JP2011136312A - 多孔質の木質ペレットからなる水及び油吸着材及びその製造方法 - Google Patents

多孔質の木質ペレットからなる水及び油吸着材及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】かなりの部分が産業廃棄物として処理される木屑又は木粉を利用して多孔質のペレットを製造し、性能と取扱い性に優れた水及び油吸着材提供すること。
【解決手段】木屑を造粒してなる多孔質の木質ペレットであって、嵩比重が0.1〜0.6、好ましくは0.2〜0.4、圧縮強度が1000gf以下、好ましくは10〜500gf、含水率が5〜15重量%、好ましくは8〜12重量%で、直径が1〜7mm、好ましくは2〜5mmで、長さが1〜12mm、好ましくは2〜7mmの範囲にある円柱状の多孔質の木質ペレットからなる水及び油吸着材。
【選択図】なし

Description

本発明は、オイル流出事故等で緊急対策に使用される、木屑又は木粉を利用した、多孔質の木質ペレットからなる水及び油吸着材とその製造方法に関する。
交通事故、道路工事現場、工場敷地内等において、各種オイルの流出事故がしばしば発生している。路面等に油が漏れた場合、その油が新たな事故の原因になったり、火災の危険もあるため、早急に油を取り除く必要があり、また、河川への流出や、土壌汚染も防ぐ必要がある。かかる緊急時には、通常、流出した油を、砂や珪藻土やオガクズ等で吸着させて取り除く方法が行われている。しかし、各種事故現場で流出した油は、水と共存している場合が多く、砂や珪藻土やオガクズ等は水や油の吸着能力が低く、回収のために多量の材料を必要とする。また、回収した砂や珪藻土を廃棄すれば土壌汚染の二次災害を招く可能性もある。
砂やオガクズ等に代えて、石油化学製品の吸着材や、油を分解するバクテリアを含む木質油吸着材等も開発あるいは提案されている。木質油吸着材の場合は、自らの持つ細孔のほか、長い繊維の絡み合いの中に多くの油が保持されるだけでなく、石油化学製品と同じく、水をはじいて油になじむ性質があるという特徴がある。しかしながら、石油化学製品は、水は吸着しにくく、油を吸着してゲル状になる場合がある。また、木質油吸着材は、油の吸着能力が必ずしも高くないという問題がある。
本発明者は、おから等の植物性繊維を主成分とする原材料60〜85重量%と、コーンスターチ等のでんぷん類40〜15重量%の均一混合物からなり、嵩比重が0.3〜0.6で、圧縮強度が1000〜3000gfである多孔質で固形の水及び油吸着材を提案した(特許文献1)。この多孔質体は、水に対してもまた油に対しても吸着能力が高く、水分や油分を吸収・吸着しても溶解又はゲル化することがないので、後処理が非常に便利なものであった。しかしながら、おから等の植物性繊維を主成分とする多孔質体の場合は、水分や油分を吸収・吸着した吸着材を除去した後の床面や路面にヌメリが残り、そこで人が滑ったり転んだりして二次災害が発生する可能性がある、という問題点があった。
また、従来、特許文献1の他にも、トウモロコシ、大豆、菜種等の食用植物の農産物残渣から生分解性の油吸着材を製造する方法が公知である(例えば、特許文献2と3)。しかしながら、従来のものは、水を吸着すると溶解又はゲル化し、また、油の吸着能力や後処理の容易さ等の点で必ずしも十分ではないという問題点があった。
特開2009−195765号公報 特開平7−60115号公報 特開平8−131824号公報
本発明の課題は、通常、かなりの部分が産業廃棄物として処理される木屑又は木粉を利用して多孔質のペレットを製造し、性能と取扱い性に優れた水及び油吸着材を提供することにある。
上記課題を達成するための本発明の第1の態様は、木屑を造粒してなる多孔質の木質ペレットであって、嵩比重が0.1〜0.6、好ましくは0.2〜0.4、圧縮強度が1000gf以下、好ましくは10〜500gf、含水率が5〜15重量%、好ましくは8〜12重量%で、直径が1〜7mm、好ましくは2〜5mmで、長さが1〜12mm、好ましくは2〜7mmの範囲にある円柱状の多孔質の木質ペレットからなる水及び油吸着材である。
そして、本発明の第2の態様は、ペレット成型機を用いて木屑を造粒して多孔質の木質ペレットを製造するに際し、木屑として、オガクズ30〜50重量%、好ましくは35〜45重量%と、オガクズを粉砕して得られた長径が1mm以下の粉砕オガクズ70〜50重量%、好ましくは65〜55重量%の混合物を用い、該混合物の含水率を20〜35重量%、好ましくは25〜30重量%に調節して後、前記混合物を造粒し吐出して直径が1〜7mmで長さが1〜12mmの範囲にある円柱状の多孔質の木質ペレットを形成させ、次いで、該木質ペレットを含水率が5〜15重量%になるまで乾燥させることを特徴とする、嵩比重が0.1〜0.6で圧縮強度が1000gf以下の多孔質の木質ペレットからなる水及び油吸着材の製造方法である。
本発明の前記混合物には、本発明に悪影響を与えない限り、防腐剤や着色剤等の第3成分を含んでいても良いが、その量は全体の約5重量%以下の範囲であるのが好ましい。
本発明における多孔質の木質ペレットの形状は、直径が1〜7mm、好ましくは2〜5mmで、長さが1〜12mm、好ましくは2〜7mmの範囲にある円柱状のものである。円柱状とは、厳密に断面が円形のもののみでなく、例えば、断面が六角形等の多角形、あるいは楕円形等の歪んだものであってもよい。
本発明の多孔質の木質ペレットからなる水及び油吸着材は、適度な柔らかさで、水に対してもまた油に対しても吸着能力が高く、水分や油分を吸収・吸着しても溶解又はべとついたりすることがないので、後処理が非常に便利である。本発明は、木屑又は木粉を使用するものであるが、木屑等は年間約547万トン(1996年)も発生しており、その一部は固形燃料等として利用されるものの、大半が産業廃棄物として焼却等の処分に付されている。従って、本発明は、この様に大量の産業廃棄物を有効活用するものである。また、産業廃棄物を利用するものであるから、コスト的にも非常に有利である。更に、本発明は、間伐材の利用、ひいては山林の保全にも役立つものである。
また、本発明の使用後の水及び油吸着材は、そのまま焼却処分することができるが、油等を吸収・吸着した木質ペレットは、殆ど完全に燃焼するので残灰も少なく、その後の残灰の埋め立て等による二次費用も少なくて済む。また、木質ペレットは焼却により処分しても、いわゆるカーボンニュートラルであり環境にも優しいという特徴がある。
前記したように、本発明は、木屑を造粒してなる多孔質の木質ペレットであって、嵩比重が0.1〜0.6、圧縮強度が1000gf以下、含水率が5〜15重量%で、直径が1〜7mmで長さが1〜12mmの範囲にある円柱状の多孔質の木質ペレットからなる水及び油吸着材である。嵩比重としては、好ましいのは0.2〜0.4であり、圧縮強度としては、好ましいのは10〜500gfであり、含水率としては、好ましいのは8〜12重量%である。また、木質ペレットとしては、直径が2〜5mmで、長さが2〜7mmの範囲にある円柱状のものが好ましい。
従来、オガクズやかんな屑等の製材副産物を圧縮成形した小粒の木質ペレットが、固形燃料として利用されている。かかる木質ペレットの形状は、通常、直径が6〜9mm程度、長さが10〜25mm程度の円筒形状をしている。固形燃料として使用されている木質ペレットは、嵩比重(多孔性に関係する)や圧縮強度(ペレットの硬さに関係する)については何らの配慮もされていないので、これをそのまま水及び油吸着材として用いても、本発明のように優れた特性を有する多孔質の木質ペレットからなる水及び油吸着材は得られない。
本発明における圧縮強度とは、木質ペレットからなる水及び油吸着材(製品)の製品強度(圧縮破壊強度)を意味し、具体的には、万能材料試験機(島津製作所製、AG−I・100KN)を使用し(ロードセル100N使用)、圧縮速度:2mm/minの条件で測定したときの値である。また、嵩比重は、木質ペレットからなる水及び油吸着材(製品)をリッター枡に入れて、1リットルの重さを測定して求めたものである。
本発明の木質ペレットは、次のような製造方法によって得られるものであ。即ち、ペレット成型機を用いて木屑を造粒して多孔質の木質ペレットを製造するに際し、木屑として、オガクズ30〜50重量%と、オガクズを粉砕して得られた長径が1mm以下の粉砕オガクズ70〜50重量%の混合物を用い、該混合物の含水率を20〜35重量%、好ましくは25〜30重量%に調節して後、前記混合物を造粒し吐出して直径が1〜7mmで長さが1〜12mmの範囲にある円柱状の多孔質の木質ペレットを形成させ、次いで、該木質ペレットを含水率が5〜15重量%になるまで乾燥させる製造方法である。
本発明において用いられる原材料としての木屑は、木材の種類に制限はない。通常、ノコギリ等で木材を加工するときに生じる目の細かい木屑のうち、直径(長径)が数mm以下のものがオガクズ、5mm程度のものがチップダスト、10mm程度のものがプレーナー屑と呼ばれるが、本発明においては、これらをまとめてオガクズと定義される。そして、本発明では、オガクズ30〜50重量%と、オガクズを粉砕して得られた長径が1mm以下の粉砕オガクズ70〜50重量%の混合物が用いられる。オガクズとしては、通常の直径(長径)が数mm以下のものが好ましく用いられる。本発明においては、このように大きさの異なる2種類のオカクズを特定量混合して用いるところに特徴があり、かかる配合割合の場合にはじめて多孔質のペレットが効率よく成形できる。
本発明の木質ペレットを製造するためのペレット成型機は、本発明で定義される多孔質の木質ペレットを製造することができる機械・装置である限り、特に限定されるものではなく、通常のペレタイザーを用いることができる。しかし、本発明の木質ペレットを製造するに際しては、前記オガクズの混合物の含水率を20〜35重量%、好ましくは25〜30重量%に調節して後、前記混合物を造粒する必要がある。造粒によって形成される木質ペレットは、直径が1〜7mm、好ましくは2〜5mmで、長さが1〜12mm、好ましくは2〜7mmの範囲にある円柱状の多孔質の木質ペレットである。そして、次いで、得られた木質ペレットは、その含水率が5〜15重量%、好ましくは8〜12重量%になるまで乾燥させられる。かくして得られた木質ペレットは、嵩比重が0.1〜0.6で圧縮強度が1000gf以下のものである。
本発明で用いられるペレタイザーは、少なくとも2種類の原材料の混合、混練、並びに成形化を連続的に行うことができ、非常に効率的である。更に、ローラーの回転数、ダイスの形状と温度、水の供給量等によって、得られる水及び油吸着材の形状及び寸法を、容易に且つ任意に変えることもできる。ペレタイザーでは、通常、そのバーレル部に混練ゾーンと押出ゾーンとが備えられており、連続的に水及び油吸着材を製造することができる。また、前段に混練機が取り付けられたペレタイザーを用いても良い。
ペレットの成形温度は60〜90℃が適当である。成形温度が60℃未満である場合は、ペレット化が難しくなる。一方、90℃を越えると、空隙が大きくなって水及び油吸着材が脆くなり、また、吸着効果が損なわれる恐れがある。このペレタイザーの温度が60〜90℃の温度範囲であれば、形状の保持が十分であって、取り扱い易い水及び油吸着材を得ることができる。なお、この成形温度(吐出温度)とは吐出物の出口温度であり、ペレタイザーの供給ゾーン、混練ゾーン、押出ゾーン及びダイス等の温度を適宜設定することにより調整することができる。この温度設定は、供給ゾーン側を低めに、ダイス側を高めにするのが一般的である。
本発明の木質ペレットを製造するに際しては、前記オガクズの混合物の含水率を20〜35重量%、好ましくは25〜30重量%に調節して後、前記混合物を造粒する必要がある。35重量%を超える場合は、水が揮散する際の空隙の形成が過度となる。そのため、空隙の多い脆い水及び油吸着材となり、形状が保持できなくなる。一方、20重量%未満の場合は、水及び油吸着材は空隙の少ない硬いものになり、油分が十分に吸収されないので不適当である。本発明の木質ペレットの製造工程においては、ローラーの回転によってオカクズを潰すことによってリグニンとセルロースが分離される。そして、分離したフリーのセルロースは、ペレットの結合力を高めることに寄与する。
本発明の方法においては、混合物は加熱され、混練され、膨化させられ、その後、吐出される。膨化して吐出される吐出物は、その吐出方向に適宜の長さに切断し、ペレット化することができる。このペレットはダイスに設けられる透孔の形状によって、円形等任意の断面形状のものとすることができる。また、その長さも押出速度と切断速度とを調整することにより、任意に変えることができる。このペレットの直径が1〜7mm、好ましくは2〜5mmで、長さが1〜12mm、好ましくは2〜7mmの範囲にある円柱状のものである。
ペレタイザーのダイスは、混合物の導入口(進入口)の径よりも吐出口の径の方が、若干大きくなっているものが用いられる。かかるダイスを用いることによって、嵩高性と圧縮強度の値を調節することができる。これらを適当に調節することによって、本発明の嵩比重が0.1〜0.6で、圧縮強度が1000gf以下のものが得られる。得られた木質ペレットは、その後、乾燥機を用いて、あるいは自然乾燥することによって、その含水率が5〜15重量%、好ましくは8〜12重量%になるまで乾燥させられる。
以下、実施例により本発明の具体的な態様を説明する。
[実施例1]
乾燥したオガクズ40kgと、オガクズを粉砕して得られた長径が約0.7の粉砕オガクズ60kgをブレンダーによって、室温において分散、混合させた。この混合物に水を添加混合し、含水率を25重量%に調節して後、この混合物を、混合物の進入口の径が5mm、吐出口の径が6mm、厚さが40mmのダイスを備えたペレタイザー(不二パウダル社製のペレットマシン:ディスクペレッターF40)に供給した。ダイス温度を約70℃に設定して、ローラー回転数20〜30回/分の押出速度で膨化した混合物を吐出させた。
上記の様にして得られた直径約5mmの吐出物を長さ7mmに切断し、約90℃に設定した乾燥機中で、含水率が約10重量%になるまで乾燥し、約100kgの円柱状の多孔質の水及び油吸着材を得た。このものの嵩比重は0.45で、圧縮強度は約400gfであった(5点測定の平均)。
そして得られた多孔質で固形の水及び油吸着材は、床面にこぼした水分を含む油を、自身の体積の約3〜5倍以上も速やかに吸着し、路面や床面に水分や油分を残すことなくほうき等で容易に掃き集めることができた。
[実施例2]
本発明の木質ぺレット(本発明品)と珪藻土を主体とした市販の油吸着材(従来品)との、水及び油の吸着性能を比較した。本発明品としては上記実施例1で得られたものを、従来品としてはACライト(谷口商会社商標)を用いた。それぞれの製品を200g、別々のビーカーに量り取り、それぞれに水又は灯油を少量ずつ加えて攪拌した。液体の吸着が飽和状態となった時点で製品を計量し、それぞれの吸着量を測定した。表1に各製品の吸着量を、表2に各製品の自重に対しての吸着性能を示した。水と灯油のいずれの場合も、本発明品は優れた吸着性能を有していた。
Figure 2011136312
Figure 2011136312
本発明の水及び油吸着材は、例えば、油圧機械の整備・分解・組立工場、自動車整備工場、機械整備工場、製油所、船舶内、船舶整備場、航空機整備場、交通事故処理現場、その他の油を扱う場所全般で使用することができる。そして、対象となる吸着可能な油としては、エンジンオイル、ガソリン、灯油、軽油、切削油、作動油、潤滑油、ジェット燃料、油性インク、ギアオイル、植物油、動物油、原油を含む液体油全般、その他炭化水素を含む化学品等が挙げられる。また、車両のラジエーターから漏れた液体の処理にも用いることができる。更には、例えば、鉄道等のホームでの酔客の嘔吐物の処理や除去にも使用することができる。
本発明の水及び油吸着材は、例えば、前記の様な油が漏れた場合、漏れた油又は水と油の混合物にふりかけて吸着させ、その後、ほうき等で掃き集めるだけで漏れた油又は水と油からなる混合物を回収できる。そして、床面や路面等の油膜も残らず吸着させることができる。吸着された油は、べとつきや滲出しがなく、また、油吸着材は元の形状を保ったままであり、床面や路面等からの回収に手間取ることもない。また、回収された水及び油吸着材は、焼却処分が出来るので、使用後の廃棄処分も簡単である。更に、本発明の水及び油吸着材は、焼却しても有毒なガス成分を発生することはなく、有害物質を含まないので毒性がなく、環境汚染を心配することなく利用することができる。

Claims (2)

  1. 木屑を造粒してなる多孔質の木質ペレットであって、嵩比重が0.1〜0.6、圧縮強度が1000gf以下、含水率が5〜15重量%、直径が1〜7mm、長さが1〜12mmの範囲にある円柱状の多孔質の木質ペレットからなる水及び油吸着材。
  2. ペレット成型機を用いて木屑を造粒して多孔質の木質ペレットを製造するに際し、木屑として、オガクズ30〜50重量%と、オガクズを粉砕して得られた長径が1mm以下の粉砕オガクズ70〜50重量%の混合物を用い、該混合物の含水率を20〜35重量%に調節して後、前記混合物を造粒し吐出して直径が1〜7mmで長さが1〜12mmの範囲にある円柱状の多孔質の木質ペレットを形成させ、次いで、該木質ペレットを含水率が5〜15重量%になるまで乾燥させることを特徴とする、嵩比重が0.1〜0.6で圧縮強度が1000gf以下の多孔質の木質ペレットからなる水及び油吸着材の製造方法。

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