JP2011020853A - フリーガイドロールのスリップ防止方法、ウェブ、ウェブ搬送装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】駆動機構をもたないフリーガイドロールによるウェブ搬送で、スリップ判定トルクMの値を変化させる、張力、搬送速度、加速度、ロールの周速度と角加速度、などのパラメータを制御対象因子とし、制御対象因子の値を設定しスリップを防止しながらウェブ搬送において、実測と予測間の一致するか否かを判断、その補正係数考慮することでスリップ発生を防止した条件でウェブを搬送制御する。
【選択図】図2
Description
例えば、非特許文献1では、図12に示すようなフリーガイドロールとウェブにおいて、ウェブとロールの摩擦力から得られるトラクショントルク(=グリップ力)Mw[Nm]が各抵抗トルクの和Mb+Miを上回っている時に、すなわち下記の数式(1)のスリップ判定トルクM[Nm]が0を上回っている場合にスリップ無しと予測される。一方、スリップ判定トルクMが0以下の場合はスリップ有りと予測される。ここで、Mbはロール軸受に掛かるベアリング回転抵抗トルク[Nm]であり、Miはロールに掛かるロール慣性抵抗トルク[Nm]である。また、μはウェブとロールとの有効摩擦係数[-]、θ
はウェブのロールに対する抱角[rad]を、T1はウェブのロール入側における張力[N/m]を、Lはウェブ幅[m]を、Rはロール半径[m]を、Iはロールの慣性モーメント[Kg・m2]を、aはロールの角加速度[rad/s2]を表している。
3)により求められるrms合成表面粗さ[m]である。下記式(3)においてσrはロールのrms表面粗さ[m]であり、σwはウェブのrms表面粗さ[m]である。
体が気体の場合で、液体の場合は0.643を用いる。ηは周囲流体の粘度[Pa・s]、Urはロールの周速度[m/s]、Uwはウェブ搬送速度[m/s]である。βは無次元抱角[-]である。
補正係数の値を求めるに当たっては、より多数の搬送条件において実際のスリップ評価を行い、評価結果と予測が一致する搬送条件数がより多くなるような適切な補正係数の値を得ることが望ましい。請求項6のウェブ搬送制御方法では、適切な補正係数の値を求めるために多数の搬送条件におけるスリップ評価を行うに際し、いちいちラインを停止する必要がない。
〔ウェブ搬送装置の構成〕
まず、本実施形態に係るウェブ搬送装置の概略を説明する。本実施形態のウェブ搬送装置は、ウェブ供給ロール、ウェブ巻き取りロール及びウェブ供給ロールとウェブ巻き取りロールとの間に配置されるその他の各種ロールにより構成される。その他の各種ロールとは、例えば駆動機構を有しないフリーガイドロール、ウェブの張力を検出するための張力検出ロール、モータにより駆動される駆動ロール、ウェブ張力を調整するためのダンサーロール、ウェブ巻き取りロールを押圧するタッチ巻き又は一定間隔を保つニア巻きを行うタッチロール/ニアロール等を指す。そして、ウェブはウェブ供給ロールから供給され、上述した各種ロールを経てウェブ巻き取りロールに巻き取られる。
ここで、本実施形態に係るウェブ搬送装置を構成するフリーガイドロールの一つであるフリーガイドロールGは、ライン運転中にウェブの抱角θを0°〜180°の範囲内で調整可能である。このフリーガイドロールG付近のウェブの搬送速度Uw及びロール周速度UrはそれぞれフリーガイドロールG付近に設けられた速度計により計測される。また、フリーガイドロールGの入口側におけるウェブ張力T1は、フリーガイドロールGの搬送方向上流側隣に配置される張力検出ロールに設けられたロードセルにより計測される。
上記のウェブ搬送装置を用いフリーガイドロールGを対象として、実際のスリップ発生と理論モデルによる予測との違いを検証すべくスリップ評価実験を行った。
ウェブ搬送速度UwとフリーガイドロールGの周速度Urの速度差が大きければスリップが発生する。この実験では、フリーガイドロールGにおいてウェブを、ウェブ搬送速度Uwを加速→定速→減速と切り替えて搬送させた。そして、加速、定速の各段階について以下の数式(7)により求められるスリップ率[%]が0.1%以上ある場合にスリップが有り、0.1%未満の場合にスリップ無しと評価した。
ここでフリーガイドロールGには梨地ロールを用いた。また、ウェブにはPET基材(三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製ダイヤホイルT100G38)を用いた。またロール周速度Urとウェブ搬送速度Uwを計測する速度計にはアクト電子株式会社製の非接触レーザードップラー速度計M1502を用いた。
上記のように条件を振った実験因子とその実験条件は以下の通りである。
抱角 :0°、90°、180°
張力 :20N/m〜200N/mの範囲において20N/m刻み
加速度 :0.1m/s2、0.3m/s2
定速度 :20m/s〜200m/sの範囲において20m/s刻み
なお、これらの図では○領域をスリップ無し領域として白色、△及び×の領域をスリップ領域として灰色に色分けしている。
上記評価実験と同じ条件において上記式(1)〜(4)の予測式を用いてスリップ予測を行った。なお、スリップ予測に必要なパラメータのうち、ウェブとロール間の静摩擦係数μs、ロールのrms表面粗さσr、ウェブのrms表面粗さσw、軸受のベアリング回転抵抗トルクMbの求め方については後述している。その結果を図2〜7各図の(B)に示す。図2〜7(A)との比較から明らかなように、既存の予測式を用いる予測は、十分な精度とは言えない結果となった。
次に、上記式(2)及び上記式(3)に対して行った補正について説明する。この補正は、上記実験結果と整合するよう、必要最小限の補正係数を導入し、上記式(5)、上記式(6)としたものである。本実施形態において導入した補正係数は、流体潤滑摩擦係数μfと、表面粗さ補正係数αである。
以上をまとめると、補正後のウェブとロールとの有効摩擦係数μとウェブの浮上量hとの関係は図8のようになる。
次に、スリップ評価実験の結果とスリップ予測とのフィッティングにより、流体潤滑摩擦係数μfと表面粗さ補正係数αの最適値を求める方法について図9に基づき説明する。
このフィッティングにおいては、△と×は区別せず同じスリップ有り条件として判定する。すなわち、実験結果と予測が○同士、×同士、△同士の場合だけでなく、△と×(×と△)の場合も一致するとし、○と×(×と○)、○と△(△と○)の場合は一致しないとする。そして、上記の計600の実験結果について予測と比較し、実験結果が予測と一致する条件を0、一致しない条件は1とし、1の数の合計をF値とする。
その上で、μfの値は0≦μf≦0.1の範囲で0.0002刻みの合計501通り、αの値は1≦α≦3の範囲で0.01刻みの合計201通りで変更し、総計100701通りのF値を求め、それが最少となる組合せを探索した。実験結果と最も整合した、すなわちF値が最少だったのは、α=2.5、μf=0.001の場合(F値=3)だった。この値を挿入した式(5)、(6)と式(1)及び式(4)を用いて得られたスリップ予測を図2〜7各図の(C)に示す。
図2〜図7により明らかなように、補正前の予測式(2)、(3)を用いるのに比べ、補正した予測式(5)、(6)を用いることにより、スリップ予測の精度は大幅に改善される。
次に、上記の予測式(5)、(6)を用いたウェブ搬送制御について説明する。
式(5)、(6)を用いてスリップを防止しうる制御対象因子の値を算出する上では、補正係数μf及びαの値を所定範囲内、または所定値に設定する必要がある。
以下では、フリーガイドロールGを備える上述のウェブ搬送装置を用いたウェブ搬送制御の一例を図10〜図11に基づき説明する。
ここで探索部には、予め、ロール半径R、ウェブ幅L、ウェブrms表面粗さσw、ロールrms表面粗さσr、ロールの慣性モーメントI、周囲流体粘度η等、式(1)、(4)、(5)、(6)を用いてスリップを予測するために必要なパラメータの値が記憶されている。また、後述の式(9)〜(11)を用い、ウェブ張力T、ロール周速度Ur、抱角θ等の関数としてベアリング回転抵抗トルクの値を求めるプログラムも記憶されている。
探索部は、まずステップ(以下Sと表す)1において、送られてきた速度差の値を記憶する。ここで、探索部は、ロール入側のウェブ張力T1の現状設定値を確認する。また、この時点において、補正係数μfとαには各所定数値が設定されている。
S2で記憶した速度差が閾値以上ならば(又は上記式(8)のスリップ率が閾値を超えていれば)(S2:YES)、S3において探索部は、ロール入側のウェブ張力T1の現状設定値及び、ロール周速度Urの現状設定値、抱角θの現状設定値等から上述したプログラムによりベアリング回転抵抗トルクMbの値を求め、またロール慣性モーメントIの値及びロール角加速度aの現状設定値からフリーガイドロールGに掛かるロール慣性抵抗トルクMiを求め、Mb+Miの値を回転抵抗値として記憶する。
次に、S5において、S4で記憶したグリップ力Mwの理想値から、μf及びαの所定数値等を用い、上記式(1)、(4)、(5)、(6)によりロール入側のウェブ張力T1の値を算出し、T1最適設定値として記憶する。
式(1)で示されるようにT1が大きいほどグリップ力Mwは大きくなる傾向にあるから、最適設定値が現状設定値よりも大きい場合は、回転抵抗値が、T1の現状設定値から式(1)、(4)、(5)、(6)を用いて得られるグリップ力Mwの予想値(図10の予想グリップ力)よりも大きい、すなわち、μfとαを上記所定数値とした上記式により実際のスリップ発生現象を予測できていると判断できる。
よってこの場合(S6:YES)、S8において、最適設定値から現状設定値を引いた値をT1の制御量として算出し、その値を操作部(図11参照)に送って当該処理を終了する。
上述したように、ウェブ搬送速度UwとフリーガイドロールGの周速度Urとの速度差からなる誤差信号が送られると、探索部は、上記探索処理によりスリップを防止するために必要な制御対象因子の制御量の値を操作部に送る。そして、操作部は送られた制御量の値に基づいてウェブ搬送装置を操作する。これによりフリーガイドロールGとウェブの間の摩擦力(トラクション特性)は、ロール周速度Urがウェブ搬送速度Uwに近づくように、すなわちスリップを防止するように変化する。
よって、制御対象因子の値を設定する際に前記式(1)〜(3)を用いるにあたり、式(2)又は/及び式(3)は補正係数導入後の式となる。このため、制御対象因子の値を、スリップを防止するのにより適切な値に設定することができ、スリップによってウェブに傷が付くのを防止して安定的にウェブを搬送することができる。
例えば、本実施形態の制御例においては、スリップ判定トルクMの値に影響を与える因子のうち、ライン運転中に直接操作できるウェブ張力T、ウェブ搬送速度Uw、ウェブ搬送の加速度、ロールの周速度Ur、ロールの角加速度a、ウェブのロールに対する抱角θを制御対象因子としている。しかし、本発明に係るウェブ搬送制御方法においては、ライン停止中に、ロール半径R、ウェブ幅L、ウェブ表面粗さ、ロール表面粗さ、ロール慣性モーメント、ロール軸受のジャーナル直径db、ロール自重の値を設定する、すなわち、スリップを防止するためにロール、ウェブ、軸受の適切な設計を行うことも含まれる。後述するようにロール軸受のジャーナル直径、ロール自重は後のベアリング回転抵抗トルクMbの値に影響する因子であるためここに含んでいる。また、他の制御対象因子の値を操作することにより制御しうるベアリング回転抵抗トルク、ロール慣性抵抗トルクもスリップ判定トルクMを変化させる因子であるから、制御対象因子とすることができる。
本実施形態におけるウェブ搬送制御において必要なパラメータの求め方を以下説明する。
(1)静摩擦係数μs
ウェブの両端にそれぞれ水を入れたペットボトルの重りを付けて、抱角180°においてロールをまたがせ、片側のペットボトルにチューブラーポンプで水を定速滴下し、ウェブがロール上で滑りだす瞬間の各ペットボトル重量の比に基づき下記式(8)により求めた。下記式(8)のF1は水を滴下される側のペットボトルの重量[N]、F0はもう一方のペットボトルの重量である。
ロールとウェブの合成表面粗さσを求めるのに必要なrms表面粗さσrは、ミツトヨ製SJ−301(テーパー60°・先端R2μmの円錐型触針、測定力0.75mN)を用いた。測定条件は以下の通りである。
規格:JIS2001、粗さ曲線:R、フィルタ:GAUSS、測定速度:0.5mm/s、基準長さ(カットオフ値)及び評価長さ:JISB0633に準拠
また、ウェブのrms表面粗さσwは、OLYMPUS社製共焦点レーザー顕微鏡OLS−3000を用いた。測定条件は以下の通りである。
対物レンズ倍率:100倍、フィルター処理:平滑化処理(メディアン、マスクサイズ5)、傾き補正:XY方向とも手動、Z軸移動ステップ間隔:0.1μmピッチ
ロール軸受の回転抵抗トルクMbは、上述したように、ウェブ張力T、ロール周速度Ur、抱角θ等の関数として表すことができる。詳細を以下説明する。
ロールにウェブが載せられていない状態(軸受に負荷されるラジアル荷重がガイドロール自重のみの状態)においてロールの回転が減速するときに減速時にはロールの慣性抵抗トルクMiとベアリングの回転抵抗トルクMbが釣り合うことを利用して下記のように求められる。
まず、計測したい軸受を装着したロールをウェブ搬送装置に設置し、ロールを、その周速が予測したい速度範囲の上限を超えるまで回転させる。そして、ロールが自然に減速している間、経過時間に対するロール周速度Urを計測する。これにより求められるロールの角加速度aに既知のロール慣性モーメントIを掛けあわせると、軸受に負荷されるラジアル荷重がガイドロールGの自重のみの場合における軸受の回転抵抗Mb0[Nm]をロール周速度Urの関数として求めることができる。
次に、下記式(9)を用いてこのMb0から軸受の動摩擦係数μb[-]を求める。こ
こでPrは、ウェブがロールに載せられていない状態の軸受の荷重であり、ガイドロール自重[kg]×9.8[m/s2]として表される。また、dbは軸受のジャーナル直径
[m]である。
Mw トラクショントルク[Nm]
Mb ベアリング回転抵抗トルク[Nm]
Mi ロール慣性抵抗トルク[Nm]
e ネイピア数[−]
μ ウェブとロール間の有効摩擦係数[−]
μs ウェブとロール間の静摩擦係数[−]
θ 抱角 [rad]
T ウェブ張力[N/m]
T1 ウェブ入口張力[N/m]
L ウェブ幅[m]
R ロール半径[m]
I ロール慣性モーメント[kgm2]
a 角加速度[rad/s2]
h ウェブ浮上量[m]
σ 合成表面粗さ[m]
σr ロールのrms表面粗さ[m]
σw ウェブのrms表面粗さ[m]
ε ウェブパラメータ[1/s]
λ 無次元ウェブ幅[−]
β 無次元抱角[−]
η 周囲流体粘度[Pa・s]
σcorr 補正合成表面粗さ[m]
α 表面粗さ補正係数[−]
μf 流体潤滑摩擦係数[−]
Claims (8)
- 駆動機構を有しないフリーガイドロールにおいてウェブを搬送するに当たり、
下記式(1)のスリップ判定トルクMの値を変化させる前記ウェブの張力、ウェブ搬送速度、ウェブ搬送の加速度、前記ロールの周速度、ロールの角加速度、ウェブのロールに対する抱角、ロール軸受に掛かるベアリング回転抵抗トルク、ロールに掛かるロール慣性抵抗トルク、ロール径、ウェブ幅、ウェブの表面粗さ、ロール表面粗さ、ロール慣性モーメント、ロール軸受のジャーナル直径、ロール自重のいずれか一つ又は二つ以上を制御対象因子とし、
下記式(1)、下記式(2)及び下記式(3)を用いて前記制御対象因子の値を設定することにより、スリップを防止しながらウェブ搬送を制御する方法において、
下記式(2)又は/及び下記式(3)に予め補正係数を導入することを特徴とするウェブ搬送制御方法。
- 前記補正係数は、h>3σの場合における前記式(2)右辺の0に代わる流体潤滑摩擦係数μf(0≦μf≦0.1)を含むことを特徴とする請求項1に記載のウェブ搬送制御方法。
- 前記補正係数は、前記式(3)の右辺に乗じる表面粗さ補正係数αを含むことを特徴する請求項1又は請求項2に記載のウェブ搬送制御方法。
- 前記ウェブを前記ロールにおいて所定の搬送条件下で搬送させ、ウェブ搬送速度とロール周速度との速度差を検出し、
前記検出した速度差に基づき実際にスリップが起きているか否か評価し、
前記補正係数を、前記搬送条件について前記式(1)、前記補正係数導入後の前記式(2)及び前記補正係数導入後の前記式(3)を用いて得られるスリップ予測と前記評価結果とが整合する値とすることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のウェブ搬送制御方法。 - ライン運転中に繰り返し前記速度差の検出及び前記評価を行うとともに、
前記評価を行う度に、前記スリップ予測と前記評価が一致するか判定し、一致しない場合、前記補正係数の値を前記スリップ予測と前記評価が一致する値に修正することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のウェブ搬送制御方法。 - 請求項1乃至6のいずれかに記載のウェブ搬送制御方法を用いて生産されるウェブ。
- 駆動機構を有しないフリーガイドロールにおいてウェブを搬送させるウェブ搬送装置であって、
前記ウェブの張力、ウェブ搬送速度、ウェブ搬送の加速度、前記ロールの周速度、ロールの角加速度、ウェブのロールに対する抱角のうちいずれか一つ又は二つ以上の値を、制御対象因子の値として操作する操作手段と、
下記式(1)、下記式(2)、下記式(3)を用いてスリップを防止する前記制御対象因子の値を算出する算出手段と、を有し、
前記操作手段は、前記算出手段が算出した値に基づき前記制御対象因子の値を操作し、
下記式(2)又は/及び下記式(3)には補正係数が導入されていることを特徴とするウェブ搬送装置。
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