JP2011214293A - コンクリート構造体およびコンクリート構造体の耐火被覆方法 - Google Patents

コンクリート構造体およびコンクリート構造体の耐火被覆方法 Download PDF

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Abstract

【課題】シールドトンネル構築後の耐火被覆にかかる手間を削減することが可能な軽量耐火断熱セメントモルタルを用いたシールドセグメント(コンクリート構造体)を提供する。
【解決手段】二次覆工を省略した道路用のシールドトンネルにおいて、車両火災時のコンクリート製シールドセグメントの爆裂を防止するために、シールドセグメントの内周面側に耐火被覆層を設ける。この耐火被覆層が、セメント、パーライト、水およびこれらの分離を防止する添加剤とを含む軽量耐火断熱セメントモルタルを硬化させた硬化物からなる。また、前記軽量耐火断熱セメントモルタルを硬化させた耐火被覆層上にコンクリートを打ち継いでセグメント本体を設けることにより、耐火被覆層とセグメント本体とが一体に形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、二次覆工を省略したシールドトンネルで用いられる耐火被覆されたコンクリート構造体およびコンクリート構造体の耐火被覆方法に関する。
シールド工法で構築されるトンネルは、技術の進歩により二次覆工を省略した構造とすることが可能となり、二次覆工を省略したトンネルには、多くの施工実績がある。しかし、道路用トンネルの場合に、通行車両の事故等に起因するトンネル火災が発生すると、二次覆工を省略したシールドトンネルではコンクリート構造体であるシールドセグメント(以下、セグメントと略称する場合がある)自体が一瞬のうちに直接高温にさらされることになる。
一般に高強度、高密度コンクリートは、火災等による急激な温度上昇により、結合水などコンクリート内部に蓄積されている水分が膨張し、その膨張圧により爆裂を生じやすいとされている。このため、セグメントに生じる爆裂を防止するための技術が多く開発されている。
例えば、二次覆工を省略したシールドトンネルの施工において、シールドトンネル形成後にセグメント内周にプレス式珪酸カルシウム系耐火板とセラミック系耐火板とを後付けすることが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
また、二次覆工を省略したシールドトンネルの施工において、上述の場合と同様に耐火板を後付けするものとし、熱が伝導させるヒートブリッジとなる耐火板の取付金具をトンネル内面に露出しない構造としたものが提案されている(例えば、非特許文献2参照)。
また、二次覆工を省略し、かつ、一部に可とうセグメント部を設けたシールドセグメントにおいて、可とうセグメント部を二重のセラミックファイバーブランケットで耐火する構造が提案されている(例えば、非特許文献3参照)。
また、シールドトンネルに耐火板を後付けする方法以外に、施工時に流動性を有し、施工後に硬化する耐火被覆材をシールドトンネルの内周面に吹き付ける吹き付け工法が知られている。
また、セグメントを構成するコンクリートに有機系のファイバーを混入してセグメント自体の耐火性能を向上する方法も知られている。
土木学会第61回年次学術講演会概要集 P127〜128(平成18年9月) 「道路シールドトンネルにおける耐火工の設計と性能確認試験」 土木学会第61回年次学術講演会概要集 P129〜130(平成18年9月) 「道路シールドトンネルにおける耐火工の施工計画および施工実績」 土木学会第61回年次学術講演会概要集 P131〜132(平成18年9月) 「道路シールドトンネルにおける可とうセグメントの耐火工」
ところで、二次覆工を省略したシールドトンネルにおける耐火被覆は、上述のように耐火板を後付けするものや、耐火被覆材をシールドトンネルの内周面に吹き付けるものがあるが、シールドトンネル構築後の手間が増えることになり、施工期間やコスト上問題がある。
それに対して、セグメント自体の耐火性能の向上、例えば、セグメントを構成するコンクリートの爆裂の防止を図れば、シールドトンネル構築後に耐火被覆を行う手間を削減することができる。しかし、爆裂を防止できても、シールドトンネルの躯体となるセグメントが耐火被覆無しに高熱にさらされることになる。このセグメントが熱の影響で劣化した場合に、修復が難しくなる虞がある。すなわち、耐火板や耐火モルタルの吹き付けにより、耐火被覆がある場合は、セグメントに直接高熱が作用することが抑制されるので、躯体の修復を必要としない可能性が高く、直接的に高熱の影響を受けた耐火被覆を交換することで、火災後の修復が終了するが、セグメントが熱で劣化してしまうとトンネルの修復がより大掛かりなものとなってしまう。
本発明は、シールドトンネル等の構築後の耐火被覆にかかる手間を削減することが可能な軽量耐火断熱セメントモルタルを用いたコンクリート構造体およびコンクリート構造体の耐火被覆方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、請求項1に記載のコンクリート構造体は、コンクリート製の本体と、この本体の内周面側に形成される耐火被覆層とを備えるコンクリート構造体であって、前記耐火被覆層が、セメント、パーライト、水およびこれらの分離を防止する添加剤とを含む軽量耐火断熱セメントモルタルを硬化させた硬化物からなり、前記軽量耐火断熱セメントモルタルを硬化させた前記耐火被覆層上にコンクリートを打ち継いで前記本体を設けることにより、前記耐火被覆層と前記本体とが一体に形成されていることを特徴とする。
請求項1に記載の発明においては、パーライトを含有する耐火被覆層により高い耐火断熱性能を得ることができる。また、例えば、二次覆工を省略した道路用のシールドトンネルを構築する際に、本発明のコンクリート構造体からなるシールドセグメントを組み立てて、シールドトンネルの一次覆工を行うことにより、シールドトンネルを構成するシールドセグメント内周面に耐火被覆が行われた状態となる。したがって、シールドトンネル工事において、シールドセグメントが既に組み立てられた部分に吹き付け工法や、耐火板を用いた方法で、後付けで耐火被覆を行う必要がなく、シールドトンネル工事の現場作業を省力化することができる。
また、後付けで耐火被覆を行う必要がないので、工期の短縮を図ることができる。また、施工中のシールドトンネルの既にシールドセグメントが組み立てられた部分で、耐火被覆の施工を行う必要がないので、施工中のシールドトンネル内に、耐火被覆を施工するための設備が必要なくなり、スペースに限界があるシールドトンネル内の設備を削減して、シールドトンネル内の作業性の向上を図ることができる。
また、プレキャストコンクリート製となるコンクリート構造体(シールドセグメント)は、例えば、工場で製造されるが、この際に、耐火被覆層の製造および耐火被覆層へのコンクリートの打ち継ぎによるコンクリート製の本体の製造を行うことができる。工場で耐火被覆層を有するコンクリート構造体を製造することにより、コンクリート構造体の品質を安定させることが可能であるとともに、工場での品質管理レベルで不良品の排除等も容易に行うことが可能であり、現場で耐火被覆の施工に問題が生じるのを防止することができる。
また、発泡による空隙を多く含むパーライトを用いているので、硬化した耐火被覆層にコンクリートを打ち継いで本体を設けた場合に、耐火被覆層の打ち継ぎされる面に露出するパーライトの空隙に打ち継ぎされたコンクリートの成分が入り込み、高い付着力で耐火被覆層と本体が付着し、耐火被覆層が剥落するのを防止することができる。
請求項2に記載のコンクリート構造体は、請求項1に記載の発明において、前記添加剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースとアルミン酸カルシウムを含むことを特徴とする。
請求項2に記載の発明においては、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとアルミン酸カルシウムを含む添加剤(混和剤)を用いることにより、パーライトの分離を防止することができ、極めて均一性の高い耐火被覆層を形成することが可能となる。また、耐火被覆層において高い均一性を保持できることから、耐火被覆層における熱伝導率の均一性も高くなり、高熱が発生する火災時に、熱伝導率が不均一となっていることにより内部膨張率に違いが発生して耐火被覆層が内部破壊や爆裂などを起こすのを確実に防止することができる。
請求項3に記載のコンクリート構造体の耐火被覆方法は、コンクリート構築物を構成するコンクリート構造体の耐火被覆方法であって、
セメント、パーライト、水およびこれらの分離を防止する添加剤とを含む軽量耐火断熱セメントモルタルを用いるとともに、
前記添加剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースとアルミン酸カルシウムを含むものを用い、
前記コンクリート構造体の少なくとも一つの側面に前記軽量耐火断熱セメントモルタルを硬化させた耐火被覆層を設けることを特徴とする。
請求項3に記載の発明においては、パーライトを含有する耐火被覆層により高い耐火断熱性能を得ることができる。また、パーライトを含む軽量耐火断熱セメントモルタルで、例えば、二次覆工を省略した道路用のシールドトンネル(コンクリート構築物)のシールドセグメント(コンクリート構造体)の内周面に耐火被覆を行う場合に、パーライトの分離を防止して、均一性の高い耐火被覆層を設けることができ、これにより請求項2に記載の発明におけるヒドロキシプロピルメチルセルロースとアルミン酸カルシウムを含む添加剤を用いたことによる作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
また、耐火被覆層の構築方法として、コンクリート構築物である例えばシールドトンネルで既に組み立てられたシールドセグメントの内周面に、周知の吹き付け工法を用いて、前記軽量耐火断熱セメントモルタルを吹き付けて硬化させ、耐火被覆層を形成することができる。
また、軽量耐火断熱セメントモルタルをパネル状に硬化させて耐火板とし、シールドトンネルで既に組み立てられたシールドセグメントの内周面にボルト等で前記耐火板を固定することにより、これらの耐火板からなる耐火被覆層を形成することができる。
また、請求項1に記載の発明のように、シールドセグメントの内周部を構成する耐火被覆層を、前記軽量耐火断熱セメントモルタルを硬化させて設けた後に、この耐火被覆層の上側にコンクリートを打ち継ぐことにより本体を設けることにより、耐火被覆層が一体となったシールドセグメントを製造し、このシールドセグメントでシールドトンネルを構築することにより、シールドトンネル内周面に耐火被覆層を形成することができる。
すなわち、耐火被覆層の形成方法を上述の三つの方法から選択することが可能となり、シールドトンネルの各種条件に対応して、最も適した方法を選択することが可能となる。
請求項4に記載のコンクリート構造体の耐火被覆方法は、請求項3に記載の発明において、コンクリート構造体をコンクリート製の本体と、この本体の少なくとも一つの側面に形成された耐火被覆層とからなるものとし、
前記軽量耐火断熱セメントモルタルを硬化させて前記耐火被覆層を形成した後に、前記耐火被覆層の上にコンクリートを打ち継ぎ、コンクリート製の前記本体を形成することにより、前記耐火被覆層と本体とを一体に形成することを特徴とする。
請求項4に記載の発明においては、請求項1に記載の発明と同様の作用効果を得ることができる。
本発明によれば、例えば、コンクリート構造体としてのシールドセグメントにより構築されたシールドトンネル内周面にパーライトを含み高い均一性を有する耐火被覆層を形成することにより、二次覆工を省略したシールドトンネルにおける高熱の火災時のコンクリートセグメントの爆裂などの問題を解決することができる。特に、シールドセグメントを本体と当該本体に付着して一体となった耐火被覆層とからなるものとすることで、シールドトンネルの構築において、施工性を向上することができる。
本発明の実施の形態に係るトンネル状に組んだ状態のシールドセグメント(コンクリート構造体)を示す正面図である。 本発明の実施例の耐火性能試験における加熱方法としてのRBAT60加熱曲線を示す。 本発明の実施例のシールドセグメントの耐火性能試験の実施例1の試験結果を示すグラフである。 本発明の実施例のシールドセグメントの耐火性能試験の実施例1の試験結果を示すグラフである。 本発明の実施例のシールドセグメントの耐火性能試験の実施例2の試験結果を示すグラフである。 本発明の実施例のシールドセグメントの耐火性能試験の実施例2の試験結果を示すグラフである。 本発明の実施例のシールドセグメントの耐火性能試験の実施例3の試験結果を示すグラフである。 本発明の実施例のシールドセグメントの耐火性能試験の実施例3の試験結果を示すグラフである。 比較例となるシールドセグメントの耐火性能試験の試験結果を示すグラフである。 比較例となるシールドセグメントの耐火性能試験の試験結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、この例のコンクリート構築物としてのシールドトンネル1を構築するためのコンクリート構造体としてのシールドセグメント2は、セグメント本体3と、耐火被覆層4とからなっている。
セグメント本体3は、周知の鉄筋コンクリート(RC)セグメント(プレキャストコンクリートセグメント)となっている。
また、この例では、P&PC(Prestressed&Precast Concrete)セグメント工法を用いており、予め、周方向にそって各セグメントで連通するシース(図示略)を埋め込んだコンクリート製セグメント(セグメント本体3)を組み立てた後に、セグメントの一つに設けた切り欠き部からシース内にPC鋼材としてのPC鋼より線(図示略)を挿入し、緊張定着することによって、セグメントから構成されるリングに周方向にプレストレスを導入するものとなっている。なお、シールドセグメントは、プレストレスをかけられたものに限らず、各種コンクリートセグメントを用いることができる。このセグメント本体3の内周面側には、内周面の略全面を覆うように耐火被覆層4が形成されている。
耐火被覆層4は、パーライトを軽量骨材とする軽量耐火断熱セメントモルタルからなるものである。この軽量耐火断熱セメントモルタルは、セメント、パーライト(軽量骨材)、混和剤(添加剤)および水等とからなるものである。
この例のセメントとしては、周知の各種セメント、例えば各種のポルトランドセメントを用いることができるが、コンクリートセグメントに適したセメントを用いることが好ましい。
この例におけるパーライトとは、例えば、天然ガラスとも言われる黒曜石、真珠岩、松脂岩等の原石(加工前のパーライト)を粉砕、焼成して発泡させたものである。すなわち、この例のパーライトは、加工後の発泡したパーライトである。なお、パーライトは、原料の違いにより、空隙に独立気泡が多いか、連続気泡が多いかなどの特性の違いがあり、この例では、上述の特性に基づいて品質の安定性に優れる黒曜石を原料とするパーライトを用いることが好ましい。
この例では、粒状のパーライトを用いており、パーライトの平均粒径は、例えば、0.5mm〜25.0mmとなっていることが好ましく、さらに、0.5mmから3.0mmとなっているこことが好ましい。また、パーライトの比重は、例えば、0.2程度となっているが、上述のように焼成された各種パーライトを用いることが可能であり、比重が異なるパーライトも使用可能である。
パーライト/セメント比が、20重量%から150重量%となっていることが好ましく、さらに35重量%から75重量%となっていることが好ましい。また、パーライトの含有量は、耐火被覆層4を形成する軽量耐火断熱セメントモルタルの比重が0.5〜0.8の範囲となるように設定されていることが好ましい。比重が0.5より小さいと、軽量なパーライトの含有量が多くなり、パーライトを略均一に分散させて硬化させることが難しくなったり、耐火被覆層4が脆くなる虞がある。すなわち、上述のパーライト/セメント比が150重量%を超えると強度が極端に低下する虞がある。
比重が0、8より大きいと、軽量なパーライトの含有量が少なくなることで、パーライトによる空隙が少なくなり、断熱性能が低下する虞がある。
水/セメント比が、30重量%から70重量%となっていることが好ましく、さらに40重量%から60重量%となっていることが好ましい。
この例の混和剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースにアルミン酸カルシウム溶液を加えたものである。ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、水溶性高分子であり、混和剤を溶液として取り扱うことが可能であり、容易に硬化前の軽量耐火断熱セメントモルタルに混ぜることができ、後述のように混和剤の添加時期を自由に設定できる。
ヒドロキシプロピルメチルセルロース/セメント比が0.1重量%から5重量%とされている。
また、アルミン酸カルシウム/セメント比が0.001重量%から5重量%とされている。
これらヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびアルミン酸カルシウムの濃度範囲で、パーライトの分離が抑制される効果を確認することができる。これらの濃度範囲の下限より低い場合には、軽量耐火断熱セメントモルタルの分離を抑制する効果が不十分となる。また、これらの濃度範囲の上限より濃度を高くした場合には、軽量耐火断熱セメントモルタルの分離を抑制する効果が頭打ちとなり、添加量の増加によるコストアップが問題となる。
また、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとアルミン酸カルシウムとの比は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース1に対して、アルミン酸カルシウムが0.05〜10.0の範囲となることが好ましい。
このような軽量耐火断熱セメントモルタルにおいて骨材/セメント比(重量)は、パーライトが軽量骨材であることから、一般的なコンクリートに対して小さくなる。すなわち、比重の小さい軽量骨材の量を多くしても重量が少なく、骨材/セメント比は、小さなものとなる。一般的なコンクリートでは、例えば、骨材/セメント比は7(7:1)以上となるが、この例の軽量耐火断熱セメントモルタルは、例えば、1(1:1)程度となる。
上述のようにパーライトは発泡したことにより気泡からなる空隙を多く含む部材であることから見かけの比重が例えば、0.2程度と水よりもかなり低く、パーライトをセメントおよび水と混ぜることが極めて困難であるが、上述の混和剤を用いることで、均一にパーライトを混ぜ、分離を抑制することができる。また、この混和剤は、増粘性が大きくないので、流動性等の悪化により施工性が低下することなく、一般的な増粘剤を分離防止の混和剤とした場合よりも施工性が向上する。なお、上記混和剤には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとアルミン酸カルシウム以外の成分を含むものとしてもよいが、他の成分も水溶性であることが好ましく、混和剤を溶液として扱えることが好ましい。
この軽量耐火断熱セメントモルタルにあっては、上述の混和剤を用いることにより、分離が抑制され、耐火被覆層4の上側と下側とで、密度の違いがほとんど見られない状態となり、極めて均一性が高い耐火被覆層4を形成することが可能である。また、軽量耐火断熱セメントモルタルの養生中には水の分離も認められない。
このように、耐火被覆層4の材料の均一性が確保されることで、耐火断熱性に欠かせない熱伝導率の平衡性が保証される。これは断熱性を目的とする製品にとっては非常に重要かつ必要とされる技術である。例えば、材料が不均一な状態だと、熱伝導率が耐火被覆層4の系の中で異なることになり、熱の伝わり方が異なってくることで、内部に温度の差異が生じ、これに基づいて内部で膨張率が異なる状態が発生する。それが原因となる内部破壊や爆裂を誘発する虞がある。それに対して、この例の耐火被覆層は、内部の均一性が高いことにより、高い耐火性能を持つことになる。
また、例えば、従来のパーライトを含有する耐火モルタルにおいては、従来の混和剤として、例えば、メチルセルロース等を用いた場合に、耐火モルタルの厚みを15mm程度より大きくしてしまうと、明らかにパーライトが分離するため、軽量耐火断熱セメントモルタルからなる耐火被覆層の厚みを15mm程度より厚くすることが困難であった。したがって、耐火被覆層4の厚みを厚くすることで、断熱性能を向上することが困難であった。また、パーライトの含有量を多くして、内部の空隙率を高め断熱性能を向上することも困難であった。さらに、従来のメチルセルロースを混和剤とした場合は、セメントの硬化が進むにつれて水の分離(ブリージング)が観察された。
それらに対して、この例では、耐火被覆層4の厚みを、例えば、30mm程度としており、従来のパーライトを用いた耐火モルタルより例えば2倍厚くして耐火被覆層4における断熱性能を高めることができる。また、必要があれば、耐火被覆層4の厚みを100mm以上としても、均一性の高い状態を維持できる。また、パーライトの含有量を多くして、空隙率を高めることにより、断熱性能を向上することができる。この際に、上述のようにパーライトの分離が前記混和剤により抑制されて、極めて均一性の高い耐火被覆層4を形成し、耐火性能を高めることができる。
このような、耐火被覆層4を有するシールドセグメントは、以下のように形成される。
上述の軽量耐火断熱セメントモルタルの材料を混ぜる際に、セメントの比重が3.15程度で、パーライトの比重が0.2程度なので、上述のように、単純にミキサーでの撹拌や、混練しただけでは均一に混ぜることは困難であり、上述の混和剤を用いることにより、略均一に混ぜることが可能となる。なお、混和剤の添加時期は、混和剤を溶液状とすることができ、混和剤を溶液とした場合に容易に分散が可能なことから、水の添加前や、水添加後の撹拌の開始前や、撹拌の開始後(撹拌中)であってもよい。
上述の材料を混ぜて得られた軽量耐火断熱セメントモルタルを型枠に打設する。この例では、上述のように軽量耐火断熱セメントモルタルの厚みが30mm程度となるように型枠に打設するが、これに限定されるものではなく、上述のように100mm以上としてもよく、適宜、耐火断熱性能やスペース効率を考慮して耐火被覆層4の厚みを決定することができる。なお、耐火被覆層4を円弧板状とするためには、例えば、底部が円弧面とされた箱状の型枠を使用する。この型枠内に上述の軽量耐火断熱セメントモルタルを打設するとともに、打設された軽量耐火断熱セメントモルタルの上面を円弧面上に成形して、養生する。
また、軽量耐火断熱セメントモルタルを硬化させて耐火被覆層4を形成した後に、耐火被覆層4上にコンクリートを打設して(打ち継いで)セグメント本体3を設けることになるが、シールドセグメント2用の型枠の底部に軽量耐火断熱セメントモルタルを打設して硬化した後に、さらにコンクリートを打設してシールドセグメント2を形成するものとしてもよい。すなわち、耐火被覆層4とセグメント本体3とを一つの型枠で製造するものとしてもよい。また、予め、シールドセグメント2とは別の型枠で耐火被覆層4を形成した後に、既に硬化した耐火被覆層4をシールドセグメント2用の型枠の底部に載置してコンクリートを打ち継ぐものとしてもよい。このように耐火被覆層4の型枠をシールドセグメント2の型枠と別にすれば、耐火被覆層4となる軽量耐火断熱セメントモルタルが固まるまで、耐火被覆層4のためにシールドセグメント2の型枠が占有されることがなく、シールドセグメント2の型枠をセグメント本体3の養生に必要な時間毎に使い回すことが可能となり、シールドセグメント2の生産性を向上することができる。
なお、型枠の底部に補強のために、ガラス繊維のメッシュを予め設置してから、この型枠に軽量耐火断熱セメントモルタルを打設するものとしてもよい。なお、メッシュは、軽量耐火断熱セメントモルタルからなる耐火被覆層4の内周面より僅かに内側に配置され、耐火被覆層4のひび割れ等の防止のための補強部材となる。
軽量耐火断熱セメントモルタルが硬化し、耐火被覆層4が形成された後に、シールドセグメント用の型枠内に硬化した耐火被覆層4を配置するとともに、鉄筋の配筋や、継手部材やシース等の各種部材の設置等を行った後に、硬化した耐火被覆層4の上にセグメント本体を構成するコンクリートを打設する。このコンクリートは、周知のコンクリートセグメントで、用いられる組成のコンクリートを用いることができる。
耐火被覆層4においては、上面側に多くのパーライトが露出した状態となっているとともに、パーライトが発泡による空隙を多く備えた多孔質となっているので、耐火被覆層4の上面のパーライトに基づく多数の孔に、コンクリートを打設した際にセメントが分散した水が入りこみ、耐火被覆層4とコンクリート層となるセグメント本体とが接合(付着)された状態となる。
このシールドセグメント2にあっては、セグメント本体3の内周面側に一体にパーライトがセメントで固められた状態の耐火被覆層4が形成されているので、このシールドセグメント2を組み立ててシールドトンネルの覆工を行った場合に、シールドセグメント組立てた後に、シールドセグメントの内周側に軽量耐火断熱セメントモルタルを吹き付けたり、耐火板(耐火パネル)を取り付けたりしなくても、耐火被覆層4が既に形成された状態となっている。
したがって、トンネル施工後の作業を簡略化し、施工期間の短縮や、コストの低減を図ることができる。
また、トンネル火災に対応したRABT(Richtlinien fur die Ausstattung und den Betrieb von Strassentunneln:ドイツ交通省、道路トンネル内設備と交通に関する規制)に規定される加熱曲線(RABT60加熱曲線:図2に図示)に基づく加熱実験を行ったところシールドセグメント2に爆裂が見られず、耐火被覆層4の剥離も見られなかった。また、シールドセグメント2の構造に対応した耐火被覆層4とコンクリートからなるサンプルに対して曲げ試験を行った結果、耐火被覆層4とコンクリートとの打ち継ぎ部分での剥離は認められず、耐火被覆層4とコンクリート層であるセグメント本体3とが一体構造としての性能を持つものであることが確認された。すなわち、耐火被覆層4とセグメント本体3のコンクリートとの付着力が強く、耐火被覆層4の剥落の虞がない。
上述の例では、コンクリートセグメントの製造時に一体に耐火被覆層4を形成しているが、上述の軽量耐火断熱セメントモルタルを、シールドトンネルを構成するシールドセグメントの内周面に吹き付けて、耐火被覆層を形成することも可能である。
この場合に、上述の混和剤を用いることにより、吹き付け後の軽量耐火断熱セメントモルタルにおける材料の均一性が高く、上述の耐火被覆層4の場合と同様に、従来より厚く施工できるとともに、吹き付けにより形成された耐火被覆層の断熱性を均一なものとして、高い耐火性能を得ることができる。この場合に、コンクリート製以外のシールドセグメントにも耐火被覆層を設けることができる。
上記例の耐火被覆層4を有するシールドセグメント2により設けられたシールドトンネル1において、実際に車両火災があった場合に、耐火被覆層4がダメージを受ける虞があり、この場合に修復が必要となる。この例の耐火被覆層4を構成する軽量耐火耐熱材を用いた吹き付け加工が可能なことから、例えば、耐火被覆層4のダメージを受けた部分のみを剥ぎ取り、この部分に軽量耐火断熱セメントモルタルを吹き付けることで、耐火被覆層4を修復することができる。
この際に既存の耐火被覆層4部分と、修復された新たな耐火被覆層とで、成分が略同じ状態となり、修復部分においても元の耐火性能を確保することが可能であるとともに、修復部分と既存部分とでの高い均一性を確保することが可能となり、火災前に極めて近い状態に修復することが可能となる。
また、上述の軽量耐火断熱セメントモルタルをパネル状に硬化させ、耐火板を製造し、当該耐火板をシールドセグメントを組んで構成されたシールドトンネルの覆工の内周面にボルト等により固定することでも施工が可能である。この際には、シールドセグメント内周面と、耐火板との間に5mmから20mm程度の間隔(遊間)をあけることでシールドセグメントに伝達される熱量を低減することができる。また、上述のようにシールドセグメント内周面と耐火板との間に遊間を設けることで、シールドセグメント内周面の凹凸を吸収することができ、耐火板のシールドセグメントへの取り付けが容易となる。なお、この場合もコンクリート製以外のシールドセグメントにも耐火被覆層を設けることができる。
また、本発明のコンクリート構造体は、上述のシールドセグメントに限られるものではなく、ボックスカルバートや、アーチカルバートなどのプレキャストコンクリート製のコンクリート構造体に適用可能である。この場合に、上述のシールドセグメントの場合と同様に、型枠に既に硬化した耐火被覆層を配置してコンクリートを打ち継ぐことにより、コンクリート構造体を製造することができる。
また、場所打ちのカルバートや、トンネルの場所打ちの覆工にも応用することができる。この場合も場所打ち用の型枠に耐火被服層を配置してコンクリートを打ち継ぐことにより製造することができる。また、プレキャストコンクリートおよび場所打ちコンクリートに係らず、コンクリート構築物を製造した後に、耐火被覆を必要とする部分に上述の軽量耐火断熱セメントモルタルを上述のように吹き付けて耐火被覆層を形成してもよい。また、軽量耐火断熱セメントモルタルを板状に硬化させて耐火板を製造し、この耐火板をコンクリート構築物の耐火被覆を必要とする場所に上述のように取り付けてもよい。
以下、本発明の実施例を説明する。
[1]シールドセグメントの耐火性能試験
シールドトンネルのP&PCセグメントと同様の組成を有するコンクリートからなるとともに、PC鋼材として、アンボンドPC鋼より線およびPC鋼棒によってプレストレスを導入された試験体にRABT60加熱曲線に従った耐火性能試験を行い、試験体各部の温度測定および試験体の爆裂並びに被覆材の挙動を観察した。
(a)試験体
試験体としては、一つのコンクリートからなり、パネル状の耐火板をアンカーピンで貼り付けて耐火被覆層を設けた実施例1の試験体と、同じく一つのコンクリートからなり、吹き付けにより耐火被覆層を設けた実施例2の試験体と、二つのコンクリートをPC鋼材により緊張定着し、吹き付けにより耐火被覆層を設けた実施例3の試験体と、二つのコンクリートをPC鋼材により緊張定着し、耐火被覆層が設けられていない比較例の試験体とを用いた。
各試験体は、鉄筋コンクリート製のシールドセグメントに対応したもので、長さ2000mm、幅600mm、厚さ400mm(耐火被覆層を含まない厚さ)となっている。
鉄筋は、主筋がD22、ループ筋がD13である。
コンクリートは、スランプフロー65cm、空気量2%、水結合材比30.8%、S/a52.3%とされ、コンクリートの配合が、セメント116kg/m3、水160kg/m3、細骨材340kg/m3、粗骨材310kg/m3、混和剤54kg/m3とされている。
また、コンクリートの圧縮強度が87.5N/mm2(材齡28日)であり、含水率が4.1%(摂氏105度で6日間乾燥)であり、密度が2430kg/m3であった。
コンクリートの養生方法は、前養生2時間、蒸気養生(昇温15度以下/時間、摂氏40度定温保持4時間、降温15度以下/時間)である。
PC鋼材(緊張筋)は、アンボンドPC鋼より線(直径(φ)21.8mm)1本、PC鋼棒(直径(φ)32mm)4本である。なお、アンボンドPC鋼より線は、P&PCセグメントにおけるシールドセグメントの緊張定着を再現するものであり、PC鋼棒は、シールドトンネルに作用する圧力を再現するために用いられたものである。
また、コンクリート内には、アンボンドPC鋼より線用のポリエチレンシース(内径42mm)と、鋼製シース(内径45mm)とが埋設されている。
また、アンボンドPC鋼より線には、480kN×1本=480kNの緊張力がかけられ、PC鋼棒には、350kN×4本=1400kNの緊張力がかけられている。
軽量耐火断熱セメントモルタルは、上記例の軽量耐火断熱セメントモルタルからなるものであり、パーライトを含み、分離防止の混和剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースとアルミン酸カルシウムを含むものである。
実施例1では、軽量耐火断熱セメントモルタルをパネル状の耐火板に成形して硬化させており、上述のコンクリートの試験体のサイズに対応して、長さ2000mm、幅600mm、厚さ30mmとなっている。
実施例1の耐火板を構成する軽量耐火断熱セメントモルタルの水を除く組成は、重量%で、早強ポルトランドセメント55%、パーライト39%、上述のヒドロキシプロピルメチルセルロースとアルミン酸カルシウムを含む混和剤が6%である。
この軽量耐火断熱セメントモルタルからなる耐火板の密度は450kg/m3である。
この耐火板は、アンカーピン(直径(φ)4mm、長さ60mm)によりコンクリート製の試験体に固定されている。
また、実施例2,3の吹き付け用の軽量耐火断熱セメントモルタルの水を除く組成は、重量%で、普通ポルトランドセメント25%、パーライトおよびアルミン酸カルシウムを含む混和剤からなる無機質系混和材が70%、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む混和剤からなる有機質系混和材が5%である。
また、コンクリートの試験体への吹き付けにおいては、ステンレス製メッシュ筋100mm×100mm(トンネル円周方向に対応する方向(PC鋼より線に沿った方向)のメッシュ筋が直径(φ)1.2mmで、それに直交する軸方向のメッシュ筋が直径(φ)2.0mmとなっている)を、アンカーピン(直径(φ)4mm、長さ25mm)で試験体に固定し、このメッシュ筋が取り付けられた試験体の表面に上述の軽量耐火断熱セメントモルタルを吹き付けることで、厚さ30mmの耐火被覆層を形成している。
吹き付けられて硬化した耐火被覆層の含水率は3.5%(摂氏105度、4日間乾燥)であり、密度は900kg/m3であった。
(b)試験方法
試験は独立行政法人建築研究所の水平部材加熱試験装置(炉内寸法:長さ4000mm、幅4000mm、深さ2000mm、内張:セラミックスファイバーボード、熱源:都市ガス)を使用して行った。
(1)加熱方法
加熱は、RABT60加熱曲線に従って行った。加熱温度の測定はJIS C 1602(熱電対)に規定するクラス2の性能を持つ線径1.6mmのK熱電対を用いて試験体から1000mm離した位置で測定し制御した。RABT60加熱曲線を図2に示す。
(2)試験体各部の温度測定方法は、JIS C 1602(熱電対)に規定するクラス2の性能を持つ線径0.65mmのK熱電対を用いて測定した。
測定位置は、コンクリート製の試験体の表面(耐火被覆層に覆われた部分)TC1と、試験体の背面TC7と、試験体内部で表面側から背面に向って位置が順にずらされたTC2〜TC6である。TC2〜TC6の位置は、この順で表面側から離れている。
表面からの距離は、TC1が0mm、TC2が66mm、TC3が100mm、TC4が175mm、TC5が200mm、TC6が300mm、背面のTC7が400mmとなる。
また、厚みの中央に配置されたシース内のアンボンドPC鋼より線にも上述のK熱電対が取り付けられており、長さ方向の左右端部から300mm離れた位置に測定位置としてのTS1とTS5が配置され、その間に350mmおきに三つの測定位置TS2〜TS4が配置されている。
(c)試験結果
図3に実施例1の試験体のコンクリート部分の温度測定結果のグラフを示し、図4に実施例1の試験体のアンボンドPC鋼棒部分の温度測定結果を示す。図5に実施例2の試験体のコンクリート部分の温度測定結果のグラフを示し、図6に実施例2の試験体のアンボンドPC鋼棒部分の温度測定結果を示す。図7に実施例3の試験体のコンクリート部分の温度測定結果のグラフを示し、図8に実施例3の試験体のアンボンドPC鋼棒部分の温度測定結果を示す。図9に比較例の試験体のコンクリート部分の温度測定結果のグラフを示し、図10に比較例の試験体のアンボンドPC鋼棒部分の温度測定結果を示す。
各グラフに示されるように、耐火被覆の無い比較例では、試験体の最高となった表面温度が摂氏1169度に達しているのに対して、耐火板を用いた実施例1では摂氏221度、吹き付けによる耐火被覆を用いた実施例2および実施例3では、摂氏100度と、摂氏101度であり、この例の軽量耐火断熱セメントモルタルからなる耐火被覆に十分な断熱性能が認められる。また、試験体内部温度およびPC鋼より線温度も十分に低い温度に抑えられていた。
また、目視による観察結果では、比較例において試験体の加熱側表面のほぼ全面に爆裂が見られるとともに、爆裂の最大深さが42mmで、一部ループ筋の露出が見られたのに対して、実施例1,2,3においては、爆裂は認められず、表面に加熱後の変化は見られなかった。
また、実施例1においては、耐火板に試験体からの一部の剥離と収縮ひび割れが見られ、吹き付けによる実施例2および実施例3においては、剥離は認められず収縮ひび割れが見られた。いずれにおいても、爆裂は認められなかった。
[2]5%硫酸滴下試験
上記例の軽量耐火断熱セメントモルタルをシールドトンネルの内周面の耐火被覆材として用いた場合の自動車の排ガスに対する耐久性を見るために上記例の軽量耐火断熱セメントモルタルからなる板状の試験体に5%硫酸を滴下する試験を行った。
(a)試験体
軽量耐火断熱セメントモルタルの配合量は、早強ポルトランドセメントが50kg(519.8kg/m3)、パーライトが18kg(187.1kg/m3)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースとアルミン酸カルシウムを含む混和剤(添加剤)が2.8kg(29.2kg/m3)、水が20.6kg(214.1kg/m3)である。
前記混和剤には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが140g含まれ、アルミン酸カルシウムが140g含まれている。
この軽量耐火断熱セメントモルタルを幅100mm、奥行き100mm、厚さ30mmの型枠に打設して、打材齡28日まで摂氏20度で養生し、試験体とした。
(b)試験方法
試験体に5%硫酸溶液を2ml滴下し、24時間後の表面状態を観察して、試験前との状態を確認した。また、3つの試験体に対して試験を行った。
(c)試験結果
3つの試験体とも硫酸溶液の滴下部分が白く変色するものの、試験体にへこみ、劣化などの異常は見られず、排ガスに対しても耐性があるものと認められる。
また、試験前、後の試験体質量ついては、硫酸溶液の滴下24時間後の質量が、滴下前より0.8g(0.2%)増加した。
[3]耐水性に関する試験
(a)試験体
試験体となる軽量耐火断熱セメントモルタルの配合量は、5%硫酸滴下試験と同じとした。
JIS A 1132「コンクリートの強度試験体用供試体の作り方」に準じて直径(φ)100mm×200mmの試験体を作成した。この際に材齡3日間まで湿潤養生し、さらに材齡28日まで養生した。
(b)試験方法
摂氏20度で上下摂氏3度の範囲内の水中に試験体を28日間浸漬し、その後圧縮強度試験を行った。比較例として、水に浸漬する前の試験体の圧縮強度試験を行った。
(c)試験結果
水への浸漬前の圧縮強度試験結果を表1に示し、浸漬後の圧縮強度試験結果を表2に示し、浸漬前と浸漬後との平均破壊強度と、平均単位体積質量と、これらの浸漬前と浸漬後の変化率を表3に示す。
Figure 2011214293
Figure 2011214293
Figure 2011214293
表3に示されるように、浸漬前に比較して浸漬後の単位体積質量が2.5%増加し、破壊強度が9.2%増加し、十分に耐水性があることが示された。
[4]耐衝撃性試験
車両の走行による飛び石などによる耐久性を確認するために試験体の鋼球を落下させる耐衝撃性試験を行った。
(a)試験体
試験体となる軽量耐火断熱セメントモルタルの配合量は、5%硫酸滴下試験と同じとした。
試験体は、縦300mm、横300mm、厚さ30mmの型枠に軽量耐火断熱セメントモルタルを打設し、2日後に脱型した後に、材齡28日まで養生した。
また、試験体と同じサイズのコンクリート板を作成した。
(b)試験方法
試験体の下側に上述のコンクリート板を重ねた状態で、砂上全面支持(JIS A 1408に準拠)によって表面を水平に保持し、試験体に重量500gの鋼球を高さ70cmから落下させた。なお、3つの試験体に対して、それぞれ3回鋼球を落下させた。
(c)試験結果
試験結果を表4に示す。
Figure 2011214293
表4に示すように、鋼球の落下箇所にへこみが生じ、若干の表面剥離が認められたが、クラックは全くなく、十分な耐衝撃性を有することが確認された。
[5]付着強度試験
実施の形態に示される耐火被覆層のセグメント本体への付着強度を確認するために軽量耐火断熱セメントモルタルを硬化かさせて耐火被覆層を形成し、耐火被覆層上にコンクリートを打設してコンクリートと耐火被覆層を一体化した後に、耐火被覆層に引張力をかけて耐火被覆層をコンクリートから引き剥がすのに必要な力(破壊応力度)を測定した。
(a)試験体
試験体となる軽量耐火断熱セメントモルタルの配合量は、5%硫酸滴下試験と同じとした。
試験体は、縦300mm、横300mm、厚さ30mmの型枠に軽量耐火断熱セメントモルタルを打設して耐火被覆層を形成し、3日間気中養生後、その上に厚さ100mmのコンクリートを打設し、28日間養生後、碁盤状に縦40mm、横40mmの間隔で耐火被覆層の部分をカッターで切断した。
(b)試験方法
鋼製アタッチメントを、試験体の耐火被覆層のカッターで40mm四方に分割した部分にエポキシ樹脂で貼り付け、30分後に、耐火被覆層が引き剥がされる(耐火被覆層が破壊される)まで、鋼製アタッチメントに垂直方向に張力を作用させた。
また、上述の40mm四方にカッターで耐火被覆層を切断した部分の5箇所で上述の試験を行った。
また、耐火被覆層の剥離防止に必要な付着強度を0.00035N/mm2とした。
これは、縦40mm、横40mm、厚さ30mmの耐火被覆層の質量を、耐火被覆層の比重1.2g/cm3として、4(cm)×4(cm)×3(cm)×1.2(g)=57.6g=0.56Nとなり、単位面積当たりの必要付着強度を0.56/(40×40)=0.00035N/mm2としたものである。
(c)試験結果
耐火被覆層が引き剥がされた(破壊された)際の破壊荷重と破壊応力強度と、破壊応力度/必要付着強度比を表5に示す。
Figure 2011214293
表5に示すように、剥離防止に必要な付着強度に対して500倍から3000倍となる十分な強度が得られた。
[6]曲げ強度試験
実施の形態に示される耐火被覆層のセグメント本体の変位に対する追従性能を確認するために、軽量耐火断熱セメントモルタルを硬化かさせて耐火被覆層を形成し、耐火被覆層上にコンクリートを打設してコンクリートと耐火被覆層を一体化した後に、一体化されたコンクリートおよび耐火被覆層に対して曲げ強度試験を行った。
(a)試験体
試験体となる軽量耐火断熱セメントモルタルの配合量は、5%硫酸滴下試験と同じとした。
試験体は、長さ400mm、幅100mm、厚さ30mmの型枠に軽量耐火断熱セメントモルタルを打設して耐火被覆層を形成し、3日間養生後、その上に厚さ100mmのコンクリートを打設し、摂氏20度で材齡28日まで養生した。
(b)試験方法
JIS A 1106「コンクリートの曲げ強度試験方法」に準拠し、セグメント本体に対する耐火被覆層の追従性能を確認した。
試験体の耐火被覆層を下、コンクリート層を上にし、試験体の下面を、試験体の長手方向に間隔をあけた2箇所で試験体の長手方向に直交する丸棒状の支持材で支持した。この際の支持部材の間隔を300mmとし、この間隔の中央を試験体の長手方向の中央とした。
この試験体の上面に、試験体の長手方向に間隔をあけた2箇所でそれぞれ試験体の長手方向に直交する丸棒状の押圧部材で鉛直方向に力をかけた。この際の2つの押圧部材の間隔を100mmとし、この間隔の中央を試験体の長手方向の中央とした。
また、三つの試験体に対して試験を行い、二つの試験体に対しては、耐火被覆層にクラックが発生するまで力をかけ、1つの試験体については、試験体が破壊されるまで力をかけた。
(c)試験結果
試験結果を表6に示す。耐火被覆層にクラックが生じても、試験体が破壊されても、コンクリート層と耐火被覆層との間に剥離が生じることはなかった。
Figure 2011214293
[7]耐火材の吸水性に関する試験
軽量耐火耐熱材を硬化させて耐火被覆層を形成した後に、耐火被覆層上にコンクリートを打設した場合に、コンクリート中の水分が耐火被覆層に移動する状況を確認するための試験を行った。
(a)試験体
直径(φ)100mm、厚さ30mmの型枠にコンクリートを打設して、3日間養生して試験体を作成した。
(b)試験方法
透明なアクリルの円筒形のパイプ(内径100mm、高さ400mm)を用い、試験体をパイプの一旦にセットし、試験体の外周面とパイプの内周面との間にコーキング材を充填し、3日間養生した。その後、試験体を下にするとともに、パイプの試験体側となる下端側にパイプの開口を塞ぐようにガラス板を配置した状態で、パイプの試験体上に総高さで400mmまでコンクリートを打設した。打設されたコンクリート中の水分が耐火被覆材に移動する状況を目視で確認した。
この際に打設されたコンクリートは、スランプ8cm、水/セメント比が38.2%であった。
(c)試験結果
コンクリート打設直後には、耐火被覆層の底面側に水滴は見られなかった。
コンクリート打設24時間後、耐火被覆層の底面側に水滴は見られなかったが、パイプの耐火被覆層側端部を閉塞するガラス板に水滴が見られた。また、パイプの耐火被覆層部分の内周面に水滴が見られた程度であった。
1 シールドトンネル(コンクリート構築物)
2 シールドセグメント(コンクリート構造体)
3 セグメント本体(本体)
4 耐火被覆層

Claims (4)

  1. コンクリート製の本体と、この本体の内周面側に形成される耐火被覆層とを備えるコンクリート構造体であって、
    前記耐火被覆層が、セメント、パーライト、水およびこれらの分離を防止する添加剤とを含む軽量耐火断熱セメントモルタルを硬化させた硬化物からなり、
    前記軽量耐火断熱セメントモルタルを硬化させた前記耐火被覆層上にコンクリートを打ち継いで前記本体を設けることにより、前記耐火被覆層と前記本体とが一体に形成されていることを特徴とするコンクリート構造体。
  2. 前記添加剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースとアルミン酸カルシウムを含むことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート構造体。
  3. コンクリート構築物を構成するコンクリート構造体の耐火被覆方法であって、
    セメント、パーライト、水およびこれらの分離を防止する添加剤とを含む軽量耐火断熱セメントモルタルを用いるとともに、
    前記添加剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースとアルミン酸カルシウムを含むものを用い、
    前記コンクリート構造体の少なくとも一つの側面に前記軽量耐火断熱セメントモルタルを硬化させた耐火被覆層を設けることを特徴とするコンクリート構造体の耐火被覆方法。
  4. コンクリート構造体をコンクリート製の本体と、この本体の少なくとも一つの側面に形成された耐火被覆層とからなるものとし、
    前記軽量耐火断熱セメントモルタルを硬化させて前記耐火被覆層を形成した後に、前記耐火被覆層の上にコンクリートを打ち継ぎ、コンクリート製の前記本体を形成することにより、前記耐火被覆層と前記本体とを一体に形成することを特徴とする請求項3に記載のコンクリート構造体の耐火被覆方法。
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