JP2011193631A - モータ駆動車両の報知装置 - Google Patents

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健 土野
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Abstract

【課題】報知音を発生する必要がある状況が否かを的確に判別して、報知音の発生により歩行者の車道への飛び出しを確実に防止した上で、モータ走行による静音性に関する利点を最大限に発揮できるモータ駆動車両の報知装置を提供する。
【解決手段】CCDカメラ14により自車の側方の領域Aを撮像し、歩道と車道との間の防護柵Xが撮像画像中に途切れることなく連続して認識されなかったときには、歩行者が車道に飛び出し得る状況と見なしてスピーカ15から報知音を発生させ、防護柵Xが連続して認識されたときには、歩行者が車道に飛び出し得ない状況と見なして報知音の発生を禁止する。
【選択図】図4

Description

本発明はモータ駆動車両の報知装置に係り、詳しくは電動モータによる走行時に周囲の歩行者や自転車など(以下、単に歩行者と総称する)に向けて報知音を発して自車の接近を認識させるモータ駆動車両の報知装置に関する。
近年、ガソリンエンジンなどの内燃機関を走行用動力源とする自動車に代わり、バッテリから供給される電力により電動モータを駆動して走行する電気自動車、水素ガスを燃料とする燃料電池で発電された電力により電動モータを駆動して走行する燃料電池車両、或いは内燃機関と電動モータとを備えたハイブリッド車両などが普及し始めている。
この種の車両が電動モータの駆動により走行しているときには、従来の内燃機関を備えた車両に比較して騒音を低減できるという大きな長所がある反面、歩行者が自車の接近に気付かずに歩道から車道に飛び出すなどのアクシデントを発生する可能性がある。そこで、モータ走行時にはスピーカから報知音を発生させて、周囲の歩行者に自車の接近を認識させるなどの対策が検討されている。
しかしながら、報知音を発生させる対策は、例えば閑静な住宅地などを走行する際にモータ走行により得られる静音性の利点を損なうことに繋がるため、全ての道路において当該対策を実施することは好ましくない。
このような要望に着目した対策として、特許文献1の技術が提案されている。当該特許文献1の技術では、カーナビゲーション情報に基づき車両が高速道路以外の一般道を走行中であり、且つ自車の前方に障害物が存在するときには、ダミー音発生器によりダミー音(報知音)を発生させ、一方、車両が高速道路を走行中のときには、障害物が存在しないと見なしてダミー音の発生を禁止するようにしている。
特開2002−238101号公報
上記のように特許文献1の技術では、高速道路以外の一般道で前方に障害物が存在するときには、障害物が歩行者である場合を想定して車道への飛び出し防止のためにダミー音を発生させている。しかしながら、自車の前方に歩行者が存在するとしても、必ずしも全ての状況で歩行者の車道への飛び出しを配慮する必要はない。
例えば、自車が走行中の車道と歩行者がいる歩道とが防護柵(ガードレール)などにより区画されているときには、歩行者が防護柵を越えて車道に飛び出す可能性はなく、ダミー音を発生させる必要もない。
このような状況であっても特許文献1の技術では無条件でダミー音を発生させているため、不必要なダミー音により本来のモータ走行による静音性に関する利点を十分に活かすことができないという問題があった。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、報知音を発生する必要がある状況か否かを的確に判別して、報知音の発生により歩行者の車道への飛び出しを確実に防止した上で、モータ走行による静音性に関する利点を最大限に発揮することができるモータ駆動車両の報知装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、電動モータを動力源として所定車速未満で走行するモータ走行時に、周囲の歩行者に対して報知手段から報知音を発して自車の接近を知らせるモータ駆動車両の報知装置において、自車が走行する車道と歩行者用の歩道との区画状態を識別する識別手段と、識別手段により車道と歩道とが区画されていないと識別されたときに報知手段に対して報知音の発生を指令し、識別手段により車道と歩道とが区画されていると識別されたときに報知手段に対して報知音の発生を禁止する報知制御手段とを備えたものである。
従って、識別手段により車道と歩道との区画状態が識別され、区画されていないと識別されたときには報知手段により報知音が発生され、一方、区画されていると識別されたときには報知手段からの報知音の発生が禁止される。このように車道と歩道とが区画されておらず歩行者の飛び出しが起こり得る状況に限って、報知音の発生により歩行者に自車の接近を認識させ、一方、車道と歩道との区画により歩行者の飛び出しが起こり得ない状況では、報知音の発生を禁止することによりモータ走行による静音性が維持される。
請求項2の発明は、請求項1において、識別手段が、車道と歩道との間の防護柵の有無に基づき区画状態を識別するものである。
従って、車道と歩道との間に防護柵が存在しないときには歩行者の車道への飛び出しが起こり得る状況と見なせ、車道と歩道との間に防護柵が存在するときには歩行者の車道への飛び出しが起こり得ない状況と見なせることから、防護柵の有無に基づき車道と歩道との区画状態を的確に識別可能となる。
請求項3の発明は、請求項2において、識別手段が、車道と歩道との間の防護柵が途切れることなく連続しているとき、または防護柵が途切れている欠落箇所の幅が歩行者の通過を阻止可能な最大値近傍に設定された所定値未満のときに、車道と歩道とが区画されていると識別し、防護柵の欠落箇所の幅が所定値以上のときには、車道と歩道とが区画されていないと識別するものである。
従って、防護柵の欠落箇所の幅が所定値以上のときには、歩行者の通過が防護柵により阻止されずに車道への飛び出しが起こり得る状況と見なせ、防護柵が途切れることなく連続しているとき、または途切れている欠落箇所の幅が所定値未満のときには、歩行者の通過が防護柵により阻止されて車道への飛び出しが起こり得ない状況と見なせることから、この判定に基づき車道と歩道との区画状態を一層的確に識別可能となる。
請求項4の発明は、請求項1乃至3において、識別手段が、自車の側方の少なくとも車両全長に対応する領域において車道と歩道との区画状態を識別するものである。
従って、車両の発進直後や停止直前において、自車の側方で車道と歩道とが区画されて歩行者の飛び出しが起こり得ない状況では報知音の発生が禁止されるため、発進した車両が走り去るまで或いは車両が完全停止するまでの長時間に亘って歩行者が無用な報知音を聞き続ける事態が防止される。
請求項5の発明は、請求項1乃至4において、自車の車速を検出する車速検出手段を備え、報知制御手段が、車速検出手段により検出された車速に応じて報知手段の報知音の音量を変化させるものである。
従って、自車の車速に応じて報知音の音量が変化することから、歩行者は音量の変化から車両の接近が急なものか否かを容易に認識可能となる。
請求項6の発明は、請求項4において、自車の車速を検出する車速検出手段を備え、識別手段が、車速検出手段により検出される車速が低いときには自車の側方の車両全長に対応する領域において車道と歩道との区画状態を識別し、車速の増加に応じて領域を車両前方に拡大するものである。
従って、請求項4の発明について述べたように、車速が低いときには自車の側方の領域において車道と歩道との区画状態を識別することが望ましいが、一方で、車速が増加すると自車の前方での歩行者の飛び出しに対してブレーキなどの迅速な対処が要求されることから、自車の前方での車道と歩道との区画状態を識別することも重要となる。車速の増加に応じて区画状態を識別する領域を車両前方に拡大することにより、自車の前方で車道と歩道とが区画されなくなったときには直ちに報知音を発生可能となる。
以上説明したように請求項1の発明のモータ駆動車両の報知装置によれば、車道と歩道とが区画されておらず歩行者の飛び出しが起こり得る状況に限って報知音を発生させることにより、歩行者に自車の接近を認識させて車道への飛び出しを確実に防止した上で、車道と歩道との区画により歩行者の飛び出しが起こり得ない状況では、報知音の発生を禁止することでモータ走行による静音性に関する利点を最大限に発揮することができる。
請求項2の発明のモータ駆動車両の報知装置によれば、請求項1に加えて、防護柵の有無に基づき車道と歩道との区画状態を的確に識別することができる。
請求項3の発明のモータ駆動車両の報知装置によれば、請求項2に加えて、防護柵の連続状態及び欠落箇所の幅に基づき車道と歩道との区画状態を一層的確に識別することができる。
請求項4の発明のモータ駆動車両の報知装置によれば、請求項1乃至3に加えて、車両の発進直後や停止直前において、自車の側方で車道と歩道とが区画されて歩行者の飛び出しが起こり得ない状況での報知音の発生を禁止でき、もって発進した車両が走り去るまで或いは車両が完全停止するまでの長時間に亘って歩行者が無用な報知音を聞き続ける事態を防止して、モータ走行の静音性をより効果的に発揮することができる。
請求項5の発明のモータ駆動車両の報知装置によれば、請求項1乃至4に加えて、自車の車速に応じて報知音の音量を変化させることにより、自車の接近が急なものか否かを歩行者に容易に認識させることができる。
請求項6の発明のモータ駆動車両の報知装置によれば、請求項4に加えて、車速の増加に応じて車道と歩道との区画状態を識別する領域を車両前方に拡大することにより、自車の前方で車道と歩道とが区画されなくなったときに直ちに報知音を発生させて、自車の接近を歩行者に認識させることにより、歩行者の飛び出しを確実に防止することができる。
本発明の報知装置が適用された電気自動車を示す全体構成図である。 CCDカメラの高さ方向の撮像領域と防護柵との関係を示す図である。 車両ECUが実行する報知制御ルーチンを示すフローチャートである。 車道と歩道とが防護柵で区画されない場合、及び連続した防護柵で車道と歩道とが区画された場合を示す道路の平面図である。 防護柵が途切れて車道と歩道とが区画されない場合を示す道路の平面図である。 防護柵に代えて段差を撮像するようにした別例を示す図である。
以下、本発明を走行用動力源として電動モータを備えた電気自動車の報知装置に具体化した一実施形態を説明する。
図1は本発明の報知装置が適用された電気自動車を示す全体構成図であり、同図では車両を平面視で示しており、図中の上側が車両前部に相当する。車両には走行用動力源として走行モータ1(電動モータ)が搭載されており、走行モータ1は減速機2及び差動装置3を介して左右の後輪4に連結され、走行モータ1の駆動力により後輪4が回転駆動されるようになっている。走行モータ1は誘導型モータ、或いは永久磁石同期型モータとして構成され、インバータ回路5を介して駆動用のバッテリ6が電気的に接続されている。
インバータ回路5は、車両の走行時においてバッテリ6からの電力を走行モータ1に供給して駆動制御し、走行モータ1の駆動力により後輪4を回転駆動する一方、車両の減速時には、後輪4からの逆駆動により走行モータ1が発生した交流の回生電力を整流してバッテリ6に充電する。
また、バッテリ6にはバッテリECU7が電気的に接続され、バッテリECU7はバッテリ6の充電電流及び放電電流を逐次積算することによりバッテリ6のSOC(State Of Charge)を算出するようになっている。
一方、車室内には図示しない入出力装置、制御プログラムや制御マップ等の記憶に供される記憶装置(ROM,RAMなど)、中央処理装置(CPU)、タイマカウンタ等を備えた車両ECU(電子制御ユニット)11が設置されている。車両ECU11には上記したインバータ回路5及びバッテリECU7が電気的に接続されると共に、車速Vを検出する車速センサ12(車速検出手段)やアクセル操作量Accを検出するアクセルセンサ13などのセンサ類が電気的に接続されている。
そして、車両ECU11は電気自動車を走行させるための各種制御を実行する。即ち、車速センサ12により検出された車速V及びアクセルセンサ13により検出されたアクセル操作量Accに基づき所定のマップから要求トルクを算出し、この要求トルクを達成するようにインバータ回路5に走行モータ1を駆動制御させる。また、車速Vやアクセル操作量Accから車両の減速を判定したときには、インバータ回路5に走行モータ1からの回生電力をバッテリ6に充電させる。
ところで、[発明が解決しようとする課題]でも述べたように、特許文献1に記載された従来技術では、一般道で自車の進路上への歩行者の飛び出しを防止するために全ての状況において無条件で報知音を発しているため、モータ走行による静音性に関する利点を十分に活かせないという不具合があった。そこで、本実施形態の報知装置では対策を講じており、以下、当該報知装置に関わる構成について詳述する。
車両ECU11には、報知装置の構成要素としてCCDカメラ14及びスピーカ15(報知手段)が電気的に接続されている。これらのCCDカメラ14及びスピーカ15は車両の左側、即ち歩道側に面するように設置されている。図2はCCDカメラ14の高さ方向の撮像領域と防護柵Xとの関係を示し、図1には自車の前後方向の撮像領域Aと防護柵Xとの関係が併記されている。
車道と歩道との間の間に防護柵Xが設けられている場合、防護柵Xは高さ方向においてCCDカメラ14の撮像領域内に位置して撮像されることになるが、CCDカメラ14の水平方向の画角αは、図1に示すように、車両が車道(2車線の場合には歩道側のレーン)を走行しているときに、自車の全長に対応する領域(自車の前端から後端までの領域)Aの防護柵Xを撮像するように設定されている。
スピーカ15は周囲の歩行者に報知音を発生させる役割を果たし、報知音としては車両の走行を想起させる連続音が望ましく、例えば連続的なブザー音、或いはエンジン音を模した音色の作動音を発生させる。また、スピーカ15の設置位置については車両の左側に限ることはなく、スピーカ15から発した報知音が周囲の歩行者に届くのであれば、例えば車両前部に設けてもよい。
これらのCCDカメラ14及びスピーカ15を用いて、車両ECU11は自車の周辺の歩行者に対する報知のために図3に示す報知制御ルーチンを所定の制御インターバルで実行している。
まず、ステップS2で現在車両が走行中であるか否かを判定する。走行中とは前進のみならず後退の場合も含み、何れにも該当せずに停車中のときにはNo(否定)の判定を下してステップS4に移行する。ステップS4では、スピーカ15からの報知音の発生を禁止した後、一旦ルーチンを終了する。
また、車両が走行中であるとしてステップS2でYes(肯定)の判定を下したときにはステップS6に移行する。ステップS6では、現在の車速Vが予め設定された報知上限車速Vlmt、例えば20km/h未満であるか否かを判定する。報知上限車速Vlmtは歩行者への報知音による報知を要する上限の車速として設定されたものであり、この報知上限車速Vlmt以上の車速Vではタイヤノイズなどの走行音の増大により歩行者が自ずと自車の接近を認識することから、報知音は不要と見なすことができる。従って、ステップS6の判定がNoのときには、上記ステップS4で報知音の発生を禁止してルーチンを終了する。
また、車速Vが報知上限車速Vlmt未満であるとしてステップS6でYesの判定を下したときにはステップS8に移行する。ステップS8では、CCDカメラ14により撮像された画像中から防護柵Xが識別されるか否かを判定する。
撮像画像の解析処理については、例えば特開2007−265038号公報などにより周知であるため概要のみを述べる。まず、CCDカメラ14から取り込んだ撮像画像を画像強調処理によりエッジ抽出を容易にした上で、撮像画像中の輝度や色が急変するエッジ成分を抽出する。例えば、この抽出処理には周知の1次水平微分フィルタを適用する。このようにして抽出したエッジ成分は撮像された被写体の輪郭であり、撮像画像中に防護柵Xが存在すれば、この防護柵Xの輪郭も当然に含まれる。
次いで、例えば周知のHough変換などを適用して、撮像画像から抽出したエッジ成分から直線成分を抽出する。さらに、直線成分の位置や傾き、或いは直線成分間の関連性などに基づき、画像中で一定方向に連続している直線成分を連続成分として抽出する。そして、抽出した連続成分の中で防護柵Xに該当するものがあれば、その連続成分を防護柵Xとして識別する。
このときの識別内容は防護柵Xの形状に応じて異なるが、例えばCCDカメラ14側から見て、一般的に防護柵Xの上端と下端(図2中のX1,X2に相当)とは、上下に所定間隔を隔て前後方向に延びる一対の連続成分として認識され、その高さも歩行者が乗り越えに躊躇する程度の常識的な高さであるため、このような条件を満たす上下一対の連続成分が画像中に存在すれば、これらの連続成分を防護柵Xとして識別する。
撮像画像中から防護柵Xが識別されない場合にはステップS8でNoの判定を下し、ステップS10に移行してスピーカ15から報知音を発生させた後にルーチンを終了する。
また、撮像画像中から防護柵Xが識別された場合にはステップS8でYesの判定を下してステップS12に移行する。ステップS12では、以下の条件1),2)の何れかが成立しているか否かを判定する。
1)撮像画像中に防護柵Xとして識別された上下一対の連続成分が撮像画像の一端から他端まで水平方向に途切れることなく連続していること
2)連続成分が途切れている場合には、その欠落箇所の水平方向の幅X0(実際の防護柵Xの寸法に換算後の値)が歩行者の通過を阻止可能な最大値近傍に設定された所定値Xlmt未満であること
これらの条件1),2)の何れかが成立しているとき、撮像画像の領域内で防護柵Xが歩行者の飛び出し防止の機能を奏していると見なすことができる。このときの車両ECU11はステップS12でYesの判定を下し、上記ステップS4に移行して報知音の発生を禁止する。
また、条件1),2)が共に成立していないとき、即ち、撮像画像中の連続成分が途切れており、その欠落箇所の水平方向の幅X0が上記所定値Xlmt以上であるときには、撮像領域A内で防護柵Xが歩行者の飛び出し防止の機能を奏していないと見なすことができる。このときの車両ECU11はステップS12でNoの判定を下し、上記ステップS10に移行して報知音を発生させる。
本実施形態では、車両の側方を撮像するCCDカメラ14、及びその撮像画像に基づきステップS8,12の処理で防護柵Xの有無、その連続状態、欠落箇所の幅X0に関する判定を行うときの車両ECU11が、本発明の識別手段として機能する。また、ステップS10,4の処理で報知音の発生及び発生の禁止を行うときの車両ECU11が、本発明の報知制御手段として機能する。
ここで、報知音の音量は常に一定に設定してもよいし、車速センサ12により検出される車速Vに応じて音量を変化させてもよい。
音量を変化させる場合には、歩行者が車両の走行状態を認識し易いような変化が望ましい。そこで、例えば停車時の報知音の音量を0に設定し、車速Vの増加に応じて報知音の音量を次第に増加させてもよい。このように報知音の音量を制御すれば、歩行者は音量の変化から車両の接近が急なものか否かを容易に認識することができる。
なお、ステップS12では条件2)を必ずしも設定する必要はなく、当該条件2)を省略してもよい。この場合には、撮像画像中で連続成分が途切れることなく連続しているときのみ、条件1)の成立に基づき報知音の発生が禁止され、防護柵Xが連続していないときには欠落箇所の大小に関わらず、条件1)の不成立に基づき報知音を発生することになる。
以上の車両ECU11の処理は、撮像画像に基づく防護柵Xの識別結果に基づき歩行者への報知の要否を判別できるとの知見に基づくものであり、以下に防護柵Xの設置状況毎に説明する。
まず、撮像画像中に防護柵Xが識別されない場合には、車道と歩道とが防護柵Xにより区画されていない道路であると推測できる。図4中のaに該当するが、このような道路では、歩行者は歩道から車道に自由に移動できるため車道に飛び出す可能性があり、歩行者に自車の接近を認識させる必要があると見なせる。
よって、このときの車両ECU11は図3のステップS8からステップS10に移行してスピーカ15から報知音を発生させており、これにより歩行者は自車の接近を認識して車道への飛び出しが未然に防止される。
また、撮像画像中に防護柵Xが識別され、且つ識別した防護柵X(連続成分)が撮像画像中の一端から他端まで水平方向に途切れることなく連続している場合(条件1の成立時)、または途切れているとしても欠落箇所の幅X0が所定値Xlmt未満である場合(条件2の成立時)には、図4中のbに示すように、少なくとも撮像領域A内では防護柵Xにより歩行者の車道への飛び出しが起こり得ない状況と推測できる。このときの車両ECU11は、図3のステップS8からステップS12を経てステップS4で報知音の発生を禁止しており、これによりモータ走行ならではの静音性が得られる。
一方、撮像画像中に防護柵Xが識別されたとしても、防護柵Xが途切れており且つ欠落箇所の幅X0が所定値Xlmt以上の場合には、図5中のcに示すように、その防護柵Xの途切れた箇所をすり抜けて歩行者が車道に飛び出す可能性がある。よって、撮像領域A内で防護柵Xは歩行者の飛び出し防止の機能を奏しておらず、歩行者の車道への飛び出しが起こり得る状況と推測できる。
このときの車両ECU11は図3のステップS8からステップS12を経てステップS10でスピーカ15から報知音を発生させており、これにより歩行者は自車の接近を認識して車道への飛び出しが未然に防止される。
以上のように本実施形態のハイブリッド車両の報知装置では、撮像画像に基づく防護柵Xの識別結果に応じて車道への歩行者の飛び出しが起こり得る状況か否かを的確に判別でき、もって歩行者の飛び出しが起こり得る状況に限って報知音を発生させ、防護柵Xにより歩行者の飛び出しが起こり得ない状況では報知音の発生を禁止している。従って、報知音の発生により歩行者の車道への飛び出しを確実に防止した上で、モータ走行による静音性に関する利点を最大限に発揮することができる。
また、防護柵Xの有無を識別するための撮像領域Aを自車の全長に対応して設定していることから、モータ走行の静音性をより効果的に生かすことができる。
即ち、防護柵Xにより歩行者の飛び出しが起こり得ない状況にも拘わらず無用な報知音を発生させたとき、居合わせた歩行者は報知音を騒音として感じるが、その悪影響は発進直後や停止直前の微速走行時の方が大となる。車両の走行速度が低ければ、居合わせた歩行者は無用な報知音を長時間(発進直後では車両が走り去るまで、停止直前では車両が完全停止するまで)聞き続けるためである。
本実施形態では、自車の全長に対応して設定された撮像領域A内で防護柵Xの有無を識別しているため、自車の側方で防護柵Xにより歩行者の飛び出しが防止されていれば報知音の発生が禁止される。従って、発進直後や停止直前において自車の側方に歩行者が居合わせた場合であっても、発進した車両が走り去るまで或いは車両が完全停止するまで、長時間に亘って歩行者が無用な報知音を聞き続ける事態を防止でき、モータ走行の静音性をより効果的に生かすことができる。
ところで、上記実施形態では、車道と歩道との間に設けた防護柵Xが歩行者の車道への飛出しを防止するとの観点の下に、撮像画像に基づく防護柵Xの識別結果に応じて報知音を発生させたが、例えば図6に示すように、車道に対して歩道が一段高くなるように段差Yが形成されている場合でも、歩行者が歩道から車道に飛び出すには段差Yを降りる必要があることから、心理的に車道への飛び出しを防止する作用を果たす。そこで、上記実施形態と同様に、CCDカメラ14により歩道と車道との間の段差Yを撮像し、その撮像画像に基づく段差Yの識別結果に応じて報知音を発生させてもよい。
具体的には、CCDカメラ14で撮像された画像中のエッジ成分から直線成分を抽出し、一定方向に連続する連続成分から段差Yに該当するものを識別する。例えば図6に示すように、段差Yの断面形状は上側の角部Y1及び下側の隅部Y2により形作られ、これらの角部Y1及び隅部Y2は、撮像画像中では地表付近で上下に所定間隔を経て前後方向に延びる一対の連続成分として認識される。従って、このような条件を満たす上下一対の連続成分が画像中に存在すれば、これらの連続成分を歩道と車道との間の段差Yとして識別する。
また、駐車場から歩道を横切って車道に出るために、図6中に破線で示すように段差Yには車道に向けて下るようにスロープY0が形成される場合がある。このようなスロープY0の箇所では、上記実施形態の防護柵Xの欠落箇所と同様に歩行者の飛び出しを防止する作用が得られず、一方では、段差Yを形作る角部Y1及び隅部Y2がなだらかになるため撮像画像中の上下一対の連続成分も途切れることなり、この点も防護柵Xの欠落箇所と同様である。
従って、図3のフローチャートのステップS8で撮像画像中から段差Yを識別したか否かを判定し、段差Yを識別した場合にはステップS12で段差Yが連続(条件1)、スロープ有りでも幅が所定値未満(条件2)の何れかの条件を満たすか否かを判定し、その判定結果に応じてステップS10の報知音の発生とステップS4の報知音の禁止とを実行すればよく、重複する説明はしないが、この場合でも上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
また、上記実施形態では、車両の発進直後や停止直前の微速走行時に特に無用な報知音による歩行者への悪影響が大になるという観点の下に、自車の全長に対応して設定された撮像領域Aでの防護柵Xの識別結果に応じて報知音の発生を禁止したが、これに限ることはなく、自車の全長よりも前後に拡大した領域を設定してもよい。
さらに、上記したように微速走行時には自車の側方の防護柵Xを識別することが望ましいが、一方で、車速Vが増加すると自車の前方での歩行者の飛び出しに対してブレーキなどの迅速な対処が要求されることから、自車の前方の防護柵Xを識別することも重要となる。
そこで、車速≒0(発進直後や停止直前)のときには自車の全長に対応して撮像領域Aを設定し、車速Vの増加に応じて撮像領域Aを車両前方に次第に拡大するようにしてもよい。このように構成することにより、自車の前方で防護柵Xが存在しなくなったときに直ちに報知音を発生させて、歩行者の飛び出しを確実に防止することができる。
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、バッテリ6から供給される電力により走行モータ1を駆動して走行する電気自動車に具体化したが、走行用動力源として電動モータを備えるモータ駆動車両であれば、適用対象となる車両はこれに限るものではない。
例えば燃料電池で発電された電力により電動モータを駆動して走行する燃料電池車両に適用してもよいし、走行用動力源として電動モータを用いて発電用に内燃機関を使用するシリーズ式ハイブリッド車両に適用してもよい。或いは、走行用動力源として内燃機関と電動モータとを備えたパラレル式ハイブリッド車両において、電動モータの走行時に適用するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、CCDカメラ14により自車の全長と対応する領域Aを撮像して防護柵Xの識別に適用したが、より広い領域を撮像した上で、その撮像画像から自車の全長と対応する領域を抽出して防護柵Xの識別に適用してもよい。さらに、CCDカメラ14の撮像画像を用いることなく、別の手法を用いて防護柵Xを識別するようにしてもよく、例えばレーザレーダを用いてもよい。
この場合には、レーザレーダヘッドよりパルスレーザ光を水平方向及び垂直方向に走査しながら車両側方の所定領域全体(撮像領域Xに相当)に照射し、反射光が検出されるまでの時間間隔(=距離)及びパルスレーザ光の照射角度に基づきレーザレーダヘッドを原点とする三次元空間データを測定する。この三次元空間データに基づき照射領域中に存在する物体の位置及びサイズを演算し、その中に防護柵Xの位置及びサイズに該当する物体が存在するか否か、存在するとすれば照射領域中の一端から他端まで水平方向に途切れることなく連続しているか否かを識別する。
この別例では、以上の構成が本発明の識別手段に相当するものであり、重複する説明はしないが、この識別結果に応じて報知音を発生または禁止すれば、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
1 走行モータ(電動モータ)
11 車両ECU(識別手段、報知制御手段)
12 車速センサ(車速検出手段)
14 CCDカメラ(識別手段)
15 スピーカ(報知手段)

Claims (6)

  1. 電動モータを動力源として所定車速未満で走行するモータ走行時に、周囲の歩行者に対して報知手段から報知音を発して自車の接近を知らせるモータ駆動車両の報知装置において、
    自車が走行する車道と歩行者用の歩道との区画状態を識別する識別手段と、
    上記識別手段により上記車道と歩道とが区画されていないと識別されたときに上記報知手段に対して報知音の発生を指令し、上記識別手段により上記車道と歩道とが区画されていると識別されたときに上記報知手段に対して報知音の発生を禁止する報知制御手段と
    を備えたことを特徴とするモータ駆動車両の報知装置。
  2. 上記識別手段は、上記車道と歩道との間の防護柵の有無に基づき上記区画状態を識別することを特徴とする請求項1記載のモータ駆動車両の報知装置。
  3. 上記識別手段は、上記車道と歩道との間の防護柵が途切れることなく連続しているとき、または該防護柵が途切れている欠落箇所の幅が歩行者の通過を阻止可能な最大値近傍に設定された所定値未満のときに、上記車道と歩道とが区画されていると識別し、上記防護柵の欠落箇所の幅が上記所定値以上のときには、上記車道と歩道とが区画されていないと識別することを特徴とする請求項2記載のモータ駆動車両の報知装置。
  4. 上記識別手段は、自車の側方の少なくとも車両全長に対応する領域において上記車道と歩道との区画状態を識別することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のモータ駆動車両の報知装置。
  5. 自車の車速を検出する車速検出手段を備え、
    上記報知制御手段は、上記車速検出手段により検出された車速に応じて上記報知手段の報知音の音量を変化させることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のモータ駆動車両の報知装置。
  6. 自車の車速を検出する車速検出手段を備え、
    上記識別手段は、上記車速検出手段により検出される車速が低いときには自車の側方の車両全長に対応する領域において上記車道と歩道との区画状態を識別し、車速の増加に応じて上記領域を車両前方に拡大することを特徴とする請求項4記載のモータ駆動車両の報知装置。
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