JP2011080557A - 等速自在継手及び等速自在継手の外側継手部材 - Google Patents

等速自在継手及び等速自在継手の外側継手部材 Download PDF

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実 石島
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Abstract

【課題】強度の低下を伴わず、高精度で、且つ軽量化が可能な等速自在継手の外側継手部材およびこのような外側継手部材を用いた等速自在継手を提供する。
【解決手段】等速自在継手の外側継手部材は、内径面1にトラック溝2を形成したカップ部11と、カップ部11の底壁部11bから突設されるステム軸12とを備える。カップ部11が、複数の薄板プレス成形品25の重ね合せ体26にて構成されている。重ね合せ体26にプレス加工が施されている。薄板プレス成形品25が接着一体化されたり、溶接一体化されたりする。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、自動車や各種産業機械の動力伝達系において使用される等速自在継手及び等速自在継手の外側継手部材に関する。
トルク伝達部材にボールが用いられる等速自在継手は、一般には、内球面に複数のトラック溝が円周方向等間隔に軸方向に沿って形成された外側継手部材としての外輪と、外球面に外輪のトラック溝と対をなす複数のトラック溝が円周方向等間隔に軸方向に沿って形成された内側継手部材としての内輪と、外輪のトラック溝と内輪のトラック溝との間に介在してトルクを伝達する複数のボールと、外輪の内球面と内輪の外球面との間に介在してボールを保持するケージとを備えている。
ところで、近年の環境意識の高まりとガソリンの高騰を受け、自動車製造メーカは自動車燃費の向上を目的として大幅な軽量化を図るのが好ましい。このため、自動車の動力伝達系において使用される等速自在継手にも大幅な軽量化が必要となる。
そこで、等速自在継手の外輪に対して軽量化を図るようにしたものがある(特許文献1〜特許文献3等)。これらは、外輪のカップ部(マウス部)をプレス成形体として、薄肉化を図ったものである。
すなわち、特許文献1では、軸部とフランジ部を有する素材に対して、絞り加工によって中間品を成形し、次に、その中間品に対して前方押出加工を行って成形品を成形するものである。特許文献2では、2種類のパンチおよびダイス等を用いて絞り加工するものである。特許文献3では、鋼板の深絞りにより成形するものである。
特開2003−83357号公報 特開平4−351242号公報 特開平9−53647号公報
しかしながら、ボールタイプの等速自在継手の外輪は、コンパクト性を重視する設計においては、トラック溝と内球径(内径面)の繋ぎRを小さくする必要がある。そのため、特許文献1から特許文献3に記載されているようなプレス成型において、必要な精度を得るには薄肉素材とする必要がある。しかしながら、薄肉素材を用いれば、強度が不足するか、または、強度確保のためにコンパクト性を犠牲にする必要があり、軽量化が困難であった。
また、強度確保を目的に、厚肉素材にてプレス成形すると、必要寸法精度が得られないか、無理に高い荷重にてプレスすると、素材に割れが生じてしまう等、実現するには限界があった。
そこで、本発明は斯かる実情に鑑み、強度の低下を伴わず、高精度で、且つ軽量化が可能な等速自在継手の外側継手部材を提供しようとするものである。
本発明の等速自在継手の外側継手部材は、内径面にトラック溝を形成したカップ部と、このカップ部の底壁部から突設されるステム軸とを備えた等速自在継手の外側継手部材であって、前記カップ部が、複数の薄板プレス成形品の重ね合せ体にて構成されているものである。
本発明の等速自在継手の外側継手部材によれば、カップ部が、複数の薄板プレス成形品の重ね合せ体にて構成されているので、強度的に優れる。しかも、各薄板プレス成形品は、プレス成形しやすい薄肉板の使用が可能であり、寸法精度を得易い利点がある。
前記重ね合せ体にプレス加工が施されてなるものが好ましい。このようにプレス加工を施せば、重ね合せ体全体が加締られた状態となって、薄板プレス成形品同士の密着性が向上する。また、重ね合せ体を構成する薄板プレス成形品が接着一体化されているものであって、溶接一体化されているものであってもよい。ここで、接着一体化とは接着剤を用いた接合であり、溶接一体化とは溶接(例えば、レーザー溶接)を用いた接合である。
前記重ね合せ体の最内径層の薄板プレス成形品に浸炭焼入れ材を用いたり、高周波焼入れ材を用いたりするのが好ましい。このように、最内径層の薄板プレス成形品に焼入れ材を用いることによって、最内径層の強度及び耐久性を確保することができる。
前記重ね合せ体の最内径層と最外径層の間に、軽量素材を介装しても、重ね合せ体の外径側に軽量素材を配置してもよい。軽量素材は、自動車の量産車等に使用される軽量素材であって、アルミニウムやマグネシウムに代表される軽金属類、各種のFRP(繊維強化プラスチック)やエンジニアリング・プラスチック、高張力鋼などである。
前記重ね合せ体からなるカップ部と、ステム軸とは凹凸嵌合構造を介して一体化された等速自在継手の外側継手部材であって、カップ部の底壁部に、内径面に軸方向に延びる凸部を有する孔部を設けるとともに、この凸部に熱硬化処理を施し、このカップ部の孔部にステム軸を圧入し、この圧入によって、ステム軸の生材部に凸部に嵌合する凹部を形成して前記凹凸嵌合構造を構成することができる。
前記重ね合せ体からなるカップ部と、ステム軸とは凹凸嵌合構造を介して一体化された等速自在継手の外側継手部材であって、ステム軸の端部外径面に熱硬化処理が施された凸部を軸方向に沿って形成するとともに、カップ部に内径部が生材からなる孔部を設け、このステム軸の端部をカップ部の底壁部の孔部に圧入し、この圧入によって、カップ部の内径部に凸部に嵌合する凹部を形成して前記凹凸嵌合構造を構成することができる。
すなわち、前記ステム軸を重ね合せ体からなるカップ部の孔部に圧入することによって、凸部にて、相手側に凸部に密着嵌合する凹部を形成して、凹凸嵌合構造を構成していくことになる。この際、凸部が相手側の凹部形成面に食い込んでいくことによって、孔部が僅かに拡径した状態となる。孔部は弾性変形分縮径しようとするため、凸部の凹部嵌合部位の全体がその対応する凹部に対して密着する。
カップ部のトラック溝の溝底全範囲が円弧形状であるものであっても、カップ部のトラック溝の溝底が円弧形状部とストレート形状部とを有するものであってもよい。すなわち、これらの場合は、ボールを用いた固定式等速自在継手を構成することができる。また、カップ部のトラック溝の溝底全範囲がストレート形状であってもよい。この場合、ダブルオフセット型の摺動式等速自在継手を構成することができる。
本発明の等速自在継手は、前記記載の等速自在継手の外側継手部材を用いたものである。この際、トルク伝達部材としてボールを用い、ボール数を3個以上とすることができる。
本発明の等速自在継手の外側継手部材では、寸法精度を得易すく、必要な形状(等速自在継手の外側継手部材の形状)の精度を得ることができる。しかも、このように重ね合わせ体を構成することによって、小型でも高い強度をもった製品(外側継手部材)を提供できる。プレス加工を施せば、薄板プレス成形品同士の密着性が向上して、一層の強度向上を図ることができる。
最内径層の薄板プレス成形品に焼入れ材を用いることによって、最内径層の強度及び耐久性を確保することができ、長期にわたって安定して等速自在継手を構成できる。最内径層の焼入れと共に、軽量素材を最内径層以外に使用することによって、強度の低下を招く事なく軽量化を図ることができる。
ステム軸とカップ部とを凹凸嵌合構造を介して連結すれば、ステム軸とカップ部とは安定して連結され、しかも、ステム軸をカップ部の孔部に圧入すればよいので、その連結作業の簡略化を図ることができ、生産性に優れる。
この外側継手部材としては、ボールを用いた固定式等速自在継手やダブルオフセット型の摺動式等速自在継手を構成することができ、種々のタイプの等速自在継手に対応することができ、ボール数も任意に設定でき、設計の自由度が拡がる。
本発明の実施形態を示す等速自在継手の外側継手部材のカップ部の断面図である。 前記図1の外側継手部材のカップ部の正面図である。 前記図1の外側継手部材を用いた等速自在継手の断面図である。 前記図1の外側継手部材の要部拡大断面図である。 前記図1の外側継手部材のステム軸の側面図である。 前記図1の外側継手部材の凹凸嵌合構造の横断面図である。 前記図1の外側継手部材の凹凸嵌合構造の要部拡大断面図である。 ステム軸の変形例を示す側面図である。 外側継手部材の他の凹凸嵌合構造の横断面図である。 外側継手部材の他の凹凸嵌合構造の要部拡大断面図である。
以下本発明の実施の形態を図1〜図9に基づいて説明する。
図3に本発明に係る外側継手部材を用いた等速自在継手を示している。この等速自在継手は、内径面1に複数のトラック溝2が軸方向に沿って形成された外側継手部材としての外輪3と、外径面4に複数のトラック溝5が軸方向に沿って形成された内側継手部材としての内輪6と、外輪3のトラック溝2と内輪6のトラック溝5との対で形成されるボールトラックに配置される複数のトルク伝達ボール7と、外輪3の内径面と内輪の外径面との間に介在すると共に前記トルク伝達ボール7を保持するケージ8を備える。
外輪3のトラック溝2は、トラック溝底が奥側の円弧部2aと、継手軸方向と平行な開口側のストレート部2bとからなり、内輪6のトラック溝5は、トラック溝底が奥側のストレート部5aと、開口側の円弧部5bとからなる。すなわち、この等速自在継手はアンダーカットフリータイプの固定式等速自在継手である。
また、内輪6の孔部の内径面には雌スプライン6aが設けられ、この内輪6の孔部にシャフト10の端部が嵌入される。この際、シャフト10の端部には、雄スプライン10aが設けられ、この雄スプライン10aが内輪6の孔部の雌スプライン6aに嵌合する。なお、シャフト10の雄スプライン10aの端部には、シャフト抜け止め用の止め輪9が嵌着されている。
外輪3は、前記トラック溝2が形成されるカップ部11と、このカップ部11の底壁部11bから突設されるステム軸12とを備える。ステム軸12は、図5に示すように、カップ部側のボス部15と、反カップ部側のねじ部16と、このねじ部16との間に設けられる雄スプライン17とを備える。ボス部15は、カップ部側の大径部18と、雄スプライン17側の小径部19と、この小径部19と大径部18とを連結するアール部20を有する。
カップ部11は、図1等に示すように、カップ部本体11aと、底壁部11bとからなり、底壁部11bはステム軸12のボス部15の大径部18が嵌入される円盤部21と、この円盤部21の外周縁部から継手軸方向に延びる短周壁22とからなる。
カップ部11と、ステム軸12とは凹凸嵌合構造Mを介して一体化される。すなわち、凹凸嵌合構造Mは、図6及び図7に示すように、例えば、底壁部11bの円盤部21に設けられた孔部23の内径面に設けられた軸方向に延びる凸部35と、ステム軸12のボス部15の大径部18に設けられた凹部36とからなり、凸部35とその凸部35に嵌合する凹部36との嵌合接触部位38全域が密着している。この場合、底壁部11bの孔部23の内径面に、複数の凸部35が周方向に沿って所定ピッチで配設され、ステム軸12のボス部15の大径部18に凸部35が嵌合する複数の凹部36が周方向に沿って形成されている。つまり、周方向全周にわたって、凸部35とこれに嵌合する凹部36とがタイトフィットしている。なお、嵌合接触部位38の全体が密着しているには、嵌合接触部位38の極一部領域に凸部による凹部形成過程で不可避的に隙間が生じる場合も含むものとする。
この場合、各凸部35は、その断面が凸アール状の頂点を有する三角形状(山形状)であり、各凸部35の凹部嵌合部位とは、図7に示す範囲Bであり、断面における山形の中腹部から山頂にいたる範囲Bである。また、周方向の隣合う凸部35間において、ボス部15の大径部18の外径面よりも外径側に隙間42が形成されている。なお、ステム軸12とカップ部11とが連結された状態では、図4に示すように、ステム軸12の大径部の端部外周縁部には抜け止め用のテーパ状係止片24が設けられている。図7等では隙間42が形成されるが、凸部35間の凹部まで、ボス部15の大径部18の外径面に食い込むようなものであってもよい。
カップ部11は複数枚(図例では3枚)の薄板プレス成形品25の重ね合せ体26にて構成している。薄板プレス成形品25は、例えば、鋼板を既存のプレス成形機のプレス加工にて成形することができ、すなわち、各薄板プレス成形品25は、完成品のカップ部11と同一形状品であって、その肉厚が小であるものである。各薄板プレス成形品25は、カップ部本体形成部51aと、底壁部形成部51bとからなり、底壁部51bはステム軸12のボス部15の大径部18が嵌入される円盤部形成部61と、この円盤部形成部61の外周縁部から継手軸方向に延びる短周壁形成部62とからなる。なお、薄板プレス成形品25には、超高強度鋼板を用いることができる。高張力鋼板は、「ハイテン」(High Tensile Strength Steel Sheets)とも呼ばれる引っ張り強さが高い鋼板のことである。普通鋼板が引張り強さ270MPa以上であるのに対して、一般的には340MPa〜790MPaのものが高張力鋼板と定義されている。なお、引張り強さ980MPa以上のものは通常「超高張力鋼板」と呼ばれる。
高張力鋼板の種類としては、炭素の他にニッケル(Ni)やシリコン(Si)、マンガン(Mn)などの元素を添加して強化した固溶強化型や析出強化型鋼板、プレス成形後に焼入れして強化した複合組織鋼板などがある。また、プレス成形する前に材料を加熱して、成形後急冷して強度を高める熱間プレス成形法が開発され、採用が広がっている。なお、薄板プレス成形品25としては、このような超高強度鋼板に限るものではなく、プレス成形機のプレス加工にて成形することができるものであればよい。
重ね合せ体26としては、薄板プレス成形品25を重ね合せた後に、プレス加工が施されて、薄板プレス成形品25同士の密着性を向上させるのが好ましい。また、薄板プレス成形品25間に接着剤を介在させ、薄板プレス成形品25を接着一体化するようにしてもよい。このように接着一体化する場合、接着剤としては、例えば、エポキシ系、ウレタン系またはアクリル系等を用いることができる。
また、接着一体化することなく、溶接一体化するようにしてもよい。この場合、例えば、強度確保に適した箇所に部分的なレーザー溶接を行えばよい。ここで、レーザー溶接とは、レーザー光を熱源として主として金属に集光した状態で照射し、金属を局部的に溶融・凝固させることによって接合する方法のことである。
次に、カップ部11とステム軸12との連結方法を説明する。この際、孔部23の内径面に設けられた軸方向に延びる凸部35に対して熱硬化処理を施すとともに、ボス部15の大径部18の外径面を生材(熱硬化処理を施さない状態)のままとする。熱硬化処理としては、高周波焼入れや浸炭焼入れ等の種々の熱処理を採用することができる。ここで、高周波焼入れとは、高周波電流の流れているコイル中に焼入れに必要な部分を入れ、電磁誘導作用により、ジュール熱を発生させて、伝導性物体を加熱する原理を応用した焼入れ方法である。また、浸炭焼入れとは、低炭素材料の表面から炭素を浸入/拡散させ、その後に焼入れを行う方法である。凸部35の硬度を50HRCから65HRC程度とし、ボス部15の大径部18の未硬化部の硬度を10HRCから30HRC程度とする。そして、その硬度差を例えばHRCで20ポイント以上とする。このように、凸部35に対して熱硬化処理を行う場合、凸部35のみに施すようにしても、薄板プレス成形品25全体を浸炭焼入れや高周波焼入れを施したものとしてもよい。すなわち、重ね合せ体26の最内径層の薄板プレス成形品25に浸炭焼入れ材(例えば、SCr420等)を用いたり、高周波焼入れ材(例えば、S48C等)を用いたりするようにしてもよい。
ところで、前記凸部35は、図6に示すように、周方向に沿って所定ピッチで配設されるものであるので、複数の凸条と複数の凹条とからなるスプラインを形成し、このスプラインの凸条をもって凸部35を構成できる。このようなスプラインは、従来からの公知公用の手段である転造加工、切削加工、プレス加工、引き抜き加工等の種々の加工方法によって、形成することがきる。また、熱硬化処理としては、凸部35を形成した後に行うことになる。
図6に示すように、凸部35の頂点を結ぶ円の径寸法(凸部35の最小径寸法)D8を、ボス部15の大径部18の外径寸法D10よりも小さく、凸部35間の底を結ぶ円の径寸法D9をボス部15の大径部18の外径寸法D10よりも大きく設定する。すなわち、D8<D10<D9とされる。
そして、ボス部15の大径部18をカップ部11の孔部23に圧入することになる。この場合、圧入前には、ボス部15の大径部18の外周縁部から前記テーパ状係止片24を構成するための短円筒部30を軸方向に沿って突出させておく。
そして、ステム軸12とカップ部11との軸心とを合わせた状態で、カップ部11の孔部23に対して、ステム軸12のボス部15を挿入(圧入)していく。この際、D8<D10<D9であり、しかも、凸部35の硬度がステム軸12のボス部15の外径面の硬度よりも20ポイント以上大きいので、ステム軸12のボス部15をカップ部11の孔部23に圧入していけば、この凸部35がボス部15の外径面に食い込んでいき、この凸部35が嵌合する凹部36を軸方向に沿って、このボス部15の外径面に形成していくことになる。
また、圧入によって、凸部35と、これに嵌合する凹部36との嵌合接触部位38の全体が密着している。すなわち、相手側の凹部形成面(ボス部15の外径面)に凸部35の形状の転写を行うことになる。この際、凸部35が大径部の外径面に食い込んでいくことによって、孔部23が僅かに拡径した状態となる。孔部23は弾性変形分縮径することになる。言い換えれば、凸部35の圧入時に孔部23内径が径方向に弾性変形し、この弾性変形分の予圧が凸部35の歯面(凹部嵌合部位の表面)に付与される。このため、凸部35の凹部嵌合部位の全体がその対応する凹部36に対して密着する凹凸嵌合構造Mを確実に形成することができる。
そして、図示省略の拡径用治具を用いて、ステム軸12の短円筒部30を拡径させて、この短円筒部30をテーパ状係止片24に変形させる。これによって、ステム軸12とカップ部11とが凹凸嵌合構造Mを介して一体化される。ところで、ステム軸12の孔部23への圧入は、大径部18の途中で止めるのが好ましい。このように、途中で止めることによって、図4に示すようなストッパ27が大径部18に形成される。このため、このストッパ27とテーパ状係止片24とでステム軸12の軸方向の抜けを規制することができる。
また、図8に示すように、ステム軸12の大径部18に予めストッパ(外鍔部)31を設けるようにしてもよい。このように予めストッパ31を設けておけば、圧入時における圧入量を規制することができ、圧入作業性の向上を図ることができる。
本発明の等速自在継手の外側継手部材では、カップ部11が、複数の薄板プレス成形品25の重ね合せ体26にて構成されているので、強度的に優れる。しかも、各薄板プレス成形品25は、プレス成形しやすい薄肉板の使用が可能であり、寸法精度を得易い利点がある。このため、本発明の等速自在継手の外側継手部材では、寸法精度を得易すく、必要な形状(等速自在継手の外側継手部材の形状)の精度を得ることができる。しかも、このように重ね合せ体26を構成することによって、小型でも高い強度をもった製品(外側継手部材)を提供できる。プレス加工を施せば、重ね合せ体26全体が加締られた状態となって、薄板プレス成形品同士の密着性が向上して、一層の強度向上を図ることができる。薄板プレス成形品25が接着一体化や溶接一体化されているものであれば、安定した強度向上を図ることができる。
ところで、前記重ね合せ体26の最内径層の薄板プレス成形品25に浸炭焼入れ材を用いたり、高周波焼入れ材を用いたりするのが好ましい。このように、最内径層の薄板プレス成形品に焼入れ材を用いることによって、最内径層の強度及び耐久性を確保することができ、長期にわたって安定して等速自在継手を構成できる。
また、前記重ね合せ体26の最内径層と最外径層の間に、軽量素材を介装しても、重ね合せ体26の外径側に軽量素材を配置してもよい。軽量素材は、自動車の量産車等に使用される軽量素材であって、アルミニウムやマグネシウムに代表される軽金属類、各種のFRP(繊維強化プラスチック)やエンジニアリング・プラスチック、高張力鋼などである。軽量素材を使用することによって、強度の低下を防止して軽量化を図ることができる。
カップ部11のトラック溝2の溝底全範囲が円弧形状であるものであっても、カップ部11のトラック溝1の溝底が円弧形状部とストレート形状部とを有するものであってもよい。すなわち、これらの場合は、ボール7を用いた固定式等速自在継手を構成することができる。また、カップ部11のトラック溝2の溝底全範囲がストレート形状であってもよい。この場合、ダブルオフセット型の摺動式等速自在継手を構成することができる。
本発明の等速自在継手は、前記記載の等速自在継手の外側継手部材を用いたものである。この際、トルク伝達部材としてボールを用い、ボール数を3個以上とすることができる。このように、この外側継手部材としては種々のタイプの等速自在継手に対応することができる。
ところで、前記実施形態では、凹凸嵌合構造Mの凸部35はカップ部11の孔部23の内径面に形成されていたが、図9に示すように、ステム軸12のボス部15の大径部18に凸部35を設けるようにしてもよい。
この場合、カップ部11の孔部23の内径寸法Dを、凸部35の頂点を結ぶ円の最大直径寸法(外接円直径)D1よりも小さく、凸部35間の底を結ぶ円の最小外径寸法D2よりも大きく設定される。すなわち、D2<D<D1とされる。
この場合も凸部35に対して、高周波焼入れや浸炭焼入れ等の熱硬化処理を行い、カップ部11の孔部23の内径面を未焼き状態に維持している。ステム軸12の凸部35とカップ部11の未硬化部との硬度差は、HRCで20ポイント以上とする。具体的には、凸部35の硬度を50HRCから65HRC程度とし、カップ部11の未硬化部の硬度を10HRCから30HRC程度とする。
このように設定して、ボス部15の大径部18をカップ部11の孔部に圧入すれば、凸部35がカップ部11の孔部23の内径面に食い込んでいくことによって、孔部23が僅かに拡径した状態となる。孔部23は弾性変形分縮径することになる。
この場合、各凸部35は、その断面が凸アール状の頂点を有する三角形状(山形状)であり、各凸部35の凹部嵌合部位とは、断面における山形の中腹部から山頂にいたる範囲Aである。また、周方向の隣合う凸部35間において、孔部23の内径面よりも内径側に隙間40が形成されている。この場合も、隙間40が形成されないものであってもよい。軸方向の圧入は、ボス部15の大径部18の途中で止めるのが好ましく、また、圧入前にボス部15の大径部18にストッパを設けておいてもよい。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、重ね合せ体26を構成する薄板プレス成形品25の数の増減は任意である。また、肉厚が同一の薄板プレス成形品25を用いても、全ての薄板プレス成形品25において肉厚が相違するものを用いても、任意の数の薄板プレス成形品25の肉厚が同一のものを用いてもよい。重ね合せ体26をプレスする場合、密着性を考慮して、内側の薄板プレス成形品25の外径側の凸部(内径側にトラック溝を形成するための凸部)が、この薄板プレス成形品25の外側の薄板プレス成形品25の内径面の凹部(トラック溝を形成するための凹部)に圧入状となるのが好ましい。圧入する場合、圧入後のトラック溝形状 及び トラック溝のピッチダイヤ径が規定の値になるように、予め変軽量を考慮した形状としておくのが好ましい。
軽量素材を用いる場合、一枚に限るものではなく、2枚以上の複数枚であってもよい。このように複数枚の軽量素材を用いる場合、その肉厚が同一であっても相違するものであってもよい。また、軽量素材の肉厚と薄板プレス成形品25の肉厚とが同一であっても相違するものであってもよい。浸炭焼入れ材や高周波焼入れ材を用いる場合、少なくとも最内径層に用いるのが好ましいが、この最内径層に加えて、最外径層や、最内径層と最外径層との間の中間層にも用いてもよい。
凹凸嵌合構造Mの凸部35の形状として、前記実施形態では断面略三角形状であり、これら以外の断面台形、半円形状、半楕円形状、矩形形状等の種々の形状のものを採用でき、凸部35の面積、数、周方向配設ピッチ等も任意に変更できる。すなわち、前記実施形態では、スプラインを形成し、このスプラインの凸部(凸歯)をもって凹凸嵌合構造Mの凸部35を形成したが、このようなスプラインを構成することなく、キーのようなものであってもよく、曲線状の波型の合わせ面を形成するものであってもよい。要は、軸方向に沿って配設される凸部35を相手側に圧入し、この凸部35にて凸部35に密着嵌合する凹部36を相手側に形成することができて、凸部35とこれに嵌合する凹部との嵌合接触部位38の全体が密着すればよい。また、カップ部11の孔部23としては円孔以外の多角形孔等の異形孔であってよく、このカップ部11の孔部23に嵌挿する大径部18の断面形状も円形断面以外の多角形等の異形断面であってもよい。
M 凹凸嵌合構造
1 内径面
2 トラック溝
11 カップ部
11b 底壁部
12 ステム軸
25 薄板プレス成形品
26 重ね合せ体
35 凸部
36 凹部
38 嵌合接触部位

Claims (15)

  1. 内径面にトラック溝を形成したカップ部と、このカップ部の底壁部から突設されるステム軸とを備えた等速自在継手の外側継手部材であって、
    前記カップ部が、複数の薄板プレス成形品の重ね合せ体にて構成されていることを特徴とする等速自在継手の外側継手部材。
  2. 前記重ね合せ体にプレス加工が施されてなることを特徴とする請求項1に記載の等速自在継手の外側継手部材。
  3. 前記重ね合せ体を構成する薄板プレス成形品が接着一体化されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の等速自在継手の外側継手部材。
  4. 前記重ね合せ体を構成する薄板プレス成形品が溶接一体化されていることを特徴とする請求項1〜請求項3に記載の等速自在継手の外側継手部材。
  5. 前記重ね合せ体の最内径層の薄板プレス成形品に浸炭焼入れ材を用いたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の等速自在継手の外側継手部材。
  6. 前記重ね合せ体の最内径層の薄板プレス成形品に高周波焼入れ材を用いたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の等速自在継手の外側継手部材。
  7. 前記重ね合せ体の最内径層と最外径層の間に、軽量素材を介装したことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の等速自在継手の外側継手部材。
  8. 前記重ね合せ体の外径側に軽量素材を配置したことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の等速自在継手の外側継手部材。
  9. 前記重ね合せ体からなるカップ部と、ステム軸とは凹凸嵌合構造を介して一体化された等速自在継手の外側継手部材であって、カップ部の底壁部に、内径面に軸方向に延びる凸部を有する孔部を設けるとともに、この凸部に熱硬化処理を施し、このカップ部の孔部にステム軸を圧入し、この圧入によって、ステム軸の生材部に凸部に嵌合する凹部を形成して前記凹凸嵌合構造を構成することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の等速自在継手の外側継手部材。
  10. 前記重ね合せ体からなるカップ部と、ステム軸とは凹凸嵌合構造を介して一体化された等速自在継手の外側継手部材であって、ステム軸の端部外径面に熱硬化処理が施された凸部を軸方向に沿って形成するとともに、カップ部に内径部が生材からなる孔部を設け、このステム軸の端部外径面をカップ部の底壁部の孔部に圧入し、この圧入によって、カップ部の内径部に凸部に嵌合する凹部を形成して前記凹凸嵌合構造を構成することを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の等速自在継手の外側継手部材。
  11. カップ部のトラック溝の溝底全範囲が円弧形状であることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の等速自在継手の外側継手部材。
  12. カップ部のトラック溝の溝底が円弧形状部とストレート形状部とを有することを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の等速自在継手の外側継手部材。
  13. カップ部のトラック溝の溝底全範囲がストレート形状であることを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の等速自在継手の外側継手部材。
  14. 前記請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の等速自在継手の外側継手部材を用いたことを特徴とする等速自在継手。
  15. トルク伝達部材としてボールを用い、ボール数を3個以上としたことを特徴とする前記請求項14に記載の等速自在継手。
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