HA配列エレメントの説明
HA配列エレメント1
HA配列エレメント1は、天然のインフルエンザ単離物において見い出される多くのHAタンパク質の残基97−185(ここで、残基の位置は、H3 HAを参照として使用して割り当てられる)にほぼ対応する配列エレメントである。この配列エレメントは以下の基本構造を有する:
C(Y/F)P X1 C X2 W X3 W X4 H H P、ここで:
X1は約30〜約45アミノ酸長であり;
X2は約5〜約20アミノ酸長であり;
X3は約25〜約30アミノ酸長であり;および
X4は約2アミノ酸長である。
ある実施形態において、X1は、約35〜約45、または約35〜約43、または約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、または約43アミノ酸長である。ある実施形態において、X2は、約9〜約15、または約9〜約14、または約9、約10、約11、約12、約13、または約14アミノ酸長である。ある実施形態において、X3は、約26〜約28、または約26、約27、または約28アミノ酸長である。ある実施形態において、X4は配列(G/A)(I/V)を有する。ある実施形態において、X4は配列GIを有する;ある実施形態において、X4は配列GVを有する;ある実施形態において、X4は配列AIを有する;ある実施形態において、X4は配列AVを有する。ある実施形態において、HA配列エレメント1はジスルフィド結合を含む。ある実施形態において、このジスルフィド結合は、97位および139位(本明細書で利用される標準的なH3番号付け系に基づく)に対応する残基を架橋する。
ある実施形態において、かつ特にH1ポリペプチドにおいて、X1は約43アミノ酸長、および/またはX2は約13アミノ酸長、および/またはX3は約26アミノ酸長である。
ある実施形態において、かつ特にH1ポリペプチドにおいて、HA配列エレメント1は以下の構造を有する:
C Y P X1A T(A/T)(A/S)C X2 W X3 W X4 H H P、ここで:
X1Aは約27〜約42、または約32〜約42、または約32〜約40、または約26〜約41、または約31〜約41、または約31〜約39、または約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、または約40アミノ酸長であり、かつX2−X4は上記と同様である。
ある実施形態において、かつ特にH1ポリペプチドにおいて、HA配列エレメント1は以下の構造を有する:
C Y P X1A T(A/T)(A/S)C X2 W(I/L)(T/V)X3A W X4 H H P、ここで:
X1Aは約27〜約42、または約32〜約42、または約32〜約40、または約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、または約40アミノ酸長であり、
X3Aは約23〜約28、または約24〜約26、または約24、約25、または約26アミノ酸長、かつX2およびX4は上記と同様である。
ある実施形態において、かつ特にH1ポリペプチドにおいて、HA配列エレメント1は以下の配列を有する:
Q L S S I S S F E K、
典型的には、X1の範囲内、(X1Aの範囲内を含む)、とりわけ、X1のおよそ残基12で開始する(例えば、図1〜3に図示されるように)。
ある実施形態において、かつ特にH3ポリペプチドにおいて、X1は約39アミノ酸長、および/またはX2は約13アミノ酸長、および/またはX3は約26アミノ酸長である。
ある実施形態において、かつ特にH3ポリペプチドにおいて、HA配列エレメント1は以下の構造を有する:
C Y P X1A S(S/N)(A/S)C X2 W X3 W X4 H H P、ここで:
X1Aは約27〜約42、または約32〜約42、または約32〜約40、または約23〜約38、または約28〜約38、または約28〜約36、または約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、または約40アミノ酸長であり、かつX2−X4は上記と同様である。
ある実施形態において、かつ特にH3ポリペプチドにおいて、HA配列エレメント1は以下の構造を有する:
C Y P X1A S(S/N)(A/S)C X2 W L(T/H)X3A W X4 H H P、ここで:
X1Aは約27〜約42、または約32〜約42、または約32〜約40、または約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、または約40アミノ酸長であり、
X3Aは約23〜約28、または約24〜約26、または約24、約25、または約26アミノ酸長であり、かつX2およびX4は上記と同様である。
ある実施形態において、かつ特にH3ポリペプチドにおいて、HA配列エレメント1は以下の配列を有する:
(L/I)(V/I)A S S G T L E F、
典型的には、X1の範囲内、(X1Aの範囲内を含む)、とりわけ、X1のおよそ残基12で開始する(例えば、図1、2、および4に図示されるように)。
ある実施形態において、かつ特にH5ポリペプチドにおいて、X1は約42アミノ酸長、および/またはX2は約13アミノ酸長、および/またはX3は約26アミノ酸長である。
ある実施形態において、かつ特にH5ポリペプチドにおいて、HA配列エレメント1は以下の構造を有する:
C Y P X1A S S A C X2 W X3 W X4 H H P、ここで:
X1Aは約27〜約42、または約32〜約42、または約32〜約40、または約23〜約38、または約28〜約38、または約28〜約36、または約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、または約40アミノ酸長であり、かつX2−X4は同様である。
ある実施形態において、かつ特にH5ポリペプチドにおいて、HA配列エレメント1は以下の構造を有する:
C Y P X1A S S A C X2 W L I X3A W X4 H H P、ここで:
X1Aは約27〜約42、または約32〜約42、または約32〜約40、または約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、または約40アミノ酸長であり、かつ
X3Aは約23〜約28、または約24〜約26、または約24、約25、または約26アミノ酸長であり、かつX2およびX4は上記と同様である。
ある実施形態において、かつ特にH5ポリペプチドにおいて、HA配列エレメント1は以下の配列によって拡張される(すなわち、残基186−193に対応する位置において):
N D A A E X X(K/R)。
ある実施形態において、かつ特にH5ポリペプチドにおいて、HA配列エレメント1は以下の配列を有する:
Y E E L K H L X S X X N H F E K、
典型的には、X1の範囲内、とりわけ、X1のおよそ残基6で開始する(例えば、図1、2、および5に図示されるように)。
HA配列エレメント2
HA配列エレメント2は、天然のインフルエンザ単離物において見い出される多くのHAタンパク質の残基324−340(H3 HAに基づく番号付け系を再度使用する)にほぼ対応する配列エレメントである。この配列エレメントは以下の基本構造を有する:
G A I A G F I E。
ある実施形態において、HA配列エレメント2は以下の配列を有する:
P X1G A I A G F I E、ここで:
X1は約4〜約14アミノ酸長、または約8〜約12アミノ酸長、または約12、約11、約10、約9、または約8アミノ酸長である。ある実施形態において、この配列エレメントはHA0切断部位を提供し、これは、HA1およびHA2の産生を可能にする。
ある実施形態において、かつ特にH1ポリペプチドにおいて、HA配列エレメント2は以下の構造を有する:
P S (I/V)Q S R X1A G A I A G F I E、ここで:
X1Aは約3アミノ酸長であり;ある実施形態において、X1AはG(L/I)Fである。
ある実施形態において、かつ特にH3ポリペプチドにおいて、HA配列エレメント2は以下の構造を有する:
P X K X T R X1A G A I A G F I E、ここで:
X1Aは約3アミノ酸長であり;ある実施形態において、X1AはG(L/I)Fである。
ある実施形態において、かつ特にH5ポリペプチドにおいて、HA配列エレメント2は以下の構造を有する:
P Q R X X X R X X R X1A G A I A G F I E、ここで:
X1Aは約3アミノ酸長であり;ある実施形態において、X1AはG(L/I)Fである。
定義
親和性:当該分野において公知であるように、「親和性」とは、特定のリガンド(例えば、HAポリペプチド)がそのパートナー(例えば、HA受容体)に結合する堅固さの尺度である。親和性は異なる方法で測定することが可能である。
約:本明細書で使用される場合、「約」または「およそ」という用語は、目的の1つ以上の値に適用される場合、言及される参照値と同様である値をいう。特定の実施形態において、「約」または「およそ」という用語は、他に言及されないかまたは状況から他に明白でない限り、両方の方向で(その値よりも大きいかまたは小さい)、言及された値の25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ以下の範囲内にある一定範囲の値をいう(そのような数値は、可能性がある値の100%を超えるようなものを除く)。
生物学的に活性である:本明細書で使用される場合、「生物学的に活性である」という語句が、生物系、特に生命体において活性を有する任意の薬剤の特徴をいう。例えば、生物に投与されたときに、その生物に対して生物学的な効果を有する薬剤は、生物学的に活性であると見なされる。特定の実施形態において、タンパク質またはポリペプチドが生物学的に活性である場合、そのタンパク質またはポリペプチドの少なくとも1つの生物学的活性を共有するそのタンパク質またはポリペプチドの部分が、典型的には、「生物学的に活性である」部分と呼ばれる。
特徴的な部分:本明細書で使用される場合、タンパク質またはポリペプチドの「特徴的な部分」という語句は、共にタンパク質またはポリペプチドに特徴的である、アミノ酸の連続するストレッチ、またはアミノ酸の連続するストレッチのコレクションを含むものである。このような連続するストレッチの各々は、少なくとも2つのアミノ酸を含む。さらに、当業者は、典型的には、少なくとも5個、10個、15個、20個またはそれ以上のアミノ酸が、タンパク質に特徴的であるために必要とされることを認識している。一般的に、特徴的な部分は、上記に特定された配列同一性に加えて、関連するインタクトなタンパク質と少なくとも1つの機能的な特徴を共有する。
特徴的な配列:「特徴的な配列」は、ポリペプチドまたは核酸のファミリーのすべてのメンバーにおいて見い出される配列であり、それゆえに、ファミリーのメンバーを規定するために、当業者によって使用可能である。
コーン−トポロジー:「コーン−トポロジー」という語句は、特定のグリカン、特に、HA受容体上のグリカンによって採用される三次元配置をいうために本明細書で使用される。図6(左側のパネル)に図示されるように、コーン−トポロジーは、α2−3シアル化グリカンまたはα2−6シアル化グリカンによって採用可能であり、短いオリゴヌクレオチド鎖に典型的であるが、ある長いオリゴヌクレオチドもまた、このコンホメーションを採用することができる。コーン−トポロジーは、Neu5Acα2−3Gal結合のグリコシドのねじれ角によって特徴付けられ、この結合は、約−60、約60、または約180のφ(C1−C2−O−C3/C6)値によって与えられる最小エネルギーコンホメーションの3つの領域をサンプリングし、Ψ(C2−O−C3/C6−H3/C5)は−60〜60をサンプリングする(図7)。図8は、コーン−トポロジーを採用するグリカンの特定の代表的な(しかし、包括的ではない)例を提示する。
「に対応する」:本明細書で使用される場合、「に対応する」という用語は、しばしば、HAポリペプチドにおけるアミノ酸残基の位置/同一性を指定するために使用される。当業者は、単純化の目的のために、標準的な番号付け系(野生型H3 HAに基づく)が本発明で利用され(例えば、図1〜5に図示されるように)、その結果、例えば、190位の残基「に対応する」アミノ酸は、実際に特定のアミノ酸鎖における190番目のアミノ酸である必要はないが、むしろ、野生型H3 HAの190位に見い出される残基に対応することを認識している;当業者は、対応するアミノ酸をいかにして同定するかを容易に認識する。
分離距離の程度:本明細書で使用される場合、一定の「分離距離の程度」であるアミノ酸は、グリカン結合に間接的な効果を有するHAアミノ酸である。例えば、分離距離の程度が1度のアミノ酸は、(1)直接結合しているアミノ酸と相互作用するか;および/または(2)他のやり方で、直接結合しているアミノ酸が、宿主細胞HA受容体と結合しているグリカンと相互作用する能力に影響を与えるかのいずれかであり得る;このような分離距離の程度が1度のアミノ酸は、グリカンそれ自体に直接的に結合してもよく、直接結合しなくてもよい。分離距離の程度が2度のアミノ酸は、(1)分離距離の程度が1度のアミノ酸と相互作用するか;および/または(2)他のやり方で、分離距離の程度が1度のアミノ酸が、直接結合しているアミノ酸と相互作用する能力に影響を与えるかのいずれかであり得る、以下同様である。
直接結合しているアミノ酸:本明細書で使用される場合、「直接結合しているアミノ酸」という語句は、宿主細胞HA受容体と結合している1つ以上のグリカンと直接的に相互作用するHAポリペプチドのアミノ酸をいう。
操作された:「操作された」という用語は、本明細書で使用される場合、そのアミノ酸配列が人によって選択されているポリペプチドを説明する。例えば、操作されたHAポリペプチドは、天然のインフルエンザ単離物において見い出されるHAポリペプチドのアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有する。ある実施形態において、操作されたHAポリペプチドは、NCBIデータベースに含まれるHAポリペプチドのアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を有する。
H1ポリペプチド:「H1ポリペプチド」とは、この用語が本明細書で使用される場合、そのアミノ酸配列が、H1に特徴的でありかつH1を他のHAサブタイプと区別する少なくとも1つの配列エレメントを含むHAポリペプチドである。代表的なこのような配列エレメントは、アラインメント、例えば、図1〜3に図示されるものなどによって決定可能であり、これには、例えば、HA配列エレメントのH1特異的な実施形態に関して本明細書に記載されるものが含まれる。
H3ポリペプチド:「H3ポリペプチド」とは、この用語が本明細書で使用される場合、そのアミノ酸配列が、H3に特徴的でありかつH3を他のHAサブタイプと区別する少なくとも1つの配列エレメントを含むHAポリペプチドである。代表的なこのような配列エレメントは、アラインメント、例えば、図1、2、および4に図示されるものなどによって決定可能であり、これには、例えば、HA配列エレメントのH3特異的な実施形態に関して本明細書に記載されるものが含まれる。
H5ポリペプチド:「H5ポリペプチド」とは、本明細書で使用される場合、そのアミノ酸配列が、H5に特徴的でありかつH5を他のHAサブタイプと区別する少なくとも1つの配列エレメントを含むHAポリペプチドである。代表的なこのような配列エレメントは、アラインメント、例えば、図1、2、および5に図示されるものなどによって決定可能であり、これには、例えば、HA配列エレメントのH5特異的な実施形態に関して本明細書に記載されるものが含まれる。
ヘマグルチニン(HA)ポリペプチド:本明細書で使用される場合、「ヘマグルチニンポリペプチド」(または「HAポリペプチド」)という用語は、そのアミノ酸配列がHAに特徴的な少なくとも1つの配列を含むポリペプチドをいう。インフルエンザ単離物からの広範な種々のHA配列が当該分野において公知であり;確かに、National Center for Biotechnology Information (NCBI)はデータベース(www.ncbi.nlm.nih.gov/genomes/FLU/flu.html)を維持しており、これは、本願の出願の時点で、9796個のHA配列を含んでいた。当業者は、このデータベースを参照して、一般的にHAポリペプチドに特徴的である配列、および/もしくは特定のHAポリペプチド(例えば、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、またはH16のポリペプチド)に特徴的である配列、または特定の宿主、例えば、鳥類、ラクダ、イヌ、ネコ、ハクビシン、環境(environment)、ウマ、ヒト、ヒョウ、ミンク、マウス、アザラシ、ストーンマーチン(stone martin)、ブタ、トラ、クジラなどの感染を媒介するHAに特徴的である配列を容易に同定することができる。例えば、ある実施形態において、HAポリペプチドは、インフルエンザウイルスの天然の単離物において見い出されるHAタンパク質のおよそ残基97と185の間、324と340の間、96と100の間、および/または130と230の間で見い出される1つ以上の特徴的な配列エレメントを含む。ある実施形態において、HAポリペプチドは、本明細書に定義されるようなHA配列エレメント1および2の少なくとも1つを含むアミノ酸配列を有する。ある実施形態において、HAポリペプチドは、HA配列エレメント1および2を含むアミノ酸配列を有し、ある実施形態において、これらの配列は、約100〜約200、または約125〜約175、または約125〜約160、または約125〜約150、または約129〜約139、または約129、約130、約131、約132、約133、約134、約135、約136、約137、約138、または約139アミノ酸、互いから離れている。ある実施形態において、HAポリペプチドは、グリカン結合に関与する領域96−100位および/または130−230位の中の位置の残基を含むアミノ酸配列を有する。例えば、多くのHAポリペプチドは、以下の残基:Tyr98、Ser/Thr136、Trp153、His183、およびLeu/Ile194の1つ以上を含む。ある実施形態において、HAポリペプチドは、これらの残基の少なくとも2つ、3つ、4つ、または5つすべてを含む。本明細書で使用される場合、「HAポリペプチド」という用語は、任意の長さのアミノ酸鎖を包含する(すなわち、少なくとも2アミノ酸以上を含むアミノ酸鎖)。
単離された:「単離された」という用語は、本明細書で使用される場合、(i)最初に産生されたときに(天然であるかまたは実験的設定であるかに関わらず)、それが付随していた成分の少なくともいくつかから分離されているか;または(ii)人の手によって製造されたかのいずれかである、因子または実体をいう。単離された因子または実体は、それらが最初に付随していた他の成分の少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、またはそれ以上から分離されてもよい。ある実施形態において、単離された因子は、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%より純度が高い。
長いオリゴサッカリド:本開示の目的のために、オリゴサッカリドが少なくとも4個のサッカリド残基を有する少なくとも1つの直鎖を含む場合に、オリゴサッカリドは、典型的には「長い」と見なされる。
非天然アミノ酸:「非天然アミノ酸」という語句は、アミノ酸(すなわち:
)の化学構造を有し、それゆえに、少なくとも2つのペプチド結合に関与可能であるが、天然に見い出されるものとは異なるR基を有する実体をいう。ある実施形態において、非天然アミノ酸は、水素ではない第2のR基もまた有してもよく、および/またはアミノ部分もしくはカルボン酸部分に1つ以上の他の置換基を有してもよい。
ポリペプチド:「ポリペプチド」は、一般的に言えば、ペプチド結合によって互いに結合されている少なくとも2つのアミノ酸のストリングである。ある実施形態において、ポリペプチドは、少なくとも3〜5個のアミノ酸を含んでもよく、その各々が、少なくとも1つのペプチド結合によって他と結合されている。当業者は、ポリペプチドが、時折、「非天然」アミノ酸または他の実体であるが、それにも関わらず、任意にポリペプチド鎖に組込みが可能であるものを含むことを認識している。
純粋:本明細書で使用される場合、因子または実体は、それが実質的に他の成分を含まない場合に「純粋」である。例えば、特定の因子または実体の約90%より多くを含む調製物は、典型的には、純粋な調製物であると見なされる。ある実施形態において、因子または実体は、少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%純粋である。
短いオリゴサッカリド:本開示の目的のために、オリゴサッカリドが、任意の直鎖中に4個よりも少ない、または確かに3個よりも少ない残基を有する場合に、オリゴサッカリドは、典型的には「短い」と見なされる。
特異性:当該分野において公知であるように、「特異性」は、特定のリガンド(例えば、HAポリペプチド)が、その結合パートナー(例えば、ヒトHA受容体、特に、ヒト上気道HA受容体)を、他の潜在的な結合パートナー(例えば、トリHA受容体)から区別する能力の尺度である。
被験体:本明細書で使用される場合、「被験体」または「患者」という用語は、例えば、実験的、診断的、予防的、および/または治療的な目的のために、本発明の組成物が投与され得る任意の生物をいう。典型的な被験体には、動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類、およびヒトなどの哺乳動物;昆虫;ぜん虫(worm)など)が含まれる。
実質的に:本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、目的の特徴または特性の全体のまたはほぼ全体の範囲または程度を示す定性的な状態をいう。生物学的分野における当業者は、生物学的および化学的な現象が、もしあるとしても、完了まで行き、および/もしくは完了まで進行し、または絶対的な結果を達成もしくは回避することがまれであることを理解している。それゆえに、「実質的」という用語は、多くの生物学的なおよび化学的な現象において固有である完全性の潜在的な欠如を捕捉するために本明細書で使用される。
罹患している:インフルエンザ感染に「罹患している」個体は、インフルエンザ感染の1つ以上の徴候で診断されているか、またはその徴候を示す。
感受性がある:インフルエンザ感染に「感受性がある」個体は、インフルエンザ感染と診断されていないか、および/またはインフルエンザ感染の徴候を示していないかもしれない。ある実施形態において、インフルエンザ感染に感受性がある個体は、インフルエンザ感染を発症する。ある実施形態において、インフルエンザ感染に感受性がある個体は、インフルエンザ感染を発症しない。
治療剤:本明細書で使用される場合、「治療剤」という語句は、被験体に投与された場合に、所望の生物学的または薬理学的効果を誘発する任意の薬剤をいう。
治療有効量:本明細書で使用される場合、「治療有効量」という語句は、インフルエンザ感染に罹患しているか、またはインフルエンザ感染に感受性である被験体に投与された場合に、インフルエンザ感染および/またはその徴候を処置し、診断し、予防し、および/またはその発症を遅延させるために十分である本発明のグリカンデコイの量を意味する。
処置:本明細書で使用される場合、「処置する」、「処置」、または「処置すること」は、特定の疾患、障害、および/もしくは状態(例えば、インフルエンザ感染)の1つ以上の徴候もしくは特徴を部分的もしくは完全に軽減し、改善し、緩和し、阻害し、予防し、その発症を遅延させ、その徴候もしくは特徴の重篤度を減少させ、および/またはその徴候もしくは特徴の発生率を減少させるために使用される任意の方法をいう。処置は、疾患に付随する病理を発症するリスクを減少させる目的のために、その疾患の徴候を示さないか、および/またはその疾患の初期の徴候のみを示す被験体に投与されてもよい。
アンブレラ−トポロジー:「アンブレラ−トポロジー」という語句は、特定のグリカンによって、特に、HA受容体上の特定のグリカンによって採用される三次元配置をいうために本明細書で使用される。本発明は、アンブレラ−トポロジーグリカンへの結合が、ヒト宿主の感染を媒介するHAタンパク質の特徴であるという認識を包含する。図6(右のパネル)に図示されるように、アンブレラ−トポロジーは、典型的には、α2−6シアル化グリカンによってのみ採用され、長い(例えば、テトラサッカリドよりも長い)オリゴサッカリドに典型的である。アンブレラ−トポロジーの1つの例は、−60周辺のNeu5Acα2−6Gal結合のφ角によって与えられる(例えば、図7を参照のこと)。図9は、特定の代表的な(しかし、包括的でない)グリカンの例が、アンブレラ−トポロジーを採用できることを提示する。アンブレラ−トポロジーグリカンは、アンブレラ−トポロジーグリカンを有するHA受容体へのインフルエンザウイルスの結合を阻害するためのデコイとして使用可能である。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、以下の型のオリゴサッカリドである:
Neu5Acα2−6Sug1−Sug2−Sug3
ここで:
(a)Neu5Ac α2−6は、典型的には(しかし、本質的にではなく)、非還元末端にあり;
(b)Sug1は:
(i)αまたはβ配座の(頻繁には、NおよびO連結拡張についてはβであり、糖タンパク質へのO連結であるGalNAcα−の場合にはαである)ヘキソース(頻繁には、GalまたはGlc)またはヘキソサミン(GlcNAcまたはGalNAc)であり;
(ii)Neu5Acα2−6以外の糖は、Sug1の非還元位置のいずれにも結合されておらず(Sug1が、糖タンパク質にO連結されているGalNAcα−である場合を除く);および/または
(iii)硫酸、リン酸、グアニジウム、アミン、N−アセチルなどのような非糖部分が、Sug1の非還元位置(典型的には6位)に結合可能であり(例えば、HAとの接触を改善する);
(c)Sug2および/またはSug3は:
(i)αまたはβ配座の(頻繁にはβである)ヘキソース(頻繁には、GalまたはGlc)またはヘキソサミン(GlcNAcまたはGalNAc)であり;ならびに/あるいは
(ii)糖(Fucなど)または硫酸、リン酸、グアニジウム、アミン、N−アセチルなどのような非糖部分が、Sug2、Sug3、および/またはSug4の非還元位置に結合可能であり;
(d)Neu5Acα2−6結合を除いたオリゴサッカリドにおける任意の2つの糖の間の結合は、1−2、1−3、1−4、および/または1−6(典型的には、1−3または1−4)であり得;ならびに/あるいは
(e)Neu5Acα2−6が連結された構造が、糖タンパク質にO連結されているGalNAcαであり、さらなる糖がGalNAcαの非還元末端、例えば、
(i)Neu5Acα2−6(Neu5Acα2−3Galβ1−3)GalNAcα−
(ii)Neu5Acα2−6(Galβ1−3)GalNAcα−
に連結されている。
ワクチン接種:本明細書で使用される場合、「ワクチン接種」という用語は、例えば、疾患を引き起こす因子に対する免疫応答を生成することが意図される組成物の投与をいう。本発明の目的のために、ワクチン接種は、疾患を引き起こす因子への曝露の前、その間、および/またはその後に投与可能であり、特定の実施形態において、因子への曝露の前、その間、またはその直後に投与可能である。ある実施形態において、ワクチン接種には、適切に時間間隔をあけた、ワクチン接種組成物の複数回投与が含まれる。
改変体:本明細書で使用される場合、「改変体」という用語は、目的の特定のHAポリペプチドと、その配列が比較される「親の」HAポリペプチドとの間の関連性を説明する相対的用語である。目的のHAポリペプチドが、親のアミノ酸配列と同一であるが特定の位置において少ない数の配列の変化があるアミノ酸配列を有する場合、その目的のHAポリペプチドは親のHAポリペプチドの「改変体」であると見なされる。典型的には、改変体における20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%より少ない残基が、親と比較した場合に置換されている。ある実施形態において、改変体は、親と比較した場合に、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、または1個の置換された残基を有する。しばしば、改変体は、非常に少ない数の(例えば、5個、4個、3個、2個、または1個よりも少ない)置換された官能基の残基(すなわち、特定の生物学的活性に関与する残基)を有する。さらに、改変体は、典型的には、5個、4個、3個、2個、または1個を超えない付加または欠失を有し、親と比較した場合に、しばしば、付加または欠失を有しない。さらに、任意の付加または欠失は、典型的には、約25個、約20個、約19個、約18個、約17個、約16個、約15個、約14個、約13個、約10個、約9個、約8個、約7個、約6個の残基よりも少なく、一般的には、約5個、約4個、約3個、または約2個の残基よりも少ない。ある実施形態において、親のHAポリペプチドは、インフルエンザウイルスの天然の単離物(例えば、野生型HA)において見い出されるものである。
ベクター:本明細書で使用される場合、「ベクター」とは、それが連結された別の核酸を輸送可能である核酸分子をいう。ある実施形態において、ベクターは、それらが真核細胞または原核細胞などの宿主細胞に連結された核酸の染色体外複製および/または発現が可能である。作動可能に連結された遺伝子の発現の方向付けが可能であるベクターは、本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。
野生型:当該分野において理解されているように、「野生型」という語句は、一般的には、天然に見い出されるような、タンパク質または核酸の通常の型をいう。例えば、野生型HAポリペプチドは、インフルエンザウイルスの天然の単離物において見い出される。種々の異なる野生型HA配列が、NCBIインフルエンザウイルス配列データベース、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genomes/FLU/FLU.htmlにおいて見い出され得る。
発明の特定の実施形態の詳細な説明
本発明は、インフルエンザHAポリペプチドと、アンブレラ−トポロジーグリカンとの間の相互作用がインフルエンザ感染を媒介するという認識を包含する。本発明は、アンブレラ−トポロジーグリカンを模倣する薬剤が「受容体デコイ」として作用できること、そしてインフルエンザ感染の処置における治療剤として有用であり得るという認識をさらに包含する。
とりわけ、本発明は、アンブレラ−トポロジーグリカンを模倣し、かつ被験体におけるHAポリペプチドとHA受容体の間の相互作用と競合する薬剤を同定するためのシステムを提供する。本発明はさらに、種々の薬剤、およびそれらを含む組成物、ならびにインフルエンザ感染の処置のための治療ストラテジーを提供する。本発明は、HA−受容体相互作用を特徴付けるためのシステム(例えば、検出アッセイ)、およびHA−受容体相互作用に影響を与える薬剤を提供する。
HA受容体
HAは、糖タンパク質受容体に結合することによって、細胞の表面と相互作用する。HA受容体へのHAの結合は、HA受容体上のN連結グリカンによって優先的に媒介される。詳細には、インフルエンザウイルス粒子の表面上のHAは、細胞宿主の表面上のHA受容体に結合されるシアル化グリカンを認識する。認識および結合の後で、宿主細胞は、ウイルス粒子(cell)を飲み込み、このウイルスは、より多くのウイルス粒子を複製および産生し、隣の細胞に分配されることが可能である。例示的なHA−グリカン相互作用のいくつかの結晶構造が同定され、表1に提示される。
HA受容体は、受容体のHA−結合部位の近傍で、α2−3またはα2−6のいずれかのシアル化グリカンによって修飾され、受容体結合グリカンの連結の型は、受容体のHA−結合部位のコンホメーションに影響を与え、従って、異なるHAに対する受容体の特異性に影響を与え得る。
例えば、トリHAのグリカン結合ポケットは狭い。本発明によれば、このポケットは、α2−3結合であるかまたはα2−6結合であるかに関わらず、α2−3シアル化グリカンのトランスコンホメーション、および/またはコーン−トポロジーグリカンに結合する。
トリ組織におけるHA受容体、およびヒト深部肺および胃腸(GI)管組織におけるHA受容体もまた、α2−3シアル化グリカン結合によって特徴付けられ、さらに(本発明に従って)、α2−3シアル化グリカンおよび/またはα2−6シアル化グリカンを含むグリカンによって特徴付けられ、これは、コーントポロジーを優先的に採用する。このようなコーントポロジーグリカンを有するHA受容体は、本明細書ではCTHArと呼ばれ得る。
対照的に、上気道の気管支および気管におけるヒトHA受容体は、α2−6シアル化グリカンによって修飾される。α2−3モチーフとは異なり、α2−6モチーフは、C6−C5結合に起因するコンホメーションのさらなる自由度を有する(Russellら、2006,Glycoconj.J.,23:85;参照により本明細書に援用される)。このようなα2−6シアル化グリカンに結合するHAは、このコンホメーションの自由度から生じる構造の多様性に適合するためにより開かれた結合ポケットを有する。さらに、本発明によると、HAは、アンブレラ−トポロジーでグリカン(例えば、α2−6シアル化グリカン)に結合する必要がある可能性があり、特に、ヒト上気道組織の感染を効率的に媒介するために、強力な親和性および/または特異性でこのようなアンブレラ−トポロジーグリカンに結合する必要がある可能性がある。このようなアンブレラ−トポロジーグリカンを有するHA受容体は、本明細書ではUTHArと呼ばれてもよい。
これらの空間的に制限されたグリコシル化プロフィールの結果として、ヒトは、多くの野生型トリHA(例えば、トリH5)を含むウイルスによって、通常は感染しない。詳細には、ウイルスに遭遇する可能性が最も高いヒト呼吸管の部分(すなわち、気管および気管支)は、コーン−トポロジーグリカン(例えば、α2−3シアル化グリカン、および/または短いグリカン)を有する受容体を欠いており、野生型トリHAは、典型的には、主としてまたは独占的に、コーン−トポロジーグリカン(例えば、α2−3シアル化グリカン、および/または短いグリカン)に付随する受容体に結合し、ヒトはまれにしかトリウイルスに感染状態にならない。アンブレラ−トポロジーグリカン(例えば、長いα2−6シアル化グリカン)を有する深部肺および/または胃腸管の受容体にウイルスがアクセス可能である、ウイルスとの十分に密接な接触にあるという場合のみ、ヒトは感染状態になる。
アンブレラ−トポロジーグリカン
2007年8月14日に出願された同時係属出願、シリアル番号11/893,171(その全体の内容は付録Aとして本明細書に添付される)に記載されているように、本発明者らは、インフルエンザウイルスによる哺乳動物(例えば、ヒト)被験体の感染は、ウイルスHAポリペプチドと、被験体におけるHA受容体上のアンブレラ−トポロジーグリカンとの間の相互作用によって媒介されることを実証した。
ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカン調製物は、短いα2−6(例えば、単一のラクトサミン)分枝よりも多い割合の、長い(例えば、複数のラクトサミン単位)α2−6オリゴサッカリド分枝を含む。ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、短いα2−6(例えば、単一のラクトサミン)分枝よりも、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約20倍、約50倍、または約50倍より多くの長いα2−6オリゴサッカリド分枝を含む。図9は、例示的な、しかし、包括的ではない、長いα2−6モチーフのリストを提示する。図9において提示される長いα2−6モチーフは、生物学的なN連結グリカン、O連結グリカン、および糖脂質の一部として見い出される長い鎖(例えば、少なくともトリサッカリド)に非還元末端で連結されたNeu5Acα2−6を含む。四角で囲った挿入部は、HAと高い親和性で結合する生物学的グリカンの一部として見い出されるアンブレラ−トポロジーの長いα2−6グリカン部分の例を示す。
ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、図6(右のパネル)に提示されている構造のような三次元構造を示すグリカンである。ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、図6(右のパネル)に提示されている構造と実質的に同様な三次元構造を示すグリカンである。ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、図6(右のパネル)に示されているアミノ酸残基を介してHAポリペプチドと接触するグリカンである。ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、図6(右のパネル)に示されているアミノ酸結合ポケットに接触するか、および/または特異的に結合することができるグリカンである。
ある実施形態において、グリカン構造トポロジーは、SiaのC2、GalのC1、およびGlcNAcのC1の間の角度として定義されるパラメーターθに基づいて分類される。θ<100°の値は、α2−3および短いα2−6グリカンによって採用されるコーン様トポロジーを表す。θ>110°の値は、長いα2−6グリカンによって採用されるトポロジーのようなアンブレラ様トポロジーを表す(図6)。
特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンおよび/またはグリカンデコイとのHA相互作用の独特な特徴は、非還元末端におけるシアル酸(SA)および/またはSAアナログを含むグリカンとのHA接触である。ある実施形態において、オリゴサッカリドの鎖の長さは、少なくともトリサッカリドである(SAまたはSAアナログを除く)。ある実施形態において、図6の右側のパネルに示される番号付けした残基の組み合わせは、アンブレラ様トポロジーとの接触に関与する。
ある実施形態において、シアル酸アナログは、Tyr98、Ser136、Thr136、Trp153、Thr155、Val155、Ser155、His183、およびLeu194が含まれるがこれらに限定されない、HA中の任意の高度に保存性のシアル酸アンカリングアミノ酸の1つ以上と相互作用する。これらの相互作用は、上記のアミノ酸の1つ以上との非共有結合的相互作用(例えば、イオン性、ファンデルワールス、疎水性など)または共有結合的相互作用を含んでもよい。例示的なシアル酸アナログは表2に示される。これらのシアル酸アナログのいくつかを含むグリカンへのHAの結合は報告されている(Kelmら、1992 Eur.J.Biochem.,205:146;参照により本明細書に援用される)。
ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、哺乳動物上気道上皮細胞上で優先的に見い出されるグリカンである。発明者への注記:筆者がこの段落を読み直したときに、これはやや不明瞭であるように思える;筆者は自分が明確であると考えた変更を提案したが、しかし、発明者の再検討を評価する。ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、ヒト上気道上皮細胞上で優先的に見い出されるグリカンである。ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、他の細胞上よりも、ヒト上気道細胞上で見い出される可能性が、約2倍、約3倍、約4倍、約5倍、約10倍、約20倍、約50倍、または約50倍より高いグリカンである。
特定の実施形態において、アンブレラ様トポロジーグリカンの構造的な特徴は、以下の規則に従って定義できる:
以下の型のオリゴサッカリド:
Neu5Acα2−6Sug1−Sug2−Sug3−Sug4−
ここで:
1.Neu5Ac α2−6は、常にまたはほぼ常に、非還元末端にあり;
2.Sug1は:
a.αまたはβ配座(頻繁にはβ)のヘキソース(頻繁にはGalまたはGlc)またはヘキソサミン(GlcNAcまたはGalNAc)であり;
b.Neu5Acα2−6以外の糖は、Sug1のいずれの非還元末端にも結合されるべきではなく;および/または
c.硫酸、リン酸、グアニジウム、アミン、N−アセチルなどのような非糖部分は、Sug1の非還元位置(典型的には6位)に結合されて、HAとの接触を改善することができ;
3.Sug2、Sug3、および/またはSug4は:
a.αまたはβ配座(頻繁にはβ)のヘキソース(頻繁にはGalまたはGlc)またはヘキソサミン(GlcNAcまたはGalNAc)であり;および/または
b.糖(Fucなど)または硫酸、リン酸、グアニジウム、アミン、N−アセチルなどのような非糖部分は、Sug2、Sug3、および/またはSug4の非還元位置に結合でき;
4.Neu5Acα2−6結合を除いたオリゴサッカリドにおける任意の2つの糖の間の結合は、1−2、1−3、1−4、および/または1−6(典型的には1−3または1−4)であり得;ならびに/あるいは
5.O連結コアGalNAcに結合された6’SLNなどの、Sug4を伴わない構造
は、アンブレラ様トポロジーグリカンデコイの構造およびHA接触の制約(図6)を潜在的に満足できた。
ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは以下の構造型:
Neu5Acα2−6Sug1−Sug2−Sug3を有し、
ここで:
(a)Neu5Ac α2−6は、典型的には(しかし、本質的にではなく)、非還元末端にあり;
(b)Sug1は:
(i)αまたはβ配座(頻繁には、NおよびO連結拡張についてはβ、糖タンパク質へのO連結であるGalNAcα−の場合においてはα)のヘキソース(頻繁にはGalまたはGlc)またはヘキソサミン(GlcNAcまたはGalNAc)であり;
(ii)Neu5Acα2−6以外の糖は、Sug1のいずれの非還元位置にも結合されるべきではなく(Sug1が糖タンパク質へのO連結であるGalNAcα−である場合を除く);および/または
(iii)硫酸、リン酸、グアニジウム、アミン、N−アセチルなどのような非糖部分は、Sug1の非還元位置(典型的には6位)に結合でき(例えば、HAとの接触を改善する);
(c)Sug2および/またはSug3は:
(i)αまたはβ配座(頻繁にはβ)のヘキソース(頻繁にはGalまたはGlc)またはヘキソサミン(GlcNAcまたはGalNAc)であり;および/または
(ii)糖(Fucなど)または硫酸、リン酸、グアニジウム、アミン、N−アセチルなどのような非糖部分は、Sug2、Sug3、および/またはSug4の非還元位置に結合でき;
(d)Neu5Acα2−6結合を除いたオリゴサッカリドにおける任意の2つの糖の間の結合は、1−2、1−3、1−4、および/または1−6(典型的には1−3または1−4)であり得;ならびに/あるいは
(e)Neu5Acα2−6が、糖タンパク質にO連結されている連結GalNAcαであり、さらなる糖が、GalNAcαの非還元末端に連結されており、例えば、
(i)Neu5Acα2−6(Neu5Acα2−3Galβ1−3)GalNAcα−
(ii)Neu5Acα2−6(Galβ1−3)GalNAcα−である。
上記の構造的な特徴を含む生理学的なN連結、O連結グリカンおよび糖脂質において共通して見い出されるオリゴサッカリドモチーフの例は、図9に示される。図9に提示されるアンブレラ−トポロジーグリカンは例示であり、包括的ではない。アンブレラ−トポロジーグリカン部分は、本明細書に記載されるアンブレラ−トポロジーグリカン部分の特徴のいずれかまたはすべてと矛盾しない任意のグリカン部分であり得る。
ある実施形態において、グリカンデコイは、上記の構造的な特徴を含む全体の複合体の生理学的なN連結、O連結グリカン(および糖タンパク質)および糖脂質を含んでもよい。ある実施形態において、デコイの三次元構造トポロジーは、図10に示されるパラメーターθを使用して分類される。ある実施形態において、アンブレラ様トポロジーグリカンデコイと相互作用するHAのグリカン結合部位の残基の位置は、図6および17に示される。例えば、特定の実施形態において、アンブレラ様トポロジーグリカンは、130ループ領域(130−139位)、140ループ領域(140−146位)、150ループ領域(153−160位)、190ループ−ヘリックス領域(183−196位)、および220ループ領域(219−228位)におけるHAアミノ酸と相互作用可能である任意の物質であるか、またはそれから構成される。例えば、特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、HAアミノ酸131、133、136、137、143、144、145、153、155、156、159、186、187、189、190、192、193、194、196、222、225、226、228、および/またはこれらの組み合わせと相互作用可能である任意の物質であるか、またはそれを含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、HAアミノ酸156、159、189、192、193、196、および/またはこれらの組み合わせと相互作用可能である任意の物質であるか、またはそれを含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、HAアミノ酸186、187、189、190、および/またはこれらの組み合わせと相互作用可能である任意の物質であるか、またはそれを含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、HAアミノ酸137、145、190、226、228、および/またはこれらの組み合わせと相互作用可能である任意の物質であるか、またはそれを含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、HAアミノ酸190、222、225、226、および/またはこれらの組み合わせと相互作用可能である任意の物質であるか、またはそれを含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、HAアミノ酸136、153、155、194、およびこれらの組み合わせと相互作用可能である任意の物質であるか、またはそれを含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、HAアミノ酸190および226と相互作用可能である任意の物質であるか、またはそれを含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、HAアミノ酸222、225、および226と相互作用可能である任意の物質であるか、またはそれを含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、HAアミノ酸190、192、193、および225と相互作用可能である任意の物質であるか、またはそれを含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、HAアミノ酸186、193、および222と相互作用可能である任意の物質であるか、またはそれを含む。上記に言及したアミノ酸の位置はH3 HAの番号付けに基づいていることに注意のこと。
HA−グリカン共結晶の分析は、HA結合部位に相対的なNeu5Acの位置がほぼ不変であることを明らかにする。Neu5Acとの接触は、Y98、S/T136、W153、H183、およびL/I194などの高度に保存性の残基を含む。他の糖との接触は、糖結合がα2−3であるかまたはα2−6であるか、およびグリカントポロジーがコーンであるかまたはアンブレラであるかに依存して、異なる残基を含む。例えば、コーントポロジーにおいて、主要な接触は、Neu5Ac糖と、およびGal糖とである。E190およびQ226は、この結合において特に重要な役割を果たす。他の位置(例えば、137、145、186、187、193、222)は、コーン構造への結合に関与し得る。ある場合において、異なる残基が、異なるグリカン構造との異なる接触を行い得る。これらの位置におけるアミノ酸の型は、グリカン構造中に異なる修飾および/または分枝パターンを有する受容体にHAポリペプチドが結合する能力に影響を与え得る。アンブレラトポロジーにおいて、接触は、Neu5AcおよびGalの向こう側の糖となされる。ある実施形態において、1つ以上の位置(例えば、137、145、156、159、186、187、189、190、192、193、196、222、225、226)におけるアミノ酸残基が、アンブレラ構造への結合に関与し得る。ある場合において、異なる残基は、異なるグリカン構造との異なる接触を行い得る。これらの位置におけるアミノ酸の型は、グリカン構造中に異なる修飾および/または分枝パターンを有する受容体に、HAポリペプチドが結合する能力に影響を与え得る。ある実施形態において、190位のD残基および/または225位のD残基は、アンブレラトポロジーへの結合に寄与する。
ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、アンブレラ−トポロジーグリカン部分を含む任意の物質である。ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、アンブレラ−トポロジーグリカン部分であるか、またはそれを含む(すなわち、任意の他の部分が付随しないアンブレラ−トポロジーグリカン部分)。ある実施形態において、キャリア部分は、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、核酸、小分子、細胞、ウイルスなどを含むがこれらに限定されない、任意の型の物質を含んでもよい。ある実施形態において、キャリア分子に対するアンブレラグリカンの比率は(重量または数ベースで)、アンブレラトポロジーグリカンを有するヒトHA受容体分子、例えば、天然に存在するヒトHA受容体におけるグリカン対タンパク質の比率よりも大きい。例えば、キャリア分子は、アンブレラトポロジーグリカンを有する天然に存在するHA受容体分子、例えば、天然に存在するヒトHA受容体よりも、より多くのアンブレラグリカンを有し得る。ある実施形態において、キャリア分子に対するアンブレラグリカンの比率は(重量または数ベースで)、アンブレラトポロジーグリカンを有するヒトHA受容体分子、例えば、天然に存在するヒトHA受容体におけるグリカン対タンパク質の比率よりも小さい。1つの実施形態において、キャリア分子は1つより多くのアンブレラを提示し、そして提示されるようなグリカンは、アンブレラトポロジーグリカンを有する天然に存在するヒトHA受容体上で見い出されるのと同様に、互いから間隔が離れている。他の実施形態において、グリカンは、アンブレラトポロジーグリカンを有する天然に存在するヒトHA受容体上でのそれらの提示と比較して、より多く、またはより少なく、間隔が離れている。好ましい実施形態において、デコイは、少なくとも1アミノ酸残基が天然に存在するヒトHAと異なるHAポリペプチド上のアンブレラグリカンを含む。
ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、ペプチドまたはポリペプチド部分および少なくとも1つのアンブレラ−トポロジーグリカン部分を含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、HA受容体および少なくとも1つのアンブレラ−トポロジーグリカン部分を含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、HA受容体の特徴的な部分および少なくとも1つのアンブレラ−トポロジーグリカン部分を含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、ヒト上気道組織(例えば、気管および/または気管支)に由来しおよび/またはそこから得られたHA受容体、ならびに少なくとも1つのアンブレラ−トポロジーグリカン部分を含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、ヒト上気道組織(例えば、気管および/または気管支)に由来しおよび/またはそこから得られたHA受容体の特徴的な部分、ならびに少なくとも1つのアンブレラ−トポロジーグリカン部分を含む。
アンブレラ−トポロジーグリカンデコイ
ある実施形態において、「アンブレラ−トポロジーグリカンデコイ」とは、HAポリペプチドに結合するために十分な構造的な類似性をアンブレラ−トポロジーグリカンと共有している任意の物質をいう。ある実施形態において、「アンブレラ−トポロジーグリカンデコイ」とは、HAとアンブレラ−トポロジーグリカンとの相互作用を競合除外することが可能である任意の物質をいう。ある実施形態において、「アンブレラ様トポロジーグリカンデコイ」は、アンブレラ−トポロジーグリカンと相互作用可能であるHAのグリカン結合部位における残基のいずれかまたはすべて(個々の残基の任意の組み合わせを含む)と接触可能である任意の物質であり得る(例えば、図6および9を参照のこと)。
ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、アンブレラ−トポロジーグリカン模倣物であるかまたはそれを含む。ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカン模倣物は、グリカンであるかまたはグリカンを含む。ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、アンブレラ−トポロジーグリカン部分であるかまたはそれを含む。ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、単離されたアンブレラ−トポロジーグリカン部分(すなわち、任意の他の部分が付随しないアンブレラ−トポロジーグリカン部分)であるかまたはそれを含む。ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカン部分は、図6および9に示される構造のいずれかであるかそれと実質的に同様である構造を有する。
ある実施形態において、グリカンデコイは、「アンブレラ−トポロジーグリカン」という標題の上記の節に記載された構造的な特徴のいずれかまたはすべてによって規定される、全体の複合体の生理学的N連結および/またはO連結グリカン、糖タンパク質、および/または糖脂質を含んでもよい。ある実施形態において、デコイの三次元構造トポロジーは、図10に示されるパラメーターθを使用して分類される。ある実施形態において、アンブレラ様トポロジーグリカンデコイと相互作用するHAのグリカン結合部位の残基の位置は、図6および17に示される。
ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、小分子であるか小分子を含む。ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、ペプチド(例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質など)であるか、またはそれを含む。ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、脂質であるかまたは脂質を含む。ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、核酸であるかまたは核酸を含む。
アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、アンブレラ−トポロジーグリカンへの結合に関与するかまたはそれが可能であるHAアミノ酸残基と相互作用が可能である任意の物質であり得る。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、HAアミノ酸136、137、145、153、155、156、159、186、187、189、190、192、193、194、196、222、225、226、228、および/またはこれらの組み合わせと相互作用可能である任意の物質であるか、またはそれを含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、HAアミノ酸156、159、189、192、193、196、および/またはこれらの組み合わせと相互作用可能である任意の物質であるか、またはそれを含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、HAアミノ酸186、187、189、190、および/またはこれらの組み合わせと相互作用可能である任意の物質であるか、またはそれを含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、HAアミノ酸137、145、190、226、228、および/またはこれらの組み合わせと相互作用可能である任意の物質であるか、またはそれを含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、HAアミノ酸190、222、225、226、および/またはこれらの組み合わせと相互作用可能である任意の物質であるか、またはそれを含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、HAアミノ酸136、153、155、194、およびこれらの組み合わせと相互作用可能である任意の物質であるか、またはそれを含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、HAアミノ酸190および226と相互作用可能である任意の物質であるかまたはそれを含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、HAアミノ酸222、225、および226と相互作用可能である任意の物質であるか、またはそれを含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、HAアミノ酸190、192、193、および225と相互作用可能である任意の物質であるか、またはそれを含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、HAアミノ酸186、193、および222と相互作用可能である任意の物質であるか、またはそれを含む。上記に言及したアミノ酸の位置はH3 HAの番号付けに基づいていることに注意のこと。
ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、キャリア部分と物理的に結合しているアンブレラ−トポロジーグリカン模倣物(例えば、グリカン、ペプチド、小分子など)であるか、またはそれを含む。ある実施形態において、キャリアは、複数の個々のグリカン模倣物を有する。任意の特定の理論によって束縛されることは望まないが、本発明者らは、グリカンとそれらの結合パートナー(例えば、HAポリペプチド)の間の複数の接触点が、特異的かつ/または安定な相互作用のために、容易にされまたは必要とさえされ得ることを提案する。
ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカン模倣物は、キャリアと共有結合的に結合される。ある実施形態において、共有結合的結合は直接的である(例えば、アンブレラ−トポロジーグリカン模倣物は、直接的にキャリアに結合される)。ある実施形態において、共有結合的結合は間接的である(例えば、リンカーによって媒介される)。特定の実施形態において、リンカーは、切断可能なリンカー(例えば、酵素活性、化学的切断、熱誘導性切断、pH誘導性切断、光誘導性切断などによって切断可能なリンカー)である。特定の実施形態において、リンカーは非切断性リンカーである。特定の実施形態において、リンカーは、タンパク質またはペプチド、核酸、炭水化物、脂質、小分子などを含む。
ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカン模倣物は、キャリアと非共有結合的に結合される。ある実施形態において、非共有結合的な相互作用には、静電相互作用、親和性相互作用、金属配位、物理吸着、ホスト−ゲスト相互作用、疎水性相互作用、πスタッキング相互作用、水素結合相互作用、ファンデルワールス相互作用、磁気相互作用、双極子−双極子相互作用、およびこれらの組み合わせが含まれる。
ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカン模倣物は、キャリアの表面と結合される。ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカン模倣物は、キャリアの内部表面(例えば、粒子、細胞などの内部表面)と結合される。ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカン模倣物は、キャリアの中にカプセル化される(例えば、粒子の内部の中に、細胞の細胞質中に、ポリマー性マトリックス中になど)。
ある実施形態において、キャリア部分は、ペプチド(ポリペプチド、タンパク質、抗体などを含む)、炭水化物(例えば、モノ−、ジ−、またはポリサッカリド、グリカンなど)、脂質、核酸、ポリマー、小分子、デンドリマー(アンブレラ−トポロジーグリカンを含むスターバーストデンドリマー)、細胞、ウイルス、粒子(例えば、微粒子、ナノ粒子、ピコ粒子、ポリマー粒子、量子ドット、金属粒子、骨由来の粒子、セラミック由来の粒子、リポソーム、ミセルなど)などを含むがこれらに限定されない、任意の型の物質を含んでもよい。
特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、ペプチドまたはポリペプチドキャリア、および少なくとも1つのアンブレラ−トポロジーグリカン部分を含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、HA受容体、および少なくとも1つのアンブレラ−トポロジーグリカン部分を含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、HA受容体の特徴的な部分、および少なくとも1つのアンブレラ−トポロジーグリカン部分を含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、哺乳動物(例えば、ヒト)上気道組織(例えば、気管および/または気管支)に由来するかおよび/またはそこから得られたHA受容体、ならびに少なくとも1つのアンブレラ−トポロジーグリカン部分を含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、ヒト上気道組織(例えば、気管および/または気管支)に由来するかおよび/またはそこから得られたHA受容体のフラグメント(例えば、特徴的な部分)、ならびに少なくとも1つのアンブレラ−トポロジーグリカン部分を含む。ある実施形態において、HA受容体フラグメントは、ヒトまたは他の動物(例えば、フェレット)の上気道細胞からの膜糖タンパク質のプロテアーゼ処理によって得られる。上気道細胞の例には、気管または気管支の領域からの繊毛気管上皮、気管支上皮、杯細胞、非繊毛上皮細胞、およびこれらの組み合わせが含まれる。
ある実施形態において、ペプチドキャリア部分は、少なくとも約5アミノ酸、少なくとも約10アミノ酸、少なくとも約20アミノ酸、少なくとも約50アミノ酸、少なくとも約100アミノ酸、少なくとも約200アミノ酸、またはそれ以上のアミノ酸を含み得る。特定の実施形態において、ペプチドは、約100アミノ酸よりも少ないタンパク質である。ある実施形態において、ペプチドは、約5〜約100、約5〜約50、約5〜約40、約5〜約35、約5〜約30、約5〜約25、または約20〜約25アミノ酸長の範囲である。ある実施形態において、ペプチド配列は、タンパク質の配列に基づき得る。ある実施形態において、ペプチド配列は、アミノ酸のランダムな配置であり得る。ランダム配列を含むペプチドのパネル、および/またはペプチドの最大限に多様なパネルを提供するために一貫して変化させた配列からのペプチドが使用されてもよい。
特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、次にNまたはO連結アンブレラ−トポロジーグリカンを有する糖ペプチド(例えば、HA受容体、ムチン、フェチュイン、IgGなど)キャリアを含む。特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、グリカンがコアポリペプチド(例えば、ウシ血清アルブミン)への還元的アミノ化を介してポリペプチドバックボーンに連結されている、新たな糖タンパク質キャリアを含む。
ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、例えば、ポリ−L−グルタミン酸などの人工的なポリペプチドバックボーンを有するキャリアを含む。ある特定の実施形態において、1つ以上の(およびある実施形態において、各)グルタミン酸は、αカルボキシル基を介して結合体化されたアンブレラ−トポロジーグリカンを有し得る。
特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、核酸キャリアおよび少なくとも1つのアンブレラ−トポロジーグリカン部分を含む。核酸キャリアには、
ウイルスDNAおよび/またはRNAを含むウイルスフラグメント;DNAおよび/またはRNAキメラ;mRNA;プラスミド;コスミド;ゲノムDNA;cDNA;遺伝子フラグメント;一本鎖DNA、二本鎖DNA、スーパーコイルDNAおよび/または三重ヘリックスDNAを含む種々の構造型のDNA;Z−DNA;機能的核酸(例えば、RNAiを誘導する実体、リボザイムなど)などが含まれるがこれらに限定されない。
特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、小分子キャリアおよび少なくとも1つのアンブレラ−トポロジーグリカン部分を含む。一般的に、「小分子」は、約5キロダルトン(Kd)サイズ未満の有機分子であることが当該分野において理解される。ある実施形態において、小分子は、約4Kd、3Kd、約2Kd、または約1Kd未満である。ある実施形態において、小分子は、約800ダルトン(D)、約600D、約500D、約400D、約300D、約200D、または約100D未満である。ある実施形態において、小分子は、約2000g/mol未満、約1500g/mol未満、約1000g/mol未満、約800g/mol未満、または約500g/mol未満である。ある実施形態において、小分子は非ポリマー性である。
特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、脂質キャリアおよび少なくとも1つのアンブレラ−トポロジーグリカン部分を含む。ある実施形態において、本発明に従って使用され得る例示的な脂質には、オイル、脂肪酸、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、必須脂肪酸、シス脂肪酸、トランス脂肪酸、グリセリド、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、ホルモン、ステロイド(例えば、コレステロール、胆汁酸)、ビタミン(例えば、ビタミンE)、リン脂質、スフィンゴ脂質、およびリポタンパク質が含まれるがこれらに限定されない。
ある実施形態において、脂質は、1つ以上の脂肪酸基またはその塩を含み得る。ある実施形態において、脂肪酸基は、消化可能な長鎖(例えば、C8−C50)の置換または非置換炭化水素を含み得る。ある実施形態において、脂肪酸基は、C10−C20脂肪酸またはその塩であり得る。ある実施形態において、脂肪酸基は、C15−C20脂肪酸またはその塩であり得る。ある実施形態において、脂肪酸基は、C15−C25脂肪酸またはその塩であり得る。ある実施形態において、脂肪酸基は不飽和であり得る。ある実施形態において、脂肪酸基はモノ不飽和であり得る。ある実施形態において、脂肪酸基はポリ不飽和であり得る。ある実施形態において、不飽和脂肪酸基の二重結合はシスコンホメーションであり得る。ある実施形態において、不飽和脂肪酸の二重結合は、トランスコンホメーションであり得る。
ある実施形態において、脂肪酸基は、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、またはリグノセリン酸の1種以上であり得る。ある実施形態において、脂肪酸基は、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、α−リノール酸、γ−リノール酸、アラキドン酸、ガドレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、またはエルカ酸の1種以上であり得る。
特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、炭水化物キャリアおよび少なくとも1つのアンブレラ−トポロジーグリカン部分を含む。ある実施形態において、炭水化物は天然または合成であり得る。炭水化物はまた、誘導体化された天然の炭水化物であってもよい。特定の実施形態において、炭水化物は、単糖または複合糖類であってもよい。特定の実施形態において、炭水化物は、グルコース、フルクトース、ガラクトース、およびリボースを含むがこれらに限定されないモノサッカリドである。特定の実施形態において、炭水化物は、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース、およびセロビオースを含むがこれらに限定されないジサッカリドである。特定の実施形態において、炭水化物は、セルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース(MC)、デキストロース、デキストラン、グリコーゲン、キサンタンガム、ジェランガム、デンプン、およびプルランを含むがこれらに限定されないポリサッカリドである。特定の実施形態において、炭水化物は、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マルトール(malitol)、およびラクチトールを含むがこれらに限定されない糖アルコールである。
特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、粒子キャリアおよび少なくとも1つのアンブレラ−トポロジーグリカン部分を含む。ある実施形態において、キャリアは、微粒子、ナノ粒子、ピコ粒子、ポリマー粒子、量子ドット、金属粒子、骨由来の粒子、セラミック由来の粒子、リポソーム、ミセルなどを含むがこれらに限定されない粒子であり得る。ある実施形態において、粒子は生物分解性かつ生体適合性である。一般的に、生体適合性物質は細胞に対して毒性ではない。ある実施形態において、物質は、その細胞への添加が細胞死の特定の閾値に満たない場合(例えば、細胞死が75%未満、50%未満、25%未満、または10%未満)、生体適合性であると見なされる。ある実施形態において、物質は、その細胞への添加が副作用を誘導しない場合に、生体適合性であると見なされる。一般的に、生物分解性物質は、治療に関連する時間の期間(例えば、数週間、数ヶ月、または数年間)の過程で、生理学的条件下で分解を受けるものである。ある実施形態において、生物分解性物質は、細胞機構によって分解可能である物質である。ある実施形態において、生物分解性物質は、化学的プロセスによって分解可能な物質である。
一般的に、本発明に従う粒子は、500ミクロン(μm)未満の最大寸法(例えば、直径)を有する任意の実体である。ある実施形態において、本発明の粒子は、100μm未満の最大寸法を有する。ある実施形態において、本発明の粒子は、10μm未満の最大寸法を有する。ある実施形態において、本発明の粒子は、1000ナノメートル(nm)未満の最大寸法を有する。ある実施形態において、本発明の粒子は、900nm、800nm、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、200nm、または100nm未満の最大寸法を有する。典型的には、本発明の粒子は、300nm以下の最大寸法(例えば、直径)を有する。ある実施形態において、本発明の粒子は、250nm以下の最大寸法(例えば、直径)を有する。ある実施形態において、本発明の粒子は、200nm以下の最大寸法(例えば、直径)を有する。ある実施形態において、本発明の粒子は、150nm以下の最大寸法(例えば、直径)を有する。ある実施形態において、本発明の粒子は、100nm以下の最大寸法(例えば、直径)を有する。例えば、50nm以下の最大寸法を有するより小さな粒子が、本発明のある実施形態において使用される。ある実施形態において、本発明の粒子は、5nmと1μmの間の範囲の最大寸法を有する。ある実施形態において、本発明の粒子は、25nmと200nmの間の範囲の最大寸法を有する。
特定の実施形態において、粒子は、約1μmから約500μmの間、約1μmから約200μmの間、約1μmから約106μmの間、約1μmから約100μmの間、約1μmから約50μmの間、約1μmから約53μmの間、約5μmから約53μmの間、約5μmから約50μmの間、約53μmから約106μmの間、約1μmから約5μmの間、約1μmから約20μmの間、約20μmから約53μmの間、約53μmから約75μmの間、約75μmから約106μmの間、または約30μmの平均幾何学的直径を有し得る。
特定の実施形態において、粒子は、約1μmから約250μmの間、約1μmから約100μmの間、約1μmから約50μmの間、約5μmから約200μmの間、約10μmから約500μmの間、約10μmから約250μmの間、約10μmから約100μmの間、約100μmから約200μmの間、約100μmから約150μmの間、約53μmから約106μmの間、約1μmから約5μmの間、約1μmから約20μmの間、約20μmから約53μmの間、約53μmから約75μmの間、または約75μmから約106μmの間の幾何学的サイズ分布を有し得る。
空気力学的直径は、空気などの粘性流体中の粒子の物理的特性である。一般的に、粒子は、測定することが困難であり得る実際の幾何学的直径を有する不規則な形状を有する。空気力学的直径は、粒子があたかも空気力学的直径に等しい単位密度および直径を有する完全な球であるかのような、粒子の空気力学的な挙動の表現である。このようなモデルは、同じ終端沈降速度を有する。空気力学的直径は、粒子状汚染物質および吸入した薬物に適用されて、気道のどこにこのような粒子が沈着するかを予測することができる。ある実施形態において、肺送達のための薬物粒子は、幾何学的直径の代わりにまたはそれに加えて、空気力学的直径によって特徴付けることができる。薬物が定着する速度は、空気力学的直径、daに比例する:
da=(ρ/X)1/2×dg
ここで、ρ=密度、X=形状因子である。球状の種についてはX=1である。空気力学的直径は、問題の粒子と同じ重力沈降速度を有する、単位密度(1g/ml)の球の直径である。空気力学的直径は以下として与えられる:
dpa=dps×sqrt(粒子の密度)
ここで、dps=ストークス直径である。特定の実施形態において、粒子は、約1μmと約5μmの間、約1μmと約35μmの間、約5μmと約35μmの間、約1μmと約35μmの間、約35μmと約70μmの間、約1μmと約75μmの間、約35μmと約75μmの間、約1μmと約50μmの間、または約5μmの平均空気力学的直径を有し得る。
バルク密度は粒子材料の特性である。一般的に、バルク密度は、粒子が占める体積によって除算した粒子の集団の重量をいうために使用される。典型的には、この体積は、粒子間の空間ならびに個々の粒子の孔の内部の空間が含まれる。バルク密度は材料の固有の特性ではないが、その材料がどのように取り扱われるかに依存して変化し得る。例えば、円筒に注がれた穀類は、特定のバルク密度を有する;円筒が乱された場合、穀物粒子は、共により近接して移動および定着し、より高いバルク密度を生じる。この理由のために、粉末のバルク密度は、通常は、「自由に定着」と「タップ」密度の両方として報告されており、そこでは、タップ密度とは、充填化プロセス後の粉末のバルク密度をいう。典型的には、充填化プロセスは、粒子の集団を保持する容器の振動を含み得る。特定の実施形態において、粒子は、約0.01g/cm3と約0.4g/cm3の間、0.4g/cm3よりも上、または0.4g/cm3未満のタップ密度範囲を有し得る。
ある実施形態において、粒子は約1000nmの直径を有する。ある実施形態において、粒子は約750nmの直径を有する。ある実施形態において、粒子は約500nmの直径を有する。ある実施形態において、粒子は約450nmの直径を有する。ある実施形態において、粒子は約400nmの直径を有する。ある実施形態において、粒子は約350nmの直径を有する。ある実施形態において、粒子は約300nmの直径を有する。ある実施形態において、粒子は約275nmの直径を有する。ある実施形態において、粒子は約250nmの直径を有する。ある実施形態において、粒子は約225nmの直径を有する。ある実施形態において、粒子は約200nmの直径を有する。ある実施形態において、粒子は約175nmの直径を有する。ある実施形態において、粒子は約150nmの直径を有する。ある実施形態において、粒子は約125nmの直径を有する。ある実施形態において、粒子は約100nmの直径を有する。ある実施形態において、粒子は約75nmの直径を有する。ある実施形態において、粒子は約50nmの直径を有する。ある実施形態において、粒子は約25nmの直径を有する。
特定の実施形態において、粒子は、腎排泄限界よりも大きなサイズである(例えば、6nmよりも大きな直径を有する粒子)。特定の実施形態において、粒子は、5nmよりも大きい、10nmよりも大きい、15nmよりも大きい、20nmよりも大きい、50nmよりも大きい、100nmよりも大きい、250nmよりも大きい、500nmよりも大きい、1000nmよりも大きい、またはそれ以上の直径を有する。特定の実施形態において、粒子は、肝臓による血流からの粒子のクリアランスを回避するために十分に小さい(例えば、1000nm未満の直径を有する粒子)。特定の実施形態において、粒子は、1500nm未満、1000nm未満、750nm未満、500nm未満、250nm未満、100nm未満、またはそれ以下の直径を有する。一般的に、粒子サイズを含む粒子の生理化学的特徴は、腎排泄および/または肝臓クリアランスを減少させることによって、粒子が血漿中でより長く循環することを可能にするように選択することができる。ある実施形態において、粒子は、5nm〜1500nm、5nm〜1000nm、5nm〜750nm、5nm〜500nm、5nm〜250nm、または5nm〜100nmの範囲の直径を有する。ある実施形態において、粒子は、10nm〜1500nm、15nm〜1500nm、20nm〜1500nm、50nm〜1500nm、100nm〜1500nm、250nm〜1500nm、500nm〜1500nm、または1000nm〜1500nmの範囲の直径を有する。
各粒子が同様の特性を有するように、サイズ、形状、および/または組成に関して比較的均一である粒子の集団を使用することがしばしば所望される。例えば、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%の粒子が、平均直径または最大寸法の5%、10%、または20%以内におさまる直径または最大寸法を有し得る。ある実施形態において、粒子の集団は、サイズ、形状、および/または組成に関して不均一であり得る。
ゼータ電位は、粒子の表面電位の尺度である。ある実施形態において、粒子は、−50mVから+50mVの間の範囲のゼータ電位を有する。ある実施形態において、粒子は、−25mVから+25mVの間の範囲のゼータ電位を有する。ある実施形態において、粒子は、−10mVから+10mVの間の範囲のゼータ電位を有する。ある実施形態において、粒子は、−5mVから+5mVの間の範囲のゼータ電位を有する。ある実施形態において、粒子は、実質的に負のゼータ電位を有する。ある実施形態において、粒子は、実質的に正のゼータ電位を有する。ある実施形態において、粒子は、実質的に中性のゼータ電位を有する(すなわち、約0mV)。
粒子は、球、偏球、円筒、卵形、楕円鉢、シェル、立方体、直平行六面体、円錐、錐体、棒状物(例えば、円筒、または正方形もしくは長方形の断面を有する長い構造)、テトラポッド(4つの足状付属物を有する粒子)、三角形、プリズムなどを含む、種々の異なる形状を有し得る。
ある実施形態において、粒子は微粒子(例えば、ミクロスフェア)である。一般的に、「微粒子」とは、1000μm未満の直径を有する任意の粒子をいう。ある実施形態において、粒子はナノ粒子(例えば、ナノスフェア)である。一般的に、「ナノ粒子」とは、1000nm未満の直径を有する任意の粒子をいう。ある実施形態において、粒子はピコ粒子(例えば、ピコスフェア)である。一般的に、「ピコ粒子」とは、1nm未満の直径を有する任意の粒子をいう。ある実施形態において、粒子はリポソームである。ある実施形態において、粒子はミセルである。
粒子は、中身が詰まっているかまたは中空であり得、1つ以上の層を含み得る(例えば、ナノシェル、ナノリングなど)。粒子は、コア/シェル構造を有し得、ここで、コアおよびシェルは、異なる材料から作られ得る。粒子は、勾配または均質な合金を含み得る。粒子は、2つ以上の材料から作られた複合粒子であり得、その材料の1つ、1つより多く、またはすべてが、磁気特性、電気的に検出可能な特性、および/または光学的に検出可能な特性を有する。
ある実施形態において、粒子は、1種以上の分散媒体、界面活性剤、放出遅延成分、または他の薬学的に受容可能な賦形剤を任意に含んでもよい。ある実施形態において、粒子は、1種以上の可塑剤または添加剤を任意に含んでもよい。
ある特定の実施形態において、本発明のアンブレラ−トポロジーデコイにおいて利用される特定のキャリアは、HA受容体フラグメント、ムチン、フェチュイン、IgG、ウシ血清アルブミン、γポリグルタミン酸、ポリアクリルアミド、キトサン、金ナノ粒子(すなわち、アンブレラ−トポロジーグリカンで官能基する)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
特定の実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、細胞またはウイルスキャリア、および少なくとも1つのアンブレラ−トポロジーグリカン部分を含む。例えば、アンブレラ−トポロジーグリカン部分は、細胞またはウイルスの表面と結合し得る(例えば、共有結合的にまたは非共有結合的に結合する)。ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカン部分は、細胞またはウイルスの中にカプセル化され得る。
本発明は、このようなアンブレラ−トポロジーグリカンを模倣する因子が、デコイとして作用できかつHAポリペプチドとそれらの受容体の間の相互作用と競合するという認識を包含する。ある実施形態において、グリカン模倣物は、HAポリペプチドへの結合について内因性グリカンと競合する。ある実施形態において、グリカン模倣物は、HAポリペプチドへの結合について内因性アンブレラ型グリカンと競合する。ある実施形態において、グリカン模倣物は、HAポリペプチドへの結合について上気道グリカンと競合する。ある実施形態において、グリカン模倣物は、HAポリペプチドへの結合についてアンブレラ型上気道グリカンと競合する。
ある実施形態において、グリカン模倣物はHAポリペプチドに結合するが、HAポリペプチドへの結合について内因性グリカンと競合しない。
ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、1つ以上のHAポリペプチドに結合および/または付随することが可能である三次元構造によって特徴付けられる。ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、キャリアに付随した個々のグリカン部分の多価配座を含む。例えば、グリカンデコイは、グリカンデコイが1つ以上のHAポリペプチドに結合および/または付随することを可能にする配座または方向で、キャリアに付随する(上記のように、共有結合的または非共有結合的に)、2個、3個、4個、5個、10個、20個、50個、100個、200個、500個、1000個、またはそれ以上の個々のグリカン部分を含み得る。ある実施形態において、個々のグリカン部分の多価配座を含むアンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、野生型HA受容体のHAポリペプチド結合部位と類似し、および/またはこれを模倣する。ある実施形態において、個々のグリカン部分の多価配座を含むアンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、その天然の状況にある(例えば、種々の肺組織中にある)野生型HA受容体のHAポリペプチド結合部位と類似し、および/またはこれを模倣する。
HAポリペプチドは、「ヘマグルチニン(HA)」という標題の節において、以下にさらに詳細に説明される。
ヘマグルチニン(HA)
インフルエンザウイルスは、ウイルス粒子の膜に埋め込まれた2つの糖タンパク質、ヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)を含む脂質膜エンベロープによって特徴付けられるRNAウイルスである。16種の既知のHAサブタイプおよび9種のNAサブタイプが存在しており、異なるインフルエンザ株は、その株のHAおよびNAサブタイプの数字に基づいて名付けられている。アミノ酸配列同一性の比較および結晶構造の比較に基づいて、HAサブタイプは、2つの主要な群および4つのより小さな分岐群に分けられてきた。異なるHAサブタイプは、強力なアミノ酸配列同一性を必ずしも共有していないが、異なるHAサブタイプの全体的な三次元構造は互いに類似しており、分類目的で使用することができるいくつかのわずかな違いを伴う。例えば、中心のαヘリックスに関する膜末端のサブドメインの特定の配向は、HAサブタイプを決定するために一般的に使用される1つの構造的な特徴である(Russellら、2004、Virology、325:287;参照により本明細書に援用される)。
HAは、H1−H16と名付けられた16種のサブタイプの1種のホモトリマーとして膜中に存在する。これらのサブタイプの3種のみ(H1、H2、およびH3)がこれまでにヒト感染のために適応している。ヒトに感染するように適応したHA(例えば、流行性のH1N1(1918)およびH3N2(1967−68)インフルエンザサブタイプのHA)の1つの報告された特徴は、α2−3シアル化グリカンに優先的に結合するトリ祖先ウイルスと比較して、α2−6シアル化グリカンに優先的に結合するそれらの能力である(SkehelおよびWiley、2000、Ann.Rev.Biochem.,69:531;RogersおよびPaulson、1983,Virology,127:361;Rogersら、1983,Nature,304:76;Sauterら、1992,Biochemistry,31:9609;Connorら、1994,Virology,205:17;ならびにTumpeyら、2005,Science,310:77;これらのすべては参照により本明細書に援用される)。しかし、本発明は、ヒト宿主に感染する能力は、特定の連結のグリカンへの結合とはより少なく相関し、特定のトポロジーのグリカンへの結合とはより多く相関するという認識を包含する。従って、本発明は、ヒトの感染を媒介するHAがアンブレラ−トポロジーグリカンに結合し、しばしば、コーン−トポロジーグリカンよりも、アンブレラ−トポロジーグリカンについての優先度を示す(たとえコーン−トポロジーグリカンα2−6シアル化グリカンであり得るとしても)ことを実証する。
(α2−3結合とα2−6結合の両方の)シアル化オリゴサッカリドに結合したH1(ヒトおよびブタ)、H3(トリ)、およびH5(トリ)からのHAのいくつかの結晶構造が利用可能であり、これらのグリカンとのHAの独特な相互作用に関与している特定のアミノ酸についての分子的洞察を提供する(Eisenら、1997,Virology,232:19;Haら、2001,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,98:11181;Haら、2003,Virology,309:209;Gamblinら、2004,Science,303:1838;Stevensら、2004,Science,303:1866;Russellら、2006,Glycoconj.J.,23:85;およびStevensら、2006,Science,312:404;これらのすべては参照により本明細書に援用される)。
例えば、単独のまたはα2−3もしくはα2−6シアル化オリゴサッカリドに結合したH5(A/アヒル/シンガポール/3/97)の結晶構造は、結合したグリカンと直接的に相互作用する特定のアミノ酸、およびまた、1以上の分離除去の程度であるアミノ酸を同定する(Stevensら、2001,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,98:11181;参照により本明細書に援用される)。ある場合において、これらの残基のコンホメーションは、結合状態対非結合状態で異なる。例えば、Glu190、Lys193、およびGln226は、すべて直接的結合相互作用に関与し、結合状態対非結合状態で異なるコンホメーションを有する。Glu190の近位であるAsn186のコンホメーションもまた、結合状態対非結合状態で有意に異なる。
HAポリペプチドの結合特性
特定の実施形態において、HAポリペプチドは、高い親和性でアンブレラ−トポロジーグリカンに結合する。特定の実施形態において、HAポリペプチドは、しばしば、高い親和性および/または特異性で、複数の異なるアンブレラ−トポロジーグリカンに結合する。本発明に従うと、HAポリペプチドは、ヒト上気道上皮組織における受容体と結合可能であるペプチドを含む。
ある実施形態において、HAポリペプチドは、高い親和性を有するアンブレラ−トポロジーグリカン(例えば、長いα2−6シアル化グリカン、例えば、Neu5Acα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4GlcNAc−など)に結合する。例えば、ある実施形態において、HAポリペプチドは、ヒトの感染を媒介する野生型HA(例えば、H1N1 HAまたはH3N2 HA)について観察されるものに匹敵する親和性を有するアンブレラ−トポロジーグリカンに結合する。ある実施形態において、HAポリペプチドは、ヒトの感染を媒介する野生型HAについて匹敵する条件下で観察されるものの少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である親和性を有するアンブレラ−トポロジーグリカンに結合する。ある実施形態において、HAポリペプチドは、ヒトの感染を媒介する野生型HAについて匹敵する条件下で観察されるものよりも高い親和性でアンブレラ−トポロジーグリカンに結合する。
特定の実施形態において、HAポリペプチドの結合親和性は、さまざまな濃度にわたって評価される。このようなストラテジーは、単純な濃度分析を行うよりも、特に、多価結合アッセイにおいて、顕著により多くの情報を提供する。ある実施形態において、例えば、HAポリペプチドの結合親和性は、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍またはそれ以上にわたる濃度範囲にわたって評価される。
特定の実施形態において、HAポリペプチドは、それらが本明細書に記載されるものなどの多価グリカンアレイ結合アッセイにおいて飽和シグナルを示す場合に、高い親和性を示す。ある実施形態において、HAポリペプチドは、それらがこのような研究において約400000以上(例えば、約500000、600000、700000、800000より上など)のシグナルを示す場合に、高い親和性を示す。ある実施形態において、HAポリペプチドは、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍以上の濃度範囲にわたって、またはある実施形態において、10倍以上まで大きな濃度範囲にわたって、アンブレラ−トポロジーグリカンへの飽和結合を示す。
さらに、ある実施形態において、HAポリペプチドは、それらがコーン−トポロジーグリカンに結合するよりも、より強力にアンブレラ−トポロジーグリカンに結合する。ある実施形態において、HAポリペプチドは、約10、9、8、7、6、5、4、3、または2である、コーン−トポロジーグリカンに対するアンブレラ−トポロジーグリカンの相対親和性を示す。
ある実施形態において、HAポリペプチドはα2−6シアル化グリカンに結合する;ある実施形態において、HAポリペプチドはα2−6シアル化グリカンに優先的に結合する。特定の実施形態においては、HAポリペプチドは複数の異なるα2−6シアル化グリカンに結合する。ある実施形態において、HAポリペプチドは、α2−3シアル化グリカンに結合不可能であり、他の実施形態において、HAポリペプチドはα2−3シアル化グリカンに結合可能である。
ある実施形態において、HAポリペプチドは、ヒト上気道上皮細胞上で見い出される受容体に結合する。特定の実施形態において、HAポリペプチドは、気管支および/または気管中のHA受容体に結合する。ある実施形態において、HAポリペプチドは、深部肺中の受容体に結合不可能であり、他の実施形態において、HAポリペプチドは、深部肺中の受容体に結合可能である。
ある実施形態において、HAポリペプチドは、ヒト上気道組織(例えば、上皮細胞)中のHA受容体上で見い出されるグリカンの少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、またはそれ以上に結合する。
ある実施形態において、HAポリペプチドは、図6(右のパネル)および9に図示された1つ以上のグリカンに結合する。ある実施形態において、HAポリペプチドは、図6(右のパネル)および9に図示された複数のグリカンに結合する。ある実施形態において、HAポリペプチドは、図6(右のパネル)および9に図示されたグリカンに、高い親和性および/または特異性で結合する。ある実施形態において、HAポリペプチドは、図6(左のパネル)および8に図示されたそれらのグリカンへの結合と比較して、図6(右のパネル)および9に図示されたグリカンに優先的に結合する。
本発明は、指定された結合特異性を有する単離されたHAポリペプチドを提供し、アンブレラ−トポロジーグリカンに関して指定された結合特性を有する操作されたHAポリペプチドを提供する。
ある実施形態において、指定された結合特性を有するHAポリペプチドはH1ポリペプチドである。ある実施形態において、指定された結合特性を有するHAポリペプチドはH2ポリペプチドである。ある実施形態において、指定された結合特性を有するHAポリペプチドはH3ポリペプチドである。ある実施形態において、指定された結合特性を有するHAポリペプチドはH4ポリペプチドである。ある実施形態において、指定された結合特性を有するHAポリペプチドはH5ポリペプチドである。ある実施形態において、指定された結合特性を有するHAポリペプチドはH6ポリペプチドである。ある実施形態において、指定された結合特性を有するHAポリペプチドはH7ポリペプチドである。ある実施形態において、指定された結合特性を有するHAポリペプチドはH8ポリペプチドである。ある実施形態において、指定された結合特性を有するHAポリペプチドはH9ポリペプチドである。ある実施形態において、指定された結合特性を有するHAポリペプチドはH10ポリペプチドである。ある実施形態において、指定された結合特性を有するHAポリペプチドはH11ポリペプチドである。ある実施形態において、指定された結合特性を有するHAポリペプチドはH12ポリペプチドである。ある実施形態において、指定された結合特性を有するHAポリペプチドはH13ポリペプチドである。ある実施形態において、指定された結合特性を有するHAポリペプチドはH14ポリペプチドである。ある実施形態において、指定された結合特性を有するHAポリペプチドはH15ポリペプチドである。ある実施形態において、指定された結合特性を有するHAポリペプチドはH16ポリペプチドである。
ある実施形態において、指定された結合特性を有するHAポリペプチドはH1ポリペプチドではなく、H2ポリペプチドではなく、および/またはH3ポリペプチドではない。
ある実施形態において、HAポリペプチドは、以下の株のいずれかからのH1タンパク質を含まない:A/South Carolina(サウスカロライナ)/1/1918;A/Puerto Rico(プエルトリコ)/8/1934;A/台湾/1/1986;A/Texas(テキサス)/36/1991;A/ペキン/262/1995;A/ヨハネスブルク/92/1996;A/ニューカレドニア/20/1999;A/ソロモン諸島/3/2006。
ある実施形態において、HAポリペプチドは、1957−58のアジアのインフルエンザ流行の株のいずれかからのH2タンパク質を含まない。ある実施形態において、HAポリペプチドは、以下の株のいずれかからのH2タンパク質を含まない:A/日本/305+/1957;A/シンガポール/1/1957;A/台湾/1/1964;A/台湾/1/1967。
ある実施形態において、HAポリペプチドは、以下の株のいずれかからのH3タンパク質を含まない:A/愛知/2/1968;A/フィリピン/2/1982;A/ミシシッピー/1/1985;A/レニングラード/360/1986;A/スーチョワン/2/1987;A/シャンハイ/11/1987;A/ペキン/353/1989;A/シャントン/9/1993;A/ヨハネスブルク/33/1994;A/ナンチャン/813/1995;A/シドニー/5/1997;A/Moscow(モスクワ)/10/1999;A/パナマ/2007/1999;A/ワイオミング/3/2003;A/オクラホマ/323/2003;A/カリフォルニア/7/2004;A/ウィスコンシン/65/2005。
改変体HAポリペプチド
特定の実施形態において、HAポリペプチドは、そのアミノ酸配列が親のHAの配列と同一であるが、特定の配列の変更については同一ではないという点で、親のHAポリペプチドの改変体である。ある実施形態において、親のHAは、インフルエンザウイルスの天然の単離物において見い出されるHAポリペプチド(例えば、野生型HAポリペプチド)である。
ある実施形態において、HAポリペプチド改変体は、それらの対応する親のHAポリペプチドとは異なるグリカン結合特性を有する。ある実施形態において、HA改変体ポリペプチドは、それらの同族の親のHAポリペプチドよりも、アンブレラ−トポロジーグリカンについて(例えば、コーン−トポロジーグリカンと比較した場合に)より高い親和性および/または特異性を有する。特定の実施形態において、このようなHAポリペプチド改変体は操作された改変体である。
ある実施形態において、グリカン結合特性の変化を伴うHAポリペプチド改変体は、グリカン結合部位の中の残基またはグリカン結合部位に影響を与える残基における配列の変化を有する。ある実施形態において、このような置換は、結合したグリカンと直接的に相互作用するアミノ酸の置換であり;他の実施形態において、このような置換は、以下の点で、結合したグリカンと相互作用するものからの分離距離の程度が1度のアミノ酸である−分離距離の程度が1度のアミノ酸は、(1)直接結合するアミノ酸と相互作用し;(2)他のやり方で、直接結合するアミノ酸がグリカンと相互作用する能力に影響を与えるが、しかし、グリカンそれ自体とは直接的に相互作用しない;または(3)他のやり方で、直接結合するアミノ酸がグリカンと相互作用する能力に影響を与え、かつグリカンそれ自体とも直接的に相互作用するかのいずれかである。HAポリペプチド改変体は、1つ以上の直接結合アミノ酸、1つ以上の分離距離の程度が1度のアミノ酸、1つ以上の分離距離の程度が2度のアミノ酸、またはこれらの任意の組み合わせの置換を含む。ある実施形態において、HAポリペプチド改変体は、より高い程度の分離さえ伴う、1つ以上のアミノ酸の置換を含んでもよい。
ある実施形態において、グリカン結合特性の変化を伴うHAポリペプチド改変体は、Neu5AcおよびGalの向こう側の糖と接触する残基における配列の変化を有する(例えば、図6を参照のこと)。
ある実施形態において、HAポリペプチド改変体は、野生型である親のHAと比較して、少なくとも1個のアミノ酸置換を有する。特定の実施形態において、HAポリペプチド改変体は、同族の野生型である親のHAと比較して、少なくとも2個、3個、4個、5個、またはそれ以上のアミノ酸置換を有する;ある実施形態において、HAポリペプチド改変体は、2個、3個、または4個のアミノ酸置換を有する。ある実施形態において、すべてのこのようなアミノ酸置換はグリカン結合部位の中に位置している。
ある実施形態において、HAポリペプチド改変体は、残基137、145、156、159、186、187、189、190、192、193、196、222、225、226、および228の1つ以上に対応する位置における配列置換を有する。ある実施形態において、HAポリペプチド改変体は、残基156、159、189、192、193、および196の1つ以上に対応する位置;ならびに/または残基186、187、189、および190の1つ以上に対応する位置;ならびに/または残基190、222、225、および226の1つ以上に対応する位置;ならびに/または残基137、145、190、226、および228の1つ以上に対応する位置における配列置換を有する。ある実施形態において、HAポリペプチド改変体は、残基190、225、226、および228の1つ以上に対応する位置における配列置換を有する。
特定の実施形態において、HAポリペプチド改変体、および特に、H5ポリペプチド改変体は、残基98、136、138、153、155、159、183、186、187、190、193、194、195、222、225、226、227、および228からなる群より選択される残基において、野生型である親のHA(例えば、H5)と比較して、1つ以上のアミノ酸置換を有する。ある実施形態において、HAポリペプチド改変体、および特にH5ポリペプチド改変体は、グリカンに直接結合する受容体の領域に位置するアミノ酸から選択される残基(残基98、136、153、155、183、190、193、194、222、225、226、227、および228を含むがこれらに限定されない)において、野生型である親のHAと比較して、1つ以上のアミノ酸置換を有する。ある実施形態において、HAポリペプチド改変体、および特にH5ポリペプチド改変体は、残基98、138、186、187、195、および228を含むがこれらに限定されない、グリカンを直接結合する受容体の領域に隣接するアミノ酸から選択される残基において、野生型である親のHAと比較して、1つ以上のアミノ酸置換を有する。
ある実施形態において、HAポリペプチド改変体、および特にH5ポリペプチド改変体は、残基138、186、187、190、193、222、225、226、227、および228からなる群より選択される残基において、野生型である親のHAと比較して、1つ以上のアミノ酸置換を有する。他の実施形態において、HAポリペプチド改変体、および特にH5ポリペプチド改変体は、残基190、193、222、225、226、227、および228を含むがこれらに限定されない、グリカンに直接結合する受容体の領域に位置するアミノ酸から選択される残基において、野生型である親のHAと比較して、1つ以上のアミノ酸置換を有する。さらなる実施形態において、HAポリペプチド改変体、および特にH5ポリペプチド改変体は、残基138、186、187、および228を含むがこれらに限定されない、グリカンに直接結合する受容体の領域に位置するアミノ酸から選択される残基において、野生型である親のHAと比較して、1つ以上のアミノ酸置換を有する。
さらなる実施形態において、HAポリペプチド改変体、および特にH5ポリペプチド改変体は、残基98、136、153、155、183、194、および195からなる群より選択される残基において、野生型である親のHAと比較して、1つ以上のアミノ酸置換を有する。ある実施形態において、HAポリペプチド改変体、および特にH5ポリペプチド改変体は、残基98、136、153、155、183、および194を含むがこれらに限定されない、グリカンに直接結合する受容体の領域に位置するアミノ酸から選択される残基において、野生型である親のHAと比較して、1つ以上のアミノ酸置換を有する。ある実施形態において、HAポリペプチド改変体、および特にH5ポリペプチド改変体は、残基98および195を含むがこれらに限定されない、グリカンを直接結合する受容体の領域に隣接するアミノ酸から選択される残基において、野生型である親のHAと比較して、1つ以上のアミノ酸置換を有する。
特定の実施形態において、HAポリペプチド改変体、および特にH5ポリペプチド改変体は、以下の点で、結合したグリカンと相互作用するものからの分離距離の程度が1度のアミノ酸から選択される残基において、野生型である親のHAと比較して、1つ以上のアミノ酸置換を有する。分離距離の程度が1度のアミノ酸は、(1)直接結合するアミノ酸と相互作用し;(2)他のやり方で、直接結合するアミノ酸がグリカンと相互作用する能力に影響を与えるが、しかし、グリカンそれ自体とは直接的に相互作用しない;または(3)他のやり方で、直接結合するアミノ酸がグリカンと相互作用する能力に影響を与え、かつグリカンそれ自体とも直接的に相互作用するかのいずれかである。上記残基には残基98、138、186、187、195、および228が含まれるがこれらに限定されない。
ある実施形態において、HAポリペプチド改変体、および特にH5ポリペプチド改変体は、以下の点で、結合したグリカンと相互作用するものからの分離距離の程度が1度のアミノ酸から選択される残基において、野生型である親のHAと比較して、1つ以上のアミノ酸置換を有する。分離距離の程度が1度のアミノ酸は、(1)直接結合するアミノ酸と相互作用し;(2)他のやり方で、直接結合するアミノ酸がグリカンと相互作用する能力に影響を与えるが、しかし、グリカンそれ自体とは直接的に相互作用しない;または(3)他のやり方で、直接結合するアミノ酸がグリカンと相互作用する能力に影響を与え、かつグリカンそれ自体とも直接的に相互作用するかのいずれかである。上記残基には残基138、186、187、および228が含まれるがこれらに限定されない。
ある実施形態において、HAポリペプチド改変体、および特にH5ポリペプチド改変体は、以下の点で、結合したグリカンと相互作用するものからの分離距離の程度が1度のアミノ酸から選択される残基において、野生型である親のHAと比較して、1つ以上のアミノ酸置換を有する。分離距離の程度が1度のアミノ酸は、(1)直接結合するアミノ酸と相互作用し;(2)他のやり方で、直接結合するアミノ酸がグリカンと相互作用する能力に影響を与えるが、しかし、グリカンそれ自体とは直接的に相互作用しない;または(3)他のやり方で、直接結合するアミノ酸がグリカンと相互作用する能力に影響を与え、かつグリカンそれ自体とも直接的に相互作用するかのいずれかである。上記残基には残基98および195が含まれるがこれらに限定されない。
特定の実施形態において、HAポリペプチド改変体、および特にH5ポリペプチド改変体は、残基159において、野生型である親のHAと比較して、アミノ酸置換を有する。
ある実施形態において、HAポリペプチド改変体、および特にH5ポリペプチド改変体は、190、193、225、および226から選択される残基において、野生型である親のHAと比較して、1つ以上のアミノ酸置換を有する。ある実施形態において、HAポリペプチド改変体、および特にH5ポリペプチド改変体は、190、193、226、および228から選択される残基において、野生型である親のHAと比較して、1つ以上のアミノ酸置換を有する。
ある実施形態において、HAポリペプチド改変体、および特にH5改変体は、以下のアミノ酸置換の1つ以上を有する:Ser137Ala、Lys156Glu、Asn186Pro、Asp187Ser、Asp187Thr、Ala189Gln、Ala189Lys、Ala189Thr、Glu190Asp、Glu190Thr、Lys193Arg、Lys193Asn、Lys193His、Lys193Ser、Gly225Asp、Gln226Ile、Gln226Leu、Gln226Val、Ser227Ala、Gly228Ser。
ある実施形態において、HAポリペプチド改変体、および特にH5改変体は、アミノ酸置換の以下のセットの1つ以上を有する:
Glu190Asp、Lys193Ser、Gly225Asp and Gln226Leu;
Glu190Asp、Lys193Ser、Gln226Leu and Gly228Ser;
Ala189Gln、Lys193Ser、Gln226Leu、Gly228Ser;
Ala189Gln、Lys193Ser、Gln226Leu、Gly228Ser;
Asp187Ser/Thr、Ala189Gln、Lys193Ser、Gln226Leu、Gly228Ser;
Ala189Lys、Lys193Asn、Gln226Leu、Gly228Ser;
Asp187Ser/Thr、Ala189Lys、Lys193Asn、Gln226Leu、Gly228Ser;
Lys156Glu、Ala189Lys、Lys193Asn、Gln226Leu、Gly228Ser;
Lys193His、Gln226Leu/Ile/Val、Gly228Ser;
Lys193Arg、Gln226Leu/Ile/Val、Gly228Ser;
Ala189Lys、Lys193Asn、Gly225Asp;
Lys156Glu、Ala189Lys、Lys193Asn、Gly225Asp;
Ser137Ala、Lys156Glu、Ala189Lys、Lys193Asn、Gly225Asp;
Glu190Thr、Lys193Ser、Gly225Asp;
Asp187Thr、Ala189Thr、Glu190Asp、Lys193Ser、Gly225Asp;
Asn186Pro、Asp187Thr、Ala189Thr、Glu190Asp、Lys193Ser、Gly225Asp;
Asn186Pro、Asp187Thr、Ala189Thr、Glu190Asp、Lys193Ser、Gly225Asp、Ser227Ala。
ある実施形態において、HAポリペプチドは、改変体のアンブレラ−トポロジーグリカンへの親和性および/または特異性が増加するように、野生型HAと比較して、少なくとも1つのさらなる置換を有する。
ある実施形態において、HAポリペプチド(HAポリペプチド改変体を含む)は、D190、D225、L226、および/またはS228を含む配列を有する。ある実施形態において、HAポリペプチドは、D190およびD225を含む配列を有する;ある実施形態において、HAポリペプチドは、L226およびS228を含む配列を有する。
ある実施形態において、HAポリペプチド改変体は、親のHA結合部位、特に、親の野生型HAと比較して、開かれた結合部位を有する。
HAポリペプチドの部分またはフラグメント
本発明は、HAポリペプチドの特徴的な部分およびそれらをコードする核酸をさらに提供する。一般的に、特徴的な部分は、アミノ酸の連続するストレッチ、または共にHAポリペプチドに特徴的であるアミノ酸配列の連続するストレッチのコレクションを含むものである。各々のこのような連続するストレッチは、一般的に、少なくとも2アミノ酸を含む。さらに、当業者は、典型的には、少なくとも5個、10個、15個、20個、またはそれ以上のアミノ酸が、H5 HAポリペプチドに特徴的であるために必要とされることを理解している。一般的に、特徴的な部分は、上記に特定される配列同一性に加えて、関連するインタクトなHAポリペプチドと、少なくとも1つの機能的な特徴を共有している。ある実施形態において、HAポリペプチドの発明に関わる特徴的な部分は、関連する全長HAポリペプチドと、グリカン結合特性を共有している。
本明細書に提供されるHAポリペプチドの特定の例および説明のいくつかは具体的にH5 HAに指向されているが、当業者は、本発明がH5 HAに限定されず、しかし、本発明は任意のHA遺伝子型、サブタイプ、改変体、部分、フラグメントなどに一般的に適用可能であることを容易に認識する。
グリカンデコイの同定
ある実施形態において、本発明は、グリカンデコイを同定するためのシステムおよび方法を提供する。一般的に、このようなシステムおよび方法は、HAポリペプチドを、1種以上の候補物質と接触させる工程を包含し、この候補物質は、アンブレラ−トポロジーグリカン(本明細書では「候補デコイ」と称する)を模倣し、ならびに、因子がHAポリペプチドに結合し、および/またはHAポリペプチドとHA受容体(またはHA受容体上で見い出されるアンブレラ−トポロジーグリカン)の間の相互作用と競合する能力を決定する。
ある実施形態において、グリカンデコイは、HAポリペプチドに結合するグリカン模倣物である。ある実施形態において、グリカン模倣物は、HAポリペプチドへの結合について、内因性グリカンと競合する。ある実施形態において、グリカン模倣物は、HAポリペプチドへの結合について、内因性アンブレラ型グリカンと競合する。ある実施形態において、グリカン模倣物は、HAポリペプチドへの結合について、上気道グリカンと競合する。ある実施形態において、グリカン模倣物は、HAポリペプチドへの結合について、アンブレラ−トポロジー上気道グリカンと競合する。
ある実施形態において、ペプチド模倣物はHAポリペプチドに結合するが、しかし、HAポリペプチドへの結合について、内因性グリカンと競合しない。
ある実施形態において、候補デコイは、溶液中で遊離状態であり、基材に固定され、ならびに/または細胞の中および/もしくは細胞の表面上で発現されてもよい。候補デコイおよび/またはHAポリペプチドは標識されてもよく、それによって、結合の検出を可能にする。候補デコイは、頻繁には、標識された種であり、標識工程が結合に干渉し、および/または結合を増強する可能性を減少させる。競合結合形式が実施されてもよく、ここでは、1種の物質が標識され、結合に対する効果を決定するために、結合した標識に対する遊離の標識の量を測定し得る。
ある実施形態において、結合アッセイには、例えば、候補デコイをHAポリペプチドに曝露する工程、および候補デコイとHAポリペプチドの間の結合を検出する工程が含まれる。結合アッセイは、インビトロで(例えば、実質的に言及された成分のみを含む候補チューブ中;無細胞抽出物中;および/または実質的に精製された成分中)で実施されてもよい。代替的にまたは加えて、結合アッセイは、インサイトおよび/またはインビボで(例えば、細胞、組織、器官、および/または生物の中で;以下でさらに詳述される)実施されてもよい。
特定の実施形態において、少なくとも1種のHAポリペプチドが少なくとも1種の候補デコイと接触され、効果が検出される。ある実施形態において、例えば、HAポリペプチドが候補デコイと接触され、2種の実体間の結合がモニターされる。ある実施形態において、アッセイは、HAポリペプチドの特徴的な部分(アンブレラ−トポロジーグリカンを接触するHAポリペプチドの領域を含むがこれに限定されない)と、候補デコイを接触させる工程を含み得る。候補デコイへのHAポリペプチドの結合が検出される。HAポリペプチドのフラグメント、部分、ホモログ、改変体、および/または誘導体は、これらがアンブレラ−トポロジーグリカン結合活性を含むならば、利用されてもよい
ある実施形態において、アッセイは、候補デコイ(例えば、グリカンアレイなどの固体支持体上に固定化されており、「グリカンアレイ」という標題の節において以下にさらに詳細に記載される)および非固定化HAポリペプチドを提供する工程を含み得る。候補デコイおよびHAポリペプチドが互いに結合する程度が決定される。または、HAポリペプチドが固定化され、候補デコイが固定化されなくてもよい。このようなアッセイは、HAポリペプチドならびに/またはそのフラグメント、部分、ホモログ、改変体、および/もしくは誘導体に結合可能である候補デコイを同定するために使用されてもよい。
ある実施形態において、HAポリペプチドを認識する抗体(例えば、α−HA抗体)が固体支持体(例えば、プロテインAビーズ)に固定化される。抗体はHAポリペプチドと接触され、これが固定化抗体と結合する。次いで、得られた複合体は、候補デコイ(精製タンパク質、細胞抽出物、コンビナトリアルライブラリーなど)との接触に供される。HAポリペプチドが候補デコイと相互作用する場合、候補デコイは、固体支持体に間接的に固定化される。固体支持体上の候補デコイの存在は、当該分野で公知である任意の標準的な技術によってアッセイ可能である(ウェスタンブロッティング、質量分析法などが含まれるがこれらに限定されない)。この型のアッセイは、当該分野では「免疫沈降」アッセイとして知られている。
ある実施形態において、HAポリペプチドは、固体支持体(例えば、アガロースビーズ)に固定化される。特定の実施形態において、HAポリペプチドは、細菌、酵母、昆虫細胞、および/もしくは高等真核細胞株中でGST−融合タンパク質として発現され、ならびに/またはグルタチオン−アガロースビーズを使用して、粗細胞抽出物から精製する。対照として、GST融合タンパク質ではない候補デコイの、グルタチオン−アガロースビーズへの結合は、HAポリペプチドの非存在下で決定される。候補デコイの固定化HAポリペプチドへの結合が決定される。この型のアッセイは、「GSTプルダウン」アッセイとして当該分野で公知である。代替的にまたは加えて、候補物質は固定化されてもよく、HAポリペプチドは固定化されなくてもよい。
1つの成分、例えば、Ni−NTAアガロースおよび/またはヒスチジンタグ化成分を固定化するために、異なるアフィニティー精製システムを使用してこの型のアッセイを実施することが可能である。
候補デコイへのHAポリペプチドの結合は、当該分野で周知である種々の方法によって決定され得る。例えば、非固定化成分は標識されてもよい(例えば、放射性標識、エピトープタグ、酵素−抗体結合体などを用いる)。代替的にまたはさらに、結合は、免疫学的検出技術によって決定されてもよい。例えば、反応混液は、ウェスタンブロッティングに供せられ、非固定化成分を検出する抗体を用いて、ブロットがプロービングされてもよい。代替的にまたはさらに、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が結合についてアッセイするために利用されてもよい。
ある実施形態において、本発明のスクリーニング方法は以下の工程を含む:(1)候補物質を入手する工程;(2)候補デコイを、HAポリペプチド(および/またはその特徴的部分)およびHAポリペプチドに結合することが知られているアンブレラ−トポロジーグリカンと接触させる工程;ならびに(3)候補デコイの存在下および/または非存在下で、HAポリペプチドと既知のアンブレラ−トポロジーグリカンとの間の結合の阻害を検出する工程。
ある実施形態において、本発明のスクリーニング方法は以下の工程を含む:(1)候補物質を入手する工程;ならびに(2)候補デコイを、あらかじめ形成されたHAポリペプチド(および/またはその特徴的部分)−アンブレラ−トポロジーグリカン複合体と接触させる工程;ならびに(3)候補物質が、HAポリペプチド(および/またはその特徴的部分)−アンブレラ−トポロジーグリカン複合体に影響を与えるか否かを決定する工程。
ある実施形態において、本発明のスクリーニング方法は以下の工程を含む:(1)候補物質を入手する工程;(2)候補デコイを、HAポリペプチド(および/またはその特徴的部分)およびHAポリペプチドに特異的に結合することが知られているアンブレラ−トポロジーグリカンと接触させる工程;ならびに(3)候補デコイが、HAポリペプチド(および/またはその特徴的部分)と既知のアンブレラ−トポロジーグリカンとの間の結合相互作用と競合し得るか否かを検出する工程。
ある実施形態において、HAポリペプチド、およびHAポリペプチドに特異的に結合することが知られているアンブレラ−トポロジーグリカンへの候補デコイの投与が、HAポリペプチドと既知のアンブレラ−トポロジーグリカンの間の結合の減少を生じる場合に、候補デコイはアンブレラ−トポロジーグリカンデコイであると決定される。ある実施形態において、HAポリペプチド、およびHAポリペプチドに特異的に結合することが知られているアンブレラ−トポロジーグリカンへの候補デコイの投与が、HAポリペプチドと既知のアンブレラ−トポロジーグリカンの間の結合の少なくとも2倍の減少を生じる場合に、候補デコイはアンブレラ−トポロジーグリカンデコイであると決定される。ある実施形態において、HAポリペプチド、およびHAポリペプチドに特異的に結合することが知られているアンブレラ−トポロジーグリカンへの候補デコイの投与が、HAポリペプチドと既知のアンブレラ−トポロジーグリカンの間の結合の少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも200倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍、少なくとも10,000倍、または10,000倍より多くの減少を生じる場合に、候補デコイはアンブレラ−トポロジーグリカンデコイであると決定される。ある実施形態において、HAポリペプチド、およびHAポリペプチドに特異的に結合することが知られているアンブレラ−トポロジーグリカンへの候補デコイの投与が、HAポリペプチドと既知のアンブレラ−トポロジーグリカンの間の結合の少なくとも25%、50%、75%、100%、200%、500%、1000%、または1000%より多くの減少を生じる場合に、候補デコイはHAポリペプチドであると決定される。
ある実施形態において、本発明は、候補デコイが細胞(例えば、HAポリペプチドを発現するか、またはHAポリペプチドに結合している細胞)と接触される、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイについてスクリーニングするための方法を提供する。次いで、細胞は、HAポリペプチドが1種以上の候補アンブレラ−トポロジーグリカンデコイと相互作用する能力についてアッセイすることができる。
特定の実施形態において、細胞は、HAポリペプチドと候補デコイの間の結合について直接的にアッセイされ得る。免疫組織化学技術、共焦点技術、および/または結合を評価するための他の技術が当業者に公知である。この目的のために具体的に操作される細胞を含む、種々の細胞系統がこのようなスクリーニングアッセイのために利用され得る。スクリーニングアッセイにおいて使用される細胞の例には、哺乳動物細胞、真菌細胞、細菌細胞、またはウイルス細胞が含まれる。細胞は、成長因子で刺激された細胞などの刺激された細胞であり得る。当業者は、HAポリペプチドが候補デコイに結合する能力を測定するために、本明細書に開示される発明が広範な種々のインサイトアッセイを意図していることを理解している。
アッセイに依存して、細胞および/または組織の培養が必要とされ得る。細胞は多数の異なる生理学的アッセイのいずれかを使用して試験されてもよい。代替的にまたは加えて、分子分析が実施されてもよく、これには、タンパク質発現をモニターするためおよび/またはタンパク質−タンパク質相互作用を試験するためのウェスタンブロッティング;他の化学修飾をモニターするための質量分析法などが含まれるがこれらに限定されない。
本発明は、HAに結合し、それゆえに、インフルエンザ感染に関与している可能性がある物質を同定するための方法を提供する。HAポリペプチドに結合する物質を同定する1つのインサイト方法は、ツーハイブリッド系アッセイである(Fieldsら、1994,Trends in Genetics,10:286;およびColasら、1998,TIBTECH,16:355;これらの両方は参照により本明細書に援用される)。このアッセイにおいて、酵母細胞は、本発明に従う試験物質(例えば、HAポリペプチド、HAポリペプチドをコードする遺伝子、および/またはその特徴的部分)ならびにGal4および/またはLexAなどの転写因子のDNA結合ドメインを含む第1の融合タンパク質を発現する。細胞はさらにレポーター遺伝子を含み、そのプロモーターは、対応するDNA結合ドメインの結合部位を含む。活性化ドメイン(例えば、Gal4および/または単純ヘルペスウイルス VP16由来)に融合された候補デコイを含む第2の融合タンパク質を発現するベクターで細胞を形質転換することによって、候補デコイがHAポリペプチドと相互作用する場合には、レポーター遺伝子の発現は増加され得る。このようにして、新規なグリカンデコイを迅速に同定することが可能である。
本発明は、固相に結合したHAポリペプチドを含めること、および1種以上の候補デコイとのそれらの相互作用を検出することを含むアッセイを提供する。従って、HAポリペプチドは、放射活性標識、蛍光標識、および/または発光標識などの検出可能なマーカーを含み得る。さらに、候補デコイは、間接的な検出を可能にする物質と共益させることができる(例えば、発色物質を使用する酵素を利用することによる、および/または検出可能な抗体を結合することによる)。候補デコイとの相互作用の結果としてのHAポリペプチドのコンホメーションの変化は、例えば、検出可能なマーカーの発光の変化によって検出され得る。代替的にまたは加えて、固相結合タンパク質複合体は、質量分析法によって分析され得る。
ある実施形態において、本明細書に記載される任意の結合アッセイが、さまざまな濃度のHAポリペプチドおよび/または候補デコイを使用して実施され得る。ある実施形態において、本明細書に記載される結合アッセイは、候補デコイおよび既知のアンブレラ−トポロジーグリカンの濃度範囲にわたって、候補デコイが既知のアンブレラ−トポロジーグリカンと競合する能力を評価するために使用される(例えば、候補デコイ:既知のアンブレラ−トポロジーグリカン比率は、約1:1000未満、約1:1000、約1:100、約1:50、約1:20、約1:10、約1:5、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約5:1、約10:1、約20:1、約50:1、約100:1、約1000:1、および/または約1000:1より大きな値)。ある実施形態において、本明細書に記載される結合アッセイは、HAポリペプチドの濃度範囲(例えば、約100μg/mlより高濃度、約100μg/ml、約50μg/ml、約40μg/ml、約30μg/ml、約20μg/ml、約10μg/ml、約50μg/ml、約4μg/ml、約3μg/ml、約2μg/ml、約1.75μg/ml、約1.5μg/ml、約1.25μg/ml、約1.0μg/ml、約0.9μg/ml、約0.8μg/ml、約0.7μg/ml、約0.6μg/ml、約0.5μg/ml、約0.4μg/ml、約0.3μg/ml、約0.2μg/ml、約0.1μg/ml、約0.05μg/ml、約0.01μg/ml、および/または約0.01μg/ml未満)にわたって、候補デコイが既知のアンブレラ−トポロジーグリカンと競合する能力を評価するために使用される。
ある実施形態において、本明細書に記載される任意の結合研究は、高スループット様式で実施できる。高スループットアッセイを使用して、1日で数千個までの候補デコイをスクリーニングすることが可能である。ある実施形態において、マイクロタイタープレートの各ウェルは、選択した候補デコイに対して別々のアッセイを実行するために使用でき、または、濃度および/またはインキュベーション時間が観察されるべきである場合、すべての5〜10ウェルが単一の候補デコイを試験できる。従って、単一の標準マイクロタイタープレートは、96種までの候補デコイをアッセイできる;もし1536ウェルプレートが使用されるならば、単一のプレートは1536種までの候補デコイをアッセイできる;等々である。1日あたり多くのプレートをアッセイすることが可能であり;アッセイは、約6,000、約20,000、約50,000、または約100,000を超える異なる候補デコイまでのアッセイスクリーニングが、本発明に従う高スループットシステムを使用して可能である。
グリカンアレイ
既知の特異的グリカン−グリカン結合タンパク質(GBP)相互作用の現在の知見を迅速に拡張するために、国際協同研究イニシアチブである機能的グリコミクスのコンソーシアム(Consortium for Functional Glycomics)(CFG;www.functionalglycomics.org)が、新規なグリカンリガンド特異性のためにGBPの高スループットスクリーニングを可能にしたいくつかのグリカン構造を含むグリカンアレイを開発した。グリカンアレイは、一価と多価の両方のグリカンモチーフを含み(すなわち、ポリアクリルアミドバックボーンに結合され)、各アレイは、低濃度(10μM)および高濃度(100μM)の264グリカンを含み、各濃度について6個のスポットである(http://www.functionalglycomics.org/static/consortium/resources/resourcecoreh5.shtmlを参照のこと)。
グリカンアレイは、N連結およびO連結のグリカンの生理学的な多様性を捕捉する合成グリカンを優先的に含む。合成グリカンに加えて、異なる哺乳動物糖タンパク質に由来するN連結グリカン混液もまた、アレイ上に提示され得る。
本明細書で使用される場合、グリカン「アレイ」とは、任意に固体支持体上に固定化されている1つ以上のグリカンのセットをいう。ある実施形態において、「アレイ」は、空間中で物理的に分離されている2つ以上の位置における組織化された配置またはパターンとして存在するグリカンのコレクションである。典型的には、グリカンアレイは、少なくとも4個、8個、16個、24個、48個、96個、または数百個、または数千個の別個の位置を有する。一般的に、グリカンアレイは、種々の形式のいずれかを有し得る。生体分子に適用可能である種々の異なるアレイ形式は、当該分野において公知である。例えば、膨大な数のタンパク質アレイおよび/または核酸アレイが周知である。当業者は、本発明のグリカンアレイのために適切である標準アレイ形式を直ちに理解する。
ある実施形態において、グリカンアレイは「マイクロアレイ」形式で存在する。マイクロアレイは、典型的には、50μm〜200μmまたはそれ以下で分けられたサンプル位置であり、かつナノからマイクロモル濃度の範囲、またはナノからピコグラムの範囲の固定化サンプルを有し得る。当該分野において公知であるアレイ形式には、例えば、各別個のサンプル位置が、例えば、10μmのスケールを有するものが含まれる。
ある実施形態において、グリカンアレイは、支持体上に空間的に固定化された複数のグリカンを含む。本明細書で使用される場合、「支持体」とは、グリカン分子を整列させるために使用することが適切である任意の材料をいう。当業者によって理解されるように、任意の広範な種々の材料が利用されてもよい。ごく少数の例を挙げると、本発明において有用であり得る支持体材料には、疎水性メンブレン、例えば、ニトロセルロース、PVDF、またはナイロンメンブレンが含まれる。このようなメンブレンは当該分野において周知であり、例えば、Bio−Rad,Hemel Hempstead,UKから入手することができる。
ある実施形態において、グリカンがその上で整列される支持体は金属酸化物を含んでもよい。適切な金属酸化物には、酸化チタン、酸化タンタル、および酸化アルミニウムが含まれるがこれらに限定されない。このような材料の例は、Sigma−Aldrich Company Ltd,Fancy Road,Poole,Dorset.BH12 4QH UKから入手されてもよい。
ある実施形態において、このような支持体は、金属酸化物ゲルであるか、または金属酸化物ゲルを含む。金属酸化物ゲルは、所定の肉眼的領域内に大きな表面積を提供して、炭水化物含有分子の固定化を補助すると見なされている。
加えてまたは代替的に、本発明に従って使用され得る支持体材料には、ゲル、例えば、シリカゲルまたは酸化アルミニウムゲルが含まれる。このような材料の例は、例えば、Merck KGaA,Darmstadt,Germanyから入手されてもよい。
ある実施形態において、グリカンアレイは、通常の使用の間に、サイズおよび形状の変化に耐え得る支持体上に固定化される。例えば、支持体は、使用されてグリカンを整列させるために適切である成分材料でコートされたガラススライドであり得る。ある複合材料もまた、支持体に強固さを望ましく提供することができる。
本明細書で実証されるように、グリカンアレイは、HA−受容体相互作用および/またはHA−受容体相互作用に影響を与える因子(例えば、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイ)の特徴付けのために有用である。特定の実施形態において、HAポリペプチドは、アンブレラ−トポロジーグリカン(例えば、α2−6シアル化グリカン、および特に、アンブレラ−トポロジーで配列された長いα2−6シアル化グリカン)に結合し、および/またはアンブレラ−トポロジーグリカンデコイと相互作用するそれらの能力を評価するために、このようなアレイ上で試験される。
確かに、本発明は、HAポリペプチド結合相互作用を特徴付けるため、および/またはアンブレラ−トポロジーグリカンデコイを特徴付けるために使用できる、α2−6シアル化グリカン、および任意にα2−3シアル化グリカンのアレイを提供する。ある実施形態において、アレイは、アンブレラ−トポロジーにあるグリカン(例えば、α2−6シアル化グリカン、および特に、長いα2−6シアル化グリカン)を含む。当業者にとっては明確であるように、このようなアレイは、任意のHAポリペプチドとの相互作用を特徴付けまたは検出するために有用であり、このHAポリペプチドには、例えば、研究者によって設計および/または調製されたものに加えて、天然のインフルエンザ単離物において見い出されるものが含まれる。
ある実施形態において、このようなアレイは、ヒトHA受容体上で、特に、ヒト上気道HA受容体上で見い出されるグリカン(例えば、アンブレラ−トポロジーグリカン、これは、しばしば、α2−6シアル化グリカン、特に、長いα2−6シアル化グリカンである)の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、またはそれ以上に代表的なものである。ある実施形態において、アレイは、図9および13に描かれたグリカン構造のいくつかまたはすべてを含む。ある実施形態において、アレイは、これらの描かれたグリカンの少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、またはそれ以上を含む。
本発明は、グリカンアレイを使用して、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイを同定または特徴付けするための方法を提供する。ある実施形態において、例えば、このような方法は、(1)少なくとも1種のHAポリペプチドを含むサンプルを提供する工程、(2)候補アンブレラ−トポロジーグリカンデコイを含むグリカンアレイと、サンプルを接触させる工程、および(3)アレイ上の1種以上の候補デコイへのHAポリペプチドの結合を検出する工程を含む。
ある実施形態において、例えば、本発明は、以下の工程を包含する、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイを同定または特徴付けするための方法を提供する:(1)各々が少なくとも1種のHAポリペプチドの異なる希釈を含む複数のサンプルを提供する工程、(2)候補アンブレラ−トポロジーグリカンデコイを含むグリカンアレイと、複数のサンプルを接触させる工程、および(3)アレイ上の1種以上の候補デコイへの異なる希釈のHAポリペプチドの結合を検出する工程。
ある実施形態において、例えば、本発明は、以下の工程を包含する、グリカンアレイを使用して、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイを同定または特徴付けするための方法を提供する:(1)少なくとも1種のHAポリペプチドを含むサンプルを提供する工程、(2)少なくとも1種の候補アンブレラ−トポロジーグリカンデコイの複数の希釈を含むグリカンアレイと、サンプルを接触させる工程、および(3)アレイ上の1種以上の複数の候補デコイの希釈へのHAポリペプチドの結合を検出する工程。
ある実施形態において、例えば、本発明は、以下の工程を包含する、グリカンアレイを使用して、アンブレラ−トポロジーグリカンデコイを同定または特徴付けするための方法を提供する:(1)各々が少なくとも1種のHAポリペプチドの異なる希釈を含む、複数のサンプルを提供する工程、(2)少なくとも1種の候補アンブレラ−トポロジーグリカンデコイの複数の希釈を含むグリカンアレイと、複数のサンプルを接触させる工程、および(3)アレイ上の1種以上の複数の候補デコイの希釈への、異なる希釈のHAポリペプチドの結合を検出する工程。
ある実施形態において、上記のような方法は、候補デコイおよび既知のアンブレラ−トポロジーグリカンの濃度範囲にわたって、候補デコイが既知のアンブレラ−トポロジーグリカンと競合する能力を評価するために使用される(例えば、候補デコイ:既知のアンブレラ−トポロジーグリカン比率は、約1:1000未満、約1:1000、約1:100、約1:50、約1:20、約1:10、約1:5、約1:3、約1:2、約1:1、約2:1、約3:1、約5:1、約10:1、約20:1、約50:1、約100:1、約1000:1、および/または約1000:1より大きな値)。ある実施形態において、上記のような方法は、HAポリペプチドの濃度範囲(例えば、約100μg/mlより高濃度、約100μg/ml、約50μg/ml、約40μg/ml、約30μg/ml、約20μg/ml、約10μg/ml、約50μg/ml、約4μg/ml、約3μg/ml、約2μg/ml、約1.75μg/ml、約1.5μg/ml、約1.25μg/ml、約1.0μg/ml、約0.9μg/ml、約0.8μg/ml、約0.7μg/ml、約0.6μg/ml、約0.5μg/ml、約0.4μg/ml、約0.3μg/ml、約0.2μg/ml、約0.1μg/ml、約0.05μg/ml、約0.01μg/ml、および/または約0.01μg/ml未満)にわたって、候補デコイが既知のアンブレラ−トポロジーグリカンと競合する能力を評価するために使用される。
本発明に従うグリカンアレイと接触されるHAポリペプチドを含むサンプルの適切な供給源には、病理学的サンプル、例えば、血液、血清/血漿、末梢血単核細胞/末梢血リンパ球(PBMC/PBL)、痰、尿、糞便、咽頭スワブ、真皮病変スワブ、脳脊髄液、子宮頸部スミア、膿サンプル、食品マトリックス、ならびに身体の種々の部分からの組織、例えば、脳、脾臓、および肝臓が含まれるがこれらに限定されない。代替的にまたは加えて、HAポリペプチドを含むサンプルの他の適切な供給源には、土壌、水、およびフローラなどの環境サンプルが含まれるがこれらに限定されない。さらに他のサンプルには、実験室サンプル、例えば、研究者によって設計および/または調製された操作されたHAポリペプチドのサンプルが含まれる。列挙されていない他のサンプルもまた適用され得る。
グリカンアレイ結合するHAポリペプチドをアッセイするために適切な広範な種々の検出系が当該分野において公知である。例えば、HAポリペプチドは、アレイと接触させる前またはその後に検出可能に標識可能であり(直接的または間接的に);次いで、結合は、局在化した標識の検出により検出可能である。ある実施形態において、スキャン装置は、アレイ上の特定の位置を調べるために利用可能である。
代替的にまたは加えて、整列したグリカンへの結合は、例えば、比色分析(calorimetric)、蛍光、もしくは放射能の検出系、または他の標識方法、または標識を必要としない他の方法を使用して測定可能である。一般的に、蛍光検出は、典型的には、蛍光分子でアレイを直接にプロービングすること、および蛍光シグナルをモニターすることを含む。代替的にまたは加えて、アレイは、間接的な蛍光検出のために(この場合は、蛍光標識されたストレプトアビジンの結合について試験することによって)タグ化された(例えば、ビオチンで)分子を用いてプロービング可能である。代替的にまたは加えて、整列されたグリカンが蛍光標識され、試験分子がプロービングされる蛍光クエンチング法が利用可能である(これは、異なる蛍光団で標識されてもよく、標識されなくてもよい)。このような実施形態において、アレイへの結合は、整列されたグリカンから発光される蛍光を抑圧するように作用し、それゆえに、結合は蛍光発光の損失によって検出される。代替的にまたは加えて、整列されるグリカンは、放射活性物質の存在下で増殖した生組織サンプルでプロービング可能であり、放射活性標識したプローブを生じる。このような実施形態における結合は、放射活性発光を測定することによって検出可能である。
このような方法は、HAポリペプチドによるグリカンアレイへの結合の事実および/または結合の程度を決定するために有用である。本発明のある実施形態において、このような方法は、グリカン−HAポリペプチド相互作用に干渉するか、さもなくば変化させる因子を同定および/または特徴付けするためにさらに使用可能である。
以下に記載される方法は、例えば、HAポリペプチドと相互作用可能であると考えられているグリカン(例えば、推定のアンブレラ−トポロジーグリカンデコイ)が実際にそうすることができるかを同定する際に、またはデコイが予想に反してHAポリペプチドとの相互作用する能力を有するか否かを同定するために、特定の用途があり得る。
ある実施形態において、グリカンアレイへの結合は、例えば、HAポリペプチドとグリカンの間の相互作用の反応速度論を決定するために利用され得る。例えば、相互作用の反応速度論を決定するための方法は、(1)試験されるHAポリペプチドとグリカンアレイを接触させる工程;および(2)HAポリペプチドと整列されたグリカンの間の相互作用の反応速度論を測定する工程を含み得る。
アレイにおける任意のグリカンとの結合因子の相互作用の反応速度論は、上記に詳述されるように、例えば、比色分析または蛍光のシグナルのリアルタイム変化によって測定可能である。このような方法は、例えば、特定の結合因子が、同じグリカンおよび/またはグリカンのセットと相互作用する異なる結合因子よりも、高度な結合で特定の炭水化物を相互作用可能であるか否かを決定する際に、特定の用途があり得る。
当然、HAポリペプチドによるグリカン結合は、アレイ形式それ自体の中には存在しない、グリカンのサンプルまたは供給源に対して評価できることが理解される。例えば、HAポリペプチドは、それらのグリカン結合特性を評価するために、組織サンプルおよび/または細胞系統に結合可能である。適切な細胞系統には、例えば、種々の哺乳動物細胞系統のいずれか、特に、アンブレラ−トポロジーグリカン(例えば、その少なくともいくつかはα2−6シアル化グリカン、および特に、長いα2−6シアル化グリカンであり得る)を含むHA受容体を発現するものが含まれる。ある実施形態において、利用される細胞系統は、アンブレラ−トポロジーを有する個々のグリカンを発現する。ある実施形態において、利用される細胞系統は多様なグリカンを発現する。ある実施形態において、細胞系統は臨床的単離物から得られる;ある実施形態において、これらは、所望のグリカン部分および/または有病率を有するように維持または操作されている。ある実施形態において、組織サンプルおよび/または細胞系統は、哺乳動物上気道上皮細胞に特徴的なグリカンを発現する。
薬学的組成物
本発明は、インフルエンザ感染の処置において使用されるアンブレラ−トポロジーグリカンデコイを提供する。ある実施形態において、本発明は、グリカンデコイおよび少なくとも1種の薬学的に受容可能な賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。本発明は、インフルエンザ感染に罹患しているか、および/またはそれに感受性がある被験体への投与のために適切に製剤化された、治療有効量の本発明のグリカンデコイを含む薬学的組成物を提供する。このような薬学的組成物は、1種以上のさらなる治療活性物質を任意に含み得る。
いくつかの実施形態に従って、インフルエンザ感染を処置する方法が提供される。ある実施形態において、本発明の方法は、本発明の少なくとも1種のグリカンデコイを含む薬学的組成物を、その必要がある被験体に投与する工程を含む。本発明のグリカンデコイは、インフルエンザ感染の徴候を処置するために使用される他の医薬とともに投与されてもよい。ある実施形態において、この組成物はヒトに投与される。
ある実施形態において、本発明の薬学的組成物は、複数の個々のアンブレラ−トポロジーグリカン模倣物を含む。ある実施形態において、このような個々のアンブレラ−トポロジーグリカン模倣物はこれらに対応する比率で提供され、ここでは、このようなアンブレラ−トポロジーグリカンが本来はHA受容体上で、および特にヒト呼吸管(例えば、ヒト上気道)で見い出される。例えば、ヒト気管支上皮細胞は、典型的には、図12および13に図示されたようなグリカン分布を示し;ある実施形態において、本発明のグリカンデコイ組成物は、このような分布に対して適切な比率である個々のグリカン模倣物を含む。ある実施形態において、この組成物はアンブレラ−トポロジーグリカンで富化され、例えば、組成物中のアンブレラ−トポロジーグリカン:コーントポロジーグリカンの比率は、ヒト呼吸管(例えば、ヒト上気道)において見い出されるものよりも大きい。ある実施形態において、アンブレラ−トポロジーグリカンは、組成物中のグリカンの少なくとも50、60、70、80、90、95または99%(数または重量)である。
ある実施形態において、本発明の薬学的組成物は、アンブレラ−トポロジーグリカン以外のグリカンを模倣する因子を実質的に含まない。例えば、ある実施形態において、本発明の薬学的組成物は、コーン−トポロジーグリカンを模倣する因子を実質的に含まない。
本発明は、インフルエンザ感染の処置のために活性成分として少なくとも1種のグリカンを含む薬学的組成物の調製および/または使用を包含する。このような薬学的組成物は、被験体への投与のために適切な型で、活性成分単独からなってもよく、または薬学的組成物は活性成分、ならびに1種以上の薬学的に受容可能な賦形剤、1種以上のさらなる成分、および/もしくはこれらの組み合わせを含んでもよい。活性成分は、当該分野において周知であるように、例えば、生理学的に受容可能であるカチオンおよび/またはアニオンと組み合わせた、生理学的に受容可能なエステルおよび/または塩の型である薬学的組成物中に存在し得る。
本明細書に提供される薬学的組成物の説明は、主として、ヒトへの投与のために適切である薬学的組成物に向けられているが、このような組成物は、一般的に、すべての種類の動物への投与のために適切であることが当業者によって理解される。組成物を種々の動物への投与のために適切にするために、ヒトへの投与のために適切である薬学的組成物の改変は十分に理解されており、通常の技能を有する獣医学薬理学者は、もしあれば、単なる通常の実験を伴って、このような改変を設計および/または実施できる。本発明の薬学的組成物の投与が意図される患者には以下が含まれるがこれらに限定されない:ヒトおよび他の霊長類;商業的に関連がある哺乳動物を含む哺乳動物、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、および/もしくはイヌ;ならびに/またはニワトリ、アヒル、ガチョウ、および/もしくはシチメンチョウなどの商業的に関連がある鳥類を含む鳥類。
本明細書に記載されるような薬学的組成物は、薬剤学の分野において公知であるかまたは今後開発される任意の方法によって調製され得る。一般的に、このような調製方法は、1種以上の賦形剤、および/または1種以上の他の付属成分と活性成分を一緒にする工程、次いで、必要な場合および/または所望される場合、製品を単回用量または複数用量に成型および/またはパッケージングする工程を含む。
本発明の薬学的組成物は、単回単位用量、および/または複数の単回単位用量として、調製、包装、および/またはバルク販売されてもよい。本明細書で使用される場合、「単位用量」は、所定量の活性成分を含む薬学的組成物の個別の量である。活性成分の量は、一般的に、被験体に投与される活性成分の投薬量、および/またはこのような投薬量の便利な画分、例えば、このような投薬量の半分または3分の1などに等しい。
本発明の薬学的組成物中の活性成分、薬学的に受容可能な賦形剤、および/またはさらなる成分の相対量は、処置される被験体の同一性、サイズ、および/または状態に依存して、さらに、組成物が投与される経路に依存して、変化する。例として、組成物は、0.1%から100%(w/w)までの間の活性成分を含み得る。
本発明の薬学的製剤は、さらに薬学的に受容可能な賦形剤を含み得、これは、本明細書で使用される場合、所望される特定の剤型に適するように、任意のおよびすべての溶媒、分散媒体、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散もしくは懸濁補助剤、表面活性剤、等張剤、濃厚剤もしくは乳化剤、保存料、固体結合剤、潤滑剤などを含む。Remington’s The Science and Practice of Pharmacy,第21版、A.R.Gennaro,(Lippincott、Williams & Wilkins,Baltimore,MD,2006)は、薬学的組成物を製剤化する際に使用される種々の賦形剤およびその調製のための公知の技術を開示している。例えば、所望されない生物学的効果を生じるか、またはさもなくば薬学的組成物の任意の他の成分と有害な様式で相互作用することによって、任意の従来的な賦形剤が、物質またはその誘導体と適合可能でない場合を除き、その使用は、本発明の範囲内にあることが意図される。
ある実施形態において、薬学的に受容可能な賦形剤は、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%純粋である。ある実施形態において、賦形剤は、ヒトにおける使用または獣医学的な使用のために認可されている。ある実施形態において、賦形剤は、米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration)によって認可されている。ある実施形態において、賦形剤は医薬品グレードである。ある実施形態において、賦形剤は、米国薬局方(United States Pharmacopoeia)(USP)、欧州薬局方(European Pharmacopoeia)(EP)、英国薬局方(British Pharmacopoeia)、および/または国際薬局方(International Pharmacopoeia)の基準を満たしている。
薬学的組成物の製造において使用される薬学的に受容可能な賦形剤には以下が含まれるがこれらに限定されない:不活性希釈剤、分散剤および/もしくは造粒剤、表面活性剤および/もしくは乳化剤、崩壊剤、結合剤、保存料、緩衝剤、潤滑剤、ならびに/またはオイル。このような賦形剤は、本発明の製剤中に任意に含まれ得る。ココアバターおよび坐剤ワックス、着色料、コーティング剤、甘味料、香料、および矯味矯臭剤などの賦形剤は、製剤者の判断に従って組成物中に存在することができる。
例示的な希釈剤には以下が含まれるがこれらに限定されない:炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カリウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、ラクトース、スクロース、セルロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、コーンスターチ、粉末砂糖など、およびこれらの組み合わせ。
例示的な造粒剤および/または分散剤には以下が含まれるがこれらに限定されない:ジャガイモデンプン、コーンスターチ、タピオカデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クレイ、アルギン酸、グアーガム、シトラスパルプ、寒天、ベントナイト、セルロースおよび木製品。天然スポンジ、カチオン交換樹脂、炭酸カルシウム、シリケート、炭酸ナトリウム、架橋ポリ(ビニル−ピロリドン)(クロスポピドン)、カルボキシメチルデンプンナトリウム(グリコール酸デンプンナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカメロース)、メチルセルロース、プレゼラチン化デンプン(デンプン1500)、微結晶デンプン、水不溶性デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、アルミニウムシリケートマグネシウム(VEEGUM)、ラウリル硫酸ナトリウム、4級アンモニウム化合物など、およびこれらの組み合わせ。
例示的な表面活性剤および/または乳化剤には以下が含まれるがこれらに限定されない:天然の乳化剤(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、コンドラックス(chondrux)、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、コレステロール、ワックス、およびレシチン)、コロイド性クレイ(例えば、ベントナイト[ケイ酸アルミニウム]およびVEEGUM[ケイ酸アルミニウムマグネシウム])、長鎖アミノ酸誘導体、高分子量アルコール(例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、トリアセチンモノステアレート、エチレングリコールジステアレート、グリセリルモノステアレート、およびプロピレングリコールモノステアレート、ポリビニルアルコール)、カルボマー(例えば、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸ポリマー、およびカルボキシビニルポリマー)、カラゲナン、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末化セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート[TWEEN(登録商標)20]、ポリオキシエチレンソルビタン[TWEEN(登録商標)60]、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート[TWEEN(登録商標)80]、ソルビタンモノパルミテート[SPAN(登録商標)40]、ソルビタンモノステアレート[SPAN(登録商標)60]、ソルビタントリステアレート[SPAN(登録商標)65]、グリセリルモノオレエート、ソルビタンモノオレエート[SPAN(登録商標)80])、ポリオキシエチレンエステル(例えば、ポリオキシエチレンモノステアレート[MYRJ(登録商標)45]、ポリオキシエチレン水素添加ヒマシ油、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリオキシメチレンステアレート、およびSOLUTOL)、スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、CREMOPHOR)、ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル[BRIJ(登録商標)30])、ポリ(ビニル−ピロリドン)、ジエチレングリコールモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチル、オレイン酸、ラウリン酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、PLURONIC(登録商標)F 68、POLOXAMER 188、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ドクサートナトリウムなど、および/またはこれらの組み合わせ。
例示的な結合剤には以下が含まれるがこれらに限定されない:デンプン(例えば、コーンスターチおよびデンプン糊);ゼラチン;糖(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、糖蜜、ラクトース、ラクチトール、マンニトール);天然および合成ゴム(例えば、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アイリッシュモスの抽出物、パンワールゴム(panwar gum)、ガッチゴム(ghatti gum)、イサポール・ハスク(isapol husk)の粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース、酢酸セルロース、ポリ(ビニルピロリドン)、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(VEEGUM)、およびカラマツアラボガラクタン(larch arabogalactan));アルギン酸;ポリエチレンオキサイド;ポリエチレングリコール;無機カルシウム塩;ケイ酸;ポリメタクリレート;ワックス;水;アルコールなど;およびこれらの組み合わせ。
例示的な保存料としては、抗酸化剤、キレート剤、抗微生物性保存料、抗真菌性保存料、アルコール保存料、酸性保存料、および他の保存料が挙げられ得る。例示的な抗酸化剤としては、αトコフェロール、アスコルビン酸、アコルビルパルミテート(acorbyl palmitate)、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、および亜硫酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。例示的なキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸一水和物、エデト酸二ナトリウム、エデト酸二カリウム、エデト酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、エデト酸ナトリウム、酒石酸、およびエデト酸三ナトリウムが挙げられる。例示的な抗微生物性保存料としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリマイド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、およびチメロサールが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な抗真菌性保存料としては、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、およびソルビン酸が挙げられるが、これらに限定されない。例示的なアルコール保存料としては、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシベンゾエート、およびフェニルエチルアルコールが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な酸性保存料としては、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、βカロチン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、およびフィチン酸が挙げられるが、これらに限定されない。他の保存料としては、トコフェロール、酢酸トコフェロール、デテロキシムメシレート(deteroxime mesylate)、セトリマイド、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、GLYDANT PLUS(登録商標)、PHENONIP(登録商標)、メチルパラベン、GERMALL(登録商標)115、GERMABEN(登録商標)II、NEOLONETM、KATHON、およびEUXYLが挙げられるが、これらに限定されない。ある実施形態において、保存料は抗酸化剤である。他の実施形態において、保存料はキレート剤である。
例示的な緩衝剤としては、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D−グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、第二リン酸カルシウム、リン酸、第三リン酸カルシウム、カルシウムヒドロキサイドホスフェート、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、第二リン酸カリウム、第一リン酸カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、パイロジェンフリー水(pyrogen−free water)、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコールなど、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
例示的な滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、麦芽、グリセリルベハネート(glyceryl behanate)、硬化植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムなど、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
例示的な油としては、アーモンド油、杏仁油、アボカド油、ババス油、ベルガモット油、クロフサスグリ種子油、ルリヂサ油、カデ油、カモミール油、キャノーラ油、キャラウェー油、カルナウバ油、ヒマシ油、桂皮油、ココアバター、ココナッツ油、タラ肝油、コーヒー油、コーン油、綿実油、エミュー油、ユーカリ油、月見草油、魚油、アマニ油、ゲラニオール油、ヒョウタン油、ブドウ種子油、ヘーゼルナッツ油、ヒソップ油、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ油、ククイナッツ油、ラバンジン油、ラベンダー油、レモン油、リツェアクベバ油、マカダミアナッツ油、アオイ油、マンゴー種子油、メドウフォーム種子油、ミンク油、ナツメグ油、オリーブ油、オレンジ油、オレンジラフィー油、パーム油、パーム核油、桃仁油、ピーナッツ油、ケシ種子油、カボチャ種子油、菜種油、米糠油、ローズマリー油、ベニバナ油、ビャクダン油、サザンカ油、サボリー油、シーバックソーン油、ゴマ油、シアバター、シリコーン油、大豆油、ヒマワリ油、ティーツリー油、アザミ油、ツバキ油、ベチバル油、クルミ油、および小麦胚芽油が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な油としては、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコーン、セバシン酸ジエチル、ジメチコーン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーンオイル、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
経口および非経口投与のための液体剤型としては、薬学的に受容可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤、およびエリキシル剤が挙げられるが、これらに限定されない。活性成分に加えて、液体剤型は、当該分野において一般的に使用される不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、およびこれらの組み合わせを含み得る。不活性希釈剤に加えて、経口組成物は、アジュバント、例えば、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、矯味矯臭剤、および香料を含み得る。非経口投与のための特定の実施形態において、活性成分は、可溶化剤、例えば、CREMOPHOR、アルコール、油、変性油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマーおよびこれらの組み合わせと混合される。
注射用調製物、例えば、滅菌注射用水性または油性懸濁剤は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、公知の技術に従って、製剤化されてもよい。滅菌注射用調製物は、非毒性の非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒中の、滅菌注射用溶液、懸濁液またはエマルジョン(例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液)であり得る。使用され得る受容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液、U.S.P.、および塩化ナトリウム等張液がある。さらに、滅菌固定油が、溶媒または懸濁化媒体として通常使用されている。この目的のために、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の滅菌固定油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸が、注射剤の調製において使用される。
注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターによる濾過によって、または、使用前に滅菌剤を、滅菌水または他の滅菌注射用媒体中に溶解または分散され得る滅菌固体組成物の形態に取り込むことによって、滅菌され得る。
薬物の効果を延長するために、皮下注射または筋内注射からの薬物の吸収を遅延させることがしばしば望ましい。これは、水溶性が乏しい結晶性材料またはアモルファス材料の液体懸濁液の使用によって達成され得る。次いで、薬物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、これは次には、結晶サイズおよび結晶形態に依存する可能性がある。あるいは、非経口投与される薬物形態の吸収の遅延は、油ビヒクル中に薬物を溶解または懸濁することによって達成される。
直腸投与または膣投与のための組成物は、典型的には、本発明の活性成分を、好適な非刺激性賦形剤、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤ワックスとを混合することによって調製され得る坐剤であり、これらの賦形剤は、周囲温度で固体であるが体温では液体であり、従って、直腸腔および膣腔において融解して活性成分を放出する。
経口投与のための固体剤型としては、カプセル剤、錠剤、丸剤、粉剤、および顆粒剤が挙げられる。このような固体剤型において、活性成分は、以下と混合される:少なくとも1種の不活性な薬学的に受容可能な賦形剤、例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、および/または(a)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸、(b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン(polyvinylpyrrolidinone)、スクロース、およびアカシアなど、(c)保湿剤、例えば、グリセロール、(d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、および炭酸ナトリウム、(e)溶液遅延剤(solution retarding agent)、例えば、パラフィン、(f)吸収促進剤、例えば、第4級アンモニウム化合物、(g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレートなど、(h)吸着剤、例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ、ならびに/あるいは(i)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、剤型は緩衝剤を含み得る。
同様の型の固体組成物が、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用する軟質および硬質ゼラチンカプセル剤において充填剤として利用され得る。錠剤、糖剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固体剤型は、コーティングおよびシェル、例えば、腸溶コーティングおよび製剤分野において周知である他のコーティングを用いて調製され得る。これらは、任意で乳白剤を含有してもよく、かつそれらが腸管の特定の部分においてのみまたはそこにおいて優先的に、任意に、遅延様式で、活性成分を放出する組成のものであり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、高分子物質およびワックスが挙げられる。同様のタイプの固体組成物が、ラクトースまたは乳糖ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用する軟質および硬質ゼラチンカプセル剤において充填剤として使用され得る。
活性成分は、上述のような1種以上の賦形剤を用いるマイクロカプセル化型であり得る。錠剤、糖剤、カプセル剤、丸剤および顆粒剤の固体剤型は、コーティングおよびシェル、例えば腸溶コーティング、放出制御コーティング、および製剤分野において周知である他のコーティングを用いて調製され得る。このような固体剤型において、活性成分は、少なくとも1種の不活性希釈剤、例えば、スクロース、ラクトース、またはデンプンと混合され得る。このような剤型は、通常の実務であるように、不活性希釈剤以外のさらなる物質、例えば、錠剤滑沢剤および他の錠剤助剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロースを含み得る。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合、剤型は緩衝剤を含み得る。これらは、任意で乳白剤を含有してもよく、かつそれらが腸管の特定の部分においてのみまたはそこにおいて優先的に、任意に、遅延様式で、活性成分を放出する組成のものであり得る。使用され得る包埋組成物の例としては、高分子物質およびワックスが挙げられる。
本発明の組成物の局所投与および/または経皮投与のための剤型は、軟膏剤、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、散剤、溶液、スプレー、吸入剤、および/またはパッチを含み得る。一般的に、活性成分は、滅菌条件下で、薬学的に受容可能な賦形剤および/または任意の必要とされる保存剤および/または必要とされ得る緩衝剤と混合される。さらに、本発明は、経皮パッチの使用を意図し、これは、身体への活性成分の制御送達を提供するという付加的な利点をしばしば有する。このような剤型は、例えば、適切な媒体に活性成分を溶解および/または分散することによって、調製され得る。代替的にまたは加えて、速度は、速度制御メンブレンを提供することによって、ならびに/またはポリマーマトリクスおよび/もしくはゲルに活性成分を分散することのいずれかによって、制御され得る。
本明細書に記載される皮内用薬学的組成物の送達における使用のために適切なデバイスとしては、短い針のデバイス、例えば、米国特許第4,886,499号;第5,190,521号;第5,328,483号;第5,527,288号;第4,270,537号;第5,015,235号;第5,141,496号;および第5,417,662号に記載されるものが挙げられる。皮内用組成物は、皮膚中への針の有効な貫入長を制限するデバイス、例えば、PCT公開WO 99/34850に記載のもの、およびその機能的な等価物によって投与され得る。液体ジェット式注射器を介して、および/または角質層を貫通しかつ真皮に達するジェットを生じる針を介して、液体ワクチンを真皮へ送達するジェット式注射デバイスが適切である。ジェット式注射デバイスは、例えば、米国特許第5,480,381号;第5,599,302号;第5,334,144号;第5,993,412号;第5,649,912号;第5,569,189号;第5,704,911号;第5,383,851号;第5,893,397号;第5,466,220号;第5,339,163号;第5,312,335号;第5,503,627号;第5,064,413号;第5,520,639号;第4,596,556号;第4,790,824号;第4,941,880号;第4,940,460号;ならびにPCT公開WO 97/37705およびWO 97/13537に記載されている。圧縮ガスを使用して粉末型のワクチンを皮膚の外層を通って真皮まで加速する射撃(ballistic)粉末/粒子送達デバイスが適切である。代替的にまたは加えて、従来的な注射器が、皮内投与の古典的なマントー法(mantoux method)において使用され得る。
局所投与のために適切な製剤には、液体および/または半液体調製物、例えば、リニメント、ローション、水中油型および/または油中水型エマルジョン、例えば、クリーム、軟膏および/またはペースト、および/または液剤、および/または懸濁剤が挙げられるが、これらに限定されない。局所的に投与可能な製剤は、例えば、約1.0%〜約10%(w/w)の活性成分を含み得るが、活性成分の濃度は、溶媒中における活性成分の溶解限界と同程度まで高くてもよい。局所投与のための製剤は、本明細書に記載される1種以上の賦形剤および/またはさらなる成分をさらに含み得る。
本発明の薬学的組成物は、頬側口腔を介しての肺投与のために適切な製剤中で、調製、包装、および/または販売され得る。このような製剤は、活性成分を含みかつ約0.5μm〜約7μm、または約1μm〜約6μmの範囲内にある直径を有する乾燥粒子を含み得る。このような組成物は、好都合に、噴射剤の流れが粉末を分散するように指向され得る乾燥粉末リザーバを備えるデバイスを使用し、ならびに/または、密封容器中の低沸点噴射剤中に溶解および/もしくは懸濁された活性成分を含むデバイスのような自己噴射溶媒/粉末分散容器(self propelling solvent/powder dispensing container)を使用する、投与のための乾燥粉末型である。このような粉末は、重量で少なくとも98%の粒子が0.5μmを超える直径を有し、かつ数で少なくとも95%の粒子が7μm未満の直径を有する、粒子を含む。あるいは、重量で少なくとも95%の粒子が1μmを超える直径を有し、かつ数で少なくとも90%の粒子が6μm未満の直径を有する。乾燥粉末組成物は、糖などの固体微細粉末希釈剤を含み得、好都合には単位剤形で提供される。
低沸点噴射剤は、一般的に、大気圧で65°Fより下の沸点を有する液体噴射剤を含む。一般的に、噴射剤は、組成物の50〜99.9%(w/w)を構成してもよく、活性成分は、組成物の0.1〜20%(w/w)を構成してもよい。噴射剤は、さらに、液体非イオン性界面活性剤および/もしくは固体アニオン性界面活性剤、ならびに/または固体希釈剤(これは、活性成分を含む粒子と同一のオーダーの粒度を有し得る)などのさらなる成分を含み得る。
肺送達のために製剤化された本発明の薬学的組成物は、溶液および/または懸濁液の液滴の型で活性成分を提供し得る。このような製剤は、任意に、滅菌性である、活性成分を含む水性および/もしくは希薄アルコール溶液ならびに/または懸濁液として、調製、包装、および/または販売され得、好都合には、任意の噴霧化および/または微粒化装置を使用して投与され得る。このような製剤は、さらに、サッカリンナトリウムなどの矯味矯臭剤、揮発性油、緩衝剤、界面活性剤、および/またはヒドロキシ安息香酸メチルなどの保存剤を含むがこれらに限定されない、1種以上のさらなる成分を含み得る。この投与の経路によって提供される液滴は、約0.1μm〜約200μmの範囲の平均直径を有し得る。
肺送達のために有用であると本明細書に記載される製剤は、本発明の薬学的組成物の鼻内送達のために有用である。鼻内投与のために適切である別の製剤は、活性成分を含みかつ約0.2μm〜500μmの平均粒子を有する粗い粉末である。このような製剤は、嗅剤が摂取される様式で、すなわち、鼻孔の近くに保持された粉末の容器から鼻腔を通る迅速な吸入によって、投与される。
経鼻投与のために適切である製剤は、例えば、0.1%(w/w)程度の少ない量〜100%(w/w)程度の多い量までの活性成分を含み得、かつ本明細書に記載される1種以上の賦形剤および/またはさらなる成分を含み得る。本発明の薬学的組成物は、頬側投与のために適切な製剤中で、調製、包装、および/または販売され得る。このような製剤は、例えば、従来の方法を使用して作製される錠剤および/またはロゼンジの型であり得、かつ、例えば、0.1〜20%(w/w)の活性成分を含み得、残りは、口腔内で溶解可能なおよび/または分解可能な組成物、および、任意で、本明細書に記載される1種以上の賦形剤および/またはさらなる成分を含む。あるいは、頬側投与に好適な製剤は、活性成分を含む粉末、ならびに/またはエアロゾル溶液および/もしくは噴霧溶液および/もしくは懸濁液を含み得る。このような粉末製剤、エアロゾル製剤、および/またはエアロゾル製剤は、分散されると、約0.1μm〜約200μmの範囲の平均粒子および/または液滴サイズを有し得、かつさらに本明細書に記載される1種以上の賦形剤および/またはさらなる成分を含み得る。
本発明の薬学的組成物は、点眼投与のために適切である製剤中で、調製、包装、および/または販売され得る。このような製剤は、例えば、水性または油性液体賦形剤中の活性成分の0.1/1.0%(w/w)溶液および/または懸濁液を含む、例えば、点眼剤の型形態であり得る。このような点眼剤は、さらに、本明細書に記載される緩衝剤、塩、および/または1種以上の賦形剤および/またはさらなる成分を含み得る。他の有用である眼科的投与可能な製剤としては、微結晶型および/またはリポソーム調製物で活性成分を含むものが挙げられる。点耳剤および/または点眼剤は、本発明の範囲内にあることが意図される。
医薬品の製剤化および/または製造における一般的な考慮すべき事項は、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 第21版、Lippincott Williams & Wilkins,2005(参照としてここに援用される)において見出すことができる。
インフルエンザ感染を処置するための方法
本発明は、インフルエンザ感染を処置する方法を提供する。特定の実施形態において、このような方法は、1種以上の本発明のアンブレラ−トポロジーグリカンデコイをその必要がある被験体に投与する工程を包含する。ある実施形態において、グリカンデコイは、HA(例えば、インフルエンザウイルスの表面上に発現されたHA)がアンブレラ−トポロジーグリカン(例えば、ヒト上気道上皮組織、例えば、気管および気管支)に結合する能力を阻害する。
ある実施形態において、本発明は、少なくとも1種のグリカンデコイおよび少なくとも1種の薬学的に受容可能な賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。他の局面において、グリカンデコイを含む薬学的組成物は、細胞、例えば、インフルエンザ感染に罹患しているか、および/またはそれに対して感受性である患者における細胞に投与される。ある実施形態において、本発明のグリカンデコイは、インフルエンザ感染の処置のために使用される。特定の実施形態において、本発明のグリカンデコイは、インフルエンザウイルス粒子(例えば、HAポリペプチドを含む)がHA受容体(例えば、アンブレラ−トポロジーグリカンを含む)に結合する能力を阻害するために使用される。
ある実施形態において、本発明のグリカンデコイは、以下の徴候の1つ以上の処置において使用される:発熱、のどの痛み、筋肉痛、激しい頭痛、咳、虚弱、全体的な不快感、肺炎、悪心、および/または嘔吐。特定の実施形態において、これらの徴候は、インフルエンザ感染によって引き起こされる。
ある実施形態において、本発明の薬学的組成物は、インフルエンザ感染に罹患しているかまたはそれに感受性である被験体に投与される。ある実施形態において、被験体がインフルエンザ感染に一般的に付随する1つ以上の徴候を示している場合に、その被験体はインフルエンザ感染に罹患していると見なされる。ある実施形態において、被験体は、インフルエンザウイルスに曝露されていたことが知られているか、またはそう信じられている。ある実施形態において、被験体がインフルエンザウイルスに曝露されていたことが知られているか、またはそう信じられている場合に、その被験体はインフルエンザ感染に対して感受性であると見なされる。ある実施形態において、被験体がインフルエンザウイルスに感染したことが知られているかもしくはそのように疑われている他の個体と接触していた場合、および/または被験体がインフルエンザ感染が流行していることが知られているかもしくはそう考えられている場所にいるかもしくは居た場合に、その被験体はインフルエンザウイルスに曝露されていたことが知られているか、またはそう信じられている。
ある実施形態において、本発明は、以下の工程を包含する、インフルエンザ感染を処置する方法を提供する:(1)インフルエンザ感染の徴候を示す患者を提供する工程、および(2)治療量の1種以上のグリカンデコイを患者に投与する工程。ある実施形態において、本発明は、以下の工程を包含する、インフルエンザ感染を処置する方法を提供する:(1)インフルエンザ感染に罹患している患者を提供する工程、および(2)治療量の1種以上のグリカンデコイを患者に投与する工程。ある実施形態において、本発明は、以下の工程を包含する、インフルエンザ感染を処置する方法を提供する:(1)インフルエンザ感染に感受性である患者を提供する工程、および(2)治療量の1種以上のグリカンデコイを患者に投与する工程。
ある実施形態において、本発明は、以下の工程を包含する、インフルエンザ感染を処置する方法を提供する:(1)インフルエンザ感染の徴候を示すか、インフルエンザ感染に罹患しているか、および/またはインフルエンザ感染に対して感受性である患者を提供する工程、ならびに(2)ヒト上気道組織において、アンブレラ−トポロジーグリカンとのHAポリペプチド(例えば、インフルエンザウイルス粒子と結合したHAポリペプチド)の結合を競合除外する物質を投与する工程。
ある実施形態において、本発明は、以下の工程を包含する、インフルエンザ感染の発症を予防および/または遅延させる方法を提供する:(1)インフルエンザ感染に対して感受性である患者を提供する工程、ならびに(2)治療量の1種以上のグリカンデコイを患者に投与する工程。
ある実施形態において、本発明は、以下の工程を包含する、インフルエンザ感染の発症を予防および/または遅延させる方法を提供する:(1)インフルエンザ感染に対して感受性である患者を提供する工程、ならびに(2)ヒト上気道組織において、アンブレラ−トポロジーグリカンとのHAポリペプチド(例えば、インフルエンザウイルス粒子と結合したHAポリペプチド)の結合を競合除外する物質を投与する工程。
投与
本発明のアンブレラ−トポロジーグリカンデコイは、インフルエンザ感染の処置において有用である。従って、1種以上の本発明のグリカンデコイを含む薬学的組成物は、インフルエンザ感染に罹患しているか、それに対して感受性であるか、および/またはその徴候を示す1例以上の個体に投与されてもよい。それゆえに、本発明は、HAポリペプチド(例えば、インフルエンザウイルス粒子と結合したHAポリペプチド)とアンブレラ−トポロジーグリカン(例えば、ヒト上気道上皮組織のグリカン)の間の結合を阻害する方法、ならびに被験体におけるインフルエンザ感染を処置する方法を包含する。
ある実施形態において、グリカンデコイを含む治療有効量の薬学的組成物は、インフルエンザ感染の診断の前、それと同時に、および/またはその後に、被験体および/または生物に到達される。ある実施形態において、治療有効量の薬学的組成物は、インフルエンザ感染の徴候の発症の前、それと同時に、および/またはその後に、患者および/または生物に到達される。ある実施形態において、薬学的組成物の量は、インフルエンザ感染の1つ以上の徴候または特徴を処置し、軽減し、改善し、緩和し、その発症を遅延させ、その進行を阻害し、その重篤度を減少させ、および/またはその発生を減少させるために十分である。
本発明の方法に従う薬学的組成物は、処置のために有効な任意の量および任意の投与経路を使用して投与され得る。必要とされる正確な量は、被験体の種、年齢、および全体的な状態、感染の重篤度、特定の組成、その投与様式、その活性様式などに依存して、被験体から被験体で変化する。本発明の組成物は、典型的には、投与の容易さおよび投薬の均一性のために、単位剤型で製剤化される。しかし、本発明の組成物の全体の毎日の使用法は、正しい医学的判断の範囲内で担当医によって決定されることが理解される。任意の特定の被験体または生物のための特定の治療有効用量レベルは、処置される障害および障害の重篤度;利用される特定の活性成分の活性;利用される特定の組成物;被験体の年齢、体重、全体的な健康、性別、および食事;投与時間、投与経路、および利用される特定の活性成分の排出速度;処置期間;利用される特定の活性成分と組み合わせてまたは同時に使用される薬物;および医薬分野において周知である同様の因子などを含む、種々の因子に依存する。
本発明の薬学的組成物は任意の経路によって投与され得る。ある実施形態において、本発明の薬学的組成物は、以下を含む種々の経路によって投与される:経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、非経口、皮下、脳室内、経皮、皮内(interdermal)、直腸、膣内、腹腔内、局所(例えば、散剤、軟膏、クリーム、ゲル、および/またはドロップによる)、経皮、粘膜、鼻、頬側、腸、舌下;気管内注入、気管支注入、および/または吸入による;および/または、口腔スプレー、鼻腔スプレー、および/またはエアロゾルによる。ある実施形態において、本発明の組成物は静脈内投与される。ある実施形態において、本発明の組成物は経口投与される。ある実施例において、本発明の組成物は、ポンプを使用して送達できる(例えば、外部ポンプまたは被験体の体内に移植されるポンプ、例えば、機械ポンプおよび/または浸透圧ポンプ)。
一般的には、最も適切な投与の経路は、組成物の性質(胃腸管の環境中でのその安定性)、被験体の状態(被験体が経口投与に耐えることが可能か否か)などを含む種々の因子に依存する。
特定の実施形態において、組成物は、所望の治療効果を得るために、1日1回以上、1日あたり、被験体の体重あたり、約0.001mg/kg〜約100mg/kg、約0.01mg/kg〜約50mg/kg、約0.1mg/kg〜約40mg/kg、約0.5mg/kg〜約30mg/kg、約0.01mg/kg〜約10mg/kg、約0.1mg/kg〜約10mg/kg、または約1mg/kg〜約25mg/kgの範囲の量で投与され得る。所望の投薬量は、1日3回、1日2回、1日1回、1日おきに、3日に1回、毎週、2週ごと、3週ごと、または4週ごとに、送達され得る。ある実施形態において、所望の投薬量は、複数回の投与(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、またはそれ以上の回数の投与)を使用して送達され得る。
本発明の治療剤および薬学的組成物は、組み合わせ治療において利用することができることが理解される。ある実施形態において、本発明は、本発明の組成物を含む「治療カクテル」を包含する。組み合わせレジメンにおいて利用するための治療(治療剤または手順)の特定の組み合わせは、所望の治療剤および/または手順の適合性、ならびに達成される所望の治療効果を考慮に入れる。利用される複数の治療は、同じ目的のために所望の効果を達成し得ることが理解される。例えば、グリカンデコイは、インフルエンザ感染の徴候を治療するために使用される別の薬剤とともに投与されてもよい。ある実施形態において、利用される複数の治療は、異なる効果を達成してもよい(例えば、任意の有害な副作用の制御)。
本発明の薬学的組成物は、単独で、または1種以上の他の治療剤と組み合わせるかのいずれかで投与され得る。「組み合わせる」により、薬剤が同時に投与されなければならないこと、および/または同時送達のために製剤化されなければならないことを意味すると意図されるものではないが、これらの送達方法は本発明の範囲内にある。組成物は、1種以上の他の所望の治療または医学的手順と同時に、その前に、またはその後に、投与することができる。一般的に、各薬剤は、その薬剤に関して決定された用量および/またはタイムスケジュールで投与される。さらに、本発明は、本発明の薬学的組成物のバイオアベイラビリティーを改善し、本発明の薬学的組成物の代謝を低下および/もしくは改変し、本発明の薬学的組成物の排出を抑制し、ならびに/または本発明の薬学的組成物の体内での分布を改変し得る薬剤と組み合わせる、本発明の薬学的組成物の送達を包含する。
組み合わせレジメンにおいて利用するための特定の治療(治療剤および/または手順)の組み合わせは、所望の治療剤および/もしくは手順の適合性、ならびに/または達成される所望の治療効果を考慮に入れている。利用される治療が同じ障害のための所望の効果を達成してもよく(例えば、本発明の薬剤は、インフルエンザ感染を処置するために使用される別の治療剤と同時に投与されてもよい)、および/またはこれらは異なる効果を達成してもよい(例えば、有害な副作用の制御)ことが理解される。ある実施形態において、本発明の組成物は、米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug Administration)によって認可された第2の治療剤とともに投与される。
組み合わせて利用される治療的に活性な薬剤は、単一の組成物中で一緒に投与されてもよく、または異なる組成物中で別々に投与されてもよいことがさらに理解される。
ある実施形態において、本発明のグリカンデコイは、1種以上の他のグリカンデコイと組み合わせて投与されてもよい。
一般的に、組み合わせて使用される薬剤は、それらが個別に利用されるレベルを超えないレベルで使用されることが予測される。ある実施形態において、組み合わせて利用されるレベルは、個別に使用されるレベルよりも低い。
本発明の薬学的組成物は、単独で、および/またはインフルエンザ感染を処置するために使用される別の治療剤とともに投与されてもよい。ある実施形態において、このような薬剤はHAポリペプチドの発現または活性を阻害する。特定の実施形態において、このような薬剤には、抗体、例えば、特定のHAポリペプチド(例えば、アンブレラ−トポロジーグリカンに結合するHAポリペプチド)を含むウイルス粒子を認識する抗体が含まれる。特定の実施形態において、このような薬剤には核酸(例えば、RNAiのために使用できる、HA配列に相補的な核酸配列)が含まれる。ある実施形態において、このような薬剤にはタミフル(TAMIFLU(登録商標))が含まれる。
ある実施形態において、本発明の薬学的組成物は、単独で、ならびに/またはインフルエンザ感染を予防するため、および/もしくはその発症を遅延させるために使用される別の治療剤とともに投与されてもよい。ある実施形態において、このような薬剤にはインフルエンザワクチンが含まれる。特定の実施形態において、インフルエンザワクチンは以下の1つ以上を含む組成物である:(1)不活化ウイルス、(2)弱毒化生インフルエンザウイルス、例えば、複製欠損ウイルス、(3)HAポリペプチドまたはその特徴的もしくは生物学的に活性な部分、(4)HAポリペプチドまたはその特徴的もしくは生物学的に活性な部分をコードする核酸、(5)HAポリペプチドまたはその特徴的もしくは生物学的に活性な部分をコードするDNAベクター、および/あるいは(6)発現系、例えば、抗原として使用される1種以上のインフルエンザタンパク質を発現する細胞。
特定の実施形態において、不活化インフルエンザワクチンは、3種類の型の抗原調製物:不活化全ウイルス、精製ウイルス粒子が洗剤もしくは他の試薬で破壊されて脂質エンベロープを可溶化しているサブビリオン(「分裂」ワクチン)、または精製HAポリペプチド(「サブユニット」ワクチン)のうちの1種を含む。特定の実施形態において、ウイルスは、ホルムアルデヒド、β−プロピオラクトン、エーテル、洗剤(例えば、Tween−80)を伴うエーテル、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、およびTriton N101、デオキシコール酸ナトリウム、およびトリ(n−ブチル)ホスフェートを用いる処理によって不活化することができる。不活化は、尿膜腔液(ウイルスは卵の中でここから産生する)の清澄化後またはその前に行うことができる;ビリオンは、遠心分離によって単離および精製される(Nicholsonら編、Textbook of Influenza,Blackwell Science,Malden,MA,1998)。ワクチンの効力を評価するために、一元放射免疫拡散(SRD)を使用できる(Schildら、1975,Bull.World Health Organ.,52:43−50 & 223−31;およびMostowら、1975,J.Clin.Microbiol.,2:531;これらの両方が参照として本発明に援用される)。ある実施形態において、本発明の薬学的組成物は、弱毒化生インフルエンザワクチンとともに投与されてもよい。ある実施形態において、ワクチンは1種以上のアジュバントを含む。
当業者は、上記に提示した例が限定を意味するわけではないことを理解している。上記の例に提示される原則は、インフルエンザ感染の処置のために任意の組み合わせ治療に一般的に適用することができる。
診断剤/キット
本発明は、1種以上の本発明のアンブレラ−トポロジーグリカンデコイを含む種々のキットを提供する。例えば、本発明は、少なくとも1種のグリカンデコイおよび使用のための説明書を含むキットを提供する。キットは、複数の異なるグリカンデコイを含んでもよい。キットは、任意の組み合わせで、多数のさらなる成分または試薬のいずれかを含んでもよい。種々の組み合わせのすべてが例示的に示されるわけではないが、しかし、各々の組み合わせは本発明の範囲の中に含まれる。
ある実施形態において、本発明のキットにおいて利用される新規なグリカンデコイは、実験室で化学合成されてもよい。代替的にまたは加えて、新規なグリカンデコイは、血液、血清/血漿、末梢血単核細胞/末梢血リンパ球(PBMC/PBL)、痰、尿、糞便、咽頭スワブ、真皮病変スワブ、脳脊髄液、子宮頸部スミア、膿サンプル、食品マトリックス、ならびに身体の種々の部分、例えば、脳、脾臓、および肝臓からの組織が含まれるがこれらに限定されない病理学的サンプルから単離されてもよい。ある実施形態において、新規なグリカンデコイは、土壌、水、およびフローラなどが含まれるがこれらに限定されない環境サンプルから単離されてもよい。列挙されていない他のサンプルもまた適用可能であり得る。
本発明の特定の実施形態に従って、キットは、例えば、(i)アンブレラ−トポロジーグリカンデコイ;(ii)インフルエンザ感染に罹患しているか、それに対する感受性があるか、および/またはその徴候を示す被験体にグリカンデコイを投与するための説明書を含み得る。
本発明の特定の実施形態に従って、グリカンデコイを同定するためのキットは、例えば、以下を含み得る:(i)HAポリペプチド;(ii)少なくとも1種の候補グリカンデコイ、例えば、複数の候補グリカンデコイを含むグリカンアレイ;(iii)陽性対照(例えば、HAポリペプチドに結合することが知られているアンブレラ−トポロジーグリカン);(iv)陰性対照(例えば、コーン−トポロジーグリカン);(v)HAポリペプチドが候補デコイに結合可能であるか、または候補デコイがHAポリペプチドと陽性対照の間の結合を競合除外可能であるかを決定するための説明書。
キットは、典型的には、本発明のグリカンデコイの使用のための説明書を含む。説明書は、例えば、グリカンデコイの同定、その必要がある被験体へのグリカンデコイの投与などのためのプロトコールおよび/または条件を含み得る。キットは、一般的に、個々の成分および試薬のいくつかまたはすべてが別々に収納されるように、1つ以上の容器または箱を備えている。キットはまた、商業販売のために比較的密接に閉じこめた状態で個々の容器を同封するための手段、例えば、説明書、発泡スチロールなどの包装材料などが同封され得るプラスチックボックスも含んでもよい。識別子、例えば、バーコード、高周波識別(RFID)タグなどが、キットの中もしくは上に、またはキットに含まれる1つ以上の容器もしくは箱の中に存在してもよい。識別子は、例えば、品質管理、在庫管理、追跡、ワークステーション間の移動などの目的のためにキットを独自に同定するために使用することができる。
特定の実施形態において、本発明のグリカンアレイおよび/またはキットが、複数用量で(例えば、本明細書に記載されるように)、アンブレラ−トポロジーグリカンおよび/またはグリカンデコイ(例えば、候補アンブレラ−トポロジーグリカンデコイ)へのHAポリペプチドの結合を評価するために使用されて、用量応答研究を実施する。このような研究は、試験されるHAポリペプチドの結合特性についての特に価値のある洞察を与え、特異的結合を評価するために特に有用である。この型の用量応答結合研究は、多くの有用な応用を見い出す。1つのみの例を与えるために、これらの研究は、HAポリペプチド改変体の関連したシリーズの結合特性の進化を追跡する際に有用であり得、このことは、これらのシリーズが、天然の進化、意図的な操作、またはこれらの2つの組み合わせを通して生成されるかに関わらない。
以下に続く代表的な実施例は、本発明の例証を補助することを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図しておらず、そのように制限すると解釈されるべきではない。確かに、本明細書に示されかつ記載されていたものに加えて、本発明の種々の改変、およびその多くのさらなる実施形態は、以下に続く実施例および本明細書に引用される科学文献および特許文献への参照を含む、本文書の全体の内容から、当業者には明らかになる。当該分野の状態を例証することを補助するために、これらの引用文献の内容が、参照により本明細書に援用されることがさらに理解されるべきである。
以下の実施例は、本発明の実務に、その種々の実施形態およびその等価物で適用され得る、重要なさらなる情報、例証、および手引きを含んでいる。しかし、これらの実施例は、本発明を限定しないことが理解される。現在公知であり、および/またはさらに開発される本発明のバリエーションは、本明細書に記載され、および本明細書以後、特許請求されているように、本発明の範囲内に含まれる。
実施例1:H1、H3、およびH5 HAの、α2−3およびα2−6シアル化グリカンへの結合特異性についての枠組み
H1(PDB ID:1RD8、1RU7、1RUY、1RV0、1RVT、1RVX、1RVZ)、H3(PDB ID:1MQL、1MQM、1MQN)、およびH5(1JSN、1JSO、2FK0)からのHAならびにそれらのα2−3および/またはα2−6シアル化オリゴサッカリドとの複合体の結晶構造は、特異的HA−グリカン相互作用に関与する残基への分子的な洞察を提供した。これらのHA−グリカン共結晶構造の分析は、Neu5Ac糖(SA)の配向がHAグリカン結合部位に対して固定されていることを示した。異なるHAサブタイプにわたって高度に保存性であるアミノ酸のセット(H3 HAに基づいて番号付けされたTyr98、Ser/Thr136、Trp153、His183、Leu/Ile194を含む)は、SAを固着することに関与している。従って、α2−3またはα2−6に対するHAの特異性は、グリコシドの酸素原子およびSAの向こうの糖とのHAグリカン結合部位の相互作用によって支配されている。
Neu5Acα2−3Gal結合のコンホメーションは、GalおよびGalの向こうの糖(還元末端かつ直鎖状と分岐状の両方のα2−3)が、空間の「コーン様」領域を占め、かつこの結合におけるグリコシドのねじれ角によって支配されているようなものである;それゆえに、本発明者らは、これを「コーン様グリカントポロジー」と定義する(図6および7)。コーン様トポロジーにおいて、グリカンとのHA相互作用は、主として、三糖(すなわち、トリサッカリド)α2−3モチーフ(Neu5Acα2−3Galβ1−3/4GlcNAc−)におけるNeu5AcおよびGal糖との接触を含み、この観察は、共結晶構造によって裏付けされる。アミノ酸Glu190およびGln226(図6)に加えて、α2−3モチーフとの接触ならびにこのモチーフの硫酸化およびフコシル化などの置換は、鍵となるアミノ酸の位置を含むようである(図6)。これらの位置におけるアミノ酸の変動性は、多様なα2−3シアル化グリカンへのHAの示差的な結合特異性を潜在的に説明可能である(以下を参照のこと)。Neu5Acα2−3Gal結合に対してと同様に、C6−C5結合の存在は、Neu5Acα2−6Gal結合の場合において、さらなるグリカンコンホメーションの柔軟性を提供する(図7)。この柔軟性は、コーン様トポロジー、ならびに、「アンブレラ」におけるような空間のより幅広い領域の両方を採用するα2−6モチーフをもたらし、従って、本発明者らはこれを「アンブレラ様グリカントポロジー」と定義する(図6および7)。従って、アンブレラ様トポロジーは、コーン様トポロジーよりも、HA表面上のより幅広い領域に広がる。コーン様トポロジーとは対照的に、トリサッカリドの向こうのオリゴサッカリドの長さおよび分枝の程度は、アンブレラ様トポロジーにおけるHA結合接触に影響を与える。それゆえに、本発明は、アンブレラ様トポロジーとの相互作用に関与するアミノ酸(鍵となる番号付けされた位置は図6に示される)はヒト適合されたH1およびH3 HAにわたって保存されていないという認識を包含する。HAサブタイプに依存して、これらの位置におけるアミノ酸の組み合わせは、長いα2−6との相互作用に関与し、この観察は、α2−6オリゴサッカリドとのH1およびH3の共結晶構造によって裏付けされる。従って、コーン様トポロジーは、α2−3グリカンならびに短いα2−6グリカン、例えば、単一のラクトサミン分枝に特徴的である(図8)。他方、アンブレラ様トポロジーはα2−6に独特であり、典型的には、複数の繰り返しラクトサミン単位を有する長いグリカンによって採用される(図9)。
HA−グリカン共結晶構造の問い合わせは、ヒト適合したH1およびH3 HAがそれらの推測されるトリ対応物から変異し、アンブレラ様トポロジーにおけるα2−6とのさらなる接触を得たという事実を強調する。トランスコンホメーションおよびシスコンホメーション(それぞれ、α2−3結合およびα2−6結合によって採用される)に基づいてHA−グリカン相互作用を定義することは、不十分である。なぜなら、この定義は、ヒト組織において観察される多様なシアル化グリカンの構造的な特徴およびコンホメーションの柔軟性を十分に補足していないからである。しかし、HA結合の「コーン様」および「アンブレラ様」の分類は、シアル化グリカンの構造の多様性およびコンホメーションの多数性を十分に捕捉している。意義深いことに、この分類は、トリHAのα2−3結合およびα2−6結合を、ヒト適合されたH1およびH3のHAのα2−6結合と区別することが可能である。
コーン様トポロジーおよびアンブレラ様トポロジーへのHA結合の特徴は、H1、H3、およびH5 HAについて利用可能である広範なグリカンアレイデータを分析するための新規なデータ検索アプローチを使用して、さらに裏付けられた。データ検索分析は、アレイ上のグリカンから抽出したグリカンの特徴(表3および図10)と、これらのグリカンへのHA結合の間の相関を提供した。これらの相関は、上記の構造の制約を確認する規則または分類子として与えられる(表4および図10)。
分類子の規則は、図10および表4において定義される特徴に基づいて得られ、これらは、グリカンマイクロアレイ上のグリカンへの、異なるHAおよび変異体の結合を支配する。
これらの観察と一致して、別個のα2−3分類子(図10)は、トリサッカリドα2−3モチーフ周辺のバリエーションが主としてH1、H3、およびH5 HAの示差的なα2−3結合に影響を与えることを示した。グリカンアレイ上で分析された異なるトリHAの中で、H5 HAが、硫酸化およびフコシル化α2−3を含むα2−3への最も多様な結合を示す。トリH5 HAにおける高度に保存性のAsn186、Lys193、およびLys222は、トリサッカリドα2−3モチーフにおける異なる硫酸およびフコース置換への最適な接触を提供するように配置されている。他方、長さ依存的なα2−6分類子(図10)は、アンブレラ様トポロジーにおけるα2−6へのHA結合におけるオリゴサッカリドの長さの役割を支持する。ヒト適合されたH1およびH3 HAに共通であるα2−6分類子は、長いα2−6に結合するそれらの能力の増加と一致している。しかし、野生型(WT)および変異型のH5N1 HAのグリカン結合は、長いα2−6分類子によっては支持されていないが、これは、α2−3と短いα2−6の両方の分類子によって支持されている(図10)。二分岐の短いα2−6グリカンとのH5N1 HAの間の相互作用は図11に図示されている。従って、本発明は、現在のトリウイルス(例えば、H5N1、H7N7、およびH9N1)が、アンブレラ様トポロジーにおけるα2−6グリカンとの最適な接触を行うために、HA変異を獲得する必要があるという認識を包含する(図6および9に図示される)。
実施例2:H5N1ウイルスのヒト適合に導くHA変異
以下において、H5 HAは、アンブレラ様トポロジーを採用する長いα2−6との最適な接触を提供できる変異の同定を説明するための例証的な実例として使用される。H1、H2、およびH5 HAは同じ構造の分岐群に属するので、これらは、ほぼ同一のバックボーン構造およびループトポロジーを有する。この分類に基づいて、長いα2−6グリカンとの「H1様」または「H2様」接触を提供するH5 HAの変異が定義される。
H1様変異
H1 HA−α2−6グリカン共結晶構造の分析は、HA接触が2つの領域−Neu5Acα2−6Galβ1−モチーフとの接触を含む基本領域、および−GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glcβ1−モチーフとの接触を含む拡張領域に分割可能であることを示した。高度に保存性であるSAアンカー(上記)に加えて、基本接触に関与するHA残基は、Lys222、Asp225、およびGln226である。拡張接触に関与するHA残基は、Asp190、Gln192、およびSer193である。H1およびH5 HAのグリカン結合部位の重ね合わせは、H5 HAが、基本領域と相互作用するように配置されているLys222およびGln226などの数個の残基をすでに有していたことを示す。Lys193(H5 HA中)は、Ser193(H1 HA中)と比較した場合に、拡張領域との好ましくない立体的接触を潜在的に有し得る。この観察と一致して、H5 HA二重変異体Glu190Asp/Gly225Asp(これは、H1 HAにおいて観察されるように、Asp190およびAsp225を有する)は、Lys193からの立体障害の可能性に起因して、グリカンアレイ中のα2−6グリカンについてのいかなる結合シグナルも示さない。従って、本発明は、190位、192位、193位、および225位における変異の組み合わせが、長いα2−6との最適な「H1様」接触を提供するという認識を包含する。
H2様変異
H2 HAとのH5 HAの高い配列類似性が与えられるならば、これは、ヒト受容体の特異性についてH5 HA変異を規定するための別の見通しを提供する。現在まで、H2 HAの結晶構造は存在しない。トリH2 HA配列およびヒト適合されたH2 HA配列の予備的比較は、トリH2 HA配列からヒトH2 HA配列への2つの主要なアミノ酸の変化(Gln226LeuおよびGly228Ser)を示す。従って、本発明は、上記の残基位置における他の変異とまとめたこれらの変異の組み合わせが、長いα2−6との最適な「H2様」接触を提供するという認識を包含する。
実施例3:ヒト上気道組織におけるグリカンの多様性
ヒト上気道上皮が、インフルエンザAウイルスのヒト感染およびヒト−ヒト伝染のための主要な標的であるので、本発明者らは、異なる型のシアル化グリカンがこれらの組織中で何であるかを同定することに着手した。このアプローチは、MALDI−MSおよびMS/MS(TOF−TOF)分析を使用する、代表的なヒト細胞系統のグリカンプロファイリングを用いて、異なる組織切片のレクチン染色を乗り越えることであった。上気道組織で優先的に発現されたα2−6グリカンの多様性を詳細に調べるために、代表的なヒト気管切片を、植物レクチンのパネルで同時染色した。Sambucus nigra凝集素(SNA−I)は、α2−6グリカンに特異的に結合する原型のレクチンである。ジャカリンおよびコンカナバリンA(Con A)は、O−連結(−Galβ1−3GalNAcα−および−GlcNAcβ1−3GalNAcα−)グリカンおよびN−連結(トリマンノシルコア)グリカンにおける特異的モチーフにそれぞれ結合する。レクチン結合研究は、上気道組織におけるα2−3およびα2−6の分布の多様性を示した。染色研究は、気管上皮の先端側上のN連結グリカン(繊毛細胞)とO連結グリカン(杯細胞中)の両方の部分としてのα2−6シアル化グリカンの優先的な分布を示す(図12および13)。他方、気管組織の内部領域は、N連結グリカン上に分布しているα2−3から優先的に構成されている。
MALDI−MSグリカンプロファイリング分析は、ヒト上気道上のα2−6シアル化グリカンの優先的な発現と同様に、実質的な多様性(図13)を示した。MALDI TOF−TOFを使用する代表的な質量ピークのフラグメント化は、短いオリゴサッカリド分枝と比較して、複数のラクトサミン反復を有する、より長いオリゴサッカリド分枝が広範に分布しているグリカントポロジーを支持する(図13)。
図12および13Aのデータは、以下の方法によって生成した。ホルマリン固定およびパラフィン包埋したヒト気道組織切片は、US Biologicalより購入した。組織切片を脱パラフィンおよび再水和の後、ストレプトアビジン/ビオチンブロッキングキット(Vector Labs)を使用して内因性ビオチンをブロックした。次いで、切片を、FITC標識ジャカリン(O−連結グリカンに特異的)、ビオチン化コンカナバリンA(Con A、α連結マンノース残基に特異的、これは、N連結グリカンを構成するコアオリゴサッカリド構造の一部である)、ビオチン化Maackia amurensisレクチン(MAL、SAα2,3−Galに特異的)、およびビオチン化Sambuccus nigra凝集素(SNA、SAα2,6−Galに特異的)(Vector labs;0.5% Tween−20を含むPBS中10μg/ml)とともに3時間インキュベートした。TBST(1% Tween−20を含むTris緩衝化生理食塩水)での洗浄後、切片は、Alexa fluor 546ストレプトアビジン(0.5% Tween−20を含むPBS中2μg/ml)とともに1時間インキュベートした。スライドはTBSTで洗浄し、共焦点顕微鏡(Zeiss LSM510レーザースキャニング共焦点顕微鏡)下で観察した。すべてのインキュベーションは室温で実施した。
図13のデータは以下の方法を使用して生成した。ヒト気管支上皮(HBE)細胞(16HBE14o−;Gruenert,D.C.,University of California,San Francisco)は、ヒト適合H1N1およびH3N2ウイルスのこれらの細胞への広範な結合に基づいて、代表的な上気道繊毛細胞として選択した。これらの細胞(〜70×106)は、>90%コンフルエントになったとき、100 mM クエン酸生理食塩水緩衝液を用いて収集し、細胞膜は、プロテアーゼ阻害剤(Calbiochem)を用いる処理および均質化後に単離した。細胞膜画分はPNGaseF(New England Biolabs)で処理し、反応混液は37℃で一晩インキュベートした。反応混液は10分間煮沸して酵素を不活性化し、脱グリコシル化ペプチドおよびタンパク質は、Sep−Pak C18 SPEカートリッジ(Waters)を使用して除去した。グリカンは、グラファイト化炭素固相抽出カラム(Supelco)を使用して、さらに脱塩し、中性画分(25% アセトニトリル画分)および酸性画分(0.05% トリフルオロ酢酸を含む50% アセトニトリル)まで精製した。酸性画分は、ソフトイオン化条件(加速電圧22kV、グリッド電圧93%、ガイドワイヤ0.3%、および150nsの抽出遅延時間)を用いて、それぞれ、ポジティブモードおよびネガティブモードで、MALDI−TOF MSによって分析した。ピークは、非ナトリウムイオン付加(non−sodiated)種として較正した。α2−6シアル化グリカンの優先的な発現は、シアリダーゼAおよびSを使用して、サンプルの前処理によって確認した。単離されたグリカンは、引き続いて、最終容量100mlの50mM リン酸ナトリウム、pH 6.0中の0.1UのArthrobacter ureafaciensシアリダーゼ(シアリダーゼA、非特異的)またはStreptococcus pneumoniaeシアリダーゼ(シアリダーゼS、α2−3シアル化グリカンに特異的)とともに、37℃で24時間インキュベートした。中性画分および酸性画分は、それぞれ、ポジティブモードおよびネガティブモードで、MALDI−TOF MSによって分析した。シアリダーゼA処理されたグリカンは、2−アミノベンズアミド(2−AB)で誘導体化し、凍結乾燥した。MS/MS質量スペクトルは、AB 4700 Data Explorerソフトウェアによって制御された、遅延抽出およびUVレーザー(355nm)を備えたApplied Biosystems 4700 TOF/TOFプロテオミクス分析装置上で獲得した。アセトニトリル/水混液(60:40、v/v)中で調製された5mg/ml α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸溶液 1μlを、標準192ウェルステンレス鋼MALDIサンプルプレート上で播種し、空気乾燥させた。続いて、1μlの2−AB標識グリカンサンプルをマトリックス上にスポットし、乾燥させた。典型的には、1000〜5000ショット/スペクトルを、MS/MSスペクトルのポジティブリフレクターモードで収集した。1−6×10−6Torrのチャンバー圧力および2kVの加速電圧を用いるCIDモード(衝突ガスとして空気を用いる)はグリカンフラグメント化のために使用し、内部ペプチド標準を較正のために使用した。
実施例4:ヒト肺組織へのH1およびH3 HAの用量応答結合
気管組織の先端側は、長い分枝トポロジーを有するα2−6グリカンを優先的に発現する。他方、肺胞組織はα2−3グリカンを優先的に発現する。顕著な特徴を有する流行病SC18およびヒトワクチン株A/Moscow(モスクワ)/10/99 H3N2(Mos99)からのHAは、典型的な代表としてのヒト適合H1およびH3の候補として選択した。H1 HAは、気管の先端表面上の局在化領域に有意に結合し、その結合は、40μg/mlから10μg/mlまでの希釈に伴って次第に減少する(図14)。H1 HAはまた、最高濃度においてのみ、肺胞組織へのある程度の弱い結合を示す。H3 HAの結合パターンは、H1 HAのそれとは異なっており、H3 HAでは、気管と肺胞の両方の組織切片への有意な結合を40μg/mlおよび20μg/mlにおいて示す(図14)。しかし、10μg/mlの濃度において、HAは、主として気管組織の先端側に結合を示し、肺胞組織に対しては、ほとんど結合を示さないか、または全く結合を示さない。さらに、H3 HAの先端側結合は、H1 HAの局在化した結合とは対照的に、十分に分布している。まとめると、組織結合データは、気管組織の先端側へのH1およびH3 HAの高親和性結合を指摘するが、一方、H3 HAは、α2−3に親和性を示し(相対的にα2−6よりも低い)、H1 HAはα2−6に特異性が高い。
図14のデータは、以下の方法を使用して生成した。ホルマリン固定およびパラフィン包埋したヒトの肺および気道の組織切片は、US Biomax,IncおよびUS Biologicalからそれぞれ購入した。組織切片を脱パラフィンし、再水和し、そして非特異的結合を妨害するためにPBS中の1% BSAと30分間インキュベートした。H1N1およびH3N2 HAを、一次抗体(マウス抗6×Hisタグ、Abcam)および二次抗体(Alexa fluor 488ヤギ抗マウス、Invitrogen)とともに、それぞれ、4:2:1の比率で、氷上で20分間、事前複合体化した。形成した複合体は、1% BSA(PBS中)中で、40μg/ml、20μg/ml、または10μg/mlの最終HA濃度まで希釈した。次いで、組織切片を、室温で3時間、HA抗体複合体とインキュベートした。切片は、ヨウ化プロピジウム(Invitrogen;TBST中1:100)で対比染色し、広範に洗浄し、次いで共焦点顕微鏡(Zeiss LSM510レーザースキャニング共焦点顕微鏡)下で観察した。
実施例5:異なるトポロジーのグリカンへの野生型HAポリペプチドの用量応答直接結合
本明細書に記載されるように、本発明は、本明細書では「アンブレラ」トポロジーと呼ばれる特定のトポロジーを有するグリカンへのHAポリペプチドによる結合が、HAポリペプチドがヒト宿主の感染を媒介する能力と相関しているという認識を包含する。本実施例は、異なる宿主の感染を媒介する異なるHAポリペプチドを用いる直接結合研究の結果を記載し、ヒト感染とアンブレラ様トポロジーグリカン結合の間の相関を例証する。
直接結合アッセイは、典型的には、規定されたグリカン構造(例えば、一価または多価)が、しばしば、ポリマーバックボーンを使用して、支持体(例えば、ガラススライドまたはウェルプレート)上に提示されるグリカンアレイを利用する。いわゆる「順次」アッセイにおいて、三量体HAポリペプチドはアレイに結合され、次いで、例えば、標識された(例えば、FITCまたは西洋ワサビペルオキシダーゼを用いる)一次抗体または二次抗体を使用して検出される。「多価」アッセイにおいて、三量体HAは、最初に一次抗体および二次抗体とともに複合体化され(典型的には、4:2:1のHA:一次抗体:二次抗体の比率)、その結果、事前複合体HAあたり12個のグリカン結合部位が存在し、次いで、アレイと接触される。結合アッセイは、典型的には、一定の範囲のHA濃度にわたって実行され、その結果、アレイ中の異なるグリカンの相対的な親和性に関する情報が得られる。
例えば、直接結合研究は、3’SLN、6’SLN、3’SLN−LN、6’SLN−LN、および3’SLN−LN−LNなどの異なるグリカンを有するアレイを用いて実施され、ここで、LNはGalβ1−4GlcNAcを表し、3’はNeu5Acα2−3を表し、そして6’はNeu5Acα2−6を表す。詳細には、ビオチン化グリカン(120pmol/mlを50μl)は、事前にPBSで3回すすいだ、ストレプトアビジンコートした高結合能(High Binding Capacity)384ウェルプレートと一晩インキュベートした(PBS中、4℃にて)。次いで、プレートは、PBSで3回洗浄して過度のグリカンを除去し、さらなる処理なしで使用した。
ビオチン−アビジングリカンアレイプレートを使用する用量依存性直接結合アッセイの開発の初期段階の間、異なる濃度のHisタグ化HAタンパク質、一次抗体(マウス抗6×Hisタグ)、および二次抗体(HRP結合体化ヤギ抗マウスIgG)をインキュベートして、4:2:1 HA:一次抗体:二次抗体の比率を達成した。しかし、このアッセイにおいて、低HA濃度で結合シグナルを検出することは困難であった。なぜなら、結合反応速度論は、これらの濃度(2.5μg/mlより下)におけるHA事前複合体の形成を制限するからである。相対的な結合親和性を正確に定量するために、事前複合体の結合は、より低い濃度範囲(0.05μg/ml〜5g/ml)において測定した。この問題に取り組むに当たって、結合アッセイは、引き続いて、最高のHA濃度、次にストックの段階希釈における事前複合体の調製によって改変した。手短に述べると、次いで、混合物(すなわち、事前複合体化HA)は、PBS中1% BSAを有する250μlの最終容量まで作製した。次いで、50μlの事前複合体化HAを、384ウェルプレートのグリカンコートしたウェルに加え、室温で2時間インキュベートした。続いて、0.05% TWEEN−20を含むPBSでウェルを3回洗浄し、次いで、PBSで3回洗浄した。直接結合研究はまた、代表的なH5N1ウイルスについても、HA結合特異性をヒト適合HAのそれと比較するために行った。ウイルスストック(CDCより)を、10日齢孵化雌鳥卵の尿膜腔の中で、37℃にて増殖させた。尿膜腔液をインキュベーションの24時間後に収集し、4℃、3日間のB−プロピオラクトン(BPL;1/1,000)を用いる処理によって不活化した。グリカンコートしたウェルへのウイルス結合は、1%ウシ血清アルブミンを含むPBS中での希釈および4℃で一晩のインキュベーションの後で、各ウェルに適切な量のウイルスを加えることによって、記載されるように実施した(Yamadaら、2006,Nature,444:378;参照により本明細書に援用される)。0.05% Tween−20を含むPBSおよびPBSを用いる過度のウイルスのすすぎ後、ウェルは、ウイルスに対する抗体(A/Hong Kong(ホンコン)/213/03 H5N1に対して惹起されたフェレット−α−インフルエンザA)とともに、4℃で5時間、インキュベートした。抗体の広範な洗浄後、プレートは、HRP結合ヤギ−α−フェレット抗体(Rockland Immunochemicals)とともに、4℃で2時間インキュベートした。0.05% Tween−20を含むPBSおよびPBSを用いる広範な洗浄後、すべての場合において、HRP活性は、製造業者の説明書に従って、Amplex Red Peroxidase Kit(Invitrogen,CA)を使用して見積もった。HA事前複合体の段階希釈を研究した。適切な陰性対照(非シリアル化グリカン)およびバックグラウンド対照(グリカンなしまたはHAなし)を含め、すべてのアッセイは3連で行った。結果は図15および16に提示される。
本発明は、既知のヒト適合H1、H2、およびH3 HAの結合パターンの1つの特性は、40μg/mlから2.5μg/mlまでの希釈範囲にわたる、飽和レベルでの長いα2−6(6’SLN−LN)へのそれらの結合である(図15)という認識を包含する。H1 HAは、長いα2−6への結合について高度に特異的であるが、H2およびH3 HAもまた、高い親和性で短いα2−6(6’SLN)に結合し、そしてα2−6と比較して、より低い親和性で長いα2−3に結合する(図15)。H1およびH3 HAの直接結合用量応答は、組織結合パターンと一致している。さらに、長いα2−6へのH1およびH3 HAの高親和性結合は、長い分枝トポロジーを有するα2−6グリカンを発現する気管組織の先端側へのそれらの広範な結合と相関する。この相関は、ヒト適合したH1およびH3 HAの上気道組織向性に、価値のある洞察を提供する。H2およびH3 HAのα2−3結合はさらに、グリカン結合の優先度のスイッチ(すなわち、α2−3に結合する能力の喪失)は、HAのヒト適合のための必須の決定要因ではないことを示唆する。重要なことに、Tx91は、これもまた長いα2−6へのHA結合を示す混合α2−6/α2−3結合ウイルスであり(図10)、効率的に伝染することが可能である。他方、NY18は、長いα2−6へのHA結合特異性を有しない別の混合α2−3/α2−6結合ウイルスであり(図10)、効率的には伝染しない(伝染性と相関するHA結合特異性の詳細は、以下の実施例6においてさらに精緻に作製される)。従って、本発明は、これらのウイルスの効率的なヒト適合が、それゆえに、特異的α2−3またはα2−6結合を超えた、特徴的なアンブレラ様トポロジーのシアル化グリカンへのHA結合に相関するという認識を包含する。他方、試験されたH5N1ウイルスは、反対のグリカン結合傾向を示し、ここで、これらは、α2−6への比較的低いこれらの親和性と比較して(有意なシグナルは128HAUにおいてのみ見られる;図16)、α2−3に低い親和性で結合する(40μg/mlから2.5μg/mlまで下る飽和シグナル)。任意の特定の理論によって束縛されることは望まないが、α2−6を優先的に発現する組織へのH5N1感染の開始の観察は、おそらく、高ウイルス負荷におけるα2−6結合によって説明することができる(図16において示される>128HAU)。
実施例6:独特な構造トポロジーを有するα2−6シアル化グリカンへの、1918 H1N1インフルエンザA流行病ウイルスヘマグルチニン結合親和性は、ウイルス伝染のための決定因子である
インフルエンザウイルスのヒト感染は、ヒト上気道組織の上皮細胞表面上のα2−6シアル化グリカン(α2−6)受容体へのウイルス表面ヘマグルチニン(HA)の結合を含む。HAのグリカン結合優先度と伝染効率の間の関連性は、高度に病原性かつ悪性の1918 H1N1ウイルスを使用してフェレットモデルにおいて実証されてきた(Tumpeyら、2007,Science,315:655;参照により本明細書に援用される)。この研究において、α2−6結合優先度を有する1918 H1N1流行病ウイルス(A/South Carolina(サウスカロライナ)/1/1918(SC18))が効率的に伝染する間、単一のアミノ酸HA変異(SC18+1変異)が、伝染が非効率的である、混合α2−3シアル化グリカン(α2−3)/α2−6結合ウイルス(NY18)を生じたことが実証された。さらに、グリカン結合優先度をα2−6からα2−3に切り換える、付加的なHA変異(NY18+1変異)は、フェレットにおける伝染が不可能であるウイルス(AV18)を生じた。混合α2−3/α2−6結合を示すA/New York(ニューヨーク)/1/18(NY18)H1N1ウイルスは伝染が非効率的であったが;驚くべきことに、A/Texas(テキサス)/36/91(Tx91;これもまた、混合α2−3/α2−6結合H1N1ウイルスである)は効率的に伝染可能であった。単一のアミノ酸HA変異の結果としてのウイルス伝染のこれらの違いは、次には、効率的なヒト適合についてのみならず(実施例1〜5に議論したように)、効率的な伝染についてもまた、グリカントポロジーの状況におけるHA−グリカン特異性に関する重要な疑問を惹起する。以前の実施例に立脚して、結合親和性を定量的に測定し、かつ特異性を樹立することが可能である用量依存性グリカン結合アッセイを開発した。以下は、典型的なグリカンアレイアッセイが、SC18とNY18の間の長いα2−6結合の定性的な違いを示さないが、同じものの用量依存性アッセイが、長いα2−6への結合親和性の間の有意な定量的な違いを示すことを実証している。さらに、これらの違いは、ヒト上気道組織に存在する生理学的なグリカンへのSC18およびNY18 HAの個別の結合パターンにおいても同様に反映されている。まとめると、本発明者らは、SC18ウイルスとNY18ウイルスの間の伝染の違いが、特徴的なアンブレラ様トポロジーを有する長いα2−6グリカンへのそれらの定量的な結合親和性と相関することを実証した。
材料および方法
HAのクローニング、バキュロウイルス合成、発現、および精製
可溶型のHAはバキュロウイルス発現ベクター系(BEVS)を使用して発現した。SC18(A/South Carolina(サウスカロライナ)/1/1918;SC18)バキュロウイルス(pAcGP67−SC18−HAプラスミドから生成;Stevensら、2004,Science,303:1866;Stevensら、2006,Nat.Rev.Microbiol.,4:857;これらの両方とも参照により本明細書に組み入れられる)はDr.James Stevensから恵与された。pAcGp67−NY18−HAおよびpAcGp67−AV18−HAプラスミドは、それぞれ、[Asp225Gly]および[Asp190Glu、Asp225Gly]変異により、pAcGP67−SC18−HAから生成した。変異誘発は、QuikChange Multi Site−Directed Mutagenesisキット(Stratagene)を使用して実行した。変異誘発のために使用されるプライマーは、ウェブベースのプログラム、PrimerX(http://bioinformatics.org/primerx/)を使用して設計し、IDT DNA technologies(Coralville,IA)によって合成された。NY18およびAV18バキュロウイルスは、製造業者の説明書に従って、Baculogold system(BD Biosciences,San Jose,CA)を使用して、pAcGP67−NY18−HAおよびpAcGP67−AV18−HA構築物から作製した。バキュロウイルスは、BD BaculoGold Max−XP Insect Cell培地(BD Biosciences,San Jose,CA)中で培養したSf9細胞(BD Biosciences,San Jose,CA)の300ml懸濁培養に感染させるために使用した。これらの培養物を、感染の徴候についてモニターし、感染4〜5日後に収集した。BEVSは三量体HAを産生し、これはグリカンへの多価結合を生じる。可溶型のHAは、以前に記載されたプロトコール(Stevensら、2004,Science,303:1866;参照により本明細書に援用される)を使用して、感染細胞の上清から精製した。手短に述べると、上清は、Centricon Plus−70遠心分離フィルター(Millipore,Billerica,MA)を使用して濃縮し、三量体HAは、濃縮細胞上清から、Ni−NTAビーズ(Qiagen,Valencia,CA)を充填したカラムを用いるアフィニティークロマトグラフィーを使用して回収した。HAを含んだ溶出画分をプールし、10mM Tris−HCl、50mM NaCl緩衝液(pH 8.0)で一晩透析した。次いで、透析サンプルに対して、Mono−Q HR10/10カラム(GE healthcare,Piscataway、NJ)を使用するイオン交換クロマトグラフィーを実施した。HAを含む画分は一緒にプールし、Amicon Ultra 100 K NMWLメンブレンフィルター(Millipore,Billerica,MA)を使用する限外濾過に供した。次いで、タンパク質は濃縮し、PBS中で再構築した。精製タンパク質は、Bio−Radのタンパク質アッセイ試薬(Bio−Rad,Hercules,CA)を使用して定量した。
H1N1 HAの用量応答直接結合
多価HA−グリカン相互作用を研究するために、代表的なビオチン化α2−3およびα2−6(短型および長型)を含むストレプトアビジンプレートアレイを使用した。このプレートアレイのウェル中のグリカンの空間配置は、HA単位中の3つのHAモノマーのうちの1つのみに結合する傾向がある。グリカンの間隔およびHA単位サイズは、HA単位、一次抗体、および二次抗体の連続適用を含んだELISA型結合アッセイにおける単一のグリカンへのHA単位の結合を制限する(以下を参照のこと)。逆に、一次抗体および二次抗体とのHA単位の事前複合体(以下を参照のこと)(HA:一次抗体:二次抗体=4:2:1比率)は4HA単位の特定の空間配置を容易にする。従って、この事前複合体単位は、多価性を介して、グリカン結合親和性に対する複数のHA単位の相対的な空間的位置決めの効果の研究を可能にした(図18を参照のこと)。
ストレプトアビジンコートされた高結合能(High Binding Capacity)384ウェルプレート(Pierce)を、このウェルを50μlの2.4μMビオチン化グリカンとともに4℃で一晩インキュベートすることによって、各ウェルの全容量まで負荷した。ビオチン化グリカン(3’SLN、6’SLN、3’SLN−LN、6’SLN−LN、および3’SLN−LN−LN)は、機能的グリコミクスのコンソーシアム(Consortium for Functional Glycomics)から、彼らのリソースリクエストプログラムを通して入手した。LNはラクトサミン(Galβ1−4GlcNAc)に対応し、3’SLNおよび6’SLNは、それぞれ、LNに連結されたNeu5Acα2−3およびNeu5Acα2−6に対応する。過度のグリカンは、PBSを用いる広範な洗浄を通して除去し、次いで、プレートはさらなる処理なしで使用した。ELISA型連続結合のために、グリカンコートしたウェルは、1% BSAを含むPBS中40μg/mlの濃度で(グリカンアレイ実験において使用される典型的な高濃度)、HAとともに2時間インキュベートし、続いて、PBS−Tween、次にPBSで広範に洗浄した。これに続いて、1% BSAを含むPBS中5μg/mlの濃度の一次抗体(マウス抗6×HisタグIgG)との室温で3時間のインキュベーションを行い、上記の洗浄工程を反復した。ウェルは、最後に、二次抗体(HRP結合体化ヤギ抗マウスIgG)2μg/ml溶液とともに、室温で1時間インキュベートした。用量依存性事前複合体化HA実験の場合において、適切な量のHisタグ化HAタンパク質、一次抗体(マウス抗6×HisタグIgG)、および二次抗体(HRP結合体化ヤギ抗マウスIgG(Santacruz Biotechnology))は、4:2:1の比率で、氷上で20分間インキュベートした。事前複合体化HAは、PBS緩衝液中1% BSAで、250μlの最終容量まで調製し、この溶液の50μlを、384ウェルプレートのグリカンコートされたウェルの各々に加え、室温で2時間インキュベートした。次いで、ウェルを、PBS−Tweenで、続いてPBSによって広範に洗浄した。結合シグナルは、製造業者の説明書に従って、Amplex Red Peroxidase Assay(Invitrogen,CA)を使用して、HRP活性に基づいて決定した。陰性対照を含め、そしてすべてのアッセイは3連で行った。
結合親和性を定量するために(上記の事前複合体化アッセイのために)、以下のモデルに基づいて結合パラメーターKd’が定義され、計算される。Hill方程式の典型的な型は多価結合を表すために使用される:
これは、線形化の際には、以下のようになる
ここで、y−HA単位におけるグリカン結合部位の飽和度;[HA]−HAの濃度(M);n−協同性因子;Kd’−多価HA−グリカン相互作用についての見かけの結合定数。yの値は、すべてのHA単位に対して100%占有率を表す飽和結合シグナルに、結合シグナルを標準化することによって計算される。nおよびKd’は線形化Hillモデルに基づいて計算された(表5に示される)。上記のモデルにおいて、プレートの各ウェル中のグリカンは過剰のHAの中にあることが前提とされている。この前提を満足するために、0.05μg/ml〜5μg/mlのHA濃度範囲の結合シグナルを、nおよびKd’を計算するために使用した。
ヒト上気道組織へのH1 HAの結合
ホルマリン固定およびパラフィン包埋した通常ヒト気道組織切片は、US Biologicalより購入した。組織切片を脱パラフィンし、再水和し、そして室温で30分間、PBS中の1% BSAで事前にブロックした。HA抗体事前複合体は、組換えSC18およびNY18タンパク質を、一次抗体(マウス抗6×Hisタグ、Abcam)および二次抗体(Alexa fluor 488ヤギ抗マウスIgG、Invitrogen)とともに、それぞれ、4:2:1の比率で、氷上で20分間、インキュベートすることによって生成した。次いで、形成した複合体は、1% BSA−PBS中で、異なる最終HA濃度まで希釈した。組織結合研究は、組織切片を、室温で3時間、希釈HA抗体複合体とインキュベートすることによって実施した。細胞核を可視化するために、切片は、ヨウ化プロピジウム(Invitrogen;TBST中1:100)で、室温で20分間対比染色した。同時染色アッセイのために、組織を脱パラフィンし、再水和し、そしてFITC標識ジャカリン(Vector labs;0.05% Tween 20を有するPBS(PBST)中10μg/ml)およびHA抗体事前複合体(二次抗体としてAlexa Fluor 546ヤギ抗マウス抗体を使用して上記のように生成し、PBST中に希釈)とともに、室温で3時間同時インキュベートした。次いで、切片を洗浄し、Zeiss LSM510レーザースキャニング共焦点顕微鏡下で観察した。
結果
α2−3およびα2−6とのSC18、NY18、およびAV18 HAの分子的相互作用
HA−グリカン共結晶構造の分析に基づいて、HA−グリカン相互作用は、コーン様およびアンブレラ様のグリカントポロジーに基づいて特徴付けされる(Chandrasekharanら、2007,Nat.Biotech.,印刷中)。SC18 HAのx線結晶構造は解析されたが(Stevensら、2004,Science,303:1866;およびGamblinら、2004,Science,303:1838;これらの両方は参照により本明細書に援用される)、しかし、シアル化グリカンとのこのHAの共結晶構造は解析されていないままである。NY18およびAV18 HAの構造は、単一のAsp225Gly(NY18 HA用)およびさらなるNY18+Asp190Glu変異(AV18用)をインシリコで作製することによって得た。関連するA/Swine(ブタ)/Iowa(アイオワ)/15/30(ASI30)およびA/Puerto Rico(プエルトリコ)/8/34(APR34)H1N1 HAのα2−3およびα2−6グリカンとの共結晶構造(Gamblinら、2004,Science,303:1838;参照により本明細書に援用される)は、SC18、NY18、およびAV18の間の、α2−3およびα2−6オリゴサッカリドとの分子的相互作用の研究を可能にした。
アンブレラ様トポロジーは、より長いα2−6オリゴサッカリド(例えば、テトラサッカリドおよびより長いサッカリド)によって好ましい。APR34およびASI30 HA−α2−6共結晶構造において使用されるLSTcペンタサッカリド(Neu5Acα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc)はこの長いα2−6を表す。これらの共結晶構造およびSC18 HAの重ね合わせは、長いα2−6オリゴサッカリドとの接触が2つの領域に分けられることを実証した。基本領域はNeu5Acα2−6Galβ1−モチーフとの接触を含み、拡張領域は−GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glcβ1−モチーフとの接触を含む。高度に保存性であるアミノ酸のセット(Tyr95、Ser/Thr136、Trp153、His183、Leu/Ile194)は、Neu5Acを固着する際に関与する(図17)。SC18およびAPR34 HAにおけるバックボーンカルボニル酸素とAsp225の側鎖の両方が基本領域中のGalと相互作用するように配置されているが、ASI30におけるGly225のカルボニル酸素のみがこのGalと相互作用する(図17)。高度に保存性であるLys222およびGln226もまた、基本領域と相互作用するように配置されている。拡張領域との接触に関与するアミノ酸には、Asp190(SC18およびASI30 HA中)、Gln192、およびSer193(APR34 HA中のAsn193)が含まれる。NY18 HA(すなわち、SC18のAsp225Gly変異体)は、ほぼ同一であるグリカン結合部位をASI30 HAのそれと共有し、それゆえに、Asp225の側鎖によって提供される、基本領域におけるGalとの余分の接触を欠いている。対照的に、AV18(すなわち、SC18のAsp190Glu/Asp225Gly二重変異体)は、Asp225とAsp190の両方によって提供される、基本領域および拡張領域への接触を欠いている。SC18、NY18、およびAV18 HAの中では、SC18 HAは、アンブレラ様トポロジーにおける長いα2−6との最高の接触を提供し、NY18 HAが続く。
アンブレラ様トポロジーとは異なり、コーン様トポロジーは、α2−3とα2−6の両方によって採用できる(Neu5Acα2−6Galβ1−4Glc(NAc)などの短いトリサッカリド単位によって優先的に)。アンブレラ様トポロジーに伴って見い出されるHA接触の2つの明確な領域とは異なり、コーン様トポロジーとの接触は、主として、HA−α2−3共結晶構造において観察されるようなトリサッカリドNeu5Acα2−3/6Galβ1−3/4Glc(NAc)モチーフ周辺に集中する置換を含む。詳細には、種々のトリHAにわたって高度に保存されているGlu190およびGln226は、コーン様トポロジーとの最適な接触を行うことに関与している(図17)。この観察は、ASI30 HA−α2−3共結晶構造におけるNeu5Acの向こう側の不規則な糖によってさらに裏付けられる。なぜなら、このHAにおける190位のGluの代わりのAspは、α2−3との接触を欠いているからである。両方がこれらのアミノ酸を含んでいるAV18およびAPR34の重ね合わせは、AV18 HAがコーン様グリカントポロジーとの最適な接触を生じることを示す。SC18とNY18の両方のHAはGlu190残基を欠いており、従って、コーン様グリカントポロジーとのそれらの接触は、AV18 HAと比較した場合には、より最適ではない。
代表的なα2−3およびα2−6オリゴサッカリドへの用量依存性直接HA結合
新規なグリカンアレイプラットフォームが、HA−グリカン相互作用を研究するために開発された(Stevensら、2006,Nat.Rev.Microbiol.,4:857;およびKumariら、2007,J.Virol.,4:42;これらの両方は参照により本明細書に援用される)。これらのアレイは、種々の野生型および変異体のHAの、α2−6に対するα2−3の結合特異性に重要な洞察を提供してきた。これらのグリカンアレイ研究において、飽和HA濃度を使用する単回アッセイの中での高いおよび低いグリカンアレイへの結合シグナルは、所定のHAについてのグリカン結合の優先度を決定する。任意のグリカン結合タンパク質(例えば、レクチン)上での単一の結合部位についてのグリカン結合親和性は低いこと(例えば、高いμM〜mM範囲)が一般的に受け入れられている。各HA単位は三量体タンパク質であるので、単位当たりに3つのグリカン結合部位が存在する(SkehelおよびWiley、2000,Ann.Rev.Biochem.,69:531;参照により本明細書に援用される)。加えて、複数のHA単位がウイルス表面で集合する。HA単位の中のグリカン結合部位およびウイルス表面を横切る複数のHA単位の空間配置は、多価HA−グリカン相互作用において重要な役割を果たし得る。本発明は、グリカンと比較したHA単位の濃度が結果的にHA−グリカン結合特異性を支配し得るという認識を包含する。
HA単位およびグリカンの特定の空間配置のためのSC18、NY18、およびAV18 HAのグリカン結合特異性の違いを理解するために、プレートアレイに対する体系的な直接HA結合研究を実施した(方法を参照のこと)。最小結合シグナルは、連続的ELISA型結合アッセイにおけるSC18 HAについて観察した(図18)。グリカンの間隔およびHA単位サイズがこのアッセイにおいて単一のグリカンのみにHA結合を制限することを認めたとしても、結合シグナルは、単一のグリカンへのHA単位の予測される弱い親和性と一致する。SC18 HAを用いる事前複合体化アッセイ−4HA単位が空間的にロックされている−は、その代わりに、長いα2−6グリカンへの結合の少なくとも8倍の増加を生じた(図18)。この結合シグナルの増加は、複数のHA単位の空間的配置がグリカン結合を増強する際に果たす役割を強調する。
事前複合体化したSC18、NY18、およびAV18 HAの段階希釈による用量依存性直接結合アッセイは、それらの相対的なグリカン結合親和性を確立するために実施した(図19)。協同性因子nおよび見かけの結合定数Kd’は、結合データをモデル化するために使用した線形化Hill方程式に基づいて計算した(方法ならびに図20および21を参照のこと)(表5)。
表5は、代表的な長いα2−3およびα2−6グリカンへのSC18、NY18、およびAV18 HAの相対的な結合親和性を示す。パラメーターnおよびK
d’は、方法において記載されるように決定し、図20および21に詳述した。これらのパラメーターは、HAの相対的な結合親和性を定量するように得られ、従って、それらの絶対値がこの状況において観察されるべきである。
すべてのグリカン結合データについてのR平方値>0.95は、線形化Hillモデルへの良好なフィットを示す。n≧1の値は、複数のHA単位の空間配置および単一のグリカンへのHA単位の結合の結果としてのHA−グリカン相互作用の正の協同性を反映する。SC18 HAは、単一の長いα2−6グリカンへの高い結合親和性を示したが(Kd’=5.5pM)、AV18 HAは、α2−6結合がほとんどなく、α2−3結合親和性が高い(Kd’=5pM)という逆の傾向を示した。他方、NY18 HAの長いα2−6結合は、飽和HA濃度においてSC18 HAのそれとほぼ同一であったが(図19)、長いα2−6への相対的な結合親和性(Kd’=6nm)は、SC18 HAのそれよりも有意に低かった。これらの観察は、α2−3およびα2−6オリゴサッカリドとのSC18、NY18、およびAV18の分子的相互作用の違いと相関する。
ヒト上気道組織へのSC18およびNY18の結合
本発明は、SC18およびNY18 HAのα2−6およびα2−3の結合親和性の違いが、それらを、ヒト上気道組織に存在する多様な生理学的グリカンへのHA結合を研究するための理想的なレクチン様プローブにさせるという認識を包含する。ヒト気管切片は、生理学的グリカンへのSC18およびNY18 HAの結合パターンを探索するために使用した。SC18とNY18の両方が気管の先端側に結合するが(図22)、2つのHAの組織結合のパターンおよび分布は異なっている。気管の先端側へのSC18結合は、十分に分布したNY18の結合と比較した場合に、より制限されているように見える。NY18 HAはまた、気管の内部領域(α2−3グリカンを発現することが知られている)への結合を示し、α2−3グリカンへのその直接的結合と一致している(図19)。SC18およびNY18 HAの先端結合の違いをさらに研究するために、これらのHAおよびジャカリン(杯細胞のマーカー)を使用して、気管組織の同時染色を実施した。この同時染色は、SC18 HAが優先的に杯細胞に結合する一方、NY18 HAはこれらの細胞への最小限の結合を示すことを実証した(図23)。
考察
多くの独特なオリゴサッカリドモチーフを含むグリカンアレイは、野生型および変異型H1、H3、およびH5 HAのグリカン結合を研究するために用いられてきた(Stevensら、2006,Nat.Rev.Microbiol.,4:857;Kumariら、2007,J.Virol.,4:42;Stevensら、2006,Science,312:404;これらのすべては参照により本明細書に援用される)。これらの進歩にも関わらず、ヒト適合に導くグリカン受容体特異性の解釈は、困難なままで残っている。この理由は、多くの部分、この分野における、グリカン−タンパク質相互作用が比較的弱くかつ非特異的であるという一般的な概念に起因している。結果的に、HAのグリカン結合の特異性は、非常に高濃度のタンパク質を使用して、多くが確立されてきた。高いHA濃度は、非結合物に対する結合物を確立するために有用であり得るが、しかし、本発明は、HAの相対的なグリカン結合親和性を確立するために、適切な定量的測定を規定する際の制限が存在しているという認識を包含する。1つの例として、高濃度において、典型的に使用される一次結合反応速度論の仮定(HA:グリカン比率に関連する)は満足されない。HA間の相対的なグリカン結合親和性を正確に定量するために、本発明は、それが「適切な」HA濃度範囲にあることが所望されているという認識を包含する。本発明は、いくつかのパラメーター(例えば、複数のHA単位の空間配置、表面グリカン密度、およびHA対グリカンの比率)が、所定のグリカンアレイアッセイのために「適切な」HA濃度範囲を決定する場合に、考慮に入れられるべきであるという認識を包含する。グリカンアレイに対して高いHA濃度を使用する現在のアプローチは、これらの懸念の領域を説明しない。本研究において、用量依存性グリカン結合アッセイを用いる、タンデムでのグリカン(間隔はビオチン−アビジン系によって課せられる)およびHA(HA単位の事前複合体化によって課せられる)の特異的空間配置が、これらの困難を克服することが可能であった。本研究において結合親和性パラメーター(nおよびKd’)を決定するために使用される濃度範囲は、生理学的条件で予測されるような、グリカンがHAよりも過度にあるようなものである。本発明は、本研究において記載されているアプローチが、一般的にタンパク質−グリカン相互作用を研究するために利用される任意のグリカンアレイプラットフォームに容易に拡張できるという認識を包含する。
高濃度または飽和濃度のHAは、SC18とNY18の間で、長いα2−6グリカンへの結合シグナルの違いを示さない。SC18とNY18の間での唯一の違いは、NY18 HAでのα2−3グリカンへのさらなる結合である。SC18、NY18、およびAV18のα2−3結合が伝播性との逆比例を示すので、いかなる1つの理論に束縛されることも望まないが、これらのデータからの可能性のある結論は、α2−3結合特異性の損失が伝播性のための1つの要因であるということである。しかし、A/Texas(テキサス)/36/91(TX91;すなわち、NY18に類似している、混合α2−6/α2−3結合ウイルス)は、フェレットにおいて容易に伝染した。TX91およびA/Moscow(モスクワ)/10/99 H3N2(Mos99;すなわち、混合α2−6/α2−3結合ヒト適合H3 HA)の用量依存性直接的結合は、SC18およびNY18のそれと比較した場合、長いα2−6グリカンへの高親和性結合が、SC18、Tx91、およびMos99についての共通の特徴であり、NY18の特徴ではないことを示す(図19)。長いα2−6グリカンへの特異性のこの共通の特徴は、α2−3グリカンへの特異性とは独立している。従って、本発明は、上気道組織において広範に発現されている長いα2−6グリカンへの高親和性結合が、HAヒト適合についてのみならず、一般的にインフルエンザウイルス伝染についてもまた、決定基であるという認識を包含する。
ヒト上気道組織に存在する多様な生理学的グリカンへのSC18およびNY18の示差的結合は、これらの直接的結合研究をさらに裏付ける。本発明は、杯細胞へのSC18の狭い結合が、ヒト適合ウイルスの細胞向性への将来の研究の口火になるはずであるという認識を包含する。この観察は、Matrosovichら(Matrosovichら、2004、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA、101:4620;参照により本明細書に援用される)と一致しており、ここでは、彼らは、ヒト適合したH1およびH3ウイルス株が非繊毛細胞に優先的に感染し、トリウイルスが繊毛細胞に優先的に感染することを実証した。彼らはまた、ウイルスの細胞向性のこのような違いが、ヒト−ヒト伝染のそれらの効率の違いを説明し得ることを示唆した。
等価物および範囲
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識しており、または慣用的に過ぎない実験を使用して確認できる。本発明の範囲は、上記の説明に限定されることは意図されていないが、むしろ、添付の特許請求の範囲に記載される通りである。
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識しており、または慣用的に過ぎない実験を使用して確認できる。本発明の範囲は、上記の説明に限定されることは意図されていないが、むしろ、添付の特許請求の範囲に記載される通りである。
特許請求の範囲において、「a」、「an」、および「the」などの冠詞は、反対の意味が示されている場合、またはさもなくば文脈から明らかである場合を除いて、1つまたは1つ以上を意味し得る。従って、例えば、「ナノ粒子(a nanoparticle)」との言及は、複数のこのようなナノ粒子を含み、「細胞」との言及は、当業者に公知である1個以上の細胞への言及を含む、等である。ある群の1つ以上のメンバー間で「または」を含む特許請求の範囲または説明は、反対の意味が示されている場合、またはさもなくば文脈から明らかである場合を除いて、群のメンバーの1つ、1つ以上、またはすべてが所定の生成物もしくはプロセスの中に存在するか、その中で使用されるか、またはさもなくばそれに関連する場合に、満足されると考えられる。本発明は、群の正確に1つのメンバーが所定の生成物もしくはプロセスの中に存在するか、その中で使用されるか、またはさもなくばそれに関連する実施形態を含む。本発明は、群の1つ以上、またはすべてのメンバーが所定の生成物もしくはプロセスの中に存在するか、その中で使用されるか、またはさもなくばそれに関連する実施形態を含む。さらに、本発明は、列挙される請求項の1つ以上から、1つ以上の限定、要素、節、説明的な用語などが別の請求項へ導入される、すべてのバリエーション、組み合わせ、および並べ換えを包含することが理解される。例えば、別の請求項に従属する任意の請求項は、同一の基礎の請求項に依存する任意の他の請求項において見い出される1つ以上の限定を含むように改変することができる。さらに、特許請求の範囲が組成物を列挙する場合、本明細書に開示される目的のいずれかのために、その組成物を使用する方法が含まれること、および本明細書に開示される作製方法のいずれかまたは当該分野において公知の他の方法に従ってその組成物を作製する方法が含まれることが、そうでないように記載される場合を除いて、または矛盾もしくは不一致が生じることが当業者に明らかである場合を除いて、理解される。
要素がリストとして、例えばマーカッシュ群形式で提示される場合、この要素の各サブグループもまた開示されること、および任意の要素が群から除去され得ることが理解される。一般的に、本発明、または本発明の局面が、特定の要素、特徴などを含むように言及される場合、本発明の特定の実施形態または本発明の局面は、このような要素、特徴などからなるか、またはこれらから本質的になることが理解されるべきである。単純化の目的のために、これらの実施形態は、本明細書において言葉通りには具体的に示されていない。「含む」という用語は、オープンであるように意図され、追加の要素または工程を含むことを許容することが注記される。
範囲が与えられている場合、端点が含まれる。さらに、そうではないように記載されているか、またはそうでなければ文脈および当業者の理解から明らかである場合を除いて、範囲として表現される値は、文脈が明確に他を指示している場合を除いて、その範囲の下限値の単位の10分の1まで、本発明の異なる実施形態において言及される範囲内の任意の特定の値または部分的範囲を想定できることが理解される。
さらに、先行技術の範囲に含まれる本発明の任意の特定の実施形態は、請求項の任意の1項以上から明確に排除され得ることが理解される。このような実施形態は当業者に公知であるとみなされるので、これらは、排除が本明細書において明確に記載されていないとしても、排除され得る。本発明の組成物の任意の特定の実施形態(例えば、任意のグリカンデコイ、任意のグリカン模倣物、任意のグリカン部分、任意のHAポリペプチド、任意のアミノ酸位置、任意のインフルエンザ株、新規なグリカンデコイを同定する任意の方法、任意の薬学的組成物、任意の投与方法など)は、先行技術の存在に関連するか否かに関わらず、任意の理由で、1つ以上の請求項から排除できる。
上記および本明細書本文にわたって議論された刊行物は、本願の出願日より前のそれらの開示のためにのみ提供される。本明細書中のどのような記載も、本発明者らが先行技術の開示によってこのような開示を予見する資格があるとの認定としては解釈されない。
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識しており、または慣用的に過ぎない実験を使用して確認できる。本発明の範囲は、上記の説明に限定されることは意図されていないが、むしろ、添付の特許請求の範囲に記載される通りである。