JP2011204460A - 非水電解液二次電池用正極板、非水電解液二次電池用正極板の製造方法、および非水電解液二次電池 - Google Patents
非水電解液二次電池用正極板、非水電解液二次電池用正極板の製造方法、および非水電解液二次電池 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】樹脂製結着材の存在に依らずに構成される電極活物質層を備える出入力特性の高い非水電解液二次電池用電極板を提供し、また樹脂製結着材を用いずとも、集電体表面に良好に活物質が固着し、剥離しがたい電極活物質層を備える集電体を製造する方法を提供し、これによって出入力特性の高い非水電解液二次電池の提供を実現する。
【解決手段】樹脂製結着材を用いずにリチウムとニッケルを金属元素として含む活物質同士を接合させることにより該活物質を集電体表面に固着させてなる電極活物質層を構成する。
【選択図】なし
【解決手段】樹脂製結着材を用いずにリチウムとニッケルを金属元素として含む活物質同士を接合させることにより該活物質を集電体表面に固着させてなる電極活物質層を構成する。
【選択図】なし
Description
本発明は、リチウムイオン二次電池などの非水電解液二次電池に用いられる正極板、および上記正極板の製造方法並びに非水電解液二次電池に関するものである。
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池は、高エネルギー密度、高電圧を有し、また充放電時におけるメモリ効果(完全に放電させる前に電池の充電を行なうと次第に電池容量が減少していく現象)が無いことから、携帯機器、及び大型機器など様々な分野で用いられている。また近年、電気自動車、ハイブリッド自動車そしてパワーツールなどの高出入力特性が必要とされる分野における二次電池の使用が注目されている。
上記非水電解液二次電池は、正極板、負極板、セパレータ、及び有機電解液から構成される。そして上記正極板及び負極板としては、金属箔などの集電体表面に、電極活物質層形成用塗工組成物を塗布して形成された電極活物質層を備えるものが一般に用いられている。
上記電極活物質層形成用塗工組成物は、リチウムイオン挿入脱離可能な活物質、樹脂製結着材、及び導電材(但し活物質が導電効果も発揮する場合には、導電材は省略される場合がある)、あるいはさらに、必要に応じてその他の材料を用い、有機溶媒中で混練及び/又は分散させて、スラリー状に調製される。そして電極活物質層形成用塗工組成物を集電体表面に塗布して塗膜を形成し、次いで乾燥し、プレスすることにより電極活物質層を備える電極板を製造する方法が一般的である(例えば特許文献1段落[0019]乃至[0026]、特許文献2[請求項1]、段落[0051]乃至[0055])。
このとき、電極活物質層形成用塗工組成物に含有される活物質は、該溶液中に分散する粒子状の化合物であって、集電体表面に塗布されただけでは該集電体表面に固着され難く、樹脂製結着材を含まない電極活物質層形成用塗工組成物を集電体に塗布して塗膜を形成し乾燥して膜を形成しても、該膜は集電体から容易に剥離してしまう。すなわち、樹脂製結着材を介して電極活物質が結着するとともに集電体表面に固着されて、電極活物質層が形成される。したがって樹脂製結着材は実質的には必須の成分であった。
また電極活物質層における各活物質と集電体との間における電子導電性を良好に確保し、電極活物質層自体の体積抵抗率を下げるために上記導電材が用いられている。
上述のとおり、近年、特に電気自動車、ハイブリッド自動車そしてパワーツールなどの高出入力特性が必要とされる分野に向けて大容量の二次電池の開発が進められている。また携帯電話の比較的小型の装置に用いられる二次電池であっても、装置が多機能化される傾向にあるために、出入力特性の向上が期待されている。これに対し、二次電池において出入力特性の向上を実現するためには、電池のインピーダンスを下げる必要がある。インピーダンスが高い電池では、高速充電時にその容量を充分に生かすことができないなどの問題があるからである。
二次電池のインピーダンスを下げるには、電極板のインピーダンスを下げることが効果的であり、これまでにも電極板に形成される電極活物質層を薄膜化し、電極面積を大きくする方法が知られている。また、リチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液は、一般的に水系電解液に比べて抵抗が高いことから、開発当初から鉛蓄電池などの他の電池に比べて、薄く広い面積の電極を使用し、かつ正極と負極との極板間距離を短くする形態が開発されている。
しかしながら、電極活物質層における活物質以外の成分の存在も勘案すると、層の厚みを薄くするにも限界があり、実質的には電極活物質層の厚みの下限は数十μm程度までであった。
本発明者らは、電極活物質層の薄膜化を物理的に困難にしている要因の1つとして、電極活物質層中における樹脂製結着材の存在に着目した。上述のとおり、これまで樹脂製結着材は、実質的に電極活物質層の必須成分として用いられていたが、樹脂製結着材の存在により電極活物質層の嵩が増し、物理的に電極活物質層の厚みが増加する結果となっていた。またさらに本発明者らは、活物質間に樹脂製結着材が存在することにより、リチウムイオン及び電子の移動距離が長くなってしまうという問題、および電極活物質層における電解液の浸透性が低くなり、且つ該電解液と活物質との接触面積が小さくなってしまうという問題があることを見出した。そしてこれらの問題を生じさせる樹脂製結着材が、電極板の高出入力化に対してマイナスの要因の1つとなっていることが推察された。
本発明は上記の実状に鑑み、特に電極板のうち正極板について成し遂げられたものであり、樹脂製結着材の存在に依らずに構成される電極活物質層を備える出入力特性の高い非水電解液二次電池用正極板を提供し、また樹脂製結着材を用いずとも、集電体表面に良好に活物質が固着し、剥離しがたい電極活物質層を集電体面上に備える非水電解液二次電池用正極板を製造する方法を提供し、これによって出入力特性の高い非水電解液二次電池の提供を実現することを目的とする。
本発明者らは、樹脂製結着材の存在に依らず、活物質が互いに直接に接合することにより集電体表面に固着されて構成される電極活物質層であれば、さらなる薄膜化が可能であって、且つ、非常に高い出入力特性を示すことが可能な非水電解液二次電池用正極板を実現できることを見出し、非水電解液二次電池用正極板及びこれを用いた非水電解液二次電池である本発明を完成させた。
また本発明者らは、樹脂製結着材を用いずに活物質同士を接合することにより該活物質を集電体表面に固着させる手段の1つとして、リチウム元素含有化合物とニッケル元素含有化合物とが溶解される溶液を集電体表面に塗布して加熱することによって、該集電体表面上でリチウムイオン挿入脱離反応を示すリチウムニッケル系複合化合物を活物質として生成することによれば、生成されたリチウムニッケル系複合化合物が互いに少なくとも部分的且つ直接に接合し集電体表面に固着され、剥離し難い塗膜を形成することができることを見出し、非水電解液二次電池用正極板の製造方法の発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
(1)集電体と、該集電体の表面の少なくとも一部の上に活物質から構成される電極活物質層とを備える非水電解液二次電池用正極板であって、
上記電極活物質層は、少なくともリチウムおよびニッケルを金属元素として含む活物質から構成されており、上記活物質同士が部分的に接合して該活物質が連続的に存在する構造を有し、電解液が浸透可能な空隙を有する多孔質の層であり、
電極活物質層に含まれる活物質の少なくとも一部が集電体に接合している、ことを特徴とする非水電解液二次電池用正極板、
(2)上記電極活物質層を構成する活物質が、リチウムニッケル系複合酸化物、またはリチウムニッケル系複合リン酸化合物であることを特徴とする、上記(1)に記載の非水電解液二次電池用正極板、
(3)上記電極活物質層は、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)を含む活物質から構成されることを特徴とする、上記(1)に記載の非水電解液二次電池用正極板、
(4)任意に選択された活物質粒子20点のそれぞれの粒子径を測定し、粒子径の小さい順番に選択された5点についての算術平均値を活物質の平均最小粒径とし、粒子径の大きい順番に選択された5点についての算術平均値を活物質の平均最大粒径とした場合に、
上記活物質は、平均最小粒径が7nm以上60nm未満であり、且つ、平均最大粒径が60nm以上500nm未満であることを特徴とする、上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極板、
(5) 上記電極活物質層は、JIS−K5400のクロスカット密着試験方法により測定されたセロハンテープを貼り付けられた電極活物質層の総貼着面積(S)と転写面積(Sa)に基づきSa/S×100にて算出された転写率(%)が1%以下である、ことを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極板、
(6)上記電極活物質層の膜厚みが、300nm以上10μm以下であることを特徴とする、上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極板、
(7)1Cの放電レートで放電した際の放電容量維持率を100%としたときに、50C以上の放電レートにおいて放電容量維持率が50%以上であることを特徴とする、上記(1)から(5)のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極板、
(8)リチウムとニッケルとを金属元素として含む電極活物質層形成溶液を調製し、
上記電極活物質層形成溶液を集電体表面の少なくとも一部上に塗布して塗膜を形成し、
次いで上記塗膜が形成された集電体に対して熱源を上記塗膜面側に設置した状態で200℃以上の温度で加熱する処理からなる加熱処理を行って該集電体表面上にリチウムイオン挿入脱離反応を示すリチウムニッケル系複合酸化物を生成させることによって電極活物質層を形成する、ことを特徴とする非水電解液二次電池用正極板の製造方法、
(9)リチウムとニッケルとを金属元素として含むとともにリン元素を含む電極活物質層形成溶液を調製し、
上記電極活物質層形成溶液を集電体表面の少なくとも一部に塗布して塗膜を形成し、
次いで上記塗膜が形成された集電体に対して熱源を上記塗膜面側に設置した状態で不活性ガスあるいは還元ガスの雰囲気下にて200℃以上の温度で加熱する処理からなる加熱処理を行って該集電体表面上にリチウムイオン挿入脱離反応を示すリチウムニッケル系複合リン酸化合物を生成させることによって電極活物質層を形成する、ことを特徴とする非水電解液二次電池用正極板の製造方法、
(10)加熱処理が、上記塗膜が形成された集電体に対して熱源を上記塗膜面側に設置して加熱した後、さらに、熱源を上記集電体の両面側に設置して引き続き加熱する処理であることを特徴とする、上記(8)または(9)に記載の非水電解液二次電池用正極板の製造方法、
(11)正極板と、負極板と、上記正極板と上記負極板との間に設けられるセパレータと、非水溶媒を含む電解液とを少なくとも備えた非水電解液二次電池であって、
上記正極板が、上記(1)から(7)のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極板であることを特徴とする非水電解液二次電池、を要旨とするものである。
(1)集電体と、該集電体の表面の少なくとも一部の上に活物質から構成される電極活物質層とを備える非水電解液二次電池用正極板であって、
上記電極活物質層は、少なくともリチウムおよびニッケルを金属元素として含む活物質から構成されており、上記活物質同士が部分的に接合して該活物質が連続的に存在する構造を有し、電解液が浸透可能な空隙を有する多孔質の層であり、
電極活物質層に含まれる活物質の少なくとも一部が集電体に接合している、ことを特徴とする非水電解液二次電池用正極板、
(2)上記電極活物質層を構成する活物質が、リチウムニッケル系複合酸化物、またはリチウムニッケル系複合リン酸化合物であることを特徴とする、上記(1)に記載の非水電解液二次電池用正極板、
(3)上記電極活物質層は、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)を含む活物質から構成されることを特徴とする、上記(1)に記載の非水電解液二次電池用正極板、
(4)任意に選択された活物質粒子20点のそれぞれの粒子径を測定し、粒子径の小さい順番に選択された5点についての算術平均値を活物質の平均最小粒径とし、粒子径の大きい順番に選択された5点についての算術平均値を活物質の平均最大粒径とした場合に、
上記活物質は、平均最小粒径が7nm以上60nm未満であり、且つ、平均最大粒径が60nm以上500nm未満であることを特徴とする、上記(1)から(3)のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極板、
(5) 上記電極活物質層は、JIS−K5400のクロスカット密着試験方法により測定されたセロハンテープを貼り付けられた電極活物質層の総貼着面積(S)と転写面積(Sa)に基づきSa/S×100にて算出された転写率(%)が1%以下である、ことを特徴とする上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極板、
(6)上記電極活物質層の膜厚みが、300nm以上10μm以下であることを特徴とする、上記(1)から(4)のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極板、
(7)1Cの放電レートで放電した際の放電容量維持率を100%としたときに、50C以上の放電レートにおいて放電容量維持率が50%以上であることを特徴とする、上記(1)から(5)のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極板、
(8)リチウムとニッケルとを金属元素として含む電極活物質層形成溶液を調製し、
上記電極活物質層形成溶液を集電体表面の少なくとも一部上に塗布して塗膜を形成し、
次いで上記塗膜が形成された集電体に対して熱源を上記塗膜面側に設置した状態で200℃以上の温度で加熱する処理からなる加熱処理を行って該集電体表面上にリチウムイオン挿入脱離反応を示すリチウムニッケル系複合酸化物を生成させることによって電極活物質層を形成する、ことを特徴とする非水電解液二次電池用正極板の製造方法、
(9)リチウムとニッケルとを金属元素として含むとともにリン元素を含む電極活物質層形成溶液を調製し、
上記電極活物質層形成溶液を集電体表面の少なくとも一部に塗布して塗膜を形成し、
次いで上記塗膜が形成された集電体に対して熱源を上記塗膜面側に設置した状態で不活性ガスあるいは還元ガスの雰囲気下にて200℃以上の温度で加熱する処理からなる加熱処理を行って該集電体表面上にリチウムイオン挿入脱離反応を示すリチウムニッケル系複合リン酸化合物を生成させることによって電極活物質層を形成する、ことを特徴とする非水電解液二次電池用正極板の製造方法、
(10)加熱処理が、上記塗膜が形成された集電体に対して熱源を上記塗膜面側に設置して加熱した後、さらに、熱源を上記集電体の両面側に設置して引き続き加熱する処理であることを特徴とする、上記(8)または(9)に記載の非水電解液二次電池用正極板の製造方法、
(11)正極板と、負極板と、上記正極板と上記負極板との間に設けられるセパレータと、非水溶媒を含む電解液とを少なくとも備えた非水電解液二次電池であって、
上記正極板が、上記(1)から(7)のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極板であることを特徴とする非水電解液二次電池、を要旨とするものである。
本発明の非水電解液二次電池用正極板は、非常に高い出入力特性を示すことができる。本発明の非水電解液二次電池用正極板の高出入力化を可能とした要因の少なくとも1つは、以下の通りと推察される。即ち、本発明の正極板における電極活物質層は、樹脂製結着材の存在に依らず、集電体表面に、少なくともリチウムおよびニッケルの金属元素を含む活物質が互いに接合することにより固着されている。そのため、樹脂製結着材を用いる従来の電極活物質層に比べてリチウムイオン及び電子の移動距離が短縮化され、出入力特性が向上するものと思われる。しかも、本発明の正極板は、従来の樹脂製結着材を用いた電極板と同様に、集電体に対する電極活物質層の膜密着性が良好であり、したがって該電極活物質層の膜形成性が良好である。
さらに、本発明における電極活物質層は、適度な空隙が存在することにより、電解液が良好に浸透し、且つ、リチウムイオンの挙動の弊害になりうる樹脂製結着材が存在しない。したがってリチウムイオンがスムーズに移動可能であり、その結果、高い出入力特性を示すことを可能とするものと思われる。また集電体と活物質間の電子の導電もスムーズである。
また、非水電解液二次電池用正極板の製造方法である本発明の製造方法は、従来のように活物質をあらかじめ電極活物質層形成用塗工組成物中に分散させ、これを集電体表面に塗布して乾燥させ、圧着させる方法とは異なり、少なくともリチウムおよびニッケルの金属元素を含む電極活物質層形成溶液を集電体表面に塗布して加熱する方法が採用される。この方法によれば、リチウムイオン挿入脱離反応を示す活物質であるリチウムニッケル系複合化合物は集電体表面で生成される。しかもこのとき活物質同士は少なくとも部分的且つ直接に、互いに接合して集電体に固着されるため、樹脂製結着材を使用することなく電極活物質層が形成される。
そして、上記本発明の非水電解液二次電池用正極板を用いて構成される非水電解液二次電池であれば、正極板の出入力特性の向上により、電池としての出入力特性の向上に寄与することになり、結果として出入力特性の向上した非水電解液二次電池が提供される。
[非水電解液二次電池用正極板]
本発明の非水電解液二次電池用正極板(以下、単に「本発明の正極板」という場合がある)は、集電体と、該集電体表面に活物質同士が少なくとも部分的且つ直接に接合することにより固着されて構成される電極活物質層を備える。以下に、本発明の非水電解液二次電池用正極板の形態について説明する。
本発明の非水電解液二次電池用正極板(以下、単に「本発明の正極板」という場合がある)は、集電体と、該集電体表面に活物質同士が少なくとも部分的且つ直接に接合することにより固着されて構成される電極活物質層を備える。以下に、本発明の非水電解液二次電池用正極板の形態について説明する。
(集電体)
本発明に用いられる集電体は、一般的に非水電解液二次電池用正極板の正極集電体として用いられるものであれば、特に限定されない。例えば、アルミニウム箔、あるいはニッケル箔などが好ましく用いられる。
本発明に用いられる集電体は、一般的に非水電解液二次電池用正極板の正極集電体として用いられるものであれば、特に限定されない。例えば、アルミニウム箔、あるいはニッケル箔などが好ましく用いられる。
上記集電体の厚みは、一般に非水電解液二次電池用正極板の集電体として使用可能な厚みであれば特に限定されないが、10〜100μmであることが好ましく、15〜50μmであることがより好ましい。
(電極活物質層)
本発明における電極活物質層は、集電体の表面の少なくとも一部の上に、粒子状の活物質からなる層が製膜されており、活物質同士が部分的且つ直接に接合することにより、該活物質が連続的に存在してなる層構造を形成しており、且つ、電解液が浸透可能な空隙を有する多孔質の層として形成される。また、電極活物質層に含まれる活物質の少なくとも一部が集電体に接合している。これらの様子は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、倍率1万倍から5万倍程度で確認することができる。すなわち本発明の電極活物質層を集電体面上に形成した非水電解液二次電池用正極板を集電体面に対して垂直方向に切断し、その切断面について走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率50,000倍程度で拡大観察した際の写真をみることで、集電体の表面上に、電極活物質層をなす粒子状の活物質からなる層が観察される。また、写真から電極活物質層に含まれる活物質の少なくとも一部が集電体に直接付着して接合している状態が観察される。
本発明における電極活物質層は、集電体の表面の少なくとも一部の上に、粒子状の活物質からなる層が製膜されており、活物質同士が部分的且つ直接に接合することにより、該活物質が連続的に存在してなる層構造を形成しており、且つ、電解液が浸透可能な空隙を有する多孔質の層として形成される。また、電極活物質層に含まれる活物質の少なくとも一部が集電体に接合している。これらの様子は、走査型電子顕微鏡(SEM)観察により、倍率1万倍から5万倍程度で確認することができる。すなわち本発明の電極活物質層を集電体面上に形成した非水電解液二次電池用正極板を集電体面に対して垂直方向に切断し、その切断面について走査型電子顕微鏡(SEM)により倍率50,000倍程度で拡大観察した際の写真をみることで、集電体の表面上に、電極活物質層をなす粒子状の活物質からなる層が観察される。また、写真から電極活物質層に含まれる活物質の少なくとも一部が集電体に直接付着して接合している状態が観察される。
電極活物質層に関し「電解液が浸透可能な空隙」とは、活物質同士が部分的且つ直接に接合することにより、その周囲に形成される空隙であって、電子顕微鏡において50,000倍の倍率で観察した際に、肉眼において観察される程度の空隙を意味する。
電極活物質層は、X線回折装置(XRD)を用いて分析することにより、含有されるリチウム遷移金属複合化合物の内容を分析することができる。
後述の実施例1を例として、電極活物質層を、X線回折装置(XRD)を用いて分析した結果を図1に示す。図1から、電極活物質層が、リチウムニッケル系複合化合物から構成されていることが確認された。
本発明における電極活物質層を構成する活物質は、リチウムイオン挿入脱離反応を示す金属化合物であって、少なくともリチウムとニッケルを金属元素として含むリチウムニッケル系複合化合物から構成される。リチウムニッケル系複合化合物は、リチウムとニッケルのみを金属元素として含む化合物のほか、本発明の効果を害しない程度にリチウムとニッケルとそのほかの金属(例えば、コバルト、鉄、マンガン、アルミニウムなど)を含む化合物であってもよい。
上記リチウムニッケル系複合化合物としては、リチウムニッケル系複合酸化物、またはリチウムニッケル系複合リン酸化合物を挙げることができる。
リチウムニッケル系複合酸化物としては、ニッケル酸リチウム(LiNix1O2(0.7≦x1≦1.2))のほか、ニッケル酸リチウムの結晶構造中のニッケル原子の一部を他の金属原子に置換したもの、例えば、ニッケル酸リチウムのニッケルをコバルトで置換したコバルト置換型酸化物(組成式:LiNix2Co1−x2O2(0.6≦x2≦1))、ニッケル酸リチウムのニッケルをアルミニウムで置換したアルミニウム置換型酸化物(組成式:LiNix3Al1−x3O2(0.6≦x3≦1)、を例示することができる。
リチウムニッケル系複合リン酸化合物としては、リン酸ニッケルリチウム(LiNiy1PO4(0.8≦y1≦1.2))のほか、リン酸ニッケルリチウムの結晶構造中のニッケル原子の一部を他の金属原子に置換したもの、例えば、リン酸ニッケルリチウムのニッケルをコバルトで置換したコバルト置換型リン酸化合物(組成式:LiNiy2Co1−y2PO4(0.6≦y2≦1))、を例示することができる。
活物質が、リチウムニッケル系複合リン酸化合物である場合、比較的低い温度で活物質を生成させることが可能であることから、オリビン型結晶構造を有するものであることが好ましい。
本発明において活物質というときは、リチウムイオン挿入脱離反応を示す化合物のことを意味する。電極活物質層を構成するリチウムニッケル系複合化合物がリチウムイオン挿入脱離反応を示すか否かの判断については、製造した正極板を用いて、後述する充放電レート特性評価を実施し、充放電反応を示す場合には、リチウムイオン挿入脱離反応を示すと判断することができる。
本発明における電極活物質層は、樹脂製結着材を介さず、活物質同士が接合し集電体表面に固着することにより製膜されるため、従来の電極活物質層の厚みに比べて非常に薄く形成することができる。より具体的には、本発明における電極活物質層は、300nm以上、10μm以下の膜厚に形成することが可能である。ただし、上記記載は、本発明の正極板における電極活物質層を10μmを上回る厚みで形成することを除外する趣旨ではない。さらに容量を増大させたい場合には、適宜、電極活物質層の厚みを決定することができる。尚、本発明における電極活物質層を10μmを上回る厚みで形成する場合には、導電材を電極活物質層形成溶液に添加することが望ましい。尚、上記電極活物質層の厚みは、マイクロメーターを用いて、電極活物質層の厚みを、任意の箇所で10点測定し、平均値を算出することによって測定される。
本発明の正極板では、上述のとおり、電極活物質層を薄膜化することが可能である。このように電極活物質層の膜厚が薄い場合には、電極活物質層中において、電極活物質粒子と集電体とを移動する電子の移動距離が短くなるので、電極板における電気抵抗を下げることができ、結果として出入力特性の向上に寄与することができるため望ましい。しかも本発明における電極活物質層では樹脂製結着材が存在しないことから、樹脂製結着材が使用されている従来の電極活物質層と比較して、電極活物質層の単位体積あたりの活物質の重量が増大している。したがって、電極活物質層を薄膜化した場合であっても、良好な電気容量を維持することが可能である。
また電極活物質層を構成する活物質の粒径は、電子顕微鏡観察の際に撮影された電子顕微鏡写真を用いて定められる。すなわち、上記電子顕微鏡観察により得られた電子顕微鏡写真により、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(株式会社マウンテック製、MAC VIEW)を用いて電極活物質層を構成する活物質粒子の粒径を求めることができる。活物質粒子の平均粒子径については、粒子20点について粒子径を測定しその算術平均値にて特定できる。このとき、20点の粒子は、任意に選択される。また、活物質粒子の平均最小粒径、平均最大粒系については、任意に選択された20点の粒子径の測定値に基づき、平均最小粒径として粒径の小さい順番に5点、平均最大粒径として粒径の大きい順番に5点、のそれぞれついて算術平均を求めることにより算出される。なお、活物質の粒径を算出する際に用いる電子顕微鏡写真には、5万倍の拡大写真を用いる。
本発明における電極活物質層を構成する活物質の粒子の大きさは、特に限定されるものではないが、従来の電極活物質層を構成する一般的な活物質の粒径よりも小さく形成することができる。正極板の高出入力化を図るためには、粒径が小さい方が好ましく、この観点から、活物質のサイズは、平均最小粒径が10nm以上60nm未満であり、平均最大粒径が60nm以上500nm未満であることが好ましい。尚、後述する本発明の非水電解液二次電池用正極板の製造方法によれば、容易に、上述に示される非常に小さい粒径で電極活物質層を構成することができる。上記最小平均粒径および上記最大平均粒径は、電子顕微鏡観察結果を画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(株式会社マウンテック製、MAC VIEW)を用いて粒子20点を測定し、平均最小粒径として粒径の小さい順番に5点選択し、また平均最大粒径として粒径の大きい順番に5点選択し、それぞれついて算術平均を求めることによってえられる。上記画像解析式粒度分布測定ソフトウェアでは、電子顕微鏡観察写真の画像に基づき測定対象となる粒子を認識し、認識された粒子の最大径を測定し、上記20点の粒子それぞれについて粒子の最大径の値が測定される。さらに、そのうち、値の最も大きいものから順に5つ選択してそれらの値を算術平均して平均最大粒径が特定され、値の最も小さいものから順に5つ選択してそれらの値を算術平均して平均最小粒径が特定される。具体的に、後述の実施例1の例では、電極活物質層を構成する粒子の粒径は、平均最小粒径が13nm、平均最大粒径が55nmであった。
上述のとおり電極活物質層を構成する活物質の粒径を従来に比べて縮小化可能な本発明によれば、電極活物質層における単位体積あたりの活物質の総表面積を、従来に比べて増大することができる。上記総表面積は、活物質と電解液との接触面積と理解されるため、総表面積の増大は、正極板の高出入力化が促進されることを意味し、好ましい。
本発明の正極板は、電極活物質層の密着性に優れる。電極活物質層の密着性は、次のようにセロハンテープ剥離試験を行うことにより示される。
セロハンテープ剥離試験は、JIS−K5400のクロスカット密着試験方法に従って行われる。すなわち、電極活物質層の表面上にセロハンテープ(ニチバン株式会社製、CT−15)を貼り付けて、次いで、セロハンテープをはがす。このとき、セロハンテープを貼り付けられた電極活物質層の総貼着面積(S)のうち転写されてしまった部分の面積(転写面積)(Sa)の割合((Sa/S)×100)(%)を算出する。この値(転写率)が、セロハンテープ側に電極活物質層がどの程度転写されてしまったかを示しており、転写率により、電極活物質層の密着性が評価される。本発明では、転写率が1%以下である正極板、すなわち電極活物質層の密着性に優れた正極板を得ることができる。
(その他の材料)
電極活物質層は、上述する活物質のみから構成することが可能であるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、さらなる添加剤が含有されていてもよい。たとえば本発明の電極活物質層には、適宜、導電材を含有させてもよい。一般的に、導電材を電極活物質層中に含有させることにより、電極活物質層における各電極活物質と集電体との電子導電性をより良好に確保し、電極活物質層自体の体積抵抗率を効率よく下げることができる。導電材を添加した場合であっても、電極活物質層の厚みを10μm以下にすることができる。また導電材を添加するとともに、活物質の量も増やすことによって、電極活物質層の厚みを、10μmを上回る厚みに形成してもよく、この場合には、本発明の正極板において容易に高容量化を図ることができる。
電極活物質層は、上述する活物質のみから構成することが可能であるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、さらなる添加剤が含有されていてもよい。たとえば本発明の電極活物質層には、適宜、導電材を含有させてもよい。一般的に、導電材を電極活物質層中に含有させることにより、電極活物質層における各電極活物質と集電体との電子導電性をより良好に確保し、電極活物質層自体の体積抵抗率を効率よく下げることができる。導電材を添加した場合であっても、電極活物質層の厚みを10μm以下にすることができる。また導電材を添加するとともに、活物質の量も増やすことによって、電極活物質層の厚みを、10μmを上回る厚みに形成してもよく、この場合には、本発明の正極板において容易に高容量化を図ることができる。
上記導電材としては、通常、非水電解液二次電池用正極板に用いられるものを使用することができ、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック等の炭素材料が例示される。導電材の平均粒径は20nm〜50nm程度であることが好ましい。上記平均粒子粒径は、活物質の粒径を測定する方法と同様に、電子顕微鏡による実測から求められる算術平均により求められる。また異なる導電材としては炭素繊維(VGCF)が公知である。上記炭素繊維は、長さ方向に非常に良好に電気を導くことができ、電気の流動性を向上させることができるもので、繊維長さは、1μmから20μm程度である。したがって、上述するアセチレンブラックなどの粒子状の導電材に加えて、炭素繊維も併せて用いることにより、導電材添加効果を向上させることができる。導電材を使用する場合には、特に空隙形成層における空隙が、電解液が浸透可能な程度に維持されることに留意する必要がある。
尚、本発明の電極活物質層は、樹脂製結着材を使用しないことにより、従来の電極活物質層に比べて、電子の導電性が向上している。したがって、本発明における電極活物質層では、従来よりも導電材の配合量を減らすことが可能であり、あるいは導電材を使用しない態様も可能である。このように導電材の配合量が少ないが、あるいは実施的に導電材が配合されない電極活物質層では、電極活物質層中における単位体積あたりの活物質の重量が増大する結果となる。
また別の任意の添加剤として、集電体と活物質との密着性をさらに向上させるために、活物質として機能しない金属酸化物を電極活物質層に含有させてもよい。上記添加剤としての金属酸化物は、特に限定されるものではないが、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化マンガン等を挙げることができる。
(電極の充放電レート特性評価方法)
本発明の正極板の出入力特性は、放電容量維持率(%)を求めることにより評価することができる。即ち、上記放電容量維持率は、放電レート特性を評価するものであり、放電レート特性が向上した正極板においては、一般的に、充電レート特性も同様に向上していると理解される。したがって、望ましい放電容量維持率が示される場合には、充放電レート特性が向上したと評価され、この結果、出入力特性が向上とした評価するものである。より具体的には、活物質の有する放電容量(mAh/g)の理論値を1時間で放電終了となるよう放電レート1Cを設定し、設定された1Cの放電レートにおいて実際に測定された放電容量(mAh/g)を放電容量維持率100%とする。そしてさらに放電レートを高くしていった場合の放電容量(mAh/g)を測定し、下記の数1の計算式より放電容量維持率(%)を求めることができる。
本発明の正極板の出入力特性は、放電容量維持率(%)を求めることにより評価することができる。即ち、上記放電容量維持率は、放電レート特性を評価するものであり、放電レート特性が向上した正極板においては、一般的に、充電レート特性も同様に向上していると理解される。したがって、望ましい放電容量維持率が示される場合には、充放電レート特性が向上したと評価され、この結果、出入力特性が向上とした評価するものである。より具体的には、活物質の有する放電容量(mAh/g)の理論値を1時間で放電終了となるよう放電レート1Cを設定し、設定された1Cの放電レートにおいて実際に測定された放電容量(mAh/g)を放電容量維持率100%とする。そしてさらに放電レートを高くしていった場合の放電容量(mAh/g)を測定し、下記の数1の計算式より放電容量維持率(%)を求めることができる。
本発明において、50%以上の放電容量維持率が50C以上の放電レートにおいて示されることが望ましい。さらに望ましくは、50%以上の放電容量維持率が100C以上の放電レートにおいて示されることが望ましい。ただし放電レートが2000C以上になると大電流に耐えうるシステムが必要となってしまうために望ましくない。
また別の観点から評価すれば、放電容量維持率が高い方が望ましく、放電レートが50Cである場合に、放電容量維持率が50%以上、あるいは80%以上、さらには100%の放電容量維持率が示されることが望ましい。
尚、上記放電容量は、三極式コインセルにより電極自体の放電容量を測定することにより求められる。
[非水電解液二次電池用正極板の製造方法]
次に、本発明の非水電解液二次電池用正極板の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ともいう)について説明する。本発明の製造方法は、活物質の前駆体となる化合物を溶媒に溶解することによって電極活物質層形成溶液を準備し、これを集電体表面の少なくとも一部上に塗布した後、加熱することによって、集電体表面においてリチウムニッケル系複合化合物である活物質を生成して電極活物質層を形成し、非水電解液二次電池用正極板を製造するものである。リチウムニッケル系複合化合物としては、具体的には、リチウムニッケル系複合酸化物またはリチウムニッケル系複合リン酸化合物を挙げることができる。いずれにおいても、生成された化合物が活物質として作用する必要があるため、リチウムイオン挿入脱離反応を示すものである。
次に、本発明の非水電解液二次電池用正極板の製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」ともいう)について説明する。本発明の製造方法は、活物質の前駆体となる化合物を溶媒に溶解することによって電極活物質層形成溶液を準備し、これを集電体表面の少なくとも一部上に塗布した後、加熱することによって、集電体表面においてリチウムニッケル系複合化合物である活物質を生成して電極活物質層を形成し、非水電解液二次電池用正極板を製造するものである。リチウムニッケル系複合化合物としては、具体的には、リチウムニッケル系複合酸化物またはリチウムニッケル系複合リン酸化合物を挙げることができる。いずれにおいても、生成された化合物が活物質として作用する必要があるため、リチウムイオン挿入脱離反応を示すものである。
本発明の製造方法の1つの特徴は、電極活物質層形成溶液に樹脂製結着材が実質的に添加されず、製造工程において、集電体表面上で活物質が生成される点にある。そしてこの際、生成される活物質の粒子同士が互いに部分的に直接に接合するとともに集電体表面に密着することを利用して、集電体表面に活物質が固着された膜を形成するのである。ここで、従来の製造方法に用いられる電極活物質層形成用塗工組成物には、活物質に加えて樹脂製結着材が配合されていたため、使用する活物質の粒径が小さくなると、電極活物質層形成用塗工組成物の粘度が増大し、塗布性が悪くなるという現象がみられ、電極活物質層の薄膜化の弊害となっていた。しかしながら、本発明の製造方法に用いられる電極活物質層形成溶液には、樹脂製結着材を配合する必要がないため、電極活物質層形成溶液の粘度が増大し、塗布性が低下する恐れがない。したがって、集電体への塗布量が設定し易く、電極活物質層を所望の厚みに形成することが可能である。したがって、電極活物質層の薄膜化が容易である。即ち、本発明において製造される正極板における電極活物質層の膜厚は、特に限定されないが、より薄い膜厚が望まれる場合には、300nm以上10μm以下の膜厚に形成することが可能である。
また本発明の製造方法の別の特徴は、上述のとおり集電体表面上で生成される活物質の粒径が非常に小さく生成される点にある。より具体的には、活物質を、平均最小粒径を10nm以上60nm未満とし、平均最大粒径を60nm以上500nm未満とする程度に生成することができる。活物質の粒径を小さくすることは、正極板の高出入力特性を向上させるためのアプローチとして有効である。活物質の粒径が小さくなることにより、電極活物質層中に含有される活物質の表面積の総量が増大し、また活物質において挿入脱離するリチウムイオンの、当該活物質内の移動距離を小さくすることができる。このため、リチウムイオンの挙動がよりスムーズになり、結果として出入力特性の向上を実現することができるからである。ところで、従来の正極板の製造では、樹脂製結着材および活物質粒子が配合されたスラリー状の電極活物質層形成用塗工組成物を使用しており、用いる活物質粒子の粒径が小さくなるにつれて電極活物質層形成用塗工組成物の粘度が増大する傾向にあった。当該傾向は、特に平均粒径が11μm以下、あるいはさらに小さい粒径の活物質粒子を使用した場合に顕著に観察された。したがって、使用し得る活物質粒子の粒径の大きさが実質的に制限されていたため、上述する電極活物質層の薄膜化あるいはリチウムイオンの挙動の好適化に対し、不利に働いていた。これに対し、本発明では、上記正極板で説明するとおり、最大平均粒径であっても、11μmよりはるかに小さく形成することができる。したがって、本発明に製造方法において製造される正極板では、電極活物質層における単位体積あたりの活物質の総表面積量を充分に大きくすることができ、出入力特性の向上が図られている。
また本発明の製造方法の別の特徴は、上述のとおり電極活物質層の優れた密着性の点にある。本願のように樹脂製結着材を必須の材料とせずに集電体上に活物質を生成させる場合、電極活物質層と集電体との密着性が不十分になりやすい。ところが、本発明の製造方法では、密着性に優れた電極活物質層を形成することができる。このことは、本発明に示す製造方法にて製造される正極板を使用した電池についてのサイクル寿命特性(電池の放充電の繰り返しに伴う容量の低下)の悪化を抑制させ、そのほかにも、正極板の製造効率、加工容易性を一層向上させる。
(活物質前駆体)
上記電極活物質層形成溶液は、活物質を構成する金属元素を含む溶液であり、すなわち少なくともリチウムとニッケルとを金属元素として含む溶液である。電極活物質層形成溶液は、集電体表面に生成される活物質を構成する金属元素を含有する金属元素含有化合物を活物質の前駆体として用い、これを溶媒に溶解させることによって調製することができる。上記金属元素含有化合物としては、リチウム元素含有化合物と、ニッケル元素含有化合物とが用いられる。
上記電極活物質層形成溶液は、活物質を構成する金属元素を含む溶液であり、すなわち少なくともリチウムとニッケルとを金属元素として含む溶液である。電極活物質層形成溶液は、集電体表面に生成される活物質を構成する金属元素を含有する金属元素含有化合物を活物質の前駆体として用い、これを溶媒に溶解させることによって調製することができる。上記金属元素含有化合物としては、リチウム元素含有化合物と、ニッケル元素含有化合物とが用いられる。
上記金属元素含有化合物としては、特定の金属元素を含む、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩、臭素酸塩等を挙げることができる。中でも、本発明においては、塩化物、硝酸塩、酢酸塩は汎用品として入手が容易なので、使用することが好ましい。とりわけ、硝酸塩は広範囲の種類の集電体に対して製膜性がよいので、好ましく使用される。
上記リチウム元素含有化合物としては、例えば、クエン酸リチウム四水和物、過塩素酸リチウム三水和物、酢酸リチウム二水和物、硝酸リチウム等が挙げられる。
ニッケル元素含有化合物としては、例えば、塩化ニッケル(II)六水和物、酢酸ニッケル(II)四水和物、過塩素酸ニッケル(II)六水和物、臭化ニッケル(II)三水和物、硝酸ニッケル(II)六水和物、ニッケル(II)アセチルアセトナート二水和物、及び硫酸ニッケル(II)六水和物等が挙げられる。
活物質として、リチウムニッケル系複合リン酸化合物を生成する場合には、上記電極活物質層形成溶液は、少なくともリチウムとニッケルを金属元素として含むとともにリン元素を含む溶液である。
電極活物質層形成溶液を調整するにあたり、リチウム元素含有化合物およびニッケル元素含有化合物といった金属元素含有化合物としてリン元素が含まれないものを用いる場合には、電極活物質層形成溶液中に、リチウム元素含有化合物と、ニッケル元素含有化合物のほか、さらにリン元素含有化合物を配合する必要がある。リン元素含有化合物は、少なくともリン元素を含む化合物である。したがってリン元素含有化合物は、リン元素以外の元素として揮発性元素を含むものであってもよい。ここに、揮発性元素は、所定温度以上加熱履歴を加えることで気化するような元素を示すものとし、水素、酸素、窒素などの非金属元素を好ましく挙げることができる。リン元素含有化合物は、リン酸系化合物、亜リン酸系化合物などをあげることができ、リン酸系化合物は、リン酸およびその塩を挙げることができ、亜リン酸系化合物は、亜リン酸およびその塩を挙げることができる。リン元素含有化合物は、例えばリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、亜リン酸ジイソプロピル、リン酸アンモニウム、亜リン酸アンモニウム、次亜リン酸アンモニウムなどを用いることができるが、これらに限定されない。
リチウムニッケル系複合リン酸化合物を生成する場合であって、電極活物質層形成溶液を調整するにあたり、リチウム元素含有化合物もしくはニッケル元素含有化合物にリン元素を含むものを用いる場合には、電極活物質層形成溶液中へのリン元素含有化合物の添加は任意である。
なお、ここにいうリン元素含有化合物には、リチウムニッケル系複合リン酸化合物を生成する場合に利用可能な金属元素含有化合物であってリン元素を含むものが除かれる。すなわち、リン元素含有化合物には、リン元素を含有するとともにリチウム元素もしくはニッケル元素を含有する化合物が除かれる。
金属元素含有化合物であってリン元素を含むものについては、例えば、リチウム元素含有化合物については、リン酸リチウムなど、ニッケル元素含有化合物については、リン酸ニッケル、次亜リン酸ニッケル(II)六水和物などを挙げることができる。
電極活物質層形成溶液中の主原料として用いるリチウム元素含有化合物、及びニッケル元素含有化合物の組み合わせ割合(Li:Ni=X:1)は、特に限定されないが、1≦X<2であることが好ましく、1≦X≦1.2であることが、より確実にリチウムイオン挿入脱離性を確保する点でより好ましい。
上記リチウム元素含有化合物と、それ以外の金属元素含有化合物とを含む溶液中の、リチウム元素及びそれ以外の金属元素の濃度の合計は、0.01〜5mol/L、特に0.1〜2mol/Lが好ましい。上記濃度を0.01mol/L以上とすることにより、集電体と該集電体表面で生成される活物質とを良好に密着性させることができ、活物質の固着が図られる。また、上記濃度を、5mol/L以下とすることにより、上記電極活物質層形成溶液を集電体表面へ良好に塗布できる程度の良好な粘度を維持することができ、均一な塗膜を形成することができる。
(その他の添加剤)
また上記電極活物質層形成溶液には、上述する金属元素含有化合物以外にも、導電材あるいは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、その他の添加剤を添加してもよい。上記導電材は、本発明の電極活物質層の説明において記載した内容と同様のものを用いることができる。
また上記電極活物質層形成溶液には、上述する金属元素含有化合物以外にも、導電材あるいは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、その他の添加剤を添加してもよい。上記導電材は、本発明の電極活物質層の説明において記載した内容と同様のものを用いることができる。
導電材を電極活物質層形成溶液に添加する場合には、集電体表面上において生成される活物質100重量部に対して、導電材の添加量を5重量部〜20重量部にすることが望ましい。尚、上述は、20重量を超えて導電材を添加することを除外する趣旨ではないが、本発明における電極活物質層は、20重量部以下の導電材の使用で充分に導電性を発揮させることができるという趣旨である。
(溶媒)
上記リチウム元素含有化合物及びその他の金属を含有する金属元素含有化合物を溶解するために用いられる溶媒としては、上記リチウム元素含有化合物を含む金属元素含有化合物を溶解することができるものであれば、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール等の総炭素数が5以下の低級アルコール、アセチルアセトン、ジアセチル、ベンゾイルアセトン等のジケトン類、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、ベンゾイル酢酸エチル、ベンゾイル蟻酸エチル等のケトエステル類、トルエン、およびこれらの混合溶媒、あるいはこれらを水で希釈したもの等を挙げることができる。
上記リチウム元素含有化合物及びその他の金属を含有する金属元素含有化合物を溶解するために用いられる溶媒としては、上記リチウム元素含有化合物を含む金属元素含有化合物を溶解することができるものであれば、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール等の総炭素数が5以下の低級アルコール、アセチルアセトン、ジアセチル、ベンゾイルアセトン等のジケトン類、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、ベンゾイル酢酸エチル、ベンゾイル蟻酸エチル等のケトエステル類、トルエン、およびこれらの混合溶媒、あるいはこれらを水で希釈したもの等を挙げることができる。
次に、上述のとおり調製された電極活物質層形成溶液を、従来公知の塗布方法、例えば、印刷法、スピンコート、ディップコート、バーコート、スプレーコート等によって、集電体表面の任意の領域に塗布して塗膜を形成する。また、集電体表面が多孔質であったり、凹凸が多数設けられていたり、三次元立体構造を有したりする場合には、上記方法以外に手動で塗布することも可能である。尚、本発明において使用する集電体は、必要に応じて、予めコロナ処理や酸素プラズマ処理等を行うことで、電極活物質層の製膜性をさらに改善することができるため好ましい。
上記電極活物層形成溶液の集電体への塗布量は、製造される正極板の用途等に応じて任意に決めることができるが、本発明における電極活物質層は、上述のとおり非常に薄く形成することが可能であるため、薄膜化を図りたい場合には、加熱後の電極活物質層が300nm〜10μm程度となるように薄く塗布してよい。以上の通り、集電体に電極層形成用溶液を塗布することにより、活物質の前駆体である金属元素含有化合物が含有される電極活物質層形成用塗膜が形成される。
次いで、上記電極活物質層形成用塗膜が表面に形成された集電体を加熱する。このとき溶液中に溶解している金属元素含有化合物の分解温度以上の温度で加熱する加熱工程を実施することにより、集電体表面に活物質であるリチウムニッケル系複合化合物が生成される。電極活物質層形成用塗膜に上記したリン元素含有化合物のようなリン供給源となる物質が存在しない場合、リチウムニッケル系複合化合物としてリチウムニッケル系複合酸化物を生成することができる。電極活物質層形成用塗膜にリン酸基を構成するリン元素の供給源となる上記のようなリン元素含有化合物が存在する場合、リチウムニッケル系複合化合物としてリチウムニッケル系複合リン酸化合物を生成することができる。上記生成した活物質は、樹脂製結着材は実質的に使用されないが、互いに接合し集電体表面に固着されるため、集電体に対し密着性の良好な電極活物質層が得られる。本製造方法では、上記電極活物質層が適切に形成されるために、上記電極活物質層形成用の塗膜表面側に熱源を設置することを特徴とする。上記熱源の設置方法は特に限定されないが、熱源装置を電極活物質層形成用塗膜表面側に設置してもよいし、あるいは適切な温度に加温されたホットプレート上において、該ホットプレートの表面と電極活物質層形成用塗膜表面とが接する位置に設置することによって加熱してもよい。加熱方法としては、特に限定されず、ホットプレートを熱源装置とする場合のほか、熱源装置として、例えば、オーブン、加熱炉、赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、熱風送風機等のいずれかを使用するか、あるいは2以上を組み合わせて使用する方法を挙げることができる。用いられる集電体が平面状である場合には、加熱炉やホットプレート等を使用することが好ましい。
本製造方法では、上述のとおり、集電体の塗膜表面側を加熱した後に、さらに、200℃〜800℃の温度範囲で集電体の両面側を加熱してもよい。上記両面側を加熱する場合には、熱源の設置される位置は、例えば、当該両面側に熱源装置を設置する態様、あるいは加熱炉などに電極活物質層形成用塗膜が積層形成された集電体を設置して、両面側を同様の環境で加熱する態様を含む。
尚、上記加熱工程における雰囲気は、大気雰囲気など、特に限定されない。ただし、生成される活物質が、リチウムニッケル系複合酸化物である場合には、本発明の加熱工程は、酸素ガスと窒素ガスの混合ガス雰囲気下にて実施されることが、リチウムニッケル系複合酸化物の結晶構造を形成されることが容易となるため好ましい。活物質としてリチウムニッケル系複合酸化物を生成させる場合、水素雰囲気や窒素雰囲気など、酸素濃度の低い、あるいは酸素のない雰囲気下で加熱工程を実施することもありうるが、このようにリチウムニッケル系複合酸化物を生成させる場合には、電極活物質層形成溶液中に配合される化合物中に、金属酸化物形成に利用可能な酸素元素の供給源となる物質が含まれていることが必要である。
一方、活物質として、リチウムニッケル系複合リン酸化合物を生成させる場合には、不活性ガス雰囲気下あるいは還元ガスの雰囲気下で加熱工程を実施することが望ましい。不活性ガス雰囲気下あるいは還元ガスの雰囲気下では電極活物質層形成溶液からなる塗膜と酸素との接触がより一層規制され、リチウムニッケル複合リン酸化合物の形成がより確実になる。この場合、電極活物質層形成溶液中に酸素元素の供給源となる物質をさらに配合することで、電極活物質層形成溶液に含まれるリン元素含有化合物由来のリンと、金属元素含有化合物由来の金属元素(少なくともリチウムとニッケル)と、酸素元素含有化合物の酸素で、リチウムニッケル系複合リン酸化合物をより容易に生成することができる。なお、不活性ガスとしては、アルゴンや窒素を用いることができる。還元ガスとしては、水素、一酸化炭素を用いることができる。
上記加熱工程を実施する際の加熱温度は、用いられる金属元素含有化合物の種類によって異なるが、活物質としてリチウムニッケル系複合酸化物を生成する場合、通常、200℃〜800℃の温度範囲に加熱することにより良好に金属元素含有化合物の分解が行われ、活物質が生成される。また活物質としてリチウムニッケル系複合リン酸化合物を生成する場合、通常、不活性ガスあるいは還元ガスの雰囲気下で、200℃〜800℃の温度範囲に加熱することにより、良好に金属元素含有化合物の分解が行われ、活物質が生成される。
[非水電解液二次電池]
非水電解液二次電池は、一般的には、正極板及び負極板と、これらの間にポリエチレンなどのポリオレフィン製多孔質フィルムのようなセパレータとが設けられて構成されており、これらが容器内に収納され、且つ容器内に非水電解液が充填された状態で密封されて製造される。
非水電解液二次電池は、一般的には、正極板及び負極板と、これらの間にポリエチレンなどのポリオレフィン製多孔質フィルムのようなセパレータとが設けられて構成されており、これらが容器内に収納され、且つ容器内に非水電解液が充填された状態で密封されて製造される。
(電極板)
本発明の非水電解液二次電池は、特に、正極板として上述する本発明の非水電解液二次電池用正極板を用いることを特徴とする。従来、負極板が炭素質材料より構成される場合には、これにあわせて正極板の導電性を上げるために正極板に導電材料を多量に添加することが一般的であったが、このために正極板の空隙率が低下し、電解液の浸透性が低下することにより電池の出入力特性を増大させることが困難であった。しかしながら本発明の正極板は出入力特性に優れているので、これを正極板として用いた本発明の非水電解液二次電池では、従来のように導電材を多量に用いることなく、あるいは導電材を全く用いることなく、良好な導電性及び高出入力特性を示すことが可能である。
本発明の非水電解液二次電池は、特に、正極板として上述する本発明の非水電解液二次電池用正極板を用いることを特徴とする。従来、負極板が炭素質材料より構成される場合には、これにあわせて正極板の導電性を上げるために正極板に導電材料を多量に添加することが一般的であったが、このために正極板の空隙率が低下し、電解液の浸透性が低下することにより電池の出入力特性を増大させることが困難であった。しかしながら本発明の正極板は出入力特性に優れているので、これを正極板として用いた本発明の非水電解液二次電池では、従来のように導電材を多量に用いることなく、あるいは導電材を全く用いることなく、良好な導電性及び高出入力特性を示すことが可能である。
一方、本発明の非水電解液二次電池に用いられる負極板としては、従来公知の非水電解液二次電池に用いられる公知の負極板を適宜選択して使用することができる。例えば、集電体として厚み5〜50μm程度の電解銅箔や圧延銅箔等の銅箔を用い、上記集電体表面の少なくとも一部に、負極板における電極活物質層形成用塗工組成物を塗布して、乾燥し、必要に応じてプレスすることにより形成されたものが使用される。上記負極板における電極活物質層形成用塗工組成物には、一般的に、天然グラファイト、人造グラファイト、アモルファス炭素、カーボンブラック、またはこれらの成分に異種元素を添加したもののような炭素質材料からなる活物質、あるいは、金属リチウム及びその合金、スズ、シリコン、及びそれらの合金等、リチウムイオンを挿入脱離可能な材料などの活物質、および樹脂製結着材、必要に応じて導電材などの他の添加剤が分散混合されることが一般的である。
(非水電解液)
本発明に用いられる非水電解液は、一般的に、非水電解液二次電池用の非水電解液として用いられるものであれば、特に限定されないが、リチウム塩を有機溶媒に溶解させた非水電解液が好ましく用いられる。
本発明に用いられる非水電解液は、一般的に、非水電解液二次電池用の非水電解液として用いられるものであれば、特に限定されないが、リチウム塩を有機溶媒に溶解させた非水電解液が好ましく用いられる。
上記リチウム塩の例としては、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiCl、及びLiBr等の無機リチウム塩;LiB(C6H5)4、LiN(SO2CF3)2、LiC(SO2CF3)3、LiOSO2CF3、LiOSO2C2F5、LiOSO2C4F9、LiOSO2C5F11、LiOSO2C6F13、及びLiOSO2C7F15等の有機リチウム塩;等が代表的に挙げられる。
リチウム塩の溶解に用いられる有機溶媒としては、環状エステル類、鎖状エステル類、環状エーテル類、及び鎖状エーテル類等が挙げられる。
上記環状エステル類としては、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、ビニレンカーボネート、2−メチル−γ−ブチロラクトン、アセチル−γ−ブチロラクトン、及びγ−バレロラクトン等が挙げられる。
上記鎖状エステル類としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルブチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルブチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチルプロピルカーボネート、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、及び酢酸アルキルエステル等が挙げられる。
上記環状エーテル類としては、テトラヒドロフラン、アルキルテトラヒドロフラン、ジアルキルテトラヒドロフラン、アルコキシテトラヒドロフラン、ジアルコキシテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、アルキル−1,3−ジオキソラン、及び1,4−ジオキソラン等が挙げられる。
上記鎖状エーテル類としては、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、トリエチレングリコールジアルキルエーテル、及びテトラエチレングリコールジアルキルエーテル等が挙げられる。
上記正極板、負極板、セパレータ、非水電解液を用いて製造される非水電解液二次電池の構造としては、従来公知の構造を適宜選択して用いることができる。例えば、正極板及び負極板を、ポリエチレン製多孔質フィルムのようなセパレータを介して渦巻状に巻き回して、電池容器内に収納する構造が挙げられる。また別の態様としては、所定の形状に切り出した正極板及び負極板をセパレータを介して積層して固定し、これを電池容器内に収納する構造を採用してもよい。いずれの構造においても、正極板及び負極板を電池容器内に収納後、正極板に取り付けられたリード線を外装容器に設けられた正極端子に接続し、一方、負極板に取り付けられたリード線を外装容器内に設けられた負極端子に接続し、さらに電池容器内に非水電化液を充填した後、密閉することによって非水電解液二次電池が製造される。
(実施例1)
集電体として厚さ15μmのアルミ板を準備し、最終的に得られる電極活物質層の厚みが5μmとなる量で、当該集電体の一面側に下記のように調製した電極活物質層形成溶液をミヤバーで塗布して電極活物質層形成用塗膜を形成した。
集電体として厚さ15μmのアルミ板を準備し、最終的に得られる電極活物質層の厚みが5μmとなる量で、当該集電体の一面側に下記のように調製した電極活物質層形成溶液をミヤバーで塗布して電極活物質層形成用塗膜を形成した。
<電極活物質層形成溶液の調整>
活物質を生成する原料(溶質)としてLi(CH3COO)・2H2O[分子量:102.02]を10.2g、及びNiCl2・6H2O[分子量:237.69]を23.8g、Co(NO3)2・6H2O[分子量:291.03]を2.3g、ポリエチレングリコール400(関東化学社製)5gを用い、これらの原料を重量比が水:エタノール=2:1となるように混合した混合溶液(溶媒)50gに加えて溶解させ、バイオシェーカーで温度70℃、回転数200rpmにて5時間かけて攪拌し、その後24時間室温で保持することによって電極活物質層形成溶液を調製した。
活物質を生成する原料(溶質)としてLi(CH3COO)・2H2O[分子量:102.02]を10.2g、及びNiCl2・6H2O[分子量:237.69]を23.8g、Co(NO3)2・6H2O[分子量:291.03]を2.3g、ポリエチレングリコール400(関東化学社製)5gを用い、これらの原料を重量比が水:エタノール=2:1となるように混合した混合溶液(溶媒)50gに加えて溶解させ、バイオシェーカーで温度70℃、回転数200rpmにて5時間かけて攪拌し、その後24時間室温で保持することによって電極活物質層形成溶液を調製した。
<加熱工程>
次に、表面に電極活物質層形成用塗膜が形成された集電体を、酸素ガスと窒素ガスとの混合ガス(体積百分率で、酸素ガス30%、窒素ガス70%)の雰囲気の中で300℃に加熱したホットプレートに、電極活物質形成用塗膜が形成された側からゆっくり近づけて接触させ、5分間保持した(第一次加熱処理)。室温に戻した後、続けて、酸素ガスを充填した焼成炉(光洋サーモ社製)の中で、5時間かけて580℃まで昇温し、その後580℃のまま1時間保持し、その後は室温に戻るまで待った。室温になったら、大気に開放してサンプルを取り出し、集電体上に正極活物質層として適切な電極活物質層が積層された本発明の非水電解液二次電池用正極板を得た。そして上記正極板を所定の大きさ(直径15mmの円盤)に繰り抜き、これにより得られた正極体を実施例1とした。尚、上記加熱は、電極活物質層形成用塗膜が形成された側を加熱するためにホットプレート(アズワン社製)と、その後に集電体の両面側から加熱するために電気炉としてガスパージ炉(光洋サーモ株式会社製)を使用した。
次に、表面に電極活物質層形成用塗膜が形成された集電体を、酸素ガスと窒素ガスとの混合ガス(体積百分率で、酸素ガス30%、窒素ガス70%)の雰囲気の中で300℃に加熱したホットプレートに、電極活物質形成用塗膜が形成された側からゆっくり近づけて接触させ、5分間保持した(第一次加熱処理)。室温に戻した後、続けて、酸素ガスを充填した焼成炉(光洋サーモ社製)の中で、5時間かけて580℃まで昇温し、その後580℃のまま1時間保持し、その後は室温に戻るまで待った。室温になったら、大気に開放してサンプルを取り出し、集電体上に正極活物質層として適切な電極活物質層が積層された本発明の非水電解液二次電池用正極板を得た。そして上記正極板を所定の大きさ(直径15mmの円盤)に繰り抜き、これにより得られた正極体を実施例1とした。尚、上記加熱は、電極活物質層形成用塗膜が形成された側を加熱するためにホットプレート(アズワン社製)と、その後に集電体の両面側から加熱するために電気炉としてガスパージ炉(光洋サーモ株式会社製)を使用した。
<膜形成性評価>
実施例1を作成するにあたり、上述で得られた非水電解液二次電池用正極板を所定の大きさに繰り抜く加工を行ったが、当該加工作業において、電極活物質層が剥離するなどの不具合なく、後述する充放電試験に用いる作用極を形成することができた。このことから、電極活物質層の膜形成性が良好であることを確認した。その結果については、表1に示す。以下に示す実施例および比較例においても、膜形成性が良好であるとは、上述するように、不具合なく正極板を繰り抜く加工ができた場合を意味する。一方、上記繰り抜き加工において電極活物質層の一部が剥がれたり、あるいは電極活物質が集電体上から落下して三極式コインセルの作用極として使用に耐える円板が形成されなかった場合には、電極活物質層の膜形成性が不良であると評価するものとする。なお、表1中、膜形成性の評価を示す欄において、「○」が「膜形成性が良好である」ことを示し、「×」が「膜形成性が不良である」ことを示す。
実施例1を作成するにあたり、上述で得られた非水電解液二次電池用正極板を所定の大きさに繰り抜く加工を行ったが、当該加工作業において、電極活物質層が剥離するなどの不具合なく、後述する充放電試験に用いる作用極を形成することができた。このことから、電極活物質層の膜形成性が良好であることを確認した。その結果については、表1に示す。以下に示す実施例および比較例においても、膜形成性が良好であるとは、上述するように、不具合なく正極板を繰り抜く加工ができた場合を意味する。一方、上記繰り抜き加工において電極活物質層の一部が剥がれたり、あるいは電極活物質が集電体上から落下して三極式コインセルの作用極として使用に耐える円板が形成されなかった場合には、電極活物質層の膜形成性が不良であると評価するものとする。なお、表1中、膜形成性の評価を示す欄において、「○」が「膜形成性が良好である」ことを示し、「×」が「膜形成性が不良である」ことを示す。
<電子顕微鏡観察、電極活物質層の膜厚、粒径測定、X線回折>
実施例1を用いて、走査型電子顕微鏡(SEM)、及びX線回折装置(XRD)を用いて50,000倍の倍率で電極活物質層を観察したところ、電極活物質層の厚み方向全体わたり、活物質が互いに部分的且つ直接的に接合するとともにその周囲に空隙を形成してなる層構造が形成されていることが、確認された。また、これらの結果から、活物質の結晶構造は、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)の結晶構造であることがわかる。なお、XRDの分析結果については図1に示す。また、活物質は、ニッケル酸リチウムの結晶構造を母体としニッケル原子の一部をコバルト原子に置換されているものである。活物質におけるニッケルとコバルトの比率(モル比)は、Ni/Co=0.9/0.1となる。
実施例1を用いて、走査型電子顕微鏡(SEM)、及びX線回折装置(XRD)を用いて50,000倍の倍率で電極活物質層を観察したところ、電極活物質層の厚み方向全体わたり、活物質が互いに部分的且つ直接的に接合するとともにその周囲に空隙を形成してなる層構造が形成されていることが、確認された。また、これらの結果から、活物質の結晶構造は、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)の結晶構造であることがわかる。なお、XRDの分析結果については図1に示す。また、活物質は、ニッケル酸リチウムの結晶構造を母体としニッケル原子の一部をコバルト原子に置換されているものである。活物質におけるニッケルとコバルトの比率(モル比)は、Ni/Co=0.9/0.1となる。
さらに、SEMにて、集電体面に対し垂直方向に切断した断面を1000倍の倍率で観察したところ、集電体表面上に、電極活物質層として5μmの膜厚の層が製膜されていることが確認された。なお、上記1000倍の倍率は、電極活物質層の全体が観察可能な倍率として選択された。
また上記電子顕微鏡観察により得られた電子顕微鏡写真(5万倍拡大写真)により、電極活物質層を構成する粒子の粒径を、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(株式会社マウンテック製、MAC VIEW)を用いて粒子20点を測定し、平均最小粒径として粒径の小さい順番に5点、平均最大粒径として粒径の大きい順番に5点、のそれぞれついて算術平均を求めたところ、平均最小粒径が13nm、平均最大粒径が55nmであった(表1)。
実施例1を用いて、次のように密着性評価を行った。結果を表1に示す。
<電極活物質層の密着性試験(セロハンテープ剥離試験)>
電極活物質層の密着性試験については、JIS−K5400のクロスカット密着試験方法に従って、電極活物質層の密着性の評価を行った。すなわち、電極活物質層の表面上にセロハンテープ(ニチバン株式会社製、CT−15)を貼り付けて、次いで、セロハンテープをはがす。そして、セロハンテープを貼り付けられた電極活物質層の総貼着面積(S)のうち転写されてしまった部分の面積(転写面積)(Sa)の割合((Sa/S)×100)(%)を算出する。この値(転写率)が、セロハンテープ側に電極活物質層がどの程度転写されてしまったかを示している。転写率に応じて、電極活物質層の密着性の評価を行った。結果を表1に示す。
電極活物質層の密着性試験については、JIS−K5400のクロスカット密着試験方法に従って、電極活物質層の密着性の評価を行った。すなわち、電極活物質層の表面上にセロハンテープ(ニチバン株式会社製、CT−15)を貼り付けて、次いで、セロハンテープをはがす。そして、セロハンテープを貼り付けられた電極活物質層の総貼着面積(S)のうち転写されてしまった部分の面積(転写面積)(Sa)の割合((Sa/S)×100)(%)を算出する。この値(転写率)が、セロハンテープ側に電極活物質層がどの程度転写されてしまったかを示している。転写率に応じて、電極活物質層の密着性の評価を行った。結果を表1に示す。
なお、電極活物質層の密着性の評価について、評価の基準は次に示すとおりである。転写率が1%以下である場合、「極めて良好」(表1中の転写率欄で「◎」)と判断し、転写率が1%を超えて30%以下である場合、「良好」(表1中の転写率欄で「○」)と判断し、転写率が30%を超える場合、「不良」と評価した。
三極式コインセルの作製:
エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)混合溶媒(体積比=1:1)に、溶質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を加えて、当該溶質であるLiPF6の濃度が、1mol/Lとなるように濃度調整して、非水電解液を調製した。そして、正極板として上述のとおり作製した実施例1(直径15mmの円板、含有される正極活物質の重量:1mg/1.77cm2)を作用極として用い、対極板及び参照極板として金属リチウム板、電解液として上記にて作製した非水電解液を用い、セパレータとして多孔質性ポリエチレンシートを用いて三極式コインセルを組み立て、これを実施例試験セル1とした。そして実施例試験セル1を下記充放電試験に供した。
エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)混合溶媒(体積比=1:1)に、溶質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を加えて、当該溶質であるLiPF6の濃度が、1mol/Lとなるように濃度調整して、非水電解液を調製した。そして、正極板として上述のとおり作製した実施例1(直径15mmの円板、含有される正極活物質の重量:1mg/1.77cm2)を作用極として用い、対極板及び参照極板として金属リチウム板、電解液として上記にて作製した非水電解液を用い、セパレータとして多孔質性ポリエチレンシートを用いて三極式コインセルを組み立て、これを実施例試験セル1とした。そして実施例試験セル1を下記充放電試験に供した。
<充放電試験>
上述のとおり作成した三極式コインセルである実施例試験セル1において、作用極の充放電レート特性を評価するために、まず実施例試験セル1を下記充電試験のとおり満充電させた。
上述のとおり作成した三極式コインセルである実施例試験セル1において、作用極の充放電レート特性を評価するために、まず実施例試験セル1を下記充電試験のとおり満充電させた。
充電試験:
実施例試験セル1を、25℃の環境下で、電圧が4.2Vに達するまで定電流(65μA)で定電流充電し、当該電圧が4.2Vに達した後は、電圧が4.2Vを上回らないように、当該電流(放電レート:1C)が5%以下となるまで減らしていき、定電圧で充電を行ない、満充電させた後、10分間休止させた。尚、ここで、上記「1C」とは、上記三極式コインセルを用いて定電流放電して、1時間で放電終了となる電流値(放電終止電圧に達する電流値)のことを意味する。また上記定電流は、実施例試験セル1における作用極において、活物質であるニッケル酸リチウムの理論放電量170mAh/gが1時間で放電されるよう設定された。
実施例試験セル1を、25℃の環境下で、電圧が4.2Vに達するまで定電流(65μA)で定電流充電し、当該電圧が4.2Vに達した後は、電圧が4.2Vを上回らないように、当該電流(放電レート:1C)が5%以下となるまで減らしていき、定電圧で充電を行ない、満充電させた後、10分間休止させた。尚、ここで、上記「1C」とは、上記三極式コインセルを用いて定電流放電して、1時間で放電終了となる電流値(放電終止電圧に達する電流値)のことを意味する。また上記定電流は、実施例試験セル1における作用極において、活物質であるニッケル酸リチウムの理論放電量170mAh/gが1時間で放電されるよう設定された。
放電試験:
その後、満充電された実施例試験セル1を、25℃の環境下で、電圧が4.2V(満充電電圧)から3.0V(放電終止電圧)になるまで、定電流(65μA)(放電レート:1C)で定電流放電し、縦軸にセル電圧(V)、横軸に放電時間(h)をとり、放電曲線を作成し、作用極(実施例1である正極用電極板)の放電容量(mAh)を求め、当該作用極の単位重量当たりの放電容量(mAh/g)に換算した。
その後、満充電された実施例試験セル1を、25℃の環境下で、電圧が4.2V(満充電電圧)から3.0V(放電終止電圧)になるまで、定電流(65μA)(放電レート:1C)で定電流放電し、縦軸にセル電圧(V)、横軸に放電時間(h)をとり、放電曲線を作成し、作用極(実施例1である正極用電極板)の放電容量(mAh)を求め、当該作用極の単位重量当たりの放電容量(mAh/g)に換算した。
続いて、上述のとおり実施した定電流(65μA)(放電レート:1C、放電終了時間:1時間)での定電流放電試験を基準として、5倍の定電流(0.33mA)(放電レート:5C、放電終了時間:12分)、10倍の定電流(0.65mA)(放電レート:10C、放電終了時間:6分)、50倍の定電流(3.25mA)(放電レート:50C、放電終了時間:1.2分)においても、同様にして各々定電流放電試験を行ない、各放電レートにおける作用極の放電容量(mAh)を求め、これより単位重量当たりの放電容量(mAh/g)を換算した。
<放電容量維持率(%)の算出>
作用極の出力特性(放電レート特性)を評価するため、上述のとおり得られた各放電レートにおける単位重量当たりの各放電容量(mAh/g)を用い、上述で示した数1により放電容量維持率(%)を求めた。尚、上記放電試験により得られた単位重量当たりの放電容量(mAh/g)及び放電容量維持率(%)は、いずれも表2にまとめて示す。
作用極の出力特性(放電レート特性)を評価するため、上述のとおり得られた各放電レートにおける単位重量当たりの各放電容量(mAh/g)を用い、上述で示した数1により放電容量維持率(%)を求めた。尚、上記放電試験により得られた単位重量当たりの放電容量(mAh/g)及び放電容量維持率(%)は、いずれも表2にまとめて示す。
(実施例2および実施例3)
集電体上に形成される電極活物質層の膜厚が表1に示す値となるよう集電体上への電極活物質層形成溶液の塗布量を変更し、且つ、加熱工程における第一次加熱処理を次のように変更したこと以外は、実施例1と同様に正極体を作成し、実施例2および実施例3とした。
集電体上に形成される電極活物質層の膜厚が表1に示す値となるよう集電体上への電極活物質層形成溶液の塗布量を変更し、且つ、加熱工程における第一次加熱処理を次のように変更したこと以外は、実施例1と同様に正極体を作成し、実施例2および実施例3とした。
実施例2については、第一次加熱処理は、表面に電極活物質層形成用塗膜が形成された集電体を、混合ガス雰囲気下で、400℃に加熱したホットプレートに、電極活物質形成用塗膜が形成された側からゆっくり近づけて接触させ、10分間保持することにて実施された。
実施例3については、第一次加熱処理は、表面に電極活物質層形成用塗膜が形成された集電体を、混合ガス雰囲気下で、200℃に加熱したホットプレートに、電極活物質形成用塗膜が形成された側からゆっくり近づけて接触させ、30分間保持することにて実施された。
実施例2および実施例3について、実施例1と同様に、膜形成性評価、電子顕微鏡観察、電極活物質層の膜厚測定、粒径測定、X線回折を行った。電子顕微鏡観察において、実施例1と同様に電極活物質層が集電体上に形成されていることを確認した。また、X線回折により、電極活物質層を構成している活物質をなす化合物が、実施例1と同様にLiNiO2の結晶構造であることを確認した。また、実施例2および実施例3について、活物質は、ニッケル酸リチウムの結晶構造を母体としニッケル原子の一部をコバルト原子に置換されているものである。活物質におけるニッケルとコバルトの比率(モル比)は、Ni/Co=0.9/0.1となる。その他の結果は、表1に示す。
また実施例1と同様の方法で、実施例2および実施例3である正極板の電極活物質層の密着性試験を実施した。結果は、表1に示す。
実施例試験セル1と同様に、実施例2,3を用いて、それぞれ実施例試験セル2および実施例試験セル3を作成した。そして上記実施例試験セル2および実施例試験セル3を用い、各放電レートにおける定電流を、表2に示す値に変更した以外は、実施例試験セル1と同様に充電試験および放電試験を実施し、各放電レートにおける作用極の放電容量(mAh)を求め、これより単位重量当たりの放電容量(mAh/g)を換算した。また実施例試験セル2および実施例試験セル3について、実施例試験セル1と同様に、計算式(数1)を用いて、放電容量維持率(%)を求めた。結果については、表2にまとめて示す。
(比較例1)
正極活物質の原料として平均粒径8μmの活物質(組成式;LiNi0.9Co0.1O2(ニッケル酸リチウムの結晶構造を母体としニッケル原子の一部をコバルト原子に置換されているもの))の粉末80重量部、導電剤としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)10重量部、及び樹脂製結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)(クレハ社製、KF#1100)10重量部に、有機溶媒であるN−メチルピロリドン(NMP)(三菱化学社製)を加えて、分散させ、固形分濃度が55重量%となるようにエクセルオートホモジナイザー(株式会社日本精機製作所)で5000rpmの回転数で15分間攪拌して、スラリー状の正極活物質層形成用塗工組成物を調製した。そして上記にて調製した正極活物質層形成用塗工組成物を、正極集電体として用いる厚さ15μmのアルミ板上に、乾燥後の正極活物質層形成用塗工組成物の塗布量が50g/m2となるように塗布し、オーブンを用いて、120℃の大気雰囲気下で20分乾燥させて、集電体表面上に正極用の電極活物質層を形成した。さらに、形成された電極活物質層の塗布密度が2.0g/cm3(正極活物質層の厚さ:25μm)となるように、ロールプレス機を用いてプレスした後、所定の大きさ(直径15mmの円板)に裁断し、120℃にて12時間、真空乾燥させて、非水電解液二次電池正極用の電極板を作製し、これを比較例1とした。比較例1について、実施例1と同様に膜形成性を評価した。結果は表1に示す。
正極活物質の原料として平均粒径8μmの活物質(組成式;LiNi0.9Co0.1O2(ニッケル酸リチウムの結晶構造を母体としニッケル原子の一部をコバルト原子に置換されているもの))の粉末80重量部、導電剤としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)10重量部、及び樹脂製結着材としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)(クレハ社製、KF#1100)10重量部に、有機溶媒であるN−メチルピロリドン(NMP)(三菱化学社製)を加えて、分散させ、固形分濃度が55重量%となるようにエクセルオートホモジナイザー(株式会社日本精機製作所)で5000rpmの回転数で15分間攪拌して、スラリー状の正極活物質層形成用塗工組成物を調製した。そして上記にて調製した正極活物質層形成用塗工組成物を、正極集電体として用いる厚さ15μmのアルミ板上に、乾燥後の正極活物質層形成用塗工組成物の塗布量が50g/m2となるように塗布し、オーブンを用いて、120℃の大気雰囲気下で20分乾燥させて、集電体表面上に正極用の電極活物質層を形成した。さらに、形成された電極活物質層の塗布密度が2.0g/cm3(正極活物質層の厚さ:25μm)となるように、ロールプレス機を用いてプレスした後、所定の大きさ(直径15mmの円板)に裁断し、120℃にて12時間、真空乾燥させて、非水電解液二次電池正極用の電極板を作製し、これを比較例1とした。比較例1について、実施例1と同様に膜形成性を評価した。結果は表1に示す。
<三極式コインセルの作製>
上述のとおり作製された比較例1を作用極に用いた以外は、実施例試験セル1と同様に三極式コインセルを組み立て、これを比較例試験セル1とした。
上述のとおり作製された比較例1を作用極に用いた以外は、実施例試験セル1と同様に三極式コインセルを組み立て、これを比較例試験セル1とした。
<充電試験及び放電試験>
比較例試験セル1について、各放電レートにおける定電流を、表2に示す値に変更した以外は、実施例試験セル1と同様に充電試験及び放電試験を実施し、各放電レートにおける作用極の放電容量(mAh)を求め、これより単位重量当たりの放電容量(mAh/g)を換算した。また実施例試験セル1と同様に、計算式(数1)を用いて、放電容量維持率(%)を求めた。結果については、表2にまとめて示す。
比較例試験セル1について、各放電レートにおける定電流を、表2に示す値に変更した以外は、実施例試験セル1と同様に充電試験及び放電試験を実施し、各放電レートにおける作用極の放電容量(mAh)を求め、これより単位重量当たりの放電容量(mAh/g)を換算した。また実施例試験セル1と同様に、計算式(数1)を用いて、放電容量維持率(%)を求めた。結果については、表2にまとめて示す。
(比較例2)
樹脂製結着材であるPVDFの配合量を、全固形成分に対する比率で7重量%に変更したこと以外には、比較例1と同様に正極板を作成し、比較例2とした。比較例2について、実施例1と同様に膜形成性を評価した。結果は表1に示す。
樹脂製結着材であるPVDFの配合量を、全固形成分に対する比率で7重量%に変更したこと以外には、比較例1と同様に正極板を作成し、比較例2とした。比較例2について、実施例1と同様に膜形成性を評価した。結果は表1に示す。
<三極式コインセルの作製>
上述のとおり作製された比較例2を作用極に用いた以外は、実施例試験セル1と同様に三極式コインセルを組み立て、これを比較例試験セル2とした。
上述のとおり作製された比較例2を作用極に用いた以外は、実施例試験セル1と同様に三極式コインセルを組み立て、これを比較例試験セル2とした。
<充電試験及び放電試験>
比較例試験セル2について、各放電レートにおける定電流を、表2に示す値に変更した以外は、実施例試験セル1と同様に充電試験及び放電試験を実施し、各放電レートにおける作用極の放電容量(mAh)を求め、これより単位重量当たりの放電容量(mAh/g)を換算した。また実施例試験セル1と同様に、計算式(数1)を用いて、放電容量維持率(%)を求めた。結果については、表2にまとめて示す。
比較例試験セル2について、各放電レートにおける定電流を、表2に示す値に変更した以外は、実施例試験セル1と同様に充電試験及び放電試験を実施し、各放電レートにおける作用極の放電容量(mAh)を求め、これより単位重量当たりの放電容量(mAh/g)を換算した。また実施例試験セル1と同様に、計算式(数1)を用いて、放電容量維持率(%)を求めた。結果については、表2にまとめて示す。
(比較例3)
樹脂製結着材を用いなかったこと以外は、比較例1と同様に正極板を作成し、これを比較例3とした。しかしながら、比較例3は、所定の大きさの円板に繰り抜く際に電極活物質層の一部が剥がれ、膜形成性が不良であった(表1)。その結果、充放電試験を実施することができなかった。
樹脂製結着材を用いなかったこと以外は、比較例1と同様に正極板を作成し、これを比較例3とした。しかしながら、比較例3は、所定の大きさの円板に繰り抜く際に電極活物質層の一部が剥がれ、膜形成性が不良であった(表1)。その結果、充放電試験を実施することができなかった。
(参考例1)
下記のように調整された参考例1用電極活物質層形成溶液を用いて、最終的に得られる電極活物質層の厚みが1μmとなる量で、当該集電体(厚さ15μmのアルミ板)の一面側に塗布したほかは、実施例1と同様にして、電極活物質層形成用塗膜を形成した。
下記のように調整された参考例1用電極活物質層形成溶液を用いて、最終的に得られる電極活物質層の厚みが1μmとなる量で、当該集電体(厚さ15μmのアルミ板)の一面側に塗布したほかは、実施例1と同様にして、電極活物質層形成用塗膜を形成した。
<参考例1用電極活物質層形成溶液の調整>
活物質を生成する原料(溶質)としてLi(CH3COO)・2H2O[分子量:102.02]を10.2g、及びFe(NO3)3・9H2O[分子量:404]を40.4g、H3PO4[分子量:98]を9.8g、ポリエチレングリコール400を2g用い、これらの原料を重量比が水:メタノール=2:1となるように混合した混合溶液(溶媒)50gに加えて溶解させ、バイオシェーカーで温度70℃、回転数200rpmにて1時間かけて攪拌し、24時間室温にて放置して、電極活物質層形成溶液を調製した。
活物質を生成する原料(溶質)としてLi(CH3COO)・2H2O[分子量:102.02]を10.2g、及びFe(NO3)3・9H2O[分子量:404]を40.4g、H3PO4[分子量:98]を9.8g、ポリエチレングリコール400を2g用い、これらの原料を重量比が水:メタノール=2:1となるように混合した混合溶液(溶媒)50gに加えて溶解させ、バイオシェーカーで温度70℃、回転数200rpmにて1時間かけて攪拌し、24時間室温にて放置して、電極活物質層形成溶液を調製した。
<加熱工程>
次に、表面に電極活物質層形成用塗膜が形成された集電体を、水素ガスと窒素ガスの混合ガス(水素ガスの濃度4%(体積百分率))の雰囲気の中で250℃に加熱したホットプレートに、電極活物質形成用塗膜が形成された側からゆっくり近づけて接触させ、10分間保持した。室温に戻した後、続けて、窒素ガスを充填した焼成炉(光洋サーモ社製)の中で、5時間かけて550℃まで昇温し、その後550℃のまま1時間保持し、その後は室温に戻るまで待った。室温になったら、大気に開放してサンプルを取り出し、集電体上に正極活物質層として適切な電極活物質層が積層された本発明の非水電解液二次電池用正極板を得た。参考例1について、実施例1と同様に膜形成性を評価した。結果は表1に示す。
次に、表面に電極活物質層形成用塗膜が形成された集電体を、水素ガスと窒素ガスの混合ガス(水素ガスの濃度4%(体積百分率))の雰囲気の中で250℃に加熱したホットプレートに、電極活物質形成用塗膜が形成された側からゆっくり近づけて接触させ、10分間保持した。室温に戻した後、続けて、窒素ガスを充填した焼成炉(光洋サーモ社製)の中で、5時間かけて550℃まで昇温し、その後550℃のまま1時間保持し、その後は室温に戻るまで待った。室温になったら、大気に開放してサンプルを取り出し、集電体上に正極活物質層として適切な電極活物質層が積層された本発明の非水電解液二次電池用正極板を得た。参考例1について、実施例1と同様に膜形成性を評価した。結果は表1に示す。
また実施例1と同様の方法で、参考例1である正極板の電極活物質層の密着性試験を実施した。結果は、表1に示す。
<三極式コインセルの作製>
上述のとおり作製された参考例1を作用極に用いた以外は、実施例試験セル1と同様に三極式コインセルを組み立て、これを参考例試験セル1とした。
上述のとおり作製された参考例1を作用極に用いた以外は、実施例試験セル1と同様に三極式コインセルを組み立て、これを参考例試験セル1とした。
<充電試験及び放電試験>
参考例試験セル1について、各放電レートにおける定電流を、表2に示す値に変更した以外は、実施例試験セル1と同様に充電試験及び放電試験を実施し、各放電レートにおける作用極の放電容量(mAh)を求め、これより単位重量当たりの放電容量(mAh/g)を換算した。また実施例試験セル1と同様に、計算式(数1)を用いて、放電容量維持率(%)を求めた。結果については、表2にまとめて示す。
参考例試験セル1について、各放電レートにおける定電流を、表2に示す値に変更した以外は、実施例試験セル1と同様に充電試験及び放電試験を実施し、各放電レートにおける作用極の放電容量(mAh)を求め、これより単位重量当たりの放電容量(mAh/g)を換算した。また実施例試験セル1と同様に、計算式(数1)を用いて、放電容量維持率(%)を求めた。結果については、表2にまとめて示す。
(参考例2)
下記のように調整された参考例2用電極活物質層形成溶液を用いて、最終的に得られる電極活物質層の厚みが8μmとなる量で、当該集電体(厚さ15μmのアルミ板)の一面側に塗布したほかは、実施例1と同様にして、電極活物質層形成用塗膜を形成した。
下記のように調整された参考例2用電極活物質層形成溶液を用いて、最終的に得られる電極活物質層の厚みが8μmとなる量で、当該集電体(厚さ15μmのアルミ板)の一面側に塗布したほかは、実施例1と同様にして、電極活物質層形成用塗膜を形成した。
<参考例2用電極活物質層形成溶液の調整>
活物質を生成する原料(溶質)としてLi(CH3COO)・2H2O[分子量:102.02]を5.1g、Mn(CH3COO)2・4H2O[分子量:245.09]を24.5g、メチルセルロース樹脂(メトローズ4000、信越化学工業社製)3gを用い、これらの原料を、重量比が水:イソプロピルアルコール(IPA)=3:1となるように水とIPAを混合してなる溶液(溶媒)120gに加えて溶解させ、バイオシェーカーで温度70℃、回転数200rpmにて5時間かけて攪拌し、その後24時間室温で保持することによって電極活物質層形成溶液を調製した。
活物質を生成する原料(溶質)としてLi(CH3COO)・2H2O[分子量:102.02]を5.1g、Mn(CH3COO)2・4H2O[分子量:245.09]を24.5g、メチルセルロース樹脂(メトローズ4000、信越化学工業社製)3gを用い、これらの原料を、重量比が水:イソプロピルアルコール(IPA)=3:1となるように水とIPAを混合してなる溶液(溶媒)120gに加えて溶解させ、バイオシェーカーで温度70℃、回転数200rpmにて5時間かけて攪拌し、その後24時間室温で保持することによって電極活物質層形成溶液を調製した。
<加熱工程>
次に、表面に電極活物質層形成用塗膜が形成された集電体を、大気雰囲気の中で250℃に加熱したホットプレートに、電極活物質形成用塗膜が形成された側からゆっくり近づけて接触させ、2分間保持した。室温に戻した後、続けて、大気雰囲気下、焼成炉(光洋サーモ社製)の中で、3時間かけて600℃まで昇温し、その後600℃のまま2時間保持し、その後は室温に戻るまで待った。室温になったら、サンプルを取り出し、集電体上に正極活物質層として適切な電極活物質層が積層された本発明の非水電解液二次電池用正極板を得た。そして上記正極板を所定の大きさ(直径15mmの円盤)に繰り抜き(裁断し)、これにより得られた正極体を参考例2とした。参考例2について、実施例1と同様に膜形成性を評価した。結果は表1に示す。
次に、表面に電極活物質層形成用塗膜が形成された集電体を、大気雰囲気の中で250℃に加熱したホットプレートに、電極活物質形成用塗膜が形成された側からゆっくり近づけて接触させ、2分間保持した。室温に戻した後、続けて、大気雰囲気下、焼成炉(光洋サーモ社製)の中で、3時間かけて600℃まで昇温し、その後600℃のまま2時間保持し、その後は室温に戻るまで待った。室温になったら、サンプルを取り出し、集電体上に正極活物質層として適切な電極活物質層が積層された本発明の非水電解液二次電池用正極板を得た。そして上記正極板を所定の大きさ(直径15mmの円盤)に繰り抜き(裁断し)、これにより得られた正極体を参考例2とした。参考例2について、実施例1と同様に膜形成性を評価した。結果は表1に示す。
また実施例1と同様の方法で、参考例2である正極板の電極活物質層の密着性試験を実施した。結果は、表1に示す。
<三極式コインセルの作製>
上述のとおり作製された参考例1を作用極に用いた以外は、実施例試験セル1と同様に三極式コインセルを組み立て、これを参考例試験セル2とした。
上述のとおり作製された参考例1を作用極に用いた以外は、実施例試験セル1と同様に三極式コインセルを組み立て、これを参考例試験セル2とした。
<充電試験及び放電試験>
参考例試験セル2について、各放電レートにおける定電流を、表2に示す値に変更した以外は、実施例試験セル1と同様に充電試験及び放電試験を実施し、各放電レートにおける作用極の放電容量(mAh)を求め、これより単位重量当たりの放電容量(mAh/g)を換算した。また実施例試験セル1と同様に、計算式(数1)を用いて、放電容量維持率(%)を求めた。結果については、表2にまとめて示す。
参考例試験セル2について、各放電レートにおける定電流を、表2に示す値に変更した以外は、実施例試験セル1と同様に充電試験及び放電試験を実施し、各放電レートにおける作用極の放電容量(mAh)を求め、これより単位重量当たりの放電容量(mAh/g)を換算した。また実施例試験セル1と同様に、計算式(数1)を用いて、放電容量維持率(%)を求めた。結果については、表2にまとめて示す。
(参考例3)
下記のように調整された参考例3用電極活物質層形成溶液を用いて、最終的に得られる電極活物質層の厚みが1μmとなる量で、当該集電体(厚さ15μmのアルミ板)の一面側に塗布したほかは、実施例1と同様にして、電極活物質層形成用塗膜を形成した。
下記のように調整された参考例3用電極活物質層形成溶液を用いて、最終的に得られる電極活物質層の厚みが1μmとなる量で、当該集電体(厚さ15μmのアルミ板)の一面側に塗布したほかは、実施例1と同様にして、電極活物質層形成用塗膜を形成した。
<参考例3用電極活物質層形成溶液の調整>
活物質を生成する原料(溶質)としてLiNO3[分子量:68.95]を6.9g、及びCo(NO3)2・6H2O[分子量:291.03]を29g用い、これらの原料をメタノール30gに加えて溶解させ、さらにポリエチレングリコール400を0.2g加え、エクセルオートホモジナイザー(株式会社日本精機製作所)で5000rpmの回転数で15分間混練することによって参考例3用電極活物質層形成溶液を調製した。
活物質を生成する原料(溶質)としてLiNO3[分子量:68.95]を6.9g、及びCo(NO3)2・6H2O[分子量:291.03]を29g用い、これらの原料をメタノール30gに加えて溶解させ、さらにポリエチレングリコール400を0.2g加え、エクセルオートホモジナイザー(株式会社日本精機製作所)で5000rpmの回転数で15分間混練することによって参考例3用電極活物質層形成溶液を調製した。
<加熱工程>
次に、表面に電極活物質層形成用塗膜が形成された集電体を、大気雰囲気下、400℃に加熱したホットプレートに、電極活物質層形成用塗膜が形成された側からゆっくり近づけて接触させ、10分間保持した。続けて常温の状態の電気炉内に設置し、目的の温度である600℃まで5時間かけて昇温させ、その後600℃を保って1時間加熱して、その後は室温に戻るまで待った。室温になった後、電極活物質層形成用塗膜が形成された集電体を、電気炉内から取り出し、集電体上に正極活物質層として適切な電極活物質層が積層された本発明の非水電解液二次電池用正極板を得た。そして上記電極板を所定の大きさ(直径15mmの円板)に裁断し、参考例3とした。参考例3について、実施例1と同様に膜形成性を評価した。結果は表1に示す。
次に、表面に電極活物質層形成用塗膜が形成された集電体を、大気雰囲気下、400℃に加熱したホットプレートに、電極活物質層形成用塗膜が形成された側からゆっくり近づけて接触させ、10分間保持した。続けて常温の状態の電気炉内に設置し、目的の温度である600℃まで5時間かけて昇温させ、その後600℃を保って1時間加熱して、その後は室温に戻るまで待った。室温になった後、電極活物質層形成用塗膜が形成された集電体を、電気炉内から取り出し、集電体上に正極活物質層として適切な電極活物質層が積層された本発明の非水電解液二次電池用正極板を得た。そして上記電極板を所定の大きさ(直径15mmの円板)に裁断し、参考例3とした。参考例3について、実施例1と同様に膜形成性を評価した。結果は表1に示す。
また実施例1と同様の方法で、参考例3である正極板の電極活物質層の密着性試験を実施した。結果は、表1に示す。
<三極式コインセルの作製>
上述のとおり作製された参考例3を作用極に用いた以外は、実施例試験セル1と同様に三極式コインセルを組み立て、これを参考例試験セル3とした。
上述のとおり作製された参考例3を作用極に用いた以外は、実施例試験セル1と同様に三極式コインセルを組み立て、これを参考例試験セル3とした。
<充電試験及び放電試験>
参考例試験セル3について、放電レートおよび各放電レートにおける定電流を、表2に示す値に変更した以外は、実施例試験セル1と同様に充電試験及び放電試験を実施し、各放電レートにおける作用極の放電容量(mAh)を求め、これより単位重量当たりの放電容量(mAh/g)を換算した。また実施例試験セル1と同様に、計算式(数1)を用いて、放電容量維持率(%)を求めた。結果については、表2にまとめて示す。
参考例試験セル3について、放電レートおよび各放電レートにおける定電流を、表2に示す値に変更した以外は、実施例試験セル1と同様に充電試験及び放電試験を実施し、各放電レートにおける作用極の放電容量(mAh)を求め、これより単位重量当たりの放電容量(mAh/g)を換算した。また実施例試験セル1と同様に、計算式(数1)を用いて、放電容量維持率(%)を求めた。結果については、表2にまとめて示す。
実施例1と比較例1を比べるに、実施例1のほうが放電容量維持率も著しく高い点で相違している。この違いは、比較例1,2のように樹脂製結着材の添加量差に伴う相違よりも大きい。また、比較例3に示すように、単に樹脂製結着材の添加量を添加せずに比較例1と同じ方法を用いた場合には、もはや電極活物質層を形成すること自体ができなくなってしまう。すなわち、単に従来の製造方法を用いて、ただ樹脂製結着材を減じるあるいは不添加とした程度では、実施例1と同程度の入出力特性に優れた電極活物質層を形成することができない。この点、実施例1では、樹脂製結着材を必須とすることなく、入出力特性に優れた(すなわち放電容量維持率に優れた)電極活物質層を形成できている。
実施例1から3のいずれにおいても、参考例1から3に比べ、電極活物質層の密着性が優れたものとなっていた。
Claims (11)
- 集電体と、該集電体の表面の少なくとも一部の上に活物質から構成される電極活物質層とを備える非水電解液二次電池用正極板であって、
上記電極活物質層は、少なくともリチウムおよびニッケルを金属元素として含む活物質から構成されており、上記活物質同士が部分的に接合して該活物質が連続的に存在する構造を有し、電解液が浸透可能な空隙を有する多孔質の層であり、
電極活物質層に含まれる活物質の少なくとも一部が集電体に接合している、ことを特徴とする非水電解液二次電池用正極板。
- 上記電極活物質層を構成する活物質が、リチウムニッケル系複合酸化物、またはリチウムニッケル系複合リン酸化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の非水電解液二次電池用正極板。
- 上記電極活物質層は、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)を含む活物質から構成されることを特徴とする、請求項1に記載の非水電解液二次電池用正極板。
- 任意に選択された活物質粒子20点のそれぞれの粒子径を電極活物質層の電子顕微鏡観察に基づき測定し、粒子径の小さい順番に選択された5点についての算術平均値を活物質の平均最小粒径とし、粒子径の大きい順番に選択された5点についての算術平均値を活物質の平均最大粒径とした場合に、
上記活物質は、平均最小粒径が7nm以上60nm未満であり、且つ、平均最大粒径が60nm以上500nm未満であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極板。
- 上記電極活物質層は、JIS−K5400のクロスカット密着試験方法により測定されたセロハンテープを貼り付けられた電極活物質層の総貼着面積(S)と転写面積(Sa)に基づきSa/S×100にて算出された転写率(%)が1%以下である、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極板。
- 上記電極活物質層の膜厚みが、300nm以上10μm以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極板。
- 1Cの放電レートで放電した際の放電容量維持率を100%としたときに、50C以上の放電レートにおいて放電容量維持率が50%以上であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極板。
- リチウムとニッケルとを金属元素として含む電極活物質層形成溶液を調製し、
上記電極活物質層形成溶液を集電体表面の少なくとも一部上に塗布して塗膜を形成し、次いで上記塗膜が形成された集電体に対して熱源を上記塗膜面側に設置した状態で200℃以上の温度で加熱する処理からなる加熱処理を行って該集電体表面上にリチウムイオン挿入脱離反応を示すリチウムニッケル系複合酸化物を生成させることによって電極活物質層を形成する、ことを特徴とする非水電解液二次電池用正極板の製造方法。
- リチウムとニッケルとを金属元素として含むとともにリン元素を含む電極活物質層形成溶液を調製し、
上記電極活物質層形成溶液を集電体表面の少なくとも一部上に塗布して塗膜を形成し、
次いで上記塗膜が形成された集電体に対して熱源を上記塗膜面側に設置した状態で不活性ガスあるいは還元ガスの雰囲気下にて200℃以上の温度で加熱する処理からなる加熱処理を行って該集電体表面上にリチウムイオン挿入脱離反応を示すリチウムニッケル系複合リン酸化合物を生成させることによって電極活物質層を形成する、ことを特徴とする非水電解液二次電池用正極板の製造方法。
- 加熱処理が、上記塗膜が形成された集電体に対して熱源を上記塗膜面側に設置して加熱した後、さらに、熱源を上記集電体の両面側に設置して引き続き加熱する処理であることを特徴とする、請求項8または9に記載の非水電解液二次電池用正極板の製造方法。
- 正極板と、負極板と、上記正極板と上記負極板との間に設けられるセパレータと、非水溶媒を含む電解液とを少なくとも備えた非水電解液二次電池であって、
上記正極板が、請求項1から7のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池用正極板であることを特徴とする非水電解液二次電池。
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JP2010070412A JP2011204460A (ja) | 2010-03-25 | 2010-03-25 | 非水電解液二次電池用正極板、非水電解液二次電池用正極板の製造方法、および非水電解液二次電池 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US11313822B2 (en) | 2018-12-03 | 2022-04-26 | Lg Energy Solution, Ltd. | Nondestructive method for measuring active area of active material |
-
2010
- 2010-03-25 JP JP2010070412A patent/JP2011204460A/ja not_active Withdrawn
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US11313822B2 (en) | 2018-12-03 | 2022-04-26 | Lg Energy Solution, Ltd. | Nondestructive method for measuring active area of active material |
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