それ故に、本発明の目的は、高感度なマイクロエレクトロニクス部品が、ヒトまたは動物の体の水性環境から十分に保護され、前述した欠点または制限の全てを有しない、医療用インプラント装置を提供することである。
本発明は、請求項1で規定されるような医療用インプラント装置用マイクロエレクトロニクス素子を提供する。この点で、本発明は、好ましくは、請求項6で規定されるような光受信素子として具体化される。更に、本発明は、請求項17で規定されるような医療用インプラント装置、例えば、網膜インプラントを提供する。本発明の好ましい特徴は従属項に記載される。
それ故に、1つの広い態様において、本発明は、ヒトまたは動物の体内に埋め込まれる医療用インプラント装置用マイクロエレクトロニクス素子、例えば、マイクロチップを提供する。このマイクロエレクトロニクス素子は、医療用インプラント装置において、機能を実行する特定用途マイクロエレクトロニクスを含む機能ユニット、および交流(AC)供給電圧を直流(DC)電圧に変換するように適応される整流手段を備える。整流手段によって提供されるDC電圧、またはDC電圧から取り出される動作電圧は、機能ユニットへ供給されるように構成される。機能ユニットおよび整流手段は、共通半導体基板上に集積され、マイクロエレクトロニクス素子は外部DC電圧供給を必要としない。言い換えれば、本発明のマイクロエレクトロニクス素子が、DC信号の印加を回避する、またはDC信号の印加から隔離されるように構成される。例えば、ヒトまたは動物の体内の水性環境とのインタフェースを形成するマイクロエレクトロニクス素子(即ち、マイクロチップ)の外側領域では、DC信号は存在しない。
こうして、本発明は、マイクロエレクトロニクス素子またはマイクロチップを、外部から印加される、または作用するDC電圧の悪影響から隔離するように適応される腐食抑止手段を提供する。具体的には、本発明のマイクロエレクトロニクス素子またはマイクロチップの構成は、マイクロエレクトロニクス素子またはマイクロチップがAC供給電圧のみにさらされる設計とし、望ましくは、本発明の素子またはマイクロチップのボディ‐インタフェース(body‐interface)の外側での、ボディ‐インタフェースからの、および/またはボディ‐インタフェースでの直流電流の流れを排除する。その結果、これは、体内の水性環境の腐食作用に対して本質的に抵抗力を有するマイクロエレクトロニクス素子またはマイクロチップとなる。詳細には、本発明のマイクロエレクトロニクス素子またはマイクロチップに対してAC供給電圧を外部から印加することは、電圧供給の常時の(および頻繁な)交番極性の理由から、DC電圧供給の場合に経験されるような腐食作用を生じない。外部から印加される、または作用するDC電圧からマイクロエレクトロニクス素子を隔離するような整流手段と、機能ユニットの特定用途マイクロエレクトロニクスとを1つの共通半導体基板、例えば、マイクロチップ上に集積することで、マイクロエレクトロニクス素子の中に腐食抑止手段を形成する。依然として、このような素子と共に重合体被覆層を採用することが望まれるかもしれないが、被覆層の厚さを薄くし、柔軟性を高くすれば、一層実用的になる。
本発明の好ましい形態において、マイクロエレクトロニクス素子が、共通基板上に集積され、かつ、前記機能ユニットの端子に接続されたキャパシタを更に備え、キャパシタが機能ユニットからの信号出力の交番成分を減結合するように適応される。具体的には、マイクロエレクトロニクス素子またはマイクロチップからの(例えば、出力ピンにおける)信号出力のみが交番成分を有することを確実とするように、減結合キャパシタが配列される。このキャパシタ配列が、それ故に、マイクロエレクトロニクス素子またはマイクロチップの外側での(即ち、体の水性環境とのインタフェースでの)外部DC信号の直接作用を排除するために役立つ。即ち、前記キャパシタ配列が、本発明のマイクロエレクトロニクス素子またはマイクロチップの、外部DC信号への直接露出を回避するために役立つ。
本発明の好ましい形態において、マイクロエレクトロニクス素子が、機能ユニットから出力される信号、またはこの信号から取り出される信号を増幅するように適応される増幅器を更に備える。
本発明の1つの具体的な形態において、機能ユニットの特定用途マイクロエレクトロニクスが、プロセッサ、例えば、データ処理装置を備える。
しかしながら、本発明のより好ましい形態において、機能ユニットが、入射光を検出するように適応される光検出器から成る、または前記光検出器を備え、マイクロエレクトロニクス素子が光受信素子として具体化され得る。光検出器が、例えば、変調された光信号を対応する検出信号へ変換するように適応される。これに関連して、光検出器が、光信号、更に好ましくは、赤外線光信号を受信および検出するように適応される。光検出器が、例えば、光ダイオードの形であってよい。
それ故に、特に好ましい実施形態において、本発明は光受信素子を提供する。この光受信素子が、入射光を検出するように適応される光検出器と、AC供給電圧をDC電圧に変換するように適応される整流器とを備える。整流器からのDC電圧、またはDC電圧から取り出される動作電圧が光検出器へ供給され、整流器および光検出器が1つの共通半導体基板上に集積される。
整流器および光ダイオードを1つの共通基板上に集積することによって、光受信素子がDC電圧の代わりにAC電圧で作動されるように適応される。これまで使用された光ダイオードは、典型的には、DC電圧供給を必要とした。これは、しばしば、水性環境にさらされる金属素子の電解腐食をもたらした。本発明の実施形態による光受信素子において、DC電圧供給はAC電圧供給によって置換される。こうして、整流器によって生成されるDC電圧が、光受信素子の外部にある媒質と直接接触することはない。AC供給電圧に関して、電解腐食に関連する問題は、供給線の極性は高周波で変化するため、重度が低くなる。それ故に、AC電圧を供給電圧として採用することによって、電解腐食に起因する損傷を著しく低減できる、または完全に回避できる。こうして、本発明は、電解腐食が生じる可能性のある環境での光データ伝送の使用を支援する。
好ましくは、赤外線スペクトルでの変調された光を介する光データ伝送は、多数の利点を提供する。光データ伝送は、干渉に対する抵抗性によって特徴づけられる。送信および受信素子の設計は、比較的容易である。更に、光受信素子によって消費されるエネルギ量は非常に低く、光受信素子を収容するために必要な区域は比較的小さい。
他の広い態様において、本発明は、ヒトまたは動物の体内に埋め込まれる医療用インプラント装置用のマイクロエレクトロニクス素子、例えば、マイクロチップを提供する。このマイクロエレクトロニクス素子が、医療用インプラント装置において、機能を実行する特定用途マイクロエレクトロニクスを含む機能ユニット、AC供給電圧をDC電圧に変換するように適応される整流手段、および水性環境でマイクロエレクトロニクス素子の電解腐食を抑制する腐食抑止手段を備える。整流手段によって提供されるDC電圧、またはDC電圧から取り出される動作電圧が、機能ユニットへ供給されるように構成される。腐食抑止手段が回路構成を備え、この回路構成において、機能ユニットおよび整流手段が共通半導体基板上に集積され、マイクロエレクトロニクス素子が、この上に(直接)印加されているおよび/または(直接)作用している外部DC信号の存在を回避する。
このようにして、物理的な電気接続が本発明のマイクロエレクトロニクス素子またはマイクロチップの中の薄い被覆層を通って延びる場合でも、腐食抑止手段によって素子またはマイクロチップをDC信号から隔離すると、腐食作用の所望の抑制を生じる。即ち、本発明のマイクロエレクトロニクス素子またはマイクロチップは、腐食水性環境において直流にさらされない。
本発明の実施形態による医療用インプラントは、上記で説明されたように、好ましくは、光受信素子の形のマイクロエレクトロニクス素子を備える。医療用インプラントが、望ましくは、網膜インプラントであり、光受信素子が、変調された光信号を受信および検出するように適応される。
本発明のマイクロエレクトロニクス素子が、全ての種類の体液にさらされる医療用インプラント装置での使用に特に適している。医療用インプラントの場合、インプラント装置の置換は、典型的には、外科手術を必要とするため、長期安定性が非常に重要である。本発明の実施形態によるマイクロエレクトロニクス素子を使用することによって、電食は著しく低減されるか完全に除去されるため、医療用インプラント装置の寿命は長くなる。今日まで一般的にDC電圧を供給されてきたマイクロエレクトロニクス素子(例えば、光受信素子)にAC供給電圧を使用することによって、医療用インプラント装置の長期安定性が改善される。
本発明の上記および更なる特徴並びに利点は、本発明の好ましい実施形態の下記の詳細な説明から添付図面を参照して一層明瞭になるであろう。添付図面において、同様の参照番号は同様の部品を示す。
先ず図1を参照すると、本発明の一例を説明するマイクロチップ1の形のマイクロエレクトロニクス素子が示される。マイクロチップ1が、医療用インプラント装置において、ヒトまたは動物の体内へ埋め込まれるように設計され、医療用インプラント装置において、機能を実行する機能ユニット2の中の特定用途マイクロエレクトロニクス、およびAC供給電圧をDC電圧に変換するように適応される整流手段3を備える。この例において、整流手段3が、少なくとも1つのダイオードを備え、滑らかなDC電圧を生成する1つまたは複数のフィルタキャパシタまたはバッファキャパシタを含む。しかしながら、整流手段3は、多様な異なる形態を取ってよく(例えば、ダイオードブリッジ形整流器、電圧調整整流器など)、能動整流回路または受動整流回路を備えてもよいことが理解されるであろう。
機能ユニット2および整流手段3の双方が、共通半導体基板4(例えば、シリコン、ゲルマニウム、または他の適切な材料から形成される)上に集積され、整流手段3および関連回路の配列が、腐食抑止手段を形成するように構成され、マイクロエレクトロニクス素子、即ち、マイクロチップ1が、腐食抑止手段によって、外部から印加される、または動作するDC信号またはDC供給電圧を回避する。言い換えれば、マイクロチップ1が、電圧供給ピン5および6に印加されるAC電圧供給UACによって駆動されるように適応される。AC電圧の周波数は、好ましくは、約100kHzから100MHzの範囲にある。整流手段3が、電圧供給ピン5および6に印加されるAC電圧供給UACをDC電圧UDCに変換するように適応され、このDC電圧が、次いで機能ユニット2の特定用途マイクロエレクトロニクスに対する供給電圧、即ち、機能ユニット2の1つまたは複数の入力端子における供給電圧を形成する。マイクロチップ1が、機能ユニット2の出力端子9に接続されたキャパシタ8を更に備える。キャパシタ8が、機能ユニット2からの出力信号10を減結合するように適応され、マイクロチップ1の出力ピン11における出力信号10が、機能ユニット2によって生成または機能ユニット2から出力される信号の交番成分を備える。キャパシタ12およびインダクタ13を備える同調配列が、任意的に、供給ピン5、6の間のAC電圧供給回路の中に設けられる。図示されてはいないが、同調キャパシタ12および/またはインダクタ13も、共通半導体基板4上に集積され得ることが理解されるであろう。
ここで図2を参照すると、本発明による光受信素子1として具体化されたマイクロエレクトロニクス素子が示される。この実施形態は、基本的に図1の例に対応し、光受信素子1が機能ユニット2を備え、機能ユニット2が、今度は、光ダイオードを備える光検出器の形態をしている。光受信素子1が整流器3を更に備え、光ダイオード2および整流器3の双方が共通半導体基板4上に集積される。先と同様に、整流器は多様な異なる形態を有してよく(例えば、ダイオードブリッジ形整流器、電圧調整整流器など)、能動整流回路または受動整流回路を備えてもよい。更に、半導体材料として、シリコン、ゲルマニウム、または他の適切な材料が再び使用されてもよい。しかしながら、この場合、半導体材料の適切な選択は、通常、光ダイオード2によって検出される光の波長の所望の範囲に依存するであろう。1.1マイクロメートルまでの波長の場合、例えば、シリコンが普通は適切な物質であり、1.8マイクロメートルまでの波長の場合、ゲルマニウムが使用され得る。
光受信素子1が、AC電圧UACによって駆動される。好ましくは、AC電圧の周波数は100kHzから100MHzの間にある。AC電圧UACは電圧供給ピン5および6に印加される。整流器3が、AC電圧をDC電圧UDCに変換するように適応される。整流器3が、1つまたは複数のダイオードで構成され、滑らかなDC電圧UDCを生成する1つまたは複数のフィルタキャパシタまたはバッファキャパシタを備えてよい。このDC電圧が、次いで光ダイオード2に対する供給電圧を形成する。光ダイオード2が、逆方向バイアスでの、いわゆる「光伝導モード」で使用される。光伝導モードで作動される光ダイオードが、光起電力効果に基づく光ダイオードよりも光に敏感であり、低いキャパシタンスを有する傾向があり、これは光ダイオードの時間応答速度を改善する。逆方向バイアスの更なる効果は、空乏層の広がりおよび光電流の強化である。
変調された光7のビームが光ダイオード2の上に入射するとき、光電流が生成される。この光電流が、変調された光7の変調によって交番する。本発明のこの実施形態における光受信素子1が、光ダイオード2の端子9に接続されたキャパシタ8を更に備え、キャパシタ8が、光ダイオード回路からの出力信号10を非結合または減結合するように適応される。出力信号10が、受信された信号の交番成分のみを備える。変調された光7の変調が、例えば、出力信号10が一定成分を備えないように、または無視され得る一定成分のみを備えないように選択され得る。出力信号10が、光受信素子1の出力ピン11へ供給される。
図3は、光受信素子1の外部設計を概略的に示す。この点に関して、光受信素子1が、感光性領域(photosensitive area)15を備える。感光性領域15は、光が検出されるように透明な材料から作られている。好ましくは、電圧供給ピン5、6および出力ピン11はパッケージされた素子1の裏面に置かれ、感光性領域15と対向している。
図2および図3で示される光受信素子1が、電食が生じる可能性のある周囲で、光データ伝送を実現するために特に適している。光ダイオード2および整流器3を1つの共通基板4上に集積することによって、光受信素子1は、DC電圧の代わりにAC電圧で作動されるように設計される。今日まで使用されてきた光ダイオードはDC電圧供給を必要とし、これはしばしば体内の水性環境にさらされた金属素子の電解腐食をもたらした。しかしながら、本発明による光受信素子1において、DC電圧供給はAC電圧供給で置換されるため、電解腐食から生じる損傷は著しく低減される、または完全に回避され得る。これにより、電解腐食がこれまで問題であった水性環境で、光データ伝送の使用が可能となる。
上で述べたように、変調された光、好ましくは、赤外線スペクトルを介する光データ伝送は、多くの利点を提供する。第1に、光データ伝送は、干渉に対する抵抗性によって特徴づけられる。更に、送信および受信素子の設計は比較的容易であり、光受信素子によって消費されるエネルギ量が非常に少ない。光受信素子を収容するために要求される区域も比較的小さい。
図4では、本発明による光受信素子1の他の実施形態が描かれている。この例において、光受信素子1が、先と同様に、光ダイオードを備えた光検出器の形状の機能ユニット2、これと組み合わされた整流器3、キャパシタ8、周辺光制御回路16、および増幅器17を備える。これらの部品の全てが、1つの共通半導体基板4上に集積される。それ故に、図2で示される実施形態と比較して、周辺光制御回路16および増幅器17が付け加えられている。
先と同様に、AC供給電圧UACが2つの電圧供給ピン5、6に印加される。整流器3がAC供給電圧UACをDC電圧UDCに変換するように適応され、次いでUDCが、周辺光制御回路16および増幅器17の供給電圧を形成する、または供給電圧として使用される。周辺光制御回路16が、周辺光の強度を決定する。周辺光の強度に依存して、周辺光制御回路16が動作電圧を光ダイオード2へ供給し、これによって光ダイオード2の動作基点がそれぞれの最適条件へ設定される。変調された光7が光ダイオード2にあたるとき、変調された光電流が生成される。光電流の交番成分が、キャパシタ8によって非結合または減結合され、増幅器17へ供給される。
周辺光制御回路16は、自動利得制御を備え得る。自動利得制御が、変調された検出信号の振幅に依存して増幅器17の利得を制御するように適応され、また利得制御信号18を増幅器17へ提供するように適応される。増幅器の入力信号が、利得制御信号18によって増幅され、増幅器の出力信号が、光受信素子1の出力ピン11へ提供される。本発明の好ましい実施形態によれば、変調された検出信号の増幅は、周辺光の強度が所定の閾値を超過すると、直ちに活性化される。更なる好ましい実施形態によれば、増幅器16は対数特性を有する。
ここで図5を参照すると、本発明の他の例を説明するマイクロチップ1の形のマイクロエレクトロニクス素子が示される。マイクロチップ1が、先と同様に、医療用インプラント装置において、ヒトまたは動物の体内に埋め込まれるように設計され、同様に、医療用インプラント装置内で機能を実行する機能ユニット2の中の特定用途マイクロエレクトロニクス、およびAC供給電圧をDC電圧に変換するように適応される整流手段3を備える。既に述べたように、整流手段3が、少なくとも1つのダイオードを備え、滑らかなDC電圧を生成する1つまたは複数のフィルタキャパシタまたはバッファキャパシタを含む。言い換えれば、整流手段3が、先と同様に、多様な異なる形態を取ってよく(例えば、ダイオードブリッジ形整流器、電圧調整整流器など)、能動整流回路または受動整流回路を備えてもよい。重要なこととして、機能ユニット2および整流手段3の双方が、先と同様に、共通半導体基板4上に集積される。整流手段3および関連回路の配列が、腐食抑止手段を形成するように構成され、マイクロエレクトロニクス素子、即ち、マイクロチップ1が、前記腐食抑止手段によって、外部から印加されるか作用するDC信号またはDC供給電圧を回避するか、これらから隔離される。
こうして、図5のマイクロチップ1が、電圧供給ピン5および6に印加されるAC電圧供給UACによって駆動されるように適応される。整流手段3が、電圧供給ピン5および6に印加されるAC電圧供給UACをDC電圧UDCに変換するように適応され、次いでこのDC電圧が、機能ユニット2の特定用途マイクロエレクトロニクスへ電圧を供給するために使用される。しかしながら、マイクロチップ1の入力インタフェース(図示されず)が、例えば、光データ転送に適応される図1から図4までの実施形態とは対照的に、現在の例のマイクロチップ1が、処理される信号10を受け取る入力ピン19を備える。この信号10が、例えば、図1から図4までの実施形態の1つによれば、光受信素子1の出力信号である。入力端子19から延びる入力線の中に示されるキャパシタ20は任意的であり、信号10をフィルタにかける、または同調するために含まれ得る。
それ故に、この場合、マイクロチップ1の機能ユニット2が、光受信素子からの出力信号10を処理するように適応されるプロセッサを備え得る。こうして、網膜インプラント装置で採用される場合、この後でより詳細に説明されるように、図5のマイクロチップ1が、プロセッサユニット2の中で信号10を処理し、次いでマイクロチップ1の複数の出力ピン11を介して網膜インプラントの中の網膜刺激電極アレイの複数の電極へ刺激信号21を送信するように適応される。
ここで図6を参照すると、患者の眼の中に埋め込まれる網膜インプラント装置が示される。角膜29および眼レンズ30(これは治療される患者の中に存在しても、存在しなくてもよい)を通過する光は網膜31に衝突する。網膜31は、眼球内部の大部分を占め、主として眼の背面または後壁の内面にある。眼球の外面は、強膜32によって形成される。脈絡膜33は、網膜31と強膜32との間に位置する。虹彩34は、瞳孔のサイズによって眼の内部へ入る光の量を決定する。眼レンズ30は、毛様筋35によって固定されるか、外植されている。インプラント装置が、眼球内部36および眼球外部37を備える。眼球内部36が、眼の内部に置かれ、眼球外部37が、強膜32の外面に固定されている。眼球内部36および眼球外部37が、ワイヤ接続38によって電気的に接続されている。ワイヤ接続38が、毛様筋35の直後の位置で強膜32を通過している。
網膜インプラント装置は、例えば、網膜色素変性症または黄斑変性症などの網膜変性疾患を患っている患者へ、或る程度の視覚認知を提供するように設計された視覚人工器官である。このため、装置が、患者によって装着される眼鏡42を含み、眼鏡42が、眼鏡フレーム39と、または眼鏡フレーム39上に一体化された小さいビデオカメラ40を有する。ビデオカメラ40によって獲得されたビデオ信号が処理され、イメージデータが、変調された赤外線光ビーム41を介して網膜インプラント装置43へ送信される。赤外線ビーム41が、例えば、眼鏡42上に、または眼鏡42の近傍に位置する赤外線送信LED(図示されず)によって生成される。変調された赤外線ビーム41は、眼のレンズ30が存在していれば、レンズ30を含む患者の眼を通過するが、眼のレンズ30が存在していなければ、通常、レンズ30によって占有されている空間を通過して、インプラント装置43の中に組み込まれた本発明の光受信素子1にあたる。
本発明の実施形態によれば、図3から図5を参照して説明されたような光受信素子1の形のマイクロエレクトロニクス素子が採用され、AC供給電圧によって駆動される。網膜インプラントの場合、長期安定性が重要な課題である。それ故に、ワイヤ接続および電圧供給線の電解腐食を回避することが重要である。AC供給電圧を光受信素子1へ供給することによって、電解腐食が除去され得る、または少なくとも著しく低減され得る。
光受信素子1によって受け取られたイメージデータが、ワイヤ接続38を介して網膜刺激チップ44へ送られる。網膜刺激チップ44が、イメージデータを一連の刺激パルスに変換するように動作する。好ましくは、網膜刺激チップ44が、ディジタル信号処理チップとして実装され、本発明の実施形態を更に構成し得る。即ち、網膜刺激チップ44が、図5を参照して上記で説明されたコンセプトを組み込んだマイクロチップを備える。図5では、機能ユニットがプロセッサ回路を備えている。刺激パルスが、ワイヤ接続38を介して、眼球内部36の上、即ち、網膜31へ直接埋め込まれた網膜インプラント43上に位置するマイクロ接点のアレイへ供給される。マイクロ接点は、網膜31の神経節細胞を刺激するように適応される。
網膜インプラントを作動させるために要求される電力、具体的には、光受信素子1および/または網膜刺激チップ44によって消費される電力は、高周波送信コイル46によって提供され得る。高周波送信コイル46は、網膜インプラントの眼球外部37の上に位置する高周波受信コイル47と誘導結合される。そのような高周波受信コイル47によって提供されるAC電圧は、こうして光受信素子1および網膜刺激チップ44のいずれかまたは双方に電力を供給するように使用され得る。