JP2011237291A - 架橋γ−ポリグルタミン酸の架橋構造の解析方法 - Google Patents

架橋γ−ポリグルタミン酸の架橋構造の解析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 γ−ポリグルタミン酸のγ線照射により得られる架橋γ−ポリグルタミン酸について、その架橋構造の解析方法の提供。
【解決手段】 解析すべき架橋γ−ポリグルタミン酸を加水分解して得られる2−ケトグルタル酸量とグルタミン酸量の比率を求め、
一方、解析すべき架橋γ−ポリグルタミン酸中の一本鎖γ−ポリグルタミン酸のN末端に存在するグルタミン酸量を求め、架橋γ−ポリグルタミン酸中のグルタミン酸量をN末端グルタミン酸量で除することにより架橋γ−ポリグルタミン酸における一本鎖γ−ポリグルタミン酸中のグルタミン酸ユニット数を求め、
得られたグルタミン酸ユニット数と、2−ケトグルタル酸及びグルタミン酸の比率より架橋γ−ポリグルタミン酸における一本鎖γ−ポリグルタミン酸当たりの2−ケトグルタル酸の存在数を求め、さらに、
得られた2−ケトグルタル酸の存在数から架橋構造を解析する方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、架橋γ−ポリグルタミン酸の架橋構造の解析方法に関する。
γ−ポリグルタミン酸(以下、γ−PGAと記す場合もある)は、納豆菌などが産生する納豆粘質物質の一成分として知られており、生分解性を有するゲル化物質であり、近年にあっては、これを新しい素材として利用した各種機能性製品の開発が種々検討されてきている。
この生分解性を有するγ−PGAは、架橋することにより、より吸水性の高い樹脂、いわゆるヒドロゲルに加工することができることから、γ−PGAについて様々な化学反応による架橋反応が行われ、報告されている。
すなわち、γ−PGAを架橋剤により架橋させて得られた架橋γ−ポリグルタミン酸(以下、架橋γ−PGAと記す場合もある)は、より優れたゲル化能を示し、保水性に優れたものであることから、化粧品等の材料、あるいは水質浄化剤として架橋γ−PGAのヒドロゲルの利用が注目され、その製造方法が提供されている。
例えば、特許文献1には、ポリアミンを架橋剤として用いた架橋γ−PGA、及びその製造方法が記載されている。また、特許文献2には、ポリグシリジルエーテルを架橋剤として用いたγ−ポリグルタミン酸ヒドロゲルの製造方法が記載されている。
さらに、非特許文献1には、縮合剤として水溶性カルボジイミド(WSC)[1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド 塩酸塩]を用い、γ−PGAをポリアミンで架橋する方法が開示されている。
これらの方法により提供される架橋γ−PGAは、いずれも各種架橋剤を用いて架橋させて得られた架橋γ−PGAであり、ある程度の保湿性を有するものであるが、使用する架橋剤の種類によっては、得られた架橋γ−PGAが分解しやすいものであったり、ゲルの膨潤度が低く、ヒドロゲルとして使用する際の保湿性が劣るものであったりする欠点があった。更に、架橋構造形成についての直接的な情報がなく、その根拠は、保湿性の向上などの状況証拠によるものだけである。また、各種架橋剤を用いた架橋γ−PGAは、架橋剤や縮合剤の除去が難しいと考えられるが、いずれもその純度についての記載がない。
ところで、γ−ポリグルタミン酸をγ線照射することにより、高吸水能を有する架橋γ−PGA(すなわち、架橋γ−PGAヒドロゲル)を製造する方法が報告されている(非特許文献2)。このγ線照射によるγ−PGAの架橋では、γ−PGA中のグルタミン酸のカルボキシル基が他のグルタミン酸のα−位炭素に結合したエステル結合により架橋されているものと推定されるものの、その架橋構造の詳細は明らかになっていない。
γ線照射により得られる架橋γ−PGAは、架橋剤を使用しないで架橋されたものであることから、その品質の安全性は架橋剤を用いて架橋させた架橋γ−PGAに比較して優れたものである。しかしながら、未だその架橋構造の詳細は解明されておらず、また、照射条件により架橋γ−PGAの分子量、その架橋構造、架橋結合の数などが異なることが考えられ、ヒドロゲルにおける保水性能も異なってくるものといえる。
したがって、γ線照射により得られる架橋γ−PGAについて、その架橋結合構造を解析することは、より保水性能の高い架橋γ−PGAを製造するための条件を設定する上で重要なことであり、架橋γ−PGAについて、架橋構造中の一本鎖γ−PGAの平均分子量、その分子量に基づく架橋構造、架橋結合の数の解析方法が求められているのが現状である。
国際公開WO 2007/034795号 特開2005−179534号公報
Appl. Polym. Sci., vol. 65, pp1889-1896 (1997) 高分子論文集、50巻10号, 755頁(1993年)
上記の現状を鑑み、本発明は、γ−ポリグルタミン酸のγ線照射により得られる架橋γ−ポリグルタミン酸について、その架橋構造の詳細を解析する方法を提供することを課題とする。
かかる課題を解決するための本発明は、その基本的態様は、以下の構成からなる。
(1)γ−ポリグルタミン酸をγ線照射することにより製造された架橋γ−ポリグルタミン酸の架橋構造を解析する方法において、
解析すべき架橋γ−ポリグルタミン酸を加水分解して得られる2−ケトグルタル酸量とグルタミン酸量の比率を求め、
一方、解析すべき架橋γ−ポリグルタミン酸中の一本鎖γ−ポリグルタミン酸のN末端に存在するグルタミン酸量を求め、架橋γ−ポリグルタミン酸中のグルタミン酸量をN末端グルタミン酸量で除することにより架橋γ−ポリグルタミン酸における一本鎖γ−ポリグルタミン酸中のグルタミン酸ユニット数を求め、
得られたグルタミン酸ユニット数と、2−ケトグルタル酸及びグルタミン酸の比率より架橋γ−ポリグルタミン酸における一本鎖γ−ポリグルタミン酸当たりの2−ケトグルタル酸の存在数を求め、さらに、
得られた2−ケトグルタル酸の存在数から架橋構造を解析する、
ことを特徴とする架橋γ−ポリグルタミン酸の架橋構造を解析する方法。
より具体的には、本発明は、以下の各構成から成る。
(2)加水分解により生成した2−ケトグルタル酸の生成量を、フェニレンジアミン誘導体との反応生成物の定量で行う上記(1)に記載の架橋γ−ポリグルタミン酸の架橋構造を解析する方法、
(3)架橋γ−ポリグルタミン酸における一本鎖γ−ポリグルタミン酸のN末端のグルタミン酸量を、架橋γ−ポリグルタミン酸を2,4−ジニトロフルオロベンゼンと反応させて得られる架橋γ−ポリグルタミン酸の2,4−ジニトロベンゼン誘導体中の2,4−ジニトロベンゼンユニットの定量で行うことを特徴とする上記(1)に記載の架橋γ−ポリグルタミン酸の架橋構造を解析する方法、
(4)架橋γ−ポリグルタミン酸の加水分解を酸により行うことを特徴とする上記(1)に記載の架橋γ−ポリグルタミン酸の架橋構造を解析する方法、
である。
本発明により、これまでその架橋構造の詳細が判明していないγ−PGAのγ線照射により製造される架橋γ−PGAについて、その分子量に基づく架橋構造の詳細、架橋結合の数等を解析することができる。
γ−PGAのγ線照射により得られた架橋γ−PGAは、その特異的架橋構造を有するが故に保水性に優れたものであるが、その照射条件により得られる架橋γ−PGAの分子量、架橋結合数は種々異なっており、その保水性能も異なるものである。
したがって、本発明が提供する解析方法により解析されるγ線照射により得られた架橋γ−PGAの構造解析することによりその物性を解明し、より保水性能を有する架橋γ−PGAを製造する条件を設定することが可能となる。
また、より保水性能に優れた架橋γ−PGAを選択的に製造することが可能となることから、機能性に優れた化粧品材料等を提供できる利点を有している。
本発明者らは、γ線照射により得られた架橋γ−PGAは、架橋剤を用いて製造された架橋γ−PGAとは異なり、γ−ポリグルタミン酸以外に、他の成分が混在しているものではない点に注目した。また、γ線照射による架橋は、架橋剤を用いた架橋反応と異なり、γ線照射により活性化されたラジカルによる架橋反応であると推定された。
したがって、得られた架橋γ−PGAを加水分解した場合には、加水分解物の殆どはγ−PGAを構成するグルタミン酸であるが、存在する架橋部分における加水分解物は、グルタミン酸と2−ケトグルタル酸であると推定された。
かかる推定に立脚し、γ線照射により得られた架橋γ−PGAを加水分解して、架橋構造数に応じて生成するであろう2−ケトグルタル酸を同定、定量することができれば、これにより、架橋構造数を解析する場合の一つの情報を得ることができる。
そして、かかる情報を得た上で、架橋γ−PGA中のchain 数、すなわちグルタミン酸の分子個数、並びに架橋γ−PGA中のグルタミン酸ユニット数が解れば、架橋γ−PGAの構造の解析が可能となる。
本発明は、基本的にはかかる考え方に基づく架橋γ−ポリグルタミン酸の架橋構造の解析方法を提供するものであり、その実際の検討を、実施例に代えて以下に説明することにより、本発明を詳細に説明する。
I:γ線照射により架橋されて得られた架橋γ−PGAの架橋構造の推定
前記したように、γ線照射により得られた架橋γ−PGAは、架橋剤を用いて製造された架橋γ−PGAとは異なり、γ−ポリグルタミン酸以外に、他の成分が混在しているものではない特徴点を有している。
したがって、γ線照射によって架橋された架橋γ−PGAにおける架橋構造は、下式反応式:
Figure 2011237291
に示すように、γ線照射により活性化されたカルボキシル基のオキシラジカル(AO)がγ−PGAのα位プロトンを引き抜き、新たに生成した炭素ラジカル(AC)と別のカルボキシラジカル(AO)が結合することにより形成されていると推定される。
上記した架橋構造が形成された場合には、架橋構造部分の加水分解反応では、下記化学式:
Figure 2011237291
に示すように、その加水分解物のほとんどはグルタミン酸(3)であるが、一部、架橋構造に由来する2−ケトグルタル酸(2)を含んでいることが予想される。
II:2−ケトグルタル酸の同定
上記化学式に示すように、架橋γ−PGAの加水分解生成物のほとんどはグルタミン酸(3)であり、その加水分解生成物の混合物の中には、架橋構造に由来する2−ケトグルタル酸(2)が存在していることになるので、かかる2−ケトグルタル酸が存在しているかどうかを同定する試みを、いくつか検討した。
その結果、混合物のままでは、2−ケトグルタル酸(2)を同定することはできなかった。そこで、2−ケトグルタル酸(2)とグルタミン酸(3)の構造的な違いに着目し、強酸性イオン交換樹脂を利用した2−ケトグルタル酸(2)の同定を検討した。
すなわち、架橋された架橋γ−PGAの加水分解生成物(混合物)を強酸性イオン交換樹脂に担持させ、水で溶出し、LC−MS(液体クロマトグラフィー/質量分析法:Liquid Chromatography / Mass Spectrometry)により同定したところ、グルタミン酸(3)はまったく検出されず、2−ケトグルタル酸(2)のみが検出できることが判明した。
その一方、架橋されていないγ−PGAを加水分解して本操作を同様に行い、LC−MSにより同定したところ、グルタミン酸ばかりではなく、2−ケトグルタル酸も検出できなかった。
したがって、架橋された架橋γ−PGAの加水分解物として検出された2−ケトグルタル酸は、架橋構造にのみ由来した加水分解生成物であることが判明し、この2−ケトグルタル酸を同定・定量することで架橋γ−PGA中の架橋構造の存在を解析することが可能となる理論が成立した。
それに先立ち、γ−PGA、及び架橋γ−PGAの純度が不明であるため、容易に分子量等の値を求めることができないので、γ−PGA、及び架橋γ−PGA単位量あたりのグルタミン酸量を求めた。
方法は、γ−PGA、及び架橋γ−PGAの加水分解生成物より直接グルタミン酸量を秤量するか、或いは、内部標準物質を用いたNMRによる絶対定量法が考えられるが、簡便な後者の方法を用い、単位量あたりのグルタミン酸ユニット数を求めた。
III:γ線照射により架橋された架橋γ−PGA中のグルタミン酸ユニット数の同定
フタル酸水素カリウムを内部標準物質として、NMRによる絶対定量法により単位量あたりのグルタミン酸のユニット数を求めた結果、γ線照射により架橋された架橋γ−PGAでは、4.96×10−3モル/グラムという値が得られ、架橋していないγ−PGAでは、5.33×10−3モル/グラムという値が得られた。
IV:2−ケトグルタル酸の定量(架橋構造単位の定量)
そこで、検出される2−ケトグルタル酸の定量を試みた。
2−ケトグルタル酸のようなα−ケト酸は、例えば、下記反応式:
Figure 2011237291
に示すように、o−フェニレンジアミン類(4)と反応して蛍光物質(5)に変換されることが知られている。
そこで、種々の濃度の2−ケトグルタル酸(2)をo−フェニレンジアミン(4)と反応させ生成する蛍光物質(5)の検量線を作成し、その検量線を基準として、実サンプルにおける2−ケトグルタル酸の存在比を求めることにより、架橋された架橋γ−PGAの架橋構造単位の定量をおこなった。
その結果、2−ケトグルタル酸(2)の割合は、グルタミン酸量との比から0.025%程度であることが判明した。すなわち、2−ケトグルタル酸とグルタミン酸の比がおよそ1:4000であることが判明した。
この事実は、架橋γ−PGAにおけるグルタミン酸chain 中、グルタミン酸4000個のchain に対し一つの架橋結合が存在する比率となる。
そうすると、一定量のγ−PGAに対して、そこに含まれるPGAのchain 数がわかれば、架橋構造を形成したγ−PGAの構造を明らかにすることが可能になる。
V:架橋された架橋γ−PGAのchain 数(架橋を無視した場合のモル数)の同定
上記したように、一定量のγ−PGAに対して、そこに含まれるPGAのchain 数がわかれば、架橋構造を形成したγ−PGAの構造を明らかにすることが可能になる。
そこで、γ−PGAのchain 数は、γ−PGAのN端アミノ酸の数と一致することを利用し、アミノ基と特異的な反応をする2,4−ジニトロフルオロベンゼン(1-fluoro-2,4-dinitrobenzene:FDNB)によりγ−PGAのN末端(N末端アミノ基)を修飾し、得られたDNB−架橋γ−PGA中のDNB量をあらかじめ作成したDNB−グルタミン酸の検量線から見積った(下記化学式参照)。
Figure 2011237291
その結果、使用した架橋γ−PGA(10mg)中に含まれるγ−PGAのchain 数(DNB量)は、3.21×10−8モルであると見積もられたことから、単位量あたりの chain 数は、3.21×10−6モル/グラムであると導いた。
また、参考のためにγ線照射していないγ−PGAについても単位量あたりのγ−PGAの chain 数を同様の方法により求め、1.82×10−6モル/グラムであると導いた。
VI:γ線照射により架橋された架橋γ−PGAの構造の解析
上記したIVにおける検討の結果、2−ケトグルタル酸とグルタミン酸の比がおよそ1:4000となった。また、単位量あたりのグルタミン酸ユニット数を単位量あたりのγ−PGAの chain 数で除することにより、γ−PGA一本鎖のグルタミン酸のユニット数は1550(=4.96×10−3/3.21×10−6)と導き出されたことから、架橋された架橋γ−PGAの chain 1本あたり0.39個(=1550/4000)の2−ケトグルタル酸が存在していることになり、chain 5本では大体2個の2−ケトグルタル酸が存在していることになる。
また、架橋されていないγ−PGA一本鎖のグルタミン酸のユニット数は2920(=5.33×10−3/1.82×10−6)と算出され、γ線照射によりγ−PGAの長さは二分の一になっていることが解る。
今回用いたγ−PGAは、分子量50万のサンプルであるが、ユニット数2920から算出される平均分子量44万(Na form)とほぼ一致する。架橋γ−PGAでは、chain数5本に対して架橋構造が2箇所存在することが見積られたが、分子量が二分の一になっているため、このような架橋の割合では効果的な架橋構造が形成されていないことが示唆される。
実際に、今回用いたγ−PGA、及び架橋γ−PGAがほとんど吸水性を示さなかったことは、上記に示した架橋状態を裏付けることができる。
したがって、本発明はその基本的態様は、上記で説明したとおり、γ−PGAをγ線照射することにより製造された架橋γ−PGAの架橋構造を解析する方法において、
解析すべき架橋γ−ポリグルタミン酸を加水分解して得られる2−ケトグルタル酸量とグルタミン酸量の比率を求め、
一方、解析すべき架橋γ−ポリグルタミン酸中の一本鎖γ−ポリグルタミン酸のN末端に存在するグルタミン酸量を求め、架橋γ−ポリグルタミン酸中のグルタミン酸量をN末端グルタミン酸量で除することにより架橋γ−ポリグルタミン酸における一本鎖γ−ポリグルタミン酸中のグルタミン酸ユニット数を求め、
得られたグルタミン酸ユニット数と、2−ケトグルタル酸及びグルタミン酸の比率より、架橋γ−ポリグルタミン酸における一本鎖γ−ポリグルタミン酸当たりの2−ケトグルタル酸の存在数を求め、さらに、
得られた2−ケトグルタル酸の存在数から架橋構造を解析する、
ことを特徴とする架橋γ−ポリグルタミン酸の架橋構造を解析する方法となる。
この場合、γ−PGA、及び架橋γ−PGA中のグルタミン酸量は、最も基本となる重要な値であるが、γ−PGA、及び架橋γ−PGAの純度が分からないため、解析すべきγ−PGA、及び架橋γ−PGA単位量あたりのグルタミン酸量は、加水分解後のグルタミン酸を直接秤量し求めることもできるし、NMRを用いた絶対定量法によっても求めることができる。
具体的には、γ−PGA、及び架橋γ−PGA単位量あたりのグルタミン酸量は、より簡便な方法を用い、フタル酸モノカリウム塩を内部標準物質とした積分値の比較(NMRを用いた絶対定量用法)により、それぞれγ−PGAの単位量あたりのグルタミン酸量は、5.33×10−3モル/グラム、架橋γ−PGAは、4.96×10−3モル/グラムであると導いた。
本発明の方法における、γ−PGA、及び架橋γ−PGAの酸による加水分解において用いる酸としては、塩酸、硫酸、臭化水素酸等が挙げられ、中でも塩酸による加水分解が好ましい。
かかる加水分解は、具体的には、機密性の高いバイアル中で、10mgのγ−ポリグルタミン酸、或いは架橋γ−ポリグルタミン酸に6規定塩酸水溶液(1mL)を加え、110℃で1時間攪拌することによって行うことができる。
上記の加水分解により、架橋結合の開列並びにPGAの鎖構造の開列により、式(2)で示される2−ケトグルタル酸と式(3)で示されるグルタミン酸との混合物が生成するが、2−ケトグルタル酸の定量は具体的には以下のようにして行うことができる。
すなわち、生成した式(2)で示される2−ケトグルタル酸を蛍光化試薬としてのフェニレンジアミン類と反応させ、蛍光分析によりその定量を行うことができる。
反応させる蛍光化試薬としてのフェニレンジアミン類としては、種々のフェニレンジアミンを挙げることができるが、なかでも3,4−メチレンジオキシフェニレンジアミンを主成分とするタカラバイオ(株)製のシアル酸蛍光標識用試薬キットを用いるのが好ましい。
この試薬キットを用いて反応させることにより、具体的には上記[化3]に示した化学式による反応が進行し、得られた生成物について、励起波長362nm、発色波長446nmの蛍光度を測定することにより、2−ケトグルタル酸の定量を行うことができる。
架橋γ−PGAの加水分解生成物中の2−ケトグルタル酸の定量は、具体的には、上記加水分解で得られた反応溶液を直ちに凍結乾燥し、更に残渣に水(1mL)を加えて凍結乾燥する操作を5回繰り返し、わずかに残っている塩酸を除去する。得られた残渣に、水1mLを加え、この内の50μLを別の容器に写し、3,4−メチレンジオキシフェニレンジアミンを含む試薬キット溶液(200μL)を加え、50℃で、2時間半攪拌し、得られた溶液の蛍光強度から架橋していないγ−PGAで得られる蛍光強度を差し引くことにより、2−ケトグルタル酸の定量を行うことができる。なお、事前に、種々の濃度に調整した2−ケトグルタル酸−グルタミン酸混合物についても同様の条件により、加水分解、蛍光化を行い、検量線を作成し、単位量あたりの2−ケトグルタル酸量は、1.24×10−6モル/グラムと導かれ、架橋γ−PGA中の2−ケトグルタル酸の割合は、0.025%(=1.24×10−6/5.33×10−3)と見積もられた。
一方、架橋γ−PGAの一本鎖ポリグルタミン酸中のグルタミン酸ユニット数は、基本的には架橋γ−PGA単位量あたりのグルタミン酸量をN末端グルタミン酸量で除することにより得ることが可能となる。
すなわち、架橋γ−PGA中のγ−PGAのN末端に存在するグルタミン酸量は、N末端特異的な反応試薬を作用し、定量することにより求めることができることから、架橋γ−PGAにおける一本鎖γ−ポリグルタミン酸中のグルタミン酸ユニット数を求めることができる。
具体的には、架橋γ−PGA中のγ−PGAのN末端に存在するグルタミン酸量は、架橋γ−PGAに2,4−ジニトロフルオロベンゼン(DNFB)を反応させ、N末端アミノ基に2,4−ジニトロフェニル(DNB)基が結合した架橋DNB−γ−PGAを得、DNB−グルタミン酸で作成した検量線からN末端グルタミン酸量を見積もり、上記で得られた架橋γ−PGA単位量あたりのグルタミン酸量をN末端グルタミン酸量で除することにより、架橋γ−PGAにおける一本鎖γ−ポリグルタミン酸中のグルタミン酸ユニット数を求めることができる。
さらに具体的には、10mgの架橋γ−PGAを水(1.35mL)とアセトニトリル(0.15mL)の混合溶媒に溶解し、この溶液に、炭酸ナトリウム(14.4mg)、及び、2,4−ジニトロフルオロベンゼン(8.5μL)を加え、50℃で2時間撹拌する。反応溶液は、分子量2000の透析膜を用い過剰な試薬を除去する。得られた溶液は、分子量30000の限外濾過膜を用い、遠心により更に不純物を濾過し、得られた溶液のUV吸収を測定し、DNB−グルタミン酸で作成した検量線から架橋γ−PGAにおける一本鎖γ−ポリグルタミン酸量を3.21×10−6モル/グラムと導いた。
また、単位量当たりのグルタミン酸量を上記の値で除することにより、架橋γ−PGA中の一本鎖γ−PGAに含まれるグルタミン酸ユニット数を、1550(=4.96×10−3/3.21×10−6)と導いた。
本発明者等の検討の結果、ある特定時間のγ線照射により得られた架橋γ−PGAについて検討した結果、解析すべき架橋γ−PGAを加水分解して得られる2−ケトグルタル酸とグルタミン酸の比率は、1:4000であり、一本鎖γ−PGA中のグルタミン酸ユニット数は、約1550であることが判明した。
それをもとに架橋構造を見積もると、2−ケトグルタル酸とグルタミン酸の比率が1:4000であることから、架橋されたγ−PGAの一本鎖当たり、0.39個の2−ケトグルタル酸が存在していることになり、5本鎖ではおよそ2個の2−ケトグルタル酸が存在していることになる。
ただし、架橋されていないγ−PGA一本鎖のグルタミン酸のユニット数は2920(=5.33×10−3/1.82×10−6)と算出され、γ線照射によりγ−PGAの長さは二分の一になっていることから、このような架橋の割合では効果的な架橋構造が形成されていないことが示唆される。
以上に説明した解析方法により、種々の照射条件で架橋された架橋γ−PGAの架橋構造が解析され、得られた架橋γ−PGAの保水性能と対比し、どのような照射条件によれば、最も好ましい架橋γ−PGAを得ることができるか決定することが可能となる。
本発明により、これまでその架橋構造の詳細が判明していないγ−PGAのγ線照射により製造される架橋γ−PGAについて、その分子量に基づく架橋構造の詳細、架橋結合の数等を解析することができることとなった。
γ−PGAのγ線照射により得られた架橋γ−PGAは、その照射条件により得られる架橋γ−PGAの分子量、架橋結合数は種々異なっており、その保水性能も異なるものであるが、本発明が提供する解析方法により解析されるγ線照射により得られた架橋γ−PGAの構造解析することによりその物性を解明し、より保水性能を有する架橋γ−PGAを製造する条件を設定することが可能となり、その産業上の利用性は多大なものである。

Claims (4)

  1. γ−ポリグルタミン酸をγ線照射することにより製造された架橋γ−ポリグルタミン酸の架橋構造を解析する方法において、
    解析すべき架橋γ−ポリグルタミン酸を加水分解して得られる2−ケトグルタル酸量とグルタミン酸量の比率を求め、
    一方、解析すべき架橋γ−ポリグルタミン酸中の一本鎖γ−ポリグルタミン酸のN末端に存在するグルタミン酸量を求め、架橋γ−ポリグルタミン酸中のグルタミン酸量をN末端グルタミン酸量で除することにより架橋γ−ポリグルタミン酸における一本鎖γ−ポリグルタミン酸中のグルタミン酸ユニット数を求め、
    得られたグルタミン酸ユニット数と、2−ケトグルタル酸及びグルタミン酸の比率より架橋γ−ポリグルタミン酸における一本鎖γ−ポリグルタミン酸当たりの2−ケトグルタル酸の存在数を求め、さらに、
    得られた2−ケトグルタル酸の存在数から架橋構造を解析する、
    ことを特徴とする架橋γ−ポリグルタミン酸の架橋構造を解析する方法。
  2. 加水分解により生成した2−ケトグルタル酸の生成量を、フェニレンジアミン誘導体との反応生成物の定量で行う請求項1に記載の架橋γ−ポリグルタミン酸の架橋構造を解析する方法。
  3. 架橋γ−ポリグルタミン酸における一本鎖γ−ポリグルタミン酸のN末端のグルタミン酸量を、架橋γ−ポリグルタミン酸を2,4−ジニトロフルオロベンゼンと反応させて得られる架橋γ−ポリグルタミン酸の2,4−ジニトロベンゼン誘導体中の2,4−ジニトロベンゼンユニットの定量で行うことを特徴とする請求項1に記載の架橋γ−ポリグルタミン酸の架橋構造を解析する方法。
  4. 架橋γ−ポリグルタミン酸の加水分解を酸により行うことを特徴とする請求項1に記載の架橋γ−ポリグルタミン酸の架橋構造を解析する方法。
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