JP2011020853A - フリーガイドロールのスリップ防止方法、ウェブ、ウェブ搬送装置 - Google Patents

フリーガイドロールのスリップ防止方法、ウェブ、ウェブ搬送装置 Download PDF

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Abstract

【課題】フリーガイドロールのウェブ搬送でのスリップ防止制御の精度向上。
【解決手段】駆動機構をもたないフリーガイドロールによるウェブ搬送で、スリップ判定トルクMの値を変化させる、張力、搬送速度、加速度、ロールの周速度と角加速度、などのパラメータを制御対象因子とし、制御対象因子の値を設定しスリップを防止しながらウェブ搬送において、実測と予測間の一致するか否かを判断、その補正係数考慮することでスリップ発生を防止した条件でウェブを搬送制御する。
【選択図】図2

Description

本発明は、粘着テープ、粘着シート及び光学フィルム等の柔軟な連続素材(以下ウェブという)を製造するプロセスにおいて、ウェブの搬送に関し、駆動機構を有しないフリーガイドロールと搬送されるウェブとの接触面で両者の速度差が生じる現象、すなわちスリップを防止してウェブ搬送を制御する方法、その方法を用いて生産されるウェブ及びウェブ搬送装置に関する。
近年、ウェブを複数のローラで支持しながら搬送する搬送処理技術が広範囲の産業分野で利用され、より一層の高精度化が求められている。このため、この技術に関する学術的研究が進み、各欠陥対策に理論的なアプローチが可能となってきている。その一つに、駆動機構を有しないフリーガイドロールの回転速度と、搬送されるウェブ速度との間に速度差が生じる、すなわち両者がスリップすることによりウェブに傷がついてしまう問題が挙げられる。
例えば、非特許文献1では、図12に示すようなフリーガイドロールとウェブにおいて、ウェブとロールの摩擦力から得られるトラクショントルク(=グリップ力)Mw[Nm]が各抵抗トルクの和Mb+Miを上回っている時に、すなわち下記の数式(1)のスリップ判定トルクM[Nm]が0を上回っている場合にスリップ無しと予測される。一方、スリップ判定トルクMが0以下の場合はスリップ有りと予測される。ここで、Mbはロール軸受に掛かるベアリング回転抵抗トルク[Nm]であり、Miはロールに掛かるロール慣性抵抗トルク[Nm]である。また、μはウェブとロールとの有効摩擦係数[-]、θ
はウェブのロールに対する抱角[rad]を、T1はウェブのロール入側における張力[N/m]を、Lはウェブ幅[m]を、Rはロール半径[m]を、Iはロールの慣性モーメント[Kg・m]を、aはロールの角加速度[rad/s]を表している。
Figure 2011020853
この有効摩擦係数μはロール・ウェブ間に空気が巻き込まれてウェブが浮上することにより変化することが知られている。非特許文献2に示すモデルではウェブとロール間の真実接触面積をヘルツの弾性接触理論を元に定式化し、さらに流体粘性力を考慮することで有効摩擦係数μが精度良く予測できるとしている。しかし、そのためには表面粗さの突起総数や等価半径といった値が必要となり、これらを測定することが非常に困難であるため、応用はほとんどなされていない。
そこで、非特許文献1では有効摩擦係数μの簡便な推算法として、下記式(2)のように、空気巻き込みによるウェブの浮上量h[m]に対する場合分けを用いる方法が提唱され、広く応用されている。
Figure 2011020853
ここで、μsはウェブとロール間の静摩擦係数[-]である。また、σは下記の数式(
3)により求められるrms合成表面粗さ[m]である。下記式(3)においてσrはロールのrms表面粗さ[m]であり、σwはウェブのrms表面粗さ[m]である。
Figure 2011020853
ウェブの浮上量hは、下記の数値実験公式(4)により得られる。なお、式(4)のεはウェブパラメータ[1/s]、λは無次元ウェブ幅[-]である。0.589は周囲流
体が気体の場合で、液体の場合は0.643を用いる。ηは周囲流体の粘度[Pa・s]、Urはロールの周速度[m/s]、Uwはウェブ搬送速度[m/s]である。βは無次元抱角[-]である。
Figure 2011020853
なお、式(2)では、h<σの領域は固体潤滑領域と呼ばれ、ウェブとロールの有効摩擦係数μは両者の固体表面の接触のみで決まると仮定し、静摩擦係数μsと同等とされる。一方、h>3σの領域は流体潤滑領域と呼ばれ、ウェブとロールとの間に巻きこまれた空気によって、ウェブが完全に浮上していると見なされ、有効摩擦係数μは0とされている。σ≦h≦3σの領域は固体潤滑と流体潤滑の混合潤滑領域とされ、有効摩擦係数μはウェブの浮上量hの増加に伴ってμsから直線的に減少し、h=3σで0に至る。これらの関係を図示すると図13のようになる。
橋本巨著、「ウェブハンドリングの基礎理論と応用」、加工技術協会、2008年4月10日発行、p.43〜127 H.Hashimoto,「Theoretical and Experimental Investigation into Generation of Wrinkling and Slip in Plastic-Films under Transportation」, Journal of Advanced Mechanical Design, Systems, and Manufacturing vol.4, 2010
以上述べてきたスリップ予測のための予測式(1)〜(4)を用いMを算出して得られるスリップ予測は、スリップ発生の実状を反映する精度が不十分である。よって、上記予測式を用いてスリップによるウェブの傷を防止しうるウェブの搬送条件、ウェブ搬送装置の仕様等を決定しようとしても、必ずしも適切な搬送条件や装置仕様を決定できないという問題がある。
上記課題を解決するため、請求項1のウェブ搬送制御方法は、駆動機構を有しないフリーガイドロールにおいてウェブを搬送するに当たり、前記式(1)のスリップ判定トルクMの値を変化させる前記ウェブの張力、ウェブ搬送速度、ウェブ搬送の加速度、前記ロールの周速度、ロールの角加速度、ウェブのロールに対する抱角、ロール軸受に掛かるベアリング回転抵抗トルク、ロールに掛かるロール慣性抵抗トルク、ロール径、ウェブ幅、ウェブの表面粗さ、ロール表面粗さ、ロール慣性モーメント、ロール軸受のジャーナル直径、ロール自重のいずれか一つ又は二つ以上を制御対象因子とし、前記式(1)、前記式(2)及び前記式(3)を用いて前記制御対象因子の値を設定することにより、スリップを防止しながらウェブ搬送を制御する方法において、前記式(2)又は/及び前記式(3)に予め補正係数を導入することを特徴とする。
また、請求項2のウェブ搬送制御方法は、請求項1に記載のウェブ搬送制御方法において、前記補正係数は、h>3σの場合における前記式(2)右辺の0に代わる流体潤滑摩擦係数μf(0≦μf≦0.1)を含むことを特徴とする。
また、請求項3のウェブ搬送制御方法は、請求項1又は請求項2に記載のウェブ搬送制御方法において、前記補正係数は、前記式(3)の右辺に乗じる表面粗さ補正係数αを含むことを特徴する。
また、請求項4のウェブ搬送制御方法は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のウェブ搬送制御方法において、前記補正係数は前記流体潤滑摩擦係数μf及び前記表面粗さ補正係数αであり、前記表面粗さ補正係数αの値の範囲は0≦α≦3とし、前記補正係数を導入した前記式(2)は下記式(5)であると共に、前記補正係数を導入した前記式(3)は下記式(6)であることを特徴とする。ここで、σcorrは補正後の合成表面粗さである。
Figure 2011020853
Figure 2011020853
また、請求項5のウェブ搬送制御方法は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のウェブ搬送制御方法において、前記ウェブを前記ロールにおいて所定の搬送条件下で搬送させ、ウェブ搬送速度とロール周速度との速度差を検出し、前記検出した速度差に基づき実際にスリップが起きているか否か評価し、前記補正係数を、前記搬送条件について前記式(1)、前記補正係数導入後の前記式(2)及び前記補正係数導入後の前記式(3)を用いて得られるスリップ予測と前記評価結果とが整合する値とすることを特徴とする。
また、請求項6のウェブ搬送制御方法は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のウェブ搬送制御方法において、ライン運転中に繰り返し前記速度差の検出及び前記評価を行うとともに、前記評価を行う度に、前記スリップ予測と前記評価が一致するか判定し、一致しない場合、前記補正係数の値を前記スリップ予測と前記評価が一致する値に修正することを特徴とする。
また、請求項7に記載のウェブは、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のウェブ搬送制御方法を用いて生産されることを特徴とする。
また、請求項8に記載のウェブ搬送装置は、駆動機構を有しないフリーガイドロールにおいてウェブを搬送させるウェブ搬送装置であって、前記ウェブの張力、ウェブ搬送速度、ウェブ搬送の加速度、前記ロールの周速度、ロールの角加速度、ウェブのロールに対する抱角のうちいずれか一つ又は二つ以上の値を、制御対象因子の値として操作する操作手段と、前記式(1)、前記式(2)及び前記式(3)を用いてスリップを防止する前記制御対象因子の値を算出する算出手段と、を有し、前記操作手段は、前記算出手段が算出した値に基づき前記制御対象因子の値を操作し、前記式(2)又は/及び前記式(3)には補正係数が導入されていることを特徴とする。
請求項1乃至請求項4のウェブ搬送制御方法では、スリップ予測のための式(2)又は/及び式(3)に予め補正係数を導入する。よって請求項1乃至請求項4のウェブ搬送制御方法において制御対象因子の値を設定する際に式(1)〜(3)を用いるにあたり、式(2)又は/及び式(3)は補正係数導入後の式となる。このため、制御対象因子の値はスリップを防止するのにより適切な値となり、スリップによってウェブに傷が付くのを防止して安定的にウェブを搬送することができる。
また、請求項5のウェブ搬送制御方法によれば、式(2)又は/及び式(3)に予め導入する補正係数の値は、実際のスリップ発生状況に整合する値となるため、式(1)及び補正係数導入後の式(2)及び補正係数導入後の式(3)を用いて設定する制御対象因子の値はスリップを防止するのに更に適切な値となる。
また、請求項6のウェブ搬送制御方法では、実際にスリップが起きているか否か評価→該評価とスリップ予測とが一致するかを判定→一致しない場合は補正係数の値を修正→再びスリップ評価を行う、という工程をライン運転中に繰り返す。
補正係数の値を求めるに当たっては、より多数の搬送条件において実際のスリップ評価を行い、評価結果と予測が一致する搬送条件数がより多くなるような適切な補正係数の値を得ることが望ましい。請求項6のウェブ搬送制御方法では、適切な補正係数の値を求めるために多数の搬送条件におけるスリップ評価を行うに際し、いちいちラインを停止する必要がない。
また、請求項7のウェブは、請求項1乃至請求項6のいずれかのウェブ搬送制御方法を用いて生産されるため、スリップによる傷は、従来のウェブより少ないものとなる。
また、請求項8のウェブ搬送装置は、算出手段が、式(1)及び補正係数導入後の式(2)、補正係数導入後の式(3)を用いてスリップを防止しうる制御対象因子の値を算出し、その値に基づいて操作手段が制御対象因子の値を操作する。よって、制御対象因子の値はスリップを防止するよう、適切に調整されるため、スリップによってウェブに傷が付くのを防止して安定的にウェブを搬送することができる。
スリップ評価実験の条件を示す表である。 抱角10°、加速度0.1m/sの場合における、スリップ評価実験の結果とスリップ予測とを比較するグラフである。(A)は実験結果、(B)補正前の予測式によるスリップ予測、(C)はα2.5、μf0.001とした補正後の予測式によるスリップ予測である。 抱角10°、加速度0.3m/sの場合における、スリップ評価実験結果とスリップ予測とを比較するグラフである。(A)は実験結果、(B)補正前の予測式によるスリップ予測、(C)はα2.5、μf0.001とした補正後の予測式によるスリップ予測である。 抱角90°、加速度0.1m/sの場合の、スリップ評価実験の結果とスリップ予測とを比較するグラフである。(A)は実験結果、(B)補正前の予測式によるスリップ予測、(C)はα2.5、μf0.001とした補正後の予測式によるスリップ予測である。 抱角90°、加速度0.3m/sの場合に、スリップ評価実験の結果とスリップ予測とを比較するグラフである。(A)は実験結果、(B)補正前の予測式によるスリップ予測、(C)はα2.5、μf0.001とした補正後の予測式によるスリップ予測である。 抱角180°、加速度0.1m/sの場合に、スリップ評価実験の結果とスリップ予測とを比較するグラフである。(A)は実験結果、(B)補正前の予測式によるスリップ予測、(C)はα2.5、μf0.001とした補正後の予測式によるスリップ予測である。 抱角180°、加速度0.3m/sの場合に、スリップ評価実験の結果とスリップ予測とを比較するグラフである。(A)は実験結果、(B)補正前の予測式によるスリップ予測、(C)はα2.5、μf0.001とした補正後の予測式によるスリップ予測である。 補正後の予測式におけるウェブとロールの有効摩擦係数μとウェブの浮上量hとの関係を示すグラフである。 補正係数μf及びαの値を求めるためのフィッティング方法を説明する図である。 探索部で行われる探索処理を示すフローチャートである。 補正後の予測式を用いてスリップ防止しながらウェブ搬送を制御する制御系を説明するブロック線図である。 フリーガイドロールの物理モデルを説明する模式図である。 補正前の予測式に係るウェブとロールの有効摩擦係数μとウェブの浮上量hとの関係を示すグラフである。
以下では、図1〜図11を用いて、本発明の一実施形態について説明する。
〔ウェブ搬送装置の構成〕
まず、本実施形態に係るウェブ搬送装置の概略を説明する。本実施形態のウェブ搬送装置は、ウェブ供給ロール、ウェブ巻き取りロール及びウェブ供給ロールとウェブ巻き取りロールとの間に配置されるその他の各種ロールにより構成される。その他の各種ロールとは、例えば駆動機構を有しないフリーガイドロール、ウェブの張力を検出するための張力検出ロール、モータにより駆動される駆動ロール、ウェブ張力を調整するためのダンサーロール、ウェブ巻き取りロールを押圧するタッチ巻き又は一定間隔を保つニア巻きを行うタッチロール/ニアロール等を指す。そして、ウェブはウェブ供給ロールから供給され、上述した各種ロールを経てウェブ巻き取りロールに巻き取られる。
ここで、本実施形態に係るウェブ搬送装置を構成するフリーガイドロールの一つであるフリーガイドロールGは、ライン運転中にウェブの抱角θを0°〜180°の範囲内で調整可能である。このフリーガイドロールG付近のウェブの搬送速度Uw及びロール周速度UrはそれぞれフリーガイドロールG付近に設けられた速度計により計測される。また、フリーガイドロールGの入口側におけるウェブ張力T1は、フリーガイドロールGの搬送方向上流側隣に配置される張力検出ロールに設けられたロードセルにより計測される。
ここで、ウェブ搬送装置の全体制御を行うコントローラには、後述する探索部(図11参照)と操作部(図11参照)が含まれる。操作部は、ロール入側のウェブ張力T1、ウェブ搬送速度Uw、ウェブ搬送加速度、抱角θを、外部から入力可能な各現状設定値に基づき変更操作する。ロール周速度Ur、ロール角加速度aも、現状設定値に基づき、ウェブ搬送速度を加減することにより操作する。
〔スリップ評価実験〕
上記のウェブ搬送装置を用いフリーガイドロールGを対象として、実際のスリップ発生と理論モデルによる予測との違いを検証すべくスリップ評価実験を行った。
ウェブ搬送速度UwとフリーガイドロールGの周速度Urの速度差が大きければスリップが発生する。この実験では、フリーガイドロールGにおいてウェブを、ウェブ搬送速度Uwを加速→定速→減速と切り替えて搬送させた。そして、加速、定速の各段階について以下の数式(7)により求められるスリップ率[%]が0.1%以上ある場合にスリップが有り、0.1%未満の場合にスリップ無しと評価した。
Figure 2011020853
そして、ウェブの搬送が加速状態、定速状態のいずれにおいてもウェブがガイドロールGに対しスリップしていない場合を○、加速状態ではスリップするが、定速状態ではスリップしない場合を△、加速状態、定速状態のいずれもスリップする場合を×として評価した。
ここでフリーガイドロールGには梨地ロールを用いた。また、ウェブにはPET基材(三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製ダイヤホイルT100G38)を用いた。またロール周速度Urとウェブ搬送速度Uwを計測する速度計にはアクト電子株式会社製の非接触レーザードップラー速度計M1502を用いた。
以上のスリップ評価を、ウェブの抱角θを3種類、ウェブ搬送の加速度を2種類、ロール入側のウェブ張力T1を10種類、加速後一定になった時のウェブ搬送速度Uwを10種類の計600通りについて調べた。
上記のように条件を振った実験因子とその実験条件は以下の通りである。
抱角 :0°、90°、180°
張力 :20N/m〜200N/mの範囲において20N/m刻み
加速度 :0.1m/s、0.3m/s
定速度 :20m/s〜200m/sの範囲において20m/s刻み
その他の実験条件を図1の表に示す。
上記実験結果を図2〜7各図の(A)に示す。ウェブの抱角θ・ウェブ搬送の加速度の条件一組に対して、ロール入側のウェブ張力T1、定速時のウェブ搬送速度Uwの条件を振った100通りの実験結果が得られ、抱角θと加速度の組合せは6通りなので合計600通りの実験結果が得られた。
なお、これらの図では○領域をスリップ無し領域として白色、△及び×の領域をスリップ領域として灰色に色分けしている。
〔補正前の予測式によるスリップ予測〕
上記評価実験と同じ条件において上記式(1)〜(4)の予測式を用いてスリップ予測を行った。なお、スリップ予測に必要なパラメータのうち、ウェブとロール間の静摩擦係数μs、ロールのrms表面粗さσr、ウェブのrms表面粗さσw、軸受のベアリング回転抵抗トルクMbの求め方については後述している。その結果を図2〜7各図の(B)に示す。図2〜7(A)との比較から明らかなように、既存の予測式を用いる予測は、十分な精度とは言えない結果となった。
〔補正係数の導入〕
次に、上記式(2)及び上記式(3)に対して行った補正について説明する。この補正は、上記実験結果と整合するよう、必要最小限の補正係数を導入し、上記式(5)、上記式(6)としたものである。本実施形態において導入した補正係数は、流体潤滑摩擦係数μfと、表面粗さ補正係数αである。
流体潤滑摩擦係数μfを導入した理由について説明する。補正前の式(2)では、流体潤滑状態において、ウェブは全て浮上するので有効摩擦係数μは0とされていた。しかし、現実にはウェブの幅方向や流れ方向において部分的な接触も予想され、また流体そのものが伝達する摩擦力も考えられることから、完全な0では無いと予想して、h>3σcorrの場合の式(5の下段式)に導入した。これと整合性を取るためσcorr≦h≦3σcorrの場合の式(5の中段式)も補正している。ここで、μfの値は理論的に流体潤滑状態における摩擦係数とみなせるので、少なくとも固体潤滑状態の静摩擦係数μsよりも小さなオーダーである必要があること、すなわち0≦μf≦0.1であることが望ましい。
また、表面粗さ補正係数αは、表面粗さの計測値を補正するために導入している。補正前の式(2)及び式(3)は、ウェブ浮上量hに対するウェブとロールの真実接触を確率的に扱った接触力学モデルに基づいて構築されており、そのため表面粗さの数値は予測結果に大きな影響を及ぼす。しかし、その測定方法や固体潤滑から境界潤滑へ移行する閾値、境界潤滑から流体潤滑へ移行する閾値などは、絶対的な定義や根拠が無く、この部分はそれぞれの実験系において個別に調整しなければならない。この搬送系では、後述するようにロールrms表面粗さσrを測定する過程でJIS規格に準拠した評価高さを用いているが、この評価高さはミクロレベルを想定している。よって、上記のように測定されたロールrms表面粗さσrは、ロール幅1.5mというマクロレベルにおける実際の表面粗さとはずれが生じると考えられた。なお、αの値は、0≦α≦3の範囲内であることが望ましい。
以上をまとめると、補正後のウェブとロールとの有効摩擦係数μとウェブの浮上量hとの関係は図8のようになる。
〔補正係数値の探索〕
次に、スリップ評価実験の結果とスリップ予測とのフィッティングにより、流体潤滑摩擦係数μfと表面粗さ補正係数αの最適値を求める方法について図9に基づき説明する。
このフィッティングにおいては、△と×は区別せず同じスリップ有り条件として判定する。すなわち、実験結果と予測が○同士、×同士、△同士の場合だけでなく、△と×(×と△)の場合も一致するとし、○と×(×と○)、○と△(△と○)の場合は一致しないとする。そして、上記の計600の実験結果について予測と比較し、実験結果が予測と一致する条件を0、一致しない条件は1とし、1の数の合計をF値とする。
その上で、μfの値は0≦μf≦0.1の範囲で0.0002刻みの合計501通り、αの値は1≦α≦3の範囲で0.01刻みの合計201通りで変更し、総計100701通りのF値を求め、それが最少となる組合せを探索した。実験結果と最も整合した、すなわちF値が最少だったのは、α=2.5、μf=0.001の場合(F値=3)だった。この値を挿入した式(5)、(6)と式(1)及び式(4)を用いて得られたスリップ予測を図2〜7各図の(C)に示す。
図2〜図7により明らかなように、補正前の予測式(2)、(3)を用いるのに比べ、補正した予測式(5)、(6)を用いることにより、スリップ予測の精度は大幅に改善される。
〔補正後の予測式を用いた制御〕
次に、上記の予測式(5)、(6)を用いたウェブ搬送制御について説明する。
式(5)、(6)を用いてスリップを防止しうる制御対象因子の値を算出する上では、補正係数μf及びαの値を所定範囲内、または所定値に設定する必要がある。
以下では、フリーガイドロールGを備える上述のウェブ搬送装置を用いたウェブ搬送制御の一例を図10〜図11に基づき説明する。
まずこの制御例の一環として、探索部が制御対象因子の制御量を算出する探索処理について、ロール入側のウェブ張力T1を制御対象因子に設定した場合を例に図10に基づき説明する。
ここで探索部には、予め、ロール半径R、ウェブ幅L、ウェブrms表面粗さσw、ロールrms表面粗さσr、ロールの慣性モーメントI、周囲流体粘度η等、式(1)、(4)、(5)、(6)を用いてスリップを予測するために必要なパラメータの値が記憶されている。また、後述の式(9)〜(11)を用い、ウェブ張力T、ロール周速度Ur、抱角θ等の関数としてベアリング回転抵抗トルクの値を求めるプログラムも記憶されている。
探索部は、ウェブ搬送速度UwとフリーガイドロールGの周速度Urとの速度差が誤差信号として送られてくることを契機として当該処理を開始する(図11参照)。この搬送速度Uwと周速度Urの値は上記速度計により検出された値である。
探索部は、まずステップ(以下Sと表す)1において、送られてきた速度差の値を記憶する。ここで、探索部は、ロール入側のウェブ張力T1の現状設定値を確認する。また、この時点において、補正係数μfとαには各所定数値が設定されている。
S2で記憶した速度差が閾値以上ならば(又は上記式(8)のスリップ率が閾値を超えていれば)(S2:YES)、S3において探索部は、ロール入側のウェブ張力T1の現状設定値及び、ロール周速度Urの現状設定値、抱角θの現状設定値等から上述したプログラムによりベアリング回転抵抗トルクMbの値を求め、またロール慣性モーメントIの値及びロール角加速度aの現状設定値からフリーガイドロールGに掛かるロール慣性抵抗トルクMiを求め、Mb+Miの値を回転抵抗値として記憶する。
さらに、S4において、探索部は、S3で求めた回転抵抗値と同じ値をフリーガイドロールGとウェブのグリップ力Mwの理想値として記憶する。すなわちグリップ力Mwの理想値(図10の理想グリップ力)を、S3で求めた回転抵抗値と釣り合うものとして求める。
次に、S5において、S4で記憶したグリップ力Mwの理想値から、μf及びαの所定数値等を用い、上記式(1)、(4)、(5)、(6)によりロール入側のウェブ張力T1の値を算出し、T1最適設定値として記憶する。
そして、S6で、S5で求めたT1最適設定値がT1現状設定値よりも大きいか否かを判定する。
式(1)で示されるようにT1が大きいほどグリップ力Mwは大きくなる傾向にあるから、最適設定値が現状設定値よりも大きい場合は、回転抵抗値が、T1の現状設定値から式(1)、(4)、(5)、(6)を用いて得られるグリップ力Mwの予想値(図10の予想グリップ力)よりも大きい、すなわち、μfとαを上記所定数値とした上記式により実際のスリップ発生現象を予測できていると判断できる。
よってこの場合(S6:YES)、S8において、最適設定値から現状設定値を引いた値をT1の制御量として算出し、その値を操作部(図11参照)に送って当該処理を終了する。
一方、最適設定値が現状設定値よりも小さな場合(S6:NO)は、μfとαを上記所定数値とした予測式(5)、(6)等が実際のスリップ発生を予測できていないと判断できる。この場合、S7において、グリップ力Mwの予想値が、S3で求めた回転抵抗値よりも小さくなるような補正係数μf、αの組合せのうち、Mwの予想値が最大となるものを求める。そして、μf、αをその求めた値に設定しなおし、S4以降に戻る。この際、μf、αについてスリップ発生の実情をより反映する値に修正されているので、S8に進むことが出来る。また、グリップ力Mwの予想値と回転抵抗値の値に差が最小となるようにμf、αの値を設定するのでT1の制御量を抑制することができる。
一方、速度差が閾値以内の場合(S2:NO)はS9〜S11においてS3〜S5と同じ処理を行う。もしT1の現状設定値が最適設定値を上回った場合(S12:YES)、S9で求めた回転抵抗値が、グリップ力Mwの予想値よりも小さい、すなわち予測式が実際のスリップ発生を予測できていると判断できる。よって、この場合はS14において、現状設定値から最適設定値を引いた値をT1の制御量として算出し、その値を操作部に送って当該処理を終了する。一方、最適設定値が現状設定値よりも大きな場合(S12:NO)は、予測式が実情に合っていないことになる。この場合は、S13において、グリップ力Mwの予想値が、S9で求められる回転抵抗値よりも大きくなるようなμf、α各値の組合せのうち、グリップ力Mwの予想値が最小となるものを求める。そして、μf、αをその求めた値に設定しなおし、S10以降に戻る。
図11のブロック線図に、上述した探索部による処理を含む制御の全体像を示す。
上述したように、ウェブ搬送速度UwとフリーガイドロールGの周速度Urとの速度差からなる誤差信号が送られると、探索部は、上記探索処理によりスリップを防止するために必要な制御対象因子の制御量の値を操作部に送る。そして、操作部は送られた制御量の値に基づいてウェブ搬送装置を操作する。これによりフリーガイドロールGとウェブの間の摩擦力(トラクション特性)は、ロール周速度Urがウェブ搬送速度Uwに近づくように、すなわちスリップを防止するように変化する。
ここで、ライン運転中、誤差信号は繰り返し探索部に送られ、探索部はそのつど上記処理を行う。この繰り返しにより、補正係数μf及びαの値は、よりスリップ発生の実情に合った値に次々と置き換わって行く。それに連れて、実際のグリップ力Mwが回転抵抗値と釣り合う状態となるための制御対象因子の制御量も適切なものとなっていく。結果として、ウェブ搬送状態は、実際のグリップ力Mwが回転抵抗と釣り合う状態、すなわちM=0の、まさにスリップが起こるか起こらないかという境界状態に収束されていく。よって、当該制御によれば、ライン運転中、自動的に補正係数μf及びαの最適値を探索しながらスリップの発生を防止してウェブ搬送を制御することができる。
なお、この例における制御対象因子は、ロール入側のウェブ張力T1以外にも、Mを変化させる因子のうちライン運転中に直接操作できるウェブ搬送速度Uw、ウェブ搬送の加速度、ロールの周速度Ur、ロールの角加速度a、ウェブのロールに対する抱角θのいずれでもよいし、これら因子の組合せでもよい。ただし、これら制御対象因子とトラクショントルクMwとの関係に基づき、S6及びS12における最適設定値と現状設定値との大小関係の設定が変わることが有りうる。また、実値が検出可能な因子(例えばウェブ張力T1、ウェブ搬送速度Uw、ロール周速度Ur)については、現状設定値と最適設定値との差を制御量として算出せず、検出された実値と最適設定値との差を制御量として算出するよう構成することもできる。また、探索処理におけるグリップ力Mwの予想値及び回転抵抗値の算出には、各パラメータの現状設定値を用いても、検出された実値を用いるようにしてもよい。
ここで、探索部は算出手段を、操作部は操作手段を構成する。
以上より、本実施形態に係るウェブ搬送制御方法では、駆動機構を有しないフリーガイドロールGにおいてウェブを搬送するに当たり、前記式(1)のスリップ判定トルクMの値を変化させる前記ウェブの張力、ウェブ搬送速度、ウェブ搬送の加速度、前記ロールの周速度、ロールの角加速度、ウェブのロールに対する抱角、ロール軸受に掛かるベアリング回転抵抗トルク、ロールに掛かるロール慣性抵抗トルク、ロール径、ウェブ幅、ウェブの表面粗さ、ロール表面粗さ、ロール慣性モーメント、ロール軸受のジャーナル直径、ロール自重のいずれか一つ又は二つ以上を制御対象因子とし、前記式(1)、前記式(2)及び前記式(3)を用いて前記制御対象因子の値を設定することにより、スリップを防止しながらウェブ搬送を制御する方法において、前記式(2)又は/及び前記式(3)に予め補正係数を導入する。
よって、制御対象因子の値を設定する際に前記式(1)〜(3)を用いるにあたり、式(2)又は/及び式(3)は補正係数導入後の式となる。このため、制御対象因子の値を、スリップを防止するのにより適切な値に設定することができ、スリップによってウェブに傷が付くのを防止して安定的にウェブを搬送することができる。
また、本実施形態のウェブ搬送制御方法では、ウェブ搬送速度とロール周速度との速度差に基づき実際にスリップが起きているか否か評価し、その評価結果と、式(1)、補正係数導入後の式(2)及び補正係数導入後の式(3)を用いて得られるスリップ予測とが整合するように、補正係数の値を定める。よって、補正係数の値は、実際のスリップ発生状況に整合する値となるため、式(1)、補正係数導入後の式(2)及び補正係数導入後の式(3)を用いて設定する制御対象因子の値はスリップを防止するのに更に適切な値となる。
また、本実施形態のウェブ搬送制御方法では、実際にスリップが起きているか否か評価→スリップ評価とスリップ予測とが一致するかを判定→一致しない場合は補正係数の値を修正→再びスリップ評価を行う、という工程を繰り返す。補正係数の値を求めるに当たっては、より多数の搬送条件において実際のスリップ評価を行い、より多数の搬送条件において評価結果と予測が一致する値を得ることが望ましいが、このウェブ搬送制御方法では、この複数の搬送条件におけるスリップ評価を求めるに際し、いちいちラインを停止しなくてもよい。
また、本実施形態のウェブは、スリップによる傷が従来のウェブより少ない。
また、本実施形態のウェブ搬送装置は、探索部が、式(1)、補正係数導入後の式(2)及び補正係数導入後の式(3)を用いてスリップを防止しうる制御対象因子の値を算出し、その値に基づいて操作部が制御対象因子の値を操作する。よって、制御対象因子の値はスリップを防止するよう、適切に調整されるため、スリップによってウェブに傷が付くのを防止して安定的にウェブを搬送することができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態の制御例においては、スリップ判定トルクMの値に影響を与える因子のうち、ライン運転中に直接操作できるウェブ張力T、ウェブ搬送速度Uw、ウェブ搬送の加速度、ロールの周速度Ur、ロールの角加速度a、ウェブのロールに対する抱角θを制御対象因子としている。しかし、本発明に係るウェブ搬送制御方法においては、ライン停止中に、ロール半径R、ウェブ幅L、ウェブ表面粗さ、ロール表面粗さ、ロール慣性モーメント、ロール軸受のジャーナル直径db、ロール自重の値を設定する、すなわち、スリップを防止するためにロール、ウェブ、軸受の適切な設計を行うことも含まれる。後述するようにロール軸受のジャーナル直径、ロール自重は後のベアリング回転抵抗トルクMbの値に影響する因子であるためここに含んでいる。また、他の制御対象因子の値を操作することにより制御しうるベアリング回転抵抗トルク、ロール慣性抵抗トルクもスリップ判定トルクMを変化させる因子であるから、制御対象因子とすることができる。
また、上記探索部はスリップ評価とスリップ予測が一致するか否かの判定をライン運転中に行っていくとしたが、本実施形態のウェブ搬送装置及びウェブ搬送制御方法において、上述のフィッティングのように、複数の搬送条件におけるスリップ評価結果とスリップ予測が一致するか否かの判定を同時期に行うことにより補正係数の値を求めることも可能である。
〔各パラメータの求め方〕
本実施形態におけるウェブ搬送制御において必要なパラメータの求め方を以下説明する。
(1)静摩擦係数μs
ウェブの両端にそれぞれ水を入れたペットボトルの重りを付けて、抱角180°においてロールをまたがせ、片側のペットボトルにチューブラーポンプで水を定速滴下し、ウェブがロール上で滑りだす瞬間の各ペットボトル重量の比に基づき下記式(8)により求めた。下記式(8)のF1は水を滴下される側のペットボトルの重量[N]、F0はもう一方のペットボトルの重量である。
Figure 2011020853
(2)ロールのrms表面粗さσr
ロールとウェブの合成表面粗さσを求めるのに必要なrms表面粗さσrは、ミツトヨ製SJ−301(テーパー60°・先端R2μmの円錐型触針、測定力0.75mN)を用いた。測定条件は以下の通りである。
規格:JIS2001、粗さ曲線:R、フィルタ:GAUSS、測定速度:0.5mm/s、基準長さ(カットオフ値)及び評価長さ:JISB0633に準拠
(3)ウェブのrms表面粗さ測定
また、ウェブのrms表面粗さσwは、OLYMPUS社製共焦点レーザー顕微鏡OLS−3000を用いた。測定条件は以下の通りである。
対物レンズ倍率:100倍、フィルター処理:平滑化処理(メディアン、マスクサイズ5)、傾き補正:XY方向とも手動、Z軸移動ステップ間隔:0.1μmピッチ
(4)ベアリング回転抵抗トルクMb
ロール軸受の回転抵抗トルクMbは、上述したように、ウェブ張力T、ロール周速度Ur、抱角θ等の関数として表すことができる。詳細を以下説明する。
ロールにウェブが載せられていない状態(軸受に負荷されるラジアル荷重がガイドロール自重のみの状態)においてロールの回転が減速するときに減速時にはロールの慣性抵抗トルクMiとベアリングの回転抵抗トルクMbが釣り合うことを利用して下記のように求められる。
まず、計測したい軸受を装着したロールをウェブ搬送装置に設置し、ロールを、その周速が予測したい速度範囲の上限を超えるまで回転させる。そして、ロールが自然に減速している間、経過時間に対するロール周速度Urを計測する。これにより求められるロールの角加速度aに既知のロール慣性モーメントIを掛けあわせると、軸受に負荷されるラジアル荷重がガイドロールGの自重のみの場合における軸受の回転抵抗Mb[Nm]をロール周速度Urの関数として求めることができる。
次に、下記式(9)を用いてこのMbから軸受の動摩擦係数μb[-]を求める。こ
こでPrは、ウェブがロールに載せられていない状態の軸受の荷重であり、ガイドロール自重[kg]×9.8[m/s]として表される。また、dbは軸受のジャーナル直径
[m]である。
Figure 2011020853
そして、式(9)で求めたμbを用いて、ロールにおいてウェブが搬送され軸受に負荷させる荷重がガイドロール自重+ウェブ張力である場合の軸受の回転抵抗トルクMbを下記式(10)、(11)により求める。Pはウェブ張力分の軸受荷重[N]である。
Figure 2011020853
Figure 2011020853
M スリップ判定トルク[Nm]
Mw トラクショントルク[Nm]
Mb ベアリング回転抵抗トルク[Nm]
Mi ロール慣性抵抗トルク[Nm]
e ネイピア数[−]
μ ウェブとロール間の有効摩擦係数[−]
μs ウェブとロール間の静摩擦係数[−]
θ 抱角 [rad]
T ウェブ張力[N/m]
T1 ウェブ入口張力[N/m]
L ウェブ幅[m]
R ロール半径[m]
I ロール慣性モーメント[kgm]
a 角加速度[rad/s]
h ウェブ浮上量[m]
σ 合成表面粗さ[m]
σr ロールのrms表面粗さ[m]
σw ウェブのrms表面粗さ[m]
ε ウェブパラメータ[1/s]
λ 無次元ウェブ幅[−]
β 無次元抱角[−]
η 周囲流体粘度[Pa・s]
σcorr 補正合成表面粗さ[m]
α 表面粗さ補正係数[−]
μf 流体潤滑摩擦係数[−]

Claims (8)

  1. 駆動機構を有しないフリーガイドロールにおいてウェブを搬送するに当たり、
    下記式(1)のスリップ判定トルクMの値を変化させる前記ウェブの張力、ウェブ搬送速度、ウェブ搬送の加速度、前記ロールの周速度、ロールの角加速度、ウェブのロールに対する抱角、ロール軸受に掛かるベアリング回転抵抗トルク、ロールに掛かるロール慣性抵抗トルク、ロール径、ウェブ幅、ウェブの表面粗さ、ロール表面粗さ、ロール慣性モーメント、ロール軸受のジャーナル直径、ロール自重のいずれか一つ又は二つ以上を制御対象因子とし、
    下記式(1)、下記式(2)及び下記式(3)を用いて前記制御対象因子の値を設定することにより、スリップを防止しながらウェブ搬送を制御する方法において、
    下記式(2)又は/及び下記式(3)に予め補正係数を導入することを特徴とするウェブ搬送制御方法。
    Figure 2011020853
    Figure 2011020853
    Figure 2011020853
    (M:スリップ判定トルク、Mw:ウェブとロールの間のトラクショントルク、Mb:ロールの軸受にかかるベアリング回転抵抗トルク、Mi:ロールにかかるロール慣性抵抗トルク、θ:ウェブのロールに対する抱角、T1:ロール入側のウェブ張力、L:ウェブの幅、R:ロールの半径、I:ロールの慣性モーメント、a:ロールの角加速度、μ:ウェブとロールとの有効摩擦係数、μs:ウェブとロール間の静摩擦係数、h:ウェブのロールに対する浮上量、σ:ウェブとロールのrms合成表面粗さ、σr:ロールのrms表面粗さ、σw:ウェブのrms表面粗さ)
  2. 前記補正係数は、h>3σの場合における前記式(2)右辺の0に代わる流体潤滑摩擦係数μf(0≦μf≦0.1)を含むことを特徴とする請求項1に記載のウェブ搬送制御方法。
  3. 前記補正係数は、前記式(3)の右辺に乗じる表面粗さ補正係数αを含むことを特徴する請求項1又は請求項2に記載のウェブ搬送制御方法。
  4. 前記補正係数は前記流体潤滑摩擦係数μf及び前記表面粗さ補正係数αであり、
    前記表面粗さ補正係数αの値の範囲は0≦α≦3とし、
    前記補正係数を導入した前記式(2)は下記式(5)であると共に、前記補正係数を導入した前記式(3)は下記式(6)であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のウェブ搬送制御方法。
    Figure 2011020853
    Figure 2011020853
    (σcorr:補正後の合成表面粗さ)
  5. 前記ウェブを前記ロールにおいて所定の搬送条件下で搬送させ、ウェブ搬送速度とロール周速度との速度差を検出し、
    前記検出した速度差に基づき実際にスリップが起きているか否か評価し、
    前記補正係数を、前記搬送条件について前記式(1)、前記補正係数導入後の前記式(2)及び前記補正係数導入後の前記式(3)を用いて得られるスリップ予測と前記評価結果とが整合する値とすることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のウェブ搬送制御方法。
  6. ライン運転中に繰り返し前記速度差の検出及び前記評価を行うとともに、
    前記評価を行う度に、前記スリップ予測と前記評価が一致するか判定し、一致しない場合、前記補正係数の値を前記スリップ予測と前記評価が一致する値に修正することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のウェブ搬送制御方法。
  7. 請求項1乃至6のいずれかに記載のウェブ搬送制御方法を用いて生産されるウェブ。
  8. 駆動機構を有しないフリーガイドロールにおいてウェブを搬送させるウェブ搬送装置であって、
    前記ウェブの張力、ウェブ搬送速度、ウェブ搬送の加速度、前記ロールの周速度、ロールの角加速度、ウェブのロールに対する抱角のうちいずれか一つ又は二つ以上の値を、制御対象因子の値として操作する操作手段と、
    下記式(1)、下記式(2)、下記式(3)を用いてスリップを防止する前記制御対象因子の値を算出する算出手段と、を有し、
    前記操作手段は、前記算出手段が算出した値に基づき前記制御対象因子の値を操作し、
    下記式(2)又は/及び下記式(3)には補正係数が導入されていることを特徴とするウェブ搬送装置。
    Figure 2011020853
    Figure 2011020853
    Figure 2011020853
    (M:スリップ判定トルク、Mw:ウェブとロールの間のトラクショントルク、Mb:ロールの軸受にかかる回転抵抗トルク、Mi:ロールにかかる慣性抵抗トルク、θ:ウェブのロールに対する抱角、T1:ロール入側のウェブ張力、L:ウェブの幅、R:ロールの半径、I:ロールの慣性モーメント、a:ロールの角加速度、μ:ウェブとロールとの有効摩擦係数、μs:ウェブとロール間の静摩擦係数、h:ウェブのロールに対する浮上量、σ:ウェブとロールのrms合成表面粗さ、σr:ロールのrms表面粗さ、σw:ウェブのrms表面粗さ)
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