JP2011257501A - 液体型光学素子及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】使用温度範囲に渡って、接し合う液体間の密度差を抑制することが可能で、光学性能の低下を小さく抑えることができる液体型光学素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】液体型光学素子101は、複数種類の液体105、106を使用し、液体間の界面107の形状を変化させることで光学特性を変化させる。一方の液体106は、複数の物質の混合の割合によって密度調整可能な液体であり、液体105、106の密度の一致する温度が所定の温度範囲にある様に複数の物質を混合して作られる。所定の温度範囲は、使用温度範囲内における液体105、106の複数の温度での密度差の所定の計算式による値が最小値となるときの液体105、106の密度の一致する温度を含む。

【選択図】図1

Description

本発明は、単一のレンズにおいて焦点距離を変化させることが可能な液体型可変焦点レンズなどの液体型光学素子及びその製造方法に関する。
近年、従来のガラスや樹脂材料で作製されたレンズに代わる光学素子として、異なる2種類以上の液体を筐体内部に充填し、電圧を印加することで液体間の界面形状を変化させる液体型光学素子が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1では、液体型光学素子が環境温度の影響を受け難くするために、一部に断熱材を設けた液体型光学素子が開示されている。特許文献1には、使用する環境温度によって液体の物理特性が変化することも記載されている。一方、複数の液体を用いた多層型液体型可変焦点レンズにおいて、使用する液体の密度をほぼ等しくすることで、レンズの役割を果たす液体間の界面が重力の影響を受け難くなるということは公知である。
特開2009-25524号公報
しかし、特許文献1の液体型光学素子では、液体の全周を断熱材で覆っていないため、使用している液体は環境温度の影響を受ける可能性がある。また、複数の液体の密度をほぼ等しくしても、液体型可変焦点レンズを或る温度範囲の中で使用する場合には、液体の体積膨張係数が等しくなければ環境温度によって密度差が生じる。これに対処するために特許文献1の技術を適用したとしても、上記可能性があるので、充分な効果があるとは言い難い。更に、複数の液体について、密度を揃えるとともに体積膨張係数を揃えることは非常に困難である。従って、液体型光学素子における現在の技術状況では、温度変化によって密度差が発生し、レンズ機能を果たす液体間の界面が重力の影響を受け、光学性能の劣化に繋がってしまう可能性が存在することになる。
上記課題に鑑み、本発明の液体型光学素子は次の特徴を有する。筐体に充填された少なくとも2種類の液体を使用し、接し合う2種類の液体間の界面形状を変化させることで光学特性を変化させることが可能な液体型光学素子である。接し合う2種類の液体のうちの一方の液体は、複数の物質を混合して作られた液体であって複数の物質の混合の割合によって密度調整可能な液体である。そして、T1℃からT2℃の使用温度範囲内における2種類の液体の複数の温度での密度差の所定の計算式による値が最小値となるときの2種類の液体の密度の一致する温度をT3℃とするとき、前記一方の液体は、次の如く作られたものである。すなわち、前記一方の液体は、前記接し合う2種類の液体の密度の一致する温度T℃がT3℃を含む所定の温度範囲にある様に前記複数の物質を混合して作られた液体である。
また、上記課題に鑑み、本発明の液体型光学素子の製造方法は次の工程を有する。T1℃からT2℃の使用温度範囲内における接し合う2種類の液体の複数の温度での密度差の所定の計算式による値が最小値となるときの前記接し合う2種類の液体の密度の一致する温度T3℃を求める。そして、前記一方の液体を、前記接し合う2種類の液体の密度の一致する温度T℃がT3℃を含む所定の温度範囲にある様に前記複数の物質を混合して作る。
本発明によれば、接し合う2種類の液体のうちの一方を複数の物質を混合して作り、複数の物質の混合の態様を上記の如く調整するので、使用温度範囲全般に渡って、接し合う液体間の密度差を抑制することが可能となる。これにより、重力の影響を低減させ、光学素子の光学性能の低下を小さく抑えることが可能となる。
本発明の液体型光学素子の実施例1の構成を説明する図。 実施例1を説明する図。 実施例1を説明する図。 実施例1を説明する図。 実施例1を説明する図。 本発明の液体型光学素子の実施例2を説明する図。 実施例2を説明する図。 本発明の液体型光学素子の実施例3の構成を説明する図。 実施例3を説明する図。
2種類以上の液体を使用し、接し合う2種類の液体間の界面形状を変化させることで光学特性を変化させることが可能な本発明の液体型光学素子及びその製造方法は、次の様な特徴を有する。すなわち、接し合う2種類の液体のうちの一方の液体は、複数の物質を或る混合割合ないし混合態様で混合したもので、密度調整可能な液体である。そして、使用温度範囲内における他方の液体と所定の混合態様で作られた前記一方の液体の複数の温度での密度差の所定の計算式による値が最小値となるときの両液体の密度の一致する温度をT3℃とする。これを前提として、両液体の密度の一致する温度T℃が所定の範囲(例えば、T3−3<T<T3+3の範囲)にある様な混合態様で複数の物質を混合させて前記一方の液体が作られる。混合態様は、例えば、液体物質同士であれば混合容量比に係り、液体物質と結晶物質であれば混合重量パーセントなどに係る。密度差の所定の計算式による値は、密度差の大きさの全体的な分布を表す指標であればどの様なものでもよく、典型的には密度差の2乗和や絶対値の和などがある。こうした考え方に基づき、本発明の液体型光学素子及びその製造方法は、上記課題を解決するための手段のところで述べた様な構成を有する。より具体的には、前記一方の液体は、次の様な工程を経て複数の物質を混合して作ることができる。まず、前記他方の液体の密度の使用温度範囲における変化データを得ておく。これは、実際の測定で得てもよいし、変化を表す関数を作ることができれば、それを用いてもよい。前記一方の液体の密度の使用温度範囲における変化データも同様にして得る。前記一方の液体の場合は、混合比などの混合態様を変化させて、各混合態様に対して液体の密度の使用温度範囲における変化データを得る。そして、前記他方の液体の変化データと各混合態様における前記一方の液体の密度の変化データから、密度差の所定の計算式による値を求めて、この値が最小値となる前記一方の液体の混合比などの混合態様を見出す。この混合態様の前記一方の液体を用いるのであれば、これで、接し合う2種類の液体を作成するためのデータの取得は完了する。
この混合態様を含む或る許容範囲の混合態様で前記一方の液体を作りたい場合は、次の様にする。前記密度差の所定の計算式による値が最小値となる前記一方の液体の混合態様において、密度差がゼロとなる温度を見出す。そして、この温度を含む所定範囲内に密度差ゼロの温度がある前記一方の液体の混合態様を見出し、これを、使用可能な前記一方の液体の混合態様とする。この所定範囲は、光学素子に要求される性能、使用温度範囲などにより異なる。例えば、使用温度範囲の7パーセントから15パーセント程度の範囲とすることができる。例えば、使用温度範囲が80℃とすれば8℃として、密度差ゼロの温度を中心に±4℃としたり、使用温度範囲が40℃とすれば6℃として、密度差ゼロの温度を中心に±3℃としたりする。
以下、具体的な実施例を説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
本発明に係る液体型光学素子の実施例1の構成について図1を用いて説明する。本実施例は、焦点距離を変化させることが可能な液体型光学素子であってエレクトロウェッティング現象を用いた可変焦点レンズ101に関する。
本実施例では、円筒形状の枠体102の内部を封止する様に枠体102の両端にガラス103、104を取り付けて筐体を構成する。ここではガラスを用いているが、光透過性の物質であればガラスでなくてもよい。ガラス103、104で封止された枠体102の内部には、絶縁性の第1の液体105と導電性の第2の液体106が充填され封入されている。第1の液体105と第2の液体106は互いに混和することはない。そのため、第1の液体105と第2の液体106の接し合う部位に界面107が形成される。界面107は、第1の液体105と第2の液体106が夫々接する物質(下記の絶縁膜110を含む)との界面エネルギと静電エネルギとの総エネルギが安定する形状を形成する。第1の液体105と第2の液体106は互いに異なる屈折率を有する。更に、第1の液体105と第2の液体106の密度が互いに異なると、重力の影響を受け、第1の液体105と第2の液体106が接し合う界面が球面形状にならなくなるため、両液体は密度がほぼ等しい物質である。
枠体102の内周には第1の電極108が配置されている。更に第1の電極108とは別に、第2の液体106と接する様に第2の電極109が配置されている。第1の電極108が第1の液体105や第2の液体106と接する側、すなわち内周部側には、絶縁性の絶縁膜110が形成され、第1の電極108に電圧を印加した際に、導電性の第2の液体106と導通しない構成となっている。こうした構成で、第1の電極108と第2の電極109の間に電圧を印加することによって、界面107の静電エネルギを変化させ、例えば、図1の状態から図2の状態に、第1の液体105と第2の液体106が接する界面107の球面形状を変化させられる。
上記構成における第1の液体105と第2の液体106について詳しく説明する。第1の液体105は、シリコーンオイル等の絶縁性の液体である。本実施例では、20℃の温度において屈折率が1.55、密度が1.065g/cm3の特性を持つシリコーンオイルを用いる。第2の液体106は、密度が3.2g/cm3と水の密度よりも大きい電解質である臭化ナトリウムを水に溶かしたものを用いる。水に所定の重量パーセントの臭化ナトリウムを溶かし、屈折率が1.41、密度が1.065g/cm3であって、20℃において第1の液体105の密度に揃えた導電性の第2の液体106とする。
前述した様に、第1の液体105と第2の液体106は、20℃において屈折率差を有するが密度は等しい。しかし、体積膨張係数までを等しくすることは困難である。そのため、20℃においては密度が等しいが、高温側や低温側に温度が変化した場合は、体積膨張係数が異なるために第1の液体105と第2の液体106との間に密度差が生じる。
本実施例の可変焦点レンズ101の使用温度範囲は0℃から80℃であり、第1の液体105の20℃における密度は前述した様に1.065g/cm3であり、体積膨張係数は0.73×10-3である。同様に第2の液体106の20℃における密度は1.065g/cm3であり、体積膨張係数は0.54×10-3である。これらの物理量において、0℃から80℃までの第1の液体105と第2の液体106の密度は図3に示す様な模式的変化を示す。図3中の実線301が第1の液体105のグラフを表し、破線302が第2の液体106のグラフを表している。こうしたデータは、例えば、20℃で密度の一致する様に第2の液体106の臭化ナトリウムの重量パーセントを調整し、それから使用温度範囲で温度を変化させて第1の液体105と第2の液体106の密度を測ることで得られる。図3に示す様に、20℃においては密度が等しいが、使用温度範囲の高温側である80℃においては、0.012 g/cm3の密度差(第1の液体105が大きい)が生じる。同様に、使用温度範囲の低温側の0℃においては、0.0006 g/cm3の密度差(第2の液体106が大きい)が生じる。密度差が生じた場合、図4に示す様に界面107が重力の影響を受けて、実線で示す球面形状から頂点位置が重力方向に下がり、重力方向に非対称な界面401の形状(破線で示す)となる。その結果、光線の光路が所望の経路からずれ、光学性能を低下させることになる。
そこで本実施例では、次の様にする。設定された0℃から80℃の使用温度範囲全般で密度差を小さくするために、第2の液体106の密度を第1の液体105の密度に対して調整する。具体的には、例えば、第2の液体106における臭化ナトリウムの溶解量を減らすことで、第2の液体106の密度を小さくし、図5中の矢印Aの方向に、第2の液体106の密度のグラフ(破線501で示す)を移動させる。或いは、逆に臭化ナトリウムの溶解量を増やすことで、図5中の矢印Aとは反対方向に移動させる。ここでは、第2の液体106を矢印Aの方向に移動させることによって、0℃から80℃の使用温度範囲全般において第1の液体105と第2の液体106の密度差を小さくすることが可能となる。使用温度範囲全般において密度差を最小にするには、例えば、第1の液体105と第2の液体106の各温度における密度差の2乗和が最小値Pとなる様に第2の液体106の密度(すなわち臭化ナトリウムの重量パーセント)を調整すればよい。
この最小値となる臭化ナトリウムの重量パーセントを求めるには、例えば、次の様にする。適当な重量パーセントから出発して、重量パーセントを変化させ、各重量パーセントの第2の液体106の密度の使用温度範囲における変化データを得る。そして、別に得た第1の液体105の密度の変化データと合わせて、密度差の2乗和が最小値Pとなる第2の液体106の臭化ナトリウムの重量パーセントを得る。或いは、使用温度範囲内の適当な温度で密度の一致する様に第2の液体106の重量パーセントを調整し、そこから温度を変化させて得た第2の液体106の密度の変化データと第1の液体105の密度の変化データとから、密度差の2乗和を得る。そして、少しずつ第2の液体106の重量パーセントを変化させて密度差の2乗和の変化を調べることで、最小値Pとなる第2の液体106の重量パーセントを求める。一般に、密度差が最小値となる重量パーセントの第2の液体106では、密度の一致する温度は概ね使用温度範囲の中間辺りであるということができる。従って、その近くの温度で密度の一致する様に第2の液体106の重量パーセントを調整して数点の温度で変化データを求めれば、密度差を計算できることが多い。この場合、必要ならば、補間法を利用して変化データを求めて、密度差を計算することもできる。そして、重量パーセントを少しずつ変えて変化データを求めて密度差を計算することを繰り返し、各重量パーセントにおいて密度差を求めて、それが最小値となる重量パーセントを求める。この重量パーセントを変化させる場合も、データを採る重量パーセントの値を数点に抑えて、必要ならば、補間法を利用することができる。この様にして、密度差が最小値となる臭化ナトリウムの重量パーセントを求めることができる。
本実施例において、密度の関数に基づき変化データを求め、これから目標とする重量パーセントを求めることもできる。ここで、第1の液体105の体積膨張率をα1、第2の液体の体積膨張率をα2とし、使用温度範囲の最低温度T1℃における第1の液体の密度をρ1、第2の液体の密度をρ2とする。このとき、使用温度範囲内のT’℃において、第1の液体の密度ρ1’、第2の液体の密度ρ2’は次の関数で表される。
ρ1’=ρ1/(1+α1)(T’-T1)
ρ2’=ρ2/(1+α2)(T’-T1)
前述した第1の液体105と第2の液体106の物理量においては、第1の液体105と第2の液体106の密度変化を表した関数の交点(密度が一致する点)が39.5℃となるときにPの最小値が得られる。そのため、20℃において第1の液体105と第2の液体106の密度を合わせるのではない。図5に示す様に第1の液体105と第2の液体106の密度のグラフが39.5℃で交わる様に第2の液体106の密度(すなわち臭化ナトリウムの重量パーセント)を調整する。つまり、第2の液体106の密度変化が図5中の破線501となる様に第2の液体106の密度を第1の液体105の密度に対して合わせる。このとき、臭化ナトリウムの重量パーセントに応じて、最低温度T1での第2の液体106の密度を計算し、この値を上記2番目の関数に代入して第2の液体の密度ρ2’の関数を求める。第2の液体の体積膨張率α2は、臭化ナトリウムの重量パーセントが変化しても一定であると看做せるとする。
39.5℃において第1の液体105の密度は1.05 g/cm3であるので、第2の液体106の密度を39.5℃において1.05g/cm3となる様に調整する。これによって、0℃において第1の液体105と第2の液体106の密度差は0.008g/cm3となるが、80℃においても第1の液体105と第2の液体106の密度差は0.008g/cm3となる。20℃の温度で第1の液体105と第2の液体106の密度を等しくする様に調整した場合は、最大で0.012g/cm3の密度差を生じさせていた。これに対して、使用温度範囲や上記関数を考慮した上記密度調整を行うことで、使用温度範囲全般において最大0.008g/cm3の密度差に抑えられる。この様に、いわゆる常温下で第1の液体105と第2の液体106の密度を調整するのではなく、可変焦点レンズ101の使用温度範囲を考慮して、第1の液体105と第2の液体106の密度調整を行う。その結果、2液体間の密度差の使用温度範囲における最大値を低減させることが可能となり、可変焦点レンズ101の光学性能の低下を抑制することが可能となる。
以上の様に、第2の液体106の密度調整を39.5℃の温度状態で行うことで、第1の液体105と第2の液体106を同密度に調整すればよく、こうすれば密度調整が簡単になる。ただし、20℃の常温下においても、第2の液体106の合わせ込む密度が既知であれば、20℃の状態で複数の物質を調合してもよい。
上記説明では、第1の液体105と第2の液体106の各温度における密度差の2乗和が最小値Pとなるのが最も望ましいと説明した。しかし、密度差の2乗和がPからずれた一定の範囲にあるときでも、場合によっては許容される。例えば、図5において39.5℃に対して±3℃の範囲で第1の液体105と第2の液体106の密度が一致する様に、第2の液体106の密度調整を行うこともできる。ここでは、密度差が最小値となるときに密度差がゼロとなる温度(ここでは39.5℃)から所定値(ここでは±3℃以内の値)ずれた温度で密度差がゼロとなる臭化ナトリウムの重量パーセントを調整する。こうした場合でも、使用温度範囲内では第1の液体105と第2の液体106の最大密度差が0.0087g/cm3以下となるために、本発明を適用しない場合(上記0.012g/cm3の場合)に対して、約75%に密度差を小さくすることができる。この様に、密度差の2乗和がPからずれた一定の範囲でも、光学性能の低下を小さく抑制することが可能である。
レンズ101の口径が大きくなるにつれて密度差の影響は大きくなり、光学性能を低下させる。前述した第1の液体105と第2の液体106の屈折率差が0.15の場合、レンズ口径がφ5以上となると、光学性能の低下を抑えるためには密度差を0.01g/cm3以下に抑える必要がある。よって、この様な場合、本発明の効果が大きくなる。また、可変焦点レンズ101の使用温度範囲が広くなるほど、上限温度や下限温度における密度差が大きくなる。そのため、可変焦点レンズ101の使用温度範囲の上限温度と下限温度の温度差が40℃以上ある場合に本発明を適用することで、光学性能の低下の抑制効果が大きくなる。本実施例ではエレクトロウェッティング現象を用いた液体型可変焦点レンズの例を示した。しかし、複数の液体の総容量は一定に保って容量の比を変化させることで接し合う2種類の液体間の界面形状を変化させる方式などの他の方式を用いた液体型可変焦点レンズにも本発明を適用できる。
以上説明した様に、可変焦点レンズ101内の複数の液体において、使用温度範囲全般で密度差を小さくする様に一方の液体の密度(混ぜる物質の重量パーセントや混合比など)を他方の液体に対して調整することで、光学性能の低下を抑制できる。
(実施例2)
本発明の実施例2について説明する。本実施例で用いる焦点距離可変な液体型光学素子である可変焦点レンズ101は、図1の構成と同様である。従って、図1の符号を用いて説明する。
実施例1と異なるのは、可変焦点レンズ101の使用温度範囲を10℃から50℃と設定していることである。本実施例では使用温度範囲が実施例1よりも小さく、使用温度範囲内での温度と密度の関係は、図6に示す様に線形関数近似とできる。図6中の実線601は第1の液体105のグラフを表し、破線602は第2の液体106のグラフを表している。そのため、本実施例では、使用温度範囲全般に渡って第1の液体105と第2の液体106の密度差が小さくなる様に密度を調整するために、使用温度範囲の下限温度T1℃と上限温度T2℃の中間温度(T1+T2)/2℃で密度が等しくなる様にする。この考え方は、密度差が最小値となる温度をこの中間温度と看做すものであって、原理は実施例1と同じである。一般的な液体の密度の温度変化を考慮すれば、使用温度範囲が40℃程度であれば、密度差ゼロの温度は使用温度範囲の中間にあると近似できる。そこで、これを達成する第2の液体106の混合比などを見出し、この中間温度を中心として所定範囲内に密度差ゼロの温度がある混合比などを見出し、これを、利用可能な混合比などとする。
本実施例では使用温度範囲を10℃から50℃としているので、図7に示す様に30℃で第1の液体105と第2の液体106の密度が等しくなる様にする。図7中の破線701は、30℃にて第1の液体105と第2の液体106の密度を等しくした際の、第2の液体106の密度変化のグラフを示している。第2の液体106の密度(混合比など)の調整方法は実施例1で示した手法を用いればよい。実施例2でも実施例1と同様な効果が得られる。
(実施例3)
本発明の実施例3について図8を用いて説明する。本実施例は、焦点距離可変な液体型光学素子である3液を用いた可変焦点レンズ801に関する。ここでも、円筒形状の枠体802の内部を封止する様に、枠体802の両端にガラス803、804が取り付けられている。本実施例でもガラスを用いているが、光透過性の物質であればガラスでなくてもよい。ガラス803、804で封止された枠体802の内部には、絶縁性の第1の液体805、導電性の第2の液体806、第2の液体とは異なる導電性の第3の液体807が封入されている。接し合う第1の液体805と第2の液体806は互いに混和せず、第1の液体805と第3の液体807も互いに混和しない。そのため、第1の液体805と第2の液体806の接し合う部位に第1の界面808が形成され、同様に、第1の液体805と第3の液体807の接し合う部位に第2の界面809が形成される。第1の界面808は、第1の液体805と第2の液体806が夫々接する物質との界面エネルギと静電エネルギとの総エネルギが安定する形状を形成する。第2の界面809の形状についても、同様である。第1の液体805と第2の液体806は互いに異なる屈折率を有し、第1の液体805と第3の液体807も異なる屈折率を有する。
更に、第1の液体805と第2の液体806の密度が互いに異なると重力の影響を受け、第1の液体805と第2の液体806が接し合う第1の界面808が球面形状にならなくなるため、これらの液体は密度がほぼ等しい物質である。同様に、第1の液体805と第2の液体806も密度がほぼ等しい物質である。枠体802の内周には第1の電極810と第2の電極811が配置され、第2の液体806と接する様に第3の電極812が配置され、第3の液体807と接する様に第4の電極813が配置されている。第1の電極810、第2の電極811が第1の液体805や第2の液体806や第3の液体と接する側、すなわち内周部側には絶縁性の絶縁膜814が形成されている。これにより、第1の電極810に電圧を印加した際に、導電性の第2の液体806と導通しない構成となっている。同様に、第2の電極811に電圧を印加した際に第3の液体807と導通しない構成となっている。こうした構成で、第1の電極810と第3の電極812の間に電圧を印加することで、第1の界面808の球面形状を変化させられる。また、第2の電極811と第4の電極813の間に電圧を印加することで、第2の界面809の球面形状を変化させられる。
本実施例の可変焦点レンズ801の使用温度範囲は10℃から50℃と設定していて、温度による密度変化は実施例2と同様に線形近似で考えられる。可変焦点レンズ801には3種類の液体を使用しているが、第1の液体805は第2の液体806及び第3の液体807と接している。従って、実施例1や実施例2で説明した手法を用いて、第2の液体806、第3の液体807の密度(混合比など)を第1の液体805の密度に揃えることが可能である。その結果、使用温度範囲全般で第1の液体805と第2の液体806、第1の液体805と第3の液体807の密度差を小さくすることができる。図9に、本実施例における密度調整後の第1の液体805の密度変化を実線901で示し、第2の液体806の密度変化を破線902で示し、第3の液体807の密度変化を一点鎖線903で示す。図9から分かる様に、第2の液体806と第3の液体807の密度差は大きいが、第2の液体806と第3の液体807は接し合わないので問題はない。
本実施例では、導電性の第2の液体806と導電性の第3の液体807が異なる物質としたが、同じ物質を用いてもよい。以上説明した様に、使用温度範囲全般で密度差を小さくする様に可変焦点レンズ801内の第2の液体806及び第3の液体807の密度を第1の液体105の密度に対して調整することで、光学性能の低下を抑制することが可能となる。
なお、本実施例において、第2の液体806と第3の液体807に挟まれる第1の液体805だけを複数の物質を混合して作る場合、次の様にすることもできる。すなわち、各界面における2種類の液体間で上述した様な調整計算を行い、挟まれる第1の液体805について両界面における2つの混合比などの範囲を求め、これらの範囲の重なる範囲を第1の液体805の混合比などの利用可能な範囲とする。
101…可変焦点レンズ(液体型光学素子)、102…枠体(筐体)、103、104…ガラス(筐体)、105…第1の液体(他方の液体)、106…第2の液体(一方の液体)、107…界面

Claims (10)

  1. 筐体に充填された少なくとも2種類の液体を使用し、接し合う2種類の液体間の界面形状を変化させることで光学特性を変化させることが可能な液体型光学素子であって、
    前記接し合う2種類の液体のうちの一方の液体は、複数の物質を混合して作られた液体であって前記複数の物質の混合の割合によって密度調整可能な液体であり、
    当該液体型光学素子の使用温度範囲をT1℃からT2℃とし、
    前記使用温度範囲内における前記接し合う2種類の液体の複数の温度での密度差の所定の計算式による値が最小値となるときの前記接し合う2種類の液体の密度の一致する温度をT3℃とするとき、
    前記一方の液体は、前記接し合う2種類の液体の密度の一致する温度T℃がT3℃を含む所定の温度範囲にある様に前記複数の物質を混合して作られた液体である、
    ことを特徴とする液体型光学素子。
  2. 前記密度差の所定の計算式による値は、密度差の2乗和または絶対値の和であることを特徴とする請求項1に記載の液体型光学素子。
  3. 前記所定の温度範囲は、T3−3<T<T3+3であることを特徴とする請求項1または2に記載の液体型光学素子。
  4. 前記接し合う2種類の液体のうちの他方の液体の体積膨張率をα1、前記一方の液体の体積膨張率をα2とし、温度がT1℃における前記他方の液体の密度をρ1、前記一方の液体の密度をρ2とし、前記使用温度範囲内のT’℃において、前記他方の液体の密度をρ1’、前記一方の液体の密度をρ2’とすると、ρ1’=ρ1/(1+α1)(T’-T1)、ρ2’=ρ2/(1+α2)(T’-T1)の関数で表されるとき、
    前記一方の液体は、前記2つの関数の交点となる温度T℃がT3℃を含む所定の温度範囲にある様に前記複数の物質を混合して作られた液体であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の液体型光学素子。
  5. 前記使用温度範囲内において、前記接し合う2種類の液体の密度変化が線形関数近似とでき、
    前記一方の液体は、前記接し合う2種類の液体の密度の一致する温度T℃が(T1+T2)/2℃の温度を含む所定の温度範囲にある様に前記複数の物質を混合して作られた液体であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の液体型光学素子。
  6. レンズ口径がφ5以上である液体型可変焦点レンズであることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の液体型光学素子。
  7. 前記T1℃とT2℃の温度差は40℃以上であることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の液体型可変焦点レンズ。
  8. 筐体に充填された少なくとも2種類の液体を使用し、接し合う2種類の液体のうちの一方の液体が複数の物質を混合して作られた液体であって前記複数の物質の混合の割合によって密度調整可能な液体であり、前記接し合う2種類の液体間の界面形状を変化させることで光学特性を変化させることが可能な液体型光学素子の製造方法であって、
    当該液体型光学素子の使用温度範囲をT1℃からT2℃とし、
    前記使用温度範囲内における前記接し合う2種類の液体の複数の温度での密度差の所定の計算式による値が最小値となるときの前記接し合う2種類の液体の密度の一致する温度であるT3℃を求め、
    前記一方の液体を、前記接し合う2種類の液体の密度の一致する温度T℃がT3℃を含む所定の温度範囲にある様に前記複数の物質を混合して作る、
    ことを特徴とする液体型光学素子の製造方法。
  9. 前記密度差の所定の計算式による値は、密度差の2乗和または絶対値の和であることを特徴とする請求項8に記載の液体型光学素子の製造方法。
  10. 前記所定の温度範囲は、T3−3<T<T3+3であることを特徴とする請求項8または9に記載の液体型光学素子の製造方法。
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