JP2011137078A - 耐傷付き白化性に優れたプロピレン系樹脂成形品 - Google Patents

耐傷付き白化性に優れたプロピレン系樹脂成形品 Download PDF

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拓 北出
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Abstract

【課題】優れた耐傷付き白化性、物性バランスおよび外観を有し、自動車内装部品など工業部品用などに好適なプロピレン系樹脂成形品の提供。
【解決手段】成分(a)プロピレン系樹脂100重量部に対して、成分(b)着色有機繊維を3〜100重量部含有するプロピレン系樹脂組成物を成形してなり、クロスカット試験における明度差(ΔL)が1以下であることを特徴とする、プロピレン系樹脂成形品などにより提供する。この成形品は、優れた耐傷付き白化性、物性バランスおよび外観を有するため、ドアパネル、インストルメントパネル、フェンダー、バックドアなどの自動車内外装部品や家電筐体などの工業部品用などの用途に好適に用いることが出来る。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐傷付き白化性に優れたプロピレン系樹脂成形品に関し、より詳しくは、着色有機繊維を含むことにより、従来のプロピレン系樹脂成形品に較べて、耐傷付き白化性が大幅に改良されたプロピレン系樹脂成形品に関する。
特に自動車内外装部品や家電筐体などの工業部品用として好適なプロピレン系樹脂成形品に関する。
従来、例えば自動車用バンパー、インストルメントパネル、トリム、ピラー等の工業部品、又は家電用筐体として、プロピレン系樹脂にゴムやタルクを配合してなる樹脂組成物が用いられており、その優れた成形性、機械的強度、経済性などの特徴が活かされている。
これら部品は、年々、モジュール化に伴う形状の複雑化、大型化、薄肉化が進んでいく傾向があり、これに対応するべく樹脂組成物の改良検討がなされてきた。特に近年は、質感向上、生産工程の簡略化、生産速度の高速化、溶剤使用に関する規制が厳しくなってきている事などへの対応が必要になっているという事情に鑑み、前記部品の無塗装化が浸透してきた。これによる課題として、無塗装などのプロピレン系樹脂成形品の傷付きや白化がクローズアップされるようになった。
通常、プロピレン系樹脂を工業部品として使用する際には、エチレン系ないしスチレン系などのエラストマー(ゴム)成分と、タルクなどのフィラー成分を配合して機械的強度が設計される。すなわち、エラストマー成分を配合すると衝撃強度が向上しつつ剛性が低下し、さらにフィラー成分を配合すると剛性が向上するので、これによりプロピレン系樹脂組成物として衝撃強度と剛性をバランスよく発現させることが出来る。
このときエラストマー成分を配合すれば、表面硬度が低下し耐傷付き荷重が悪化する上、成形品の一部に応力が集中したときその部分が白化する。しかし、さらにフィラー成分を配合しても一般に表面硬度は大幅に向上せず、該組成物は耐傷付き荷重が不十分のままである場合が多い。しかも成形品表面のフィラー成分が、擦れや傷付き時に剥離したり滑落したりして、著しい白化の原因となる。
こうした課題を解決するために、様々な解決手法が提案され、耐傷付き荷重の対策として、例えば、特定タルク、高密度ポリエチレンや滑剤の配合、タルクと別のフィラー成分の併用、さらには着色フィラーの配合などが提案されている(特許文献1〜4参照)。
一方、優れた低温耐衝撃性を有すると共に、表面光沢が良好で深みのある意匠性に優れた外観を有する低温耐衝撃性に優れた高視覚性複合樹脂成形品が提案されている(特許文献5参照)。
これは、着色物質で改質された有機繊維とポリオレフィン系樹脂とを含む複合樹脂層を有し、該樹脂層の厚み方向中心側は、ポリオレフィン系樹脂に有機繊維が均一分散した複合層からなり、表層側は、中心側のポリオレフィン系樹脂よりも低軟化点の実質的に透明なポリオレフィン系樹脂からなり、表層側のポリオレフィン系樹脂と中心側のポリオレフィン系樹脂との溶融混合物の230℃、2.16kgfにおけるMFRが15g/10分〜100g/10分であり、上記中心側のポリオレフィン系樹脂は不飽和カルボン酸あるいはその誘導体で変性した変性ポリオレフィンを含むことを特徴とする。これにより該成形品は、低温耐衝撃性に優れ、色彩に深み感のある意匠性を示すが、その耐傷付き白化性は明らかでない。
そのため本発明者らは、有機繊維に着目し、外観に優れ、剛性や耐衝撃性などの機械的強度に優れ、さらに自動車内装材などに要求される耐スクラッチ性(耐傷付き白化性)が良く、反り変形が少なく、射出成形時の流動性が高い、自動車内装部品用組成物として、プロピレン系樹脂100重量部に対し有機長繊維10〜200重量部を含有することを特徴とする自動車内装部品用組成物を提案した(特許文献6参照)。
この方法によれば、有機長繊維により耐傷付き白化性は大幅に改良されるが、有機長繊維が未着色であり、他の配合成分として、フィラー成分、例えばタルクの配合量を多くした場合などには、有機長繊維による効果が薄れてしまう課題を有している。
また、成形品の白化を回避する手法として、製品肉厚を厚くする、突き出し応力を分散する、内部離型剤を配合する、部品を小型化し負荷無く取り付けやすくする等が考案されている。しかしながらこうした手法は、それぞれ部品の高重量化、金型コスト増加、金型汚染、組立工数の増加に繋がるもので、積極的に選択すべき手法とは言えない。
以上の様に、前記した最近の無塗装化などのニーズに対して、従来技術では、耐傷付き白化性や剛性・衝撃強度などの物性バランスの向上が得られず、改良技術が必要とされている。
特開昭57−73034号 特開昭57−8235号 特開2002−3692号 特開昭59−47240号 特開2001−219516号 特開2009−132772号
本発明が解決しようとする課題は、工業部品用に好適なプロピレン系樹脂組成物からなる成形品において、該成形品の耐傷付き白化性を改善することにある。
本発明の目的は、優れた耐傷付き白化性、物性バランスおよび外観を有し、自動車内外装部品や家電筐体などの工業部品用などの使用に好適なプロピレン系樹脂成形品を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、プロピレン系樹脂と特定量の着色有機繊維を含有するプロピレン系樹脂組成物を成形して、クロスカット試験における明度差(ΔL)が特定値になるようにした成形品によって、前記課題を解決できることを見出し、本発明をするに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、成分(a)プロピレン系樹脂100重量部に対して、成分(b)着色有機繊維を3〜100重量部含有するプロピレン系樹脂組成物を成形してなり、クロスカット試験における明度差(ΔL)が1以下であることを特徴とするプロピレン系樹脂成形品が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、80℃引張弾性率が700MPa以上であることを特徴とする、プロピレン系樹脂成形品が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1または2の発明において、成分(b)着色有機繊維は、結晶融点(融点の観測されないものは軟化点)が200℃以上であることを特徴とする、プロピレン系樹脂成形品が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3の何れかの発明において、成分(b)着色有機繊維の引張強度が5cN/dtex以上であることを特徴とする、プロピレン系樹脂成形品が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4の何れかの発明において、さらに、成分(c)着色成分が、成分(a)プロピレン系樹脂100重量部に対して、0.001〜10重量部含有されることを特徴とする、プロピレン系樹脂成形品が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5の何れかの発明において、さらに、成分(d)エラストマーが、成分(a)プロピレン系樹脂100重量部に対して、1〜60重量部含有されることを特徴とする、プロピレン系樹脂成形品が提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、第1〜6の何れかの発明において、さらに、成分(e)フィラーが、成分(a)プロピレン系樹脂100重量部に対して、1〜80重量部含有されることを特徴とする、プロピレン系樹脂成形品が提供される。
本発明のプロピレン系樹脂成形品は、特定量の着色有機繊維を含有しているため、該成形品が負荷重などを受けたり変形したりして、含有有機繊維に界面剥離空隙などを生じても、未着色有機繊維を含有した従来の成形品に較べると、着色有機繊維の着色効果などにより、該部分などの白化(目立ち易さ)が大幅に低減して、耐傷付き白化性が向上する。
さらに、上記に加え、強靭な引張強度の着色有機繊維が一様に分散して成形品を補強していること、および着色有機繊維とマトリックス成分との界面接着力を低く制御することにより、成形品破壊時に着色有機繊維が抜けながらエネルギーを吸収し、成形品が大きく変形しないように抑制される。これによって、衝撃強度を付与するためのエラストマー成分、剛性を付与するためのフィラー成分のいずれも配合量が比較的少量に抑えられ、良好な物性バランスや外観を発現しながら、耐傷付き白化性をさらに抑制することが出来る。
このため、自動車内外装部品や家電筐体などの工業部品用などの用途に好適である。
以下、本発明のプロピレン系樹脂成形品(以下、単に成形品ともいう)について、項目毎に詳細に説明する。
本発明のプロピレン系樹脂成形品は、成分(a)プロピレン系樹脂100重量部に対して、成分(b)着色有機繊維を3〜100重量部含有するプロピレン系樹脂組成物を成形してなり、クロスカット試験における明度差(ΔL)が1以下であることを特徴とする。
1.プロピレン系樹脂組成物の構成成分
(1)成分(a)プロピレン系樹脂
本発明に用いる成分(a)プロピレン系樹脂は、本発明の成形品において、良好な成形性、成形品外観、機械的強度などを付与する機能を有するものである。
成分(a)のプロピレン系樹脂は、特に限定するものではなく、公知のプロピレン系樹脂を用いることが出来、ホモポリプロピレン、プロピレン・αオレフィンブロック共重合体、プロピレン・αオレフィンランダム共重合体などから選択される。αオレフィンの種類は、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどから選択される。αオレフィン含量は高すぎると成形品剛性が低下しすぎるので、25重量%以下で、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好適である。このプロピレン系樹脂は、2種以上併用してもよい。
プロピレン系樹脂の製造方法としては、チーグラー系触媒、メタロセン系触媒などのオレフィン重合触媒を用いたスラリー重合、気相重合あるいは液相塊状重合が挙げられ、重合方式としては、バッチ重合、連続重合どちらの方式も採用することができる。チーグラーナッタ触媒としては、高立体規則性触媒が用いられ、メタロセン触媒としては、インデン、アズレン、フルオレン等の縮合環系共役5員環が周期律表第4族元素に配位した化合物が好ましく用いられる。
中でも、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、またはホモポリプロピレンを用いることが、良好な性能の成形品を得ることや経済性を向上させることから好ましい。
ここで、成形品の用途が剛性・衝撃強度などの物性バランスを重視する場合は、プロピレン・エチレンブロック共重合体を用いることが好ましく、剛性や耐熱性を重視する場合は、ホモポリプロピレンを用いることが好ましく、耐傷付き白化性を重視する場合は、プロピレン・エチレンランダム共重合体を用いることが好ましい。なお、該プロピレン・エチレンランダム共重合体は、メタロセン系触媒を用いて重合されたものが特に耐傷付き白化性が優れるため、より好ましい。
本発明で用いるプロピレン系樹脂のメルトフローレート(以下、MFRと記す。230℃、2.16kg荷重で測定)は、特に限定されないが、好ましくは1〜300g/10分、より好ましくは、3〜200g/10分、とりわけ好ましくは5〜120g/10分である。
MFRが1g/10分未満であると、本発明の成形品において、プロピレン系樹脂組成物のプルトルージョン(引抜き)加工性、成形品への成形性および成形品の外観が低下する傾向があり、一方、MFRが300g/10分を超えると、成形品の衝撃強度などの物性が低下する傾向がある。なお、MFRは、JIS K7210に準拠して測定する値である。
なお、本発明の成形品において、成分(a)プロピレン系樹脂は、主成分であって、これに配合される各成分の含有量は、この配合量100重量部を基準とする。
(2)成分(b)着色有機繊維
本発明に用いる成分(b)着色有機繊維は、本発明の成形品において、優れた耐傷付き白化性、剛性および衝撃強度などを付与する機能を有するものであり、着色された各種有機繊維を用いることが出来る。
該着色有機繊維は、製造方法によって特に限定されず、例えば製造・紡糸中若しくは紡糸後に未着色である有機繊維を、粉状、顆粒状、液状などの形状の繊維着色剤、捺染着色剤や分散染料などの各種顔・染料などを用いて着色処理する方法や、予め着色した有機繊維原料を溶融紡糸する方法が挙げられる。
該顔・染料の種類や形状は特に限定されず、また、それらは2種以上併用してもよい。ここで、顔料を用いる方法、および染料を用いる方法は、所望の色相が得られれば、何れの方法も採用出来るが、どちらかと言えば耐傷付き白化性の付与度合、着色性、退色性、耐熱性などの点から顔料を用いる方法が好ましい。
用いる顔料としては、各種の無機、有機の顔料が挙げられ、具体的には、カーボンブラック、アニリンブラック、酸化チタン、弁柄、群青、イソインドリノンレッド、チタンイエロー、キナクリドンレッド、ペリレンレッド、縮合アゾレッド、イソインドリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどが挙げられる。
また、着色性などの点からすれば、予め有機繊維原料に顔料または染料などを混合したものを、紡糸装置に供給、溶融紡糸する製造方法が好ましい。具体例としては、例えば顔料を含まないポリエステルポリマーチップと、所望の色相の有機着色顔料および無機顔料を所定量含有しているポリエステルポリマーチップとをブレンドした後、押出機にて例えば280〜300℃で溶融し、紡糸口金から押し出して溶融紡糸した原着色ポリエステルマルチフィラメントを得る方法が挙げられる。この方法などには、重合度を高めたポリエステルポリマーを用いたり、多段階延伸するなどして、高張力の原着色ポリエステルフィラメントを得る方法も挙げられる。
なお、該有機繊維の断面形状は、円形、角形などでよく、特に限定されない。また、この着色有機繊維は、2種以上併用してもよい。
該着色有機繊維のうち、それが結晶融点(融点の観測されないものは軟化点)を有する場合は、該結晶融点(または軟化点)は、200℃以上のものが好ましく、230℃以上のものがより好ましく、250℃以上のものがとりわけ好ましい。
何故なら、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、一般に190〜230℃程度で成形されるので、該着色有機繊維が、該成形過程において溶融せず、良好に分散されると本発明の成形品において、好適な性能を発現するためである。
ここで、結晶融点は、例えば示差走査型熱量計(DSC)を用いて融解ピーク温度で求めることが出来る。また、軟化点は、例えば該着色有機繊維が前記成形過程において溶融せず良好に分散される様に実質的に繊維状形態を保持出来る温度として定義され、試験荷重を変更するなど、ビカット軟化温度試験法に準ずる方法などで求めることが出来る。
該着色有機繊維の具体例としては、着色ポリエステル繊維、着色ポリアミド繊維、着色ポリウレタン繊維、着色アクリル繊維、着色ビニロン繊維、着色ケナフなどの着色天然繊維、ポリアクリルニトリルなどの有機材料を原料に用いた着色炭素繊維などが挙げられる。
該着色有機繊維の中では、取扱加工性やコスト、供給安定性などを考慮して、着色ポリエステル繊維または着色ポリアミド繊維が好ましい。これらの着色有機繊維は、複数を混合して使用しても良いし、単独で使用しても良い。
ここで、該着色有機繊維の引張強度は、5cN/dtex以上が好ましく、6cN/dtex以上であることがより好ましい。ここで、引張強度はJIS L1013に準拠して測定する値である。該着色有機繊維の引張強度が5cN/dtex未満であると、本発明の成形品が衝撃力を受けた際、該着色有機繊維が変形(引張変形)し易くなり、該部分表面などに微細クラックを発生し易くなることなどにより、本発明の成形品の耐傷付き白化性が低下する傾向がある。すなわち、変形部分表面などに微細クラックを発生すると、該部分が光線を乱反射し、白化し易くなって、成形品のクロスカット試験における明度差(ΔL)が大きくなるという傾向がある。また、着色有機繊維が破断し易くなり、前記成形品に良好な耐衝撃性を発現させることが困難となる傾向がある。また、着色有機繊維の引張強度は、50cN/dtex以下、さらには30cN/dtex以下、特に10cN/dtex以下であるものが好ましい。
この様な高強度有機繊維(着色処理用または着色処理済)としては、一般にタイヤコード、テント、シート、コンクリート補強繊維などの用途で市販されているものを好適に用いることが出来る。
特にタイヤコード向け有機繊維には、ゴムマトリックスとの接着性を向上させる目的で極性樹脂を付着させているものがある。例えば有機繊維にエポキシ基を有する樹脂を付着させたもの、また、該繊維にさらにゴムラテックスないしイソシアネート化合物を付着させたものなどが、特開平7−3566号公報、特開平8−13346号公報、特開2001−19927号公報などに開示されている。本発明には、こうした極性樹脂が付着した有機繊維(着色処理用または着色処理済)も好適に用いることが出来る。
ここで、未着色の前記有機繊維を用いる場合は、予め、例えば繊維着色剤、捺染着色剤や分散染料などの各種顔・染料などを用いるなど、前記などの適切な方法にて有機繊維自体を事前着色処理する必要がある。
着色有機繊維の単糸繊度は、特に制限されるわけではないが、1〜20dtexが好ましく、2〜15dtexがより好ましい。単糸繊度が、1dtex未満であると、十分な引張強度を得られない上、材料コストが非常に高くなる傾向がある。一方、20dtexを超えると、成形品の表面凹凸が目立つようになり、好適な成形品外観が得にくくなる傾向がある。
なお、単糸繊度は、例えば、サーチ株式会社製オートバイブロ式 繊度測定器(Denier Computer)を用い、測定試料長を50mm、荷重を測定試料の繊度(デニール換算値)×0.1gの条件下で測定試料に振動を加え、振動数が安定したことを確認した後、測定試料のフィラメント全数測定し評価することができる。
着色有機繊維の長さは、特に制限されるわけではないが、プロピレン系樹脂組成物の状態下において、平均繊維長で4〜20mmが好ましく、4〜10mmであることがより好ましい。平均繊維長が、4mm未満であると、分散した着色有機繊維が互いに絡み合わず、本発明の成形品に良好な耐衝撃性を発現させることが出来にくくなる傾向がある。一方、20mmを超えると、成形原料としてのペレットが肥大化したり、非常にアスペクト比が大きくなったりして成形機へ安定連続供給することが困難になる傾向がある。
着色有機繊維の色相は、特に限定されず、本発明の成形品の用途など必要に応じ任意に選択することが出来る。該色相は、当然ながら本発明の成形品に必要な色相と、同一、若しくは極力近似することが好ましく、同時にその明度、彩度も同様に、同一とするか、若しくは極力近似することが好ましい。
本発明の成形品において、成分(b)着色有機繊維の含有量は、前記成分(a)プロピレン系樹脂100重量部当たり、3〜100重量部、好ましくは5〜80重量部、より好ましくは8〜60重量部、とりわけ好ましくは10〜50重量部である。
着色有機繊維の含有量が3重量部未満であると、本発明の成形品の剛性や衝撃強度などの物性が低下する。一方、100重量部を超えると、耐傷付き白化性や外観が低下する。
(3)成分(c)着色成分
本発明の成形品において、成分(b)着色有機繊維以外の部分は、未着色でもよいが、成分(c)着色成分を含有させて着色することが出来る。すなわち、該着色成分は、前記成分(b)着色有機繊維を除く成形品の構成成分を着色するために用いるものである。これにより、該成形品の耐傷付き白化性が向上し、用途分野の拡大、外観や意匠性の向上などにつながる。
この場合、該着色成分は、例えば前記プロピレン系樹脂組成物の製造時に、成分(a)プロピレン系樹脂と成分(b)着色有機繊維などと共に添加、含有させてもよく、あるいは、プロピレン系樹脂組成物の製造前に予め前記プロピレン系樹脂中に含有させておいてもよい。該着色成分は、2種以上併用してもよい。
該着色成分の色相は、特に限定されず、本発明の成形品の用途などに応じ、任意に選択することが出来る。該色相は、当然ながら本発明の成形品に必要な色相、および前記成分(b)着色有機繊維の色相と、同一にするか、若しくは極力近似することが好ましく、同時にその明度、彩度も同様に、同一、若しくは極力近似することが好ましい。
該着色成分の種類としては、有機物である有機着色成分でもよいし、無機物である無機着色成分でもよい。有機着色成分は、顔料でもよく、染料でもよい。また、着色成分は、天然色素でもよく、合成色素でもよい。無機着色成分は、金属酸化物、金属錯塩などの無機顔料でもよい。中でも、無機顔料および有機顔料が好ましい。
具体的には、カーボンブラック、アニリンブラック、酸化チタン、弁柄、群青、イソインドリノンレッド、チタンイエロー、キナクリドンレッド、ペリレンレッド、縮合アゾレッド、イソインドリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどが挙げられる。
これらの着色成分の形状は、特に限定されず粉状、顆粒状、粒状、液状などいずれの形状のものも使用することが出来る。
ここで、この着色成分をいわゆる着色マスターバッチの形で用いることが好ましい。本発明の成形品の耐傷付き白化性、着色外観、意匠性および見映えなどをより向上させるためである。
具体例として、例えばカーボンブラックなどの所望とする着色成分の粉状体を、所定の濃度で低密度ポリエチレンなどの樹脂に混練装置を用いて分散せしめた着色マスターバッチを挙げることが出来る。着色マスターバッチ状の該着色成分を用いて着色した本発明の成形品は、粉状など原状の該着色成分を用いて直接着色した本発明の成形品に較べ、成形品の耐傷付き白化性、着色外観、意匠性および見映えなどが優れる傾向にある。
本発明の成形品において、成分(c)着色成分の含有量は、前記成分(a)プロピレン系樹脂100重量部当たり、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは0.01〜5重量部、とりわけ好ましくは0.05〜2重量部である。
該着色成分の含有量が0.001重量部未満であると、本発明の成形品の耐傷付き白化性、外観や意匠性が低下する傾向がある。一方、10重量部を超えると、衝撃強度などの物性や経済性が低下する傾向がある。ここで、例えば着色マスターバッチにおける該着色成分の含有量は、ベース樹脂などを除いた着色成分のみの値である。
(4)成分(d)エラストマー
本発明において、成形品により高い衝撃強度、安全な破壊形態(シャープエッジにならない、破片が飛散しないなど)がより強く求められる場合などは、必要に応じ、成分(d)エラストマー(ゴム)を含有させることが出来る。
該エラストマーとしては、各種の熱可塑性のエラストマーが使用でき、具体的には、公知のエチレン系エラストマーやスチレン系エラストマーなどが好ましい。
例えばエチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体などのエチレン系エラストマー;スチレン−エチレン・ブチレン共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン・ブチレン−スチレン共重合体、部分水添スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、部分水添スチレン−イソプレン・ブタジエン−スチレン共重合体などのスチレン系エラストマーをそれぞれ挙げることが出来る。該エラストマーは、2種以上併用してもよい。
中でも、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・オクテン共重合体、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体が、成形品の衝撃強度などの物性バランスを優れるものとする点などから、好ましい。
本発明の成形品において、成分(d)エラストマーの含有量は、前記成分(a)プロピレン系樹脂100重量部当たり、好ましくは1〜60重量部、より好ましくは3〜30重量部、とりわけ好ましくは5〜25重量部である。
該エラストマーの含有量が1重量部未満であると、本発明の成形品の衝撃強度が低下する傾向があり、また破壊形態がシャープエッジになり易く、破片が飛散し易くなる傾向がある。一方、60重量部を超えると、耐傷付き白化性、剛性や耐熱性などが低下する傾向がある。
本発明においては、該エラストマーの含有量は、上記範囲内で少量であることが好ましい。前記の様に成分(b)着色有機繊維自体が本発明の成形品に高い衝撃強度を発現させ易くするため、エラストマーが多すぎると、耐傷付き白化性が悪化する要因(耐傷付き荷重低下と応力集中部の白化)になり易いからである。
(5)成分(e)フィラー
本発明においては、例えば成形品の剛性、耐熱性、寸法安定性や成形異方性のさらなる向上をはかるために、必要に応じ、成分(e)フィラーを含有させることが出来る。
該フィラーとしては、前記成分(b)着色有機繊維以外のものであれば特に限定されるものではなく、公知の無機や有機の各種フィラーが使用できる。
具体例としては、タルク、シリカ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、マイカ、硫酸バリウム、未着色有機繊維・ガラス繊維・各種ウィスカーなどの前記着色有機繊維以外の繊維状フィラーなどが挙げられる。
また、該フィラーの形状については、特に限定はなく、粒状、板状、棒状、繊維状などいずれの形状のものも使用することができる。該フィラーは、2種以上併用してもよい。
中でも、剛性などの物性の効率的な向上効果、寸法安定性の向上効果や経済性に優れるタルクが好ましく、平均粒径1.5〜10μm、平均アスペクト比4以上のタルクがより好ましい。
ここで、平均粒子径は、レーザー回折散乱方式による粒度分布計などを用いて測定した値であり、平均アスペクト比の測定は、顕微鏡などにより求められる。
本発明の成形品において、成分(e)フィラーの含有量は、前記成分(a)プロピレン系樹脂100重量部当たり、好ましくは1〜80重量部、より好ましくは3〜60重量部、とりわけ好ましくは5〜50重量部である。
該フィラーの含有量が1重量部未満であると、本発明の成形品の剛性や耐熱性が低下する傾向がある。一方、80重量部を超えると、耐傷付き白化性、成形品外観や衝撃強度などが低下する傾向がある。
本発明においては、前記の様に成分(b)着色有機繊維自体が、成形品に高い剛性を発現させ易いため、該フィラーの含有量は、より少量であることが好ましい。フィラーが耐傷付き白化性悪化の要因(耐傷付き荷重低下と応力集中部白化)になり易いからである。
(6)その他の任意成分
本発明の成形品には、前記成分の他に、必要に応じて、本発明の効果が著しく損なわれない範囲内で、その他の任意成分を添加、含有させてもよい。
例えば、成分(a)プロピレン系樹脂以外の熱可塑性樹脂の1種または2種以上を併用することも可能である。
また、目的に応じ所望の特性を付与するため、一般に熱可塑性樹脂に添加される公知の物質、例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、潤滑剤、可塑剤、結晶化促進剤、造核剤などをさらに含有させることも可能である。
2.プロピレン系樹脂組成物の製造
プロピレン系樹脂組成物は、例えば、連続した着色有機繊維を押出機先端に接続したクロスヘッドダイを通して引抜きながら溶融樹脂で含浸するプルトルージョン法(引抜き成形法)により、ペレットとして得ることが出来る。
プルトルージョン法(引抜き成形法)では、例えば、成分(b)着色有機繊維を、クロスヘッドダイに通して引抜きながら、溶融可塑化させた成分(a)プロピレン系樹脂を、押出機から溶融状態でクロスヘッドダイに供給し、着色有機繊維に前記溶融可塑化プロピレン系樹脂(混練樹脂組成物)を含浸被覆させ、溶融含浸物を加熱し、冷却後、引抜き方向と直角に切断することにより得ることが出来る。ここで、成分(a)プロピレン系樹脂としては、必要に応じて、成分(c)着色成分、成分(d)エラストマー、成分(e)フィラー、任意成分の何れか、またはすべてを加えた樹脂組成物を用いることができる。
このクロスヘッドを用いる方法は、着色有機繊維の損傷を起こしにくいため、本発明の成形品に高い耐傷付き白化性を付与し易いばかりでなく、良好な物性バランスを発現し易いペレットの長さ方向に着色有機繊維が同一長さで平行配列しているプロピレン系樹脂組成物(ペレット)が得られ易い特徴がある。
該ペレットの形状としては、特に限定されず、円柱状、角柱状、板状、さいころ状などが挙げられる。なお、本発明において、「ペレット」は、上記の狭義のペレットの他に、ストランド状、シート状、平板状なども含む広義の意味で使用される。
該プルトルージョン法は、基本的には、連続した強化用繊維束を引抜きながら樹脂を含浸する方法であるが、前記クロスヘッドを用いる方法の他、樹脂のエマルジョン、サスペンジョンまたは溶液を入れた含浸浴の中に繊維束を通して含浸する方法、樹脂の粉末を繊維束に吹きつけるかまたは粉末を入れた槽の中に繊維束を通して繊維に樹脂粉末を付着させた後に樹脂を溶融して含浸する方法などが知られており、本発明では何れの態様も利用できる。
特に好ましいのは前記クロスヘッド方法である。また、これらのプルトルージョン法における樹脂の含浸操作は、1段で行うのが一般的であるが、2段以上に分けてもよく、さらに、含浸方法を異にして行ってもよい。
前記プルトルージョン法などにて該プロピレン系樹脂組成物(ペレット)を製造するときには、着色有機繊維が溶融可塑化しない様にプロピレン系樹脂と複合されることが好ましい。着色有機繊維が供される部位の加工温度の下限は、160℃以上が好適であり、また上限は、着色有機繊維の融点(融点の無いものについては軟化点)が320℃以下の場合は、それより20℃低い温度以下、該融点が320℃以上の場合は300℃以下が好適である。いずれの着色有機繊維を選択した場合でも、加工温度が300℃を超えると、プロピレン系樹脂が著しく熱分解劣化し、引火または発火するおそれがある。
また、本発明のプロピレン系樹脂組成物(ペレット)は、他の方法にても製造することが出来る。例えば、前記構成成分を用い、単軸押出機、2軸押出機、バンバリーミキサー、ロール練機、ニーダー、ブラベンダー・プラストグラフなどの公知の溶融混練装置を用いて、全必要成分を一括同時に、若しくは一部成分毎に分割したりして混練・造粒することにより製造する(いわゆるコンパウンドペレットを得る)ことが出来る。中でも本発明の成形品の耐傷付き白化性や物性バランスの向上、さらに工業的な経済性などから、2軸押出機を用いて混練・造粒するのが好ましい。ここで、例えば着色有機繊維を押出機中途からフィードするなどして、着色有機繊維がマトリックス中にランダムに絡まりあうように分散しているコンパウンドペレットを得る方法が好ましい。
また、該プロピレン系樹脂組成物(ペレット)は、部分的に異なった複数の方法にて製造することが出来る。
例えば、先ず、必要量の前記成分(a)プロピレン系樹脂(必要に応じ樹脂添加剤含む)と必要量の成分(b)着色有機繊維を用い、前記プルトルージョン法にて、樹脂組成物ペレットを製造する。一方、別途、必要量のプロピレン系樹脂と、必要に応じて含有させる成分(c)着色成分、成分(d)エラストマー、成分(e)フィラー、任意成分の何れか、またはすべてを配合し、2軸押出機を用いて通常の混練方法で混練・造粒して樹脂組成物ペレット(コンパウンドペレット)を製造する。この後、これらの両者のペレットを所望の比率でブレンド(希釈)してプロピレン系樹脂組成物(ペレット)を得る方法である。
ここで、後者の方法において、必要に応じて含有させる成分を使用しない場合は、プロピレン系樹脂単体であり、さらなる混練・造粒が不要なので、ブレンド(希釈)用に市販のプロピレン系樹脂ペレットをそのまゝ使用することが出来る。
上記のプロピレン系樹脂組成物(ペレット)を部分的に異なった複数の方法にて製造する方法は、両者のペレットのブレンド(希釈)比率調整によって、成分(b)着色有機繊維をはじめとする各構成成分の含有比率の調整、換言すれば物性バランスや成形品寸法などの調整などがし易いほか、用いる材料の種類が少なくなるので単一材料の大量生産による製造コスト低減効果をより大きく出来る傾向があるから、好ましい製造方法である。
3.成形品
本発明の着色有機繊維を含有するプロピレン系樹脂組成物は、所望の成形品に加工される。成形加工法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて各種の成形法で成形できる。例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、シート成形法、ブロー成形法などの熱成形を適用できるが、ドアパネル、インストルメントパネルなどの大型自動車部品などの場合、射出成形法および射出圧縮成形法などを適用することが好ましい。
また、本発明のプロピレン系樹脂組成物を成形してなる成形品は、例えば自動車内装部品などの場合、クロスカット試験における明度差(ΔL)が1.0以下、好ましくは0.5以下である。クロスカット試験における明度差(ΔL)は、その値が小さいほど耐傷付き白化性が優れ、この範囲であれば、例えば自動車内装部品などの用途において、本発明の成形品の耐傷付き白化性が良好であるといえる。
また、該成形品の80℃引張弾性率は、700MPa以上が好ましく、800MPa以上がより好ましく、1000MPa以上がさらに好ましい。80℃引張弾性率が、700MPa未満であると、本発明の成形品が高温雰囲気下において変形を生ずるおそれがある。
また、該成形品のシャルピー衝撃強度(ノッチ付)は、10kJ/m以上が好ましく、20kJ/m以上がより好ましく、30kJ/m以上がさらに好ましい。シャルピー衝撃強度が、10kJ/m未満であると、本発明の成形品の一部にクラックが発生するおそれがある。
また、該成形品の皮シボ状成形品における表面外観は、繊維がほとんど目立たず良好であり、この水準であれば本発明の成形品の外観は、例えば自動車内装部品などの用途において、良好である。
本発明の成形品は、優れた耐傷付き白化性、物性バランスおよび外観を有するため、ドアパネル、インストルメントパネル、フェンダー、バックドアなどの自動車内外装部品や家電筐体などの工業部品用などの用途に好適に用いることが出来る。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
実施例、比較例で用いた材料および評価方法は、以下に示すとおりである。
1.使用材料
(1)成分(a)プロピレン系樹脂
(a)−1:チーグラーナッタ触媒を用いて重合され、MFR(230℃、荷重2.16kg)が100g/10分、エチレン含量が2.8重量%である、プロピレン・エチレンブロック共重合体(日本ポリプロ社製)。
(a)−2:メタロセン触媒を用いて重合され、MFR(230℃、荷重2.16kg)が25g/10分、エチレン含量が3.4重量%である、プロピレン・エチレンランダム共重合体(日本ポリプロ社製)。
(2)成分(b)有機繊維
(b)−1:結晶融点が265℃、単糸繊度が6.7dtex、引張強度が7cN/dtexである、黒原着色ポリエステル繊維(帝人ファイバー社製)
(b)−2:結晶融点が265℃、単糸繊度が6.7dtex、引張強度が7cN/dtexである、未着色ポリエステル繊維(帝人ファイバー社製)。
(3)成分(c)着色成分
(c)−1:カーボンブラック#30(オイルファーネス法で製造、三菱化学社製)
(c)−2:黒着色用マスターバッチPG−05(30倍用、東洋インキ製造社製)。
(4)成分(d)エラストマー
(d)−1:エチレン・オクテン共重合体エラストマー(MFR:230℃、2.16kg荷重 10g/10分、密度0.87g/cm、ダウケミカル日本社製)。
(5)成分(e)フィラー
(e)−1:タルク(平均粒径5.1μm、平均アスペクト比6、富士タルク工業社製)。
2.評価方法
(1)耐傷付き白化性(ΔL)
東芝機械社製の射出成形機(IS170)を用いて成形し、得られた120mm×120mm×厚さ3mmの平板(皮シボ形状)の中心部80mm×80mm×厚さ3mmを切り出した平板を試験片とした。安田精機社製の全自動クロスカット剥離試験機を用いて、400gの荷重を載せた引掻針(先端アール0.3mm)にて、引掻速度600mm/分、2mmピッチで30本引掻き、更に90°回転して1mmピッチで30本引掻き、碁盤目状に傷を付ける。
この後、測色計(日本電色工業製SE−2000)にて、傷付き前後の白化度合として、明度差(ΔL)を標準光源D65、拡散照明8°にて測色する。この明度差(ΔL)が小さいほど耐傷付き白化性は優れている。すなわち、この耐傷付き白化性(明度差(ΔL))は、例えば自動車部品分野などの用途においては、1.0以下であると好ましい。
(2)80℃引張弾性率
射出成形試験片を用い、JIS K7161に準拠して測定する。80℃引張弾性率が700MPa以上であることが好ましい。
(3)シャルピー衝撃強度
射出成形試験片を用い、JIS K7111に準拠して測定(ノッチ付)する。測定温度は23℃である。10kJ/m以上であることが好ましい。
(4)外観
東芝機械社製の射出成形機(IS170)を用いて、得られた120mm×120mm×厚さ3mmの平板(皮シボ形状)のシボ成形表面を目視し、外観について下記基準にて評価する。この場合、実用性有と判断出来る水準は、◎および○である。
◎;成形表面に繊維が全くみられず、極めて良好である。
○;成形表面に繊維が少量確認できるが殆ど目立たず、良好である。
△;成形表面に繊維が少量確認できる上にそれが目立ち、やや不良である。
×;成形表面に繊維が多数確認できるとともに表面が荒れていて、不良である。
(実施例1)
1.有機繊維含有ペレットの製造
2軸混練押出機(日本製鋼所社製TEX30、シリンダー温度;190〜220℃)にて、成分(a)として(a)−1を溶融可塑化し、該押出機先端に接続した含浸槽を有するクロスヘッドダイ(温度;220℃)に、成分(b)として(b)−1を導入し、プルトルージョン法にて溶融成分(a)を連続状の成分(b)に含浸被覆させた。このとき成分(a)と成分(b)の重量比が60/40となるよう、成分(a)の吐出量とストランド引取速度を調節した。引き取ったストランドはカット長10mm(有機繊維の長さも10mm)でペレタイズした。
2.プロピレン系樹脂組成物の調整、評価
成分(a)として(a)−1、成分(c)として(c)−1を配合し、ヘンシェルミキサーで混合した後、2軸混練押出機(日本製鋼所社製TEX30、シリンダー温度;190〜210℃)にて混練造粒したプロピレン系の樹脂組成物と、成分(a)として(a)−1を用いた前記1項に記した有機繊維含有ペレットとを、ドライブレンドし、最終的に表1に示す配合のプロピレン系樹脂組成物を調製した。
その後、該プロピレン系樹脂組成物を、東芝機械社製の射出成形機(IS170)を用いて成形(成形温度;210℃)し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
(実施例2)
樹脂組成物向けに、(a)−1を増量し、さらに、成分(d)として(d)−1、および成分(e)として(e)−1を配合した以外は、実施例1と同様に行った。評価結果を表2に示す。
(実施例3)
樹脂組成物向けに、成分(c)−1の代わりに、(c)−2を3重量部配合した以外は、実施例2と同様に行った。評価結果を表2に示す。
(実施例4)
樹脂組成物向けに、成分(a)−1の代わりに、(a)−2を配合した以外は、実施例2と同様に行った。評価結果を表2に示す。
(比較例1)
成分(a)として(a)−1、成分(c)として(c)−1、成分(d)として(d)−1、および成分(e)として(e)−1を配合し、成分(b)を配合せずに、表1に示す配合のプロピレン系樹脂組成物を、前記(実施例1)第2項に示す混練、造粒する方法で調製し、評価を行った。評価結果を表2に示す。
(比較例2)
樹脂組成物向けに、成分(b)として(b)−1の代わりに、(b)−2を用いた以外は、実施例2と同様に行った。評価結果を表2に示す。
Figure 2011137078
Figure 2011137078
「評価」
表2に示す結果から、本発明の必須構成要件を満たす実施例1〜4の成形品は、何れも耐傷付き白化性が良好である上に、80℃引張弾性率、シャルピー衝撃強度、外観ともに改良されている。
これらの成形品は、良好な物性バランスや外観を発現しながら、耐傷付き白化性を大きく抑制することが出来るため、自動車内外装部品や家電筐体などの工業部品用や、住宅設備機器部品、建材部品などに適する性能を有している。
一方、表2に示す比較例1〜2の成形品は、これらの性能バランスが不良で見劣りしている。
例えば、成分(b)着色有機繊維を配合しないプロピレン系樹脂組成物を用いた比較例1の成形品は、外観は極めて良好であるが、耐傷付き白化性、80℃引張弾性率、シャルピー衝撃強度ともに実施例2と著しい差異が生じた。これは、成分(b)の配合有無により、耐傷付き白化性、80℃引張弾性率およびシャルピー衝撃強度が影響を受け、成分(b)が、本発明にとって必須であることを示している。
また、成分(b)として、未着色の有機繊維(b)−2を配合したプロピレン系樹脂組成物を用いた比較例2の成形品は、80℃引張弾性率およびシャルピー衝撃強度は良好であるが、耐傷付き白化性および外観が実施例2と著しい差異が生じた。これは、成分(b)の着色、未着色により、耐傷付き白化性および外観の向上効果が著しく異なり、成分(b)が、本発明にとって必須であることを示している。
本発明のプロピレン系樹脂成形品は、高水準の耐傷付き白化性と、同物性バランスおよび外観を有するため、例えば、ドアパネル、インストルメントパネル、フェンダー、バックドア、各種ハウジング類などの自動車内外装部品、家電筐体、住宅設備機器部品などの工業部品用や、建材部品などに好適に用いることができる。

Claims (7)

  1. 成分(a)プロピレン系樹脂100重量部に対して、成分(b)着色有機繊維を3〜100重量部含有するプロピレン系樹脂組成物を成形してなり、クロスカット試験における明度差(ΔL)が1以下であることを特徴とするプロピレン系樹脂成形品。
  2. 80℃引張弾性率が700MPa以上であることを特徴とする、請求項1に記載のプロピレン系樹脂成形品。
  3. 成分(b)着色有機繊維は、結晶融点(融点の観測されないものは軟化点)が、200℃以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載のプロピレン系樹脂成形品。
  4. 成分(b)着色有機繊維の引張強度が、5cN/dtex以上であることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載のプロピレン系樹脂成形品。
  5. さらに、成分(c)着色成分が、成分(a)プロピレン系樹脂100重量部に対して、0.001〜10重量部含有されることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載のプロピレン系樹脂成形品。
  6. さらに、成分(d)エラストマーが、成分(a)プロピレン系樹脂100重量部に対して、1〜60重量部含有されることを特徴とする、請求項1〜5の何れかに記載のプロピレン系樹脂成形品。
  7. さらに、成分(e)フィラーが、成分(a)プロピレン系樹脂100重量部に対して、1〜80重量部含有されることを特徴とする、請求項1〜6の何れかに記載のプロピレン系樹脂成形品。
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