JP2011056417A - 分離膜及び分離膜複合体並びに前記分離膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】液体中に分散している微細粒子のろ過に用いられる分離膜であって、経時による圧力損失の増大が小さい分離膜、この分離膜を用いた分離膜複合体、及び分離膜の製造方法を提供する。
【解決手段】有機マイクロバルーンが分散された塗料の製膜により形成された樹脂膜からなり、前記樹脂膜が前記有機マイクロバルーンを破壊して形成された孔を有する多孔質膜であることを特徴とする分離膜、多孔質体の基材及び前記基材の少なくとも一方の表面上に形成された前記分離膜を有することを特徴とする分離膜複合体、並びに、前記分離膜の製造方法。
【選択図】 図1
【解決手段】有機マイクロバルーンが分散された塗料の製膜により形成された樹脂膜からなり、前記樹脂膜が前記有機マイクロバルーンを破壊して形成された孔を有する多孔質膜であることを特徴とする分離膜、多孔質体の基材及び前記基材の少なくとも一方の表面上に形成された前記分離膜を有することを特徴とする分離膜複合体、並びに、前記分離膜の製造方法。
【選択図】 図1
Description
本発明は、液体中の微細粒子のろ過等に用いられる樹脂性の分離膜、及びこの分離膜を用いた分離膜複合体に関する。本発明は又、前記分離膜の製造方法に関する。
微細な貫通孔を有する樹脂性の多孔質膜は、液体中の不純物粒子(濁質)をろ過するための分離膜(フィルター)等として、医薬分野や、半導体製造や食品工業等様々な分野で用いられている(特許文献1)。このような多孔質膜としては、微細で均一な孔を有しかつ高い気孔率である薄膜が望まれる。
種々の用途の中には、被処理液が腐食性を有する場合もあり、又高温環境下で使用される場合もあるので、耐薬品性、化学的安定性、耐熱性等が要求される場合も多い。そこで、耐薬品性や耐熱性に優れたフッ素樹脂の使用が提案されている。
樹脂性の分離膜には、上記の要求特性の他にも、ろ過時の圧力損失が小さい(=ろ過効率が良い)ことや機械的強度が優れること等が望まれる。ろ過時の圧力損失を小さくするためには、分離膜は薄い方が好ましい。
一方、分離膜が薄くなると機械的強度が低下する。そこで、微細で均一な孔からなりかつ薄い分離膜と、圧力損失を生じないような大きな径の孔を有しかつ機械的強度に優れた基材、との組合せからなる分離膜複合体が考えられている。
さらに分離膜や分離膜複合体には、ろ過使用時における圧力損失の経時的増大又はろ過流量の経時的低下(以下、これらを「ろ過効率の経時的低下」と表現する。)が小さいことが望まれる。一般に、分離膜の孔は、ろ過使用時に被処理液中の濁質により目詰まりし、ろ過効率の経時的低下が生じる。そこで、所定時間毎に分離膜を洗浄し孔の目詰まりを解消させる操作が必要となる。
ろ過効率の経時的低下が大きい場合、分離膜の洗浄頻度を上げる必要があり、洗浄に要する時間の増加等のため、ろ過処理の生産効率が低下する。そこで、ろ過効率の経時的低下が小さい分離膜が望まれる。
近年、分離膜に対する要請は高度となり、ろ過処理の生産効率についての要請もより高度となっている。そこで、樹脂製の分離膜や分離膜複合体についても、ろ過効率の経時的低下をより小さくすることが望まれている。しかし、従来の樹脂性の分離膜や分離膜複合体は、この近年の要請を必ずしも満足するものではなかった。
本発明は、液体中に分散している微細粒子のろ過に用いられる樹脂性の分離膜であって、ろ過効率の経時的低下が小さい分離膜、この分離膜を用いた分離膜複合体、及びこの分離膜の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意検討の結果、ろ過効率の経時的低下を生じさせている孔の目詰まりは、孔をストレートな形状、即ち膜の一方の表面より他方の表面まで貫通している孔内の屈曲や凹凸等を小さくすることにより抑制できること、そして、製膜性を有する樹脂に有機マイクロバルーンを分散してなる塗料を用いて製膜して樹脂薄膜を形成し、前記樹脂薄膜中の有機マイクロバルーンを破壊して樹脂薄膜中に孔を形成することにより、均一かつストレートな形状の孔を有する分離膜が得られることを見出し、本発明を完成した。即ち、前記の課題は、以下に示す構成からなる発明により達成される。
請求項1に記載の発明は、
有機マイクロバルーンが分散された塗料の製膜により形成された樹脂膜からなり、
前記樹脂膜が、前記有機マイクロバルーンを破壊して形成された孔を有する多孔質膜であることを特徴とする分離膜である。
有機マイクロバルーンが分散された塗料の製膜により形成された樹脂膜からなり、
前記樹脂膜が、前記有機マイクロバルーンを破壊して形成された孔を有する多孔質膜であることを特徴とする分離膜である。
本発明の分離膜は、樹脂から形成される樹脂膜であり、かつ多数の孔を有する多孔質膜である。この孔とは、分離膜の両表面に開口し開口間が連続している貫通孔を意味する。
本発明では、この孔が、有機マイクロバルーンの破壊により形成されることを特徴とする。ここで、破壊とは、加熱による有機マイクロバルーンの破裂、樹脂膜を溶解せず有機マイクロバルーンのみを溶解する溶剤による有機マイクロバルーンの溶出除去等、有機マイクロバルーンが存在した位置に貫通孔が形成される方法であれば特に限定されない。破壊後、有機マイクロバルーンの一部や破片等が、分離膜内に残存する場合であっても、孔の閉塞を生じない限り、本発明で言う破壊に該当する。
具体的には、有機マイクロバルーンの破壊の方法としては、後述するように、焼結により又は溶解等を挙げることができる。又、超音波等による方法も例示することができる。
このようにして形成された孔は、内部の屈曲や凹凸の少ないものとなる。その結果、この分離膜は、ろ過効率の経時的低下が小さく、分離膜の洗浄の頻度(又は、分離膜の取換えの頻度)を少なくすることができ、ろ過処理の生産効率の低下を防止できる。
本発明で使用される有機マイクロバルーンは、有機物から形成された微細な球形の粒子であり、樹脂膜形成後に前記の意味の破壊ができるものである。樹脂膜形成後に破壊できるものであれば、有機マイクロバルーンを構成する有機物の種類は限定されない、又、樹脂膜形成後に破壊できる限りは、中空のバルーンだけではなく、中実の有機物粒子も用いることができる。有機マイクロバルーンは球形であるので材料中に高充填しても、流動性を良好に保持することができる。
分離膜としては、その孔の径がより均一であることが望まれる。孔の径をより均一にするためには、径の分散度が小さい有機マイクロバルーンが好ましく用いられる。具体的には、有機マイクロバルーンの径の分散度は、±30%程度以下が好ましく、より好ましくは±10%以下である。
請求項2に記載の発明は、前記塗料が、製膜性を有する樹脂溶液又は製膜性を有する樹脂の分散液からなることを特徴とする請求項1に記載の分離膜である。
製膜性を有するとは、薄い膜状にすることができることを意味する。製膜性を有する樹脂溶液とは、溶剤に可溶な樹脂を当該溶剤に溶解した溶液であって、この溶液の膜を形成し、その膜から溶剤を乾燥等により除去して樹脂膜を形成できるものである。樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、製膜の際に加熱して樹脂硬化が行われる。製膜性を有する樹脂の分散液とは、分散媒に不溶な樹脂の微粒子を当該分散媒中に分散したものであって、分散液の膜を形成しその膜から樹脂膜を形成できるものである。
請求項3に記載の発明は、前記分離膜の厚みが、前記有機マイクロバルーンの径より小さいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の分離膜である。
分離膜の厚みより前記有機マイクロバルーンの径が大きい場合は、それぞれの貫通孔が有機マイクロバルーンの一の粒子で形成されるので、内部の屈曲や凹凸のない貫通孔が容易に形成される。一方、分離膜の厚みより前記有機マイクロバルーンの径が小さい場合は、一の孔が複数の有機マイクロバルーン粒子で形成されるので、孔の形状が複雑になり、本願発明の効果が得られにくくなる場合もある。なお、有機マイクロバルーンの大きさに分散がある場合は、有機マイクロバルーンの径とはその平均径を意味する。
請求項4に記載の発明は、多孔質体の基材、及び前記基材の少なくとも一方の表面上に形成された請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の分離膜を有することを特徴とする分離膜複合体である。
この分離膜複合体は、前記の本発明の分離膜を基材の一表面又は両表面に有するものである。又、複数の基材間に前記の本発明の分離膜を有するものも含まれる。この分離膜複合体は、前記の本発明の分離膜を有しているので、ろ過効率の経時的低下が小さく、分離膜の洗浄(又は、取換え)の頻度を少なくすることができ、ろ過処理の生産効率の低下を防止できる。さらにこの分離膜複合体は、多孔質体の基材により補強されているので、機械的強度が優れ、分離膜モジュール等に加工する際のハンドリングも容易である。多孔質体の基材としては、機械的強度が優れるとともに前記分離膜のろ過効率を阻害しないものが望まれる。
そこで、多孔質体の基材としては、分離膜の孔より大きい孔を有するものが使用され、又、所望の機械的強度が得られる範囲で、気孔率は大きいことが、ろ過効率を阻害しないためには好ましい。さらに、所望の機械的強度が得られる厚さとすることが必要である。
この分離膜複合体は、多孔質体の基材の表面に、前記分離膜を固定することにより製造することができる。固定する方法としては、接着剤や粘着剤を使用して接着する方法、加熱により融着する方法等を挙げることができる。
請求項5に記載の発明は、前記分離膜がフッ素樹脂膜であり、かつ多孔質体の基材が、延伸フッ素樹脂多孔質体であることを特徴とする請求項4に記載の分離膜複合体である。
被処理液が腐食性を有する場合や高温環境下で使用される場合では、分離膜や分離膜複合体には、耐薬品性、化学的安定性、耐熱性が要求される。そこで、分離膜や多孔質体の基材の材質としては耐薬品性、化学的安定性、耐熱性及び機械的強度に優れるフッ素樹脂が好ましい。
分離膜及び多孔質体の基材を形成するフッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ素化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキル・ビニルエーテル共重合体(PFA)等の熱可塑性のフッ素樹脂を挙げることができる。これらの熱可塑性のフッ素樹脂は溶融粘度が高いので、溶融押出等によって膜を製造することは不可能である。そこで、PTFE、PVDF、PFA等の固体粒子を、300℃あるいはそれ以上の温度で熱融着させて製膜し、フッ素樹脂膜を得る方法が広く採用されている。
そこで、フッ素樹脂からなる分離膜としては、熱可塑性のフッ素樹脂粒子を熱融着させたフッ素樹脂膜であって、有機マイクロバルーンの破壊により形成された貫通孔を有するものが好ましい。
フッ素樹脂からなる多孔質体の基材の製造方法としては、前記の熱融着により得られたフッ素樹脂膜を延伸して孔を形成して多孔質体とする方法を採用することができる。この方法によれば、均一な孔を得やすく、又孔径の制御が容易である。即ち、フッ素樹脂からなる多孔質体の基材としては、フッ素樹脂膜を延伸して製造された延伸フッ素樹脂多孔質体が好ましく使用される。延伸フッ素樹脂多孔質体としては、一軸延伸品、多軸延伸品のどちらを用いてもよい。
分離膜複合体として特に好ましいのは、熱可塑性のフッ素樹脂粒子を熱融着させたフッ素樹脂膜であって、有機マイクロバルーンの破壊により形成された貫通孔を有する分離膜と、前記貫通孔より大きな孔を有しかつ厚みも大きく機械的強度に優れる延伸フッ素樹脂多孔質体の組合せからなる分離膜複合体である。
請求項6に記載の発明は、
有機マイクロバルーンが分散された塗料を製膜し、有機マイクロバルーンが含有された樹脂膜を形成する製膜工程、及び
前記樹脂膜中の、前記有機マイクロバルーンを破壊して前記樹脂膜中に貫通孔を形成する孔形成工程、を有することを特徴とする分離膜の製造方法である。ここで塗料としては、前記の製膜性を有する樹脂溶液又は製膜性を有する樹脂の分散液が好ましく使用される。又、有機マイクロバルーン、破壊、貫通孔等の意味も前記と同じである。この製造方法により、前記請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の分離膜を製造することができる。
有機マイクロバルーンが分散された塗料を製膜し、有機マイクロバルーンが含有された樹脂膜を形成する製膜工程、及び
前記樹脂膜中の、前記有機マイクロバルーンを破壊して前記樹脂膜中に貫通孔を形成する孔形成工程、を有することを特徴とする分離膜の製造方法である。ここで塗料としては、前記の製膜性を有する樹脂溶液又は製膜性を有する樹脂の分散液が好ましく使用される。又、有機マイクロバルーン、破壊、貫通孔等の意味も前記と同じである。この製造方法により、前記請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の分離膜を製造することができる。
請求項7に記載の発明は、
前記塗料が、水系分散媒中にフッ素樹脂粉末を分散させたフッ素樹脂ディスパージョンであり、
前記製膜工程が、フッ素樹脂ディスパージョンの膜の乾燥及びフッ素樹脂粉末の焼結により行われ、
有機マイクロバルーンが、前記焼結により破壊されることを特徴とする請求項6に記載の分離膜の製造方法である。
前記塗料が、水系分散媒中にフッ素樹脂粉末を分散させたフッ素樹脂ディスパージョンであり、
前記製膜工程が、フッ素樹脂ディスパージョンの膜の乾燥及びフッ素樹脂粉末の焼結により行われ、
有機マイクロバルーンが、前記焼結により破壊されることを特徴とする請求項6に記載の分離膜の製造方法である。
フッ素樹脂ディスパージョンとは、フッ素樹脂粉末を分散媒中に分散したものである。本発明の分離膜の製造に用いる塗料としては、製膜性を有する樹脂の分散液に有機マイクロバルーンを分散したものが例示されるが、この樹脂の分散液としては、フッ素樹脂ディスパージョンが好ましく使用される。分散媒としては、通常、水等の水系分散媒が用いられる。フッ素樹脂粉末とは、フッ素樹脂の微粒子の集合体であり、例えば、乳化重合により得ることができる。
請求項7に記載の製造方法では、製膜工程が、フッ素樹脂ディスパージョンの膜の乾燥及びフッ素樹脂粉末の焼結により行われるが、フッ素樹脂粉末の焼結の際の加熱によりフッ素樹脂ディスパージョンの膜の乾燥、即ち分散媒の除去がされるので、焼結工程の他に乾燥工程を必ずしも設けなくてよい。又、有機マイクロバルーンの破壊も、焼結による破裂により行われる。このように、一つの焼結工程により、乾燥、焼結、有機マイクロバルーンの破壊がされるので、生産工程が簡略化され生産が容易になる。
本発明の分離膜は、液体中に分散している微細粒子のろ過に用いた場合、ろ過効率の経時的低下が小さい。従って、この分離膜と多孔質基材との組合せからなる本発明の分離膜複合体も、ろ過効率の経時的低下が小さい。さらに本発明の分離膜複合体は優れた機械的強度も有するものである。そして、本発明の分離膜は、本発明の分離膜の製造方法により製造できる。
次に、本発明を実施するための最良の形態について、図を参照しながら説明するが、本発明の範囲はこの形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
図1は、本発明の分離膜複合体の一部を示す断面図である(図1の右端、左端は、分離膜複合体が、右端、左端の、それぞれ、さらに右側、左側にも連続していることを表す。図2についても同じである。)。図中、1は分離膜であり、2は多孔質体の基材であり、分離膜1と多孔質体の基材2により分離膜複合体3が形成されている。分離膜1は、樹脂製の薄膜1aにより構成されるが、貫通孔1bを有している。貫通孔1bは、有機マイクロバルーンの破壊により生じた空洞により形成されているので、その内部はストレートな形状であり屈曲や凹凸を有しない。
多孔質体の基材2は、分離膜複合体の機械的強度を付与するために、通常分離膜1より厚い。又、多孔質体の基材2は、ろ過効率を低下させないため、分離膜1の、貫通孔1bの径より大きな径の貫通孔を有する。ただし、図1及び後述の図2中では、この貫通孔の図示は省略されている。
図1の例では、分離膜1は、多孔質の基材2の一方の表面のみに有り、多孔質の基材2に固定され支持されているが、多孔質の基材の両表面に分離膜を有する場合、2枚の多孔質の基材間に分離膜が挟持されている場合も、本発明の分離膜複合体である。
[分離膜複合体の製造方法]
次に本発明の分離膜複合体の製造方法の一例を、図3に基づき説明する。好ましくは、塗料として、製膜性を有する樹脂の分散液、より具体的には、水に熱可塑性フッ素樹脂粒子を分散させたフッ素樹脂ディスパージョンを用いる。又好ましくは、多孔質の基材として、延伸フッ素樹脂多孔質体を用いる。
次に本発明の分離膜複合体の製造方法の一例を、図3に基づき説明する。好ましくは、塗料として、製膜性を有する樹脂の分散液、より具体的には、水に熱可塑性フッ素樹脂粒子を分散させたフッ素樹脂ディスパージョンを用いる。又好ましくは、多孔質の基材として、延伸フッ素樹脂多孔質体を用いる。
先ず、フッ素樹脂ディスパージョンに有機マイクロバルーンを配合して塗料を調整する。図3中のS1で示す工程である。
フッ素樹脂ディスパージョンとしては、PTFE、PVDF、PFA等の粉末を、水等の水系分散媒中に分散してなるものが使用できる。中でも、PTFEを主体とするフッ素樹脂からなるフッ素樹脂ディスパージョンは、耐薬品性、耐熱性が特に優れているので好ましい。
PTFE粉末を主体とし、これと熱可塑性フッ素樹脂粉末との混合物を分散媒中に分散したフッ素樹脂ディスパージョンも用いることができる。又、PTFE、PVDF又はPFA等と、フッ素樹脂エラストマー、柔軟エポキシ樹脂等から選ばれるエラストマーの混合物を分散媒中に分散したフッ素樹脂ディスパージョンも用いることができる。フッ素樹脂ディスパージョンには、その分散性を向上させるために、さらに、水溶性ポリマーや、潤滑剤としての陰イオン性界面活性剤を加えることもできる。
フッ素樹脂ディスパージョン中のフッ素樹脂粉末の含有量は、20重量%〜70重量%の範囲が好ましい。フッ素樹脂ディスパージョンとしては、旭硝子社製のAD911等の市販品を用いることができる。
有機マイクロバルーンは、中空又は中実の球形粒子であるが、中空の有機マイクロバルーンとは、中空マイクロスフィア(Microsphere)の一種であり、例えば、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂;ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレンなどの熱可塑性樹脂;ゴムなどの有機高分子材料から形成された中空の球状微粒子を挙げることができる。
有機マイクロバルーンは、樹脂膜の形成後、焼結等により破壊され、破壊された後に残った空洞が分離膜の孔となる。そこで、焼結の工程前では破壊されないことが望まれる。従って、樹脂膜の形成段階で乾燥や樹脂硬化のための加熱等がある製造方法に用いる場合は、これらにより破壊されない程度の耐熱性が望まれる。
有機マイクロバルーンは、特別に調製してもよいが、市販品を使用することもできる。市販品としては、マツモトマイクロスフェアー(松本油脂製薬社製:F−80SED、M−201)、フェノールマイクロバルーン(ユニオンカーバイド社製:BJO−0840)、マイクロバルーン(サランマイクロスフィア社製)等が挙げられる。
市販の有機マイクロバルーンの径は、通常、1μm〜200μm程度であるが、本発明では、微細な孔を形成するため、径が10μm以下、望ましくは5μm以下程度のものが主に用いられる。
フッ素樹脂ディスパージョン中の有機マイクロバルーンの配合割合は、有機マイクロバルーンと樹脂の合計体積に対して、通常、5〜60体積%、好ましくは10〜50体積%、より好ましくは15〜45体積%である。
フッ素樹脂ディスパージョンに有機マイクロバルーンを分散した塗料を調整した後には、多孔質の基材2の表面に、前記塗料を塗布する。図3中のS2で示す工程である。
多孔質の基材として用いられている延伸フッ素樹脂多孔質体は、フッ素樹脂粒子の製膜、焼結等により形成された無孔質のフッ素樹脂を延伸して得ることができる。延伸フッ素樹脂多孔質体としては、ポアフロン(登録商標:住友電工社製)等の市販品を用いることができる。
延伸フッ素樹脂多孔質体を構成するフッ素樹脂としては、PTFE、PVDF、PFA等が使用できるが、中でも、PTFEを主体とするフッ素樹脂は、耐薬品性、耐熱性が特に優れているので好ましい。延伸フッ素樹脂多孔質体は、後述の有機マイクロバルーンを破壊するための焼結工程で加熱されるので、この加熱に耐えられる耐熱性が求められる。
延伸フッ素樹脂多孔質体の厚さは、分離膜複合体の機械的強度を所望の値とする厚さが求められる。ただし、機械的強度は、延伸フッ素樹脂多孔質体の気孔率等により変動するので、好ましい厚さの具体的範囲は特に限定されない。
多孔質の基材2の表面に前記塗料を塗布する前に、好ましくは、多孔質の基材2と分離膜1を固定するための接着剤や粘着剤が、多孔質の基材2の表面に塗布され、塗布された接着剤や粘着剤の上に塗料が塗布される。接着剤や粘着剤として、溶剤可溶性又は熱可塑性のフッ素樹脂、フッ素ゴムを使用すれば、フッ素樹脂からなる分離膜1や多孔質の基材2の耐熱性や耐薬品性を生かせる用途に使用することができるのでより好ましい。
多孔質の基材2の表面に、フッ素樹脂ディスパージョンに有機マイクロバルーンを配合した塗料を塗布した次には、乾燥によりフッ素樹脂ディスパージョンの水系分散媒を除去する工程が行われる。図3中のS3で示す工程である。
図2は、この乾燥後の様子を示す断面図である。図中、1a'は、フッ素樹脂ディスパージョンを乾燥後、焼結前のフッ素樹脂粒子からなる膜であり、1cは有機マイクロバルーンである。図により示されるように、この例における有機マイクロバルーン1cの径(直径)は、膜1a'の厚さより大きい。
乾燥の工程(S3)の後、焼結が行われる。そして、焼結により、有機マイクロバルーンを破裂させて破壊し、破壊後の空洞が貫通孔となり、孔形成がされる。図4中のS4で示す工程である。
前記の乾燥の工程(S3)を行わずに、この焼結を行ってもよい。この場合、焼結の段階でフッ素樹脂ディスパージョンの水系分散媒の除去がされる。焼結により、フッ素樹脂ディスパージョン中に含まれていたフッ素樹脂粒子が融着して、樹脂膜1aが形成される。そこで焼結は、フッ素樹脂粒子が互いに融着する温度、PTFEを用いた場合は、300℃以上で熱処理される。
なお前記の説明は、塗料としてフッ素樹脂ディスパージョンを用い、多孔質の基材として延伸フッ素樹脂多孔質体を用いた例により行ったが、フッ素樹脂以外の樹脂を使用してもよい。例えば、製膜性を有する樹脂溶液を、分離膜を形成するための塗料として使用することもできる。
使用する樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、多孔質の基材上に有機マイクロバルーンを含む塗料を塗布した後、その樹脂の硬化温度で熱処理して製膜する。熱処理温度が低く有機マイクロバルーンが十分破裂しない場合は、破裂せずに残った有機マイクロバルーンを溶剤で溶かして孔を形成してもよい。
1 分離膜
1a 樹脂膜
1b 貫通孔
1c 有機マイクロバルーン
2 多孔質の基材
3 分離膜複合体
1a 樹脂膜
1b 貫通孔
1c 有機マイクロバルーン
2 多孔質の基材
3 分離膜複合体
Claims (7)
- 有機マイクロバルーンが分散された塗料の製膜により形成された樹脂膜からなり、
前記樹脂膜が、前記有機マイクロバルーンを破壊して形成された孔を有する多孔質膜であることを特徴とする分離膜。 - 前記塗料が、製膜性を有する樹脂溶液又は製膜性を有する樹脂の分散液からなることを特徴とする請求項1に記載の分離膜。
- 前記分離膜の厚みが、前記有機マイクロバルーンの径より小さいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の分離膜。
- 多孔質体の基材、及び前記基材の少なくとも一方の表面上に形成された請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の分離膜、を有することを特徴とする分離膜複合体。
- 前記分離膜が、フッ素樹脂膜であり、かつ多孔質体の基材が、延伸フッ素樹脂多孔質体であることを特徴とする請求項4に記載の分離膜複合体。
- 有機マイクロバルーンが分散された塗料を製膜し、有機マイクロバルーンが含有された樹脂膜を形成する製膜工程、及び
前記樹脂膜中の、前記有機マイクロバルーンを破壊して前記樹脂膜中に貫通孔を形成する孔形成工程、を有することを特徴とする分離膜の製造方法。 - 前記塗料が、水系分散媒中にフッ素樹脂粉末を分散させたフッ素樹脂ディスパージョンであり、
前記製膜工程が、フッ素樹脂ディスパージョンの膜の乾燥及びフッ素樹脂粉末の焼結により行われ、
有機マイクロバルーンが、前記焼結により破壊されることを特徴とする請求項6に記載の分離膜の製造方法。
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