JP2011194894A - プラスチックフィルム用印刷下地液およびそれを用いたインクジェット記録法 - Google Patents
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また本発明の好ましい態様によれば、下地液は、界面活性剤および/または低表面張力有機溶剤をさらに含んでなる。
本発明による印刷下地液は、前記したように、被記録面がプラスチックフィルムであるインクジェット記録媒体への印刷に用いられるものであって、式(I)の環状アミド化合物と、熱可塑性樹脂と、主溶媒とを少なくとも含んでなるものであり、かつ、熱可塑性樹脂が下地液中で分散されてなるものである。換言すると、本発明による下地液は、式(I)の環状アミド化合物と、主溶媒とを少なくとも含んでなる分散媒と、この分散媒に分散された熱可塑性樹脂とからなるものである。ここで、主溶媒は、後述するように好ましくは水である。また本発明による下地液は、好ましくは、界面活性剤および/または低表面張力有機溶剤をさらに含んでなり、より好ましくは、界面活性剤をさらに含んでなるか、または、界面活性剤および低表面張力有機溶剤をさらに含んでなる。また本発明による下地液は、後述する湿潤剤をさらに含んでなることができる。さらに本発明による下地液は、好ましくは、インクジェット記録方法において用いられる。
本発明による下地液は、プラスチックフィルムに塗布されると、その表面に均一に広がり、この状態で水分が蒸発すると、環状アミド化合物がプラスチックフィルム表面に均一かつ高濃度で残留させることができる。その結果、環状アミド化合物が、プラスチックフィルムの表面から極浅い部分を、溶解もしくは湿潤状態にすることができる。同時に、下地液に含まれる樹脂成分が硬化して被膜化が進行し、下地膜が形成される。このとき、下地膜は、溶解したプラスチックと、混合層を形成すると考えられる。このため、プラスチックフィルム表面と樹脂被膜とが一体化し、プラスチックフィルム面に強固に密着した下地膜が得られる。ここにさらに、加熱により被膜化し得る樹脂を含むインク組成物を付着させた後、そこに含まれる樹脂を硬化させて被膜化させると、このインクの硬化被膜は下地膜と強く結合する。このとき、下地液とインク組成物とに含まれる樹脂が同じ成分であると、その結合は一層強固なものとなる。下地液を使用することにより、下地膜を介してインク層とプラスチックフィルムとの密着性を飛躍的に向上させることができると考えられる。このように密着性が高まることにより、擦りなどの外力や界面への水の浸入による印刷の剥れがほとんど無くなり、耐擦性、耐傷性、および耐水性に優れたプラスチック記録物を形成することができる。このため、プラスチックフィルム自体の耐久性を生かした強靭な印刷物を作成することが可能となる。
本発明による下地液は、式(I)の環状アミド化合物を必須の成分として含んでなる。
式(I)中、前記したように、Rは、直鎖状もしくは分岐鎖状の、C2〜12の飽和炭化水素鎖を表し、Xは、水素原子、または、直鎖状もしくは分岐鎖状のC1〜6のアルキル基を表す。
直鎖状もしくは分岐鎖状の、C2〜12の飽和炭化水素鎖の具体例としては、エチレン、プロピレンなどが挙げられる。
本発明の下地液は、熱可塑性樹脂を含んでなる。熱可塑性樹脂として、下地液の主溶媒に可溶の樹脂、または不溶の樹脂を使用することができる。下地液の主溶媒に可溶の樹脂は、後述の顔料を分散するのに使用する樹脂分散剤を好適に使用することができる。また、下地液の主溶媒に不溶の樹脂は、樹脂粒子を樹脂エマルジョンの形態で下地液に添加することが好ましい。ここで樹脂エマルジョンは、連続相である主溶媒と分散相である樹脂成分(熱可塑性樹脂成分)とからなる。
水溶液は通常プラスチックにはじかれるが、本発明による下地液には、界面活性剤および/または低表面張力有機溶剤を添加することができるため、プラスチック面に均一に環状アミド化合物を塗布することができる。均一に塗布された下地液から水分を蒸発させることで、環状アミド化合物をプラスチック表面に過不足無く定着させ、所望の領域のプラスチック表面だけを溶解することができる。また、下地液が均一に塗布されることにより、下地液に含まれる樹脂もプラスチックフィルム表面で均一に膜化することができる。
プラスチック面に均一に環状アミド化合物を塗布するために、本発明の下地液は、界面活性剤の代わりに、または界面活性剤に加えて、低表面張力有機溶剤を含んでなることができる。
R21O−〔CH2−CH(R23)−O〕t−R22 (ii)
[式中、R21およびR22は、それぞれ独立に、水素原子、または炭素数3〜6のアルキル基(好ましくはブチル基)であり、R22は水素原子または炭素数1〜4の低級アルキル基、好ましくは水素原子、メチル基またはエチル基であり、tは1〜8、好ましくは1〜4の整数であるが、但し、RおよびRの少なくとも一方は炭素数3〜6のアルキル基(好ましくはブチル基)である]で表される化合物である。
下地液の保管および塗布時の扱い易さを考慮して、本発明による下地液には、公知の湿潤剤(水溶性有機溶剤)をさらに加えることができる。湿潤剤を含むことによって、水分蒸発による樹脂成分の凝集固化を防止でき、インクジェット塗布時にインクジェットヘッドのノズルの目詰まりを防止し、吐出安定性を確保することができる。
本発明による下地液は、主溶媒を含んでなる。環状アミド化合物を含む水溶性成分を薄く均一にプラスチック表面に塗布するために、本発明においては、環状アミド化合物を主溶媒で希釈して塗布する。このような主溶媒としては、水または水溶性有機溶媒などが使用可能であるが、本発明においては、安全性などの観点から、水が好ましい。
したがって、本発明における下地液において、好ましくは、主溶媒は水である。ここで使用される水としては、イオン性の不純物を極力低減することを目的として、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。また、紫外線照射、または過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、下地液を長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
本発明の下地液は、上記した各成分を含むことにより、所望の効果を実現できるものであるが、必要に応じて、防腐剤・防かび剤、pH調整剤、溶解助剤、酸化防止剤、ノズルの目詰まり防止剤などをさらに含むことができる。
本発明の下地液は、前記の各配合成分を任意の順序で適宜混合し、溶解(または分散)させた後、必要に応じて不純物などを濾過して除去することにより、調製することができる。
環状アミド化合物 0.1〜40.0重量%;
熱可塑性樹脂 0.1〜15.0重量%(固形分);
界面活性剤 0.01〜5.0重量%;
低表面張力有機溶剤 0〜25.0重量%;
湿潤剤 0〜5.0重量%;および
水 残り。
本発明によるインクジェット記録方法は、前記したように、被記録面がプラスチックフィルムである記録媒体に、下地液を塗布して下地膜を形成させた後、インク組成物の液滴を吐出させ、被記録面に付着させて印刷を行うものである。
本発明において使用し得るインク組成物は、好ましくは、顔料と、熱可塑性樹脂と、水とを少なくとも含んでなる、水性顔料インク組成物である。
本発明において、水性顔料インク組成物は、水系インクジェット記録用インク組成物において従来から使用されている任意の顔料を含むことができる。顔料としては、例えば、インクジェット記録用インク組成物において従来から使用されている有機顔料または無機顔料を用いることができる。顔料は、水溶性樹脂や界面活性剤等の分散剤とともに分散した樹脂分散顔料、または顔料表面に親水性基を導入し分散剤の使用なしで水系媒体に分散もしくは溶解可能とした表面処理顔料として、インク組成物に添加することができる。なお、顔料を樹脂分散剤で分散する場合、熱可塑性樹脂を分散剤として使用してもよい。また、顔料は2種以上を組合せて用いてもよい。
本発明において、水性顔料インク組成物は熱可塑性樹脂を含んでなる。熱可塑性樹脂は、前記した下地液の「熱可塑性樹脂」の欄の記載に従って適宜選択して使用することができる。
本発明において、水性顔料インク組成物は、水を含んでなる。ここで水は、前記した下地液の「主溶媒と」の欄の記載に従って選択することができる。また水性顔料インク組成物は、浸透剤、保湿剤等の公知の他の成分や、前記した下地液の「界面活性剤」、「低表面張力有機溶剤」、「湿潤剤」および「他の成分」等の欄の記載に従って適宜選択して使用することができる。
本発明による下地液を下記の組成にしたがって調製した。
(下地液1:)
2−ピロリドン 10.0 重量%
ε−カプロラクタム 10.0 重量%
スチレン−アクリル酸共重合体 5.0 重量%(固形分)
ジエチレングリコール 4.0 重量%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0 重量%
サーフィノール465 1.0 重量%
純水 残り
N−メチル−2−ピロリドン 10.0 重量%
ε−カプロラクタム 10.0 重量%
スチレン−アクリル酸共重合体 5.0 重量%(固形分)
ジエチレングリコール 4.0 重量%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0 重量%
サーフィノール465 1.0 重量%
純水 残り
水性顔料インク組成物を下記の組成にしたがってそれぞれ調製した。
(黒インク:)
カーボンブラックMA7(三菱化成株式会社製) 5.0 重量%
スチレン−アクリル酸共重合体(熱可塑性樹脂) 2.5 重量%(固形分)
グリセリン 3.0 重量%
ジエチレングリコール 4.0 重量%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0 重量%
2−ピロリドン 3.0 重量%
サーフィノール465 1.0 重量%
純水 残り
C.I.ピグメントブルー15:3 2.0 重量%
スチレン−アクリル酸共重合体(熱可塑性樹脂) 1.0 重量%(固形分)
グリセリン 3.0 重量%
ジエチレングリコール 6.0 重量%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0 重量%
2−ピロリドン 3.0 重量%
サーフィノール465 1.0 重量%
純水 残り
C.I.ピグメントレッド122 3.0 重量%
スチレン−アクリル酸共重合体(熱可塑性樹脂) 1.5 重量%(固形分)
グリセリン 3.0 重量%
ジエチレングリコール 5.0 重量%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0 重量%
2−ピロリドン 3.0 重量%
サーフィノール465 1.0 重量%
純水 残り
C.I.ピグメントイエロー74 2.0 重量%
スチレン−アクリル酸共重合体(熱可塑性樹脂) 1.0 重量%(固形分)
グリセリン 3.0 重量%
ジエチレングリコール 6.0 重量%
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0 重量%
2−ピロリドン 3.0 重量%
サーフィノール465 1.0 重量%
純水 残り
(印刷サンプルの作成(例1〜5):)
インクジェットプリンタ(TM−J8000;セイコーエプソン株式会社製)を用いてインクジェット印刷専用の表面処理を施していない軟質塩化ビニルフィルム(スコッチカルフィルム;住友スリーエム株式会社製)に、下地液1または下地液2を、50%dutyで塗布した。その後、60℃、相対湿度20%の恒温槽で1時間乾燥して下地膜を形成させた。次いで、黒インク、またはシアンインク、マゼンタインク、イエローインクを充填したインクジェットプリンタ(TM−J8000;セイコーエプソン株式会社製)を用いて、100%dutyパターンを印刷した。
印刷サンプルは60℃、相対湿度20%の恒温槽で1時間、さらに室温で1日乾燥した後、下記の評価試験を行った。
黒インク、またはシアンインク、マゼンタインク、イエローインクを充填したインクジェットプリンタ(TM−J8000;セイコーエプソン株式会社製)を用いて、例1と同じ軟質塩化ビニルフィルム(下地液の塗布はなし)に100%dutyパターンを印刷した。これを60℃、相対湿度20%の恒温槽で1時間、さらに室温で1日乾燥した後、下記評価試験をおこなった。
(評価1: 耐擦性および耐傷性)
各硬度の鉛筆についてJIS K−5600−5−4に規定される750g荷重鉛筆引っ掻き試験器(株式会社井本製作所製)を使用して、印刷膜が取れた引っ掻き傷(凝集破壊)の有無を調べた。その結果を次の基準で評価した。
A: HB硬度鉛筆で傷つかず下地が現れない。
B: HB硬度鉛筆で傷ついて下地が現れるが、B硬度鉛筆では傷つかず下地が現れない。
C: B硬度鉛筆で傷ついて下地が現れる。
粘着テープ(セロテープ(登録商標)No.252;積水化学工業株式会社製)を印刷サンプルの印刷部に貼り、指で2ないし3回擦った後に粘着テープを引き剥がした。その部分の印刷部の状態を目視で観察した。その結果を次の基準で評価した。
A: 塩化ビニルフィルムからのインク(着色剤)の剥離が全く無い。
B: 塩化ビニルフィルムからインク(着色剤)の一部が剥離する。
C: 塩化ビニルフィルムからインク(着色剤)が完全に剥離している。
印刷サンプルの印刷部に水道水を1滴付着させて1分間放置し、その後ガーゼで水滴を拭き取った。拭き取った後の印刷部およびガーゼの状態を目視で観察した。その結果を次の基準で評価した。
A: 塩化ビニルフィルムからのインク(着色剤)の剥離が全く無く、ガーゼも着色しない。
B: 塩化ビニルフィルムからインク(着色剤)の一部が剥離し、ガーゼが着色している。
C: 塩化ビニルフィルムからインク(着色剤)が完全に剥離し、ガーゼが着色している。
Claims (23)
- 主溶媒が水である、請求項1に記載の下地液。
- 界面活性剤および/または低表面張力有機溶剤をさらに含んでなる、請求項1または2に記載の下地液。
- 界面活性剤をさらに含んでなるか、または、界面活性剤および低表面張力有機溶剤をさらに含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の下地液。
- 式(I)の環状アミド化合物を少なくとも2種含んでなる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の下地液。
- 式(I)中、Rが直鎖状もしくは分岐鎖状のC2〜5の飽和炭化水素基を表し、かつ、Xが水素原子またはメチル基を表す、請求項1〜5のいずれか一項に記載の下地液。
- 環状アミド化合物が、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、およびε−カプロラクタムからなる群より選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の下地液。
- 湿潤剤をさらに含んでなる、請求項1〜7のいずれか一項に記載に記載の下地液。
- 界面活性剤が、アセチレングリコール系界面活性剤である、請求項3〜8のいずれか一項に記載の下地液。
- 低表面張力有機溶剤が、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、または、トリエチレングリコールモノブチルエーテルである、請求項3〜9のいずれか一項に記載の下地液。
- 環状アミド化合物の含有量が0.1〜40.0重量%であり、
熱可塑性樹脂の含有量が固形分換算で0.1〜15.0重量%であり、かつ、
界面活性剤の含有量が0.01〜5.0重量%である、請求項3〜10のいずれか一項に記載の下地液。 - インクジェット記録方法により記録媒体に塗布される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の下地液。
- インク組成物の印刷前に、記録媒体に塗布して下地膜を形成するために使用される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の下地液。
- インク組成物が、顔料と、熱可塑性樹脂と、水とを少なくとも含んでなる、水性顔料インク組成物であり、かつ
下地液に含まれる熱可塑性樹脂と、水性顔料インク組成物に含まれる熱可塑性樹脂とが同じ成分である、請求項13に記載の下地液。 - 請求項1〜13のいずれか一項に記載の印刷下地液、および
顔料と、熱可塑性樹脂と、水とを少なくとも含んでなる、水性顔料インク組成物を含んでなる、インクジェット記録用セット。 - 下地液に含まれる熱可塑性樹脂と、インク組成物に含まれる熱可塑性樹脂とが同じ成分である、請求項15に記載のセット。
- 被記録面がプラスチックフィルムである記録媒体に、下地液を塗布して下地膜を形成させた後、インク組成物の液滴を吐出させ、下地膜に付着させて印刷を行うインクジェット記録方法であって、
下地液が、請求項1〜11のいずれか一項に記載の印刷下地液であり、かつ、インク組成物が、顔料と、熱可塑性樹脂と、水とを少なくとも含んでなる水性顔料インク組成物である、インクジェット記録方法。 - 下地液に含まれる熱可塑性樹脂が、インク組成物に含まれる熱可塑性樹脂と同じ成分である、請求項17に記載の方法。
- 下地液の塗布を、該液滴を吐出させ、記録媒体の被記録面に付着させることによるインクジェット記録方法により行う、請求項17または18に記載の方法。
- インク組成物を付着させる前に、
塗布した下地液の水分を蒸発させて下地膜を形成させる乾燥工程をさらに含んでなる、請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。 - 被記録面に付着させたインク組成物を加熱して樹脂被膜を形成させる加熱工程をさらに含んでなる、請求項17〜20のいずれか一項に記載の方法。
- 乾燥工程の乾燥処理および/または加熱工程の加熱処理を、ヒーター加熱または温風乾燥により行う、請求項21に記載の方法。
- 請求項17〜22のいずれか一項に記載の方法によって印刷された、記録物。
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