JP2011207401A - 飛翔体 - Google Patents

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Abstract

【課題】アブレーションガスによる飛翔体の熱防護性を向上できる飛翔体を提供すること。
【解決手段】この飛翔体1は、飛翔体本体2の前部から側部に渡ってアブレータ31a、31bを配置して成るアブレーション構造3を備えている。また、アブレータ31a、31bが樹脂311を繊維マトリックス312に含侵させて構成されている。この飛翔体1では、アブレーション構造3は、繊維マトリックス312の繊維密度が飛翔体本体2の前部から側部側に向かって段階的(または連続的)に高くなるアブレータ領域31a、31bを少なくとも一部に有している。
【選択図】図1

Description

この発明は、飛翔体に関し、さらに詳しくは、アブレーションガスによる飛翔体の熱防護性を向上できる飛翔体に関する。
例えば、宇宙往還機や回収カプセルなどの飛翔体は、大気圏再突入時にて、飛翔体本体(例えば、宇宙往還機の機体や回収カプセルのカプセル飛翔体本体)が大気との摩擦によって高温となることを防止するために、アブレーション構造を備える。このアブレーション構造は、樹脂および繊維を主材料とするアブレータ(熱防護材)から成り、このアブレータの昇華、溶融あるいは炭化、もしくはそれによるアブレーションガスの噴出により飛翔体本体を熱防護する構造である。
また、一般的なアブレータは、樹脂を繊維マトリックスに含侵させて成り、均一構造(繊維マトリックスの密度が一様な構造)を有する。かかるアブレータでは、飛翔体の大気圏再突入時にて、まず、樹脂が熱分解してアブレーションガスとなり、このアブレーションガスが飛翔体の前方に噴出して飛翔体本体を熱防護する。その後に、繊維マトリックスが溶融して消失する。
かかるアブレーション構造を有する飛翔体として、特許文献1および2に記載される技術が知られている。
特開平8−268397号公報 特開2001−247100号公報
ここで、飛翔体の大気圏再突入時には、飛翔体本体の前方に離脱衝撃波S(図8参照)が発生する。すると、飛翔体前方の淀み点付近における前方圧力Pfが側方圧力Pssよりも大きくなる(Pf>Pss)。
しかしながら、アブレータの内部圧力Paと飛翔体の前方圧力Pfおよび側方圧力PssとがPf>Pa>Pssの関係となる圧力勾配(図9参照)が存在するため、均一構造を有するアブレータでは、飛翔体の前方に一旦噴出したアブレーションガスが飛翔体の前方からアブレータ内に逆流し、アブレータの内部を通って飛翔体の側方に流出する。すると、飛翔体の前方へのアブレーションガスの噴出量が減少するため、アブレーションガスによる熱防護性が低下するという課題がある。
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、アブレーションガスによる飛翔体の熱防護性を向上できる飛翔体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、この発明にかかる飛翔体は、飛翔体本体の前部から側部に渡ってアブレータを配置して成るアブレーション構造を備えると共に、前記アブレータが樹脂を繊維マトリックスに含侵させて成る飛翔体であって、前記アブレーション構造は、前記繊維マトリックスの繊維密度が前記飛翔体本体の前部から側部側に向かって段階的または連続的に高くなるアブレータ領域を少なくとも一部に有することを特徴とする。
この飛翔体では、アブレーションガスが飛翔体本体の前部から側部側に向かうときに、隣接するアブレータの境界部でアブレーション構造の繊維密度が増加する(浸透率が低下する)。すると、この境界部が壁となり前部から側部側へのアブレーションガスの逆流を抑制して、アブレータ内のアブレーションガスが飛翔体の前方に流出し易くなる。これにより、アブレーションガスによる飛翔体(特に、飛翔体本体の前部)の熱防護性が向上する利点がある。
また、この発明にかかる飛翔体は、飛翔体本体の前部から側部に渡ってアブレータを配置して成るアブレーション構造を備えると共に、前記アブレータが樹脂を繊維マトリックスに含侵させて成る飛翔体であって、前記アブレーション構造が、前記飛翔体本体の前部から側部側に向かって配列された複数の前記アブレータと、隣り合う前記アブレータを仕切る隔壁とを有することを特徴とする。
この飛翔体では、隔壁が隣り合うアブレータ間のアブレーションガスの流通を遮断するので、前部から側部側へのアブレーションガスの逆流が抑制されて、アブレータ内のアブレーションガスが飛翔体の前方に流出し易くなる。これにより、アブレーションガスによる飛翔体の熱防護性が向上する利点がある。
また、この発明にかかる飛翔体は、前記飛翔体本体の前部に配置される前記アブレータが、前記アブレータ内を前記飛翔体本体の外壁に沿って延在すると共に前記繊維マトリックスよりも低い融点を有する少なくとも一つの中間部材を備えることを特徴とする。
この飛翔体では、中間部材が繊維マトリックスよりも先に溶融することにより、アブレータ内に中間部材の延在範囲に渡って中空部が形成される。すると、この中空部にアブレーションガスが滞留して、アブレーションガス層が形成される。これにより、このアブレーションガス層が断熱層として機能して、飛翔体の前部の熱防護性が向上する利点がある。
この発明にかかる飛翔体では、アブレーションガスが飛翔体本体の前部から側部側に向かうときに、隣接するアブレータの境界部でアブレーション構造の繊維密度が増加する(浸透率が低下する)。すると、この境界部が壁となり、アブレータ内のアブレーションガスがアブレータ内へ逆流しにくくなるので、飛翔体の前方に流出し易くなる。これにより、アブレーションガスによる飛翔体(特に、飛翔体本体の前部)の熱防護性が向上する利点がある。
図1は、この発明の実施例1にかかる飛翔体のアブレーション構造を示す構成図である。 図2は、図1に記載したアブレーション構造の作用を示す説明図である。 図3−1は、図1に記載したアブレーション構造の変形例を示す説明図である。 図3−2は、図1に記載したアブレーション構造の変形例を示す説明図である。 図3−3は、図1に記載したアブレーション構造の変形例を示す説明図である。 図4は、この発明の実施例2にかかる飛翔体のアブレーション構造を示す構成図である。 図5は、図4に記載したアブレーション構造の変形例を示す説明図である。 図6は、この発明の実施例3にかかる飛翔体のアブレーション構造を示す構成図である。 図7は、図6に記載したアブレーション構造の変形例を示す説明図である。 図8は、この発明の適用対象である飛翔体の一例を示す構成図である。 図9は、従来の均一構造を有するアブレータの作用を示す構成図である。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
[アブレーション構造を有する飛翔体]
この飛翔体1は、例えば、宇宙空間に打ち上げられて各種の実験を行った後に大気圏に再突入して帰還する宇宙往還機や、宇宙空間から大気圏に再突入して回収される回収カプセルなどに適用される。図8は、この発明の適用対象である飛翔体の一例を示す構成図である。同図は、飛翔体1が回収カプセルである場合を示している。
この飛翔体1は、大気圏再突入時にて飛翔体本体(例えば、宇宙往還機の機体や回収カプセルの容器)2が大気との摩擦によって高温となることを防止するために、アブレーション構造3を備える。このアブレーション構造3は、アブレータ(熱防護材)31が飛翔体本体2に取り付けられて構成される。例えば、この実施の形態では、大気圏再突入時における飛翔体1の進行方向(落下方向)を前方とするときに、アブレータ31が飛翔体本体2の前部から側部に渡って配置されている。
かかる構成では、飛翔体1の大気圏再突入時にて、アブレータ31が大気との摩擦熱により昇華、溶融あるいは炭化して熱分解する。これにより、アブレータ31がアブレーションガスを噴出して飛翔体本体2を熱防護する。
[アブレーション構造のアブレータ]
図1は、この発明の実施例1にかかる飛翔体のアブレーション構造を示す構成図である。図2は、図1に記載したアブレーション構造の作用を示す説明図である。
このアブレーション構造3は、第一アブレータ31aと、第二アブレータ31bとを有する(図1参照)。これらのアブレータ31a、31bは、樹脂311を繊維マトリックス312に含侵させて構成される。樹脂311には、例えば、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが採用される。また、繊維マトリックス312には、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、シリカ繊維などが採用される。
また、第一アブレータ31aが飛翔体本体2の前部に配置され、第二アブレータ31bが第一アブレータ31aよりも飛翔体本体2の側部側に配置される(図1参照)。例えば、この実施の形態では、第一アブレータ31aが飛翔体本体2の前部の全面に渡って配置され、一対の第二アブレータ31bが飛翔体本体2の左右の側部にそれぞれ配置されている。また、第一アブレータ31aと第二アブレータ31bとが飛翔体本体2の角部21近傍にて隣接して一体化されている。
なお、飛翔体本体2の角部21とは、飛翔体1の進行方向(ここでは、回収カプセルの落下方向)にかかる前部と側部との境界領域をいう。この角部21は、飛翔体1の種類や飛翔体本体2の形状により相異する。例えば、この実施の形態では、飛翔体1が略円錐台形状を有する回収カプセルであり(図8参照)、その円錐台形状の底面(前部)と側面(側部)との境界領域が飛翔体本体2の角部21となっている。
また、第二アブレータ31bが、第一アブレータ31aよりも高い繊維密度(繊維マトリックス312の繊維密度)を有する(図1参照)。すなわち、アブレーション構造3は、飛翔体本体2の前部から側部側に向かって繊維密度が段階的に高くなる領域(2段構造)を有する。
このアブレーション構造3では、飛翔体1の大気圏再突入時にて、アブレータ31a、31bの樹脂311が熱分解してアブレーションガスGが発生する(図2参照)。このアブレーションガスGの流れは、アブレータ31a、31b内にてダルシー則に支配される。すなわち、第二アブレータ31bが第一アブレータ31aよりも高い繊維密度を有するので、アブレーションガスGがアブレータ31内において飛翔体本体2の前部から側部側に向かうときに、隣接するアブレータ31a、31bの境界部でアブレーションガスGの浸透率が低下する。このため、第一アブレータ31a内で発生したアブレーションガスGが第二アブレータ31b内に流入し難くなり、その結果として、第一アブレータ31a内で発生したアブレーションガスG、あるいは、一旦前方に噴出してから第一アブレータ31a内に逆流してきたアブレーションガスGが第一アブレータ31aと第二アブレータ31bとの境界部から飛翔体1の前方に流出し易くなる。これにより、アブレーションガスGによる飛翔体1(特に、飛翔体本体2の前部)の熱防護性が向上する。
なお、この実施の形態では、低い繊維密度を有する第一アブレータ31aの肉厚と、高い繊維密度を有する第二アブレータ31bの肉厚とが略同一に設定されている(図1参照)。このため、第二アブレータ31bにおける樹脂311の密度(単位体積重量)が第一アブレータ31aの樹脂311の密度よりも小さくなっている。しかしながら、飛翔体1の側部は、大気圏再突入時の熱負荷が前部よりも比較的小さい。したがって、上記の構成としても、飛翔体1の側部の熱防護を適正に行い得る。
[アブレータの多段構造および無段階構造]
図3−1〜図3−3は、図1に記載したアブレーション構造の変形例を示す説明図である。同図において、図1に記載したアブレーション構造と同一の構成要素には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
この飛翔体1では、アブレーション構造3が、相互に異なる繊維密度の繊維マトリックス312から成る3つのアブレータ31a〜31cを有すると共に、これらのアブレータ31a〜31cを飛翔体本体2の前部から側部側に向かって繊維密度が高くなる順に配列して構成される(図3−1参照。多段構造。)。かかる構成では、飛翔体本体2の前部から側部側に向かうに連れてアブレータ31a〜31cの繊維密度が段階的に大きくなり、アブレーションガスGの浸透率が段階的に低下していく。したがって、隣接するアブレータ31a、31b(31b、31c)の各境界部が壁となって、アブレータ31a(31b)内で発生した、あるいは、一旦前方に噴出してから逆流してきたアブレーションガスGが飛翔体1の前方に流出し易くなる。これにより、アブレーションガスGによる飛翔体1の熱防護性が向上する。
例えば、この実施の形態では、アブレーション構造3が3種類のアブレータ31a〜31cを備え、これらのアブレータ31a〜31cが相互に異なる繊維密度の繊維マトリックス312から構成されている(図3−1参照)。また、これらのアブレータ31a〜31cが飛翔体本体2の前部から側部側に向かって繊維密度が高くなる順に配列されて隣接している。このとき、最も低い繊維密度のアブレータ31aが飛翔体本体2の前部に配置され、次に低い繊維密度のアブレータ31bが飛翔体本体2の角部21近傍を含む位置に配置され、最も高い繊維密度のアブレータ31cが飛翔体本体2の側部に配置されている。
なお、この実施の形態では、上記のように、相互に異なる繊維密度を有する複数のアブレータ31a〜31cが配列されることにより、アブレータ31a〜31cの繊維密度が飛翔体本体2の前部から側部側に向かうに連れて段階的に大きくなっている(図3−1参照)。
しかし、これに限らず、図3−2のように、(1)最も低い繊維密度のアブレータ31aが飛翔体本体2の前部に配置され、最も高い繊維密度のアブレータ31dが飛翔体本体2の角部21近傍を含む位置に配置され、この角部21近傍のアブレータ31eの繊維密度よりも低い繊維密度のアブレータ31cが飛翔体本体2の側部に配置されても良い。すなわち、飛翔体本体2の前部から角部に至る領域にて、少なくとも2つのアブレータ31(図3−1では、31aおよび31bと、31bおよび31cが該当し、図3−2では、31aおよび31dが該当する。)の繊維密度が飛翔体本体2の前部から角部に向かうに連れて段階的に大きくなっていれば良い。かかる構成としても、これらの領域において前部から側部側への浸透率が低下して、飛翔体1の前方へのアブレーションガスGの流出が促進されるので、アブレーションガスGによる飛翔体1の熱防護性が向上する。
また、これに限らず、図3−3のように、(2)繊維密度を連続的に増加させたアブレータ31fが用いられ、このアブレータ31fの繊維密度が飛翔体本体2の前部から側部側に向かうに連れて無段階に大きくなるように構成されても良い(無段階構造)。かかる構成では、アブレータ31fにおけるアブレーションガスGの浸透率が飛翔体本体2の前部から側部側に向かうに連れて連続的に徐々に小さくなる(浸透率の勾配が形成される)。これにより、飛翔体1の前方へのアブレーションガスGの流出が促進されるので、アブレーションガスGによる飛翔体1の熱防護性が向上する。
なお、前部から側部側に向かうに連れて繊維密度が段階的に高くなる領域と、連続的に高くなる領域との両者を併用した構造としても良い(図示省略)。また、2段階や3段階に限らず、4段階以上としても良い。
[アブレータの隔壁]
図4は、この発明の実施例2にかかる飛翔体のアブレーション構造を示す構成図である。図5は、図4に記載したアブレーション構造の変形例を示す説明図である。これらの図において、図1に記載したアブレーション構造と同一の構成要素には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
これらの飛翔体1では、アブレーション構造3が、飛翔体本体2の前部から側部側に渡って配列された複数のアブレータ31a、31g(31a、31g、31h)と、隣り合うアブレータ31a、31g(31g、31h)を仕切る隔壁32とを有する(図4および図5参照)。この隔壁32は、例えば、タングステン材、レニウム材、イリジウムとレニウムの複合材、炭化珪素材あるいは耐熱金属部材から構成される。なお、これらのアブレータ31a、31g(31a、31g、31h)は、同一の繊維密度を有しても良いし、相異する繊維密度を有しても良い。
例えば、図4に示す構成では、同一の繊維密度を有するアブレータ31a、31gが飛翔体本体2の前部と側部とにそれぞれ配置され、飛翔体本体2の角部21近傍にて隣接している。また、これらのアブレータ31a、31gの間に隔壁32が配置されている。これにより、飛翔体本体2の前部にあるアブレータ31aから側部のアブレータ31gへのアブレーションガスGの流通が遮断されている。
また、図5に示す構成では、同一の繊維密度を有するアブレータ31a、31g、31hが飛翔体本体2の前部、角部21近傍および側部にそれぞれ配置されて隣接している。そして、これらのアブレータ31a、31g、31hの間に隔壁32がそれぞれ配置されている。これにより、飛翔体本体2の前部にあるアブレータ31aから角部21近傍にあるアブレータ31gへのアブレーションガスGの流通、および、角部21近傍にあるアブレータ31gから側部にあるアブレータ31hへのアブレーションガスGの流通がそれぞれ遮断されている。
これらの構成では、隔壁32が隣り合うアブレータ31a、31g(31g、31h)間のアブレーションガスGの流通を遮断するので、アブレータ31a(31g)内のアブレーションガスGが外部に流出し易くなる。これにより、アブレーションガスGによる飛翔体1の熱防護性が向上する。
なお、隔壁32は、少なくとも飛翔体本体2の前部と側部とを仕切る位置(図4参照)、あるいは、少なくとも飛翔体本体2の前部と角部21近傍と側部とを仕切る位置(図5参照)に配置されることが好ましいが、1箇所や2箇所に限られることはなく、3箇所以上に配置されても良い。かかる構成では、隔壁32の作用により、アブレータ31a(31g)内のアブレーションガスGが飛翔体本体2の前方に流出し易くなる。これにより、アブレーションガスGによる飛翔体1の前部の熱防護性が向上する。
[アブレータの中間部材]
図6は、この発明の実施例3にかかる飛翔体のアブレーション構造を示す構成図である。図7は、図6に記載したアブレーション構造の変形例を示す説明図である。これらの図において、図1に記載したアブレーション構造と同一の構成要素には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
これらの飛翔体1では、飛翔体本体2の前部に配置されるアブレータ31aが、内部に中間部材33を有する(図6および図7参照)。この中間部材33は、繊維マトリックス312よりも低い融点を有し、例えば、テフロン(登録商標)製の板状部材、網目状部材あるいは棒状部材から構成される。また、中間部材33は、アブレータ31a内にて飛翔体本体2の外壁2aに沿って延在する。
例えば、この実施の形態では、アブレータ31aが飛翔体本体2の前部から角部21近傍に渡って配置されており、このアブレータ31aの内部に中間部材33が配置されている(図6および図7参照)。また、中間部材33がアブレータ31aの全長に渡って延在して、アブレータ31aを層状に仕切っている。また、複数(図6および図7の場合、2つ)の中間部材33が配置されており、アブレータ31aが複数層(図6および図7の場合、3層)に仕切られている。なお、中間部材33は、2つに限られることなく、1つでも3つ以上でも良い。
かかる構成では、飛翔体1の大気圏再突入時にて、まず、アブレータ31aの樹脂311が熱分解し、その後に、中間部材33が溶融する。このとき、アブレータ31a内に中間部材33の延在範囲に渡って中空部(繊維マトリックス312に囲まれた空間)が形成される。すると、この中空部にアブレーションガスGが滞留して、アブレーションガス層が形成される。これにより、このアブレーションガス層が断熱層として機能して、飛翔体1の前部の熱防護性が向上する。また、中間部材33が吸熱効果(熱分解に要する熱量)の大きいテフロン(登録商標)製なので、この中間部材33が溶融して吸熱作用を発揮することにより、飛翔体1の熱防護が効果的に行われる。
なお、図6は、図1に示す構成において、前部のアブレータ31aに中間部材33を設けた構成を示している。また、図7は、図4に示す構成において、前部のアブレータ31aに中間部材33を設けた構成を示している。
[効果]
以上説明したように、この飛翔体1では、アブレーション構造3は、繊維マトリックス312の繊維密度が飛翔体本体2の前部から側部側に向かって段階的または連続的に高くなるアブレータ領域(例えば、図1では、31a、31b、図3−1では、31a〜31c、図3−2では、31a、31d、図3−3では、31fが該当する。)を少なくとも一部に有する。かかる構成では、アブレーションガスGが飛翔体本体2の前部から側部側に向かうときに、隣接するアブレータ31(例えば、図1では、31aおよび31b、図3−1では、31aおよび31bと、31bおよび31c、図3−2では、31aおよび31dが該当する。)の境界部で段階的に(繊維密度が連続的に高くなるアブレータ領域31f(図3−3参照)では、連続的に)アブレーション構造3の繊維密度が増加する(浸透率が低下する)。すると、この境界部が壁となり、アブレータ31a(31b)内のアブレーションガスGがアブレータ31b(31c)内へ逆流しにくくなるので、飛翔体1の前方に流出し易くなる。これにより、アブレーションガスGによる飛翔体1(特に、飛翔体本体2の前部)の熱防護性が向上する利点がある。
また、かかる構成では、アブレーション構造を構成するすべてのアブレータが高い繊維密度を有する構成と比較して、低い繊維密度を有するアブレータ31aを飛翔体本体2の前部に配置できるので、アブレーション構造3を軽量化できる利点がある。すなわち、すべてのアブレータが高い繊維密度を有する構成では、アブレーション構造の重量が嵩むため好ましくない。また、繊維マトリックスの比率が多過ぎると、熱分解による熱防護に必要なアブレータの樹脂量を確保できないという問題もある。
また、この飛翔体1では、アブレーション構造3が、飛翔体本体2の前部から側部側に向かって配列された複数のアブレータ31a、31g(31a、31g、31h)と、隣り合うアブレータ31a、31g(31g、31h)を仕切る隔壁32とを有する(図4および図5参照)。かかる構成では、隔壁32が隣り合うアブレータ31a、31g(31a、31g、31h)間のアブレーションガスGの流通を遮断するので、前部から側部側へのアブレーションガスGの逆流が抑制されて、アブレータ31a(31g)内のアブレーションガスGがアブレータ31g(31h)内へ逆流できなくなり、飛翔体1の前方に流出し易くなる。これにより、アブレーションガスGによる飛翔体1の熱防護性が向上する利点がある。
また、この飛翔体1では、飛翔体本体2の前部に配置されるアブレータ31aが、アブレータ31a内を飛翔体本体2の外壁2aに沿って延在すると共に繊維マトリックス312よりも低い融点を有する中間部材33を備える(図6および図7参照)。かかる構成では、中間部材33が繊維マトリックス312よりも先に溶融することにより、アブレータ31a内に中間部材33の延在範囲に渡って中空部が形成される。すると、この中空部にアブレーションガスGが滞留して、アブレーションガス層が形成される。これにより、このアブレーションガス層が断熱層として機能して、飛翔体1の前部の熱防護性が向上する利点がある。
以上のように、この発明にかかる飛翔体は、アブレーションガスによる飛翔体の熱防護性を向上できる点で有用である。
1 飛翔体
2 飛翔体本体
21 角部
3 アブレーション構造
31、31a〜31h アブレータ
311 樹脂
312 繊維マトリックス
32 隔壁
33 中間部材

Claims (3)

  1. 飛翔体本体の前部から側部に渡ってアブレータを配置して成るアブレーション構造を備えると共に、前記アブレータが樹脂を繊維マトリックスに含侵させて成る飛翔体であって、
    前記アブレーション構造は、前記繊維マトリックスの繊維密度が前記飛翔体本体の前部から側部側に向かって段階的または連続的に高くなるアブレータ領域を少なくとも一部に有することを特徴とする飛翔体。
  2. 飛翔体本体の前部から側部に渡ってアブレータを配置して成るアブレーション構造を備えると共に、前記アブレータが樹脂を繊維マトリックスに含侵させて成る飛翔体であって、
    前記アブレーション構造が、前記飛翔体本体の前部から側部側に向かって配列された複数の前記アブレータと、隣り合う前記アブレータを仕切る隔壁とを有することを特徴とする飛翔体。
  3. 前記飛翔体本体の前部に配置される前記アブレータが、前記アブレータ内を前記飛翔体本体の外壁に沿って延在すると共に前記繊維マトリックスよりも低い融点を有する少なくとも一つの中間部材を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の飛翔体。
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