JP2011256349A - インク用溶剤、グラビアインキ組成物およびその製造方法 - Google Patents

インク用溶剤、グラビアインキ組成物およびその製造方法 Download PDF

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貴 鈴木
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朝子 柳瀬
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Tomomi Nakaizumi
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Abstract

【課題】衛生性と臭気に問題がない環境対応型であって、特に、インクに配合した場合、樹脂、着色剤、添加剤等の溶解性・分散性に優れ、インクの適切な乾燥性を発現するインク用溶剤、該溶剤を利用したグラビアインキ組成物及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のインク用溶剤は、アセトアルデヒドおよびエタノール含有量が150ppm以下である酢酸イソプロピルからなり、特に、グラビアインキの溶剤として従来の酢酸エチルより優れている。
【選択図】 なし

Description

本発明は、臭気、衛生性、分散性に優れたインク等に用いられる、環境対応型のインク用溶剤、それを利用したグラビアインキ組成物およびその製造方法に関する。
グラビアインキの溶剤としては、従来より、トルエン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール等が使用されてきた。特にトルエンは、インクに使用される樹脂や添加剤に対する高い溶解性、印刷時の適切な乾燥性等のために好んで使用されてきた。
しかしながら、労働安全衛生法の改正により、トルエンの濃度規制が強化され、そのための環境改善への対応からインク中の溶剤組成の見直しが迫られている。
一方、トルエンを使用しないインク、例えば、酢酸エチル、イソプロピルアルコールを用いたインクでは、環境改善や臭気の点では改良されるものの、インクに含まれる樹脂や添加剤等の溶解性が不足し、印刷時の適切な乾燥性を得ることが難しい。
そこで、このような非トルエン系溶剤を用いる試みとして、ウレタン系のバインダー、ヒドロキシカルボン酸および、アルコール系溶剤とエステル系溶剤の混合溶剤による印刷インク(特許文献1)が提案されている。
また、インク用溶剤としてよく用いられる上記酢酸エチルは、不純物としてアセトアルデヒドおよび貯蔵中に容易に酸化されてアセトアルデヒドになるエタノールを含む。該アセトアルデヒドは、トルエンと並び厚生労働省が指定した揮発性有機化合物(VOC)13物質のうちの代表的な物質であるとともに、臭気の閾値が極めて低いため、衛生性と臭気に問題があり、低減が望まれている。
ところで、グラビアインキ用溶剤等として、例えば、特許文献2には、多くの溶剤列挙の中に酢酸イソプロピルが記載されている。
しかしながら、酢酸イソプロピルは、従来、高価なイソプロピルアルコールを原料とし、酢酸によるエステル化反応で製造されてきた。このため、得られる酢酸イソプロピルは高価なものであり、インク用溶剤に使用されること、更には、インク用溶剤としてどのような特性を示すかについては検討されていなかったのが実情である。
また、酢酸イソプロピルの製造方法として、高価なイソプロピルアルコールを使用せずに、プロピレンと酢酸を酸触媒下で反応させる方法も知られている。
この反応に用いる固体酸触媒として、従来スチレン系スルホン酸型陽イオン交換樹脂あるいはフェノール系スルホン酸型陽イオン交換樹脂が用いられている(特許文献3〜8)。
しかし、このような従来のスチレン系スルホン酸型陽イオン交換樹脂あるいはフェノール系スルホン酸型陽イオン交換樹脂は、ベンゼン環に付加したスルホン酸基の量が少なく、イオン交換容量が小さいものであった。
このため、反応に対する活性が十分でなく、高温で使用する必要があり、結果として、重合反応によるポリマーやオリゴマーの生成が避けられず、更には、酢酸の脱水反応による無水酢酸や水の副生も避けられず、原料の有効利用率が低下するという問題があった。
このような事情もあって、従来、酢酸イソプロピルがインク用溶剤として使用されることはなかった。
特開2007−238953号公報 特開2006−131844号公報 特公昭59−44295号公報 特開平4−169552号公報 特開平4−169553号公報 特開平7−2735号公報 特開昭49−100016号公報 特開昭55−102530号公報
本発明の課題は、衛生性と臭気に問題がない環境対応型であって、特に、インクに配合した場合、樹脂、着色剤、添加剤等の溶解性・分散性に優れ、インクの適切な乾燥性を発現するインク用溶剤、該溶剤を利用したグラビアインキ組成物を提供することにある。
本発明の別の課題は、重合反応やそれに由来する触媒寿命の低下、或いは副反応に由来する原料の有効利用率の低下を抑え、長い触媒寿命でもって高い選択率で本発明のインク用溶剤を製造でき、該溶剤を用いて、樹脂、着色剤等の溶解性・分散性に優れ、インクの適切な乾燥性を発現するグラビアインキ組成物を容易に、かつ経済的に調製しうる製造方法を提供することにある。
本発明によれば、アセトアルデヒドおよびエタノールの含有量が150ppm以下である酢酸イソプロピルからなるインク用溶剤が提供される。
また本発明によれば、着色剤、バインダー樹脂および上記インク用溶剤を含むことを特徴とするグラビアインキ組成物が提供される。
更に本発明によれば、スチレンとジビニルベンゼンの共重合体にスルホン酸基が付加した構造を有し、多孔質であって、かつイオン交換容量が4.8mmol/g以上である多孔性陽イオン交換樹脂を触媒として、プロピレンと酢酸とを反応させて、上記インク用溶剤を得る工程(A)、および少なくとも着色剤とバインダー樹脂と工程(A)で得られたインク用溶剤を含む溶剤との混合物を混合し、着色剤を分散させる工程(B)を含むことを特徴とするグラビアインキ組成物の製造方法が提供される。
本発明のインク用溶剤は、衛生性と臭気に問題がない環境対応型溶剤であり、インクに配合した場合、樹脂、着色剤、添加剤等の溶解性・分散性に優れ、インクの適切な乾燥性を発現することができ、特に、グラビアインキに好適に利用することができる。
本発明のグラビアインキ組成物の製造方法は、上記工程(A)を含むので、重合反応やそれに由来する触媒寿命の低下、或いは副反応に由来する原料の有効利用率の低下を抑え、長い触媒寿命でもって高い選択率で本発明のインク用溶剤を製造でき、また、該インク用溶剤を用いる工程(B)を含むので、樹脂、着色剤等の溶解性・分散性に優れ、インクの適切な乾燥性を発現するグラビアインキ組成物を容易に、かつ経済的に得ることができる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のインク用溶剤は、特定の酢酸イソプロピルからなるので、特に、環境対応型の溶剤として適している。
前記特定の酢酸イソプロピルは、アセトアルデヒドおよびエタノールの含有量が150ppm以下である。好ましくはアセトアルデヒド含有量が30ppm以下、特に好ましくは10ppm以下である。上記アセトアルデヒドおよびエタノールの含有量が150ppmを超えると溶剤、グラビアインキ組成物、印刷の作業環境、並びに印刷物について、衛生性および臭気に問題を生じる場合がある。
前記特定の酢酸イソプロピルの製造方法は特に限定されないが、好ましくは以下の工程(A)を含む方法が挙げられる。
スチレンとジビニルベンゼンの共重合体にスルホン酸基が付加した構造を有し、多孔質であって、かつイオン交換容量が4.8mmol/g以上である多孔性陽イオン交換樹脂を触媒として、プロピレンと酢酸とを反応させる工程(A)を含む製造方法。この製造方法により、本発明のインク用溶剤に用いる特定の酢酸イソプロピルを容易に、かつ経済的に製造することができる。
(イオン交換樹脂)
工程(A)に用いる触媒は、スチレンとジビニルベンゼンの共重合体にスルホン酸基が付加した構造を有し、多孔質であって、かつ特定のイオン交換容量を有する多孔性陽イオン交換樹脂であり、通常、20m2/g以上程度の大きい表面積を示す。該表面積は、BET法により求めることができる。
多孔性陽イオン交換樹脂のイオン交換容量は、4.8mmol/g以上である。イオン交換容量が4.8mmol/gに満たない場合には、プロピレンと酢酸の付加反応活性が大きく低下する。またイオン交換容量が大きい場合であっても、多孔性でないゲル型のイオン交換樹脂を用いる場合には、プロピレンの二量化反応などの副反応が起こり、プロピレンからの酢酸イソプロピル生成効率が低下する。
工程(A)に用いる上記多孔性陽イオン交換樹脂の触媒を利用することにより、プロピレンと酢酸との反応の活性が格段に増大し、その増大の程度はイオン交換容量の大きさから類推されるよりも遥かに大きく、また活性が増大するにもかかわらず当該反応に於ける酢酸イソプロピルの選択性の低下が認められない。
ここで、イオン交換容量は、塩化ナトリウム溶液を用いたイオン交換反応により求められる値であり、スルホン酸基のプロトンとナトリウムイオンとを交換させ、生成した塩化水素の量を中和滴定することにより求められる。イオン交換反応は下記式で表される。
R-SO3H + NaCl → R-SO3Na + HCl
式中、Rはイオン交換樹脂のスルホン酸基部分を除いた残基を示す。
上記多孔性陽イオン交換樹脂としては、市販品を用いることができる。例えば、ランクセス社製の「レバチットK2620」や「レバチットK2420」(登録商標)、ロームアンドハース社製の「アンバーリスト36」や「アンバーリスト35」(登録商標)が挙げられるがこれらに限定されない。
(プロピレン)
工程(A)に用いるプロピレンは特に制限はなく、高純度のプロピレンを用いることができるのは当然であるが、酢酸との反応を阻害しない限り低純度のものも用いることができる。例えば、石油の流動接触分解装置から得られるプロパン−プロピレあるいはナフサ分解装置から得られるプロパン−プロピレン留分も用いることができる。
(酢酸)
工程(A)に用いる酢酸についても特に制限はない。例えば、アセトアルデヒドの酸化により製造される酢酸、軽質炭化水素の直接酸化により製造される酢酸、あるいはメタノールのカルボニル化反応により製造される酢酸の何れも使用できる。
(反応条件)
(反応方式)
工程(A)における反応の方式は、化学工業で実施されている一般的な方法を採用できる。すなわち、イオン交換樹脂を充填した触媒層を用いた固定相流通式、あるいは撹拌機を備えた槽型反応機にイオン交換樹脂を懸濁させて反応させる回分式反応方式の何れも採用できる。なお、固定相流通式の反応方式を用いる場合には、反応器出口から得られる反応混合物を反応器入口に循環し、反応器への新規供給原料(以下「供給原料」という)を希釈する、所謂ローカルリサイクルの方法を取ることもできる。ローカルリサイクルは、酢酸とプロピレンとの反応の反応熱による反応器内の局部加熱の防止、反応器入口のプロピレン濃度の低減によるプロピレンのオリゴマー化反応あるいは重合反応の抑制に効果があり好ましい方法である。
ローカルリサイクルを行う場合には、反応熱を除去するためにリサイクル液を冷却して反応器に循環する方式を取ることもできる。また、リサイクル液は反応器の入口に戻すほか、反応器の中段に戻すことも可能である。さらにはリサイクル液を反応器の各箇所に分割して戻すことも可能である。
(酢酸/プロピレンのモル比)
工程(A)における酢酸とプロピレンとの比率は、好ましくは、酢酸/プロピレンのモル比として、1.0〜3.0である。なお、固定相流通式の反応方式におけるこの数値は、供給原料中の酢酸/プロピレンのモル比を表す。
酢酸/プロピレンのモル比が1.0より小さい場合は、プロピレンのオリゴマー化反応や重合反応が起こりやすくなり、プロピレンに対する酢酸イソプロピル生成の選択率が低下し、また重合物の触媒表面への沈着が生じて触媒寿命が低下するおそれがある。一方、その比率が3.0を超えると、上記問題は回避されるが、回分式の場合は反応容積あたりの酢酸イソプロピルの生産効率、あるいは固定相流通式の反応方式の場合は、空時収率(STY)の低下による反応器容積あたりの効率が低下するおそれがある。また、未反応の酢酸が多くなり蒸留等の回収にかかる負担が大きくなるおそれがある。
固定相流通式の反応方式において、ローカルリサイクルを採用する場合には、上記プロピレンのオリゴマー化反応や重合反応はローカルリサイクルにより低減される傾向にあるが、その場合でも供給原料の酢酸/プロピレンのモル比は1.0以上であることが望ましい。
(反応温度)
工程(A)における上記反応の温度は、好ましくは60〜150℃、より好ましくは60〜130℃である。60℃未満では酢酸とプロピレンとの反応速度が小さく酢酸イソプロピルが効率的に得られないおそれがある。また、150℃を超えるとイオン交換樹脂の熱劣化が起こりやすくなるほか、プロピレンのオリゴマー化反応や重合反応が起こりやすくなり、プロピレンに対する酢酸イソプロピル生成の選択率が低下し、また重合物の触媒表面への沈着が発生し触媒寿命が低下するおそれがある。また、150℃を超えると酢酸イソプロピルが酢酸とプロピレンに分解する逆反応が起こりやすくなり、プロピレンの反応率を高められないばかりか、プロピレンのオリゴマー化や重合反応などの副反応も起こりやすく、プロピレンの有効利用率や触媒寿命が低下しやすくなるおそれがある。
プロピレンと酢酸との反応による酢酸イソプロピル生成反応は発熱反応であり、回分式反応器の場合には時間経過とともに、また固定相流通式反応器の場合には反応器の入口から出口に掛けて反応温度が変化する。その何れの場合も、反応器内の最低温度と最高温度は上記の範囲内にあることが好ましい。固定相流通式の場合、ローカルリサイクルを採用すると、反応器の入口から出口にかけての温度分布変化の程度は緩和される。
従来のイオン交換容量が4.8mmol/g未満の陽イオン交換樹脂あるいはイオン交換容量が4.8mmol/g以上であってもゲル型の陽イオン交換樹脂を用いる場合は、反応温度が60℃では酢酸に対するプロピレンの反応活性が低く、実用上問題が有ったが、工程(A)における上述の多孔性陽イオン交換樹脂を用いることにより、60℃という低い温度であっても、プロピレンのオリゴマー化やポリマー化を抑えながら高い触媒活性で以って酢酸イソプロピルを製造することが可能である。
ところで、プロピレンと酢酸との付加反応は可逆反応であり、高温においては上述のように生成した酢酸イソプロピルが分解する逆反応が起こりやすくなる。工程(A)においては、例えば、60℃以上という低い温度で酢酸イソプロピルを製造することができるので化学平衡的にも有利であり、かつプロピレンのオリゴマー化や重合反応などの副反応の生成を抑制し、長い触媒寿命で以って酢酸イソプロピルを製造することが可能になる。
(反応時間、液空間速度)
工程(A)において反応時間は、反応温度や、酢酸/プロピレンのモル比、触媒/反応原料等の条件により異なるが、一般には0.5〜10時間である。また、固定相流通式の場合、その好ましい液空間速度(LHSV)は、供給原料について0.5〜20(Feed-ml/Cat-ml/h)である。反応時間が0.5時間未満の場合、或いはLHSVが20を超える場合、酢酸とプロピレンの反応転化率が小さくなるおそれがある。反応時間が10時間を超える場合、あるいはLHSVが0.5未満の場合、反応器の容積あたり或いは触媒容積あたりの生産効率が小さくなるおそれがある。
(反応圧力)
工程(A)において、反応器内の反応圧力は、反応系を液相に保つために充分な圧力でよく、1.5〜5.0MPaが好ましい。
(触媒/反応原料比率)
工程(A)において、撹拌槽型の回分式反応器を用いる場合の触媒/反応原料比率は、質量比で0.005〜0.2が好ましい。0.005に満たない場合、触媒と反応原料との接触効率が悪く、酢酸とプロピレンの反応転化率が小さくなるおそれがある。また、0.2を超える場合は、撹拌効率が低下し、触媒あたりの酢酸イソプロピルの生産効率が低下するおそれがある。
工程(A)を含む上記製造方法により得られる酢酸イソプロピルは、酢酸、炭素数3〜9のアルコール、炭素数6〜9の炭化水素および炭素数4〜9の酢酸エステル等の成分を含む。反応液中に含まれるこの成分は、適宜蒸留等の公知の方法で精製することができる。精製分離は、通常必要な濃度まで適宜実施でき、その含有量は特に制限はないが、好ましくはその含有量は10〜30000ppm、さらに好ましくは100〜10000ppmである。この含有量が30000ppmを超えると配合したグラビアインキによる印刷の際、乾燥性が悪くなるおそれがある。10ppm以下である場合は、精製コストが上昇するおそれがある。
本発明のインク用溶剤に用いる酢酸イソプロピルは、衛生性に優れた低臭溶剤であり、インク用溶剤以外の用途についても、例えば、塗料、接着剤、ゴム、離型剤、粘着剤、撥水剤若しくは撥油剤、密封剤、クリーニング用溶剤、精密部品若しくは金属材料等の加工部品用洗浄剤など、従来公知の各種用途に好適に使用できる。
本発明のグラビアインキ組成物は、着色剤、バインダー樹脂および上記本発明のインク用溶剤を含む。
上記着色剤は特に限定されず、主に無機顔料及び/又は有機顔料が使用できる。
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック系、酸化チタン系、酸化鉄系、水酸化鉄系、酸化クロム系、スピンネル型焼成顔料、クロム酸鉛系、クロム酸バーミリオン系、紺青系、アルミニウム粉末、ブロンズ粉末が挙げられる。
有機顔料としては、例えば、フタロシアニン系、アゾ系、縮合アゾ系、アンスラキノン系、ペリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジゴ系、イソインドリノン系、アゾメチンアゾ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、アニリンブラック系、トリフェニルメタン系が挙げられる。
本発明のグラビアインキ組成物において、着色剤の含有割合は、公知の範囲から適宜選択できるが、通常、組成物全量基準で、5〜40質量%程度である。
上記バインダー樹脂としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、α−オレフィン/無水マレイン酸系共重合体、α−オレフィン/無水マレイン酸系共重合体のエステル化物、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、α−オレフィン/無水マレイン酸/ビニル基含有モノマー共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリアミド、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、石油樹脂、ロジンもしくはその誘導体、クマロンインデン樹脂、テルペン樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン/ブタジエンゴム、ポリビニルブチラール、ニトリルゴム、アクリルゴム、エチレン/プロピレンゴム等の合成ゴム、ポリエステル樹脂、ニトロセルロースを除くセルロース誘導体、蔗糖エステルが挙げられ、これらの1種または2種以上が用いられる。
本発明のグラビアインキ組成物において、バインダー樹脂の含有割合は、公知の範囲から適宜選択できるが、通常、組成物全量基準で、10〜40質量%程度である。
本発明のグラビアインキ組成物に用いる溶剤は、上述の本発明のインク用溶剤を必須に含むが、本発明の所望の効果を損なわない範囲で、他の溶剤を更に含んでいても良い。
他の溶剤としては、例えば、アルコール、ケトン、エーテル、エステル及び脂肪族環式炭化水素溶剤からなる群より選ばれた1種または2種以上の溶剤を挙げることができる。
アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールが挙げられる。ケトンとしては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジアセトンアルコールが挙げられる。エーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが挙げられる。エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸n−プロピル、酢酸エチル、酢酸ブチルが挙げられる。脂肪族環式炭化水素溶剤は、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、エチルシクロペンタンが挙げられる。
本発明のグラビアインキ組成物において、必須成分である上述の本発明のインク用溶剤の含有割合は、適宜選択できるが、通常、組成物全量基準で、30〜60質量%程度である。また、他の溶剤の含有割合は、その種類等に応じて、本発明の所望の効果を損なわない範囲で適宜選択でき、通常、本発明のグラビアインキ組成物に含有される溶剤全量に対して、0〜80質量%である。
本発明のグラビアインキ組成物には、上記着色剤、バインダー樹脂、本発明のインク用溶剤以外に、流動性改良および表面改質などのための分散剤、ブロッキング防止剤、静電防止剤、可塑剤、オレフィンワックス、界面活性剤などの各種添加剤が配合されていても良い。これらの添加剤は、従来からグラビアインキの製造に使用されているものがいずれも使用でき、特に限定されない。
本発明のグラビアインキ組成物において、上記各種添加剤の含有割合は、その種類や目的に応じ、公知のグラビアインキを参照して適宜選択することができる。
本発明のグラビアインキ組成物の製造方法は、上述の本発明のインク用溶剤において説明した、工程(A)、および少なくとも着色剤とバインダー樹脂と工程(A)で得られたインク用溶剤を含む溶剤とを混合し、着色剤を分散させる工程(B)を含む。
工程(B)に用いる着色剤およびバインダー樹脂は、上述のものが例示でき、これらの他に、上述の各種添加剤等も用いることができる。また、溶剤としては、上述の他の溶剤を用いることもできる。
工程(B)において混合は、例えば、ペイントシェイカー、ボールミル、アトライター、サンドミルなどを用い、着色剤としての顔料を一次粒子まで分散させることにより行うことができる。この混合により、通常、インク原肉が調製でき、希釈溶剤を添加して所望の粘度に調整してグラビアインキを得ることができる。必要に応じて各種添加剤を希釈溶剤添加後に含有させることもできる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
尚、例中の各種測定は以下の機器及び条件で行った。
(成分測定)
(1)GC(アジレント・テクノロジー製)GC7890A
カラム:DB-1(60m×250μm×1μm),オーブン条件:100℃/10min→10℃/min→220℃/7min。
(2)GC−MS(アジレント・テクノロジー製)
GC部:GC7890A,GCカラム:HP−1(60m×0.25mm×250μm),オーブン条件:40℃/10min→5℃/min→300℃/18min、
MS部:Agilent5985C VL MSD,MSイオン源温度:230℃,MS四重極温度:150℃。
(粘度測定)
E型粘度測定(東機産業製)TVE−22LT
温度:23℃,回転数:2.5rpm,容量:1.1ml,フルスケールトルク:168.4μNm,測定時間:1分間(5分静置)。
(発色濃度測定)
分光測色計(X-Rite製)SpectroEyeにて印刷物の吸収率を測定。
実施例1
以下の方法により、プロピレンと酢酸の直接反応(直酸法)させ、インク用溶剤としての酢酸イソプロピル調製した。
(酢酸イソプロピルの調製)
スチレンとジビニルベンゼンの共重合体にスルホン酸基が付加した構造を有する多孔性陽イオン交換樹脂として、ランクセス社製の「レバチットK2620」(登録商標)を用いた。該多孔性陽イオン交換樹脂は、その0.1gをガラス容器に取り、それに1mol/LのNaCl溶液50gを加え、30分間撹拌し、撹拌後溶液のみをガラスビーカーに移し、0.1mol/LのKOH溶液で滴定をしてイオン交換容量を求めたところ、5.0mmol/gであった。
撹拌機を備えた100ccのオートクレーブに、酢酸(純度99.8%)36g、上記多孔性陽イオン交換樹脂0.5g、及びプロピレン(純度99.8%)16.8g導入した。続いて、窒素を用いてオートクレーブ内の圧力を2MPaに加圧した。回転数500rpmで撹拌しながら電気炉を使ってオートクレーブ内の温度を80℃に昇温した。80℃に達した後4時間反応を継続した。4時間経過後反応液を試料採取管に採取し、水素イオン検出器型ガスクロマトグラフィーで生成物を分析した。その結果、酢酸イソプロピルが選択率(酢酸イソプロピル生成mol/反応プロピレン100mol)95.9%で得られた。アセトアルデヒド含有量及びエタノール含有量を表1に示す。
(インクの調製)
φ12cmのボールミルに、樹脂(商品名マルキードNo.1、荒川化学工業社製)を44.4g加えた。シアニンブルー4810を12.4g、炭酸カルシウム(商品名ホワイトIGV-IV、白石工業社製)を17.8g、補助剤を0.9g加え、120回転/minで2時間撹拌させた。上記で製造した酢酸イソプロピルを44.4g加え、再び120回転/minで1時間撹拌させ、インク100mlを回収した。次に再び上記で製造した酢酸イソプロピルを加え、粘度を68mPa/sに調整し、グラビアインキを得た。
(印刷)
印刷試験は、IGTテスティングシステムズ社のG1−5にて行った。縦グラデーション版のプリンティングディスクにて、印圧500N、印刷速度0.6m/sとし、IGTテスティングシステムズ社製のテスト用紙に印刷したところ、十分な発色が得られた。印刷物の発色濃度を測定した。結果を表2に示す。
比較例1 酢酸エチル(EAC)溶剤とするインクの調製法
溶剤として、実施例1で調製した酢酸イソプロピルの代わりに、溶剤として酢酸エチルを使用した以外は、実施例1と同様の手順でインクを調製し、100mlを回収した。用いた酢酸エチルのアセトアルデヒド含有量及びエタノール含有量を表1に示す。
次に、実施例1と同様の手順で印刷を行ったところ、十分な発色が得られた。印刷物の発色濃度を測定した。結果を表2に示す。
参考例1
溶剤として、実施例1で調製した酢酸イソプロピルの代わりに、イソプロピルアルコールと酢酸のエステル化により製造した、通常、試薬に使用されている酢酸イソプロピル(エステル化法)を使用した以外は、実施例1と同様の手順でインクを調製し、100mlを回収した。次に再び酢酸イソプロピル(エステル化法)を加え、粘度を68mPa/sに合わせた。用いた酢酸イソプロピル(エステル化法)のアセトアルデヒド含有量及びエタノール含有量を表1に示す。
次に、実施例1と同様の手順で印刷を行ったところ、十分な発色が得られた。印刷物の発色濃度を測定した。結果を表2に示す。
Figure 2011256349
Figure 2011256349
表1より、溶剤としての酢酸イソプロピルは酢酸エチルと比較してアセトアルデヒドの含有量が少なく、衛生性および臭気の点で優れることがわかった。
表2より、溶剤としての酢酸イソプロピルは酢酸エチルと比較して発色に優れており、インク溶剤として酢酸イソプロピルが酢酸エチルより適性が高いことを示した。これは蒸発速度の差あるいは顔料配合物の溶解性、分散性の差によるものと考えられる。

Claims (6)

  1. アセトアルデヒドおよびエタノールの含有量が150ppm以下である酢酸イソプロピルからなるインク用溶剤。
  2. アセトアルデヒドの含有量が30ppm以下であることを特徴とする請求項1記載のインク用溶剤。
  3. スチレンとジビニルベンゼンの共重合体にスルホン酸基が付加した構造を有し、多孔質であって、かつイオン交換容量が4.8mmol/g以上である多孔性陽イオン交換樹脂を触媒として、プロピレンと酢酸とを反応させて製造されたことを特徴とする請求項1または2記載のインク用溶剤。
  4. 着色剤、バインダー樹脂および請求項1〜3のいずれかに記載のインク用溶剤を含むことを特徴とするグラビアインキ組成物。
  5. 溶剤として、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、及び脂肪族環式炭化水素溶剤からなる群より選ばれた1種または2種以上を更に含むことを特徴とする請求項4記載のグラビアインキ組成物。
  6. スチレンとジビニルベンゼンの共重合体にスルホン酸基が付加した構造を有し、多孔質であって、かつイオン交換容量が4.8mmol/g以上である多孔性陽イオン交換樹脂を触媒として、プロピレンと酢酸とを反応させて、請求項1または2記載のインク用溶剤を得る工程(A)、および
    少なくとも着色剤とバインダー樹脂と工程(A)で得られたインク用溶剤を含む溶剤とを混合し、着色剤を分散させる工程(B)を含むことを特徴とするグラビアインキ組成物の製造方法。
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