JP2011055743A - カタラーゼの分析方法およびカタラーゼ分析用キット - Google Patents

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Abstract

【課題】検査試料中に含まれる皮膚カタラーゼを即時・簡便に分析できる方法およびそのためのキットを提供する。
【解決手段】テープストリッピング法およびケミカルピーリング法から選ばれる少なくともいずれかの方法によってヒトの皮膚から検査試料を採取するステップと、前記検査試料と、過酸化水素を含む試薬と、酸化還元試薬を含む試験紙とを用い、検査試料に含まれるカタラーゼによる触媒作用を、酸化還元試薬によって可視光波長領域の発色反応として分析するステップとを含むカタラーゼの分析方法およびカタラーゼ分析用キット。
【選択図】図1

Description

本発明は、ヒトの皮膚から採取した検査試料中に含まれるカタラーゼを即時・簡便に分析できる方法およびカタラーゼ分析用キットに関する。
従来、皮膚のシミやシワなどの状態の評価には、画像解析や分光分析などの物理計測が一般的に用いられてきたが、物理計測ではシミやシワなどの初期段階や前兆を捉えることが難しく、これらの皮膚状態の発生予防に役立て難い。
皮膚内部における細胞レベルでの皮膚老化の指標として、抗酸化酵素であるカタラーゼが注目されている。皮膚中のカタラーゼ(以下、「皮膚カタラーゼ」)は、紫外線照射により減少し、その活性は年齢により減少する傾向があることが知られている(たとえば、Lieveke Hellemans et al., "Antioxidant Enzyme Activity in Human Stratum Corneum Shows Seasonal Variation with an Age-Dependent Recovery", The Society for Investigative Dermatology, Inc., Vol. 120, No.3, (2003), p.434-439(非特許文献1)を参照。)。つまり、皮膚中のカタラーゼを定量できれば、皮膚の角シミやシワなどの指標になると考えられる。
カタラーゼは、過酸化水素という低分子量でありふれた物質を基質としているので、生体計測よりも、むしろ産業分野で過酸化水素の濃度の分析に利用されてきており、その分析原理は確立されている。しかしながら、皮膚から採取した試料中における皮膚カタラーゼ濃度はそれほど高くなく、皮膚カタラーゼを即時・簡便に分析できるキット、センサは未だ開発されていない。
生体計測用としては、蛍光測定法によるカタラーゼ定量キット(Fluorecent Catalase Detection Kit、Cell Technology Inc.製)が市販されているが、前処理等も含めて分析に数時間が必要である。これは、図5に模式的に示すような反応原理で生成された蛍光基質であるレソルフィン(Resorufin、C127NO3)を、励起波長530〜571nm、測定波長590〜600nmで定量することで、あらゆる生体試料に含まれるカタラーゼを、高感度に分析するものである。
また、特開2000−236897号公報(特許文献1)には、(a)カタラーゼ様酵素と試料中のカタラーゼ様酵素の阻害物質とを接触させる工程;(b)過酸化水素とカタラーゼ様酵素を反応させる工程;および(c)過酸化水素を光学的に測定する工程;を含む、試料中のカタラーゼ様酵素の阻害物質の測定方法が開示されている。
特開2000−236897号公報
Lieveke Hellemans et al., "Antioxidant Enzyme Activity in Human Stratum Corneum Shows Seasonal Variation with an Age-Dependent Recovery", The Society for Investigative Dermatology, Inc., Vol. 120, No.3, (2003), p.434-439
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、検査試料中に含まれる皮膚カタラーゼを即時・簡便に分析できる方法およびそのためのキットを提供することである。
本発明のカタラーゼの分析方法は、テープストリッピング法およびケミカルピーリング法から選ばれる少なくともいずれかの方法によってヒトの皮膚から検査試料を採取するステップと、前記検査試料と、過酸化水素を含む試薬と、酸化還元試薬を含む試験紙とを用い、検査試料に含まれるカタラーゼによる触媒作用を、酸化還元試薬によって可視光波長領域の発色反応として分析するステップとを含むことを特徴とする。
本発明の分析方法において、検査試料を採取するステップは、溶剤を適用したテープストリッピング法によって、ヒトの皮膚の採取深度を規定して採取することが好ましい。
本発明の分析方法において、前記分析するステップが、前記検査試料と、前記過酸化水素を含む試薬とを一定時間混合するステップと、前記検査試料と前記過酸化水素を含む試薬との混合液を前記試験紙に含まれる酸化還元試薬と反応させるステップとを含むことが好ましい。
本発明の分析方法において、前記酸化還元試薬が3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンであることが、好ましい。
本発明はまた、テープストリッピング法およびケミカルストリッピング法から選ばれる少なくともいずれかの方法によってヒトの皮膚から検査試料を採取するための手段と、過酸化水素を含む試薬と、酸化還元試薬を含む試験紙と、ヒトの皮膚から採取した検査試料を、前記過酸化水素を含む試薬と混合させた混合液と試験紙に含まれる酸化還元試薬との可視光波長領域の発色反応を光学的に分析する手段とを備えるカタラーゼ分析用キットについても提供する。
本発明によれば、検査試料中に含まれる皮膚カタラーゼを即時・簡便に分析できる方法およびそのためのキットを提供することができる。
本発明のカタラーゼの分析方法の反応原理を模式的に示す図である。 頬上、首、肩の3ヶ所におけるカタラーゼ活性を、1枚目、2枚目の角質採取テープで比較して示すグラフである。 頬上、首、肩の3ヶ所における総タンパク量に対するカタラーゼ活性(CAT/TP(U/mg))を、1枚目、2枚目の角質採取テープおよびその平均で比較して示すグラフである。 実験の結果得られたカタラーゼ活性と吸光度との関係を示すグラフである。 蛍光測定法による従来のカタラーゼ定量キットの反応原理を模式的に示す図である。
<カタラーゼの分析方法>
本発明のカタラーゼの分析方法は、テープストリッピング法およびケミカルピーリング法から選ばれる少なくともいずれかの方法によってヒトの皮膚から検査試料を採取するステップと、前記検査試料と、過酸化水素を含む試薬と、酸化還元試薬を含む試験紙とを用い、検査試料に含まれるカタラーゼ(皮膚カタラーゼ)による触媒作用を、酸化還元試薬によって可視光波長領域の発色反応として分析するステップとを含むことを特徴とする。このような本発明の方法によれば、従来の蛍光測定法によるカタラーゼ定量キットとは異なり、前処理なども含めた分析に数時間も必要とせず、検査試料中に含まれる皮膚カタラーゼを即時・簡便に分析できるようになる。
(検査試料を採取するステップ)
本発明の分析方法において分析に供する皮膚カタラーゼを含む検査試料は、ヒトの皮膚、特にはヒトの皮膚の角質から採取された試料を用いる。試料を採取するヒトの身体の部位は、たとえば腕、顔、手、首などの皮膚が露出している部位であれば特に制限はされないが、最も露出時間が長く、光ストレスを受けやすいことから、腕または顔が好ましい。本発明における検査試料を採取するステップは、テープストリッピング法およびケミカルピーリング法から選ばれる少なくともいずれかの方法によってヒトの皮膚から検査試料を採取する。
テープストリッピング法とは、粘着剤を表面に塗布したシートをヒトの皮膚に貼着し、たとえば一定圧力で押すことができる治具で押さえた後、これを剥離し、粘着剤への付着物を回収することで、ヒトの皮膚から検査試料を採取する方法である。このようなシートの好適な具体例としては、D−Squame D100(Cuderm社製)(直径22mm×厚み0.1mm程度)を挙げることができる。テープストリッピング法では、ほぼ1層ずつ角質を採取できるよう接着強度を調整することで、テープストリッピング法による検査試料の採取を繰り返し行えば、皮膚の所望の採取深度(皮膚表皮(表層側)から奥行き方向(深層側)に向かった深さ)の層の角質のみを検査試料として採取できるという利点がある。
一方、ケミカルピーリング法とは、化学薬品を皮膚に塗布することによって、角質細胞の接着を弱めたり、角質を軟化・溶解することで、ヒトの皮膚を剥離する方法である。このような溶剤(ケミカルピーリング剤)として、角質細胞の接着を弱めるためには、グリコール酸、乳酸などのAHA(α−hydroxy acids)、角質を軟化・溶解するためにはサリチル酸、トリクロロ酢酸などが知られており、具体的には「ノブ セルニュー」シリーズ(常盤薬品工業(株)製)、「ジョルビ」シリーズ((株)ケイセイより販売)などが挙げられる。皮膚科学的には、治療に用いる場合のガイドラインが、レベルI:最浅層ピーリング(角質層)、レベルII:浅層ピーリング(表皮顆粒層からの基底層の間)、レベルIII:中間層ピーリング(表皮と真皮乳頭層の一部から全部)、レベルIV:深層ピーリング(表皮と真皮乳頭層および網状層に及ぶ深さ)の4段階に分類されている。このようなケミカルピーリング法は、数層の角質をまとめて採取する場合に効率的であり、そのような場合に特に適している。
ここで、ヒトの角質層は20層前後あり、奥行き方向によってカタラーゼ活性が変化し、角層の採取深度が皮膚内部に近づくほど高くなる。また、カタラーゼ活性は、急性の光ストレスでは上昇することもあるが、慢性の皮膚の光ストレスでは低下する。カタラーゼは抗酸化酵素であり、酸化ストレスを除去する機能を担っているので、その活性の低下は、シミやシワなどの老化をもたらす。したがって、本発明における検査試料を採取するステップでは、ヒトの皮膚の採取深度を規定して採取することが好ましい。この場合、採取深度が規定できる採取方法として生体安全性に優れた、たとえば上述したような溶剤を適用したテープストリッピング法が特に適しており、正確な指標として用いるために有効である。
本発明における検査試料は、通常、採取された試料を抽出液に溶解させた液体試料として調製される。この抽出液としては、たとえば、酢酸緩衝液中にTritonX−100を0.1%含有させた、下記の表1に示す組成(100mLあたり)を有するものが好適に用いられる。表1に示す例の酢酸緩衝液では、濃度を低濃度(たとえば4mM)にすることで、その後の濃縮処理による影響を受けにくくしている。また、表1に示す例の酢酸緩衝液は、pHを皮膚カタラーゼの最適pHである5にしている。
Figure 2011055743
(カタラーゼを分析するステップ)
本発明の方法では、次に、前記検査試料と、過酸化水素を含む試薬と、酸化還元試薬を含む試験紙とを用い、検査試料に含まれるカタラーゼによる触媒作用を、酸化還元試薬によって可視光波長領域の発色反応として分析する。なお、本発明において、「可視光波長領域の発色反応」とは、ヒトが目視で認識できる発色反応を意味し、このような可視光波長領域の発色反応を利用することで、定性、半定量分析によるマス・スクリーニングの応用も可能となる。
ここで、図1は、本発明のカタラーゼの分析方法の反応原理を模式的に示す図である。本発明においては、まず、図1中、式(1)で示されるように、試薬に含まれる規定量の過酸化水素を、検査試料に含まれる皮膚カタラーゼと酵素反応させる。カタラーゼは、過酸化水素を水と酸素に分解する化学反応を触媒する酵素なので、残留した過酸化水素の量は、検査試料に含まれる皮膚カタラーゼの量(濃度、活性)に反比例する。そこで、図1中、式(2)で示されるように、式(1)の反応後に残留した過酸化水素を、試験紙に含まれる酸化還元試薬と反応させ、可視光波長領域で発色させる(たとえば無色から青緑色)ことで、その発色濃度から検査試料に含まれる皮膚カタラーゼを定量的に分析できるというものである。
また本発明に用いられる過酸化水素を含む試薬において、溶媒としては、従来公知の適宜の生化学用の緩衝液を好適に用いることができ、特に制限されるものではない。なお、過酸化水素は安定性が低いため、試薬中の過酸化水素濃度はできるだけ低くすることが好ましく、また、この過酸化水素濃度が分析精度に影響を与えないように、他のパラメータで調整することが好ましい。
本発明におけるカタラーゼを分析するステップは、前記検査試料と、前記過酸化水素を含む試薬とを一定時間混合するステップと、前記検査試料と前記過酸化水素を含む試薬との混合液を前記試験紙に含まれる酸化還元試薬と反応させるステップとを含むことが好ましい。前記検査試料と、前記過酸化水素を含む試薬とを一定時間混合するステップでは、時間管理が最も重要であるため、2つの液体をそれぞれ異なる媒質(紙など)に染み込ませた後、それらを重ね合わせる転写方式を用いることで、初期時間0秒を正確に規定でき、好ましい。
検査試料と試薬とを混合させる時間は、定性検査、半定量検査、定量検査などの検査目的、検査試料の量や測定レンジ、求められる分析精度によって変わり得るものであるが、1分間〜30分間の範囲内とすることが現実的である。
続くステップでは、前記検査試料と前記過酸化水素を含む試薬との混合液を前記試験紙に含まれる酸化還元試薬と反応させる。ここで、酸化還元試薬としては、試薬中の過酸化水素により酸化されて可視光波長領域での発色反応をするものであればよく、たとえば特開2000−236897号公報に記載されたものなどを特に制限されずに用いることができるが、下記化学式で示される構造を有する3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMBZ)を酸化還元試薬として特に好適に用いることができる。酸化還元試薬としてTMBZを用いる場合、過酸化水素による酸化により、無色から青緑色の可視光波長領域での発色反応が起こる。
Figure 2011055743
酸化還元試薬の前記発色反応から、たとえば光学系測定装置を用いて吸光度を測定することで、検査試料に含まれる皮膚カタラーゼを分析することができる。なお、光学系測定装置は、特に制限なく従来公知の適宜のものを用いることができる。吸光度を測定する波長は、用いる酸化還元試薬によって決まり、たとえば酸化還元試薬としてTMBZを用いた場合、具体的には300nmを好適な例として挙げることができる。
本発明のカタラーゼの分析方法は、検査試料に含まれる総タンパク量についても皮膚カタラーゼと同時に分析することが好ましい。実験例1にて後述するように、皮膚から採取される皮膚カタラーゼ量は、検体にバラツキがあり、皮膚カタラーゼおよび総タンパク量を同時に分析することで、皮膚カタラーゼのみを分析する場合と比較して、定量性を高めることができるためである。総タンパク量の分析は、たとえば、総タンパク質定量キット(DCプロテインアッセイ、Bio−Rad Laboratories Inc.製)を用いたLowry法によって行うことができる。
<カタラーゼ分析用キット>
本発明はまた、テープストリッピング法およびケミカルストリッピング法から選ばれる少なくともいずれかの方法によってヒトの皮膚から検査試料を採取するための手段と、過酸化水素を含む試薬と、酸化還元試薬を含む試験紙と、ヒトの皮膚から採取した検査試料を前記過酸化水素を含む試薬と混合させた混合液と試験紙に含まれる酸化還元試薬との可視光波長領域の発色反応を光学的に分析する手段とを備える、カタラーゼ分析用キットについても提供する。このような本発明のキットにより、上述した本発明のカタラーゼの分析方法を好適に行うことができる。
本発明のキットにおいて、検査試料を採取するための手段および過酸化水素を含む試薬は、本発明の分析方法において上述した好適なものをそれぞれ好適に用いることができる。また本発明のキットにおいて、酸化還元試薬を含む試験紙は、たとえば市販のろ紙に酸化還元試薬の溶液(好ましい例として、たとえばTMBZのエタノール溶液)を塗布し、乾燥させて作製されたものが好適に用いられ、光学的に分析する手段としては、前記検査試料を前記過酸化水素を含む試薬と混合させた混合液と、試験紙に含まれる酸化還元試薬との可視光波長領域の発色反応を光学的に分析し得るものであれば、吸光度を測定するために用いられる従来公知の適宜の光学系測定装置を特に制限なく用いることができる。
上述したような本発明のキットは、たとえば、使い捨て式のテストチップとして実現されてもよい。本発明のキットがこのように実現されれば、これをチェッカーとして角層細胞とキメを写し取り、肌情報をユーザーへフィードバックすることに寄与するなど化粧品分野での応用も可能となるものと考えられる。
また上述したような本発明のキットは、使い捨て式の電気化学式バイオセンサとして実現されてもよい。本発明のキットがこのように実現されれば、非侵襲的な皮膚疾患のセンシング技術として、医療分野でも応用できるものと考えられる。
以下、実験例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
<実験例1:皮膚カタラーゼの抽出および分析>
皮膚の角質に含まれる皮膚カタラーゼの活性を分析するために、直径22mmで円形状の角質採取テープ(Standard D−Squame D100、Cuderm社製)を用いたテープストリッピング法によって角質を採取し、皮膚カタラーゼの活性およびタンパク質の抽出と分析を行った。
被検者は、男性被検者4名(年齢22.8±2.9歳、平均±標準偏差)とし、角質採取部位は、頬上、首、肩の3ヶ所とした。被検者の角質採取部位に1枚目の角質採取テープを30秒間貼付してから剥離し、1.5mlのチューブに回収した。同じ部位に、新たな2枚目の角質採取テープを再度30秒間貼付してから剥離し、1.5mlのチューブに回収した。このようにして、1枚目の角質採取テープで表層側の角質、2枚目の角質採取テープで深層側の角質を採取した。これらのチューブそれぞれに、抽出液(0.1% Triton X―100含有酢酸緩衝液(pH5.0、4mM))を750μl加え、超音波洗浄器(2210DTH、ヤマト科学(株)製)を用いて37℃で30分間超音波処理を行った。その後、遠心エバポレータ(CE1、日立工機(株)製)を用いて5倍に濃縮した。これを検査試料とした。
次に、検査試料に含まれる皮膚カタラーゼの活性(CAT、U/ml)をカタラーゼ定量キット(Fluorecent Catalase Detection Kit、Cell Technology Inc.製)を用いた蛍光測定法によって分析した。また、採取量の影響を考慮するために、検査試料に含まれる総タンパク量(TP、mg/ml)を、A試薬、B試薬、S試薬から構成される総タンパク質定量キット(DCプロテインアッセイ、Bio−Rad Laboratories Inc.製)を用いたLowry法によって以下の手順で分析した。まず、検査試料を37℃で4時間遠心エバポレーターにかけ、5倍濃縮した後、96ウェルマイクロプレートに20μl入れた。これにA試薬とS試薬を混合し、10μl加えた後、B試薬を80μl加え、室温で30分インキュベートした。インキュベート後の吸光度をマイクロプレートリーダー(1420 ARVO MX、PerkinElmer社製)で測定した。
(結果)
CATの平均値は、頬上が1.73±1.41U/ml、首が0.34±0.18U/ml、肩が0.58±0.56U/ml(平均±標準偏差)であり、CATの値は0.04〜4.08U/mlの範囲に分布していた。一方、TPの平均値は、頬上が0.06±0.03mg/ml、首が0.04±0.02mg/ml、肩が0.03±0.03mg/ml(平均±標準偏差)であり、TPの数値は0.01〜0.09mg/mlの範囲に分布していた。変動係数CV値は56.2%であり、被検者ごとに大きなバラツキが観察された。
ここで図2は、頬上、首、肩の3ヶ所におけるカタラーゼ活性を、1枚目、2枚目の角質採取テープで比較して示すグラフである。CATの深さによる相違は、頬上は1枚目が1.62±1.66U/ml、2枚目が1.84±1.36U/ml、首は1枚目が0.32±0.11U/ml、2枚目が0.37±0.24U/ml、肩は1枚目が0.41±0.34U/ml、2枚目が0.75±0.73U/mlとなり、全ての部位で表層(1枚目)よりも深層(2枚目)が高い値を示した。
また、CATをTPで除算した単位タンパク量当りのカタラーゼ活性(CAT/TP、U/mg)を算出した。CAT/TPの平均値は、頬上が30.61±25.00U/mg、首が8.39±2.86U/mg、肩が17.78±9.35U/mg(平均±標準偏差)であった。また、CAT/TPの数値は、3.45〜85.70U/mgの範囲に分布していた。
ここで図3は、頬上、首、肩の3ヶ所における総タンパク量に対するカタラーゼ活性(CAT/TP(U/mg))を、1枚目、2枚目の角質採取テープおよびその平均で比較して示すグラフである。CATをTPで除算した単位タンパク量当りのカタラーゼ活性(CAT/TP、U/mg)において、その深さによる相違は、頬上は1枚目が22.68±15.31U/ml、2枚目が38.55±32.50U/ml、首は1枚目が8.06±2.84U/ml、2枚目が8.72±4¥3.28U/ml、肩は1枚目が16.69±11.40U/ml、2枚目が18.86±8.42U/mlとなり、この場合でも全ての部位で表層(1枚目)よりも深層(2枚目)が高い値を示した。
以上より、角質採取テープを用いて非侵襲的に採取、抽出した皮膚カタラーゼの活性を分析したところ、テープストリッピング法では採取される角質タンパク量のバラツキが観察され、定量性を高めるにはカタラーゼと総タンパク量の同時分析が望ましいと考えられた。また、表層より深層が高値をとることが示されたことから、侵襲度が低い範囲内でできるだけ深層までの角質をまとめて採取できれば、CATをより変化率の高いバイオマーカーとして利用できることが示された。
<実験例2:カタラーゼの分析>
ろ紙(50×5×0.25mm3)に10mM TMBZ含有エタノール溶液を塗布し、10分間乾燥させて、カタラーゼ分析用試験紙の作製した。
今回の実験では、カタラーゼの濃度は、0U/ml、2.0U/ml、4.0U/mlの3条件とした。カタラーゼの0.1% Triton X―100含有酢酸緩衝液(pH5.0、4mM)の溶液と10%過酸化水素を同量混合し、30分間反応させた。反応後の混合液を上記試験紙に30μlずつ滴下し、20分間乾燥させた。その後、300nmにおける吸光度を、市販のLEDと受光素子を用いて試作した光学系測定装置を用いて測定した。
図4は、実験の結果得られたカタラーゼ活性と吸光度との関係を示すグラフであり、縦軸は吸光度(OD300)、横軸はカタラーゼ活性(U/ml)である。各混合液を滴下した試験紙の吸光度を5回測定した結果、変動係数CV値は、2.15〜2.28%と非常に低い値を示した。したがって、ヒトの皮膚から採取した検査試料と、過酸化水素を含む試薬と、酸化還元試薬を含む試験紙とを用い、検査試料に含まれるカタラーゼによる触媒作用を、酸化還元試薬によって可視光波長領域の発色反応として分析することが可能であり、また、当該方法に好適に用いることができる再現性に優れた試験紙を作製できたと考えられた。
今回開示された実施の形態および実験例は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内で全ての変更が含まれることが意図される。
ヒトの角質に含まれる皮膚カタラーゼの簡便・迅速な分析が実現されれば、皮膚の光ストレスの定量評価に有用である。また、本技術は、皮膚カタラーゼだけでなく他の皮膚酵素の迅速分析にも寄与すると考えられ、たとえば本発明のキットを使い捨て式のテストチップとして実現すれば、これをチェッカーとして角層細胞とキメを写し取り、肌情報をユーザーへフィードバックすることに寄与するなど化粧品分野での応用も可能であり、また、本発明のキットを使い捨て式の電気化学式バイオセンサとして実現すれば、非侵襲的な皮膚疾患のセンシング技術として、医療分野でも応用できるものと考えられる。

Claims (5)

  1. テープストリッピング法およびケミカルピーリング法から選ばれる少なくともいずれかの方法によってヒトの皮膚から検査試料を採取するステップと、
    前記検査試料と、過酸化水素を含む試薬と、酸化還元試薬を含む試験紙とを用い、検査試料に含まれるカタラーゼによる触媒作用を、酸化還元試薬によって可視光波長領域の発色反応として分析するステップとを含む、カタラーゼの分析方法。
  2. 検査試料を採取するステップが、溶剤を適用したテープストリッピング法によって、ヒトの皮膚の採取深度を規定して採取することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記分析するステップが、
    前記検査試料と、前記過酸化水素を含む試薬とを一定時間混合するステップと、
    前記検査試料と前記過酸化水素を含む試薬との混合液を前記試験紙に含まれる酸化還元試薬と反応させるステップとを含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記酸化還元試薬が3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. テープストリッピング法およびケミカルストリッピング法から選ばれる少なくともいずれかの方法によってヒトの皮膚から検査試料を採取するための手段と、
    過酸化水素を含む試薬と、
    酸化還元試薬を含む試験紙と、
    ヒトの皮膚から採取した検査試料を、前記過酸化水素を含む試薬と混合させた混合液と試験紙に含まれる酸化還元試薬との可視光波長領域の発色反応を光学的に分析する手段とを備える、カタラーゼ分析用キット。
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