JP2011205929A - 歯肉上皮由来の新規幹細胞およびその製造方法 - Google Patents

歯肉上皮由来の新規幹細胞およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】歯肉上皮組織に効率的に分化しうる幹細胞の提供。
【解決手段】本発明は、歯肉上皮から単離された非胚性組織から得られ、イン・ビトロで自己再生し、分化することができる、幹細胞を提供する。
【選択図】図3

Description

本発明は、歯肉上皮に効率的に分化しうる新規幹細胞およびその製造方法に関する。
近年、再生医療分野において、人体の細胞から皮膚、血管などを人工的に製造し、移植材料として商品化することが検討されている。特に、歯周再生医療においては、上皮・結合組織をイン・ビトロで再生し、患者に移植する治療が試みられている(非特許文献1:Vriens AP et al., Cell Transplant. 2008; 17(19-11):1199-209、非特許文献2:Hotta T et al., Kobe J Med Sci. 2007; 53:1-14)。
また、歯肉上皮の再生治療においては、実施可能な手段として粘膜移植が従前知られている。近年、粘膜移植に代わる手段として、人工ヒト歯肉上皮の開発が検討されている。しかしながら、このような人工ヒト歯肉上皮は、幹細胞を含んでおらず再生力に乏しいため、臨床への応用は困難である(非特許文献1:Vriens AP et al., Cell Transplant. 2008; 17(19-11):1199-209、非特許文献2:Hotta T et al., Kobe J Med Sci. 2007; 53:1-14、非特許文献3:Chung JH et al., Arch Dermatol Res. 1997;289:677-685、非特許文献4:Peyret-Lacombe A et al.,Cell Tissue Res.2007 Apr;328(1):85-95、非特許文献5:Lukandu OM et al., J Dent Res. 2010 Mar; 89(3):270-275、非特許文献6:Fukuda T et al., J Periodontol. 2000 Nov;71(11):1680-1686)。
また、歯周炎発生過程における上皮バリアーの機能の解明や、歯周病原性の各種サイトカイン、口臭物質・硫化水素による歯周炎発生原理の解明においては、イン・ビボ状態に近い、幹細胞を含んだ歯周病実験用の上皮モデルを作成することが求められる。
しかしながら、ヒト歯肉上皮における幹細胞の特異的マーカーが不明であり、上皮細胞と区別できず、ヒト歯肉上皮由来の幹細胞を分離培養したとの報告は未だなされていない。したがって、歯周再生医療や歯周炎発生原理の研究においては、歯肉上皮再生に用いうる幹細胞を取得することが求められているといえる。
Vriens AP et al., Cell Transplant. 2008; 17(19-11):1199-209 Hotta T et al., Kobe J Med Sci. 2007; 53:1-14 Chung JH et al., Arch Dermatol Res. 1997;289:677-685 Peyret-Lacombe A et al.,Cell Tissue Res.2007 Apr;328(1):85-95、 Lukandu OM et al., J Dent Res. 2010 Mar; 89(3):270-275 Fukuda T et al., J Periodontol. 2000 Nov;71(11):1680-1686
ヒト歯肉上皮細胞におけるα6β4 インテグリンを発現する細胞数の割合をフローサイトメトリー分析した図である。左グラフは、α6β4 ネガティブな細胞数を示し、右グラフは、α6β4 ポジティブな細胞数を示す。グラフ中の数値は、細胞数(平均 ± 標準偏差)である。 ヒト歯肉上皮細胞の磁気ソーティング処理により得られた細胞を免疫蛍光染色した結果を示す写真である。ここで、A、D、GおよびJはα6β4 ポジティブCD71ネガティブ細胞(α6β4posCD71neg)の写真であり、B、E、HおよびKはα6β4 ポジティブCD71ポジティブ細胞(α6β4posCD71pos)の写真であり、C、F、IおよびLは、α6β4 ネガティブ細胞(α6β4neg)の写真である。また、A、BおよびCは、各細胞を抗p63抗体で免疫染色した結果を示し、D、EおよびFは、各細胞を抗サイトケラチン19抗体で免疫染色した結果を示し、G、HおよびIは、各細胞を抗サイトケラチン10抗体で免疫染色した結果を示し、J、KおよびLは、各細胞を抗インボルクリン抗体で免疫染色した結果を示す。 ヒト歯肉上皮細胞の磁気ソーティング処理により得られた細胞(α6β4posCD71negおよびα6β4posCD71pos)の細胞サイクル分析の結果を示すグラフである。 図4Aは、ヒト歯肉上皮細胞の磁気ソーティング処理により得られた細胞(α6β4posCD71neg、α6β4posCD71pos、およびα6β4 neg)が形成したコロニーの写真である。図4Bは、α6β4posCD71neg、α6β4posCD71pos、およびα6β4 negの形成したコロニー数を示すグラフである。 図5Aは、ヒト歯肉上皮細胞の磁気ソーティング処理により得られた細胞(α6β4posCD71neg、α6β4posCD71pos、およびα6β4 neg)の細胞サイズを示すグラフである。図5Bは、α6β4posCD71neg、α6β4posCD71pos、およびα6β4 negに関し、細胞サイズと、コロニー形成能力との関係を示したグラフである。 α6β4posCD71neg細胞を分化させて得られた人工歯肉上皮組織の写真である。 免疫染色した人工歯肉上皮組織の写真である。図7Aは、人工歯肉上皮組織を、抗インボルクリン抗体で免疫染色した結果を示す。図7Bは、人工歯肉上皮組織を、抗サイトケラチン19抗体で免疫染色した結果を示す。
本発明者らは、今般、歯肉上皮に存在する幹細胞に特異的なマーカーの発現パターンを見出し、このマーカーを指標として、歯肉上皮由来の新規な幹細胞を取得した。本発明は、かかる知見に基づくものである。
したがって、本発明は、歯肉上皮再生に有用な新規幹細胞およびその製造方法を提供することをその目的とする。
そして、本発明によれば、歯肉上皮から単離された非胚性組織から得られ、イン・ビトロで自己再生し、分化することができる幹細胞が提供される。
また、本発明の別の態様によれば、歯肉上皮から単離された非胚性組織から、α6β4インテグリンを発現し、CD71を発現しない幹細胞を選択すること
を含んでなる、幹細胞の製造方法が提供される。
本発明によれば、歯肉上皮再生に有用な幹細胞を効率的に取得することができる。
幹細胞
本発明の幹細胞は、歯肉上皮組織由来の幹細胞であって、α6β4インテグリンを発現し、CD71を発現しないことを一つ特徴としている。ヒト歯肉上皮由来の幹細胞が、α6β4インテグリンを発現し、CD71を発現しないというマーカー発現パターンを示すことは、当業者にとって意外な事実である。
また、本発明の幹細胞は、p63およびサイトケラチン19を発現し、サイトケラチン10およびインボルクリンを発現しない。
上記マーカーの発現はいずれも、例えば、後述する例3の免疫蛍光染色法に従って検出することができる。
また、本発明の幹細胞は、歯肉上皮に分化することができる。かかる本発明の幹細胞は、歯肉上皮の再生治療において有利に利用することができる。
また、本発明の幹細胞は、好ましくはヒト細胞である。
製造方法
また、本発明の幹細胞は、歯肉上皮から単離された非胚性組織から、α6β4インテグリンを発現し、CD71を発現しない細胞を選択することにより製造することができる。
本発明の製造方法において、上記非胚性組織は、被検体の歯肉からバイオプシー等により取得することができる。上記非胚性組織は、好ましくは歯肉上皮および結合組織を含んでなる。
また、本発明の製造方法における幹細胞の選択は、上記幹細胞を取得しうる限り特に限定されないが、好ましくはα6β4インテグリンに対する抗体およびCD71に対する抗体を用いて行われる。
一つの態様によれば、上記選択工程は、前記非胚性組織と、α6β4インテグリンに対する抗体とを反応させ、α6β4インテグリンに対する抗体に結合した細胞を選択し、α6β4インテグリンに対する抗体に結合した細胞と、CD71に対する抗体とを反応させ、CD71に対する抗体に結合しない幹細胞を選択することを含んでなる。
また、上記選択工程において用いられる方法としては、好ましくはフローサイトメトリー法または高グラジエント磁気選択であり、より好ましくは高グラジエント磁気選択である。
フローサイトメトリー法を用いる場合には、α6β4インテグリンに対する抗体およびCD71に対する抗体は、蛍光色素に結合されてなるものが好適に使用される。
磁気選択を用いる場合には、α6β4インテグリンに対する抗体およびCD71に対する抗体は、磁気ビーズに結合されてなるものが好適に使用される。高グラジエント磁気選択は、細胞死を起こさず、かつ少数の細胞母集団から効率的に細胞を取得する上で特に有利である。
高グラジエント磁気選択は、例えば、MACS(商標)Separator(Mil-tenyi BIotec Inc., Auburn, CA)等の公知の装置を用いて行うことができる。
また、高グラジエント磁気選択の具体的な手法は、例えば、Characterization and isolation of stem cell-enriched human hair follicle bulge cells. Ohyama M, Terunuma A, Tock CL, Radonovich MF, Pise-Masison CA, Hopping SB, Brady JN, Udey MC, Vogel JC. J Clin Invest.2006;116:249-60に記載されており、この引用文献の全開示内容は、引用することにより本明細書の一部とされる。
用途
本発明の幹細胞は、歯肉上皮細胞に効率的に分化しうるものであり、歯肉再生医療において有利に利用できる。したがって、本発明の別の態様によれば、上記幹細胞を含んでなる医薬組成物が提供される。また、本発明の別の態様によれば、医薬組成物の製造における、上記幹細胞の使用が提供される。また、本発明の好ましい態様によれば、上記医薬組成物は、歯肉上皮治療に用いられる。
また、本発明の医薬組成物は、本発明の幹細胞をそのまま用いてもよく、本発明の幹細胞に、薬学上許容可能な担体を適宜添加して用いてもよい。また、本発明の幹細胞は、上皮細胞や結合組織、増殖因子(例えば、血小板由来増殖因子、形質転換増殖因子等)等とともに、あるいは、乳酸・グリコール共重合体(PLGA)の公知の足場(scaffold)材料とともに、移植材料とすることもできる。
したがって、本発明の別の好ましい態様によれば、上記幹細胞を含んでなる、歯肉上皮治療用移植材料が提供される。また、本発明の別の好ましい態様によれば、歯肉上皮治療用移植材料の製造における、上記幹細胞の使用が提供される。
また、本発明の別の態様によれば、哺乳動物における歯肉上皮を治療する方法であって、上記幹細胞の有効量を、哺乳動物に投与することを含んでなる方法が提供される。
本発明の幹細胞の有効量は、特に限定されず、対象となる哺乳動物の種類、年齢、性別、状態等に応じて医師により適宜決定される。
本発明の幹細胞の投与方法は特に限定されず、たとえば、歯肉上皮を単離する際、同時に採取できる線維細胞から結合組織を形成し、その上に、本発明の幹細胞を播種し、培養して上皮に分化させ、人工歯肉シートとして哺乳動物の歯肉に適用する手法等が挙げられる。幹細胞の培養は、例えば、EpiLife(商標)mediumおよびEpiLife(商標)Defined Growth Supplement(Cascade Biologics, Portland, USA)等の公知の細胞培養用製品を用いて行うことができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
以下の実験は、日本歯科大学研究倫理委員会の審理および承認を得て行われた。
また、フルオレセインイソシアネート(FITC)に結合した、α6 β4 インテグリンに対するマウスモノクローナル抗体 [450-30A] (Abcam(商標)、東京、日本) は、10 μl/105 細胞個の濃度でフローサイトメトリーに用い、かつ、1: 200 の希釈濃度にて免疫蛍光染色に用いた。
また、免疫蛍光染色に用いるマウス一次抗体のうち、p63抗体は抗 p63マウスモノクローナル抗体 (Santa Cruz Biotechnology, Inc. Santa Cruz, CA, USA)、抗サイトケラチン19抗体は抗サイトケラチン19マウスモノクローナル抗体 (Abcam(商標), 東京, 日本)、抗サイトケラチン10抗体は抗サイトケラチン10マウスモノクローナル抗体( Acris GmbH, Hertford, ドイツ)、抗インボルクリン抗体は抗インボルクリンマウスモノクローナル抗体 (Sigma-Aldrich(商標),ドイツ)を用い、これら抗体はいずれも、免疫蛍光染色において1: 200の希釈濃度にて用いた。マウス一次抗体を検出するための二次抗体としては、Alexa Fluor(商標) 568-結合ロバ抗マウスIgG(Invitrogen(商標), Eugene, Oregon, USA)を用いた。
また、核染色にはSYBR Green 1 (Trevigen)は用いた。
また、磁気ソーティングにおけるα6β4を指標とする分離工程では、マウス抗α6β4抗体に対する二次抗体として、ヤギ抗マウスIgG マイクロビーズ(Miltenyi Biotec Inc., CA, USA)を用いた。また、磁気ソーティングにおけるCD71を指標とする分離工程では、マイクロビーズに結合した抗ヒトCD71モノクローナル抗体(isotype mouse IgG2a) (Miltenyi Biotec Inc., CA, USA)を20 μl/105 細胞個の濃度で用いた。
例1:歯肉上皮におけるα 6 β 4 ポジティブ細胞の量の確認
上皮細胞の単離および培養
口腔粘膜組織を、抜歯した患者から採取し、採取後2時間以内に以下の処理を行った。上皮細胞におけるマーカー発現に酵素処理が影響を及ぼすことを防止するため、以下の確立された手法を用いた。まず、採取した口腔粘膜組織はPBSで洗浄して小片にし、この小片を用いて、4mg/mL ジスパーゼ II (Sigma, St. Louis, MO, USA)および 3mg/mL コラゲナーゼ (Sigma, St. Louis, MO, USA) を用いた細胞分離処理を4℃、24時間実施した。処理後、上皮細胞を含有するシートを、結合組織から分離した。生存する上皮細胞を得るため、上皮細胞を含有するシートは、37℃で30分間、0.05% トリプシンで処理した。得られた上皮由来細胞は、1.2mM カルシウム、EpiLife(商標) Defined Growth Supplements (EDGS) (Cascade Biologics)、0.250 μg/mL フンギゾンおよび0.250mg/mL カナマイシンで補足された EpiLife(商標)メディウム (Cascade Biologics, Portland, OR)で懸濁した。得られた上皮細胞は、ヒトコラーゲンタイプ IV (20 μg/mL) (Sigma, St. Louis, MO, USA)でプレコートされた直径35 mm皿で、5%CO、36℃にて培養した。
フローサイトメトリー
上皮細胞は0.025% トリプシン溶液でトリプシン処理した後、適切な一次抗体で, 1時間室温にて標識し、さらに、Alexa Fluor(商標) 568-結合二次抗体で標識した。サンプルは、抗体標識毎にPBSで3回洗浄した。非標識細胞は、ネガティブコントロールとして用いた。それぞれの実験において、2,000個の細胞をGuava EasyCyte フローサイトメトリー (Guava Technologies, USA)で分析した。データ取得およびその処理は、Guava CytoSoft ソフトウェアを用いた。
フローサイトメトリー分析の結果は、図1に示される通りであった(独立実験5回試行、平均 ± SD)。α6β4ポジティブ細胞は、全体の8.1 ± 0.3%であることが確認された。
例2:磁気ソーティング
上記培養した細胞は、FITCに結合した、α6 β4 インテグリンに対するマウスモノクローナル抗体 [450-30A]でインキュベートした。過剰な抗体を除去した後、細胞は、ヤギ抗マウスIgG マイクロビーズでさらにインキュベートした。得られた細胞懸濁液は、MACS(商標)セパレーター (Miltenyi Biotec Inc., CA, USA)のマグネティックフィールドに設置されたカラムに担持させた。
カラムを通過した非標識細胞のフラクションは、α6β4 ネガティブ細胞フラクション(α6β4 neg)として、以下の実験に用いた。
また、カラム内に保持された、磁気標識細胞のフラクションは、α6β4 ポジティブ細胞フラクション(α6β4 pos)として、以下の実験に用いた。
また、1回目の磁気ソーティングから2〜3日後、α6β4 ポジティブ細胞フラクション(α6β4 pos)に関して、抗ヒトCD71モノクローナル抗体の結合したマイクロビーズを用いた磁気ソーティングを行った。
磁気標識され、カラム内に保持されたCD71ポジティブ(CD71 pos)なフラクションはα6β4 ポジティブCD71ポジティブ(α6β4 pos CD71 pos)細胞フラクションとして、以下の実験に用いた。
また、カラムを通過したCD71 ネガティブ細(CD71 neg)なフラクションは、α6β4 ポジティブCD71ネガティブ(α6β4 pos CD71neg )フラクションとして以下の実験に用いた。
例3:免疫蛍光染色
磁気ソーティングにより分離された細胞フラクション、α6β4 pos CD71neg、α6β4 pos CD71 pos、およびα6β4negについてそれぞれ、幹細胞マーカーであるp63およびサイトケラチン19、および、角化細胞マーカーであるサイトケラチン10およびインボルクリンの発現を、以下の免疫染色により確認した。
すわなち、上皮組織を10%ホルマリン固定後パラフィン包埋し約4μmの切片を作製した。切片は、一次抗体(抗p63抗体、抗サイトケラチン19抗体、抗サイトケラチン10抗体または抗インボルクリン抗体)で標識し、次いで、Alexa Fluor(商標) 568-結合二次抗体で標識した。また、核はSYBR Green 1 (Trevigen)で染色した。
得られた蛍光抗体染色切片は、共焦点スキャニングレーザー蛍光顕微鏡(Leica TCS SP:チャンネル2)で観察した。
結果は、図2に示される通りであった。
図2A〜Lの写真において、楕円形の蛍光は細胞核に相当し、その周りの蛍光は各マーカーに相当する。
A〜Lに示される通り、いずれも細胞核の蛍光は確認された。
一方、各マーカーの蛍光に関し、α6β4 pos CD71neg細胞では、AおよびDに示される通り、幹細胞マーカー(p63およびサイトケラチン19)の蛍光が確認され、GおよびJに示される通り、角化細胞マーカー(サイトケラチン10およびインボルクリン)の蛍光は確認されなかった。
また、α6β4 pos CD71pos細胞では、EおよびFに示される通り、サイトケラチン19およびサイトケラチン10の蛍光が確認され、Bに示される通り、p63は確認されなかった。
また、α6β4 neg細胞では、IおよびLに示される通り、角化細胞マーカー(サイトケラチン10およびインボルクリン)の蛍光が確認され、CおよびFに示される通り、幹細胞マーカー(p63およびサイトケラチン19)の蛍光が確認されなかった。
例4:細胞サイクル分析
磁気ソーティングにより得られた、α6β4 pos CD71neg 細胞およびα6β4 pos CD71pos細胞を、 200 μlのGuava(商標)細胞サイクル試薬(核DNAを染色し、細胞サイクルの異なるステージを区別するためのヨウ化プロピジウムを含んでいる)で10分間インキュベートし、 Guava EasyCyte フローサイトメトリーを用いて分析した。データ取得およびその処理は、Guava CytoSoft ソフトウェアを用いた。
結果は、図3に示される通りであった(独立実験5回試行、平均 ± SD)。
α6β4 pos CD71neg細胞には、α6β4 pos CD71pos細胞よりも、静止細胞(G0/G1 フェーズ)が多く含まれていた(65.9 ± 1.1 vs. 51.8 ± 0.6、p<0.01; ANOVA テスト)。また、α6β4 pos CD71pos細胞には、α6β4 pos CD71neg細胞フラクションよりも、活動周期細胞が多く含まれていた(S フェーズ: 24.4 ± 0.5 vs. 16.16 ± 0.2、 p<0.01 ANOVA テスト; G2/Mフェーズ: 20 ± 1.4 vs. 10.18 ± 0.5、p<0.01 ANOVA テスト)。
この結果から、α6β4 pos CD71neg細胞は、幹細胞に特徴的な細胞サイクルを示すことが確認された。
例5:コロニー形成効率(Colony-forming efficiency ;CFE)分析
磁気分離された5000個の細胞(α6β4 pos CD71neg、α6β4 pos CD71pos およびα6β4 neg 細胞フラクション) をヒトタイプIV コラーゲン (20 μg/mL) (Sigma, St. Louis, MO, USA)で予めコートされた6ウェルプレート ( Costar, Corning, USA)に播いた。次に、細胞は、10日間、EDGSと共に EpiLife(商標) で培養し、4%パラホルムアルデヒドで固定化し、2% クリスタルバイオレットで染色した。20 個以上のコロニーは、それぞれ独立にCell Analyst(商標) (AssaySoft, Inc., Fountain Valley, CA, USA)でカウントした。アッセイは、2週間で計5回行った。
結果は、図4Aおよび図4Bに示される通りであった(独立実験5回試行、平均 ± SD)。
図4Aの写真に示される通り、増殖コロニーは、α6β4 pos CD71 posおよびα6β4neg細胞よりも、α6β4 pos CD71neg細胞において多く観察された。
また、図4Bに示される通り、α6β4 pos CD71neg細胞のコロニー数は、α6β4 pos CD71 pos細胞のコロニー数よりも有意に多かった(126.2 ± 21.7 vs. 32.8 ± 4.5 、p<0.01、ANOVA テスト) 。また、α6β4 pos CD71neg細胞のコロニー数は、α6β4neg細胞のコロニー数よりも有意に多かった(126.2 ± 21.7 vs. 12.4 ± 2.1、p<0.01、ANOVA テスト)。
この結果から、α6β4 pos CD71neg細胞は、他の細胞と比較して高い、幹細胞に特徴的なコロニー形成能を示すことが確認された。
例6:細胞サイズ分析
光学顕微鏡を用いて、α6β4 pos CD71neg、α6β4 pos CD71pos およびα6β4 neg 細胞フラクションの写真を撮影し、イメージ画像をCell Analyst(商標)(AssaySoft, Inc., Fountain Valley, CA, USA)を用いて分析した。このアッセイは5回行い、それぞれの回において、50個の細胞を独立してカウントした。
結果は、図5Aに示される通りであった。α6β4 pos CD71neg 細胞の平均細胞サイズは780.7 ± 141.5 (px)であり、α6β4 pos CD71pos細胞の平均細胞サイズは1422.9 ± 264.6 (px)であり、α6β4 neg細胞の平均細胞サイズは3844.4 ± 220.1 (px)であった(p<0.01、 ANOVA テスト)。α6β4 pos CD71neg 細胞のサイズは、α6β4 pos CD71pos細胞およびα6β4 neg細胞と比較して、有意に小さかった。
この結果から、α6β4 pos CD71neg細胞は、他の細胞と比較して小さい、幹細胞に特徴的な細胞サイズを示すことが確認された。
また、細胞サイズと、コロニー形成能力との関係は、図5Bに示される通りであった。また、コロニー形成能力が高くなる程、細胞サイズが小さくなる傾向が観察された。
この結果から、α6β4 pos CD71neg細胞は、幹細胞に特徴的な細胞サイズとコロニー形性能とを併せて有することが確認された。
例7:α6β4 pos CD71 neg 細胞を用いた上皮組織の作製
精製コラーゲン溶液を含むトランスウェルシステム(Transwel(商標) Permeable supports, Costar Life Sciences, NY, USA)に、5X104 /ウェルのヒト歯肉線維芽細胞を播種し、DMEM中、10% FBSにて7日間培養してゲル収縮させた。次に、5 X 104/ウェルのα6β4 pos CD71neg 細胞をコラーゲンゲル上に播種し、EDGS を補足したEpiLife(商標)中で4日間インキュベートし、その10日後に気−液界面の存在を確認した。得られたサンプルに対してヘマトキシリン・エオシン(HE)染色を行った。
結果は、図6に示される通りであった。線維芽細胞により形成された結合組織上に、歯肉上皮組織が確認された。
例8:α6β4 pos CD71 neg 細胞から分化した上皮組織におけるマーカーの確認
例7で得られた歯肉上皮組織における、角化細胞マーカー(インボルクリン)および幹細胞マーカー(サイトケラチン19)の発現を、抗インボルクリン抗体および抗サイトケラチン19抗体を用い、例3と同様の免疫蛍光染色方法により確認した。なお、角化細胞マーカー(インボルクリン)の検出には、共焦点スキャニングレーザー蛍光顕微鏡(Leica TCS SP)のチャンネル1を用い、幹細胞マーカー(サイトケラチン19)の検出には、チャンネル2を用いた。
角化細胞マーカー(インボルクリン)の発現に関する結果は、図7Aに示される通りであった。図7Aの上皮組織の上部において、角化細胞マーカー(インボルクリン)の蛍光が確認された。この写真から、上皮組織の上部では、α6β4 pos CD71neg 細胞は歯肉上皮角化細胞に分化したことが確認された。
幹細胞マーカー(サイトケラチン19)の発現に関する結果は、図7Bに示される通りであった。図7Bの上皮組織の基底部において、幹細胞マーカー(サイトケラチン19)の蛍光が確認された。この写真から、α6β4 pos CD71neg 細胞から分化した上皮組織の基底細胞層は、ヒト歯肉と同様に幹細胞を含んでいることが確認された。

Claims (14)

  1. 歯肉上皮から単離された非胚性組織から得られ、イン・ビトロで自己再生し、分化することができる、幹細胞。
  2. α6β4インテグリンを発現し、CD71を発現しない、請求項1に記載の幹細胞。
  3. 歯肉上皮に分化することができる、請求項1に記載の幹細胞。
  4. ヒト細胞である、請求項1に記載の幹細胞。
  5. p63およびサイトケラチン19を発現し、サイトケラチン10およびインボルクリンを発現しない、請求項1に記載の幹細胞。
  6. 請求項1に記載の幹細胞を含んでなる、医薬組成物。
  7. 歯肉上皮治療に用いられる、請求項6に記載の組成物。
  8. 請求項1に記載の幹細胞を含んでなる、歯肉上皮治療用移植材料。
  9. 歯肉上皮から単離された非胚性組織から、α6β4インテグリンを発現し、CD71を発現しない幹細胞を選択すること
    を含んでなる、幹細胞の製造方法。
  10. 前記選択が、α6β4インテグリンに対する抗体およびCD71に対する抗体を用いて行われる、請求項9に記載の方法。
  11. 前記選択が、前記非胚性組織と、α6β4インテグリンに対する抗体とを反応させ、α6β4インテグリンに対する抗体に結合した細胞を選択し、
    α6β4インテグリンに対する抗体に結合した細胞と、CD71に対する抗体とを反応させ、CD71に対する抗体に結合しない前記幹細胞を選択すること
    を含んでなる、請求項10に記載の方法。
  12. α6β4インテグリンに対する抗体およびCD71に対する抗体が、蛍光色素または磁気ビーズに結合されてなる、請求項10に記載の方法。
  13. 前記選択工程が、フローサイトメトリーまたは高グラジエント磁気選択を用いて行われる、請求項9に記載の方法。
  14. 請求項9に記載の方法により得られる、幹細胞。
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