JP2011047004A - 高周波誘導加熱装置用コイルとその製造方法 - Google Patents
高周波誘導加熱装置用コイルとその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2011047004A JP2011047004A JP2009196702A JP2009196702A JP2011047004A JP 2011047004 A JP2011047004 A JP 2011047004A JP 2009196702 A JP2009196702 A JP 2009196702A JP 2009196702 A JP2009196702 A JP 2009196702A JP 2011047004 A JP2011047004 A JP 2011047004A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- master
- coil
- power transmission
- transmission component
- frequency induction
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Classifications
-
- Y—GENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
- Y02—TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
- Y02P—CLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
- Y02P10/00—Technologies related to metal processing
- Y02P10/25—Process efficiency
Abstract
【課題】電気鋳造における金属皮膜の膜厚がマスタの部位によらずできるだけ均一となるようにし、電鋳後の仕上げ加工を低減する。
【解決手段】コイル1の通水部2の形状に合わせて成形した電気鋳造用のマスタ3に、このマスタ3と所定間隔gを保ちつつ樹脂製の制限部材4を取り付ける。そして、この制限部材4を取り付けた状態のまま、このマスタ3を電気めっき槽に浸漬し、マスタ3上に金属皮膜を形成する。このとき、制限部材4がマスタ3の表面を電気的に遮蔽してマスタ3近傍の電流密度を下げて、皮膜形成速度を低下させるとともに、さらに皮膜形成が進んだ場合に、この皮膜と制限部材4が直接当接して前記所定間隔g以上に皮膜が形成するのを防止する。このため、皮膜形成が完了して制限部材4を取り外した後に、この制限部材4を設けた箇所においては仕上げ加工を行う必要がなく、この仕上げ加工に要するコストを削減することができる。
【選択図】図1
【解決手段】コイル1の通水部2の形状に合わせて成形した電気鋳造用のマスタ3に、このマスタ3と所定間隔gを保ちつつ樹脂製の制限部材4を取り付ける。そして、この制限部材4を取り付けた状態のまま、このマスタ3を電気めっき槽に浸漬し、マスタ3上に金属皮膜を形成する。このとき、制限部材4がマスタ3の表面を電気的に遮蔽してマスタ3近傍の電流密度を下げて、皮膜形成速度を低下させるとともに、さらに皮膜形成が進んだ場合に、この皮膜と制限部材4が直接当接して前記所定間隔g以上に皮膜が形成するのを防止する。このため、皮膜形成が完了して制限部材4を取り外した後に、この制限部材4を設けた箇所においては仕上げ加工を行う必要がなく、この仕上げ加工に要するコストを削減することができる。
【選択図】図1
Description
この発明は、自動車用動力伝達部品の回転軸等に熱処理を施すための高周波誘導加熱用コイルとその製造方法に関する。
自動車用動力伝達部品であるハブ輪、ハブ外輪、等速ジョイント等の構成部品は、鉄鋼等の金属材料から構成され、その材料特性(硬度、靭性、機械強度等)を高めるために、熱処理が行われることが多い。この熱処理方法の一つとして、高周波誘導加熱用コイル(以下、適宜、単に「コイル」と称する。)を用いる方法がある。この方法は、図2、図3の(a)及び(b)に示すようにコイル1を被熱処理部品Pの被熱処理部の外形に沿うように形成し、このコイル1内に、被熱処理部品Pを差込み、このコイル1に高周波電流を付与してその被熱処理部のみを局所加熱するものである。このようにコイル1を被熱処理部品Pの外形に沿わせることで、この被熱処理部における発熱量がほぼ等しくなって、この被熱処理部の加熱が均一になされる。
このコイル1には銅等からなる金属の管が用いられる。そして、この管内に形成した通水部2に水等の冷媒を流通させて、高周波電流による自己発熱、及び、被熱処理部からの輻射熱によってコイル1が高温になるのを防止している。
従来、このコイル1は、複数の銅でできたパーツを組み合わせるとともに、各継ぎ目に銀ロウ等のロウ付け処理を行うことによって製造されていた(例えば、下記特許文献1及び2を参照)。この場合、コイル1の発熱と、冷媒による冷却とによって、コイル1に局所的な温度勾配が生じ、熱応力が発生することがあった。そして、このコイル1に熱応力が繰り返し負荷されると、前記パーツの継ぎ目で応力集中が生じ、破損に至る恐れがあった。
そこで、出願人は本願出願時点で未公開(特願2008−285292号)ながら、このコイル1の作製方法の一つとして、コイル1の通水部2の形状に対応する、電気鋳造用マスタ3(以下、適宜、単に「マスタ」と称する。)(図4(a)及び(b)を参照)を陰極として電解槽(めっき槽)の中に設け、このマスタ3に電気めっきの原理によって金属を析出させ、析出後にマスタ3のみを溶解除去することにより、通水部2を有する管状の一体コイル1を製造する方法を提案した。この方法によると、複数のパーツを組み合わせてコイル1を作製する方法と比較してその作業工程を簡便なものとし得るとともに、パーツ同士の継ぎ目がないので、継ぎ目に起因するコイル1の破断や冷媒漏れ等を防止し、コイル1の寿命を向上することができる。
前記方法は、マスタ3さえ成形できれば、複雑な形状のコイル1も比較的容易にかつ継ぎ目を形成することなく作製し得る。その反面、マスタ3が立体的三次元形状をしていることから、その部位ごとに陽極(一般的には銅陽極)からの距離が異なる等の理由により、マスタの全体に亘って均一な電流密度を得ることが難しい。このため、マスタ3の部位によって金属皮膜の膜厚がばらつき、析出処理後に仕上げ加工を施して全体の膜厚をほぼ均一に揃える必要がある。
この仕上げ加工は、被加工物が立体的形状であることから一般的な旋盤では難しく、5軸マシニング装置等の特殊な装置を必要とする。しかも、この5軸マシニング装置を用いた場合でも、加工の途中で被加工物のチャッキングをし直して被加工物の姿勢を変え、一度目のチャッキングで死角となった部分を追加加工する必要がある場合も多い。このため、加工工程が煩雑で、かつ工数を要し、コストが嵩むという問題があった。
そこで、この発明は、マスタ上に金属を析出させる際に、その膜厚がマスタの部位によらずできるだけ均一となるようにし、電鋳後の膜厚均一化のための仕上げ加工を減らすことを課題とする。
上記の課題を解決するため、この発明は、処理対象物の被熱処理部の形状に沿うように導電性材料からなるマスタを形成し、このマスタ上に電気鋳造法により金属を析出させる高周波誘導加熱用コイルの製造方法において、前記マスタを、コイルの全長に亘って形成する通水部の形状に対応して形成する第一工程と、金属皮膜が所定膜厚以上となるのを阻止する非導電性材料からなる制限部材を、前記マスタの表面から所定間隔だけ離間して設ける第二工程と、前記制限部材を設けた前記マスタをめっき液中に浸漬し、このマスタを陰極として通電し、マスタ表面に金属を析出させる第三工程と、前記析出後に、前記マスタを溶解させる第四工程から高周波誘導加熱用コイルの製造方法を構成することとした。
電気鋳造における金属の析出速度(皮膜形成速度)は、マスタの表面における電流密度の大きさに比例し、基本的には電流密度の大きさが大きいほど析出速度は大きくなる。具体的には、マスタ表面に立てた法線がマスタから離れる方向に向き、かつ、その表面が平面又は凸状面の部位(すなわち、外向きに開けた部位)では電流密度が大きく、その部位で皮膜が厚くなりやすい。
前記制限部材は、金属皮膜の成長の物理的な障壁となる。すなわち、析出が進行してこの金属皮膜と制限部材が当接すると、この制限部材とマスタの隙間の大きさ以上に金属皮膜が成長するのが阻止される。このため、この制限部材を設けた部位では、電気鋳造後にこの皮膜を研削して仕上げ加工を行う必要がなく、一連の電気鋳造の作業を簡便なものとすることができる。
前記構成においては、前記マスタの素材をアルミニウムとするのが好ましい。
このアルミニウムは融点が低く、しかも加工が容易であるため、鋳造又は母材の研削のいずれの手法でマスタを作製する場合でも、その作製が容易である。しかも、アルミニウムは両性金属であって、酸又はアルカリ溶液のいずれにも溶解するため、電気鋳造後のマスタ溶解工程を容易に行うことができる。
このアルミニウムは融点が低く、しかも加工が容易であるため、鋳造又は母材の研削のいずれの手法でマスタを作製する場合でも、その作製が容易である。しかも、アルミニウムは両性金属であって、酸又はアルカリ溶液のいずれにも溶解するため、電気鋳造後のマスタ溶解工程を容易に行うことができる。
また、前記マスタをワックスの表面に導電体を形成することによって構成するのも好ましい。
このワックスは加熱すると軟化するため、容易にマスタ形状に成形することができるとともに、電気鋳造後に加熱することによって、容易に融解除去することができる。
このワックスは加熱すると軟化するため、容易にマスタ形状に成形することができるとともに、電気鋳造後に加熱することによって、容易に融解除去することができる。
また、前記各構成においては、制限部材を樹脂製とするのが好ましい。
この制限部材は、複雑な立体形状を有するマスタの外形に沿うように形成する必要があるところ、樹脂製とすることにより、その成形を簡便かつ安価に行うことができ、絶縁材であるため電気鋳造の影響を受けない。
この制限部材は、複雑な立体形状を有するマスタの外形に沿うように形成する必要があるところ、樹脂製とすることにより、その成形を簡便かつ安価に行うことができ、絶縁材であるため電気鋳造の影響を受けない。
また、前記各構成においては、前記制限部材を、コイルの非加熱面側となる位置に設けるようにするのがより好ましい。
この制限部材をコイルに設けることにより、金属皮膜の膜厚を抑制することができるが、その膜厚制御の精度は高々数mm程度である。それに対し、被熱処理部とコイルとの隙間は、コイルによる均一な加熱を行うために高い間隔制御が要求される。このため、制限部材を設けた場合の膜厚精度は、前記隙間に要求される精度を満足しない可能性がある。そこで、この制限部材を、それほどシビアな寸法精度が要求されない非加熱面側に設け、被熱処理部と対向する側には仕上げ加工を施すことによって、所定の膜厚精度となるようにする。これにより、前記対向側における精度の高い膜厚制御と、非対向側における膜厚が過大となるのを抑制することの両立を図ることができる。
この制限部材をコイルに設けることにより、金属皮膜の膜厚を抑制することができるが、その膜厚制御の精度は高々数mm程度である。それに対し、被熱処理部とコイルとの隙間は、コイルによる均一な加熱を行うために高い間隔制御が要求される。このため、制限部材を設けた場合の膜厚精度は、前記隙間に要求される精度を満足しない可能性がある。そこで、この制限部材を、それほどシビアな寸法精度が要求されない非加熱面側に設け、被熱処理部と対向する側には仕上げ加工を施すことによって、所定の膜厚精度となるようにする。これにより、前記対向側における精度の高い膜厚制御と、非対向側における膜厚が過大となるのを抑制することの両立を図ることができる。
また前記構成においては、前記第三工程の後かつ第四工程の前に、前記制限部材を設けなかった箇所の電鋳皮膜部分のみに仕上げ加工を施し、前記制限部材を設けた箇所の電鋳皮膜には前記仕上げ加工を施さないようにすることもできる。
上述したように、非加熱面側に制限部材を設けた場合においては、その側でそれほど高い寸法精度が要求されないため、膜厚を均一にするための仕上げ加工は必ずしも行う必要はない。これに対し、制限部材を設けなかった箇所は、前記被熱処理部に対向する箇所であって、この箇所では高い寸法精度が要求される。
上述したように、非加熱面側に制限部材を設けた場合においては、その側でそれほど高い寸法精度が要求されないため、膜厚を均一にするための仕上げ加工は必ずしも行う必要はない。これに対し、制限部材を設けなかった箇所は、前記被熱処理部に対向する箇所であって、この箇所では高い寸法精度が要求される。
また、前記各構成に示した製造方法によって製造されたコイルが、自動車用動力伝達部品の回転軸を熱処理するためのものであって、この回転軸はその軸方向位置において異なる外径を有するものであり、そのコイルの管状部材を、この回転軸の外径同一部の周りに略90度の円弧を有する第1の円弧部と、この第1の円弧部に連続し、前記外径同一部の軸方向に沿う直胴部と、この直胴部に連続し、前記回転軸の径変更部に対応して外径方向に沿いつつ拡径する拡径部と、この拡径部に連続し、この拡径部の終端の径で前記回転軸周りに略180度の円弧を有する第2の円弧部とを有するとともに、これらの各部の連続体と左右対称形状の連続体を、前記第2の円弧部で連結した一体成形体とすることができる。
このコイルは、前記回転軸の外径の拡径に伴って、その内径が拡径するように構成されているため、被熱処理部におけるコイルによる磁場がほぼ等しくなる。このため、その被熱処理部の加熱が均一になされる。このコイルの形状は、回転軸の形状に合わせて適宜変更し得るものであって、例えば、「・・−直胴部−拡径部−直胴部−・・」のように同じ構成要素(ここでは直胴部)を複数箇所において使用することもできる。また、前記円弧部の円周角も適宜変更することができる。
あるいは、前記各構成に示した製造方法によって製造されたコイルが、自動車用動力伝達部品の回転軸を熱処理するためのものであって、この回転軸はその軸方向位置において外径が一定のものであり、前記管状部材が、この回転軸の周りに略90度の円弧を有する第1の円弧部と、この第1の円弧部に連続し、前記回転軸の軸方向に沿う直胴部と、この直胴部に連続し、前記回転軸周りに略180度の円弧を有する第2の円弧部とを有するとともに、これらの各部の連続体と左右対称形状の連続体を、前記第2の円弧部で連結した形状の一体成形体とすることもできる。
この場合も、上述したのと同様に、コイルの形状を、回転軸の形状に合わせて適宜変更することができる。
この場合も、上述したのと同様に、コイルの形状を、回転軸の形状に合わせて適宜変更することができる。
また、前記自動車用動力伝達部品においては、その被熱処理部の外形に沿うように形成した上述の高周波誘導加熱用コイルを用いて、所定の焼入れ温度に加熱・保持した後に、急冷することによって焼入れ処理を行うことができる。
このコイルの形状は、前記被熱処理部の形状に沿っているので、その被熱処理部の全体に亘って均一に加熱・保持を行い得る。また、このコイルは、その軸方向にこの自動車用動力伝達部品を自在に抜き差しし得るようになっているので、前記加熱・保持後に直ちにコイル外に取り出すことができる。このため、この自動車用動力伝達部品をコイル外に設けた水槽等の冷却設備に迅速に移すことができ、加熱後に急冷が必要な焼入れ処理を容易かつ確実に行い得る。
また、前記焼入れ処理に引き続いて、この自動車用動力伝達部品を再びコイル内に戻し、所定の焼戻し温度に加熱・保持した後に、所定の冷却速度で冷却することによって焼戻し処理を行うこともできる。
あるいは、この自動車用動力伝達部品を前記コイル内で所定温度に加熱・保持した後に、所定の冷却速度で除冷することによって焼鈍し処理を行うこともできる。
前記コイルは、種々の自動車用動力伝達部品に適用し得るが、特にハブ輪、等速ジョイント、又は、プロペラシャフトの処理に好ましい。
ここに列挙した部品は、いずれも回転軸を有するものであって、その回転軸の強度を高めるために部分的に外径を拡径したものが多い。このような回転軸の熱処理においても、その外径に対応して成形したコイルを用いることによって、被熱処理部の全体に亘って均一な熱処理を行い得る。
ここに列挙した部品は、いずれも回転軸を有するものであって、その回転軸の強度を高めるために部分的に外径を拡径したものが多い。このような回転軸の熱処理においても、その外径に対応して成形したコイルを用いることによって、被熱処理部の全体に亘って均一な熱処理を行い得る。
この発明によると、制限部材によって金属皮膜の成長の物理的な障壁となり、電鋳工程によって形成される金属膜厚のばらつきが小さくなるようにした。このため、電鋳後にコイルに施す仕上げ加工の作業を減らすことができ、このコイル製造における低コスト化を図ることができる。
この発明に係る高周波誘導加熱用コイルの製造方法の模式図を図1に示して説明する。
まず、コイル1の全長に亘って形成する通水部2の形状に対応する鋳型を用意し、この鋳型にアルミニウムの溶湯を流し込んで電気鋳造用のマスタ3を形成する。又は、工作機械を用いたアルミニウム母材の切削加工等により、通水部2の形状に合わせて、マスタ3を作製することもできる。
次に、このマスタ3でコイル1を作製した際に、前記処理対象物の被熱処理部と対向しない側に、マスタ3と所定間隔gを保ちつつ、樹脂からなる制限部材4を固定する(同図(a)を参照)。この所定間隔gは、電鋳皮膜の許容し得る最大膜厚とする。
さらに、この制限部材4を取り付けた状態のまま、このマスタ3を硫酸銅を主成分とする電気めっき槽に、このマスタ3を陰極、銅を陽極として浸漬し、直流電流を通電して電気めっきを行う(同図(b)を参照)。
このとき、制限部材4を設けていないマスタ3の内側は、マスタ3への通電時間とともに金属皮膜の膜厚が増大するのに対し、制限部材4を設けたマスタ3の外側は、この制限部材4によって、所定間隔gを超えて金属皮膜が形成されるのが阻止される。
電鋳工程後、制限部材4をマスタ3から取り外す。この制限部材4による膜厚抑制は、皮膜形成が進んで、制限部材4と成長した金属皮膜とが直接当接してそれ以上の皮膜形成が抑制されることによる。この抑制は、前記当接による物理的な抑制であるため、1mm以下程度のばらつきが生じることが多い。
このようにばらつきが生じたとしても、コイル1の外径側1aは、被熱処理部の熱処理に特に影響がないため、制限部材4を取り外した後、特に仕上げ加工を施すことなく使用に供することができる。
その一方で、被熱処理部を挿し込むコイル1の内径側は、コイル1による被熱処理部の発熱量を所定の範囲に制御するため、隙間の大きさの厳密な管理が必要である。このため、この内径側については、仕上げ加工によって所定の膜厚とする必要がある(同図(c)を参照)。このように仕上げ加工が必要ではあるが、従来はコイル1全体に亘ってこの仕上げ加工が必要だったのに対し、その加工作業を大幅に減らすことができる。このため、加工コストの削減を図ることができる。
この仕上げ加工の後、コイル1を形成したマスタ3をそのまま酸性溶液(塩酸、希硝酸等)又はアルカリ性溶液(水酸化ナトリウム等)に浸漬する。そうすると、アルミニウムからなるマスタ3のみが溶解して、銅からなるコイル1がそのまま残る(同図(d)を参照)。
前記製造方法で製造されたコイル1の一例を図2に示す。このコイル1は、図1に示した方法で製造された銅製のものであって、処理対象物である自動車用動力伝達部品Pの回転軸に沿う管状体からなる。このコイル1は、外観上は制限部材4を設けずに電気鋳造を行ったものと区別が付かないが、この制限部材4を設けた箇所に仕上げ加工を施すことなく使用に供することができるというメリットがある。
この回転軸は、その軸方向に異なる外径を有するものや、軸方向位置において外径が一定のもの等、種々の形状のものがある。このコイル1は、軸方向に異なる外径を有する回転軸に沿うように形成されたものであって、回転軸の外径同一部の周りに略90度の円弧を有する第1の円弧部5と、この第1の円弧部5に連続し、外径同一部P1の軸方向に沿う直胴部6と、この直胴部6に連続し、回転軸の径変更部P2に対応して外径方向に沿いつつ拡径する拡径部7と、この拡径部7に連続し、この拡径部7の終端の径で回転軸周りに略90度の円弧を有する第2の円弧部8とを有するとともに、これらの各部の連続体と左右対称形状の連続体を、第2の円弧部8で連結した形状の一体成形体をなす。
このマスタ3として、室温近傍で硬化する一方で、加熱することによって容易に軟化・溶融するワックスも採用し得る。その場合、マスタ3の素材としてアルミニウムを使用する場合と同様に、コイル1の全長に亘って形成する通水部2の形状に対応する鋳型を用意し、この鋳型に加熱して軟化・溶融したワックスを流し込んだり、ワックス塊を切削加工したりすることによって、その通水部2の全体形状を成形する。そして、このワックスの硬化後、その表面に導電性ペーストを塗布しこれを電気めっき用のマスタ3となす。
このようにして製造されたコイル1は、ハブ輪等の自動車用動力伝達部品Pの熱処理に使用される。この熱処理においては、例えばコイル1と同軸に、水槽や油槽等の冷却設備(図示せず)を併設することもできる。このような装置構成とすることで、コイル1による熱処理に引き続いて、速やかに冷却工程に移行することができる。このため、焼入れ処理、焼鈍し処理等を容易に行うことができ、均一性の高い高品質な熱処理部材を得ることができる。
この熱処理に用いるコイル1の形状は、当然ながら、図2に記載したものに限定されない。この形状は、被熱処理部の形状に適宜合わせて、例えば、「第1の円弧部5−直胴部6−拡径部7−直胴部6−第2の円弧部8」のようにコイル1を構成するとともに、直胴部の長さ、両円弧部5、8の径も適宜変更することができる。
1 高周波誘導加熱用コイル(コイル)
2 通水部
3 マスタ
4 制限部材
5 第1の円弧部
6 直胴部
7 拡径部
8 第2の円弧部
P 自動車用動力伝達部品(処理対象物)
P1 (回転軸の)外径同一部
P2 (回転軸の)径変更部
g 所定間隔
2 通水部
3 マスタ
4 制限部材
5 第1の円弧部
6 直胴部
7 拡径部
8 第2の円弧部
P 自動車用動力伝達部品(処理対象物)
P1 (回転軸の)外径同一部
P2 (回転軸の)径変更部
g 所定間隔
Claims (11)
- 処理対象物(P)の被熱処理部の形状に沿うように導電性材料からなるマスタ(3)を形成し、このマスタ(3)上に電気鋳造法により金属を析出させる高周波誘導加熱用コイルの製造方法において、
前記マスタ(3)を、コイル(1)の全長に亘って形成する通水部(2)の形状に対応して形成する第一工程と、
金属皮膜が所定膜厚以上となるのを阻止する非導電性材料からなる制限部材(4)を、前記マスタの表面から所定間隔(g)だけ離間して設ける第二工程と、
前記制限部材(4)を設けた前記マスタ(3)をめっき液中に浸漬し、このマスタ(3)を陰極として通電し、マスタ(3)表面に金属を析出させる第三工程と、
前記析出後に、前記マスタ(3)を溶解させる第四工程と、
から構成されることを特徴とする高周波誘導加熱用コイルの製造方法。 - 前記マスタ(3)の素材が、アルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載の高周波誘導加熱用コイルの製造方法。
- 前記マスタ(3)が、ワックスの表面に導電体を形成することによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の高周波誘導加熱用コイルの製造方法。
- 前記制限部材(4)が樹脂製であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の高周波誘導加熱用コイルの製造方法。
- 前記制限部材(4)が、コイル(1)の非加熱面側となる位置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の高周波誘導加熱用コイルの製造方法。
- 前記第三工程の後かつ第四工程の前に、前記制限部材(4)を設けなかった箇所の電鋳皮膜の部分のみに仕上げ加工を施し、前記制限部材(4)を設けた箇所の電鋳皮膜には前記仕上げ加工を施さないことを特徴とする請求項5に記載の高周波誘導加熱用コイルの製造方法。
- 前記被熱処理部が自動車用動力伝達部品(P)の回転軸で、この回転軸はその軸方向位置において異なる外径を有するものであり、前記管状部材が、この回転軸の外径同一部(P1)の周りに略90度の円弧を有する第1の円弧部(5)と、この第1の円弧部(5)に連続し、前記外径同一部(P1)の軸方向に沿う直胴部(6)と、この直胴部(6)に連続し、前記回転軸の径変更部(P2)に対応して外径方向に沿いつつ拡径する拡径部(7)と、この拡径部(7)に連続し、この拡径部(7)の終端の径で前記回転軸周りに略180度の円弧を有する第2の円弧部(8)とを有するとともに、これらの各部の連続体と左右対称形状の連続体を、前記第2の円弧部(8)で連結した形状の一体成形体である請求項1乃至6に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする高周波誘導加熱用コイル。
- 焼入れ処理によって硬度を高めた鉄鋼材料からなる自動車用動力伝達部品(P)であって、
前記自動車用動力伝達部品(P)の被熱処理部の外形に沿うように形成した請求項7に記載の高周波誘導加熱用コイル(1)を用い、所定の焼入れ温度に加熱・保持した後に、急冷することによって焼入れ処理を行ったことを特徴とする自動車用動力伝達部品。 - 焼入れ処理後に焼戻し処理を行い、靭性を付与した鉄鋼材料からなる自動車用動力伝達部品(P)であって、
前記自動車用動力伝達部品(P)の被熱処理部の外形に沿うように形成した請求項7に記載の高周波誘導加熱用コイル(1)を用い、所定の焼入れ温度に加熱・保持した後に、急冷することによって焼入れ処理を行い、引き続いて所定の焼戻し温度に加熱・保持した後に、所定の冷却速度で冷却することによって焼戻し処理を行ったことを特徴とする自動車用動力伝達部品。 - 焼鈍し処理によって加工硬化に伴う内部歪みを除去した鉄鋼材料からなる自動車用動力伝達部品(P)であって、
前記自動車用動力伝達部品(P)の被熱処理部の外形に沿うように形成した請求項7に記載の高周波誘導加熱用コイル(1)を用い、所定温度に加熱・保持した後に、所定の冷却速度で除冷することによって焼鈍し処理を行ったことを特徴とする自動車用動力伝達部品。 - 前記自動車用動力伝達部品(P)がハブ輪、等速ジョイント、又は、プロペラシャフトのいずれかである請求項8乃至10のいずれか一つに記載の自動車用動力伝達部品。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009196702A JP2011047004A (ja) | 2009-08-27 | 2009-08-27 | 高周波誘導加熱装置用コイルとその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009196702A JP2011047004A (ja) | 2009-08-27 | 2009-08-27 | 高周波誘導加熱装置用コイルとその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2011047004A true JP2011047004A (ja) | 2011-03-10 |
Family
ID=43833625
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2009196702A Pending JP2011047004A (ja) | 2009-08-27 | 2009-08-27 | 高周波誘導加熱装置用コイルとその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2011047004A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101380370B1 (ko) * | 2012-05-21 | 2014-04-03 | 주식회사 드림텍 | 자동차용 유니버설 조인트 및 그 제조방법 |
WO2015119814A1 (en) * | 2014-02-09 | 2015-08-13 | Inductoheat, Inc. | Single shot inductor for heat treatment of closely spaced multiple eccentric cylindrical components arranged along the longitudinal axis of a workpiece |
-
2009
- 2009-08-27 JP JP2009196702A patent/JP2011047004A/ja active Pending
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
KR101380370B1 (ko) * | 2012-05-21 | 2014-04-03 | 주식회사 드림텍 | 자동차용 유니버설 조인트 및 그 제조방법 |
WO2015119814A1 (en) * | 2014-02-09 | 2015-08-13 | Inductoheat, Inc. | Single shot inductor for heat treatment of closely spaced multiple eccentric cylindrical components arranged along the longitudinal axis of a workpiece |
CN106165529A (zh) * | 2014-02-09 | 2016-11-23 | 感应加热有限公司 | 用于热处理沿工件的纵轴配置的紧密间隔的多个偏心圆柱形元件的单发感应器 |
US9885094B2 (en) | 2014-02-09 | 2018-02-06 | Inductoheat, Inc. | Single shot inductor for heat treatment of closely spaced multiple eccentric cylindrical components arranged along the longitudinal axis of a workpiece |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
CN106180719B (zh) | 激光选区熔化增材制造的in718构件、系统、热处理方法及装置 | |
JP2010113937A (ja) | 高周波誘導加熱用コイル及びその製造方法と自動車用動力伝達部品 | |
CN110877186B (zh) | 一种大规格锆合金薄壁管材的制造方法及大规格锆合金薄壁管材 | |
KR100661199B1 (ko) | 알루미늄 휠의 제조 방법 | |
CN106180652A (zh) | 一种钛合金薄壁壳体铸坯精加工模具及其加工方法 | |
CN101704084B (zh) | 离心铸管模具及其制作工艺 | |
JP2011047004A (ja) | 高周波誘導加熱装置用コイルとその製造方法 | |
JP2012213780A (ja) | 圧延用複合ロール及びその製造方法 | |
CN106239036B (zh) | 一种片状多孔结构单晶高温合金零件的制备工艺 | |
JP2010086904A (ja) | 高周波誘導加熱用コイル及びその製造方法と自動車用動力伝達部品 | |
CN106694606B (zh) | 一种奥氏体不锈钢大口径厚壁管的制造方法 | |
KR100750459B1 (ko) | 알루미늄 합금 파이프의 제조 방법 | |
CN108075598A (zh) | 一种电机转轴及其加工方法 | |
JP2010261083A (ja) | 電気鋳造用マスタ、高周波誘導加熱用コイル及び自動車用動力伝達部品 | |
CN107745231A (zh) | 一种高精度钛铜复合棒材的制备方法 | |
JP6434729B2 (ja) | Ni基系合金の管の製造方法、Ni基系合金の高周波加熱曲げ管の製造方法、Ni基系合金の溶接接合管の製造方法およびボイラ用の蒸気管の製造方法 | |
CN104227354B (zh) | 一种高速卷绕头中“卡盘轴黑套”的生产制造工艺 | |
CN106238697A (zh) | 一种耐磨蚀沉没辊的制作工艺 | |
WO2015125624A1 (ja) | チタンまたはチタン合金からなる鋳塊の連続鋳造装置 | |
KR20060136020A (ko) | 알루미늄 합금 파이프 및 그 제조 방법 | |
EP3815811A1 (en) | Method for manufacturing hollow engine valve | |
KR100750460B1 (ko) | 알루미늄 합금 파이프 | |
CN111922637B (zh) | 一种保证轴套同轴度的制造工艺 | |
JP2009019261A (ja) | アモルファス合金のコーティング方法。 | |
Marquis | Inductors and Coils New Production Solutions using Additive Manufacturing such as EBM 3D Printing and Precision Casting—A Presentation of the Current State-of-the-Art Technologies |