しかしながら、複数の画素がアレイ状に配列されたフォトダイオードアレイでは、画素間に入射した光は検出され難く、光検出感度は低くなる懼れがある。
本発明は、光検出感度を向上することが可能な半導体光検出素子及び半導体光検出素子の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る半導体光検出素子は、第1導電型の半導体領域と第2導電型の半導体領域とで形成され且つアレイ状に配置された複数のpn接合を有するシリコン基板を備え、シリコン基板には、該シリコン基板の一の主面側に第1導電型のアキュムレーション層が形成されていると共に、一の主面における少なくとも複数のpn接合の間の領域に対向する第1の領域に不規則な凹凸が形成されており、シリコン基板の一の主面における第1の領域は、光学的に露出していることを特徴とする。
本発明に係る半導体光検出素子では、一の主面における少なくとも複数のpn接合の間の領域に対向する第1の領域に不規則な凹凸が形成されている。このため、複数のpn接合の間の領域に入射した光は、一の主面における少なくとも複数のpn接合の間の領域に対向する第1の領域に形成されている不規則な凹凸にて、反射、散乱、又は拡散されて、シリコン基板で確実に吸収される。したがって、本発明では、複数のpn接合の間の領域において検出感度が低下することはなく、光検出感度が向上する。
本発明に係る半導体光検出素子では、シリコン基板の一の主面側に第1導電型のアキュムレーション層が形成されている。このため、一の主面側で光によらずに発生する不要キャリアが再結合され、暗電流を低減できる。また、アキュムレーション層は、シリコン基板の一の主面付近で光により発生したキャリアが該一の主面でトラップされるのを抑制する。このため、光により発生したキャリアは、pn接合へ効率的に移動し、半導体光検出素子の光検出感度を更に向上することができる。
好ましくは、シリコン基板には、一の主面における複数のpn接合に対向する第2の領域に不規則な凹凸が更に形成されており、第2の領域に形成された不規則な凹凸の高低差は、第1の領域に形成された不規則な凹凸の高低差よりも小さい。
特許文献1に記載された化合物半導体を用いた半導体光検出素子は、未だ高価であり、製造工程も複雑なものとなってしまう。このため、安価で且つ製造が容易なシリコンを用いた半導体光検出素子であって、近赤外の波長帯域に十分な分光感度を有しているものの実用化が求められている。シリコンを用いた半導体光検出素子(例えば、シリコンフォトダイオード等)は、一般に、分光感度特性の長波長側での限界は1100nm程度ではあるものの、1000nm以上の波長帯域における分光感度特性は十分なものではなかった。
シリコン基板の一の主面における複数のpn接合に対向する第2の領域に不規則な凹凸が形成されていると、半導体光検出素子に入射した光は当該第2の領域にて反射、散乱、又は拡散されて、シリコン基板内を長い距離進む。これにより、半導体光検出素子に入射した光は、その大部分が半導体光検出素子(シリコン基板)を透過することなく、シリコン基板で吸収されることとなる。したがって、半導体光検出素子に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるため、近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。
第2の領域に形成された不規則な凹凸の高低差が、第1の領域に形成された不規則な凹凸の高低差よりも小さいので、第2の領域における光の反射、散乱、又は拡散の度合は、第1の領域における度合よりも低く抑えられることとなる。この結果、複数のpn接合の間でのクロストークの発生を抑制することができる。
本発明に係る半導体光検出素子は、第1導電型の半導体からなり、互いに対向する第1主面及び第2主面を有すると共に第1主面側に第2導電型の複数の半導体領域がアレイ状に形成されたシリコン基板を備え、シリコン基板には、第2主面側にシリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型のアキュムレーション層が形成されていると共に、第2主面における少なくとも第2導電型の複数の半導体領域の間の領域に対向する第1の領域に不規則な凹凸が形成されており、シリコン基板の第2主面における第1の領域は、光学的に露出していることを特徴とする。
本発明に係る半導体光検出素子では、第2主面における少なくとも第2導電型の複数の半導体領域の間の領域に対向する第1の領域に不規則な凹凸が形成されている。このため、第2導電型の複数の半導体領域の間の領域に入射した光は、第2主面における少なくとも第2導電型の複数の半導体領域の間の領域に対向する第1の領域に形成されている不規則な凹凸にて、反射、散乱、又は拡散されて、シリコン基板で確実に吸収される。したがって、本発明では、第2導電型の複数の半導体領域の間の領域において検出感度が低下することはなく、光検出感度が向上する。
本発明に係る半導体光検出素子では、シリコン基板の第2主面側に第1導電型のアキュムレーション層が形成されている。このため、第2主面側で光によらずに発生する不要キャリアが再結合され、暗電流を低減できる。また、アキュムレーション層は、シリコン基板の第2主面付近で光により発生したキャリアが第2主面でトラップされるのを抑制する。このため、光により発生したキャリアは、第2導電型の半導体領域とシリコン基板とのpn接合へ効率的に移動し、半導体光検出素子の光検出感度を更に向上することができる。
好ましくは、シリコン基板には、第2主面における第2導電型の複数の半導体領域に対向する第2の領域に不規則な凹凸が更に形成されており、第2の領域に形成された不規則な凹凸の高低差は、第1の領域に形成された不規則な凹凸の高低差よりも小さい。この場合、上述したように、半導体光検出素子に入射した光は当該第2の領域にて反射、散乱、又は拡散されて、シリコン基板内を長い距離進む。したがって、半導体光検出素子に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるため、近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。また、第2の領域に形成された不規則な凹凸の高低差が第1の領域に形成された不規則な凹凸の高低差よりも小さいことにより、第2導電型の複数の半導体領域の間でのクロストークの発生を抑制することができる。
好ましくは、アキュムレーション層の厚みが、不規則な凹凸の高低差よりも大きい。この場合、上述したように、アキュムレーション層による作用効果を確保することができる。
本発明に係る半導体光検出素子の製造方法は、第1導電型の半導体領域と第2導電型の半導体領域とで形成され且つアレイ状に配置された複数のpn接合を有するシリコン基板を準備する工程と、シリコン基板の一の主面側に、第1導電型のアキュムレーション層を形成する工程と、シリコン基板の一の主面における少なくとも複数のpn接合の間の領域に対向する第1の領域に、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸を形成する工程と、不規則な凹凸が形成されたシリコン基板を熱処理する工程と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る半導体光検出素子の製造方法によれば、一の主面における少なくとも複数のpn接合の間の領域に対向する第1の領域に不規則な凹凸が形成されている半導体光検出素子を得ることができる。この半導体光検出素子では、上述したように、複数のpn接合の間の領域において検出感度が低下することはなく、光検出感度が向上する。また、シリコン基板の一の主面側に形成されるアキュムレーション層により、暗電流を低減できると共に、半導体光検出素子の光検出感度を更に向上することができる。
ところで、パルスレーザ光の照射により、シリコン基板に結晶欠陥などのダメージを及ぼす懼れがあるが、本発明では、不規則な凹凸を形成する工程の後に、シリコン基板を熱処理しているので、シリコン基板の結晶性が回復し、暗電流の増加等の不具合を防ぐことができる。
好ましくは、シリコン基板の一の主面における複数のpn接合に対向する第2の領域に、パルスレーザ光を照射して、第1の領域に形成された不規則な凹凸の高低差よりも小さく且つ不規則な凹凸を形成する工程を更に備える。この場合、上記第1の領域だけでなく、第2の領域にも不規則な凹凸が形成されている半導体光検出素子を得ることができる。この半導体光検出素子では、上述したように、半導体光検出素子に入射した光は当該第2の領域にて反射、散乱、又は拡散されて、シリコン基板内を長い距離進む。したがって、半導体光検出素子に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるため、近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。また、第2の領域に形成された不規則な凹凸の高低差が第1の領域に形成された不規則な凹凸の高低差よりも小さく形成されるため、第2導電型の複数の半導体領域の間でのクロストークの発生を抑制することができる。
本発明に係る半導体光検出素子の製造方法は、第1導電型の半導体からなり、互いに対向する第1主面及び第2主面を有すると共に第1主面側に第2導電型の複数の半導体領域がアレイ状に形成されたシリコン基板を準備する工程と、シリコン基板の第2主面側に、シリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型のアキュムレーション層を形成する工程と、シリコン基板の第2主面における少なくとも第2導電型の複数の半導体領域の間の領域に対向する第1の領域に、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸を形成する工程と、不規則な凹凸を形成する工程の後に、シリコン基板を熱処理する工程と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る半導体光検出素子の製造方法によれば、第2主面における少なくとも第2導電型の複数の半導体領域の間の領域に対向する第1の領域に不規則な凹凸が形成されている半導体光検出素子を得ることができる。この半導体光検出素子では、上述したように、第2導電型の複数の半導体領域の間の領域において検出感度が低下することはなく、光検出感度が向上する。また、シリコン基板の第2主面側に形成されるアキュムレーション層により、暗電流を低減できると共に、半導体光検出素子の光検出感度を更に向上することができる。更に、本発明では、不規則な凹凸を形成する工程の後に、シリコン基板を熱処理しているので、シリコン基板の結晶性が回復し、暗電流の増加等の不具合を防ぐことができる。
好ましくは、シリコン基板の第2主面における第2導電型の複数の半導体領域に対向する第2の領域に、パルスレーザ光を照射して、第1の領域に形成された不規則な凹凸の高低差よりも小さく且つ不規則な凹凸を形成する工程を更に備える。この場合、上記第1の領域だけでなく、第2の領域にも不規則な凹凸が形成されている半導体光検出素子を得ることができる。この半導体光検出素子では、上述したように、半導体光検出素子に入射した光は当該第2の領域にて反射、散乱、又は拡散されて、シリコン基板内を長い距離進む。したがって、半導体光検出素子に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるため、近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。また、第2の領域に形成された不規則な凹凸の高低差が第1の領域に形成された不規則な凹凸の高低差よりも小さく形成されるため、第2導電型の複数の半導体領域の間でのクロストークの発生を抑制することができる。
好ましくは、不規則な凹凸を形成する工程を、アキュムレーション層を形成する工程の後に行う。この場合、アキュムレーション層の高低差を略均一に形成することができる。また、不規則な凹凸を形成する工程で生じた結晶損傷の回復と再結晶化のための熱処理と、結晶内に導入された不純物の活性化と結晶性の回復のためにアキュムレーション層を形成する工程の後に行う熱処理と、を一度で行うことができる。
好ましくは、アキュムレーション層の厚みを、不規則な凹凸の高低差よりも大きくする。この場合、アキュムレーション層を形成する工程の後に、パルスレーザ光を照射して、不規則な上記凹凸を形成しても、アキュムレーション層が残ることとなり、上述したアキュムレーション層による作用効果を確保することができる。
好ましくは、不規則な凹凸を形成する工程では、パルスレーザ光としてピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光を照射する。この場合、不規則な凹凸を適切で且つ容易に形成することができる。
本発明によれば、光検出感度を向上することが可能な半導体光検出素子及び半導体光検出素子の製造方法を提供することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
(第1実施形態)
まず、図1〜図10を参照して、第1実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA1の製造方法について説明する。図1〜図10は、第1実施形態に係るフォトダイオードアレイの製造方法を説明するための図である。
まず、シリコン(Si)結晶からなり、互いに対向する第1主面1a及び第2主面1bを有するn−型半導体基板1を準備する(図1参照)。n−型半導体基板1の厚みは300μm程度であり、比抵抗は1kΩ・cm程度である。本実施形態では、「高不純物濃度」とは例えば不純物濃度が1×1017cm−3程度以上のことであって、「+」を導電型に付けて示し、「低不純物濃度」とは不純物濃度が1×1015cm−3程度以下であって「−」を導電型に付けて示すものとする。n型不純物としてはアンチモン(Sb)や砒素(As)などがあり、p型不純物としては硼素(B)などがある。
次に、n−型半導体基板1の第1主面1a側に、複数のp+型半導体領域3及び複数のn+型半導体領域5をアレイ状に形成する(図2参照)。各p+型半導体領域3は、所定の領域が開口したマスクなどを用い、n−型半導体基板1内において第1主面1a側からp型不純物を高濃度に拡散させることにより形成する。各n+型半導体領域5は、p+型半導体領域3が形成される領域の周辺領域が開口した別のマスクなどを用い、p+型半導体領域3を囲むように、n−型半導体基板1内において第1主面1a側からn型不純物をn−型半導体基板1よりも高濃度に拡散させることにより形成する。p+型半導体領域3の厚みは、例えば0.55μm程度であり、シート抵抗は、例えば44Ω/sq.である。n+型半導体領域5の厚みは、例えば1.5μm程度であり、シート抵抗は、例えば12Ω/sq.である。
次に、n−型半導体基板1の第1主面1a側に絶縁層7を形成する(図3参照)。絶縁層7は、SiO2からなり、n−型半導体基板1を熱酸化することによって形成される。絶縁層7の厚みは、例えば0.1μm程度である。そして、各p+型半導体領域3上の絶縁層7にコンタクトホールH1を形成し、各n+型半導体領域5上の絶縁層7にコンタクトホールH2を形成する。絶縁層7の代わりに、SiNからなるアンチリフレクティブ(AR)層を形成してもよい。
次に、n−型半導体基板1の第2主面1b上及び絶縁層7上に、パッシベーション層9を形成する(図4参照)。パッシベーション層9は、SiNからなり、例えばプラズマCVD法により形成される。パッシベーション層9の厚みは、例えば0.1μmである。そして、n−型半導体基板1の厚みが所望の厚みとなるように、n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩する(図5参照)。これにより、n−型半導体基板1の第2主面1b上に形成されたパッシベーション層9は除去され、n−型半導体基板1が露出することとなる。ここでは、研摩により露出した面も、第2主面1bとする。所望の厚みは、例えば270μm程度である。
次に、n−型半導体基板1の第2主面1b側に、アキュムレーション層10を形成する(図6参照)。ここでは、n−型半導体基板1内において第2主面1b側からn型不純物をn−型半導体基板1よりも高い不純物濃度となるようにイオン注入又は拡散させることにより、アキュムレーション層10を形成する。アキュムレーション層10の厚みは、例えば5μm程度である。そして、n−型半導体基板1を、熱処理して、アキュムレーション層10を活性化させる。熱処理は、例えば、N2ガスといった雰囲気下で、900〜1000℃程度の範囲で、0.5〜3時間程度にわたって行なう。このとき、n−型半導体基板1の結晶性の回復も図られる。
次に、n−型半導体基板1の第2主面1bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸11を形成する(図7参照)。ここでは、図8に示されるように、n−型半導体基板1をチャンバC内に配置し、チャンバCの外側に配置されたパルスレーザ発生装置PLDからパルスレーザ光PLをn−型半導体基板1に照射する。チャンバCはガス導入部GIN及びガス排出部GOUTを有しており、不活性ガス(例えば、窒素ガスやアルゴンガスなど)をガス導入部GINから導入してガス排出部GOUTから排出することにより、チャンバC内に不活性ガス流Gfが形成されている。パルスレーザ光PLを照射した際に生じる塵などが不活性ガス流GfによりチャンバC外に排出され、n−型半導体基板1への加工屑や塵などの付着を防いでいる。
本実施形態では、パルスレーザ発生装置PLDとしてピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ発生装置を用い、第2主面1bにおけるp+型半導体領域3の間の領域に対向する第1の領域1b1にピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光を照射している。第2主面1bの第1の領域1b1はピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光に荒らされ、図9に示されるように、不規則な凹凸11が第2主面1bの全面に形成される。
不規則な凹凸11は、第1主面1aに直交する方向に対して交差する面を有している。凹凸11の高低差(深さ)は、例えば1μm〜5μm程度であり、凹凸11における凸部の間隔は1μm〜5μm程度である。ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光のパルス時間幅は例えば50fs〜2ps程度であり、強度は例えば4〜16GW程度であり、パルスエネルギーは例えば200〜800μJ/pulse程度である。より一般的には、ピーク強度は、3×1011〜2.5×1013(W/cm2)、フルエンスは、0.1〜1.3(J/cm2)程度である。図9は、第2主面1bの第1の領域に形成された不規則な凹凸11を観察したSEM画像である。
次に、n−型半導体基板1を熱処理(アニール)する。ここでは、n−型半導体基板1を、N2ガスといった雰囲気下で、800〜1000℃程度の範囲で、0.5〜1時間程度にわたって加熱する。
次に、絶縁層7上に形成されたパッシベーション層9を除去した後、電極13,15を形成する(図10参照)。電極13は、コンタクトホールH1内に形成され、電極15は、コンタクトホールH2内に形成される。電極13,15は、それぞれアルミニウム(Al)などからなり、厚みは例えば1μm程度である。これにより、フォトダイオードアレイPDA1が完成する。
フォトダイオードアレイPDA1は、図10に示されるように、n−型半導体基板1を備えている。n−型半導体基板1の第1主面1a側には、複数のp+型半導体領域3が形成されており、n−型半導体基板1と各p+型半導体領域3との間にはpn接合が形成されている。すなわち、n−型半導体基板1は、第1導電型の半導体領域と第2導電型の半導体領域とで形成され且つアレイ状に配置された複数のpn接合を有している。各n+型半導体領域5は、ガードリング又はチャンネルストッパとして機能する。
電極13は、コンタクトホールH1を通して、p+型半導体領域3に電気的に接触且つ接続されている。電極15は、コンタクトホールH2を通して、n+型半導体領域5に電気的に接触且つ接続されている。
n−型半導体基板1の第2主面1bは、隣り合うp+型半導体領域3(pn接合)の間の領域に対向する第1の領域1b1と、隣り合うp+型半導体領域3(pn接合)に対向する第2の領域1b2と、を含んでいる。本実施形態では、第2主面1bの第1の領域1b1に不規則な凹凸11が形成されている。n−型半導体基板1の第2主面1b側には、アキュムレーション層10が形成されており、第2主面1b(第1の領域1b1)は光学的に露出している。第2主面1b(第1の領域1b1)が光学的に露出しているとは、第2主面1b(第1の領域1b1)が空気などの雰囲気ガスと接しているのみならず、第2主面1b(第1の領域1b1)上に光学的に透明な膜が形成されている場合も含む。
フォトダイオードアレイPDA1では、第2主面1bの第1の領域1b1に不規則な凹凸11が形成されているために、図11に示されるように、フォトダイオードアレイPDA1のp+型半導体領域3の間の領域、いわゆる画素間に入射した光は凹凸11にて反射、散乱、又は拡散されて、n−型半導体基板1におけるp+型半導体領域3(pn接合)に対応する領域に進む。
通常、Siの屈折率n=3.5に対して、空気の屈折率n=1.0である。フォトダイオードでは、光入射面に垂直な方向から光が入射した場合、フォトダイオード(シリコン基板)内で吸収されなかった光は、光入射面の裏面にて反射する光成分とフォトダイオードを透過する光成分に分かれる。フォトダイオードを透過した光は、フォトダイオードの感度には寄与しない。光入射面の裏面にて反射した光成分は、フォトダイオード内で吸収されれば、光電流となり、吸収されなかった光成分は、光入射面において、光入射面の裏面に到達した光成分と同様に、反射又は透過する。
フォトダイオードアレイPDA1では、光入射面(第1主面1a)に垂直な方向から光Lが入射した場合、入射した光Lのうち、n−型半導体基板1におけるp+型半導体領域3(pn接合)に対応する領域に入射した光は、当該領域で吸収される。
入射した光Lのうち、画素の間に入射した光は、第1の領域1b1に形成された不規則な凹凸11に到達すると、凹凸11からの出射方向に対して16.6°以上の角度にて到達した光成分は、凹凸11にて全反射される。凹凸11は、不規則に形成されていることから、出射方向に対して様々な角度を有しており、全反射した光成分は様々な方向に拡散する。このため、全反射した光成分は、近くのn−型半導体基板1におけるp+型半導体領域3(pn接合)に対応する領域に進む。このため、画素間に入射した光も、n−型半導体基板1で確実に吸収される。したがって、フォトダイオードアレイPDA1では、p+型半導体領域3の間の領域において検出感度が低下することはなく、光検出感度が向上する。
フォトダイオードアレイPDA1では、n−型半導体基板1の第2主面1b側にアキュムレーション層10が形成されている。これにより、第2主面1b側で光によらずに発生する不要キャリアが再結合され、暗電流を低減できる。また、アキュムレーション層10は、第2主面1b付近で光により発生したキャリアが当該第2主面1bでトラップされるのを抑制する。このため、光により発生したキャリアは、pn接合へ効率的に移動し、フォトダイオードアレイPDA1の光検出感度を更に向上することができる。
本実施形態では、不規則な凹凸11を形成した後に、n−型半導体基板1を熱処理している。これにより、不規則な凹凸11を形成する工程で生じた結晶損傷の回復と再結晶化とが図られ、暗電流の増加等の不具合を防ぐことができる。
本実施形態では、アキュムレーション層10を形成した後に、不規則な凹凸11を形成している。これにより、アキュムレーション層10の高低差を略均一に形成することができる。また、不規則な凹凸11を形成する工程で生じた結晶損傷の回復と再結晶化のための熱処理と、イオン注入又は拡散により結晶内に導入された不純物の活性化と結晶性の回復のためにアキュムレーション層10を形成する工程の後に行う熱処理と、を一度で行うことも可能である。
本実施形態では、アキュムレーション層10の厚みを、不規則な凹凸11の高低差よりも大きくしている。このため、アキュムレーション層10を形成した後に、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸11を形成しても、アキュムレーション層10が確実に残ることとなる。したがって、アキュムレーション層10による作用効果を確保することができる。
本実施形態では、ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸11を形成している。これにより、不規則な凹凸11を適切で且つ容易に形成することができる。
本実施形態では、n−型半導体基板1を熱処理した後に、電極13,15を形成している。これにより、電極13,15に比較的融点の低い金属を用いる場合でも、熱処理により電極13,15が溶融するようなことはなく、熱処理の影響を受けることなく電極13,15を適切に形成することができる。
本実施形態では、n−型半導体基板1が第2主面1b側より薄化されている。これにより、n−型半導体基板1の第1主面1a及び第2主面1b側をそれぞれ光入射面としたフォトダイオードアレイを得ることができる。すなわち、フォトダイオードアレイPDA1は、表面入射型フォトダイオードアレイだけでなく、裏面入射型フォトダイオードアレイとして用いることができる。
(第2実施形態)
次に、図12及び図13を参照して、第2実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA2の製造方法について説明する。図12及び図13は、第2実施形態に係るフォトダイオードアレイの製造方法を説明するための図である。
第2実施形態の製造方法は、n−型半導体基板1の第2主面1b側にアキュムレーション層10を形成し、n−型半導体基板1を熱処理するまでは、第1実施形態の製造方法と同じであり、それまでの工程の説明を省略する。
n−型半導体基板1を熱処理した後、n−型半導体基板1の第2主面1bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸11を形成する(図12参照)。ここでは、第2主面1bの第1の領域1b1だけでなく、第2の領域1b2にもパルスレーザ光を照射して、第2の領域1b2に不規則な凹凸21を形成している。パルスレーザ光の照射は、上述したパルスレーザ発生装置PLDを用いることができる。本実施形態で準備するn−型半導体基板1の厚みは300μm程度であり、このn−型半導体基板1をその厚みが270μm程度となるように第2主面1b側から研摩している。
不規則な凹凸21も、不規則な凹凸11と同様に、第1主面1aに直交する方向に対して交差する面を有している。凹凸21の高低差(深さ)は、例えば0.5μm程度であり、凹凸11の高低差(深さ)よりも小さい。凹凸21における凸部の間隔は0.5μm程度である。不規則な凹凸21を形成するためのピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光のパルス時間幅は例えば50fs〜2ps程度であり、強度は例えば4〜16GW程度であり、パルスエネルギーは例えば200〜800μJ/pulse程度である。より一般的には、ピーク強度は、3×1011〜2.5×1013(W/cm2)、フルエンスは、0.1〜1.3(J/cm2)程度である。
次に、n−型半導体基板1を熱処理(アニール)する。ここでは、n−型半導体基板1を、N2ガスといった雰囲気下で、800〜1000℃程度の範囲で、0.5〜1時間程度にわたって加熱する。
次に、第1実施形態と同様に、n−型半導体基板1を熱処理する。そして、絶縁層7上に形成されたパッシベーション層9を除去した後、電極13,15を形成する(図13参照)。これにより、フォトダイオードアレイPDA2が完成する。
フォトダイオードアレイPDA2は、図13に示されるように、フォトダイオードアレイPDA1と同様に、第1導電型の半導体領域(n−型半導体基板1)と第2導電型の半導体領域(p+型半導体領域3)とで形成され且つアレイ状に配置された複数のpn接合を有するn−型半導体基板1を備えている。
n−型半導体基板1の第2主面1bは、隣り合うp+型半導体領域3(pn接合)の間の領域に対向する第1の領域1b1と、隣り合うp+型半導体領域3(pn接合)に対向する第2の領域1b2と、を含んでいる。本実施形態では、n−型半導体基板1の第2主面1bには、第1の領域1b1に不規則な凹凸11が形成され、第2の領域1b2に不規則な凹凸21が形成されている。n−型半導体基板1の第2主面1b側には、アキュムレーション層10が形成されており、第2主面1bの第2の領域1b2も、第2主面1bの第1の領域1b1と同様に、光学的に露出している。
フォトダイオードアレイPDA2では、光入射面(第1主面1a)に垂直な方向から光Lが入射した場合、入射した光Lのうち、n−型半導体基板1におけるp+型半導体領域3(pn接合)に対応する領域に入射した光は、第2主面1bの第2の領域1b2に形成された不規則な凹凸21に到達すると、凹凸21からの出射方向に対して16.6°以上の角度にて到達した光成分は、凹凸21にて全反射される(図14参照)。凹凸21は、不規則に形成されていることから、出射方向に対して様々な角度を有しており、全反射した光成分は様々な方向に拡散する。このため、全反射した光成分は、n−型半導体基板1内部で吸収される光成分もあれば、第1主面1aや側面に到達する光成分もある。
第1主面1aや側面に到達する光成分は、凹凸21での拡散により様々な方向に進むため、第1主面1aや側面に到達した光成分が第1主面1aや側面にて全反射する可能性は極めて高い。第1主面1aや側面にて全反射した光成分は、異なる面での全反射を繰り返し、その走行距離が更に長くなる。このように、p+型半導体領域3(pn接合)に対応する領域に入射した光Lは、n−型半導体基板1の内部を長い距離進むうちに、n−型半導体基板1で吸収され、光電流として検出されることとなる。
このように、フォトダイオードアレイPDA2に入射した光Lは、その大部分がフォトダイオードアレイPDA2を透過することなく、走行距離が長くされて、n−型半導体基板1で吸収されることとなる。したがって、フォトダイオードアレイPDA2では、近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。
第2主面1bの第2の領域1b2に規則的な凹凸を形成した場合、第1主面1aや側面に到達する光成分は、凹凸にて拡散されているものの、一様な方向に進むため、第1主面1aや側面に到達した光成分が第1主面1aや側面にて全反射する可能性は低くなる。このため、第1主面1aや側面、更には第2主面1bにて透過する光成分が増加し、フォトダイオードアレイに入射した光の走行距離は短くなってしまう。このため、近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することは困難となる。
フォトダイオードアレイPDA2に入射した光Lのうち、画素(p+型半導体領域3)の間に入射した光は、第1の領域1b1に形成された不規則な凹凸11に到達すると、上述したように、凹凸11にて全反射され、近くのn−型半導体基板1におけるp+型半導体領域3(pn接合)に対応する領域に進む(図14参照)。このため、画素間に入射した光も、n−型半導体基板1で確実に吸収される。したがって、フォトダイオードアレイPDA1では、p+型半導体領域3の間の領域において検出感度が低下することはなく、光検出感度が向上する。
フォトダイオードアレイPDA2でも、n−型半導体基板1の第2主面1b側にアキュムレーション層10が形成されており、第2主面1b側で光によらずに発生する不要キャリアが再結合され、暗電流を低減できる。また、アキュムレーション層10により、第2主面1b付近で光により発生したキャリアが当該第2主面1bでトラップされるのが抑制される。このため、光により発生したキャリアが効率的にpn接合へ移動し、フォトダイオードアレイPDA2の光検出感度を更に向上することができる。
本実施形態では、第2の領域1b2に形成された不規則な凹凸21の高低差が第1の領域1b1に形成された不規則な凹凸11の高低差よりも小さい。このため、第2の領域1b2における光の反射、散乱、又は拡散の度合は、第1の領域1b1における度合よりも低く抑えられ、第2の領域1b2における光の反射、散乱、又は拡散した光が隣接するp+型半導体領域3(pn接合)に対応する領域に進むのが抑制される。p+型半導体領域3(pn接合)の間、すなわち画素間でのクロストークの発生を抑制することができる。
ここで、不規則な凹凸の高低差に応じて、近赤外の波長帯域での分光感度特性に差異が生じることを確認するための実験を行なった。
本実験では、不規則な凹凸11,21の高低差の点を除いて第2実施形態と同様の構成を備えたフォトダイオードアレイ(実施例1〜3と称する)と、n−型半導体基板の第2主面に不規則な凹凸を形成していないフォトダイオードアレイ(比較例1と称する)と、を作製し、それぞれの分光感度特性を調べた。実施例1〜3と比較例1とは、パルスレーザ光の照射による不規則な凹凸の形成の点を除いて、同じ構成とされている。
実施例1〜3は、第1の領域1b1に形成された不規則な凹凸11の高低差と、第2の領域1b2に形成された不規則な凹凸21の高低差と、が同じに設定されている。すなわち、実施例1〜3では、n−型半導体基板の第2主面全体にわたって略同じ高低差とされた不規則な凹凸が形成されている。実施例1では不規則な凹凸の高低差が5μm程度に設定され(図15(a)参照)、実施例2では不規則な凹凸の高低差が1μm程度に設定され(図15(b)参照)、実施例3では不規則な凹凸の高低差が1μm未満に設定されている(図15(c)参照)。図15は、第2主面に形成された不規則な凹凸を観察したSEM画像である。
実施例1〜3及び比較例1において、n−型半導体基板のサイズは3mm×1.5mmに設定し、各p+型半導体領域、すなわち各画素のサイズは0.2mm×0.2mmに設定した。画素数は8に設定し、画素ピッチは300μmとに設定した。
結果を図16に示す。図16において、実施例1〜3の分光感度特性はT1〜T3で示され、比較例1の分光感度特性は特性T4で示されている。また、図16において、縦軸は分光感度(mA/W)を示し、横軸は光の波長(nm)を示している。一点鎖線にて示されている特性は、量子効率(QE)が100%となる分光感度特性を示し、破線にて示されている特性は、量子効率が50%となる分光感度特性を示している。
図16から分かるように、例えば1060nmにおいて、比較例1では分光感度が0.2A/W(QE=24%)である。これに対して、実施例1〜3では、それぞれ分光感度が0.63A/W(QE=74%)、0.61A/W(QE=72%)、0.58A/W(QE=68%)となっており、近赤外の波長帯域での分光感度が大幅に向上している。
そして、実施例1〜3では、不規則な凹凸の高低差が小さくなると、分光感度が低下している。これは、不規則な凹凸の高低差が小さくなることにより、不規則な凹凸が形成された面での光の反射、散乱、又は拡散の度合が低くなり、分光感度が低下したものと考えられる。したがって、第2の領域1b2に形成された不規則な凹凸21の高低差が第1の領域1b1に形成された不規則な凹凸11の高低差よりも小さい場合、第2の領域1b2における光の反射、散乱、又は拡散の度合が低くなり、画素間でのクロストークの発生を抑制することができると言える。
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
第1及び第2実施形態では、n−型半導体基板1全体を薄化しているが、これに限られることなく、図17及び図18に示されるように、n−型半導体基板1における複数のp+型半導体領域3が形成された部分を当該部分の周辺部分を残して第2主面1b側から薄化してもよい。部分的な薄化は、例えば水酸化カリウム溶液やTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム溶液)などを用いたアルカリエッチングによる異方性エッチングにより行なわれる。
図17に示されたフォトダイオードアレイPDA11及び図18に示されたフォトダイオードアレイPDA21は、n−型半導体基板1の周辺部分にも、不規則な凹凸11が形成されている。これにより、n−型半導体基板1の周辺部分の入射した光は、凹凸11にて全反射され、近くのn−型半導体基板1におけるp+型半導体領域3(pn接合)に対応する領域に進む。このため、n−型半導体基板1の周辺部分に入射した光も、n−型半導体基板1におけるp+型半導体領域3(pn接合)に対応する領域で確実に吸収される。したがって、フォトダイオードアレイPDA11,PDA21では、n−型半導体基板1の周辺部分において検出感度が低下することはなく、光検出感度が向上する。
本実施形態では、電極15をn−型半導体基板1の第1主面1a側に形成されたn+型半導体領域5に電気的に接触且つ接続しているが、これに限られない。例えば、電極15をn−型半導体基板1の第2主面1b側に形成されたアキュムレーション層10に電気的に接触且つ接続してもよい。この場合、第2実施形態においては、n−型半導体基板1の第2主面1bにおけるp+型半導体領域3に対向する領域外に、電極15を形成することが好ましい。n−型半導体基板1の第2主面1bにおけるp+型半導体領域3に対向する領域に電極15を形成すると、不規則な凹凸21が電極15により塞がれ、近赤外の波長帯域における分光感度が低下するという事象が生じるためである。
本実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA1,PDA2,PDA11,PDA21におけるp型及びn型の各導電型を上述したものとは逆になるよう入れ替えてもよい。
本実施形態では、アキュムレーション層10を形成した後に不規則な凹凸11,21を形成しているが、これに限られることなく、不規則な凹凸11,21を形成した後に、アキュムレーション層10を形成してもよい。
本発明は、上記実施形態として例示したフォトダイオードに限られることなく、フォトダイオードアレイ、アバランシェフォトダイオード、アバランシェフォトダイオードアレイなどの、アレイ状に配置された複数のpn接合を有するシリコン基板を備えた半導体光検出素子に適用することができる。