アンチセンス技術は、特定の遺伝子産物の発現を減少させるのに効果的な手段として現れてきており、多くの治療、診断および調査用途に比類なく有用であることが証明されている。
RNアーゼH、RNAiおよびdsRNA酵素等の作用のアンチセンス機構ならびに標的分解または標的占有に基づく他のアンチセンス機構を介した遺伝子発現および関連する経路の調節に有用なアンチセンス化合物が本明細書中に開示される。一度この開示を携えた当業者は、過度な実験なしに、これらの使用のためにアンチセンス化合物を同定、調製および活用することができよう。
(発明の概要)
本発明は、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼをコードする核酸分子を標的とし、これにハイブリダイズでき、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの発現を調節するオリゴマー化合物に関する。長さ13〜30ヌクレオチドの配列を含むオリゴマー化合物が本明細書中に企図および提供される。修飾ヌクレオチド間結合、修飾核酸塩基または修飾糖から選択される少なくとも2つの化学的修飾を含むオリゴマー化合物が、本発明の好ましい態様にある。5'および3'末端で少なくとも1つの2'-O-メトキシルエチルヌクレオチドに挟まれたデオキシヌクレオチド領域を含むキメラオリゴヌクレオチドが本明細書中に提供される。10個のデオキシヌクレオチドを含み、5'および3'の両末端で5つの2'-O-メトキシエチルヌクレオチドに挟まれ、ここで各ヌクレオシド間結合がホスホロチオエートである、キメラオリゴヌクレオチドがさらに提供される。さらなる態様において、本発明のオリゴマー化合物は、少なくとも1つの5-メチルシトシンを有し得る。
ある態様において、オリゴマー化合物は、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの発現を、少なくとも35%阻害する。
細胞、組織または動物を1つ以上の本発明の化合物または組成物に接触させる工程を含む、細胞、組織または動物におけるグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの発現を調節する方法がさらに提供される。例えば、ある態様において、本発明の化合物または組成物を用いて、細胞、組織または動物におけるグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの発現を阻害し得る。
いくつかの態様において、化合物は、血糖、トリグリセリドまたはコレステロールが低下するような治療を必要とする動物に投与するための医薬の調製において用いられる。ある態様においては、HbA1cレベルが低下する。ある態様において、本発明の化合物は、糖尿病、またはメタボリックシンドロームに関連する症状の治療のために、動物に投与するための医薬の調製において用いられる。
他の態様において、本発明は、動物を有効量の本発明のオリゴマー化合物に接触させる工程を含む、動物における症状の重症度を改善または軽減させる方法に関する。他の態様において、本発明は、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの発現が阻害され、症状の1つ以上の物理的指標の測定が症状の重症度の軽減を示すように、動物を有効量の本発明のオリゴマー化合物に接触させる工程を含む、動物における状態の重症度を改善または軽減させる方法に関する。ある態様において、本発明の化合物は、症状の重症度を改善または軽減させるために動物に投与するための医薬の調製において用いられる。いくつかの態様において、症状としては、糖尿病、インスリン抵抗性、インスリン欠乏、高コレステロール血症、高血糖症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高脂肪酸血症および肝臓脂肪症が挙げられるが、これらに限定されない。ある態様においては、糖尿病はII型糖尿病である。別の態様においては、糖尿病は食事誘導性である。別の態様において、症状はメタボリックシンドロームである。別の態様において、症状は心臓血管病である。別の態様において、心臓血管病は冠状動脈性心疾患である。別の態様において、状態は心臓血管系危険因子である。
(詳細な説明)
大要
グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼをコードする核酸分子の発現の調節に用いるためのアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび他のアンチセンス化合物を含むオリゴマー化合物が本明細書中に開示される。これは、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼをコードする1つ以上の標的核酸分子とハイブリダイズするオリゴマー化合物を提供することによって達成される。
グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ(グルコース-6-ホスファターゼ/トランスロカーゼ、G6Pトランスロカーゼ、G6pt1、Ib型GSD、GSD1b、MGC15729、PRO0685、グルコース-6-ホスファターゼ、輸送タンパク質1、グルコース-6-リン酸トランスポーター1、1b型グリコーゲン貯蔵疾患としても公知)の発現を調節ための組成物および方法が本発明に従う。グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼを標的とするオリゴマー化合物の設計に使用される配列のGENBANK(登録商標)受託番号が表1に列挙される。本発明のオリゴマー化合物としては、表1に示される1つ以上の標的核酸分子とハイブリダイズするオリゴマー化合物、ならびにグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼをコードする他の核酸分子にハイブリダイズするオリゴマー化合物が挙げられる。オリゴマー化合物は、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼをコードする核酸分子の任意の領域、セグメント、または部位を標的とし得る。適切な標的領域、セグメントおよび部位としては、5'UTR、開始コドン、停止コドン、コード領域、3'UTR、5'キャップ領域、イントロン、エクソン、イントロン−エクソン連結、エクソンイントロン連結およびエクソンエクソン連結が挙げられるが、これらに限定されない。
活性のあるオリゴマー化合物がハイブリダイズする標的核酸上の位置は、本明細書中、下記で「有効標的セグメント」と呼ばれる。本明細書中で使用される場合、用語「有効標的セグメント」は、活性のあるオリゴマー化合物が標的とする標的領域の少なくとも13核酸塩基の部分として定義される。理論に拘束されることを望まないが、現在、これらの標的セグメントは、ハイブリダイゼーションに利用しやすい標的核酸の部分を表すと考えられている。
本発明の態様は、長さ13〜30ヌクレオチドの配列、および修飾ヌクレオシド間結合、修飾核酸塩基または修飾糖から選択される少なくとも2つの修飾を含む、オリゴマー化合物を含む。ある態様において、本発明のオリゴマー化合物は、キメラオリゴヌクレオチドである。ある態様において、本発明のオリゴマー化合物は、5'および3'末端のそれぞれで少なくとも1つの2'-O-(2-メトキシエチル)ヌクレオチドに挟まれたデオキシヌクレオチド領域を含むキメラオリゴヌクレオチドである。別の態様において、本発明のオリゴマー化合物は、10個のデオキシヌクレオチドを含み、5'および3'の両末端で5つの2'-O-(2-メトキシエチル)ヌクレオチドに挟まれた、キメラオリゴヌクレオチドである。さらなる態様において、本発明のオリゴマー化合物は、少なくとも1つの5-メチルシトシンを有し得る。
ある態様において、オリゴマー化合物は、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼとハイブリダイズする。別の態様において、オリゴマー化合物は、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの発現を阻害する。他の態様において、オリゴマー化合物は、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの発現を阻害し、ここでグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの発現は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または100%阻害される。ある態様において、オリゴマー化合物は、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの発現を35%阻害する。
ある態様において、本発明は、本発明のオリゴマー化合物を投与することによって動物におけるトリグリセリドレベルを低下させる方法を提供する。ある態様において、トリグリセリドは、循環トリグリセリドである。別の態様において、本発明のオリゴマー化合物を投与することによって動物におけるグルコースを低下させる方法が提供される。他の態様において、本発明は、本発明のオリゴマー化合物を投与することによって動物におけるコレステロールレベルまたはALTもしくはASTを低下させる方法を提供する。他の態様において、本発明は、本発明のオリゴマー化合物を投与することによって動物における耐糖能を向上させる方法を提供する。グルコースを低下させるため、コレステロールを低下させるため、トリグリセリドを低下させるため、およびALTまたはASTを低下させるために動物に投与するための、医薬の調製における本発明の化合物の使用もまた、提供される。トリグリセリド、コレステロール、グルコース、HbA1cおよびALTまたはASTレベルは、診療所において通法で測定される。循環するトリグリセリドとしては、血中、血清中または血漿中トリグリセリドが挙げられる。グルコースとしては、血中、血清中または血漿中グルコースが挙げられる。コレステロールとしては、血中、血清中または血漿中コレステロールが挙げられる。ALTまたはASTとしては、血中、血清中または血漿中ALTまたはASTが挙げられる。
本発明の他の態様は、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ発現を阻害するオリゴマー化合物を投与することによって動物における症状の重症度を改善または軽減させる方法を含む。症状としては、代謝障害、心臓血管障害およびグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ発現に関連する障害が挙げられるが、これらに限定されない。代謝障害としては、肥満、食事誘導肥満、糖尿病、インスリン抵抗性、インスリン欠乏症、異脂肪血症、高脂血症、高コレステロール血症、高血糖症、高トリグリセリド血症、高脂肪酸血症、肝臓脂肪症およびメタボリックシンドロームが挙げられるが、これらに限定されない。心臓血管障害としては、冠状動脈性心疾患が挙げられるが、これに限定されない。本発明のオリゴマー化合物を投与することによって1つ以上の心臓血管系危険因子を改善させることによって動物における心臓血管系危険度プロフィールを改善させる方法もまた、提供される。ある側面において、本発明は、糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、インスリン欠乏症、高コレステロール血症、高血糖症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高脂肪酸血症、肝臓脂肪症、メタボリックシンドローム、心臓血管病または心臓血管危険因子からなる群より選択される状態を有する、または有する疑いのある動物を治療するための医薬の調製における化合物の使用を提供する。
付加的な治療効果を得るために他の治療剤と組み合わせて動物に投与するための医薬の調製における本発明のオリゴマー化合物の使用もまた、提供される。他の治療剤としては、グルコース低下薬、抗肥満薬および脂質低下薬が挙げられるが、これらに限定されない。ある態様において、オリゴマー化合物は、糖尿病の治療のためにグルコース低下薬と組み合わせて用いられる。ある態様において、糖尿病はII型糖尿病である。別の態様において、オリゴマー化合物は、グルコース低下薬と組み合わせて用いられ、ここで、グルコース低下薬はホルモン、ホルモン模倣剤、スルホニル尿素、ビグアナイド、メグリチニド、チアゾリジンジオン、アルファグルコシダーゼインヒビター、またはグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼを標的としないアンチセンス化合物である。ある態様において、オリゴマー化合物は、ロシグリタゾンと組み合わせて用いられる。ある態様において、オリゴマー化合物は、グルコース低下薬と組み合わせて用いられて、グルコースの低下に対する付加的な治療効果を得ることができる。別の態様において、オリゴマー化合物は、単独で、または組み合わせて用いられ、HbA1cレベルを低下させる。他の態様において、オリゴマー化合物は、グルコース低下薬と組み合わせて用いられ、血漿中トリグリセリド、血漿中コレステロールの低下において付加的な効果を得るか、または耐糖能が向上する。
別の態様において、本発明の化合物は、肝臓でのグルコース産生を阻害する。別の態様において、本発明の化合物は、グルカゴン刺激性の肝臓でのグルコース産生を阻害する。
ある態様において、本発明のオリゴマー化合物は、単独または組み合わせて用いられ、血漿中乳酸値の上昇、肝臓グリコーゲンの上昇、好中球減少または高血糖症を引き起こすことなく、グルコースを低下させる。
本発明に従って、本発明のオリゴマー化合物およびその相補物を含む、dsRNAを含む一連の二本鎖分子およびその模倣物を、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼを標的とするよう設計し得る。本発明のある態様において、二本鎖アンチセンス化合物は、低分子干渉RNA(siRNA)を包含する。ある非限定的な例において、siRNAの第一の鎖は、標的核酸に対してアンチセンスであり、一方、第二の鎖は、第一の鎖に相補的である。一旦アンチセンス鎖が特定の核酸標的を標的とするよう設計されると、siRNAのセンス鎖は、次いでアンチセンス鎖の相補体として設計および合成され得、どちらの鎖も、修飾または付加をそれぞれの末端に含み得る。例えば、ある態様において、siRNA二本鎖分子の両方の鎖は、中央の核酸塩基に相補的であり、それぞれは一方または両方の末端に突出を有する。二本鎖分子の一方の末端が平滑で、もう一方が突出核酸塩基を有することが可能である。ある態様において、突出核酸塩基の数は、二本鎖分子の各鎖の3'末端で1個から6個までである。別の態様において、突出核酸塩基の数は、二本鎖分子の一方だけの鎖の3'末端で1個から6個までである。さらなる態様において、突出核酸塩基の数は、二本鎖の一方または両方の5'末端で1個から6個までである。別の態様において、突出核酸塩基の数は、ゼロである。
本発明のある態様において、二本鎖アンチセンス化合物は、標準的なsiRNAである。
siRNA二本鎖分子の各鎖は、約13個から約80個までの核酸塩基、13〜80、13〜50、13〜30、13〜24、19〜23、20〜80、20〜50、20〜30、または20〜24個の核酸塩基であり得る。中央の相補部分は、長さ約8個から約80個までの核酸塩基、10〜50、13〜80、13〜50、13〜30、13〜24、19〜23、20〜80、20〜50、20〜30、または20〜24個の核酸塩基であり得る。末端部分は、1個から6個までの核酸塩基であり得る。siRNAはまた、末端部分を有さなくてもよい。siRNAの二本の鎖は、遊離した3'もしくは5'末端を残して内部で連結されるか、または連結されて連続したヘアピン構造もしくはループを形成し得る。ヘアピン構造は、一本鎖特性の伸長を生じる5'または3'末端のいずれかに突出を含み得る。
別の態様において、二本鎖アンチセンス化合物は、平滑末端のsiRNAである。siRNAは、標準的であれ平滑であれ、dsRNAアーゼ酵素を誘起し、RNAiアンチセンス機構の漸増または活性化を引き起こす作用をする。さらなる態様において、RNAiアンチセンス機構を介して作用する一本鎖RNAi(ssRNAi)化合物が企図される。
さらなる修飾が、二本鎖化合物に対してなされ得、一方の末端、選択された核酸塩基位置、糖位置、またはヌクレオシド間結合の一つに結合した、コンジュゲート群を含み得る。あるいは、二本の鎖は、非核酸位置またはリンカー基を介して連結され得る。一本の鎖のみから形成される場合、化合物は、二つに折りたたまれて二本鎖分子を形成する自己相補的ヘアピン型分子の形態をとり得る。このように、化合物は完全にまたは部分的に二本鎖であり得る。二本の鎖から形成される場合、または折りたたまれて二本鎖分子を形成する自己相補的ヘアピン型分子の形態をとる一本鎖から形成される場合、二本の鎖(または一本鎖の二本鎖分子形成領域)は、ワトソン・クリック様式で塩基対形成する場合に相補的である。
アンチセンス部分が、本発明のオリゴマー化合物(一本鎖または二本鎖のいずれでも、および少なくとも一本の鎖に関して)の範囲内に含まれる。「アンチセンス部分」は、アンチセンス機構によって機能するよう設計された、オリゴマー化合物の部分である。
ある態様において、本発明のオリゴマー化合物は、13〜80個の核酸塩基のアンチセンス部分を有する。当業者は、これが、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29 30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79または80個の核酸塩基のアンチセンス部分を有するオリゴマー化合物を包含することを理解するであろう。
ある態様において、本発明のオリゴマー化合物は、13〜50個の核酸塩基のアンチセンス部分を有する。当業者は、これが、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29 30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50個の核酸塩基のアンチセンス部分を有するオリゴマー化合物を包含することを理解するであろう。
ある態様において、本発明のオリゴマー化合物は、13〜30個の核酸塩基のアンチセンス部分を有する。当業者は、これが、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個の核酸塩基のアンチセンス部分を有するオリゴマー化合物を包含することを理解するであろう。
いくつかの態様において、本発明のオリゴマー化合物は、13〜24個の核酸塩基のアンチセンス部分を有する。当業者は、これが、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24個の核酸塩基のアンチセンス部分を有するオリゴマー化合物を包含することを理解するであろう。
ある態様において、本発明のオリゴマー化合物は、19〜23個の核酸塩基のアンチセンス部分を有する。当業者は、これが、19、20、21、22または23個の核酸塩基のアンチセンス部分を有するオリゴマー化合物を包含することを理解するであろう。
ある態様において、本発明のオリゴマー化合物は、20〜80個の核酸塩基のアンチセンス部分を有する。当業者は、これが、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29 30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79または80個の核酸塩基のアンチセンス部分を有するオリゴマー化合物を包含することを理解するであろう。
ある態様において、本発明のオリゴマー化合物は、20〜50個の核酸塩基のアンチセンス部分を有する。当業者は、これが、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29 30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49または50個の核酸塩基のアンチセンス部分を有するオリゴマー化合物を包含することを理解するであろう。
ある態様において、本発明のアンチセンス化合物は、20〜30個の核酸塩基のアンチセンス部分を有する。当業者は、これが、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個の核酸塩基のアンチセンス部分を有するオリゴマー化合物を包含することを理解するであろう。
ある態様において、本発明のアンチセンス化合物は、20〜24個の核酸塩基のアンチセンス部分を有する。当業者は、これが、20、21、22、23または24個の核酸塩基のアンチセンス部分を有するオリゴマー化合物を包含することを理解するであろう。
ある態様において、本発明のオリゴマー化合物は、20個の核酸塩基のアンチセンス部分を有する。
ある態様において、本発明のオリゴマー化合物は、19個の核酸塩基のアンチセンス部分を有する。
ある態様において、本発明のオリゴマー化合物は、18個の核酸塩基のアンチセンス部分を有する。
ある態様において、本発明のオリゴマー化合物は、17個の核酸塩基のアンチセンス部分を有する。
ある態様において、本発明のオリゴマー化合物は、16個の核酸塩基のアンチセンス部分を有する。
ある態様において、本発明のオリゴマー化合物は、15個の核酸塩基のアンチセンス部分を有する。
ある態様において、本発明のオリゴマー化合物は、14個の核酸塩基のアンチセンス部分を有する。
ある態様において、本発明のオリゴマー化合物は、13個の核酸塩基のアンチセンス部分を有する。
例示的なアンチセンス化合物の中から選択される少なくとも13個の連続した核酸塩基の範囲を含む長さ13〜80個の核酸塩基のオリゴマー化合物もまた、適切なアンチセンス化合物と考えられる。
本発明の化合物としては、例示したアンチセンス化合物の一つの5'末端から少なくとも13個の連続する核酸塩基を含むオリゴヌクレオチド配列(残りの核酸塩基は、標的核酸に特異的にハイブリダイズ可能なアンチセンス化合物の5'末端のすぐ上流から開始し、オリゴヌクレオチドが約13〜約80核酸塩基を含むまで連続する、同一のオリゴヌクレオチドの連続的な伸長である)が挙げられる。他の化合物は、例示したアンチセンス化合物の一つの3'末端から少なくとも8個の連続する核酸塩基を含むオリゴヌクレオチド配列(残りの核酸塩基は、標的核酸に特異的にハイブリダイズ可能なアンチセンス化合物の3'末端のすぐ下流から開始し、オリゴヌクレオチドが約13〜約80核酸塩基を含むまで連続する、同一のオリゴヌクレオチドの連続的な伸長である)により表される。化合物は、例示した化合物の配列の内部から少なくとも13個の連続した核酸塩基を含むオリゴヌクレオチド配列により表され得、かつオリゴヌクレオチドが約13〜約80核酸塩基を含むまで、片方向または両方向に伸長し得ることもまた理解される。
本明細書中で例示されたアンチセンス化合物の経験を積んだ当業者は、過度の実験を行うことなく、さらなるアンチセンス化合物を同定し得るであろう。
表現型アッセイ
一旦、本明細書中で開示された方法によりグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのモジュレーター化合物が同定されると、該化合物は、それぞれが特定の疾患状態または症状の治療の効率を予測する測定可能な評価項目を有する1つ以上の表現型アッセイでさらに研究され得る。表現型アッセイ、それらの使用のためのキットおよび試薬は当業者に周知であり、健康および疾患におけるグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの役割および/または関連を研究するために本明細書中で用いられる。いくつかの商業用の供給業者のいずれか1つから購入できる代表的な表現型アッセイとしては、細胞生存率、細胞毒性、増殖または細胞生存を測定するもの(Molecular Probes, Eugene, OR; PerkinElmer, Boston, MA)、酵素アッセイを含むタンパク質ベースのアッセイ(Panvera, LLC, Madison, WI ; BD Biosciences, Franklin Lakes, NJ ; Oncogene Research Products, San Diego, CA)、細胞調節、シグナル伝達、炎症、酸化プロセスおよびアポトーシス(Assay Designs Inc., Ann Arbor, MI)、トリグリセリド蓄積(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)、血管新生アッセイ、管形成アッセイ、サイトカインおよびホルモンアッセイならびに代謝アッセイ(Chemicon International Inc., Temecula, CA; Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)が挙げられる。
表現型評価項目としては、時間または処理用量に対する細胞形態の変化、ならびにタンパク質、脂質、核酸、ホルモン、糖類または金属のような細胞成分のレベルの変化が挙げられる。また、pH、細胞周期の段階、細胞による生物学的指標の摂取または排出を含む細胞状態の測定も目的の評価項目である。
また、処理後に細胞の1つ以上の遺伝子の発現の測定もグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼモジュレーターの効率または効力の指標として用いられる。特徴的(Hallmark)遺伝子、または特定の疾患状態、症状または表現型に関連することが疑われる遺伝子が、処理および未処理細胞の両方で測定される。
キット、研究試薬、診断および治療
本発明のオリゴマー化合物は、診断、治療、予防のため、ならびに研究試薬およびキットとして利用され得る。さらに、特異的に遺伝子発現を阻害し得るアンチセンス化合物は、特定の遺伝子の機能を解明するため、または生物学的経路の種々のメンバーの機能環の識別をするためしばしば当業者に用いられる。
キットおよび診断の使用のために、本発明のオリゴマー化合物は単独で、または他の化合物もしくは治療薬と組み合わせて、細胞および組織内で発現された遺伝子の一部または全体の相補体の発現パターンを解明するために個々の解析および/または組合せの解析のツールとして用いられ得る。
一つの限定されない例として、一つ以上の本発明の化合物または組成物で処理された細胞または組織内の発現パターンは化合物で処理されていない対照細胞または組織と比較され、生成されたパターンは、例えば検査された遺伝子の、疾患との関わり、シグナル経路、細胞局在、発現レベル、大きさ、構造または機能と関連する遺伝子発現の個々のレベルについて解析される。刺激されたかまたは刺激されていない細胞について、および発現パターンに影響を及ぼす他の化合物の存在下または非存在下で、かかる解析がなされ得る。
当該分野で公知の遺伝子発現解析の方法の例としては、DNAアレイまたはマイクロアレイ(BrazmaおよびVilo, FEBS Lett., 2000, 480, 17-24; Celisら, FEBS Lett., 2000, 480, 2-16)、SAGE(遺伝子発現の連続解析)(Maddenら, Drug Discov. Today, 2000, 5, 415-425)、READS(消化cDNAの制限酵素増幅)(PrasharおよびWeissman, Methods Enzymol., 1999, 303, 258-72)、TOGA(総合的遺伝子発現解析)(Sutcliffeら, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 2000, 97, 1976-81)、プロテインアレイおよびプロテオミクス(Celisら, FEBS Lett., 2000, 480, 2-16; Jungblutら, Electrophoresis, 1999, 20, 2100-10)、発現配列タグ(EST)配列決定法(Celisら, FEBS Lett., 2000, 480, 2-16; Larssonら, J. Biotechnol., 2000, 80, 143-57)、サブトラクティブRNAフィンガープリント(SuRF)(Fuchsら, Anal. Biochem., 2000, 286, 91-98; Larsonら, Cytometry, 2000, 41, 203-208)、サブトラクティブクローニング、ディファレンシャルディスプレイ(DD)(JurecicおよびBelmont, Curr. Opin. Microbiol., 2000, 3, 316-21)、比較ゲノムハイブリダイゼーション(Carulliら, J. Cell Biochem. Suppl., 1998, 31, 286-96)、FISH(蛍光インサイチュハイブリダイゼーション)技術(GoingおよびGusterson, Eur. J. Cancer, 1999, 35, 1895-904)ならびに質量分析法(To, Comb. Chem. High Throughput Screen, 2000, 3, 235-41)が挙げられる。
本発明の化合物を用いて、ヒト等の動物におけるグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの発現を調節し得る。ある非限定的な態様において、この方法は、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの発現を阻害する有効量のアンチセンス化合物を該動物に投与する工程を含む。ある態様において、本発明のアンチセンス化合物は、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼRNAのレベルまたは機能を効果的に阻害する。グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼmRNAレベルの減少は、発現のグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼタンパク質産物の変化ももたらし得るので、かかる結果として生じる変化もまた測定され得る。グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼRNAまたは発現のタンパク質産物のレベルまたは機能を効果的に阻害する本発明のアンチセンス化合物は、活性のあるアンチセンス化合物と考えられる。ある態様において、本発明のアンチセンス化合物は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%のRNAの減少を引き起こして、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの発現を阻害する。
例えば、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの発現の減少は、動物の体液、組織または器官中で測定され得る。体液としては、血液(血清または血漿)、リンパ液、脳脊髄液、精液、尿、滑液および唾液が挙げられるが、これらに限定されず、当業者にとって通例の方法によって得ることができる。組織または器官としては、血液(例えば、ヒト造血前駆細胞、ヒト造血幹細胞、CD34+細胞等の造血細胞、CD4+細胞)、リンパ球および他の血液系細胞、皮膚、骨髄、脾臓、胸腺、リンパ節、脳、脊髄、心臓、骨格筋、肝臓、膵臓、前立腺、腎臓、肺、口腔粘膜、食道、胃、腸骨、小腸、結腸、膀胱、子宮頚、卵巣、精巣、乳腺、副腎および脂肪(白色脂肪および褐色脂肪)が挙げられるが、これらに限定されない。組織または器官の試料は、生検によって通法により得ることができる。いくつかの代替的な状況において、組織または器官の試料は、死後に動物から回収され得る。
解析される該体液、組織または器官に含まれる細胞は、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼタンパク質をコードする核酸分子および/またはグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼにコードされるタンパク質自体を含み得る。例えば、動物から獲得される体液、組織または器官は、標的mRNAまたはタンパク質の発現レベルについて評価され得る。mRNAレベルは、リアルタイムPCR、ノザンブロット、インサイチューハイブリダイゼーションまたはDNAアレイ解析によって測定または評価され得る。タンパク質レベルは、ELISA、免疫ブロット法、定量的タンパク質アッセイ、タンパク質活性アッセイ(例えば、カスパーゼ活性アッセイ)免疫組織化学または免疫細胞化学によって測定または評価され得る。さらに、治療の効果は、当該分野で公知の通常の臨床的方法によって、1つ以上の本発明の化合物に接触させた動物から回収された、前述の体液、組織または器官における標的遺伝子発現に関連する生物マーカーを測定することによって評価され得る。これらの生物マーカーとしては、グルコース、コレステロール、リポタンパク質、トリグリセリド、遊離脂肪酸、ならびにグルコースおよび脂質代謝の他のマーカー;肝臓トランスアミナーゼ、ビリルビン、アルブミン、血液尿素窒素、クレアチン、ならびに腎機能および肝機能の他のマーカー;インターロイキン、腫瘍壊死因子、細胞間接着因子、C反応性タンパク質および他の炎症のマーカー;テストステロン、エストロゲンおよび他のホルモン;腫瘍マーカー;ビタミン、無機物および電解質が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の化合物は、適切な薬学的に許容され得る希釈剤または担体に有効量の化合物を加えることによって、医薬組成物において利用され得る。ある側面において、本発明の化合物は、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの発現を選択的に阻害する。本発明の化合物はまた、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ発現に関連する疾患および障害の治療のための医薬の製造において使用され得る。
体液、器官または組織を有効量の1つ以上の本発明のアンチセンス化合物または組成物に接触させる方法もまた、企図される。体液、器官または組織を、1つ以上の本発明の化合物と接触させて、体液、器官または組織の細胞におけるグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ発現の調節を生じ得る。有効量は、標的核酸またはその産物に対する1つもしくは複数のアンチセンス化合物または組成物の調節効果を、当業者にとって通例の方法でモニタリングすることによって決定され得る。当業者にとって通例の方法によって、細胞または組織を被験体から単離し、有効量の1つもしくは複数のアンチセンス化合物または組成物と接触させ、被験体に再び導入するエクスビボの治療方法が、さらに企図される。
ある態様において、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ発現または過剰発現を阻害するための医薬の製造における、単離された二本鎖RNAオリゴヌクレオチドの化合物の使用が提供される。このように、上述した方法による、疾患または障害の治療のための医薬の製造における、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼを標的とする、単離された二本鎖RNAオリゴヌクレオチドの使用が、本明細書中に提供される。
定義
「アンチセンス機構」は、標的核酸との化合物のハイブリダイゼーションを含む全てのものであり、ここで、ハイブリダイゼーションの結果または効果は、例えば転写またはスプライシングを含む細胞機械の失速を伴った、標的分解または標的占有のいずれかである。
標的
本明細書中で使用される場合、「標的核酸」および「グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼをコードする核酸分子」は、便宜上、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼをコードするDNA、かかるDNAから転写されるRNA(mRNA前駆体およびmRNAまたはそれらの一部分を含む)、およびかかるRNAに由来するcDNAも包含するよう用いられている。
領域、セグメント、および部位
ターゲッティングプロセス(targeting process)はまた、所望の効果、例えば、発現の調節が生じるように、アンチセンス相互作用が起こるための標的核酸内の少なくとも一つの標的領域、セグメントまたは部位を決定することを通常含む。「領域」とは、少なくとも一つの同定可能な構造、機能または特性を有する標的核酸の部分として定義される。標的核酸の領域内に、セグメントがある。「セグメント」とは、標的核酸内の領域のより小さな、または下位の部分(sub-portions)として定義される。本発明で用いられる場合、「部位」は標的核酸内の独特の核酸塩基の位置として定義される。
一度、一つ以上の標的領域、標的セグメント、または標的部位が同定されると、標的に対して十分に相補的である、すなわち十分にうまく、かつ十分な特異性でバイブリダイズするオリゴマー化合物が明示され、所望の効果を生じる。
当該技術分野で公知のように、翻訳開始コドンは、典型的には5'AUG(転写されたmRNA分子内、対応するDNA分子内の5'ATG)であるので、翻訳開始コドンはまた「AUGコドン」、「開始コドン」または「AUG開始コドン」とも呼ばれる。遺伝子の少数は、RNA配列5'GUG、5'UUGまたは5'CUG、ならびに5'AUA、5'ACGおよび5'CUGを有する翻訳開始コドンを有し、インビボで機能することが示されている。従って、用語「翻訳開始コドン」および「開始コドン」は、それぞれの場合における開始アミノ酸が典型的にメチオニン(真核生物において)またはホルミルメチオニン(原核生物において)であるが、多くのコドン配列を包含し得る。真核生物遺伝子および原核生物遺伝子が2つ以上の代替の開始コドンを有し得、そのいずれか一つが、特定の細胞型もしくは組織で、または特定の組の条件下で、翻訳開始のために選択的に利用され得ることもまた当該技術分野で公知である。「開始コドン」および「翻訳開始コドン」は、かかるコドンの配列にかかわらず、タンパク質をコードする遺伝子から転写されたmRNAの翻訳を開始するためにインビボで用いられる単数のコドンまたは複数のコドンをいう。遺伝子の翻訳終止コドン(すなわち「停止コドン」)は、3つの配列、すなわち5'UAA、5'UAGおよび5'UGA(対応するDNA配列は、それぞれ5'TAA、5'TAGおよび5'TGAである)のうちの一つを有し得ることもまた当該技術分野で公知である。
用語「開始コドン領域」および「翻訳開始コドン領域」は、約25〜約50の連続するヌクレオチドを、翻訳開始コドンからのいずれかの方向(すなわち、5'または3')に含む、mRNAまたは遺伝子の一部分をいう。同様に、用語「停止コドン領域」および「翻訳終止コドン領域」は、約25〜約50の連続するヌクレオチドを、翻訳終止コドンからのいずれかの方向(すなわち、5'または3')に含む、mRNAまたは遺伝子の一部分をいう。結果として、「開始コドン領域」(または「翻訳開始コドン領域」)および「停止コドン領域」(または「翻訳終止コドン領域」)は、本発明のオリゴマー化合物で効果的に標的化され得る全ての領域である。
翻訳開始コドンと翻訳終止コドンとの間の領域をいうことが当該技術分野で公知であるオープンリーディングフレーム(ORF)すなわち「コード領域」もまた、効果的に標的化され得る領域である。本発明の文脈において、一つの領域は、遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)の翻訳開始コドンまたは終止コドンを包含する遺伝子内領域である。
他の標的領域は、翻訳開始コドンから5'方向のmRNAの部分をいうことが当該技術分野で公知であり、従ってmRNAの5'キャップ部位と翻訳開始コドンとの間のヌクレオチド(または遺伝子上の対応するヌクレオチド)を含む「5'非翻訳領域」(5'UTR、および翻訳終止コドンから3'方向のmRNAの部分をいうことが当該技術分野で公知であり、従ってmRNAの翻訳終止コドンと3'末端との間のヌクレオチド(または遺伝子上の対応するヌクレオチド)を含む「3'非翻訳領域」(3'UTR)を含む。mRNAの「5'キャップ部位」は、5'-5'三リン酸(triphosphate)結合を介してmRNAの5'最末端残基に結合したN7-メチル化グアノシン残基を含む。mRNAの5'キャップ領域は、5'キャップ構造それ自体ならびにキャップ部位に隣接する始めの50個のヌクレオチドを含むと考えられている。5'キャップ領域もまた標的である。
いくつかの真核生物mRNA転写物は直接翻訳されるが、多くのものは、翻訳される前に転写物から切除される「イントロン」として知られる一つ以上の領域を含む。残りの(したがって翻訳される)領域は、「エクソン」として知られ、共にスプライシングされて連続的mRNA配列を形成し、エクソンが結合される部位でエクソンエクソン連結部を生じる。標的エクソンエクソン連結部は、異常なレベルの正常なスプライス産物が疾患に関係する状況、または異常なレベルの異常なスプライス産物が疾患に関係する状況において有用であり得る。標的スプライス部位、すなわち、イントロン-エクソン連結部またはエクソンイントロン連結部はまた、異常なスプライシングが疾患に関係する状況で、または特定のスプライス産物の過産生が疾患に関係する状況で特に有用であり得る。再配列または欠失による異常な融合連結部もまた好適な標的である。異なる遺伝子源からの2つの(またはそれ以上の)mRNAのスプライシングの過程によって生じたmRNA転写物は、「融合転写物」として公知であり、また好適な標的である。イントロンは、例えば、DNAまたはmRNA前駆体(pre-mRNA)を標的とするアンチセンス化合物を用いて効果的に標的化され得ることもまた知られている。RNアーゼ H機構によって作用するオリゴヌクレオチド化合物などの一本鎖アンチセンス化合物は、mRNA前駆体の標的化に効果的である。占有に基づく機構により機能するアンチセンス化合物は、例えばmRNAのRNアーゼ H切断を誘発するのではなく、mRNAが損なわれないようにし、所望のスプライス産物の産生を促進するため、スプライシングの方向を変えること(redirecting)に効果的である。
バリアント
選択的(alternative)RNA転写物が、DNAの同じゲノム領域から生じ得ることもまた当該技術分野で公知である。これらの選択的転写物は、一般的に「バリアント」として知られる。より具体的には、「mRNA前駆体バリアント」は、その開始位置または停止位置のいずれかにおいて、同じゲノムDNAから生じた他の転写物とは異なる、同じゲノムDNAから生じる転写物であり、イントロン配列およびエクソン配列の両方を含む。
スプライシングの際の、一つ以上のエクソン領域もしくはイントロン領域、またはそれらの部分の切除時に、mRNA前駆体バリアントは、より小さい「mRNAバリアント」を生じる。したがって、mRNAバリアントは、加工されたmRNA前駆体バリアントであり、スプライシングの結果として、各独特のmRNA前駆体バリアントは常に、独特のmRNAバリアントを生じるはずである。これらのmRNAバリアントはまた、「選択的スプライスバリアント」としても知られる。mRNA前駆体バリアントのスプライシングが起こらない場合、mRNA前駆体バリアントは、mRNAバリアントと同一である。
バリアントは転写を開始または停止するための選択的(alternative)シグナルの使用により生じ得ること、ならびにmRNA前駆体およびmRNAは一つ以上の(more that one)開始コドンまたは停止コドンを有し得ることが当該技術分野で公知である。選択的開始コドンを用いるmRNA前駆体またはmRNAから生じるバリアントは、当該mRNA前駆体またはmRNAの「選択的開始バリアント」として公知である。選択的停止コドンを用いるこれらの転写物は、当該mRNA前駆体またはmRNAの「選択的停止バリアント」として公知である。選択的停止バリアントの一つの特異(specific)型は、多数の産生された転写物が、転写機構(machinery)による「ポリA停止シグナル」の一つのいずれかを選ぶ選択の結果として生じ、それによって独特のポリA部位で終止する転写物を生じる、「ポリAバリアント」である。したがって、本明細書中に記載される種類のバリアントもまた好適な標的核酸である。
好適な標的セグメント
本発明のオリゴマー化合物は、表1に記載される特徴などの、標的核酸塩基配列の特徴を標的とされ得る。オリゴマー化合物が標的化し得る核酸塩基配列のすべての領域は、次のように記載され、ここで領域は13個以上、かつ80個以下の核酸塩基である。
R(n, n+m-1)を、標的核酸塩基配列由来の領域とし、ここで、「n」は該領域の5'最末端核酸塩基の位置であり、「n+m-1」は該領域の3'最末端核酸塩基の位置であり、「m」は該領域の長さである。長さ「m」の領域の集合「S(m)」は、nが1からL-m+1の範囲の領域と定義され、ここで、Lは標的核酸塩基配列の長さであり、L>mである。全領域の集合「A」は、mが13以上、かつ80以下である場合の各長さの領域の和集合として構築することができる。
この領域の集合は、以下の数学的表記法を用いて表すことができる。
および
式中、数学的演算子|は「そのような」を示し、
式中、数学的演算子∈は「集合の一員」を示し(例えば、y∈Zは、要素yが集合Zの一員であることを示す)、
式中、xは変数であり、
式中、Nは、正の整数と定義される全ての自然数を示し、
かつ、式中、数学的演算子
は「和集合」を示す。
例えば、mが13、20および80に等しい領域の集合は、以下の様式で構築することができる。標的核酸塩基配列の位置1(n=1)から開始する、100核酸塩基長(L=100)の標的核酸塩基配列におけるそれぞれ13核酸塩基長の領域の集合、S(m=13)は、次の式:
S(13)={R1,13|n∈{1,2,3,...,88}}
を用いてつくりだすことができ、核酸塩基1〜13、2〜14、3〜15、4〜16、5〜17、6〜18、7〜19、8〜20、9〜21、10〜22、11〜23、12〜24、13〜25、14〜26、15〜27、16〜28、17〜29、18〜30、19〜31、20〜32、21〜33、22〜34、23〜35、24〜36、25〜37、26〜38、27〜39、28〜40、29〜41、30〜42、31〜43、32〜44、33〜45、34〜46、35〜47、36〜48、37〜49、38〜50、39〜51、40〜52、41〜53、42〜54、43〜55、44〜56、45〜57、46〜58、47〜59、48〜60、49〜61、50〜62、51〜63、52〜64、53〜65、54〜66、55〜67、56〜68、57〜69、58〜70、59〜71、60〜72、61〜73、62〜74、63〜75、64〜76、65〜77、66〜78、67〜79、68〜80、69〜81、70〜82、71〜83、72〜84、73〜85、74〜86、75〜87、76〜88、77〜89、78〜90、79〜91、80〜92、81〜93、82〜94、83〜95、84〜96、85〜97、86〜98、87〜99、88〜100を含む領域の集合を表す。
標的核酸塩基配列の位置1から開始する、100核酸塩基長の標的配列における20核酸塩基長の領域についてのさらなる集合は、次の式:
S(20)={R1,20|n∈{1,2,3,...,81}}
を用いて表すことができ、核酸塩基1〜20、2〜21、3〜22、4〜23、5〜24、6〜25、7〜26、8〜27、9〜28、10〜29、11〜30、12〜31、13〜32、14〜33、15〜34、16〜35、17〜36、18〜37、19〜38、20〜39、21〜40、22〜41、23〜42、24〜43、25〜44、26〜45、27〜46、28〜47、29〜48、30〜49、31〜50、32〜51、33〜52、34〜53、35〜54、36〜55、37〜56、38〜57、39〜58、40〜59、41〜60、42〜61、43〜62、44〜63、45〜64、46〜65、47〜66、48〜67、49〜68、50〜69、51〜70、52〜71、53〜72、54〜73、55〜74、56〜75、57〜76、58〜77、59〜78、60〜79、61〜80、62〜81、63〜82、64〜83、65〜84、66〜85、67〜86、68〜87、69〜88、70〜89、71〜90、72〜91、73〜92、74〜93、75〜94、76〜95、77〜96、78〜97、79〜98、80〜99、81〜100を含む領域の集合を表す。
標的核酸塩基配列の位置1から開始する、100核酸塩基長の標的配列における80核酸塩基長の領域についてのさらなる集合は、次の式:
S(80)={R1,80|n∈{1,2,3,...,21}}
を用いて表すことができ、核酸塩基1〜80、2〜81、3〜82、4〜83、5〜84、6〜85、7〜86、8〜87、9〜88、10〜89、11〜90、12〜91、13〜92、14〜93、15〜94、16〜95、17〜96、18〜97、19〜98、20〜99、21〜100を含む領域の集合を表す。
従って、この例では、Aは、領域1〜13、2〜14、3〜15...88〜100、1〜20、2〜21、3〜22...81〜100、1〜80、2〜81、3〜82...21〜100を含むであろう。
これらの上述の例の和集合ならびに10〜19および21〜79の長さについての他の和集合は、数式
を用いて表すことができ、
式中、
は、全ての集合の全ての構成員を合わせることにより得られる和集合を表す。
本明細書中に記載される数式は、任意の長さLの標的核酸塩基配列中の全ての可能な標的領域を定義し、式中、領域は長さがmであり、mは13以上80以下の核酸塩基であり、mはLより小さく、かつnはL-m+1より小さい。
有効な(Validated)標的セグメント
標的セグメントは、有効な標的セグメントの5'末端から少なくとも13個の連続する核酸塩基を含むDNA配列またはRNA配列を含み得る(残りの核酸塩基は、標的セグメントの5'末端のすぐ上流から始まる同じDNAまたはRNAの連続的な一続きであり、DNAまたはRNAが約13個から約80個の核酸塩基を含有するまで続く)。同様に、有効な標的セグメントは、有効な標的セグメントの3'末端から少なくとも13個の連続する核酸塩基を含むDNA配列またはRNA配列によって表される(残りの核酸塩基は、標的セグメントの3'末端のすぐ下流から始まる同じDNAまたはRNAの連続的な一続きであり、DNAまたはRNAが約13個から約80個の核酸塩基を含有するまで続く)。有効なオリゴマー標的セグメントは、有効な標的セグメントの配列の内部の一部分から少なくとも13個の連続する核酸塩基を含むDNA配列またはRNA配列によって表され得、オリゴヌクレオチドが約13個から約80個(about 13 about 80)の核酸塩基を含有するまでいずれかの方向または両方向に伸張し得ることもまた理解される。
本発明において同定された有効な標的セグメントは、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの発現を調節するさらなる化合物のための選別において用いられ得る。スクリーニング方法は、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼをコードする核酸分子の有効な標的セグメントを1つ以上の候補調節剤と接触させる工程、およびグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼをコードする核酸分子の発現を乱す1つ以上の候補調節剤を選択する工程を含む。候補調節剤、または諸候補調節剤がグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼをコードする核酸分子の発現を調節し得ることが一度示されると、該調節剤は次いでグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの機能のさらなる調査研究において、または研究用薬剤、診断用薬剤、もしくは治療剤としての使用のために用いられ得る。有効な標的セグメントはまた、本明細書中に開示されるような第二の鎖と結合し、研究用薬剤、診断用薬剤、または治療剤としての使用のための安定化された二本鎖(二重鎖)オリゴヌクレオチドを形成し得る。
標的発現の調節
「調節」は、機能を乱すこと、例えば発現における増加(刺激もしくは誘発)、または低下(阻害もしくは減少)のいずれかを意味する。別の例として、発現の調節は、mRNA前駆体プロセシングのスプライス部位選択を乱すことを含み得る。「発現」は、それにより、遺伝子のコードされた情報が、細胞内で存在し機能する構造体に変換される、すべての機能を含む。かかる構造体としては、転写および翻訳の産物が挙げられる。「発現の調節」は、かかる機能を乱すことを意味する。「調節剤」はグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの発現を調節する化合物であり、これは有効な標的セグメントに対して相補的である少なくとも13個の核酸塩基の部分を含む。
標的核酸の発現の調節は、任意の数の核酸(DNAまたはRNA)の機能の改変によって達成され得る。調節されるDNAの機能は、複製および転写を含み得る。複製および転写は、例えば内因性細胞の鋳型、ベクター、プラスミドコンストラクト、または他のものからもたらされ得る。調節されるRNAの機能は、転移機能を含み得、転移機能としては、限定されないが、タンパク質翻訳部位へのRNAの転移、RNA合成の部位から遠い細胞の中の部位へのRNAの転移、およびRNAからのタンパク質の翻訳が挙げられる。調節され得るRNAプロセシング機能としては、限定されないが、1つ以上のRNAの種を生じるRNAのスプライシング、RNAのキャップ形成、RNAの3'成熟、およびRNAに関与し得る、またはRNAによって促進され得る、RNAにかかわる触媒活性または複合体形成が挙げられる。発現の調節は、一時的、または最終的に定常な濃度のいずれかにより(either temporally or by net steady state level)、1つ以上の核酸の種の濃度増加、または1つ以上の核酸の種の濃度減少をもたらし得る。標的核酸機能についてのかかる干渉の一つの結果は、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの発現の調節である。したがって、一態様において、発現の調節は、標的RNA濃度、すなわち標的タンパク質濃度の増加または減少を意味し得る。別の態様において、発現の調節は、1つ以上のRNAスプライス産物の増大もしくは減少、または2つ以上のスプライス産物の比における変化を意味し得る。
ハイブリダイゼーションおよび相補性
「ハイブリダイゼーション」は、オリゴマー化合物の相補鎖の対形成を意味する。特定の機構に限定されないが、対形成の最も一般的な機構としては、水素結合が挙げられ、これはオリゴマー化合物の鎖の相補ヌクレオシドまたはヌクレオチド塩基(核酸塩基)の間のWatson-Crick、Hoogsteenまたは逆(reversed)Hoogsteen水素結合であり得る。例えば、アデニンおよびチミンは水素結合の形成により対を形成する相補的核酸塩基である。ハイブリダイゼーションは種々の環境下で起こり得る。オリゴマー化合物は、特異的結合が望まれる条件下、すなわちインビボアッセイまたは治療的処置の場合の生理学的条件下、およびインビトロアッセイの場合のアッセイが行われる条件下で、非標的核酸配列に対するオリゴマー化合物の非特異的結合を避けるのに十分な程度の相補性が存在する場合に、特異的にハイブリダイズし得る。
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」または「ストリンジェントな条件」は、オリゴマー化合物がその標的配列にハイブリダイズするが、最小の数の他の配列にハイブリダイズする条件をいう。ストリンジェントな条件は、配列依存的であり、種々の環境において異なり、オリゴマー化合物が標的配列にハイブリダイズする「ストリンジェントな条件」は、オリゴマー化合物の性質および組成、ならびにオリゴマー化合物が研究されているアッセイによって決定される。
本明細書中で用いられる場合、「相補性」は、1つまたは2つのオリゴマー化合物鎖の2つの核酸塩基の間の正確な対形成についての能力をいう。例えば、アンチセンス化合物のある位置における核酸塩基が、標的核酸のある位置における核酸塩基と水素結合し得る場合、オリゴヌクレオチドと標的核酸との間の水素結合の位置が相補的位置であると考えられる。オリゴマー化合物、およびさらなるDNA、またはRNAは、各分子中の十分な数の相補的位置が、互いに水素結合し得る核酸塩基に占有される場合、互いに相補的である。従って、「特異的にハイブリダイズし得る」および「相補的」は、オリゴマー化合物と標的核酸との間で安定かつ特異的な結合が生じるような、十分な数の核酸塩基にわたる十分な程度の正確な対形成または相補性を示すのに用いられる用語である。
オリゴマー化合物の配列は、特異的にハイブリダイズし得るオリゴマー化合物の標的核酸の配列に100%相補的である必要はないことが当該技術分野で理解されている。さらに、オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション事象に関与しない、介在するまたは近接するセグメントのような、一つ以上のセグメント(例えば、ループ構造、ミスマッチ、またはヘアピン構造)にわたってハイブリダイズし得る。本発明のオリゴマー化合物は、それらが標的とする標的核酸配列内の標的領域に対して、少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも92%、または少なくとも95%、または少なくとも97%、または少なくとも98%、または少なくとも99%の配列相補性を含む。例えば、アンチセンス化合物の20個の核酸塩基のうち18個の核酸塩基が標的領域に対して相補的であり、その結果特異的にハイブリダイズし得るオリゴマー化合物は、90パーセントの相補性を示し得る。この例において、残りの非相補的核酸塩基は、クラスター化され得るかまたは相補的核酸塩基によって散在し得、互いにまたは相補的核酸塩基に対して接触している必要はない。従って、標的核酸と完全に相補的な2つの領域の側面に位置する、4(四)つの非相補的核酸塩基を有する18核酸塩基長のオリゴマー化合物は、標的核酸と77.8%の総合的な相補性を有し得、したがって本発明の範囲内に入るであろう。標的核酸のある領域とオリゴマー化合物との相補性百分率は、当該技術分野で公知のBLASTプログラム(基本的な局所配列検索ツール)およびPowerBLASTプログラムを用いて常套的に測定することができる(Altschulら, J. Mol. Biol., 1990, 215, 403〜410; ZhangおよびMadden, Genome Res., 1997, 7, 649〜656)。相同性百分率、配列同一性、または相補性は、例えば、Gapプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, Madison WI)により、SmithおよびWatermanのアルゴリズム(Adv. Appl. Math., 1981, 2, 482〜489)を用いる初期設定を用いて、測定され得る。
オリゴマー化合物
用語「オリゴマー化合物」は、核酸分子のある領域にハイブリダイズし得る高分子構造体をいう。この用語は、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、オリゴヌクレオチドアナログ、オリゴヌクレオチド模倣剤、およびこれらのキメラの組み合わせを含む。オリゴマー化合物は、通常は線状に調製されるが、結合され得、または別の方法で調製され環状となり得る。さらに、分枝構造が当該技術分野で公知である。「アンチセンス化合物」または「アンチセンスオリゴマー化合物」は、ハイブリダイズし、発現を調節する(増大するまたは減少する)核酸分子の領域に対して少なくとも部分的に相補的であるオリゴマー化合物をいう。したがって、すべてのアンチセンス化合物がオリゴマー化合物であると言うことはできるが、すべてのオリゴマー化合物がアンチセンス化合物であるわけではない。「アンチセンスオリゴヌクレオチド」は、核酸を基礎とした(nucleic acid-based)オリゴマーであるアンチセンス化合物である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、化学的に修飾され得る。オリゴマー化合物の限定されない例としては、プライマー、プローブ、アンチセンス化合物、アンチセンスオリゴヌクレオチド、外部ガイド配列(EGS)オリゴヌクレオチド、選択的(alternate)スプライサー、およびsiRNAが挙げられる。したがって、これらの化合物は、一本鎖、二本鎖、環状、分枝、またはヘアピンの形状で導入され得、内部または末端のふくらみまたはループなどの構造要素を含み得る。オリゴマー二本鎖化合物は、ハイブリダイズされて二本鎖化合物を形成した二本鎖であり得るか、またはハイブリダイゼーション、および完全な、または部分的な二本鎖化合物の形成を可能にするのに十分な自己相補性を有する一本鎖であり得る。
本明細書中で用いられる場合、用語「siRNA」は、第一および第二の鎖を有し、前記第一および第二の鎖の間の中央の相補的な部分、ならびに前記第一および第二の鎖の間の、または標的mRNAに対する、任意に相補的な末端部分を含む(comprises)二本鎖化合物と定義される。鎖の両端は、1つ以上の天然の、または修飾された核酸塩基の付加によって修飾され得、突出部を形成する。
本明細書中で用いられる場合、用語「標準(canonical)siRNA」は、第一の鎖および第二の鎖を有し、各鎖が21核酸塩基長であり、両鎖が19個を越える核酸塩基にわたって相補的であり、3'突出部としてはたらく二本鎖化合物の中のデオキシチミジン二量体(dTdT)を各鎖の各3'末端に有する、二本鎖オリゴマー化合物と定義される。
本明細書中で用いられる場合、用語「平滑末端(blunt-ended)siRNA」は、末端突出部を有さないsiRNAと定義される。すなわち、二本鎖化合物の少なくとも1つの末端が平滑である。
「キメラ」オリゴマー化合物、または「キメラ」は、本発明の関係においては、オリゴヌクレオチドなどの一本鎖または二本鎖オリゴマー化合物であり、これは、2つ以上の化学的に異なる領域を含み、各々は少なくとも一つの単量体単位、すなわちオリゴヌクレオチド化合物の場合におけるヌクレオチドを含む。
「ギャップマー(gapmer)」は、非デオキシオリゴヌクレオチドセグメントが側面に位置する、2'-デオキシオリゴヌクレオチド領域を有する、オリゴマー化合物、一般にはオリゴヌクレオチドと定義される。中央の領域は「ギャップ(gap)」と称される。側面に位置するセグメントは「ウイング」と称される。ウイングの1つが0個の非デオキシオリゴヌクレオチドモノマーを有する場合、「ヘミマー(hemimer)」が説明される。
化学修飾
修飾されたヌクレオシド間結合
当該技術分野で公知のように、ヌクレオシドは塩基-糖の組み合わせである。ヌクレオシドの塩基部分は、通常は複素環式塩基(「核酸塩基」または単に「塩基」と称されることもある)である。かかる複素環式塩基の2つの最も一般的な種類はプリン類、およびピリミジン類である。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合したリン酸基をさらに含むヌクレオシドである。ペントフラノース糖を含むヌクレオシドについては、リン酸基が、該糖の2’、3’、または5’ヒドロキシル部分に結合され得る。オリゴヌクレオチドの形成においては、リン酸基は、隣接するヌクレオシドを互いに共有結合させ、線状高分子化合物を形成する。次に、この線状高分子化合物の各末端がさらに結合し、環状化合物を形成し得る。また、線状化合物は、内部核酸塩基の相補性を有し得るため、完全に、または部分的に、二本鎖化合物を生じるように、折りたたまれ得る。オリゴヌクレオチド内において、リン酸基は、オリゴヌクレオチドのヌクレオシド間主鎖を形成するものと一般に称されている。RNAおよびDNAの通常の結合、すなわち主鎖は、3’から5’へのホスホジエステル結合である。
本明細書中で定義される場合、修飾されたヌクレオシド間結合を有するオリゴヌクレオチドは、リン原子を保持するヌクレオシド間結合、およびリン原子を有しないヌクレオシド間結合を含む。本明細書の目的のために、かつ当該技術分野で時々引用されるように、ヌクレオシド間主鎖にリン原子を有さない修飾されたオリゴヌクレオチドもまた、オリゴヌクレオシドであるとみなされ得る。
本発明のオリゴマー化合物の具体的な例としては、修飾された、例えば天然に存在しないヌクレオシド間結合を含有する、オリゴヌクレオチドが挙げられる。オリゴマー化合物は、1つ以上の修飾されたヌクレオシド間結合を有し得る。リン原子をその中に含む、修飾されたオリゴヌクレオチド主鎖としては、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3’-アルキレンホスホネート、5’-アルキレンホスホネート、およびキラルホスホネートを含むメチルおよび他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3’-アミノホスホラミデートおよびアミノアルキルホスホラミデートを含むホスホラミデート、チオノホスホラミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、ホスホノアセテート、およびチオホスホノアセテート(Sheehanら, Nucleic Acids Research, 2003, 31(14), 4109〜4118およびDellingerら, J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 940〜950参照)、通常の3’-5’結合を有するセレノホスフェートおよびボラノホスフェート、これらの2’-5’結合アナログ、ならびに1つ以上のヌクレオチド間結合が3’から3’、5’から5’、または2’から2’への結合である、逆の極性を有するものが挙げられる。逆の極性を有するオリゴヌクレオチドは、3’-末端ヌクレオチド間結合において、単一の3’から3’への結合、すなわち無塩基であり得る単一の逆方向ヌクレオシド残基(核酸塩基が欠失しているか、またはその代わりにヒドロキシル基を有する)を含む。種々の塩、混合塩、および遊離酸の形態もまた、含まれる。
N3'-P5'-ホスホラミデートは、相補的RNA鎖に対する高い親和性、およびヌクレアーゼ耐性の両方を示すことが報告されている(Gryaznovら, J. Am. Chem. Soc., 1994, 116, 3143〜3144)。N3'-P5'-ホスホラミデートは、インビボでいくらかの成功を伴って研究され、c-myc遺伝子の発現を明確に下方調節した(Skorskiら, Proc. Natl. Acad. Sci., 1997, 94, 3966〜3971; およびFairaら, Nat. Biotechnol, 2001, 19, 40〜44)。
上記リン含有結合の調製法を教示する代表的な米国特許としては、限定されないが、米国特許第:3,687,808号; 4,469,863号; 4,476,301号; 5,023,243号; 5,177,196号; 5,188,897号; 5,264,423号; 5,276,019号; 5,278,302号; 5,286,717号; 5,321,131号; 5,399,676号; 5,405,939号; 5,453,496号; 5,455,233号; 5,466,677号; 5,476,925号; 5,519,126号; 5,536,821号; 5,541,306号; 5,550,111号; 5,563,253号; 5,571,799号; 5,587,361号; 5,194,599号; 5,565,555号; 5,527,899号; 5,721,218号; 5,672,697号および5,625,050号が挙げられる。
本発明のいくつかの態様において、オリゴマー化合物は、1つ以上のホスホロチオエート、および/またはヘテロ原子ヌクレオシド間結合、特に-CH2-NH-O-CH2-、-CH2-N(CH3)-O-CH2-(メチレン(メチルイミノ)またはMMI主鎖として公知)、-CH2-O-N(CH3)-CH2-、-CH2-N(CH3)-N(CH3)-CH2-、および-O-N(CH3)-CH2-CH2-(ここで自然のままのホスホジエステルヌクレオチド間結合は-O-P(=O)(OH)-O-CH2-として表される)を有し得る。MMI型のヌクレオシド間結合は、上に引用された米国特許第5,489,677号に開示されている。アミドヌクレオシド間結合は、上に引用された米国特許第5,602,240号に開示されている。
リン原子をその中に含有しない、いくつかのオリゴヌクレオチド主鎖は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、ヘテロ原子およびアルキルもしくはシクロアルキルが混合されたヌクレオシド間結合、または一つ以上の、短鎖ヘテロ原子の、もしくは複素環式のヌクレオシド間結合により形成される主鎖を有する。これらとしては、(一部はヌクレオシドの糖部分から形成された)モルホリノ結合を有するもの、シロキサン主鎖、スルフィド、スルホキシド、およびスルホン主鎖、ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖、メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖、リボアセチル(riboacetyl)主鎖、アルケン含有主鎖、スルファメート主鎖、メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ主鎖、スルホネートおよびスルホンアミド主鎖、アミド主鎖、ならびに混合されたN、O、S、およびCH2成分部分を有する他のものが挙げられる。
上記オリゴヌクレオシドの調製法を教示する代表的な米国特許としては、限定されないが、米国特許第:5,034,506号; 5,166,315号; 5,185,444号; 5,214,134号; 5,216,141号; 5,235,033号; 5,264,562号; 5,264,564号; 5,405,938号; 5,434,257号; 5,466,677号; 5,470,967号; 5,489,677号; 5,541,307号; 5,561,225号; 5,596,086号; 5,602,240号; 5,610,289号; 5,602,240号; 5,608,046号; 5,610,289号; 5,618,704号; 5,623,070号; 5,663,312号; 5,633,360号; 5,677,437号; 5,792,608号; 5,646,269号および5,677,439号が挙げられる。
修飾された糖
オリゴマー化合物はまた、一つ以上の置換された糖部分を含有し得る。好適な化合物は、2’位に、次のもの:OH、F、O-、S-、もしくはN-アルキル、O-、S-、もしくはN-アルケニル、O-、S-もしくはN-アルキニル、またはO-アルキル-O-アルキルの一つを含み得、ここでアルキル、アルケニル、およびアルキニルは、置換された、または置換されていないC1からC10のアルキル、またはC2からC10のアルケニルおよびアルキニルであり得る。また好適であるのは、O((CH2)nO)mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、およびO(CH2)nON((CH2)nCH3)2であり、式中、nおよびmは、1から約10である。他のオリゴヌクレオチドは、2’位に次のもの:C1からC10の低級アルキル、置換された低級の、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリール(alkaryl)、アラルキル、O-アルカリール、もしくはO-アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール(heterocycloalkaryl)、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換されたシリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、オリゴヌクレオチドの薬物動態学的性質を向上させるための基、またはオリゴヌクレオチドの薬力学的性質を向上させるための基、および類似の性質を有する他の置換基、の一つを含む。ある修飾としては、2’-メトキシエトキシ(2’-O-(2-メトキシエチル)または2’-MOEとしてもまた公知の2’-O-CH2CH2OCH3)(Martinら, Helv. Chim. Acta, 1995, 78, 486〜504)、すなわちアルコキシアルコキシ基が挙げられる。さらなる修飾としては、本明細書中以下の実施例に記載されるように、2’-DMAOEとしてもまた公知の2’-ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわちO(CH2)2ON(CH3)2基、およびまた本明細書中以下の実施例に記載される、2’-ジメチルアミノエトキシエトキシ(当該技術分野でまた2’-O-ジメチル-アミノ-エトキシ-エチルまたは2’-DMAEOEとして公知)、すなわち2’-O-(CH2)2-O-(CH2)2-N(CH3)2が挙げられる。
他の修飾としては、2’-メトキシ(2’-O-CH3)、2’-アミノプロポキシ(2’-OCH2CH2CH2NH2)、2’-アリル(2’-CH2-CH=CH2)、2’-O-アリル(2’-O-CH2-CH=CH2)および2’-フルオロ(2’-F)が挙げられる。2’-修飾は、アラビノ(上)位またはリボ(下)位に存在し得る。ある2’-アラビノ修飾は、2’-Fである。類似の修飾もまた、オリゴヌクレオチドの他の位置、特に、3’末端ヌクレオチドまたは2’-5’結合オリゴヌクレオチドにおける糖の3’位、および5’末端ヌクレオチドの5’位になされ得る。アンチセンス化合物はまた、ペントフラノース糖の代わりにシクロブチル部分などの糖模倣物を有し得る。かかる修飾された糖構造の調製法を教示する代表的な米国特許としては、限定されないが、米国特許第:4,981,957号; 5,118,800号; 5,319,080号; 5,359,044号; 5,393,878号; 5,446,137号; 5,466,786号; 5,514,785号; 5,519,134号; 5,567,811号; 5,576,427号; 5,591,722号; 5,597,909号; 5,610,300号; 5,627,053号; 5,639,873号; 5,646,265号; 5,658,873号; 5,670,633号; 5,792,747号; 5,700,920号および6,147,200号が挙げられる。
DNAに適した(DNA-like)、およびRNAに適した(RNA-like)立体配座
ホモ二本鎖核酸の立体配座配置を表すために用いられる用語は、RNAについての「A型」、およびDNAについての「B型」である。一般にRNA:RNA二本鎖はDNA:DNA二本鎖よりも安定であり、高い融解温度(Tm)を有する(Sangerら, Principles of Nucleic Acid Structure, 1984, Springer-Verlag; New York, NY.; Lesnikら, Biochemistry, 1995, 34, 10807〜10815; Conteら, Nucleic Acids Res., 1997, 25, 2627〜2634)。RNAの安定性の増大は、いくつかの構造的特徴、最も顕著にはA型配置から生じる塩基スタッキング相互作用の改善によるものとされてきた(Searleら, Nucleic Acids Res., 1993, 21, 2051〜2056)。RNAの2'ヒドロキシルの存在は、二本鎖にA型配置を有利にさせるC3'エンドパッカー(endo pucker)、すなわちノーザン(Northern)パッカーともまた称される、の方へ糖を偏向させる。また、RNAの2'ヒドロキシル基は、RNA二本鎖を安定させるのを助ける網状の水媒介水素結合を形成し得る(Egliら, Biochemistry, 1996, 35, 8489〜8494)。一方、デオキシ核酸は、より不安定なB型配置を付与すると考えられているC2'エンド糖パッカー、すなわちサザン(Southern)パッカーとしてもまた公知、を好む(Sangerら, Principles of Nucleic Acid Structure, 1984, Springer-Verlag; New York, NY)。本明細書中で用いられる場合、B型配置は、C2'-エンドパッカー、およびO4'-エンドパッカーの双方を含む。
ハイブリッド二本鎖の構造は、A型配置とB型配置との中間であり、これは不十分なスタッキング相互作用を生じ得る(Laneら, Eur. J. Biochem., 1993, 215, 297〜306; Fedoroffら, J. Mol. Biol., 1993, 233, 509〜523; Gonzalezら, Biochemistry, 1995, 34, 4969〜4982; Hortonら, J. Mol. Biol., 1996, 264, 521〜533)。したがって、A型配置を有利にする化合物は、スタッキング相互作用を高め、それにより相関するTmを増大させ、潜在的に化合物のアンチセンス効果を高め得る。
本発明の一つの態様において、オリゴマー化合物は、3'-エンド糖立体配座を誘導するように合成的に修飾されたヌクレオシドを含む。ヌクレオシドは、複素環式塩基、糖部分、または双方の合成修飾物を組み込み、所望の3'-エンド糖立体配座を誘導し得る。かかる修飾されたヌクレオシドはRNAに適した(RNA-like)ヌクレオシドを模倣するために用いられ、その結果、所望の3'-エンド立体配座配置を維持しつつ、オリゴマー化合物の特定の性質が高められ得る。
2'-デオキシ-2'-F-ヌクレオシドからなる二本鎖が、線虫(C. elegans)系においてRNA干渉(RNAi)反応を誘発することに有効であるらしいという事実によって部分的に支持される、RNA干渉の必要条件(例えば誘発)としての、RNA型二本鎖についての明らかな選好(A型らせん、主に3'-エンド)がある。より安定な3'-エンドヌクレオシドを用いることにより高められる性質としては、限定されないが、タンパク質結合、タンパク質の離脱速度(protein off-rate)、吸収、およびクリアランスの改変による薬物動態学的性質の調節、ヌクレアーゼ安定性、および化学的安定性の調節、オリゴマーの結合親和性、および結合特異性(酵素についての、および相補配列についての親和性、および特異性)の調節、ならびにRNA切断の効力の増大が挙げられる。また、本明細書中に提供されるのは、C3'-エンド型立体配座に有利にはたらくように修飾された1つ以上のヌクレオシドを有するオリゴマーのRNA干渉の誘発(oligomeric triggers of RNAi having)である。
ヌクレオシドの立体配座は、ペントフラノース糖の2'、3'、または4'-位の置換を含む、種々の要因に影響される。電気的陰性の置換基は、一般にアキシアル位を好むが、立体的に要求の厳しい置換基は一般にエクアトリアル位を好む(Principles of Nucleic Acid Structure, Wolfgang Sanger, 1984, Springer-Verlag)。2'-OHを認識要素として維持しつつ、3'-エンド立体配座に有利にはたらく2'位の修飾は達成し得る(Galloら, Tetrahedron (2001), 57, 5707〜5713、Harry-O'kuruら, J. Org. Chem., (1997), 62(6), 1754〜1759、およびTangら, J. Org. Chem. (1999), 64, 747〜754)。あるいは3'-エンド立体配座の選好は、電気的陰性のフッ素原子をアキシアル位に配置している3'-エンド立体配座をとる2'デオキシ-2'F-ヌクレオシド(Kawasakiら, J. Med. Chem. (1993), 36, 831〜841)に例示されるように、2'-OHを欠失させることによって達成され得る。生じる二本鎖にA型立体配座の性質(3'-エンド)を与える、本発明に従う代表的な2'-置換基としては、2'-O-アルキル、2'-0-置換アルキル、および2'-フルオロ置換基が挙げられる。他の好適な置換基は、種々のアルキルおよびアリールエーテルおよびチオエーテル、アミン、ならびにモノアルキルおよびジアルキル置換アミンである。
リボース環の他の修飾、例えば4'-F修飾されたヌクレオシドを生じさせる4'-位での置換(Guillermら, Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters (1995), 5, 1455〜1460、およびOwenら, J. Org. Chem. (1976), 41, 3010〜3017)、または例えばメタノカルバ(methanocarba)ヌクレオシドアナログ(Jacobsonら, J. Med. Chem. Lett. (2000), 43, 2196〜2203、およびLeeら, Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters (2001), 11, 1333〜1337)を生じる修飾もまた、3'-エンド立体配座の選好を誘導する。同様に、RNA干渉反応の誘発は、立体配座がC3'-エンド型立体配座に固定されるように修飾された1つ以上のヌクレオシド、すなわちロックト核酸(Locked Nucleic Acid)(LNA, Singhら, Chem. Commun. (1998), 4, 455〜456)、およびエチレン架橋核酸(ethylene bridged Nucleic Acids)(ENATM, Moritaら, Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters (2002), 12, 73〜76)から構成され得る。
本発明の1つ以上のオリゴマー化合物に対して、1つ以上の単量体のサブユニット(ヌクレオシドは好適である)、およびまたはヌクレオシド間結合の多様な部位で、多様な修飾がなされ、選択された適用において、限定されないが活性などの性質を高め得ることがさらに意図される。
本発明に従う多数の修飾されたヌクレオシドの合成は、当該技術分野で公知である(例えばChemistry of Nucleosides and Nucleotides 1〜3巻, Leroy B. Townsend編, 1988, Plenum press参照)。修飾されたヌクレオシド、およびそのオリゴマーの立体配座は、分子動力学計算、核酸磁気共鳴分光法、およびCDの測定などの当業者に常套的である種々の方法によって推測し得る。
オリゴヌクレオチド模倣剤
用語「模倣剤」は、オリゴヌクレオチドに適用される場合、フラノース環、またはフラノース環およびヌクレオチド間結合が新規な基で置換されているオリゴマー化合物を含み、フラノース環だけの置換物はまた、当該技術分野で糖代用物(surrogate)と称される。複素環式塩基部分、または修飾された複素環式塩基部分は、適切な標的核酸とのハイブリダイゼーションのために維持される。
1つのかかるオリゴマー化合物である、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されたオリゴヌクレオチド模倣剤は、ペプチド核酸(PNA)と称される(Nielsenら, Science, 1991, 254, 1497〜1500)。PNAは有利なハイブリダイゼーション特性、高い生物学的安定性を有し、静電的に中性の分子である。PNA化合物は、トランスジェニックマウスモデルにおける異常スプライシングを直すために用いられた(Sazaniら, Nat. Biotechnol, 2002, 20, 1228〜1233)。PNAオリゴマー化合物において、オリゴヌクレオチドの糖主鎖は、主鎖、特にアミノエチルグリシン主鎖を含有するアミドで置換される。核酸塩基は、主鎖のアミド部分のアザ窒素原子に直接、または間接的に結合している。PNAオリゴマー化合物の調製法を教示する代表的な米国特許としては、限定されないが、米国特許第:5,539,082号; 5,714,331号および5,719,262号が挙げられる。PNA化合物は、Applied Biosystems(Foster City, CA, USA)から市販で入手し得る。塩基性(basic)PNA主鎖に対する多数の修飾が当該技術分野で公知であり、特に有用なのは、一方または双方の末端に結合した1つ以上のアミノ酸を有するPNA化合物である。例えばPNA分子の末端に結合される場合、1〜8個のリシン、またはアルギニン残基は有用である。
研究されてきた別の種類のオリゴヌクレオチド模倣剤は、モルホリノ環に結合した複素環式塩基を有する、結合されたモルホリノ単位(モルホリノ核酸)に基づく。モルホリノ核酸におけるモルホリノ単量体単位に結合するいくつかの結合基が報告された。1つの種類の結合基は選択されて、非イオン性オリゴマー化合物を生じた。モルホリノを基礎としたオリゴマー化合物は、細胞のタンパク質との望ましくない相互作用を生じにくい、オリゴヌクレオチドの非イオン性模倣剤である(Dwaine A. BraaschおよびDavid R. Corey, Biochemistry, 2002, 41(14), 4503〜4510)。モルホリノを基礎としたオリゴマー化合物は、縞模様の魚の胚(zebrafish embryos)において研究された(Genesis, 30巻, 第3刷, 2001およびHeasman, J., Dev. Biol, 2002, 243, 209〜214参照)。モルホリノを基礎としたオリゴマー化合物のさらなる研究もまた報告された(Naseviciusら, Nat. Genet, 2000, 26, 216〜220; およびLacerraら, Proc. Natl. Acad. Sci., 2000, 97, 9591〜9596)。モルホリノを基礎としたオリゴマー化合物は、米国特許第5,034,506号に開示されている。オリゴマー化合物のモルホリノの種類は、単量体サブユニットを連結する種々の異なる結合基を有して、調製されてきた。結合基は、キラルからアキラルまで、および帯電から中性までさまざまであり得る。米国特許第5,166,315号は、-O-P(=O)(N(CH3)2)-O-を含む結合を開示し、米国特許第5,034,506号は、アキラルモルホリノ間結合を開示し、および米国特許第5,185,444号は、キラルモルホリノ間結合を含有するリンを開示している。
さらなる種類のオリゴヌクレオチド模倣剤は、シクロヘキセン核酸(CeNA)と称される。CeNAオリゴヌクレオチドにおいて、DNAまたはRNA分子に通常存在するフラノース環は、シクロヘキセニル環で置換されている。CeNA DMT保護ホスホラミダイト単量体は、古典的なホスホラミダイト化学作用に従って、調製され、オリゴマー化合物の合成のために用いられた。CeNAで修飾された特定の位置を有する、十分に修飾されたCeNAオリゴマー化合物およびオリゴヌクレオチドが調製され、研究された(Wangら, J. Am. Chem. Soc., 2000, 122, 8595〜8602)。一般にDNA鎖の中へのCeNA単量体の組み込みは、DNA/RNAハイブリッドのDNA鎖の(its)安定性を増大する。CeNAオリゴアデニレートは、自然のままの複合体と類似する安定性を有して、RNAおよびDNA相補体と、複合体を形成した。CeNA構造を自然の核酸構造の中に組み込むことの研究は(The study of incorporating)、NMRおよび円二色性によって、容易な立体配座の適応を伴って行われることが示された(was shown to proceed with)。さらにRNAを標的とする配列の中へのCeNAの組み込みは、血清に対して安定であり、標的RNA鎖の切断をもたらす大腸菌RNアーゼHを活性化し得た。
さらなる修飾は、リボシル糖の環の2’-ヒドロキシル基が糖の環の4’炭素原子に結合し、それにより2'-C,4'-C-オキシメチレン結合を形成し、二環式糖部分を形成している、「ロックト核酸(Locked Nucleic Acids)」(LNA)などの二環式糖部分を含む(Elayadiら, Curr. Opinion Invens. Drugs, 2001, 2, 558〜561; Braaschら, Chem. Biol., 2001, 8 1〜7; およびOrumら, Curr. Opinion Mol. Ther., 2001, 3, 239〜243において再調査した; 米国特許第6,268,490号および第6,670,461号も参照)。結合は2'酸素原子および4'炭素原子を架橋しているメチレン(-CH2-)基であり得、このため用語LNAが二環式部分について用いられ、この部位がエチレン基の場合、用語ENATMが用いられる(Singhら, Chem. Commun., 1998, 4, 455〜456; ENATM: Moritaら, Bioorganic Medicinal Chemistry, 2003, 11, 2211〜2226)。LNAおよび他の二環式の糖のアナログは、相補的DNAおよびRNAとの非常に高い二本鎖熱安定性(Tm = +3 〜 +10℃)、3'-エクソ核酸分解(exonucleolytic degradation)に対する安定性、および良好な溶解特性を示す。LNA類はProLigo(Paris, FranceおよびBoulder, CO, USA)から市販される。
同じく研究されてきたLNAの異性体は、3'-エクソヌクレアーゼに対して優れた安定性を有することが示されたα-L-LNAである。α-L-LNA類は、効力のあるアンチセンス活性を示したアンチセンスギャップマーおよびキメラに組み込まれた(Friedenら, Nucleic Acids Research, 2003, 21, 6365〜6372)。
調製され、研究された別の同様の二環式糖部分は、糖の環の3'-ヒドロキシル基から単一のメチレン基を介して4'炭素原子に及ぶ架橋を有し、それにより3'-C,4'-C-オキシメチレン結合を形成する(米国特許第6,043,060号参照)。
LNAは非常に安定なLNA:LNA二本鎖を形成することが示された(Koshkinら, J. Am. Chem. Soc., 1998, 120, 13252〜13253)。LNA:LNAハイブリダイゼーションは、最も熱に安定な核酸型二本鎖系であることが示され、LNAのRNAを模倣する特性は二本鎖の水準で立証された。3つのLNA単量体(TまたはA)の導入は、DNA相補体に対して融点を有意に増大させた(Tm = +15/+11℃)。LNA媒介ハイブリダイゼーションの普遍性は、非常に安定なLNA:LNA二本鎖の形成によって強調された。LNAがRNAを模倣することは、単量体のN型立体配座の制限、およびLNA:RNA二本鎖という第二の構造について反映された。
LNAはまた、相補的DNA、RNA、またはLNAと、高い熱的親和性(thermal affinities)を有して二本鎖を形成する。円二色性(CD)スペクトルは、十分に修飾されたLNAを含む二本鎖(特にLNA:RNA)が、A型RNA:RNA二本鎖に構造的に類似することを示している。LNA:DNA二本鎖の核磁気共鳴(NMR)実験は、LNA単量体の3'-エンド立体配座を確証した。二本鎖DNAの認識もまた実証され、LNAによる鎖の侵入を示唆した。対応する非修飾対照鎖と比較して、一般に向上した選択性を有して、LNAがWatson-Crick型塩基対規則に従うことを、ミスマッチ配列の研究は示している。DNALNAキメラは、ルシフェラーゼmRNAの中の種々の領域(5'-非翻訳領域、開始コドンの領域、またはコード領域)を標的とする場合、遺伝子発現を効率的に抑制することが示された(Braaschら, Nucleic Acids Research, 2002, 30, 5160〜5167)。
LNAを含む、効力があり、非毒性のアンチセンスオリゴヌクレオチドが、記載されている(Wahlestedtら, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A., 2000, 97, 5633〜5638)。著者らはLNAがいくつかの所望の性質を付与することを示した。LNA/DNA共重合体は、血清および細胞抽出物の中で容易に分解しなかった。LNA/DNA共重合体は、生きているラットの脳におけるGタンパク質共役受容体シグナル伝達、および大腸菌(Escherichia coli)の中のレポーター遺伝子の検出と同様に異なるアッセイ系において、効力のあるアンチセンス活性を示した。リポフェクチン(Lipofectin)に媒介された生きているヒト乳癌細胞へのLNAの効率的な送達もまた、成し遂げられた。LNAに係わるさらなる成功したインビボの研究は、毒性を伴わないラットδオピオイド受容体の分解(knock-down)を示し(Wahlestedtら, Proc. Natl. Acad. Sci., 2000, 97, 5633〜5638)、別の研究においてRNAポリメラーゼIIの大きなサブユニットの翻訳の阻害を示した(Fluiterら, Nucleic Acids Res., 2003, 31, 953〜962)。
LNA単量体であるアデニン、シトシン、グアニン、5-メチル-シトシン、チミン、およびウラシルの合成および調製法が、これらのオリゴマー化および核酸認識特性とともに記載された(Koshkinら, Tetrahedron, 1998, 54, 3607〜3630)。LNAおよびその調製法はまた、WO 98/39352およびWO 99/14226に記載されている。
LNAのアナログであるホスホロチオエート-LNAおよび2'-チオ-LNAもまた調製された(Kumarら, Bioorg. Med. Chem. Lett., 1998, 8, 2219〜2222)。核酸ポリメラーゼの基質としてのオリゴデオキシリボヌクレオチド二本鎖を含有するロックト(locked)ヌクレオシドアナログの調製法もまた、記載された(Wengelら, WO 99/14226)。さらに、新規の立体配座的に制限された高親和性オリゴヌクレオチドアナログである、2'-アミノ-LNAの合成が、当該技術分野において記載された(Singhら, J. Org. Chem., 1998, 63, 10035〜10039)。また、2'-アミノ-および2'-メチルアミノ-LNAが調製され、相補的RNA鎖およびDNA鎖を伴うこれらの二本鎖の熱安定性が先に報告された。
調製され、研究された別のオリゴヌクレオチド模倣剤は、トレオース核酸である。このオリゴヌクレオチド模倣剤は、リボースヌクレオシドの代わりにトレオースヌクレオシドに基づいている。(3',2')-α-L-トレオース核酸(TNA)における最初の関心は、TNAを複製し得るDNAポリメラーゼが存在するかどうかの疑問に向けられた。あるDNAポリメラーゼは、TNA鋳型の限られた一続きを複製し得ることがわかった(Chemical and Engineering News, 2003, 81, 9において報告された)。別の研究において、TNAは相補的DNA、RNA、およびTNAオリゴヌクレオチドとの逆平行Watson-Crick塩基対形成が可能であると判定された(Chaputら, J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 856〜857)。
ある研究において、(3',2')-α-L-トレオース核酸は調製され、2'および3'アミデート(amidate)アナログと比較された(Wuら, Organic Letters, 2002, 4(8), 1279〜1282)。アミデートアナログはRNA/DNAの強度に匹敵する強度でRNAおよびDNAに結合することが示された。
さらなるオリゴヌクレオチド模倣剤は、調製され、二環式および三環式ヌクレオシドアナログを含んだ(Steffensら, Helv. Chim. Acta, 1997, 80, 2426〜2439; Steffensら, J. Am. Chem. Soc., 1999, 121, 3249〜3255; Rennebergら, J. Am. Chem. Soc., 2002, 124, 5993〜6002; およびRennebergら, Nucleic acids res., 2002, 30, 2751〜2757参照)。かかる修飾されたヌクレオシドアナログは、ホスホラミダイトアプローチを用いてオリゴマー化され、三環式ヌクレオシドアナログを含む生じたオリゴマー化合物は、DNA、RNA、およびそれ自体とハイブリダイズした場合、熱安定性(Tm)の増大を示した。二環式ヌクレオシドアナログを含むオリゴマー化合物は、DNA二本鎖の熱安定性に近い熱安定性を示した。
オリゴヌクレオチド模倣剤の別の種類は、ホスホノモノエステル(phosphonomonoester)核酸と称され、これは主鎖にリンの基を取り込んでいる。この種類のオリゴヌクレオチド模倣剤は、核酸の検出のためのプローブとして、および分子生物学における使用のための補助物として、遺伝子発現を阻害する領域において有用な物理的および生物学的、ならびに薬理学的性質を有することが報告されている(アンチセンスオリゴヌクレオチド、センス(sense)オリゴヌクレオチド、およびトリプレックス形成オリゴヌクレオチド)。天然由来のフラノース環をシクロブチル環が置換している、本発明に従うさらなるオリゴヌクレオチド模倣剤が調製された。
修飾および代替核酸塩基
本発明のオリゴマー化合物は、化合物中の1つ以上のヌクレオチド部位に異なる塩基が存在する変異体も含む。例えば、最初のヌクレオチドがアデノシンならば、この位置にチミジン、グアノシン、またはシチジンを含む変異体が産生され得る。このことはオリゴマー化合物のいずれの位置においても行われ得る。その後、これらの化合物は本明細書に記載される方法を用いて検査され、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼmRNAの発現を阻害する能力を測定する。
オリゴマー化合物はまた、核酸塩基(当該分野で複素環式塩基または単に「塩基」としばしば称される)の修飾または置換を含み得る。本明細書中で使用する場合、「非修飾」または「天然」核酸塩基としては、プリン塩基であるアデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)が挙げられる。「置換」とは、非修飾または天然の塩基が、別の非修飾または天然の塩基と置き換わることである。「修飾された」核酸塩基とは、5-メチルシトシン(5-me-C)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン、5-プロピニル(-C≡C-CH3)ウラシルおよびシトシンおよびピリミジン塩基の他のアルキニル誘導体、6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(偽ウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシおよび他の8−置換アデニンおよびグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチルおよび他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、2-F-アデニン、2-アミノアデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニン、ならびに3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニン等の、他の合成および天然の核酸塩基を意味する。さらなる修飾された核酸塩基としては、フェノキサジンシチジン(1H-ピリミド(5,4-b)(1,4)ベンゾキサジン-2(3H)-オン)、フェノチアジンシチジン(1H-ピリミド(5,4-b)(1,4)ベンゾチアジン-2(3H)-オン)等の三環式ピリミジン、置換されたフェノキサジンシチジン(例えば9-(2-アミノエトキシ)-H-ピリミド(5,4-b)(1,4)ベンゾキサジン-2(3H)-オン)、カルバゾールシチジン(2H-ピリミド(4,5-b)インドール-2-オン)、ピリドインドールシチジン(H-ピリド(3’,2’:4,5)ピロロ(2,3-d)ピリミジン-2-オン)等のG形クランプが挙げられる。修飾される核酸塩基としてはまた、該プリンまたはピリミジン塩基が、他の複素環、例えば7-デアザ-アデニン、7-デアザグアノシン、2-アミノピリジン、および2-ピリドンで置換されたものが挙げられ得る。さらなる核酸塩基としては、米国特許第3,687,808号に開示されたもの、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, 858-859ページ, Kroschwitz, J.I., 編John Wiley & Sons, 1990に開示されたもの、Englischら, Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30, 613により開示されたもの、およびSanghvi, Y.S., 15章, Antisense Research and Applications, 289-302ページ、Crooke, S.T.およびLebleu, B., 編, CRC Press, 1993により開示されたものが挙げられる。これらの核酸塩基の一部は、本発明の化合物の結合親和性を増大するのに適当なため当業者に公知である。これらとしては、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシル、および5-プロピニルシトシンを含む5-置換ピリミジン、6-アザピリミジン、ならびにN-2、N-6およびO-6置換プリンが挙げられる。5-メチルシトシン置換は、核酸二本鎖安定性を0.6〜1.2℃増大することが示され、よりさらに詳しくは2’-O-メトキシエチル糖修飾と組み合わされた場合、現在適当な塩基置換である。当該分野では、塩基修飾は核酸配列において置換を引き起こすために、かかる化学修飾を必然的に伴わないことを理解されたい。
上記の修飾された核酸塩基の一部ならびに他の修飾された核酸塩基の調製法をも教示する代表的な米国特許としては、限定されないが、上記米国特許第3,687,808号ならびに米国特許第:4,845,205号; 5,130,302号; 5,134,066号;5,175,273号; 5,367,066号; 5,432,272号; 5,457,187号; 5,459,255号;5,484,908号; 5,502,177号; 5,525,711号; 5,552,540号; 5,587,469号;5,594,121号; 5,596,091号; 5,614,617号; 5,645,985号; 5,830,653号;5,763,588号; 6,005,096号; 5,681,941号、および5,750,692号が挙げられる。
本発明のオリゴマー化合物は、1つ以上の天然由来の複素環式塩基部分の代わりに多環式の複素環式化合物も含み得る。多数の三環式複素環式化合物が以前に報告されている。これらの化合物は修飾された鎖から標的鎖への結合特性を増加するためにアンチセンスの用途で日常的に用いられる。最も研究された修飾はグアノシンを標的にしており、そのためそれらはG形クランプまたはシチジンアナログと称されている。2番目の鎖においてグアノシンと3つの水素結合を作る代表的なシトシンアナログとしては、1,3-ジアザフェノキサジン-2-オン(Kurchavovら, Nucleosides and Nucleotides, 1997, 16, 1837-1846)、1,3-ジアザフェノチアジン-2-オン(Lin, K.-Y.; Jones, R. J.; Matteucci, M. J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 3873-3874)、および6,7,8,9-テトラフルオロ-1,3-ジアザフェノキサジン-2-オン(Wang, J.; Lin, K.-Y., Matteucci, M. Tetrahedron Lett. 1998, 39, 8385-8388)が挙げられる。オリゴヌクレオチドに組み込まれ、これらの塩基修飾が相補的なグアニンとハイブリダイズすることが示され、後者もまたアデニンとハイブリダイズし、拡張スタッキング相互作用による螺旋状の熱的安定性を高めることが示された(米国特許出願公開第20030207804号および第20030175906号も参照されたい)。
さらなる螺旋安定化特性は、シトシンアナログ/置換が固定1,3-ジアザフェノキサジン-2-オン主鎖に結合するアミノエトキシ部分を有するときに見られている(Lin, K.-Y.; Matteucci, M. J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 8531-8532)。結合試験では、単一の取り込みがオリゴヌクレオチド模型の相補的な標的DNAまたはRNAに対する結合親和性を5-メチルシトシン(dC5me)と比べて18℃のΔTmまで高め得ることを示し、単一の修飾としては高い親和性増大である。一方、螺旋の安定性の増大はオリゴヌクレオチドの特異性を弱めることはない。
本発明において用いやすい、さらなる三環式複素環式化合物およびそれらを用いる方法は、米国特許第6,028,183号および第6,007,992号に開示される。
フェノキサジン誘導体の向上した結合親和性が、強硬な配列特異性と共に、フェノキサジン誘導体をより効力のあるアンチセンスを基礎とした薬物の開発に有用な核酸塩基アナログにする。事実、フェノキサジン置換を含むヘプタヌクレオチドがRNアーゼHを活性化させ、細胞取り込みを高め、増加したアンチセンス活性を示す能力があることを示すインビトロでの実験から期待できるデータが得られている(Lin, K-Y; Matteucci, M. J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 8531-8532)。活性増大がG形クランプの場合に更により顕著で、20mer 2'-デオキシホスホロチオエートオリゴヌクレオチドのインビトロでの効能を単独の置換としては有為に改善されることを示した(Flanagan, W. M.; Wolf, J.J.; Olson, P.; Grant, D.; Lin, K.-Y.; Wagner, R. W.; Matteucci, M. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1999, 96, 3513-3518)。
複素環式塩基として有用なさらなる修飾された多環式複素環式化合物は、限定されないが、上記米国特許第3,687,808号ならびに米国特許第:4,845,205号; 5,130,302号; 5,134,066号; 5,175,273号; 5,367,066号; 5,432,272号; 5,434,257号; 5,457,187号; 5,459,255号; 5,484,908号; 5,502,177号; 5,525,711号; 5,552,540号; 5,587,469号; 5,594,121号; 5,596,091号; 5,614,617号; 5,645,985号; 5,646,269号; 5,750,692号; 5,830,653号; 5,763,588号; 6,005,096号; および5,681,941号、ならびに米国特許出願公開第20030158403号で開示される。
結合体
本発明のオリゴマー化合物の別の修飾としては、オリゴマー化合物の活性、細胞分布、または細胞取り込みを高める等の、オリゴマー化合物の性質を高める一つ以上の部分または結合体をオリゴマー化合物に化学的に連結することが挙げられる。これらの部分または結合体としては、第一級または二級ヒドロキシル基などの官能基に共有結合した結合体群が挙げられ得る。本発明の結合体群としては、インターカレーター、レポーター分子、ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリエーテル、オリゴマーの薬力学的性質を高める群、およびオリゴマーの薬動力学的性質を高める群が挙げられる。典型的な結合体群としては、コレステロール、脂質、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、および色素が挙げられる。本文中、薬力学的性質を高める群としては、取り込みを向上させ、分解耐性を高め、および/または標的核酸との配列特異的ハイブリダイゼーションを強化する群が挙げられる。本文中、薬動力学的性質を高める群としては、本発明の化合物の取り込み、分布、代謝、または排出を向上させる群が挙げられる。代表的な結合体群は、1992年10月23日に出願された国際特許出願第PCT/US92/09196号、ならびに米国特許第6,287,860号および第6,762,169号に開示される。
結合体部分としては、限定されないが、コレステロール部分、コール酸、チオエーテル、例えば、ヘキシル-S-トリチルチオール、チオコレステロール、脂肪族鎖、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシル残基、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールもしくはトリエチルアンモニウム1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホネート、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖、または、アダマンタン酢酸、パルミチル部分、または、オクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分等の脂質部分が挙げられる。本発明のオリゴマー化合物はまた、製剤原料、例えば、アスピリン、ワルファリン、フェニルブタゾン、イブプロフェン、スプロフェン、フェンブフェン、ケトプロフェン、(S)-(+)-プラノプロフェン、カルプロフェン、ダンシルサルコシン、2,3,5-トリヨード安息香酸、フルフェナム酸、ホリニン酸、ベンゾサイアジアザイド、クロロサイアザイド、ジアゼピン、インドメチシン(indo-methicin)、バルビツール酸塩、セファロスポリン、サルファ剤、抗糖尿病薬、抗菌物質、または抗生物質に結合され得る。オリゴヌクレオチド−薬物結合体およびその調製法は、米国特許第6,656,730号に記載される。
かかるオリゴヌクレオチド結合体の調製法を教示する代表的な米国特許としては、限定されないが、米国特許第:4,828,979号; 4,948,882号; 5,218,105号; 5,525,465号; 5,541,313号; 5,545,730号; 5,552,538号; 5,578,717号, 5,580,731号; 5,580,731号; 5,591,584号; 5,109,124号; 5,118,802号; 5,138,045号; 5,414,077号; 5,486,603号; 5,512,439号; 5,578,718号; 5,608,046号; 4,587,044号; 4,605,735号; 4,667,025号; 4,762,779号; 4,789,737号; 4,824,941号; 4,835,263号; 4,876,335号; 4,904,582号; 4,958,013号; 5,082,830号; 5,112,963号; 5,214,136号; 5,082,830号; 5,112,963号; 5,214,136号; 5,245,022号; 5,254,469号; 5,258,506号; 5,262,536号; 5,272,250号; 5,292,873号; 5,317,098号; 5,371,241号, 5,391,723号; 5,416,203号, 5,451,463号; 5,510,475号; 5,512,667号; 5,514,785号; 5,565,552号; 5,567,810号; 5,574,142号; 5,585,481号; 5,587,371号; 5,595,726号; 5,597,696号; 5,599,923号; 5,599,928号、および5,688,941号が挙げられる。
オリゴマー化合物はまた、例えばヌクレアーゼ安定等の特性を高めるためにオリゴマー化合物の1つの末端または両端に一般に付与される1つ以上の安定化基を有するように修飾され得る。安定化基としてはキャップ構造が挙げられる。「キャップ構造または末端キャップ部分」とは、化学修飾を意味し、オリゴヌクレオチドのどちらかの末端に組み込まれている(例えばWincottら, WO 97/26270参照)。これらの末端修飾は、末端核酸分子を有するオリゴマー化合物をエクソヌクレアーゼ分解から保護し、細胞内での送達および/または局在化を改善し得る。キャップは5’-末端(5’-キャップ)もしくは3’-末端(3’-キャップ)のいずれかに存在し得、または一本鎖の両端もしくは二本鎖化合物の両鎖の1つ以上の末端に存在し得る。このキャップ構造は、天然mRNA分子の5'末端にある逆位メチルグアノシン「5’-キャップ」と混同されることはない。限定されない例では、5’-キャップとしては、逆位無塩基の残基(部分)、4’,5’-メチレンヌクレオチド; l-(b-D-エリスロフラノシル)ヌクレオチド、4’-チオヌクレオチド、炭素環式ヌクレオチド; 1,5-無水ヘキシトールヌクレオチド; L-ヌクレオチド; α-ヌクレオチド; 修飾塩基ヌクレオチド; ホスホロジチオエート連鎖; トレオ-ペントフラノシルヌクレオチド; 非環式3’,4’-セコヌクレオチド; 非環式3,4-ジヒドロキシブチルヌクレオチド; 非環式3,5-ジヒドロキシペンチルヌクレオチド(riucleotide); 3’-3’-逆位ヌクレオチド部分; 3’-3’-逆位無塩基部分; 3’-2’-逆位ヌクレオチド部分; 3’-2’-逆位無塩基部分; 1,4-ブタンジオールリン酸塩; 3’-ホスホラミダイト; ヘキシルホスフェート; アミノヘキシルリン酸塩; 3’-リン酸塩; 3’-ホスホロチオエート; ホスホロジチオエート; 架橋または非架橋ホスホン酸メチル部分(より詳細にはWincottら, 国際PCT公開第WO 97/26270号参照)が挙げられる。siRNAの構成物としては5’末端(5’キャップ)が通例だが、5’-ヒドロキシルまたは5’-ホスフェートに限定されない。
特に適当な3’-キャップ構造としては、例えば4’,5’-メチレンヌクレオチド; l-(b-D-エリスロフラノシル)ヌクレオチド; 4’-チオヌクレオチド、炭素環式ヌクレオチド; 5’-アミノ-アルキルリン酸塩; 1,3-ジアミノ-2-プロピルリン酸塩、3-アミノプロピルリン酸塩; 6-アミノヘキシルリン酸塩; 1,2-アミノドデシルリン酸塩; ヒドロキシプロピルリン酸塩; 1,5-無水ヘキシトールヌクレオチド; L-ヌクレオチド; a-ヌクレオチド; 修飾塩基ヌクレオチド; ホスホロジチオエート; トレオ-ペントフラノシルヌクレオチド; 非環式3’,4’-セコヌクレオチド; 3,4-ジヒドロキシブチルヌクレオチド; 3,5-ジヒドロキシペンチルヌクレオチド; 5’-5’-逆位ヌクレオチド部分; 5’-5’-逆位無塩基部分; 5’-ホスホラミデート; 5’-ホスホロチオエート; 1,4-ブタンジオールリン酸塩; 5’-アミノ; 架橋および/または非架橋5’-ホスホラミデート、ホスホロチオエートおよび/またはホスホロジチオエート、架橋または非架橋ホスホン酸メチル、および5’-メルカプト部分(より詳細には、BeaucageおよびTyer, 1993, Tetrahedron 49, 1925参照)が挙げられる。
ヌクレアーゼ安定性を与えるためにオリゴマー化合物の一端または両端をキャップするのに用いられ得る、さらなる3'-および5’-安定化基としては、2003年1月16日に公開されたWO 03/004602号に開示されるものが挙げられる。
キメラ化合物
所定のオリゴマー化合物のすべての位置が均一に修飾される必要はなく、実際には前述の修飾の一つ以上が、単一の化合物に、またはオリゴマー化合物内の単一のヌクレオシドにさえ、組み込まれ得る。
本発明はまた、キメラ化合物であるオリゴマー化合物を含む。これらのオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ分解への増大した耐性、増大した細胞取り込み、電荷の変化、増大した安定性および/または標的核酸に対する増大した結合親和性をオリゴヌクレオチドに付与するように修飾された、少なくとも一つの領域を典型的に含む。オリゴヌクレオチドのさらなる領域は、RNアーゼ(RNAse)または他の酵素の基質としてはたらき得る。例として、RNアーゼ Hは、RNA:DNA二本鎖のRNA鎖を切断する細胞エンドヌクレアーゼである。RNアーゼ Hの活性化は、したがって、DNAに似たオリゴマー化合物に結合された時にRNA標的の切断を生じ、その結果オリゴヌクレオチドに媒介された遺伝子発現の阻害の有効性を大いに高める。RNA:RNAハイブリッドの切断は、同様に、細胞およびウイルスのRNAの両方を切断するRNアーゼ III (RNase III)またはRNアーゼL(RNAseL)等のエンドリボヌクレアーゼの作用を通じて達成され得る。該RNA標的の切断産物は、通常通り、ゲル電気泳動、および必要に応じて、当該分野で公知の、関連する核酸ハイブリダイゼーション技術によって、検出され得る。
本発明のキメラオリゴマー化合物は、2つ以上の、オリゴヌクレオチド、修飾されたオリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、オリゴヌクレオチド模倣剤、またはそれらの領域もしくは一部の複合構造として形成され得る。かかる化合物はまた、当該分野でハイブリッドまたはギャップマーと呼ばれてきた。かかるハイブリッド構造の調製法を教示する代表的な米国特許としては、限定されないが、米国特許第:5,013,830号; 5,149,797号; 5,220,007号; 5,256,775号; 5,366,878号; 5,403,711号; 5,491,133号; 5,565,350号; 5,623,065号; 5,652,355号; 5,652,356号; および5,700,922号が挙げられる。
キメラオリゴヌクレオチドの一例は非デオキシオリゴヌクレオチド断片を側面に有する2'-デオキシオリゴヌクレオチド領域を有するギャップマーである。理論に縛られたくはないが、ギャップマーのギャップは、RNA標的に結合した時RNアーゼ Hに認識され得る基質をもたらす。一方、ウイングはかかる基質を提供しないが、二本鎖安定性または有利な薬動力学的効果に寄与する等の他の性質を付与し得る。それぞれのウイングは1つ以上の非デオキシオリゴヌクレオチドモノマーであり得る。ある態様では、ギャップマーは5つの非デオキシオリゴヌクレオチドウイングを側面に有する10のデオキシヌクレオチドギャップである。これは5-10-5ギャップマーと称される。他の配置は当業者に容易に認識される。ある態様では、ウイングは2’-MOE修飾ヌクレオチドを含む。別の態様では、ギャップマーはホスホロチオエート主鎖を有する。別の態様では、ギャップマーは2’−MOEウイングおよびホスホロチオエート主鎖を有する。他の適当な修飾は当業者に容易に認識される。
NAFLDおよびメタボリックシンドローム
「非アルコール性脂肪肝病」(NAFLD)は肝細胞における単なるトリグリセリドの蓄積(肝臓脂肪症)から炎症を伴う肝臓脂肪症(脂肪肝炎)、線維症、および肝硬変に及ぶ範囲の病気を含む。非アルコール性脂肪肝炎(NASH)はトリグリセリドの堆積を超えたNAFLDの進行から起こる。壊死、炎症および線維症を引き起こす能力のある2つ目の打撃がNASHの進行のために必要である。2つ目の打撃の候補は、酸化的ストレスの増加を引き起こす要因および前炎症性サイトカインの発現を促進する要因、の広いカテゴリーにグループ化され得る。肝臓の中性細胞蓄積、酸化的ストレスと肝臓脂肪症からNASHへの進行の間の潜在的な因果関係を示し、肝臓のトリグリセリドの増加が動物および人間の肝細胞での酸化的ストレスの増加を引き起こすことが示唆されている(BrowningおよびHorton, J. Clin. Invest, 2004, 114, 147-152)。トリグリセリド過剰血および脂肪酸過剰血は末梢組織におけるトリグリセリドの蓄積を引き起こし得る(Shimamuraら, Biochem. Biophys. Res. Commun., 2004, 322, 1080-1085)。
「メタボリックシンドローム」は代謝源の脂質および非脂質の心臓血管の危険因子のクラスタリングと定義される。メタボリックシンドロームはインスリン抵抗性として知られる一般化した代謝障害と密接に関連づけられる。国家コレステロール教育プログラム(The National Cholesterol Education Program)(NCEP)成人治療パネルIII(Adult Treatment Panel III)(ATPIII)は、5つの危険決定要因のうち3つ以上が存在する時、メタボリックシンドロームの診断基準を確立した。5つの危険決定要因とは、ウエスト周りが男性は102cmを超える、または女性は88cmを超える、と定義される腹部の肥満、150mg/dL以上の中性脂肪値、HDLコレステロール値が男性は40mg/dL未満および女性は50mg/dL未満、血圧が130/85mmHg以上、並びに空腹時グルコース値が110mg/dL以上である。これらの決定要因は臨床診療で容易に測定され得る(JAMA, 2001, 285, 2486-2497)。
HbA1c
HbA1cとはグルコースによる翻訳後修飾によってインビボで形成される安定した小さなヘモグロビン変異体であり、糖化されたNH2末端β鎖を主に含んでいる。HbA1cの値と最近3ヶ月の平均血糖値の間には強い相関関係がある。こうして、HbA1cはしばしば持続的血糖値制御を測定する「判断基準」としてみなされる(Bunn, H.F.ら, 1978, Science. 200, 21-7)。HbA1cはイオン交換HPLCまたは免疫アッセイで測定され得、HbA1c測定のための、家庭での採血および郵送キットが今は広く入手可能である。血清フルクトースアミンは安定したグルコース制御の別の指標であり、比色法で測定され得る(Cobas Integra, Roche Diagnostics)。
心臓血管の危険プロフィール
心臓血管病を進行する危険に関連する状態としては、限定されないが、心筋梗塞、不安定狭心症、安定狭心症、冠状動脈法(血管形成術またはバイパス手術)の病歴、臨床的に有意な心筋虚血の兆候、アテローム硬化症の無冠状形態(末梢動脈疾患、腹部大動脈瘤、頸動脈疾患)、糖尿病、喫煙、高血圧、低HDLコレステロール、早期CHDの家族の病歴、肥満、運動不足、中性脂肪の上昇、またはメタボリックシンドロームが挙げられる(Jama, 2001, 285, 2486-2497; Grundyら, Circulation, 2004, 110, 227- 239)。
塩、プロドラッグおよび生物学的同等物
本発明のオリゴマー化合物は、任意の薬学的に許容できる塩、エステル、もしくはかかるエステルの塩、またはヒトを含む動物に投与すると、その生物学的に活性のある代謝産物もしくは残留物を(直接もしくは間接的に)提供し得る任意の他の機能性化学的同等物を含む。従って、例えば本開示はまた、本発明のオリゴマー化合物のプロドラッグおよび薬学的に許容できる塩、かかるプロドラッグの薬学的に許容できる塩、および他の生物学的同等物にも及ぶ。
用語「プロドラッグ」は、不活性またはあまり活性のない形態で調製されて、内因性の酵素または他の化学物質および/または状態によって、体内または細胞中で活性な形態(すなわち、薬物)に転換される治療薬のことを言う。特に、本発明のオリゴヌクレオチドのプロドラッグ型は、WO 93/24510またはWO 94/26764に開示される方法に従ってSATE((S-アセチル-2-チオエチル)リン酸塩)誘導体として調製される。
用語「薬学的に許容できる塩」は、本発明の化合物の生理学的におよび薬学的に許容できる塩、すなわち親化合物の所望の生物学的活性を保持し、望まれない毒物学的効果をそれに付与しない塩のことを言う。
薬学的に許容できる塩基付加塩は、アルカリおよびアルカリ土類金属もしくは有機アミン等の、金属またはアミンで形成される。カチオンとして用いられる金属の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等である。適当なアミンの例は、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、およびプロカインである(例えばBergeら, “Pharmaceutical Salts,” J. of Pharma Sci., 1977, 66, 1-19を参照)。前記酸性化合物の塩基付加塩は、常法で塩を生成するために、遊離酸型を十分量の所望の塩基と接触させることにより調製される。遊離酸型は塩型を酸と接触させ、常法で遊離酸を単離することにより再生され得る。遊離酸型はそれらのそれぞれの塩型と、極性溶媒への溶解度等のある物理的性質が多少異なるが、本発明の目的のためにそれ以外は、塩はそれらのそれぞれの遊離酸と同等である。本明細書で使用される場合、「薬学的付加塩」として、本発明の化合物の成分の1つである酸型の薬学的に許容できる塩が挙げられる。これらはアミンの有機または無機酸塩を含む。酸塩は塩酸塩、酢酸塩、サリチル酸塩、硝酸塩、およびリン酸塩である。他の適当な薬学的に許容できる塩は、当業者に周知であり、様々な無機および有機酸の塩基性塩が挙げられ、例えば、無機酸としては例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、またはリン酸等;有機のカルボン酸、スルホン酸、スルホ酸もしくはリン酸、またはN-置換スルファミン酸としては例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、コハク酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、蓚酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、エンボン酸、ニコチン酸、またはイソニコチン酸;天然のタンパク質の合成に関与する22のa-アミノ酸等のアミノ酸としては例えばグルタミン酸またはアスパラギン酸、およびさらにフェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-メチルベンゼンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、2-もしくは3-ホスホグリセリン酸塩、グルコース-6-リン酸塩、N-シクロヘキシルスルファミン酸(シクラメートの形成と共に)、または他の酸有機化合物としては、アスコルビン酸等が挙げられる。化合物の薬学的に許容できる塩はまた、薬学的に許容できるカチオンで調製され得る。適当な薬学的に許容できるカチオンとしては当業者に周知であり、アルカリ、アルカリ土類、アンモニアおよび第四アンモニウムカチオンが挙げられる。炭酸塩または炭酸水素塩もまた可能である。
オリゴヌクレオチドについての、薬学的に許容できる塩の例としては、限定されないが、(a)ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウム、スペルミンおよびスペルミジン等のポリアミン等のカチオンで形成された塩;(b)例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等の無機酸で形成された酸付加塩;(c)例えば、酢酸、蓚酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸等の有機酸等で形成された塩;ならびに(d)塩素、臭素、およびヨウ素等のアニオン元素から形成された塩が挙げられる。アンチセンスオリゴヌクレオチドのナトリウム塩は有用で、人間の治療の投与のためによく認められる。別の態様において、dsRNA化合物のナトリウム塩もまた提供される。
製剤
本発明のオリゴマー化合物はまた、取り込み、分布および/または吸収を助けるために、例えばリポソーム、受容体標的分子、経口、直腸、局所、もしくは他の製剤の他の分子、分子構造もしくは化合物の混合物と混合され、カプセルに入れられ、結合され、または他の場合には関連付けられ得る。かかる取り込み、分布および/または吸収を助ける製剤の調製法を教示する代表的な米国特許としては、限定されないが、米国特許第:5,108,921号; 5,354,844号; 5,416,016号; 5,459,127号; 5,521,291号; 5,543,158号; 5,547,932号; 5,583,020号; 5,591,721号; 4,426,330号; 4,534,899号; 5,013,556号; 5,108,921号; 5,213,804号; 5,227,170号; 5,264,221号; 5,356,633号; 5,395,619号; 5,416,016号; 5,417,978号; 5,462,854号; 5,469,854号; 5,512,295号; 5,527,528号; 5,534,259号; 5,543,152号; 5,556,948号; 5,580,575号; および5,595,756号が挙げられる。
本発明はまた、本発明のアンチセンス化合物を含有する医薬組成物および製剤を含む。本発明の医薬組成物は、局所または全身治療が望まれるかどうか、および治療される部分により、多数の方法で投与され得る。投与は、局所的(限定されないが、眼、ならびに膣および直腸送達を含む粘膜へを含む)、例えば噴霧器によることを含む粉末もしくはエアロゾルの吸入もしくは通気による肺(気管内、鼻腔内、表皮に、ならびに経皮的)、経口または非経口であり得る。非経口投与としては、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内もしくは筋肉内への注射もしくは点滴、または頭蓋内、例えば髄腔内もしくは脳室内、への投与が挙げられる。投与の場所は当業者に公知である。少なくとも一つの2’-O-メトキシエチル修飾をもつオリゴヌクレオチドは、経口投与に有用であると考えられる。
局所投与用医薬組成物および製剤としては、経皮貼付剤、軟膏、ローション剤、クリーム、ゲル、ドロップ、坐剤、噴霧剤、液体、および粉末が挙げられ得る。従来の医薬担体、水性、粉末または油性の基剤、増粘剤等が必要または望まれ得る。コーティングされたコンドーム、手袋等もまた有用であり得る。
局所投与のための製剤としては、本発明のオリゴマー化合物が脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート剤および界面活性剤等の局所送達薬剤と混合されているものが挙げられる。
局所または他の投与のために、本発明のオリゴマー化合物はリポソーム内に封入され得るか、またはそれとの複合体、陽イオン性リポソーム等との複合体を形成し得る。あるいは、オリゴヌクレオチドは脂質、特に陽イオン性脂質と複合体を形成し得る。脂肪酸およびエステル、その薬学的に許容できる塩、ならびにその使用は米国特許第6,287,860号にさらに記載される。局所製剤は、1999年5月20日に出願された米国特許出願第09/315,298号に詳細に記載される。
本発明の医薬製剤は、単位投与量形態で便利に存在し得るが、製薬産業で周知の従来技術にしたがって調製され得る。かかる技術としては、活性成分を薬学的担体または賦形剤と関連させる工程が挙げられる。一般的に製剤は、活性成分を液体担体もしくは微粉化した固体担体または両方と一様にかつ緻密に関連させ、次いで必要に応じて生成物を形作ることで調製される。
本発明の組成物は、限定されないが、錠剤、カプセル、ゲルカプセル、液体シロップ剤、ソフトゲル、坐薬および浣腸等の、任意の可能性のある多くの投薬形態へ製剤化され得る。本発明の組成物はまた、水性媒体、非水性媒体または混合媒体における懸濁液として製剤化され得る。水性懸濁液はさらに、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランを含む懸濁液の粘性を増大させる物質を含み得る。懸濁液はまた安定剤を含み得る。
本発明の医薬組成物としては、限定されないが、溶液、乳状液、泡およびリポソーム含有製剤が挙げられる。本発明の医薬組成物および製剤は、1つ以上の浸透促進剤、担体、賦形剤、または他の活性もしくは不活性成分を含み得る。
本発明の医薬製剤および医薬組成物はまた界面活性剤を含有し得る。薬物製品、製剤および乳状液中の界面活性剤の使用は、当該分野において周知である。界面活性剤およびその使用は、米国特許第6,287,860号にさらに記載される。
ある態様において、本発明はオリゴマー化合物、特にオリゴヌクレオチドの、効率的な送達に作用する様々な浸透促進剤を使用する。浸透促進剤は5つの広いカテゴリー、すなわち、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート剤および非キレート非界面活性剤の1つに属するものとして分類され得る。浸透促進剤およびその使用は、米国特許第6,287,860号にさらに記載される。
いくつかの態様において、非経口でない投与のための組成物は、天然由来のオリゴヌクレオチドからの1つ以上の修飾(すなわち、フル(full-)-ホスホジエステルデオキシリボシルまたはフル(full-)-ホスホジエステルリボシルオリゴヌクレオチド)を含む。かかる修飾は結合親和性、ヌクレアーゼ安定性、細胞もしくは組織浸透性、組織分布、または他の生物学的もしくは薬動力学的性質を増大し得る。
非経口でないオリゴマー化合物の投与のための経口組成物は、限定されないが、錠剤、カプセル、液体シロップ剤、ソフトゲル、坐薬および浣腸等の様々な投薬形態へと製剤化され得る。用語「栄養の送達」は例えば経口、直腸、内視鏡および舌下/頬への投与を含む。かかる経口のオリゴマー化合物組成物は「粘膜浸透促進剤」と称され得る。
オリゴヌクレオチド等のオリゴマー化合物は、噴霧乾燥粒子を含む顆粒状形態で経口的に送達され得るか、またはマイクロもしくはナノ粒子を形成するために複合化され得る。オリゴヌクレオチド複合化剤およびその使用は、米国特許第6,287,860号にさらに記載される。オリゴヌクレオチドの経口製剤およびその調製法は、米国特許出願第09/108,673号(1998年7月1日出願)、第09/315,298号(1999年5月20日出願)および2002年2月8日に出願された第10/071,822号に詳細に記載される。
ある態様において、経口のオリゴマー化合物組成物は、界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート剤および非キレート界面活性剤からなる群より少なくとも1つを含む。さらなる態様は、脂肪酸、例えばカプリン酸もしくはラウリン酸、またはそれらの組み合わせもしくは塩を少なくとも1つ含む経口のオリゴマー化合物を含む。1つの組み合わせはラウリン酸のナトリウム塩、カプリン酸、およびUDCAである。
ある態様において、経口送達のためのオリゴマー化合物組成物は、粒子、カプセル、ゲルカプセル、ミクロスフィア等を含み得る少なくとも2つの別々の相を含む。それぞれの相は1つ以上のオリゴマー化合物、浸透促進剤、界面活性剤、生体接着剤、発泡剤、または他の補助剤、賦形剤もしくは希釈剤を含み得る。
「薬学的担体」または「賦形剤」は、1つ以上の核酸を動物に送達する薬学的に許容できる溶媒、懸濁化剤または他の任意の薬理学的に不活性なビヒクルであり得、当該分野で公知である。賦形剤は液体または固体であり得、計画された投与の方法を考慮して、核酸および所定の医薬組成物の他成分と結合した時に、所望の容量、濃度等を提供できるように選択される。
経口のオリゴマー組成物は、従来医薬組成物で見られる他の補助的な成分を、技術が確立された使用量でさらに含み得る。例えば、該組成物はさらなる、適合性のある、例えば痒み止め、アストリンゼン、局所麻酔薬または抗炎症剤等の薬学的に活性な物質を含み得るか、染料、香料、保存料、抗酸化剤、乳白剤、増粘剤、および安定剤等の本発明の組成物の様々な投与形態を物理的に製剤化するのに有用なさらなる物質を含み得る。
当業者の方は、使用目的、すなわち投与経路に従って、製剤化が通常通り計画されていることを理解するであろう。
併用
本発明の組成物は2つ以上のオリゴマー化合物を含み得る。別の関連ある態様において、本発明の組成物は、第1の核酸を標的にする1つ以上のアンチセンス化合物、特にオリゴヌクレオチド、および第2の核酸標的を標的にする1つ以上のさらなるアンチセンス化合物を含み得る。あるいは、本発明の組成物は、同じ核酸標的の異なる領域を標的にした2つ以上のアンチセンス化合物を含み得る。2つ以上の結合した化合物が、一緒にまたは連続して使用され得る。
併用療法
本発明の化合物は、付加的な効果が本発明の1つ以上の化合物および1つ以上の他の適当な治療/予防の化合物を投与することによって達成され病気を治療する併用療法で用いられ得る。適当な治療/予防の化合物としては、限定されないが、グルコース降下剤、抗肥満剤、脂質降下剤、またはグルコースおよび/もしくはインスリン代謝、脂質および/もしくはトリグリセリド値、もしくは肥満に関係する遺伝子もしくは遺伝子産物の阻害剤が挙げられる。グルコース降下剤としては、限定されないが、ホルモンもしくはホルモン模倣剤(例えば、インスリン、GLP-1もしくはGLP-1アナログ、エキセンディン-4もしくはリラグルチド)、スルホニル尿素(例えば、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、トルブタミド、トラザミド、グリメピリド、グリピジド、グリブリド、微小グリブリド、またはグリクラジド)、ビグアナイド(メトフォルミン)、メグリチニド(例えば、ナテグリニドもしくはレパグリニド)、チアゾリジンジオンもしくは他のPPAR-g作用薬(例えば、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、トログリタゾン、もしくはイサギタゾン)、PPAR-gおよびPPAR-aの両者に親和性を持つ、2通りに作用するPPAR作用薬(例えば、BMS-298585およびテサグリタザル)、a-グルコシダーゼインヒビター(例えば、アカルボースもしくはミグリトール)、またはグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼを標的としないアンチセンス化合物等が挙げられる。既に複合製剤に用いられたグルコース降下剤は、付加的な効果を達成するために本発明の化合物との使用にも適当である。抗肥満剤としては、限定されないが、食欲抑制剤(例えば、フェンテルミンもしくはメリディアTM)、オルリスタット(例えば、ゼニカルTM)等の脂肪吸収インヒビター、食欲を刺激する、より巨大な信号を阻害する毛様の神経栄養因子の修飾型、またはグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼを標的としないアンチセンス化合物が挙げられる。脂質降下剤としては、限定されないが、樹脂を隔離する胆汁酸塩(例えばコレスチラミン、コレスチポール、およびコレセベラム塩酸塩)、HMGCoA-レダクターゼインヒビター(例えば、ロバスタチン、セリバスタチン、プレバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン、およびフルバスタチン)、ニコチン酸、フィブリン酸誘導体(例えば、クロフィブレート、ゲムフィブロジル、フェノフィブレート、ベザフィブレート、およびシプロフィブレート)、プロブコール、ネオマイシン、デキストロサイロキシン、植物スタノールエステル、コレステロール吸収インヒビター(例えば、エゼチミブ)、CETPインヒビター(例えば、トルセトラピブ、およびJTT-705)MTPインヒビター(例えば、インプリタピド)、胆汁酸トランスポーターインヒビター(頂端(apical)ナトリウム依存性胆汁酸トランスポーター)、肝臓のCYP7a調整剤、ACATインヒビター(例えば、アバシミブ(Avasimibe))、エストロゲン代償治療薬(例えば、タモキシゲン)、合成HDL(例えば、ETC-216)、抗炎症薬(例えば、グルココルチコイド)、またはグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼを標的としないアンチセンス化合物が挙げられる。グルコースおよび/もしくはインスリン代謝、脂質および/もしくはトリグリセリド値、または肥満に関係する遺伝子もしくは遺伝子産物の阻害剤としては、限定されないが、小さな分子、抗体、ペプチド断片、またはアンチセンスインヒビター(リボザイムおよびsiRNA分子を含む)が挙げられる。1つ以上のこれらの薬剤は追加の治療効果を達成するために、1つ以上のグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビターと結合し得る。結合した化合物は、一緒にまたは連続して使用され得る。
オリゴマー合成
修飾および非修飾のヌクレオシドは通常、DNA(Protocols for Oligonucleotides and Analogs, 編. Agrawal (1993), Humana Press)および/またはRNA(Scaringe, Methods (2001), 23, 206-217. Gaitら, Applications of Chemically synthesized RNA in RNA: Protein Interactions, 編 Smith (1998), 1-36. Galloら, Tetrahedron (2001), 57, 5707-5713)のための文献の手順に従い、オリゴマー化が行われ得る。
本発明のオリゴマー化合物は、固相合成の周知の技術により、簡便かつ決まりきった手順で調製され得る。かかる合成のための装置は、例えば、Applied Biosystems(Foster City, CA)を含むいくつかの販売業社により販売されている。当該分野で公知のかかる合成の任意の他の手段が、さらにまたは代替的に使用され得る。同様の技術を使用して、ホスホロチオエートおよびアルキル化誘導体等のオリゴヌクレオチドを調製することが周知である。
前駆化合物
アミダイトおよびその中間体を含む以下の前駆化合物は、当業者に決まりきった方法で調製され得る; 5-メチル dC アミダイトの5'-O-ジメトキシトリチル-チミジン中間体、5-メチル-dCアミダイトの5'-O-ジメトキシトリチル-2'-デオキシ-5-メチルシチジン中間体、5-メチルdCアミダイトの5'-O-ジメトキシトリチル-2'-デオキシ-N4-ベンゾイル-5-メチルシチジンの最後から2番目の中間体、(5'-O-(4,4'-ジメトキシトリフェニルメチル)-2'-デオキシ-N4-ベンゾイル-5-メチルシチジン-3'-O-イル)-2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホルアミダイト(5-メチルdCアミダイト)、2'-フルオロデオキシアデノシン、2'-フルオロデオキシグアノシン、2'-フルオロウリジン、2'-フルオロデオキシシチジン、2'-O-(2-メトキシエチル)修飾アミダイト、2'-O-(2-メトキシエチル)-5-メチルウリジン中間体、5'-O-DMT-2'-O-(2-メトキシエチル)-5-メチルウリジンの最後から2番目の中間体、(5'-O-(4,4'-ジメトキシトリフェニルメチル)-2'-O-(2-メトキシエチル)-5-メチルウリジン-3'-O-イル)-2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホルアミダイト(MOE Tアミダイト)、5'-O-ジメトキシトリチル-2'-O-(2-メトキシエチル)-5-メチルシチジン中間体、5'-O-ジメトキシトリチル-2'-O-(2-メトキシエチル)-N4-ベンゾイル-5-メチル-シチジンの最後から2番目の中間体、(5'-O-(4,4'-ジメトキシトリフェニルメチル)-2'-O-(2-メトキシエチル)-N4-ベンゾイル-5-メチルシチジン-3'-O-イル)-2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホルアミダイト(MOE 5-Me-Cアミダイト)、(5'-O-(4,4'-ジメトキシトリフェニルメチル)-2'-O-(2-メトキシエチル)-N6-ベンゾイルアデノシン-3'-O-イル)-2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホルアミダイト(MOE Aアミダイト)、(5'-O-(4,4'-ジメトキシトリフェニルメチル)-2'-O-(2-メトキシエチル)-N4-イソブチリルグアノシン-3'-O-イル)-2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルホスホルアミダイト(MOE Gアミダイト)、2'-O-(アミノオキシエチル)ヌクレオシドアミダイトおよび2'-O-(ジメチルアミノオキシ-エチル)ヌクレオシドアミダイト、2'-(ジメチルアミノオキシエトキシ)ヌクレオシドアミダイト、5'-O-tert-ブチルジフェニルシリル-O2-2'-アンヒドロ-5-メチルウリジン、5'-O-tert-ブチルジフェニルシリル-2'-O-(2-ヒドロキシエチル)-5-メチルウリジン、2'-O-((2-フタルイミドキシ)エチル)-5'-t-ブチルジフェニルシリル-5-メチルウリジン、5'-O-tert-ブチルジフェニルシリル-2'-O-((2-ホルムアドキシイミノオキシ)エチル)-5-メチルウリジン、5'-O-tert-ブチルジフェニルシリル-2'-O-(N,Nジメチルアミノオキシエチル)-5-メチルウリジン、2'-O-(ジメチルアミノオキシエチル)-5-メチルウリジン、5'-O-DMT-2'-O-(ジメチルアミノオキシエチル)-5-メチルウリジン、5'-O-DMT-2'-O-(2-N,N-ジメチルアミノオキシエチル)-5-メチルウリジン-3'-((2-シアノエチル)-N,N-ジイソプロピルホスホルアミダイト)、2'-(アミノオキシエトキシ)ヌクレオシドアミダイト、N2-イソブチリル-6-O-ジフェニルカルバモイル-2'-O-(2-エチルアセチル)-5'-O-(4,4'-ジメトキシトリチル)グアノシン-3'-((2-シアノエチル)-N,N-ジイソプロピルホスホルアミダイト)、2'-ジメチルアミノエトキシエトキシ(2'-DMAEOE)ヌクレオシドアミダイト、2'-O-(2(2-N,N-ジメチルアミノエトキシ)エチル)-5-メチルウリジン、5'-O-ジメトキシトリチル-2'-O-(2(2-N,N-ジメチルアミノエトキシ)-エチル))-5-メチルウリジンおよび5'-O-ジメトキシトリチル-2'-O-(2(2-N,N-ジメチルアミノエトキシ)-エチル))-5-メチルウリジン-3'-O-(シアノエチル-N,N-ジイソプロピル)ホスホルアミダイト。
オリゴヌクレオチド合成のためのかかる前駆化合物の調製法は当該分野で決まりきっており、米国特許第6,426,220号および公開PCT 第WO 02/36743号に開示される。
2’-デオキシおよび2’-メトキシb-シアノエチルジイソプロピルホスホルアミダイトは市販業者(例えばChemgenes, Needham, MAまたはGlen Research, Inc. Sterling, VA)から購入できる。他の2’-O-アルコキシ置換ヌクレオシドアミダイトは米国特許第5,506,351号に記載のように調製され得る。
5’-メチル-2’‐デオキシシチジン(5-Me-C)ヌクレオチド含有オリゴヌクレオチドは通常、市販のホスホルアミダイト(Glen Research, Sterling VAまたはChemGenes, Needham, MA)を用いて、刊行されている方法(Sanghviら, Nucleic Acids Research, 1993, 21, 3197-3203)に従って合成され得る。
2’-フルオロオリゴヌクレオチドは通常、(Kawasakiら, J. Med. Chem., 1993, 36, 831-841)および米国特許第5,670,633号に記載のように合成され得る。
2’-O-メトキシエチル-置換ヌクレオシドアミダイトは通常、Martin, P., Helvetica Chimica Acta, 1995, 78, 486-504の方法により調製され得る。
アミノオキシエチルおよびジメチルアミノオキシエチルアミダイトは通常、米国特許第6,127,533号の方法により調製され得る。
オリゴヌクレオチド合成
ホスホロチオエート含有オリゴヌクレオチド(P=S)は、当業者には決まりきった方法によって合成され得る(例えば、Protocols for Oligonucleotides and Analogs, 編 Agrawal (1993), Humana Pressを参照)。ホスフィネートオリゴヌクレオチドは、米国特許第5,508,270号に記載のように調製され得る。
アルキルホスホネートオリゴヌクレオチドは、米国特許第4,469,863号に記載のように調製され得る。
3'-デオキシ-3'-メチレンホスホネートオリゴヌクレオチドは、米国特許第5,610,289号または同第5,625,050号に記載のように調製され得る。
ホスホルアミダイトオリゴヌクレオチドは、米国特許第5,256,775号または同第5,366,878号に記載のように調製され得る。
アルキルホスホノチオエートオリゴヌクレオチドは、公開PCT出願第PCT/US94/00902号および同第PCT/US93/06976号(それぞれ第WO 94/17093号および第WO 94/02499号として公開されている)に記載のように調製され得る。
3'-デオキシ-3'-アミノ ホスホルアミデートオリゴヌクレオチドは、米国特許第5,476,925号に記載のように調製され得る。
ホスホトリエステルオリゴヌクレオチドは、米国特許第5,023,243号に記載のように調製され得る。
ボラノリン酸オリゴヌクレオチドは、米国特許第5,130,302号および同第5,177,198号に記載のように調製され得る。
4'-チオ含有オリゴヌクレオチドは米国特許第5,639,873号に記載のように合成され得る。
オリゴヌクレオシド合成
MMI結合オリゴヌクレオシドとしても特定されるメチレンメチルイミノ結合オリゴヌクレオシド、MDH結合オリゴヌクレオシドとしても特定されるメチレンジメチルヒドラゾ結合オリゴヌクレオシド、およびアミド-3結合オリゴヌクレオシドとしても特定されるメチレンカルボニルアミノ結合オリゴヌクレオシド、およびアミド-4結合オリゴヌクレオシドとしても特定されるメチレンアミノカルボニル結合オリゴヌクレオシド、ならびに、例えば、交互にMMIおよびP=OまたはP=S結合を有する混合主鎖化合物は、米国特許第5,378,825号、同第5,386,023号、同第5,489,677号、同第5,602,240号および同第5,610,289号に記載のように調製され得る。
ホルムアセタールおよびチオホルムアセタール結合オリゴヌクレオシドは、米国特許第5,264,562号および同第5,264,564号に記載のように調製され得る。
エチレンオキシド結合オリゴヌクレオシドは、米国特許第5,223,618号に記載のように調製され得る。
ペプチド核酸合成
ペプチド核酸(PNA)は、Peptide Nucleic Acids (PNA): Synthesis, Properties and Potential Applications, Bioorganic & Medicinal Chemistry, 1996, 4, 5-23に引用される様々な手順のいずれに従っても調製され得る。それらはまた、米国特許第5,539,082号、同第5,700,922号、同第5,719,262号、同第6,559,279号および同第6,762,281号に従っても調製され得る。
2’-O-保護オリゴマーの合成/RNA合成
オリゴマー化合物は当該分野で決まりきった方法で、少なくとも1つの2’-O-保護ヌクレオシドを組み込む(incorporating)。組み込みと適切な脱保護の後、該2’-O-保護ヌクレオシドは組み込まれた場所においてリボヌクレオシドに転換されるだろう。最終オリゴマー化合物における2-リボヌクレオシド単位の数と場所はいずれの場所においても異なり得るか、または該戦略が全部の2’-OH修飾オリゴマー化合物までを調製するのに用いられ得る。
多数の2’-O-保護基がオリゴリボヌクレオチドの合成に用いられてきており、いずれもが用いられ得る。オリゴリボヌクレオチド合成にまず用いられる保護基のいくつかは、テトラヒドロピラン-1-イルおよび4-メトキシテトラヒドロピラン-4-イルを含んだ。これらの2つの基は全ての5’-O-保護基と互換性がなく、修飾型は1-(2-フルオロフェニル)-4-メトキシピペリジン-4-イル(Fpmp)等の5’-DMT基と共に用いられた。Reeseらは、1-[(クロロ-4-メチル)フェニル]-4’-メトキシピペリジン-4-イルを含むオリゴリボヌクレオチドの合成に有用な多数のピペリジン誘導体(Fpmpのような)を同定している(Reeseら, Tetrahedron Lett., 1986, (27), 2291)。別のやり方は、標準の5’-DMT(ジメトキシトリチル)基を、レブリニルおよび9-フルオレニルメトキシカルボニル等の非酸性条件下で除去された保護基と交換することである。かかる基はオリゴリボヌクレオチドの合成のために酸に不安定な2’‐保護基の使用を可能にする。より広く用いられる別の保護基は、初めはオリゴリボヌクレオチドの合成に用いられた、t-ブチルジメチルシリル基である(Ogilvie ら, Tetrahedron Lett., 1974, 2861; Hakimelahiら, Tetrahedron Lett., 1981, (22), 2543; およびJonesら, J. Chem. Soc. Perkin I., 2762)。該2’-O-保護基は除去のために、特別な試薬を必要とし得る。例えば、該t-ブチルジメチルシリル基は通常、オリゴマー化合物をフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)と処理することによる全ての他の開裂/脱保護工程の後に除去される。
研究者のあるグループは多数の2’-O-保護基を調査した(Pitsch, S., Chimia, 2001, (55), 320-324.)。該グループは、穏やかな条件を用いて除去されるフッ化物に不安定で感光の保護基を調査した。調査されたある感光の基は[2-(ニトロベンジル)オキシ]メチル(nbm)保護基であった(Schwartzら, Bioorg. Med. Chem. Lett., 1992, (2), 1019.)。調査された他の基には、多数の、構造的に関連したホルムアルデヒドアセタールに由来する2’-O-保護基が含まれた。2’-O-[(トリイソプロピルシリル)オキシ]メチル(2’-O-CH2-O-Si(iPr)3, TOM)を含む2’-O-アルキル化ヌクレオシドホスホルアミダイトを調製するために調製されたものはまた、多数の関連した保護基であった。該TOM基に直角に用いられるために調製されたある2’-O-保護基は2’-O-[(R)-1-(2-ニトロフェニル)エチルオキシ)メチル]((R)-mnbm)であった。
フッ化物に不安定な5’-O-保護基(酸に不安定ではない)および酸に不安定な2’-O-保護基を用いる別の戦略が報告されている(Scaringe, Stephen A., Methods, 2001, (23) 206-217)。多数性のある可能なシリルエーテルが5’-O-保護について調査され、多数のアセタールとオルトエステルが2’-O-保護について調査された。最高の結果を与えた保護の仕組みは5’-O-シリルエーテル-2’-ACE(5’-O-ビス(トリメチルシルオキシ)シクロドデシルオキシシリルエーテル(DOD)-2’-O-ビス(2‐アセトキシエトキシ)メチル(ACE)であった。このやり方は、RNA/DNA合成に通常は用いられない様々な試薬を必要とする点で、修飾ホスホルアミダイト合成のやり方を用いる。
現在商業的に用いられる主なRNA合成戦略としては、5’-O-DMT‐2’-O-t-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、5’-O-DMT‐2’-O-[1(2-フルオロフェニル)-4-メトキシピペリジン‐4‐イル](FPMP)、2’-O-[(トリイソプロピルシリル)オキシ]メチル(2’-O-CH2-O-Si(iPr)3(TOM)、および5’-O-シリルエーテル-2’-ACE(5’-O-ビス(トリメチルシルオキシ)シクロドデシルオキシシリルエーテル(DOD)-2’-O-ビス(2‐アセトキシエトキシ)メチル(ACE)が挙げられる。現在RNA製品を提供するいくつかの企業としては、Pierce Nucleic Acid Technologies (Milwaukee, WI)、Dharmacon Research Inc. (Fisher Scientificの子会社, Lafayette, CO)、およびIntegrated DNA Technologies, Inc. (Coralville, IA)が挙げられる。ある企業、Princeton Separationsは、特にTOMとTBDMSの化学反応のカップリング時間を削減することを宣伝したRNA合成活性剤を市販している。かかる活性剤は本発明のオリゴマー化合物にもまた用いやすい。
前述のRNA合成戦略の全ては本発明のオリゴマー化合物に用いやすい。上記の複合型、例えば1つの戦略からの5’-保護基と、別の戦略からの2’-保護基とを用いる戦略も、本明細書中で意図されている。
キメラオリゴマー化合物の合成
(2'-O-Me)--(2'-デオキシ)--(2'-O-Me) キメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチド
2'-O-アルキルホスホロチオエートおよび2'-デオキシホスホロチオエートオリゴヌクレオチド部分を有するキメラオリゴヌクレオチドは、例えば、Applied Biosystems自動化DNA合成機モデル394を用いて当業者によって慣例的に合成され得る。オリゴヌクレオチドは、自動化合成機ならびにDNA部分用の2'-デオキシ-5'-ジメトキシトリチル-3'-O-ホスホルアミダイトおよび2'-O-アルキル部分用の5'-ジメトキシトリチル-2'-O-メチル-3'-O-ホスホルアミダイトを使用して合成され得る。1つの非限定例において、標準的な合成サイクルを、5'-ジメトキシトリチル-2'-O-メチル-3'-O-ホスホルアミダイト用に反応時間を長くしたカップリング工程を導入することにより変更する。完全に保護したオリゴヌクレオチドを支持体から切断し、濃縮アンモニア(NH4OH)中で12〜16時間、55℃で脱保護する。次いで、脱保護オリゴヌクレオチドを、適切な方法(沈殿、カラムクロマトグラフィー、真空中での容積減少)で回収し、当該分野で慣例の方法で解析する。
(2'-O-(2-メトキシエチル))--(2'-デオキシ)--(2'-O-(メトキシエチル))キメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチド
(2'-O-(2-メトキシエチル))--(2'-デオキシ)--(-2'-O-(メトキシエチル))キメラホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは、2'-O-メチルアミダイトを2'-O-(メトキシエチル)アミダイトに置換し、2'-O-メチルキメラオリゴヌクレオチドについて上述した手順により調製され得る。
(2'-O-(2-メトキシエチル)ホスホジエステル)--(2'-デオキシホスホロチオエート)--(2'-O-(2-メトキシエチル)ホスホジエステル)キメラオリゴヌクレオチド
(2'-O-(2-メトキシエチル ホスホジエステル)--(2'-デオキシホスホロチオエート)--(2'-O-(メトキシエチル)ホスホジエステル)キメラオリゴヌクレオチドは、2'-O-メチルキメラオリゴヌクレオチドについて上述した手順により、2'-O-メチル アミダイトを2'-O-(メトキシエチル)アミダイトに置換し、ヨウ素で酸化してキメラ構造のウイング部内でホスホジエステルヌクレオチド間結合を形成し、3,H-1,2ベンゾジチオール-3-オン1,1-ジオキシド(Beaucage試薬)を利用して硫化することによりセンターギャップにホスホロチオエートヌクレオチド間結合を形成することによって、調製され得る。
他のキメラオリゴヌクレオチド、キメラオリゴヌクレオシド及び混合キメラオリゴヌクレオチド/オリゴヌクレオシドを米国特許出願第5,623,065号に従って合成し得る。
オリゴマー精製及び分析
オリゴヌクレオチド精製及び分析の方法は、当業者に公知である。分析方法としては、キャピラリー電気泳動(CE)及び電子スプレー質量分光分析法が挙げられる。かかる合成及び分析方法をマルチウェルプレートで行い得る。
非限定開示及び参照による援用
本発明のいくつかの化合物、組成物及び方法はいくつかの態様に従って具体的に記載されているが、本明細書中の実施例は本発明の化合物を例証するのみならず、同様なものに限定することを意図しない。参照、GENBANK(登録商標)受託番号、及び本願に引用される類似物のそれぞれは、その全体を、参照によって本明細書中に援用する。
実施例1
発現変化のアッセイ
グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ発現の変化を、当該分野で公知の様々な方法でアッセイし得る。グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼmRNAレベルを例えば、ノザンブロット分析、競合的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、またはリアルタイムPCRによって定量し得る。RNA分析を、当該分野で公知の方法によって、全細胞性RNA又はポリ(A)+mRNAについて行い得る。RNA単離の方法を、例えば、Ausubel,F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology, Volume 1,pp.4.1.1-4.2.9及び 4.5.1-4.5.3, John Wiley &Sons, Inc., 1993の中で教示する。
ノザンブロット分析は当該分野で慣例であり、例えば、Ausubel,F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology,Volume 1,pp.4.2.1-4.2.9, John Wiley&Sons,Inc., 1996の中で教示される。リアルタイム定量(PCR)を、PE-Applied Biosystems, Foster City, CAから入手される、市販のABI PRISMTM7700 Sequence Detection Systemを用いて簡便に達成し得、製造者の指示に従って使用し得る。
グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼにコードされるタンパク質レベルを、免疫沈降、ウエスタンブロット分析(免疫ブロッティング)、ELISAまたは蛍光活性化細胞選別機(FACS)等の当該分野で周知の種々の方法で定量し得る。グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼにコードされるタンパク質に対する抗体を、抗体のMSRSカタログ(Aerie Corporation, Birmingham, MI)等の種々の供給源から同定かつ入手し得るか、あるいは、従来の抗体産生方法により調製し得る。ポリクローナル抗血清の調製方法を、例えば、Ausubel,F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology,Volume 2, pp. 11.12.1-11.12.9, John Wiley&Sons,Inc., 1997に教示する。モノクローナル抗体の調製は、例えば、Ausubel,F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology,Volume 2,pp.11.4.1-11.11.5, John Wiley&Sons,Inc., 1997に教示される。
免疫沈降法は、当該分野で標準であり、例えば、Ausubel,F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology,Volume 2,pp.10.16.1-10.16.11, John Wiley & Sons, Inc., 1998に見出され得る。ウエスタンブロット(免疫ブロット)分析は当該分野で標準であり、例えば、Ausubel,F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology,Volume 2,pp.10.8.1-10.8.21, John Wiley&Sons,Inc., 1997に見出され得る。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)は、当該分野で標準であり、例えば、Ausubel,F.M.ら、Current Protocols in Molecular Biology,Volume 2,pp.11.2.1-11.2.22, John Wiley&Sons,Inc., 1991に見出され得る。
標的の核酸発現についての本発明のオリゴマー化合物の効果を、標的核酸が測定可能なレベルで存在することが提供される、任意の様々な細胞タイプで試験し得る。標的の核酸発現についての本発明のオリゴマー化合物の効果を、例えば、PCR又はノザンブロット分析を用いて慣例的に測定し得る。細胞株は、正常組織と細胞タイプの両方由来及び種々の疾患と関連する細胞由来である(例えば、過増殖性疾患)。多くの組織及び種由来の細胞株を、American Type Culture Collection(ATCC,Manassas,VA)から入手し得、Caco-2、D1 TNC1、SKBR-3、SK-MEL-28、TRAMP-C1、U397、未分化3T3-L1、7F2、7D4、A375、ARIP、AML-12、A20、A549、A10、A431、BLO-11、BC3H1、B16-F10、BW5147.3、BB88、BHK-21、BT-474、BEAS2B、C6、CMT-93、C3H/10T1/2、CHO-K1、ConA、C2C12、C3A、COS-7、CT26.WT、DDT1-MF2、DU145、D1B、E14、EMT-6、EL4、FAT7、GH1、GH3、G-361、HT-1080、HeLa、HCT116、H-4-II-E、HEK-293、HFN36.3、HuVEC、HEPA1-6、H2.35、HK-2、Hep3B、HepG2、HuT78、HL-60、H9c2(2-1)、H9c2(2-1)、IEC-6、IC21、JAR、JEG-3、Jurkat、K-562、K204、L2、LA4、LC-540、LLC1、LBRM-33、L6、LNcAP、LL2、MLg2908、MMT 060562、MH-S、MCF7、MDA MB231、MRC-5、M-3、Mia Paca、MLE12、MDA MB 468、MDA、NOR-10、NCTC 3749、N1S1、NBT-II、NIH/3T3、NCI-H292、NTERA-2c1.D1、NIT-1、NCCIT、NR-8383、NRK、NG108-15、P388D1、PC-3、PANC-1、PC-12、P-19、P388D1(IL-1)、RFL-6、R2C、RK3E、Rin-M、Rin-5F、RBL-2H3、RMC、RAW264.7、Raji、Rat-2、SV40 MES 13、SMT/2A LNM、SW480、TCMK-1、THLE-3、TM-3、TM4、T3-3A1、T47D、T-24、THP-1、UMR-106、U-87 MG、U-2OS、VERO C1008、WISH、WEHI 231、Y-1、YB2/0、Y13-238、Y13-259、Yac-1、b.END、mIMCD-3、sw872及び70Z3を含む。HuH-7及びU373等の、さらなる細胞株を、日本ガン研究資源バンク(Tokyo, Japan)及び応用微生物研究センター(Wiltshire,United Kingdom)それぞれから入手し得る。
一次細胞、又は動物から単離され、連続培養に供されない細胞を、当該分野で公知の方法に従って調製し得るか、あるいは種々の市販供給者から入手し得る。さらに、一次細胞は、臨床セッティング(つまり、血液ドナー、外科患者)におけるヒト被験体のドナーから得られるものを含む。当該分野で公知の方法によって調製される一次細胞としては、マウス又はラットの気管支肺胞洗浄細胞、マウス一次骨髄由来破骨細胞、マウス一次ケラチン生成細胞、ヒト一次マクロファージ、マウス腹膜マクロファージ、ラット腹膜マクロファージ、ラット一次ニューロン、マウス一次造骨細胞、ラット一次造骨細胞、ラット脳組織細胞、ラット脳組織細胞、ラット海馬組織細胞、マウス一次脾細胞、ヒト滑膜細胞、マウス滑膜細胞及びラット滑膜細胞が挙げられる。ヒト一次メラニン形成細胞、ヒト一次単球、NHDC、NHDF、成熟NHEK、新生NHEK、ヒト一次腎臓近位尿細管上皮細胞、マウス胚性繊維芽細胞、分化脂肪細胞、HASMC、HMEC、HMVEC-L、成熟HMVEC-D、新生HMVEC-D、HPAEC、ヒト一次肝細胞、サル一次肝細胞、マウス一次肝細胞、ハムスター一次肝細胞、ウサギ一次肝細胞及びラット一次肝細胞を含む、更なるタイプの一次細胞を、Stem Cell Technologies; Zen-Bio,Inc.(Research Triangle Park,NC); Cambrex Biosciences (Walkersville, MD) ; In Vitro Technlogies (Baltimore,MD);Cascade Biologies (Portland, OR); Advanced Biotechnologies (Columbia, MD)等の市販供給者から入手し得る。
細胞タイプ
標的の核酸発現についてのオリゴマー化合物の効果を、以下の1つ以上の細胞タイプで試験した。
マウス一次肝細胞:
マウス一次肝細胞をCharles River Labsから購入されたCD-1マウスから調製した。マウス一次肝細胞を、慣例的に10%ウシ胎児血清(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad,CA)、250nMデキサメタゾン、及び10nMウシインシュリン(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を添加したHepatocyte Attachment Media中で培養した。細胞を、オリゴマー化合物トランスフェクション実験での使用のために、およそ4,000-6,000細胞/ウェルの密度で96ウェルプレート(Falcon-Primaria ♯353872,BD Biosciences, Bedford, MA)中に播種した。
HepG2:
ヒト肝芽細胞腫細胞株HepG2を、American Type Culture Collection (Manassas, VA)から入手した。 HepG2細胞を、10%ウシ胎児血清、1mM非必須アミノ酸、及び1mMピルビン酸ナトリウム(Invitrogen Life Technologies,Carlsbad,CA)を添加したEagle MEM中で慣例的に培養した。細胞を、およそ90%コンフルエンスに達したときにトリプシン処理および希釈により慣例的に継代した。細胞培養のために、リン酸緩衝化食塩水中の1:100の希釈倍率の1型ラット尾コラーゲン(BD Biosciences, bedford, MA)で被覆することでマルチウェル培養プレートを調製した。コラーゲン含有プレートを37℃でおよそ1時間インキュベートした後に、コラーゲンを除去し、ウェルを2度リン酸緩衝化食塩水で洗浄した。オリゴマー化合物トランスフェクション実験での使用のために、細胞を、96ウェルプレート(Falcon-Primaria #353872, BD Biosciences, Bedford, MA)に、およそ8,000細胞/ウェルの密度で播種した。
T-24:
移行細胞膀胱癌細胞株T-24は、American Type Culture Collection (ATCC)(Manassas, VA)から入手した。T-24細胞を、10%子ウシ血清(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)を添加した完全McCoy5A基礎培地(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)中で常套的に培養した。細胞を、およそ90%コンフルエンスに達したときにトリプシン処理および希釈により常套的に継代培養した。オリゴマー化合物トランスフェクション実験での使用のために、細胞を、96ウェルプレート(Falcon-Primaria #3872)に、およそ4000〜6000細胞/ウェルの密度で播種した。
オリゴマー化合物処理
細胞が適度なコンフルエンシーに達した時に、それらを記載のようなトランスフェクション法を用いてオリゴヌクレオチドで処理した。
LIPOFECTINTM
細胞が65〜75%のコンフルエンシーに達した時に、それらをオリゴヌクレオチドで処理した。オリゴヌクレオチドを、所望のオリゴヌクレオチド濃度と100nMオリゴヌクレオチド当たり2.5又は3 μg/mLのLIPOFECTINTM 濃度を達成するために、Opti-MEMTM -1減少血清培地(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)中のLIPOFECTINTM (Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)と混合した。このトランスフェクション混合物を室温でおよそ0.5時間インキュベートした。96ウェルプレートで増殖した細胞のために、ウェルを一度100μLのOpti-MEMTM-1で洗浄し、130μLのトランスフェクション混合物で処理した。適切な容量の培地及びオリゴヌクレオチドを用いて、24ウェルプレートで増殖した細胞又は他の標準組織培養プレートを同様に処理する。細胞を処理し、データを2又は3回得る。37℃でおよそ4〜7時間の処理後に、トランスフェクション混合物を含有する培地を新鮮な培養培地と交換した。細胞をオリゴヌクレオチド処理の16〜24時間後に回収した。
CYTOFECTINTM
細胞が65〜75%のコンフルエンシーに達した時に、それらをオリゴヌクレオチドで処理した。オリゴヌクレオチドを、所望のオリゴヌクレオチド濃度と100nMオリゴヌクレオチド当たり2又は4μg/mLのCYTOFECTINTM濃度を達成するために、Opti-MEMTM -1減少血清培地(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)中のCYTOFECTINTM (Gene Therapy Systems, San Diego, CA) と混合した。このトランスフェクション混合物を室温でおよそ0.5時間インキュベートした。96ウェルプレートで増殖した細胞のために、ウェルを一度100μLのOpti-MEMTM-1で洗浄し、130μLのトランスフェクション混合物で処理した。適切な容量の培地及びオリゴヌクレオチドを用いて、24ウェルプレートで増殖した細胞又は他の標準組織培養プレートを同様に処理する。細胞を処理し、データを2又は3回得る。37℃でおよそ4〜7時間処理した後に、トランスフェクション混合物を含有する培地を新鮮な培養培地と交換した。細胞をオリゴヌクレオチド処理の16〜24時間後に回収した。
LIPOFECTAMINETM
細胞が65〜75%のコンフルエンシーに達した時に、それらをオリゴヌクレオチドで処理した。オリゴヌクレオチドを、所望のオリゴヌクレオチド濃度と100nMオリゴヌクレオチド当たり2〜12μg/mLの範囲のLipofectamineTM 濃度を達成するために、Opti-MEMTM -1減少血清培地(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)中のLIPOFECTAMINETM (Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA ) と混合した。このトランスフェクション混合物を室温でおよそ0.5時間インキュベートした。96ウェルプレートで増殖した細胞のために、ウェルを一度100μLのOpti-MEMTM -1で洗浄し、130μLのトランスフェクション混合物で処理した。適切な容量の培地及びオリゴヌクレオチドを用いて、24ウェルプレートで増殖した細胞又は他の標準組織培養プレートを同様に処理する。細胞を処理し、データを2又は3回得る。37℃でおよそ4〜7時間処理した後に、トランスフェクション混合物を含有する培地を新鮮な培地と交換した。細胞をオリゴヌクレオチド処理の16〜24時間後に回収した。
OLIGOFECTAMINETM
細胞が65〜75%のコンフルエンシーに達した時に、それらをオリゴヌクレオチドで処理した。オリゴヌクレオチドを、100nM当たりおよそ0.2 〜0.8μLのオリゴヌクレオチドに対するOLIGOFECTAMINETM比を有する所望のオリゴヌクレオチド濃度を達成するために、Opti-MEMTM -1減少血清培地(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)中のOLIGOFECTAMINETM (Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)と混合した。このトランスフェクション混合物を室温でおよそ0.5時間インキュベートした。96ウェルプレートで増殖した細胞のために、ウェルを一度100μLのOpti-MEMTM -1で洗浄し、100μLのトランスフェクション混合物で処理した。適切な容量の培地及びオリゴヌクレオチドを用いて、24ウェルプレートで増殖した細胞又は他の標準組織培養プレートを同様に処理する。細胞を処理し、データを2又は3回得る。37℃でおよそ4〜7時間処理した後に、トランスフェクション混合物を含有する培地を新鮮な培地と交換した。細胞をオリゴヌクレオチド処理の16〜24時間後に回収した。
FUGENETM
非リポソームトランスフェクション試薬FUGENE6(Roche Diagnostics Corp., Indianapolis, IN)を用いて、オリゴマー化合物を細胞に導入した。オリゴマー化合物を、100nM当たり1〜4μLのFUGENE6のオリゴマー化合物に対するFUGENE6比を有する所望のオリゴヌクレオチド濃度を達成するために、1 mLの無血清RPMI中のFUGENE6と混合した。オリゴマー化合物/FUGENE6複合体を室温でおよそ20分間形成させた。96ウェルプレートで増殖した細胞のために、ウェルを一度100μLのOpti-MEMTM -1で洗浄し、100μLのトランスフェクション混合物で処理した。適切な容量の培地及びオリゴヌクレオチドを用いて、24ウェルプレートで増殖した細胞又は他の標準組織培養プレートを同様に処理する。細胞を処理し、データを2又は3回得る。37℃でおよそ4〜7時間処理した後に、トランスフェクション混合物を含有する培地を新鮮な培地と交換した。細胞をオリゴヌクレオチド処理の16〜24時間後に回収した。
エレクトロポレーション
細胞がおよそ80%のコンフルエンシーに達した時に、オリゴヌクレオチドをエレクトロポレーションで導入した。エレクトロポレーション実験で用いたオリゴヌクレオチド濃度は1〜40μMの範囲である。細胞を慣例のトリプシン処理で採取し、単一の細胞懸濁液を作製した。血球計数板を用いての細胞カウント及び遠心分離によるペレット形成の後に、細胞を、1×107細胞/mLの密度を達成するために、Opti-MEMTM -1減少血清培地(Invitrogen Life Technologies, Carlsbad, CA)中に再懸濁した。細胞を所望のオリゴヌクレオチド濃度で混合し、0.1cmエレクトロポレーションキュベット(BTX Molecular Delivery Systems, Hollister, MA)に移した。細胞を、エレクトロポレーション装置(例えば、BTX Electro Square Porator T820又はBTX HT300, BTX Molecular Delivery Systems, Hollister, MA)を用いて単一パルスに供し、培養培地に希釈し、24ウェルプレートに播種した。細胞を処理し、データを2又は3回得た。エレクトロポレーションのおよそ24時間後に、細胞を回収した。
対照オリゴヌクレオチド
特定の細胞株のための最適オリゴマー化合物濃度を決定するために、対照オリゴヌクレオチドを使用する。さらに、本発明のオリゴマー化合物をオリゴマー化合物スクリーニング実験又は表現型アッセイにおいて試験した場合、対照オリゴヌクレオチドを本発明の化合物と並行して試験する。いくつかの態様において、対照オリゴヌクレオチドを陰性対照オリゴヌクレオチドとして、即ち、遺伝子発現又は表現型についての効果がないことを測定する手段として、使用する。択一的な態様において、対照オリゴヌクレオチドを陽性対照オリゴヌクレオチドとして、即ち、遺伝子発現又は表現型に影響を与える公知のオリゴヌクレオチドとして、使用する。対照オリゴヌクレオチドを表2に示す。「標的名」は、オリゴヌクレオチドを標的とする遺伝子を指す。「標的種」はオリゴヌクレオチドが標的mRNAと完全に相補的である種を指す。「モチーフ」は、該ヌクレオチドを含む化学的に明瞭な領域を示す。表2のいくつかの化合物は、2’-MOEヌクレオチドとしても公知の、2’-O-(2-メトキシエチル)ヌクレオチドから構成され、「同一MOE」として指定される。表2のいくつかの化合物は、2’-デオキシヌクレオチドから成る中心「ギャップ」領域から構成されるキメラオリゴヌクレオチドであり、これは両側(5’及び3’)で「ウイング」に隣接される。ウイングは、2’-MOEヌクレオチドとしても公知の、2’-O-(2-メトキシエチル)ヌクレオチドから構成される。各ギャップマーオリゴヌクレオチドの「モチーフ」は、表2に例証され、各ギャップ領域とウイングにおけるヌクレオチドの数を示し、例えば、「5-10-5」は、5-ヌクレオチドウイングが隣接する10ヌクレオチドギャップ領域を有するギャップマーを示す。同様にモチーフ「5-9-6」は、5’側に5ヌクレオチドウイング及び3’側に6ヌクレオチドウイングが隣接する9ヌクレオチドギャップ領域を示す。ISIS 29848は、無作為化オリゴマー化合物の混合物であり;その配列を表2に示し、ここでNはA、T、C又はGであり得る。ヌクレオシド間(主鎖)結合は表2のオリゴヌクレオチド全体でホスホロチオエートである。非修飾シトシンは、ヌクレオチド配列の「C」で示され;すべての他のシトシンは5-メチルシトシンである。
使用されたオリゴヌクレオチド濃度は、細胞株ごとに変化する。特定の細胞株に対する最適なオリゴヌクレオチド濃度を決定するために、細胞をある濃度範囲の陽性対照オリゴヌクレオチドで処理する。陽性対照を表2に示す。ヒト及び非ヒトの霊長類細胞に対して、陽性対照オリゴヌクレオチドを、ISIS 13650又はISIS 18078から選択する。マウス又はラット細胞に対して、陽性対照オリゴヌクレオチドは、ISIS 15770又はISIS 15346である。例えば、ISIS 13650のヒトRafキナーゼの標的mRNAの80%阻害を生じる陽性対照オリゴヌクレオチドの濃度を、次にその細胞株のための次の実験における新しいオリゴヌクレオチドのスクリーニング濃度として用いる。80%阻害が達成されない場合、標的mRNAの60%阻害を生じる陽性対照オリゴヌクレオチドの最も低い濃度を、次にその細胞株のための次の実験におけるオリゴヌクレオチドスクリーニング濃度として用いる。60%阻害が達成されない場合、その特定の細胞株をオリゴヌクレオチドトランスフェクション実験に不適切とみなす。明細書で用いたアンチセンスオリゴヌクレオチドの濃度が50nM〜300nMであるのは、アンチセンスオリゴヌクレオチドがリポソーム試薬を用いてトランスフェクトされる場合であり、1nM〜40nMであるのは、アンチセンスオリゴヌクレオチドがエレクトロポレーションによってトランスフェクトされる場合である。
実施例2
グルコース6-ホスファターゼトランスロカーゼmRNAレベルのリアルタイム定量PCR解析
グルコース6-ホスファターゼトランスロカーゼmRNAレベルの定量を、製造者の指示に従うABI PRISMTM7600,7700,又は7900 Sequence Detection System(PE-Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いてのリアルタイム定量PCRで行った。
定量PCR解析の前に、測定される標的遺伝子に特異的なプライマー−プローブセットでGAPDH増幅反応によって「多重化」されるその能力を評価した。単離後、該RNAを連続的な逆転写(RT)反応及びリアルタイムPCRに共し、両方を同じウェルで行った。RT及びPCR試薬をInvitrogen Life Technologies, (Carlsbad, CA)から入手した。RT、リアルタイムPCRを、20μL PCRカクテル(MgCl2マイナス2.5×PCRバッファー、6.6mM MgCl2、各375μM dATP、dCTP、dCTP及びdGTP、375μMの各フォワードプライマー及びリバースプライマー、125nMのプローブ、4ユニットRNAseインヒビター、1.25ユニットPLATINUM(登録商標)Taq、5ユニットMuLV逆転写酵素、及び2.5×ROX色素)を30μLトータルRNA溶液(20〜200ng)を含有する96ウェルプレートに添加することによって同じように実行した。RT反応を48℃で30分間のインキュベーションによって行った。PLATINUM(登録商標)Taqを活性化するために95℃で10分のインキュベーションの後、40サイクルの2段階PCRプロトコール:95℃で15秒(変性)に続いて60℃で1.5分(アニーリング/伸長)を行った。
RT、リアルタイムPCRで得た遺伝子標的の量を、発現が一定である遺伝子のGAPDHの発現レベル、あるいはRiboGreenTM(Molecular Probes, Inc. Eugene, OR)を用いて全RNAを定量することのいずれかによって標準化した。RT、リアルタイムPCRによって、標的と同時に行い、多重化するか、あるいは別々に行うことによってGAPDH発現を定量した。RiboGreenTMRNA定量試薬(Molecular Probes, Inc. Eugene, OR)を用いて全RNAを定量した。
170μLのRiboGreenTM作用試薬(10mM Tris-HCl, 1mM EDTA, pH 7.5中1:350に希釈されたRiboGreenTM試薬)を、30μL精製細胞性RNAを含有する96ウェルプレートにピペットで移した。プレートをCytoFluor4000(PE Applied Biosystems)において励起485nm及び発光530nmで読み取った。
表3にプライマー及びプローブを示し、これらを明細書中に記載される細胞タイプでのGAPDH発現を測定するために用い得る。GAPDH PCRプローブがJOEを5'末端に共有結合させ、TAMRA又はMGBを3'末端に共有結合させ、ここでJOEは蛍光レポーター色素であり、TAMRA又はMGBは消光色素である。いくつかの細胞タイプにおいて、異なる種からのGAPDH配列について設計されたプライマー及びプローブを、GAPDH発現を測定するために使用する。例えば、ヒトGAPDHプライマー及びプローブセットを用いて、サル由来細胞及び細胞株におけるGAPDH発現を測定する。
実施例3
オリゴマー化合物によるヒトグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ発現のアンチセンス阻害
表1に引用される、公表された配列を用いて、一連のオリゴマー化合物を、ヒトグルコース6-ホスファターゼトランスロカーゼの異なる領域を標的とするように設計した。化合物を表4に示す。表4のすべての化合物は、長さ20ヌクレオチドのキメラオリゴヌクレオチド(「ギャップマー」)であり、両側(5’及び3’)に5ヌクレオチド「ウイング」が隣接する10の2’−デオキシヌクレオチドからなる中心「ギャップ」領域から構成される。ウイングは、2’-MOEヌクレオチドとしても公知の、2’-O-(2-メトキシエチル)ヌクレオチドから構成される。ヌクレオシド間(主鎖)結合はオリゴヌクレオチド全体でホスホロチオエートである。すべてのシチジン残基は5−メチルシチジンである。ヒトグルコース6-ホスファターゼトランスロカーゼにハイブリダイズするように設計された以下のプライマー−プローブセット:
フォワードプライマー:GGGCACTGTGTGTGGTTGTC(配列番号:24として明細書に援用される)
リバースプライマー:GAGTCCAACATCAGCAGGTTCA(配列番号:25として明細書に援用される)
を用いて、化合物を、明細書中の他の実施例に記載されるような定量リアルタイムPCRにより遺伝子標的mRNAレベルへの効果について解析し、PCRプローブは:FAMが蛍光色素であり、TAMRAが消光色素であるFAM-CCTTCCTCTGTCTCCTGCTCATCCACA-TAMRA(配列番号:26として明細書に援用される)であった。
データは、LIPOFECTINTMを用いてT−24細胞を100nMの本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドで処理した実験からのものである。発現の減少を表4の阻害パーセントとして示す。「N.D.」がある場合、「測定されない」を示す。使用された対照オリゴマー化合物は配列番号:11であった。これらのオリゴマー化合物が阻害する標的領域を、明細書中で「有効標的セグメント」と称する。
実施例4
グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼを標的とする2重鎖オリゴマー化合物の設計及びスクリーニング
本発明に従い、本発明のオリゴマー化合物及びその相補物を含み、dsRNA及びその模倣物を含む一連の2重鎖を、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼを標的とするように設計し得る。2重鎖のアンチセンス鎖の核酸塩基配列は明細書に開示されるようなグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼを標的とするオリゴヌクレオチドの少なくとも一部を含む。該鎖の末端を、1つ以上の天然又は修飾核酸塩基の付加によって修飾し、張り出し部分を形成し得る。核酸2重鎖のセンス鎖を、次にアンチセンス鎖の相補物として設計及び合成され、どちらかの末端に修飾又は付加も含み得る。2重鎖のアンチセンス及びセンス鎖は、約17〜25ヌクレオチド、又は約19〜23ヌクレオチドを含む。または、アンチセンス及びセンス鎖は、20、21又は22ヌクレオチドを含む。
例えば、1つの態様において、dsRNA2重鎖の両鎖は中心核酸塩基上で相補的であり、各々は1つの末端又は両末端で張り出し部分を有する。
例えば、配列CGAGAGGCGGACGGGACCG(配列番号:62として明細書に援用される)を有し、デオキシチミジン(dT)の2つの核酸塩基張り出し部分を有するアンチセンス鎖を含む2重鎖は以下の構造を有する:
張り出し部分は2〜6核酸塩基の範囲であり得、これらの核酸塩基は標的核酸に相補的であってもよく、なくてもよい。別の態様において、2重鎖は1つの末端にのみ張り出し部分を有し得る。
別の態様において、同じ配列、例えば、CGAGAGGCGGACGGGACCG(配列番号:62)を有するアンチセンス鎖を含む2重鎖を、以下に示すような平滑末端(単一鎖の張り出し部分がない)で調製し得る。
RNA2重鎖は単分子、又は二分子であり得、即ち、2つの鎖は単一の分子の部分であり得るか、又は別の分子であり得る。
2重RNA鎖は当業者に慣例の方法で合成され得るか、又はDharmacon Research Inc.(Lafayette, CO)から購入され得る。合成されると、相補鎖をアニーリングする。単一鎖をアリコートにし、50μMの濃度に希釈する。希釈されると、30μLの各鎖を15μLの5×アニーリングバッファー溶液と組み合わせる。前記バッファーの最終濃度は100mM酢酸カリウム、30mM HEPES-KOH pH7.4、及び2mM酢酸マグネシウムである。最終容量は75μLである。この溶液を90℃で1分間インキュベートし、次に15秒間遠心分離する。dsRNA2重鎖を実験で使用する時にチューブを37℃で1時間静置させる。dsRNA2重鎖の最終濃度は20μMである。
調製されると、2重鎖化合物によってグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼを調整するその能力を評価する。細胞が80%コンフルエンシーに達する時に、それらを本発明の2重鎖化合物で処理する。96ウェルプレートで増殖した細胞のために、ウェルを一度200μLのOpti-MEM-1TM減少血清培地(Gibco BRL)で洗浄し、次に12μg/mLのLIPOFECTINTM(Gibco BRL)及び200nMの最終濃度(100nMの2重鎖アンチセンス化合物あたり6μg/mLのLIPOFECTINTM比)で所望の2重鎖アンチセンス化合物を含有する130μLのOpti-MEM-1TMで処理する。処理5時間後、培地を新鮮な培地と交換する。RNAを単離し、標的減少をRT-PCRで測定する時に、細胞を処理16時間後に回収する。
実施例5
オリゴマー化合物によるマウスグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ発現のアンチセンス阻害
表1に引用される公開された配列を用いて、一連のオリゴマー化合物を、マウスグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの異なる領域を標的とするために設計した。表5に化合物を示す。表5のすべての化合物は長さ20ヌクレオチドのキメラオリゴヌクレオチド(「ギャップマー」)であり、両側(5’及び3’)に5ヌクレオチド「ウイング」が隣接する、10の2’-デオキシヌクレオチドからなる中心「ギャップ」領域から構成される。ウイングは、2’-MOEヌクレオチドとしても公知の、2’-O-(2-メトキシエチル)ヌクレオチドから構成される。ヌクレオシド間(主鎖)結合はオリゴヌクレオチド全体でホスホロチオエートである。すべてのシチジン残基は5−メチルシチジンである。マウスグルコース6-ホスファターゼトランスロカーゼにハイブリダイズするように設計された以下のプライマー−プローブセット:
フォワードプライマー:GAAGGCAGGGCTGTCTCTGTAT(配列番号:66)
リバースプライマー:CCATCCCAGCCATCATGAG(配列番号:67)
を用いて、化合物を明細書中の他の実施例に記載されるような定量リアルタイムPCRにより遺伝子標的mRNAレベルへの効果について解析し、PCRプローブは:FAMが蛍光レポーター色素であり、TAMRAが消光色素であるFAM-AACCCTCGCCACGGCCTATTGC-TAMRA(配列番号:68)であった。マウス標的遺伝子の量を、RIBOGREENTMを用いて全RNAを定量することで標準化した。
データは、マウス一次肝細胞を本発明の50nMアンチセンスオリゴヌクレオチドで処理した実験からのものである。発現の減少を表5の阻害パーセントとして示す。「N.D.」がある場合、「測定されない」を示す。これらのオリゴマー化合物が阻害する標的領域を、明細書中で「有効標的セグメント」と称する。
ISIS 148985とISIS 149008によって、マウスグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼmRNAレベルがそれぞれおよそ84%と65%有意に減少することを見出した。これらのオリゴマー化合物の両方が、マウスグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼmRNAの3’UTRの部位を標的とする。それらはマウスグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ発現を効果的に阻害するので、それらを、標準、db/db、及びob/obマウスにおいてさらに試験した。
実施例6
やせたマウス(ob/ob+/−マウス)でのグルコース6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビターの効果
Ob/obマウスは、肥満及び高血糖症となるレプチン遺伝子に変異を有する。したがって、これらのマウスは肥満及び糖尿病及びこれらの状態を処置するために設計される処置の調査のための有用なモデルである。ob/ob+/−マウスは、ob/obマウスのヘテロ接合の同腹仔であり、それらはob(肥満及び高血糖症)表現型を示さないのでしばしばやせた同腹仔として称される。7週齢ob/ob+/−雄マウスに週に2度、所定の皮下に50mg/kgのアンチセンスオリゴヌクレオチドを投与した。全体で5種類の用量を与えた。使用されたグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼアンチセンスオリゴヌクレオチドはISIS 148985(配列番号:118)及びISIS 149008(配列番号:141)であった。各処置群を4匹の動物から構成した。動物を、最終用量のオリゴヌクレオチドを投与した48時間後に屠殺し、肝臓トリグリセリド、肝臓グリコーゲン含有量、及び肝臓での標的減少を測定した。
肝臓トリグリセリドレベルを、肝臓における肝脂肪症又は脂質の蓄積(不十分な除去)を評価するために使用した。組織トリグリセリドレベルをRoche Diagnostics(Indianapolis, IN)からのトリグリセリドGPOアッセイを用いて測定した。肝臓トリグリセリドは生理食塩水処置のやせたマウスに対して約19mg/dLであり、ISIS 149008処置のやせたマウスに対して約14mg/dLであった。
Glucose Trinder試薬(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を用いて、組織グリコーゲンを測定した。生理食塩水のみで処置したやせたマウスのグリコーゲンレベルは組織中およそ37mg/gであった。グルコース6-ホスファターゼトランスロカーゼアンチセンスインヒビターであるISIS 149008又は148985で処置されたマウスは、それぞれおよそ39mg/g及び36mg/gのグリコーゲンレベルを有した。
このように、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ発現のアンチセンス阻害は、生理食塩水のみで処置したマウスで観察されるレベルと比較してob/ob+/−マウスでの肝臓グリコーゲン又はトリグリセリドレベルを実質的に変更しなかった。
上記の前記実施例で教示したようなRiboGreenTM RNA定量試薬(Molecular Probes, Inc. Eugene, OR)を用いて、肝臓でのグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼmRNAレベルを試験の終わりに測定した。
生理食塩水処置と比較した場合、グルコース6-ホスファターゼトランスロカーゼmRNAレベルはISIS 148985で処置したやせたマウスでおよそ51%、ISIS 149008で処置したやせたマウスでおよそ88%減少した。このようにアンチセンス化合物ISIS 149008及びISIS 148985は、インビボでの肝臓グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼmRNAレベルの減少に有効であった。
実施例7
ob/obマウスでのグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビター効果
Ob/obマウスは、肥満及び高血糖症となるレプチン遺伝子に変異を有する。したがって、これらのマウスは肥満及び糖尿病及びこれらの状態を処置するために設計される処置の調査のための有用なモデルである。本発明に従って、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼを標的とする化合物を、肥満及び糖尿病のob/obモデルで試験した。
7週齢雄C57B1/6J-Lep ob/obマウス(Jackson Laboratory, Bar Harbor, ME)に約22%の脂肪含有量の食餌を与え、1週間あたり25mg/kgの容量で2回、オリゴヌクレオチドを皮下注射した。全体で8種類の用量を投与した。使用されたグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスオリゴヌクレオチドはISIS 148985(配列番号:118)及びISIS 149008(配列番号:141)であった。マウスPTENを標的としたISIS 116847(CTGCTAGCCTCTGGATTTG A;明細書中に配列番号:143として援用される)を、陽性対照として用いた。生理食塩水注射動物を陰性対照として用いた。動物を、最終用量のオリゴヌクレオチドを投与した48時間後に屠殺し、肝臓トリグリセリド、肝臓グリコーゲン、及び肝臓での標的減少を測定した。
グルコース代謝の標的阻害効果を上記記載のように処置されたob/obマウスで評価した。血漿グルコースを測定するために慣例の臨床解析装置(Olympus Clinical Analyzer, Melville, NY)を使用した。アンチセンスオリゴヌクレオチド処置(0週)前に、並びに処置の第2週及び第4週の間で、血漿グルコースを測定した。絶食させた状態のグルコース測定を、3週間目に一晩(約14時間)絶食させた後に行なった。処置群あたり7匹の動物からの平均としてデータを示す。
グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビターISIS 148985(配列番号:118)で処置したob/obマウスにおいて、給餌状態の血漿グルコースレベルは0週でおよそ348mg/dL、2週で315mg/dL、4週で241mg/dLであった。別のグルコース6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビターISIS 149008(配列番号:141)で処置されたマウスにおいて、給餌状態の血漿グルコースレベルは0週でおよそ344mg/dL、2週で249mg/dL及び4週で153mg/dLであった。対照的に生理食塩水だけで処置したマウスは、0週でおよそ339mg/dL、2週で401mg/dL及び4週で372mg/dLの給餌状態の血漿グルコースレベルを有した。陽性対照オリゴヌクレオチド、PTENを標的としたISIS 116847(配列番号:143)で処置したマウスは、0週でおよそ339mg/dL、2週で230mg/dL及び4週で188mg/dLの給餌状態の血漿グルコースレベルを有した。このように、給餌状態の血漿グルコースレベルは、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビターで処置した後に減少した。
3週目(全体で6回の用量処置が投与される時)に、血漿グルコースレベルを絶食したob/obマウスで測定した。グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビターISIS 148985(配列番号:118)で処置されたob/obマウスにおいて、絶食状態の血漿グルコースレベルはおよそ293mg/dLであった。ISIS 149008(配列番号:141)で処置されたマウスにおいて、絶食状態の血漿グルコースレベルはおよそ237mg/dLであった。PTENを標的とした、陽性対照オリゴヌクレオチドISIS 116847(配列番号:143)で処置されたマウスは、およそ286mg/dLの絶食血漿グルコースレベルを有した。生理食塩水のみで処置されたマウスは、およそ297mg/dLの絶食血漿グルコースレベルを有した。
上記の前記実施例で教示するようなRIBOGREENTM RNA定量試薬(Molecular Probes, Inc. Eugene, OR)を用いて、ob/obマウス肝臓でのグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼmRNAレベルを試験の終わりに測定した。特に記載がなければ、生理食塩水注射対照に対して標準化される、処置あたり4匹の動物からの平均阻害として、結果を示す。生理食塩水処置と比較した場合、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼmRNAレベルは、ISIS 149008で処置したマウスでおよそ87%、ISIS 148985で処置されたマウスでおよそ52%減少した。グルコース6-ホスファターゼトランスロカーゼmRNAレベルは、陽性対照オリゴヌクレオチドISIS 116847(n=3)で処置されたマウスでおよそ36%減少した。
肝臓トリグリセリド含有量を測定することで、肝脂肪症又は肝臓における脂質蓄積を評価した。Roche Diagnostics(Indianapolis, IN)からのトリグリセリドGPOアッセイで組織トリグリセリドを測定した。処置群あたり5匹の動物の平均としてデータを示す。トリグリセリドは生理食塩水処置マウスでおよそ178mg/g、ISIS 149008処置マウスで162mg/g、ISIS 148985処置マウスで168mg/g、及びISIS 116847(PTEN)処置マウスで187mg/gであった。このように、肝臓トリグリセリドはアンチセンス処置動物で増加しなかった。
また、肝臓脂肪症も、一般的に脂質沈着物を可視化するために用いられるオイルレッドO染色、ならびに核および細胞質それぞれを可視化するヘマトキシリンおよびエオシンによる交差染色により染色された凍結肝臓組織切片の常套的な組織学的解析により評価される。
組織グリコーゲンは、グルコーストリンダー試薬(Glucose Trinder Reagent)(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を用いて測定された。食塩水のみで処理したマウスのグリコーゲンレベルは、組織中およそ31 mg/gであった。PTENを標的とした陽性対照アンチセンス化合物ISIS 116847で処理したマウスでのレベルは、およそ25 mg/gのレベルを有した。グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビターであるISIS 149008または148985で処置したマウスは、およそ31 mg/gおよび30 mg/gのそれぞれのレベルを有した。従って、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ発現のアンチセンス阻害によって、ob/obマウスの組織グリコーゲンは、食塩水のみで処理したものと比べると実質的には変わらなかった。
実施例8
肥満および糖尿病のob/obマウスモデルにおけるグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンス阻害の効果:グルコース負荷試験
食塩水またはアンチセンスオリゴヌクレオチドの6回目の投与の後に、実施例7で記載したマウスをグルコース負荷試験の成績について評価した。グルコースの丸薬(bolus)投与後に行なったグルコースレベルの測定を通じて、負荷試験によりグルコース負荷(glucose challenge)に対する生理学的応答を評価する。
食塩水、ISIS 116847(PTENを標的とした、配列番号:143)、ISIS 148985(配列番号:118)、またはISIS 149008(配列番号:141)による処理の第3週に、経口グルコース負荷試験(OGTT)を行なった。基準のグルコースレベルを設けるために、負荷前に絶食状態の血糖レベルを測定した。18gの強制栄養法(gavage)の針で、1g/kgの用量で経口の強制栄養法によりグルコースを投与した。負荷後、30、60、90および120分間、Ascencia Glucometer Elite XL(Bayer, Tarrytown, NY)を用いて血漿グルコースレベルを測定した。
結果を、各処置群(n=7)からの平均結果として表6に示す(mg/dL中の血漿グルコース)。グルコースレベルを比較する対照として、食塩水処理マウスを用いた。
表6に示したデータのグラフにより、長期にわたる血漿グルコースレベルのピークの出現が明らかとなった。特にISIS 149008は、陽性対照オリゴヌクレオチド、ISIS 116847により得られたものと同様に、改善された耐糖能を示す結果をもたらした。
実施例9
肥満および糖尿病のob/obマウスモデルにおけるグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンス阻害の効果:グリセロール負荷試験
食塩水またはアンチセンスオリゴヌクレオチドの6回目投与の後に、実施例7で記載したマウスをグリセロール負荷試験の成績について評価した。これはグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ阻害の機能的な基準であり;すなわち、グリコーゲンからグルコースへの転換がグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビターにより阻害されるかどうかの基準である。
食塩水、ISIS 148985(配列番号:118)、またはISIS 149008(配列番号:141)による処理後に、グリセロール負荷試験を行なった。18gの強制栄養法(gavage)の針で、1g/kgの用量で経口の強制栄養法によりグリセロールを投与した。負荷後、30、60、90および120分間、Ascencia Glucometer Elite XL(Bayer, Tarrytown, NY)を用いて血漿グルコースレベルを測定して、長期にわたりプロットした。各処理のグラフに対する曲線下面積(AUC)を計算した。ISIS 148985は、この実験で食塩水と比較して、AUCの有意な減少を示さなかった(おそらくISIS 149008に見られたものよりも、強くはない標的の阻害);しかし、ISIS 149008は食塩水対照と比較して、AUCの有意な減少を示した(およそ30%の減少)。このことは、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの機能的な活性(グリセロールからグルコースへの転換)がグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのこのアンチセンスインヒビターにより効果的に妨げられたことを示唆する。
実施例10
レプチンレセプター欠損マウス(db/dbマウス)におけるグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビターの効果
レプチンは食欲を制御する、脂肪組織によって産生されるホルモンである。ヒトおよび非ヒト動物の双方においてこのホルモンの欠損は肥満をもたらす。db/dbマウスは、肥満および高血糖をもたらすレプチンレセプター遺伝子に変異を有する。したがって、かかるマウスは肥満および糖尿病の研究、ならびにかかる症状を処置するように設計される処置方法のための有用なモデルである。レプチン遺伝子に変異を有するob/obマウスよりもインスリンの低い循環レベルを有し、高血糖であるdb/dbマウスは、2型糖尿病のげっ歯類モデルとしてしばしば使用される。本発明に従って、本発明のオリゴマー化合物を、肥満および糖尿病を有するdb/dbモデルにおいて試験した。
7週齢の雄のC57B1/6J-Lepr db/dbマウス(Jackson Laboratory, Bar Harbor, ME)に、約14%の脂肪含有量を有する食餌を与え、1種類以上の本発明のオリゴマー化合物または対照化合物を25 mg/kgの用量で週に2回、皮下注射した。用いたグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスオリゴヌクレオチドは、ISIS 148985 (配列番号:118) およびISIS 149008(配列番号:141)であった。マウスPTEN を標的とするISIS 116847(配列番号:143)を陽性対照として用いた。食塩水注射動物に加えて、スクランブル化された(scrambled)対照オリゴヌクレオチドISIS 141923(CCTTCCCTGAAGGTTCCTCC、配列番号:144として本明細書中に援用される)を陰性対照として用いた。ISIS 141923およびISIS 116847は、長さ20ヌクレオチドのキメラオリゴヌクレオチド(「ギャップマー」)であり、5個のヌクレオチド「ウイング」が両側(5’および3’)に配置された、10個の2’-デオキシヌクレオチドからなる中心「ギャップ」領域からなる。ウイングは2'-O-(2-メトキシエチル) ヌクレオチドからなり、2'-MOEヌクレオチドとしても公知である。ヌクレオシド間(主鎖)結合はオリゴヌクレオチドを通じてホスホロチオエートである。全シチジン残基は5-メチルシチジンである。
最後の処置の48時間後、マウスを屠殺して肝臓の標的レベルを評価した。RNA単離および標的mRNA発現レベルの定量は、本明細書の他の実施例に記載された方法で行なった。
グルコース代謝における標的阻害の効果を、本発明のオリゴマー化合物で処理したdb/dbマウスで評価した。処理集団当り7匹の動物に対して、処理開始前(週0)、ならびに処理の2および4週中に血漿グルコース(給餌状態)を測定した。3週中に、動物を一晩(約15時間)絶食させて、絶食状態のグルコース測定を行った。処理集団当りの平均としてデータを表した。
グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビターであるISIS 148985(配列番号:118)で処理したマウスは、0週におよそ267 mg/dL、2週におよそ512 mg/dL、4週におよそ552 mg/dLの給餌状態の血漿グルコースレベルを有した。グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの別のアンチセンスインヒビターであるISIS 149008(配列番号:141)で処理したマウスは、0週におよそ272 mg/dL、2週におよそ390 mg/dL、4週におよそ347 mg/dLの給餌状態の血漿グルコースレベルを有した。食塩水のみで処理したマウスは、0週におよそ270 mg/dL、2週におよそ534 mg/dL、4週におよそ627 mg/dLの給餌状態の血漿グルコースレベルを有した。PTENを標的とするISIS 116847(配列番号:143)、陽性対照オリゴヌクレオチドで処理したdb/dbマウスは、0週におよそ267 mg/dL、2週におよそ360 mg/dL、4週におよそ334 mg/dLの給餌状態の血漿グルコースレベルを有した。陰性対照オリゴヌクレオチドISIS 141923(配列番号:144)で処理したマウスは、0週におよそ272 mg/dL、2週におよそ538 mg/dL、4週におよそ563 mg/dLの給餌状態の血漿グルコースレベルを有した。このように、食塩水処理動物、または陰性対照ISIS 141923処理動物で長時間にわたり観察される給餌状態血漿グルコースの増加は、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビターであるISIS 149008での処理により減少する。
処理3週間目に、一晩(約15時間)絶食させた後、上述のdb/dbマウスの血漿グルコースレベルを測定した。グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビターであるISIS 148985(配列番号:118)で処理したマウスにおいて、絶食状態の血漿グルコースレベルはおよそ288 mg/dLであった。別のグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビターであるISIS 149008(配列番号:141)で処理したマウスにおいて、絶食状態の血漿グルコースレベルはおよそ241 mg/dLであった。食塩水のみで処理したマウスは、およそ343 mg/dLの絶食状態血漿グルコースレベルを有した。PTENを標的とする陽性対照オリゴヌクレオチドISIS 116847(配列番号:143)で処理したdb/dbマウスは、およそ241 mg/dLの絶食状態血漿グルコースレベルを有した。陰性対照オリゴヌクレオチドISIS 141923で処理したマウスは、およそ287 mg/dLの絶食状態血漿グルコースレベルを有した。
db/dbマウスの肝臓におけるグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼmRNAレベルを、RIBOGREENTM RNA定量試薬(Molecular Probes, Inc. Eugene, OR)を用いて、上記の前記実施例の教示のように、試験の終わりに測定した。特に断りのない限り、データは、処理集団当り5匹の動物から得られた阻害の平均割合として表す。グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼmRNAレベルは、食塩水処理と比較した場合、ISIS 149008で処理したマウスでおよそ82%、ISIS 148985で処理したマウスでおよそ19%減少した。対照オリゴヌクレオチドであるISIS 116847(約8%の阻害、n=4)で処理したマウス、または陰性対照オリゴヌクレオチドであるISIS 141923(約4%の阻害、n=3)で処理したマウスにおいて、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼmRNAレベルは実質的に減少しなかった。
ヒトグリコーゲン貯蔵疾患1b型を有する患者は、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ遺伝子に変異を有する。これらの変異の症候の一つが肝臓内のグリコーゲン蓄積を誘導する肝臓のグリコーゲン堆積の欠損であるので、db/dbマウスは、処理期間の終わりに肝臓のグリコーゲン貯蔵についてさらに評価された。グルコーストリンダー試薬(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を用いて、組織グリコーゲンを測定した。処理当り5匹の動物から得られた平均レベルとして結果を表す。食塩水のみで処理したマウスのグリコーゲンレベルは、組織中およそ46 mg/gであった。陽性対照アンチセンス化合物ISIS 116847で処理したマウスのレベルは、およそ30 mg/gのレベルを減少した。スクランブル化された対照化合物ISIS 141923で処理したマウスは、およそ39mg/gの食塩水対照とより類似したレベルを有した。グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビターである、ISIS 149008または148985で処理したマウスはおよそ38 mg/gおよび37 mg/gのそれぞれのグリコーゲンレベルを有した。従って、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの阻害によって、肝臓のグリコーゲン含量の増加は生じなかった。
実施例11
レプチンレセプター欠損マウス(db/dbマウス)におけるグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビターの効果-用量応答研究
ヒトグリコーゲン貯蔵疾患1b型の患者はグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ遺伝子に変異を有し、低血糖症、乳酸アシドーシス、肝臓グリコーゲン堆積、腎腫大、高尿酸血症、および好中球減少を生じるので、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビターで処理したdb/dbマウスを、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ活性の消失のこれらの症候について試験した。
7週齢の雄C57B1/6J-Lepr db/dbマウス(Jackson Laboratory, Bar Harbor, ME)に、約14%の脂肪含有量を有する食餌(Formulab Diet 5008)を与え、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビターであるISIS 116847(配列番号:143)、ISIS 141923(配列番号:144)またはISIS 148985(配列番号:118)を25 mg/kgの用量で週に2回、4週間皮下注射した。他の処理集団には、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビターであるISIS 149008(配列番号:141)を25 mg/kg、12.5 mg/kg、または6.25 mg/kgで、週に2回、4週間皮下注射した。対照として食塩水注射動物を用いた。8回目および最終用量を投与した48時間後、マウスを屠殺して肝臓の標的レベルを評価した。本明細書の他の実施例中に記載のように、RNA単離および標的mRNA発現レベルの定量を行った。
処理集団当り7匹の動物に対して、常套的な臨床解析装置(例えば、Olympus Clinical Analyzer)を用いて血漿グルコースを測定した。処理集団当りの平均としてデータを表した。グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビターであるISIS 148985(配列番号:118)25 mg/kgで処理したdb/dbマウスにおいて、給餌状態の血漿グルコースレベルは0週でおよそ289 mg/dL、2週でおよそ394 mg/dL、および4週でおよそ443 mg/dLであった。
別のグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビターであるISIS 149008(配列番号:141)25 mg/kgで処理したマウスにおいて給餌状態の血漿グルコースレベルは0週でおよそ286 mg/dL、2週でおよそ359 mg/dL、および4週でおよそ299 mg/dLであった。12.5 mg/kgのISIS 149008で処理したマウスにおいて給餌状態の血漿グルコースレベルは0週でおよそ283 mg/dL、2週でおよそ411 mg/dL、および4週でおよそ203 mg/dLであった。6.25 mg/kgのISIS 149008で処理したマウスは0週でおよそ289 mg/dL、2週でおよそ397 mg/dL、および4週でおよそ478 mg/dLの給餌状態の血漿グルコースレベルを示した。
食塩水のみで処理したマウスは、0週でおよそ280 mg/dL、2週でおよそ517 mg/dL、および4週でおよそ510 mg/dLの給餌状態の血漿グルコースレベルを有した。陽性対照オリゴヌクレオチドであり、PTENを標的とするISIS 116847(配列番号:143)で処理したdb/dbマウスは、0週におよそ282 mg/dL、2週におよそ291 mg/dL、4週におよそ224 mg/dLの給餌状態の血漿グルコースレベルを有した。陰性対照オリゴヌクレオチドISIS 141923(配列番号:144)で処理したマウスは、0週におよそ287 mg/dL、2週におよそ456 mg/dL、4週におよそ510 mg/dLの給餌状態の血漿グルコースレベルを有した。従って、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンス阻害は、食塩水のみ、または陰性対照ISIS 141923で4週間の時間的経過にわたり処理したdb/dbマウスにおいて見られる、血漿グルコースレベルの上昇を減衰した。
db/dbマウスの肝臓におけるグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼmRNAレベルを、RIBOGREENTM RNA定量試薬(Molecular Probes, Inc. Eugene, OR)を用いて、上記の前実施例の教示のように、試験の終わりに測定した。処理集団当り5匹の動物の平均としてデータを表す。グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼmRNAレベルは、食塩水処理と比較した場合、6.25mg/kgのISIS 149008で処理したマウスにおいておよそ45%、12.5 mg/kgのISIS 149008で処理したマウスにおいておよそ69%、および25 mg/kgのISIS 149008で処理したマウスにおいておよそ81%減少した。標的mRNAレベルは、ISIS 148985でおよそ21%減少した。グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼmRNAレベルは、陽性対照オリゴヌクレオチドであるISIS 116847で処理したマウスにおいて、およそ27%減少し、陰性対照オリゴヌクレオチドであるISIS 141923で処理したマウスは影響を受けなかった(およそ1%の阻害)。従って、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビターは、db/dbマウスの肝臓中標的mRNAレベルを減少させ、ISIS 149008は、用量依存的な様式でそうした。
標的mRNAの阻害によって生じる生理学的な効果をさらに評価するために、処理期間の終わりに、db/dbマウスを、血漿トリグリセリド、血漿コレステロール、遊離脂肪酸(FFA)、ラクテートおよび血漿トランスアミナーゼレベルについて評価した。トランスアミナーゼALTおよびASTは肝臓機能の指標である。血漿トリグリセリド、コレステロール、遊離脂肪酸およびトランスアミナーゼを、常套的な臨床解析器具(例えば、Olympus Clinical Analyzer, Melville, NY)で測定した。処理集団当り7匹の動物から得られた平均として、結果を表7に表す。
ヒトグリコーゲン貯蔵疾患1b型の患者は、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ遺伝子に変異を有する。これらの変異の一つの症候は、肝臓グリコーゲン堆積の欠損であるので、処理期間の終わりに、肝臓グリコーゲン貯蓄についてdb/dbマウスをさらに評価した。グルコーストリンダー試薬(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を使用して、組織グリコーゲンレベルを測定した。Roche Diagnostics(Indianapolis, IN)のTriglyceride GPO Assayを用いて組織トリグリセリドレベルを測定した。肝臓トリグリセリドレベルによって、肝臓脂肪症、または肝臓中の脂質の蓄積について評価した。また、肝臓脂肪症も、一般的に脂質沈着物を可視化するために用いられるオイルレッドO染色、ならびに核および細胞質それぞれを可視化するヘマトキシリンおよびエオシンによる交差染色により染色された、凍結肝臓組織切片の常套的な組織学的解析により評価された。処理集団当り5匹の動物から得られた平均としてデータを表8に表す。
表8に示したとおり、ISIS 148985によって肝臓トリグリセリドは、食塩水処理またはISIS 141923(スクランブル化された対照)処理動物に見られるレベルを超えて、有意に増加しなかった。食塩水処理動物に対して見られるレベルと比較した際、肝臓のグリコーゲン貯蓄は、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビターでの処理によっては影響を受けなかった。
ヒトグリコーゲン貯蔵疾患1b型の原因となるグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ遺伝子の変異により好中球減少症が生じるので、血漿好中球およびリンパ球を、各処理集団の動物に対して測定した。表中に示された動物の数(n)から得られた平均として、データを表9に示す。
本発明の化合物での処理によって、血漿好中球のレベルは影響を受けず、アンチセンスインヒビターによるグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼmRNAの減少によっては、ヒトグリコーゲン貯蔵疾患1b型に見られる好中球減少症は起こらないことが示された。
さらに、本発明の化合物による処理によっては、腎臓重量の増加は起こらず、db/dbマウスにおけるグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ発現のアンチセンス阻害によって、ヒトグリコーゲン貯蔵疾患1b型に見られる腎腫大は起こらないことが示された。
実施例12
肥満および糖尿病のdb/dbマウスモデルにおけるグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンス阻害の効果:グルコース負荷試験
食塩水またはアンチセンスオリゴヌクレオチドの6回目の投与の後に、実施例11に記載したマウスをグルコース負荷試験の成績について評価した。グルコースの丸薬の投与後に行なったグルコースレベルの測定を通じて、負荷試験によりグルコース負荷に対する生理学的応答を評価する。
食塩水、ISIS 116847(PTENを標的とする、配列番号:143)、ISIS 149008(配列番号:141)、ISIS 148985(配列番号:118)、またはISIS 141923(配列番号:144)による処理の第3週に、経口グルコース負荷試験(OGTT)を行なった。基準のグルコースレベルを設けるために、負荷前に絶食状態の血糖レベルを測定した。18gの強制栄養法の針で、1g/kgの用量で経口の強制栄養法によりグルコースを投与した。負荷後、30、60、90および120分間、Ascencia Glucometer Elite XL(Bayer, Tarrytown, NY)を用いて血漿グルコースレベルを測定した。
時点当りの各処置群(n=7)からの平均血漿グルコースレベル(mg/dLで)として、結果を表10に示す。
表10に示したデータのグラフにより、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンスインヒビターであるISIS 148985または異なる用量のISIS 149008で処理した動物について、長期にわたる血漿グルコースレベルのピークの出現が明らかとなる。耐糖能において、ISIS 149008の用量依存的な改善が見られる。このことは、グラフ化されたグルコース値について曲線下面積(AUC)を計算することにより確実となり;ISIS 149008は25 mg/kgで、食塩水と比較してAUCを有意に減少させた。
実施例5〜12に示された結果により、アンチセンスオリゴヌクレオチドでのグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの阻害は、世界的な遺伝子のノックアウト後に見られる有害な副作用の多くを生じることなく、よく受け入れられる糖尿病の動物モデルにおいて、著しくかつ有益なグルコースの低下効果を生じることが示される。従って、アンチセンスオリゴヌクレオチドを使用したグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの阻害は、2型糖尿病の治療に対して実行可能であり、有利な治療的アプローチであると考えられている。
実施例13
オリゴマー化合物によるヒトグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ発現のアンチセンス阻害
表1に引用された公開配列を使用して、ヒトグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの異なる領域を標的とするように、一連のオリゴマー化合物を設計した。化合物を表11に示した。表4の全化合物は、長さ20ヌクレオチドのキメラオリゴヌクレオチド(「ギャップマー」)であり、5個のヌクレオチド「ウイング」が両側(5’および3’)に配置された、10個の2’デオキシヌクレオチドからなる中心「ギャップ」領域からなる。ウイングは2'-O-(2-メトキシエチル) ヌクレオチドからなり、2'-MOEヌクレオチドとしても公知である。ヌクレオシド間(主鎖)結合はオリゴヌクレオチドを通じてホスホロチオエートである。全シチジン残基は5-メチルシチジンである。本明細書のほかの実施例に記載されるような、ヒトグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼにハイブリダイズするよう設計されたプライマー-プローブセットを使用した定量的リアルタイムPCRにより、遺伝子標的mRNAレベルにおける効果について該化合物を解析した。
データは、LIPOFECTINTMを用いて、HepG2細胞を、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドで処理した実験の結果から得られたものである。表11に阻害の割合として発現の減少が表される。もし「N.D.」とあるなら、それは「測定されない」を意味する。これらのオリゴマー化合物が阻害する標的領域は、本明細書中で、「有効標的セグメント」という。
表11に示される特定のオリゴマー化合物は、ラットグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼに相補的な異種間のオリゴである。表11の他のオリゴマー化合物は、ラットグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ配列に対してミスマッチを含有する。ISIS 359508およびISIS 359453は、ヒトグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼを標的とするように設計されたオリゴであり、それぞれラットの標的に対して、一つまたは二つのミスマッチを有する。ラットモデルのさらなる研究において、これらのヒトオリゴヌクレオチドの配列は、ラットグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼについての公開配列と100%の相補性を有するように調節された(GENBANKTM受託番号:AF080468.1、配列番号:4として本明細書中に援用される)。ラットオリゴマー化合物は、ISIS 349113(CAGACCAACCAGGAGCAGCC、配列番号:202として本明細書中に援用される)およびISIS 366228(GTGCTTGGCGATGGTACTGA、配列番号:203として本明細書中に援用される)である。ISIS 349113およびISIS 366228は、長さ20ヌクレオチドのキメラオリゴヌクレオチド(「ギャップマー」)であり、5個のヌクレオチド「ウイング」が両側(5’および3’)に配置された、10個の2’-デオキシヌクレオチドからなる中心「ギャップ」領域からなる。ウイングは2'-O-(2-メトキシエチル) ヌクレオチドからなり、2'-MOEヌクレオチドとしても公知である。ヌクレオシド間(主鎖)結合はオリゴヌクレオチドを通じてホスホロチオエートである。全シチジン残基は5-メチルシチジンである。
実施例14
正常ラットにおけるグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンス阻害:用量応答研究
本発明に従って、オリゴマー化合物をインビボにおけるさらなる研究のために選択した。3週間、雄のSprague-Dawleyラットに1週間に2回、12.5 mg/kg、25 mg/kg、または50 mg/kgの用量のISIS 145760、ISIS 359543、またはISIS 366228を注射した。各処理群は4匹の動物からなる。1週間に2回、食塩水の注射を受ける動物を対照として用いた。
処理期間の終わりに、動物を屠殺して肝臓の標的の減少を本明細書の他の実施例で記載したように、リアルタイムPCRにより測定した。食塩水処理対照と比較した際の結果を、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼレベルの減少の平均割合として表12に示す。
表12に示されるように、ISIS 145706、ISIS 359543、およびISIS 366228は、用量依存的な様式でラットの肝臓における標的mRNAレベルの減少に効果的であった。
研究期間を通して体重を監視した。ISIS 145706、ISIS 359543、またはISIS 366228の投与により処理した動物についての体重の増加は、食塩水処理対照動物において観察された体重の増加に匹敵していた。また、組織の重量も研究の終わりに測定した。3週目に測定した平均体重および研究の終わりに測定した組織重量を、各処理群に対して表13(グラムで)に示す。
表13に示されるように、腎または肝腫大はアンチセンスオリゴヌクレオチド処理に関係していない。
標的mRNAの阻害によって得られた生理学的効果をさらに評価するために、処理期間の開始時(週0)および終わり(週3)に、血漿グルコース、血漿コレステロール、および血漿トリグリセリドレベルについてラットを評価した。トリグリセリドおよびコレステロールを常套的な臨床解析器具(例えばOlympus Clinical Analyzer, Melville, NY)により測定した。例えばYSIグルコース解析器(YSI Scientific, Yellow Spring, OH)のようなグルコース解析器を用いてグルコースレベルを測定した。処理群あたりに測定された血漿グルコース、血漿コレステロール(CHOL)、または血漿トリグリセリド(TRIG)の平均レベルとして結果を表14に示す。
いずれの処理群にも低血糖症は見られなかった。表14に示すように、ISIS 359543で処理した動物は用量依存的な血漿トリグリセリドの減少を示した。ISIS 145706またはISIS 366228、による処理によって、食塩水処理動物に見られるトリグリセリドの増加が阻害された。従って、本発明の一つの態様は、本発明のオリゴマー化合物を投与することによる動物のトリグリセリドを減少する方法である。
実施例15
ロシグリタゾンとの組み合わせたZDF老齢ラットのグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンス阻害
ツッカー肥満(fa/fa)ラットは、常染色体上に遺伝形質の劣勢パターンを有する遺伝的な肥満の例である。fa/fa動物の肥満は、過度な摂食、低下したエネルギー消費、傷害を受けた体温調節熱産生、高インスリン血症(インスリンの過剰産生)、および高コルチコステロン血症(コルチコステロイドの過剰産生)に関連がある。fa変異はレプチンのレセプターの細胞外ドメインにおけるアミノ酸の置換として同定された。結果として、fa/fa動物は増加した血漿レプチンレベルを有し、外因性のレプチン投与に抵抗性である。
さらなる態様において、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼのアンチセンス阻害の効果を、標準療法の治療性ロシグリタゾンおよびロシグリタゾンとの組み合わせに対する肥満の老齢ツッカーfa/faラットモデルにおいて評価する。老齢ツッカーfa/faラットは標準グルコース低下治療薬(例えばメトフォルミンまたはロシグリタゾン)に抵抗性であるので、ロシグリタゾンと、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドとの組み合わせをさらなる治療効果について調査した。約17〜18週齢の雄のツッカーfa/faラットをCharles River Laboratories(Wilmington, MA)から購入し、標準的なげっ歯類用の食餌で飼育する。動物を各8匹の処理群に分ける。ある処理群には12.5 mg/kgのISIS 366228(配列番号:203)を1週間に2回皮下に投与した。別の処理群には25 mg/kgのISIS 366228を1週間に2回投与した。他の処理群には、日に1回の3 mg/kg用量の、粉末状の食餌で投与されるロシグリタゾン(Rosi)と組み合わせて、12.5 mg/kgまたは25 mg/kgのISIS 366228を1週間に2回投与した。別の処理群には、日に1回の3 mg/kg用量のロシグリタゾンのみの食餌投与を受けさせた。食塩水注射動物を対照処理群として用いた。
処理期間の終わりに、動物を屠殺して肝臓および腎臓における標的の減少を本明細書の他の実施例で記載したように、リアルタイムPCRにより測定した。また、該mRNAにハイブリダイズするように設計されたプライマー-プローブセットを用いて、グルコース-6-ホスファターゼの触媒サブユニット(G6PC)の減少を測定した。例えば、以下のプライマー-プローブセットを、表1に引用されるラットグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ配列にハイブリダイズするように設計した。:
、ここでFAMは蛍光色素で、TAMRAは消光(quencher)色素である。
食塩水処理対照と比較した際の、各処理群についての結果をグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼレベルまたはG6PCの減少の平均割合として表15に示す。
表15に示すように、ISIS 366228単独またはロシグリタゾンとの組み合わせのいずれか、2通りの用量で、ISIS 366228は肝臓および腎臓のグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼレベルを減少させた。ロシグリタゾン単独で肝臓のグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼレベルの減少が起こった。
血漿グルコースレベルを、研究の開始時(週0)、処理の第1週目(週1)、処理の第3週目(週3)、および処理の第5週目(週5)に評価した。
表16に示すように、ISIS 366228単独またはロシグリタゾン単独の処理により、研究の時間経過を通じて血漿グルコースの減少が起こった。しかしながら、組み合わせによって、ISIS 366228およびロシグリタゾンはグルコースの減少においてより効果的であり、組み合わせ療法のさらなる効果を示した。本発明の一つの態様は、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼを標的とするオリゴマー化合物を投与することにより動物のグルコースを減少させる方法である。本発明の別の態様は、さらなる治療効果をなす別のグルコース低下用薬物と組み合わせて、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼを標的とするオリゴマー化合物を投与することにより動物のグルコースを低下させる方法である。
研究を通じて食餌の消費を観察し、いずれかの単独処理と比較した際にロシグリタゾンと組み合わせてISIS 366228で処理された動物に対して食餌の消費量の変化は観察されなかった。
ISIS 366228単独またはロシグリタゾンと組み合わせた際の効果をさらに評価するために、処理の3週目に経口グルコース負荷試験を行なった。基準のグルコースレベルを設けるために、絶食状態の血糖レベルを負荷の前に測定した。18口径の強制栄養法の針を通じて、1 g/kgの用量で経口の強制栄養法によりグルコースを投与した。負荷後、15、30、60、90、および120分間で、グルコース解析器(例えば、Ascencia Glucometer Elite XL, Bayer, Tarrytown, NY)を用いて血漿グルコースレベルを測定した。指定された時点での各処理群についての平均血漿グルコースレベル(mg/dLで)として、結果を表17に示す。
表17に示されるように、ロシグリタゾンと組み合わせてISIS 366228で処理した動物は、減少した絶食状態の血漿グルコースレベルを示した。時間の関数として血漿グルコースレベルをプロットして作製された曲線下面積の比較により、ロシグリタゾンのみで処理した動物または食塩水処理対照と比較した際に、ロシグリタゾンと組み合わせてISIS 366228で処理した動物の向上した成績が示された。
研究期間を通じて体重を監視した。各処理群について、指定された時点での平均体重を表18(グラムで)に示す。
表18に示されるように、ロシグリタゾン単独での処理は体重の増加に関係しており、ロシグリタゾンとISIS 366228を組み合わせは効果を悪化させなかった。ISIS 366228単独での処理では体重の増加は起こらなかった。
また、実験を通じて身体組成を観察した。処理開始以前(BL)に基準の身体組成をMRIにより測定した。また、処理の3週目(週3)および5週目(週5)にも身体組成を測定した。各処理群について、各時点で、測定された体脂肪の平均パーセンテージを表19に示した。
表19に示すように、ISIS 366228単独での処理によって、研究の経過を通じて体脂肪率の著しい増加は起こらなかった。ロシグリタゾン単独の処理では体脂肪の増加は生じなかったが、ロシグリタゾンとISIS 366228との組み合わせの処理により効果は悪化しなかった。
また、研究の終わりに組織重量も測定した。各処理群について腎臓、脾臓、肝臓、および脂肪体の平均重量を表20(グラムで)に示す。
表20に示すように、ヒトグリコーゲン貯蔵疾患1B型に関連する腎腫大は、ISIS 366228によるZDFラットのグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼレベルの阻害の結果としては見られない。
アンチセンスオリゴヌクレオチド単独またはロシグリタゾンと組み合わせて、標的mRNAの阻害により生じた生理学的効果をさらに評価するために、処理期間を通じて、血漿遊離脂肪酸、血漿コレステロール、および血漿トリグリセリドレベルについてラットを評価した。遊離脂肪酸、トリグリセリドおよびコレステロールを、常套的な臨床解析器具(例えばOlympus Clinical Analyzer, Melville, NY)により測定した。例えばYSIグルコース解析器(YSI Scientific, Yellow Springs, OH)のようなグルコース解析器を用いてグルコースレベルを測定した。処理群当りで測定された血漿コレステロール(CHOL)、または血漿トリグリセリド(TRIG)の平均レベルとして、結果を表21に示す。
表21に示すように、処理の全てによって血漿トリグリセリドの最初の減少が起こった。ISIS 366228単独での処理により、食塩水処理対照動物またはロシグリタゾン単独で処理した動物に対して見られる血漿コレステロールの増加が阻害された。
研究を通じて、肝臓トランスアミナーゼ、ALTおよびASTを測定した。ロシグリタゾン単独、ISIS 366228単独、またはISIS 366228と組み合わせたロシグリタゾンにより処理された動物は、研究の5週目で肝臓機能のこれらの指標のレベルの減少を示した。
ヒトグリコーゲン貯蔵疾患1b型の患者は、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ遺伝子に、肝臓のグリコーゲン堆積に欠損を示す変異を有するので、処理期間の終わりに、ZDFラットを肝臓のグリコーゲン貯蔵の変化についてさらに評価した。グルコーストリンダー試薬(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を用いて組織グリコーゲンを測定した。食塩水処理対照のレベルと比較した際に、肝臓のグリコーゲンレベルの実質的な変化を示した処理群はなかった。
実施例15
オリゴマー化合物によるマウスグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼ発現のアンチセンス阻害
表1に引用される公開配列を使用して、マウスグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの異なる領域を標的とするように一連のオリゴマー化合物を設計した。該化合物を表22に示す。表22中の全化合物は、長さ20ヌクレオチドのキメラオリゴヌクレオチド(「ギャップマー」)であり、5個のヌクレオチド「ウイング」が両側(5’および3’)に配置された、10個の2’デオキシヌクレオチドからなる中心「ギャップ」領域からなる。ウイングは2'-O-(2-メトキシエチル) ヌクレオチドからなり、2'-MOEヌクレオチドとしても公知である。ヌクレオシド間(主鎖)結合はオリゴヌクレオチドを通じてホスホロチオエートである。全シチジン残基は5-メチルシチジンである。マウスグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼにハイブリダイズするように設計した以下のプライマー-プローブセットを用いて、本明細書のほかの実施例に記載のように定量的リアルタイムPCRにより、遺伝子標的であるmRNAレベルにおける効果について該化合物を解析した:
および
、ここでFAMは蛍光レポーター色素であり、TAMRAは消光色素である。初代マウス肝臓細胞を、LIPOFECTINTMを用いて150 nMの本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドで処理した実験からのものである。表22に阻害の割合として発現の減少が表される。もし「N.D.」とあるなら、それは「測定しない」を意味する。対照オリゴマー化合物は配列番号:11であった。これらのオリゴマー化合物が阻害する標的領域は、本明細書中で、「有効標的セグメント」という。
実施例16
ラットグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼを標的とするように設計されたオリゴマー化合物
表1に引用される公開配列を使用して、マウスグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの異なる領域を標的とするように一連のオリゴマー化合物を設計した。該化合物を表23に示す。表23中の全化合物は、長さ20ヌクレオチドのキメラオリゴヌクレオチド(「ギャップマー」)であり、5個のヌクレオチド「ウイング」が両側(5’および3’)に配置された、10個の2’デオキシヌクレオチドからなる中心「ギャップ」領域からなる。ウイングは2'-O-(2-メトキシエチル) ヌクレオチドからなり、2'-MOEヌクレオチドとしても公知である。ヌクレオシド間(主鎖)結合はオリゴヌクレオチドを通じてホスホロチオエートである。全シチジン残基は5-メチルシチジンである。
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1]修飾ヌクレオシド間結合、修飾核酸塩基、または修飾糖より選択される少なくとも二つの化学的修飾を含む、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼをコードする核酸分子を標的とし、それにハイブリダイズし得る13〜30ヌクレオチド長のオリゴマー化合物であり、グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの発現を阻害する、オリゴマー化合物。
[2]デオキシヌクレオチドを含む第一の領域、ならびに2'-O-(2-メトキシエチル) ヌクレオチドを含む第二および第三の領域を有するキメラオリゴヌクレオチドである、[1]記載のオリゴマー化合物。
[3]5’および3’の両末端に5個の2'-O-(2-メトキシエチル) ヌクレオチドを配置された10個のデオキシヌクレオチド領域を含むキメラオリゴヌクレオチドであり、各ヌクレオシド間結合がホスホロチオエートである、[1]記載のオリゴマー化合物。
[4]グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの発現を少なくとも35%阻害する、[1]記載のオリゴマー化合物。
[5]グルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼの発現を少なくとも35%阻害し、配列番号27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、40、41、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、52、53、54、55、56、57、57、58、59、60、61、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、157、158、159、160、161、163、164、165、166、167、168、169、171、172、173、175、176、177、178、179、180、181、183、184、185、186、187、188、189、190、192、193、194、195、196、198、199、200、または201より選択される、[1]記載のオリゴマー化合物。
[6]動物の血糖を低下させるための医薬の調製における、[1]記載の化合物の使用。
[7]動物のトリグリセリドを低下させるための医薬の調製における、[1]記載の化合物の使用。
[8]トリグリセリドが循環性トリグリセリドである、[7]記載の使用。
[9]動物の血清コレステロールを低下させるための医薬の調製における、[1]記載の化合物の使用。
[10]糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、インスリン欠乏症、高コレステロール血症、高血糖症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高脂肪酸血症、肝臓脂肪症、メタボリックシンドローム、心臓血管病、または心臓血管系危険因子より選択される症状を有するか、有すると疑われる動物を治療するための医薬の調製における、[1]記載の化合物の使用。
[11]現在、さらなるグルコース低下薬で治療されている動物の血糖を低下させるための医薬の調製における、[1]記載の化合物の使用。
[12]グルコース低下薬がホルモン、ホルモン模倣剤、スルホニル尿素、ビグアナイド、メグリチニド、チアゾリジンジオン、αグルコシダーゼインヒビター、またはグルコース-6-ホスファターゼトランスロカーゼを標的としないアンチセンス化合物である、[11]記載の使用。
[13]ホルモンまたはホルモン模倣剤がインスリン、GLP-1またはGLP-1アナログである、[12]記載の使用。
[14]GLP-1アナログがエキセンディン-4またはリラグルチドである、[13]記載の使用。
[15]スルホニル尿素がアセトヘキサミド、クロルプロパミド、トルブタミド、トラザミド、グリメピリド、グリピジド、グリブリドまたはグリクラジドである、[12]記載の使用。
[16]ビグアナイドがメトホルミンである、[12]記載の使用。
[17]メグリチニドがナテグリニドまたはレパグリニドである、[12]記載の使用。
[18]チアゾリジンジオンがピオグリタゾン、ロシグリタゾンまたはトログリタゾンである、[12]記載の使用。
[19]αグルコシダーゼインヒビターがアカルボースまたはミグリトールである、[12]記載の使用。
[20]動物が糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、インスリン欠乏症、高コレステロール血症、高血糖症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高脂肪酸血症、肝臓脂肪症、メタボリックシンドローム、心臓血管病、または心臓血管系危険因子より選択される症状を有するか、有すると疑われる、[11]記載の使用。