JP2011032572A - 高強度鋼板およびその溶鋼の溶製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.03〜0.20%、Si:0.08〜2.0%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.0001〜0.0004%、酸可溶Ti:0.008〜0.20%、N:0.0005〜0.01%、酸可溶Al:0.01%超、CeおよびLaの1種または2種の合計:0.001〜0.01%、さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al:0.1以上で、かつ、(Ce+La)/S:5〜25で、残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であって、該鋼板中に、円相当直径2μm以下の介在物が15個/mm2以上存在することを特徴とする高強度鋼板。
【選択図】なし
Description
Cは、鋼の焼入れ性と強度を制御する最も基本的な元素であり、焼入れ硬化層の硬さおよび深さを高めて疲労強度の向上に有効に寄与する。即ち、Cは、鋼板の強度を確保するために必須の元素であり、高強度鋼板を得るためには、少なくとも0.03%が必要である。好ましくは、0.035%以上である。一方、Cが0.20%を超えると、加工性および溶接性が劣化するので、必要な強度を達成し、必要な加工性および溶接性を確保するため、Cは0.20%以下とする。好ましくは、0.18%以下であり、より好ましくは、0.16%以下である。
Siは、主要な脱酸元素の一つであり、焼入れ加熱時に、オーステナイトの核生成サイト数を増加させ、オーステナイトの粒成長を抑制するとともに、焼入れ硬化層の粒径を微細化する機能を担う。また、Siは、炭化物の生成を抑制し、炭化物による粒界強度の低下を抑制するとともに、ベイナイト組織の生成に対しても有効であるので、伸びを大きく損なうことなく強度を高め、低降伏強度比で穴拡げ性、曲げ加工性を改善するのに重要な元素である。
Mnは、製綱段階での脱酸に有用な元素であり、C、Siとともに、鋼板の高強度化に有効な元素である。この効果を得るためには、0.5%以上含有させる必要がある。好ましくは、1.2%以上である。しかし、3.0%を超えて含有させると、Mnの偏析や固溶強化の増大により、延性が低下する。また、溶接性や母材靭性も劣化するので、Mnの上限を3.0%とする。Mnの好ましい上限は、2.7%、より好ましい上限、2.6%である。
Pは、Fe原子よりも小さく、置換型固溶強化元素として作用するので、強度の向上に有効な元素である。しかし、0.05%を超えると、オーステナイトの粒界に偏析し、粒界強度を低下させて、ねじり疲労強度が低下し、加工性が劣化する原因にもなるので、上限を0.05%とする。なお、固溶強化の必要がなければ、Pを添加する必要はないので、Pの下限値は0%を含むものとする。
Sは、不純物として偏析して、MnS系の粗大な延伸介在物を形成して、伸びフランジ性を劣化させるので、極力、低濃度であることが望ましい。本発明においては、前述の複合脱酸により、低酸素ポテンシャルを実現することができるので、Sを0.0004%以下とすることが可能である。Sを0.0004%以下とし、かつ、後述のS濃度と、CeおよびLaの1種または2種の合計量の濃度比を所定の範囲に規定すると、伸びフランジ性、曲げ加工性と疲労特性が飛躍的に向上することを、本発明者らは見出した。
Tiは、主要な脱酸元素の一つであるとともに、炭化物、窒化物、炭窒化物を形成し、熱間圧延前の充分な加熱により、オーステナイトの核生成サイト数を増加し、オーステナイトの粒成長を抑制するための微細化・高強度化に寄与し、熱間圧延時の動的再結晶に有効に作用して、伸びフランジ性を著しく向上させる機能を担う元素である。
Nは、溶鋼の処理中、空気から取り込まれて、鋼中に不可避的に混入する元素である。また、Nは、Al、Ti等と窒化物を形成して母材組織の細粒化を促進する元素であるが、0.01%を超えて含有すると、Al、Ti等と粗大な析出物を生成し、伸びフランジ性、曲げ加工性を劣化させるので、上限を0.01%とする。Nの好ましい上限は、0.006%である。一方、Nを0.0005%未満とすると、コストが高くなるので、工業的に実現可能な観点から、下限を0.0005%とする。Nの好ましい下限は、0.0015%である。
酸可溶Alは、一般に、その酸化物がクラスター化して粗大化し、伸びフランジ性、曲げ加工性や疲労特性を劣化させるので、極力抑制することが望ましい。本発明者らは、Al脱酸を行いつつも、Si、Tiと、Ceおよび/またはLaによる複合的な脱酸効果と、前述の通り、Al脱酸で生成した溶鋼中のAl2O3系介在物(一部は浮上して除去される)を還元分解して、Al2O3系酸化物がクラスター化して粗大化しない微細な介在物を形成するのに必要な、酸可溶Al濃度に応じたCeおよび/またはLaの濃度範囲を見出した。これにより、本発明では、通常のAl脱酸を行うことが可能となったため、通常のAl脱酸を行う際の酸可溶Al濃度として、下限を0.01%超とする。
CeおよびLaの1種または2種は、Si脱酸で生成したSiO2、逐次的に、Al脱酸で生成したAl2O3を還元し、MnS系介在物の析出サイトとなり易く、かつ、硬質、微細で、圧延時に変形し難いCe酸化物(例えば、Ce2O3、CeO2)、セリュウムオキシサルファイド(例えば、Ce2O2S)、La酸化物(例えば、La2O3、LaO2)、ランタンオキシサルファイド(例えば、La2O2S)、Ce酸化物−La酸化物、および/または、セリュウムオキシサルファイド−ランタンオキシサルファイドを主相(50%以上を目安とする)とする介在物を形成する機能を備える元素である。
Nb、Vは、CまたはNと炭化物、窒化物、炭窒化物を形成して、母材組織の細粒化を促進し、靭性の向上に寄与する元素である。
上述した複合炭化物、複合窒化物等を得るため、Nbを0.01%以上添加するのが好ましい。しかし、Nbが0.10%を超えると、母材組織の細粒化効果が飽和し、製造コストが高くなるので、上限は0.10%とする。
上述した複合炭化物、複合窒化物等を得るため、Vを0.01%以上添加するのが好ましい。しかし、Vが0.05%を超えると、母材組織の細粒化効果が飽和し、製造コストが高くなるので、上限は0.05%とする。
Cr、Mo、および、Bは、鋼の焼き入れ性を向上する元素である。
Crは、さらに、鋼板の強度を確保するため、必要に応じて添加する。この添加効果を得るためには、0.01%以上添加することが好ましい。しかし、Crの多量添加は、かえって、強度−延性バランスを劣化させるので、上限を0.6%とする。
Moは、さらに、鋼板の強度を確保するため、必要に応じて添加する。この添加効果を得るためには、0.01%以上添加することが好ましい。しかし、Moの多量添加は、かえって、強度−延性バランスを劣化させるので、上限を0.4%とする。
Bは、さらに、粒界を強化し、加工性を向上するため、必要に応じて添加する。この効果を得るためには、0.0003%以上添加することが好ましい。しかし、Bを、0.003%を超えて添加しても、添加効果は飽和し、かえって、鋼の清浄性を損ない、延性を劣化させるので、上限を0.003%とする。
Ca、Zrは、硫化物の形態制御により、粒界を強化し、加工性の向上に寄与するので、必要に応じて添加する。
Caは、硫化物を球状化する等、脱硫の形態を制御することにより、粒界を強化し、鋼の加工性を向上する元素である。この効果を得るためには、Caを0.0001%以上添加することが好ましい。しかし、Caを多量に添加しても、添加効果は飽和し、かえって、鋼の清浄性を損ない、延性を劣化させるので、上限を0.004%とする。
Zrは、硫化物を球状化して、母材の靭性を改善する効果を有する元素である。この効果を得るためには、0.001%以上添加することが好ましい。しかし、Zrの多量添加は、かえって、鋼の清浄性を損ない、延性を劣化させるので、上限を0.01%とする。
Claims (15)
- 質量%で、
C:0.03〜0.20%、
Si:0.08〜2.0%、
Mn:0.5〜3.0%、
P:0.05%以下、
S:0.0001〜0.0004%、
酸可溶Ti:0.008〜0.20%、
N:0.0005〜0.01%、
酸可溶Al:0.01%超、
CeおよびLaの1種または2種の合計:0.001〜0.01%、
さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al:0.1以上で、かつ、(Ce+La)/S:5〜25で、
残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であって、該鋼板中に、円相当直径2μm以下の介在物が15個/mm2以上存在することを特徴とする高強度鋼板。 - 質量%で、
C:0.03〜0.20%、
Si:0.08〜2.0%、
Mn:0.5〜3.0%、
P:0.05%以下、
S:0.0001〜0.0004%、
酸可溶Ti:0.008〜0.20%、
N:0.0005〜0.01%、
酸可溶Al:0.01%超、
CeおよびLaの1種または2種の合計:0.001〜0.01%、
さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al:0.1以上で、かつ、(Ce+La)/S:5〜25で、
残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であって、該鋼板中に、円相当直径が1μm以上で、かつ、長径/短径が5以上の延伸介在物が、個数割合で20%以下存在することを特徴とする高強度鋼板。 - 質量%で、
C:0.03〜0.20%、
Si:0.08〜2.0%、
Mn:0.5〜3.0%、
P:0.05%以下、
S:0.0001〜0.0004%、
酸可溶Ti:0.008〜0.20%、
N:0.0005〜0.01%、
酸可溶Al:0.01%超、
CeおよびLaの1種または2種の合計:0.001〜0.01%、
さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al:0.1以上で、かつ、(Ce+La)/S:5〜25で、
残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であって、該鋼板中に、CeおよびLaの1種または2種からなる酸化物、または、これに、SiおよびTiの1種または2種を含有する酸化物またはオキシサルファイドの上に、MnS、TiS、および、(Mn,Ti)Sの1種または2種以上が複合析出した介在物が、個数割合で10%以上存在することを特徴とする高強度鋼板。 - 質量%で、
C:0.03〜0.20%、
Si:0.08〜2.0%、
Mn:0.5〜3.0%、
P:0.05%以下、
S:0.0001〜0.0004%、
酸可溶Ti:0.008〜0.20%、
N:0.0005〜0.01%、
酸可溶Al:0.01%超、
CeおよびLaの1種または2種の合計:0.001〜0.01%、
さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al:0.1以上で、かつ、(Ce+La)/S:5〜25で、
残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であって、該鋼板中に、円相当直径が1μm以上で、かつ、長径/短径が5以上の延伸介在物が1.0×104個/mm3以下存在することを特徴とする高強度鋼板。 - 質量%で、
C:0.03〜0.20%、
Si:0.08〜2.0%、
Mn:0.5〜3.0%、
P:0.05%以下、
S:0.0001〜0.0004%、
酸可溶Ti:0.008〜0.20%、
N:0.0005〜0.01%、
酸可溶Al:0.01%超、
CeおよびLaの1種または2種の合計:0.001〜0.01%、
さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al:0.1以上で、かつ、(Ce+La)/S:5〜25で、
残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であって、該鋼板中に、CeおよびLaの1種または2種からなる酸化物、または、これに、SiおよびTiの1種または2種を含有する酸化物またはオキシサルファイドの上に、MnS、TiS、および、(Mn,Ti)Sの1種または2種以上が複合析出した介在物が1.0×103個/mm3以上存在することを特徴とする高強度鋼板。 - 質量%で、
C:0.03〜0.20%、
Si:0.08〜2.0%、
Mn:0.5〜3.0%、
P:0.05%以下、
S:0.0001〜0.0004%、
酸可溶Ti:0.008〜0.20%、
N:0.0005〜0.01%、
酸可溶Al:0.01%超、
CeおよびLaの1種または2種の合計:0.001〜0.01%、
さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al:0.1以上で、かつ、(Ce+La)/S:5〜25で、
残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であって、該鋼板中に、円相当直径が1μm以上で、長径/短径が5以上で、かつ、平均円相当直径が10μm以下の延伸介在物が存在することを特徴とする高強度鋼板。 - 質量%で、
C:0.03〜0.20%、
Si:0.08〜2.0%、
Mn:0.5〜3.0%、
P:0.05%以下、
S:0.0001〜0.0004%、
酸可溶Ti:0.008〜0.20%、
N:0.0005〜0.01%、
酸可溶Al:0.01%超、
CeおよびLaの1種または2種の合計:0.001〜0.01%、
さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al:0.1以上で、かつ、(Ce+La)/S:5〜25で、
残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であって、鋼板中に、CeおよびLaの1種または2種からなる酸化物、または、これに、SiおよびTiの1種または2種を含有する酸化物またはオキシサルファイドの上に、MnS、TiS、および、(Mn,Ti)Sの1種または2種以上が複合析出した介在物が存在するとともに、該介在物が、CeおよびLaの1種または2種を、合計で0.5〜95質量%含有することを特徴とする高強度鋼板。 - 質量%で、
C:0.03〜0.20%、
Si:0.08〜2.0%、
Mn:0.5〜3.0%、
P:0.05%以下、
S:0.0001〜0.0004%、
酸可溶Ti:0.008〜0.20%、
N:0.0005〜0.01%、
酸可溶Al:0.01%超、
CeおよびLaの1種または2種の合計:0.001〜0.01%、
さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al:0.1以上で、かつ、(Ce+La)/S:5〜25で、
残部が鉄および不可避的不純物からなる鋼板であって、該鋼板組織の結晶の平均粒径が10μm以下であることを特徴とする高強度鋼板。 - さらに、質量%で、
Nb:0.01〜0.10%、および、
V:0.01〜0.05%、
のいずれか1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の高強度鋼板。 - さらに、質量%で、
Cr:0.01〜0.6%、
Mo:0.01〜0.4%、および、
B:0.0003〜0.003%、
のいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の高強度鋼板。 - さらに、質量%で、
Ca:0.0001〜0.004%、および、
Zr:0.001〜0.01%、
のいずれか1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の高強度鋼板。 - 請求項1〜11のいずれか1項に記載の高強度鋼板用の溶鋼の溶製方法であって、溶鋼の精錬工程で、
(i)質量%で、P:0.05%以下に処理された溶鋼の成分組成を、C:0.03〜0.20%、Si:0.08〜2.0%、Mn:0.5〜3.0%、N:0.0005〜0.01%に調整した後、Alを添加し、酸可溶Al:0.01%超に調整し、その後、
(ii)Tiを添加し、次いで、CeおよびLaの1種または2種を添加し、酸可溶Ti:0.008〜0.20%、CeおよびLaの1種または2種の合計:0.001〜0.01%、S:0.0001〜0.0004%、さらに、質量ベースで、(Ce+La)/酸可溶Al:0.1以上で、かつ、(Ce+La)/S:5〜25に調整することを特徴とする高強度鋼板用の溶鋼の溶製方法。 - 前記精錬工程で、CeおよびLaの1種または2種を添加する前に、さらに、質量%で、NbおよびVの1種または2種を添加し、Nb:0.01〜0.10%およびV:0.01〜0.05%のいずれかまたは両方に調整することを特徴とする請求項12に記載の高強度鋼板用の溶鋼の溶製方法。
- 前記精錬工程で、CeおよびLaの1種または2種を添加する前に、さらに、質量%で、Cr、Mo、および、Bの1種または2種以上を添加し、Cr:0.01〜0.6%、Mo:0.01〜0.4%、および、B:0.0003〜0.003%のいずれかまたは二つ以上に調整することを特徴とする請求項12または13に記載の高強度鋼板用の溶鋼の溶製方法。
- 前記精錬工程で、CeおよびLaの1種または2種を添加する前に、さらに、質量%で、CaおよびZrの1種または2種を添加し、Ca:0.0001〜0.004%およびZr:0.001〜0.01%のいずれかまたは両方に調整することを特徴とする請求項12〜14のいずれか1項に記載の高強度鋼板用の溶鋼の溶製方法。
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