパク質の発現を修飾する新しい化合物または小分子の探索は、可能であり、かつ推奨される。こうすることによって、HIF阻害剤を、単独でまたは血管新生の病理に対して効果的なその他の薬との組み合わせにおいて、抗腫瘍薬としてまたは再生医学において、さらに移植医療において使用される幹細胞の前条件づけにおいて使用する手法が開発された。
幹細胞の特性を有する複数種の腫瘍細胞が単離されて以来、腫瘍幹細胞という概念について、世界中の科学者の間で関心が集まっている。低酸素条件は、細胞周期のS期におけるDNA複製中にDNAに生じる変異のための修復遺伝子(Mismatch Repair genes; MMR)の発現を減少させるという分子現象を促進することが知られている(Mihaylova VT, et al., “Decreased expression of the DNA mismatch repair gene Mlh1 under hypoxic stress in mammalian cells" Mol Cell Biol. 2003 May; 23(9):3265-3273.)。例えば遺伝性非ポリープ性結腸癌(nPCC)などのある種の疾病は、これら修復遺伝子の欠損に関連している。その欠損の結果、DNAのマイクロサテライト配列が不安定になり、また、修復遺伝子の欠損は、nPCC腫瘍の95%、孤発性の結腸腫瘍の15%において検出される。幹細胞は長時間持続する。そして、遺伝子材料の修復システムの動作条件が悪化している場合、幹細胞は、半減期が短い他の種類の細胞に比べて、変異を蓄積する可能性が高くなる。幹細胞において低酸素条件下でこれらのMMR遺伝子が減少すると、未修復の変異が増加して蓄積する可能性があり、さらにこの増加・蓄積により悪性表現型を獲得する可能性が高くなり得る。過去に発表された研究結果を考慮すれば、修復遺伝子の発現は、抑制後、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(トリコスタチンA(TSA)として知られる)により回復され得ることが知られている(Cameron EE, et al., “Synergy of demethylation and histone deacetylase inhibition in the re-expression of genes silenced in cancer" Nat Genet. 1999 Jan; 21(1):103-107.)。この薬剤は、遺伝子のプロモーター領域に配置されているヒストンのアセチル化の程度を高めることができる。この薬剤は、クロマチンに対し、遺伝子を調節する転写因子がアクセス可能な高次構造を付与する。癌を遅らせるまたは防止する遺伝子をある薬剤が回復させるという事実があれば、その薬は抗腫瘍薬の候補となる。TSAは、現在、乳癌治療の前臨床段階にある薬剤である(Vigushin DM, et al., “Trichostatin A is a histone deacetylase inhibitor with potent antitumor activity against breast cancer in vivo" Clin Cancer Res. 2001 Apr; 7(4):971-6)。
〔HIFおよび再生医学〕
ある発癌性のプロセスの病因は、幹細胞の潜在的な自己再生能および分化能に密接に関連しており(Clarke MF. “Neurobiology: at the root of brain cancer" Nature, 2004; 432, 281-2.)、再生医学の治療可能性に関連している。幹細胞の分裂、分化、および機能のプロセスは、栄養分や酸素の利用可能性などを含めた、環境からの複雑なシグナルによって調節される。成人の脳においてだけではなく、胚発生の間にも、生理的な低酸素は、互いに異なる前駆細胞および幹細胞の増殖および未分化に関連している(Studer L et al., “Enhanced proliferation, survival, and dopaminergic differentiation of CNS precursors in lowered oxygen." ., J Neurosci.,2000; 20(19), 7377-83; Morrison SJ, et al. “Culture in reduced levels of oxygen promotes clonogenic sympathoadrenal differentiation by isolated neural crest stem cells." J Neurosci. 2000; 20(19), 7370-6)。最近の結果によれば、神経幹細胞は、高い血管新生ニッチに関連しており、HIFが中枢神経系発生において必須であることが実証されている(Sharp F.R. and Bernaudin M, “HIF1 and oxygen sensing in the brain.", Nature Rev. 2004, 5, 437-448; Ryan E R, Lo J & Johnson, “HIF-1 alpha is required for solid tumor formation and embryonic vascularization." EMBO J., 1998; 17, 3005-3015; Ding and Schultz, “A role for chemistry in stem cell biology" Nature Biotech., 2004; 22, 833-840)。最近の結果は、分子レベルの低酸素メカニズムと、異なる組織において細胞分化プロセスを媒介する、分子の未分化因子(例えば転写因子NotchやOct−4など)との相乗作用も実証している。低酸素による、これら2つの重要な細胞シグナル経路間の相乗作用により、これら重要な未分化マーカーを介した細胞分化経路が調節される(Gustafsson and et al., “Hypoxia requires notch signaling to maintain the undifferentiated cell state." Developmental Cell, 2005; 9, 617-628; Covello et al., “HIF-2alpha regulates Oct-4: effects of hypoxia on stem cell function, embryonic development, and tumor growth." Genes & Development 2006; 20, 557-570)。
本発明では、以下の幹細胞モデルを使用した。
・C17.2細胞株。これは、多能性の神経の前駆物質の細胞株であって、新生仔ネズミの小脳の外顆粒層に由来し、レトロウイルスを介したv−myc遺伝子の導入によって不死化される(Snyder EY, et al., “Multipotent neural cell lines can engraft and participate in development of mouse cerebellum" Cell. 1992 Jan; 10(68), 33-51)。この細胞株は、均一な神経前駆体を際限なく提供し、操作性の観点から神経幹細胞であると考えられる(Parker MA, et al., “Expression profile of an operationally-defined neural stem cell clone. 1", Exp Neurol. 2005 Aug, 194(2), 320-32)。これらの細胞は、新生仔ネズミの小脳に移植されると、小脳の正常発生に関与する。これらの細胞は異常な可塑性を有し、脳損傷を受けると患部に向かって移動し、分化してニューロンまたはグリアとなり、他の神経細胞に結合したり他の神経細胞からの結合を受けたりし、さらに、損傷した組織の正常な細胞構築に関わるが腫瘍は形成しない(Snyder et al., “Multipotent neural cell lines can engraft and participate in development of mouse cerebellum" Cell. 1992 Jan; 10(68), 33-51)。これらの理由によって、神経変性疾患において神経を再生させるための細胞治療および移植として、上記細胞が有用である可能性が提案されている(Wei-Guo Liu, et al. “Dopaminergic neuroprotection by nurturing-expressing c17.2 neural stem cells in a rat model of Parkinson disease" Parkinsonism and Related Disorders 2007; 13, 77-88; Snyder EY, et al., “Multipotent neural precursors can differentiate toward replacement of neurons undergoing targeted apoptotic degeneration in adult mouse neocortex." Proc Natl Acad Sci U S A. 1997 Oct; 14, 94(21), 11663-8)。C17.2は、一旦移植されると腫瘍化の表現型へと進化するように見えるだけではなく、腫瘍細胞に対してハラスメントまたは迫害的な行動を示すように見える。神経膠腫が発生しているマウスの脳にC17.2が注射されると、これらの細胞は、腫瘍の侵入エッジに向かって移動し、その周囲を囲んだ。上記細胞は、主要な腫瘍の塊から逃げた悪性細胞の小さい島を囲む能力をも有している(Aboody KS, et al.“Neural stem cells display extensive tropism for pathology in adult brain: evidence from intracranial gliomas.", Proc Natl Acad Sci USA 2000 Nov 7; 97(23), 12393-5)。本願発明者らは、これらの細胞を、遺伝子治療の研究に使える可能性のある道具であると考える。なぜならば、該細胞は、腫瘍の塊に対して作用する、治療に用いられる可能性のある遺伝子を放出できるからである。さらに、C17.2は、脊髄再生モデルにおいてアッセイされている(Teng YD, “Functional recovery following traumatic spinal cord injury mediated by a unique polymer scaffold seeded with neural stem cells.", Proc Natl Acad Sci USA 2002 Mar 5; 99(5), 3024-9)。これらの細胞が注射された動物において、影響された肢の機能回復が観察された。この機能回復は、損傷した領域において浸漬された神経線維の部分再生に起因している可能性がある。Ourednikらは、動物のパーキンソン病のモデルにおいて、これらの細胞がドーパミン神経機能の再確立に対して、どのように寄与するのかを示している(Ourednik J et al., “Neural stem cells display an inherent mechanism for rescuing dysfunctional neurons" Nat Biotechnol. 2002 Nov 20; 11, 1103-10)。この場合、遺伝子治療における上記細胞の潜在的能力が、上記細胞が果たすことのできる、神経プロテクターとしての役割、または損傷したニューロンおいて機能を再確立する中での役割とともに、再度示された。
・中枢神経系(CNS)の上衣の領域および上衣下の領域からの、成人の神経前駆細胞(NPCs)の初代培養。魚や有尾目の両生類のように、ある種の成体の脊椎動物において、脊髄は再生成可能である。ただし、脊椎動物のほとんどがこの潜在的能力を発生の途中で失ってしまう。有尾目の両生類の脊髄において、軸索は、成長して、損傷の前に神経支配した構造と再接続するだけではなく、失われたニューロンおよびグリア細胞を置き替えることもできる。この再生の源は、中央のチャネルに並んで、軟膜の表面まで延びている上衣細胞の集団であるように見える(Egar M, Singer M “The role of ependyma in spinal cord regeneration in the urodele, Triturus" Exp Neurol 1972; 37, 422-430; Benraiss A, et al. “Adenoviral brain-derived neurotrophic factor induces both neostriatal and olfactory neuronal recruitment from endogenous progenitor cells in the adult forebrain." J Neurosci 2001; 21, 6718-6731; Echeverri K. and Tanaka EM “Ectoderm to mesoderm lineage switching during axolotl tail regeneration." Science 2002; 298, 1993-1996; Ferretti et al." Changes in spinal cord regenerative ability through phylogenesis and development: lessons to be learnt.", Dev Dyn 2003; 226, 245-256.)。いくつかの中枢神経系損傷のモデルにおいて、上衣細胞の増殖および分化の存在について記載されている。このことは、再生力を有する内在性の源の存在を暗示している(Johansson CB, et al. “Identification of a neural stem cell in the adult mammalian central nervous system.", Cell 1999; 96, 25-34)。この神経発生プロセスは、炎症性のプロセスを提示し、その結果、軸索変性および脱髄、ならびに脊髄の外的損傷が発生する、両方のモデルにおいて(どちらも多発性硬化症において)記載されている(Danilov et al., “Neurogenesis in the adult spinal cord in an experimental model of multiple sclerosis.". European J Neuroscience 2006; 23, 394-400; Ke Y, et al. “Early response of endogenous adult neural progenitor cells to acute spinal cord injury in mice." Stem Cells 2006. Published online)。ただし、神経発生プロセスが起こるという事実にもかかわらず、これらの神経の前駆物質は、変性組織を置き替えて、失われた機能を回復させるには不十分である。成体の哺乳類において、脊髄の中央のチャネルに並んだ上衣細胞は、インビトロで、ニューロスフェア(神経幹細胞によって形成されるコロニー)を形成することができる(Danilov A, et al. “Neurogenesis in the adult spinal cord in an experimental model of multiple sclerosis." European J Neuroscience 2006; 23, 394 - 400)。脳の脳室下の領域に由来する成体幹細胞は、インビトロで、未分化スフェロイドとして増殖し、ニューロン、アストロサイト、またはオリゴデンドロサイトに分化する(Weiss S, et al. “Multipotent CNS stem cells are present in the adult mammalian spinal cord and ventricular neuroaxis" J Neuroscience 1996; 16, 7599-7609)。したがって、上記成体幹細胞は、損傷した髄質の組織を再構築するために至適な道具である。ただし、これらの幹細胞のインビボの移植からは、良好な結果が得られない。これらの細胞は、未分化の状態のまま残るか、またはアストログリアの表現型をともなって出現して神経膠瘢痕に寄与するかのいずれかである(Ricci-Vitiani L, et al. “Influence of local environment on the differentiation of neural stem cells engrafted onto the injured spinal cord." Neurol Res. 2006; 28(5), 488-92)。したがって、成人の神経前駆細胞(NPCs)、特に中枢神経系(CNS)の上衣の領域および上衣下の領域の神経前駆細胞の初代培養は、生理的に低酸素の環境に存在する幹細胞の振る舞いを、インビトロにおいて研究するのに適したモデルである。NPCは、自己再生能および多分化能を有し、ニューロン、アストロサイト、またはオリゴデンドロサイトに分化する。近年、幹細胞および/または成人NPCは、神経変性疾患または中枢神経系の外的損傷の修復プロセスにおいて、非常に魅力的な源であることが判明している。神経前駆細胞を移植したものは、急性損傷後の脊髄に既に存在する軸索の経路に沿って統合および再接続される(Vroemen, et al. “Adult neural progenitor cell grafts survive after acute spinal cord injury and integrate along axonal pathways" Eur J Neurosci. 2003; 18(4), 743-51)。Akiyamaらは、成人の脳に由来する神経前駆細胞の移植が、脱髄された脊髄において再ミエリン化プロセスを促進することを示している(Akiyama Y, et al. “Transplantation of clonal neural precursor cells derived from adult human brain establishes functional peripheral myelin in the rat spinal cord" Exp Neurol. 2001, 167(1), 27-39)。
・骨髄間葉系幹細胞(BMMSC)。骨髄間葉系幹細胞は、骨髄(BM)の子座の一部を形成する細胞である。また、該細胞は、インビトロで、腫瘍を誘導せずに、軟骨細胞、骨細胞、および脂肪細胞などの多様な細胞のタイプに分化できる。さらに、該細胞は、多様な組織の再生能を有することが判明しており、組織細胞治療において使用されている。近年では、BMMSCに対する関心が高まっていて、多様な研究から、これらの細胞が、インビトロで心筋細胞に分化することが示唆された。ただし、催奇性の化合物、5−アザシチジンを誘発試薬として使用する必要があるので、この戦略の臨床上の適応性は限定される(Laflamme M.A. and Murry M.A. “Regenerating the heart" Nature Biotechnology, 2005; 23:845-856.)。また、未刺激のBMMSCを、梗塞後の状態でラットおよびブタの心臓に直接注射すると、心室機能が改善することを示唆する証拠がある(Ma J. et al., “Time course of myocardial stromal cell-derived factor 1 expression and beneficial effects of intravenously administered bone marrow stem cells in rats with experimental myocardial infarction" Basic Res Cardiol. 2005; 100:217-223)。Gnecchi Mらによる研究から生まれた新しい理論(Gnecchi M. et al. “Paracrine action accounts for marked protection of ischemic heart by Akt-modified mesenchymal stem cells" Nature Medicine. 2005; 111:367-368)は、間葉系幹細胞に由来するパラクリン細胞保護因子の分泌を利用しており、その結果、これらのBMMSCを低酸素条件下に置くことで生成される培地が低酸素で培養されたラットの心室の心筋細胞に添加されたときに、これらの心筋細胞のアポトーシスが減少する。この結果は、BMMSCの心臓筋形成分化の結果である替わりに、組織の保護および修復におけるBMMSC作用の「パラクリン仮説」理論に関与している。これらの分泌された因子の単離は、虚血組織における損傷を防止するための、治療上有用な応用が可能である。この系統のヒトの成体幹細胞は、Inbiomed Foundation, San Sebastian, スペイン(www.inbiomed.com)から入手可能であり、具体的には、最近創立された細胞バンクInbiobank(www.inbiobank.org)から入手可能である。BMMSCは、CD29+、CD73+、CD105+、CD166+、CD45−、およびCD31という典型的な表現型を有する(Pittenger MF et al., “Multilineage potential of adult human mesenchymal stem cells" Science 1999; 284: 143-147; Javazon EH et al., “Mesenchymal stem cells: paradoxes of passaging", Exp Hematol 2004 May; 32(5):414-25)。BMMSCは、細胞2000個/cmの密度で播種され、90%のコンフルエンスに到達すると、再度トリプシン処理によってサブ培養される。使用される培地は、10%のウシ胎仔血清を補充した低グルコースのDMEMである。
・歯髄細胞は、出生後のヒトの歯髄組織に存在する特異的な間葉系幹細胞であり、象牙芽細胞と並んだ細管により形成された石灰化マトリックスからなる、象牙質−歯髄複合体の原因となり、また、血管を含み、かつ歯の生理的な構造を形成する繊維組織の原因でもある(Gronthos S, et al. “Postnatal human dental pulp stem cells (DPSCs) in vitro and in vivo" Proc Natl Acad Sci U S A. 2000 Dec 5; 97(25):13625-30.; Gronthos S et al. “Stem cell properties of human dental pulp stem cells" J Dent Res 2002 Aug; 81(8):531-5)。これらの細胞は、インビトロで、象牙芽細胞、脂肪細胞、および神経形態を有する細胞に分化することができる。脳および心臓における、低酸素および再酸素化に対する細胞応答は、虚血性損傷の病変形成の関連モデルとして広く研究されている。したがって、歯髄幹細胞の反応および活性を、低酸素状態(Kim S, Edwall L, Trowbridge H, Chien S. “Effects of local anesthetics on pulpal blood flow in dogs", J Dent Res. 1984; 63(5), 650-2; Kim S, et al., “Functional alterations in pulpal microcirculation in response to various dental procedures and materials" Proc Finn Dent Soc. 1992; 88, Suppl 1, 65-71)およびインビトロで再酸素化の条件下で研究すれば、HIF修飾因子を使用するという利点もあり、インサイツの虚血性の損傷の病変形成の関連モデルを作製できる。
〔血管新生阻害剤〕
複数の異なる作用様式によってHIF1の転写活性を修飾する阻害剤を保護し、細胞のシグナル経路および/または構造上のもしくは後成的な現象に対して影響を与える化合物が存在する。該化合物の一部については詳細を表1に記すが、J. Folkmanによる血管新生に関する最近のレビュー記事では、網羅的に記載および説明されている(“Angiogenesis: an organizing principle for drug discovery?" Nat. Rev Drug Discovery, 2007, 6, 273-286)。
低酸素に関連する病理の治療または予防のための、HIF因子阻害剤(血管新生阻害剤であると考えられる)である多様な化合物および該化合物を含有する薬学的組成物について記載し、その特許権を主張する、多くの特許文献が現在の技術的状況において存在する。このような特許文献の一部を以下に列挙する。
国際特許出願公開第WO−A2−2007/022412号明細書には、血管新生の疾病または障害を有するまたは有する危険性のある被検者の組織において、低酸素誘導性写因子の阻害剤およびそれとは別の抗血管新生剤(例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)、アンジオポエチン1、インターロイキン8(IL−8)またはアンジオスタチン、トロンボスポンジンまたはタムスタチン直接血管新生阻害剤など)を投与することを含む、併用療法を使うことによって、望ましくない血管新生を治療するための方法が記載されている。
国際特許出願公開第WO−A2−2005/089490号明細書には、この発明の阻害剤化合物のうちの1つを有効な量で患者に対して投与することを含んだ、患者においてHIF誘導性の低酸素を阻害するための化合物および方法が記載され、その特許権が主張されている。請求項に記載された、癌を治療するための方法は、放射能照射または化学療法からなる治療をするとともに、該化合物のうちの1つを投与することからなる。
国際特許出願公開第WO−A1−2006/066775号明細書は、HIF 1αのp300に対する阻害が必要な、病理治療用薬物の調製のために、ジケトジチオピペラジンの抗生物質(例えば、ケトシン(chaetocin)およびグリオトキシン)を使用することに関する。
国際特許出願公開第WO−A1−02/36574号明細書は、HIF 1αを阻害するのに十分な量のゲルダナマイシン誘導体を投与することによって、細胞において癌を除去する、あるいは患者においてインビトロおよびインビボの両方で癌を治療するために使用されるゲルダナマイシン誘導体に関する。
米国特許出願公開第2006003961号明細書は、OS−9の、HIF1およびHIF1αプロリルヒドロキシラーゼ双方との相互作用に関する。OS−9の機能損失によって、非低酸素条件下において、HIF1αタンパク質のレベルおよびHIF1の転写のレベルが増加する。これらのデータは、OS−9が、HIF1αタンパク質のレベルをOに依存する形態で調節する多タンパク質複合体の必須成分であることを示唆している。この複合体を修飾する薬剤、および該薬剤を特定するための方法についても記載されている。
国際特許出願公開第WO−A1−2004/091648号明細書は、腫瘍細胞または組織を、3(5’ヒドロキシメチル2’フリル)1−ベンジル−インダゾール、またはその新規な誘導体のうちの1つを含有する組成物に接触させることを含んだ、HIF1の発現、およびHIF1、血管新生、腫瘍増殖、または腫瘍の進行/転移によって調節される遺伝子の発現を、阻害するための方法および薬学的組成物に関する。この出願に続いて、国際特許出願公開第WO−A2−2005/030121号明細書において、同じ出願人が、腫瘍細胞または腫瘍組織において誘導性の低酸素発現因子を阻害するために、3(5’ヒドロキシメチル2’フリル)1−ベンジル−インダゾール以外の、ある複素環化合物を使って、インビボでの腫瘍の増殖を阻害することについて記載している。
国際特許出願公開第WO−A2−2004/087066号明細書および国際特許出願公開第WO−A2−2007/025169号明細書は、どちらも同じ出願人が所有しており、1つ目の特許出願明細書では、HIF1因子誘導性の低酸素に関連する病理の治療または予防のために、2,2−ジメチルベンゾピランに由来する化合物を含んだ薬学的組成物を、必要に応じて他の細胞分裂阻害剤と組み合わせて使用する。また、二つ目の特許出願明細書では、同じメカニズムによって発生した肺癌または膀胱癌に対して、アリール−スルホンアミド誘導体を含んだ薬学的組成物を使用する。
上記のように、これらのおよびその他の特許文献は、HIF活性の阻害、およびその阻害と血管新生調節との関係を開示している。ただし、これらの文献はどれも、本発明の目的である一般式(I)の分子によって表わされる、HIF活性阻害剤としての化合物に関連する化合物について一切言及していない。
文献「Hypoxia inducible factor-1: a novel target for cancer therapy」(Belozerov Vladimir E. and Van Meir Edwin G., published in Anti-Cancer Drugs, 16(9): 901-909, 2005)は、低酸素誘導性転写因子(HIF 1)を、腫瘍細胞が低酸素に順応するために必要な多数の分子レベルの現象における修飾因子として示している。これが、HIF 1が抗癌剤の開発にとって魅力的な標的になる理由である。この文献は、最近開発された、HIF1の機能を阻害するいくつかの小分子について言及している。これらの分子は、多種多様なメカニズムによってHIF1のシグナル経路を遮断する。このメカニズムには、HIF1αタンパク質の合成、安定化、核移行、および標的遺伝子のトランス活性化の阻害が含まれる。該文献はHIFと癌プロセスと間の関係、および抗癌剤の開発のためのHIFを阻害する分子の使用を開示している。ただし該文献は、一般式(I)で表わされるいずれの化合物についても言及していない。
構造が一般式(I)に従う化合物は、2種類だけ(いずれの場合も生物活性は全くない)が文献に記載されている。米国特許出願公開第2006223812号明細書の47ページには、化学式B1C11として、2−4−((メトキシ)フェニル)−2−オキソエチル3−(2,4−(ジニトロ)ベンズアミド)安息香酸が記載されている。なお、該米国特許出願は、例えばアルツハイマー病などの神経変性の病状の治療に用いる薬学的組成物を調製するために、タンパク質凝集体の形成阻害およびタンパク質の凝集体の脱重合をすることができる、化合物を使用することに関する。また、2−4−((ニトロ)フェニル)−2−オキソエチル3−(4−ブロモ)ベンズアミド)安息香酸が、文献(Kim, S. Y. et al., “Pharmacophore-based virtual screening: the discovery of novel methionyl-tRNA synthetase inhibitors", Bioorg. Med. Chem. Lett. 2006, 16, 4898-4907)中に示されている。この文献には、新しいメチオニルtRNA合成酵素の阻害剤を探すために、508143種類の化合物を登録した化学データベースから仮想的な選択を行うことについて記載されている。これらのdos化合物は、いずれも、HIFの活性の調節および/または阻害と無関係である。
前述のことを考慮すれば、生物学的に関連した遺伝子の転写を修飾する能力を有する分子メカニズムを認識することを目標として合成分子を設計することは、化学と生物学との合流点における、治療における非常に大きな潜在的能力を有する、生物工学の最大の課題の1つであると考えられる。治療、特に癌の治療の場合、異なる作用様式および非蓄積的な毒性を有する複数の活性化合物の混合物である組成物を、ますます利用するようになってきている。
〔図面の簡単な説明〕
図1:化合物FM19G11および類似体の化学合成を示す。
図2:HIFの転写活性の新規阻害剤である、FM19G11を示す。A)はFM19G11の化学構造を示す。B)は、プロモーター領域に存在するHIFのタンパク質のHRE反応配列に結合することによって、該タンパク質に反応して活性化されたルシフェラーゼ・レポーター遺伝子を使った、HIFの転写活性の研究結果を示す。HREの9個の反復に融合したルシフェラーゼ・レポーター遺伝子を恒常的に過剰発現させるHeLa細胞の培養物を、低酸素条件(O1%、図中青色の棒グラフ)または正常酸素条件(O20%、図中赤色の棒グラフ)で、FM19G11を濃度を増加させながら(0μM〜1μM)使用して、6時間かけて処理した。ルシフェラーゼの活性を示す単位は、絶対値で表わす。C)は、Bに図示したHIFの転写活性の阻害を、ルシフェラーゼ活性アッセイから計算した結果を示す。
100−(((RLUHx+FM19G11−RLUHx+DMSO)*100/RLUHx−RLUHx+DMSO)))
実験は三組実施した。
図3:HIFの転写活性の制御における、FM19G11の特異性の研究結果を示す。該遺伝子のプロモーター領域において、上記HIFのタンパク質(HRE)に対して反応する配列に融合したルシフェラーゼ・レポーター遺伝子、c−jun/c−fos(TRE)によって形成された化合物に融合したルシフェラーゼ・レポーター遺伝子、またはATF2/JunB(CRE)によって形成された化合物に融合したルシフェラーゼ・レポーター遺伝子を恒常的に過剰発現させるHeLa細胞を、それぞれの刺激の存在下(HREの場合は低酸素状態(O1%)、TREの場合はc−fosおよびc−junの同時発現、CREの場合はATF2およびJunBの同時発現)で6時間培養した。転写活性を阻害する際のFM19G11の活性を、濃度を増加させながら(0μM〜1μM)、ルシフェラーゼ活性を測定し、次式を適用することによって決定した。
100−(((RLUHx+FM19G11−RLUHx+DMSO)*100/RLUHx−RLUHx+DMSO)))
実験は三組実施した。
図4:HeLa細胞において、VEGFのメッセンジャーRNAの発現レベルを定量化するための、実時間ポリメラーゼ連鎖反応を示す。HeLa細胞は、低酸素条件(O1%、HPX)または正常酸素条件(O20%、NM)で、FM19G11または当量体積のキャリア(DMSO、コントロール)の存在下で、該FM19G11またはキャリアの濃度を増加させながら(0.03μM〜0.3μM)、24時間培養した。全RNA量の変化に起因する発現量の変化を、GAPDH遺伝子の恒常的発現によって補正した。上記各試料におけるVEGF/GAPDHの発現量の比の値を、コントロール酸素正常状態(=1)において得られた発現レベルに対して相対化した。実験は三組実施した。
図5:HeLa 9XHRE細胞において、HIFおよびPHD3(正のコントロールとして。なぜならばHIF1αの標的遺伝子であるから)の2つのαアイソフォームを認識する抗体を使用したウエスタンブロット法による、タンパク質の発現の解析結果を示す。GAPDHを、タンパク質の添加コントロールとして含めた。第1のレーンは無処理の細胞に対応する。第2のレーンは、低酸素条件下でFM19G11を用いて処理された細胞に対応し、第3のレーンは、低酸素状態で培養された細胞に対応する。実験は三組実施した。刺激時間は9時間であった。互いに独立して実施した3組の実験を代表して、1組の実験を図示している。
図6:C17.2細胞において、HIF1αおよびPHD3(正のコントロールとして。なぜならばHIF1αの標的遺伝子であるから)を認識する抗体を使用したウエスタンブロット法による、タンパク質の発現の解析結果を示す。Bアクチンを、タンパク質の添加コントロールとして含めた。第1のレーンは無処理の細胞に対応する。第2のレーンは、低酸素条件下で培養された細胞に対応する。第3、第4、および第5のレーンは、FM19G11(それぞれ125、250、500)を濃度を増加させながら用いて処理され、低酸素条件下で培養された細胞に対応する。実験は三組実施した。刺激時間は3時間および24時間であった。赤色の矢印は、PHD3(標的遺伝子HIF)の発現が大きく減少していることを示している。互いに独立して実施した3組の実験を代表して、1組の実験を図示している。
図7:FM19G11(500nM)の存在下で、酸素正常状態または低酸素状態で培養された間葉系幹細胞の核タンパク質からの抽出物を使用して実施した、ウエスタンブロットの結果を示す。単クローンの抗MLH1および抗MSH6抗体を、解析において使用した。Aは、骨髄の間葉系幹細胞において得られた結果である。1−Nx 3h;2−Hx 3h;3−Hx 3h+19G11;4−Hx 18h;5−Hx 18h+19G11;6−Hx 24h;7−Hx 24h+19G11。Bは、歯髄の間葉系幹細胞において得られた結果である。13−Nx 72h;14−Nx 72h+19G11;15−Hx 72h;16−Hx 72h+19G11。実験は三組実施した。刺激時間は3時間であった。互いに独立して実施した3組の実験を代表して、1組の実験を図示している。
図8:epNPCにおいて、PHD3およびVEGFのメッセンジャーRNAの発現レベルを定量化するための、実時間ポリメラーゼ連鎖反応を示す。epNPCは、低酸素条件(O1%)で、500nMのFM19G11または当量体積のキャリア(DMSO)の存在下で、0時間(ベースライン状態、1)48時間培養された。全RNA量の変化に起因する発現量の変化を、GAPDH遺伝子の恒常的発現によって補正した。上記各試料におけるPHD3またはVEGF/GAPDHの発現量の比の値を、ベースラインの発現レベル(時間O=1のときに酸素正常状態または低酸素状態)に対して相対化した。実験は三組実施した。
図9:ヒトの歯髄の幹細胞において、HIF−1およびその標的遺伝子VEGFおよびCOX−2の発現に対する、化合物FM19G11の効果を示す。
図10:ヒトの歯髄の幹細胞において、アポトーシスおよび生存率に対する、化合物FM19G11の効果を示す。
図11:未分化状態のマーカーOct3/4、Sox2、およびその標的遺伝子TGFα、ならびにNanogそれぞれのメッセンジャーRNAの発現を研究するための、半定量的な逆転写PCRを示す。epNPCを、正常酸素条件(O20%)または低酸素条件(O1%)下で、500nMのFM19G11またはそのキャリア(+)またはDMSO(−)の存在下で、48時間培養した。恒常的なGAPDH遺伝子の発現は、どの条件であっても、アッセイされた試料の量に大きな変化がないことを示している。実験は三組実施した。
図12:正常酸素条件(O20%)または低酸素条件(O1%)下で、FM19G11の存在下でその用量を増加させながら48時間培養された、epNPCのOct3/4、Sox2、およびβ−アクチン(ローディングコントロール)のタンパク質の発現レベルの研究のための、ウエスタンブロットの結果を示す。実験は三組実施した。
図13:正常酸素条件(O20%)下で、FM19G11の存在下でその用量を増加させながら48時間培養された、epNPCのSox2、Oct3/4、Nanog、Notch−1、およびβ−アクチン(添加コントロール)のタンパク質の発現レベルの研究のための、ウエスタンブロットの結果を示す。実験は三組実施した。
図14:hESCにおいて、Sox2およびOC3/4のメッセンジャーRNAの発現レベルを定量化するための、実時間ポリメラーゼ連鎖反応の結果を示す。マトリゲル上で培養されたhESCのコロニーを、正常酸素条件(O20%)または低酸素条件(O1%)下で、500nMのFM19G11または当量体積のそのキャリア(DMSO)の存在下で、48時間処理した。全RNA量の変化に起因する発現量の変化を、GAPDH遺伝子の恒常的発現によって補正した。上記各試料におけるSox2またはOct3/4/GAPDHの発現量の比の値を、ベースラインの発現レベル(酸素正常状態−キャリア=1)に対して相対化した。実験は三組実施した。
図15:epNPCがオリゴデンドロサイトに分化する様子を示す(標的とする分化)。A)は、分化プロトコールのスキームである。epNPCを、正常酸素条件(O20%)または低酸素条件(O1%)下で、分化のプロセスの初期(1日目〜3日目)および該プロトコールの終了時(35日目〜38日目)に、FM19G11またはそのキャリア(DMSO)を用いて処理した。オリゴデンドロサイト、NG2、RIP、およびO4についてのマーカーの発現を、免疫組織化学的方法によってすべての条件下で判定した。
図16:FM19G11の存在下で、epNPCの増殖性の活性を定量化したものを示す。epNPCを、正常酸素条件(O20%)または低酸素条件(O1%)下で、500nMのFM19G11またはそのキャリアの存在下で、同じ個数で3日間培養した。生成されたATPの量を、細胞培養の代謝活性の指標として定量化することによって、増殖性の活性を判定した。FM19G11の存在下で得られた結果を、キャリアであるDMSO(=1)の存在下で得られた値に対して相対化した。
図17:epNPCの培養から得られるニューロスフェアの形成/増幅に対するFM19G11の効果を示す。500nMのFM19G11またはそのキャリア(DMSO)の存在下でepNPC(16,000個の細胞)を48時間培養して得られたものの、位相差写真である。
図18:細胞パネルに対するFM19G11の毒性を示す。細胞株、HeLa 9x−HRE−Luc、PRC3、HeLa、MCF−7、およびMDA−MB 435−Sにおいて、細胞毒性の研究を実施した。FM19G11(0μM〜30μM)の存在下で濃度を増加させながら、10%の不活化されたウシ胎仔血清、ペニシリン(50IU/ml)、およびストレプトマイシン(50μg/ml)(Invitrogen−Life Technologies、Carlsbad、CA)を補充したDMEM培地で、正常酸素条件下で、該細胞株を72時間培養した。培養物の生存率(%)を、市販のキット、Cell Titer 96(登録商標)AQueous Non−Radioactive Cell Proliferation Assay(Promega Corporation)を使って決定した。
図19:化合物FM19G11の魚(メダカ)の胚に対する毒性のアッセイを示す。
図20:化合物FM19G11の分析的HPLCクロマトグラムを示す。
図21:互いに異なる時間において、ウシ血清中のFM19G11の、インキュベーションを行った抽出物のクロマトグラムを示す。
図22:FM19G11は、ヒトの大腸癌細胞(HT29)においてDNA損傷応答のトリガーとなる。DNA損傷応答において鍵となるシグナル経路、具体的には、ATR/ATMとして知られている経路、DNA損傷の修復(MMR、BRCA1、H2AX)の経路に関わるキナーゼのリン酸化が進むことによる活性化の増加が、細胞周期(CHK1、CHK2)の制御の点においても、FM19G11(0.5μM)を用いて処理された腫瘍細胞HT29において検出された。6−TG(5μM、10μM、25μM)またはエトポシド(0.1μM、1μM、10μM)を用いた処理を、コントロールとして、また、DNAの一本鎖(ATR−CHK1)または二重鎖(ATM−CHK2)それぞれにおいて損傷に反応して活性化されるタンパク質比較のために含めた。
図23:動態的研究によれば、ATRの急速な活性化は、HCT116細胞株のどちらにおいても、DNAの一本鎖における損傷に関連している。0.5μMのFM19G11を用いて1時間処理した後、HCT116/p53+/+、のp53細胞における、ATRおよびp53、ならびに、HCT116p53−/−細胞におけるATRのリン酸化または活性化の増加が検出された。上述の結果は、代表的なウエスタンブロット実験を濃度測定の解析にかけた後に得られた。ただし、互いに独立した3組の実験でも同様の結果が得られた。
図24:FM19G11によって誘導された周期停止に対する、p53の効果を示す。AではHCT116/p53+/+細胞、BではHCT116/p53−/−細胞を、互いに異なる濃度のFM19G11(0.5μM、1μM、5μM、10μM)またはキャリアに対して、3日間または6日間曝露して、互いに異なる細胞周期相において細胞の分布をフローサイトメトリーによって分析した。グラフは、異なる濃度のFM19G11によって引き起こされた、それぞれの細胞周期相細胞の割合(%)の分布に対する効果を示している。図示された結果は1組の実験を代表するものである。ただし、互いに独立した3組の実験において、非常に近い割合が得られた。
図25:動態的研究によれば、FM19G11(0.5μM)を用いて処理されたHCT116/p53+/+細胞におけるAKT/mTOR/p70S6/サイクリンD1シグナル経路が、急速かつ効率的に活性化される(倍率の変化≧2)。mTORも、HCT116/p53−/−細胞において、FM19G11を用いて処理した後に、急速にリン酸化された(ただし、倍率の変化の増加は、2よりわずかに小さい)。
図26:HCT116/p53+/+およびHCT116/p53−/−細胞を、FM19G11(10μM)、ラパマイシン(登録商標)(mTOR阻害剤)(100pmol)に単独で、または両方の薬を組み合わせて、上述の濃度で曝露した。両方の薬(100pmol)に対して同時にインキュベーションを行ったところ、FM19G11を用いた処理によってHCT116/p53+/+細胞において発生するS期の周期停止が、防止された。
図27:細胞中のATPの総含有量は、FM19G11を用いて処理されたヒトの大腸癌細胞の割合(%)として、また、DMSOを用いて48時間処理された対応する細胞株に対して相対的に、定量化された細胞生存率と相関関係がある。
図28:HT29のヒトの大腸癌細胞およびFM19G11を用いて処理されたHCT116細胞の間代性アッセイの結果を、処理後10まで監視した。IC50を、濃度とともに割合を外挿することによって、決定した。FM19G11を、0.5μM、1μM、5μM、10μM、50μM、100μM、および200μMの濃度で使用した。
図29:半流動性の寒天培地における、HT29、HCT116/p53+/+、およびHCT116/p53−/−細胞のコロニーの形成を示す。不活性な寒天内で成長した、それぞれのタイプの細胞のコロニーの個数を、播種から10日後に定量化した。表は、レンズの拡大率を4xにして、5つの異なるフィールドによって、上述の各細胞株(±SD)コロニーの個数を勘定して得られた互いに異なるカウント方法を示している。結果は、播種され、キャリア(DMSO)またはFM19G11(0.5μM)を用いて処理された細胞を計数した、互いに独立した3組の実験のカウントを示している。HT29癌化細胞株における典型的なコロニーの形成を示す写真を、半流動性の培地に播種してから10日後に撮影した。
図30:C17.2神経幹細胞およびネズミのニューロスフェアは、低酸素条件下で、MSH6修復タンパク質のレベルが低下するが、FM19G11の存在下で回復する。正常酸素条件下では、DMSOを用いた処理によってMSH6タンパク質が減少しても、FM19G11によって救出されることが、C17.2細胞において観察される。
図31:低酸素状態によって引き起こされる、ネズミのニューロスフェア(神経幹細胞)におけるゲノムの不安定性を、FM19G11で処理することによって防止する。マイクロサテライト配列マーカーのための、特異的な蛍光標識を施したプライマーを使用することによって、酸素正常状態(Nx)、低酸素状態(Hx)、または低酸素状態+FM19G11(Hx+19G11)におけるニューロスフェアのゲノム安定性を、分析した。図中、使用したマーカーのうち2種類(mBAT59およびmBAT67)が、どのようにして、低酸素条件に起因するDNAの欠失または挿入を示したのかが観察できる。FM19G11を用いて処理することによって、(参照またはコントロールとして使用される)酸素正常状態の特性が回復でき、こうして、低酸素状態によって引き起こされるゲノムの不安定性が防止できた。
図32:FM19G11は、C17.2神経幹細胞において、正常酸素条件および低酸素条件下で、p300(ヒストンアセチル化酵素の一種)およびDNA修復タンパク質(MLH1およびMSH6)の発現を変化させる。FM19G11は、全体的なタンパク質のアセチル化の程度に影響する。TSAを、ヒストンアセチル化を強制的に発生させる薬剤のための正のコントロールとして含めた。
図33:正常酸素条件または低酸素条件(図中左側)の下で、酸素状態の変化(HIFα)、未分化マーカー(Sox2、Oct3/4)、ヒストンアセチル化酵素(p300)、およびアセチル化ヒストンH3に対して順応するという、タンパク質の発現に対してFM19G11によって引き起こされる効果を示す。酸素正常状態および低酸素状態におけるヒストンH3のアセチル化状態に対するFM19G11の影響を、免疫沈降を目的として抗AcH3抗体(アセチル化ヒストンH3)を使用し、定量的なPCR(右側のグラフ)によってDNAを定量化し、染色質の免疫沈降によって判定した。
図34:FM19G11のアセチルトランスフェラーゼまたはヒストン脱アセチル化酵素活性の評価を示す。上側のグラフは、無処理、キャリアまたはFM19G11で処理済み、または正常酸素条件または低酸素条件下で培養済みの細胞のタンパク質の抽出物のアセチルトランスフェラーゼ(HAT)活性を示している。タンパク質の抽出物は、抗p300抗体を用いて先に免疫沈降させ、NADHを検出することによって、アセチルトランスフェラーゼ活性を測定した。ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)活性の評価を、異なる濃度のFM19G11で処理されたHeLa細胞のタンパク質の抽出物を用いて実施した。正のコントロールとして、TSAの濃度を固定して(1μM)含め、無処理の細胞の抽出物をコントロールとして使用した。実験は、ヒストン脱アセチル化酵素活性を検出するためのBiomolキット(HDAC Fluorimetric Cellular Activity Assay, Biomol, Cat. No. AK−503)の指示にしたがって実施した。
〔発明の対象〕
本発明の対象の1つは、一般式(I)によって表わされる化合物、特にFM19G11と呼ばれる、HIF転写因子を修飾、調節、および/または阻害することができる化合物に関する。該化合物は、癌、炎症、自己免疫疾患、および再生医療に関連する疾病の治療に有用である。
本発明のもう1つの対象は、一般式(I)で表わされる分子またはその塩を合成する方法に関する。
本発明のもう1つの対象は、治療的に有効な量の、一般式(I)で表わされる少なくとも1つの分子を含有する、血管新生に関連する疾病を治療するための薬学的組成物である。本発明の目的である修飾因子および/または阻害剤は、同一薬学的組成物内または別の薬学的組成物内に存在していてもよい。
発明のもう1つの対象は、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩を、低酸素誘導性写因子によって修飾された遺伝子の転写を調節するための薬物を調製する用途に用いる使用方法に関する。ある特定の実施例において、上記薬物は、HIF、VEGF、PHD3、MMRs、Sox2、Oct3/4、Nanog、Notch1、p53、およびp300の群から選択される、1つ以上の遺伝子の転写を調節する。別の特定の実施例において、上記薬物は、癌の治療に適用可能である。さらに別の特定の実施例において、上記薬物は、腫瘍の治療に適用可能である。また別の実施例において、上記薬物は、炎症の原因となる病理に適用可能である。さらに別の実施例において、上記薬物は、再生医学、特に幹細胞の分化に適用可能である。さらにもう1つの実施例において、上記薬物は、組織の変性の原因となる病理学の治療に適用可能である。
本発明のもう1つの目的は、上記薬学的組成物を備えるキットに関する。
〔発明の詳細な説明〕
治療薬として潜在的な活性を有する天然の化合物および合成化合物を選択することが、最近の十年間は、薬学的な活性を有する分子の候補を得る方法であった。20世紀末にいたる前には、これらの化合物は、「コンビナトリアルライブラリー」に基づいて選択され始めた(John Nielsen et al., “Synthetic Methods for the Implementation of Encoded Combinatorial Chemistry" J. Am. Chem. Soc. 1993; 115, 9812-9813)。また、21世紀の現在では、薬学と情報技術との融合が、疾病の治療法および治療の機会を提供しており、これは前例のない現象である。コンピュータ科学が、薬の発見、開発、および製造のすべての分野に入り込んでいる。コンビナトリアルライブラリーまたは化合物ライブラリーとは、ある目的をもって選択された化学物質を多数収集した記録である。この目的の例としては、薬理学的な活性を有する個々の小さな分子をコンビナトリアルライブラリーにおいて特定するためのプロセスにしたがって、新しい、潜在的能力を有する薬を特定すること(欧州特許出願公開第0751950号明細書)、例えば、プロテアーゼ阻害薬として開発されたアミドの、ある一般式で表わされる調製物を特定すること(欧州特許出願公開第0950045号明細書)、または鎮痛性および/または抗炎症性の特定のための、新しい治療標的およびその使用方法を特定すること(スペイン特許出願公開第2265201号明細書)などが挙げられる。コンビナトリアルライブラリーの登場が、新薬発見のプロセスを革命的に変化させた。新しい技術を使えば、一日あたり50,000個〜100,000個の試料を研究することができ、生物学および医学の世界の情報を劇的に変化させた(Ashis K. Mukherjee and Anil C. Ghosh. “The challenges in information technology based drug discovery" Int. J. Inf. Man. 2002, (IJITM), vol. 1, No. 4, 345-356)。
データベースからの分子の選択は、例えば、15件の化合物ライブラリーから得られる約2百万種類の化合物から選択することができる(Mozziconacci J.C. et al., 9th Electronic Computational Chemistry Conference (ECCC) 03-2003, Internet and World Wide Web)。このようにして、構造に関する解析が実施され、ライブラリーの特異性および多様性が評価された。これらの化合物における薬剤との類似度が、例えば、可撓性、原子の種類、官能基、および「5の法則」などの共通する化学的特性を使って調べられた。1997年にLipinskiら("Experimental and computational approaches to estimate solubility and permeability in drug discovery and development settings" .Adv. Drug Delivery Rev. 1997; 23 (1-3), 3-25)が、下表に規定された4つのパラメータに基づいて化合物の吸収度または透過度を測定する、「5の法則」と呼ばれる方法を記載した。
具体的には、次に列挙する商業用の化合物ライブラリーを大量にスクリーニングし、続いて逆重畳積分することによって、一般式(I)で表わされる、活性を有する本発明の分子が特定された。すなわち、Key organics、ChemStar; InterbioScreen、Microsource Discovery Systems、Tim Tec、Tripos、Speccs、Sigma−Aldrich、Otava、Saines、ChemBridge、およびPrestwick Chemical Libraryの商業用の化合物ライブラリーである。これらのライブラリーの中から、Myrianscreen(Sigma−Aldrich)およびPrestwickが、薬剤としての潜在的能力を有する化合物の構造上の多様性および性質をうまく表現しているので、選択された。したがって、化合物ライブラリーCentro de Investigacion Principe Felipe(CIPF)を構成する化合物の選択基準は、以下の項目に基づく内部の基準である。
・構造上の多様性、Tanimoto係数の推定に基づいた化学的空間(chemical space)のカバー
・Lipinskiの5の法則
・clogP≦5
・分子量は300と900との間
・反応性。HBドナーおよびアクセプター
・はっきりしない細胞毒性
・合成の容易さ。3〜10のステップからなる合成方法、または(合成化学者の見解によれば)同様のプロセスをともなう構造上の複雑さが記載されている。
第1の態様において、本発明は、下記の一般式(I)から選択され、
、R、およびRは互いに独立して以下の(i)〜(vi)のいずれかであればよい。すなわち、
(i)水素、
(ii)分枝がある、あるいは直線状の−(CH−Hアルキル基(ただし、必要に応じて不飽和度を有する)であって、n=1〜10であり、好ましくはメチルまたはエチルである、
(iii)−COOHカルボン酸または式−COORで表わされるエステル(ただし、Rは分枝がある、あるいは直線状の−(CH−Hアルキル基(必要に応じて不飽和度を有する)であって、n=1〜10であり、好ましくはメチルまたはエチルである)、
(iv)−OHヒドロキシル基、−NO基、
(v)ハロゲン;−CHa基(ただし、Haはハロゲン)であって、好ましくはCFである、
(vi)−NHCOR(ただしRは、分枝がある、あるいは直線状の−(CH−Hアルキル基(必要に応じて不飽和度を有する)であって、n=1〜10であり、好ましくはメチルまたはエチルである)、
x、y、およびzは=1〜4であり、
2−(4−メトキシフェニル)−2−オキソエチル3−(2,4−(ジニトロ)ベンズアミド)ベンゾアート(ただし、Rは2,4−di−NO、RはH、Rは4−OMe)および2−4−(ニトロフェニル)−2−オキソエチル3−(4−ブロモ)ベンズアミド)ベンゾアート(ただし、Rは4−Br、RはH、Rは4−NO)を除く、化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩に関する。
一般式(I)で表わされる化合物から選択される本発明を代表する化合物は、FM19G11と呼ばれる化合物であり、R=2,4−di−NO、R=H、およびR=4−CHである。
「薬学的に許容可能な塩」という用語は、生物において大きな刺激作用を引き起こさず、化合物の生物活性または性質を低減しない、化合物の製剤形態をいう。薬学的な塩は、本発明の化合物を無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p型トルエンスルホン酸、サリチル酸などと反応させることによって得られる。
さらに、本発明は、一般式(I)で表わされる化合物を合成する、一般に3つのステップからなる方法に関する。図1は、化合物の合成の概要を示す。この化合物は、例えば、詳細を後述するようにすることによって得られる。
本発明の別の態様は、有効な含有量の、式(I)で表わされる1つ以上の化合物と、1つ以上のキャリアまたは希釈液、および必要に応じて1つ以上の生理学的に許容可能な補助剤とを含んでなる、薬学的組成物に関する。
一般に、各化合物について最低10μM、好ましくは最低100nMの用量を投与することが望ましい。投与量は、好ましくは100nM〜500nMの範囲である。ただし、これより小さな用量で使用してもよい。上記用量は単一の用量であってもよく、粉末または固形の形態で投与してもよい。投与間隔は固定する必要がなく、数日、数週間、または数ヶ月間にわたって継続投与または周期的もしくは持続的に放出する投与形態でもよい。ただし、一日一回、または一日に数回という周期性が勧められる病例もある。
薬学的組成物(または阻害剤)を投与する有効な用量は、化合物の効果および阻害剤としての化合物の効力に依存する。「有効な用量」という用語は、血管新生および疾病の症状が減弱されるだけの、所望の効果を引き起こすために十分な量の活性化合物に関連する。上記用量は、望ましくない副次的効果を引き起こす比率で使用してはならない。臨床的アセスメントを行えば、例えば、過粘稠度症候群、肺水腫、うっ血性心不全などを治療的に有害および非治療可能にする。一般に、用量は年齢、健康状態、性別、および患者の疾病の程度にともなって変化し、個々の病例において決定されればよい。
薬学的組成物の形態を有する活性化合物の投与ルートは、解決すべき問題および患者に応じて、静脈内投与(IV)、筋肉内投与(IM)、皮下投与(SC)、皮内投与(ID)、腹腔内投与(IP)、くも膜下腔内投与、つまり脊髄の周囲の空間への投与(IT)、眼内投与(IO)、胸膜内投与(IPl)、子宮内投与(IU)、直腸投与、腟投与、局所的投与、腫瘍内投与などであってもよい。
必要であれば、本発明の化合物を、プロドラッグとして投与してもよい。「プロドラッグ」という用語は、「インビボ」状態では元の薬になる薬剤を指す。ある状況では、プロドラッグの方が元の薬より投与しやすいことがある。例えば、プロドラッグは、経口投与によって生物が利用可能であるが、元の化合物はそうではない。または、プロドラッグの方が溶解度が高く、したがって静脈内投与が可能である。
本発明の対象である化合物は、薬学的に許容可能な、希釈液またはキャリアとして作用する賦形剤と混合してもよい。この賦形剤は、有効成分と互換性を有し、薬学的に許容可能な、治療的に許容可能な方法に適した使用量になっている。適切な賦形剤としては、例えば、水、生理食塩水、ブドウ糖、グリセリン、エタノール、およびこれらの組み合わせなどが挙げられるが、これに限られるものではない。さらに、所望であれば、上記組成物が、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝液などの、有効成分の有効性を安定化させるまたは改善する物質を含有してもよい。
一般に、本発明の修飾因子および/または阻害剤の化合物は、バッファ溶液中で、5.5と7.0との間のpHで、より好ましくは5.5〜6.0との間のpHで、より好ましくは5.5にpHを調整して製剤しなければならない。pHは、例えば塩酸などの適切な酸を添加することによって、調整してもよい。さらに、水性の「キャリア」は、2種類以上の生理食塩水緩衝液、および塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ブドウ糖、ポリエチレングリコール、およびその他の溶質など)を含有してもよい。さらに、液体組成物は、水に加えてまたは水の替わりに、他の液体溶液(例えば、グリセリンの液体溶液、植物油など)を含有してもよい。
本発明の化合物は、上記成分の、薬学的に許容可能な塩を含有してもよい。薬学的に許容可能な塩には、酸の添加によって形成される(阻害剤の構造を有するアミノ基をともなって形成される)塩が含まれる。この塩は、例えば塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または例えば酢酸、酒石酸、マンデル酸などの例えば有機酸を用いて形成される。カルボキシル基のラジカルをともなって形成される塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、および例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基に由来する。
本発明の別の態様は、、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物を有する薬学的組成物、キャリアまたは希釈液、および/または1つ以上の補助剤を備えたキットである。これらは、個々の病例において、組成物の投与ルートに応じて1つ以上の容器に共にまたは別々に収容されていてもよい。
化合物ライブラリーを構成する化合物の選択基準は、構造上の多様性、ファルマコフォアの代表性、キラル中心の個数、溶解度、および該化合物の化学合成のしやすさに基づく内部基準である。CIPFの収集データは、HIF反応配列(HIF response element; HRE)のアッセイを介して選択された(実施例1)。また、活性化合物は、2つの異なる転写因子Jun B(CRE)およびc−Fos(TRE)の反応配列に基づいて、活性の阻害に逆らう効力および細胞アッセイに対するその選択性によって選択された(実施例2)。これらの効力および選択性基準にしたがって得られる阻害剤の最良のものを選択すると、それはFM19G11であった。この活性化合物を選択するには、十分な量の該活性化合物を得る必要があった。したがって、本発明は、さらに、化合物FM19G11(図1)を化学合成によって得るための方法に関連する。化合物FM19G11の中間体および構造類似体を、化学合成によって得るための方法につても記載する。これらの類似体は、構造と活性との関係(SAR)に関する研究(実施例3〜31)において比較する。
開発した研究対象物は、本発明の化合物が、HIFの標的遺伝子(例えば、プロリル−ヒドロラーゼ3(PHD 3)、自己分泌制御におけるHIFそのもの、および腫瘍細胞モデルにおける血管内皮増殖因子(VEGF))の転写をどのようにして阻害するのかを示す(実施例32)。この阻害活性は、神経前駆細胞のモデル、成体の脊髄上衣の神経前駆細胞(epNSC)(実施例34および35)の初代培養、最後に、歯髄の間葉系の細胞モデル(実施例36および37)においても示される(実施例33)。
本発明は、互いに異なる組織の表現をともなう哺乳類の細胞株のパネルに対して、ならびに、魚の胚のモデルにおける脊椎動物の生物体全体に対して(実施例45)、FM19G11の細胞毒性が低いことを実証する(実施例39)。
本発明は、epSPCが分化してオリゴデンドロサイトになるプロセスの進行を、低酸素条件下で、本発明の化合物FM19G11がどのようにして可能にするのかを示している(実施例42)。また、正常酸素条件下で、該化合物がどのようにして自己再生を可能にし、未分化状態を維持するのかを示している(実施例43)。
本発明は、HPLCを使用し、FM19G11の保持時間を算出することによってFM19G11を特徴づける(実施例46)。この分析方法は、ウシ血清においてFM19G11の安定性を確立する役目をする(実施例47)。
本研究は、HT29のヒトの大腸癌細胞において、どのようにしてFM19G11が、DNA損傷応答をトリガーするのか(実施例48)、また、このプロセスに関与する活性化の動態的変化(実施例49)についても検討する。
本発明の化合物は、ヒトの結腸癌の腫瘍細胞において、p53依存的に細胞周期のG1/S期停止を誘導する(実施例20)。また、mTORシグナル経路と細胞周期のS期停止との間に存在する関連性について実施例51において詳述する。
本発明の実施例56は、FM19G11が、後成的な現象によってクロマチンを除去する能力を、どのようにして有しているのかを示す。
これらの全ての特徴によって、本発明の化合物は、血管新生、炎症、アポトーシス、および細胞治療の病理的プロセスに対する修飾因子および/または阻害剤の候補となりうる。
〔実施例〕
以下に記載する具体的な実施例は、ここで本発明の特徴を例証する役目をする。これらの実施例は、例証を提供することだけを目的としてここに記載されているのであって、請求項において記載された本発明に対してなんらの制限を加えるものではない。
〔実施例1:HIF 1のアッセイ、および化合物FM19G11の選択〕
HIFの活性に対して直接作用する阻害剤を特定するために、初めに、科学文献ではHeLaとして知られている頸部腫瘍株から、安定に組換え可能な株を作製した。該頸部腫瘍株は、ヒトの血管内皮増殖因子(hVEGF)の部位−985と−951との間に位置する領域が、9回反復し(9X)、ルシフェラーゼ・レポーター遺伝子(LUC)に融合された、デオキシリボ核酸(DNA)の配列を含有する。このプラスミドは、Hospital de La Princesa of Madrid病院のDr. Manuel Ortiz de Landazuriから提供を受けたたもので、9XHRE−LUCと呼ばれ、市販のキット(Endofree Maxi−Prep、 Qiagen, Inc.、Valencia, CA)を使って調製された。形質移入を、FuGene6(Roche, cat.1814443)を使って、製造業者の指示にしたがって実施した。μg DNAとμg FuGeneとの比は、1:3であった。形質移入された細胞株は、哺乳類細胞内でハイグロマイシン耐性遺伝子が発現し、形質移入されたクローンのを選択を可能にするベクターpCMV−Hygromを、同時導入することによって生成した。48時間後に、増殖培地を、100μg/mlのハイグロマイシン(Sigma)を含有する新しい培地と交換した。抗生物質に対して耐性を有するクローンを収集し、RT−PCRにより分析して、所望の構成を有するクローンを選択した。通例のように、不活化された10%のウシ胎仔血清(Whittacker Bioproducts)、ペニシリン(50IU/ml)、およびストレプトマイシン(50μg/ml)(Invitrogen−Life Technologies、Carlsbad、CA)を補充したDMEM(Invitrogen−Life Technologies、Carlsbad、CA)で継代培養を行うことより、HeLa 9XHRE−LUC細胞株を対数増殖期に維持した。この細胞を、5%のCOおよび300nMのDesferoxamine(DFX;Sigma、St.Louis、MO)を含有する加湿環境下で、37℃で培養した。
CIPFの収集データの化合物は、Sigma−Aldrichの市販の収集データから選択したものであるが、これらの化合物は、5mMの終濃度でDMSOに可溶化し、−80℃で保存した。ルシフェラーゼアッセイにおけるこれらの化合物の濃度は、反応を行った多ウェルプレートのウェルで最終的に1mcMであった。ルシフェラーゼアッセイは、白色の96穴のプレート(Valtecknova ref. 3917)内で行われ、Bright−Glo(登録商標)Luciferase Assay System(Promega, Inc.、Madison、WI)のキットを製造業者が提供する指示にしたがって使用した。分析した12,250種類の化合物から、上記化合物FM19G11を選択した。FM19G11は、化学的な低酸素条件(300nM DFX)下で、80nMのIC50を有していたが、これは、低酸素チャンバー(IN VIVO 400 RUSKINN)において物理的な低酸素条件(O1%)下で、後に確認した活性である。
図2AはFM19G11の化学構造を示し、図2Bは、FM19G11について、80nMから得られた対応するIC50の用量応答曲線を示している。図2Cは、低酸素条件(O1%)および正常酸素条件(O20%)下における、FM19G11によるHIF1αの活性阻害(単位は、相対的ルシフェラーゼ単位(RLU))の関係を示している。
〔実施例2:FM19G11の選択性の研究〕
活性化合物FM19G11を用いた選択性アッセイは、白色の96穴のプレートにおいて、AP−1複合体における転写因子の転写活性を示す、組換え型の株Hek 293−TRE−LUCおよびHek 293−CRE−LUCを用いて実施された。転写活性を測定するためのルシフェラーゼアッセイは、Bright−Glo(登録商標)Luciferase Assay System(Promega, Inc.、Madison、WI)のキットを使用して、製造業者が提供する指示にしたがって実施した。上記Hek 293−TRE−LUCおよびHek 293−CRE−LUCの株は、AP−1複合体の転写因子の応答エレメント、特に、c−FOSおよびJUNBの応答エレメントをそれぞれに含有する。Hek 293−TRE−LUCおよびHek 293−CRE−LUCの株は、Dr. Rosa Farrasから提供を受けたものである。
図3は、これらの3つの細胞株に対して実施されたアッセイにおいて観察される、ルシフェラーゼの発現阻害による、FM19G11の選択的な活性を示す。上記HeLa 9XHRE−LUC株(黒色の棒グラフ)では、阻害剤の濃度に用量依存した阻害になっている一方、Hek 293−TRE−LUC(灰色の棒グラフ)およびHek 293−CRE−LUC(白色の棒グラフ)では、転写レベルは、LUCレポーター遺伝子のルミネッセンス発光によって測定され、実施した実験条件下では、いかなる場合においても影響されることがなかった。
図1は、本発明の化合物の調製を要約したものである。
〔実施例3。メチル3−アミノベンゾアートの合成〕
3−アミノ安息香酸(0.3g、2.18mmol)の無水メタノール(3.26ml)溶液に、塩化チオニル(0.37ml、3.27mmol)をゆっくりと0℃で添加した。反応物を16時間攪拌し、そしてNaHCOの飽和水溶液で加水分解した。粗生成物をCHCaClで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、精製せずに以下の過程で使用した(収量:90%)。
〔実施例4。メチル3−((2,4−ジニトロ)ベンズアミド)ベンゾアートの合成。〕
2,4−ジニトロ安息香酸(0.17g、0.82mmol)の無水CHCaCl(4ml)溶液に、No.1(0.11g、0.82mmol)、EDCI(0.23g、1.24mmol)、HOBt(0.25g、1.65mmol)、およびEtN(0.23ml、1.65mmol)を添加した。3時間撹拌した後、反応物を、NHCaClの飽和水溶液で加水分解した。粗生成物をCHCaClで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、ヘキサン−EtOAc(2:1)を溶出剤として用いて、フラッシュ・クロマトグラフィーによって精製した(収量:61%)。mpは140℃〜143℃であった。H NMR(300MHz、CDCOCD) δ 3.94(s、3H)、7.59(t、J=8.0Hz、1H)、7.86(dt、J=7.8Hz、J=1.0Hz、1H)、8.02(dc、J=9.0Hz、J=1.2Hz、1H)、8.25(d、J=8.5Hz、1H)、8.45(t、J=1.8Hz、1H)、8.76(dd、J=8.4Hz、J=2.5Hz、1H)、8.94(d、J=2.4Hz、1H)、10.2(broad s、1H)。13C NMR(75.5MHz、CDCOCD) δ 51.6、119.8、120.5、124.1、125.2、128.3、129.2、130.9、137.5、138.8、147.0、148.6、162.7、166.0。C1511(M)について算出したHRMS(EI)は345.0597、実験値は345.0570であった。
〔実施例5。3−((2,4−ジニトロ)ベンズアミド)安息香酸の合成。〕
No.2(0.1g、0.28mmol)の4:1 THF:HO(15ml)溶液に、LiOH・HO(0.036g、0.86mmol)を添加した。反応物を16時間攪拌し、そして1Mの塩化水素で加水分解した。粗生成物をEtOAcで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、つづけて精製をせずに使用した(収量:99%)。mpは260℃〜263℃であった。H NMR(300MHz、CDCOCD) δ 2.90(broad s、1H)、7.58(t、J=8.3Hz、1H)、7.90(dt、J=7.8Hz、J=1.1Hz、1H)、8.0(dt、J=8.2Hz、J=1.0Hz、1H)、8.2(d、J=8.2Hz、1H)、8.4(t、J=1.4Hz、1H)、8.7(dd、J=8.6Hz、J=2.3Hz、1H)、8.9(d、J=2.1Hz、1H)、10.2(broad s、1H)。13C NMR(75.5MHz、CDCl) δ 121.5、122.7、125.8、127.2、130.1、130.8、132.5、133.1、139.3、140.5、148.7、150.2、164.4、168.0。C14(M)について算出したHRMS(EI)は331.0440、実験値は331.0430であった。
〔実施例6。2−オキソ−2−(p−トリル)エチル3−((2,4−ジニトロ)ベンズアミド)ベンゾアートの合成。〕
酸No.3(0.2g、0.6mmol)の1:1 HO/EtOH(6ml)溶液に、CsCOの水溶液を、pHが6.5になるまで添加して、セシウム塩を得た。この塩を減圧下で濃縮し、DMF(3.2ml)に再溶解させ、ブロモメチル−p−トリルケトン(0.141g、0.66mmol)を添加した。3時間撹拌した後、反応物を、塩化ナトリウムの飽和水溶液で加水分解した。粗生成物をEtOAcで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、ヘキサン−EtOAc(3:1)を溶出剤として用いて、フラッシュ・クロマトグラフィーによって精製した(収量:54%)。mpは168℃〜170℃であった。H NMR(300MHz、CDCl) δ 2.37(s、3H)、5.41(s、2H)、7.18〜7.25(m、3H)、7.59(d、J=8.6Hz、2H)、7.69(t、J=6.8Hz、2H)、7.85(d、J=8.3Hz、1H)、8.01(s、1H)、8.30(dd、J=8.3Hz、J=2.0Hz、1H)、8.64(d、J=2.0Hz、1H)、8.95(s、1H)。13C NMR(75.5MHz、CDCl) δ 21.9、66.4、120.0、121.3、125.2、126.6、127.8、128.2、129.4、129.7、130.6、131.1、137.3、137.4、145.7、146.3、148.1、162.6、165.3、173.9、192.8。C2317(M)について算出したHMRS(EI)は463.1015、実験値は463.0999であった。
〔実施例7。メチル3−(2−ニトロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)ベンゾアートの合成。〕
2−ニトロ−4−(トリフルオロメチル)安息香酸(0.14g、0.62mmol)の無水CHCaCl(3ml)溶液に、No.1(0.08g、0.62mmol)、EDCI(0.17g、0.93mmol)、HOBt(0.19g、1.24mmol)、およびEtN(0.17ml、1.24mmol)を添加した。16時間撹拌した後、反応物を、NHCaClの飽和水溶液で加水分解した。粗生成物をCHCaClで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、ヘキサン−EtOAc(4:1)を溶出剤として用いて、フラッシュ・クロマトグラフィーによって精製した(収量:90%)。mpは133℃〜136℃であった。H NMR(300MHz、CDCl) δ 3.75(s、3H)、7.30(t、J=7.6Hz、1H)、7.66(s、1H)、7.69(s、1H)、7.79(d、J=7.7Hz、1H)、7.81(d、J=8.9Hz、1H)、7.91(s、1H)、8.17(s、1H)、8.46(s、1H)。13C NMR(75.5MHz、CDCl) δ 52.6、121.5、122.0(c、CF=3.7Hz)、122.5(c、CF=275.4Hz)、125.3、126.5、129.5、130.0、130.8(c、CF=3.2Hz)、131.0、133.4(c、CF=34.8Hz)、135.4、137.5、146.4、163.9、167.0。19F NMR(282.4MHz、CDCl) δ −63.1(s、3F)。C1611(M)について算出したHRMS(EI)は368.0620、実験値は368.0620であった。
〔実施例8。3−(2−ニトロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)安息香酸の合成。〕
No.5(0.1g、0.33mmol)の4:1 THF:HO(20ml)溶液に、LiOH・HO(0.56g、1.6mmol)を添加した。反応物を16時間攪拌し、そして1Mの塩化水素で加水分解した。粗生成物をEtOAcで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、つづけて精製をせずに使用した(収量:83%)。mpは264℃〜267℃であった。H NMR(300MHz、CDCOCD) δ 7.40(t、J=7.7Hz、1H)、7.71(dt、J=7.8Hz、J=1.3Hz、1H)、7.88(dc、J=7.8Hz、J=1.1Hz)、8.01(d、J=8.1Hz、1H)、8.14(dd、J=7.8Hz、J=0.9Hz、1H)、8.30(t、J=1.8Hz、1H)、8.34(s、1H)、9.97(broad s、1H)。13C NMR(75.5MHz、CDCOCD) δ 121.8、122.5(c、CF=4.1Hz)、124.9、126.3、123.8(c、CF=272.7Hz)、130.0、131.5、132.3、133.0(c、CF=35.3Hz)、136.9、139.7、148.0、163.9、167.2。19F NMR(282.4MHz、CDCOCD) δ −111.6(s、3F)。C15(M)について算出したHRMS(EI)は354.0463、実験値は354.0473であった。
〔実施例9。2−オキソ−2−(p−トリル)エチル3−(2−ニトロ−4−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)ベンゾアートの合成。〕
酸No.6(0.06g、0.2mmol)の1:1 HO/EtOH(2ml)溶液に、CsCOの水溶液を、pHが6.5になるまで添加して、セシウム塩を得た。この塩を減圧下で濃縮し、DMF(1.0ml)に再溶解させ、ブロモメチル−p−トリルケトン(0.03g、0.18mmol)を添加した。4時間撹拌した後、反応物を、塩化ナトリウムの飽和水溶液で加水分解した。粗生成物をEtOAcで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、ヘキサン−EtOAc(4:1)を溶出剤として用いて、フラッシュ・クロマトグラフィーによって精製した(収量:32%)。mpは179℃〜181℃であった。H NMR(300MHz、CDCOCD) δ 2.29(s、3H)、5.58(s、2H)、7.24(s、1H)、7.26(s、1H)、7.44(t、J=7.8Hz、1H)、7.77(dt、J=8.0Hz、J=1.3Hz、1H)、7.80(s、1H)、7.83(s、1H)、7.91(dc、J=8.1Hz、J=1.1Hz、1H)、8.02(d、J=7.8Hz、1H)、8.14(d、J=8.4Hz、1H)、8.34(s、1H)、8.37(t、J=1.4Hz、1H)、10.04(s、1H)。13C NMR(75.5MHz、CDCOCD) δ 20.2、66.2、120.2、122.4(c、CF=272.1Hz)、121.1(c、CF=3.9Hz)、123.9、124.9、127.3、128.8、128.9、130.1、130.2、131.3、131.5、135.6、138.5、144.2、146.6、162.7、164.7、191.0。19F NMR(282.4MHz、CDCOCD) δ −63.06(s、3F)。C2417(M)について算出したHRMS(EI)は486.1038、実験値は486.1033であった。
〔実施例10。メチル3−(4−ニトロ−2−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)ベンゾアートの合成。〕
4−ニトロ−2−(トリフルオロメチル)安息香酸(0.17g、0.74mmol)の無水CHCaCl(2ml)溶液に、No.1(0.1g、0.74mmol)、EDCI(0.21g、1.11mmol)、HOBt(0.22g、1.48mmol)、およびEtN(0.20ml、1.48mmol)を添加した。16時間撹拌した後、反応物を、NHCaClの飽和水溶液で加水分解した。粗生成物をCHCaClで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、ヘキサン−EtOAc(5:1)を溶出剤として用いて、フラッシュ・クロマトグラフィーによって精製した(収量:69%)。mpは102℃〜104℃であった。H NMR(300MHz、CDCl) δ 3.74(s、3H)、7.27(t、J=7.9Hz、1H)、7.63〜7.72(m、3H)、7.96(t、J=1.5Hz、1H)、8.21(dd、J=8.4Hz、J=2.4Hz、1H)、8.31(d、J=2.2Hz、1H)、8.80(s、1H)。13C NMR(75.5MHz、CDCl) δ 52.5、121.4、122.3(c、CF=4.9Hz)、122.5(c、CF=273.6Hz)、125.1、126.6、127.1、129.3(c、CF=25.1Hz)、129.5、130.3、131.2、137.4、140.8、148.3、164.1、166.8。19F NMR(282.4MHz、CDCl) δ −59.6(s、3F)。C1611(M)について算出したHRMS(EI)は368.0620、実験値は368.0618であった。
〔実施例11。3−(4−ニトロ−2−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)安息香酸の合成。〕
No.8(0.08g、0.23mmol)の4:1 THF:HO(13ml)溶液に、LiOH・HO(0.039g、0.94mmol)を添加した。反応物を16時間攪拌し、そして1Mの塩化水素で加水分解した。粗生成物をEtOAcで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、つづけて精製をせずに使用した(収量:99%)。mpは250℃〜255℃であった。H NMR(300MHz、CDCOCD) δ 7.41(t、J=7.9Hz、1H)、7.72(dt、J=7.5Hz、J=1.4Hz、1H)、7.89(dc、J=9.0Hz、J=1.1Hz、1H)、8.02(d、J=8.7Hz、1H)、8.32(t、J=2.1Hz、1H)、8.47〜8.52(m、2H)、9.96(s、1H)。13C NMR(75.5MHz、CDCOCD) δ 122.6、123.4(c、CF=5.3Hz)、125.8、127.1、129.0、130.0(c、CF=32.9Hz)、130.7、132.2、133.1、140.5、143.1、149.9、165.6、168.1。19F NMR(282.4MHz、CDCl) δ −59.3(s、3F)。C15(M)について算出したHRMS(EI)は354.0463、実験値は354.0475であった。
〔実施例12。2−オキソ−2−(p−トリル)エチル3−(4−ニトロ−2−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)ベンゾアートの合成。〕
酸No.9(0.07g、0.2mmol)の1:1 HO/EtOH(2ml)溶液に、CsCOの水溶液を、pHが6.5になるまで添加し、セシウム塩を得た。この塩を減圧下で濃縮し、DMF(1.0ml)に再溶解させ、ブロモメチル−p−トリルケトン(0.04g、0.20mmol)を添加した。48時間撹拌した後、反応物を、塩化ナトリウムの飽和水溶液で加水分解した。粗生成物をEtOAcで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、ヘキサン−EtOAc(4:1)を溶出剤として用いて、フラッシュ・クロマトグラフィーによって精製した(収量:28%)。mpは165℃〜166℃であった。H NMR(300MHz、CDCOCD) δ 2.28(s、3H)、5.59(s、2H)、7.24(s、1H)、7.27(s、1H)、7.45(t、J=8.2Hz、1H)、7.77(d、J=7.7Hz、1H)、7.81(s、1H)、7.83(s、1H)、7.93(dd、J=7.2Hz、J=2.0Hz、1H)、8.04(d、J=8.7Hz、1H)、8.39(t、J=1.9Hz、1H)、8.48(broad s、1H)、8.50〜8.53(m、1H)、10.0(broad s、1H)。13C NMR(75.5MHz、CDCOCD) δ 20.2、66.3、120.3、121.4(c、CF=4.6Hz)、123.9、125.0、126.9、127.3、128.0(c、CF=6.3Hz)、128.8、128.9、129.5(c、CF=285.8Hz)、130.0、130.2、138.4、140.8、144.1、147.9、163.5、164.6、190.9。19F NMR(282.4MHz、CDCl) δ −59.60(s、3F)。C2417(M)について算出したHRMS(EI)は486.1039、実験値は486.1026であった。
〔実施例13。メチル3−(2,4−ビス−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)ベンゾアートの合成。〕
2,4−ビス−(トリフルオロメチル)安息香酸(0.32g、1.25mmol)の無水CHCaCl(5ml)溶液に、No.1(0.16g、1.25mmol)、EDCI(0.35g、1.87mmol)、HOBt(0.38g、2.50mmol)、およびEtN(0.34ml、2.50mmol)を添加した。16時間撹拌した後、反応物を、NHCaClの飽和水溶液で加水分解した。粗生成物をCHCaClで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、ヘキサン−EtOAc(3:1)を溶出剤として用いて、フラッシュ・クロマトグラフィーによって精製した(収量:50%)。mpは130℃〜132℃であった。H NMR(300MHz、CDCl) δ 3.82(s、3H)、7.41(t、J=7.5Hz、1H)、7.61(broad s、1H)、7.73〜7.81(m、2H)、7.85〜7.94(m、3H)、8.02(broad s、1H)。13C NMR(75.5MHz、CDCl) δ 52.5、121.2(c、CF=5.1Hz)、121.4、124.0、124.8、125.1、126.5、128.6(c、CF=34.5Hz)、129.3、129.6、131.2、132.8(c、CF=32.1Hz)、137.6、138.8。19F NMR(282.4MHz、CDCl) δ −59.2(s、3F)、−63.1(s、3F)。C1711NO(M)について算出したHRMS(EI)は391.0643、実験値は391.0645であった。
〔実施例14。3−(2,4−ビス−(トリフルオロメチル)ベンズアミド)安息香酸の合成。〕
No.11(0.2g、0.51mmol)の4:1 THF:HO(29ml)溶液に、LiOH・HO(0.085g、2.04mmol)を添加した。反応物を16時間攪拌し、そして1Mの塩化水素で加水分解した。粗生成物をEtOAcで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、つづけて精製をせずに使用した(収量:97%)。mpは238℃〜241℃であった。H NMR(300MHz、CDCOCD) δ 7.41(t、J=7.9Hz、1H)、7.72(dt、J=7.8Hz、J=1.2Hz、1H)、7.90(dc、J=8.1Hz、J=0.9Hz、1H)、7.94(d、J=7.8Hz、1H)、8.04(m、2H)、8.33(t、J=1.7、1H)、9.84(broad s、1H)。13C NMR(75.5MHz、CDCOCD) δ 120.4、123.0、123.5、124.9、127.4(c、CF=31.9Hz)、128.6、129.0、129.3、130.8、130.9(c、CF=33.5Hz)、138.4、139.2、163.9、165.9。19F NMR(282.4MHz、CDCl) δ −59.2(s、3F)、−63.1(s、3F)。
〔実施例15。2−オキソ−2−(p−トリル)エチル3−(2,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンズアミド)ベンゾアートの合成。〕
酸No.12(0.07g、0.2mmol)の1:1 HO/EtOH(2ml)溶液に、CsCOの水溶液を、pHが6.5になるまで添加し、セシウム塩を得た。この塩を減圧下で濃縮し、DMF(1.0ml)に再溶解させ、ブロモメチル−p−トリルケトン(0.04g、0.20mmol)を添加した。12時間撹拌した後、反応物を、塩化ナトリウムの飽和水溶液で加水分解した。粗生成物をEtOAcで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、ヘキサン−EtOAc(3:1)を溶出剤として用いて、フラッシュ・クロマトグラフィーによって精製した(収量:31%)。mpは161℃〜163℃であった。H NMR(300MHz、CDCl) δ 2.36(s、3H)、5.46(s、2H)、7.20〜7.23(m、2H)、7.38(t、J=8.2Hz、1H)、7.73(d、J=8.7Hz、2H)、7.77〜7.85(m、4H)、7.89〜7.94(m、2H)、8.11(s、1H)。13C NMR(75.5MHz、CDCl) δ 21.8、66.5、121.3、123.7、125.1、126.6、127.8、128.1、128.9(c、CF=40.7Hz)、129.4、129.5、129.6、130.2、131.4、137.4、138.7、142.5、145.1、164.3、165.4、191.8。19F NMR(282.4MHz、CDCl) δ −59.2(s、3F)、−63.1(s、3F)。C2517NO(M)について算出したHRMS(EI)は509.1061、実験値は509.1062であった。
〔実施例16。メチル3−(ベンズアミド)ベンゾアートの合成。〕
安息香酸(0.4g、3.6mmol)の無水CHCaCl(8ml)溶液に、No.1(0.2g、1.8mmol)、EDCI(0.5g、2.7mmol)、HOBt(0.5g、3.7mmol)、およびEtN(0.5ml、3.7mmol)を添加した。16時間撹拌した後、反応物を、NHCaClの飽和水溶液で加水分解した。粗生成物をCHCaClで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、ヘキサン−EtOAc(5:1)を溶出剤として用いて、フラッシュ・クロマトグラフィーによって精製した(収量:20%)。
〔実施例17。3−(ベンズアミド)安息香酸の合成。〕
No.14(0.05g、0.2mmol)の4:1 THF:HO(14ml)溶液に、LiOH・HO(0.03g、0.8mmol)を添加した。反応物を16時間攪拌し、そして1Mの塩化水素で加水分解した。粗生成物をEtOAcで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、つづけて精製をせずに使用した(収量:90%)。
〔実施例18。2−オキソ−2−(p−トリル)エチル3−(ベンズアミド)ベンゾアートの合成。〕
酸No.15(0.04g、0.2mmol)の1:1 HO/EtOH(2ml)溶液に、CsCOの水溶液を、pHが6.5になるまで添加し、セシウム塩を得た。この塩を減圧下で濃縮し、DMF(1.0ml)に再溶解させ、ブロモメチル−p−トリルケトン(0.04g、0.2mmol)を添加した。12時間撹拌した後、反応物を、塩化ナトリウムの飽和水溶液で加水分解した。粗生成物をEtOAcで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、ヘキサン−EtOAc(3:1)を溶出剤として用いて、フラッシュ・クロマトグラフィーによって精製した(収量:52%)。mpは158℃〜160℃であった。H NMR(300MHz、CDCl) δ 2.40(s、3H)、5.51(s、2H)、7.27(d、J=8.2Hz、2H)、7.41〜7.55(m、4H);7.81(s、1H);7.84〜7.88(m、4H);8.02(s、1H);8.11〜8.14(m、2H)。13C NMR(75.5MHz、CDCl) δ 22.1、66.9、121.6、125.5、126.2、127.4、128.2、129.1、129.6、129.9、132.0、132.3、134.9、138.6、145.3、165.9、166.2、192.1。C2319NO(M)について算出したHRMS(EI)は373.1314、実験値は373.1299であった。
〔実施例19。2−オキソ−2−(4−トリフルオロメチル)エチル3−(2,4−(ジニトロ)ベンズアミド)ベンゾアートの合成。〕
酸No.3(0.2g、0.6mmol)の1:1 HO/EtOH(2ml)溶液に、CsCOの水溶液を、pHが6.5になるまで添加し、セシウム塩を得た。この塩を減圧下で濃縮し、DMF(1.0ml)に再溶解させ、4−(トリフルオロメチル)フェナシルブロミド(0.06g、0.2mmol)を添加した。12時間撹拌した後、反応物を、塩化ナトリウムの飽和水溶液で加水分解した。粗生成物をEtOAcで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、ヘキサン−EtOAc(1:1)を溶出剤として用いて、フラッシュ・クロマトグラフィーによって精製した(収量:34%)。mpは198℃〜200℃であった。H NMR(300MHz、CDCl) δ 5.53(s、2H)、7.41〜7.47(m、1H)、7.74(d、J=9Hz、2H)、7.85〜7.93(m、3H)、8.01(d、J=6.0Hz、2H)、8.10〜8.18(m、2H)、8.50(dd、J=8.1Hz、J=2.7Hz、1H)、8.87(s、1H)。13C NMR(75.5MHz、CDCOCD) δ 67.9、120.8、121.8、125.5、126.5、126.8(c、CF=3.5Hz)、129.3、129.5、130.3、131.3、131.8、135.0(c、CF=32.4Hz)、138.4、139.9、147.9、149.5、163.7、166.0、192.6。19F NMR(282.4MHz、CDCl) δ −63.30(s、3F)。C2314(M)について算出したHRMS(EI)は517.0733、実験値は517.0759であった。
〔実施例20。2−フェニル−2−オキソエチル3−(2,4−(ジニトロ)ベンズアミド)ベンゾアートの合成。〕
酸No.3(0.1g、0.3mmol)の1:1 HO/EtOH(4ml)溶液に、CsCOの水溶液を、pHが6.5になるまで添加し、セシウム塩を得た。この塩を減圧下で濃縮し、DMF(2ml)に再溶解させ、2−ブロモアセトフェノン(0.07g、0.35mmol)を添加した。12時間撹拌した後、反応物を、塩化ナトリウムの飽和水溶液で加水分解した。粗生成物をEtOAcで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、ヘキサン−EtOAc(2:1)を溶出剤として用いて、フラッシュ・クロマトグラフィーによって精製した(収量:63%)。mpは124℃〜126℃であった。H NMR(300MHz、CDCl) δ 5.41(s、2H)、7.25(d、J=7.7Hz、1H)、7.42(t、J=7.5Hz、2H)、7.57(t、J=6.6Hz、1H)、7.72(m、4H)、7.85(d、J=8.7Hz、1H)、7.97(s、1H)、8.33(t、J=7.2Hz、1H)、8.64(s、1H)、8.86(broad s、1H)。13C NMR(75.5MHz、CDCl) δ 61.0、66.9、120.2、121.5、125.5、126.7、128.1、128.6、129.4、129.7、129.9、131.0、133.8、134.9、137.6、137.7、146.5、148.3、163.2、165.8、193.8。C2215(M)について算出したHRMS(EI)は449.0859、実験値は449.0871であった。
〔実施例21。メチル3−(4−ニトロベンズアミド)ベンゾアートの合成。〕
4−ニトロ安息香酸(0.33g、2.0mmol)の無水CHCaCl(9ml)溶液に、No.1(0.27g、2.0mmol)、EDCI(0.57g、3.0mmol)、HOBt(0.61g、4.0mmol)、およびEtN(0.55ml、4.0mmol)を添加した。16時間撹拌した後、反応物を、NHCaClの飽和水溶液で加水分解した。粗生成物をCHCaClで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、ヘキサン−EtOAc(4:1)を溶出剤として用いて、フラッシュ・クロマトグラフィーによって精製した(収量:37%)。
〔実施例22。3−(4−ニトロベンズアミド)安息香酸の合成。〕
No.20(0.16g、0.55mmol)の4:1 THF:HO(12ml)溶液に、LiOH・HO(0.092g、2.19mmol)を添加した。反応物を16時間攪拌し、そして1Mの塩化水素で加水分解した。粗生成物をEtOAcで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、つづけて精製をせずに使用した(収量:80%)。
〔実施例23。2−オキソ−2−(p−トリル)エチル3−(4−ニトロベンズアミド)ベンゾアートの合成。〕
酸No.21(0.1g、0.3mmol)の1:1 HO/EtOH(2ml)溶液に、CsCOの水溶液を、pHが6.5になるまで添加し、セシウム塩を得た。この塩を減圧下で濃縮し、DMF(1.0ml)に再溶解させ、ブロモメチル−p−トリルケトン(0.7g、0.35mmol)を添加した。12時間撹拌した後、反応物を、塩化ナトリウムの飽和水溶液で加水分解した。粗生成物をEtOAcで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、ヘキサン−EtOAc(4:1)を溶出剤として用いて、フラッシュ・クロマトグラフィーによって精製した(収量:31%)。mpは172℃〜173℃であった。H NMR(300MHz、CDCOCD) δ 2.29(s、3H)、5.58(s、2H)、7.25(d、J=7.8Hz、2H)、7.43(t、J=7.8Hz、1H)、7.75(d、J=7.3Hz、1H)、7.82(d、J=7.3Hz、2H)、8.07(d、J=8.6Hz、1H)、8.16(d、J=8.3Hz、2H)、8.24(d、J=8.3Hz、2H)、8.42(broad s、1H)。13C NMR(75.5MHz、CDCOCD) δ 22.4、68.4、122.9、125.2、126.5、126.9、129.5、130.6、130.7、131.1、132.1、133.6、141.1、142.2、146.3、151.5、165.6、166.9、193.1。C2318(M)について算出したHRMS(EI)は418.1179、実験値は418.1164であった。
〔実施例24。メチル3−(2−ニトロベンズアミド)ベンゾアートの合成。〕
2−ニトロ安息香酸(0.33g、2.0mmol)の無水CHCaCl(9ml)溶液に、No.1(0.27g、2.0mmol)、EDCI(0.57g、3.0mmol)、HOBt(0.61g、4.0mmol)、およびEtN(0.55ml、4.0mmol)を添加した。16時間撹拌した後、反応物を、NHCaClの飽和水溶液で加水分解した。粗生成物をCHCaClで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、ヘキサン−EtOAc(4:1)を溶出剤として用いて、フラッシュ・クロマトグラフィーによって精製した(収量:25%)。mpは175℃〜176℃であった。H NMR(300MHz、CDCOCD) δ 3.90(s、3H)、7.53(t、J=7.7Hz、1H)、7.77〜7.85(m、2H)、7.87〜7.93(m、2H)、8.02(d、J=8.7Hz、1H)、8.16(d、J=7.6Hz、1H)、8.45(broad s、1H)。13C NMR(75.5MHz、CDCOCD) δ 53.6、122.2、125.6、125.9、126.5、130.7、130.7、132.6、134.5、135.4、141.1、148.6、166.1、167.7。C1512(M)について算出したHRMS(EI)は300.0746、実験値は300.0754であった。
〔実施例25。3−(2−ニトロベンズアミド)安息香酸の合成。〕
No.23(0.12g、0.43mmol)の4:1 THF:HO(9.5ml)溶液に、LiOH・HO(0.072g、1.72mmol)を添加した。反応物を16時間攪拌し、そして1Mの塩化水素で処理した。粗生成物をEtOAcで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、つづけて精製をせずに使用した(収量:75%収量)。mpは262℃〜265℃であった。H NMR(300MHz、CDCOCD) δ 7.39(t、J=6.9Hz、1H)、7.63〜7.78(m、4H)、7.90(d、J=8.1Hz、1H)、8.01(d、J=8.7Hz、1H)、8.32(broad s、1H)。13C NMR(75.5MHz、CDCOCD) δ 121.7、124.8、125.2、126.1、129.9、131.8、132.2、133.8、134.8、140.2、147.9、165.3、167.3。
〔実施例26。2−オキソ−2−(p−トリル)エチル3−(2−ニトロベンズアミド)ベンゾアートの合成。〕
酸No.24(0.04g、0.1mmol)の1:1 HO/EtOH(2ml)溶液に、CsCOの水溶液を、pHが6.5になるまで添加し、セシウム塩を得た。この塩を減圧下で濃縮し、DMF(1.0ml)に再溶解させ、ブロモメチル−p−トリルケトン(0.03g、0.1mmol)を添加した。12時間撹拌した後、反応物を、塩化ナトリウムの飽和水溶液で加水分解した。粗生成物をEtOAcで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、ヘキサン−EtOAc(4:1)を溶出剤として用いて、フラッシュ・クロマトグラフィーによって精製した(収量:34%)。mpは166℃〜168℃であった。H NMR(300MHz、CDCl) δ 2.35(s、3H)、5.41(s、2H)、7.21(d、J=7.9Hz、2H)、7.31(t、J=8.0Hz、1H)、7.41〜7.47(m、1H)、7.56〜7.63(m、2H)、7.71〜7.77(m、2H)、7.88(d、J=7.9Hz、1H)、7.94(d、J=7.9Hz、1H)、8.07(broad s、1H)、8.58(broad s、1H)。13C NMR(75.5MHz、CDCl) δ 21.8、53.5、66.5、121.3、124.5、125.1、126.2、128.0、128.8、129.2、129.6、129.9、130.6、131.4、132.6、133.9、137.9、145.2、146.1、164.7、165.4、192.1。C2318(M)について算出したHRMS(EI)は418.1169、実験値は418.1164であった。
〔実施例27。2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソエチル3−(2,4−(ジニトロ)ベンズアミド)ベンゾアートの合成。〕
酸No.3(0.2g、0.6mmol)の1:1 HO/EtOH(12ml)溶液に、CsCOの水溶液を、pHが6.5になるまで添加し、セシウム塩を得た。この塩を減圧下で濃縮し、DMF(6ml)に再溶解させ、4−(((三級のブチル)ジメチル)シリルオキシ)フェナシルブロミド(0.2g、0.6mmol)を添加した。12時間撹拌した後、反応物を、塩化ナトリウムの飽和水溶液で加水分解した。粗生成物をEtOAcで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、ヘキサン−EtOAc(4:1)を溶出剤として用いて、フラッシュ・クロマトグラフィーによって精製した(収量:59%)。融点は229℃〜230℃であった。H NMR(300MHz、CDCOCD) δ 5.53(s、2H)、6.85(d、J=7.9Hz、2H)、7.45(t、J=8.2Hz、1H)、7.77(d、J=7.8Hz、1H)、7.83(d、J=8.1Hz、1H)、7.92(d、J=8.2Hz、1H)、8.10(d、J=8.8Hz、1H)、8.34(s、1H)、8.61(d、J=8.2、1H)、8.77(broad s、1H)、9.22(s、1H)、10.11(s、1H)。13C NMR(75.5MHz、CDCOCD) δ 68.2、117.2、121.6、122.4、122.5、125.9、126.1、127.2、128.2、130.0、131.0、131.9、132.6、139.1、140.6、148.8、150.2、164.0、164.4、166.7、191.7。C2215(M)について算出したHRMS(EI)は465.0808、実験値は465.0814であった。
〔実施例28。2−((トリメチル)シリル)エチル4−(2−(ブロモ)アセチル)ベンゾアートの合成。〕
4−(2−(ブロモ)アセチル)安息香酸(0.15g、0.62mmol)のCHCaCl(5ml)溶液に、DMAP(0.01g、0.12mmol)、DCC(0.14g、0.68mmol)、および2−トリメチルシリルエタノール(0.11ml、0.80mmol)を、0℃で添加した。混合物を室温で4時間攪拌し、それから減圧下で濃縮した。残留物を、ヘキサン−EtOAc(3:1)を溶出剤として用いて、フラッシュ・クロマトグラフィーによって精製した(収量:47%)。融点は60℃〜61℃であった。H NMR(300MHz、CDCl) δ 0.02(s、9H)、1.05〜1.11(m、2H)、4.35〜4.41(m、4H)、7.95(d、J=9.0Hz、1H)、8.07(d、J=8.7Hz、1H)。13C NMR(75.5MHz、CDCl) δ −1.5、17.3、30.6、63.9、128.7、129.7、135.1、137.1、165.5、190.7。C1419BrOSi(M)について算出したHRMS(EI)は、342.0286、実験値は342.0206であった。
〔実施例29。2−オキソ−2−(4−(((2−(トリメチル)シリル)エトキシ)カルボニル)フェニル)エチル3−(2,4−(ジニトロ)ベンズアミド)ベンゾアートの合成。〕
酸No.3(0.07g、0.21mmol)の1:1 HO/EtOH(4ml)溶液に、CsCOの水溶液を、pHが6.5になるまで添加し、セシウム塩を得た。この塩を減圧下で濃縮し、DMF(2ml)に再溶解させ、No.27(0.07g、0.2mmol)を添加した。12時間撹拌した後、反応物を、塩化ナトリウムの飽和水溶液で加水分解した。粗生成物をEtOAcで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、ヘキサン−EtOAc(4:1)を溶出剤として用いて、フラッシュ・クロマトグラフィーによって精製した(収量:56%)。mpは86℃〜87℃であった。H NMR(300MHz、CDCOCD) δ −0.6(s、9H)、1.05〜1.10(m、2H)、4.33〜4.39(m、2H)、5.68(s、2H)、7.48(t、J=7.7Hz、1H)、7.78〜7.82(m、1H)、7.91〜7.95(m、1H)、8.06(s、4H)、8.11(d、J=8.1Hz、1H)、8.39(t、J=1.8Hz、1H)、8.61(dd、J=8.3Hz、J=2.1Hz、1H)、8.79(d、J=2.3Hz、1H)、10.53(broad s、1H)。13C NMR(75.5MHz、CDCOCD) δ −0.6、18.6、64.9、68.6、121.5、122.5、126.2、127.2、129.6、130.0、131.0、131.2、132.1、132.6、136.6、139.1、139.2、140.6、148.7、150.2、164.6、166.7、193.7。
〔実施例30。4−(2−(3−(2,4−ジニトロベンズアミド)ベンゾイルオキシ)−アセチル)安息香酸の合成。〕
No.28(0.04g、0.07mmol)のDMF(1ml)溶液に、CsF(0.06g、0.4mmol)を添加した。反応混合物を室温で6時間攪拌し、それから1Mの塩化水素で加水分解した。粗生成物をEtOで抽出し、NaSOの上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、AcOHの3%EtOAc溶液を溶出剤として用いて、フラッシュ・クロマトグラフィーによって精製した(収量:77%)。mpは284℃〜286℃であった。H NMR(300MHz、MeOD) δ 5.65(s、2H)、7.48(t、J=8.6Hz、1H)、7.84〜7.88(m、1H)、7.91(s、1H)、7.96(d、J=8.0Hz、1H)、8.02〜8.11(m、4H)、8.33(t、J=1.8Hz、1H)、8.60(dd、J=8.3Hz、J=2.2Hz、1H)、8.90(d、J=2.2Hz、1H)。13C NMR(75.5MHz、CDCOCD) δ 66.9、119.8、121.1、121.3、124.7、125.5、127.9、128.3、129.3、129.9、130.6、130.9、136.0、137.6、137.8、139.0、147.2、148.8、155.0、162.7、165.1、192.1。
〔実施例31。FM19G11および構造類似体による、HIFの活性阻害。〕
HIF応答配列に基づく細胞アッセイの方法論にしたがって(実施例1)、合成の中間体化合物およびいくつかの合成類似体に対して試験を行い、FM19G11のSARを得た。得られた結果を表2に示す。
〔実施例32。HeLa腫瘍細胞株におけるFM19G11による、HIFの標的遺伝子の阻害〕
32.1 リアルタイム定量PCR(qPCR)による、HIF−1の標的遺伝子の遺伝子発現の解析。
qPCR反応を、最終的な体積を20μlとして行った。20μlの内訳は、相補DNAが1μl、300nMのFWプライマーが1μl、300nMのプライマーが1μl、SYBR緑Iが10μl、HOが7μlであった。このqPCR反応は、Applied BiosystemsのGeneAmp 5700 Sequence Detection Systemで、以下のステップで実施した。すなわち、
50℃ 2分間 1サイクル
95℃ 10分間 1サイクル
95℃ 15秒間
60℃ 1分間 40サイクル
qPCRを用いた定量化は、各qPCR実験におけるそれぞれの相補DNAに対する閾値サイクル(threshold cycle; Ct)の決定に基づいている。試料のCtは、蛍光シグナルが、装置の最低検出レベルより大きくなる、最少PCRサイクル数として規定される。したがって、異なる試料のCt値を使用して、各試料における鋳型相補DNAの存在量が算出される。なぜならば、Ct値は、相補DNAの初期量に正比例し、したがって、伝令RNAのレベルを算出するための基準となるからである。
遺伝子の相対的な発現レベルは、Ctの増加、すなわち、(ΔCt)=Ct(遺伝子)−Ct(GAPDH)によって表わされる。PCR反応の指数関数的な性質を有するので、Ctの増加は、等式2−(ΔCt)を使って線型に書き換えられる。得られた結果から、遺伝子VEGFおよびGAPDHの場合について、閾値サイクル(Ct)が内部コントロールとして算出される。ソフトウェアはGene Amp 5700 SDSであった。
VEGFおよびGAPDH遺伝子の発現レベルの解析を実施した。Primer3プログラムを用いてプライマーを設計した。配列は以下のようになる。
VEGFのmRNAレベルを、VEGFについて、化合物FM19G11の存在下または非存在下で、0.3μM、0.1μM、および0.03μMにおいて、GAPDHを内部標準として使って、低酸素条件または正常酸素条件下で、HeLa 9xHRE細胞において、qPRCによって24時間測定した。図4から見てとれるように、使用した濃度において、化合物FM19G11の存在下では、VEGFのmRNAレベルが低下している。
32.2 免疫学的な解析(ウエスタンブロット)による、HIF−1の標的遺伝子のタンパク質の発現の解析。
低浸透圧緩衝液(10mMのTris−HCl、pH7.5、1.5mMのMgCl、lmMのKClO、2mMのDTT、1mMのPefabloc、2mMのバナジン酸ナトリウム、4μg/mlのペプスタチン、4μg/mlのロイペプチン、および4μg/mlのアプロチニン)を使って、HeLa9XHRE/LUC細胞を溶解させ、氷で20分間保存し、次に1,200rpmで10分間遠心分離にかけた。こうして上清を回収し、使用するまで−20℃で保存した。Bradfordによって記載された比色分析クーマシーブルー法によって、タンパク質の定量化を実施した。市販のシステムを、製造業者(PIERCE Chem Co., Rockford III. USA)の指示にしたがって使用した。ウシ血清アルブミン(A−7906, SIGMA Chem Co., St. Louis MO, USA)を使用して、検量線(0μg〜200μgのタンパク質)を生成した。各試料を5μlずつピペットで96穴のプレートに仕込み、150mlのクーマシー溶液を添加し、室温で5分間暗黒中で維持し、OD595nmにおける吸光度を分光光度計で測定した。Graph−Padの統計プログラムを利用して、標準系統を算出し、上記各試料について値を外挿した。最終的な値を、タンパク質のmcg/mclで表わした。抽出物のタンパク質の電気泳動を、ポリアクリルアミドゲルにおいて変性条件下で実施した(SDS−PAGE)。低分子ポリペプチド用のタンパク質の市販の混合物(Amersham)を、分子サイズの標準として使用した。ポリアクリルアミドゲルからニトロセルロース膜(Millipore)へのタンパク質の導入を、Trans−Blot SD導入システム系(Bio−Rad)を使って実施した。二次抗体を、ペルオキシダーゼ酵素に結合させ、その活性を使用して抗原−抗体結合を検出した。検出には、高感度化学ルミネッセンス・システム(ウエスタンブロット解析によるECL、Amersham−Pharmacia)を使用した。上記膜を、製造業者の推奨項目にしたがって、最近調製したECL免疫検出システムの検出用溶液1および2(混合比=1:1)の混合物において、2分間インキュベーションした。使用した一次抗体は、単クローンの抗HIF−1α(BD Biosciences)、単クローンの抗HIF−1α(BD Biosciences)、単クローンの抗HIF−2α(Abcam, Cambridge Science Park)を1:500に希釈したもの、単クローンの抗PHD−3(Abcam, Cambridge Science Park)を1:1000に希釈したもの、単クローンの抗VEGF(R&D systems)、およびハウスキーピングタンパク質としてGAPDHを1:5000に希釈したものであった。使用した二次抗体は、HIF−1αに対する単クローンの抗ネズミのIgG抗体、HIF−2α、PHD−3、およびGAPDHに対するロバの抗ウサギのIgG、およびVEGFに対するロバの抗ヤギのIgGであるが、すべて1:5000に希釈したものである。
図5は、HeLa9XHRE−LUCにおいて、FM19G11が、標的タンパク質PHD3、HIF1α、およびHIF2αを阻害している様子を示す。ウエスタンブロット解析による細胞株。化合物FM19G11(0.3mM)の存在下および非存在下で、HeLa 9xHRE細胞を、低酸素条件または正常酸素条件下に9時間おいた。抗HIF−1α、抗HIF−2α、および抗PHD33の抗体を使用した。GAPDHを内部コントロールとして使用した。化合物FM19G11の存在下で、PHD3とともに、HIF 1αおよび2αの発現において減少が観察される。
〔実施例33。C17.2幹細胞における、HIFの活性の阻害〕
10%のウシ胎仔血清、5%のウマ血清、1%のグルタミン(2mM)、および1%のペニシリン/ストレプトマイシン/ファンギゾンとを補充した、高グルコースのダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を使って、C17.2を未分化状態で培養した。正常酸素条件および低酸素条件の双方とも、細胞を1500個/cmで播種した。酸素正常状態での細胞の培養を、恒温器内で、O20%、CO5%、37℃、および標準湿度(94%)の条件で実施した。低O濃度の条件を、ガスの混合物(O1%、CO5%、およびN94%)を用いて、低酸素チャンバー(Invivo 400、Ruskinn Life Sciences)を37℃で使用することによって創出した。正常酸素条件および低酸素条件下で、細胞を異なる期間(3、6、9、24、48時間)維持した。つぎに細胞を回収し、タンパク質およびmRNAを、製造業者の指示にしたがって市販のキットNucleoSpin RNA/protein (Macherey Nagel)を使って抽出した。研究中に使用した19G11の濃度は、125nM、250nM、および500nMであった。IC50>1μMであったので、これらの濃度を、その化合物の存在に起因するC17.2の毒性を評価した後に得られた結果にしたがって、使用した。
図6は、C.17.2の神経幹細胞株において、FM19G11がHIF1αの標的遺伝子を阻害している様子を示す。低酸素状態(Hxとは、O1%となる低酸素条件を指す)および正常酸素条件(O20%)の双方とも、化合物FM19G11を、異なるナノモル/リットル(nM)濃度で使用した。
〔実施例34。マウスおよびヒトの幹細胞モデルにおける、修復(Mismatch Repair−MMRs)タンパク質の修復〕
得られた結果によれば、低酸素状態におかれたC17.2神経幹細胞は、DNA修復(ミスマッチ修復、MMR)システムが阻害された。図32は、19G11(500nM)の存在下または19G11を溶解させたキャリア(DMSO)の存在下で、正常酸素条件または低酸素条件下で培養されたC17.2神経幹細胞の核からのタンパク質抽出物を使って実施した、ウエスタンブロットを示す。抗MLH1およびMSH6のモノクローナル抗体を、解析において使用した。Nxは酸素正常状態を意味し、Hxは低酸素状態を意味している。
図32は、細胞治療において提案された幹細胞が望ましくない腫瘍形質転換を経ることを防止できる可能性のある、これらの修復タンパク質の発現を、19G11がどのようにして再確立することができるのかを示す。19G11であっても、後者によって引き起こされうる阻害から救出するのだから、MMRの発現の回復はキャリア(DMSO)が原因ではない。修復遺伝子の発現の増加は、低酸素状態においてのみ発生するのではなく、正常酸素条件下でも発生する。
これらの研究結果を、例えば骨髄または歯髄間葉系細胞などの、他のヒト幹細胞に拡張した。図7は、19G11(500nM)の存在下で、酸素正常状態または低酸素状態において培養された間葉系幹細胞の核タンパク質からの抽出物を使って実施した、ウエスタンブロットを示す。抗MLH1およびMSH6のモノクローナル抗体を、解析において使用した。図7Aは、骨髄の間葉系幹細胞において得られた結果を示す。実験条件は、1−Nx 3h;2−Hx 3h;3−Hx 3h+19G11;4−Hx 18h;5−Hx 18h+19G11;6−Hx 24h;7−Hx 24h+19G11であった。なお、Nxは酸素正常状態を意味し、Hxは低酸素状態を意味する。パネルBは、歯髄の間葉系幹細胞において得られた結果を示す。実験条件は、13−Nx 72h;14−Nx 72h+19G11;15−Hx 72h;16−Hx 72h+19G11であった。Nxは酸素正常状態を意味し、Hxは低酸素状態を意味する。
このように、回復(例えばC17.2について記載した回復)が、このケースでも観察された。
先に報告されている科学的な結果を考慮すれば、阻害後に、修復遺伝子の発現は、トリコスタチンA(TSA)として知られるヒストン脱アセチル化酵素阻害剤によって回復可能であることがわかる(Cameron EE, et al., “Synergy of demethylation and histone deacetylase inhibition in the re-expression of genes silenced in cancer" Nat Genet. 1999 Jan; 21(1):103-107.)。この薬剤は、上記の遺伝子のプロモーター領域に位置するヒストンのアセチル化の程度を、上昇させることができる。これにより、クロマチンに、これらの遺伝子を調節する転写因子がアクセスできる高次構造が付与される。したがって、抗アセチル−リジン抗体を使って得られた結果は、19G11が、異なるタンパク質のアセチル化全体の程度を増加させ、TSA自体よりさらに一層効果的にMMRの発現を救出することを示す。癌を遅らせるまたは防止する遺伝子を、薬が回復させるという事実は、その薬を抗腫瘍薬となる可能性のある候補にする。この意味において、TSAは、現在、乳癌治療のための前臨床段階にある薬である(Vigushin DM, et al., “Trichostatin A is a histone deacetylase inhibitor with potent antitumor activity against breast cancer in vivo" Clin Cancer Res. 2001 Apr; 7(4):971-6)。
図32は、19G11(500nM)の存在下または19G11を溶解させたキャリア(DMSO)の存在下で、酸素正常状態または低酸素状態において培養されたC17.2のまたは神経幹細胞の核タンパク質からの抽出物を使って実施した、ウエスタンブロットを示す。ローディングコントロールとして使用された抗βアクチンとともに、抗アセチル−リジン、抗MLH1、およびMSH6のモノクローナル抗体を、解析において使用した。なお、Nxは酸素正常状態を意味し、Hxは低酸素状態を意味する。結果は、FM19G11が、MMRの発現を、TSAより効果的に回復させることができることを示している。
〔実施例35。上衣の成体幹細胞(epNSC)の初代培養における、HIFの標的遺伝子の発現レベルの、FM19G11による制御〕
〔35.1 成体の脊髄の上衣神経の前駆体(epNSC)の初代培養。〕
2〜3ヶ月の月齢の成体のウィスター系のラットを使用した(動物は、実験やその他の科学的な目的のために使用される動物の保護に関する、欧州委員会のDGXIのために準備された書類(No.L358、ISSN 0378〜6978)の第2.1節(許容可能な安楽死法)を遵守した作用様式にしたがって、Centro de Investigacion Principe Felipe(Valencia、スペイン)の動物の愛護と福祉に関する委員会(Committee for Animal Care and Wellbeing)からプロトコールの承認を受けて取り扱った)。動物を屠殺すると、脊髄の背側の一部を切開し、組織を、処理に備えて洗浄培地(DPBS−グルコース)中で4℃で維持した。結合組織細胞の割合を低減するために、もっとも表在性の血管とともに、髄膜を削除した。無菌条件下で、髄質の組織を切断して、およそ1mmの複数の部分に分けた。これを洗浄培地において37℃で10分間インキュベーションし、同じ培地を使って軽度の遠心分離(1000rpm、10分)によって2回洗浄した。組織は、完全培地[5mMのヘペス、3mMのNaHCO、0.6%のグルコース、20nMのプロゲステロン、3mMのNa亜セレン酸塩、100μg/mlのアポトランスフェリン、10μMのプトレシン、ペニシリン−ストレプトマイシン、L−グルタミン、25μg/mのインスリン、EGF(20ng/ml)、FGF(20ng/ml)、2gのウシ血清アルブミン、およびヘパリン357U/mlを補充したDMEM/F12(Invitrogen)]中で最終的に均質化した。組織懸濁液を、シリコン処理したガラス製ピペットに繰り返し通して、細胞懸濁液を得るまで、その直径をブンゼンバーナーを用いて小さくした。7日後に、神経前駆細胞がニューロスフェア(NSCs)を形成した。初代培養中に浮游しているNSCを回収し、細胞の残存物、死細胞、およびその他の、培養プレートに接着している細胞のタイプ(例えば、線維芽細胞、ミクログリア、アストログリアなど)から分離した。次に、背の低い取り付けプレート(Nunc)内で、NSCを培養し(こうすることによって、NSCがプラスチックに接着することを防止でき、結果的に分化を防止できる)、恒温器内で37℃、94%の湿度およびCO5%(正常酸素条件)で維持した。低酸素チャンバー(Invivo 400、Ruskinn Life Sciences)を使って、O1%、CO5%、およびN94%の気体の混合物を用いて、37℃でO濃度が低い条件(低酸素条件)を作り出した。該NSCを、正常酸素条件および低酸素条件下で、化合物19G11の存在下または非存在下で、それぞれ異なる時間(3時間、6時間、9時間、24時間、48時間)、500nM(用量はIC50未満、>1μM、C17.2細胞株においてはさらに効果的)の終濃度で維持した。
〔35.2。VEGF、PHD3、およびGAPDHの転写性の発現レベルの検出〕
市販のキットRNAeasy(Qiagen)を製造業者の指示にしたがって使用して、全てのRNAを単離した。市販のキットReverse Transcription Reagent(Applied Biosystem)を使用して、各試料の全RNAを1μgずつレトロ転写した。Taqmanプローブ、およびApplied BiosystemによってrVEGF用に設計されたプライマー(Ref Rn00582935_m1)、rPHD3(Ref Rn00571341_m1)およびrGAPDH(Ref Rn01775763_g1)を使って、定量PCR(qPCR)を実施した。該qPCRを、5700 Sequence Detection System (Applied Biosystems)内で、TaqMan Universal PCR Master Mix (Applied Biosystems)1xで、40ngの相補DNA(全RNAの当量)、および各プローブおよびプライマーを250nMずつ用いて、最終的な体積を20μlにして、二組で進めた。増幅用に選択したプログラムは、以下のようであった。すなわち、50℃で2分間をx1、95℃で10分間をx1、95℃で15秒間および60℃で1分間をx40であった。VEGFおよびPHD3の発現レベルを、GAPDH(恒常的発現遺伝子)の発現レベルに対するCtの増加として表わした。すなわち、
Ct(ΔCt)=Ct(VEGFまたはPHD3)−Ct(GAPDH)
である。低酸素条件(Hx)下の各ΔCtを、正常酸素条件(Nx)下の値で正規化した。すなわち、
ΔΔCt=Ct(hx)−Ct(Nx)
である。PCR反応が指数関数的な性質を有するので、Ctの増加は、等式2−ΔΔCtを使って線型に書き換えられた。
図8は、低酸素条件下のepNSCの初代培養における、(定量的な逆転写PCRによる)PHD3およびVEGFの発現レベルの研究を示す(白色の棒グラフ)。図8は、第1のケースでは3時間〜24時間の時間依存的な増加を示し、第2のケースでは9時間までは時間依存的な増加を示し、その後48時間までは、酸素正常状態におけるレベルに対して逆転していることを示している。PHD3の増加およびVEGFの増加は、どちらも、500nMのFM19G11(黒色の棒グラフ)の存在下で、低酸素状態に6時間〜24時間曝露すると大きく阻害されている。
〔実施例36。成人の歯髄の幹細胞の初代培養における、HIFの標的遺伝子の発現レベルのFM19G11による制御。〕
・初代培養の条件。
使用した培地は、10%ウシ胎仔血清を補充した低いグルコースDMEMであった。成人(年齢19歳〜29歳)のヒトの第三大臼歯から得られた、ヒトの歯髄の間葉系間葉系幹細胞株[Gronthos S, et al., “Postnatal human dental pulp stem cells (DPSCs) in vitro and in vivo” Proc Natl Acad Sci U S A, 2000 Dec 5; 97(25):13625−30.; Gronthos S et al.,.” Stem cell properties of human dental pulp stem cells” J Dent Res, 2002 Aug; 81(8):531−5]が、CIPFの心臓再生部門(Cardioregeneration Dept.)によって提供された。該細胞を、2000個/cmの密度で播種し、90%のコンフルエンスに到達すると、再度トリプシン処理によってサブ培養した。
・HIF−1αの発現に対するFM19G11の活性の研究
上記歯髄細胞を、21cmのプレートに、2000個/cmで播種した。培養物がサブコンフルエンスi到達すると、平行アッセイにおいて、物理的な正常酸素条件および低酸素条件(O1%、N94%、およびCO5%)下で、化合物FM19G11を0.5μMの濃度で24時間添加した。つぎに、渙散緩衝液(50mMのTris−HCl pH値8、150mMの塩化ナトリウム、0.02%のNaN、0.1%のNP40、0.5%の11−デオキシコルチコステロン、1xのプロテアーゼ阻害剤(Complete、Sigma−Aldrich))で、タンパク質を抽出し、Bradford法で定量化し、HIF−1α(120kDa)の発現を判定するために、30μgを12%のSDS−PAGEゲルに添加した。検出には、抗HIF−1α(BD Biosciences)一次抗体および抗GAPDH(Trevigen)一次抗体を使用し、つぎに、(HIF−1αに対する)ヤギの抗ネズミ二次抗体および(GAPDHに対する)ロバの抗ウサギ二次抗体を、HRP(Amersham、1:5000に希釈)、化学ルミネッセンス検出系(ECL;Amersham、1:5000に希釈)、およびオートラジオグラフィーフィルム(コダック)(図9Aを参照)と合わせて使用した。
・VEGF、COX−2、およびGAPDHの転写性の発現レベルの検出
市販のキットRNAeasy(Qiagen)を製造業者の指示にしたがって使用して、全てのRNAを単離した。市販のキットReverse Transcription Reagent(Applied Biosystem)を使用して、各試料の全RNAを1μgずつレトロ転写した。Taqmanプローブ、およびApplied BiosystemによってhsVEGF用に設計されたプライマー(Ref HS00173626_m1)、hsCOX−2(Ref Hs00153133_m1)、およびhsGAPDH(Ref HS 99999905_m1)を使って、定量的なポリメラーゼ連鎖反応(quantitative PCR; qPCR)を実施した。該qPCRを、5700 Sequence Detection System (Applied Biosystems)内で、TaqMan Universal PCR Master Mix (Applied Biosystems)1xで、40ngの相補DNA(全RNAの当量)、および各プローブおよびプライマーを250nMずつ用いて、最終的な体積を20μlにして、二組で進めた。増幅用に選択したプログラムは、以下のようであった。すなわち、50℃で2分間をx1、95℃で10分間をx1、95℃で15秒間および60℃で1分間をx40であった。VEGFおよびCOX−2の発現レベルを、GAPDH(恒常的発現遺伝子)の発現レベルに対するCtの増加として表わした。すなわち、
Ct(ΔCt)=Ct(VEGFまたはPHD3)−Ct(GAPDH)
である。低酸素条件(Hx)下の各ΔCtを、正常酸素条件(Nx)下の値で正規化した。すなわち、
ΔΔCt=Ct(hx)−Ct(Nx)
である。PCR反応が指数関数的な性質を有するので、Ctの増加は、等式2−ΔΔCtを使って線型に書き換えられた。
図9は、物理的な低酸素状態に18時間曝露した後の、HIF−1αの発現の誘導を示す。図9Aから分かるように、濃度が0.5のμMの化合物FM19G11が、HIF−1αの発現を阻害した。GAPDHを、内部の添加コントロールとてし使用した。図11bに図示したように、低酸素条件(白色の棒グラフ)下の歯髄の幹細胞の培養物における3時間、6時間、および18時間での、VEGFおよびCOX−2(定量的な逆転写PCRによる)発現レベルの研究によれば、HIFの標的遺伝子のいずれの場合にも、酸素正常状態におけるレベルに対して、6時間で最大の発現を示している。0.5μMのFM19G11の存在下で、低酸素条件(黒色の棒グラフ)下で、VEGFの増加およびCOX−2の増加は、どちらも、6時間および18時間で阻害されている(図9B)。ただし、該化合物は、正常酸素条件下ではいかなる効果ももたらさなかった(灰色の棒グラフ)。
〔実施例37:成人の歯髄の幹細胞の初代培養において、低酸素状態で発生する死およびアポトーシスの減少の、FM19G11による制御。〕
0.5μMの化合物の存在下および非存在下で、正常酸素条件および低酸素条件に供した細胞培養物にもとづいて、アポトーシスの研究を実施した。細胞膜の外側部分におけるホスファチジルセリンの存在は、アポトーシスプロセスに特徴的なことであり、この存在について、Annexin V(蛍光色素Annexin V−FITC Apoptosis Detection Kit (BD Pharmingen、BD Biosciences))を使用して製造業者の指示にしたがって検出した。上記の互いに異なる条件に供した細胞を、アネキシンVを使って4℃で30分間インキュベーションした。つぎに、細胞をヨウ化プロピジウム(propidium iodide;PI)でインキュベーションし、FACScaliburフローサイトメーター(Beckman Coulter)で分析した。PI−/AnnexinV+細胞を初期のアポトーシス細胞として、PI+/AnnexinV+細胞を後期のアポトーシス細胞として、およびPI+/AnnexinV−細胞を死細胞として規定した。したがって、アポトーシス細胞の総数は、初期のアポトーシス細胞および後期のアポトーシス細胞の合計である。
図10から分かるように、低酸素状態は、72時間におけるポトーシス細胞の総数を低減し、0.5μMの化合物FM19G11は、この効果を反転させることができる(図10A)。さらに、上記化合物も、低酸素状態で発生している死の減少を反転させる(図12B)。最終的に、図10Cは、低酸素状態において、細胞死およびアポトーシスに関与する腫瘍阻害因子p53の発現の減少、および低酸素状態においてFM19G11で細胞を治療した際のp53の回復を示している。
〔実施例39:低酸素条件および正常酸素条件における、成体の上衣の幹細胞(epSPC)の初代培養における未分化状態のマーカー発現の、FM19G11よる制御〕
成体の脊髄の上衣の神経の前駆体(epSPC)の初代培養を、実施例35.1において既に説明した条件にしたがって、実施した。
未分化状態が維持される原因である遺伝子(Sox2、Oct4、Nanog、TGF−α)の転写性の発現レベルおよび伝達性の発現レベルの検出。市販のキットRNAeasy(Qiagen)を製造業者の指示にしたがって使用して、全てのRNAを単離した。市販のキットReverse Transcription Reagent(Applied Biosystem)を使用して、各試料の全RNAを1μgずつレトロ転写した。メッセンジャーRNA(Sox2、Oct4、Nanog、TGFα、およびGAPDH)を増幅するためのプライマー(詳細は後記)を使って、半定量的なPCR(sqPCR)を実施した。該sqPCRは、エッペンドルフサーマルサイクラーで、最終的な体積を50μlとして、1UのTaqポリメラーゼ、40ngの相補DNA(全RNAの当量)、および300nMの各プライマーを使って進めた。増幅用に選択したプログラムは、以下のようであった。すなわち、[95℃で3分間]をx1、[55℃で30秒間、72℃で5分間、95℃で30秒間]をx35、および72℃で10分であった。発現レベルは、臭化エチジウムで染色した1xTAE緩衝液内の1%アガロースゲル内で観察した。添加の差異に起因する発現の変化を、GAPDHの恒常的発現遺伝子の発現差異によって補正した。実験は三組(3匹の異なるラットの細胞)実施した。
なお、oct3/4およびoct4の命名法に関連して、アイソフォーム3がラットには存在しないこと、ただしヒトにおいては、抗体またはその発現の判定を各アイソフォームについて明らかにすることが難しいことを考慮すれば、この遺伝子の正名は、ヒトではoct 3/4であり、ラットではOct 4であることを、強調しておく。
未分化状態のマーカーSox2、Oct4、Nanog、およびNotch1のタンパク質レベルを、実施例35.1に記載の方法論にしたがって、免疫学的な解析(ウエスタンブロット)によって決定した。Sox2、Oct4、Nanog、およびNotch1を検出するための一次抗体を、Abcam(UK)から入手した、また、βアクチン(Sigma Aldrich Co.、UKにおいて入手した抗体)の発現を、ローディングコントロールとした。
低レベルの酸素(O1%)に曝された培養物中において、化合物FM19G11が500nMの濃度で48時間存在したこと(図11)が、低酸素状態によって誘導されたSox2およびOct4のメッセンジャーRNAレベルでの、発現の下方制御、およびそのそれぞれの標的遺伝子、NanogおよびTGF−αのレベルでの、発現の下方制御を示している。
低酸素条件(O1%)においてFM19G11の濃度が増加(図12)することによって、用量依存的に、両方のタンパク質Sox2およびOct4の発現が阻害される。
ただし、正常酸素圧または高酸素レベル条件(〜20%)の下では、FM19G11(500nM)が48時間存在(図13)することによって、Sox2およびOct4両方の発現、ならびにepSPCのその他の未分化状態のマーカー(例えばNanogおよびNotch1など)の発現が著しく誘導される。
〔実施例40:ヒト胚性幹細胞(hESC)において未分化状態が維持される原因となる遺伝子である、Sox2およびOct3/4の発現レベルの、FM19G11による調節〕
H9ヒト胚細胞(hESC)株の培養。hESC株を維持および増殖(多くとも70パス以下)させるために、マイトマイシンC(Sigma−Aldrich、Sweden)(Thomson et al.[1998])で不活化されたネズミ線維芽細胞の単層の上で、hESCを培養する。SOx2およびOct3/4の転写性の変化を研究するために、hESCの未分化なコロニーを機械的な解離によって、マトリゲル(登録商標)の薄層で被覆した培養プレートに移植し、培養上清の存在下で培養する。培養上清は、集密的かつ不活化されたネズミの線維芽細胞を、ゼラチン(0.1%;Sigma)で被覆したプレートに播種して得た培養物から得る。
Sox2、Oct3/4、およびGAPDHの転写性の発現レベルの検出。実施例35に記載の実験条件を使って、手順は同じであり、この場合、ヒトのSox2、Oct3/4、およびGAPDH(Sox2:Hs01053049_s1;Oct3/4:Hs01895061_u1;GAPDH:Hs99999905_m1)に対するTaqManのプローブを含んでいた。図14に示すように、低酸素培養条件、つまり、低酸素状態(O1%)の下で、処理が48時間続いた後に、化合物FM19G11が500nMの濃度で存在することによって、Sox2およびOct3/4どちらの発現も、著しく阻害される。両方のメッセンジャーRNAの発現レベルは、低酸素条件下と正常酸素条件(高酸素培養条件O20%未満)下とで対比させながら誘導される。
〔実施例42:FM19G11の存在が、低酸素条件下で、epSPCがオリゴデンドロサイトに分化するプロセスの進行を可能にする〕
低酸素圧状態が幹細胞の分化を阻止する。また、このプロセスが、HIFのタンパク質の活性に起因することがわかっている。上衣の幹細胞が低濃度の酸素(O1%)に曝されることによって、オリゴデンドロサイトのグリア株に向かう、分化の進行が防止される。このことは、培養物の形態的特徴とこの細胞株(NG2、RIP、O4)の典型的なマーカーの低い発現率との両方によって、明瞭に示されている。化合物FM19G11(500nM)、つまり、HIF−1αタンパク質とHIF−2αタンパク質との両方の阻害剤が存在することによって、正常酸素条件下で存在するオリゴデンドロサイトマーカーの発現レベルが、その表現型の発現レベルとともに回復する。
正常酸素条件および/または低酸素条件下で、FM19G11の存在下または非存在下における、細胞マーカーRIP、NG2、およびO4の発現の解析を、免疫細胞化学的な手法によって実施した(図15)。細胞培養物を、パラホルムアルデヒド(4%)で固定した後に、トリトン(0.05%)で10分間透過処理した。また、ウシ胎仔血清(1%)との非特異的な結合を阻止した後、対応する抗体(Chemicon、USAより入手)でインキュベーションした。互いに異なる蛍光色素、つまり、ウサギのIgGのローダミンおよびネズミのIgGのフルオレセインと複合した二次抗体が、上記一次抗体の特異的な標識化を明らかにする。核の対比染色には、DAPI(Sigma Aldrich Co.、UK)を使用した。
〔実施例43:FM19G11が存在することによって、上衣の幹細胞(epSPC)の自己再生が改善され、正常酸素条件下でその未分化状態が維持される。〕
標準酸素濃度下、つまり〜20%において、化合物FM19G11(500nM、48時間)が存在することによって、上衣の幹細胞(epSPC)の増殖率が増加する(図16)。ただし、この状況は、低酸素条件(O1%)下では再生されない。ATP(代謝活性の増加に直接関連し、増殖活性に直接関連する代謝物)の蓄積を、市販のCellTiter−Glo(登録商標)の発光細胞の生存率キット(Promega、Madison、WI)を使用して判定した。
正常酸素条件(O20%)下で化合物FM19G11が存在していることが、個々の様式で脱凝集させた上衣の幹細胞(epSPC)の集団からのニューロスフェアの形成にとって、有利に作用する(図16)。
〔実施例44。細胞パネルに対するFM19G11の毒性の研究。〕
HeLa 9x−HRE−Luc、PRC3、HeLa、MCF−7、およびMDA−MB 435−Sの細胞株の、細胞毒性の研究を実施した。10%の不活化されたウシ胎仔血清、ペニシリン(50IU/ml)、およびストレプトマイシン(50μg/ml)(Invitrogen−Life Technologies、Carlsbad、CA)を補充したDMEM培地において、細胞株を培養した。該細胞を、CO5%を含有する加湿雰囲気で、37℃で培養した。化合物の細胞毒性効果を、用量が0.5μM〜30μMの範囲でアッセイした。細胞を、透明な96穴のプレートに50μl/ウェルで、HeLa 9x HREについては5,000個/ウェルで播種し、CO5%を含有する加湿雰囲気で37℃で72時間培養した。つぎに、供給者(Cell Titer 96(登録商標)AQueous Non−Radioactive Cell Proliferation Assay Technical Bulletin TB169, Promega Corporation)の指示にしたがって、比色分析のMTSアッセイを実施した。代謝活性を有する生細胞は、MTSを、培地に可溶の生成物である、ホルマザンに還元することができる。ホルマザンの吸光度は490nmで測定可能であり、培養物の中の生細胞の個数に正比例する。図18を見ればわかるように、HIF応答配列のアッセイにおいて使用したどの細胞株においても、FM19G11の、IC50の500倍を超える濃度での50%致死量(100nMの範囲で)には達しなかった。
〔実施例45。ゼブラフィッシュ(Danio rerio)の胚およびメダカ(メダカ)の胚に対する、FM19G11の毒性の研究。〕
魚の胚は、脊椎動物動物において薬を評価するアッセイに適したモデルとなる、一連の特性を有する(ZonZon, L.I. & Peterson, R (2005). “In vivo drug discovery in the zebrafish”. Nature Rev Drug Disc, 4, 35−44; Medaka, Oryzias latipes. Development of test methods and Suitability of Medaka as Test Organism for Detection of Endocrine Disrupting Chemicals, February 2003, Ministry of Environment, Japan Chemicals Evaluation and Research Institute, Japan)。一方で、魚の胚は透明かつ子宮外で発生し、したがって、誘導された表現型が容易に観察でき、毒性アッセイにおいてはもっともよく使用されているモデルであるマウスに比べて、維持がはるかに安価で簡単であり、さらに、結果がすばやく得られる。化合物の毒性について、脊椎動物において発生を研究するための動物モデルとしてしっかりと確立されている、ゼブラフィッシュおよびメダカの2つの魚モデルにおいて試験を行った。
まず最初に、ゼブラフィッシュの胚について、1xのYamamoto緩衝液の初期の段階(1と8との間)および後期の段階(20を超えた段階)において、胚を10個/ウェル、6個/ウェル、および4個/ウェルで、100μlの体積に配置して多様な実験を実施し、胚を26℃で24時間培養した。つづいて化合物FM19G11を、負のコントロールを用いて10μMおよび50μMの濃度で添加した。胚の内在性死亡率を分析する添加物は加えなかった。また、1%のDMSO(上記化合物の溶媒)および5%のDMSOを、溶媒の死亡率を分析するために加えた。全ての場合において、溶媒が、60%〜90%の高死亡率を誘導した。
5%未満の濃度では、DMSOが致死的な効果を有しないメダカの胚を使って、同じ実験を実施した。胚を6個/ウェル配置し、最終的な体積を100μlとし、胞胚の段階および神経胚の段階にある胚を使用して独立した実験を行った。使用した濃度(10μMおよび50μM)では、大きな致死率(10%を超える致死率)は観察されなかった。得られた結果は、FM19G11が胚の生存率に対して影響を与えないことを示していた(全ての胚が生存していた)。胚の発生にとっては有機毒性であると解釈することのできる、可視の形態変化は、観察されなかった。
FM19G11が胚(絨毛膜)の保護層を横切らない可能性をなくすために、0.5mMの濃度の上記化合物を、絨毛付近(胚と絨毛膜との間)にマイクロ注射した。実験1:n=15、誘導された死亡率20%、DMSOコントロール=0%。結果は同じであった。胚の発生において、異常は観察されなかった。また、注射をした胚の生存率に対するなんらの効果も観察されなかった。図19の画像は、50μMのFM19G11を使って4日間処理したメダカの胚を示す。(A)は、複数個のウェルを備えたプレートのあるウェルに10個のメダカの胚が入った写真である。(B)および(C)は、50μMのFM19G11で1日間処理した胚の写真である。(D)は、上記化合物で処理していないメダカの胚の写真である。
〔実施例46。FM19G11の検出のための分析方法〕
上記化合物FM19G11の解析を、RP18 Lichrocart 250−4(5μm)の分析用カラムを使って、HPLCによって、均一濃度法(59:41 MeCN/HO)で、0.8ml/分の流れで行った。化合物の保持時間は、12.7分間であった(図20)。
〔実施例47:ウシ血清中のFM19G11の安定性〕
FM19G11の安定性を、ウシ血清(10%のPBSで安定化したもの)中でインキュベーションし、つづいてHPLCによって解析することによって、判定した。血清中の濃度が0.5mMおよび1.0mMの試料を調製し、100μLの部分標本を、異なるインキュベーション時間(0時間、0.5時間、1時間、2時間、および3時間)で抽出した。該試料を−80℃保存した。各試料において抽出を実施するために、800μLのHO、900μLのCHCl、および1滴のイソプロパノールを添加し、得られた混合物を遠心分離にかけ、上清を取り除いた。抽出物を濃縮し、HPLC(59:41 MeCN/HO)による解析に使用する移動相において、残留物を懸濁させた。各試料を25μLずつ注射した(図21)。
〔実施例48:FM19G11は、ヒトの大腸癌細胞(HT29)においてDNA損傷応答をトリガーする〕
ウエスタンブロット法によって得られた結果によれば、FM19G11は、ヒトの大腸癌細胞(HT29)においてDNA損傷応答(DDR)をトリガーする。24時間の処理後に、異なる濃度のFM19G11(0.25μMまたは0.5μM)でHT29細胞を処理すると、初期のDDRフェーズ(H2AX、MLH1、MSH6)、損傷シグナルメディエーター(BRCA1)、トランスレーター(ATM、ATR)、またはDNA損傷応答(CHK1、CHK2、p53)のエフェクターに関与するタンパク質のリン酸化が効率的に増加した(図22)。
図22は、FM19G11が、どのようにして、ヒトの大腸癌細胞(HT29)においてDNA損傷応答をトリガーするのかを示す。DNA損傷応答において、鍵となるシグナル経路に含まれるキナーゼのリン酸化の増大による活性増加を、FM19G11(0.5μM)で処理したHT29腫瘍細胞において検出した。具体的には、ATM/ATRとして知られた経路、DNA損傷修復経路(MMR、BRCA1、H2AX)、また、細胞周期のコントロール点(CHK1、CHK2)における経路について、検出した。6−TG(5μM、10μM、25μM)またはエトポシド(0.1μM、1μM、10μM)を用いた処理も、コントロールとして、また、一本鎖DNA(ATR−CHK1)または二本鎖DNA(ATM−CHK2)の損傷に応答して活性化される各タンパク質を比較するために、実施した。
〔実施例49:DDRに関与するタンパク質の活性化の動態的変化〕
HT29において観察されるDNA損傷に加えて、FM19G11が、その他の結腸癌の癌化細胞株(具体的にはHCT116/p53+/+細胞およびHCT116/p53−/−細胞)において、上述のDDRをトリガーするかどうかを評価した。p53癌抑制遺伝子は、ヒトの腫瘍の50%において変異し、遺伝毒性ストレスに対する応答において鍵となる要素である。これは、p53癌抑制遺伝子が、DNA修復または細胞周期停止に重要な遺伝子の転写を、活性化させるからである。
FM19G11によって引き起こされる可能性のある効果におけるp53の関与の度合いを判定するために、p53が発現したHCT116大腸癌細胞株、および相同組換えによりp53が不活化された同じHCT116株を、使用した(Bunz, F, Dutriaux, A, Lengauer, C, Waldman, T, Zhou, S, Brown, JP et al., (1998) Requirement for p53 and p21 to sustain G2 arrest after DNA damage. Science 282: 1497-501; Bunz, F, Hwang, PM, Torrance, C, Waldman, T, Zhang, Y, Dillehay, L et al., (1999) Disruption of p53 in human cancer cells alters the responses to therapeutic agents. J Clin Invest 104: 263-9.)。HCT116/p53+/+細胞およびHCT116/p53−/−細胞を、FM19G11(0.5μM)に対して異なる時間曝露した。ATRタンパク質、およびATRによりリン酸化され得るp53(Tibbetts, RS, Brumbaugh, KM, Williams, JM, Sarkaria, JN, Cliby, WA, Shieh, SY et al., (1999) A role for ATR in the DNA damage-induced phosphorylation of p53. Genes Dev 13: 152-7.)のリン酸化(活性)パターンは、p53を発現させることのできるHCT116細胞において分析された。また、同様に、p53欠損細胞のATRについても分析された。(図23)。両方のHCT116細胞株において、FM19G11(0.5μM)を用いた処理によって、ATRのリン酸化が急速に進行(1時間後)し、つづいて異なる刺激時間を通じて減少することが、検出された。ATRのこの急速な活性化は、FM19G11(0.5μM)を用いた処理の1時間後に起こる、HCT116/p53+/+細胞におけるp53の活性化に一致する。しかし、p53の活性化は、分析している異なる時間について、薬を用いていない細胞の発現に実質的に左右されるままである。
このように、図23は、両方のHCT116細胞株における一本鎖DNAの損傷に関連して、FM19G11がATRの急速な活性化を引き起こすことを示す動態的研究を示す。0.5μMのFM19G11を用いた1時間の処理後、HCT116/p53+/+のp53細胞におけるATRおよびp53のリン酸化すなわち活性化の進行が、HCT116p53−/−細胞のATRのリン酸化すなわち活性化の進行とともに、検出された。上記の結果は、代表的なウエスタンブロット法実験を濃度測定の解析にかけた後に得られた。ただし、同様の結果が、互いに独立した3組の実験において得られた。
〔実施例50:ヒトの結腸癌腫瘍細胞において、FM19G11は、p53依存的にG1/S期の周期停止を誘導する。〕
他のDNA損傷剤(.Lim, DS, Kim, ST, Xu, B, Maser, RS, Lin, J, Petrini, JH et al., (2000) ATM phosphorylates p95/nbs1 in an S-phase checkpoint pathway. Nature 404: 613-7.; Jazayeri, A, Falck, J, Lukas, C, Bartek, J, Smith, GC, Lukas, J et al., (2006) ATM- and cell cycle-dependent regulation of ATR in response to DNA double-strand breaks. Nat Cell Biol 8: 37-45; .Liu, JS, Kuo, SR, Beerman, TA and Melendy, T, (2003) Induction of DNA damage responses by adozelesin is S phase-specific and dependent on active replication forks. Mol Cancer Ther 2: 41-7; Ranjan, P and Heintz, NH, (2006) S-phase arrest by reactive nitrogen species is bypassed by okadaic acid, an inhibitor of protein phosphatases PP1/PP2A. Free Radic Biol Med 40: 247-59.)について記載されているように、HCT116の腫瘍細胞において、FM19G11によるDDRの活性化が、G1/S期を通して、細胞周期進行遅延を引き起こしたかどうかを調べた。HCT116 p53+/+細胞およびHCT116 p53−/−細胞を、上記キャリア(DMSO)またはFM19G11(0.5μM、1μM、5μM、10μM)に対して、3日間または6日間曝露した。p53を発現させることのできる細胞において、5μMまたは10μMのFM19G11を用いた処理により、処理の72時間後に、G1/S期の周期停止が起き、6日後にはさらに顕著であった。ただし、p53欠損細胞においては、FM19G11は、G1/S期の周期ブロッキングを引き起こさなかった。このことは、FM19G11によって引き起こされるS期の周期停止は、p53タンパク質に依存することを示唆している(図24)。
したがって、図24は、FM19G11によって誘導された周期停止に対する、p53の効果を示す。細胞周期の異なるフェーズにおける細胞分布を、フローサイトメトリーを利用して分析するために、(A)ではHCT116/p53+/+細胞、(B)ではHCT116/p53−/−細胞が、異なる濃度のFM19G11(0.5μM、1μM、5μM、10μM)またはキャリアに、3日間または6日間曝露された。グラフは、細胞周期の各フェーズの細胞の割合の分布に対する、異なる濃度のFM19G11による効果を示している。図示された結果は実験を代表するものである。ただし、互いに独立した3組の実験において、非常に近い割合が得られた。
〔実施例51:FM19G11は、HCT116細胞におけるmTORシグナル経路の活性化の動態変化に対して影響を与える。mTORシグナル経路とS期の周期停止との関連〕
p53には腫瘍抑制剤としての重大な役割があるので、FM19G11が、HCT116細胞において、細胞周期の進行に対する有利な作用、特にmTOR細胞のシグナル経路に関与するタンパク質活性化の動態的変化に対して、どのように影響したのかを分析した。細胞の進行の増加は、DNA損傷を発生させる複製的なストレスに起因している可能性がある(Bartkova, J, Horejsi, Z, Koed, K, Kramer, A, Tort, F, Zieger, K et al., (2005) DNA damage response as a candidate anti-cancer barrier in early human tumorigenesis. Nature 434: 864-70; Bartkova, J, Rezaei, N, Liontos, M, Karakaidos, P, Kletsas, D, Issaeva, N et al., (2006) Oncogene-induced senescence is part of the tumorigenesis barrier imposed by DNA damage checkpoints. Nature 444: 633-7; Di Micco, R, Fumagalli, M, Cicalese, A, Piccinin, S, Gasparini, P, Luise, C et al., (2006) Oncogene-induced senescence is a DNA damage response triggered by DNA hyper-replication. Nature 444: 638-42)。FM19G11によってトリガーされたDDRが、mTORシグナル経路によって修飾される細胞周期進行シグナルの増加に関連するのかどうか、調べた。HCT116/p53+/+細胞においてだけではなく、HT29または幹細胞においても、AKT、mTOR、p70S6のリン酸化が増加、またはサイクリンD1の発現が増加することは、FM19G11(0.5μM)を用いた処理後に、このシグナル経路が活性化されることを示唆しており、このような増加が短時間で観察された。FM19G11の存在によって媒介される、HCT116細胞におけるサイクル活性化の増加は、癌遺伝子によって媒介される活性化において起きるのと同様に、DDRに関連する経路の活性化と一致した((Bartkova, J, Horejsi, Z, Koed, K, Kramer, A, Tort, F, Zieger, K et al., (2005) DNA damage response as a candidate anti-cancer barrier in early human tumorigenesis. Nature 434: 864-70; Bartkova, J, Rezaei, N, Liontos, M, Karakaidos, P, Kletsas, D, Issaeva, N et al., (2006) Oncogene-induced senescence is part of the tumorigenesis barrier imposed by DNA damage checkpoints. Nature 444: 633-7; Di Micco, R, Fumagalli, M, Cicalese, A, Piccinin, S, Gasparini, P, Luise, C et al., (2006) Oncogene-induced senescence is a DNA damage response triggered by DNA hyper-replication. Nature 444: 638-42)。FM19G11を用いた処理によって引き起こされる、AKT/mTOR/p70S6/サイクリンD1の経路のリン酸化パターンは、HCT116/p53−/−細胞において異なる。ただし、FM19G11を用いた処理に起因する、ATR経路の急速な活性化は保存される(図25)。
図25の動態的研究は、FM19G11(0.5μM)を用いて処理されたHCT116/p53+/+細胞における、AKT/mTOR/p70S6/サイクリンD1のシグナル経路の急速かつ効率的な活性化(倍率の変化≧2)を示す。mTORも、FM19G11を用いた処理後のHCT116/p53−/−細胞において、急速にリン酸化された(ただし、倍率の変化の増加は、2よりわずかに小さい)。
S期の周期停止が、FM19G11によるAKT/mTOR/p70S6の経路の誘導に関連するかどうかを解明するために、FM19G11(10μM)をmTOR阻害剤(ラパマイシン(100pmol))と組み合わせて用いて、HCT116細胞を処理した。さらに、HCT116/p53+/+細胞をFM19G11(10μM)を用いて処理しただけの場合には、該細胞において誘導されるS期の停止が、観察されなかった(図26)。
HCT116/p53+/+細胞およびHCT116/p53−/−細胞を、FM19G11(10μM)、ラパマイシン(登録商標)(mTOR阻害剤)(100pmol)のいずれか単独、またはこれらを組み合わせたものに対して、上述の濃度で曝露した。両方の薬(100pmol)の同時のインキュベーション使用され場合、HCT116/p53+/+細胞において、FM19G11を用いた処理によって発生するS期の周期停止が防止された。
端的に述べれば、FM19G11が、mTOR経路および細胞周期進行シグナル(サイクリンD1の増加)の活性化を誘導する。このことが、癌遺伝子と同様に、複製的なストレスによるDNA損傷シグナルのトリガーを引き起こし((Bartkova, J, Horejsi, Z, Koed, K, Kramer, A, Tort, F, Zieger, K et al., (2005) DNA damage response as a candidate anti-cancer barrier in early human tumorigenesis. Nature 434: 864-70; Bartkova, J, Rezaei, N, Liontos, M, Karakaidos, P, Kletsas, D, Issaeva, N et al., (2006) Oncogene-induced senescence is part of the tumorigenesis barrier imposed by DNA damage checkpoints. Nature 444: 633-7; Di Micco, R, Fumagalli, M, Cicalese, A, Piccinin, S, Gasparini, P, Luise, C et al., (2006) Oncogene-induced senescence is a DNA damage response triggered by DNA hyper-replication. Nature 444: 638-42)、その結果、G1/S期の周期停止の原因となるp53の活性化を引き起こす。このことが、上記薬の作用様式が、FM19G11と同様に、作用するためにはp53に依存しなければならない、シスプラチンなどの他の薬比較すると、新規なものである理由である。
〔実施例52:p53が、薬FM19G11に対して、ヒトの大腸癌細胞(HCT116およびHT29)を感作する〕
ヒトの大腸癌細胞(HCT116およびHT29)に対するFM19G11の効果を判定するために、代謝的に活動性を有する細胞に関連するATPを定量化することによって、HT29細胞、HCT116/p53+/+細胞、およびHCT116/p53−/−細胞において、細胞生存率のアッセイを実施した。図27に図示した結果は、HCT116/p53−/−細胞が、HCT116/p53+/+またはHT29(p53を発現させることのできる細胞)が示す感受性に比較すると、処理(0.5μM、1μM、5μM、10μM、50μM、100μM、1000μM)の48時間後には、FM19G11の存在に対してそれほど敏感てはないことを示している。
細胞のATPの総含有量(図28)は、DMSOで48時間処理された対応する細胞株に対するFM19G11で処理されたヒトの大腸癌細胞の割合として、定量化された細胞生存率と相関性がある。
〔実施例53:ヒトの大腸癌細胞のコロニーの形成に対する、FM19G11の効果〕
p53を発現させることのできる(HT29およびHCT116/p53+/+)腫瘍細胞およびp53が欠損している腫瘍細胞(HCT116/p53−/−)腫瘍細胞における、FM19G11の毒性を決定するために、間代性アッセイを行った。HT−29細胞、HCT116/p53+/+細胞、およびHCT116/p53−/−細胞を、一旦培養プレートに接着させると、FM19G11(0.5μM、1μM、5μM、10μM、20μM、50μM)の濃度を増加させることによって、これらの細胞を72時間刺激した。刺激の10日後に、処理細胞および無処理の細胞の、プレート中に形成されたコロニーの個数を決定した。コロニーの個数を調べたところ(図28)、HT29細胞、HCT116/p53+/+細胞、およびHCT116/p53−/−細胞の間代性を、FM19G11が減少させることを示し、このとき、生存IC50は、それぞれ1μM、3.5μM、および16.5μMであった。したがって、HCT116におけるIC50値の比の定量化によれば、HCT116細胞においてp53の機能が損失することによって、FM19G11の耐性が4.71倍に増加する。
この、HT29ヒトの大腸癌細胞およびFM19G11で処理したHCT116細胞の間代性アッセイの結果を、処理後10まで監視した(図28)。IC50を、濃度とともに割合を外挿することによって、決定した。FM19G11を、0.5μM、1μM、5μM、10μM、50μM、100μM、200μMの濃度で使用した。
〔実施例54:足場に依存しない細胞増殖〕
足場に依存しない細胞増殖は、インビボにおける腫瘍細胞の腫瘍形成能の予測を可能にする研究である。足場に依存しない細胞増殖の研究を、半流動性の寒天において、HT29細胞、HCT116/p53+/+細胞、およびHCT116/p53−/−細胞について実施した。キャリア(DMSO)またはFM19G11の存在下でのコロニー形成の効率を判定するために、該寒天を毎日監視した。この目的のために、出発物質は、半流動性の寒天中に懸濁させた75×10個の細胞であり、これを10日後まで維持した。HT29(p≦0.005)およびHCT116/p53+/+(p≦0.033)などの、p53を発現させることのできる細胞をFM19G11(0.5μM)で処理した場合、半流動性の寒天培地では、キャリア(DMSO)で処理した細胞に比較すると、これらの細胞のコロニーの増殖の大きな減少を観察することが可能であった(図29)。HCT116/p53−/−細胞において、コロニーの形成の減少は観察されない。倒立顕微鏡の拡大率4xの光学的なフィールドにおいてコロニーをカウントすることによって、互いに独立した3組の実験において、コロニーの増殖を定量化した。
図29は、半流動性の寒天培地中における、HT29細胞、HCT116/p53+/+細胞、およびHCT116/p53−/−細胞のコロニーの形成を示す。不活性な寒天内で成長した、それぞれのタイプの細胞のコロニーの個数を、播種から10日後に定量化した。表は、レンズの拡大率を4xにして、5つの異なるフィールドによって、上述の各細胞株(±SD)コロニーの個数を勘定して得られた互いに異なるカウント方法を示している。結果は、播種され、キャリア(DMSO)またはFM19G11(0.5μM)を用いて処理された細胞を計数した、互いに独立した3組の実験のカウントを示している。HT29癌化細胞株における典型的なコロニーの形成を示す写真を、半流動性の培地に播種してから10日後に撮影した。
〔実施例55:FM19G11が、MMRの発現の減少を回復させ、低酸素条件によって引き起こされるゲノムの不安定性を防止する。〕
幹細胞において低酸素条件によって引き起こされる、DNA変異修復(MMR)遺伝子の発現の減少によって、ゲノムが不安定になることがある(Rodriguez-Jimenez FJ, M-MV, Lucas-Dominguez R, Sanchez-Puelles JM. Hypoxia Causes Down-Regulation of Mismatch Repair System and Genomic Instability in Stem Cells. Stem Cells. May 29 2008)。ゲノムの不安定性は、腫瘍の表現型の獲得に広く関連付けられている(Scherer, SJ, Avdievich, E and Edelmann, W, (2005) Functional consequences of DNA mismatch repair missense mutations in murine models and their impact on cancer predisposition. Biochem Soc Trans 33: 689-93; Fishel, R, Lescoe, MK, Rao, MR, Copeland, NG, Jenkins, NA, Garber, J et al., (1993) The human mutator gene homolog MSH2 and its association with hereditary nonpolyposis colon cancer. Cell 75: 1027-38; Aaltonen, THE, Peltomaki, P, Leach, FS, Sistonen, P, Pylkkanen, L, Mecklin, JP et al., (1993) Clues to the pathogenesis of familial colorectal cancer. Science 260: 812-6; Eckert, A, Kloor, M, Giersch, A, Ahmadi, R, Herold-Mende, C, Hampl, JA et al., (2007) Microsatellite instability in pediatric and adult high-grade gliomas. Brain Pathol 17: 146-50)。FM19G11は、DNA修復タンパク質の発現を回復できる。このことが、低酸素状態のニッチに置かれた幹細胞においてゲノムが不安定になることを防止することができ、さらにこのことが生物にとって妥協をもたらすのかもしれない。なぜならば、幹細胞は自己再生、または先祖細胞にゲノムの不安定性が存在していても存続する、さらに特殊な細胞に分化することができるからである。低酸素条件下で下方制御される修復タンパク質の発現を、FM19G11が増加させる可能性を考慮すれば、HIF腫瘍増殖因子、DNA損傷応答のトリガー、または細胞の周期停止を阻害する上述の性質があるからという理由だけではなく、低酸素条件下でゲノムの不安定性の増加を防止する薬としても、FM19G11を抗腫瘍薬となる可能性のあるものと考えることもできる。
図30は、C17.2神経幹細胞およびネズミのニューロスフェアが、低酸素条件下で、MSH6修復タンパク質のレベルの低下(この低下はFM19G11のの存在下で回復する)をどのように経験するのかを示す。正常酸素条件下で、DMSOで処すること理によってMSH6タンパク質が減少(この減少はFM19G11によって回復する)することが、C17.2細胞において観察される。
図31は、低酸素状態によって引き起こされる、ネズミのニューロスフェア(神経幹細胞)におけるゲノムの不安定性が、FM19G11を用いた処理によって、どのように防止されるのかを示す。マイクロサテライト配列マーカーに対して特異的な蛍光標識を施したプライマーを使用することによって、酸素正常状態(Nx)、低酸素状態(Hx)、または低酸素状態+FM19G11(Hx+19G11)において、ニューロスフェアのゲノム安定性を分析した。上記の図において、使用されたうちの2つのマーカー(mBAT59およびmBAT67)が、低酸素条件に起因するDNAにおける欠失または挿入を、どのように示したのかが観察される。FM19G11を用いた処理によって、(参照またはコントロールとして使用される)酸素正常状態の特性が回復できるようになり、それゆえ、低酸素状態によって引き起こされるゲノムの不安定性が防止できる。
〔実施例56:FM19 G11は、後成的なイベントによって染色質を再造形する能力を有する。〕
研究室における知見によれば、FM19G11には、p300(ヒストンアセチル化酵素)の発現に対して影響を与える能力がある。つまり、FM19G11は、DNA(ヌクレオソーム)が渦巻状になっており、染色質を形成するヒストンに、アセチル基を導入する。細胞のタイプによって、FM19G11は、p300の発現の変化、およびある染色体領域のアセチル化の程度の変化に対して有利に作用する。例えば、以前の知見(Rodriguez-Jimenez FJ, M-MV, Lucas-Dominguez R, Sanchez-Puelles JM. Hypoxia Causes Down-Regulation of Mismatch Repair System and Genomic Instability in Stem Cells. Stem Cells. May 29 2008)によれば、低酸素状態およびそれに関連する後成的なイベントが、DNA変異(MSH6、MLH1)の場合の、修復タンパク質のレベルの低下を引き起こす。低酸素状態では、MLH1遺伝子およびMSH6遺伝子のプロモーター領域におけるヒストンH3のアセチル化の減少に起因して、染色質の閉構造が生成されることが、上述の研究対象物において観察された。ただし、FM19G11の存在下では、キャリアで処理した細胞に対して、p300および修復タンパク質が増加した。ヒストンのアセチル化を防止するTSA(ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬)でタンパク質を処理した場合、薬がどのようにして、タンパク質全体の脱アセチル化の大幅な増加を引き起こすのか、観察することができた。
TSAが、乳癌における抗腫瘍薬となる可能性のあるものとして提案されていて、現在、前臨床の段階にある(Vigushin, DM, Ali, S, Pace, PE, Mirsaidi, N, Ito, K, Adcock, I et al., (2001) Trichostatin A is a histone deacetylase inhibitor with potent antitumor activity against breast cancer in vivo. Clin Cancer Res 7: 971-6.)。FM19G11は、タンパク質のアセチル化を、TSAと同じぐらいまたはそれ以上に効率よく、強制的に進める。FM19G11は、このタイプの神経幹細胞(C17.2)において、アセチル化を強制的に進め、かつ、MLH1修復タンパク質およびMSH6修復タンパク質の観察される回復に関連する可能性のある、薬のように振る舞う。なぜならば、以前の研究を考慮すれば、これらのタンパク質が後成的なプロセスによって制御されるからである(Rodriguez-Jimenez FJ, M-MV, Lucas-Dominguez R, Sanchez-Puelles JM. Hypoxia Causes Down-Regulation of Mismatch Repair System and Genomic Instability in Stem Cells. Stem Cells. May 29 2008)。
図32は、FM19G11がどのようにして、正常酸素条件および低酸素条件下で、C17.2神経幹細胞においてp300(ヒストンアセチル化酵素)およびDNA修復タンパク質(MLH1およびMSH6)の発現の変化を引き起こすのかを示す。FM19G11は、タンパク質全体のアセチル化の程度に対して影響する。TSAを、ヒストンのアセチル化を強制的に進める薬に対する、正のコントロールとして使用した。
細胞がFM19G11で処理された場合、アセチル化の程度の変化は明らかであるが、それぞれの細胞のタイプの遺伝的背景が、FM19G11によって引き起こされる後成的な変化に対して影響し、その結果、発現の増加または減少に影響する。したがって、脊髄から得られる上衣細胞は、ヒストンH3全体のアセチル化の全体的な程度が比較的低く、FM19G11は染色質の閉構造をさらに生成する。物理的な低酸素条件下で、FM19G11は、この細胞のタイプにおいて、あるタンパク質(例えば、HIFαの2つのアイソフォーム、上述のp300、および上記未分化マーカー(Sox2、Oct3/4))の減少を引き起こすことができる。ヘテロクロマチンの高次構造(閉構造)を付与し、かつ、転写活性化因子がアクセスすることを防止する、ヒストンH3のアセチル化の減少に、これらのタンパク質の減少が関連している。
図33は、正常酸素条件または低酸素条件(図中左側)の下で、FM19G11によってタンパク質の発現に対して引き起こされる、酸素変化(HIFα)、未分化マーカー(Sox2、Oct3/4)、ヒストンアセチル化酵素(p300)、およびアセチル化ヒストンH3に対して順応する効果を示す。酸素正常状態および低酸素状態におけるヒストンH3のアセチル化の状態に対する、FM19G11の影響を、染色質の免疫沈降によって、そのために抗AcH3抗体(アセチル化ヒストンH3)を使い、定量的なPCR(右側のグラフ)によってDNAを定量化して、決定した。
FM19G11は、ヒストンH3のアセチル化の程度に対して影響を与えることができ、したがって、染色質の高次構造に対して影響を与えることができるので、FM19G11が、ヒストンH3へのアセチル基の導入に対して有利に作用するか、または逆にヒストンH3の脱アセチル化を防止するかどうかを評価した。どちらの効果も、ヒストンH3のアセチル化の程度の増加を引き起こすと考えられる。アセチルトランスフェラーゼp300を認識する抗体を使用して、免疫沈降アッセイを実施した。さらに、キット「HAT Colorimetric Assay」(BioVision)を使って、アセチルトランスフェラーゼ活性を測定するアッセイを、実施した。この方法はADHの検出からなるが、なぜならば、ペプチドのアセチル化が、NADHの生成に必須の補酵素として作用するコエンザイムAの遊離型の放出を引き起こすからである。FM19G11で処理されたC17.2細胞において、酸素の割合に関わらず、免疫沈降物のアセチルトランスフェラーゼ活性が増加することが観察された。ただし、キットHDAC Fluorimetric Cellular Activity Assay(Biomol, AK−503)を用いて実施したアッセイから得られた結果によれば、FM19G11は、ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬としての活性を示さなかった。
図34Aは、無処理、キャリアまたはFM19G11で処理済み、および正常酸素条件または低酸素条件下で培養済みの、細胞のタンパク質抽出物のアセチルトランスフェラーゼ(HAT)活性を示している。タンパク質抽出物を先に抗p300抗体で免疫沈降させ、アセチルトランスフェラーゼ活性を、NADHを検出することによって測定した。ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)活性の評価(図34B)を、異なる濃度のFM19G11で処理されたHeLa細胞のタンパク質抽出物を用いて実施した。正のコントロールとして、固定濃度のTSA(1μM)を含めて、無処理の細胞の抽出物をコントロールとして使用した。実験は、ヒストン脱アセチル化酵素活性を検出するための、Biomolのキット(HDAC Fluorimetric Cellular Activity Assay, Biomol, Cat. No. AK−503)の指示にしたがって実施した。
化合物FM19G11および類似体の化学合成を示す。 HIFの転写活性の新規阻害剤である、FM19G11を示す。A)はFM19G11の化学構造を示す。B)は、プロモーター領域に存在するHIFのタンパク質のHRE反応配列に結合することによって、該タンパク質に反応して活性化されたルシフェラーゼ・レポーター遺伝子を使った、HIFの転写活性の研究結果を示す。HREの9個の反復に融合したルシフェラーゼ・レポーター遺伝子を恒常的に過剰発現させるHeLa細胞の培養物を、低酸素条件(O1%、図中青色の棒グラフ)または正常酸素条件(O20%、図中赤色の棒グラフ)で、FM19G11を濃度を増加させながら(0μM〜1μM)使用して、6時間かけて処理した。ルシフェラーゼの活性を示す単位は、絶対値で表わす。C)は、Bに図示したHIFの転写活性の阻害を、ルシフェラーゼ活性アッセイから計算した結果を示す。100−(((RLUHx+FM19G11−RLUHx+DMSO)*100/RLUHx−RLUHx+DMSO)))実験は三組実施した。 HIFの転写活性の制御における、FM19G11の特異性の研究結果を示す。該遺伝子のプロモーター領域において、上記HIFのタンパク質(HRE)に対して反応する配列に融合したルシフェラーゼ・レポーター遺伝子、c−jun/c−fos(TRE)によって形成された化合物に融合したルシフェラーゼ・レポーター遺伝子、またはATF2/JunB(CRE)によって形成された化合物に融合したルシフェラーゼ・レポーター遺伝子を恒常的に過剰発現させるHeLa細胞を、それぞれの刺激の存在下(HREの場合は低酸素状態(O1%)、TREの場合はc−fosおよびc−junの同時発現、CREの場合はATF2およびJunBの同時発現)で6時間培養した。転写活性を阻害する際のFM19G11の活性を、濃度を増加させながら(0μM〜1μM)、ルシフェラーゼ活性を測定し、次式を適用することによって決定した。100−(((RLUHx+FM19G11−RLUHx+DMSO)*100/RLUHx−RLUHx+DMSO)))実験は三組実施した。 HeLa細胞において、VEGFのメッセンジャーRNAの発現レベルを定量化するための、実時間ポリメラーゼ連鎖反応を示す。HeLa細胞は、低酸素条件(O1%、HPX)または正常酸素条件(O20%、NM)で、FM19G11または当量体積のキャリア(DMSO、コントロール)の存在下で、該FM19G11またはキャリアの濃度を増加させながら(0.03μM〜0.3μM)、24時間培養した。全RNA量の変化に起因する発現量の変化を、GAPDH遺伝子の恒常的発現によって補正した。上記各試料におけるVEGF/GAPDHの発現量の比の値を、コントロール酸素正常状態(=1)において得られた発現レベルに対して相対化した。実験は三組実施した。 HeLa 9XHRE細胞において、HIFおよびPHD3(正のコントロールとして。なぜならばHIF1αの標的遺伝子であるから)の2つのαアイソフォームを認識する抗体を使用したウエスタンブロット法による、タンパク質の発現の解析結果を示す。GAPDHを、タンパク質の添加コントロールとして含めた。第1のレーンは無処理の細胞に対応する。第2のレーンは、低酸素条件下でFM19G11を用いて処理された細胞に対応し、第3のレーンは、低酸素状態で培養された細胞に対応する。実験は三組実施した。刺激時間は9時間であった。互いに独立して実施した3組の実験を代表して、1組の実験を図示している。 C17.2細胞において、HIF1αおよびPHD3(正のコントロールとして。なぜならばHIF1αの標的遺伝子であるから)を認識する抗体を使用したウエスタンブロット法による、タンパク質の発現の解析結果を示す。Bアクチンを、タンパク質の添加コントロールとして含めた。第1のレーンは無処理の細胞に対応する。第2のレーンは、低酸素条件下で培養された細胞に対応する。第3、第4、および第5のレーンは、FM19G11(それぞれ125、250、500)を濃度を増加させながら用いて処理され、低酸素条件下で培養された細胞に対応する。実験は三組実施した。刺激時間は3時間および24時間であった。赤色の矢印は、PHD3(標的遺伝子HIF)の発現が大きく減少していることを示している。互いに独立して実施した3組の実験を代表して、1組の実験を図示している。 FM19G11(500nM)の存在下で、酸素正常状態または低酸素状態で培養された間葉系幹細胞の核タンパク質からの抽出物を使用して実施した、ウエスタンブロットの結果を示す。単クローンの抗MLH1および抗MSH6抗体を、解析において使用した。Aは、骨髄の間葉系幹細胞において得られた結果である。1−Nx 3h;2−Hx 3h;3−Hx 3h+19G11;4−Hx 18h;5−Hx 18h+19G11;6−Hx 24h;7−Hx 24h+19G11。Bは、歯髄の間葉系幹細胞において得られた結果である。13−Nx 72h;14−Nx 72h+19G11;15−Hx 72h;16−Hx 72h+19G11。実験は三組実施した。刺激時間は3時間であった。互いに独立して実施した3組の実験を代表して、1組の実験を図示している。 epNPCにおいて、PHD3およびVEGFのメッセンジャーRNAの発現レベルを定量化するための、実時間ポリメラーゼ連鎖反応を示す。epNPCは、低酸素条件(O1%)で、500nMのFM19G11または当量体積のキャリア(DMSO)の存在下で、0時間(ベースライン状態、1)48時間培養された。全RNA量の変化に起因する発現量の変化を、GAPDH遺伝子の恒常的発現によって補正した。上記各試料におけるPHD3またはVEGF/GAPDHの発現量の比の値を、ベースラインの発現レベル(時間O=1のときに酸素正常状態または低酸素状態)に対して相対化した。実験は三組実施した。 ヒトの歯髄の幹細胞において、HIF−1およびその標的遺伝子VEGFおよびCOX−2の発現に対する、化合物FM19G11の効果を示す。 ヒトの歯髄の幹細胞において、アポトーシスおよび生存率に対する、化合物FM19G11の効果を示す。 未分化状態のマーカーOct3/4、Sox2、およびその標的遺伝子TGFα、ならびにNanogそれぞれのメッセンジャーRNAの発現を研究するための、半定量的な逆転写PCRを示す。epNPCを、正常酸素条件(O20%)または低酸素条件(O1%)下で、500nMのFM19G11またはそのキャリア(+)またはDMSO(−)の存在下で、48時間培養した。恒常的なGAPDH遺伝子の発現は、どの条件であっても、アッセイされた試料の量に大きな変化がないことを示している。実験は三組実施した。 正常酸素条件(O20%)または低酸素条件(O1%)下で、FM19G11の存在下でその用量を増加させながら48時間培養された、epNPCのOct3/4、Sox2、およびβ−アクチン(ローディングコントロール)のタンパク質の発現レベルの研究のための、ウエスタンブロットの結果を示す。実験は三組実施した。 正常酸素条件(O20%)下で、FM19G11の存在下でその用量を増加させながら48時間培養された、epNPCのSox2、Oct3/4、Nanog、Notch−1、およびβ−アクチン(添加コントロール)のタンパク質の発現レベルの研究のための、ウエスタンブロットの結果を示す。実験は三組実施した。 hESCにおいて、Sox2およびOC3/4のメッセンジャーRNAの発現レベルを定量化するための、実時間ポリメラーゼ連鎖反応の結果を示す。マトリゲル上で培養されたhESCのコロニーを、正常酸素条件(O20%)または低酸素条件(O1%)下で、500nMのFM19G11または当量体積のそのキャリア(DMSO)の存在下で、48時間処理した。全RNA量の変化に起因する発現量の変化を、GAPDH遺伝子の恒常的発現によって補正した。上記各試料におけるSox2またはOct3/4/GAPDHの発現量の比の値を、ベースラインの発現レベル(酸素正常状態−キャリア=1)に対して相対化した。実験は三組実施した。 epNPCがオリゴデンドロサイトに分化する様子を示す(標的とする分化)。A)は、分化プロトコールのスキームである。epNPCを、正常酸素条件(O20%)または低酸素条件(O1%)下で、分化のプロセスの初期(1日目〜3日目)および該プロトコールの終了時(35日目〜38日目)に、FM19G11またはそのキャリア(DMSO)を用いて処理した。オリゴデンドロサイト、NG2、RIP、およびO4についてのマーカーの発現を、免疫組織化学的方法によってすべての条件下で判定した。 FM19G11の存在下で、epNPCの増殖性の活性を定量化したものを示す。epNPCを、正常酸素条件(O20%)または低酸素条件(O1%)下で、500nMのFM19G11またはそのキャリアの存在下で、同じ個数で3日間培養した。生成されたATPの量を、細胞培養の代謝活性の指標として定量化することによって、増殖性の活性を判定した。FM19G11の存在下で得られた結果を、キャリアであるDMSO(=1)の存在下で得られた値に対して相対化した。 epNPCの培養から得られるニューロスフェアの形成/増幅に対するFM19G11の効果を示す。500nMのFM19G11またはそのキャリア(DMSO)の存在下でepNPC(16,000個の細胞)を48時間培養して得られたものの、位相差写真である。 細胞パネルに対するFM19G11の毒性を示す。細胞株、HeLa 9x−HRE−Luc、PRC3、HeLa、MCF−7、およびMDA−MB 435−Sにおいて、細胞毒性の研究を実施した。FM19G11(0μM〜30μM)の存在下で濃度を増加させながら、10%の不活化されたウシ胎仔血清、ペニシリン(50IU/ml)、およびストレプトマイシン(50μg/ml)(Invitrogen−Life Technologies、Carlsbad、CA)を補充したDMEM培地で、正常酸素条件下で、該細胞株を72時間培養した。培養物の生存率(%)を、市販のキット、Cell Titer 96(登録商標)AQueous Non−Radioactive Cell Proliferation Assay(Promega Corporation)を使って決定した。 化合物FM19G11の魚(メダカ)の胚に対する毒性のアッセイを示す。 化合物FM19G11の分析的HPLCクロマトグラムを示す。 互いに異なる時間において、ウシ血清中のFM19G11の、インキュベーションを行った抽出物のクロマトグラムを示す。 互いに異なる時間において、ウシ血清中のFM19G11の、インキュベーションを行った抽出物のクロマトグラムを示す。 互いに異なる時間において、ウシ血清中のFM19G11の、インキュベーションを行った抽出物のクロマトグラムを示す。 互いに異なる時間において、ウシ血清中のFM19G11の、インキュベーションを行った抽出物のクロマトグラムを示す。 FM19G11は、ヒトの大腸癌細胞(HT29)においてDNA損傷応答のトリガーとなる。DNA損傷応答において鍵となるシグナル経路、具体的には、ATR/ATMとして知られている経路、DNA損傷の修復(MMR、BRCA1、H2AX)の経路に関わるキナーゼのリン酸化が進むことによる活性化の増加が、細胞周期(CHK1、CHK2)の制御の点においても、FM19G11(0.5μM)を用いて処理された腫瘍細胞HT29において検出された。6−TG(5μM、10μM、25μM)またはエトポシド(0.1μM、1μM、10μM)を用いた処理を、コントロールとして、また、DNAの一本鎖(ATR−CHK1)または二重鎖(ATM−CHK2)それぞれにおいて損傷に反応して活性化されるタンパク質比較のために含めた。 動態的研究によれば、ATRの急速な活性化は、HCT116細胞株のどちらにおいても、DNAの一本鎖における損傷に関連している。0.5μMのFM19G11を用いて1時間処理した後、HCT116/p53+/+、のp53細胞における、ATRおよびp53、ならびに、HCT116p53−/−細胞におけるATRのリン酸化または活性化の増加が検出された。上述の結果は、代表的なウエスタンブロット実験を濃度測定の解析にかけた後に得られた。ただし、互いに独立した3組の実験でも同様の結果が得られた。 FM19G11によって誘導された周期停止に対する、p53の効果を示す。AではHCT116/p53+/+細胞、BではHCT116/p53−/−細胞を、互いに異なる濃度のFM19G11(0.5μM、1μM、5μM、10μM)またはキャリアに対して、3日間または6日間曝露して、互いに異なる細胞周期相において細胞の分布をフローサイトメトリーによって分析した。グラフは、異なる濃度のFM19G11によって引き起こされた、それぞれの細胞周期相細胞の割合(%)の分布に対する効果を示している。図示された結果は1組の実験を代表するものである。ただし、互いに独立した3組の実験において、非常に近い割合が得られた。 動態的研究によれば、FM19G11(0.5μM)を用いて処理されたHCT116/p53+/+細胞におけるAKT/mTOR/p70S6/サイクリンD1シグナル経路が、急速かつ効率的に活性化される(倍率の変化≧2)。mTORも、HCT116/p53−/−細胞において、FM19G11を用いて処理した後に、急速にリン酸化された(ただし、倍率の変化の増加は、2よりわずかに小さい)。 HCT116/p53+/+およびHCT116/p53−/−細胞を、FM19G11(10μM)、ラパマイシン(登録商標)(mTOR阻害剤)(100pmol)に単独で、または両方の薬を組み合わせて、上述の濃度で曝露した。両方の薬(100pmol)に対して同時にインキュベーションを行ったところ、FM19G11を用いた処理によってHCT116/p53+/+細胞において発生するS期の周期停止が、防止された。 細胞中のATPの総含有量は、FM19G11を用いて処理されたヒトの大腸癌細胞の割合(%)として、また、DMSOを用いて48時間処理された対応する細胞株に対して相対的に、定量化された細胞生存率と相関関係がある。 HT29のヒトの大腸癌細胞およびFM19G11を用いて処理されたHCT116細胞の間代性アッセイの結果を、処理後10まで監視した。IC50を、濃度とともに割合を外挿することによって、決定した。FM19G11を、0.5μM、1μM、5μM、10μM、50μM、100μM、および200μMの濃度で使用した。 半流動性の寒天培地における、HT29、HCT116/p53+/+、およびHCT116/p53−/−細胞のコロニーの形成を示す。不活性な寒天内で成長した、それぞれのタイプの細胞のコロニーの個数を、播種から10日後に定量化した。表は、レンズの拡大率を4xにして、5つの異なるフィールドによって、上述の各細胞株(±SD)コロニーの個数を勘定して得られた互いに異なるカウント方法を示している。結果は、播種され、キャリア(DMSO)またはFM19G11(0.5μM)を用いて処理された細胞を計数した、互いに独立した3組の実験のカウントを示している。HT29癌化細胞株における典型的なコロニーの形成を示す写真を、半流動性の培地に播種してから10日後に撮影した。 C17.2神経幹細胞およびネズミのニューロスフェアは、低酸素条件下で、MSH6修復タンパク質のレベルが低下するが、FM19G11の存在下で回復する。正常酸素条件下では、DMSOを用いた処理によってMSH6タンパク質が減少しても、FM19G11によって救出されることが、C17.2細胞において観察される。 低酸素状態によって引き起こされる、ネズミのニューロスフェア(神経幹細胞)におけるゲノムの不安定性を、FM19G11で処理することによって防止する。マイクロサテライト配列マーカーのための、特異的な蛍光標識を施したプライマーを使用することによって、酸素正常状態(Nx)、低酸素状態(Hx)、または低酸素状態+FM19G11(Hx+19G11)におけるニューロスフェアのゲノム安定性を、分析した。図中、使用したマーカーのうち2種類(mBAT59およびmBAT67)が、どのようにして、低酸素条件に起因するDNAの欠失または挿入を示したのかが観察できる。FM19G11を用いて処理することによって、(参照またはコントロールとして使用される)酸素正常状態の特性が回復でき、こうして、低酸素状態によって引き起こされるゲノムの不安定性が防止できた。 FM19G11は、C17.2神経幹細胞において、正常酸素条件および低酸素条件下で、p300(ヒストンアセチル化酵素の一種)およびDNA修復タンパク質(MLH1およびMSH6)の発現を変化させる。FM19G11は、全体的なタンパク質のアセチル化の程度に影響する。TSAを、ヒストンアセチル化を強制的に発生させる薬剤のための正のコントロールとして含めた。 正常酸素条件または低酸素条件(図中左側)の下で、酸素状態の変化(HIFα)、未分化マーカー(Sox2、Oct3/4)、ヒストンアセチル化酵素(p300)、およびアセチル化ヒストンH3に対して順応するという、タンパク質の発現に対してFM19G11によって引き起こされる効果を示す。酸素正常状態および低酸素状態におけるヒストンH3のアセチル化状態に対するFM19G11の影響を、免疫沈降を目的として抗AcH3抗体(アセチル化ヒストンH3)を使用し、定量的なPCR(右側のグラフ)によってDNAを定量化し、染色質の免疫沈降によって判定した。 FM19G11のアセチルトランスフェラーゼまたはヒストン脱アセチル化酵素活性の評価を示す。上側のグラフは、無処理、キャリアまたはFM19G11で処理済み、または正常酸素条件または低酸素条件下で培養済みの細胞のタンパク質の抽出物のアセチルトランスフェラーゼ(HAT)活性を示している。タンパク質の抽出物は、抗p300抗体を用いて先に免疫沈降させ、NADHを検出することによって、アセチルトランスフェラーゼ活性を測定した。ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)活性の評価を、異なる濃度のFM19G11で処理されたHeLa細胞のタンパク質の抽出物を用いて実施した。正のコントロールとして、TSAの濃度を固定して(1μM)含め、無処理の細胞の抽出物をコントロールとして使用した。実験は、ヒストン脱アセチル化酵素活性を検出するためのBiomolキット(HDAC Fluorimetric Cellular Activity Assay, Biomol, Cat. No. AK−503)の指示にしたがって実施した。

Claims (44)

  1. 下記の一般式(I)で表わされ、
    、R、およびRは互いに独立して以下の(i)〜(vi)のいずれかであればよく、
    (i)水素、
    (ii)分枝がある、あるいは直線状の−(CH−Hアルキル基(ただし、必要に応じて不飽和度を有する)であって、n=1〜10であり、好ましくはメチルまたはエチルである、
    (iii)−COOHカルボン酸または式−COORで表わされるエステル(ただし、Rは分枝がある、あるいは直線状の−(CH−Hアルキル基(必要に応じて不飽和度を有する)であって、n=1〜10であり、好ましくはメチルまたはエチルである)、
    (iv)−OHヒドロキシル基、−NO基、
    (v)ハロゲン;−CHa基(ただし、Haはハロゲン)であって、好ましくはCFである、
    (vi)−NHCOR(ただしRは、分枝がある、あるいは直線状の−(CH−Hアルキル基(必要に応じて不飽和度を有する)であって、n=1〜10であり、好ましくはメチルまたはエチルである)、
    x、y、およびzは=1〜4であり、
    2−(4−メトキシフェニル)−2−オキソエチル3−(2,4−(ジニトロ)ベンズアミド)ベンゾアート(ただし、Rは2,4−di−NO、RはH、Rは4−OMe)および2−4−(ニトロフェニル)−2−オキソエチル3−(4−ブロモ)ベンズアミド)ベンゾアート(ただし、Rは4−Br、RはH、Rは4−NO)を除く、化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩を含む、薬学的組成物。
  2. FM19G11と呼ばれ、Rが2,4−di−NOであり、Rが−Hであり、Rが−CH(4)である、請求項1に記載の、一般式(I)で表わされる化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩を含む、薬学的組成物。
  3. が2−NO、4−CFであり、Rが−Hであり、Rが−CH(7)である、請求項1に記載の、一般式(I)で表わされる化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩を含む、薬学的組成物。
  4. が2−CF、4−NOであり、Rが−Hであり、Rが−CH(10)である、請求項1に記載の、一般式(I)で表わされる化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩を含む、薬学的組成物。
  5. が2−4−CFであり、Rが−Hであり、Rが−CH(13)である、請求項1に記載の、一般式(I)で表わされる化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩を含む、薬学的組成物。
  6. が−Hであり、Rが−Hであり、Rが−CH(16)である、請求項1に記載の、一般式(I)で表わされる化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩を含む、薬学的組成物。
  7. が2−4−NOであり、Rが−Hであり、Rが−CF(17)である、請求項1に記載の、一般式(I)で表わされる化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩を含む、薬学的組成物。
  8. が2−4−NOであり、Rが−Hであり、Rが−H(19)である、請求項1に記載の、一般式(I)で表わされる化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩を含む、薬学的組成物。
  9. が4−NOであり、Rが−Hであり、Rが−CH(22)である、請求項1に記載の、一般式(I)で表わされる化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩を含む、薬学的組成物。
  10. が2−NOであり、Rが−Hであり、Rが−CH(25)である、請求項1に記載の、一般式(I)で表わされる化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩を含む、薬学的組成物。
  11. が2−4−NOであり、Rが−Hであり、Rが−OH(26)である、請求項1に記載の、一般式(I)で表わされる化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩を含む、薬学的組成物。
  12. が2−4 NOであり、Rが−Hであり、Rが−COH(29)である、請求項1に記載の、一般式(I)で表わされる化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩を含む、薬学的組成物。
  13. 請求項1または2に記載の、FM19G11と呼ばれる一般式(I)で表わされる化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩を得るための方法であって、以下のスキームに示すステップを含む方法。
  14. 低酸素誘導性写因子(HIF)により修飾された遺伝子の転写を調節する薬物を調製するための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩の利用。
  15. HIF、VEGF、PHD3、MMR類、Sox2、およびOct3/4の群から選択される、1つ以上の遺伝子の転写を調節する薬物を調製するための、請求項14に記載の、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩の利用。
  16. Nanog、Notch1、p53、およびp300の群から選択される、1つ以上の遺伝子の転写を調節する薬物を調製するための、請求項14に記載の、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩の利用。
  17. 低酸素条件下でHIFの自己分泌制御において、該HIFの転写を阻害する薬物を調製するための、請求項15または16に記載の、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩の利用。
  18. 低酸素条件下でHIF1αおよびHIF2αの転写を顕著に阻害する薬物を調製するための、請求項17に記載の、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩の利用。
  19. 低酸素条件下でVEGFおよび/またはPHD3の転写を顕著に阻害する薬物を調製するための、請求項15に記載の、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩の利用。
  20. 低酸素条件下および正常酸素条件下でMMR修復遺伝子の発現を誘導する薬物を調製するための、請求項15に記載の、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩の利用。
  21. 低酸素条件下および正常酸素条件下で上記MMR修復遺伝子であるMSH6およびMLH1の発現を誘導する薬物を調製するための、請求項20に記載の、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩の利用。
  22. 上記薬物が、低酸素条件によって引き起こされる腫瘍の表現型に関連する、ゲノムの不安定性を防止する、請求項20または21に記載の利用。
  23. 正常酸素条件下でSox2およびOct3/4の発現を誘導する薬物を調製するための、請求項15に記載の、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩の利用。
  24. 正常酸素条件下でNanogおよび/またはNotchの発現を誘導する薬物を調製するための、請求項16に記載の、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩の利用。
  25. 上記薬物は、幹細胞集団の増加を誘導し、該幹細胞の自己再生を増加させる、請求項23または24に記載の利用。
  26. 低酸素条件下でSox2およびOct3/4の発現レベルを低減する薬物を調製するための、請求項15に記載の、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩の利用。
  27. 低酸素条件下でp53腫瘍阻害因子の発現を誘導する薬物を調製するための、請求項16に記載の、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩の利用。
  28. 上記誘導が成人の歯髄幹細胞内で起こる、請求項27に記載の利用。
  29. 上記薬物の作用形態は、mTOR経路の活性化を誘導する、請求項26または27に記載の利用。
  30. 上記mTOR経路の活性化は、DNA損傷に対する応答を誘発し、その結果、p53が活性化し、p53依存的に細胞周期のG1/S期停止を引き起こす、請求項29に記載の利用。
  31. 低酸素条件下でp300の発現を修飾する薬物を調製するための、請求項16に記載の、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩の利用。
  32. 上記薬物によって、後成的な現象によるクロマチンリモデリングが可能になる、請求項31に記載の使用方法。
  33. 血管新生の病理を治療するための薬物を調製するための、請求項14〜32のいずれか一項に記載の、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩の利用。
  34. 癌を治療するための薬物を調製するための、請求項14〜33のいずれか一項に記載の、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩の利用。
  35. 上記癌が、乳癌、結腸癌、膀胱癌、頭頸部癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、子宮癌、甲状腺癌、胃癌、肝癌、リンパ腫、またはメラノーマである、請求項14〜34のいずれか一項に記載の、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩の利用。
  36. 腫瘍を治療するための薬物を調製するための、請求項14〜33のいずれか一項に記載の、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩の利用。
  37. 炎症の原因となる病理を治療するための薬物を調製するための、請求項14〜33のいずれか一項に記載の、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩の利用。
  38. 再生医学に用いるための、請求項14〜33のいずれか一項に記載の、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩の利用。
  39. 幹細胞の分化に関連する用途に用いるための、請求項38に記載の、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩の利用。
  40. 組織の変性の原因となる病理を治療するための薬物を調製するための、請求項14〜33のいずれか一項に記載の、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩の利用。
  41. 薬学的に有効な量の、請求項1〜12のいずれか一項に記載の、一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩と、
    キャリアまたは希釈液、および/または生理学的に許容可能な補助剤とを含んでなる、薬学的組成物。
  42. 上記一般式(I)で表わされる化合物が、FM19G11(4)、または該化合物の、薬学的に許容可能な塩である、請求項41に記載の薬学的組成物。
  43. 請求項14〜40のいずれか一項の記載にしたがって、血管新生の病理の治療または防止するのに利用可能な、請求項41または42に記載の薬学的組成物。
  44. 一般式(I)で表わされる1つ以上の化合物を有する、請求項41〜43のいずれか一項に記載の薬学的組成物、キャリアまたは希釈液、および/または1つ以上の補助剤を備え、個々の病例において、組成物の投与ルートに応じて1つ以上の容器に共にまたは別々に収容されていてもよい、キット。
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