JP2011186647A - 工業プロセスの決定方法、決定システム、及び決定プログラム - Google Patents

工業プロセスの決定方法、決定システム、及び決定プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】廃棄物に適用すべき工業プロセス(リサイクル、リユース又は廃棄)について、現場の事情を反映させつつ最適なものを選択するために、当該工業プロセスを適切に評価することが可能な決定方法を提供する。
【解決手段】廃棄物に含まれる成分を分析し、廃棄物に適用しようとする工業プロセスであってリサイクルプロセス、リユースプロセス、又は、廃棄プロセスのいずれかを選択し、廃棄物の分析結果に基づいて工業プロセスにおいて廃棄物に適用する複数の処理プロセスを選択し、選択した処理プロセス一つ一つについて、少なくとも下記観点から評価を行い、当該評価結果に基づいて複数の処理プロセスからなる工業プロセス全体としての評価を行い、最適な工業プロセスを決定する決定方法とする。
(1)場所の観点:廃棄物の発生場所及び処理プロセスの場所
【選択図】 図1

Description

本発明は、廃棄物処理における工業プロセスを評価し、最適な工業プロセスを決定するための方法、システム、及びプログラムに関する。
近年、世界的な消費拡大にともなって、様々な産業分野において製品生産量が増大している。一方で、製品生産量の増大に伴って、製品の廃棄量も増大するものと考えられ、将来的に当該製品を廃棄物として廃棄する必要が生じた場合、当該廃棄物を如何にして処理するかについても具体的に考慮していかねばならない。
例えば、特許文献1には、製品のリサイクル性や環境負荷の評価結果に基づき、リサイクル性の向上と環境負荷低減とを図った物作りのための部品/材料選択を支援する設計支援装置が開示されている。当該設計支援装置によれば、製品の設計段階において、リサイクル性の阻害要因や環境負荷の悪化要因を分析でき、当該阻害要因や悪化要因に対する改善策を講じながら製品を製造することができるので、その結果、リサイクル性が向上された製品を製造することができ、製品廃棄時、容易にリサイクルすることができるものと考えられる。
また、生産者側だけでなくユーザ側においても、環境負荷の小さな行動が求められる。例えば、特許文献2には、複数の異なる条件の下での環境負荷に基づいて、ユーザが修理、購入等の電子機器の取り扱いを選択することのできる電子機器が開示されており、当該技術によれば、ユーザは、自身が所有する製品の現在までの環境負荷や将来の環境負荷を把握することができ、自身が所有する製品に対して、より地球環境に優しいプロセスを選択することができるものと考えられる。或いは、特許文献3には、人間の行動を現実に即して正確に予測することができる行動予測装置が開示されており、当該技術によれば、人間の生活行動について、環境負荷の小さな行動を取捨選択できるものと考えられる。
特許第3873010号公報 特開2007−189409号公報 特開2008−123487号公報
特許文献1によれば、リサイクル性が向上された製品を設計することができるものと考えられるが、製品を廃棄物として処理する場合において、当該廃棄物に適用される工業プロセスはリサイクルプロセスのみではない。廃棄物をリユースする場合も考えられるし、或いは、リサイクル、リユースの双方とも不可能で、製品を廃棄しなければならない場合もある。また、必ずしも廃棄物のリサイクルを行うことが環境負荷低減に繋がるとはいえない。特に、廃棄物処理には必ず物流が伴い、廃棄物の輸送プロセスにおいて二酸化炭素の排出等の環境負荷が生じることが多々ある。すなわち、リサイクル可能な廃棄物であっても、リユースや廃棄処理に供する方が環境負荷を小さくすることができる場合もあり得る。
このように、廃棄物を処理する場合は、種々の工業プロセスから最適なものを取捨選択する必要がある。しかしながら、廃棄物には様々な物質が含まれているため、適用すべき工業プロセスにおける処理プロセス(粉砕、圧縮、分離、輸送等)が複雑であり、また、廃棄物を処理する場合においては、上記したように輸送に起因した環境負荷要因が存在することから、従来の技術にあっては、リサイクル、リユース、又は廃棄のいずれの工業プロセスが最適であるか一意的に決定することは困難であった。このような問題は、特許文献1〜3を組み合わせても解決することができないものであった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、廃棄物に適用すべき工業プロセス(リサイクル、リユース、又は廃棄)について、現場の事情を反映させつつ、適切に評価し、最適なものを決定することが可能な、工業プロセスの決定方法、決定システム、及び決定プログラムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成をとる。すなわち、
第1の本発明は、廃棄物に含まれる成分を分析する、分析工程と、廃棄物に適用しようとする工業プロセスであって、リサイクルプロセス、リユースプロセス、又は、廃棄プロセスのいずれかを選択する、工業プロセス選択工程と、分析工程における分析の結果に基づいて、工業プロセスにおいて廃棄物に適用する複数の処理プロセスを選択する、処理プロセス選択工程と、処理プロセス選択工程において選択した処理プロセス一つ一つについて、少なくとも下記観点から、処理プロセスの評価を行う、第1評価工程と、第1評価工程における評価の結果に基づいて、複数の処理プロセスからなる工業プロセス全体としての評価を行う、第2評価工程と、第2評価工程における評価の結果に基づいて、最適な工業プロセスを決定する、工業プロセス決定工程と、を有する、工業プロセスの決定方法である。
(1)場所の観点:廃棄物の発生場所、及び複数の処理プロセスのそれぞれの場所
第1の本発明に係る第1評価工程において、場所の観点に加えて、さらに下記3つの観点から、処理プロセスの評価を行うことが好ましい。時間の観点から、例えば、工業プロセス全体に必要な時間が特定され、工業プロセスにかかる時間的価値を評価指標の一つとすることができる。すなわち、工業プロセスにかかる時間が少ないほど、工業プロセスの時間的価値に優れることとなる。また、ユーザの観点及びリスクマネージメントの観点から、不適切な工業プロセスを候補から排除し、或いは、処理プロセスを適切に評価することができる。
(2)時間の観点:処理プロセスの所要時間、好ましくはさらに、処理速度及び保存(保管)期間
(3)ユーザの観点:廃棄物を処理するためのユーザ側の事情
(4)リスクマネージメントの観点:資源リスク又は廃棄物の廃棄に関する規制へのリスク
第1の本発明に係る第1評価工程において、少なくとも、処理プロセスに必要なコスト、及び処理プロセスからの二酸化炭素発生量を算出することが好ましい。少なくともこれらを算出することによって、処理プロセスをさらに適切に評価することができるためである。
第1の本発明において、複数の処理プロセスが、輸送処理、圧縮処理、貯蔵処理、乾燥処理、粉砕処理、分離処理、混合処理、熱及び圧力処理、光制御処理、電気化学反応処理、凝集処理、分散処理、薄膜化処理、吸着処理、脱着処理、組み付け処理、分解処理、機械加工処理、内燃機関、モータ又はジェネレータの稼働処理、電力制御処理、並びに磁力制御処理からなる群から選ばれる、少なくとも2つ以上の処理プロセスであることが好ましい。当該群から廃棄物に適用する処理プロセスを選択するものとすることで、廃棄物に適用する処理プロセスを細分化して表現することができ、工業プロセス全体として適切な評価をすることができるためである。
第2の本発明は、廃棄物に含まれる成分を分析する、分析手段と、廃棄物に適用しようとする工業プロセスであって、リサイクルプロセス、リユースプロセス、又は、廃棄プロセスのいずれかを選択する、工業プロセス選択手段と、分析手段における分析の結果に基づいて、工業プロセスにおいて廃棄物に適用する複数の処理プロセスを選択する、処理プロセス選択手段と、処理プロセス選択手段において選択した処理プロセス一つ一つについて、少なくとも下記観点から、処理プロセスの評価を行う、第1評価手段と、第1評価手段における評価の結果に基づいて、複数の処理プロセスからなる工業プロセス全体としての評価を行う、第2評価手段と、第2評価手段における評価の結果に基づいて、最適な工業プロセスを決定する、工業プロセス決定手段と、を有する、工業プロセスの決定システムである。
(1)場所の観点:廃棄物の発生場所、及び複数の処理プロセスのそれぞれの場所
第2の本発明に係る第1評価手段において、場所の観点に加えて、さらに下記3つの観点から処理プロセスの評価を行うことが好ましい。時間の観点から、例えば、工業プロセス全体に必要な時間が特定され、工業プロセスにかかる時間的価値を評価指標の一つとすることができる。すなわち、工業プロセスにかかる時間が少ないほど、工業プロセスの時間的価値に優れることとなる。また、ユーザの観点及びリスクマネージメントの観点から、不適切な工業プロセスを候補から排除し、或いは、処理プロセスを適切に評価することができる。
(2)時間の観点:処理プロセスの所要時間、好ましくはさらに、処理速度及び保存(保管)期間
(3)ユーザの観点:廃棄物を処理するためのユーザ側の事情
(4)リスクマネージメントの観点:資源リスク又は廃棄物の廃棄に関する規制へのリスク
第2の本発明において、第1評価手段が、少なくとも、処理プロセスに必要なコスト、及び処理プロセスからの二酸化炭素発生量を算出するものであることが好ましい。少なくともこれらを算出することによって、処理プロセスをさらに適切に評価することができるためである。
第2の本発明において、複数の処理プロセスが、輸送処理、圧縮処理、貯蔵処理、乾燥処理、粉砕処理、分離処理、混合処理、熱及び圧力処理、光制御処理、電気化学反応処理、凝集処理、分散処理、薄膜化処理、吸着処理、脱着処理、組み付け処理、分解処理、機械加工処理、内燃機関、モータ又はジェネレータの稼働処理、電力制御処理、並びに磁力制御処理からなる群から選ばれる、少なくとも2つ以上の処理プロセスであることが好ましい。当該群から廃棄物に供する処理プロセスを選択するものとすることで、廃棄物に適用する処理プロセスを適切に表現することができ、工業プロセス全体として適切な評価をすることができるためである。
第3の本発明は、工業プロセス選択手段に、廃棄物に適用しようとする工業プロセスであって、リサイクルプロセス、リユースプロセス、又は、廃棄プロセスのいずれかを選択させ、処理プロセス選択手段に、廃棄物に含まれる成分の分析結果に基づいて、工業プロセスにおいて廃棄物に適用する複数の処理プロセスを選択させ、第1評価手段に、処理プロセス選択手段において選択させた処理プロセス一つ一つについて、少なくとも下記観点から、処理プロセスの評価を行わせ、第2評価手段に、第1評価手段における評価の結果に基づいて、複数の処理プロセスからなる工業プロセス全体としての評価を行わせ、工業プロセス決定手段に、第2評価手段における評価の結果に基づいて、最適な工業プロセスを決定させる、工業プロセスの決定プログラムである。
(1)場所の観点:廃棄物の発生場所、及び複数の処理プロセスのそれぞれの場所
第3の本発明において、第1評価手段に、場所の観点に加えて、さらに下記3つの観点から処理プロセスの評価を行わせることが好ましい。時間の観点から、工業プロセス全体に必要な時間を特定させることで、工業プロセスにかかる時間的価値を評価指標の一つとして組み込ませることができる。すなわち、工業プロセスにかかる時間が少ないほど、工業プロセスの時間的価値に優れることとなる。また、ユーザの観点及びリスクマネージメントの観点から、不適切な工業プロセスを候補から排除し、或いは、処理プロセスを適切に評価することができる。
(2)時間の観点:処理プロセスの所要時間、好ましくはさらに、処理速度及び保存(保管)期間
(3)ユーザの観点:廃棄物を処理するためのユーザ側の事情
(4)リスクマネージメントの観点:資源リスク又は廃棄物の廃棄に関する規制へのリスク
第3の本発明において、第1評価手段に、少なくとも、処理プロセスに必要なコスト、及び処理プロセスからの二酸化炭素発生量を算出させることが好ましい。少なくともこれらを算出させることによって、処理プロセスをさらに適切に評価させることができるためである。
第3の本発明において、複数の処理プロセスが、輸送処理、圧縮処理、貯蔵処理、乾燥処理、粉砕処理、分離処理、混合処理、熱及び圧力処理、光制御処理、電気化学反応処理、凝集処理、分散処理、薄膜化処理、吸着処理、脱着処理、組み付け処理、分解処理、機械加工処理、内燃機関、モータ又はジェネレータの稼働処理、電力制御処理、並びに磁力制御処理からなる群から選ばれる、少なくとも2つ以上の処理プロセスであることが好ましい。当該群から廃棄物に供する処理プロセスを選択するものとすることで、廃棄物に適用する処理プロセスを適切に表現することができ、工業プロセス全体を適切に評価させることができるためである。
第1の本発明に係る工業プロセスの決定方法によれば、廃棄物に適用すべき工業プロセス(リサイクル、リユース、又は廃棄)に対して、一つ一つの処理プロセスについて評価を行い、且つ、一つ一つの処理プロセスの評価結果をまとめて、工業プロセス全体としての評価を行い、当該工業プロセス全体としての評価結果から、最適な工業プロセスを決定するものとしているため、従来よりも工業プロセスを適切に評価でき、現場の事情を反映させつつ、最適なものを決定することが可能である。特に、場所の観点から、工業プロセスにおける物流を評価に組み込むことができるので、輸送によって生じるコストや環境負荷も、工業プロセスの評価に適切に組み込むことができる。
第2の本発明に係る工業プロセスの決定システムによれば、廃棄物に適用すべき工業プロセス(リサイクル、リユース、又は廃棄)に対して、一つ一つの処理プロセスについて評価が行われ、一つ一つの処理プロセスの評価結果をまとめて、工業プロセス全体としての評価が行われ、さらに、工業プロセスの評価結果に基づいて最適な工業プロセスを決定するものとしているため、従来よりも工業プロセスを適切に評価でき、現場の事情を反映させつつ最適なものを決定することが可能である。特に、場所の観点から、工業プロセスにおける物流を評価に組み込むことができるので、輸送によって生じるコストや環境負荷も、工業プロセスの評価に適切に組み込むことができる。
第3の本発明に係る工業プロセスの決定プログラムによれば、廃棄物に適用すべき工業プロセス(リサイクル、リユース、又は廃棄)について、一つ一つの処理プロセスについて評価を行わせ、一つ一つの処理プロセスの評価結果をまとめて、工業プロセス全体としての評価を行わせ、さらに、工業プロセス全体としての評価結果から、最適な工業プロセスを決定させるものとしているため、従来よりも工業プロセスをより適切に評価させることができ、現場の事情を反映させつつ最適なものを決定させることが可能である。特に、場所の観点から、工業プロセスにおける物流を評価に組み込むことができるので、輸送によって生じるコストや環境負荷も、工業プロセスの評価に適切に組み込むことができる。
一実施形態に係る本発明の工業プロセスの決定方法を示すフローチャートである。 一実施形態に係る本発明の工業プロセスの決定方法における処理プロセス決定工程の一例を示すフローチャートである。 一実施形態に係る本発明の工業プロセスの決定方法における第1評価工程の一例を示すフローチャートである。 一実施形態に係る本発明の工業プロセスの決定方法における第1評価工程の具体例を説明するための図である。 廃棄物が所定の工業プロセスに供される場合の当該工業プロセスの流れを示すフローチャートである。 一実施形態に係る本発明の工業プロセスの決定方法における第2評価工程の一例を説明するためのフローチャートである。 一実施形態に係る本発明の工業プロセスの決定システムを説明するための概略図である。
1.工業プロセスの決定方法
図1に、本発明に係る工業プロセスの決定方法の一例を示す。図1に示すように、工業プロセスの決定方法S100(以下、「決定方法S100」という。)は、廃棄物に含まれる成分を分析する、分析工程S1と、廃棄物に適用しようとする工業プロセスであって、リサイクルプロセス、リユースプロセス、又は、廃棄プロセスのいずれかを選択する、工業プロセス選択工程S2と、分析工程S1における分析の結果に基づいて、工業プロセスにおいて廃棄物に適用する複数の処理プロセスを選択する、処理プロセス選択工程S3と、処理プロセス選択工程S3において選択した処理プロセス一つ一つについて、少なくとも下記観点から、処理プロセスの評価を行う、第1評価工程S4と、第1評価工程S4における評価の結果に基づいて、複数の処理プロセスからなる工業プロセス全体としての評価を行う、第2評価工程S5と、第2評価工程S5における評価の結果に基づいて、最適な工業プロセスを決定する、工業プロセス決定工程S6と、を有している。
(1)場所の観点:廃棄物の発生場所、及び、複数の処理プロセスのそれぞれの場所
1.1.分析工程S1
分析工程S1は、製造プロセス等において発生した廃棄物(例えば、廃棄バイオマス等の有機系廃棄物や、廃棄電子機器、電気機器等の無機系廃棄物)を、公知の分析手段を用いて分析し、当該廃棄物に含まれる成分、材料を同定する工程である。分析工程S1は、廃棄物の発生元にあるユーザによって或いは下記処理プロセスを実行する中間業者等によって、その場その場で行われることが好ましい。分析工程S1における分析方法としては、熱分析、光分析、表面分析、組成分析、重量分析、粒子径測定等、種々の分析方法を採用することができ、特に限定されるものではない。例えば、廃棄バイオマスを分析する場合、重量分析によって、廃棄バイオマスに含まれるC、H、O、N等のモル比を決定することができ、これによって、例えば、廃棄バイオマスを燃料としてリサイクルできるのか、リサイクルする場合には如何なる化学反応に供するべきか、リユースに供する場合に如何なる化学反応に供するべきか、廃棄する場合にどのような処理を経て廃棄すべきか等を、適切に特定することができる。
1.2.工業プロセス選択工程S2
工業プロセス選択工程S2は、廃棄物を、リサイクルプロセス、リユースプロセス又は廃棄プロセスのいずれに供するか選択する工程である。工業プロセスの選択は、分析工程S1における分析結果から、可能性が高いものを選択すればよい。例えば、廃棄物が廃棄バイオマスである場合、分析工程S1において、当該廃棄バイオマスの重量分析を行って、含有されるC、H、O、N等のモル比を特定する。そして、当該C、H、O、N等のモル比から、廃棄バイオマスを燃料エネルギーとして適用可能であるか(リサイクル或いはリユース)、又は廃棄バイオマスを燃料エネルギーとして適用不可能であるか(廃棄)を判定することができる。ただし、廃棄物をリサイクルすることができる場合であっても、リユースや廃棄に供したほうが、コストや環境負荷が減少する場合がある。そのため、仮に分析工程S1の結果から、廃棄物のリサイクルが可能と判断された場合でも、廃棄物をリユースプロセス或いは廃棄プロセスに供した場合の評価も併せて行うことで、より最適な工業プロセスを決定することができる。また、同じリサイクルであっても、様々な方法が考えられ、廃棄物をいずれのリサイクルプロセスに供するべきか判断できない場合もある。そこで、同一カテゴリーに係る工業プロセスを複数候補として挙げておき、当該工業プロセスすべてについて評価を行うことで、例えば、同じリサイクルプロセスであっても、より最適な工業プロセスを決定することができる。リユースや廃棄プロセスについても同様である。
また、工業プロセス選択工程S2において、廃棄物をどの工業プロセスに適用すべきか特定できない場合でも、リサイクルプロセス、リユースプロセス及び廃棄プロセスすべてについて、本発明に係る工業プロセスの決定方法に基づいて、一つ一つ評価していくことで、最適なものを決定することができる。
分析工程S1の分析結果と、工業プロセス選択工程S2により選択された工業プロセスとから、廃棄物に供するべき処理プロセスは自ずと選択・決定される。廃棄物をリサイクルに供する場合、リユースに供する場合、又は、廃棄に供する場合で、それぞれ適用される処理プロセスは当然異なる。リユースの場合は、廃棄対象物の詳細情報を業者がインターネット等を通じて配信し、リユース希望者に情報伝達することが可能となる。この場合は、リユース希望者への配送距離によって値段設定が変動する。
1.3.処理プロセス選択工程S3
処理プロセス選択工程S3は、分析工程S1の分析結果と、工業プロセス選択工程S2により選択された工業プロセスとから、廃棄物に供するべき複数の処理プロセスを選択する工程である。すなわち、分析工程S1の分析結果から、工業プロセスにおける廃棄物の化学的処理や物理的処理が選択される。例えば、廃棄物を所定の化学反応に供するものとして想定した場合、廃棄物に適用すべき化学的処理プロセス或いは物理的処理プロセスは、下記のような流れにて選択することができる。
図2に、決定方法S100における処理プロセス選択工程S3の一例を示した。図2に示されるように、処理プロセス選択工程S3は、反応時の原料に固体を含むか否かを判定する工程S3−1と、反応時の圧力が自然昇圧以上であるか否かを判定する工程S3−2と、反応時に分離が必要か否かを判定する工程S3−3と、生成物の分離が必要か否かを判定する工程S3−4とを備えている。
工程S3−1において、反応時の原料に固体を含むと判定された場合は、反応に最適な所定の粒子径となるまで、原料を粉砕する必要がある。そのため、処理プロセスとして粉砕処理が追加される。一方、処理プロセスとして粉砕処理が追加されると、当該粉砕処理を実施可能な業者(業者A1、A2、…)から一の業者(例えば業者A1)を選定する(ここで、業者A1、A2、…には廃棄物発生現場であるユーザも含まれ得る。)。当該業者A1を選定することにより、原料の発生現場から業者A1までの距離が決定され、輸送処理の詳細(輸送時間、輸送距離、輸送手段等)が決定される。工程S3−1にて決定された当該輸送処理も、工業プロセスにおける一つの処理プロセスとなる。
工程S3−1を経て、工程S3−2に進む。工程S3−2において、反応時の圧力が自然昇圧以上であると判断された場合、昇圧処理が必要となる。当該昇圧処理も、工業プロセスにおける一つの処理プロセスとなる。一方、処理プロセスとして昇圧処理が追加されると、当該昇圧処理を実行可能な業者(業者B1、B2、…)から一の業者(例えば、業者B1)を選定する(ここで、業者B1、B2、…には廃棄物発生現場であるユーザや、上記業者A1も含まれ得る。)。工程S3−1で選定した業者A1において昇圧処理が実行可能であれば、業者A1において、昇圧処理も実行するものとすればよい。一方、業者A1において昇圧処理が不可能である場合、工程S3−1に戻って粉砕処理と昇圧処理とを実行可能な業者(例えば、業者A2)を選定し直すか、或いは、業者A1にて粉砕処理を行ったうえで、業者B1まで粉砕後の原料を輸送するものとする。業者A2を選定した場合、改めて輸送処理の詳細が決定される。また、業者B1を選定した場合にも、新たに輸送処理が伴うため、輸送処理の詳細が決定される。工程S3−2にて決定された当該輸送処理も、工業プロセスにおける一つの処理プロセスとなる。
工程S3−2を経て、工程S3−3に進む。工程S3−3において、反応時に分離が必要であると判断された場合、分離処理が必要となる。当該分離処理も、工業プロセスにおける一つの処理プロセスとなる。一方、処理プロセスとして分離処理が追加されると、当該分離処理を実行可能な業者(業者C1、C2、…)から一の業者(例えば、業者C1)を選定する(ここで、業者C1、C2、…には廃棄物発生現場であるユーザの業者や、上記業者A1、A2、業者B1も含まれ得る。)。既に選定した業者において分離処理が実行可能であれば、既に選定した業者において、分離処理も実行すればよい。一方、既に選定した業者において分離処理が不可能である場合、工程S3−1に戻って粉砕処理と昇圧処理と分離処理とを実行可能な業者(例えば業者A3)を選定し直すか、工程S3−2に戻って昇圧処理と分離処理とを実行可能な業者(例えば業者B2)を選定し直すか、或いは、業者B1にて昇圧処理を行ったうえで、業者C1まで昇圧後の原料を輸送するものとする。業者A3やB2を選定した場合、改めて輸送処理の詳細が決定される。また、業者C1を選定した場合にも、輸送処理が伴うため、輸送処理の詳細が決定される。工程S3−3にて決定された当該輸送処理も、工業プロセスにおける一つの処理プロセスとなる。
尚、工程S3−3において適用される分離処理は、反応時の原料の詳細によって、適用されるプロセスを下記I型〜VI型に分けることができる。すなわち、原料を液−液分離に供する場合は、分離処理として蒸留処理を行えばよい(I型)。原料を液−固分離に供する場合は、分離処理として沈降処理、濾過処理、遠心分離処理、融点の差による分離処理、又は溶解処理のうちのいずれかを行えばよい(II型)。原料を液−気分離に供する場合は、圧縮・凝集処理及び濾過処理を行えばよい(III型)。原料を気−気分離に供する場合は、フィルタによる分離処理、又は吸着処理のいずれかを行えばよい(IV型)。原料を気−固分離に供する場合は、フィルタによる分離処理、サイクロンによる分離処理、スクラバーによる分離処理、集塵処理、又は晶析処理のいずれかを行えばよい(V型)。原料を固−固分離に供する場合は、ふるいによる分離処理、風力分級による分離処理、水力分級による分離処理、起泡分離処理、磁気分離処理、又は静電分離処理のいずれかを行えばよい(VI型)。このように分離処理は、反応時の原料の状態によって適宜変更することができる。ただし、上記した分離処理は一例であり、その他分離方法によって分離を行ってもよい。
工程S3−3を経て、工程S3−4に進む。工程S3−4において、反応後に得られた生成物について分離が必要であると判断された場合、さらなる分離処理が必要となる。当該さらなる分離処理も、工業プロセスにおける一つの処理プロセスとなる。一方、処理プロセスとしてさらなる分離処理が追加されると、さらなる分離処理を実行可能な業者(業者D1、D2、…)から一の業者(例えば、業者D1)を選定する(ここで、業者D1、D2、…には廃棄物発生現場であるユーザや、上記業者A1〜A3、業者B1、B2、業者C1も含まれ得る。)。すでに選定した業者において、さらなる分離処理が実行可能であれば、既に選定した業者において、さらなる分離処理も実行するものとすればよい。一方、既に選定した業者においてさらなる分離処理が不可能である場合、工程S3−1に戻って粉砕処理と昇圧処理と分離処理とさらなる分離処理とを実行可能な業者(例えば業者A4)を選定し直すか、工程S3−2に戻って昇圧処理と分離処理とさらなる分離処理とを実行可能な業者(例えば業者B3)を選定し直すか、工程S3−3に戻って分離処理及びさらなる分離処理を実行可能な業者(例えば業者C2)を選定し直すか、或いは、業者C1にて分離処理を行ったうえで、業者D1まで生成後の生成物を輸送するものとする。業者A4、業者B3や業者C2を選定した場合、改めて輸送処理の詳細が決定される。また、業者D1を選定した場合にも、輸送処理が伴うため、輸送処理の詳細が決定される。工程S3−4にて決定された当該輸送処理も、工業プロセスにおける一つの処理プロセスとなる。
工程S3−4に係る分離処理ついても、工程S3−3と同様にして決定することができる。すなわち、生成物の状態(気体、液体又は固体)に応じて、I型〜VI型の分離処理のいずれかを適用すればよい。
工程S3−1〜工程S3−4のいずれにおいても否定判断がなされた場合は、例えば、廃棄物の発生現場にて、廃棄物に対して問題なく所定の化学反応を生じさせることができるものと考えられ、他の業者を介することなく、リサイクル、リユース或いは廃棄に供することができるものと考えられる。また、工程S3−1〜工程S3−4において、肯定判断がなされる場合でも、廃棄物の発生現場にて各処理プロセスを実行可能な場合があり、この場合は、輸送処理が省略される。尚、上記説明では、工程S3−1〜工程S3−4について、一つ一つ順に行うものとして記載しているが、工程S3−1〜工程S3−4は順不同であり、同時に行うものであってもよい。或いは、廃棄物処理業者を予め複数選定しておき、工程S3−1〜工程S3−4を経て、複数の処理プロセスを選択した後、当該複数の処理プロセスを実行可能な廃棄物処理業者を、消去法により特定していくような形態であってもよい。
工程S3−1〜工程S3−4を経ることで、工業プロセスにおいて廃棄物に適用すべき複数の処理プロセスが選択される。尚、上記した工程S3−1〜工程S3−4は、処理プロセス選択工程S3の一例である。工業プロセスにおいて廃棄物に適用する処理プロセスとしては、輸送処理、昇圧・降圧処理、貯蔵処理、乾燥処理、粉砕処理、分離処理、混合処理、蒸留処理、熱及び圧力処理、光制御処理、電気化学反応処理、凝集処理、分散処理、薄膜化処理、吸着処理、脱着処理、組み付け処理、分解処理、機械加工処理、内燃機関、モータ又はジェネレータの稼働処理、電力制御処理、並びに磁力制御処理のいずれかから、少なくとも2つ以上が選択されればよい。
「輸送処理」とは、上述した通り、原料や生成物等の輸送に伴う処理プロセスである。輸送処理は、輸送手段や輸送距離、輸送時間や輸送量によって詳細が決定される。
「昇圧・降圧処理」とは、反応時に必要となる昇圧が、大気圧からの自然昇圧以上と判断された場合に必要となる昇圧処理、或いは、反応時に必要となる降圧が、大気圧からの自然降圧以上と反応された場合に必要となる降圧処理に係る処理プロセスである。昇圧・降圧処理は、昇圧装置や降圧装置のスペック(規模や昇圧・降圧方法等)、処理時間、昇圧・降圧に供する原料や生成物の量、物性、反応時の圧力、冷却の有無、冷却水の温度、コンプレッサ出力、効率、段数等のパラメータによって詳細が決定される。昇圧・降圧処理の詳細の決定において、当該パラメータをすべて考慮する必要はなく、必要に応じて適宜追加・削除すればよい。昇圧・降圧処理は、ポリトロープ圧縮式、経験値や、公知の化学工学シミュレータ等を用いて詳細を決定することができる。
「貯蔵処理」とは、原料や生成物を一時貯蔵する場合に必要となる処理プロセスである。例えば、廃棄物が一定量以上とならないと反応に供することができない場合等のユーザの事情によって、貯蔵処理が必要となる場合がある。このようなユーザの事情によって貯蔵処理が必要となった場合でも、当該貯蔵処理によって生じるコストや環境負荷が想定されるので、工業プロセスにおける一つの処理プロセスとして考慮する必要がある。貯蔵処理は、貯蔵手段のスペック(規模等)、貯蔵時間、貯蔵する原料や生成物の量、物性、圧力、温度、気体の場合は吸着剤や吸蔵特性等のパラメータによって詳細が決定される。貯蔵処理の詳細の決定において、当該パラメータをすべて考慮する必要はなく、必要に応じて適宜追加・削除すればよい。貯蔵処理は、経験値や、公知の化学工学シミュレータ等を用いて詳細を決定することができる。
「乾燥処理」とは、原料や生成物を乾燥する場合に必要となる処理プロセスである。乾燥処理は、乾燥手段のスペック(規模や乾燥方法等)、乾燥時間、乾燥温度、乾燥に供する原料や生成物の量、物性、含水量(wt%)等のパラメータや、乾燥処理における仕事関数(例えば、材料毎に経験的に決定される)等によって詳細が決定される。乾燥処理の詳細の決定において、当該パラメータをすべて考慮する必要はなく、必要に応じて適宜追加・削除すればよい。乾燥処理は、経験値や、公知の化学工学シミュレータ等を用いて詳細を決定することができる。
「粉砕処理」とは、上述したように、反応に供する原料に固体が含まれていた場合、当該固体を化学反応に最適な粒子径とするために粉砕する場合に必要となる処理プロセスである。粉砕処理は、粉砕手段のスペック(規模や粉砕方法等)、粉砕時間、粉砕に供する原料や生成物の量、物性、粉砕する原料や生成物の代表粒子径、粉砕後の代表粒子径に係る目標値、装置の効率等のパラメータや粉砕処理における仕事関数(例えば、材料毎に経験的に決定される)等によって詳細が決定される。粉砕処理の詳細の決定において、当該パラメータをすべて考慮する必要はなく、必要に応じて適宜追加・削除すればよい。粉砕処理は、経験値や、公知の化学工学シミュレータ等を用いて詳細を決定することができる。
「分離処理」とは、上述したように、反応時の原料或いは生成物を分離し、純度を向上させる場合に必要となる処理プロセスであり、蒸留処理や精製処理も含む概念である。分離処理は、分離手段のスペック(規模や分離方法等)、処理時間、分離に供する原料や生成物の量、物性、物質毎の融点、沸点、温度毎の蒸気圧、元々の混合組成等のパラメータによって詳細が決定される。分離処理の詳細の決定において、当該パラメータをすべて考慮する必要はなく、必要に応じて適宜追加・削除すればよい。分離処理は、基礎実験(例えば、従来文献、辞典等や、経験値によるもの)での特性例や、公知の化学工学シミュレータ等を用いて詳細を決定することができる。
「混合処理」とは、上述した分離処理に対する概念であり、反応時の原料或いは生成物を混合する場合に必要となる処理プロセスである。混合処理は、混合手段のスペック(規模や混合方法等)、処理時間、混合に供する原料や生成物の量、物性(例えば、原料毎の疎水性、親水性)等のパラメータによって詳細が決定される。混合処理の詳細の決定において、当該パラメータをすべて考慮する必要はなく、必要に応じて適宜追加・削除すればよい。混合処理は、基礎実験(例えば、従来文献、辞典等や、経験値によるもの)での特性例や、公知の化学工学シミュレータ等を用いて詳細を決定することができる。
「熱及び圧力処理」とは、熱及び圧力を基本とし、必要に応じ光によって物質変換を行う場合に必要となる処理プロセスである。熱及び圧力処理は、熱圧力を生じさせる手段のスペック(規模や熱圧力を生じさせる方法等)、処理時間、熱及び圧力処理に供する原料や生成物の量、原料物性、触媒物性、及び反応物性(すなわち、反応収率、ワンパス転化率等)、副生成物、不純物、廃棄物や、SV、触媒劣化率、ΔH、ΔS、ΔG、反応特性、反応時間等のパラメータによって詳細が決定される。熱及び圧力処理の詳細の決定において、当該パラメータをすべて考慮する必要はなく、必要に応じて適宜追加・削除すればよい。熱及び圧力処理は、基礎実験(例えば、従来文献、辞典等や、経験値によるもの)の特性例や、公知の化学工学シミュレータ等を用いて詳細を決定することができる。光による物質変換については、例えば、下記「光制御処理」と同様に決定できる。
「光制御処理」とは、熱線(赤外)による加熱、X線照射(ガンマ線照射)等の処理による表面改質等を行う場合に必要となる処理プロセスである。光制御処理は、光制御手段のスペック(規模や光制御の方法等)、光制御時間、光制御処理に供する原料や生成物の量、物性、固体の場合は表面物性及びバルク物性等のパラメータによって詳細が決定される。光制御処理の詳細の決定において、当該パラメータをすべて考慮する必要はなく、必要に応じて適宜追加・削除すればよい。光制御処理は、基礎実験(例えば、従来文献、辞典等や、経験値によるもの)の特性例や、公知の化学工学シミュレータ等を用いて詳細を決定することができる。
「電気化学反応処理」とは、メッキや表面改質等を行う場合に必要となる処理プロセスである。電気化学反応処理は、電気化学反応を生じさせる手段のスペック(規模や電気化学反応の詳細)、電気化学反応時間、電気化学反応に供する原料や生成物の量、物性、処理後の材料に求められる特性(例えば、表面の酸化抑制保護膜としてであれば、空気雰囲気中での酸化速度等)等のパラメータによって詳細が決定される。電気化学反応処理の詳細の決定において、当該パラメータをすべて考慮する必要はなく、必要に応じて適宜追加・削除すればよい。電気化学反応処理は、基礎実験(例えば、従来文献、辞典等や、経験値によるもの)の特性例や、公知の化学工学シミュレータ等を用いて詳細を決定することができる。
「凝集処理」とは、上述した分離処理と類似する処理であるが、反応に供する原料の純度を向上させる必要がある場合、或いは、生成物の純度を向上させる必要がある場合等に必要となる処理プロセスである。凝集処理は、凝集手段のスペック(規模や凝集方法等)、処理時間、凝集に供する原料や生成物の量、凝集剤の分子量、帯電状態、比表面積、電気陰性度(カチオン性、アニオン性)等のパラメータによって詳細が決定される。凝集処理の詳細の決定において、当該パラメータをすべて考慮する必要はなく、必要に応じて適宜追加・削除すればよい。凝集処理は、基礎実験(例えば、従来文献、辞典等や、経験値によるもの)の特性例や、公知の化学工学シミュレータ等を用いて詳細を決定することができる。
「分散処理」とは、反応に供する原料或いは生成物等を分散させる場合等に必要となる処理プロセスである。分散処理は、分散手段のスペック(規模や分散方法等)、処理時間、分散に供する原料や生成物の量、物性、親水性、疎水性、粘度等のパラメータによって詳細が決定される。分散処理の詳細の決定において、当該パラメータをすべて考慮する必要はなく、必要に応じて適宜追加・削除すればよい。分散処理は、基礎実験(例えば、従来文献、辞典等や、経験値によるもの)の特性例や、公知の化学工学シミュレータ等を用いて詳細を決定することができる。
「薄膜化処理」とは、所定の反応において、原料や生成物を薄膜化する必要がある場合や、メンブレンリアクタ等の薄膜を用いたプロセスが必要な場合、或いは、薄膜を形成することにより、粉砕が容易になったりする場合等に必要となる処理プロセスである。薄膜化処理は、薄膜化手段のスペック(規模や薄膜化方法等)、処理時間、薄膜化に供する原料や生成物の量、物性、表面物性(粒度や硬度等)等のパラメータによって詳細が決定される。薄膜化処理の詳細の決定において、当該パラメータをすべて考慮する必要はなく、必要に応じて適宜追加・削除すればよい。薄膜化処理は、基礎実験(例えば、従来文献、辞典等や、経験値によるもの)の特性例や、公知の化学工学シミュレータ等を用いて詳細を決定することができる。
「吸着処理」、「脱着処理」とは、上述した分離処理と類似する処理であるが、反応に供する原料の純度を向上させる必要がある場合、或いは、生成物の純度を向上させる必要がある場合等に必要となる、吸脱着に係る処理プロセスである。吸着処理や脱着処理は、吸脱着手段のスペック(規模や吸着方法等)、処理時間、原料のガス、液体、吸着剤及び吸蔵特性、吸蔵条件、吸着サイトとなるミクロ孔容積、比表面積、かさ密度等のパラメータによって詳細が決定される。吸着処理や脱着処理の詳細の決定において、当該パラメータをすべて考慮する必要はなく、必要に応じて適宜追加・削除すればよい。吸着処理や脱着処理は、基礎実験(例えば、従来文献、辞典等や、経験値によるもの)の特性例や、公知の化学工学シミュレータ等を用いて詳細を決定することができる。
「組み付け処理」、「分解処理」とは、上述した各処理を実施するために、廃棄物(構造体からなる廃棄物)を組み付け、分解する必要がある場合や、廃棄物処理に必要な所定の装置等を新たに組み付け、或いは分解する必要がある場合等に必要となる処理プロセスである。例えば、電池の分解及び仕分けでは、放電や電池の液抜き、容器からの電極、セパレータの取り外し、電極についてさらにカーボン材、金属部の分解・仕分け等が必要となる。組み付け処理や分解処理は、組み付けや分解の規模、作業時間、必要設備等のパラメータによって詳細が決定される。組み付け処理や分解処理の詳細の決定において、当該パラメータをすべて考慮する必要はなく、必要に応じて適宜追加・削除すればよい。組み付け処理や分解処理は、経験値や、公知の化学工学シミュレータ等を用いて詳細を決定することができる。
「機械加工処理」とは、反応物や生成物を機械加工により成形する(プレス成形、押出し成形、ロール成形等)必要がある場合等に必要となる処理プロセスである。機械加工処理は、機械加工の規模、作業時間、プレス圧と解体(変形)特性、密度と印加圧との関係等のパラメータによって詳細が決定される。機械加工処理の詳細の決定において、当該パラメータをすべて考慮する必要はなく、必要に応じて適宜追加・削除すればよい。機械加工処理は、経験値、実験値や、公知の化学工学シミュレータ等を用いて詳細を決定することができる。
「内燃機関、モータ又はジェネレータの稼働処理」とは、上述した各処理プロセスを実行するために必要な動力源が必要となる場合や、上述した各処理プロセスにおいて当該動力源にエネルギーを供給する必要がある場合、或いは、反応時の廃熱等を利用して動力源へとエネルギーを供給できる場合等、工業プロセスにおける動力源の稼働に係る処理プロセスである。稼働処理は、稼働の規模、稼働時間、廃棄物の燃焼特性(LHV:低位発熱量)、含水量等のパラメータによって詳細が決定される。また、十分に発熱量が分かっていない場合には、自らの組成(C、H、O、N等の比)から、発熱量をSteurerの式等から見積もることが可能である。稼働処理の詳細の決定において、当該パラメータをすべて考慮する必要はなく、必要に応じて適宜追加・削除すればよい。稼働処理は、基礎実験(例えば、従来文献、辞典等や、経験値によるもの)の特性例や、公知の化学工学シミュレータ等を用いて詳細を決定することができる。
「電力制御処理」、「磁力制御処理」とは、例えば、電池の分解及び仕分け時の放電処理や、磁石等を仕分けする場合の磁力消去のための高温熱処理等、電力制御や磁力制御が必要な場合等に必要となる処理プロセスである。電力制御処理や磁力制御処理は、制御処理の規模、制御時間、設備(能力)等のパラメータによって詳細が決定される。電力制御処理や磁力制御処理の詳細の決定において、当該パラメータをすべて考慮する必要はなく、必要に応じて適宜追加・削除すればよい。電力制御処理や磁力制御処理は、基礎実験(例えば、従来文献、辞典等や、経験値によるもの)の特性例や、公知の化学工学シミュレータ等を用いて詳細を決定することができる。
以上のような各処理プロセスのうち少なくとも2つ以上が、廃棄物に対する処理プロセスとして適用される。特に、廃棄物処理には物流が伴うため、輸送処理プロセスは原則処理プロセスに含まれることとなる(ただし、全く輸送を伴わずに廃棄物を発生現場で処理する態様もあり得る。)。輸送処理プロセスを工業プロセスの処理プロセスとして組み込み、当該輸送処理プロセスにおけるコストや二酸化炭素発生量等を評価指標に組み込むことで、工業プロセスを従来よりも適切に評価することができる。また、廃棄物に適用する複数の処理プロセスを、上記の中から選択するものとすることで、廃棄物に適用する処理プロセスを細分化して表現することができ、工業プロセス全体として適切な評価をすることができる。選択された複数の処理プロセスは、第1評価工程S4において、一つ一つ個別に評価される。
1.4.第1評価工程S4
第1評価工程S4は、処理プロセス選択工程S3にて選択した複数の処理プロセスについて、一つ一つ評価する工程である。第1評価工程S4においては、少なくとも下記観点(1)から処理プロセスの評価を行い、好ましくは、さらに下記観点(2)〜(4)も踏まえて、処理プロセスの評価を行う。
(1)場所の観点:廃棄物の発生場所、及び、複数の処理プロセスのそれぞれの場所
(2)時間の観点:処理プロセスの所要時間
(3)ユーザの観点:廃棄物を処理するためのユーザ側の事情
(4)リスクマネージメントの観点:資源リスク又は廃棄物の廃棄に関する規制へのリスク
第1評価工程S4では、処理プロセスの評価にあたり、少なくとも場所の観点から、一つ一つの処理プロセスについて評価を行うものとしているため、各処理プロセスにおいて、廃棄物の輸送が原因となるコストや環境負荷を適切に評価に組み込むことができる。廃棄物処理には必ず物流が伴うため、当該輸送処理に係る要因を処理プロセス毎の評価に適切に組み込むことで、処理プロセス一つ一つ、或いは工業プロセス全体を従来よりも柔軟かつ適切に評価することができる。
図3に、第1評価工程S4の一例を示す。図3に示されるように、第1評価工程S4は、処理プロセス選択工程S3にて選択した処理プロセスのリスクマネージメントを考慮する工程S4−1と、処理プロセス選択工程S3にて選択した処理プロセスにおけるユーザの事情を考慮する工程S4−2と、処理プロセスに要するコストを数値化する工程S4−3と、処理プロセスからの環境汚染量(二酸化炭素発生量、有害物質排出量及び副生成物の生成量)を数値化する工程S4−4と、処理プロセスの所要時間を数値化する工程S4−5と、を備えている。
工程S4−1は、処理プロセス選択工程S3にて選択した処理プロセスに係るリスクマネージメントを考慮する工程である。例えば、資源リスク又は廃棄物の廃棄に関する規制へのリスク(環境リスク)が懸念される処理プロセスは、処理プロセスとして不利となる場合が多い。そのような処理プロセスを候補から外すとともに、当該処理プロセスを含む工業プロセスを候補から外すことで、適切な工業プロセスのみを評価することができ、且つ、最適な工業プロセスを効率的に決定することができる。或いは、候補から外すことなく、処理プロセスにおける当該リスクに対するリスクマネージメントを数値化して、処理プロセスの評価に組み込んでもよい。処理プロセスにおける環境リスクが懸念される場合、当該リスクマネージメントに係るコスト等がかさむこととなる。このような社会要請に起因して生じるコストについて、個別に数値化し、処理プロセスの評価に組み込むことによっても、柔軟且つ適切に処理プロセスを評価することができる。
工程S4−2は、廃棄物処理におけるユーザの事情を考慮する工程である。ユーザの事情とは、例えば、廃棄物量が一定量以上とならないと、廃棄物処理に供することができない場合や、或いは、現状ではユーザ自身或いは近隣の業者が廃棄物の処理プロセスを実行できないが、ある一定期間の経過後、当該処理プロセスを実行可能となる(処理プロセス設備の完成等)等の事情によって、一定期間の間、廃棄物を処理せずに貯蔵にまわすか、或いは、遠方の他の業者に処理プロセスの実行を依頼するか等の判断等もユーザの事情に含まれる。すなわち、工程S4−2においては、廃棄物の発生元であるユーザの事情に応じて、処理プロセス選択工程S3にて選択した処理プロセスを絞り込むことができる。或いは、工程S4−2において、ユーザの事情に起因して生じるコストや環境負荷等を個別に数値化し、これを評価指標に組み込んでもよい。例えば、廃棄物量が一定量以上とならないと廃棄物処理に供することができない場合は、廃棄物が一定量となるまで貯蔵しておくために必要な場所代や電気代、必要エネルギー等を換算し、これを必要コストや二酸化炭素発生量等に変換して評価指標の一つとすることもできる。このように、ユーザの事情によって生じるコストや環境負荷等を個別に数値化することで、より柔軟且つ適切に処理プロセスを評価することができる。
工程S4−3は、処理プロセス選択工程S3において選択した複数の処理プロセスそれぞれについて、当該処理プロセスに要するコストを数値化する工程である。工程S4−3は公知の手法により実行することができる。例えば、分析工程S1における廃棄物の分析結果と適用する処理プロセスの種類や規模等とをINPUTとして、基礎実験(例えば、従来文献、辞典等や、経験値によるもの)の特性例によって、公知の化学工学シミュレータ等を用いることにより、OUTPUTとして必要コストを算出・数値化することができる。
工程S4−4は、処理プロセス選択工程S3において選択した複数の処理プロセスそれぞれについて、当該処理プロセスを実行した場合における環境汚染量を数値化する工程である。工程S4−4は公知の手法により実行することができる。例えば、分析工程S1における廃棄物の分析結果と適用する処理プロセスの種類や規模等とをINPUTとして、LIMEシステム、危害物質明確化、危害度の理解のためのPRTR情報、REACH規則等の情報をベースに、危害量をLCAの観点から見積もったり、或いは公知の化学工学シミュレータ等を用いることにより、OUTPUTとして処理プロセスにおける二酸化炭素発生量、有害物質排出量、副生成物の生成量等を算出・数値化することができる。特に本発明においては、工程S4−3と工程S4−4とによって、少なくとも、処理プロセスに必要なコストと、処理プロセスからの二酸化炭素発生量とを数値化することが好ましい。
また、第1評価工程S4は、処理プロセスの所要時間を数値化する工程S4−5を備えている。当該工程S4−5は、任意で行えばよい。工程S4−5は、例えば、後述する第2評価工程S5や工業プロセス決定工程S6において、コストや二酸化炭素発生量等の評価指標のみでは工業プロセスの評価に差が出ない場合において、より少ない所要時間で廃棄物処理を行うことが可能な工業プロセスを最も適切なものとして特定するために、処理プロセスの時間的価値を数値化しておく工程といえる。処理プロセスの所要時間は、当該処理プロセスに供する廃棄物の量や、処理プロセスの処理能力等に基づいて算出することができる。例えば、処理プロセスが輸送処理プロセスである場合、輸送時間(移動時間)を上記所要時間とすることができる。貯蔵処理プロセスの場合は、廃棄物を貯蔵する時間・期間を上記所要時間とすることができる。粉砕処理プロセスや昇圧・降圧処理プロセス等の廃棄物の状態を変化させるプロセスである場合は、廃棄物の投入から当該廃棄物の処理完了までに必要となる時間を上記所要時間とすることができる。以上の時間は、さらには作業者の時間当たりの労賃が導き出されたり、或いは時間当たりの作業量との関係から重量(或いは体積)当たりのコストが見積もられても良い。
図4に、第1評価工程S4に係る評価の具体例を示した。図4(A)は輸送処理に係る処理プロセスの評価例、図4(B)は粉砕処理に係る処理プロセスの評価例、図4(C)は昇圧・降圧処理に係る処理プロセスの評価例、図4(D)は分離処理に係る処理プロセスの評価例である。
図4(A)〜(D)に示されるように、各処理プロセスを評価する場合は、INPUTに基づいて、OUTPUTとして二酸化炭素発生量や必要コスト等を数値化し、これを評価の指標とする。例えば、図4(A)に示されるように、輸送処理を評価する場合は、評価のINPUTとして、輸送距離、輸送量や輸送手段等を入力する。そして、当該INPUTに基づいて、輸送処理中に輸送手段から発生する二酸化炭素発生量(kg/日、月、年)や、輸送に必要となるコスト(円/ton)或いは輸送時間(時間、日)が数値化され、さらに、輸送量の制約(ton/日、月、年)等が数値化される。当該数値化については、経験値や公知の化学工学シミュレータ等を用いて実行可能である。図4(B)〜(D)においても、INPUT及び処理関数が異なるものの、得られるOUTPUTは輸送処理の場合と同様である。例えば、図4(B)に示されるように、粉砕処理を評価する場合、INPUTとして、粉砕する原料の種類や原料の量、原料の代表粒径や生成物の代表粒径、粉砕処理を行う設備の規模や能力等を入力する。そして当該INPUTを入力値として、目標とする粉砕領域(微砕領域、中砕領域、粗砕領域等)で最も現実的である式(Rittingerの法則、Bondの法則、Kickの法則)を採用し、当該法則に基づいて粉砕を行った場合における、必要エネルギー量や処理時間等を算出することによって、OUTPUTとして、粉砕処理に係る二酸化炭素発生量や、必要コスト等を数値化することができる。当該数値化については、経験値や公知の化学工学シミュレータ等を用いて実行可能である。図4(C)、(D)の昇圧・降圧処理や分離処理についても同様であり、INPUTとしてその系特有のパラメータ(原料の種類や量、用いる処理装置のスペックや処理条件)を用い、且つ、関数としてその系に最適な式(状態方程式や、熱力学の第1〜第3法則、ポリトロープ圧縮式等の公知の法則を用いた式)を用いることにより、各現場毎の経験値、設備仕様(消費電力、機械能力、耐久性、重量、体積)、燃費計算(車両重量、Cd値、車の動力)、或いは公知の化学工学シミュレータ等によって、OUTPUTとして、その系における二酸化炭素発生量や必要コスト等を数値化することができる。尚、上記した二酸化炭素発生量については、処理プロセスにおける化学反応によって直接的に生じるもののほか、処理プロセスを実行するために必要なエネルギーに起因して間接的に生じる(すなわち、発電所等における二酸化炭素の発生)ものも含まれる。尚、現場での利用条件(温度、場所、物流環境等)、各種燃料の利用時のCO排出量、コストの原単位等を前提とする。
尚、決定方法S100では、処理プロセスとして、輸送処理、圧縮処理、貯蔵処理、乾燥処理、粉砕処理、分離処理、混合処理、熱及び圧力処理、光制御処理、電気化学反応処理、凝集処理、分散処理、薄膜化処理、吸着処理、脱着処理、組み付け処理、分解処理、機械加工処理、内燃機関、モータ又はジェネレータの稼働処理、電力制御処理、並びに磁力制御処理から選ばれる少なくとも2つ以上として説明した。これらすべての処理プロセスについて、適当なINPUTと適当な関数とを用いることにより、OUTPUTとして、処理プロセスからの二酸化炭素発生量や必要コスト、さらには所要時間等を数値化することができる。これらINPUTや関数の詳細については、公知の手法を用いればよいため、ここでは説明を省略する。
第1評価工程S4では、工程S4−1及び工程S4−2によって、処理プロセス選択工程S3にて選択した処理プロセスについて、ユーザの事情に係る要因とリスクマネージメントに係る要因とから、処理プロセスのさらなる選定・絞り込みを行い、或いは、ユーザの事情に係る要因やリスクマネージメントに係る要因等を数値化して別個、評価指標としている。また、工程S4−3及び工程S4−4によって、処理プロセスに係る二酸化炭素発生量と必要コストとを評価指標として得、さらに、工程S4−5によって、処理プロセスの所要時間を数値化している。このような工程を経て、処理プロセスの評価を行うと、各処理プロセスの評価指標が同一となり(コスト、二酸化炭素発生量等)、後述する第2評価工程S5において、各処理プロセスを横並びにして評価することができる。特に、第1評価工程S4においては、(1)場所の観点が考慮されているので、廃棄物処理における物流に起因するコストや環境負荷を評価に適切に組み込むことができ、これによって、工業プロセス全体としての評価をより適切なものとすることができる。
1.5.第2評価工程S5
第2評価工程S5は、第1評価工程S4にて評価された複数の処理プロセスからなる工業プロセス全体としての評価を行う工程である。図5に第2評価工程S5の一例を示した。図5に示されるように、第2評価工程S5は、第1評価工程S4における評価結果を統合する工程S5−1と、工程S5−1の統合結果について、適宜重み付けを行う工程S5−2とを備えている。
工業プロセスが、図6に示されるような、廃棄物を粉砕処理設備まで輸送し(処理プロセスa)、当該粉砕処理設備において粉砕処理を行った後(処理プロセスb)、引き続いて粉砕後の廃棄物を分離処理設備まで輸送し(処理プロセスc)、当該分離処理設備において、廃棄物の分離と圧縮(昇圧)を行ったうえで(処理プロセスd、e)、さらに輸送に供される(処理プロセスf)ような、各処理プロセスからなる場合について考える。既に述べたように、各処理プロセスa〜fに係る、個々の評価は、第1評価工程S4にてそれぞれ個別に数値化されている(コストや二酸化炭素発生量等)。そのため、工程S5−1では、当該評価結果を統合し、工業プロセス全体としての評価とする。例えば、各処理プロセスを横並びにして、共通する評価数値を積算することによって、評価結果を統合することができる(例えば、工業プロセス全体としての二酸化炭素発生量は、各処理プロセスa〜fにおける二酸化炭素発生量を積算することによって数値化可能である。コストやその他評価指標に係る数値についても同様である。)。
ここで、第2評価工程S5には、統合結果について適宜重み付けを行う工程S5−2が備えられている。廃棄物を処理したいユーザが重視する評価指標は異なることから、必ずしも工業プロセス全体としてバランスに優れるもの(すなわち、コスト、二酸化炭素発生量、或いは所要時間等が、すべてある程度の高い評価値となっているもの)が最適であるとは限らないからである。
1.6.工業プロセス決定工程S6
工業プロセス決定工程S6では、第2評価工程S5にて統合した評価指標それぞれについて、工業プロセスとしてリサイクルプロセスを採用した場合と、リユースプロセスを採用した場合と、廃棄プロセスを採用した場合とで比較することにより、廃棄物をリサイクル、リユース又は廃棄のいずれの工業プロセスに適用することが最適であるかを決定する工程である。最適とされる工業プロセスは、上記工程S5−2におけるユーザの重み付けによって変動し得るものである。例えば、二酸化炭素発生量を極力削減した工業プロセスを採用したい場合、評価指標のうち二酸化炭素発生量に係る数値に重み付けがされる。そして、重み付けの結果、仮に必要コスト等のその他の評価指標が劣るものであったとしても、二酸化炭素発生量の少ない工業プロセスが、ユーザにとって最適なものとして決定され得る。このように、工業プロセスの評価指標を重み付けすることで、現場の事情に合わせて、工業プロセスをより適切且つ柔軟に決定することができる。
工程S1〜工程S6を備えた決定方法S100によれば、廃棄物に適用すべき工業プロセス(リサイクル、リユース、又は廃棄)に対して、一つ一つの処理プロセスについて評価を行い、且つ、一つ一つの処理プロセスの評価結果をまとめて、工業プロセス全体としての評価を行うものとしており、従来よりも工業プロセスをより柔軟且つ適切に評価することができ、現場の事情を反映させつつ最適な工業プロセスを選択することが可能となる。特に、場所の観点から、工業プロセスにおける物流を評価に組み込むことができるので、輸送によって生じるコストや環境負荷も、工業プロセスの評価に適切に組み込むことができる。
2.工業プロセスの決定システム及び決定プログラム
決定方法S100は、本発明に係る工業プロセスの決定システムによって実行可能である。図7に一実施形態に係る本発明の工業プロセスの決定システム100(以下、「決定システム100」という。)を概略的に示す。図7に示されるように、決定システム100は、決定装置10と分析装置20とを備えている。
決定装置10は、上記工業プロセス選択工程S2を行う工業プロセス選択手段、上記処理プロセス決定工程S3を行う処理プロセス決定手段、上記第1評価工程S4を行う第1評価手段、上記第2評価工程S5を行う第2評価手段、及び上記工業プロセス決定工程S6を行う工業プロセス決定手段としての機能を備えるCPU1、並びに、CPU1に対する記憶装置等を備えている。CPU1は、マイクロプロセッサユニット及びその動作に必要な各種周辺回路を組み合わせて構成され、CPU1に対する記憶装置は、例えば、上記分析工程S1〜工業プロセス決定工程S6の判断・実行に必要なプログラムや各種データ等(例えば、分析手段20により分析された廃棄物に含まれる成分データ等)を記憶するROM2と、CPU1の作業領域として機能するRAM3等を組み合わせて構成されている。当該構成に加えて、さらに、CPU1が、ROM2に記憶されたソフトウェアと組み合わされることにより、決定装置10が機能する。
工業プロセスの評価を行うユーザは、入力手段6(例えば、パソコンのキーボード等)を介して、決定装置10へとデータを入力していく。入力手段6からの入力信号は、入力ポート4を介して、入力信号としてCPU1へと到達する。CPU1は、入力手段6からの信号、及び、ROM2に記憶されたプログラムに基づいて、上記分析工程S1〜第2評価工程S5を行い、出力ポート5を介して、評価結果に関する信号を出力手段7(例えば、パソコン画面等)へと出力し、出力手段7に評価結果が表示される。出力手段7に表示された結果により、ユーザは廃棄物に対して如何なる工業プロセスを適用すべきかを適切に判断することができる。
具体的には、入力手段6を介して、決定方法S100を実行するために必要となるパラメータや情報(分析装置20による廃棄物成分の分析結果、工業プロセスの選択に係る情報、処理プロセスの選択に係る情報等)が、決定装置10へと入力される。一方、ROM2には、本発明に係る決定方法S100を実行可能な決定プログラムが記憶されており、当該プログラムを実行することによって、CPU1にて決定方法S100を行わせることができる。決定プログラムは、決定システム100に決定方法S100を行わせることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、下記のようなものとすることができる。
すなわち、ユーザからの入力信号によって、工業プロセス選択手段(CPU1)に、廃棄物に適用しようとする工業プロセスであって、リサイクルプロセス、リユースプロセス、又は、廃棄プロセスのいずれかを選択させ、処理プロセス選択手段(CPU1)に、分析装置20による廃棄物に含まれる成分の分析結果に基づいて、工業プロセスにおいて廃棄物に適用する複数の処理プロセスを選択させ、第1評価手段(CPU1)に、処理プロセス選択手段において選択させた処理プロセス一つ一つについて、少なくとも下記観点から、処理プロセスの評価を行わせ、第2評価手段(CPU1)に、第1評価手段における評価の結果に基づいて、複数の処理プロセスからなる前記工業プロセス全体としての評価を行わせ、工業プロセス決定手段(CPU1)に、第2評価手段における評価の結果に基づいて、最適な工業プロセスを決定させる、工業プロセスの決定プログラムによって、決定システム100に決定方法S100を実行させることができる。
(1)場所の観点:廃棄物の発生場所、及び、複数の処理プロセスのそれぞれの場所
ここで、第1評価手段(CPU1)に、場所の観点及び時間の観点に加えて、さらに下記2つの観点から処理プロセスの評価を行わせるようにプログラムを構成することによって、さらに柔軟且つ適切に決定方法S100を実行させることができる。
(2)時間の観点:処理プロセスの所要時間
(3)ユーザの観点:廃棄物を処理するためのユーザ側の事情
(4)リスクマネージメントの観点:資源リスク又は廃棄物の廃棄に関する規制へのリスク
また、第1評価手段(CPU1)に、少なくとも、処理プロセスに必要なコスト、及び処理プロセスからの二酸化炭素発生量を算出させるようにプログラムを構成することによって、処理プロセスの一つ一つ及び工業プロセス全体としての評価を適切に行わせることができる。
さらに、複数の処理プロセスについて、輸送処理、昇圧・降圧処理、貯蔵処理、乾燥処理、粉砕処理、分離処理、混合処理、熱及び圧力処理、光制御処理、電気化学反応処理、凝集処理、分散処理、薄膜化処理、吸着処理、脱着処理、組み付け処理、分解処理、機械加工処理、内燃機関、モータ又はジェネレータの稼働処理、電力制御処理、並びに磁力制御処理からなる群から少なくとも2つ以上を選ばせるようにプログラムを構成することにより、処理プロセスの一つ一つを適切に表現でき、工業プロセス全体の評価をさらに適切に行わせることができる。
このような決定プログラムをROM2に記憶させ、CPU1にて実行することにより、CPU1にて適切に決定方法S100を実行することが可能となる。
本発明に係る決定システム100には、分析装置20が必要となる。分析装置20は、上記分析工程S1を実行する分析手段として機能するものである。分析装置20としては、廃棄物に含まれる成分を分析するためのものであれば特に限定されるものではなく、熱分析、光分析、表面分析、組成分析、重量分析、粒子径測定等、種々の分析方法を実行可能な公知の分析装置を採用することができる。例えば、廃棄バイオマスを分析する場合、分析装置20として重量分析装置を用いることで、廃棄バイオマスに含まれるC、H、Oのモル比を決定することができる。そして、分析結果について、入力手段6を介して入力することにより、ROM2に分析結果が記憶される。当該分析結果を用いれば、例えば、廃棄バイオマスを燃料としてリサイクルできるのか、リサイクルする場合には如何なる化学反応に供するべきか、リユースに供する場合に如何なる化学反応に供するべきか、廃棄する場合にどのような処理を経て廃棄すべきか等を、適切に特定することができる。
このように、決定システム100には、決定装置10と分析装置20とが備えられており、これらを組み合わせて決定方法S100を実行可能としている。当該決定システム100によれば、廃棄物に適用すべき工業プロセス(リサイクル、リユース、又は廃棄)に対して、一つ一つの処理プロセスについて評価が行われ、且つ、一つ一つの処理プロセスの評価結果をまとめて、工業プロセス全体としての評価が行われるものとしているため、現場の事情を反映させつつ最適なものを選択するために、従来よりも工業プロセスをより適切に評価することが可能である。特に、場所の観点から、工業プロセスにおける物流を評価に組み込むことができるので、輸送によって生じるコストや環境負荷も、工業プロセスの評価に適切に組み込むことができる。
以上、現時点において、最も実践的であり、且つ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う工業プロセスの決定方法、決定システム或いは決定プログラムもまた本発明の技術範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
例えば、上記説明においては、第1評価工程S4に、工程S4−1〜工程S4−5が備えられるものとして説明したが、本発明はこの形態に限定されるものではなく、処理プロセスの評価の際、場所の観点を考慮することで、廃棄物処理における物流を評価に反映させるものであればよい。ただし、より適切且つ柔軟に処理プロセスの評価を行うことが可能である観点からは、リスクマネージメントやユーザの事情を考慮したうえで、処理プロセスにおける環境負荷量や処理プロセスの必要コスト、所要時間を数値化することが好ましい。特に必要コストと二酸化炭素発生量とを評価指標とすれば、工業プロセスを適切且つ簡易的に評価することができる。
本発明に係る工業プロセスの決定方法、決定システム、及び決定プログラムによれば、廃棄物に適用する工業プロセス(リサイクル、リユース、又は廃棄)を適切に評価し、廃棄物をリサイクルプロセス、リユースプロセス、又は廃棄プロセスのいずれに供するべきかを適切に決定することができる。これにより、種々の産業において、廃棄物を最適に処理することができるものと考えられる。
1 CPU(工業プロセス選択手段、処理プロセス決定手段、第1評価手段、第2評価手段)
2 ROM
3 RAM
4 入力ポート
5 出力ポート
6 入力手段
7 出力手段
10 決定装置
20 分析装置(分析手段)
100 工業プロセスの決定システム

Claims (12)

  1. 廃棄物に含まれる成分を分析する、分析工程と、
    前記廃棄物に適用しようとする工業プロセスであって、リサイクルプロセス、リユースプロセス、又は、廃棄プロセスのいずれかを選択する、工業プロセス選択工程と、
    前記分析工程における分析の結果に基づいて、前記工業プロセスにおいて前記廃棄物に適用する複数の処理プロセスを選択する、処理プロセス選択工程と、
    前記処理プロセス選択工程において選択した前記処理プロセス一つ一つについて、少なくとも下記観点から、前記処理プロセスの評価を行う、第1評価工程と、
    前記第1評価工程における評価の結果に基づいて、前記複数の処理プロセスからなる前記工業プロセス全体としての評価を行う、第2評価工程と、
    前記第2評価工程における評価の結果に基づいて、最適な工業プロセスの決定を行う、工業プロセス決定工程と、
    を有する、工業プロセスの決定方法。
    (1)場所の観点:前記廃棄物の発生場所、及び、前記複数の処理プロセスのそれぞれの場所
  2. 前記第1評価工程において、前記場所の観点に加えて、さらに下記3つの観点から、前記処理プロセスの評価を行う、請求項1に記載の決定方法。
    (2)時間の観点:前記処理プロセスの所要時間
    (3)ユーザの観点:前記廃棄物を処理するためのユーザ側の事情
    (4)リスクマネージメントの観点:資源リスク又は前記廃棄物の廃棄に関する規制へのリスク
  3. 前記第1評価工程において、少なくとも、前記処理プロセスに必要なコスト、及び前記処理プロセスからの二酸化炭素発生量を算出する、請求項1又は2に記載の決定方法。
  4. 前記複数の処理プロセスが、輸送処理、圧縮処理、貯蔵処理、乾燥処理、粉砕処理、分離処理、混合処理、熱及び圧力処理、光制御処理、電気化学反応処理、凝集処理、分散処理、薄膜化処理、吸着処理、脱着処理、組み付け処理、分解処理、機械加工処理、内燃機関、モータ又はジェネレータの稼働処理、電力制御処理、並びに磁力制御処理からなる群から選ばれる、少なくとも2つ以上の処理プロセスである、請求項1〜3のいずれかに記載の決定方法。
  5. 廃棄物に含まれる成分を分析する、分析手段と、
    前記廃棄物に適用しようとする工業プロセスであって、リサイクルプロセス、リユースプロセス、又は、廃棄プロセスのいずれかを選択する、工業プロセス選択手段と、
    前記分析手段における分析の結果に基づいて、前記工業プロセスにおいて前記廃棄物に適用する複数の処理プロセスを選択する、処理プロセス選択手段と、
    前記処理プロセス選択手段において選択した前記処理プロセス一つ一つについて、少なくとも下記観点から、前記処理プロセスの評価を行う、第1評価手段と、
    前記第1評価手段における評価の結果に基づいて、前記複数の処理プロセスからなる前記工業プロセス全体としての評価を行う、第2評価手段と、
    前記第2評価手段における評価の結果に基づいて、最適な工業プロセスを決定する、工業プロセス決定手段と、
    を有する、工業プロセスの決定システム。
    (1)場所の観点:前記廃棄物の発生場所、及び、前記複数の処理プロセスのそれぞれの場所
  6. 前記第1評価手段において、前記場所の観点に加えて、さらに下記3つの観点から前記処理プロセスの評価を行う、請求項5に記載の決定システム。
    (2)時間の観点:前記処理プロセスの所要時間
    (3)ユーザの観点:前記廃棄物を処理するためのユーザ側の事情
    (4)リスクマネージメントの観点:資源リスク又は前記廃棄物の廃棄に関する規制へのリスク
  7. 前記第1評価手段において、少なくとも、前記処理プロセスに必要なコスト、及び前記処理プロセスからの二酸化炭素発生量を算出する、請求項5又は6に記載の決定システム。
  8. 前記複数の処理プロセスが、輸送処理、圧縮処理、貯蔵処理、乾燥処理、粉砕処理、分離処理、混合処理、熱及び圧力処理、光制御処理、電気化学反応処理、凝集処理、分散処理、薄膜化処理、吸着処理、脱着処理、組み付け処理、分解処理、機械加工処理、内燃機関、モータ又はジェネレータの稼働処理、電力制御処理、並びに磁力制御処理からなる群から選ばれる、少なくとも2つ以上の処理プロセスである、請求項5〜7のいずれかに記載の決定システム。
  9. 工業プロセス選択手段に、廃棄物に適用しようとする工業プロセスであって、リサイクルプロセス、リユースプロセス、又は、廃棄プロセスのいずれかを選択させ、
    処理プロセス選択手段に、前記廃棄物に含まれる成分の分析結果に基づいて、前記工業プロセスにおいて前記廃棄物に適用する複数の処理プロセスを選択させ、
    第1評価手段に、前記処理プロセス選択手段において決定させた前記処理プロセス一つ一つについて、少なくとも下記観点から、前記処理プロセスの評価を行わせ、
    第2評価手段に、前記第1評価手段における評価の結果に基づいて、前記複数の処理プロセスからなる前記工業プロセス全体としての評価を行わせる、
    工業プロセス決定手段に、前記第2評価手段における評価の結果に基づいて、最適な工業プロセスを決定させる、
    工業プロセスの決定プログラム。
    (1)場所の観点:前記廃棄物の発生場所、及び、前記複数の処理プロセスのそれぞれの場所
  10. 前記第1評価手段に、前記場所の観点及び前記時間の観点に加えて、さらに下記3つの観点から前記処理プロセスの評価を行わせる、請求項9に記載の決定プログラム。
    (2)時間の観点:前記処理プロセスの所要時間
    (3)ユーザの観点:前記廃棄物を処理するためのユーザ側の事情
    (4)リスクマネージメントの観点:資源リスク又は前記廃棄物の廃棄に関する規制へのリスク
  11. 前記第1評価手段に、少なくとも、前記処理プロセスに必要なコスト、及び前記処理プロセスからの二酸化炭素発生量を算出させる、請求項9又は10に記載の決定プログラム。
  12. 前記複数の処理プロセスが、輸送処理、昇圧・降圧処理、貯蔵処理、乾燥処理、粉砕処理、分離処理、混合処理、熱及び圧力処理、光制御処理、電気化学反応処理、凝集処理、分散処理、薄膜化処理、吸着処理、脱着処理、組み付け処理、分解処理、機械加工処理、内燃機関、モータ又はジェネレータの稼働処理、電力制御処理、並びに磁力制御処理からなる群から選ばれる、少なくとも2つ以上の処理プロセスである、請求項9〜11のいずれかに記載の決定プログラム。
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