JP2011070049A - ヘッドマウントディスプレイ - Google Patents
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Abstract
【課題】樹脂基板である板状樹脂材に誘電体膜及び金属膜を積層したハーフミラーであって、必要となる反射特性及び透過特性を満たしつつ、光の損失の少ないハーフミラーを有するヘッドマウントディスプレイを提供すること。
【解決手段】板状樹脂材に誘電体膜及び金属膜を積層したハーフミラーであって、画像光を形成する三原色の各色(R,G,B)の波長を含む可視帯の少なくとも一部の帯域においてP偏光の反射率とS偏光の反射率とが一致しない一方、前記三原色の各色(R,G,B)のそれぞれに対するP偏光の反射率とS偏光の反射率とを略等しくし、前記三原色の各色(R,G,B)の波長を含む可視帯域の各波長に対するP偏光及びS偏光の透過率の平均値を、可視帯域の全帯域で規定範囲内に抑えた。
【選択図】図5
【解決手段】板状樹脂材に誘電体膜及び金属膜を積層したハーフミラーであって、画像光を形成する三原色の各色(R,G,B)の波長を含む可視帯の少なくとも一部の帯域においてP偏光の反射率とS偏光の反射率とが一致しない一方、前記三原色の各色(R,G,B)のそれぞれに対するP偏光の反射率とS偏光の反射率とを略等しくし、前記三原色の各色(R,G,B)の波長を含む可視帯域の各波長に対するP偏光及びS偏光の透過率の平均値を、可視帯域の全帯域で規定範囲内に抑えた。
【選択図】図5
Description
本発明は、ヘッドマウントディスプレイに関し、特に、画像信号に応じた画像を外景と重ねて表示するシースルー型ヘッドマウントディスプレイに関する。
近年、ユーザの頭部に装着してビデオやパーソナルコンピュータなどから送信される画像信号に応じた画像を外景と重ねて表示する表示部を備えたシースルー型ヘッドマウントディスプレイが開発されてきている。
この種のヘッドマウントディスプレイ(以下、「HMD」ともいう)においては、画像を外景と重ねて表示するために、画像光を反射し、外光を透過してユーザの眼に入射させるハーフミラーを備えるものがある。
例えば、特許文献1に記載のHMDでは、ユーザの一方の眼の前方に、ユーザの視線方向に対して斜めにハーフミラーを設けている。そして、かかるHMDの出射装置から出射される画像光はこのハーフミラーによって反射されてユーザの眼に投射する一方、外光はこのハーフミラーを透過して、ユーザの眼に投射され、これによりユーザは画像光による画像を外景と重ねて認識する。
しかしながら、従来のハーフミラーは、ガラス基板に反射膜を形成する構成であったため、落下等により破損しやすい。特に、このハーフミラーは、ユーザの眼の前方に配置することから、安全性の点で好ましくない。
そこで、ガラス基板に代えて樹脂基板を用いることが考えられるが、以下の理由によりガラス基板と同等の光学特性を得ることが難しかった。
ハーフミラーは、透明基板に反射膜をコーティングして構成される。かかる反射膜として、誘電体膜や金属膜がある。
金属膜は光の吸収(損失)が大きいことから、透明基板に金属膜だけをコーティングしてハーフミラーを作製しようすると次の問題がある。すなわち、金属膜だけで画像光に対する反射率を高くしようとすると十分な透過率が得られず外景が暗くなってしまい、逆に金属膜だけで画像光に対する透過率を高くしようとすると十分な反射率が得られず画像光の損失が大きくなる。
また、誘電体膜は、光の吸収(損失)は少ないが、波長依存性が高い。そのため、透明基板に誘電体膜だけをコーティングしてハーフミラーを作製しようとすると、可視帯域においてフラットな透過特性及び反射特性を得ることが難しい。
そのため、シースルー型HMDに用いるハーフミラーでは、透明基板に金属膜と誘電体膜とを積層していた。すなわち、金属膜と誘電体膜とを組み合わせたハイブリット膜をガラス基板上にコーティングしてハーフミラーを形成していた。
このようにガラス基板を用いたハーフミラーでは、可視帯域の光に対してフラットな反射特性及び透過特性を実現することができる。しかし、樹脂基板はガラス基板に比べ耐熱性が悪い。そのため、金属膜をコーティングすることが難しく、誘電体膜を増やさなければならず、可視帯域の光に対して反射特性及び透過特性をフラットにすることが難しい。
シースルー型HMDに用いるハーフミラーでは、(1)透過特性に関しては可視帯域全域の光に対して略フラットであることが必要であるが、(2)反射特性に関しては可視帯域全域の光に対して略フラットである必要はなく、画像光を形成する光の波長域に関し反射特性が略フラットであればよい。
透過特性が上記(1)を満たしていないほど、外景輝度や色が忠実性を失って見えてしまうことになる。また、反射特性が上記(2)を満たしていないほど、画像光によって表示する画像(以下、「表示画像」という)のホワイトバランスが崩れ、表示画像の色味が変わってしまうことになる。
この点、液晶タイプのHMDでは、透過特性に関しては同様に上記(1)を満たす必要はあるが、反射特性に関しては偏光特性が一定であるため、対応する偏光特性にのみ上記(2)を満たすように設計すれば良いため比較的設計が容易である。
ところが、画像信号に応じて強度変調したレーザ光をユーザの網膜上に走査する網膜走査型のHMDでは偏光特性が一定しない。そのため、P偏光及びS偏光の両特性に対し(1)、(2)の条件を満たさねばならず、設計が難しい。結果として、量産化や低コスト化が難しく、場合によっては、忠実な画像表示にも支障をきたす場合もあった。
そこで、本発明は、樹脂基板である板状樹脂材に誘電体膜及び金属膜を積層したハーフミラーであって、必要となる上記(1)の透過特性及び上記(2)の反射特性を満たしたハーフミラーを容易に形成でき、結果として低コストで量産化が容易なHMDを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、画像信号に応じた画像光を外光と共にユーザの眼に入射させ、前記画像信号に応じた画像を外景と重ねて表示する表示部を備えたヘッドマウントディスプレイにおいて、前記表示部は、前記画像光を反射し、前記外光を透過して前記ユーザの眼に入射させるハーフミラーを備え、前記ハーフミラーは、板状樹脂材に誘電体膜及び金属膜を積層した構成であり、前記画像光を形成する特定の3波長を含む可視帯域の少なくとも一部の帯域においてP偏光の反射率とS偏光の反射率とが一致しない一方、少なくとも前記特定の3波長のそれぞれに対するP偏光の反射率とS偏光の反射率とを略等しくし、前記特定の3波長を含む可視帯域の各波長に対するP偏光及びS偏光の透過率の平均値を、前記可視帯域の全帯域で規定範囲内に抑えたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイとした。
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイにおいて、前記可視帯域の最小波長は、前記特定の3波長のうち最も短い波長よりも短い波長であることを特徴とする。
また、請求項3に係る発明は、請求項2に記載のヘッドマウントディスプレイにおいて、前記最小波長は、440nmであることを特徴とする。
また、請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のヘッドマウントディスプレイにおいて、前記表示部は、前記特定の3波長のレーザ光を画像信号に応じた強度でそれぞれ出射する光源部と、前記光源部から出射されたレーザ光を走査する走査部と、前記走査部により走査されたレーザ光を前記画像光として前記ハーフミラーを介して前記ユーザの眼の網膜に投射して、前記網膜に画像を投影する投射部と、を有することを特徴とする。
また、請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のヘッドマウントディスプレイにおいて、前記特定の3波長は、赤色帯域のうちの一波長と、緑色帯域のうちの一波長と、青色帯域のうちの一波長とから構成されることを特徴とする。
本発明によれば、樹脂基板である板状樹脂材に誘電体膜及び金属膜を積層したハーフミラーにおいて必要となる反射特性及び透過特性を満たすことが容易であり、結果として低コストで量産化が容易なHMDを提供することができる。
以下、本発明の一実施形態に係るHMDについて図面を参照して具体的に説明する。本実施形態に係るHMDとして、画像信号に応じて強度変調した三原色の各色のレーザ光により形成される画像光を走査して観察者であるユーザの眼に投射し、ユーザの眼の網膜上で画像光を走査する網膜走査型のHMDについて説明するが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、各ピクセルが三原色のサブピクセルからなるLCD(Liquid Crystal Display)や三原色の各色毎に設けられるLCDへ光源部からの光を入射し、このLCDを透過又は反射した光をユーザの眼に入射するLCD型のHMDであってもよい。なお、画像信号は、画像を形成するための信号(情報)であればよく、その形式は問わない。
[1.HMD1の外観]
図1に示すように、本実施形態に係るHMD1は、コントロールユニット2、頭部装着具5を有しており、コントロールユニット2と頭部装着具5とは伝送ケーブル部4を介して接続されている。伝送ケーブル部4は、コントロールユニット2から出射されたレーザ光を伝送する光ファイバケーブル50(図2参照)を有する。また、この伝送ケーブル部4には、後述の投影部6に備えられる高速走査部80及び低速走査部90と同じく後述の光源部20との間で同期をとるための高速駆動信号61及び低速駆動信号62を伝送する駆動信号伝送用ケーブルも有する。
図1に示すように、本実施形態に係るHMD1は、コントロールユニット2、頭部装着具5を有しており、コントロールユニット2と頭部装着具5とは伝送ケーブル部4を介して接続されている。伝送ケーブル部4は、コントロールユニット2から出射されたレーザ光を伝送する光ファイバケーブル50(図2参照)を有する。また、この伝送ケーブル部4には、後述の投影部6に備えられる高速走査部80及び低速走査部90と同じく後述の光源部20との間で同期をとるための高速駆動信号61及び低速駆動信号62を伝送する駆動信号伝送用ケーブルも有する。
コントロールユニット2は、後述する内蔵のコンテンツ記憶部12に記憶された画像情報であるコンテンツ情報Fに基づいて画像信号Sを生成し、この画像信号Sに応じた強度のレーザ光(以下、「画像光」ともいう)を伝送ケーブル部4へ出射する。なお、コントロールユニット2は、図示しない外部入出力端子から画像信号やコンテンツ情報などを入力することができる。また、ここでコンテンツ情報とは、文字画像、絵柄画像などを含む静止画像データや動画像データなどにより構成される。
頭部装着具5は、投影部6と、この投影部6を支持する眼鏡型フレーム14とから構成される。投影部6は、伝送ケーブル部4の光ファイバケーブル50を介して伝送されてきた画像光を2次元方向に走査し、ユーザの眼101へ投射する。これにより、ユーザの眼101の網膜には、画像光が2次元方向に走査されて画像が投影され、ユーザは画像信号Sに応じた画像を視認する。
また、投影部6には、ユーザの眼101と対向する位置にハーフミラー15が設けられている。外光Laはハーフミラー15を透過してユーザの眼101に入射され、投影部6から出射される画像光Lbはハーフミラー15で反射してユーザの眼101に入射される。これにより、ユーザは外光Laによる外景に画像光Lbによる画像を重ねて視認することができる。
このようにHMD1は、外光を透過しつつ、画像光をユーザの眼101に投射するシースルー型のヘッドマウントディスプレイとしている。
[2.HMD1の電気的構成及び光学的構成]
次に、HMD1の電気的構成及び光学的構成を図2を参照して説明する。
次に、HMD1の電気的構成及び光学的構成を図2を参照して説明する。
コントロールユニット2は、駆動制御部10と、光源部20と、操作部40とを有している。
駆動制御部10は、HMD1全体を制御する制御部11と、コンテンツ情報Fを記憶するコンテンツ記憶部12と、画像を合成するための要素となる信号等を発生する駆動信号供給回路13とを有している。
制御部11は、CPU、フラッシュメモリ、RAM、VRAM、複数の入出力I/Fなどを有し、これらはデータ通信用のバスにそれぞれ接続され、このバスを介して各種情報の送受信を行う。CPUは、フラッシュメモリに記憶されている制御プログラムを実行することにより、HMD1を構成する各部を動作させ、HMD1が備える各種機能を実行させる演算処理装置である。また、CPUは、操作部40から入力される情報を取得し、当該情報に応じた処理を行う。例えば、CPUは、操作部40から入力される情報に基づき、コンテンツ情報Fを所定形式の画像信号S(例えば、NTSCコンポジット信号、コンポーネント信号)に変換して駆動信号供給回路13へ出力する。
駆動信号供給回路13は、画像信号Sに基づいて、画像を形成するための要素となる各信号を画素単位で生成する。すなわち、駆動信号供給回路13からは、R(赤色)駆動信号60r,G(緑色)駆動信号60g,B(青色)駆動信号60bが画素単位で生成されて出力される。また、駆動信号供給回路13は、高速走査部80で使用される高速駆動信号61と、低速走査部90で使用される低速駆動信号62とをそれぞれ出力する。
光源部20には、Rレーザドライバ66,Gレーザドライバ67,Bレーザドライバ68が設けられる。Rレーザドライバ66,Gレーザドライバ67,Bレーザドライバ68は、それぞれ駆動信号供給回路13から出力されるR駆動信号60r,G駆動信号60g,B駆動信号60bをもとに、Rレーザ63,Gレーザ64,Bレーザ65へそれぞれ駆動電流を供給する。各レーザ63,64,65は、各レーザドライバ66,67,68から供給される駆動電流に応じて強度変調されたレーザ光(「光束」とも呼ぶ。)を出射する。各レーザ63,64,65は、例えば、半導体レーザや高調波発生機構付き固体レーザとして構成することが可能である。なお、半導体レーザを用いる場合は駆動電流を直接変調して、レーザ光の強度変調を行うことができるが、固体レーザを用いる場合は、各レーザそれぞれに外部変調器を備えてレーザ光の強度変調を行う必要がある。
さらに、光源部20には、コリメート光学系71,72,73と、このコリメートされたレーザ光を合波するためのダイクロイックミラー74,75,76と、結合光学系77とが設けられている。各レーザ63,64,65から出射したレーザ光は、コリメート光学系71,72,73によってそれぞれ平行光化された後に、ダイクロイックミラー74,75,76に入射される。その後、これらのダイクロイックミラー74,75,76により、3原色の各レーザ光が波長選択的に反射・透過して結合光学系77に達し、合波されて光ファイバケーブル50へ出射される。このように光ファイバケーブル50へ出射されるレーザ光は、画像光Lbであり、強度変調された各色のレーザ光が合波されたものである。
投影部6は、光源部20とユーザの眼101との間に配置されており、走査部30、第2リレー光学系95を有している。走査部30は、コリメート光学系79、高速走査部80、低速走査部90、第1リレー光学系85を有している。
コリメート光学系79は、光源部20で生成され、光ファイバケーブル50を介して出射されるレーザ光を平行光化する。
高速走査部80及び低速走査部90は、光ファイバケーブル50から入射されたレーザ光を画像としてユーザの網膜101bに投影可能な状態にするために、第1方向と第2方向に走査して走査光束とする光学系である。高速走査部80は、コリメート光学系79で平行光化されて入射するレーザ光を画像表示のために第1方向に往復走査する。また、低速走査部90は、高速走査部80で第1方向に走査され、第1リレー光学系85を介して入射するレーザ光を第1方向に略直交する第2方向に走査する。
高速走査部80は、レーザ光を第1方向に走査するため偏向面(反射面)82を有する共振型の偏向素子81と、この偏向素子81を共振させて偏向素子81の偏向面82を揺動させる駆動信号を高速駆動信号61に基づいて発生する高速走査駆動回路83を備えている。
一方、低速走査部90は、レーザ光を第2方向に走査するため偏向面(反射面)92を有する非共振型の偏向素子91と、この偏向素子91の偏向面92を非共振状態で揺動させる駆動信号を低速駆動信号62に基づいて発生する低速走査駆動回路93とを備える。この低速走査部90は、表示すべき画像の1フレームごとに、画像を形成するためのレーザ光を最初の走査線から最後の走査線に向かって第2方向に走査する。ここで「走査線」とは、高速走査部80による第1方向への1走査を意味する。
なお、偏向素子81,91は、ここではガルバノミラーを用いることとするが、レーザ光を走査するようにその偏向面82,92を揺動又は回転させられるものであれば、圧電駆動、電磁駆動、静電駆動等いずれの駆動方式によるものであってもよい。また、本実施形態においては、高速走査部80に共振タイプの偏向素子を用い、低速走査部90を非共振タイプの偏向素子を用いることとしているが、これに限られない。例えば、低速走査部90に共振タイプの偏向素子を用いてもよいし、どちらも非共振タイプの偏向素子としてもよい。
また、高速走査部80と低速走査部90との間でレーザ光を中継する第1リレー光学系85は、偏向素子81の偏向面82によって第1方向に走査されたレーザ光を偏向素子91の偏向面92に収束させる。そして、このレーザ光が偏向素子91の偏向面92によって第2方向に走査される。偏向素子91によって走査されたレーザ光は、正の屈折力を持つ2つのレンズ95a,95bが直列配置された第2リレー光学系95を介して、眼101の前方に位置させたハーフミラー15で反射されてユーザの瞳孔101aに入射する。これにより、網膜101b上で画像信号Sに応じたレーザ光(画像光Lb)が2次元走査され、これによりユーザは瞳孔101aに入射する画像光Lbを画像として認識する。また、ハーフミラー15は外光Laを透過してユーザの瞳孔101aに入射させるようにしており、これによりユーザは外光Laに基づく外景に画像光Lbに基づく画像を重ねた画像を視認することができる。
なお、第2リレー光学系95においては、レンズ95aによって、それぞれのレーザ光がそのレーザ光の中心線を相互に略平行にされ、かつそれぞれ収束レーザ光に変換される。そして、レンズ95bによってそれぞれほぼ平行なレーザ光となると共に、これらのレーザ光の中心線がユーザの瞳孔101aに収束するように変換される。なお、本実施形態においては、レンズ95bとハーフミラー15により投射部が構成される。また、本実施形態においては、駆動信号供給回路13、光源部20、光ファイバケーブル50、走査部30、第2リレー光学系95、ハーフミラー15により表示部が構成される。
[3.ハーフミラー15の構成]
次に、本実施形態に係るHMD1の特徴的部分であるハーフミラー15の構成について説明する。
次に、本実施形態に係るHMD1の特徴的部分であるハーフミラー15の構成について説明する。
ハーフミラー15は、図3に示すように、樹脂基板である板状樹脂材111に金属膜112及び誘電体膜113を積層したものである。すなわち、ハーフミラー15は、金属膜112と誘電体膜113とを組み合わせたハイブリッド膜を板状樹脂材111にコーティングしたものである。
金属膜112としては、例えば、Cr,Al,Ag,Au,Ni,Cr203,AL203,Cu、In,Pt、ITOやこれらを組み合わせた膜を用いることができる。また、誘電体膜113としては、例えば、SiO,SiO2,MgF2,Al2 O3,ZrO2,TiO2 ,Ta2O5,ZnS又はこれらの混合物又はこれらを2以上積層したものからなる誘電体膜を用いることができる。
ハイブリッド膜をコーティングした従来のハーフミラーでは、金属膜と誘電体膜とを自由に組み合わせることができることから、図4に示すように、可視帯域の光に対してフラットな反射特性及び透過特性を実現することができる。なお、ハーフミラーは、任意の偏光に対してその反射率や透過率が同じである必要がある。P偏光とS偏光に対する特性が等しければ、全ての偏光に対する特性も略等しくなる。従って、図4に示す特性のハーフミラーでは、P偏光とS偏光に対する特性が略等しく、よって全ての偏光に対する特性も略等しい。なお、図4及び以下においては、P偏光に対する透過率をTp、S偏光に対する透過率をTs、P偏光に対する反射率をRp、S偏光に対する反射率をRsとする。
このようにガラス基板を用いたハーフミラーでは、可視帯域の光に対してフラットな反射特性及び透過特性を実現することができるが、樹脂基板である板状樹脂材111はガラス基板に比べ耐熱性が悪い。そのため、金属膜をコーティングすることが難しく、誘電体膜を増やさなければならず、可視帯域の光に対して反射特性及び透過特性をフラットにすることが難しい。
そこで、本実施形態に係るハーフミラー15では、次の透過特性及び反射特性を持たせることで、外景が色づいて見えてしまうことを抑制しつつ、画像光による表示画像のホワイトバランスが崩れることを抑制するようにしている。また、金属膜の厚みが抑えられることから、光の損失を抑制することも可能となる。
(透過特性)
可視帯域の各波長においてハーフミラー15のP偏光の透過率TpとS偏光の透過率Tsとが等しければ、各偏光に対する透過率が等しいとみなすことができ、各波長において等しい光量の光が透過すると考えられる。しかし、ハーフミラー15の透過特性において可視帯域の全帯域で各波長のP偏光の透過率TpとS偏光の透過率Tsとを等しくすることは難しい。
可視帯域の各波長においてハーフミラー15のP偏光の透過率TpとS偏光の透過率Tsとが等しければ、各偏光に対する透過率が等しいとみなすことができ、各波長において等しい光量の光が透過すると考えられる。しかし、ハーフミラー15の透過特性において可視帯域の全帯域で各波長のP偏光の透過率TpとS偏光の透過率Tsとを等しくすることは難しい。
自然光は、あらゆる方向の偏光成分をもっており、可視帯域の全帯域で各偏光成分はほぼ等しいとみなすことができる。そこで、本実施形態に係るハーフミラー15では、可視帯域の全帯域で各波長のP偏光の透過率TpとS偏光の透過率Tsとを等しくするのではなく、可視帯域の各波長に対するP偏光の透過率TpとS偏光の透過率Tsとの平均値Tt(=(Tp+Ts)/2)を、可視帯域の全帯域で規定範囲内に抑えている。
そして、可視帯域の各波長に対するP偏光の透過率TpとS偏光の透過率Tsとの平均値Ttを、可視帯域の全帯域で規定範囲内に抑えることにより、外景が色づいて見えてしまうことを抑制している。
図5に本実施形態に係るハーフミラー15の特性を示す。同図に示すように、ハーフミラー15の透過特性では、440nm〜670nmまでの可視帯域の各波長に対するP偏光の透過率TpとS偏光の透過率Tsとの平均値Ttを、可視帯域の全帯域で25〜30%(27.5±2.5%)程度の透過率としている。換言すれば、可視帯域の全域で±10%の変動範囲になるようにして、可視帯域の全帯域にかけて略フラットな透過率となるようにしている。
本実施形態に係るHMD1では、後述するように反射率を透過率よりも高くして、画像光による表示画像をユーザが視認しやすくしている。そのため、HMD1のハーフミラー15では、可視帯域の全帯域で透過率を25〜30%としたが、これに限られない。すなわち、可視帯域の全域で±15%内の変動範囲であればよく、たとえば、その透過率を30〜40%としてもよい。なお、可視帯域の全域で透過率の変動範囲は±10%内とすることが好ましい。
本実施形態に係るHMD1においては、画像光Lbを形成するレーザ光の色は、R(赤色),G(緑色),B(青色)の三原色であり、R(赤色)の波長は625nm、G(緑色)の波長は525nm、B(青色)の波長は462nmに設定している。そして、ハーフミラー15の上記透過特性は、画像光を形成する三原色のうち最も波長が短いB(青色)の波長をカバーするようにしている。すなわち、上記可視帯域の最小波長は440nmであり、B(青色)の波長である462nmよりも短い波長としている。このようにすることで、外景が色づいて画像光による表示画像に影響を与えることを抑制することが可能となる。
なお、本実施形態にかかるHMD1では、B(青色)の波長は462nmとしているが、これに限られず、たとえば、B(青色)の波長を440nmとしてもよい。また、可視帯域の最小波長は440nmとしているが、これに限られず、たとえば、430nmにしてもよい。
(反射特性)
ハーフミラー15を反射する画像光は、光路上の光学部材や光ファイバケーブルの位置や特性のばらつきにより、その偏光特性が変わる可能性がある。そのため、R(赤色),G(緑色),B(青色)の各色の波長に対して、任意の偏光で等しい反射率となることが望ましい。透過率の場合と同様に、各波長においてP偏光の反射率RpとS偏光の反射率Rsとが等しければ、各偏光に対する反射率が等しいとみなせ、各波長において等しい光量の光が反射すると考えられる。
ハーフミラー15を反射する画像光は、光路上の光学部材や光ファイバケーブルの位置や特性のばらつきにより、その偏光特性が変わる可能性がある。そのため、R(赤色),G(緑色),B(青色)の各色の波長に対して、任意の偏光で等しい反射率となることが望ましい。透過率の場合と同様に、各波長においてP偏光の反射率RpとS偏光の反射率Rsとが等しければ、各偏光に対する反射率が等しいとみなせ、各波長において等しい光量の光が反射すると考えられる。
そこで、本実施形態に係るハーフミラー15では、可視帯域の波長すべてに対してP偏光の反射率RpとS偏光の反射率Rsとを等しくするのではなく、R(赤色),G(緑色),B(青色)の各色の波長に対して、P偏光の反射率RpとS偏光の反射率Rsとを略等しくしている。
ここで、「略等しく」とは、P偏光の反射率RpとS偏光の反射率Rsとが完全に一致する必要はないことを意味し、P偏光の反射率Rpをn、S偏光の反射率Rsをmとすると、たとえば、n×0.95≦m≦n×1.05を満たすものであればよい。このような条件を満たす場合には、画像光による表示画像のホワイトバランスが崩れることを抑制することができ、表示画像の品質が低下することを防止することができる。
上述したように、可視帯域の各波長でP偏光の反射率RpとS偏光の反射率Rsとを等しくすることは難しい。しかし、本実施形態に係るハーフミラー15では、R(赤色),G(緑色),B(青色)の各色の波長に対して、P偏光の反射率RpとS偏光の反射率Rsとを略等しくするだけでよく、その他の波長は考慮する必要がないことから、その作製を比較的容易に行うことができる。
本実施形態に係るHMD1においては、上述したように、R(赤色)の波長は625nm、G(緑色)の波長は525nm、B(青色)の波長は462nmに設定している。そして、図5に示すように、本実施形態に係るハーフミラー15では、625nm、525nm、462nmにおいて、P偏光の反射率RpとS偏光の反射率Rsとを略等しくしている。特に、R(赤色),G(緑色),B(青色)の三原色のそれぞれの波長を含む可視帯域においてその低域から高域の少なくとも一部の帯域においてP偏光の反射率とS偏光の反射率とが一致せずに、P偏光の反射率RpとS偏光の反射率Rsとが交互に増減を繰り返しつつも、少なくとも三原色のそれぞれの波長に対してはP偏光の反射率RpとS偏光の反射率Rsとを略等しくしている。そのため、例えば、まず、可視帯域においてその低域から高域にかけてP偏光の反射率RpとS偏光の反射率Rsとが交互に増減するように調整し、その後、三原色のそれぞれの波長に対してP偏光の反射率RpとS偏光の反射率Rsとを略等しくするように調整していくことで、その作製を比較的容易に行うことができる。
このように、反射すべき画像光の波長に対するP偏光の反射率RpとS偏光の反射率Rsとを略等しくすることにより、画像光による表示画像のホワイトバランスが崩れることを防止することができる。
なお、本実施形態にかかるハーフミラー15は、プリズムタイプのハーフミラーではなく、プレート(板状)タイプのハーフミラーとしている。プリズムタイプのハーフミラーは画角によってプリズム厚が厚くなり、シースルー型HMDで用いた場合の違和感が大きい。一方、本実施形態にかかるハーフミラー15では、表面反射を使用するプレートタイプであるため、厚みを薄く実現することができる。
また、本実施形態に係るHMD1では、R(赤色)の波長は625nm、G(緑色)の波長は525nm、B(青色)の波長は462nmに設定したがこれに限られず、どのような波長であっても適用することが可能である。また、画像光を形成する三原色の3波長に対するP偏光及びS偏光の反射率Rp,Rsをそれぞれ略等しくしたが、画像光を4波長以上の色の光で形成し、画像光を形成する各波長に対するP偏光及びS偏光の反射率Rp,Rsをそれぞれ略等しくするようにしてもよい。
また、ハーフミラー15は、上記特性を持つことができるように金属膜や誘電体膜を組み合わせて形成するものであり、金属膜112としては上述した以外のものを用いてもよく、同様に、誘電体膜として上述した以外のものを用いてもよい。
本発明を、上述してきた実施形態を通して説明したが、本実施形態によれば、以下の効果が期待できる。
本実施形態に係るHMD1は、画像信号Sに応じた画像光Lbを外光Laと共にユーザの眼に入射させ、画像信号に応じた画像を外景と重ねて表示する表示部(駆動信号供給回路13、光源部20、光ファイバケーブル50、走査部30、第2リレー光学系95、ハーフミラー15)を備え、表示部は、画像光Lbを反射し、外光Laを透過して前記ユーザの眼に入射させるハーフミラー15を備えている。ハーフミラー15は、板状樹脂材111に誘電体膜113及び金属膜112を積層した構成であり、画像光Lbを形成する特定の3波長(R,G,B)を含む可視帯域の少なくとも一部の帯域においてP偏光の反射率とS偏光の反射率とが一致しない一方、少なくとも特定の3波長(R,G,B)のそれぞれに対するP偏光及びS偏光の反射率を略等しくし、さらに、特定の3波長(R,G,B)を含む可視帯域の各波長に対するP偏光及びS偏光の透過率Tp,Tsの平均値Ttを、可視帯域の全帯域で規定範囲内に抑えている。すなわち、可視帯域の各波長でP偏光の透過率TpとS偏光の透過率Tsとを等しくするのではなく、可視帯域の各波長に対するP偏光の透過率TpとS偏光の透過率Tsとの平均値Ttを、可視帯域の全帯域で規定範囲内に抑えている。また、可視帯域の特定の3波長(R,G,B)に対して、P偏光の反射率RpとS偏光の反射率Rsとを略等しくするだけでよく、その他の波長は考慮する必要がない。従って、樹脂基板である板状樹脂材に誘電体膜及び金属膜を積層したハーフミラーにおいて必要となる反射特性及び透過特性を満たすことが容易であり、結果として低コストで量産化が容易なHMDを提供することができる。
1 ヘッドマウントディスプレイ(HMD)
2 コントロールユニット
4 伝送ケーブル部
5 頭部装着具
6 投影部
10 駆動制御部
11 制御部
13 駆動信号供給回路
15 ハーフミラー
20 光源部
30 走査部
40 操作部
50 光ファイバケーブル
101 眼
111 板状樹脂材
112 金属膜
113 誘電体膜
2 コントロールユニット
4 伝送ケーブル部
5 頭部装着具
6 投影部
10 駆動制御部
11 制御部
13 駆動信号供給回路
15 ハーフミラー
20 光源部
30 走査部
40 操作部
50 光ファイバケーブル
101 眼
111 板状樹脂材
112 金属膜
113 誘電体膜
Claims (5)
- 画像信号に応じた画像光を外光と共にユーザの眼に入射させ、前記画像信号に応じた画像を外景と重ねて表示する表示部を備えたヘッドマウントディスプレイにおいて、
前記表示部は、前記画像光を反射し、前記外光を透過して前記ユーザの眼に入射させるハーフミラーを備え、
前記ハーフミラーは、板状樹脂材に誘電体膜及び金属膜を積層した構成であり、前記画像光を形成する特定の3波長を含む可視帯域の少なくとも一部の帯域においてP偏光の反射率とS偏光の反射率とが一致しない一方、少なくとも前記特定の3波長のそれぞれに対するP偏光の反射率とS偏光の反射率とを略等しくし、前記特定の3波長を含む可視帯域の各波長に対するP偏光及びS偏光の透過率の平均値を、前記可視帯域の全帯域で規定範囲内に抑えたことを特徴とするヘッドマウントディスプレイ。 - 前記可視帯域の最小波長は、前記特定の3波長のうち最も短い波長よりも短い波長であることを特徴とする請求項1に記載のヘッドマウントディスプレイ。
- 前記最小波長は、440nmであることを特徴とする請求項2に記載のヘッドマウントディスプレイ。
- 前記表示部は、
前記特定の3波長のレーザ光を画像信号に応じた強度でそれぞれ出射する光源部と、
前記光源部から出射されたレーザ光を走査する走査部と、
前記走査部により走査されたレーザ光を前記画像光として前記ハーフミラーを介して前記ユーザの眼の網膜に投射して、前記網膜に画像を投影する投射部と、を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のヘッドマウントディスプレイ。 - 前記特定の3波長は、赤色帯域のうちの一波長と、緑色帯域のうちの一波長と、青色帯域のうちの一波長とから構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のヘッドマウントディスプレイ。
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