JP2011203006A - 検出センサ - Google Patents

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孝士 三原
Takeshi Ikehara
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Abstract

【課題】カンチレバー型振動子の温度を高精度に計測することを目的とする。
【解決手段】検出センサ10は、基板50上に、振動子30の振動変化を検出する振動検出部40と、基板50の温度を検出する温度検出部60とを備える。そして、分離溝70により、同一基板50上に形成された振動検出部40と温度検出部60とを絶縁する。また、温度検出部60は、p型領域61に高濃度p型領域63を設け、n型のシリコン層53により高濃度n型領域62を設け、ここに配線パターン66A、66Bを接続した。
【選択図】図1

Description

本発明は、VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)等の物質の検出等を行うことのできる検出センサに関する。
従来より、空気中を漂う各種物質や匂いの存在、あるいはその定量的な濃度を検出するためのセンサが存在した。このセンサでは、ガスに含まれる特定種の分子を吸着し、その吸着の有無、あるいは吸着量を検出することで、特定物質等の存在の有無、あるいはその濃度を検出している。
空気中を漂う分子をその微小な分子質量によって検出するセンサ素子は、これらの分子を含む気体中で振動子を振動させ、分子が振動子表面に付着または吸着された際の振動子の質量変化を振動子の共振周波数変化として検出する。質量検出を行う振動子として、片持ち梁の横振動を利用するカンチレバー型の振動子が存在する(例えば、特許文献1参照)。このようなカンチレバー型の振動子は、シリコン薄膜等を写真技術(フォトリソグラフィ)で精密に加工するMEMS(Micro Electrical Mechanical Systems)と呼ばれる技術を用いることで、μm(マイクロメートル)単位の領域で作製することが可能となってきた。振動子のサイズを小さくすることで振動子質量が大幅に減少し、付着質量に対する検出感度が向上する。
このようなシリコン材料からなる振動子は、ピエゾ効果を用い、振動子の表面に設けたピエゾ抵抗層の電圧変化を検出することで、振動子の振動数変化を検出する(例えば、特許文献1、2参照。)。
特開2009−133772号公報 特開2009−139359号公報
しかしながら、上述したようなシリコン材料からなるカンチレバー型振動子においては、シリコン材料のヤング率の持つ特性により温度依存性が高いという問題がある。すなわち、同様の分子検出に多用されているQCMに比較すると、温度係数が数倍〜数十倍も異なる。質量変化の高精度な検出を行うには、カンチレバー型振動子の温度を高精度に計測して、その温度に応じた検出データの補償を行う必要がある。
温度補償を行う場合、多用されているのは、参照用のカンチレバーを別途設け、参照用のカンチレバー型振動子と、分子を付着または吸着するカンチレバー型振動子とで、差を検出することにより、温度ドリフトを補償することである。しかしそれでは、カンチレバー型振動子を、分子検出用と参照用とでそれぞれ設けなければならず、コスト増大、デバイス大型化等の問題を伴う。
そこで、特許文献2の技術においては、振動子に温度計を備え、その温度計で検出した温度に基づいて、カンチレバーの温度補償を行い、温度ドリフトを抑制することが行われている。
しかし、特許文献2の技術においては、温度測定に抵抗変化を用いている。このため、温度測定精度が低い。温度測定精度を高めるには、温度計に流す電流値を高めれば良いが、電流を多く流すと、今度は温度計自体が発熱してしまう。その結果、振動子の正確な温度を測定するのが困難となってしまう。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、カンチレバー型振動子の温度を高精度に計測することを目的とする。
かかる目的のもと、本発明の検出センサは、シリコン基板に形成され、一端部または両端部が固定された梁状の振動子と、振動子を振動させる駆動部と、振動子の表面に形成されたピエゾ抵抗素子からなり、そのピエゾ抵抗効果から振動子における振動の変化を検出する振動検出部と、振動子の表面に形成された半導体ダイオード素子からなり、振動子の温度を検出する温度検出部と、を備えることを特徴とする。
このような検出センサでは、半導体ダイオード素子により振動子の温度を検出するので、温度検出部自体が発熱することもなく、熱影響を抑えて高精度に振動子の温度検出を行える。また、一つの基板上に振動検出部と温度検出部とが形成されているため、振動子の近傍で温度検出を高精度に行え、また、装置の大型化を抑えることができる。
ここで、振動検出部は、シリコン基板のn型半導体からなる層に、p型半導体からなるピエゾ抵抗素子を備え、当該ピエゾ抵抗素子の両端部の電極間の電圧により振動子の振動の変化を検出し、温度検出部は、n型半導体からなる層に、p型半導体からなるp型領域が設けられることで形成された半導体ダイオード素子を備え、p―n接合に定電流を流したときのp型領域とn型領域との電位差を検出することで、振動子の温度を測定することができる。
さらに、温度検出部のp型領域は、n型半導体からなる層に接する部分が、第1の濃度のp型半導体により形成され、その一部に、第1の濃度よりも高い第2の濃度のp型半導体により形成された高濃度部が形成され、当該高濃度部に配線を接続するのが好ましい。
また、n型半導体からなる層に、振動検出部と温度検出部とを電気的に絶縁する絶縁部を形成するのが好ましい。これにより、振動検出部と温度検出部とで電気的に影響を及ぼし合うのを防ぐことができる。このような絶縁部は、例えばn型半導体からなる層に、絶縁材料からなる絶縁部を形成しても良いが、この層を振動検出部と温度検出部とに分断する溝を形成するのが好ましい。
また、n型領域とp型領域はそれぞれ帯状とし、互いに平行に設けるのが好ましい。さらに、n型領域は、p型領域の2辺以上に沿って設けるのが好ましい。
また、温度検出部は、対となるn型領域とp型領域を複数組電気的に並列して設けても良い。
このような振動子は、いかなる目的のものでもあっても良いが、特に、振動子の表面に、物質を付着または吸着する膜状の分子認識膜が形成され、振動検出部は、分子認識膜への質量を有した物質の付着または吸着により変化する振動子の振動特性を検出するものとするのが好ましい。
本発明によれば、半導体ダイオード素子により振動子の温度を検出するので、温度検出部自体が発熱することもなく、熱影響を抑えて高精度に振動子の温度検出を行える。また、一つの基板上に振動検出部と温度検出部とが形成されているため、振動子の近傍で温度検出を行える。これにより、振動子の温度を高精度に計測することが可能となり、また、装置の大型化を抑えることができる。
本実施の形態における検出センサの構成を示す図であり、基板構成を示す斜視図である。 振動子に設けられた振動検出部の構成を示す断面図である。 温度検出部の構成を示す断面図である。 温度検出部の他の例を示す図であり、p型領域とn型領域を櫛歯状として対向させた構成の平面図である。 同、p型領域とn型領域を複数組並列に設ける場合の平面図である。 振動子の応答の温度依存性を示す図であり、周波数と振動センサ出力との関係を示す図である。 温度検出部において検出した温度と、熱電対で検出した温度との対比を示す図である。 温度補償を行わない場合の、周波数変動の例を示す図である。 温度補償を行った場合の周波数変動の例を示す図である。
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における検出センサ10の構成を説明するための図である。
この図1に示す検出センサ10は、検知対象となる特定種の分子(以下、単に分子と称する)を吸着することで、ガスや匂い等の存在(発生)の有無、あるいはその濃度の検出を行うものである。この検出センサ10は、分子を吸着する分子認識膜20を備えた振動子30と、分子認識膜20への分子の吸着を検出する検出部(振動検出部)40と、温度検出部60と、から構成されている。
振動子30は、一端部が固定された片持ち梁状のカンチレバー式である。このような振動子30は、複数組を設けても良い。
図1、図2に示すように、振動子30は、基板50に形成されたキャビティ56の内方に、基板50をフォトリソグラフィ法等のMEMS技術を用いることによって形成されている。振動子30は、平面視長方形状で、厚さは2〜10μm、長さは30〜1000μm、幅は10〜300μmとするのが好ましい。ここで、基板50には、シリコン系材料、より詳しくは単結晶シリコンからなる基板本体51の表面に、SiOからなる絶縁層52が形成され、絶縁層52上にさらにシリコン系材料からなるシリコン層(n型半導体からなる層)53が形成されたSOI(Silicon on Insulator)基板を用いるのが好ましい。この場合、振動子30は、シリコン層53に形成されている。
図1に示したように、振動子30の表面には、検出対象となる分子を吸着または付着させる膜状の分子認識膜20が形成されている。
分子認識膜20は、有機系材料や、無機系材料で形成することができる。本実施の形態においては、分子認識膜20として、ポリブタジエン(PBD)、ポリアクリルニトリル−ブタジエン(PAB)、ポリイソプレン(PIP)、ポリスチレン(PS)等を用いることができる。この他、分子認識膜20として採用できる材料としては、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体などの金属錯体、ポリチオフェン、ポリアニリンなどの導電性高分子、酸化チタン多孔質膜などの無機材料がある。PABは、オクタン、プロパノール等のVOCに選択性を有する。PBDやPIPはトルエンに選択性を有し、PSはnプロパノールやエタノールに高い選択性を有する。また、PSは応答時間が遅い。これらの選択性の違いに基づき、複数の振動子30を備える場合に、組み合わせる分子認識膜20の種類を異ならせることで、物質の選択精度を高めることができる。
分子認識膜20は、滴下法、スピンコート法等、適宜の手法で振動子30の表面に形成すればよい。また、分子認識膜20を形成する材料の振動子30の表面に対する付着性を高めるために、振動子30の表面に例えばAu(金)等の下地膜を形成するのが好ましい。
図2に示すように、振動検出部40は、振動子30の基端部に設けられている。振動検出部40は、振動子30を形成するシリコン層53がn型とされ、その表層部にp型とされたp型領域(ピエゾ抵抗素子)41が形成され、さらにこのp型領域41中に、p型領域41よりも高濃度のp型とされた電極部42、42が形成されることで構成されている。
シリコン層53の表面には、SiOからなる表面絶縁層54が形成されており、この表面絶縁層54にコンタクトホール55を形成することで、電極部42、42が開口される。そして、この電極部42、42に、Al等の導電性材料からなり、表面絶縁層54上に沿って設けられた配線パターン44A、44Bの一端がコンタクトホール55、55において電気的に接続されている。
また、図2に示したように、振動子30の基端部近傍に基板電圧設定用のn型領域49が設けられ、これにも同様にして配線パターン44Cの一端が接続されている。このn型領域49にかける基板電圧は基板50のシリコン層53に対して常にゼロ或いは正の値に設定される(すなわちシリコン層53とn型領域49で構成されるP−N接合が逆バイアスとされる。)。
配線パターン44A、44B、44Cには、基板50の表層部にパッド部44a、44b、44cが形成され、ここにワイヤーボンディング等により接続された配線を介し、外部の電源45が電気的に接続されている。
このような構成のカンチレバー型の振動子30は、基板50に積層されたPZT板等の圧電板75に所定の周波数の電圧を印加することで駆動される。振動検出部40は、例えば外部のコントローラ100から、電源45を制御して電極部42、42に電圧を印加させて、振動子30の振動に伴うp型領域41の応力の時間的変化を、ピエゾ抵抗効果によりその端子電圧の変化、あるいは抵抗の変化として検出する。実際にはp型領域41の両端の電圧の変化をアンプで増幅し、位相を調整して圧電板75に戻す帰還回路によって、振動子30を自励発振させる。
検出センサ10は、検出処理部110を備えており、検出処理部110においては、振動子30の振動によるp型領域41の応力を、ピエゾ抵抗効果によって電極部42,42間の電圧変動として検出することにより、振動子30の振動変化を検出できる。
温度検出部60は、図1および図3に示すように、n型のシリコン層(n型領域)53の表層部に沿って帯状に延びるp型領域61と、p型領域61と対向して平行に延び、シリコン層53よりも高濃度のn型とされた高濃度n型領域(n型領域、高濃度部)62と、を有する。ここで、p型領域61には、n型のシリコン層53に接する部分を形成する第1の濃度のp型領域61よりも、高濃度な第2の濃度のp型とされた高濃度p型領域(p型領域、高濃度部)63が設けられている。
そして、高濃度n型領域62と、高濃度p型領域63とに対応した部分において、表面絶縁層54にコンタクトホール65が形成されており、ここに高濃度n型領域62と高濃度p型領域63とが表面絶縁層54で開口しており、表面絶縁層54上に沿って設けられたAl等の導電性材料からなる配線パターン66A、66Bの一端が電気的に接続されている。
n型領域であるシリコン層53とp型領域61の不純物濃度は、p−n接合ダイオードを形成するため中濃度または低濃度とするのが望ましい。中濃度または低濃度のシリコンは金属電極との界面にショットキー接続を生じてしまい、電気的導通を取ることが難しくなるため、n型領域であるシリコン層53とp型領域61にそれぞれ高濃度領域62、63を設けて電気的導通(オーミック接触)を得られるようにする。配線パターン66A、66BにAlを使用する場合は、配線パターン66A、66Bを形成後にさらに420℃程度の熱処理を行うことで、良好なオーミック接触が得られる。
図1に示したように、配線パターン66A、66Bには、基板50の表層部にパッド部66a、66bが形成されており、ここにワイヤーボンディング等により接続された配線を介し、外部の電流源67、電圧計68が電気的に接続されている。
このような温度検出部60においては、コントローラ100の制御により、電流源67から電流を流す。すると、p型領域61と高濃度n型領域62との間にPNダイオード(半導体ダイオード素子)が構成されるので、検出処理部110では、電圧計68によりp型領域61と高濃度n型領域62の電位差(電圧)を計測することで、計測した電圧から温度を検出することができる。半導体ダイオード素子の順方向の電圧−電流特性は、温度によって変化する自由キャリア濃度に依存しているため、一般に大きな温度依存性を持ち、温度センサとして利用することができる。
ここで、帯状のp型領域61と高濃度n型領域62とを対向させることでダイオードを構成しているが、その直列抵抗を低減するため、p型領域61と高濃度n型領域62とが対向する長さをなるべく大きくするのが好ましい。そこで、図1に示したように、p型領域61の周囲を取り囲むよう、高濃度n型領域62をp型領域61の3辺に沿って所定のクリアランスを有して対向する略U字状に形成するのが好ましい。
さて、基板50上に形成された振動検出部40と温度検出部60は、絶縁されている。このため、図1、図3に示すように、基板50のシリコン層53を貫通して絶縁層52に到達する分離溝(絶縁部、溝)70が、振動検出部40と温度検出部60との間を隔てるように連続して形成されている。
検出処理部110では、予め定められた処理プログラムに基づいた処理を実行することで、振動検出部40で検出した振動子30の振動変化を、温度検出部60で検出した温度に応じて補償(補正)する。
これには、例えば、事前に求めた振動子30の温度係数Tcと、温度検出部60で検出された温度変化量ΔTとから、下式に基づき、振動子30の温度によるドリフト量dfを算出する。
df=Tc×ΔT×(f/f
ここで、fは振動検出部40で検出された振動子30の振動数、fは振動子30の共振周波数である。
検出処理部110は、さらに、算出されたドリフト量dfにより、振動検出部40で検出された振動子30の振動数fを補正し、これを振動子30の振動変化の検出結果として、出力部120から、グラフ、文字情報、シグナル表示、音等により適宜出力する。
なお、検出処理部110における温度に応じた振動変化の補償方法は、上記に限らず、適宜他の手法を用いても良い。
このような検出センサ10は、以下に示すような半導体プロセスによって形成することができる。
まず、SOI基板からなる基板50を構成するn型のシリコン層53に、p型の不純物をドーピングして振動検出部40のp型領域41、温度検出部60のp型領域61を形成する。
次いで、p型領域41、61に高濃度のp型不純物をドーピングすることで、電極部42、高濃度p型領域63を形成する。
また、シリコン層53に、シリコン層53よりも高濃度のn型不純物をドーピングして、高濃度n型領域62と、振動子30の基端部近傍に設けられた基板電圧設定用のn型領域49とを形成する。
この後、シリコン層53の表面に、表面絶縁層54を成膜し、所定の位置にコンタクトホール55、65をエッチングにより形成する。
さらに、配線パターン44A、44B、44C、66A、66Bを形成し、必要に応じてシリコン層53と配線パターン44A、44B、44C、66A、66Bとのオーミック接触を得るための熱処理を行う。
しかる後、基板50のシリコン層53側から、例えば反応性イオンエッチング(RIE)等のエッチング法により、シリコン層53を貫通して絶縁層52に到達するよう、振動子30の外形を形成するとともに、分離溝70を形成する。
そして、基板50の基板本体51側から、RIE等のエッチング法により、基板本体51および絶縁層52を除去してキャビティ56を形成することで、検出センサ10が完成する。
上述したように、検出センサ10は、基板50上に、振動検出部40と温度検出部60とを備えている。これにより、振動検出部40で検出した振動子30の振動変化を、温度検出部60で検出した温度に応じて補償して、高精度な検出を行うことが可能となる。このとき、振動検出部40と温度検出部60は、同一の基板50上に設けられているので、大型化することなく、振動子30の温度を非常に近い位置で正確に検出できる。
しかも、上述したような温度検出部60は、振動検出部40と共通のプロセスで形成することが可能である。すなわち、振動検出部40を形成する工程で、同時に温度検出部60を形成することができ、余分な工程を追加する必要がない。これにより、製造コストの上昇、効率低下を招くことなく温度検出部60を低コストで形成できる。
しかも、温度検出部60は、p型領域61に高濃度p型領域63が設けられているので、この高濃度p型領域63に配線パターン66Aとの電極部における接触抵抗を低減することができている。
また、n型のシリコン層53により高濃度n型領域62が設けられ、この高濃度n型領域62に配線パターン66Bが接続されている。これによって、n型のシリコン層53に対する電極部の接触抵抗を低減することができている。
さらに、温度検出部60は、p型領域61の周囲を取り囲むように、高濃度n型領域62を略U字状に形成することで、その直列抵抗を低減することができる。
このようにして、温度検出部60の抵抗を抑えることで、発熱も抑えることができ、より大きな電流を流すことが可能となり、高精度な温度検出が行える。その結果、高精度な温度補償による検出センサ10の検出精度の向上を図ることができる。
加えて、分離溝70により、同一基板50上に形成された振動検出部40と温度検出部60とが絶縁されている。振動検出部40と温度検出部60とを絶縁せず、シリコン層53を共有して電気的に導通させる構成とすることも可能であるが、その場合、振動検出部40のp型のピエゾ抵抗素子と温度検出部60のPNダイオードに対し、それぞれに応じて電圧、電流を供給する必要があるため、電源等の回路構成が複雑となる。さらに、振動検出部40と温度検出部60とが相互に影響を及ぼし、ノイズ等が生じる可能性がある。
これに対し、分離溝70による絶縁により、振動検出部40と温度検出部60とを電気的に独立させて回路構成を簡易なものとすることができ、前記のような問題を回避して高精度な温度検出を行うことが可能となっている。
なお上記実施形態では、p型領域61と高濃度n型領域62との直列抵抗を低減するために、図1に示すような構成を採用できるものとしたが、これに限るものはなく、図4に示したように、p型領域61と高濃度n型領域62とを、それぞれ互いに平行に複数本を並べて設けた櫛歯状とし、これらp型領域61と高濃度n型領域62とを所定のクリアランスを隔てて噛み合わせるように設けても良い。
また、図5に示すように、p型領域61と、p型領域61の周囲を取り囲むように略U字状に形成した高濃度n型領域62とを、複数組並列して設ける構成とすることも可能である。これにより、p型領域61と高濃度n型領域62との直列抵抗をさらに有効に低減することが可能となる。
上記のような検出センサ10について、実証実験を行った。
まず、シリコン製のカンチレバーの温度依存性を調べた。
厚さ4.5μmのSOI層を持つ基板50から、上記したプロセスにより、長さ200μm、幅50μmの振動子30を製作した。この振動子30に、ネットワークアナライザにより1次の共振モードの周波数(約169kHz)を外部に接続したPZT板からなる圧電板75に印加し、その周波数を変化させた。このとき、雰囲気温度は、0℃、25℃、50℃の3通りとした。このときの振動検出部40から得られる出力の周波数特性を調べた。
図6にその結果を示す。
図6に示すように、0℃、25℃、50℃で振動子30の応答特性は変化し、共振周波数が高温になるほど低周波数側にずれた。この図6から読み取れる共振周波数の温度係数は、約−25ppm/℃であり、シリコンのヤング率の特性から予想される共振周波数の温度係数は−35ppm/℃と近い。
次いで、温度検出部60の温度検出精度について確認した。
図1に示した温度検出部60に、10μAの一定電流を与えたときの、室温(20℃)で600mVとしたときの端子電圧の変化を調べた。比較のため、K熱電対で検出した基板50の温度を示した。
図7はその結果である。
図7に示すように、PNダイオードからなる温度検出部60は、K熱電対より遙かに高精度であり、0.01℃以下の精度で温度が検出可能であった。
次に、図1に示した検出センサ10において、温度検出部60で検出した温度に基づいて補正を行うことの効果を確認した。
まず、
(1)幅50μm、長さ200μmとし、分子認識膜20としてPABを塗布した振動子30、
(2)幅50μm、長さ500μmとし、分子認識膜20としてPBDを塗布した振動子30、
(3)幅50μm、長さ500μmとし、分子認識膜20を塗布していない振動子30、
を用意した。これらは、同一のシリコンチップ(基板50)上に形成されており、同時にセンサ特性の計測実験が可能である。
そして、それぞれの振動子30について、2次の共振モードで駆動(2次の共振周波数である900kHz付近のバンドパスフィルターを用いて検出センサ出力を増幅、位相調整をして圧電板75に入力して動作)させた場合の振動検出部40から得られる出力の周波数変化を、雰囲気温度を変えて調べ、温度係数を求めた。
その結果、(1)の振動子の温度係数は183ppm/℃、(2)は78.3ppm/℃、(3)は34ppm/℃であった。また、温度検出部60の温度係数は、2.18mV/℃であった。
そして、温度検出部60で温度検出を行い、それに基づいて補償を行った場合と、補償を行わなかった場合のそれぞれについて、振動検出部40で振動子30の周波数変化を評価した。ここで、検出センサ10は、容量0.3CCのチャンバ内にセットし、濃度18ppmのアセトン、5ppmのトルエン、5ppmのエタノールを含む1000CCの混合ガスを一旦、0.1gの炭素繊維を充填した吸着管に吸着させる。その吸着管を室温から450℃まで1秒間に1℃の温度上昇をさせ、脱離したガスをチャンバ内に導いて、それぞれを分子認識膜20に吸着させた場合の、周波数変化を調べた。
ここで、温度検出部60で温度検出を行った場合、3秒毎に11回、のべ33秒間について、検出された温度を最小二乗法によって3次関数に当てはめたときの、その平均値を用いて補償を行った。
その結果を図8、図9に示す。
図8に示すように、混合ガスを流した影響等で、時間の経過に伴い基板の温度は26.9℃から27.2℃まで上昇している。温度補償を行わなかった場合、分子認識膜20を塗布しなかった振動子30の振動周波数変化からも明らかなように、時間の経過とともに振動数が低下しており、温度ドリフトが生じていることがわかる。1℃以下のわずかな温度変化であっても、吸着検出には大きな影響が出る。
一方、図9に示すように、温度補償を行った場合、分子認識膜20を塗布しなかった振動子30の振動周波数はほぼ一定であり、温度補償が行われていることが確認できた。また、分子認識膜20を塗布した振動子30において、アセトン、トルエン、エタノールに対する振動数変化のピークがそれぞれ明確になり、高精度な検出を行うこともできる。
なお、上記実施の形態において、振動子30の駆動方式は、例えばPZT以外の圧電素子を用いる等、上記以外の方式を採用することもできる。
例えば、振動子30、温度検出部60が形成された基板50と、それ以外の電源45、電流源67、電圧計68、コントローラ100、検出処理部110は、別体としても良いが、これを一体のユニット化することも可能である。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
10…検出センサ、20…分子認識膜、30…振動子、40…振動検出部、41…p型領域(ピエゾ抵抗素子)、42…電極部、45…電源、50…基板、51…基板本体、52…絶縁層、53…シリコン層(n型半導体からなる層)、54…表面絶縁層、55…コンタクトホール、60…温度検出部、61…p型領域、62…高濃度n型領域(n型領域)、63…高濃度p型領域(p型領域、高濃度部)、66A…配線パターン、66B…配線パターン、66a…パッド部、67…電流源、68…電圧計、70…分離溝(絶縁部、溝)、100…コントローラ、110…検出処理部、120…出力部

Claims (9)

  1. シリコン基板に形成され、一端部または両端部が固定された梁状の振動子と、
    前記振動子を振動させる駆動部と、
    前記振動子の表面に形成されたピエゾ抵抗素子からなり、そのピエゾ抵抗効果から前記振動子における振動の変化を検出する振動検出部と、
    前記振動子の表面に形成された半導体ダイオード素子からなり、前記振動子の温度を検出する温度検出部と、を備えることを特徴とする検出センサ。
  2. 前記振動検出部は、前記シリコン基板のn型半導体からなる層に、p型半導体からなる前記ピエゾ抵抗素子を備え、当該ピエゾ抵抗素子の両端部の電極間の電圧により前記振動子の振動の変化を検出し、
    前記温度検出部は、前記n型半導体からなる前記層に、p型半導体からなるp型領域が設けられることで形成された前記半導体ダイオード素子を備え、p―n接合に定電流を流したときの前記p型領域とn型領域との電位差を検出することで、前記振動子の温度を測定することを特徴とする請求項1に記載の検出センサ。
  3. 前記温度検出部のp型領域は、前記n型半導体からなる前記層に接する部分が、第1の濃度のp型半導体により形成され、その一部に、前記第1の濃度よりも高い第2の濃度のp型半導体により形成された高濃度部が形成され、当該高濃度部に配線が接続されていることを特徴とする請求項2に記載の検出センサ。
  4. 前記n型半導体からなる前記層に、前記振動検出部と前記温度検出部とを電気的に絶縁する絶縁部が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の検出センサ。
  5. 前記絶縁部は、前記層を前記振動検出部と前記温度検出部とに分断する溝であることを特徴とする請求項4に記載の検出センサ。
  6. 前記n型領域と前記p型領域はそれぞれ帯状で、互いに平行に設けられていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の検出センサ。
  7. 前記n型領域は、前記p型領域の2辺以上に沿って設けられていることを特徴とする請求項6に記載の検出センサ。
  8. 前記温度検出部は、対となる前記n型領域と前記p型領域が複数組並列して設けられていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の検出センサ。
  9. 前記振動子の表面に、前記物質を付着または吸着する膜状の分子認識膜が形成され、
    前記振動検出部は、前記分子認識膜への質量を有した物質の付着または吸着により変化する前記振動子の振動特性を検出することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の検出センサ。
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