JP2011174026A - 摩擦材係合装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】摩擦材係合装置において、湿式摩擦材とセパレータプレートの係合時の摩擦係数μを大幅に向上させて、湿式摩擦材及びセパレータプレートの枚数を削減すること。
【解決手段】金属粉末14と合成樹脂15と、必要に応じて溶剤16とを混合して(S10)、ニーダーで均一に混練し(S11)、溶剤16を用いた場合には、この溶剤16をある程度揮発乾燥させる(S12)。この混練物を、平板リング形状のセパレータプレートのキャビティを有するプレス金型を用いてプレス成形して(S13)、予備成形品17を作製する。この予備成形品17を予備乾燥(S14)させた後、所定の条件で熱処理して(S15)、固化させて成形体とし、表面を研摩することによって(S16)、セパレータプレート2が得られる。金属粉末14と合成樹脂15との体積割合を80:20とすることによって、従来の1.74倍の摩擦係数μが得られる。
【選択図】図2

Description

本発明は、油中に浸した状態で対向面に高圧力をかけることによってトルクを得る湿式摩擦材及びセパレータプレートを具備する摩擦材係合装置に関するものである。
近年、湿式摩擦材として、材料の歩留まり向上による低コスト化、引き摺りトルク低減による車両での低燃費化を目指して、平板リング状の芯金に平板リング形状に沿ったセグメントピースに切断した摩擦材基材を油溝となる間隔をおいて接着剤で順次並べて全周に亘って接着し、裏面にも同様にセグメントピースに切断した摩擦材基材を接着してなるセグメントタイプ摩擦材が開発されている。このようなセグメントタイプ摩擦材は、自動車等の自動変速機(Automatic Transmission、以下「AT」とも略する。)やオートバイ等の変速機に用いられる複数または単数の摩擦板を設けた摩擦材係合装置用として用いることができる。
一例として、自動車等の自動変速機には湿式油圧クラッチが用いられており、複数枚のセグメントタイプ摩擦材と複数枚のセパレータプレートとを交互に重ね合わせ、油圧で両プレートを圧接してトルク伝達を行うようになっており、非締結状態から締結状態に移行する際に生じる摩擦熱の吸収や摩擦材の摩耗防止等の理由から、両プレートの間に潤滑油(Automatic Transmission Fluid,自動変速機潤滑油、以下「ATF」とも略する。)を供給している。(なお、「ATF」は出光興産株式会社の登録商標である。)
しかし、近年、自動車メーカーのニーズとして、この摩擦材及びセパレータプレートの枚数を削減することによる摩擦材係合装置の軽量化・高効率化が要求されており、これを実現するためには摩擦材とセパレータプレートとの係合時における摩擦係数μを大幅に向上させる必要がある。これに対して、従来の湿式油圧クラッチにおいては、摩擦材とセパレータプレートとの間におけるATFの存在によって、摩擦係数μは0.16程度に留まっていた。
そこで、特許文献1においては、セパレータプレートを焼結金属で作製し、セパレータプレートの表面に気孔を形成することによって、セパレータプレートにも油吸収能力を付与する技術について開示している。これによって、湿式摩擦材とセパレータプレートとの間に残留するATFがセパレータプレートにも吸収されるため、湿式多板クラッチ・湿式多板ブレーキ等の摩擦材係合装置における変速ショックの低減や、ロックアップクラッチにおけるジャダーの抑制といった作用効果が得られるとしている。
特開平07−127658号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においては、摩擦材係合装置における摩擦係数の正勾配性は得られても、加工時に欠けや割れが生じやすいため、形成できる気孔率が制限されることにより、摩擦係数μを大幅に向上させることができないことから、摩擦材係合装置における摩擦材及びセパレータプレートの枚数の削減にはつながらないという問題点があった。
そこで、本発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであって、セグメントタイプ摩擦材やリングタイプ摩擦材等の湿式摩擦材とセパレータプレートから構成される摩擦材係合装置において、湿式摩擦材とセパレータプレートとの係合時における摩擦係数μを大幅に向上させることができ、湿式摩擦材及びセパレータプレートの枚数を削減することができる摩擦材係合装置を提供することを目的とするものである。
請求項1の発明に係る摩擦材係合装置は、互いに係合して回転トルクを伝達する湿式摩擦材とセパレータプレートとを具備する摩擦材係合装置であって、前記セパレータプレートまたは前記湿式摩擦材は、少なくとも金属粉末と合成樹脂とにより成形されて、油を吸収する気孔を具備するものである。
ここで、金属粉末としては、種々の金属の粉末があるが、例えば、鉄系粉末、銅系粉末、ステンレス系粉末、ニッケル系粉末、クロム系粉末、チタン系粉末、タングステン系粉末、モリブデン系粉末等がある。
また、合成樹脂としては熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂があり、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、アクリル樹脂等がある。一方、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等がある。
請求項2の発明に係る摩擦材係合装置は、互いに係合して回転トルクを伝達する湿式摩擦材とセパレータプレートとを具備する摩擦材係合装置であって、前記湿式摩擦材はリング形状の芯金に摩擦材基材を接着してなり、前記摩擦材基材は、少なくとも金属粉末と合成樹脂とにより成形されて、油を吸収する気孔を具備するものである。
ここで、芯金の素材としては金属に限定されるものではないが、強度と量産性の点から鋼板等の金属板が好ましい。また、摩擦材基材は、芯金の両面に接着しても良いし、片面のみに接着することもできる。
請求項3の発明に係る摩擦材係合装置は、請求項1または請求項2の構成において、前記セパレータプレート、前記湿式摩擦材または前記摩擦材基材は、前記金属粉末の間に隙間を生じさせて成形することで、前記気孔が形成されるものである。
請求項4の発明に係る摩擦材係合装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記セパレータプレート、前記湿式摩擦材または前記摩擦材基材は、前記合成樹脂として熱硬化性樹脂を用いて常温で加圧されて予備成形された後、加熱されて成形されるものである。
ここで、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等がある。
また、「常温」とは、JIS−Z−8703で規定されているように、20℃±15℃(5℃〜35℃)の温度範囲をいう。
請求項5の発明に係る摩擦材係合装置は、請求項1乃至請求項4のいずれか1つの構成において、前記セパレータプレート、前記湿式摩擦材または前記摩擦材基材における前記金属粉末の体積割合は、60vol%〜84vol%の範囲内、より好ましくは70vol%〜80vol%の範囲内であるものである。
請求項6の発明に係る摩擦材係合装置は、請求項1乃至請求項5のいずれか1つの構成において、前記金属粉末は、ふるい分け試験で測定した平均粒子径の値が10μm〜100μmの範囲内、より好ましくは30μm〜80μmの範囲内であるものである。
ここで、「ふるい分け試験」とは、JIS−Z−8801によって規定された目開きをもつ標準ふるいを用いて、測定対象となる粉末をふるい分けることによって粒度分布を測定する試験方法をいう。
請求項1の発明に係る摩擦材係合装置は、互いに係合して回転トルクを伝達する湿式摩擦材とセパレータプレートとを具備する摩擦材係合装置であって、セパレータプレートまたは湿式摩擦材は、少なくとも金属粉末と合成樹脂とにより成形されて、油を吸収する気孔を具備する。
このように、主成分として金属粉末と合成樹脂とにより成形されたセパレータプレートは、金属粉末同士の間に微細な気孔が存在する構造を有するため、油を吸収する気孔の割合が高く、かつ合成樹脂の接着力によって強度も大きいことから湿式摩擦材の相手材として使用が可能であり、湿式摩擦材と係合する際に、間に存在する潤滑油をすばやく吸収して、高い摩擦係数μを得ることができる。
同様に、主成分として金属粉末と合成樹脂とにより成形された湿式摩擦材も、金属粉末同士の間に微細な気孔が存在する構造を有するため、油を吸収する気孔の割合が高く、かつ合成樹脂の接着力によって強度も大きいことから湿式摩擦材として使用が可能であり、セパレータプレートと係合する際に、間に存在する潤滑油をすばやく吸収して、高い摩擦係数μを得ることができる。
したがって、従来の摩擦材係合装置よりも湿式摩擦材及びセパレータプレートの枚数を減らしても、十分なトルク伝達性能を確保することができる。また、合成樹脂を含有して成形されるため、特許文献1に記載の技術におけるような焼結金属に比べて柔軟性を有し、加工時の欠けや割れ等の不具合を抑制することができるという製造上の利点も有する。
このようにして、湿式摩擦材とセパレータプレートとの係合時における摩擦係数μを大幅に向上させることができ、湿式摩擦材及びセパレータプレートの枚数を削減することができる摩擦材係合装置となる。
請求項2の発明に係る摩擦材係合装置は、互いに係合して回転トルクを伝達する湿式摩擦材とセパレータプレートとを具備する摩擦材係合装置であって、湿式摩擦材はリング形状の芯金に摩擦材基材を接着してなり、摩擦材基材は、少なくとも金属粉末と合成樹脂とにより成形されて、油を吸収する気孔を具備する。
このように、主成分として金属粉末と合成樹脂とにより成形された摩擦材基材は、金属粉末同士の間に微細な気孔が存在する構造を有するため、油を吸収する気孔の割合が高く、かつ合成樹脂の接着力によって強度も大きいことから湿式摩擦材の摩擦表面材として使用が可能であり、セパレータプレートと係合する際に、間に存在する潤滑油をすばやく吸収して、高い摩擦係数μを得ることができる。
請求項3の発明に係る摩擦材係合装置においては、セパレータプレート、湿式摩擦材または摩擦材基材は、金属粉末の間に隙間を生じさせて成形することで気孔が形成されることから、油を吸収する気孔の割合が高く、気孔の大きさも適切であるため、請求項1または請求項2に係る発明の効果に加えて、係合する際に、間に存在する潤滑油をすばやく吸収して、高い摩擦係数μを得ることができる。
請求項4の発明に係る摩擦材係合装置においては、合成樹脂が熱硬化性樹脂であることから、請求項1乃至請求項3に係る発明の効果に加えて、常温で加圧して予備成形することができ、セパレータプレート、湿式摩擦材及び摩擦材基材の成形時における流動性・粘着性と加熱処理後における硬化性・保形性を容易に得ることができるため、セパレータプレート、湿式摩擦材及び摩擦材基材の製造がより容易になる。
加えて、使用時における摩擦による温度上昇によっても、セパレータプレート、湿式摩擦材及び摩擦材基材の強度・硬度や摩擦特性が変化する恐れがないため、より安定したトルク伝達性能を有する摩擦材係合装置となる。
なお、熱可塑性樹脂の中でも、合成樹脂として所謂エンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックを用いた場合には、熱変形温度が高いため製造の容易さという点では熱硬化性樹脂には劣るが、摩擦による温度上昇に対する耐熱性の点では、合成樹脂として熱硬化性樹脂を用いた場合と同等以上の特性を有するセパレータプレート、湿式摩擦材及び摩擦材基材を製造することができる。
請求項5の発明に係る摩擦材係合装置においては、セパレータプレート、湿式摩擦材または摩擦材基材における金属粉末の体積割合が60vol%〜84vol%の範囲内であることから、請求項1乃至請求項4に係る発明の効果に加えて、より強靭で油吸収性にも優れた湿式摩擦材を確実に得ることができる。
セパレータプレート、湿式摩擦材または摩擦材基材における金属粉末の体積割合が60vol%未満であると、油を吸収する気孔の割合がやや低くなり、係合する際の潤滑油の吸収性にやや劣るものとなる。一方、金属粉末の体積割合が84vol%を超えると、潤滑油の吸収性の点ではより優れたものとなるが、合成樹脂の体積割合が小さくなるため成形がやや難しくなる。
なお、セパレータプレート、湿式摩擦材または摩擦材基材における金属粉末の体積割合が70vol%〜80vol%の範囲内である場合には、更に強靭で油吸収性にも優れたセパレータプレート、湿式摩擦材または摩擦材基材を確実に得ることができることから、より好ましい。
請求項6の発明に係る摩擦材係合装置においては、金属粉末が、ふるい分け試験で測定した平均粒子径の値が10μm〜100μmの範囲内であることから、請求項1乃至請求項5に係る発明の効果に加えて、セパレータプレートまたは湿式摩擦材における高い気孔率と成形体としての強靭性、更には湿式摩擦材の摩擦材基材における高い気孔率と摩擦材基材としての強靭性をより確実に得ることができる。
金属粉末のふるい分け試験で測定した平均粒子径の値が10μm未満であると、金属粉末が細かすぎて充填が密になり、セパレータプレート、湿式摩擦材及び摩擦材基材における高い気孔率を確保することが難しくなる。一方、金属粉末のふるい分け試験で測定した平均粒子径の値が100μmを超えると、金属粉末が粗すぎて充填が疎になり、セパレータプレート、湿式摩擦材及び摩擦材基材における高い靭性を確保することが難しくなる。
なお、金属粉末のふるい分け試験で測定した平均粒子径の値が30μm〜80μmの範囲内である場合には、セパレータプレート、湿式摩擦材及び摩擦材基材における高い気孔率と成形体としての強靭性をより安定して得ることができることから、より好ましい。
図1は従来の摩擦材係合装置の構成の一例を示す部分断面図である。 図2は本発明の実施の形態1に係る摩擦材係合装置を構成するセパレータプレートの製造方法を示すフローチャートである。 図3は本発明の実施の形態1に係る摩擦材係合装置の構成を示す部分断面図である。
本発明に係る摩擦材係合装置を実施するためには、摩擦材係合装置を構成するセパレータプレート及び湿式摩擦材の材料となり、更には湿式摩擦材の表面の摩擦材基材の材料となる金属粉末及び合成樹脂が必要となる。
金属粉末としては、種々の金属の粉末が利用可能であるが、特に粉末冶金に使用される金属粉末材料を使用するのが安価で容易である。粉末冶金に使用される金属粉末材料としては、鉄系粉末、銅系粉末、ステンレス系粉末、ニッケル系粉末、クロム系粉末、チタン系粉末、タングステン系粉末、モリブデン系粉末等がある。
これらの中でも、コスト面を考えた場合には、鉄系粉末(鋼材粉末)及びステンレス系粉末を使用することが好ましい。
また、金属粉末の粒度としては、良好な充填性と大きな気孔率を確保するためには、平均粒子径または中位径が数十μmオーダーから数百μmオーダーで、できるだけ正規分布に近い粒度分布を有するものが好ましい。
特に、ふるい分け試験で測定した平均粒子径の値が10μm〜100μmの範囲内である金属粉末を用いることが好ましい。
合成樹脂としては熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂があり、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、アクリル樹脂等がある。
また、熱可塑性樹脂の中でも強度や硬度を要求される部分に使用されるエンジニアリングプラスチックとして、ナイロンを始めとするポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン等がある。
更に、熱可塑性樹脂の中でも特殊な目的に使用され、エンジニアリングプラスチックよりも更に高い熱変形温度と長期間使用できる特性を有するスーパーエンジニアリングプラスチックとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルサルフォン、非晶ポリアレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド等がある。
一方、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等がある。
これらの合成樹脂の中でも、フェノール樹脂を始めとする熱硬化性樹脂は、加熱硬化前には常温で粉体、液状またはペースト状であり、金属粉末と混合して成形するのが容易であり、しかも加熱硬化後には高い硬度と強度を有する固化成形体となって大きな耐熱性を有することから、使用時に摩擦による温度上昇に曝されるセパレータプレート、湿式摩擦材及び摩擦材基材を成形する材料として好ましい。
そして、常温での加圧による予備成形にはプレス成形(圧縮成形)が使用でき、プレス成形する際の圧力としては、面圧10MPa〜100MPaの範囲内の圧力が好ましい。プレス成形する際の圧力が面圧10MPa未満であると、圧力が低すぎて固化成形体とした場合に十分な強度が得られない恐れがあり、一方、プレス成形する際の圧力が面圧100MPaを超えると、圧力が高すぎて加熱硬化させる際にクラック等が生ずる恐れがある。
一方、熱可塑性樹脂の中でも、上述したエンジニアリングプラスチックやスーパーエンジニアリングプラスチックを用いた場合には、熱変形温度が高いため製造の容易さという点では熱硬化性樹脂には劣るが、摩擦による温度上昇に対する耐熱性の点では、合成樹脂として熱硬化性樹脂を用いた場合と同等以上の特性を有するセパレータプレート及び摩擦材基材を製造することができる。
本発明に係るセパレータプレート、湿式摩擦材及び摩擦材基材は、このような金属粉末と合成樹脂のみを混合・成形して製造することも可能であるが、必要に応じて、金属粉末及び合成樹脂以外の材料を添加して製造することもできる。
このような添加剤としては、無機フィラー及び有機フィラー等の充填剤、摩擦調整剤、増粘剤等がある。
また、本発明に係るセパレータプレート、湿式摩擦材及び摩擦材基材は、金属粉末と金属粉末の間に潤滑油を吸収可能とする気孔となる隙間を形成させて成形することにある。この隙間を形成しやすくするためには、金属粉末と合成樹脂を予め混合した後に予備成形を行うことが好ましい。この場合、混合によって金属粉末と金属粉末の間に隙間を生じさせた状態で金属粉末に合成樹脂を馴染ませるとともに、常温で予備成形を行うことで金属粉末間の隙間を残存させている。
ここで、金属粉末と合成樹脂を混合した混合物の流動状態は、温度や圧力によって影響を受けて変化する。したがって、混合物に対する流動状態を金属粉末と金属粉末の間の隙間を消失させない温度、圧力に適宜設定することで、予備成形なしで直接成形することも可能である。
以下、本発明の具体的な実施の形態及び実施例について図面を参照しつつ説明するが、本発明はこれらの実施の形態及び実施例によって何らの限定をも受けるものではない。
[実施の形態1]
まず、本発明に係る摩擦材係合装置の実施の形態1について、図1乃至図3を参照して説明する。図1は従来の摩擦材係合装置の構成の一例を示す部分断面図である。図2は本発明の実施の形態1に係る摩擦材係合装置を構成するセパレータプレートの製造方法を示すフローチャートである。図3は本発明の実施の形態1に係る摩擦材係合装置の構成を示す部分断面図である。
最初に、従来の摩擦材係合装置の構成の一例について、図1を参照して説明する。図1に示されるように、従来の摩擦材係合装置としての自動車の自動変速機(AT)の湿式クラッチ11は、クラッチハウジング4にスプライン嵌合した鋼板製のセパレータプレート12と、クラッチシャフト5にスプライン嵌合した湿式摩擦材13を、ピストン6で押圧して係合させることによって、セパレータプレート12と湿式摩擦材13とを摩擦接触させて、回転トルクを伝達する装置である。
セパレータプレート12及び湿式摩擦材13は、いずれも平板リング形状を有しており、図1においては、湿式クラッチ11の上半分のみの断面を図示している。セパレータプレート12は平板リング形状の鋼板からなる一体品であり、湿式摩擦材13は鋼板製の平板リング形状の芯金の両面に、平板リング形状に打ち抜いた摩擦材基材を貼り付けて構成されている。この摩擦材基材は、アラミド繊維、充填材及び摩擦調整剤を抄紙したものに、フェノール樹脂を含浸させて加熱硬化させてなる。
ピストン6は、図示しないコイルばねによって図の右方に付勢されており、非係合時は一番右側のセパレータプレート12から離れており、これによってクラッチハウジング4内に満たされたATFが間に流れ込んで、6枚のセパレータプレート12と5枚の湿式摩擦材13も互いに離間している。
ここで、オイル室7にオイルが圧入されることによって、図1に示されるように、ピストン6が左方に移動して一番右側のセパレータプレート12を押圧し、これによって6枚のセパレータプレート12と5枚の湿式摩擦材13の間のATFが押し出されて、セパレータプレート12と湿式摩擦材13が互いに密着して回転トルクの伝達が行われる。
この係合時の摩擦係数μが大きいほど、高効率で回転トルクを伝達することができる。従来の摩擦材係合装置としての湿式クラッチ11においては、摩擦係数μは0.16程度に留まっていたため、図1に示されるように、6枚のセパレータプレート12と5枚の湿式摩擦材13を必要としていた。即ち、合計10面の接触面を有する摩擦材係合装置となっていた。
このセパレータプレートと湿式摩擦材の枚数を削減するための、本発明の実施の形態1に係る摩擦材係合装置を構成するセパレータプレートの製造方法について、図2のフローチャートを参照して説明する。
図2に示されるように、まず金属粉末14と合成樹脂15と、必要に応じて(合成樹脂15を溶解させて金属粉末14と均一に混合するために)溶剤16とを混合して(ステップS10)、ニーダーで均一に混練し(ステップS11)、溶剤16を用いた場合には、この溶剤16をある程度揮発乾燥させる(ステップS12)。
この混練物を、平板リング形状のセパレータプレートのキャビティを有するプレス金型を用いてプレス成形して(ステップS13)、予備成形品17を作製する。この予備成形品17を予備乾燥(ステップS14)させた後、所定の条件で熱処理して(ステップS15)、固化させて成形体とし、表面を研摩することによって(ステップS16)、本実施の形態1に係るセパレータプレート2が得られる。
この際、溶剤16を用いた場合には熱処理時の加熱によって混合物中から溶剤16が揮散することで、成形品であるセパレータプレート2に気孔が形成される。これによって、金属粉末間に形成される気孔には、金属粉末と金属粉末を結合している合成樹脂内に形成されるものも含まれる。
このような製造工程で得られる本実施の形態1に係るセパレータプレートの特性を評価するために、セパレータプレートの供試体を作製した。まず、金属粉末としてのステンレス粉末(ふるい法によって測定した平均粒子径50μm)と、合成樹脂としてのフェノール樹脂(レゾール型)と、溶剤としてのメタノールとを混合して、瑪瑙の乳鉢で良く混練した後、フェノール樹脂が硬化してしまわない程度に乾燥させた。
ここで、メタノールはレゾール型のフェノール樹脂を溶解させてステンレス粉末と満遍なく混合するために加えており、ステンレス粉末の体積の約10分の1程度の量を使用した。
この混練物を常温において面圧40MPa〜50MPaでプレス成形して、予備成形品を作製し、この予備成形品を80℃で40分間予備乾燥させた後、180℃で40分間熱処理して固化成形体とした。そして、1000番のサンドペーパーで表面を研摩してセパレータプレートの供試体を得た。ここで、セパレータプレートの供試体のサイズは、29mm×29mm×2.2mmの大きさとした。
また、配合としては、実施例1として金属粉末70vol%に対してフェノール樹脂30vol%を混合したもの、実施例2として金属粉末80vol%に対してフェノール樹脂20vol%を混合したものを作製した。更に、実施例3として金属粉末85vol%に対してフェノール樹脂15vol%を混合したもの、実施例4として金属粉末90vol%に対してフェノール樹脂10vol%を混合したものを作製した。
また、比較のために、比較例1として従来の鋼板からなるもの(鋼板100vol%、サイズ29mm×29mm×2.2mm)を用いた。各配合の内容について、表1の上段に示す。
Figure 2011174026
このようにして製造したセパレータプレートの供試体について、油吸収速度、油吸収気孔率及び摩擦係数μの三項目について、測定及び評価を実施した。
まず、油吸収速度を測定した。測定条件としては、上述の如く29mm×29mm×2.2mmの大きさの供試体に、マイクロシリンジを用いて7μl(マイクロリットル)のATFを滴下して、ATFが吸収されるまでの時間を計測した。なお、測定は室温において行った。
次に、油吸収気孔率を測定した。測定条件としては、上述の如く29mm×29mm×2.2mmの大きさの供試体を用いて、最初に供試体の体積と乾燥重量を測定し、次に供試体を90℃のATFに8時間浸漬して取り出し、12時間放置した後に供試体の重量を測定した。そして、ATF浸漬前後の重量変化から、ATFを吸収する気孔部の体積を計算し、供試体の全体に占める気孔の割合を算出した。なお、供試体の重量測定は、いずれも常温で行った。
更に、鈴木式摩擦摩耗試験機を用いて、摩擦係数μの測定を行った。29mm×29mm×2.2mmの大きさの供試体に対して、外径25.6mm×内径20.0mm×厚さ0.52mmのリング状湿式摩擦材を用いて、面圧0.2MPaで加圧後に回転させて、その時の発生トルクから摩擦係数μを算出した。回転速度は、1mm/sec,20mm/sec,50mm/sec,100mm/sec,200mm/secと変化させ、回転条件ごとに30℃〜40℃のオイルディッピングを実施し、発生トルクの計測時間は90秒とした。
ここで、リング状湿式摩擦材の摩擦材基材としては、アラミド繊維を44重量%に充填材及び摩擦調整剤を56重量%加えて合計で100重量%としたものに、フェノール樹脂を外割で66.7重量%使用して、通常の抄紙方法で製造したものを使用した。
このようにして測定したセパレータプレートの供試体についての油吸収速度、油吸収気孔率及び摩擦係数μの測定結果について、表1の下段に示す。
表1の下段に示されるように、油吸収速度は実施例1の供試体が67.7秒、実施例2の供試体が21.7秒、実施例3の供試体が4.2秒、実施例4の供試体が3.07秒と、ステンレス粉末の体積割合が増加するにしたがってATFの吸収速度が速くなっている。
なお、比較例1については、供試体が鋼板であり、気孔を有しないためATFを吸収しないことから、測定は行っていない。
また、油吸収気孔率についても、実施例1の供試体が22.5%、実施例2の供試体が32.9%、実施例3の供試体が41.4%、実施例4の供試体が42.6%と、鋼材粉末の体積割合が増加するにしたがって油吸収気孔率が大きくなっている。これらの結果から、ATFの吸収性については、金属粉末の体積割合が大きい方が、より好ましいと言える。
但し、実施例3及び実施例4の供試体は、ステンレス粉末の体積割合が大きくフェノール樹脂の使用量が少ないことから成形性に劣り、今回の試験においては、成形時にクラックや端面欠けが生じて、鈴木式摩擦摩耗試験機による摩擦試験を行うことができなかった。
しかしながら、これらのクラックや端面欠けは軽微であることから、成形条件を最適化することによって解消することが可能である。したがって、実施例3または実施例4の配合でクラック等を生ずることなく作製したセパレータプレートは、以下に述べるように実施例1及び実施例2の供試体が示す優れた摩擦係数μと同等以上の摩擦係数μを示すことが期待される。
一方、表1の下段に示されるように、従来の鋼板を用いた比較例1の供試体においては、摩擦係数μ=0.158という測定値が得られた。これに対して、実施例1の供試体においては摩擦係数μ=0.248、実施例2の供試体においては摩擦係数μ=0.275といずれも大きく、従来の鋼板を用いた比較例1の摩擦係数μを1.0とした場合、実施例1の供試体は1.57倍、実施例2の供試体は1.74倍という高い摩擦係数の値が得られている。
したがって、従来の鋼板の代わりに実施例1または実施例2の配合に係るセパレータプレートを用いることによって、従来の1.57倍〜1.74倍の摩擦係数μが得られるため、摩擦材係合装置を構成する湿式摩擦材及びセパレータプレートの枚数を減らすことが可能となる。具体的には、1/1.57≒0.64、1/1.74≒0.57であることから、湿式摩擦材とセパレータプレートの接触面の数を従来の57%〜64%とすることができる。
即ち、湿式摩擦材が5枚で従来のセパレータプレートが6枚であった摩擦材係合装置については、従来の接触面の数が10面であることから接触面の数を6面とすることができ、湿式摩擦材が3枚でセパレータプレートを4枚とすることができる。また、湿式摩擦材が3枚で従来のセパレータプレートが4枚であった摩擦材係合装置については、従来の接触面の数が6面であることから接触面の数を4面とすることができ、湿式摩擦材が2枚でセパレータプレートを3枚とすることができる。
同様に、表1に示される実施例2の配合を用いて、図2に示されるフローチャートにしたがって、本実施の形態1に係る摩擦材基材を製造した。そして、この摩擦材基材をリング形状に打ち抜いて、平板リング形状の芯金の両面に接着剤で接着して、湿式摩擦材を製造した。
このようにして、本実施の形態1の実施例2の配合に係るセパレータプレート及び摩擦材基材を用いて構成した摩擦材係合装置について、図3に示す。図3に示されるように、本実施の形態1に係る摩擦材係合装置1は、4枚のセパレータプレート2と、それらの間に配置された3枚の湿式摩擦材3を具備している。即ち、摩擦材係合装置1は、6面の接触面を有している。
ここで、セパレータプレート2は、上述した実施例2の配合を用いて、図2のフローチャートにしたがって製造された、ステンレス粉末とフェノール樹脂とを混合・成形してなる固化成形体である。また、湿式摩擦材3は、鋼板製の平板リング形状の芯金の両面に、平板リング形状に打ち抜いた摩擦材基材31を貼り付けて構成されている。この摩擦材基材31も、上述した実施例2の配合を用いて、図2のフローチャートにしたがって製造された、ステンレス粉末とフェノール樹脂とを混合・成形してなる固化成形体である。
ピストン6は、図示しないコイルばねによって図の右方に付勢されており、非係合時は一番右側のセパレータプレート2から離れており、これによってクラッチハウジング4内に満たされたATFが間に流れ込んで、4枚のセパレータプレート2と3枚のリングタイプ湿式摩擦材3も互いに離間している。
ここで、オイル室7にオイルが圧入されることによって、図3に示されるように、ピストン6が左方に移動して一番右側のセパレータプレート2を押圧し、これによって4枚のセパレータプレート2と3枚のリングタイプ湿式摩擦材3の間のATFが押し出されて、セパレータプレート2とリングタイプ湿式摩擦材3が互いに密着して回転トルクの伝達が行われる。
この係合時における摩擦係数μは、実施例2について表1に示される0.275と同程度以上に大きいため、高効率で回転トルクを伝達することができる。そして、従来の摩擦材係合装置としての湿式クラッチ11においては、摩擦係数μが0.16程度に留まっていたのに対して、本実施の形態1に係る摩擦材係合装置1においては、その1.74倍以上もの摩擦係数μが得られるため、接触面の数を10面から6面に削減しても、同等以上のトルク伝達性能を得ることができる。
ここで、本実施の形態1に係る摩擦材係合装置を構成するセパレータプレート2と、リングタイプ湿式摩擦材3の両面に配置されたリング状摩擦材基材31とは、いずれも同一の配合を用いて同一の製造条件で製造されたものである。即ち、互いに係合するリングタイプ湿式摩擦材3の表面とセパレータプレート2の表面とが同一の素材となり、より馴染みが良くなるため、本実施の形態1に係る摩擦材係合装置においては、更に高い摩擦係数μを得ることができる。
この結果、図1と図3を比較して明らかなように、セパレータプレート2とリングタイプ湿式摩擦材3の枚数が削減されることによって、摩擦材係合装置1が小型化されるとともに軽量化され、高効率で回転トルクを伝達できることと相俟って、省スペース及び燃費の向上という自動車メーカーの要請に応えることができる摩擦材係合装置となる。
なお、本実施の形態1においては、湿式摩擦材3の摩擦材基材31として、実施例2の配合を用いて、図2のフローチャートにしたがって製造された、ステンレス粉末とフェノール樹脂とを混合・成形してなる固化成形体を用いた場合について説明したが、図1に示される従来の湿式摩擦材13と同様に、アラミド繊維、充填材及び摩擦調整剤を抄紙したものに、フェノール樹脂を含浸させて加熱硬化させて製造した摩擦材基材を、リング形状に打ち抜いて芯金の両面に接着したものを用いた場合でも、表1に示されるように、同等以上の摩擦係数μ(従来の1.74倍)、ひいてはトルク伝達性能を得ることができる。
また、本実施の形態1においては、湿式摩擦材3として、芯金の両面に実施例2の配合を用いて、図2のフローチャートにしたがって製造されたステンレス粉末とフェノール樹脂とを混合・成形してなる固化成形体である摩擦材基材31を接着した場合について説明したが、芯金の部分を含む湿式摩擦材全体を、図2のフローチャートにしたがって製造されたステンレス粉末とフェノール樹脂とを混合・成形してなる固化成形体とすることもできる。
[実施の形態2]
次に、本発明に係る摩擦材係合装置の実施の形態2について、図2及び図3を参考にして説明する。
本実施の形態2に係る摩擦材係合装置の全体構成は、図3に示される実施の形態1に係る摩擦材係合装置1とほぼ同様である。
異なるのは、リングタイプ湿式摩擦材3に用いられる摩擦材基材31は、実施の形態1と同様に、従来の摩擦材基材、即ちアラミド繊維、充填材及び摩擦調整剤を抄紙したものにフェノール樹脂を含浸させて加熱硬化させたものではなく、金属粉末と合成樹脂を混合・成形してなるものであるが、セパレータプレートは実施の形態1におけるセパレータプレート2と違って、図1に示される従来のセパレータプレート12と同じく鋼板である点である。
つまり、本実施の形態2に係る摩擦材係合装置を構成するリングタイプ湿式摩擦材に用いられる摩擦材基材は、実施の形態1におけるセパレータプレート2と同様の製造方法によって作製される。
即ち、図2のフローチャートに示されるように、まず、金属粉末14としてのステンレス粉末(ふるい法によって測定した平均粒子径50μm)と、合成樹脂15としてのフェノール樹脂(レゾール型)と、溶剤16としてのメタノールとを混合して(ステップS10)、瑪瑙の乳鉢で良く混練(ステップS11)した後、フェノール樹脂が硬化してしまわない程度に乾燥させた(ステップS12)。
ここで、ステンレス粉末とフェノール樹脂との体積割合は、表1の実施例2に示されるのと同様に、ステンレス粉末80vol%、フェノール樹脂20vol%とした。また、メタノールはレゾール型のフェノール樹脂を溶解させてステンレス粉末と満遍なく混合するために加えており、ステンレス粉末の体積の約10分の1程度の量を使用した。
この混練物を常温において、リング状摩擦材基材のキャビティを有するプレス金型を用いて面圧40MPa〜50MPaでプレス成形して(ステップS13)、厚さ0.5mmの予備成形品を作製し、この予備成形品を80℃で40分間予備乾燥(ステップS14)させた後、180℃で40分間熱処理して(ステップS15)固化摩擦材基材とした。そして、1000番のサンドペーパーで表面を研摩して(ステップS16)リング状摩擦材基材を得た。
こうして得られた厚さ0.5mmのリング状摩擦材基材を、平板リング状の芯金の両面に、フェノール樹脂(ノボラック型)を接着剤として貼り付けることによって、本実施の形態2に係るリングタイプ湿式摩擦材が製造された。
なお、本実施の形態2においてはリングタイプ湿式摩擦材を製造するためにリング状摩擦材基材のキャビティを有するプレス金型を用いているが、セグメントタイプ湿式摩擦材を製造する場合には、所望形状のセグメントピースのキャビティを有するプレス金型を用いれば良い。
一方、本実施の形態2に係る摩擦材係合装置を構成するセパレータプレートは、上述した図1に示される従来のセパレータプレート12と全く同様の鋼板である。このようにして製造したリングタイプ湿式摩擦材を3枚と、セパレータプレート2を4枚用いて、図3に示される実施の形態1に係る摩擦材係合装置1と同様に、本実施の形態2に係る摩擦材係合装置を製造した。
この実施の形態2に係る摩擦材係合装置の作動について、図3を参考にして説明する。ピストン6は、図示しないコイルばねによって図の右方に付勢されており、非係合時は一番右側のセパレータプレート2から離れており、これによってクラッチハウジング4内に満たされたATFが間に流れ込んで、4枚のセパレータプレート2と3枚のリングタイプ湿式摩擦材3も互いに離間している。
そして、オイル室7にオイルが圧入されることによって、図3に示されるように、ピストン6が左方に移動して一番右側のセパレータプレート2を押圧し、これによって4枚のセパレータプレート2と3枚のリングタイプ湿式摩擦材3の間のATFが押し出されて、セパレータプレート2と湿式摩擦材3が互いに密着して回転トルクの伝達が行われる。
ここで、本実施の形態2に係る摩擦材係合装置を構成するリングタイプ湿式摩擦材3の両面に配置されたリング状摩擦材基材31は、実施の形態1と同一の配合を用いて同一の製造条件で製造されたものである。これによって、本実施の形態2に係る摩擦材係合装置においては、実施の形態1に係る摩擦材係合装置1と同等程度の高い摩擦係数μを得ることができる。
このようにして、本実施の形態2に係る摩擦材係合装置においては、セパレータプレートとリングタイプ湿式摩擦材の枚数が削減されることによって、摩擦材係合装置が小型化されるとともに軽量化され、高効率で回転トルクを伝達できることと相俟って、省スペース及び燃費の向上という自動車メーカーの要請に応えることができる摩擦材係合装置となる。
なお、本実施の形態2においては、湿式摩擦材として、芯金の両面に実施例2の配合を用いて、図2のフローチャートにしたがって製造されたステンレス粉末とフェノール樹脂とを混合・成形してなる固化成形体である摩擦材基材を接着した場合について説明したが、芯金の部分を含む湿式摩擦材全体を、図2のフローチャートにしたがって製造されたステンレス粉末とフェノール樹脂とを混合・成形してなる固化成形体とすることもできる。
上記各実施の形態及び実施例においては、金属粉末としてふるい法によって測定した平均粒子径が50μmのステンレス粉末を用いた場合について説明したが、ふるい法によって測定した平均粒子径は、50μmに限られるものではなく、どのようなステンレス粉末でも用いることができる。その中でも、ふるい分け試験で測定した平均粒子径の値が10μm〜100μmの範囲内である金属粉末を用いることが好ましい。
また、金属粉末はステンレス粉末に限られるものではなく、その他にも鉄系粉末、銅系粉末、ニッケル系粉末、クロム系粉末、チタン系粉末、タングステン系粉末、モリブデン系粉末等を用いることが可能である。
また、上記各実施の形態及び実施例においては、合成樹脂としてレゾール型のフェノール樹脂を用いた場合について説明したが、合成樹脂はレゾール型のフェノール樹脂に限られるものではなく、その他にもノボラック型のフェノール樹脂を始めとして、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等を用いることができる。
更に、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン)樹脂、アクリル樹脂等を用いることができる。
また、熱可塑性樹脂の中でも強度や硬度を要求される部分に使用されるエンジニアリングプラスチックとしては、ナイロンを始めとするポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ガラス繊維強化ポリエチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン等を用いることができる。
更に、熱可塑性樹脂の中でも特殊な目的に使用され、エンジニアリングプラスチックよりも更に高い熱変形温度と長期間使用できる特性を有するスーパーエンジニアリングプラスチックとしては、ポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルサルフォン、非晶ポリアレート、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド等を用いることができる。
更に、上記各実施の形態及び実施例においては、金属粉末と合成樹脂とを混合する際に溶剤としてメタノールを用いた場合について説明したが、溶剤は金属粉末と合成樹脂とを満遍なく混合する目的を主とするものであり、合わせて気孔の形成にも役立つものであるが、本発明において必須のものではない。また、溶剤としても、メタノールに限られるものではなく、水、エタノール、プロパノールを始めとして、ベンゼン、トルエン、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ヘキサン、石油エーテル等のその他の溶剤を用いることもできる。
また、上記各実施の形態及び実施例においては、金属粉末と合成樹脂とを成形する方法としてプレス成形による場合について説明したが、成形方法としてはプレス成形に限られるものではなく、その他にも射出成形法、トランスファー成形法を始めとして、種々の成形法を用いることができる。
更に、上記各実施の形態及び実施例においては、金属粉末と合成樹脂のみを具備するセパレータプレート及び湿式摩擦材の摩擦材基材について説明したが、金属粉末と合成樹脂を主成分とするセパレータプレート及び摩擦材基材であれば、その他の材料が添加されていても良い。このような添加剤としては、無機フィラー及び有機フィラー等の充填剤、摩擦調整剤、増粘剤等がある。
また、上記各実施の形態及び実施例においては、固化成形品を表面研摩して製品とする方法について説明したが、表面研摩は必須の工程ではなく、成形型のキャビティ内面が十分な平滑性を有する場合等、固化成形品の段階で十分な表面平滑性を有している場合には、表面研摩工程を省略することができる。
更に、上記各実施の形態においては、湿式摩擦材としてリングタイプ湿式摩擦材を用いた場合について説明したが、湿式摩擦材としてはリングタイプ湿式摩擦材に限られるものではなく、セグメントタイプ湿式摩擦材をも用いることができる。
また、上記各実施の形態においては、摩擦材係合装置として、自動車の自動変速装置(AT)の湿式クラッチについて説明したが、本発明に係る摩擦材係合装置としては、自動変速装置の湿式クラッチに限られるものではなく、互いに係合して回転トルクを伝達する湿式摩擦材とセパレータプレートとを具備するものであれば、どのような摩擦材係合装置にも適用することができる。
更に、上記各実施の形態においては、芯金の両面にセグメントピースまたはリング形状の摩擦材基材を貼り付けた場合について説明したが、仕様によっては、芯金の片面のみにセグメントピースまたはリング形状の摩擦材基材を貼り付けても良い。
本発明を実施するに際しては、湿式摩擦材としてのセグメントタイプ摩擦材及びリングタイプ摩擦材のその他の部分の構成、形状、数量、材質、大きさ、接続関係、製造方法等については、上記各実施の形態及び実施例に限定されるものではない。
なお、本発明の実施の形態で挙げている数値は、その全てが臨界値を示すものではなく、ある数値は実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
1 摩擦材係合装置
2 セパレータプレート
3 湿式摩擦材
31 摩擦材基材

Claims (6)

  1. 互いに係合して回転トルクを伝達する湿式摩擦材とセパレータプレートとを具備する摩擦材係合装置であって、
    前記セパレータプレートまたは前記湿式摩擦材は、少なくとも金属粉末と合成樹脂とにより成形されて、油を吸収する気孔を具備することを特徴とする摩擦材係合装置。
  2. 互いに係合して回転トルクを伝達する湿式摩擦材とセパレータプレートとを具備する摩擦材係合装置であって、
    前記湿式摩擦材はリング形状の芯金に摩擦材基材を接着してなり、前記摩擦材基材は、少なくとも金属粉末と合成樹脂とにより成形されて、油を吸収する気孔を具備することを特徴とする摩擦材係合装置。
  3. 前記セパレータプレート、前記湿式摩擦材または前記摩擦材基材は、前記金属粉末の間に隙間を生じさせて成形することで、前記気孔が形成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の摩擦材係合装置。
  4. 前記セパレータプレート、前記湿式摩擦材または前記摩擦材基材は、前記合成樹脂として熱硬化性樹脂を用いて常温で加圧されて予備成形された後、加熱されて成形されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の摩擦材係合装置。
  5. 前記セパレータプレート、前記湿式摩擦材または前記摩擦材基材における前記金属粉末の体積割合は、60vol%〜84vol%の範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つに記載の摩擦材係合装置。
  6. 前記金属粉末は、ふるい分け試験で測定した平均粒子径の値が10μm〜100μmの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の摩擦材係合装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN116297162A (zh) * 2023-05-17 2023-06-23 成都理工大学 一种离散颗粒堵漏材料摩擦系数测试装置及方法

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