JP2011120984A - 水域浄化方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】面積が広い水域や、外部と開放された開放水域(例えば海域)であっても、水中の有機性汚染物質やヘドロを効率的かつ低コストで浄化処理が可能な水域浄化方法を提供する。
【解決手段】水質浄化機能を有する有用細菌の残骸を少なくとも含む原料を、水質浄化すべき特定の水域Wより取水された水と共に同一の過密培養用タンクT4内に投入して、そのタンクT4内で、該水域Wの水に存する現地生息菌を、酵素結晶が生じるまで過密培養する過密培養工程と、前記過密培養工程で過密培養された前記現地生息菌の次世代菌を、該過密培養で生じた酵素結晶と共に前記水域に散布する散布工程とを含む。
【選択図】図2

Description

本発明は、水質が汚染された水域(例えば河川、河口、海域等)を浄化するための水域浄化方法に関する。
上記水域の浄化手法としては、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム等の無機材料を汚染水域に直接散布して、水中の浮遊物(SS)と凝集沈殿を起こし水底に堆積させるようにしたものが知られている。この手法では、上記凝集沈殿により水中の浮遊物が除去され、水の透明度が改善される。その後、汚染水域の水底に堆積した無機材料は水底堆積土壌の上層部数センチを嫌気性から好気性に改善し、好気性細菌の活動によりヘドロを浄化して、好気性細菌、植物性プランクトン、海底部生息動物(ゴカイ、アサリ等)の生息を促すものである(下記特許文献1を参照)。
特開2000−176205号公報
上記従来の手法では、無機材料が汚染物質と接触して一度、化学反応を起こすと役目が終わり、それで使い切りとなってしまうため、汚染物質の量に見合った大量の無機材料を用意する必要がある。特に広い水域、潮流の早い水域、水深の深い水域では膨大な量の無機材料が必要となり、また散布した無機材料も汚染物質と接触する前に急速に拡散してしまい、十分な水質浄化効果を出すのが難しいといった問題がある。
また、細菌の分解能力を利用したバイオマスで水質浄化する手法も既に提案されているが、この方法は、バイオマス装置内に汚染海水、ヘドロを引き込み、装置内で浄化して汚染海域に戻す方法であるため、面積が狭い閉鎖水域では効果が期待できるものの、オープンフィールドである広い海域では、巨大な処理タンクが必要となって現実的ではない。
本発明は、上記に鑑み提案されたものであり、面積が広い水域や、外部と開放された開放水域(例えば海域)であっても、水中の有機性汚染物質やヘドロを効率的かつ低コストで浄化処理が可能な水域浄化方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、水質浄化機能を有する有用細菌の残骸を少なくとも含む原料を、水質浄化すべき特定の水域より取水された水と共に同一の過密培養用タンク内に投入して、そのタンク内で、該水域の水に存する現地生息菌を、酵素結晶が生じるまで過密培養する過密培養工程と、前記過密培養工程で過密培養された前記現地生息菌の次世代菌を、該過密培養で生じた酵素結晶と共に前記水域に散布する散布工程とを少なくとも含むことを特徴とし、また請求項2の発明は、水質浄化機能を有する有用細菌の残骸と土壌菌とを少なくとも含む原料を、水質浄化すべき特定の水域より取水された水と共に複数の前処理用タンク内に順次投入して、その前処理用タンク内で、該水域の水に存する現地生息菌と前記土壌菌とを培養すると共に、該土壌菌を海水に徐々に慣らす前処理工程と、前記前処理工程で培養された前記土壌菌及び前記現地生息菌を、同一の過密培養用タンク内で酵素結晶が生じるまで過密培養する過密培養工程と、前記過密培養工程で過密培養された前記現地生息菌及び前記土壌菌の各々の次世代菌を、該過密培養で生じた酵素結晶と共に前記水域に散布する散布工程とを少なくとも含むことを特徴とする。
また請求項3の発明は、請求項1又は2の前記特徴に加えて、前記過密培養工程では、過密培養用タンク内で繰り返される細菌発酵循環サイクルにおける好気性培養過程と嫌気性培養過程との切換タイミングを、前記過密培養タンク内での臭気の発生状況に基づいて制御することを特徴とする。
また請求項4の発明は、請求項1〜3の何れかの前記特徴に加えて、前記過密培養においては、細菌に対し栄養となる多量の栄養物質を前記過密培養用タンク内に付加することを特徴とする。
また請求項5の発明は、請求項1〜4の何れかの前記特徴に加えて、前記原料には、地殻変動で地表に現れている古代の海底地層から採取された珪藻土を用いることを特徴とする。
本発明によれば、水質浄化機能を有する有用細菌の残骸を少なくとも含む原料を、水質浄化すべき特定の水域より取水された水と共に同一の過密培養用タンク内に投入して、そのタンク内で、該水域の水に存する現地生息菌を、酵素結晶が生じるまで過密培養すると、有用細菌の残骸に含まれる、水質浄化機能に関する遺伝子情報が現地生息菌に効率よく転写されて、過密培養後の現地生息菌の次世代菌が有用細菌の水質浄化機能を持つようになる。従って、この次世代菌を、過密培養で生じた酵素結晶と共に元の水域に散布することにより、該水域において水質浄化機能を持つ次世代菌の自然培養(更なる世代交代)が繰り返され、且つ散布された酵素結晶の遺伝子情報が該水域の既存の現地生息菌にも転写されることで全体として、水質浄化機能を有する細菌の増殖が促進される。以上により、有用細菌に由来する水質浄化機能を持つ細菌の密度を該水域において長期間に亘り高く保つことができるため、その増殖細菌により該水域の水質浄化が効果的になされ、従って、面積が広い水域や、外部と開放された開放水域(例えば海域)であっても、有機性の汚染物質やヘドロ等を効率的且つ低コストで清浄化することができる。
また特に請求項2の発明によれば、汚染水域が特定の海域であり、また出発原料中に、水質浄化機能を持たない土壌菌が不可避的に含まれていても、その土壌菌を前処理工程で海水に徐々に慣らすことができ、この海水に慣らした土壌菌をも同時に過密培養して、その次世代土壌菌にも、有用細菌の水質浄化機能を持たせられるため、この次世代土壌菌をも酵素結晶等と共に元の海域に散布することにより、該海域において、水質浄化機能を有する細菌の増殖が一層促進され、その増殖細菌により該海域の水質浄化が更に効果的になされる。
また特に請求項3の発明によれば、過密培養工程では、過密培養用タンク内で繰り返される細菌発酵循環サイクルにおける好気性培養過程と嫌気性培養過程との切換タイミングを、過密培養タンク内での臭気の発生状況に基づいて制御するので、その好気性培養過程と嫌気性培養過程との切換を的確に行うことができて、細菌発酵循環サイクルを支障なく繰り返すことができ、過密培養を効率よく且つ継続的に行うことが可能となる。
また特に請求項4の発明によれば、前記過密培養においては、細菌に対し栄養となる多量の栄養物質を過密培養用タンク内に付加することで、過密培養を効果的に促進させることができる。
また特に請求項5の発明によれば、原料には、地殻変動で地表に現れている古代の海底地層から採取された珪藻土を用いるので、その珪藻土に含まれる有用細菌の残骸を遺伝子情報として有効活用して、水域の現地生息菌に水質浄化機能を効率よく転写可能となる。しかも入手及び取扱いが比較的容易で且つ安価な珪藻腐植土を使用できるため、作業効率の向上及びコスト節減に寄与することができる。
本発明の一実施例に係る処理プラントを搭載した作業船の概要図 本発明の一実施例に係る処理プラントの概略全体図 細菌の発酵循環サイクルを示す説明図 酵素結晶(複合酵素)を撮影した蛍光X線解析写真(撮影倍率は1万倍)
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
先ず、図1,2を参照して、本発明方法を実施するための処理システムの構造の一例について説明する。この処理システムは、水質浄化すべき被浄化水域としての特定海域Wまで移動しそこに停船する作業船Sと、その作業船Sに搭載された処理プラントPLとから構成される。
その処理プラントPLには、前記海域WからポンプP0で汲み上げた海水を貯める海水タンクT0と、前処理用の複数の(図示例では第1〜第3)タンクT1〜T3と、過密培養用の第4タンクT4と、放流液貯溜用の第5タンクT5と、淡水を貯めるタンクTwとを備える。
第1タンクT1には、原料を詰めた透水性の袋1が、原料とタンクT1内の水との接触を可能として支持される。また第1〜第4タンクT1〜T4には、その貯溜液に対する曝気用エアポンプAと、攪拌羽根等の攪拌手段Bとがそれぞれ設けられる。
前記原料としては、地殻の変動、隆起で地表に現れている古代の海底地層から採取された珪藻土を粉砕し或いはエキス状としたものが使用される。近年の研究で、古代の深海底に生息していたシアノバクテリア(藍色細菌)やプロクロロコッカス等の細菌(以下、本明細書では単に「有用細菌」という)は、海水等に対する高い水質浄化機能を有していたことが知られており、前記珪藻土は、このような有用細菌の大量の死骸が古代の深海底に堆積して化石となったものが使用される。その有用細菌の残骸の大部分は、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム等の海水成分とほぼ同等のミネラル成分であり、更にその残骸には、前記有用細菌の細胞内に含まれるカルボキシソーム、mRNA,mtDNA等の、水質浄化機能に関する有用な遺伝子情報を有する物質が含まれる。
前記カルボキシソームは、大きさ80-140nmの多面体構造で、タンパク質の殻と内部にあるルビスコからなり、厚さ3-4 nmの殻タンパク質の層に包まれているため、深海底のような極限環境状態でも壊れにくい。而して、このカルボキシソーム、mRNA,mtDNAなどに含まれる水質浄化機能等の有用な遺伝子情報が、後述するように被浄化水域の海水に含まれる現地生育菌(乳酸菌、大腸菌、シアノバクテリア等)に対し、培養による世代交代を通して情報転写されて水質浄化能力を発揮し得るようになる。
また前記珪藻土は、地表に現れてから長い年月が経過しているため、土壌菌を含む腐植土が多量に付着、混在しており、その珪藻土内に生息している土壌菌は、長い期間大気に曝されていたため好気性細菌である。これを嫌気性である海水中で培養可能とするため、本実施例では、前記した前処理用タンクT1〜T3で淡水と海水の混合比率を徐々に高めて、海水中で長期間生息できる細菌に培養するようにしている。
海水タンクT0には、その貯溜海水を第1〜第3タンクT1〜T3に分配供給する切換弁V1,V2付き海水供給配管Lが設けられる。また第1タンクT1と第2タンクT2間には、第1タンクT1の処理液を第2タンクT2に供給する処理液供給配管L1が設けられ、更に第2タンクT2と第3タンクT3間、第3タンクT3と第4タンクT4間、第4タンクT4と第5タンクT5間にも、同様の機能を有する処理液供給配管L2〜L4がそれぞれ設けられる。また前記各供給配管L,L1〜L4の各上流端には給送ポンプPがそれぞれ設けられる。また、処理液供給配管L4には、必要に応じて、砂濾過器F1及びセラミックフィルタF2が直列に介装され、海に放流する直前の処理液中の大粒の不純物(例えば栄養残渣)を除去する。尚、これら濾過器F1,F2としては、上記不純物は濾過するが、後述する酵素結晶や細菌類は通過させる程度の、比較的粗い目のものが採用される。
次に前記処理プラントPLの処理手順の一例を説明する。先ず、第1タンクT1内には、前記海域Wで採取され海水タンクT0に貯溜された海水と、淡水タンクTwからの淡水とが、海水1対淡水2の比率で投入される。次に珪藻土を詰めた前記袋1を第1タンクT1の上蓋に吊るしてタンクT1内の水に珪藻土を十分に接触させ、また第1タンクT1内のエアポンプAを適時作動させて曝気用の空気を放出させると共に攪拌羽根Bを回転させてタンクT1内の水をかき混ぜる。これにより、第1タンクT1内で、海水中の現地生息菌と珪藻土中の土壌菌とが緩やかに培養される。
この細菌培養過程では、そのタンク内の海水中の現地生息菌および珪藻土中の土壌菌の各々の次世代菌に、珪藻土中の有用細菌の残骸に含まれるカルボキシソーム、mRNA,mtDNAなどの、水質浄化機能に関係した遺伝子情報が転写され、それらの次世代菌の少なくとも一部が、珪藻土中の有用細菌が元々有していた水質浄化機能を持つようになる。
次に第1タンクT1内の処理液と、海水タンクT0に貯溜された海水とが、第2タンクT2内で海水1対淡水1の比率で投入される。この第2タンクT2内でも、エアポンプAを適時作動させて曝気用の空気を放出させると共に攪拌羽根Bを回転させてタンクT2内の水をかき混ぜる。これにより、第2タンクT2内で、海水中の現地生息菌と珪藻土中の土壌菌とが、第1タンクT1内よりも高い(即ちより海水に近い)塩分濃度の環境で緩やかに培養される。尚、この細菌培養過程でも、前記した遺伝子情報の次世代菌への転写が行われる。
次に第2タンクT2内の処理液と、海水タンクT0に貯溜された海水とが、第3タンクT3内で海水2対淡水1の比率で投入される。この第3タンクT3内でも、エアポンプAを適時作動させて曝気用の空気を放出させると共に攪拌羽根Bを回転させてタンクT3内の水をかき混ぜる。これにより、第3タンクT3内で、海水中の現地生息菌と珪藻土中の土壌菌とが、第2タンクT2内よりも更に高い(即ち更に海水に近い)塩分濃度の環境で緩やかに培養される。尚、この細菌培養過程でも、前記した遺伝子情報の次世代菌への転写が行われる。
而して、第1〜第3タンクT1〜T3内では、図3に示すような細菌の発酵循環サイクルが繰り返されるが、このサイクルにおいて、図3で左半分の好気性培養過程は、エアポンプAを作動させてタンク内を曝気することで、好気性の酸化細菌にとって良好な生息環境に整えることで培養過程が進行し、一方、右半分の嫌気性培養過程は、エアポンプAを作動停止させてタンク内の曝気を止めることで、嫌気性の還元細菌にとって良好な生息環境に整えることで培養過程が進行する。
従って、各タンクT1〜T3内が発酵循環サイクルのどのプロセスにあるかを見極めて、好気性培養過程ではエアポンプAを作動させ、また嫌気性培養過程ではエアポンプAを作動停止させることで、発酵循環サイクルが進み細菌培養が促進される。このため、好気性培養過程と嫌気性培養過程との切換、即ちエアポンプAの作動・停止の切換のタイミングをどのようにして設定するのかが、発酵循環サイクルをスムーズに進行させ、細菌の培養を進める上で重要なポイントとなる。
そこで本実施例では、細菌発酵循環サイクル中のコハク酸生成酸化細菌培養時とリンゴ酸生成酸化細菌培養時に比較的感知し易い特徴的で強い臭気が発生することを利用する。即ち、この臭気を従来公知の臭気測定器で感知してその感知時期のデータを予め取得、蓄積しておき、そのデータに基づいて、細菌発酵循環サイクルの好気性培養過程から嫌気性培養過程への切換時期と、その逆の切換時期とを予測する実験式を算出する。そして、臭気測定器がコハク酸生成酸化細菌培養時とリンゴ酸生成酸化細菌培養時の各臭気を測定した時期データと前記実験式とに基づいて前記切換タイミングを決定すれば、エアポンプAの作動タイミングの最適化が図られ、発酵循環サイクルをスムーズに進行させることが可能となる。以上の処理はマイコンで行われ、これにより、エアポンプAの作動制御が自動管理される。尚、第1〜第3タンクT1〜T3において、処理液の塩分濃度が異なるため、細菌の培養速度も当然に異なり、前記実験式も各タンクT1〜T3毎に割り出す必要がある。
このように細菌発酵循環サイクルにおける好気性培養過程と嫌気性培養過程との切換タイミングを、各タンクT1〜T3内での臭気の発生状況に基づいて制御すれば、その好気性培養過程と嫌気性培養過程との切換を容易且つ的確に行うことができて、細菌発酵循環サイクルを支障なく繰り返すことができる。
なお、発酵循環サイクルの好気性培養過程と嫌気性培養過程の切換タイミングの見極め作業は、例えば日本酒の発酵を管理する杜氏が発酵管理を杜氏の長年の経験や五感で行うことと似ているため、本実施例においても各タンクT1〜T3を管理する作業員の経験、五感に基づいて上記切換タイミングを人為的に決めることも可能であるが、処理プラントPの運営自動化を図る上では、臭気測定器の臭気測定結果に基づいて上記切換タイミングを決めることが望ましい。
次に第3タンクT3内の処理液を第4タンクT4内に給送するが、この第4タンクT4内には、細菌に対し栄養となる多量の栄養物質(例えばアルコール、糖類)が大量に添加され、またこの第4タンクT4内でも、エアポンプAを適時作動させて曝気用の空気を放出させると共に攪拌羽根Bを回転させてタンクT3内の水をかき混ぜる。即ち、この第4タンクT4内でも、第1〜第3タンクT1〜T3内と同様、細菌発酵循環サイクルにおける好気性培養過程と嫌気性培養過程との切換タイミング、即ちエアポンプAの作動・停止の切換タイミングが、タンクT4内での臭気の発生状況に基づいて自動制御されるので、細菌発酵循環サイクルが迅速に進行する。
これにより、第4タンクT4内では、前記栄養物質を十分に摂取した海水中の現地生息菌と珪藻土中の土壌菌とが急速且つ大量に増殖する過密培養状態となる。そして、この過密培養過程においても、珪藻土中の有用細菌の残骸に含まれるカルボキシソーム、mRNA,mtDNA等の、水質浄化機能に関する有用な遺伝子情報が現地生息菌及び土壌菌の次世代菌に転写されるため、過密培養後の現地生息菌及び土壌菌の次世代菌の多くに水質浄化機能を持たせることができるようになる。
また、この過密培養により第4タンクT4内において細菌が過密となりその増殖限界に達する(即ち細菌個数が109 個/cm3 を超える)と、細菌は自己保存のために個体の大きさを縮小させると共に酵素結晶を個体外に多量に(即ちその細菌個数とほぼ同数の109 個/cm3 以上)放出するようになる。この酵素結晶は、放出元の細菌が保有していた遺伝子情報(カルボキシソーム、mRNA,mtDNA、rRNA等)、従って水質浄化機能に関する遺伝子情報を有している。このため、その過密培養により生じた酵素結晶を後述するように被浄化海域Wに放流すると、それが海域Wの現地生息菌と接触することで、その現地生息菌の次世代菌に、水質浄化機能等の遺伝子情報を転写して、水質浄化機能を持たせることができるようになる。
本発明者は、過密培養後の培養液をフィルターで濾過し、細菌や、培養に使用した栄養素残渣等の固形物を除去した後の溶液を分析した。そして、分析依頼先の長崎大学で、溶液を遠心分離して得た粒の成分分析を実施したところ、その粒がタンパク質だという分析結果から過密培養時に細菌が生産する酵素結晶であると結論付けた。この酵素結晶の粒はμ単位の極く微小であるが、本発明者は、その酵素結晶を、過密培養を繰り返すことにより生じたより比較的大きな粒の形態、即ち複合酵素(即ち酵素結晶相互が結合したもの)の状態で撮影することに成功し、図4には、その蛍光X線解析写真(撮影倍率は1万倍)を示す。
上記のようにして過密培養が進んだ処理液は、砂濾過器F1及びバイオセラミックフィルタF2で大粒の不純物を除去された後、第5タンクT5に給送、貯溜され、そこから元の海域Wに放流される。
本発明者が第4タンクT4から抽出した酵素結晶入りの処理液を、汚染海域Wの海水と混合してその水質浄化効果を確認したところ、下記表1のような結果を得た。
この実験データは、海水1トンに対し処理液を100cc添加して、20分が経過した後のものであり、これによれば、浮遊物質量(SS)、BOD,COD、塩素イオンが何れも短時間で大幅に改善されたことが判る。
また本発明者が第4タンクT4から抽出した酵素結晶入りの処理液を、或る工場の工場排水と混合してその水質浄化効果を確認したところ、下記表2のような結果を得た。
この実験データは、工場排水30トンに対し処理液を3000cc添加して、60分が経過した後のものと、半年が経過したものとであり、これによれば、浮遊物質量(SS)、BOD,COD等が何れも短時間で大幅に改善されたことが判る。
而して、第4タンクT4から第5タンクT5を経て元の海域Wへ放流される処理液は、前記珪藻土の有用細菌の残骸に由来する水質浄化機能を備えた増殖細菌のみならず、水質浄化機能を高める遺伝子情報を持つ酵素結晶を多量に有しているため、処理液1トン当たり1万トンの海水を効率よく水質浄化できる。その作用機序としては、本処理液が海域Wに放流された場合、水質浄化機能を備えた増殖細菌が水域Wに増えるだけでなく、酵素結晶を遺伝子情報伝達物質として利用して海域Wの現地生育菌に対し、水質浄化機能を高める遺伝子情報が転写され、浄化能力を保有した菌数が該水域Wに飛躍的に増えていくことによるものである。ただし、そのような菌の増殖は無制限に行われるわけではなく、実験では添加した処理液量の一万倍の海水量が限度である。尚、酵素結晶に基づく水質浄化速度が比較的速いのは、酵素反応速度が、化学反応、金属触媒などより早いことも起因していると推測される。
ところで第1タンクT1に投入される前記珪素土は、その主成分が前述のようにミネラル成分であり、この物質を汚染海域の海水に単純に添加しても何等の浄化反応も生じなかった。しかるに汚染海域の海水を使用して現地育成菌等の培養、世代交代を実施した後に、汚染物質の浄化反応が発生することが判明し、この現象から、本発明者は、珪藻土中に遺伝子情報物質が含まれており、且つそれが珪藻土中の有用細菌の残骸に含まれるカルボキシソーム、mRNA,mtDNA等の遺伝子情報物質であると判断した。一般的に遺伝子情報の転写に際しては、細菌の世代交代時(細菌培養時)の細菌の分裂による遺伝子情報がメッセンジャーRNAを使用して情報転写することが周知の事実であり、本ケースにおいても、現地育成菌との培養時に上記遺伝子情報転写が実施できていなければ、培養液は腐敗して、培養液中に生育している菌が死滅するはずであるが、本実施例では、そのような細菌の死滅(腐敗)を回避しつつ培養された処理液により海域Wの水質浄化が果たされている。
以上のように本実施例によれば、水質浄化機能を有する有用細菌の残骸を含む、古代海底に堆積していた珪藻土を、被浄化海域Wより取水された海水と共に同一の過密培養用タンクT4内に投入して、そのタンクT4内で、該海域Wの海水に存する現地生息菌と珪藻土中の土壌菌とを、酵素結晶が生じるまで過密培養させることができるため、珪藻土中の有用細菌の残骸に含まれるカルボキシソーム、mRNA,mtDNA等の、水質浄化機能に関する有用な遺伝子情報が現地生息菌及び土壌菌に効率よく転写され、これにより、過密培養後の現地生息菌及び土壌菌の次世代菌の大部分が、珪藻土中の有用細菌の元々有していた水質浄化機能を持つようになる。従って、これらの次世代菌を、過密培養で生じた酵素結晶と共に元の海域Wに散布することにより、該海域Wにおいて水質浄化機能を持つ次世代菌の自然培養(更なる世代交代)が繰り返され、且つ散布された酵素結晶が遺伝子情報伝達物質となって、その遺伝子情報が該海域Wの既存の現地生息菌にも転写されるため、全体として、水質浄化機能を有する細菌の増殖が促進される。
かくして、前記珪藻土中の有用細菌の残骸に由来する水質浄化機能を持つ細菌の密度を被浄化海域Wにおいて長期間に亘り高く保つことができるため、その増殖細菌により該海域Wの水質浄化が長期間に亘り効果的になされる。その結果、被浄化水域Wが面積の広い水域や、外部と開放された開放水域であっても、水質汚染の原因となっている有機性の汚染物質やヘドロ等を効率的且つ低コストで清浄化することができる。
その上、本実施例では、原料として使用される珪藻土中に腐植土(従って土壌菌)が少なからず混じる点に鑑み、海水濃度を順次高めた第1〜第3タンクT1〜T3における前処理工程で珪藻土中の土壌菌を海水に徐々に慣らしつつ培養している。そして、その前処理段階(即ち過密培養前)の細菌培養過程でも、珪藻土中の有用細菌の残骸に含まれるカルボキシソーム、mRNA,mtDNAなどの、水質浄化機能に関係した遺伝子情報が海水中の現地生息菌及び土壌菌の次世代菌の一部に転写されるため、その一部の細菌に、前記有用細菌が元々有していた水質浄化機能を持たせることができる。従って、引き続く第4タンクT4での過密培養過程では、海水中の現地生息菌のみならず、海水に徐々に慣らした土壌菌をも同時に過密培養して、その次世代菌にも、有用細菌の水質浄化機能を持たせられるため、この次世代菌をも酵素結晶等と共に元の海域Wに散布することにより、該海域Wにおいて、水質浄化機能を有する細菌の増殖が一層促進される。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、前記実施例では、処理プラントPLを汚染水域Wに停船する作業船S上に搭載したものを示したが、本発明では、処理プラントを汚染水域Wの周辺の陸上施設に設置してもよい。
また前記実施例では、入手容易性、コスト面から腐植土(従って土壌菌)が混ざる珪藻土を使用し、そのため土壌菌を海水に徐々に慣らすために第1〜第3タンクT1〜T3での前処理工程を、第4タンクT4での過密培養工程前に実行しているが、本発明(請求項1)では、腐植土(従って土壌菌)を含まない珪藻土や、有用細菌の残骸のみを原料とする場合に、前記前処理工程を省略可能である。また被浄化水域が淡水域の場合も、前記前処理工程を省略可能である。
また前記実施例では、第1〜第4タンクT1〜T4間の処理液の移動をポンプPで強制的に行うようにしているが、本発明では、処理液を上流側のタンクから順次、オーバフローさせて、下流側に隣接するタンクへ移動させるようにしてもよい。
T1〜T3・・前処理用タンクとしての第1〜第3タンク
T4・・・・・過密培養用タンクとしての第4タンク
W・・・・・・水域としての海域

Claims (5)

  1. 水質浄化機能を有する有用細菌の残骸を少なくとも含む原料を、水質浄化すべき特定の水域(W)より取水された水と共に同一の過密培養用タンク(T4)内に投入して、そのタンク(T4)内で、該水域(W)の水に存する現地生息菌を、酵素結晶が生じるまで過密培養する過密培養工程と、
    前記過密培養工程で過密培養された前記現地生息菌の次世代菌を、該過密培養で生じた酵素結晶と共に前記水域(W)に散布する散布工程とを少なくとも含むことを特徴とする、水域浄化方法。
  2. 水質浄化機能を有する有用細菌の残骸と土壌菌とを少なくとも含む原料を、水質浄化すべき特定の水域(W)より取水された水と共に複数の前処理用タンク(T1〜T3)内に順次投入して、その前処理用タンク(T1〜T3)内で、該水域(W)の水に存する現地生息菌と前記土壌菌とを培養すると共に、該土壌菌を海水に徐々に慣らす前処理工程と、 前記前処理工程で培養された前記土壌菌及び前記現地生息菌を、同一の過密培養用タンク(T4)内で酵素結晶が生じるまで過密培養する過密培養工程と、
    前記過密培養工程で過密培養された前記現地生息菌及び前記土壌菌の各々の次世代菌を、該過密培養で生じた酵素結晶と共に前記水域(W)に散布する散布工程とを少なくとも含むことを特徴とする、水域浄化方法。
  3. 前記過密培養工程では、過密培養用タンク(T4)内で繰り返される細菌発酵循環サイクルにおける好気性培養過程と嫌気性培養過程との切換タイミングを、前記過密培養タンク(T4)内での臭気の発生状況に基づいて制御することを特徴とする、請求項1又は2に記載の水域浄化方法。
  4. 前記過密培養においては、細菌に対し栄養となる多量の栄養物質を前記過密培養用タンク内に付加することを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の水域浄化方法。
  5. 前記原料には、地殻変動で地表に現れている古代の海底地層から採取された珪藻土を用いることを特徴とする、請求項1〜4の何れかに記載の水域浄化方法。
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