JP2011225658A - バイオマスの前処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】低コストで、単位重量当たりのエタノール収量が大きく、糖化に必要とされる炭酸ガスの総排出量の少ないバイオマスの前処理方法を提供する。
【解決手段】例えば、コウゾやケナフのように、乾燥状態におけるセルロース含有量が70質量%以上で、さらに好ましくは繊維束の長さが20mm以上である植物由来のセルロース系バイオマスを、次亜塩素酸ナトリウムのような酸化剤でバイオマス中のリグニンを酸化して親水化し、水相に溶解させ、バイオマスからリグニンを除去する。
【選択図】なし

Description

本発明はバイオマスからセルロースを取り出すためのバイオマスの前処理方法及び当該方法により取り出されたセルロース、当該セルロースを加水分解することにより得られる糖類、当該糖類を原料として製造されるエタノール並びに当該エタノールとガソリンを混合した液体燃料に関する。
近年、地球温暖化問題が叫ばれるなか、あらゆる産業分野で排出される炭酸ガスは、地球温暖化を引き起こす物質とされ、炭酸ガス排出量の削減に向けた様々な努力がなされている。このような状況において、草や木といった植物系のバイオマスは空気中の炭酸ガスを固定して成長していることに着目されている。これらのバイオマスそのものやこれらのバイオマス由来の燃料を燃やしても、排出される炭酸ガスは元々空気中にあったものであり、植物に取り込まれて空気中から減少するので、炭酸ガスの総排出量が抑制されると考えられるからである。また、最近では、燃料の燃えカスである炭酸ガスを削減するための様々な努力のほかに、資源保護の観点からも、バイオマス自体やバイオマス由来の物質、例えばバイオエタノールで有限な化石燃料を代替することにも注目されている。
バイオマスからバイオエタノールを製造する方法としては、穀類や芋類などに含まれるデンプン、果実等に含まれる単糖や二糖を醗酵させる方法が最も一般的である。しかしながら、これらの食用品をバイオエタノールに変換することは、世界の食糧事情に悪影響を及ばすことが必至であり、好ましくない。
そこで、食糧事情に悪影響を及ぼさないバイオマスとして、セルロース系のバイオマスが注目を浴びている。セルロール系バイオマスは人類の食用には適さず、木本や草本という形態で全世界に分布しており、エタノール源として非常に有望なバイオマスである。
セルロース系のバイオマスにおいては、エタノール源となるセルロースは繊維細胞の主成分として存在している。繊維細胞はリグニンを主成分とする細胞間層によって結合されてリグノセルロースを形成している。セルロースを効率よく加水分解してエタノールの前駆体である糖類とするためには、バイオマスを粉砕し、リグニンで覆われて少なくなっているセルロースの露出面積を増大させるか、リグノセルロースからリグニンを除去し、セルロースが加水分解を受けやすい状態にする必要がある。
バイオマスをリグノセルロースのまま粉砕などを行い、リグニンで覆われて少なくなっているセルロースの露出面積を増大させた後に糖化する方法が、例えば特許文献1〜10に記載されている。これらの方法においては、バイオマスをフィリナー機や叩解機などを使用して粉砕や摩砕、叩解した後、酵素処理や酸による加水分解などを行うか(特許文献1〜3)、粉砕後に高温の水蒸気と接触させたり、高圧下で加熱処理したりしている(特許文献4〜5、9〜10)。また、バイオマスを粉砕した後に、サルファイト蒸解する(特許文献6)、アルミナなどの酸性基や水酸基を有する担体と接触させる(特許文献7)、多糖類分解酵素などとアルコール発酵菌を同時使用する(特許文献8)ことが行われている。
一方、バイオマスからリグニンを予め除去し、純粋なセルロースに近い状態とした後に糖化する方法が、例えば、特許文献11〜14に記載されている。これらの方法においては、イミダゾリウム化合物の水溶液等のイオン液体を用いる(特許文献11)、水酸化ナトリウムの水溶液(特許文献12)や過酸化水素(特許文献14)を用いる、水蒸気処理した後にアルカノールアミンを用いる(特許文献15)など種々の薬剤を用いたり、高温にした亜臨界水(特許文献13)を用いたりしてリグニンを除去することが行われている。
しかしながら、リグニンを予め除去するしないにかかわらず、上記の方法では、粉砕や加熱・加圧操作が必要となるだけでなく、高温高圧や酸・アルカリその他の薬品の使用など過酷な操作条件が必要となり、糖化に必要な消費エネルギー量も多くなる。また、それに伴い大型圧力容器などの反応容器も大規模なものとなり、総炭酸ガス排出量が大きくなるだけでなく、薬品の後処理が必要となるなど、設備費用、ランニングコスト、メンテナンス費用などのコスト負担が増大するという欠点があった。
また、特許文献16にはマニラ麻やサイザル麻のような非木材植物からパルプを得るための製造方法が開示されている。当該方法は、水酸化ナトリウム溶液で煮沸した後に二酸化塩素を含む液で煮沸、あるいは二酸化塩素を含む液で煮沸した後水酸化ナトリウム溶液で煮沸したりする方法である。しかしながら、当該方法では、二酸化塩素による処理だけでなく水酸化ナトリウム溶液などを用いたアルカリ処理、さらにはアルカリ処理後の中和処理などパルプ製造に必要な工程が多くなる。しかも、煮沸処理を伴う方法であるので、糖化に必要な総消費エネルギー量が多くなるという欠点があった。しかも、二酸化塩素はその取り扱いも難しく、設備費用やメンテナンス費用などのコスト負担が多いという欠点もあった。
特開2009−124973号公報 特開2009−142172号公報 特開2009−171885号公報 特開2009−183153号公報 特開2009−189250号公報 特開2009−213389号公報 特開2009−213440号公報 特開2009−254283号公報 特開2009−261275号公報 特開2009−261276号公報 特開2009−189277号公報 特開2009−125050号公報 特開2006−255676号公報 特開2009−114181号公報 特表2002−541355号公報 特開2000−282380号公報
このように、バイオエタノールの生産場面では、原料であるセルロース系バイオマスからエタノール発酵に必要な糖を得る糖化工程に多大な消費エネルギー量とコストを要しており、この消費エネルギー量やコストの削減はバイオエタノール価格の競争性や炭酸ガス排出量削減のために解決すべき重要な課題である。
このような背景の下、できる限り緩和な反応条件で脱リグニン化を行い、バイオエタノール生産時の消費エネルギー量や排出される炭酸ガス量を減らすことができれば、上記解決課題が達成されるものと考えられる。
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、低コストで、単位重量当たりのエタノール収量が大きく、糖化に必要とされる炭酸ガスの総排出量の少ないバイオマスの処理方法を提供することにある。
本発明は、セルロースとリグニンを含むバイオマスからセルロースを取り出すための前処理方法であって、前記バイオマスが乾燥状態でのセルロース含有量が70質量%以上である植物由来のバイオマスであり、当該バイオマス中のリグニンを酸化剤による酸化によって親水化して水相に溶解する工程を有するバイオマスの前処理方法である。
本発明によると、比較的緩和な条件でバイオマスから高い収率でセルロースを取り出すことができる。この結果、バイオマスを糖化するのに必要な総エネルギー量や炭酸ガスの総排出量が少なくなるだけでなく、バイオマスの糖化に必要なコストが低下する。
本発明は、セルロースとリグニンを含むバイオマスからリグニンを分離してセルロースを取り出す方法である。本発明において用いられるバイオマスはいわゆるセルロース系のバイオマスといわれるものであって、セルロースとリグニンを含有し、セルロース含有量が乾燥状態で70質量%以上のものである。なお、本発明におけるセルロース含有量は、ヘミセルロースを含むホロセルロース含有量であって、乾燥状態でのセルロース含有量は、試料から乾燥によって水分を除去した後、ホロセルロース含有量の一般的な測定法であるWise法によりリグニンを除いて求められる値を意味する。また、特に断りのない限り、本明細書において「部」とあるのは質量部を示し、「%」は質量基準を示す。
表1には、これまでバイオエタノールの製造に用いられてきた代表的なセルロース系バイオマスのセルロース含量、リグニン含有量、繊維束の長さを示す。バイオエタノール製造に用いられてきた木材系のセルロース系バイオマス、例えば、アカマツや杉のセルロース含有量は50〜65%程度であった(表1参照)。このようなセルロース系バイオマスを用いた場合、バイオマスの仕込み量を100とすると最終のエタノール理論収量は25〜35%と低く、残りの65〜75%は炭酸ガスをはじめとする廃棄物となるのみでなく、20〜30%含まれるリグニンの除去に大きなエネルギー量を要する。このようにセルロース含有量が70%未満のバイオマスでは効率的な糖化が行えず、エネルギー的に有効利用ができなかった。
Figure 2011225658
また、本発明では、乾燥状態におけるリグニン含有量が20%以下、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下のバイオマスが好ましい。リグニン含有量が20%を超えると酸化剤による処理ではリグニンの親水化が十分に行えず、リグニンが残存する可能性が高くなる。なお、ここでのリグニン含有量は、試料から乾燥によって水分を除去した後、リグニン含有量の一般的な測定法であるクラソン(Klason)法によって求められる値を意味する。
本発明においては、さらに繊維束の長さが20mm以上のバイオマスを用いるのが好ましい。本発明を行うにあたり検討を行った結果、繊維束の長さが20mm以上のバイオマスは、繊維束の長さが20mm未満のものと比べてバイオマス中のセルロースを被覆しているリグニン層の膜厚が小さく、酸化剤により容易に酸化されて水相に溶出しやすいことが理解されたからである。特に、セルロース含有量が乾燥状態で70%以上のバイオマスではリグニン層の膜厚が小さくなり、少量の酸化剤によりリグニンが溶出されやすい。従って、本発明においては、セルロース含有量が乾燥状態で70%以上、かつ、繊維束の長さが20mm以上である植物由来のバイオマスが好ましく用いられる。
バイオマスは一般には木や草、農産物などの残渣を意味するが、本発明においては天然繊維として取り出せる植物の靱皮、葉脈等の部位が好ましく用いられる。具体的には、コウゾ(アカソ、アオソ、クロカジ、カナメ、タオリ)、ミツマタ、カラムシ、イチビ、亜麻、ケナフ等の靭皮、サイザル麻の葉脈、綿花等が例示される。また、これらの植物以外にも、栽培方法の改変や品種改良により、植物全体に示す靭皮や葉脈の占める質量割合を高められた植物も好ましく用いられる。当該改良植物のように植物全体として乾燥状態でセルロース含有量が70%以上となる植物は、靭皮や葉脈等その部位を取り出すことなく糖化原料として用いることができるので、さらに望ましいバイオマスといえる。本発明においては、上記バイオマスのうち1種または2種以上を併用して用いることができる。
本発明においては、上記バイオマスを酸化剤によって酸化させ、バイオマス中のリグニンを親水化する。乾燥状態でセルロース含有量が70%未満以上であるバイオマスは、他のバイオマスと比較して、リグニンを主成分とする細胞間層による繊維束同士の結合が弱いため、酸化反応の初期段階からバイオマス表面のリグニンと酸化剤との衝突頻度が他のバイオマスに比べて大きくなり、反応の進行が早いという利点がある。また、繊維束の長さが20mm以上であると、セルロースとリグニンの量比からするとリグニンが繊維束表面に薄く被覆することになるため、リグニンの被覆膜が破壊され易く、結果的に脱リグニン反応の初期段階からバイオマス表面のリグニンと酸化剤との衝突頻度がその他のバイオマスと比較して大きくなり、反応の進行が早くなる。
このように、本発明において用いられるバイオマスは酸化反応の進行が早いという利点があるので、粉砕や切断を行わずともそのまま糖化工程に用いることができるが、さらにこれを切断や粉砕等してバイオマスの表面積を大きくすることで、バイオマス表面のリグニンと酸化剤との衝突頻度を更に大きくして、反応速度をより高めることもできる。
リグニンの酸化に用いられる酸化剤は、リグニンを酸化して親水化を行い、水相に溶出させることができる薬剤であり、当該目的を達成できるものであれば特に制限されない。このような酸化剤として、次亜塩素酸ナトリウムや亜塩素酸ナトリウムのようにナトリウム塩を含む酸化剤、過酸化水素などの過酸化物、オゾンが例示される。これらのうち、反応条件、薬剤の安全性、価格、反応後生成物やそれらの処理方法などを考慮すると、反応後の生成物が塩化ナトリウムである次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
次亜塩素酸ナトリウムは、リグニン等の芳香族化合物に結合しているアルキル基を酸化して親水性のカルボキシル基とするのに有効な酸化剤である。次亜塩素酸ナトリウムは水酸化ナトリウム水溶液に塩素ガスを吹き込むことにより製造され、通常は水溶液として供給され、そのまま使用される。
次亜塩素酸ナトリウムは次のようにしてリグニンを酸化し、親水化するものと考えられる。リグニンはフェニルプロパン単位が重合した疎水性高分子であって、フェニルプロパン(Ph−CH−CH−CH:分子量120)構造と仮定すると、フェニルプロパンと次亜塩素酸ナトリウムとの反応は、次の式1のとおりとなる。
〔式1〕
Ph−CH−CH−CH+9NaClO
→ Ph−COOH+2CO+9NaCl+3H
反応は次亜塩素酸ナトリウムの水溶液中でバイオマスを加熱攪拌することにより行われる。この反応により、リグニンが酸化を受けて水溶性のカルボン酸が生成し、カルボン酸として水相に溶出する。反応は室温でも進行するが、反応温度は好ましくは40℃〜100℃、より好ましくは60℃〜90℃である。反応温度が40℃未満では、反応温度が遅く、100℃を超えるとセルロースの過分解が起こるので、好ましくは90℃以下の温度とするのがよい。上記反応式から理解されるように、この反応による生成物は、水溶性のリグニン酸化物(カルボン酸)と二酸化炭素、塩化ナトリウムであり、排水処理が比較的簡単に行える。また、特許文献1〜15に記載された方法に比べると、反応温度や反応圧力が低い、反応装置が簡易である、安価な試薬で処理できるなど稼働コストが低い、稼働に関わるエネルギー消費量が少ないなどの多くの点で優れている。
次亜塩素酸ナトリウムの濃度は適宜定められるが、次亜塩素酸ナトリウムは上記のとおり通常は水溶液の状態で提供され、産業分野で供給されるものは次亜塩素酸ナトリウム濃度として約25.2%(有効塩素濃度12wt%)、実験用に供給されるものは次亜塩素酸ナトリウム濃度として約10.3wt%(有効塩素濃度5wt%)であり、この濃度の水溶液がそのまま用いられる。
本発明においては、バイオマスの処理量に応じて必要な量の次亜塩素酸ナトリウム水溶液がバイオマスに加えられる。上記のとおり、リグニンの酸化では、1モルのフェニルプロパンを100%酸化するために9モルの次亜塩素酸ナトリウムが必要である。そうすると、リグニンのモデル化合物であるフェニルプロパン120質量部に対して、理論上は670質量部の次亜塩素酸ナトリウムが必要となる。従って、当該モデル化合物であるフェニルプロパン120質量部の全量を酸化するためには、有効塩素濃度が12wt%である次亜塩素酸ナトリウム水溶液が22.1質量部、有効塩素濃度が5wt%である次亜塩素酸ナトリウム水溶液が53.1質量部必要である。ここでリグニンの含有量が5%のバイオマスを処理すると仮定した場合、バイオマス1質量部に対して、有効塩素濃度が12wt%の場合1.1質量部の次亜塩素酸ナトリウム水溶液が、有効塩素濃度が5wt%の場合2.7質量部の次亜塩素酸ナトリウム水溶液が必要となる。実際の反応に際しては、副反応や次亜塩素酸の損失などを考慮して、バイオマス1質量部に対して上記理論値の2倍〜10倍量の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を加えることが好ましい。次亜塩素酸ナトリウムの量がこれよりも少ないとリグニンが十分酸化されずにセルロース表面に残存し、セルロースの酸化を妨げる可能性が増える。また、その他の酸化剤を用いる場合についても、上記と同様な考え方で必要な酸化剤の使用量を求めることができる。
本発明においては、乾燥状態でセルロース含有量が70%以上のバイオマスを用いているので、乾燥等により得られたバイオマスに洗浄などを施すことなく、直ちに酸化剤によって酸化を行うことができる。本発明の方法は、特許文献16に開示された方法とは異なり、次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤を含む溶液を煮沸させる必要や、当該酸化剤による処理の他に、水酸化ナトリウムや二酸化塩素による前処理や後処理を行う必要がなく、酸化剤を含む溶液に浸漬若しくは60〜90℃の温度に加熱する工程のみで、バイオマスの前処理を終えることができる。もっとも、酸化剤処理の前処理として、水、水酸化ナトリウム水溶液や炭酸ナトリウム水溶液などのアルカリ溶液中で加熱しても差し支えない。これにより、セルロース/リグニン間の結合が弱められ、あるいは両者間の結合が切断され、酸化されやすくなる。このとき、硫酸や塩酸などによる酸溶液中での加熱は避けることが望ましい。酸によるセルロースの加水分解が生じ、水相中に酸化されたリグニンとともに移行して、結果として糖類の収率が低下するからである。
こうして反応が終了した水溶液からセルロースが分離される。分離処理としては、例えば濾過や遠心分離、自然沈降など公知の方法が例示される。また、分離されたセルロースは必要に応じて水で洗浄を行うのが好ましい。この方法により得られたセルロースはリグニンが除去され、ほとんどセルロースのみから構成される。もっとも、本発明におけるセルロースは純度が100%のセルロースを意味するものではなく、不純物としてリグニンやヘミセルロースを多少でも含むものを排除するものではない。
得られたセルロースは、常法によりグルコースに糖化され、アルコール発酵を経てアルコールに変換される。このアルコールは比較的純度の高いセルロースを原料とするものであり、比較的高純度である。このアルコールはそのままアルコール燃料として用いることもできるし、各種化学製品の原料として用いることもできる。また、ガソリンと混合し、アルコール変性ガソリンとしてすることもできる。
次に本発明について下記の実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は例示であって、本発明は上記の実施形態や実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲及びこれと均等に含まれるすべての変更が本発明に含まれることが意図される。

表1に示すバイオマスの中から、単位質量当たりのセルロース含有量が89%、かつ、単位質量当たりのリグニン含有量が4%であるコウゾ(アカソ)の靭皮部(白皮)を幅2mm、長さ20mmに裁断したもの5部と、680部の脱イオン水とを攪拌翼を備えた反応容器に仕込んだ。その後、90℃まで昇温して、攪拌を行いながら20部の次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度5%、和光純薬社製)を加え、90℃で15分間反応を行った。反応終了後、濾過により水分を除去した後、脱イオン水500部を加えて2回洗浄を繰り返し、濾過により水分を除去して白色繊維状のセルロースを主体とする成分3.8部を得た。
表1に示すバイオマスの中から、単位質量当たりのセルロース含有量が96%、かつ、単位質量当たりのリグニン含有量が3%であるケナフ(靱皮)を長さ20mmに裁断したもの5部と、680部の脱イオン水とを攪拌翼を備えた反応容器に仕込んだ。その後、90℃まで昇温して、攪拌を行いながら20部の次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度5%、和光純薬社製)を加え、90℃で15分間反応を行った。反応終了後、濾過により水分を除去した後、脱イオン水500部を加えて2回洗浄を繰り返し、濾過により水分を除去して白色繊維状のセルロースを主体とする成分4.3部を得た。
表1に示すバイオマスの中から、単位質量当たりのセルロース含有量が88%、かつ、単位質量当たりのリグニン含有量が5%である亜麻(靱皮)を長さ20mmに裁断したもの5部と、680部の脱イオン水とを攪拌翼を備えた反応容器に仕込んだ。その後、90℃まで昇温して、攪拌を行いながら20部の次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度5%、和光純薬社製)を加え、90℃で15分間反応を行った。反応終了後、濾過により水分を除去した後、脱イオン水500部を加えて2回洗浄を繰り返し、濾過により水分を除去して白色繊維状のセルロースを主体とする成分3.9部を得た。
表1に示すバイオマスの中から、単位質量当たりのセルロース含有量が76%、かつ、単位質量当たりのリグニン含有量が2%であるカラムシ(芋麻、ラミー:靱皮)の繊維束を長さ20mmに裁断したもの5部と、680部の脱イオン水とを攪拌翼を備えた反応容器に仕込んだ。その後、90℃まで昇温して、攪拌を行いながら20部の次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度5%、和光純薬社製)を加え、90℃で15分間反応を行った。反応終了後、濾過により水分を除去した後、脱イオン水500部を加えて2回洗浄を繰り返し、濾過により水分を除去して白色繊維状のセルロースを主体とする成分3.4部を得た。
表1に示すバイオマスの中から、単位質量当たりのセルロース含有量が71%、かつ、単位質量当たりのリグニン含有量が27%であるジュートを長さ20mmに裁断したもの5部と、680部の脱イオン水とを攪拌翼を備えた反応容器に仕込んだ。その後、90℃まで昇温して、攪拌を行いながら20部の次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度5%、和光純薬社製)を加え、90℃で15分間反応を行った。反応終了後、濾過により水分を除去した後、脱イオン水500部を加えて2回洗浄を繰り返し、濾過により水分を除去して白色繊維状のセルロースを主体とする成分3.7部を得た。
〔比較例1〕
表1に示すバイオマスの中から、単位質量当たりのセルロース含有量が53%、かつ、単位質量当たりのリグニン含有量が32%である稲わらを長さ20mmに裁断したもの5部と、680部の脱イオン水とを攪拌翼を備えた反応容器に仕込んだ。その後、90℃まで昇温して、攪拌を行いながら120部の次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度5%、和光純薬社製)を加え、90℃で60分間反応を行った。反応終了後、濾過により水分を除去した後、脱イオン水500部を加えて2回洗浄を繰り返し、濾過により水分を除去して白色繊維状のセルロースを主体とする成分3.4部を得たが、バイオマス由来の繊維状物質が残存していた。
〔比較例2〕
表1に示すバイオマスの中から、単位質量当たりのセルロース含有量が53%、かつ、単位質量当たりのリグニン含有量が25%であるタケノコの皮を幅2mm、長さ20mmに裁断したもの5部と、680部の脱イオン水とを攪拌翼を備えた反応容器に仕込んだ。その後、90℃まで昇温して、攪拌を行いながら70部の次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度5%、和光純薬社製)を加え、90℃で280分間反応を行った。反応終了後、濾過により水分を除去した後、脱イオン水500部を加えて2回洗浄を繰り返し、濾過により水分を除去して白色繊維状のセルロースを主体とする成分3.0部を得たが、バイオマス由来の繊維状物質が残存していた。
〔比較例3〕
表1に示すバイオマスの中から、単位質量当たりのセルロース含有量が69%、かつ、単位質量当たりのリグニン含有量が15%であるヤナギの幹を幅2mm、長さ20mmに裁断したもの5部と、680部の脱イオン水とを攪拌翼を備えた反応容器に仕込んだ。その後、90℃まで加熱して、攪拌を行いながら70部の次亜塩素酸ナトリウム溶液(有効塩素濃度5%、和光純薬社製)を加え、90℃で60分間反応を行った。反応終了後、濾過により水分を除去した後、脱イオン水500部を加えて2回洗浄を繰り返し、濾過により水分を除去して白色繊維状のセルロースを主体とする成分3.2部を得たが、バイオマス由来の繊維状物質が残存していた。
実施例1〜5及び比較例1〜3について、セルロース含有量、リグニン含有量、酸化剤の使用量、得られたセルロースの状態などを表2にまとめた。これによると、本発明の実施例においては、比較例に比べて短い反応時間で、しかも少ない酸化量で脱リグニン化を行うことができた。
Figure 2011225658
本発明によると、酸化剤による酸化反応という比較的緩和な条件でバイオマスを脱リグニン化できる。また、低い反応温度で反応が行わせることができ、しかも脱リグニン効率もよいので、バイオエタノールの前駆体であるセルロースを低コスト、低エネルギー消費量で得ることができる。このように、本発明は、地球温暖化対策の一手段としてバイオ燃料関連分野での利用が可能である。

Claims (9)

  1. セルロースとリグニンを含むバイオマスからセルロースを取り出すためのバイオマス前処理方法であって、
    前記バイオマスが乾燥状態でのセルロース含有量が70質量%以上である植物由来のバイオマスであり、
    当該バイオマス中のリグニンを酸化剤による酸化によって親水化して水相に溶解する工程を有するバイオマス前処理方法。
  2. 前記植物は、繊維束の長さが20mm以上である請求項1に記載のバイオマス前処理方法。
  3. 前記酸化剤が次亜塩素酸及び/又はその塩である請求項1又は2に記載のバイオマス前処理方法。
  4. 前記酸化剤による処理工程のみからなる請求項1〜3の何れか1項に記載のバイオマス前処理方法。
  5. 前記処理は、40〜90℃、90分以内の処理である請求項1〜4の何れか1項に記載のバイオマス前処理方法。
  6. 請求項1〜5の何れか1項に記載のバイオマス前処理方法により得られたセルロース。
  7. 請求項6に記載のセルロースを加水分解して得られた糖類。
  8. 請求項7に記載の糖類を原料の一部又は全部として製造されたエタノール。
  9. 請求項8に記載のエタノールがガソリンに混合された液体燃料。
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