JP2011208217A - シアノ架橋金属錯体超構造作成方法およびシアノ架橋金属錯体超構造作成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】所定の結晶方位に揃ったプルシャンブルー型シアノ架橋金属錯体の結晶により構成された層である第1の配向層(3a)を、電界析出により電極(3)表面に作成する第1の配向層作成工程と、前記第1の配向層(3a)の表面に、前記第1の配向層を構成するプルシャンブルー型シアノ架橋金属錯体の結晶とは異なる組成の錯体の結晶により構成された第2の配向層(13)であって、前記第1の配向層(3a)の結晶方位に揃った第2の配向層(13)を、電界析出により作成する第2の配向層作成工程と、を実行することを特徴とするシアノ架橋金属錯体超構造作成方法。
【選択図】図1
Description
このようなシアノ架橋金属錯体の均質な膜の作製方法として、非特許文献1には、室温で、0.5[mmol/L]のK3Fe(CN)6と、0.5[mmol/L]のCo(NO3)2と、1[mol/L]のNaNO3を含む水溶液の入った電解槽内において、ポテンショスタットを使用して、飽和カロメル電極(参照電極)にとの間で、白金(Pt)電極に−0.4[V]を印加することで、Na1.4Co1.3[Fe(CN)6]・5H2Oのシアノ架橋金属錯体の薄膜を白金電極に製膜する技術が記載されている。
この問題に対応するための技術として、特許文献1記載の技術が知られている。
特許文献1としての特開2009−46748号公報には、析出用電極に交番電界を印加することで、電界析出により、所定の結晶方位に揃ったシアノ架橋金属錯体の膜を作成する技術が記載されている。
前記シアノ架橋金属錯体の薄膜は、特に、2種類以上の薄膜を接合することにより、電圧の印加により高速色変化や強磁性−常磁性のスイッチを示すデバイスを作成できることについて、本件出願人は、先に、特願2008−284295号や特願2009−202058号として出願している。しかしながら、特許文献1記載の発明により、2種類の薄膜を作成した場合、遷移金属の種類が変わると膜の結晶性・配向性が異なるため、特許文献1記載の発明で作成された2つの薄膜同士を接合させても、接合面(界面)が原子レベルでは平坦な錯体−錯体界面とはならない。したがって、錯体間の界面が原子レベルで、平坦、連続的にならず、微小な隙間が残った状態となり、エレクトロクロミック素子の性能である高速色変化や磁性のスイッチの機能の向上、最大化には限界があった。
所定の結晶方位に揃ったプルシャンブルー型シアノ架橋金属錯体の結晶により構成された層である第1の配向層を、電界析出により析出用電極表面に作成する第1の配向層作成工程と、
前記第1の配向層の表面に、前記第1の配向層を構成するプルシャンブルー型シアノ架橋金属錯体の結晶とは異なる組成の錯体の結晶により構成された第2の配向層であって、前記第1の配向層の結晶方位に揃った第2の配向層を、電界析出により作成する第2の配向層作成工程と、
を実行することを特徴とする。
アルカリ金属イオンと遷移金属イオンとシアノ錯体イオンとを含む第1の溶液が収容された電解槽内に、前記析出用電極を配置し、前記析出用電極に直流電圧と所定の振幅で周期的に変化する交番電圧とを重畳した重畳電圧を印加することで、電界析出により、前記析出用電極に、所定の結晶方位に揃ったシアノ架橋金属錯体を析出させることで、前記第1の配向層を作成する前記第1の配向層作成工程と、
遷移金属イオンとシアノ錯体イオンとアルカリ金属イオンとを含む第2の溶液が収容された電解槽内に、前記第1の配向層が作成された前記析出用電極を配置し、前記析出用電極に電界析出用の電圧を印加することで、電界析出により、前記析出用電極の前記第1の配向層の表面に、前記第1の配向層の結晶方位に揃ったシアノ架橋金属錯体を析出させることで、前記第2の配向層を作成する前記第2の配向層作成工程と、
を実行することを特徴とする。
アルカリ金属イオンと遷移金属イオンとシアノ錯体イオンとを含む第1の溶液が収容された第1の電解槽と、
前記第1の電解槽内に配置された析出用電極に、直流電圧と所定の振幅で周期的に変化する交番電圧とを重畳した重畳電圧を印加し、電界析出により前記析出用電極に所定の結晶方位に揃ったプルシャンブルー型シアノ架橋金属錯体により構成された第1の配向層を電界析出させる電源装置と、
前記第1の溶液に含まれる遷移金属イオンおよびシアノ錯体イオンの少なくとも一方が異なる遷移金属イオンとシアノ錯体イオンとアルカリ金属イオンとを含む第2の溶液が収容された第2の電解槽と、
前記第2の電解槽内に配置された前記第1の配向層が作成された析出用電極に、電界析出用の電圧を印加し、電界析出により、前記析出用電極の前記第1の配向層の表面に前記第1の配向層の結晶方位に揃ったシアノ架橋金属錯体により構成された第2の配向層を電界析出させる前記電源装置と、
を備えたことを特徴とする。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
図1において、本発明の実施例1のシアノ架橋金属錯体作成装置1は、第1の電解槽2を有する。前記第1の電解槽2には、アルカリ金属イオンと遷移金属イオンとシアノ錯体イオンとを含む第1の溶液が収容されている。
前記第1の電解槽2には、複数の電極3、4、5が浸漬されている。実施例1では、前記電極3〜5は、電源装置の一例としてのポテンショスタット6に接続されており、それぞれ、作用極(析出用電極)3、参照極4、対極5として作用する。すなわち、前記ポテンショスタット6により、作用極3と参照極4との間の電圧が、予め設定された第1の電圧となるように、作用極3と対極5との間の電流が制御される。実施例1では、前記作用極3に、直流電圧と所定の振幅で周期的に変化する交番電圧とが重畳された重畳電圧が第1の電圧として印加されるように、ポテンショスタット6により作用極3と対極5との間に流れる電流が制御される。前記交番電圧は、正弦波状の交流電圧や、矩形波状の交番電圧、ノコギリ波状の交番電圧等、任意の波形の交番電圧とすることが可能である。
なお、前記バッファー層3aを作成する方法は、前述の特許文献1記載の発明と同様であり、詳細な説明は省略する。
そして、第1の電解槽2で析出用電極3にシアノ架橋金属錯体により構成された第1の配向層が析出された後、前記各電極3〜5が、第2の電解槽11に浸漬される。そして、前記ポテンショスタット6により、作用極3と参照極4との間の電圧が、予め設定された電界析出用の第2の電圧となるように、作用極3と対極5との間の電流が制御され、作用極3にシアノ架橋金属錯体の膜が電界析出される。
前記構成を備えた実施例1のシアノ架橋金属錯体作成装置1では、第1の電解槽2に浸漬された作用極3にマイナスの電圧が印加されると、電界析出により、溶液中のアルカリ金属イオン、遷移金属イオン、シアノ錯体イオンが化合したシアノ架橋金属錯体として析出し、バッファー層3aが作成される。実施例1の重畳電圧が印加されて電界析出したシアノ架橋金属錯体は、所定の結晶方位に揃っており、すなわち、配向しており、配向性の高いバッファー層3aが形成される。そして、作用極3にバッファー層3aが形成された状態で、第2の溶液12に浸漬させて電界析出させることで、図1Cに示すように、バッファー層3aの表面に第2のシアノ架橋金属錯体により構成された第2の配向層の一例としての表面層13が析出する。このとき、形成される表面層13は、バッファー層3aと同様の配向性を有しており、いわゆるエピタキシャル成長している。よって、配向性の高いバッファー層3aおよび表面層13が積層された薄膜を作成することができる。
次に、実施例1のシアノ架橋金属錯体作成装置1で配向性の高いシアノ架橋金属錯体の積層膜を作成する実験を行った。
(実験例1)
実験例1では、まず、特許文献1記載の技術と同様にして、バッファー層3aとして、Co−Fe錯体の薄膜を形成する。すなわち、第1の電解槽2内に、0.5[mmol/L]のK3[Fe(CN)6]と、1.25[mmol/L]のCoCl2と、1[mol/L]のNa(NO3)を含む室温の第1の溶液を入れた。すなわち、アルカリ金属イオンとしてのNa+、遷移金属イオンとしてのCo2+、シアノ錯体イオンとしての[Fe(CN)6]3−が溶液中に含まれている。
こうして得られたバッファー層3aの表面をSEM(走査型電子顕微鏡、Scanning Electron Microscope)で撮影した写真を図2に示す。図2において、バッファー層3aの表面に観察される三角形(三角錐状)の構造は、立方体結晶の角の部分に対応する。なお、得られたバッファー層3aは、膜厚が1000[nm]のNa0.84Co[Fe(CN)6]0.71-・3.8H2Oのプルシャンブルー型のシアノ架橋金属錯体であった。
そして、作用極3に対して、参照極4(Ag/AgCl電極)に対して、−0.5[V]の第2の電圧を30分印加した。こうして得られた表面層13のSEM写真を図3に示す。
図3において、得られた表面層13の表面は、バッファー層3aと同様な三角形の構造が観測された。したがって、Fe[Cr(CN)6]の錯体の膜がエピタキシャル成長していることが確認された。なお、実験例1で得られた表面層13は、膜厚が1200[nm]であった。
次に、実験例1で得られたバッファー層3aと表面層13との積層膜3a+13の断面をSEMで撮影した写真を図4に示す。図4において、バッファー層3aと表面層13との界面部分にわずかな色の変化が見られる。そして、Fe[Cr(CN)6]錯体は直径数百nmの針状結晶として、ITO電極3に対して、垂直に成長、すなわち、エピタキシャル成長していることが確認された。したがって、ITO電極3に対しては、ほぼ単結晶であることが確認された。
次に、実験例1で得られた積層膜3a+13について、赤外吸収スペクトルを測定した結果を図5に示す。図5の中段の○(「exp」の波形)に示す実験例1の赤外吸収スペクトルでは、上段のバッファー層3aのみのスペクトル(波数2090[cm−1]近傍のCN伸縮モードによる吸収帯)と下段の錯体の薄膜のみのスペクトル(波数2160[cm−1]近傍のCN伸縮モードによる吸収帯)とを適当な整数倍して足した波形(「Fit」で示す波形)でほぼ再現されている。
したがって、バッファー層3aの表面にFe[Cr(CN)6]の錯体の表面層13が成膜できたことが確認された。
次に、実験例1で得られた積層膜3a+13について、X線回折パターンを測定した結果を図6に示す。図6の上段に示す実験例1のX線回折パターンでの反射の強度比は、図6の下段に示すFe[Cr(CN)6]の錯体のみの薄膜のものと著しく異なっており、特に、結晶面(111)の回折の反射強度が増大している。これは、結晶方位<111>に配向しているバッファー層3aの上に表面層13を成膜することで、(111)のエピタキシャル成長が発生したことを示している。
実験例2では、実験例1と同様に、特許文献1記載の技術と同様にして、バッファー層3aを形成した。実験例2では、バッファー層3aの膜厚は1000[nm]とした。
次に、バッファー層3aが形成された電極3を、0.5[mmol/L]のCo(NO3)2と、0.8[mmol/L]のK3[Cr(CN)6]と、5[mol/L]のNaNO3を含む室温の第2の溶液12に入れた。すなわち、アルカリ金属イオンとしてのNa+、遷移金属イオンとしてのCo2+、シアノ錯体イオンとしての[Cr(CN)6]3−が溶液中に含まれている。
そして、作用極3に対して、参照極4(Ag/AgCl電極)に対して、−0.45[V]の第2の電圧を30分印加した。こうして得られた表面層13のSEM写真を図7に示す。
図7において、実験例2で得られた表面層13の表面は、実験例1の表面層13と同様に、図2に示すバッファー層3aと同様な三角形の構造が観測された。したがって、Na1.60Co[Fe(CN)6]0.9・2.9H2Oの錯体の膜がエピタキシャル成長していることが確認された。なお、実験例2で得られた表面層13は、膜厚が1000[nm]であった。
次に、実験例2で得られたバッファー層3aと表面層13との積層膜3a+13の断面をSEMで撮影した写真を図8に示す。図8において、Na0.84Co[Fe(CN)6]0.71・3.8H2Oのバッファー層3aとNa1.60Co[Fe(CN)6]0.9・2.9H2Oの表面層13との界面部分にわずかな色の変化が見られる。そして、Na1.60Co[Fe(CN)6]0.9・2.9H2Oの膜は直径数百nmの針状結晶として、ITO電極に対して、垂直に成長、すなわち、エピタキシャル成長していることが確認された。
次に、実験例2で得られた積層膜3a+13について、赤外吸収スペクトルを測定した結果を図9に示す。図9の中段に示す実験例2の赤外吸収スペクトルでは、上段のバッファー層3aのみのスペクトル(波数2090[cm−1]近傍のCN伸縮モードによる吸収帯)と下段の錯体の薄膜のみのスペクトル(波数2090[cm−1]近傍のCN伸縮モードによる吸収帯)との和で再現されている。
したがって、バッファー層3aの表面にNa1.60Co[Fe(CN)6]0.9・2.9H2Oの表面層13が成膜できたことが確認された。
次に、実験例2で得られた積層膜3a+13について、X線回折パターンを測定した結果を図10に示す。図10の上段に示す実験例2のX線回折パターンでの反射の強度比は、図10の下段に示すNa1.60Co[Fe(CN)6]0.9・2.9H2Oの錯体のみの薄膜のものと著しく異なっており、特に、結晶面(111)の回折の反射強度が増大している。これは、結晶方位<111>に配向しているバッファー層3aの上に表面層13を成膜することで、(111)のエピタキシャル成長が発生したことを示している。なお、図10の上段のグラフにおいて、(111)と(1−11)とに分裂しているのは、菱面晶ひずみのため(結晶がひずんだため)である。
実験例3では、実験例1と同様に、特許文献1記載の技術と同様にして、バッファー層3aを形成した。なお、実験例3では、バッファー層3aの膜厚は1300[nm]とした。
次に、バッファー層3aが形成された電極3を、1.5[mmol/L]のMnCl2と、1.5[mmol/L]のK3[Cr(CN)6]と、1[mol/L]のNaClを含む室温の第2の溶液12に入れた。すなわち、アルカリ金属イオンとしてのNa+、遷移金属イオンとしてのMn2+、シアノ錯体イオンとしての[Cr(CN)6]3−が溶液中に含まれている。
そして、作用極3に対して、参照極4(Ag/AgCl電極)に対して、−0.5[V]の第2の電圧を30分印加した。こうして得られた表面層13のSEM写真を図11に示す。
図11において、実験例3で得られた表面層13の表面は、実験例1の表面層13と同様に、図2に示すバッファー層3aと同様な三角形の構造が観測された。したがって、Mn[Fe(CN)6]錯体の膜がエピタキシャル成長していることが確認された。なお、実験例3で得られた表面層13は、膜厚が1500[nm]であった。
次に、実験例3で得られたバッファー層3aと表面層13との積層膜3a+13の断面をSEMで撮影した写真を図12に示す。図12において、バッファー層3aとMn[Fe(CN)6]錯体の表面層13との界面部分にわずかな色の変化が見られる。そして、Mn[Fe(CN)6]錯体の膜は直径数百nmの針状結晶として、ITO電極に対して、垂直に成長、すなわち、エピタキシャル成長していることが確認された。
次に、実験例3で得られた積層膜3a+13について、赤外吸収スペクトルを測定した結果を図13に示す。図13の中段に示す実験例3の赤外吸収スペクトルでは、上段のバッファー層3aのみのスペクトル(波数2090[cm−1]近傍のCN伸縮モードによる吸収帯)と下段の錯体の薄膜のみのスペクトル(波数2070[cm−1]近傍のCN伸縮モードによる吸収帯)との和で再現されている。
したがって、バッファー層3aの表面にMn[Fe(CN)6]錯体の表面層13が成膜できたことが確認された。
次に、実験例3で得られた積層膜3a+13について、X線回折パターンを測定した結果を図14に示す。図14の上段に示す実験例3のX線回折パターンでの反射の強度比は、図14の下段に示すMn[Fe(CN)6]錯体のみの薄膜のものと著しく異なっており、特に、結晶面(111)の回折の反射強度が増大している。これは、結晶方位<111>に配向しているバッファー層3aの上に表面層13を成膜することで、(111)のエピタキシャル成長が発生したことを示している。
したがって、バッファー層3aの表面に、配向性の高く且つ界面が原子レベルで連続的に積層され、バッファー層3aとは異なる錯体により構成された表面層13が形成できる。すなわち、表面層13の材料を選択する(溶液の組成や印加電圧を変える)ことで、従来は配向性の高い膜を作成できなかった錯体についても、結晶性や配向性の高い薄膜が形成できると共に、原子レベルで平坦、連続的な界面の構築が可能になる。
また、実施例1のシアノ架橋金属錯体作成装置1では、電圧の印加時間を制御することで、膜厚を容易に制御することができる。したがって、作成したい配向膜に応じた溶液を用意しておくことで、成膜作業を容易に自動化することも可能である。
さらに、従来、エピタキシャル成長をさせる方法(人工的な超構造を造る方法)として、真空蒸着法の1つである分子線エピタキシー法:MBE(Molecular Beam Epitaxy)や、溶媒に対する溶質の溶解度の温度依存性を利用する液相エピタキシー法等が知られているが、実施例1では、電界析出という電気化学的な方法で、シアノ架橋金属錯体のエピタキシャル成長を実現できる。したがって、超高真空状態にする真空ポンプ等が必要となって費用が高く量産化に不向きなMBEや、溶媒が高温になって基板等が変質したり反応しやすい液相エピタキシー法等に比べて、比較的低コストで基板等の変質といった問題も発生しにくくなっている。
この実施例2は、下記の点で前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成されている。
図15において、実施例2では、実施例1と同様にして電極3の表面にバッファー層3aおよび第2の配向層13を成膜した後に、第2の配向層13と異なるシアノ架橋金属錯体について同様の作業を繰り返して、第3の配向膜14〜第11の配向膜22を積層している。したがって、各配向膜13〜22の材料を選択することで、任意の錯体による超格子を作成することができる。
図15Bにおいて、図15Aのバッファー層3aを作成する前に、フォトリソエッチング等の従来の加工方法で100nm程度の大きさまで作用極3を小さくしておき、作用極3にバッファー層3aおよび配向膜13〜22を形成することで、任意の形状のエレクトロクロミック素子を作成することも可能である。特に、作用極3の大きさを、SEM写真における三角錐1つ分に対応する大きさに加工した場合、単一ドメイン(結晶1つ分)でエピタキシャル成長をさせることができ、ナノ超構造を作成することができる。
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H09)を下記に例示する。
(H01)前記実験例において例示した媒質や溶媒については、例示したものに限定されず、電気分解によりシアノ架橋金属錯体を析出可能な任意の溶媒、溶質を使用可能である。一例を挙げると、CoCl2に替えて、Co(NO3)2を使用したり等、適宜変更可能である。
(H02)前記実施例において、ITO電極にシアノ架橋金属錯体の膜を製膜する場合について説明したが、これに限定されず、白金、金、アルミニウム等の導電体表面に製膜することが可能である。さらに、ITO電極のパターンニングは、図15Bに示すような形態に限定されず、任意の形状、パターンとすることが可能であり、そのパターンどおりの製膜が可能であり、デバイス化にとって有利である。また、薄膜状に形成する場合に限定されず、層状、板状のように、ある程度の厚みを有するように形成することも当然可能である。
(H05)前記実験例において、ポテンショスタットを使用することが望ましいが、ポテンショスタットを使用せず、例えば、電極が2つの二端子型の装置の電極に重畳電圧を印加して電気分解を行うことも可能である。なお、バッファー層3aを表面層13を作成する際に1つのポテンショスタットを使用して行ったが、これに限定されず、各電解槽2,11毎に電源装置を設けて、電極部分、セルだけを交換して電界析出させる構成とすることも可能である。
(H06)前記実施例において、配向膜13〜22の数や膜厚は、例示した構成に限定されず、任意に変更可能である。また、配向膜13〜22は、錯体Aと錯体Bとを交互に積層する構成としたり、全ての配向膜が異なる錯体で構成する等、各配向膜13〜22を構成する錯体の組み合わせは、任意に変更可能である。
(H09)前記実施例において、第1の電解槽2と第2の電解槽11とを別の容器としたが、これに限定されず、バッファー層3aの作成後に、第1の電解槽2を洗浄して第2の溶液12を収容する構成、すなわち、第1の電解槽2と第2の電解槽11とを共通化することも可能である。
2,11…電解槽、
3…電極、析出用電極、
3a…第1の配向層、
6…電源装置、
13…第2の配向層。
Claims (3)
- 所定の結晶方位に揃ったプルシャンブルー型シアノ架橋金属錯体の結晶により構成された層である第1の配向層を、電界析出により析出用電極表面に作成する第1の配向層作成工程と、
前記第1の配向層の表面に、前記第1の配向層を構成するプルシャンブルー型シアノ架橋金属錯体の結晶とは異なる組成の錯体の結晶により構成された第2の配向層であって、前記第1の配向層の結晶方位に揃った第2の配向層を、電界析出により作成する第2の配向層作成工程と、
を実行することを特徴とするシアノ架橋金属錯体超構造作成方法。 - アルカリ金属イオンと遷移金属イオンとシアノ錯体イオンとを含む第1の溶液が収容された電解槽内に、前記析出用電極を配置し、前記析出用電極に直流電圧と所定の振幅で周期的に変化する交番電圧とを重畳した重畳電圧を印加することで、電界析出により、前記析出用電極に、所定の結晶方位に揃ったシアノ架橋金属錯体を析出させることで、前記第1の配向層を作成する前記第1の配向層作成工程と、
遷移金属イオンとシアノ錯体イオンとアルカリ金属イオンとを含む第2の溶液が収容された電解槽内に、前記第1の配向層が作成された前記析出用電極を配置し、前記析出用電極に電界析出用の電圧を印加することで、電界析出により、前記析出用電極の前記第1の配向層の表面に、前記第1の配向層の結晶方位に揃ったシアノ架橋金属錯体を析出させることで、前記第2の配向層を作成する前記第2の配向層作成工程と、
を実行することを特徴とする請求項1に記載のシアノ架橋金属錯体超構造作成方法。 - アルカリ金属イオンと遷移金属イオンとシアノ錯体イオンとを含む第1の溶液が収容された第1の電解槽と、
前記第1の電解槽内に配置された析出用電極に、直流電圧と所定の振幅で周期的に変化する交番電圧とを重畳した重畳電圧を印加し、電界析出により前記析出用電極に所定の結晶方位に揃ったプルシャンブルー型シアノ架橋金属錯体により構成された第1の配向層を電界析出させる電源装置と、
前記第1の溶液に含まれる遷移金属イオンおよびシアノ錯体イオンの少なくとも一方が異なる遷移金属イオンとシアノ錯体イオンとアルカリ金属イオンとを含む第2の溶液が収容された第2の電解槽と、
前記第2の電解槽内に配置された前記第1の配向層が作成された析出用電極に、電界析出用の電圧を印加し、電界析出により、前記析出用電極の前記第1の配向層の表面に前記第1の配向層の結晶方位に揃ったシアノ架橋金属錯体により構成された第2の配向層を電界析出させる前記電源装置と、
を備えたことを特徴とするシアノ架橋金属錯体超構造作成装置。
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JPS57194278A (en) * | 1981-05-26 | 1982-11-29 | Seiko Instr & Electronics Ltd | Synthesizing method for iron hexacyano ferrate |
JPS59164383A (ja) * | 1983-03-08 | 1984-09-17 | Nissan Motor Co Ltd | エレクトロクロミツク表示素子 |
JP2009046748A (ja) * | 2007-08-22 | 2009-03-05 | Univ Of Tsukuba | シアノ架橋金属錯体作成方法およびシアノ架橋金属錯体作成装置 |
JP2009158771A (ja) * | 2007-12-27 | 2009-07-16 | National Institute Of Advanced Industrial & Technology | シアノ架橋金属錯体抵抗素子および抵抗制御方法 |
WO2009157554A1 (ja) * | 2008-06-27 | 2009-12-30 | 独立行政法人産業技術総合研究所 | プルシアンブルー型金属錯体ナノ粒子構造体の製造方法、これにより得られる構造体、これを用いた構造体配設基板、エレクトロクロミック素子、整流装置、及び光応答素子 |
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2010
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