JP2011172206A - 高周波電力増幅器及びそれを備える無線通信装置 - Google Patents

高周波電力増幅器及びそれを備える無線通信装置 Download PDF

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Abstract

【課題】アイソレータを用いなくても良好な高周波特性を実現し、かつ、消費電力の少ない高周波電力増幅器を提供する。
【解決手段】高周波信号を増幅する電力増幅器11と、電力増幅器11にコレクタ電圧を供給する電圧供給部14と、電力増幅器11にバイアス電流を供給する電流供給部と、バイアス電流を検出するバイアス電流検出部13とを備え、電圧供給部14は、バイアス電流がバイアス電流の基準値以下の場合に電源電圧を第1電圧、バイアス電流がバイアス電流の基準値より高い場合に電源電圧を第1電圧未満の第2電圧に制御する制御部18を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、高周波信号の電力増幅に用いられる高周波電力増幅器に関わり、特に出力負荷変動に対応した高周波電力増幅器及びそれを備える無線通信装置に関するものである。
近年、携帯電話端末ではグローバルな使用が可能となるように、マルチバンドの周波数帯域(例えば、2GHzを中心とした帯域と900MHzを中心とした帯域)や、マルチモードのシステム(例えば、GSM:Global System for Mobile Communications/DCS:Digital Communication System/UMTS:Universal Mobile Telecommunication Systems)に対応した端末の普及が急速に進んでいる。そのため、携帯電話端末において高出力の電力増幅を行う送信電力増幅器には、小型、高性能、低コスト化の要求がさらに高まっている。
一般的に、携帯電話端末におけるアンテナ周辺に金属や壁や人体などが存在すると、高出力の電力増幅を行う電力増幅器の出力負荷インピーダンスは変動し、50Ω(設計値)から大きく外れてしまう場合がある。その結果、出力電力、歪特性、消費電流などが変動し、通話品質が損なわれてしまう。そのため、電力増幅器とアンテナ間には、アンテナインピーダンスの変動を吸収することができるアイソレータが挿入されている。
一方で、アイソレータを挿入すると電力増幅器の出力負荷インピーダンス変動は安定化するが、1個当たりのアイソレータの実装面積が2×2mm2と大きく携帯電話端末の小型化に障壁となる。また、アイソレータの挿入損失が0.5dB程度あるため、その分だけ電力増幅器の消費電力が増加する。また、マルチバンドに対応する電力増幅器は、さらに、アイソレータがバンド数分だけ必要になるため高コストとならざるを得ない。
そこで、アイソレータを取り除く様々な取り組みがなされている。
図21は、特許文献1における従来のアイソレータを取り除いた高周波電力増幅器の構成を示すブロック図である。
同図に示す特許文献1に記載の高周波電力増幅器900は、入力端子910から入力された高周波信号を増幅器901で増幅し、増幅器901の出力とアンテナ907との間に接続された進行波用の方向性結合器902から進行波の電力に応じた信号Vaを取り出すとともに、反射波用の方向性結合器903から反射波の電力に応じた信号Vbを取り出す。そして、進行波の電力に応じた信号Vaと反射波の電力に応じた信号Vbとから、演算回路904により増幅器901に供給する電源電圧Vddが演算され、DC−DCコンバータ905が演算結果の電源電圧Vddを増幅器901に供給する。
これにより、高周波電力増幅器900は、アンテナインピーダンスによって生じたアンテナ907からの反射波の電力を反射波用の方向性結合器903により検出し、DC−DCコンバータ905により電源電圧Vddを制御することにより、歪特性の劣化を抑えている。さらに、高周波電力増幅器900は、増幅器901に供給される電源電流をモニタする供給電流モニタ回路906を備え、増幅器901に供給される電源電流が大きい負荷領域では、電源電圧Vddを下げることにより、消費電力の増加を抑えている。
また、特許文献2に記載の構成では、アンテナインピーダンスによって生じたアンテナ反射電力の振幅及び位相を、方向性結合器により検出し、検出した振幅及び位相に応じてDC−DCコンバータにより電源電圧を制御する。これにより、特許文献1に記載の構成では、歪特性の劣化を実現し、さらに消費電力の増加を抑えている。
以上のように、特許文献1及び2に記載の構成では、アイソレータを用いなくても歪特性の劣化を低減し、消費電力の増加を抑制する高周波電力増幅器を実現している。
特開2003−338714号公報 特開2008−66867号公報
しかしながら、特許文献1及び2に記載の構成では、次のような課題があると考えられる。
まず、1つ目の課題として、特許文献1及び2に記載の構成ではアンテナ反射電力の検出を行うために反射電力を検出する方向性結合器を設ける必要があり、それによる電力損失が発生することが挙げられる。
具体的には、電力増幅器の出力信号ラインに方向性結合器を設置することになるため、反射電力を検出するために生じる挿入損失0.2dB程度に加え、電力増幅器の負荷回路との不整合による損失、及び、検出信号を携帯電話端末上でレイアウトする際に電力増幅器の出力負荷回路と隣接することになるため、不十分なアイソレーションによる結合による損失などの理由により、少なくとも0.5dB程度の挿入損失が増えてしまう。その結果、アイソレータを用いず反射電力を検出する方向性結合器を設けた高周波電力増幅器が有する電力増幅器は、アイソレータの挿入損失0.5dB程度よりも大きい0.7dB程度以上の出力電力を上げる必要がある。つまり、負荷インピーダンスが50Ω(設計値)の場合であっても、アイソレータを用いた場合よりも消費電力の増大につながるという課題がある。
このような負荷インピーダンスが設計値の場合であっても生じる消費電力の増加は、比較的使用頻度が高いインピーダンス条件において、携帯電話端末の通話時間を劣化させたり、熱問題などを引き起こす可能性がある。
さらに、2つ目の課題として、電力増幅器の電流をモニタすることによる電力損失の発生が挙げられる。
具体的には、特許文献1の場合では、電源電流が大きい負荷領域で電源電圧を下げるために、電源電流をモニタする供給電流モニタ回路を用いている。しかしながら、例えばモニタ抵抗を用いて高出力時の電源電流である大電流を検出しようとする場合、供給電流モニタ回路において多大な消費電力が発生する。例えば、供給電流モニタ回路がモニタする電流は数100mA〜数Aとなるので、供給電流モニタ回路として抵抗値の小さい抵抗を用いた場合であっても、当該供給電流モニタ回路での消費電力は大きくなる。
よって、供給電流モニタ回路の消費電力を考慮すると、方向性結合器による電力損失と併せて、アイソレータを用いた場合よりもさらに、消費電力が大きくなってしまう。
このように、特許文献1及び2の構成では、アイソレータを用いた場合と比較して、実際の消費電力は大きくなる。
それ故に、本発明の目的は、アイソレータを用いなくても良好な高周波特性を実現し、かつ、消費電力の少ない高周波電力増幅器及びそれを用いた無線通信装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明に係る高周波電力増幅器は、高周波信号を増幅する増幅部と、前記増幅部に電源電圧を供給する電圧供給部と、前記増幅部にバイアス電流を供給する電流供給部と、前記バイアス電流を検出する検出部とを備え、前記電圧供給部は、前記バイアス電流が閾値以下の場合に前記電源電圧を第1電圧、前記バイアス電流が前記閾値より高い場合に前記電源電圧を前記第1電圧未満の第2電圧に制御する制御部を備える。
これにより、アイソレータを用いなくても良好な高周波特性を実現し、かつ、消費電力を低減できる。
また、前記閾値は、前記高周波電力増幅器の出力負荷が理想的な場合の、前記増幅部の出力電力に対応する前記バイアス電流の値であってもよい。
また、前記高周波電力増幅器は、さらに、複数の前記出力電力と、前記高周波電力増幅器の出力負荷が理想的な場合の複数の前記バイアス電流の値とを対応づけて記憶しているメモリと、前記増幅部の出力電力を取得する取得部とを備え、前記制御部は、取得された前記増幅部の出力電力に対応する前記メモリに記憶されている前記バイアス電流の値と、前記検出部で検出された前記バイアス電流の値とを比較し、前記検出部で検出された前記バイアス電流の値が前記メモリに記憶されている前記バイアス電流の値以下の場合に、前記電源電圧を前記第1電圧に制御し、前記検出部で検出された前記バイアス電流の値が前記メモリに記憶されている前記バイアス電流の値より高い場合に、前記電源電圧を前記第2電圧に制御してもよい。
また、前記第2電圧は、前記バイアス電流が前記閾値より高い場合に、前記高周波電力増幅器の隣接チャネル漏洩電力特性が所定値未満となるような電圧であってもよい。
これにより、電波法等の法規に基づく仕様を満たし、かつ、消費電力を低減できる。言い換えると、不要輻射を抑制し、かつ、消費電力を削減できる。
また、前記第1電圧は、前記バイアス電流の値によらず、当該高周波電力増幅器の隣接チャネル漏洩電力特性が所定値未満となるような電圧であってもよい。
これにより、常に電波法等の法規に基づく仕様を満たす。言い換えると、いかなる負荷状態であっても不要輻射を確実に防止する。
また、前記制御部は、前記電源電圧が前記第1電圧であり、かつ、前記バイアス電流が前記閾値より高くなった場合に、前記電源電圧を前記第1電圧から前記第2電圧へ変更してもよい。
これにより、高周波電力増幅器は、通信している間に負荷インピーダンスが変動した場合も、消費電力を低減できる。
また、前記制御部は、前記電源電圧が前記第2電圧であり、かつ、前記バイアス電流が前記閾値以下となった場合に、前記電源電圧を前記第2電圧から前記第1電圧へ変更してもよい。
これにより、高周波電力増幅器は、通信している間に負荷インピーダンスが変動した場合も、良好な歪特性を実現できる。
また、前記制御部は、さらに、前記増幅部の出力電力に応じて前記電源電圧を制御してもよい。
また、前記制御部は、前記増幅部の出力電力が予め定められた電力より大きい場合、予め定められた第1上限電圧を前記第1電圧とし、前記増幅部の出力電力が前記予め定められた電力以下の場合、前記第1上限電圧より低い予め定められた第2上限電圧を前記1電圧としてもよい。
また、前記制御部は、前記増幅部の出力電力が前記予め定められた電力より大きい場合、前記第2上限電圧以上の電圧を前記第2電圧としてもよい。
また、前記取得部は、前記増幅部に接続され、前記増幅部の出力電力を検出してもよい。
また、前記増幅部は、第1の周波数帯域の前記高周波信号を増幅する第1増幅素子と、第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域の前記高周波信号を増幅する第2増幅素子と、前記第1増幅素子及び前記第2増幅素子のそれぞれに前記バイアス電流を供給するために前記第1増幅素子及び前記第2増幅素子に共通に設けられたバイアス線とを含むようにしてもよい。
これにより、マルチバンドに対応でき、かつ、1つのバイアス電流検出部のみでバイアス電流を検出するので小型化が可能となる。
また、前記第1増幅素子及び前記第2増幅素子のそれぞれはトランジスタからなり、前記増幅部はさらに、前記第1増幅素子のコレクタに接続され、当該第1増幅素子で増幅された前記高周波信号を伝達するための第1配線と、前記第1増幅素子のエミッタに接続された第2配線と、前記第2増幅素子のコレクタに接続され、当該第2増幅素子で増幅された前記高周波信号を伝達するための第3配線と、前記第2増幅素子のエミッタに接続された第4配線とを含み、前記バイアス線は、前記第1〜第4配線のいずれとも重ならないようにしてもよい。
これにより、動作中の増幅素子(第1増幅素子及び第2増幅素子の一方)から、第1〜4配線からバイアス線を介して、非動作中の増幅素子(第1増幅素子及び第2増幅素子の他方)への回り込みの影響を低減できる。具体的には、マルチバンドで動作する増幅部では、第1増幅素子及び第2増幅素子の一方が動作し、他方が非動作となるが、動作中の増幅素子で増幅された高周波信号がバイアス線を介して非動作中の増幅素子へ回り込むと、誤動作及び送信出力の低下の原因となる。バイアス線を第1〜4配線のいずれとも重ならないように配置することにより、バイアス線を介した高周波信号の回り込みを防止し、増幅部の誤動作及び送信出力の低下を抑制する。
また、前記増幅部は、多段接続されたm(mは2以上の整数)個の増幅素子と、前記m個の増幅素子のそれぞれに前記バイアス電流を供給するためのm本のバイアス線とを含み、前記検出部は、前記m本のバイアス線の少なくとも1つに供給されている前記バイアス電流を検出してもよい。
これにより、増幅部が1個の増幅素子からなる場合と比較して、増幅利得を大きくできる。このような高周波電力増幅器は、例えば送信用のPA(Power Amplifier)として好適である。
また、前記検出部は、前記m個の増幅素子の最後段に対応する前記バイアス線に供給されている前記バイアス電流を検出してもよい。
これにより、検出部は、最後段の増幅素子とは位相がずれた段の増幅素子のバイアス電流の電流変化の影響を受けずに、最後段の増幅素子のバイアス電流の変化の影響のみを受ける。言い換えると、検出部により検出されるバイアス電流から、最後段以外の増幅素子のバイアス電流の影響を除外できる。その結果、検出部により精度良く最後段の増幅素子のバイアス電流を検出でき、高周波電力増幅器の歪特性を向上できる。
具体的には、多段接続された増幅素子により構成された増幅部の歪特性は、後段の増幅素子による影響が支配的である。よって、最後段以外の増幅素子のバイアス電流の影響を排除して、検出部により最後段の増幅素子のバイアス電流を高い精度で検出し、その高い精度で検出されたバイアス電流に応じて電源電圧を制御することにより、歪特性を向上できる。
また、前記検出部は、前記m本のバイアス線に供給されている前記バイアス電流のそれぞれを、各増幅素子に対応づけて検出してもよい。
これにより、段間の位相ずれ、及び、いずれの段の増幅素子での歪特性の劣化が生じた場合であっても、それらの影響を考慮して電源電圧を制御することができる。
また、前記m個の増幅素子のうち、i(1≦i≦m−1の整数)段目の増幅素子に対応する前記バイアス電流と、j(i<jかつ2≦j≦m)段目の増幅素子に対応する前記バイアス電流との差分から、前記電源電圧を制御してもよい。
これにより、負荷が変動した場合の破壊位相を特定し、破壊を回避できる。具体的には、破壊が生じる位相領域は、電流位相変化の電流立下り領域である。しかし、ここで、一の増幅素子のバイアス電流を検出するだけでは、バイアス電流が立ち下がる位相と電流が立ち上がる位相との両方を検出してしまい、破壊を回避することができない。そこで、他の増幅素子のバイアス電流と一の増幅素子のバイアス電流との位相ずれを利用し、バイアス電流が立ち下がる位相を特定する。その結果、破壊が生じる位相領域を特定できるので、増幅素子の破壊を防止できる。
また、前記高周波電力増幅器は、さらに、前記バイアス電流を制御する電流制御トランジスタと、前記電流制御トランジスタ及び前記増幅部の温度補償を行う温度補償回路とを備えてもよい。
これにより、高周波電力増幅器の外部環境に応じて、適切に電源電圧を制御できる。
また、本発明はこのような高周波電力増幅器として実現できるだけでなく、高周波電力増幅器を備える無線通信装置としても実現できる。
本発明によれば、アイソレータを用いなくても良好な高周波特性を実現し、かつ、消費電力の少ない高周波電力増幅器及びそれを用いた無線通信装置を実現できる。
実施形態1に係る高周波電力増幅器の構成を示すブロック図である。 メモリ部が保持しているデータの一例を示すグラフである。 電力増幅器の具体的な構成を示す回路図である。 電力増幅器のバイアス回路の具体的な回路構成を示す図である。 コレクタ電圧4Vの場合のACLR5MHz特性を示すグラフである。 コレクタ電圧4Vの場合のコレクタ電流特性を示すグラフである。 コレクタ電圧3Vの場合のACLR5MHz特性を示すグラフである。 コレクタ電圧3Vの場合のコレクタ電流特性を示すグラフである。 コレクタ電圧3.5Vの場合のバイアス電流特性を示すグラフである。 電力増幅器の出力電力に対応するコレクタ電圧の設定値を示すグラフである。 高周波電力増幅器の動作を示すフローチャートである。 図9に示す第1処理での具体的な処理を示すフローチャートである。 図9に示す第2処理での具体的な処理を示すフローチャートである。 図9に示す第3処理での具体的な処理を示すフローチャートである。 高周波電力増幅器の負荷インピーダンス変動における消費電力特性を示すグラフである。 実施形態1の変形例に係る高周波電力増幅器の構成を示すブロック図である。 実施形態2に係る高周波電力増幅器の構成を示すブロック図である。 電力増幅器の具体的な構成を示す回路図である。 実施形態3に係る高周波電力増幅器の構成を示すブロック図である。 電力増幅器の具体的な構成を示す回路図である。 実施形態4に係る高周波電力増幅器の構成を示すブロック図である。 電力増幅器の具体的な構成を示す回路図である。 従来のアイソレータを取り除いた高周波電力増幅器の構成を示す図である。
以下、本発明に係る高周波電力増幅器及び無線通信装置について、各実施形態及び変形例に基づき説明する。ただし、同一の構成要素については同一の符号とし、説明を省略している場合がある。
(実施形態1)
実施形態1に係る高周波電力増幅器は、高周波信号を増幅する増幅部と、増幅部に電源電圧を供給する電圧供給部と、増幅部にバイアス電流を供給する電流供給部と、バイアス電流を検出する検出部とを備え、電圧供給部は、バイアス電流が閾値以下の場合に電源電圧を第1電圧、バイアス電流が閾値より高い場合に電源電圧を第1電圧未満の第2電圧に制御する制御部を備える。
これにより、本実施形態に係る高周波電力増幅器は、アイソレータを用いなくても良好な高周波特性を実現し、かつ、消費電力を低減できる。
図1は、本発明の実施形態1に係る高周波電力増幅器の構成を示すブロック図である。
同図に示す本発明の実施形態1に係る高周波電力増幅器10は、アンテナ17と、出力電力検出部12と、電力増幅器11と、RFIC16と、バイアス電流検出部13と、電圧供給部14と、メモリ部15とを備える。この高周波電力増幅器10は、例えば携帯電話端末といった無線通信装置に適用される。なお、一般的な携帯電話端末では、出力電力検出部12とアンテナ17との間にはデュプレクサやアンテナスイッチが構成され、RFIC16の入力にはベースバンドLSIが構成されているが、ここでは記載を省略している。
ここで、本実施形態に係る高周波電力増幅器10の動作を簡単に説明する。
図1において、アンテナ17は出力電力検出部12からの高周波信号を送信する、及び、基地局からの高周波信号を受信する。そして、高周波電力増幅器10は、アンテナ17で受信された高周波信号が復調された信号である受信信号に基づいてベースバンドLSI(図示せず)で信号処理された信号をRFIC16で周波数変換し、RFIC16でさらに設定出力に利得調整を行う。そして、RFIC16から出力された高周波信号である送信信号(以下、単に高周波信号と記載する場合がある)を電力増幅器11で増幅して、増幅した送信信号を出力電力検出部12及びアンテナ17を介して放射する。また、電力増幅器11から出力された送信信号の電力である出力電力を出力電力検出部12で検出し電圧変換を行い、出力電力検出部12からの検出電圧がRFIC16に入力される。また、出力電力検出部12からの検出電圧を示す情報がRFIC16から電圧供給部14へ入力される。
以下、高周波電力増幅器10の各構成について、詳細に説明する。
電力増幅器11は、上記の増幅部に相当し、RFIC16から入力された高周波信号を増幅する。この電力増幅器11は、入力端子IN、出力端子OUT、コレクタ電圧印加端子VCC、バイアス電圧印加端子VDC、基準電圧印加端子VREFを有する。RFIC16から出力された高周波信号は入力端子INに入力されて増幅された後、出力端子OUTから出力される。また、電圧供給部14からコレクタ電圧印加端子VCCにコレクタ電圧が印加され、バイアス電流検出部13からバイアス電圧印加端子VDCにバイアス電圧が印加され、基準電圧が基準電圧印加端子VREFに印加されている。また、バイアス電圧印加端子VDCには、バイアス電流IDCが供給されている。
なお、バイアス電圧VDC及びバイアス電流IDCは、電流供給部から供給されている。
出力電力検出部12は、出力電力を取得する取得部に相当し、電力増幅器11から出力される高周波信号の電力である出力電力を検出する。以降、検出した出力電力をVdetとする。この出力電力検出部12は、例えば方向性結合器及びコンデンサを有し、検出した出力電力VdetをRFIC16へ出力する。なお、出力電力検出部12は、検出した出力電力Vdetを電圧変換し、出力電力Vdetに対応する電圧をRFIC16へ出力してもよい。
バイアス電流検出部13は、上記の検出部に相当し、電力増幅部11のバイアス電流IDCを検出する。このバイアス電流検出部13は、例えばバイアス電流IDCを検出する配線に挿入された抵抗を有し、当該抵抗の両端の電位差を測定することにより配線に流れる電流を検出する。
電圧供給部14は、上記の電圧供給部に相当し、電力増幅器11に電源電圧であるコレクタ電圧VCCを供給する。具体的には、電圧供給部14は、RFIC16からの検出電圧情報とバイアス電流検出部13からのバイアス電流情報とを、メモリ部15に記憶されている出力電力に対する基準値と比較し、比較結果に応じてコレクタ電圧VCCを制御する。
この電圧供給部14は制御部18を備え、当該制御部18は、バイアス電流の基準値IDCREFを閾値として、バイアス電流検出部13により検出されたバイアス電流IDCが閾値未満の場合にコレクタ電圧を第1電圧、バイアス電流IDCが閾値より高い場合にコレクタ電圧を第1電圧未満の第2電圧、バイアス電流IDCが閾値と実質的に等しい場合にコレクタ電圧を第1電圧未満かつ第2電圧以上の電圧に制御する。
具体的には、制御部18は、バイアス電流検出部13により検出されたバイアス電流IDCの値がバイアス電流の基準値IDCREF未満の場合に、コレクタ電圧を第1電圧(例えば電力増幅器11の出力電力Poutが22<Pout≦26dBmの場合に4V、以降VCC_upと記載)に制御する。また、バイアス電流検出部13により検出されたバイアス電流の値がバイアス電流の基準値IDCREFと実質的に等しい場合に、コレクタ電圧を第1電圧未満かつ第2電圧以上の電圧(例えば電力増幅器11の出力電力Poutが16<Pout≦22dBmの場合に3.5V、以降VCC_typと記載)に制御する。また、バイアス電流検出部13により検出されたバイアス電流の値がバイアス電流の基準値IDCREFより高い場合に、コレクタ電圧を第2電圧(例えば電力増幅器11の出力電力Poutが10<Pout≦16dBmの場合に3V、以降VCC_downと記載)に制御する。
ここで、バイアス電流の基準値IDCREFは、高周波電力増幅器10の出力負荷が理想的な場合の、電力増幅器11の出力電力に対応するバイアス電流の値である。言い換えると、バイアス電流の基準値IDCREFは、高周波電力増幅器10の出力負荷インピーダンスが50Ωの場合の電力増幅器11の出力電力に対応するバイアス電流の値である。つまり、バイアス電流の基準値IDCREFは、アンテナ負荷VSWR=1:1の場合、つまり電力増幅器11の出力端からアンテナ17側を見た場合の負荷VSWR=1:1の場合における電力増幅器11の出力電力に対応するバイアス電流の値である。
メモリ部15は、電力増幅器の複数の出力電力と、複数のバイアス電流の基準値IDCREFとを対応づけて記憶しているメモリである。
図2は、メモリ部15が保持しているデータの一例を示すグラフである。
同図に示すグラフは、負荷VSWR=1:1の場合の各出力電力に対応するバイアス電流の基準値IDCREFを示す。
同図に示すように、基準値IDCREFは電力増幅器11の出力電力に対応している。つまり、メモリ部15は、電力増幅器11の複数の出力電力に対応する複数の基準値IDCREFを保持している。なお、メモリ部15は、高周波電力増幅器10が実装された環境の複数の温度に対応して、図2に示すようなグラフを複数保持していてもよい。
これにより、制御部18は、同図に示すバイアス電流の基準値IDCREFを閾値として、出力電力検出部12により検出された出力電力Vdetに対応するメモリ部15に記憶されているバイアス電流の基準値IDCREFと、バイアス電流検出部13で検出されたバイアス電流IDCの値とを比較し、バイアス電流検出部13で検出されたバイアス電流が閾値未満の場合にコレクタ電圧をVCC_up、バイアス電流検出部13で検出されたバイアス電流が閾値と実質的に等しい場合にコレクタ電圧をVCC_typ、バイアス電流検出部13で検出されたバイアス電流が閾値より高い場合にコレクタ電圧をVCC_downに制御する。
よって、制御部18は、VSWR=1:1の場合のバイアス電流IDCREFより増加している位相領域ではコレクタ電圧VCCを下げて(VCC_down)、VSWR=1:1の場合のバイアス電流IDCREFより減少している位相領域ではコレクタ電圧VCCを上げて(VCC_up)、VSWR=1:1の場合のバイアス電流IDCREFと実質的に等しい位相領域ではコレクタ電圧(VCC_typ)を使用することで、良好な歪特性と消費電力特性の両立が可能となる。
RFIC16は、ベースバンドLSI(図示せず)から出力された送信ベースバンド信号を高周波信号に変換し、所望の電力に増幅又は減衰し、電力増幅器11へ出力する。また、出力電力検出部12で検出された出力電力Vdetを示す信号を電圧供給部14へ出力する。ここで、RFIC16が出力する高周波信号の電力は、高周波電力増幅器10に要求されるアンテナ17からの出力電力と、電力増幅器11、出力電力検出部12及び電力増幅器11の減衰量及び増幅利得とから決定される。
以上のように、本実施形態に係る高周波電力増幅器10は、高周波信号を増幅する電力増幅器11と、電力増幅器11にコレクタ電圧VCCを供給する電圧供給部14と、電力増幅器11にバイアス電流IDCを供給する電流供給部と、バイアス電流IDCを検出するバイアス電流検出部13とを備え、電圧供給部14は、バイアス電流IDCが基準値IDCREF未満の場合にコレクタ電圧をVCC_up、バイアス電流IDCが基準値IDCREFと実質的に等しい場合にコレクタ電圧をVCC_typ、バイアス電流IDCが基準値IDCREFより高い場合にコレクタ電圧をVCC_upより低いVCC_dowmに制御する。
これにより、本実施形態に係る高周波電力増幅器10は、アイソレータを用いなくても良好な高周波特性を実現し、かつ、消費電力を低減できる。
次に、この高周波電力増幅器10の具体的な構成について説明する。
図3は、本発明の実施形態1に係る電力増幅器11の具体的な構成を示す回路図である。
同図に示すように、電力増幅器11は、電力増幅用トランジスタQ0と、入力端子INと、出力端子OUTと、バイアス回路B1と、容量C1及びC2と、コレクタ電圧印加端子VCCと、バイアス電圧印加端子VDCと、基準電圧印加端子VREFとを備える。
RFIC16から電力増幅器11へ出力された高周波信号は、入力端子INへ入力される。入力端子INに入力された高周波信号は、電力増幅用トランジスタQ0で増幅された後に出力端子OUTへ出力される。ここで、電力増幅器11が扱う出力電力の範囲は、UMTS(Universal Mobile Transmission Standard)システムの場合−50dBm〜+26dBm程度である。
電力増幅用トランジスタQ0は、ベースが容量C1を介して入力端子INに接続され、コレクタがコレクタ電圧印加端子VCCに接続され、エミッタが接地されている、例えばバイポーラトランジスタである。電力増幅用トランジスタQ0のベースはさらに、バイアス回路B1に接続され、バイアス電流IDCが供給されている。また、電力増幅用トランジスタQ0のコレクタはさらに、容量C2を介して出力端子OUTに接続され、電力増幅用トランジスタQ0で増幅した高周波信号を出力端子OUTから出力電力検出部12へ出力する。
バイアス回路B1は、基準電圧印加端子VREF、バイアス電圧印加端子VDC及び電力増幅用トランジスタQ0に接続され、バイアス電力印加端子VDCから電力増幅用トランジスタQ0へとバイアス電流IDCを供給する。このバイアス回路B1の詳細な構成については後述する。
容量C1は電力増幅用トランジスタQ0の入力側の整合をとり、容量C2は出力側の整合をとると共にDC成分をカットする。
図4は、電力増幅器11のバイアス回路B1の具体的な回路構成を示す図である。
バイアス回路B1は、バイアス電流供給用トランジスタQ1と、温度補償回路T1とを備え、温度補償回路T1は、抵抗R1及びR2と、トランジスタQ2及びQ3とを備える。
バイアス電流供給用トランジスタQ1は、上記の電流制御トランジスタに相当し、電力増幅用トランジスタQ0のベース電流を供給するエミッタフォロワ回路を構成する、例えばバイポーラトランジスタである。このバイアス電流供給用トランジスタQ1はエミッタが電力増幅用トランジスタQ0のベースに接続され、コレクタがバイアス電圧印加端子VDCに接続され、ベースが温度補償回路T1に接続されている。これにより、バイアス電流供給用トランジスタQ1は温度補償回路T1により温度補償されるので、バイアス電流IDCも温度補償される。つまり、電力増幅用トランジスタQ0も温度補償される。
温度補償回路T1は、基準電圧印加端子VREFからの電圧により電力増幅器11の動作/非動作を切り替えるとともに、バイアス電流供給用トランジスタQ1と電力増幅用トランジスタQ0との温度補償を行う。なお、温度補償回路T1の構成は図4に示す構成に限らずダイオードを用いた構成でもよい。
このように、電力増幅器11は、RFICから入力された高周波信号を増幅し、出力電力検出部12を介してアンテナ17へ出力する。
次に、上述のように構成された本実施形態に係る高周波電力増幅器10の高周波特性及び消費電力について、負荷インピーダンスの条件を変えながら、(i)電力増幅器11のコレクタ電圧VCCを4Vとした場合と(ii)電力増幅器11のコレクタ電圧VCCを3Vとした場合とで説明する。
(i)電力増幅器11のコレクタ電圧VCCを4Vとした場合
図5Aは、コレクタ電圧4Vの場合の5MHz離れの隣接チャネル漏洩電力(以下、ACLR5MHz;Adjacent Channel Leakage Ratio(5-MHz offset)と記載)特性を示すグラフであり、図5Bは、コレクタ電圧4Vの場合のコレクタ電流特性(ICC)を示すグラフである。
なお、このときの条件は、周波数824MHz、変調信号UMTS(HSDPA:High Speed Downlink Packet Access)とし、基準電圧VREF=2.9V、バイアス電圧VDC=2.9Vを印加し、出力電力検出部12で検出される電力増幅器11の出力電力が26dBmとなるよう電力増幅器11の入力電力を調整している。つまり、RFIC16の利得を調整している。ここで隣接チャネル漏洩電力特性とは、電力増幅器11の歪特性をあらわす指標である。
また、出力電力検出部12及び電力増幅器11の負荷インピーダンスの変動条件として、電圧定在波比(以下、VSWR)は、1:1から4:1までとしている。つまり、出力電力検出部12の負荷VSWRは1:1から4:1としている。なお、以降、電力増幅器11の負荷VSWRと記載している箇所は、出力電力検出部12及び電力増幅器11の負荷VSWRを示す。負荷VSWRを1:1から4:1としている理由は、出力電力検出部12とアンテナ17との間にある一般的なデュプレクサとアンテナスイッチの挿入損失が、少なくとも2dB程度あることから、アンテナ17のインピーダンスが大きく変動し、通信が全く出来なくなるアンテナ負荷条件(例えばアンテナ負荷VSWRが20:1)であっても、電力増幅器11の負荷VSWRは4:1を上回ることがないためである。言い換えると、電力増幅器11の負荷VSWRを1:1から4:1までとすることで、実用上のほぼ全ての負荷状態に対応する。
ところで、図5Aに示すACLR5MHzは、電波法等の規格で定められた仕様を満たすために−35dBc以下であることが要求される。具体的には、携帯電話端末におけるACLR5MHzの仕様は第3世代移動体通信システム標準規格(3GPP:Third Generation Partnership Project)で−33dBc以下と定められているため、出力電力検出部12を含んだ電力増幅器11でのACLR5MHzの仕様は、他の部品(アンテナ17、デュプレクサ、スイッチスイッチなど)の特性劣化配分を考慮すると−35dBc以下にする必要がある。
図5Aに示すように、電力増幅器11のコレクタ電圧をVCC=4Vにした場合、負荷VSWR=1:1から負荷VSWR=4:1の全位相にわたって、ACLR5MHz特性は−35dBcを下回り仕様を満足していることがわかる。
一方、図5Bに示すように、電力増幅器11のコレクタ電流特性(ICC)は、負荷VSWRが1:1から4:1になるにつれ位相に対する電流変動も大きくなってきている。
ここで、図5Bと図5Aとを比較すると、負荷VSWR=2:1、負荷VSWR=3:1及び負荷VSWR=4:1のそれぞれのコレクタ電流特性の電流値が負荷VSWR=1:1の場合のコレクタ電流特性の電流値より増加している位相領域(−90deg〜0deg〜+110deg)では、各負荷VSWRのACLR5MHz特性は仕様に対してワーストでも8dB以上ものマージンがあることがわかる。言い換えると、負荷VSWR=1:1の場合のコレクタ電流特性の電流値より高い電流値となる位相領域では、ACLR5MHz特性が極めて良好となっている。しかしながら、これは逆に、過剰な電力消費をしていることになる。
一方、負荷VSWR=1:1の場合のコレクタ電流特性の電流値より負荷VSWR=2:1、負荷VSWR=3:1及び負荷VSWR=4:1のコレクタ電流特性の電流値が減少している位相領域(+110deg〜±180deg〜−90deg)では、ACLR5MHz特性は仕様に対してマージンが少なくなっている。つまり、電力消費は比較的少ないことがわかる。
(ii)電力増幅器11のコレクタ電圧VCCを3Vとした場合
図6Aは、コレクタ電圧3Vの場合のACLR5MHz特性を示すグラフであり、図6Bは、コレクタ電圧3Vの場合のコレクタ電流特性(ICC)を示すグラフである。
なお、このときの条件は、(i)コレクタ電圧VCCを4Vとした場合と同様に、周波数824MHz、変調信号UMTS(HSDPA)とし、基準電圧VREF=2.9V、バイアス電圧VDC=2.9Vを印加し、出力電力検出部12で検出される電力増幅器11の出力電力が26dBmとなるよう電力増幅器11の入力電力を調整している。つまり、RFIC16の利得を調整している。
図6Aに示すように、電力増幅器11のコレクタ電圧をVCC=3Vにした場合、負荷VSWR=1:1及び負荷VSWR=2:1の全位相にわたって、ACLR5MHz特性は−35dBcを下回り仕様を満足していることがわかる。しかしながら、負荷VSWR=3:1及び負荷VSWR=4:1の場合、位相によってACLR5MHz特性が仕様を満足しない領域があることがわかる。つまり、負荷VSWRが2:1を越え4:1までの場合、ACLR5HMz特性が仕様を満足しない位相領域がある。
このように、図6Aに示すコレクタ電圧VCCを3Vとした場合のACLR5MHz特性は、図5Aに示すコレクタ電圧VCCを4Vとした場合のACLR5MHz特性と比較して、全位相領域にわたって劣化している。
一方、図6Bに示すコレクタ電圧VCCを3Vとした場合の電力増幅器11のコレクタ電流特性(ICC)は、図5Bに示すコレクタ電圧VCCを4Vとした場合の電力増幅器11のコレクタ電流特性(ICC)と比較して、ほぼ同等である。つまり、電力増幅器11のコレクタ電流特性(ICC)はコレクタ電圧VCCに依存しない。
ここで、図6Bと図6Aとを比較すると、負荷VSWR=2:1、負荷VSWR=3:1及び負荷VSWR=4:1のそれぞれの場合のコレクタ電流特性の電流値が負荷VSWR=1:1の場合のコレクタ電流ICCより増加している位相領域(−90deg〜0deg〜+110deg)では、各負荷VSWRのACLR5MHz特性は仕様に対してワーストでも2dB程度以上のマージンがあることがわかる。このときの高周波電力増幅器10の電力消費はコレクタ電圧VCC=4Vの場合に比べ25%削減できる。
一方、負荷VSWR=1:1の場合のコレクタ電流特性ICCの電流値より負荷VSWR=2:1、負荷VSWR=3:1及び負荷VSWR=4:1のそれぞれのコレクタ電流特性の電流値が減少する位相領域(+110deg〜±180deg〜−90deg)では、ACLR5MHz特性は仕様を満たすことができない場合がある。
上記(i)及び(ii)で説明した図5A、5B、6A及び6Bの結果から、電力増幅器11の出力電力を26dBmとした時の負荷インピーダンス変動において、ACLR5MHzの仕様を満たしつつ、消費電力をできるだけ下げて使用するためには、VSWR=1:1の場合のコレクタ電流ICCより増加している位相領域(−90deg〜0deg〜+110deg)をコレクタ電圧VCC=3Vで、VSWR=1:1の場合のコレクタ電流ICCより減少している位相領域(+110deg〜±180deg〜−90deg)をコレクタ電圧VCC=4Vで動作させることが最も有効であることがわかる。
以上のことから、コレクタ電圧VCCを制御すれば、歪特性と消費電力特性の両立が可能となるが、発明が解決しようとする課題の一つにも記載したように高出力時の大電流を検出しようとすると多大な消費電力が発生するため、歪特性と消費電力特性の両立が困難となる。
ここで、図3及び図4に示す電力増幅用トランジスタQ0のベース電流は、コレクタ電流ICCの1/電流増幅率と等価であるため、比較的少ない消費電力で検出することが可能となる。つまり、本実施形態では、コレクタ電流ICCを測定する代わりに、電力増幅用トランジスタQ0のベース電流に相当する、バイアス電圧印加端子VDCに流れるバイアス電流IDCをバイアス電流検出部13で検出することにより、消費電力を低減できる。
具体的には、バイアス電流とコレクタ電流とは、バイアス電流をIb、コレクタ電流をIc、電流増幅率をhFEとすると、下記の式1で示される。
Ib×hFE=Ic ・・・(式1)
なお、バイアス電圧印加端子VDCに流れるバイアス電流IDCの電流値は、電力増幅用トランジスタQ0のベース電流の電流値と多少異なるが、電力増幅用トランジスタQ0のベース電流と同様の挙動を示す。つまり、バイアス電流IDCは、温度補償回路T1のトランジスタQ1へも流れるので、電力増幅用トランジスタQ0のベース電流とは多少異なる。しかしながら、バイアス電流IDCの特性はベース電流特性と電流量以外同様の特性を示すので、ベース電流を直接測定する代わりに、バイアス電流IDCを測定(検出)しても何ら不都合はない。つまり、負荷VSWR=1:1のバイアス電流特性と、他の負荷VSWR(負荷VSWR=2:1、負荷VSWR=3:1、負荷VSWR=4:1)と大小関係は変わらないので、バイアス電流特性に応じてコレクタ電圧を設定してもよい。
次に、電力増幅器11のバイアス電流特性を参照しながら、バイアス電流を検出することによる消費電力低減効果、並びに、バイアス電流特性とコレクタ電流特性との関係について説明する。
図7は、コレクタ電圧3.5Vの場合のバイアス電流特性(IDC)を示すグラフである。
なお、このときの条件は、上記(i)及び(ii)と同様に、周波数824MHz、変調信号UMTS(HSDPA)とし、基準電圧VREF=2.9V、バイアス電圧VDC=2.9Vを印加し、出力電力検出部12で検出される電力増幅器11の出力電力が26dBmとなるよう電力増幅器11の入力電力を調整している。つまり、RFIC16の利得を調整している。ここで、コレクタ電流特性(ICC)の場合と同様に、バイアス電流特性(IDC)もコレクタ電圧VCC=3〜4Vの範囲においては、ほぼ同等の特性を示すので、ここではコレクタ電圧VCC=3.5Vの場合を示している。
図7に示すように、負荷インピーダンスが変動しても、バイアス電流IDCは最大で10mAを上回らないため、コレクタ電流ICCの最大値420mAに比べ1/40であることがわかる。今、バイアス電流検出部13で例えばモニタ抵抗2.5Ωを用いて、バイアス電流IDCを検出しようとすると、
バイアス電流検出部13での電力消費=(10mA)^2*2.5Ω
=0.25mW程度 ・・・(式2)
である。
一方、仮に、バイアス電流IDCを検出するバイアス電流検出部13の代わりにコレクタ電流ICCを検出する検出部を設けた場合、当該検出部での電力消費は、
(420mA)^2*2.5Ω=441mW ・・・(式3)
となる。
よって、式2と式3から明らかなように、コレクタ電流ICCに代わりバイアス電流IDCを検出することにより、消費電力を約1/1700倍に低減できる。
また、電力増幅器11の負荷VSWR=1:1における電力消費は、ACLR5MHz特性の仕様に2dB以上のマージン確保の観点から、コレクタ電圧VCC=3.5Vでの駆動が必要なため、
電力増幅器11での電力消費(VSWR=1:1)=3.5V*300mA
=1050mW・・・(式4)
となる。
以上から、電力増幅器11での電力消費に対して、バイアス電流検出部13での電力消費は極めて小さいことから、バイアス電流IDCを検出することで、消費電力の増大を防ぐことが明らかである。
また、図7からわかるように、各VSWRを考慮すると、VSWR=1:1の場合のバイアス電流IDCより増加している位相領域は、−90deg〜0deg〜+110deg、VSWR=1:1の場合のバイアス電流IDCより減少している位相領域は、+110deg〜±180deg〜−90degとなっている。
これは図5B及び図6Bのコレクタ電流特性(ICC)の結果と一致していることが明らかである。
つまり、電力増幅器11の出力電力が26dBmの時の負荷インピーダンスが変動した場合において、ACLR5MHz特性の仕様を満たしつつ、消費電力をできるだけ低減するためには、VSWR=1:1の場合のバイアス電流IDCより増加している位相領域(−90deg〜0deg〜+110deg)をコレクタ電圧VCC=3Vで、VSWR=1:1の場合のバイアス電流IDCより減少している位相領域(+110deg〜±180deg〜−90deg)をコレクタ電圧VCC=4Vで動作させればよいことになる。
なお、これまでの説明では出力電力が26dBmの場合について行ってきたが、電力増幅器11の出力電力が26dBm以外の場合についても、各出力電力に対応して同様の制御を行えばよい。つまり、制御部18は、電力増幅器11の出力電力に応じてコレクタ電圧VCCを制御してもよい。
図8は、本発明の実施形態1に係る高周波電力増幅器10の電力増幅器11の出力電力に対応するコレクタ電圧(VCC)の設定値を示すグラフである。これは、メモリ部15に記憶されていてもよいし、制御部18が記憶していてもよい。
同図に示すように、制御部18は、電力増幅器11の出力電力が予め定められた第1電力(例えば22dBm)より大きい場合、予め定められた第1上限電圧(例えば4V)をVCC_upとし、電力増幅器11の出力電力が第1電力以下の場合、第1上限電圧より低い予め定められた第2上限電圧(例えば3V)をVCC_downとする。また、制御部18は、電力増幅器11の出力電力が予め定められた第1電力より大きい場合、第2上限電圧以上の電圧(例えば3V以上の電圧)をVCC_downとする。
ところで、図8に示すコレクタ電圧の設定値はACLR5MHz特性の仕様に2dB以上のマージンを確保する観点で決定される。具体的には、VCC_downは、バイアス電流IDCが基準値IDCREFより高い場合に、高周波電力増幅器10のACLR5MHz特性が所定値未満となるような電圧である。これにより、電波法等の法規に基づく仕様を満たし、かつ、消費電力を低減できる。言い換えると、不要輻射を抑制し、かつ、消費電力を削減できる。また、VCC_upは、バイアス電流IDCの値によらず、高周波電力増幅器10のACLR特性が所定値未満となるような電圧である。これにより、常に電波法等の法規に基づく仕様を満たす。言い換えると、いかなる負荷状態であっても不要輻射を確実に防止する。また、VCC_typは、バイアス電流IDCが基準値IDCREFと実質的に等しい場合に、高周波電力増幅器10のACLR5MHz特性が所定値未満となるような電圧である。
ここで、この所定値とは、高周波電力増幅器10に要求されるACLR5MHz特性の仕様から算出され、例えば3GPPで定められている−33dBcに2dBのマージンを考慮した−35dBcである。
そのことから、図8に示すように出力電力22〜26dBm(26dBm≧出力電力Pout>22dBm)では、コレクタ電圧設定は、VCC_up=4V、VCC_down=3V、VCC_typ=3.5Vとする。また出力電力16〜22dBm(22dBm≧出力電力Pout>16dBm)では、コレクタ電圧設定は、VCC_up=3V、VCC_down=2V、VCC_typ=2.5Vとする。さらに、出力電力10〜16dBm(16dBm≧出力電力Pout>10dBm)では、コレクタ電圧設定は、VCC_up=2V、VCC_down=1V、VCC_typ=1.5Vに設定される。
尚、出力電力が10dBmを下回ると、バイアス電流はアイドル状態と変わらなくなるので電流検出が難しくなる。しかしながら、10dBm以下の低出力では、負荷変動インピーダンスの影響がほとんど見えにくくなるため、VSWR=1:1の場合でACLR5MHz特性の仕様に2dB以上のマージン確保ができるコレクタ電圧VCCへの設定をしておけば、ACLR5MHz特性の仕様確保は容易である。
以上のように、本実施形態に係る高周波電力増幅器10は、高周波信号を増幅する電力増幅器11と、電力増幅器11にコレクタ電圧VCCを供給する電圧供給部14と、電力増幅器11にバイアス電流IDCを供給する電流供給部と、バイアス電流IDCを検出するバイアス電流検出部13とを備え、電圧供給部14は、バイアス電流IDCが基準値IDCREF未満の場合にコレクタ電圧をVCC_up、バイアス電流IDCが基準値IDCREFと実質的に等しい場合にコレクタ電圧をVCC_typ、バイアス電流IDCが基準値IDCREFより高い場合にコレクタ電圧をVCC_upより低いVCC_dowmに制御する。
これにより、本実施形態に係る高周波電力増幅器10は、アイソレータを用いなくても良好な高周波特性を実現し、かつ、消費電力を低減できる。
次に、上記のように構成された本発明の実施形態1に係る高周波電力増幅器10の動作について説明する。
図9は、本発明の実施形態1に係る高周波電力増幅器10の動作を示すフローチャートである。
まず、制御部18はコレクタ電圧VCCに4Vを設定する(ステップS101)。コレクタ電圧VCCを4Vにすることにより、想定されるいかなる負荷インピーダンスであってもACLR5MHzを確保できる。これは初期状態では、どのインピーダンス領域であるか不明なので、確実に仕様を満たす電圧に設定する。つまり、不要輻射を確実に防止できる。
次に、出力電力検出部12は電力増幅器11の出力電力Poutを検出する(ステップS102)。そして、検出された出力電力Poutを示す情報がRFIC16を介して制御部18へと出力される。なお、このとき出力電力検出部12により検出された出力電力PoutをVdet@t1とする。
次に、バイアス電流検出部13は、この状態でのバイアス電流IDCを検出する(ステップS103)。つまり、出力電力Poutを検出する処理(ステップS102)で検出された出力電力から電力の変化がない状態でのバイアス電流IDCを検出する。なお、このときバイアス電流検出部13により検出されたバイアス電流IDCをIDC@t1とする。
次に、制御部18は、出力電力検出部12で検出された出力電力が22dBmを超え26dBm以下であるか否かを判定する(ステップS104)。つまり、Vdet@t1が22dBmより高く26dBm以下であるか否かを判定する。そして、Vdet@t1が22dBmより高く26dBm以下である場合(ステップS104でyes)には、第1処理(ステップS105)へ進む。
一方、それ以外の出力電力の場合は、別の出力電力の場合に設けた処理に進む。
具体的には、Vdet@t1が22dBmより高く26dBm以下でない場合(ステップS104でno)には、Vdet@t1が16dBmより高く22dBm以下であるか否かを判定する(ステップS106)。そして、Vdet@t1が16dBmより高く22dBm以下である場合(ステップS106でyes)には、第2処理(ステップS107)へ進む。
一方、Vdet@t1が16dBmより高く22dBm以下でない場合(ステップS106でno)には、Vdet@t1が10dBmより高く16dBm以下であるか否かを判定する(ステップS108)。そして、Vdet@t1が10dBmより高く16dBm以下である場合(ステップS108でyes)には、第3処理(ステップS109)へ進む。
一方、Vdet@t1が10dBmより高く16dBm以下でない場合(ステップS108でno)には、電力増幅器11の出力電力Poutを検出する処理(ステップS102)へ戻り、これまでの一連の動作を定期的に繰り返し実行する。
このように、26dBm≧Vdet@t1>22dBmの場合は第1処理(ステップS105)へと進み、22dBm≧Vdet@t1>16dBmの場合は第2処理(ステップS107)へと進み、16dBm≧Vdet@t1>10dBmの場合は第3処理(ステップS109へと進み、これら以外の場合は、これまでの一連の動作を繰り返す。
図10は、図9に示す第1処理(ステップS105)での具体的な処理を示すフローチャートである。言い換えると、図10は、出力電力が22〜26dBm(26dBm≧Vdet@t1>22dBm)の場合において、負荷変動インピーダンスに対してコレクタ電圧設定を、VCC_up=4V、VCC_down=3V、VCC_typ=3.5Vに、どのように制御するかを示している。
まず、制御部18は、バイアス電流IDC@t1と、この場合の出力電力Vdet@t1の基準となるバイアス電流の基準値IDCREFとを比較する。具体的には、図2に示したグラフから、出力電力Vdet@t1に対応するバイアス電流IDCの基準値IDCREFを取得し、バイアス電流IDC@t1と、取得した基準値IDCREFとを比較し、バイアス電流検出部13で検出されたバイアス電流IDC@t1が基準値IDCREFより高いか否かを判定する(ステップS111)。
バイアス電流IDC@t1が基準値IDCREFより高い場合(ステップS111でyes)、制御部18は、コレクタ電圧を3.0Vに設定する(ステップS112)。つまり、電圧供給部14は3.0Vのコレクタ電圧VCCを電力増幅器11に印加する。
一方、バイアス電流IDC@t1が基準値IDCREFより高くない場合(ステップS111でno)は、別の処理に進む。具体的には、バイアス電流IDC@t1と、基準値IDCREFとが等しいが否かを判定する(ステップS113)。バイアス電流IDC@t1が基準値IDCREFと等しい場合(ステップS113でyes)、制御部18は、コレクタ電圧を3.5Vに設定する(ステップS114)。つまり、電圧供給部14は3.0Vのコレクタ電圧VCCを電力増幅器11に印加する。
一方、バイアス電流IDC@t1と、基準値IDCREFとが等しくない場合(ステップS113でno)は、制御部18は、コレクタ電圧を4.0Vに設定する(ステップS115)。つまり、電圧供給部14は3.0Vのコレクタ電圧VCCを電力増幅器11に印加する。なお、バイアス電流IDC@t1と基準値IDCREFとが等しいとは、厳密に等しい場合に限らず実質的に等しければよく、例えばバイアス電流IDC@t1が基準値IDCREFに対して±10パーセント以内であればよい。
このように、制御部18は、出力電力検出部12で検出された出力電力Vdet@t1に対応するバイアス電流IDCの基準値IDCREFと、バイアス電流検出部13により検出されたバイアス電流IDC@t1とを比較し、比較結果に応じてコレクタ電圧VCCを制御する。
以上、制御部18によりコレクタ電圧VCCを設定する処理(ステップS112、S114及びS115のいずれか)の後は、第1処理(ステップS105)を終了する。
図11は、図9に示す第2処理(ステップS107)での具体的な処理を示すフローチャートであり、図12は、図9に示す第3処理(ステップS109)での具体的な処理を示すフローチャートである。
図11に示す第2処理(ステップS107)及び図12に示す第3処理(ステップS109)でのフローチャートは、ほぼ図10に示す第1処理(ステップS105)でのフローチャートと同様である。ただし、第2処理(ステップS107)及び第3処理(ステップS109)では、第1処理(ステップS105)と比較して出力電力検出部12で検出された出力電力Vdet@t1が異なる。よって、図2に示すグラフから明らかなように、ステップS121、S123、S131及びS133で比較対象とするバイアス電流の基準値IDCREFが異なる。また、図8に示すグラフから明らかなように、ステップS122、S124、S125、S132、S134及びS135において設定するコレクタ電圧が異なる。
このように、出力電力Vdet@t1が16〜22dBm(22dBm≧出力電力Vdet@t1>16dBm)や、出力電力Vdet@t1が10〜16dBm(16dBm≧Vdet@t1>10dBm)の場合においても、出力電力Vdet@t1が22〜26dBm(26dBm≧出力電力Vdet@t1>22dBm)の場合と同様に、あらかじめメモリ部15に格納しておいた図2のような各出力電力に応じたバイアス電流IDCの基準値IDCREFを演算の比較対象に使用し、その結果に基づいて図8に示したコレクタ電圧VCCを設定する。つまり、バイアス電流IDC@t1とバイアス電流の基準値IDCREFとの比較結果に応じて、第2処理では2.0V、2.5V及び3.0Vのいずれかがコレクタ電圧に設定され、第3処理では1.0V、1.5V及び2.0Vのいずれかがコレクタ電圧に設定される。
そして、第1処理(ステップS105)、第2処理(ステップS107)及び第3処理(ステップS109)が終了すると、電力増幅器11の出力電力Poutを検出する処理(ステップS102)へ戻り、これまでの一連の動作を定期的に繰り返し実行する。
つまり、制御部18は、バイアス電流IDC@t1とバイアス電流の基準値IDCREFとを定期的に比較し、比較結果に応じてコレクタ電圧を制御する。例えば、制御部18は、コレクタ電圧VCCがVcc_upであり、かつ、バイアス電流IDC@t1がバイアス電流の基準値IDCREFより高くなった場合に、コレクタ電圧VCCをVcc_upからVcc_downへ変更する。これにより、高周波電力増幅器10は、通信している間に負荷インピーダンスが変動した場合も、消費電力を低減できる。また、制御部18は、コレクタ電圧VCCがVcc_downであり、かつ、バイアス電流IDC@t1がバイアス電流の基準値IDCREF未満となった場合に、コレクタ電圧VCCをVcc_downからVcc_upへ変更する。これにより、高周波電力増幅器10は、通信している間に負荷インピーダンスが変動した場合も、良好な歪特性を実現できる。
以上説明したような動作により、本実施形態に係る高周波電力増幅器10は、各出力電力においてアンテナインピーダンスの変動に対して、ACLR5MHzの仕様確保と消費電力の低減の両立が可能となる。
ここで、アイソレータを用いた高周波電力増幅器の消費電力と、本実施形態に係る高周波電力増幅器10の消費電力とを比較する。
図13は、本発明の実施形態1に係る高周波電力増幅器10の負荷インピーダンス変動における消費電力特性を示すグラフである。
同図に示す消費電力特性は、電力増幅器11にバイアス電流検出部13やメモリ部15の電力消費を加えている。なお、このときの条件は、周波数824MHz、変調信号UMTS(HSDPA)とし、基準電圧VREF=2.9V、バイアス電圧VDC=2.9Vを印加し、出力電力検出部12で検出される電力増幅器11の出力電力が26dBmとなるよう電力増幅器11の入力電力を調整している。つまり、RFIC16の利得を調整している。また、出力電力検出部12及び電力増幅器11の負荷インピーダンスの変動条件として、VSWRは1:1から4:1までとしている。つまり、出力電力検出部12の負荷VSWRは1:1から4:1としている。
図13に示すように、本実施形態に係る高周波電力増幅器10の消費電力は、負荷VSWR=1:1の場合は一定であるが、負荷VSWR=2:1、3:1、4:1の場合において−90degと+110degとで急激に変化している。これは、この位相において、バイアス電流検出部13で検出されたバイアス電流とバイアス電流の基準値IDCREFとの比較結果に基づきコレクタ電圧VCCが変化することによる。
なお、図13には、比較のために、アイソレータを用いた場合の高周波電力増幅器の消費電力特性も示している(図13中のアイソレータありと書かれた長破線)。
アイソレータを用いた場合の消費電力特性は、次のように算出する。
アイソレータを用いた場合、出力電力検出部12の出力にアイソレータを挿入し、アイソレータの挿入損失は0.5dB程度のため、アイソレータ出力端での出力電力を26.5dBmとしている。アイソレータを用いた場合の高周波電力増幅器の構成は、ほぼ本発明の実施形態1に係る高周波電力増幅器10の構成と同じであるが、バイアス電流検出部13やメモリ部15を備えない点が異なる。また、バイアス条件(コレクタ電圧VCC=3.5V、基準電圧VREF=2.9V、バイアス電圧VDC=2.9V)などは実施形態1に係る高周波電力増幅器10と同等とする。
電力増幅器11は、出力電力が26dBmから26.5dBmへ上がるとコレクタ電流は10mA程度増加するため、アイソレータを用いた場合の電力増幅器11での電力消費は式5で表される。
電力増幅器11での電力消費=3.5V*310mA
=1085mW ・・・(式5)
次に、上述のように算出したアイソレータを用いた場合の電力増幅器11での消費電力と、本実施形態に係る高周波電力増幅器10の負荷インピーダンスを負荷VSWR=1:1から負荷VSWR=4:1とした場合の消費電力とを比較する。
本実施形態1に係る高周波電力増幅器10の負荷VSWR=1:1の場合の電力消費は、図13に示すように、アイソレータありの場合に比べて30mW以上の低消費電力化が可能となる。
また、本実施形態1に係る高周波電力増幅器10の負荷VSWR=2:1の場合の電力消費は、負荷インピーダンス変動の位相領域で+110deg〜+115degの5deg程度の範囲で、アイソレータありの場合を上回るが、それ以外のほとんどの位相領域(+115deg〜±180deg〜+110Deg)では低消費電力化が可能となる。
また、本実施形態1に係る高周波電力増幅器10の負荷VSWR=3:1の場合の電力消費は、負荷インピーダンス変動の位相領域で−50deg〜+60degや、+110deg〜+125degや、−95deg〜−90degの130deg程度の範囲で、アイソレータありの場合を上回るが、それ以外の位相領域(230deg)では低消費電力化が可能となる。
また、本実施形態1に係る高周波電力増幅器10の負荷VSWR=4:1の場合の電力消費は、負荷インピーダンス変動の位相領域で−55deg〜+70degや、+110deg〜+122degや、−95deg〜−90degの142deg程度の範囲で、アイソレータありの場合を上回るが、それ以外の位相領域(218deg)では低消費電力化が可能となる。
以上のように、本実施形態1に係る高周波電力増幅器10は、アイソレータを用いた場合と比較して、遜色ない電力消費を実現できる。
なお、比較的使用頻度が高いインピーダンス条件(アンテナ負荷VSWR=1:1から4:1付近まで)での低消費電力化は、このような制御設定でよいが、アイソレータありの場合の電力消費を上回る位相領域について、さらに、VSWR=1:1(負荷インピーダンスが50Ω)のバイアス電流IDCの基準を設けて、コレクタ電圧VCCをより細かく制御すれば、アイソレータありの場合の消費電力をさらに下回り、存在しうる負荷インピーダンス領域全てにおいて良好な高周波特性を得ることが可能となる。
以上説明したように、本実施形態に係る高周波電力増幅器10は、高周波信号を増幅する電力増幅器11と、電力増幅器11にコレクタ電圧VCCを供給する電圧供給部14と、電力増幅器11にバイアス電流IDCを供給する電流供給部と、バイアス電流IDCを検出するバイアス電流検出部13とを備え、電圧供給部14は、バイアス電流IDCが基準値IDCREF未満の場合にコレクタ電圧をVCC_up、バイアス電流IDCが基準値IDCREFと実質的に等しい場合にコレクタ電圧をVCC_typ、バイアス電流IDCが基準値IDCREFより高い場合にコレクタ電圧をVCC_upより低いVCC_dowmに制御する。
これにより、本実施形態に係る高周波電力増幅器10は、アイソレータを用いなくても良好な高周波特性を実現し、かつ、消費電力を低減できる。
(実施形態1の変形例)
図14は、本変形例に係る高周波電力増幅器の構成を示すブロック図である。
本変形例に係る高周波電力増幅器20は、実施形態1に係る高周波電力増幅器10とほぼ同じであるが、電力増幅器11の出力電力を検出する出力電力検出部12を備えない点が異なる。
電力増幅器11の出力電力は、RFIC16の利得と電力増幅器11の増幅利得とによって決定される。よって、RFIC16は、当該RFIC16の利得と電力増幅器11の増幅利得とから、電力増幅器11から出力されている高周波信号の電力を取得することができる。言い換えると、本変形例に係るRFIC16は、上記の取得部に相当し、電力増幅器11に入力される高周波信号の電力と、電力増幅器11の増幅利得とから、電力増幅器11の出力電力を推定する。
このように、本変形例に係る高周波電力増幅器20は、実施形態1に係る高周波電力増幅器10と比較して、電力増幅器11に接続され、電力増幅器11の出力電力を検出する出力電力検出部12に代わり、RFIC16により電力増幅器11の出力電力を推定する。これにより、本変形例に係る高周波電力増幅器20は、実施形態1に係る高周波電力増幅器10と比較して、低コスト化かつ小型化できる。
(実施形態2)
本実施形態に係る高周波電力増幅器は、実施形態1に係る高周波電力増幅器10と比較して、マルチバンド対応である点が異なる。
図15は、本実施形態に係る高周波電力増幅器の構成を示すブロック図である。
同図に示す高周波電力増幅器30は、図1に示す実施形態1に係る高周波電力増幅器10と比較して、さらに、スイッチ32を備える点と、電力増幅器11に代わり電力増幅器31、RFIC16に代わりRFIC36、アンテナ17に代わりマルチバンドに対応できるマルチバンドアンテナ37を備える点が異なる。
RFIC36は、マルチバンド(例えば、UMTS Band−I及びUMTS Band−V)に対応し、各バンドに対応する高周波信号を独立して電力増幅器31へ出力する。
電力増幅器31は、マルチバンドに対応する2つの入力端子IN1及びIN2と2つの出力端子OUT1及びOUT2を有し、RFIC36から入力された高周波信号を増幅する。
スイッチ32は、電力増幅器31と出力電力検出部12との間に挿入され、通信するバンドに応じて、電力増幅器31の出力端子OUT1と出力電力検出部12とを接続、又は、電力増幅器31の出力端子OUT2と出力電力検出部12とを接続する。
図16は、電力増幅器31の具体的な構成を示す回路図である。
同図に示す電力増幅器31は、図3に示す電力増幅器11がバンドごとに並列に配置された構成である。具体的には、電力増幅器31は、第1のバンド(第1の周波数帯域とも言う)に対応する、容量C31及びC32と、電力増幅用トランジスタQ31と、バイアス回路B31とを備える。さらに、第1のバンドとは異なる第2のバンド(第2の周波数帯域とも言う)に対応する、容量C33及びC34と、電力増幅用トランジスタQ32と、バイアス回路B32とを備える。さらに、電力増幅器31は、バイアス電圧印加端子VDCからバイアス回路B31及びバイアス回路B32を介して、電力増幅用トランジスタQ31及びQ32のベースに接続されたバイアス線LB31を備える。
このように、本実施形態に係る高周波電力増幅器30の電力増幅器31は、第1の周波数帯域の高周波信号を増幅する電力増幅用トランジスタQ31と、第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域の高周波信号を増幅する電力増幅用トランジスタQ32と、電力増幅用トランジスタQ31及び電力増幅用トランジスタQ32のそれぞれにバイアス電流を供給するために電力増幅用トランジスタQ31及び電力増幅用トランジスタQ32に共通に設けられたバイアス線LB31とを含む。なお、電力増幅用トランジスタQ31は上記の第1増幅素子に相当し、電力増幅用トランジスタQ32は上記の第2増幅素子に相当する。
これにより、本実施形態に係る高周波電力増幅器30は、マルチバンドに対応でき、かつ、1つのバイアス電流検出部13のみでバイアス電流を検出するので小型化が可能となる。
また、電力増幅器31は、電力増幅用トランジスタQ31のコレクタに接続され、電力増幅用トランジスタQ31で増幅された高周波信号を伝達するための第1配線L31と、電力増幅用トランジスタQ31のエミッタに接続された第2配線L32と、電力増幅用トランジスタQ32のコレクタに接続され、電力増幅用トランジスタQ32で増幅された高周波信号を伝達するための第3配線L33と、電力増幅用トランジスタQ32のエミッタに接続された第4配線L34とを含み、バイアス線LB31は、第1〜4配線L31〜L34のいずれとも重ならない。
これにより、動作中の電力増幅用トランジスタから、第1〜4配線L31〜L34及びバイアス線LB31を介して、非動作中の電力増幅用トランジスタへの回り込みの影響を低減できる。マルチバンドで動作する電力増幅器31では、電力増幅用トランジスタQ31及びQ32の一方が動作し、他方が非動作となるが、動作中の電力増幅用トランジスタで増幅された高周波信号がバイアス線LB31を介して非動作中の電力増幅用トランジスタへ回り込むと、誤動作及び送信出力の低下の原因となる。バイアス線LB31を上記のように配置することにより、バイアス線LB31を介した高周波信号の回り込みを防止し、電力増幅器31の誤動作及び送信出力の低下を抑制する。
(実施形態3)
本実施形態に係る高周波電力増幅器は、実施形態1に係る高周波電力増幅器10と比較して、電力増幅器の電力増幅用トランジスタが多段構成されている点が異なる。
図17は、本実施形態に係る高周波電力増幅器の構成を示すブロック図である。同図に示す高周波電力増幅器40は、図1に示す高周波電力増幅器10と比較して、電力増幅器11に代わり電力増幅器41、電圧供給部14に代わり電圧供給部44を備える。
電力増幅器41は、電力増幅器11と比較して、多段接続された2つの電力増幅用トランジスタを有し、前段の電力増幅用トランジスタにコレクタ電圧を供給するためのコレクタ電圧印加端子VCC1と、後段の電力増幅用トランジスタにコレクタ電圧を供給するためのコレクタ電圧印加端子VCC2とを有する。
電圧供給部44は、電圧供給部14と比較して制御部18に代わり、出力電力検出部12で検出された出力電力Vdet及びバイアス電流検出部13で検出されたバイアス電流IDCに応じて前段の電力増幅用トランジスタのコレクタ電圧VCC1及び後段の電力増幅用トランジスタのコレクタ電圧VCC2を制御する制御部48を備える。
図18は、電力増幅器41の具体的な構成を示す回路図である。
同図に示す電力増幅器41は、図3に示す電力増幅器11と比較して、多段接続された2つの電力増幅用トランジスタQ41及びQ42を備え、前段の電力増幅用トランジスタQ41の出力端であるコレクタと、後段の電力増幅用トランジスタQ42の入力端であるベースとの間に、前段の電力増幅用トランジスタQ41の出力と後段の電力増幅用トランジスタQ42とのインピーダンス整合をとる整合回路Mを有する。また、前段の電力増幅用トランジスタQ41に対応するバイアス回路B41と、後段の電力増幅用トランジスタQ42に対応するバイアス回路B42とを備える。なお、容量C41及びC42は、容量C1及びC2と同様であり、詳細は省略する。
また、電力増幅器41は、2個の電力増幅用トランジスタQ41及びQ42のそれぞれにバイアス電流を供給するための2本のバイアス線LB41及びLB42を含む。バイアス線LB41は、基準電圧印加端子VREFに接続され、電力増幅用トランジスタQ41のベースにバイアス電流を供給する。一方、バイアス線LB42は、バイアス電圧印加端子VDCに接続され、電力増幅用トランジスタQ42のベースにバイアス電流を供給する。
つまり、本実施形態では、バイアス電流検出部13は、後段の電力増幅用トランジスタQ42に対応するバイアス線LB42に供給されているバイアス電流IDCを検出する。
以上のように、本実施形態に係る高周波電力増幅器40の電力増幅器41は、多段接続された2個の電力増幅用トランジスタQ41及びQ42と、2個の電力増幅用トランジスタQ41及びQ42のそれぞれにバイアス電流を供給するための2本のバイアス線LB41及びLB42とを含み、バイアス電流検出部13は、後段の電力増幅用トランジスタQ42に対応するバイアス線LB42に供給されているバイアス電流IDCを検出する。
これにより、バイアス電流検出部13は、整合回路Mにより位相がずれた前段の電力増幅用トランジスタQ41のバイアス電流の変化の影響を受けずに、後段の電力増幅用トランジスタQ42のバイアス電流の変化の影響のみを受ける。言い換えると、バイアス電流検出部13により検出されるバイアス電流IDCから、前段の電力増幅用トランジスタQ41のバイアス電流の影響を除外できる。その結果、バイアス電流検出部13により精度良く後段の電力増幅用トランジスタQ42のバイアス電流を検出でき、高周波電力増幅器40のACLR5MHz特性を向上できる。
具体的には、多段接続された電力増幅用トランジスタにより構成された電力増幅器のACLR5MHz特性は、後段の電力増幅用トランジスタによる影響が支配的である。よって、前段の電力増幅用トランジスタQ41のバイアス電流の影響を排除して、バイアス電流検出部13により後段の電力増幅用トランジスタQ42のバイアス電流IDCを高い精度で検出し、その高い精度で検出されたバイアス電流に応じてコレクタ電圧VCC1及びVCC2を制御することにより、ACLR5MHz特性を向上できる。
(実施形態4)
本実施形態に係る高周波電力増幅器は、実施形態3と比較して、多段接続された電力増幅用トランジスタを含む電力増幅器を備える点では同じであるが、各段の電力増幅用トランジスタのバイアス電流を検出する点が異なる。
図19は、本実施形態に係る高周波電力増幅器の構成を示すブロック図であり、図20は、本実施形態に係る高周波電力増幅器が有する電力増幅器の具体的な構成を示す回路図である。
同図に示す高周波電力増幅器50は、図17に示す実施形態3に係る高周波電力増幅器40と比較して、電力増幅器41に代わり電力増幅器51、バイアス電流検出部13に代わり第1バイアス電流検出部53a及び第2バイアス電流検出部53b、電圧供給部44に代わり電圧供給部54を備える。
電力増幅器51は、電力増幅器41と比較して、さらに、前段の電力増幅用トランジスタQ41のバイアス電流を供給するためのバイアス電圧印加端子VDC1と、後段の電力増幅用トランジスタQ42のバイアス電流を供給するためのバイアス電圧印加端子VDC2とを有する。また、電力増幅器51は、前段の電力増幅用トランジスタQ41に対応するバイアス回路B51がバイアス電圧印加端子VDC1に接続されている。なお、図19及び図20に示すバイアス電圧印加端子VDC2は、図17及び図18に示すバイアス電圧印加端子VDCと同様である。
第1バイアス電流検出部53aは、前段の電力増幅用トランジスタQ41のバイアス電流を検出し、第2バイアス電流検出部53bは、後段の電力増幅用トランジスタQ42のバイアス電流を検出する。
電圧供給部54は、電圧供給部44と比較して制御部48に代わり制御部58を備える。この制御部58は、第1バイアス電流検出部53aで検出された前段の電力増幅用トランジスタQ41のバイアス電流と、第2バイアス電流検出部53bで検出された後段の電力増幅用トランジスタQ42のバイアス電流に応じて、前段の電力増幅用トランジスタQ41のコレクタ電圧VCC1及び後段の電力増幅用トランジスタQ42のコレクタ電圧VCC2を制御する。
以上のように、本実施形態に係る高周波電力増幅器50では、第1バイアス電流検出部53a及び第2バイアス電流検出部53bが、2本のバイアス線LB41及びLB42に供給されているバイアス電流のそれぞれを、各電力増幅用トランジスタQ41及びQ42に対応づけて検出する。つまり、第1バイアス電流検出部53aが電力増幅用トランジスタQ41のバイアス電流を検出し、第2バイアス電流検出部53bが電力増幅用トランジスタQ42のバイアス電流を検出する。
これにより、前段の電力増幅用トランジスタQ41と後段の電力増幅用トランジスタQ42との間の位相ずれ、及び、前段の電力増幅用トランジスタQ41でのACLR5MHz特性の劣化が生じた場合であっても、それらの影響を考慮してコレクタ電圧VCC1及びVCC2を制御することができる。
(実施形態4の変形例)
本変形例に係る高周波電力増幅器は、実施形態4とほぼ同じであるが、制御部がさらに、前段の電力増幅用トランジスタQ41に対応するバイアス電流と、後段の電力増幅用トランジスタQ42に対応するバイアス電流との差分から、コレクタ電圧VCC1及びVCC2を制御する点が異なる。
負荷インピーダンスがVSWR=1:1(50Ω)から大きく外れていくにつれ、アンテナ17から電力増幅器51に逆流する反射の高周波信号により電力増幅用トランジスタQ41及びQ42が破壊される。この破壊が生じる位相領域は、電流位相変化の電流立下り領域である。よって、電力増幅用トランジスタQ41及びQ42の破壊を回避するためには電流位相変化の電流が立ち下がる位相を確定する必要がある。具体的には、図5A、図5B、図6A及び図6Bからわかるように、負荷VSWRの位相変化に対してバイアス電流が減少している位相領域を確定する必要がある。位相領域が確定できればコレクタ電圧VCC1及びVCC2を高くすることにより、破壊に対する耐性を向上させることが可能である。
ここで、後段の電力増幅用トランジスタQ42のバイアス電流を検出するだけでは、バイアス電流が立ち下がる位相と電流が立ち上がる位相との両方を検出してしまい、破壊を回避することができない。そこで、段間整合回路による前段の電力増幅用トランジスタQ41のバイアス電流と後段の電力増幅用トランジスタQ42のバイアス電流との位相ずれを利用し、バイアス電流が立ち下がる位相を特定する。その結果、特定した位相ではコレクタ電圧VCC1及びVCC2を高くすることにより、電力増幅用トランジスタQ41及びQ42の破壊を防止できる。
このように、本実施形態に係る高周波電力増幅器は、前段の電力増幅用トランジスタQ41に対応するバイアス電流と、後段の電力増幅用トランジスタQ42に対応するバイアス電流との差分から、コレクタ電圧VCC1及びVCC2を制御することにより、電力増幅用トランジスタQ41及びQ42の破壊を防止できる。なお、電力増幅用トランジスタQ41及びQ42の破壊を防止するためには、コレクタ電圧VCC1及びVCC2を高い電圧(例えばVCC_up以上の電圧)にすればよい。
以上、本発明に係る高周波電力増幅器について、実施形態1〜4及び変形例に基づき説明したが、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形を施してもよい。
例えば、上記説明では、制御部18は、バイアス電流検出部13により検出されたバイアス電流IDCが、バイアス電流の基準値IDCREFより小さい場合にコレクタ電圧をVCC_upに制御し、バイアス電流検出部13により検出されたバイアス電流IDCが、バイアス電流の基準値IDCREFと実質的に等しい場合にコレクタ電圧をVCC_typに制御し、バイアス電流検出部13により検出されたバイアス電流IDCが、バイアス電流の基準値IDCREFより高い場合にコレクタ電圧をVCC_downに制御したが、制御部18のコレクタ電圧の制御は、これら3値に限らず2値でもよい。
つまり、バイアス電流検出部13により検出されたバイアス電流IDCが、バイアス電流の基準値IDCREF以下の場合にコレクタ電圧をVCC_upに制御し、バイアス電流検出部13により検出されたバイアス電流IDCが、バイアス電流の基準値IDCREFより高い場合にコレクタ電圧をVCC_downに制御してもよい。
また、上記説明では、制御部18は、出力電力に対応するバイアス電流の基準値IDCREFを閾値としていた。つまり、複数の出力電力に対応する複数の閾値が定められていた。しかし、例えば、複数の出力電力に対応して1つの閾値が定められていてもよいし、出力電力の所定範囲ごとに1つの閾値が定められていてもよい。
また、上記実施形態2では、2つのバンドに対応する高周波電力増幅器30について説明したが、高周波電力増幅器は3つ以上のバンドに対応してもよい。この場合、電力増幅器が有するマルチバンドに対応する複数の電力増幅用トランジスタにバイアス電流を供給するためのバイアス線は、各電力増幅用トランジスタのコレクタに接続された配線及びエミッタに接続された配線とのいずれとも重ならなければよい。
また、上記実施形態3及び4では、2つの電力増幅用トランジスタが多段接続された構成としたが、3以上の電力増幅用トランジスタが多段接続された構成であってもよい。
また、本発明は上述した高周波電力増幅器として実現できるだけでなく、このような高周波電力増幅器を有する無線通信装置としても実現できる。
本発明の高周波電力増幅器及びそれを用いた無線通信装置は、アイソレータを取り除いた携帯電話端末等の移動体通信端末に適している。
10、20、30、40、50、900 高周波電力増幅器
11、31、41、51 電力増幅器
12 出力電力検出部
13 バイアス電流検出部
14、44、54 電圧供給部
15 メモリ部
16、36 RFIC
17、907 アンテナ
18、48、58 制御部
32 スイッチ
37 マルチバンドアンテナ
53a 第1バイアス電流検出部
53b 第2バイアス電流検出部
901 増幅器
902、903 方向性結合器
904 演算回路
905 DC−DCコンバータ
906 供給電流モニタ回路
910、IN、IN1、IN2 入力端子
B1、B31、B32、B41、B42、B51 バイアス回路
C1、C2、C31〜C34、C41、C42、908、909 容量
L31 第1配線
L32 第2配線
L33 第3配線
L44 第4配線
LB31、LB41、LB42 バイアス線
M 整合回路
OUT、OUT1、OUT2 出力端子
Q0、Q31、Q32、Q41、Q42 電力増幅用トランジスタ
Q1 バイアス電流供給用トランジスタ
Q2、Q3 トランジスタ
R1、R2 抵抗
T1 温度補償回路
VCC、VCC1、VCC2 コレクタ電圧印加端子
VDC、VDC1、VDC2 バイアス電圧印加端子
VREF 基準電圧印加端子

Claims (20)

  1. 高周波信号を増幅する増幅部と、
    前記増幅部に電源電圧を供給する電圧供給部と、
    前記増幅部にバイアス電流を供給する電流供給部と、
    前記バイアス電流を検出する検出部とを備え、
    前記電圧供給部は、前記バイアス電流が閾値以下の場合に前記電源電圧を第1電圧、前記バイアス電流が前記閾値より高い場合に前記電源電圧を前記第1電圧未満の第2電圧に制御する制御部を備える
    高周波電力増幅器。
  2. 前記閾値は、前記高周波電力増幅器の出力負荷が理想的な場合の、前記増幅部の出力電力に対応する前記バイアス電流の値である
    請求項1記載の高周波電力増幅器。
  3. 前記高周波電力増幅器は、さらに、
    複数の前記出力電力と、前記高周波電力増幅器の出力負荷が理想的な場合の複数の前記バイアス電流の値とを対応づけて記憶しているメモリと、
    前記増幅部の出力電力を取得する取得部とを備え、
    前記制御部は、
    取得された前記増幅部の出力電力に対応する前記メモリに記憶されている前記バイアス電流の値と、前記検出部で検出された前記バイアス電流の値とを比較し、前記検出部で検出された前記バイアス電流の値が前記メモリに記憶されている前記バイアス電流の値以下の場合に、前記電源電圧を前記第1電圧に制御し、前記検出部で検出された前記バイアス電流の値が前記メモリに記憶されている前記バイアス電流の値より高い場合に、前記電源電圧を前記第2電圧に制御する
    請求項2記載の高周波電力増幅器。
  4. 前記第2電圧は、前記バイアス電流が前記閾値より高い場合に、前記高周波電力増幅器の隣接チャネル漏洩電力特性が所定値未満となるような電圧である
    請求項1〜3のいずれか1項記載の高周波電力増幅器。
  5. 前記第1電圧は、前記バイアス電流の値によらず、当該高周波電力増幅器の隣接チャネル漏洩電力特性が所定値未満となるような電圧である
    請求項1〜4のいずれか1項記載の高周波電力増幅器。
  6. 前記制御部は、前記電源電圧が前記第1電圧であり、かつ、前記バイアス電流が前記閾値より高くなった場合に、前記電源電圧を前記第1電圧から前記第2電圧へ変更する
    請求項1〜5のいずれか1項記載の高周波電力増幅器。
  7. 前記制御部は、前記電源電圧が前記第2電圧であり、かつ、前記バイアス電流が前記閾値以下となった場合に、前記電源電圧を前記第2電圧から前記第1電圧へ変更する
    請求項1〜6のいずれか1項記載の高周波電力増幅器。
  8. 前記制御部は、さらに、
    前記増幅部の出力電力に応じて前記電源電圧を制御する
    請求項1〜7のいずれか1項記載の高周波電力増幅器。
  9. 前記制御部は、
    前記増幅部の出力電力が予め定められた電力より大きい場合、予め定められた第1上限電圧を前記第1電圧とし、
    前記増幅部の出力電力が前記予め定められた電力以下の場合、前記第1上限電圧より低い予め定められた第2上限電圧を前記1電圧とする
    請求項8記載の高周波電力増幅器。
  10. 前記制御部は、
    前記増幅部の出力電力が前記予め定められた電力より大きい場合、前記第2上限電圧以上の電圧を前記第2電圧とする
    請求項9記載の高周波電力増幅器。
  11. 前記取得部は、前記増幅部に接続され、前記増幅部の出力電力を検出する
    請求項3記載の高周波電力増幅器。
  12. 前記取得部は、前記増幅部に入力される高周波信号の電力と前記増幅部の増幅利得とから、前記増幅部の出力電力を推定する
    請求項3記載の高周波電力増幅器。
  13. 前記増幅部は、
    第1の周波数帯域の前記高周波信号を増幅する第1増幅素子と、
    第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域の前記高周波信号を増幅する第2増幅素子と、
    前記第1増幅素子及び前記第2増幅素子のそれぞれに前記バイアス電流を供給するために前記第1増幅素子及び前記第2増幅素子に共通に設けられたバイアス線とを含む
    請求項1〜12のいずれか1項記載の高周波電力増幅器。
  14. 前記第1増幅素子及び前記第2増幅素子のそれぞれはトランジスタからなり、
    前記増幅部はさらに、
    前記第1増幅素子のコレクタに接続され、当該第1増幅素子で増幅された前記高周波信号を伝達するための第1配線と、
    前記第1増幅素子のエミッタに接続された第2配線と、
    前記第2増幅素子のコレクタに接続され、当該第2増幅素子で増幅された前記高周波信号を伝達するための第3配線と、
    前記第2増幅素子のエミッタに接続された第4配線とを含み、
    前記バイアス線は、前記第1〜第4配線のいずれとも重ならない
    請求項13記載の高周波電力増幅器。
  15. 前記増幅部は、多段接続されたm(mは2以上の整数)個の増幅素子と、
    前記m個の増幅素子のそれぞれに前記バイアス電流を供給するためのm本のバイアス線とを含み、
    前記検出部は、前記m本のバイアス線の少なくとも1つに供給されている前記バイアス電流を検出する
    請求項1〜12のいずれか1項記載の高周波電力増幅器。
  16. 前記検出部は、前記m個の増幅素子の最後段に対応する前記バイアス線に供給されている前記バイアス電流を検出する
    請求項15記載の高周波電力増幅器。
  17. 前記検出部は、前記m本のバイアス線に供給されている前記バイアス電流のそれぞれを、各増幅素子に対応づけて検出する
    請求項15記載の高周波電力増幅器。
  18. 前記制御部は、さらに、
    前記m個の増幅素子のうち、i(1≦i≦m−1の整数)段目の増幅素子に対応する前記バイアス電流と、j(i<jかつ2≦j≦m)段目の増幅素子に対応する前記バイアス電流との差分から、前記電源電圧を制御する
    請求項17記載の高周波電力増幅器。
  19. さらに、
    前記バイアス電流を制御する電流制御トランジスタと、
    前記電流制御トランジスタ及び前記増幅部の温度補償を行う温度補償回路とを備える
    請求項1〜18のいずれか1項記載の高周波電力増幅器。
  20. 請求項1〜19のいずれか1項記載の高周波電力増幅器を備える
    無線通信装置。
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