JP2011057968A - オイル類処理剤およびこのような処理剤の製造方法ならびにこのような処理剤を用いたオイル類処理方法 - Google Patents

オイル類処理剤およびこのような処理剤の製造方法ならびにこのような処理剤を用いたオイル類処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 油性塗料洗浄液などのオイル類を簡単かつ迅速に固形化するためのオイル類処理剤およびその製造方法ならびにオイル類処理方法を提供する。
【解決手段】 オイル類に作用してこのオイル類を含む系全体を粒子の集合体に固化する能力をそれぞれ有する木粉(微細に粉砕されていて、微小繊維の多数本が互いに絡まった状態で集合している集合体として構成)および/または米ぬか(多様で不均一な起伏に富んだ表面を有する粒子の多数個の集合体として構成)から成るか、あるいは上記木粉および/または上記米ぬかを主成分としている。
【選択図】 図1

Description

本発明は、廃油などのオイルまたは廃油などのオイルを含有する溶液などの液(本文においては、これらの上記オイルおよび上記液を総称して、「オイル類」という。)に作用して上記オイル類を処理するためのオイル類処理剤と、このようなオイル類処理剤の製造方法とに関するものである。また、本発明は、オイル類に処理剤を加えるかまたは接触させることによって、上記オイル類を処理するようにしたオイル類処理方法にも関するものである。
オフィスビルディング、食堂やスーパーストアの調理場、自動車修理工場、ガソリンスタンドのオイル交換場所、大学の理工系の実験室、美容院、病院、特養老人ホームなどから家庭に至るまで、我々は、多くのオイル類やアルコール類などの有機物質や、無機物質などを垂れ流しにしている。また、あらゆる製造業の操業の場において、定期的にまたは必要に応じて、多様な装置の整備が行われている。これらの整備時には、水などの他の液を含まない廃油や時として水などの他の液を含む廃油(本文においては、これらを総称して「廃油類」という。)などが排出されるので、処理に難渋する汚廃油類が生じる。そして、これらの汚廃油類の排出は、知らず知らずの間に、莫大な環境汚染を行っている。
これらの廃油類による環境汚染は、総合すると、莫大な環境汚染の元凶であることに驚かされる。それにもかかわらず、これらの汚染対策についての実用的に優れた方法が存在しないために、現時点では、何らの対策も採られていない。すなわち、廃油類については、法的には排出時の濃度規制があるだけなので、実際の廃油類は、公害物であるにもかかわらず、大量の水で薄めることによって法規制をパスすることができ、このために、終局的には海洋に流されて、海洋の汚染が続けられているのが現状である。本発明者らは、このような一時的に排出される廃油類に広く適用される簡便かつ確実な処理方法につき鋭意検討を進めた結果、一時廃油類に対して幅広く適用することができる環境汚染防止の技術を案出して、本発明に到達した。
一時的に排出される廃油類は、工場から大規模にかつ定常的に排出される汚廃液と比べると、個別的には排出時間も短くかつ量も少ないにもかかわらず、排出箇所および排出数の合計は莫大であるから、全体を総合すると、とてつもなく莫大な量になる。しかし、現実的には、一時的に排出される廃油含有廃液をその発生現場で簡単かつ短時間に処置する良い方法がないために、これらの廃油類は、発生箇所で大量の水で薄めてから排水口に流さざるを得ないことが多い。このことは、環境の汚染防止の観点から、早急に解決されなければならない重要な問題である。
昨今、環境汚染の鉾先は、排出炭酸ガスに係わる大気汚染に向けられていて、排出炭酸ガスの絶対量の規制は、連日のように論じられている。しかし、廃油汚染(特に、一時的に排出される高濃度の廃油類の公害汚染)については、その汚染防止の有効な方法や手段がないためもあって、現在、あまり省みられないままになっている。
現在、一時廃油類は、例えば、ドラム缶に一時的に蓄えてからその廃棄処理を廃棄業者に依頼することになる。この場合、ドラム缶単位で移送しなければならないから、その移送運賃も高価である上、廃棄業者に支払う処理コストも莫大である。したがって、一時廃油類の発生現場での操作が簡単でかつ有効で確実な処理方法は、垂涎の的でありながら、操作が簡単でかつ有効で確実な処理方法が存在しないために、一時廃油類の処理については、苦境のさなかにあるのが、現状である。
一時廃油類の例をあげれば、塗料製造の現場において、或る色の油性塗料を調合してから、つぎに別の色の油性塗料を調合する場合には、最初の油性塗料を調合した容器を別の色の油性塗料の調合の前に洗浄することになる。このときには、上記或る色の油性塗料を含んだ洗浄液をどのように処理するのかが、問題である。また、ガソリンスタンドでのオイル交換において車から排出される汚れたオイルも、一時廃油類である。また、工場において、旋盤などの操業などの切削作業やマシーニングセンターでの切削作業で用いられるオイル、これらの装置を洗浄した汚廃油類(換言すれば、水を含むかあるいは水を含まない廃油類)、あらゆる装置の分解整備時や保全作業時に発生する汚廃油類、製鉄所の定期整備時に排出されるオイル含有廃液、電力会社の燃料タンクの定期整備時に出る廃油類などの総量は、合計すると大量になる。したがって、これらの廃油類の垂れ流しは、環境汚染を防止する観点からも、早急な対策が必要である。
さらに、家庭やスーパーマーケットにおいて食材に用いられる例えばてんぷら油の廃油も、総計では、莫大な量になる。このようなてんぷら廃油を固める商品も市販されているが、この商品の場合には、てんぷら廃油を加熱状態で処理しなければならないなどの制約があるから、危険であるだけでなく、手間もかかるために、使いにくい欠点がある。このような一時廃油類を発生現場で速やかにかつ数分間という短時間でかつ高い完成度で簡単に処理する方法は、まさに垂涎の的でありながら、これらを解決する方法は、現在まで、全く存在しなかった。そして、一時廃油類をその発生現場において小型の容器内で限定された作業時間内(換言すれば、数分間などの短時間内)に処理することによって、一時廃油系全体をさらさらした状態のスポンジ様の小粒子の多数個が集合している集合体に変化させるような技術(換言すれば、処理方法)は、夢想さえできないことであった。
一時廃油類を発生現場で実用的に無公害化することを実現させかつ普及させるためには、つぎの(a)項および(b)項に記載のような条件が満たされなければならない。
(a)一時廃油類を小型の容器に一単位として集め、この一単位ですばやく処理することができて、少なくとも数分間で一時廃油類の処理を終了させ得ること(換言すれば、短時間処理)の可否が、実用化する上で、死命を制する。
(b)一時廃油類の最も望ましい処理形態は、作業現場で容器内に集められた一時廃油類の全体が、この容器内でそのまま固形粒子の集合体に変化し、この固形粒子の集合体が取り扱いやすい性状を持っていることである。そして、この集合体(換言すれば、固形物)の性状が、生分解性であって、無害な状態で土に戻したり、あるいは良質な肥料として再生できたりすれば、願ってもなく環境保全に貢献することになる。また、上記固形物が、板状、棒状、あるいはペレット状に加工されてから、燃料として、あるいは肥料として、有効に再利用されることができれば、一時廃油類の理想的な再生利用法の一つを提供することができる。
本発明の第1の目的は、一時廃油類などのオイル類の全体が本発明に従った処理剤による処置でもって短時間(例えば、僅か数分間)のうちにオイル類系全体として望ましくは長径数ミリメートル前後の大きさの粉砕スポンジ様(換言すれば、粉砕されたスポンジのような状態)の粒子の多数個が集合している集合体に固形化され得るようにすることである。
本発明の第2の目的は、オイル類を処理する操作がきわめて簡単かつ容易かつ安全に行われ得るようにすることである。これまで知られているように、家庭内で発生するてんぷら廃油の処置に公知の固化剤を用いる場合には、この処置に際しててんぷら廃油を予め加温状態にする必要があるから、てんぷら廃油の昇温操作に手間がかかる上、当然のことながら、発火などの危険が伴うことが避けられない。しかし、本発明によれば、てんぷら廃油などのオイル類の温度をあげる必要がなく、オイル類に処理剤を単に混ぜるだけで、オイル類全体を粒子群に固形化することを完了させることができる。
本発明の第3の目的は、一時廃油類などのオイル類を一滴も流さないようにして、余分な排出物を皆無にし得るようにすることである。このようにすることを可能にした本発明によれば、余分な排出物による環境汚染は全く生じなくなるから、一時廃油類などのオイル類の汚染を完全に無くすことが可能である。なお、市場に現存しているようなセルロース繊維の集合体やポリプロピレン繊維の集合体などを用いる従来の廃油処理方法によれば、見かけ上は廃油が吸収されたように見えても、実情は、廃油のかなりの量が上記集合体などの繊維の間に毛細管現象によって吸着保持されているにすぎない。このために、上記集合体などを少し加圧するだけで、廃油が滲み出たりする。また、上記集合体などをそのまま放置すれば、吸着保持されていた廃油が滲み出てくるなどの致命的な欠陥がある。
本発明の第4の目的は、本発明に従って処理された廃油類などのオイル類の全体が固形化した場合に、この固化物の性状が、望ましくは数ミリメートル前後の大きさでさらさらした状態の粉砕スポンジ様の小粒子の多数個が集合している集合体になり、時間が経っても、吸収されたオイル類が上記固化物から滲み出すことがなく、生成された小粒子の集合体(換言すれば、固形物)の性状がきわめて取り扱いやすいようにすることである。
本発明の第5の目的は、本発明による処理剤でもって生成された小粒子の集合体がそのままで可燃性のごみとして処置したり、産業廃棄物として廃棄したりし得るようにするだけでなく、上記集合体をペレット状、棒状あるいは板状に成型乾燥して、燃料として利用し得るようにするとともに、生分解性であるために、土に帰すことも、また、肥料として有効に再利用することもし得るようにすることである。なお、土中には、無数の微生物が生息していて、これらの自然に生息している微生物は自然の浄化作用に貢献している。そして、上記集合体を土に埋めると、通常、この集合体中の有機物は、これらの微生物の作用で自然に分解される。本発明においては、これらの微生物の作用をさらに促進するために、有用な微生物を抽出してから凝集して独自に培養することによって得られた有用微生物を、本発明による処理剤に加えることができる。このようにすれば、本発明に従った廃油類などのオイル類から生成された小粒子の集合体(換言すれば、固形化物)の生分解作用を促進させることもできる。このような生分解性の微生物の代表としては、バシラス・サブティリス(納豆菌の一種)、バシラス・マガテリアム、バシラス・レンタモリビス、バシラス・ステレンゼンシス、バシラス・ポリミクザ、バシラス・リケニホルミス、アスペルジルス・フラバス・オリバ(麹かび類)、ラクトバシラス・ファーメンタム(乳酸発酵菌)、サッカロマイセス・セレヴィシェ(イースト菌)などを例として挙げることができる。
本発明の第6の目的は、いかなる種類の一時廃油類、その他のオイル類であっても、また、鉱物性油、植物性油、動物性油を問わずに、本発明を普遍的に適用し得るようにすることである。本発明における処理の対象である一時廃油類などのオイル類には、トルエン、アセトンなどの有機溶剤類や、このような有機溶剤類を含むオイルや、可溶または不溶を問わないその他の有機物および/または無機物を含む溶液または懸濁液も、含まれている。そして、本発明は、これらのいずれの液にも適用可能であり、これらの液の全てが、本発明における一時廃油類などのオイル類に含まれている。本発明におけるこのような使用用途からみて、これまでは、これほど普遍性のあるオイル類処理技術は、全く存在していなかった。
本発明の第7の目的は、廃油類などのオイル類と他の有機物との混合物に対しても、本発明を適用し得るようにすることである。この場合、上記有機物は、液体であっても固体であっても差し支えない。本発明による処理剤は、興味あることに、廃油類などのオイル類と水との混合物であっても、また、界面活性剤の存在でもって乳濁液もしくはエマルジョンになっていても、さらに驚くべきことに、2層などの複数層に分離していても、適用し得るという特徴を有している。
本発明によれば、上記第1〜第7の目的を達成することができるから、実用化の点においてこれまで困難であったさまざまな問題点を一挙に解決することができ、しかも、本発明は、その適用範囲がきわめて広くて、普遍性の点でも異色である。
本発明は、その第1の観点においては、オイル類に作用して上記オイル類を処理するためのオイル類処理剤において、上記オイル類に作用してこのオイル類を含む系全体を粒子の集合体に固化する能力を有する木粉と、上記能力を同様に有する米ぬかとからなる群から選ばれた少なくとも一種からなるか、あるいは上記少なくとも一種を主成分とし、上記木粉が、微細に粉砕されていて、微小繊維の多数本が互いに絡まった状態で集合している集合体として構成され、上記米ぬかが、多様で不均一な起伏に富んだ表面を有する粒子の多数個が集合している集合体として構成されていることを特徴とする処理剤に係るものである。
また、本発明は、その第2の観点においては、オイル類に処理剤を加えるかまたは上記オイル類に接触させることによって、上記オイル類を処理するようにしたオイル類処理方法において、本発明の上記第1の観点における処理剤を上記オイル類に加えて混合するかまたは上記オイル類に接触させるかするようにしたことを特徴とする処理方法に係るものである。
本発明の上記第1および第2の観点においては、つぎに記載のような木粉および/または米ぬかが用いられることができる。すなわち、木粉は、機械的に粉砕されてフィブリル化されたもの(換言すれば、多数本の微小繊維が集合している集合体形状になったもの)であってよい。また、特に米ぬかは、必要に応じて加熱処理されたものであってよい。このような木粉や米ぬかは、一時廃油類などのオイル類が固形化された処理物を焼却処理するときや燃料化するときに、燃焼助剤としての役割も果たすことができる。
本発明に用いられる木粉や米ぬかが本発明の目的を達成し得ることには、これらの木粉および米ぬかのそれぞれに本質的に備わっている親水性と親油性(この親油性は、「親脂性」とも呼ばれる。)との両方を兼備する特殊性に加えて、これらの木粉および米ぬかの微視的な構造が、大いに関係していると考えられる。すなわち、本発明に用いられる木粉の優れた吸油性は、微視的なフィブリル構造に由来する細かい間隙部分への毛細管現象による吸い上げ保液性能、主たる構成成分であるセルロースの本質的な親油性および親水性、セルロース中の微小繊維間に介在するリグニン成分の親油性と親水性との両面を有する界面活性剤としての役割、粉砕過程で生じる細胞壁膜の微視的破壊による多面的で微細な凹凸構造の発現などが、総合的に寄与している結果であると考えられる。そして、このような結果が、木粉の比表面積の急激な増加につながり、また、木粉の実質組織内への画期的とも言える優れた吸油特性の増大に至るものであると考えられる。
木粉に上述のように吸油性などの性能を付与するには、木粉をすり応力下で機械的に粉砕するのが好ましい。具体的には、木粉は、その大きさにおいて、50メッシュパス50重量%以上であるのが好ましく、木粉にさらに高度な吸油性が要求される場合などには、80メッシュパス50重量%以上であるのが好ましく、100メッシュパス90重量%以上であるのがさらに好ましい。なお、本文において、上記「メッシュ」とは、日本工業規格JIS Z8801−1932「標準ふるい」に依るものである。
木粉が上述のような大きさになるまで機械的にせん断応力をかけられて粉砕されることによって、木粉の微視的構造は、多数本の微小繊維が立体的にランダムに集合して、これらの微小繊維の間に細かい間隙が多数存在する構造になる。本発明者らは、本発明による諸効果が木粉のこのような微視的構造によって初めて飛躍的に向上することを見出した。そして、木粉のこのような微視的構造は、本発明の実施に際し、処理対象である廃油などのオイル類を毛細管現象でもって上記微小繊維間に吸い込んで保持することができるから、オイル類を木粉の実質組織内に容易に吸収することができる場を提供することができる。
木粉についての上述のような事象は、米ぬかについても見い出される。本発明において用いられる米ぬかは、木粉のように微小繊維が絡まった態様をなしてはいないが、不定形で多様にとがった切り込みの多い形態をしており、鰹節の削り節を粉砕したような性状を備えていて、多くの微細な間隙が存在している(図2参照)。したがって、米ぬかの場合にも、木粉の場合とほぼ同様の吸油性を期待することができる。
粉砕木粉や米ぬかが、他の類似の粉末と異なる点として、一時廃油などのオイル類へのすばやい均一混合特性を挙げることができる。一般的に、例えば、てんぷら粉や食品のスープの素のような粉末を水に混ぜると、これらの食品が水に馴染み安い親水性であるにもかかわらず、団子状態に固まる。そして、このような団子状態(通常、「ままこ(継粉)」と言われている。)にいったんなると、この団子状態のものを均一に分散させるのには、難渋する。そして、この団子状態のものは、良く知られているように、長時間加熱しながら攪拌しない限り、時間が経っても均一に分散することができない。
粉砕木粉や米ぬかが廃油などのオイル類に瞬時に分散されることができるという抜きんでた性能を発揮するのは、木粉に含まれるリグニンや米ぬかに含まれるライスオイルによる親水性と親油性とを兼ね備えた界面活性的な効果が大きいためであり、このことは、本発明者らによる大きな発見である。このような成分上での好ましい天然の配合状態と、前述のように毛細管現象で液を吸い込む多間隙を作り出す微視的な形態上の構造との組み合わせが、即効的なオイル吸収作用に大きく貢献していると考えられる。この点は、粉砕木粉や米ぬかの異色の性質であり、実用化の点できわめて重要な本発明者らの発見である。また、このような事実を産業上利用できる技術思想とした例は、これまで皆無であった。
本発明の今ひとつの特徴は、植物性であるか鉱物性であるかというオイル類の種類に関係なく、どのような一時廃油などのオイル類であっても、本発明が適用されることができる普遍性にある。一時廃油には、多彩な種類があるから、一時廃油の種類によって本発明の適用性の良否が変わるようでは、発明の実用性に障害が生じる。さらに、本発明の別のひとつの特徴として、一時廃油などのオイル類に水分が含まれていても、本発明を適用できるという発明の適用範囲の広さおよびその普遍性が挙げられる。この場合、水分が含まれていても、界面活性剤などを別に加えることによって、上記オイル類を、見かけ上、擬均一の状態にしてから、本発明によるオイル類処理剤を加えることができることは、勿論である。しかし、驚くべきことに、水と廃油とが2層に分かれている状態であっても、これに本発明によるオイル類処理剤を加えることによって、本発明がなんの障害もなく適用され得るという驚くべき現象を、本発明者らは見い出している。
上述の現象は、本発明において用いられる木粉または米ぬかには、親水性と親脂性との両面を持つリグニンやライスオイルなどの天然成分が含まれていることや、基本的な構成成分であるセルロースやグルコース構造の本質的な親水と親油との両性が兼備されていることの特性が、大いに寄与しているためであると考えられる。本発明における卓越したオイル吸収効果は、このような諸効果の組み合わせによって初めて発揮されることに注目しなければならない。この効果の卓越性(例えば、現在の市販品の3倍以上の効果(後記実施例7および8参照))は、注目に値する。
本発明の特筆すべき特徴は、比較的小さい単位(例えば、コップ程度の小さい容器や、10〜20リットル単位のペール缶または石油缶や、200リットルのドラム缶)で、廃油発生現場における作業中に簡単に例えば数分間のうちに廃油などのオイル類を処理することができる簡易さにある。このように、廃油発生現場において18〜20リットルのペール缶または石油缶の単位で処置できることは、操作上または簡便さからも、好ましい。そして、オイル類の処理時間が短く、この処理操作において手間がかからないことが、実用化の成否を決する。
上記木粉または米ぬかを均一にかつ速やかにオイル含有廃液などのオイル類に混合させるために求められる好ましい条件が存在する。この条件は、本発明者らが見い出したものであって、木粉または米ぬかを構成する粒子の大きさが或る一定の大きさと均一性とを持つことである。このことは、本発明者らの実用化への重要な知見であり、本発明者らによる重要な発見である。例えば、木粉に代えておがくずを用いた場合には、おがくずが、粒子の大きさが大きくかつ形態も不揃いで様々であって、形状が多様なためと思われるが、おがくず同士で絡み合って集合体を形成することによって塊になる傾向があり、このために、オイル含有廃液に混合したときに、す早い均一分散が行われにくい。したがって、おがくずをたとえ注意深く念入りに混合しても、おがくずは短時間で均一に混合することができない(後記比較例1参照)。
本発明の目的を十分に達成するためには、木粉や米ぬかの粒子の大きさに一定レベル以下の細かさと、或るレベル以上の均一性とを付与することが、オイル含有廃液などのオイル類に短時間に分散させることができるという重要な知見をもとにして、本発明者らは本発明を完成させている。本発明者らが詳細に検討した結果、本発明による効果は、前述のように、木粉の粒子の大きさが50メッシュパスが50重量%以上の規格になると急激に発揮され、木粉の粒子の大きさが100メッシュパスが50%重量以上の規格になるとさらに一段と発揮され、木粉の粒子の大きさが100メッシュパス90重量%の規格になるとさらにもう一段と発揮され、木粉粒子の形状が細かくかつ均一性に富むほど効果が上がるという現象を見い出している。木粉を上述のようにできる限り揃った微細な大きさに整えるには、特に木粉の場合には、特殊な粉砕工程が必要である。この粉砕木粉の均一性の規制が、本発明の目的である短時間(例えば、数分間)内に一時廃油などのオイル類を処理するという途方もない操作要求を可能にし、廃油などの発生の現場での円滑な処理の遂行を実現したのである。
上述のような現象は、前述のように粉砕による比表面積の増加と、木粉の粉砕によって生じるミクロな微細繊維の集合体を形成する繊維の実質表面での凹凸構造の増加とにつながるものであると思われる。この微視的構造は、巨視的には、嵩比重の増加に反映する。この点も過去の文献には記載がなく、本発明者らの発見した現象である。本発明は、このような発見に基づいて完成を見たのである。本発明者らの測定によると、木粉粒子の大きさが100メッシュパス50重量%以上であれば、木粉の嵩比重は、0.22であった。そして、本発明の目的を効果的に達成するためには、一般的に言って、木粉の嵩比重は、0.1〜0.35の範囲であるのが好ましく、0.15〜0.3の範囲であるのがさらに好ましく、0.17〜0.25の範囲であるのがさらにもっと好ましい。
粒子の形状が大幅に不揃いであるおがくずと、上述のように粒子の形状が細かい状態に制御された粉砕木粉とのオイル吸収性能上の違いは大きく、この違いは、単に分散性から期待されるものを超えていることが判明した。このことは、一時廃油などのオイル類を固化した固化粒子の性状に現れる。粉砕することによって粒子の形状を細かい状態に制御された木粉を用いると、驚くべきことに、固形化粒子が、再現性よく、さらさらした状態でかつぱらぱらに容易になる状態でかつドライ(乾燥)感覚の手触りの粒子群となる。このことは、実用上、取り扱い易い点で重要な特性であって、本発明者らは、本発明による特殊な粉砕木粉がオイル類吸収剤として突出した性能を有していることを見い出している。このことは、木粉の製造時に構成される微小繊維群が互いに絡まっていてその間隙がポーラス(すなわち、多孔性の構造)になっている不均一な凹凸に富む表面を形成し、毛細管現象によってオイル類を吸い上げて保持し得る微小繊維群の本質的な挙動が実質組織へのオイル類の吸収能の飛躍的な向上に寄与しているためであると思われる。
さらに、木粉の粒子は、その比表面積の増加の効果も加わって、オイル類を最大限に吸収するが、巨視的には、その粉末が嵩高くなるという相関関係がある。このような嵩高い粉末をオイル類吸収剤に応用することは、これまで知られていない。本発明の実施に際してのもっとも効果的な木粉の嵩比重は、0.2付近にあり、前述のように、この嵩比重を0.3以下に制御することによって、本発明を好ましく実施することができる。なお、本発明において分散剤に米ぬかを用いる場合には、その嵩比重が0.4以下、好ましくは0.35以下がよいことが、本発明者らによって実験的に見い出されている。そして、本発明の目的を達成するためには、一般的に言って、上記米ぬかの嵩比重は、0.15〜0.5の範囲であるのが好ましく、0.2〜0.4の範囲であるのがさらに好ましく、0.25〜0.35の範囲であるのがさらにもっと好ましい。
本発明者らは、本発明を開発する途上において、本発明において用いられる木粉や米ぬかにいくぶん欠陥があることを認識している。この欠陥は、本発明において用いられる木粉や米ぬかの嵩比重が想像を超えて小さいために、これらの木粉や米ぬかが非常に飛散しやすいという事実である。このように飛散した微粉末が作業者によって吸入されることは、本発明を実施する際には、健康管理上から何とか避けなければならない。したがって、本発明を実用化する際には、この飛散性の防止の解決法の確立が必要である。一方、本発明者らは、この飛散現象が木粉や米ぬかに含まれる水分が少ないときに生じることを見い出して検討を進めた結果、上述のような飛散を防止するためには、木粉や米ぬかに含まれている水分が、6〜60重量%の範囲であるのが好ましく、10〜50重量%の範囲であるのがさらに好ましく、15〜45重量%の範囲であるのがさらにもっと好ましいことを見い出した。なお、上記水分含有量が4重量%よりも小さいときには、木粉や米ぬかと一時廃油などのオイル類との間に非親和現象が発現して、時として混和に支障を来たすことがあるから、あまり好ましくない。また、上記水分含有量が60重量%よりも大きいときには、効果の増進が得られない上、加えた木粉や米ぬかの粉末が廃液油などのオイル類の底に沈降する不均一な分散が生じることがあるために、固化現象に不均一性をもたらすことがあるから、あまり好ましくない。
オイル類に混ざらない水分をオイル類吸収剤に加えて品質を向上させるという発想は、通常の常識に反すると考えるのが普通である。オイル類吸収剤に水分を添加することによって、オイル類吸収性を損なうことなしに、オイル類吸収剤の飛散性を防止することができるという発見は、本発明者らにとっても驚きであった。このことは、既述のように、本発明において用いられる木粉や米ぬかの吸油性が、微視的なフィブリル構造に由来する細かい間隙部分への毛細管現象による吸い上げ保液性能、主たる構成成分であるセルロースの本質的な親油性および親水性、セルロース中の微小繊維間に介在するリグニン成分の親油性と親水性との両面を持つ界面活性剤としての役割、粉砕過程で生じる細胞壁膜の微視的破壊による多面的で微細な凹凸構造の発現などが総合的に優れた吸油性に寄与する結果として得られることに基づいていると考えられる。この点も、本発明者らの発見であり、木粉や米ぬかの水分コントロールには、実用化の成否を決定するほどの重要性があることが判明した。
固形化した一時廃油の廃棄処理に視点を移すと、具体的には、オイル類処理剤が可燃性の木粉から成る場合には、固形化した廃油などのオイル類を燃えるごみまたは再生燃料として用いるときに、非常に燃えやすくて有利である。本発明において用いる木粉は、燃焼助剤として働くことも強調したい。したがって、廃油などのオイル類は、固形化後に、可燃物として処理することができる利点を備えており、また、この固形物を燃料材料として活用することもできる。
また、本発明に従って粒状に固形化したものは、土壌中に存在する微生物によって容易に分解されるが、生分解性をさらに促進するために、木粉および/または米ぬかに有用微生物を添加するのが好ましい。したがって、本発明の前記第1および第2の観点においては、オイル分解能を有する微生物を上記木粉および/または上記米ぬかに担持させるのが好ましい。また、本発明は、その第3の観点においては、上述のような微生物入りのオイル類処理剤を製造する方法において、オイル分解能を有する微生物を上記木粉および/または上記米ぬかに添加することによって、上記微生物を上記木粉および/または上記米ぬかに担持させることを特徴とする製造方法に係るものである。また、本発明の上記第3の観点においては、上記有用微生物が、バシラス・サブティリス(納豆菌の一種)、バシラス・マガテリアム、バシラス・レンタモリビス、バシラス・ステレンゼンシス、バシラス・ポリミクザ、バシラス・リケニホルミス、アスペルジルス・フラバス・オリバ(麹カビ類)、ラクトバシラス・ファーメンタム(乳酸発酵菌)およびサッカロマイセス・セレヴィシェ(イースト菌)からなる群から選ばれた少なくとも一種であるのが好ましい。さらに、本発明の上記第3の観点においては、上記微生物が、上記木粉と上記米ぬかとからなる群から選ばれた上記少なくとも一種100重量部に対して、好ましくは、0.1〜2.0重量部(さらに好ましくは、0.2〜1.5重量部、さらにもっと好ましくは0.25〜1.0重量部)の範囲で添加されることができる。なお、本発明による処理剤の一部または全部(ただし、微生物を除く。)に米ぬかを用いるときには、米ぬかは、上記有用微生物の補助栄養源としても働くために、微生物の活性化に寄与するから、本発明に従って粒状に固形化した固形化物の生分解性をさらに速める役割を果たすことになる。このように本発明において有用微生物を用いるときには、土壌中での本発明に従った粒状固形化物の生分解を促進して、肥料化をさらに促進させることもできる。
以上詳細に述べたように、本発明によるオイル類処理方法は、一時廃油を生じる現場において主として実施されるのが特に好ましい。この場合、容器に集められた一時廃油に本発明による処理剤を加えると、両者の混合物に粘り気が先ず生じ、そして、上記処理剤をさらに追加すると、ペースト状になる。また、上記処理剤をさらにもう一度追加すると、例えば長径数ミリ前後の大きさの粉砕スポンジ様の粒状物の多数個が集合している集合体に変化して、廃油系全体を僅か数分間でさらさらした粒子群に固化させることができる。本発明者らが本発明による処理方法を実施した場合、驚くべきことに、上記容器中の一時廃油を固形化した後におけるこの容器の内側表面には、これまではいつも難渋していた廃油の付着が全く見られず、廃油が完璧なまでに除去されていた。したがって、本発明の実施によって、上述のような容器の清浄化効果のために、作業面で最も難渋する洗浄工程を省略することが可能であるから、作業工程の合理化や省力化に大きく寄与することも判明した。
本発明によれば、一時廃油類などのオイル類の全体が、処理剤による処置でもって短時間(例えば、僅か数分間)のうちに、オイル類系全体として例えば長径数ミリメートル前後の大きさの粉砕スポンジ様の粒子の多数個が集合している集合体に固形化することができる。したがって、オイル類の処理を実用的なレベルで簡単かつ迅速にかつ省力的に行うことができるとともに、この固形化物を可燃性のごみなどとして処置したり、産業廃棄物として廃棄したりすることができる。
また、請求項5〜8に係る発明によれば、オイル類を多数個の粒子の集合体に固形化した後に、この固形化物を特に有害になることなく土に帰すことができ、また、肥料として有効に再利用することができる。
本発明の実施例1において用いられる木粉の顕微鏡写真である。(実施例1) 本発明の実施例3において用いられる米ぬかの顕微鏡写真である。(実施例3) 本発明の実施例3および比較例3〜6についての固形化指標を示すグラフである。(実施例3および比較例3〜6) 本発明の実施例11において用いられる木粉の顕微鏡写真である。(実施例11)
つぎに、本発明の実施例1〜11および比較例1〜7について順次詳細に説明する。
(1)実施例1
赤色の油性塗料を調合釜内で調合してから、この調合品を塗料製品として上記調合釜から取り出し、引き続いて、黄色の油性塗料を上記調合釜内で調合することになった。このために、上記調合釜内に残っていた調合済みの赤色の油性塗料を少量の灯油でもって洗浄して、この油性塗料洗浄液を別の容器(すなわち、収容容器)に流し込んで収容した。そして、この洗浄および収容の操作を数回(例えば、5回)繰り返して、赤色の油性塗料洗浄液を上記収容容器に集めた。この収容容器に集められた油性塗料洗浄液の総量は、約12リットルであった。
ついで、本発明に従って木粉(100メッシュパス90重量%以上、嵩比重0.23、水分含有量14重量%)2.5キログラムを用意し、この用意した木粉の1/3の量を上記収容容器に投入した。この収容容器内を攪拌すると、木粉は、上記油性塗料洗浄液にすぐに均一に混ざった。そして、油性塗料洗浄液の全体の液量は、実質的にはほとんど変わらなかった。上記用意した木粉の残りのうちの半分の量を上記収容容器にさらに加えてから、この収容容器内を再び攪拌した。この場合、このさらに加えた木粉も油性塗料洗浄液にすぐに混ざり、上記半分の量の木粉を加えてから30秒間ぐらい経つと、洗浄液に粘り気が少し出てきた。そして、上記半分の量の木粉を加えてから3分間後には、この洗浄液はかなり粘性のあるペースト状のものに変わった。また、上記収容容器内のこの混合物全体の容量は、13%程度しか増大しなかった。ついで、上記収容容器内に上記用意した木粉の残りの全量を加えてかき混ぜると、洗浄液系全体が、ほぼ瞬時に、柔らかくかつ非粘着性でスポンジ様の小さい粒子(換言すれば、塊)の多数個がぱらぱらに容易になる状態で集合している集合体になった。そして、この集合体は、液体がもはや全く存在していないと言える取り扱いやすい性状であった。この実施例1において使用された木粉は、使用前には、図1にその顕微鏡写真を示すような性状を有していた。
(2)実施例2
上記実施例1の場合と同様にして赤色の油性塗料を調合釜内で調合してから、この調合品を塗料製品として調合容器から取り出し、引き続いて、黄色の油性塗料を上記調合釜内で調合することになった。このために、上記調合釜内に残っていた赤色の油性塗料を、界面活性剤含有の少量の水でもって数回繰り返して洗浄して、この油性塗料洗浄液を容量18リットルの別の容器(すなわち、第1の収容容器)に流し込んで収容した。この場合、この洗浄液の総量は、約8リットルであった。この洗浄液は、油性塗料に加えて、界面活性剤を含有する水も共存する混合物であった。
ついで、上記第1の収容容器とは別で容量18リットルの第2の収容容器内に廃棄用のポリ袋(すなわち、ポリエチレン製のごみ出し袋)を入れてから、本発明に従って用意した木粉(100メッシュパス90重量%以上、嵩比重0.24、水分含有量13重量%)3キログラムの全量をこのポリ袋内にまず投入した。この木粉は、嵩密度が小さいために嵩高いから、第2の収容容器は、この木粉でほぼ一杯になった。ついで、上記第1の収容容器内の油性塗料洗浄液の全量を、上記第2の収容容器内の上記ポリ袋内の上記木粉の上から、振り掛けて加えた。このとき、洗浄液を徐々に加えると、嵩高い木粉は、その嵩高さが消失した。そして、洗浄液を加えてから3分間後には、木粉は、上記第2の収容容器の上部から下部に掛(か)けて固まっていた。そして、上記上部では、ペースト状になっていたが、上記下部では、まだ木粉のままで存在していた。
ついで、ポリ袋の上部を紐で縛ってから、このポリ袋を第2の収容容器から引き上げた。そして、このポリ袋の内容物が混ざりあうようにポリ袋を振ると、ポリ袋内において、上記内容物が混ざり合った。この結果、油性塗料洗浄液は、ポリ袋内において、柔らかくかつ非粘着性でスポンジ様の小さい粒の多数個がぱらぱらに容易になる状態で集合している集合体に簡単に変化した。そして、この集合体は、液体がもはや全く存在していないと言える取り扱いやすい性状であった。したがって、このポリ袋を可燃性ごみとしてそのまま処分することができた。
(3)比較例1
この比較例1においては、上記実施例1において用いた木粉の代わりに、おがくずを用いた以外は、上記実施例1の場合と全く同一の操作を行った。この場合、おがくずの粒子は、その90重量%が20メッシュオン(換言すれば、その10重量%が20メッシュパス)であった。この比較例1においては、おがくずと油性塗料洗浄液との両者を上記実施例1の場合と同様に混合した。この場合、この混合物は、しっとりとしたペースト状の域を出ず、上記混合から1時間を経過しても、ゲル状の半固体状態で留まっており、さらさらした小粒子の集合体にはならなかった。このために、このゲル状の半固体状態である混合物の取り扱いには、難渋した。
(4)実施例3
美容院で常用しているパーマ剤の使用済み液(すなわち、パーマ使用廃液)を捨てずにポリエチレン容器に集めておいたところ、このパーマ使用廃液の全体が3.2リットルになった。このパーマ使用廃液には、油性の液体、水、薬液などが含まれていて、この廃液は複雑な混合液体であった。一方、木粉(100メッシュパス70重量%以上、嵩比重0.24、水分含有量13重量%)650グラムと、米ぬか(嵩比重0.33、水分含有量8重量%)約160グラムとを混合することによって、混合粉体を調整しておいた。そして、この混合粉体を上記ポリエチレン容器内の上記パーマ使用廃液に、この廃液を緩やかに攪拌しながら、加えた。この混合粉体は、上記パーマ使用廃液中に、すぐに均一にかつ容易に分散した。この混合粉体の添加によっても、上記パーマ使用廃液の容積増加は、実質的にはほとんどなかった。そして、この容積増加は、多く見積もっても、せいぜい10容量%程度であった。上記混合粉体の全量を添加することによって、パーマ使用廃液の全体は、柔らかくかつ非粘着性でスポンジ様の小さい粒の多数個がぱらぱらに容易になる状態で集合している集合体になった。そして、この集合体は、液体がもはや全く存在していないと言える取り扱いやすい性状であった。この集合体をちり紙の上に置いてから、1時間後、3時間後、6時間後、1日間後および3日間後にこの集合体をそれぞれ観察したところ、ちり紙上へのオイルの滲み出しは、全く見られなかった。この実施例3において使用された米ぬかは、使用前には、図2にその顕微鏡写真を示すような性状を有していた。
(5)実施例4
青色の油性塗料を調合釜内で調合してから、この調合品を塗料製品として調合釜から取り出し、引き続いて、赤色の油性塗料を上記調合釜内で調合することになった。このために、上記調合釜内に残っていた調合済みの青色の油性塗料を灯油でもって洗浄して、この油性塗料洗浄液を別の容器(すなわち、収容容器)に流し込んで収容した。そして、この洗浄および収容の操作を数回(例えば、5回)繰り返してから、青色の油性塗料洗浄液を上記収容容器に集めた。この収容容器に集められた油性塗料洗浄液の総量は、約1.2リットルであった。
一方、加熱処理した米ぬか(嵩比重0.31、水分含有量9重量%)100グラムと、木粉(100メッシュパス70重量%以上、嵩比重0.24、水分含有量13重量%)280グラムとを混合することによって、混合粉体を調整しておいた。そして、この混合粉体を上記収容容器内の油性塗料洗浄液に、この廃液を緩やかに攪拌しながら、加えた。この混合粉体は、上記洗浄液中に均一にかつ容易にすぐに分散した。上記混合粉体の全量を添加することによって、青色の油性塗料洗浄液の全体は、柔らかくかつ非粘着性でスポンジ様の小さい粒の多数個が容易にぱらぱらになる状態で集合している集合体になった。そして、この集合体は、液体が全く存在していないと言える取り扱いやすい性状であった。
(6)実施例5
市販のてんぷら油と水とを互いに等量になるように半量ずつビーカーに加えて、合計で400ccになるようにした。これら両方の液は、混じりあわずに2層に分かれていた。ビーカー内のこれら両方の液に、前記実施例1で用いた木粉150グラムを攪拌しながら少しずつ加えた。木粉は、2層に分かれた液に容易になじみ、上記ビーカー内の系全体は、細かくかつほぼ均一でスポンジ様の小さい粒子の多数個が集合している集合体に、すぐになった。この粒子の集合体は、手で触っても、オイルの感触はなくて、さらさらしていた。
(7)実施例6
上記実施例5におけるてんぷら油の代わりに流動パラフィンを用いて、この流動パラフィンと水との混合液を同様に作成し、これら両方の液が2層に分かれた状態とした。上記実施例3において用いた木粉と米ぬかとの混合粉体を、この混合液に緩やかに攪拌しながら添加したところ、長径が平均数ミリメートルであるスポンジ様の粒子の多数個が集合している集合体になった。そして、この集合体は、液体がもはや全く存在していないと言える取り扱いやすい性状であった。このように小さい粒子の多数個がぱらぱらに容易になる状態で集合している小さい集合体を、ちり紙の上に置いてから、1時間後、3時間後、6時間後、1日間後および3日間後に、この集合体をそれぞれ観察したところ、ちり紙の上へのオイルの滲み出しは、全く見られなかった。
(8)実施例7および比較例2
金属切削作業場での予定の切削作業が終了した。そして、この終了後には、この作業場の床には、何時ものように、微細な油滴が、切削装置を中心として、飛散防止用の覆いの内部や、この覆いを超えた周囲に広がって、飛散していた。このような微細な油滴は、作業者の転倒の原因になったり、このまま放置することによって、作業場の周囲のごみをその上に吸着して汚くよごしたり、時間の経過とともにオイルが粘っこい樹脂状に固まったりするから、見苦しくて、安全衛生上の問題を抱えている。従来は、このように床面上に飛散したオイルを取り除く方法として、床面に飛散したオイル上におがくずを撒いて、このおがくずにオイルを吸収させる方法や、この目的のために開発された粉末状の油吸収剤を用いる方法がある。このような油吸収剤には、市販品もあるが、このような油吸収剤の性能は、期待にこたえているとは言えず、より良い製品が望まれていた。
この場合には、切削作業の終了後切削装置を中心に作業場の場所を2分して、一方の場所には、オイル吸収剤の市販品であるペカン植物繊維系製品を上記比較例2として用いるとともに、他方の場所には、前記実施例1で用いた木粉を上記実施例7として用いて、両方の場所での効果を調べた。具体的な方法としては、互いに同一容量の上記オイル吸収剤と上記木粉とを、オイルが飛散したそれぞれの床面の全体に、できるだけ同じように均一にそれぞれ振りかけた。そして、このように振りかけてから15分間経過後に、振りかけたオイル吸収剤および木粉を箒で掃き集めてから、それぞれの床面を観察した。上記実施例7の場合には、木粉によるオイル吸収後の床面は、この床面に付着したオイルがきれいに吸着されて、さらさらした感覚の床面になっていた。一方、上記比較例2の場合には、オイルスポンジを用いて処置した床面には、オイルの跡がところどころに見られ、床面の手触りにぬるぬる感があり、床面上のオイルの吸収に不足感があった。そして、上記比較例2の場合には、オイルスポンジを用いて、同様の作業を3回以上繰り返した後に、上記実施例7の場合とほぼ同様の状態にやっとなった。換言すれば、本発明に従ったオイル処理剤は、上記市販品の3〜4倍の処理能力を発揮することが判明した。
(9)実施例8および比較例3
本発明に従った処理方法の再現性の確認のための実施例8としての実験と、従来のオイル吸収剤としてのおがくずを比較材料として用いた比較例3としての実験とを兼ねて、上記実施例7および上記比較例2の場合と同様の実験を行った。この場合にも、作業場の場所を、上記実施例7および上記比較例2の場合と同様に、一方の場所と他方の場所とに2分した。また、上記一方の場所を、第1の一方の場所と第2の一方の場所とにさらに2分した。
上記第1の一方の場所には、上記実施例1において用いたのと実質的に同一の木粉を用いた。また、上記第2の一方の場所には、上記実施例3において用いたのと実質的に同一の混合粉体(換言すれば、木粉と米ぬかとの混合粉体)を用いた。そして、上記第1および第2の一方の場所について、上記実施例7の場合と同様にして、オイルの吸収処理を行った。この結果、上記実施例8の場合には、上記第1および第2の一方の場所のいずれにおいても、上記実施例7の場合と同様の状態が再現されたことを確認することができた。
一方、おがくずを用いた上記他方の場所の場合には、おがくずでオイルの吸収処理を行った後にも、床面上のあちこちにオイルが取り残されていた。そして、指先で床面をこすると、こすった床面にオイルの残存を示すぬるぬるした感触があった。したがって、上記比較例3の場合には、オイルの吸収処理の点で、きわめて不満足な結果が得られた。そして、上記比較例3の場合には、上記実施例8の場合のように床面がさらさらしている感覚を得るまでには、おがくずを用いて同様の作業を4回繰り返す必要があった。
(10)実施例9および参考例4〜7
本発明に従ったオイル処理剤によって達成され得る効果と、市場に現在あるオイル吸収剤によって達成され得る効果とを比較するために、上記オイル処理剤(上記実施例9)および上記オイル吸収剤4種類(上記参考例4〜7)のオイル吸収能について実験した。これらのオイル処理剤およびオイル吸収剤(両者の合計で5種類)は、いずれも粉体であった。この場合、上記実施例9においては、フィブリル化した木粉(100メッシュパス90重量%以上、嵩比重0.22、水分含有量13重量%)と米ぬか(嵩比重0.33、水分含有量14重量%)との重量での混合比9:1の混合粉体を、オイル処理剤として用いた。また、上記オイル吸収剤(すなわち、市販品)として、上記参考例4の場合には綿および前記ペカン植物繊維系(X:米国製品)を用い、上記参考例5の場合にはベントナイト系(Y:国産製品)を用い、上記参考例6の場合にはポリプロピレン繊維系(Z:国産製品)を用い、上記参考例7の場合にはトウモロコシ繊維系(V:米国製品)を用いた。
上記比較実験に際しては、処理対象のオイルとして、市販されている食料用の日清キャノーラ油を用いた。この場合、この日清キャノーラ油10グラムを50ミリリットルのビーカーにとった。そして、上記X、Y、Z、Vの各製品と、本発明に従った上記混合粉体(換言すれば、本発明品)との合計5種類の吸収用粉体のうちの1種類を上記ビーカー内に選択的に振りかけることによって、これら5種類の混合粉体について、別々に実験を行った。具体的には、オイルとしての日清キャノーラ油が入った上記ビーカーに、このオイルを攪拌しながら、上記5種類のうちの1種類の吸収用粉体を緩やかにかつ徐々に加えていった。そして、上記ビーカー内の系全体が所望のようなぱらぱらに容易になる状態で集合している多数個の粒子の集合体になったときの吸収用粉体の添加量(グラム表示)を測定した。
上記5種類の吸収用粉体による効果の比較を数値で表すために、固形化指標(K)をつぎの式に示すように定義している。そして、図3は、この定義に従って図示されている。
K=(P/Q)×10
ここで、Pはオイルの重量(グラム表示)であり、Qは吸収用粉体の重量(グラム表示)である。
上記実施例9および上記参考例4〜7においては、オイルの重量が10グラムであるから、ビーカー内の系全体を固形化するのに要する吸収用粉体の重量が、仮に4グラムであるとすれば、
K=(10/4)×10=25
になる。
つぎの表1には、上記5種類の吸収用粉体について算出された固形化指標(K)が示されている。そして、図3は、この表1を図式化したものである。
Figure 2011057968
上記表1および図3に示す固形化指標(K)の数値が大きいことは、吸収用粉体の量が少なくても、オイルをぱらぱらに容易になる状態に固形化できること(換言すれば、吸収用粉体の効果が大きいこと)になる。図3から明らかなように、本発明によるオイル処理剤は、市場に現在あるオイル吸収剤に比べると、オイルの固形化の点で3〜4倍以上の傑出した効果がある。そして、このような効果は、前記実施例7および8に記載した結果とほぼ合致している。
(11)実施例10
本発明に従って、木粉(100メッシュパス90重量%以上、嵩比重0.23、水分含有量14重量%)800グラムと、米ぬか(嵩比重0.33、水分含有量13重量%)160グラムとを用意するとともに、市販のバクテリア粉末3グラムを用意した。このバクテリア粉末は、バシラス・サブティリス(原語表記:Bacillus subtilis)、バシラス・リケニホルミス(原語表記:Bacillus licheniformis)およびバシラス・マガテリアム(原語表記:Bacillus magaterium)という3種類の混合物から成っていた。そして、上記木粉、上記米ぬかおよび上記バクテリア粉末の3者を混合して混合粉体を調整した。
まず、この混合粉体の2/3の量を自動車の廃エンジンオイル4.5リットルに、このオイルを攪拌しながら、加えた。廃オイルと混合粉体とは、攪拌すると、すぐに均一に混ざり、30秒間後には、この廃オイルと混合粉体との混合物は、かなり粘性のあるペースト状のものに変わった。この時点では、上記混合物全体の容量の増大は、12%程度にすぎなかった。
ついで、上記混合物に残りの混合粉体を加えてかき混ぜると、廃オイルと混合粉体とから成る系全体が、柔らかくかつ非粘着性でスポンジ様の小さい粒子の多数個がぱらぱらに容易になる状態で集合している集合体に、すぐに変化した。このようにして得られた集合体の全量を地表面から約10センチメートル下方の土壌に、厚さ5センチ程度にして、埋設した。2ヶ月間後に、この埋設した部分の土壌およびその外周を掘り出してから、この掘り出したものに対してn−ヘキサンで抽出試験を実施したが、オイル成分は検出されなかった。木粉や米ぬかの成分も同様に検出されなかった。
(12)実施例11
赤色の油性塗料を調合釜内で調合してから、この調合品を塗料製品として調合釜から取り出し、引き続いて、別の色の油性塗料を上記調合釜内で調合することになった。このために、上記調合釜内に残っていた調合済みの赤色の油性塗料を少量の灯油でもって繰り返し洗浄して、この油性塗料洗浄液を別の容器に流し込んで収容した。そして、この洗浄および収容の操作を数回(例えば、5回)繰り返して、赤色の油性塗料洗浄液を上記収容容器に集めた。この収容容器に集められた赤色油性塗料洗浄液の総量は、約11リットルであった。
ついで、本発明に従って特殊加工を施した木粉(100メッシュパス100%、嵩比重0.23、水分含有量38重量%)2.6キログラムを用意し、洗浄液を収容した上記容器にこの用意した木粉の全量を一気に投入した。この収容容器内を攪拌すると、木粉は、油性塗料洗浄液にすぐに均一に混ざった。この木粉の投入後における油性塗料洗浄液の全体の容量は、10%程度しか増大しなかった。上記油性塗料洗浄液をときどきかき混ぜると、4分間以内には、洗浄液全体がやわらかくかつ非粘着性でスポンジ様の小さい粒子の多数個がぱらぱらに容易になる状態で集合している集合体となった。そして、この集合体は、液体がもはや全く存在していないと言える取り扱いやすい性状であった。
この実施例11に使用された木粉は、図4にその顕微鏡写真を示すように、多数の微小繊維が立体的に絡まった態様を示していた。なお、この図4の顕微鏡写真に示す木粉は、図1の顕微鏡写真に示す木粉とほぼ同一の構成を有している。しかし、図4の顕微鏡写真は、図1の顕微鏡写真を撮像したカメラよりも高性能なカメラによって撮像されているために、木粉の細部の構成が図1の顕微鏡写真の場合よりも鮮明に示されている。
以上、本発明の実施例1〜11について詳細に説明した。しかし、本発明は、これらの実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている発明の趣旨に基づいて、各種の変更および修正が可能である。
例えば、既述の実施例1〜11においては、処理すべきオイル類の全体を容器(この容器に入れたポリ袋を含む。)に入れてから、本発明による処理剤をこの容器に入れるようにした。しかし、オイル類の処理を分割的に順次処理することもできる。例えば、上記容器内に半分の量のオイル類を入れてから、上記処理剤を加え、その後に、上記容器内に残り半分の量のオイル類を入れてから、残り半分などの量の上記処理剤または本発明による別の処理剤を加えるようにしてもよい。なお、上記ポリ袋が用いられている場合には、このポリ袋を上記容器から取り出してから、この容器およびその内容物を、可燃性ごみとして、そのまま処分することができる。
また、既述の実施例1〜11においては、容器(この容器に入れたポリ袋を含む。)に予め入れてから、本発明による処理剤をこの容器に入れるようにした。しかし、これとは逆に、上記容器に上記処理剤を入れてから、上記オイル類を上記容器に入れるようにしてもよい。なお、上記ポリ袋が用いられている場合には、このポリ袋を上記容器から取り出してから、この容器およびその内容物を、可燃性ごみとして、そのまま処分することができる。

Claims (9)

  1. オイル類に作用して上記オイル類を処理するためのオイル類処理剤において、
    上記オイル類に作用してこのオイル類を含む系全体を粒子の集合体に固化する能力を有する木粉と、上記能力を同様に有する米ぬかとからなる群から選ばれた少なくとも一種からなるか、あるいは上記少なくとも一種を主成分とし、
    上記木粉が、微細に粉砕されていて、微小繊維の多数本が互いに絡まった状態で集合している集合体として構成され、
    上記米ぬかが、多様で不均一な起伏に富んだ表面を有する粒子の多数個が集合している集合体として構成されていることを特徴とする処理剤。
  2. 上記木粉の嵩比重が、0.1〜0.35の範囲であり、
    上記米ぬかの嵩比重が、0.15〜0.5の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の処理剤。
  3. 上記木粉が、50メッシュパス50重量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の処理剤。
  4. 上記木粉と上記米ぬかとからなる群から選ばれた上記少なくとも一種に含まれている水分が、6〜60重量%の範囲であることを特徴とする請求項1、2または3に記載の処理剤。
  5. オイル分解能を有する微生物を上記木粉および/または上記米ぬかに坦持させることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか1つに記載の処理剤。
  6. 請求項5に記載の処理剤を製造する方法において、
    オイル分解能を有する微生物を上記木粉および/または上記米ぬかに添加することによって、上記微生物を上記木粉および/または上記米ぬかに坦持させることを特徴とする製造方法。
  7. 上記微生物が、バシラス・サブティリス、バシラス・マガテリアム、バシラス・レンタモリビス、バシラス・ステレンゼンシス、バシラス・ポリミクザ、バシラス・リケニホルミス、アスペルジルス・フラバス・オリバ、ラクトバシラス・ファーメンタムおよびサッカロマイセス・セレヴィシェからなる群から選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
  8. 上記微生物が、上記木粉と上記米ぬかとからなる群から選ばれた上記少なくとも一種100重量部に対して、0.1〜2.0重量部の範囲で添加されることを特徴とする請求項6または7に記載の製造方法。
  9. オイル類に処理剤を加えるかまたは上記オイル類に接触させることによって、上記オイル類を処理するようにしたオイル類処理方法において、
    請求項1〜5のうちのいずれか1つに記載の処理剤を上記オイル類に加えて混合するかまたは上記オイル類に接触させるかしたことを特徴とする処理方法。
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