JP2011508016A - マイクロコンタクトプリンティング用のインク溶液 - Google Patents

マイクロコンタクトプリンティング用のインク溶液 Download PDF

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Abstract

(a)(i)沸点が約50℃〜約100℃、(ii)相対極性が約0.4未満、及び(iii)ポリ(ジメチルシロキサン)の膨潤比が約1.25未満である溶媒と、(b)1つ以上の溶解した有機硫黄化合物とを含むインク溶液であって、各有機硫黄化合物が10個以上の炭素原子を有する、インク溶液。この1つ以上の溶解した前記有機硫黄化合物は、少なくとも約3mMの合計濃度で存在し、かつそのインク溶液は、その有機硫黄化合物の固体粒子又はその有機硫黄化合物から誘導された固体粒子を本質的に含まない。

Description

本発明は、例えば自己組織化単分子膜のマイクロコンタクトプリンティングを行うのに有用なインク溶液に関連する。別の態様において、本発明はマイクロコンタクトプリンティングの方法に関連する。
マイクロコンタクトプリンティングは、例えば、官能基化分子(すなわち、化学結合を介して基材表面に結合する、又は基材表面にコーティングされる分子)のパターンを生成し、パターン化した自己組織化単分子膜(SAM)(すなわち、例えば化学結合により表面に結合した分子の単層であり、その表面に対して好ましい配向であり、かつ互いに規則正しい配向をしている)を形成するのに使用することができるプリンティング技法である。
SAMのマイクロコンタクトプリンティングを行うための基本的な方法には、レリーフパターン付きのエラストマー製スタンプ(例えばポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)スタンプ)に官能基化分子を含むインクを塗布する工程と、次にこのインクを付けたスタンプを基材表面(通常は金属又は金属酸化物の表面)に接触させることにより、スタンプと基材との間の接触領域にSAMを形成する工程とが含まれる。一般的には、溶媒に溶解した官能基化分子を含むインクについては、プリンティング性能と、分子の濃度選択を強いる実際的実行上の特定の観点との間に、両立し得ない条件が存在する。いくつかの状況においては、インク濃度が高いほど印刷時間が短縮され得るため、できる限り高濃度のインクを使用することが望ましいが、そのような高濃度を使用すると、インクの安定性に関して実際的な問題が生じていた。過去において、高濃度の安定したインク調合には、望ましくないことに、PDMSスタンプを膨潤させる溶媒(例えばヘキサン)の使用が必要とされていた。
SAMのマイクロコンタクトプリンティングに最も一般的に使用されているインクは、アルキルチオール類のエタノール溶液である。
しかしながら残念なことに、アルキルチオール類はエタノールに対して比較的溶解度と安定性が低い。エタノール中にアルキルチオール類を含むインクは、したがって、比較的低濃度のアルキルチオールを含むのが通常である。
上述の観点から、我々は、当該技術分野において、より高濃度のアルキルチオールを有するアルキルチオールインクに関しするニーズが存在することを認識している。我々は更に、PDMSがマイクロコンタクトプリンティングスタンプに最も一般的に使用されている材料であるため、このインクがPDMSとの使用に適合しなければならないことを認識している。加えて、我々はこのインクが、商業的用途に適するよう、有用な貯蔵寿命も有していなければならないことを認識している。我々はまた、スタンプ表面又はスタンプ内でのアルキルチオール分子の塗布及び一様な分布を促進するためには、インク中に含まれる溶媒が、好都合にも好ましい範囲の蒸気圧(沸点範囲で示唆される)を示し得ることを認識している。
簡単には、1つの態様において本発明は、1つ以上の溶解した有機硫黄化合物と溶媒とを含むインク溶液を提供し、この溶媒は(i)沸点が約50℃〜約100℃、(ii)相対極性が約0.4未満、及び(iii)ポリ(ジメチルシロキサン)の膨潤比が約1.25未満である。各有機硫黄化合物は、10以上の炭素原子を有し、この有機硫黄化合物は合計濃度が少なくとも約3mMで存在する。このインク溶液は、有機硫黄化合物の固体粒子、又はこの有機硫黄化合物から誘導された固体粒子を、本質的に含有しない。好ましくは、各有機硫黄化合物はチオール化合物である。より好ましくは、このそれぞれがアルキルチオールである。
本発明のインク溶液は、より高濃度のアルキルチオールを有するアルキルチオールインクに関する、当該技術分野におけるニーズを満たす。より高濃度の有機硫黄化合物(例えばアルキルチオール)は、より高速でのマイクロコンタクトプリンティングを可能にし、これによりプリンティングコストを削減することができる。更に、これらインク溶液は、PDMSとの使用に適合し、有用な貯蔵寿命を有する。
別の態様において、本発明は本発明のインク溶液を使用したマイクロコンタクトプリンティングの方法を提供する。この方法は、(a)エラストマー製スタンプに本発明のインク溶液を付ける工程と、(b)インク付けされたスタンプ表面を基材表面に接触させる工程と、を含む。インク付けされたスタンプ表面が、第一のレリーフパターンを有し、又は基材表面が第二のレリーフパターンを有し、又はこれら表面の両方ともがレリーフパターンを有する。有機硫黄化合物のパターンが、これらレリーフパターンの一方又は両方に従って、基材に転写される。
本発明のインク溶液は、1つ以上の有機硫黄化合物を含む。各有機硫黄化合物は好ましくはチオール化合物であり、より好ましくはSAMを形成するチオール化合物である。チオール類は、−SH官能基を含む化合物である。チオール類は、別名メルカプタン類とも呼ばれる。チオール基は、この化合物の分子と金属表面との間に化学結合を形成するのに有用である。本発明の有用なチオール類には、アルキルチオール及びアリールチオールが挙げられる。本発明の他の有用な有機硫黄化合物は、ジアルキルジスルフィド類、ジアルキルスルフィド類、アルキルキサンテート類、ジチオホスフェート類、及びジアルキルチオカルバメート類である。本明細書で記述されるチオール類の有用な化学構造及び置換基は、他の有機硫黄化合物にも適用される。
好ましいインク溶液は、例えば、次の直鎖アルキルチオール類のようなアルキルチオール類を含む:
HS(CH
式中、nはメチレン単位の数であり、Xはアルキル鎖の末端基である(例えば、X=−CH、−OH、−COOH、−NH、等)。好ましくはX=−CHである。本発明は、この有用な直鎖アルキルチオール類の末端基の化学的特定名に関して制限されない。有用な末端基は、例えば(1)Ulman,「Formation and Structure of Self−Assembled Monolayers,」Chemical Reviews Vol.96,pp.1533〜1554(1996);及び(2)Love et al.,「Self−Assembled Monolayers of Thiolates on Metals as a Form of Nanotechnology,」Chemical Reviews Vol.105,pp.1103〜1169(2005)に記述されているものを含む。
有用なアルキルチオール類は、直鎖アルキルチオール類(すなわち直鎖(straight chain)アルキルチオール類)又は分枝鎖状であり得、置換されていても、又は無置換でもよい。所望による置換基は好ましくは、SAMの形成を妨げない。有用である分枝鎖状アルキルチオール類の例には、直鎖アルキル主鎖の炭素原子3つごと又は4つごとに結合したメチル基を有するアルキルチオール類が挙げられる(例えばフィタニルチオール)。有用なアルキルチオール類中の鎖中置換基の例には、エーテル基及び芳香環が挙げられる。有用なチオール類には、三次元環状化合物(例えば1−アダマンタンチオール)も含まれ得る。本発明は、所望による分枝鎖構造又は任意の鎖中置換基の化学的特定名に関して制限されることはない。
好ましい直鎖アルキルチオール類は、10〜20個の炭素原子(より好ましくは12〜20個、最も好ましくは16個、18個、又は20個の炭素原子)を有する。
好適なアルキルチオール類には、市販されているアルキルチオール類が挙げられる(Aldrich Chemical Company、ウィスコンシン州ミルウォーキー)。好ましくは、インク溶液は主として溶媒及びこの有機硫黄化合物を含み、伴う不純物は、インク溶液の約5重量パーセント未満、より好ましくは約1重量パーセント未満、更により好ましくは約0.1重量パーセント未満である。アルキルチオール溶液中の一般的な不純物には、ジアルキルジスルフィド類、アルキルチオール類の酸化生成物がある。当該技術分野において既知のように、ジアルキルジスルフィド類は官能基化分子のマイクロコンタクトプリンティングパターンに有用でもある。本発明による有用なインクには、例えばアルキルチオールとジアルキルジスルフィドの混合物などの、一般的な溶媒中に溶解した異なる有機硫黄化合物の混合物を含み得る。
アリールチオール類も有用である。アリールチオール類には、芳香環に結合したチオール基がある。有用なアリールチオール類の例には、ビフェニルチオール類及びターフェニルチオール類が挙げられる。ビフェニルチオール類及びターフェニルチオール類は、さまざまな任意の位置において1つ以上の官能基で置換され得る。他の有用なアリールチオール類の例には、アセンチオール類があり、これは官能基で置換されていてもされていなくてもよい。本発明は、チオール分子内にアリール基が存在するか否かの点では制限されない。
有用なチオール類は、例えば二重結合又は三重結合の、直鎖共役炭素−炭素結合を含み得る。有用なチオール類は部分的又は完全にフッ素化され得る。
本発明のインク溶液は2つ以上の化学的に別個の有機硫黄化合物を含み得る。例えば、このインクは、異なる鎖長さを有する2種類の直鎖アルキルチオール化合物を含み得る。別の例として、このインクは異なる末端基を有する2種類の直鎖アルキルチオール化合物を含み得る。
マイクロコンタクトプリンティングは、スタンプのインク付けに無希釈の有機硫黄化合物を使用して実施されているが、溶媒ベースのインクによって行われた場合、スタンプへの有機硫黄化合物の送達はより均一に達成でき、かつ直鎖アルキルチオール類とPDMSスタンプを使用した場合のスタンプの膨潤はより少ない。このインク調合に複数の溶媒を使用することも本発明の範囲内であるが、有用な調合には、1つの溶媒で調合されたものが挙げられる。1つだけの溶媒で調合されたインクには、少量の不純物又は添加物(例えば安定剤又は乾燥剤など)が含まれ得る。
マイクロコンタクトプリンティングのためのインク調合の改良には、有機硫黄化合物を溶かすために使用する溶媒に由来する特性の組み合わせという困難があることが見出されている。マイクロコンタクトプリンティングのための溶媒含有インク調合の改良には、(i)有機硫黄化合物(例えば直鎖アルキルチオール)をより大きな安定度で(例えば貯蔵寿命)より高濃度で溶かす能力と、(ii)PDMSを過剰に膨潤させることなく、PDMSスタンプの上又は内部にこの有機硫黄化合物(例えば直鎖アルキルチオール)を装填する能力と、及び(iii)インク付けの後、乾燥によってスタンプ表面から液体溶媒を急速に除去する能力と、が同時に求められる。したがって、これらの観点における改良を備えたインク調合が本明細書で開示される。
1つ以上の有機硫黄化合物(例えばチオール化合物、好ましくは直鎖アルキルチオール化合物)が、溶媒に溶解される。重要なことは、この溶媒により、スタンプの上又は内部にこの有機硫黄化合物が急速かつ均一に付着するように乾燥挙動が調整されることである。この調整された乾燥挙動の必要性は、製造プロセスにおいて高速で処理する必要条件からくるものである。有用な溶媒は、約50℃〜約100℃(大気圧下)の間の沸点を有する。好ましくは、この溶媒は約55℃〜約85℃(大気圧下)の間の沸点を有する。より好ましくは、この溶媒は約55℃〜約77℃(大気圧下)の間の沸点を有する。
有用な溶媒は、好ましくは、マイクロコンタクトプリンティングに最も一般的に使用される材料であるPDMSとの使用に適合する(すなわち、PDMSを過剰に膨潤させることがない)。例えばトルエン及びジエチルエーテルなどのいくつかの一般的な溶媒は、PDMSを膨潤させ過ぎるため、マイクロコンタクトプリンティングにおいて効果的に使用することができない。マイクロコンタクトプリンティングにおいて、PDMSスタンプの膨潤は、パターン化特徴部のひずみを引き起こし、パターン忠実度の低下をもたらす可能性がある。インク付けアプローチ方法によっては、過剰に膨潤すると、スタンプに機械的支持を提供することが顕著に困難になる可能性もある。
本発明のインク溶液に有用な溶媒は、よって、比較的低いポリ(ジメチルシロキサン)膨潤比を有する。本明細書において「ポリ(ジメチルシロキサン)膨潤比」又は「PDMS膨潤比」は、D/Dを意味し、式中Dは溶媒中のPDMS片の長さ、Dは同じPDMS片の乾燥時の長さである。より具体的には、本明細書で使用される「ポリ(ジメチルシロキサン)膨潤比」は、Dow Corning(ミシガン州ミッドランド)から市販されているSylgard(商標)184 PDMSについて上記の式で計算される比率を指す。この膨潤比を測定する手順は、Lee et al.,「Solvent Compatibility of Poly(dimethylsiloxane)−Based Microfluidic Devices,」Analytical Chemistry Vol.75,pp.6544〜6554(2003)に記述されている。この手順を簡単にここに記述する:2つのPDMS構成成分(主剤と硬化剤)を重量比10:1(基準:硬化剤)で混合し、真空下で脱気する。主剤及び硬化剤の混合物を、厚さ約1ミリメートルのシート状に、70℃で24時間硬化させる。六角形のサンプルを、(六角形の)向かい合う辺の距離が約4ミリメートルとなるよう測定して、このシートから切り出す。このPDMS片を、試験する溶媒に25℃で24時間浸す。このPDMSサンプルを溶媒中に浸した状態で、六角形の向かい合う辺の距離(D)を立体鏡及び電荷結合素子(CCD)カメラを用いて測定し、初期距離(D)と比較する。好ましくは、この溶媒は、約1.25未満(より好ましくは約1.10未満、最も好ましくは約1.06以下)のPDMS膨潤比を有する。
有用な溶媒は、相対極性が約0.5未満である。好ましくは、有用な溶媒は、相対極性が約0.4未満である。より好ましくは、この溶媒は、相対極性が約0.2〜約0.4の間である。この相対極性は、ピリジニウム−N−フェノキシドベタイン染料の最長波長ソルバトクロミズム吸収帯についての正規化遷移エネルギーであり、詳細はSolvents and Solvent Effects in Organic Chemistry,Second Edition,C.Reichardt,VCH Verlagsgesellschaft mbH,Germany(1988)に記述されている。この正規化により、テトラメチルシランついて0.000及び水について1.000で制限される無次元の相対極性尺度が生成される。多くの溶媒の相対極性の値は、Reichardtの上記文献に見出すことができる。
ケトン類は、本発明のインク溶液に好適な溶媒であり得る。好ましい溶媒には、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等、及びこれらの組み合わせが挙げられる。アセトンは特に好ましい溶媒である。
1つ以上の有機硫黄化合物(例えばチオール化合物)が、この溶媒中に、合計濃度が少なくとも約3mMで存在する。本明細書で使用される「合計濃度」とは、溶解している有機硫黄化合物すべてを総計したモル濃度を指す。1つ以上の有機硫黄化合物(例えばチオール化合物)は、インク溶液が本質的に単相からなる状態での任意の合計濃度で存在し得る。1つ以上の有機硫黄化合物(例えばチオール化合物)は、合計濃度が少なくとも約5mM、少なくとも約10mM、少なくとも約20mM、少なくとも約50mM、又は少なくとも約100mMもの合計濃度で存在し得る。
1つの実施形態において、このインクは19個以上の炭素原子(好ましくは20個の炭素原子)を有するアルキルチオール化合物を含み、これが少なくとも濃度約3mMで存在する。別の実施形態において、このインクは17〜18個の炭素原子(好ましくは18個の炭素原子)を有するアルキルチオール化合物を含み、これが少なくとも濃度約5mMで存在する。更に別の実施形態において、このインクは10〜16個の炭素原子(好ましくは16個の炭素原子)を有するアルキルチオール化合物を含み、これが少なくとも濃度約20mMで存在する。
本発明のインク溶液は、この有機硫黄化合物の固体粒子又はこの有機硫黄化合物から誘導された固体粒子を本質的に含有しない。有機硫黄化合物の固体粒子又は有機硫黄化合物から誘導された固体粒子は、典型的には、この有機硫黄化合物の合計成分の約10重量パーセント未満、好ましくは約5重量パーセント未満、より好ましくは約1重量パーセント未満の濃度で存在する。最も好ましくは、このインク溶液は、有機硫黄化合物の固体粒子又は有機硫黄化合物から誘導された固体粒子を一切含まない(すなわちゼロ重量パーセントである)。
有機硫黄化合物の固体粒子又は有機硫黄化合物から誘導された固体粒子(以降、「有機硫黄粒子」と呼ぶ)には、例えば、有機硫黄化合物の未溶解の粒子、有機硫黄化合物の再沈殿粒子、及び有機硫黄化合物から誘導された固体の反応生成物(例えば有機硫黄化合物の酸化生成物の結晶、ゼラチン状沈殿物、又は凝集粒子)が挙げられる。
所与のインク溶液が本質的に有機硫黄粒子を含有していないかどうかを判定するためには、有機硫黄粒子を本質的に含有していないインク溶液の任意の有用な隣接体積部分が、有機硫黄粒子を含有する溶液体積部分に接触している場合であっても、有機硫黄粒子を本質的に含有しないというこの要件に適合していることが、当業者には理解されよう。インク溶液の隣接体積部分は、意図された目的で使用できるその隣接体積部分が十分にある限り、「有用な」体積であると見なされるべきである(例え、有機硫黄粒子を含有する溶液に接触している場合であっても)。いくつかの用途について、有用な体積は少なくとも約5ミリリットルである。
一方、有機硫黄粒子含有溶液のある体積部分に接触しているからといって、このことは、有機硫黄化合物を本質的に含んでいて、有機硫黄粒子を含有しないインク溶液の有用な隣接体積を必ずしも構成することにはならない。例えば、あるインク溶液を遠心分離又は重力沈殿させることによって、その上澄み溶液が有機硫黄粒子を本質的に含有しないようにできるが、その上澄み溶液は沈殿又は押し固められた有機硫黄粒子の層に接触しており、その上澄み溶液は依然として、有機硫黄粒子を本質的に含有しないという要件に適合し得る。
更に、有機硫黄粒子(例えば約10マイクロメートルを超える直径を有する粒子などの、比較的大きい有機硫黄粒子)がインク溶液中に懸濁している場合、そのインク溶液の一部分は、例えば濾過によってその部分がその有機硫黄化合物から分離された場合には、依然として、有機硫黄粒子を本質的に含有しないという要件に適合し得る。
驚くべきことに、本発明のインク溶液は、他の溶媒(例えばエタノールなど)中にアルキルチオールを含むインクよりも長い耐用期間を有し得る。いくつかの実施形態において、本発明のインク溶液は少なくとも約7日間(好ましくは少なくとも約14日間、より好ましくは少なくとも約30日間、最も好ましくは少なくとも約60日間)安定であり得る。本明細書で使用される、少なくとも「x」日間「安定」であるとは、そのインク溶液を、光曝露を制限した状態で(好ましくは光曝露がない状態で)密閉容器内に保管したときに、「x」日後に肉眼によって沈殿が何も観察されないことを意味する。安定性又は「貯蔵寿命」は、例えば下記の手順1に説明されているように測定することができる。
所望により、本発明のインク溶液は添加剤を含み得る。有用な添加剤の例は、この有機硫黄化合物を安定化するのに役立ち得る添加剤である(例えば、Srinivas et al.,「Bioanalytical considerations for compounds containing free sulfhydryl groups,」Biomedical Chromotography Vol.17,pp.285〜291(2003)に記述されているもの)。
本発明のチオールインク溶液は、マイクロコンタクトプリンティングにより、パターン化したSAMをもたらすことができる。チオール類によって形成された、パターン化したSAMは、例えばエッチングレジスト、結晶化のテンプレート、及び生物学的研究のモデル表面として有用である。当該技術分野において既知のように、有機硫黄化合物を表面にプリントすることで、表面に化学的官能基化をもたらし、これには、化合物の原子又は官能基の除去又は修飾を生じる置換反応が含まれる。この修飾の最も一般的な例は、この単層が金属(M)(例えば金)上に形成されているときの、チオール(R−SH化合物)からチオレート(R−S−M)単層への変換であり、これは例えばLove et al.,「Self−Assembled Monolayers of Thiolates on Metals as a Form of Nanotechnology,」Chemical Reviews Vol.105,pp.1103〜1169(2005)に記述されている。よって、本発明は、1つ以上の有機硫黄化合物を含むインクを使用したマイクロコンタクトプリンティングを含み、基材上に有機硫黄化合物のパターンを形成し、ここにおいてこのパターンを形成している有機硫黄化合物は、インク中の有機硫黄化合物とは化学的に異なり得る。
マイクロコンタクトプリンティングは典型的に、レリーフパターン化されたエラストマー製スタンプを利用する。スタンプを形成するための有用なエラストマーには、シリコーン類、ポリウレタン類、EPDMゴム類、及び市販されている既存のさまざまなフレキソ印刷プレート材料(例えば商品名Cyrel(商標)としてE.I.du Pont de Nemours and Company(デラウェア州ウィルミントン)から市販されているもの)が挙げられる。このスタンプは、複合材料で製造することができる。
PDMSは特に有用である。エラストマー性であり、表面エネルギーが低いため、大部分の基材からスタンプを除去するのが容易になる。PDMSは市販されている。市販されている有用なPDMS調合物の1つが、Sylgard(商標)184(Dow Corning(ミシガン州ミッドランド))である。PDMSスタンプは例えば、パターン化された型に、無架橋のPDMSポリマーを流し入れ、次いで硬化させることにより形成することができる。パターン化された特徴部は、例えばミリメートルサイズ、マイクロメートルサイズ、又はナノメートルサイズであり得る。
スタンプは、当該技術分野において既知の方法を使用して、本発明のインク溶液を「インク付け」することができる(例えば、Libioulle et al.「Contact−Inking Stamps for Microcontact Printing of Alkanethiols on Gold,」Langmuir Vol.15,pp.300〜304(1999)に記述されている)。1つのアプローチにおいては、このインク溶液を染み込ませたアプリケータ(例えば綿棒又はフォームアプリケータ)をスタンプのレリーフパターン化された表面に対してこすりつけ、次にこのスタンプ表面から溶媒を乾燥させることができる。別のアプローチにおいては、インク溶液を染み込ませた「インクパッド」に対してスタンプを押し付けることができ、このインクパッドは所望によりPDMSスラブであり得る。別のアプローチにおいて、このスタンプに、プリント面に対し裏側からインク溶液を充填することができる。後者のアプローチにおいては、この有機硫黄化合物がスタンプを通過して拡散し、プリントのレリーフパターン面に達する。あるいは、スタンプのレリーフパターンプリント面をインク溶液に浸し、次に引き上げて乾燥させることができる(「浸漬インク付け」)。上に記述したインク付け方法すべてが、レリーフパターンのスタンプ表面にインクを与え、「インク付けされた表面」をもたらす。
いったんインク付けされた後、スタンプは、有機硫黄化合物のパターンを、基材表面へと転写するのに役立つ。インク付けされたスタンプ表面がレリーフパターンを有する場合、このインク付けされた表面を、基本的に平坦である基材表面に接触させることによって、この有機硫黄化合物のパターンを基材表面に転写することができ、ここにおいて有機硫黄化合物のパターンは本質的に、スタンプのインク付けされたレリーフパターンの隆起特徴部のパターンと同一である。このようなプロセスにおいては、有機硫黄化合物のパターンが、スタンプのインク付けされた表面のレリーフパターンに従って転写されたと呼ばれる。インク付けされたスタンプ表面が本質的に平坦である場合、このインク付けされた表面を、レリーフパターンを有する基材表面に接触させることによって、この有機硫黄化合物のパターンを基材表面に転写することができ、ここにおいて有機硫黄化合物のパターンは本質的に、基材表面のレリーフパターンの隆起特徴部のパターンと同一である。このようなプロセスにおいては、有機硫黄化合物のパターンが、基材表面のレリーフパターンに従って転写されたと呼ばれる。スタンプのインク付けされた表面が、第一のレリーフパターンを有する場合、このインク付けされた表面を、第二のレリーフパターンを有する基材表面に接触させることによって、第一レリーフパターンの隆起特徴部と第二のレリーフパターンの隆起特徴部との間で接触する領域(すなわち、レリーフパターンの交点)によって画定される、有機硫黄化合物のパターンが転写される。このようなプロセスにおいては、有機硫黄化合物のパターンが、両方のレリーフパターンに従って転写されたと呼ばれる。
好ましくは、浸漬インク付けアプローチの使用における製造効率の達成にとって、インク付け時間(すなわち、スタンプがインクに接触している時間)が可能な限り短く、同時に、適切なプリンティング性能を備えたインク付けされたスタンプが得られることが望ましい。また、乾燥時間ができる限り短いことが望ましい。後者の2つの要因によって、高濃度で安定であり、かつスタンプ表面で急速に乾燥し得るインク調合に対する需要が促進される。スタンプ表面からインク溶媒を急速に蒸発させる能力は、スタンプ上又はスタンプ内のチオール分子の一様分布を、最小限の時間及び強制換気適用で達成するのに役立つ。浸漬インク付けにとって、インク付け時間は約60秒未満であることが好ましく、より好ましくは約45秒未満、より好ましくは約30秒未満、更により好ましくは約15秒未満である。引き上げと乾燥を行った後、インク付けしたスタンプは、このスタンプのレリーフパターン表面の隆起領域に接触するように、基材と接触する位置に配置され得る。有機硫黄化合物(例えばチオール類)はスタンプから基材表面上へと拡散し、ここでSAMが形成され得る。
この基材とは、SAMが形成される表面である。用語「基材」は、その表面の下にある物理的な支持体を指すのにも使用される。典型的には、この基材は、実質的に平面的な表面を含む。有用な基材は、ポリマーフィルム上あるいはガラス又はシリコンウエハ上の無機材料(例えば、多結晶材料を含む、金属又は金属酸化物材料)コーティングを含み得る。この無機材料コーティングには、例えば、元素金属、金属合金、金属間化合物、金属酸化物、金属硫化物、金属炭化物、金属窒化物、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。SAMを支持するための代表的な金属表面には、金、銀、パラジウム、プラチナ、ロジウム、銅、ニッケル、鉄、インジウム、スズ、タンタル、及びこれら元素の混合物、合金、化合物が挙げられる。金が、好ましい金属表面である。ポリマーフィルムあるいはガラス又はシリコンウエハ基材上の金属コーティングは、例えば約10〜約1000ナノメートルの、任意の厚さであり得る。無機材料コーティングは、例えばスパッタリング、蒸着、化学蒸着、又は化学溶液堆積法(無電解めっきを含む)などの任意の便利な方法を使用して堆積させることができる。
必要なプリンティング時間(すなわち、スタンプと基材との接触持続時間)は、例えばインク溶液の(or)濃度及びスタンプに適用される圧力などのさまざまな要素に依存する。いくつかの実施形態において、プリント時間は1分未満である(好ましくは約30秒未満、より好ましくは約10秒未満、最も好ましくは約5秒未満である)。
レリーフ構造のスタンプ(スタンプのレリーフパターンによって画定される有機硫黄化合物のパターン)を用いて、本質的に平坦な基材上に、有機硫黄化合物(好ましくはチオール化合物)のパターンをマイクロコンタクトプリンティングするためのインクを使用することに加えて、このインクは、本質的に平坦なスタンプ又はプリンティングプレート(基材のレリーフパターンによって画定される有機硫黄化合物のパターン)を使用して、レリーフ構造の基材上に、有機硫黄化合物(好ましくはチオール化合物)のパターンをマイクロコンタクトプリンティングするのに有用である。米国特許第6,518,168号には、この「逆」マイクロコンタクトプリンティングが記述されている。
マイクロコンタクトプリンティングは、本発明のチオールインク溶液からパターン化したSAMを形成するのに好ましい方法であるが、他のパターニング方法も使用できることを理解すべきである。SAMをパターニングするための他の既知の方法には、例えば、インクジェットプリンティング、官能基の勾配構成の使用、及び形態的に導かれたアセンブリが挙げられる。
本発明のチオールインク溶液から形成されたパターン化したSAMは、これに続くパターニング工程中で下層の基材表面領域を保護するレジストとして使用することができる。例えば、パターン化したSAMは、エッチングマスクを提供することができる。エッチングマスクとして、SAMで覆われた基材表面領域(例えば、ポリマーフィルム基材上の金属コーティング表面)は、エッチング液の化学作用から保護され、このときSAMで覆われていない基材表面領域は、この保護されていない部分で材料の選択的除去が可能になる(例えばポリマーフィルム基材から金属が除去される)。別の方法としては、パターン化したSAMは、めっきマスクを提供することができる。めっきマスクとして、SAMで覆われた基材表面領域(例えば、ポリマーフィルム基材上の触媒金属コーティング表面)は、無電解めっき浴からの金属析出に対して非触媒性になっていて、一方SAMで覆われていない基材表面領域は、露出したまま、触媒活性を保持し、この保護されていない部分において、無電解で析出した金属の選択的配置が可能になる。他の材料のパターニングにおけるマスクとしての、パターン化されたSAMの適用方法は、当該技術分野において既知である(例えば米国特許第5,512,131号)。
本発明の目的及び利点は、下記の実施例によって更に詳しく説明されるが、これらの実施例に記載されている具体的な材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものとして解釈されるべきではない。
インク実施例
材料
エタノール(PHARMCO−AAPER and Commercial Alcohols(ケンタッキー州シェルビービル)、製品説明:アルコール、200プルーフ、無水(absolute)、無水(anhydrous)、ACS/USPグレード)
アセトン(EMD Chemicals Inc.,division of Merck KGaA(ドイツ・ダルムシュタット)、製品番号AX0120−6)
1−ヘキサデカンチオール(Alfa−Aesar(マサチューセッツ州ウォードヒル)、カタログ番号L15099)
1−オクタデカンチオール(98%、Aldrich Chemical Company(ウィスコンシン州ミルウォーキー)、カタログ番号O1858)
1−エイコサンチオール(Robinson Brothers(英国・ウェストブラミッジ))
シリンジフィルター(Pall Corporation(ニューヨーク州イーストヒルズ)、製品名Acrodisc CR 25mmシリンジフィルター、0.2マイクロメートルPTFE膜付き)。
ガラス製バイアル(Wheaton(ニュージャージー州ミルビル)、20mL透明ガラス、POLY−SEALキャップ付き)
手順1
標的濃度で約10ミリリットルの溶液を調製するため、当該技術分野において既知のように、アルキルチオールの分子量及び溶媒の密度に基づいて、アルキルチオール及び溶媒の適切な量を計算した。上記の材料は、納品された状態で使用した。アルキルチオールはガラス製バイアル中で秤量した。溶媒はガラス製バイアル中で秤量した。バイアルのキャップを閉めた。エタノール溶液については、混合物を電磁攪拌棒で4時間攪拌した。アセトン溶液については、混合物を電磁攪拌棒で1時間攪拌した。溶解後、この溶液をシリンジフィルターを使用して濾過し、ガラス製バイアル内に密封し、しっかりとキャップをし、アルミホイルで包んだ。このバイアルを経時的に調べ、視認可能な粒子の沈殿が生じた時期を判定した。視認可能な沈殿が形成されるまでの時間を、このインク溶液の貯蔵寿命とした。
実施例1〜6及び比較実施例1C〜6C:ヘキサデカンチオールインク
手順1に従って、表1に記載の濃度及び溶媒識別により、溶液を調製した。すべての場合について、チオールは1−ヘキサデカンチオールであった。沈殿までの時間に関する記載が「>210」となっているものは、最後の検査時(210日目)においても沈殿がまだ生じていなかった。
Figure 2011508016
実施例7〜11及び比較実施例7C〜11C:オクタデカンチオールインク
手順1に従って、表2に記載の濃度及び溶媒識別により、溶液を調製した。すべての場合について、チオールは1−オクタデカンチオールであった。沈殿までの時間に関する記載が「>210」となっているものは、最後の検査時(210日目)においても沈殿がまだ生じていなかった。N/Aと記載されているのは、標的濃度が明らかに溶解度限界を超えている(すなわち、チオールが完全には溶解しない)調合を示す。
Figure 2011508016
実施例12〜17及び比較実施例12C〜17C:エイコサンチオールインク
手順1に従って、表3に記載の濃度及び溶媒識別により、溶液を調製した。すべての場合について、チオールは1−エイコサンチオールであった。沈殿までの時間に関する記載が「>120」となっているものは、最後の検査時(120日目)においても沈殿がまだ生じていなかった。
Figure 2011508016
マイクロコンタクトプリンティング実施例
材料
エタノール(PHARMCO−AAPER and Commercial Alcohols(ケンタッキー州シェルビービル)、製品説明:アルコール、200プルーフ、無水(absolute)、無水(anhydrous)、ACS/USPグレード)
アセトン(EMD Chemicals Inc.,division of Merck KGaA(ドイツ・ダルムシュタット)、製品番号AX0120−6)
1−ヘキサデカンチオール(Alfa−Aesar(マサチューセッツ州ウォードヒル)、カタログ番号L15099)
硝酸第二鉄(J.T.Baker(ニュージャージー州フィリップスバーグ)、製品番号2018−01)
チオ尿素(Aldrich Chemical Company(ウィスコンシン州ミルウォーキー)、カタログ番号T8656−100G)
PDMS(Dow Corning Corporation(ミシガン州ミッドランド)、製品Sylgard(商標)184)
金コーティングポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム基材(PEN:E.I.du Pont de Nemours and Company(デラウェア州ウィルミントン)、製品TEIJEN(商標)TEONEX(商標)Q65FA;70ナノメートル膜厚に金をスパッタコーティングしたもの)
手順2
インク溶液は、適切な量の1−ヘキサデカンチオールをアセトン又はエタノールに攪拌により溶かすことによって調製し、密封したガラス製バイアルに保管した。メーカーの推奨に従って混合した10:1の二成分調合物を、フォトレジストパターンを有するシリコンウエハにより金型成形して(85℃で12時間)、PDMSスタンプを調製した。このフォトレジストは、深さ約50マイクロメートルのレリーフパターンを画定した。このフォトレジストパターンは、平面状であり、約2ミリメートル間隔で離れた0.5ミリメートル幅の窪んだ線を含んでいた。これにより、PDMSスタンプには、深さ50マイクロメートルのレリーフパターンを備えたスタンプ表面が含まれ、この平面パターンには、約2ミリメートル間隔で離れた0.5ミリメートル幅の隆起した線が含まれていた。金を選択的に除去する(及びこれにより金のパターニングを行う)ためのエッチング溶液は、適切な量の硝酸第二鉄及びチオ尿素を脱イオン水中に溶かして、各試薬の分子量及び水の密度に基づき、それぞれ濃度20mM及び30mMの溶液を調製した。エッチング液は試薬を攪拌することにより調製され、同日中に使用された。プリンティングについては、PDMSスタンプのスタンプ表面をインク溶液に所定の時間浸漬し、加圧窒素を吹き付けて乾燥させ、所定の長さの時間(「プリント時間」)金コーティング表面に接触させてから離した。プリンティング後、このプリントされた表面をエッチング溶液に20分間浸漬した。結果として得られた金コーティングのパターンを、光学顕微鏡の透過モードを使用して50Xで調べた(Olympus DP12デジタルカメラを備えたOlympus Model BH−2、Olympus Optical Co.Ltd(日本・東京))。
実施例18及び比較実施例18C
アセトン対エタノール中の1−ヘキサデカン系インク溶液について、それぞれ比較可能な、望ましい安定性(例えば、上記実施例において記述されている貯蔵寿命)をもたらすよう、濃度が選択された。エタノール中に10mMの1−ヘキサデカンチオールを含むインク溶液(実施例18C)(180日間=貯蔵寿命6ヶ月間)のプリンティング性能を、アセトン中に50mMの1−ヘキサデカンチオールを含むインク溶液(実施例18)(>210日間=貯蔵寿命>7ヶ月間)のプリンティング性能と比較した。浸漬インク付け時間はそれぞれの場合において40秒間であった。金コーティングフィルム基材とのスタンプ接触時間(「プリント時間」)はそれぞれの場合において5秒間であった。スタンプ後、この金コーティングフィルム基材のエッチングを行い、結果としてスタンプされていない領域から金を除去した。実施例18で、スタンプされている領域に残っている金は、光学顕微鏡を使用した検査に基づき、光学的密度及びピンホール密度が、開始時の金コーティングフィルムと同一であることが観察された。これに対し、比較例18Cでは、スタンプされている領域に残っている金は、光学顕微鏡を使用した検査に基づき、開始時の金コーティングフィルムに比べて、光学的密度が低下し(すなわち、不適切な保護のためにエッチング工程で薄くなったことを示す)、より高いピンホール密度を有していた。
本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、さまざまな修正及び変更が本発明に対して行われることが、当業者には明白であろう。本発明は、本明細書に記載されている説明のための実施形態及び実施例によって不当に制限されることを意図するものではなく、これら実施例及び実施形態は、下記に記載される請求項によってのみ限定される本発明の範囲で、例としての目的に限定して提示されるものであることが、理解されるべきである。

Claims (28)

  1. (a)(i)約50℃〜約100℃の間の沸点と、(ii)約0.4未満の相対極性と、(iii)約1.25未満のポリ(ジメチルシロキサン)膨潤比とを有する溶媒、及び
    (b)それぞれ10個以上の炭素原子を有する、1つ以上の溶解した有機硫黄化合物を含むインク溶液であって、
    1つ以上の溶解した該有機硫黄化合物が、少なくとも約3mMの合計濃度で存在し、該有機硫黄化合物の固体粒子又は該有機硫黄化合物から誘導された固体粒子を本質的に含まない、インク溶液。
  2. 前記溶媒が約55℃〜約77℃の沸点を有する、請求項1に記載のインク溶液。
  3. 前記溶媒が約0.2〜約0.4の相対極性を有する、請求項1又は2に記載のインク溶液。
  4. 前記溶媒が約1.10未満のポリ(ジメチルシロキサン)膨潤比を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインク溶液。
  5. 各有機硫黄化合物がチオールである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインク溶液。
  6. 各チオール化合物が10〜20個の炭素原子を有する、請求項5に記載のインク溶液。
  7. 各チオール化合物が16個、18個、又は20個の炭素原子を有する、請求項6に記載のインク溶液。
  8. 前記の1つ以上の溶解した有機硫黄化合物が、少なくとも約5mMの合計濃度で存在する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のインク溶液。
  9. 前記の1つ以上の溶解した有機硫黄化合物が、少なくとも約10mMの合計濃度で存在する、請求項8に記載のインク溶液。
  10. 前記の1つ以上の溶解した有機硫黄化合物が、少なくとも約20mMの合計濃度で存在する、請求項9に記載のインク溶液。
  11. 前記の1つ以上の溶解した有機硫黄化合物が、少なくとも約100mMの合計濃度で存在する、請求項10に記載のインク溶液。
  12. 前記有機硫黄化合物の固体粒子又は前記有機硫黄化合物から誘導された固体粒子が、該有機硫黄化合物の合計含量の約10重量パーセント未満の量で前記インク溶液中に存在する、請求項1〜11のいずれか一項に記載のインク溶液。
  13. 前記有機硫黄化合物の固体粒子又は前記有機硫黄化合物から誘導された固体粒子が、該有機硫黄化合物の合計含量の約5重量パーセント未満の量で前記インク溶液中に存在する、請求項12に記載のインク溶液。
  14. 前記有機硫黄化合物の固体粒子又は前記有機硫黄化合物から誘導された固体粒子が、該有機硫黄化合物の合計含量の約1重量パーセント未満の量で前記インク溶液中に存在する、請求項13に記載のインク溶液。
  15. 前記インク溶液が、前記有機硫黄化合物の固体粒子又は前記有機硫黄化合物から誘導された固体粒子を含まない、請求項14に記載のインク溶液。
  16. 前記の1つ以上の溶解した有機硫黄化合物が、10〜16個の炭素原子を有するアルキルチオールであり、かつ少なくとも約20mMの濃度で存在する、請求項1〜15のいずれか一項に記載のインク溶液。
  17. 前記の1つ以上の溶解した有機硫黄化合物が、17〜18個の炭素原子を有するアルキルチオールであり、かつ少なくとも約5mMの濃度で存在する、請求項1〜15のいずれか一項に記載のインク溶液。
  18. 前記の1つ以上の溶解した有機硫黄化合物が、19個以上の炭素原子を有するアルキルチオールであり、かつ少なくとも約3mMの濃度で存在する、請求項1〜15のいずれか一項に記載のインク溶液。
  19. 前記インク溶液が少なくとも14日間安定である、請求項1〜18のいずれか一項に記載のインク溶液。
  20. 前記インク溶液が少なくとも30日間安定である、請求項19に記載のインク溶液。
  21. 前記インク溶液が少なくとも60日間安定である、請求項20に記載のインク溶液。
  22. (a)エラストマー製スタンプに請求項1の前記インク溶液をインク付けする工程と、
    (b)該スタンプのインク付けされた表面を、基材の表面に接触させる工程と、を含むマイクロプリンティング方法であって、
    該スタンプのインク付けされた表面が、第一のレリーフパターンを有し、又は該基材の表面が第二のレリーフパターンを有し、又はこれら該表面の両方ともが該レリーフパターンを有し、かつ、
    有機硫黄化合物のパターンが、これら該レリーフパターンの一方又は両方に従って、該基材に転写される、マイクロコンタクトプリンティングの方法。
  23. 前記スタンプの前記のインク付けされた表面が、ポリ(ジメチルシロキサン)を有する、請求項22に記載の方法。
  24. 前記有機硫黄化合物を有していない前記基材の前記部分をエッチングする工程を更に含む、請求項22又は23に記載の方法。
  25. 前記有機硫黄化合物の前記パターンが、ミリメートルサイズの特徴部を有する、請求項22〜24のいずれか一項に記載の方法。
  26. 前記スタンプの前記インク付けされた表面が、第一のレリーフパターンを有し、かつ前記基材の前記表面がレリーフパターンを有さない、請求項22に記載の方法。
  27. 前記基材の表面が、第二のレリーフパターンを含み、前記スタンプのインク付けされた表面がレリーフパターンを含まない、請求項22に記載の方法。
  28. 前記方法が10秒以下のプリント時間を有する、請求項22に記載の方法。
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