以下、本発明の実施の形態について、図1〜図11および表1を参照して詳細に説明する。
<インクジェット装置>
本発明に係るインクジェット装置は特殊なインクや樹脂などの機能性材料をインクジェットヘッドへ供給し、基板などの被処理物に対して機能性材料を吐出して、成膜部を形成するものである。
ここで吐出される機能性材料とは、液体、固体、微粉末(ペースト)、さらにはこれらの物質を混合したものを総じて記したものである。
図2は本発明を適用したインクジェット装置1の概略斜視図で、図3は本発明を適用したもう一つのインクジェット装置2の概略斜視図である。
まず、図2を参照して、インクジェット装置1の概略構成を説明する。インクジェット装置1は、被処理対象となる基板22を下から支持するステージ12、ステージ12の任意箇所の上方に移動可能に配置されるインクジェットヘッド14、インクジェットヘッド14を支持するヘッド支持部16、ヘッド支持部16を支持するキャリッジ15、キャリッジ15に滑動自在に取り付けられるガントリー11、ガントリー11が滑動自在に取り付けられるガイドレール17、ステージ12の近傍に配置されるメンテナンスユニット18、吸引排出手段(図示せず)を備えている。
ステージ12は、基板22の裏面を吸着することにより基板22の固定を行うように構成されており、基板22はステージ12上から処理終了後吸着が解除され、突き出しピンなどで押し上げられロボットアーム13により搬出されると同時に、次期処理基板が搬入されステージ12上へ配置される。もちろん、ステージ12が基板を支持する方法はこれには限定されない。
インクジェットヘッド14は、ステージ12に支持される基板22に対してインクや樹脂などの機能性材料を吐出する複数のノズル(図示せず)を備えている。インクジェットヘッド14のノズル面と基板22の上面との間の距離は、予め規定の値となるように調整されるようになっている。この調整の手法の例として、インクジェットヘッド14はヘッド支持部16に支持されているので、ヘッド支持部16に具備される高さ調整機構を調整したり、ステージ12の高さを調整したりすることが考えられる。また、インクジェットヘッド14はヘッド支持部16に支持されてキャリッジ15に取り付けられている。
キャリッジ15は、インクジェットヘッド14を支持し、キャリッジ15を移動することで、インクジェットヘッド14がステージ12の上方において矢印Xで示す方向に移動自在になるように設置されている。また、キャリッジ15はガントリー11に取り付けられており、ガントリー11は、ガイドレール17上に図面の矢印Yで示す方向において自在に移動できるように設置されている。このため、インクジェットヘッド14は、ステージ12の任意箇所の上方に移動可能になっている。
メンテナンスユニット18は、インクジェットヘッド14の吸引やノズル面のクリーニングを行うために用いられ、図示しないキャップ吸引機構やヘッドノズル面を清掃するワイプ機構が備わっており、さらにインクジェットヘッド14の吐出状態の検査およびノズル面に付着した異物検査を行うための吐出検査装置19が含まれる。
吸引排出手段は、吸引力を発生して吐出検査装置19から機能性材料およびミストを吸引するために用いられる。吐出検査装置19および吸引排出手段に対する詳細な説明は後述する。
なお、図示は省略したが、インクジェット装置1は、その他にもインクジェットヘッド14に機能性材料を供給するインク供給部、基板22の処理位置を確認する観察カメラ、基板22の位置をアライメントするアライメントカメラを備えており、これらは図示しない制御手段により相互に関連されてコントロールされている。
次に、図3を参照して、インクジェット装置2の構成を概略に説明する。ここで、インクジェット装置2は、上記インクジェット装置1と基本的に同じ構成を備えているので、同様な構成に対する説明は省略し、異なる構成のみに対して説明する。
一つの異なりとして、インクジェット装置2において、インクジェットヘッド14を支持するヘッド支持部16には、インクジェットヘッド14を上下させる昇降機構(図示せず)を備えており、昇降機構は、インクジェットヘッド14を所定の高さへ調整できるようになっている。
他の一つの異なりとして、インクジェット装置2は、第1のメンテナンスユニットと第2のメンテナンスユニットを備えている。第1のメンテナンスユニットは、インクジェット装置2において固定されたメンテナンス位置に設置されており、ノズル吸引機構やノズル面を清掃するワイプ機構が含まれる。第1のメンテナンスユニットはインクジェットヘッド14に対してキャップ吸引やノズル面クリーニング(ワイピング)を行う。第2のメンテナンスユニットは、インクジェット装置2のキャリッジ15内に設置されており、インクジェットヘッド14に対して予備吐出、機能性材料の吐出検査、ノズル面の液ダレ検知を行う。それゆえ、キャリッジ15が第1のメンテナンスユニット位置から離れたあとでもインクジェットヘッド14はキャリッジ15内で随時予備吐出を行うことができるため、蒸発速度が速く乾燥しやすい機能性材料をインクジェットヘッド14へ供給したとしても、インクジェットヘッド14のノズル部の気液界面における乾燥固化を防ぐことができ、基板22の処理直前に機能性材料の吐出検査を行うことで安定した機能性材料の吐出を可能にする。第2のメンテナンスユニットは吐出検査装置19、キャリッジ15内の範囲において吐出検査装置19を矢印Xで示す方向に駆動する駆動手段を備える。
吐出検査装置19は、インクジェットヘッド14の昇降動作に伴って駆動され、インクジェット14から吐出される機能性材料を検査する位置や、インクジェットヘッド14が基板22上へ下降してもインクジェットヘッド14と吐出検査装置19とが干渉しないで退避される位置などへ移動する。予備吐出、機能性材料の吐出検査、ノズル面の液ダレ検査を行うときの吐出検査装置19とインクジェットヘッド14との位置はあらかじめ調整されており、第2のメンテナンス位置でのメンテナンスが実行されるとき、予備吐出、機能性材料の吐出検査、ノズル面の液ダレ検査の順に所定の位置に移動して動作が実行される。
<吐出検査装置>
図1は、特に図2,3における吐出検査装置19の構成を示す斜視図である。すなわち、インクジェットヘッド14から機能性材料が吐出されたときの吐出状態を機能性材料の吐出検査装置19で検知しているときの概略斜視図である。図に示すように、インクジェットヘッド14は、ノズル孔を有するノズルプレート23を備え、信号線24を介して制御部(図示せず)に接続される。制御部は、駆動信号をインクジェットヘッド14に伝送することによって、ノズル孔から機能性材料を吐出させる。また、インクジェットヘッド14は、図示しないインク供給パイプを介してインクタンクに接続される。
一方、吐出検査装置19は、光学センサ30、調整部34、吐出台35、吸引口36、吸引排出口37を備える。吸引口36は、吐出台35の上面に形成され、吸引排出口37へと接続される。また、調整部34は吐出台35に支持され、且つ光学センサ30を下から支持する。
光学センサ30は、発光素子31および受光素子32を備える。発光素子31は、機能性材料の進行経路に交差するように所定のビーム径の検出光33を出射し、受光素子32は、発光素子31が出射した検出光33を受光する。発光素子31と受光素子32とは、少なくともインクジェットヘッド14の幅よりも大きい間隔を設けて配置されており、その間に検出領域が形成される。検出領域内に機能性材料や異物等の物体があると、検出光33がその機能性材料や異物等の物体によって遮られ、その結果、受光素子32における受光状態が変化する。
受光状態の判断要素の例として、光強度、光検知幅、光検知面積、遮光時間などが挙げられる。本実施形態では、光学センサ30のビーム径は1mm程度のものを用いている。光学センサとしては、例えばレーザーやダイオードなどを用い、レンズなどで絞ってもよい。
次に図4を参照して、吐出検査装置19における光学センサ30の検出光33の光軸調整方法について説明する。図4はインクジェットヘッド14と吐出検査装置19の調整するときの概略斜視図である。インクジェットヘッド14には調整治具38が位置決めできるような位置決め基準を有しており、例えば、2つの位置決めピン用の穴と位置決め面とがある。上記調整治具38には、光学センサ30の検出光33を遮るような突起物38aが両端に形成されており、それぞれの突起物38aには検出光が通過するためのビーム径より0.1mmほど大きい穴が開けられており、上記突起物38aが光軸調整時に干渉しないように吐出台35には2つの溝35aが備えられている。
なお、本実施例の場合、光軸調整治具がインクジェットヘッド14に取り付けられるようにしているが、この限りではなく、ノズル列方向に検出光33の光軸が平行となるようになればよいので、例えば吐出台35自体に位置決め基準があってもよい。
そして、インクジェットヘッド14と吐出台35とを調整する位置に移動させ、検出光33が調整治具38に有する二つの突起物38aの穴を通過して遮光されないように、受光素子32の検知結果を示す光強度表示部39をモニタリングしながら、発光素子31を支持する調整部34のつまみ34aとつまみ34bとをまわして調整する。このとき調整された検出光33の光軸は吸引口36の直上に配置され、インクジェットヘッド14のノズル面と検出光33との位置関係は実際に基板22上へインクジェットヘッド14を配置させるギャップ高さに設定する。本実施例の場合、この距離を0.5〜1mm程度としており、またこの検出光から2mm程度下に吸引口36が配置されている。
以上の光軸調整により、機能性材料が、インクジェットヘッド14のノズルから吐出された時、光学センサ30の検出領域の中心部を通過し、吸引口36へと導かれて吸引除去することができ、信頼性の高い吐出状態を検知することができる。
図5は、吸引口36の内部構造を示しており、(a)〜(c)はそれぞれ吸引口36の上面図、正面図(A−A断面)、側面図(B−B断面)を図示している。吸引口36はノズル列方向にスリット状に吐出台35の上面に開口しており、スリット幅は例えば1〜5mmほどがよい。この数値範囲でスリット幅を設定する理由について簡単に説明する。
以下表1には、スリット幅を変更させたときの実験結果をまとめたものが示されている。この時の光学センサ30はビーム径が1mmの検出光33を使用し、吸引力が一定の条件下で吸引を開始し、ある時間における光学センサ30の光強度すなわち残留するミストにより遮光された光強度と、ミストがないときの光強度との比率(%)を4段階に判断した結果である。スリット幅がビーム径(1mm)以下のときは検出領域外に舞うミストを十分に除去しきれず、検出時に検出領域外から漂う残留ミストが検知したと考えられる。また、スリット幅が10mm以上のときはインクジェットヘッド14から吐出された機能性材料がミストとなり広範囲に飛散してしまい、ミスト以外に周囲の空気をも吸引してしまい、吸引時間に時間を要していることが考えられる。このとき吸引力を強くすれば、ミストをすばやく除去することができるが、周囲の空気流によりインクジェットヘッド14のノズル付近の乾燥が促進されることが懸念される。以上のことから光学センサ30のビーム径よりも1〜4mm大きくし、検出光33の検出領域周辺に対してだけ吸引させることで、インクジェットヘッド14から機能性材料を吐出検査装置19上で吐出させる時に発生するミストを、僅かな吸引力ですばやく除去することができる。
また、吸引口36の下方から吸引排出口37までの流路形状をテーパー形状にして、吸引口36のスリット長さはインクジェットヘッド14の両端チャンネル間より長い。これはインクジェットヘッド14の各ノズルチャンネル下方での吸引時の流速を一様にするために、吸引口36から吸引排出口37までの流路形状をテーパー形状にして吸引口36をスリット状にしているのであるが、吸引口36両端の壁面部ではせん断流れが生じて流速が低下して図5に示す流速分布40のようになるので、両端チャンネル間以上のスリット長さにすることで、端チャンネルのノズル下方でも一様な流速を得ることができ、全チャンネルにおいて一様な条件で機能性材料の吐出検査を行うことができる。なお、本実施例の場合、吸引口36の下方から吸引排出口37までの流路形状をテーパー形状にしているが、その他にも図示はしてないが吸引口36下方にバッファとなる空間部や複数個の吸引排出口を設けるなどして吸引時の流速を一様にする方法が挙げられる。
図6は、もう一つの実施形態における吸引口36’の内部構造を示しており、(a)〜(c)はそれぞれ吸引口36’の上面図、正面図(A−A断面)、側面図(B−B断面)を図示している。吸引口36’の下部に保湿液43を貯留するための貯留部42を備えており、保湿液43はインクジェットヘッド14で吐出する機能性材料の主溶媒となる成分から構成される。インクジェットヘッド14を動作させない待機状態であるとき、吸引口36’の直上にインクジェットヘッド14のノズルを配置させておけば、保湿液43が蒸気となって吸引口36’へ到達し、インクジェットヘッド14のノズルを保湿し、ノズル付近の機能性材料の乾燥を遅らせることができる。なお、インクジェットヘッド14と吐出台35の上面とのギャップ距離は、機能性材料の吐出検査時のギャップ距離より小さく、光学センサ30の検出光33がインクジェットヘッド14により遮光される程度の距離が良い。これは、保湿液43の蒸気がミスト化し、待機状態から機能性材料の吐出検査を行う際、ミストが影響し正確に検知できなくなるためである。
例えば、基板処理中のインクジェットヘッド14のノズル面と基板22の上面とのギャップ距離は0.6〜1.0mmで設定されており、機能性材料の吐出検査時において、インクジェットヘッド14のノズル面と吐出台35の上面とのギャップ距離は、吐出台35の上面から検出光33の光軸中心までの高さと、検出光33の光軸中心からインクジェットヘッド14のノズル面までの高さとの総和で表すことができる。したがって、機能性材料の吐出検査時において、インクジェットヘッド14のノズル面と検出光33の光軸中心との距離を設定されたインクジェットヘッド14のノズル面と基板22の上面とのギャップ距離(0.6〜1.0mm)と等しくすることで、実際に基板22に着弾される位置での吐出状態を検知することができる。
本発明において、インクジェットヘッドのノズル面と所定面とのギャップ距離とは、基板処理時、吐出検査時、待機時の3つの場合に分けられている。
基板処理時のギャップ距離とは、インクジェットヘッドのノズル面と基板22の上面との距離を表し,吐出検査時のギャップ距離とは、インクジェットヘッドのノズル面と吐出台35の上面との距離を表し,待機時のギャップ距離は、吐出検査時により下方にインクジェットヘッドのノズル面を位置させたときの距離を表す。
また、機能性材料の吐出検査とは、単に機能性材料の吐出/不吐出を判断するだけでなく、検出光33の遮光量の変化により不安定吐出(着弾ずれ、吐出速度低下)の傾向を確認することである。それゆえに、吐出検査時におけるノズル面と検出光33の光軸中心との距離が、基板処理時におけるギャップ距離と等しければ、実際に基板に着弾される位置での機能性材料の吐出状態の検査を行うことができる。
一方、待機(保湿)状態時においては検出光33が隠れる距離がよいので、吐出台35上面から検出光33中心の高さと検出光33の径の二分の一との差を距離範囲として、インクジェットヘッド14のノズル面をその範囲に配置することが好ましい。本実施形態において、検出光径はφ1mmであり、吐出台35上面から検出光33中心までの高さを1.2mmと設定すると、実際のギャップ距離は、0.7mmとなる。
なお、保湿液43として、機能性材料の主溶媒には、グリコール系有機溶剤が使用される。例えば、一般的にはエチレングリコールなどが挙げられる。
ギャップ距離が待機状態と機能性材料吐出検査時とで同じ位置であれば、余分に検出領域に舞うミストを除去する必要がある。図3に示すインクジェット装置2の装置構成の場合において、この構成であれば、乾燥しやすい機能性材料を使用したときでもインクジェットヘッド14を待機状態にしてインクジェットヘッド14のノズル面の乾燥を遅らせることで、インクジェットヘッド14の吐出動作以外の処理動作を基板22へ行うことができる。例えば、キャリッジ15に備わる図示しない観測カメラなどで基板22の観測を行うことができる。
図7は、また一つの本実施例の吸引口36”の内部構造を示しており、(a)〜(c)はそれぞれ吸引口36”の上面図、正面図(A−A断面)、側面図(B−B断面)を図示している。この構成は図5に示す吸引口36の周辺部にさらに吸収材61を備え、吸収材61は吸引口36”が開口されている形状を有しており、吐出台上面41から容易に取り外しが可能なように取り付けられている。吸収材61の材質は、例えば、PVAスポンジ(ポリビニルアルコールを原料とした連続気孔の多孔質対)からなるものを使用し、このような材質は耐薬品性、耐摩耗性に適する。
インクジェットヘッド14のノズルから機能性材料が吐出される状態が悪ければ、サテライトやヨレが発生し、さらにはノズルが目詰まりしてノズルから飛沫をあげてしまうことがある。このような場合、吸引排出口37へと機能性材料やミストが運ばれず、吐出台上面41を汚してしまい、その吐出台上面41に付着した機能性材料がインクジェットヘッド14のノズル面までも汚してしまう恐れがある。吸引口36”周辺部に吸収材61があれば、機能性材料やミストが吸引口36”に到達しなくても、吸収材61に付着してその多孔質素材の毛細管現象により吸収材61の下部へと浸透されるので、吐出台上面41には堆積物は存在しておらず、インクジェットヘッド14のノズル面を汚すことを回避することができる。
ただし、この吸収材61上に機能性材料が付着し続けると、機能性材料が乾燥固化し堆積物が発生してしまう。このような場合、インクジェットヘッド14のノズル状態はかなり悪く、メンテナンスを行っても回復しない状態であることが想定され、所望の吐出処理を行うことができず、インクジェットヘッド14の交換を行う必要がある。このインクジェットヘッド14の交換作業時に機能性材料が堆積した吸収材61を取り外して新しい吸収材61に交換すればよく、インクジェットヘッド14が所望の吐出処理を行う状態であれば、特に吸収材61に機能性材料が堆積されることはなく交換する必要はない。なお、上記構成は図6の構成の場合でも適用でき、同様の効果を有する。
<吸引排出手段>
以下図8を参照して本発明の実施形態における吸引排出手段について説明する。図8はインクジェットヘッド14の機能性材料の吐出検査時のインクとエアの吸引排出経路を示したものである。
吐出検査装置19における吸引口36をスリット状にすることでノズル列状に沿って流速分布を一様にすることは前述したとおりであるが、インクジェットヘッド14から吐出される機能性材料を正確に検査するためには、吸引口36から吸引される混合気体、すなわち、機能性材料と空気を引き込む流速を経時的にも連続して一定にしなければならない。そのためには、まずインクジェットヘッド14より機能性材料を吐出したときに発生するミストを引くための負圧発生手段が必要となる。
一般にこの負圧発生手段としてポンプを使用するのであるが、例えばダイヤフラムポンプやチューブポンプを使用した場合、連続的に動作させるとポンプの脈動が発生してしまい、一定の流速で吸引することができない。そこで、本実施形態では一定の負圧発生手段として、負圧発生器54を用いる。
負圧発生器54は、例えば圧縮空気などの気体を本体内に導入し、高速流を内部で形成することにより真空状態を局所的に形成して吸引作用を発生させる真空エジェクタが挙げられる。真空発生器は比較的小型で大きな吸引力を発生することができる利点を有する。この負圧発生器54には、負圧発生量を調整するレギュレーター53と、真空フィルタ52と、バッファタンク50とが接続される。バッファタンク50には、吸引口36での負圧を監視する圧力センサ51と大気開放弁58とが備わっており、また吐出検査装置19より吸引された機能性材料やミストをバッファタンク50内の図示しない吸収材や流路構造により捕集し、送液ポンプ55により廃液タンク56へと排出する。また、それぞれ接続される配管経路には開閉弁57〜60、例えば電磁弁やエアオペレート(丸形空気動作弁)などを用いる。真空フィルタ52はバッファタンク50で捕集しきれなかった機能性材料やミストを捕集し、フィルタとしては多孔質素材のものを用いる。送液ポンプ55として、耐薬品性の部材のチューブポンプやダイヤフラムポンプを使用する。以上の構成により、機能性材料やミストの除去において、適した負圧で圧力制御することができ、連続的に一定の流速で吸引することを可能とする。
なお、他の負圧発生手段として、脈動がほとんど無視できるダイヤフラムポンプや流体機械(ファン)などが挙げられ、流体機械を使用する場合は、機能性材料が軸に固まらないようにするためにフィルタを用いて十分に除去する必要がある。
<動作>
以下に本発明の実施形態のインクジェット装置および吐出検査装置における動作について説明する。
本実施形態の図2におけるインクジェット装置1に示す構成の場合、ステージ12上に載置される基板22が装置内外へと搬入出される入れ替え時、もしくは、吐出処理が一時的に休止される時(待機中)、キャリッジ15はメンテナンスユニット18上に位置し、インクジェットヘッド14はメンテナンスされ、機能性材料の乾燥による目詰まりやノズル面の汚れを防止する。かかる場合、インクジェットヘッド14をキャップ上に移動し予備吐出動作を行い、さらに吐出検査装置上に移動して機能性材料の吐出検査および液ダレ検知を行う。そこで正常に吐出が行われたか、インクジェットヘッド14のノズル面が正常に清掃されたかを検知した後、問題なければ制御ユニットからの制御信号に基づいて、Y軸方向にガントリー11が移動するとともに、X軸方向にキャリッジ15が移動し、インクジェットヘッド14が基板22上の所望とする処理位置に移動し吐出動作を行う。例えば、機能性材料の吐出検査の結果、正常に吐出されない場合は、不吐出チャンネル数に応じて再び予備吐出だけを行うか、ノズル吸引、ノズル面クリーニング(ワイピング動作)、予備吐出を行うかを判断し、メンテナンスを行う。複数回メンテナンスを行っても回復しないときはエラーを出力し、作業者に警告する。ここで、作業者への警告は、音声とか、画面表示などにより実現されることができる。この点は、本発明の重要なことではないので、省略する。
一方、本実施例の図3におけるインクジェット装置2に示す構成の場合、ステージ12上に載置される基板22が装置内外へ搬入出される入れ替え時、もしくは、吐出処理が一時的に休止される時(待機中)、キャリッジ15は同様にメンテナンスユニット18上に位置し、インクジェットヘッド14のメンテナンスが行われるのであるが、この第1のメンテナンスユニットではノズル吸引とノズル面クリーニング(ワイピング動作)のみが行われる。したがって、基板22の搬入出が終了するとともに、制御ユニットからの制御信号に基づいて、Y軸方向にガントリー11が移動するとともに、X軸方向にキャリッジ15が移動し、インクジェットヘッド14が基板22上の所望とする処理位置に移動する。
移動可能な第2のメンテナンスユニットにおいては、キャリッジ15内に吐出検査装置19が備えられ、吐出検査装置19上で予備吐出動作を行った後、吐出状態検査および液ダレ検知を行い、正常に吐出が行われたか、インクジェットヘッド14のノズル面が正常に清掃されたかを検知した結果、異常がなければ吐出検査装置19はインクジェットヘッド14が干渉しない位置へと移動され、インクジェットヘッド14を支持するヘッド支持部16に具備される昇降機構により所定の高さへ降下され、インクジェットヘッド14へ制御信号を送信することにより基板22へ機能性材料を吐出して所望の処理を行う。
例えば、機能性材料の吐出検査の結果、正常に吐出されない場合は、不吐チャンネル数に応じて再び予備吐出だけを行うか、ノズル吸引、ノズル面クリーニング(ワイピング動作)、予備吐出を行うかを判断し、ノズル吸引、ノズル面クリーニングを行う際は第1のメンテナンスユニット位置に戻り、メンテナンスを行う。複数回メンテナンスを行っても回復しないときは上記と同様にエラーを出力し、作業者に警告する。
次に、インクジェットヘッド14が吐出検査装置19上で行う、予備吐出手段による予備吐出動作、吐出検査手段による機能性材料の吐出検査動作、液ダレ検知手段による液ダレ検知動作について詳細に説明する。
まず、予備吐出動作は、全チャンネルを数千発〜数万発吐出しているのに対し、機能性材料の吐出検査時における吐出動作がチャンネル毎に数百発程度しか吐出していないため、予備吐出動作の吐出回数の方がはるかに多いことになる。そのため、図2におけるインクジェット装置1の場合、予備吐出動作と機能性材料の吐出検査とを同一位置で行えば、予備吐出動作がミスト発生の要因となり、光学センサ30を汚したり、機能性材料の吐出検査を妨げたりする。したがって、同メンテナンスユニット内の異なる位置であるキャップ上で行えば、予備吐出時に発生するミストは光学センサ30付近に浮遊することはなく、しかも、吐出された機能性材料が固着して増粘してもノズル吸引時に吸引された機能性材料とともに再溶解され、排出される。一方、図3におけるインクジェット装置2の場合、予備吐出動作はキャリッジ15内の吐出検査装置19上で行う必要があるため、予備吐出動作と機能性材料の吐出検査とが同一位置で行うので、十分に機能性材料およびミストを除去して、機能性材料の吐出検査時に影響しないようにしなければならない。
その機能性材料の吐出検査動作についてであるが、図2および図3ともに検査時に吐出する機能性材料から発生するミストも除去しなければならなく、吐出に影響しないレベルで制御手段の受光素子32が検知する遮光時と非遮光時との光強度から吐出の有無(光強度の変化がゼロのとき不吐出と判断)と吐出状態(正常な吐出時との変化量が閾値内かどうかの判断)を検知する。特に図3におけるインクジェット装置2の場合、前述したように予備吐出動作と機能性材料の吐出検査とを同一位置で行うので、機能性材料の吐出検査時に予備吐出により発生したミストを除去する必要もある。それゆえに吸引力を大きくしすぎると、吸引による空気流の影響により、本来の吐出状態の検査を行っているか判断できなくなるとともに、チャンネル毎で吐出状態を判断しているので吐出してないチャンネルのノズル部を乾燥させて目詰まりさせてしまう。そこで図9に示すように、予備吐出時と機能性材料の吐出検査時との間にミストを除去するインターバルを設けるとともに、予備吐出時(全チャンネル吐出時)と、インターバルおよび機能性材料吐出検査時(非吐出時およびチャンネル毎吐出時)とで吸引力の大きさが小さくなるように、負圧調整する。然れば、吐出検査装置19上において十分な吐出回数を伴う予備吐出動作を行っても、機能性材料吐出検査初期でミストが除去されており、検査中においてもインクジェットヘッド14のノズルの乾燥を抑制し正確な吐出状態の検査を行うことができる。
なお、液ダレ検知とは、インクジェットヘッド14のノズル付近に機能性材料や異物が付着していないかを検査する動作である。これは、ノズル吸引後、ノズル面クリーニングであるワイピングが正常に動作しているか、もしくは、機能性材料吐出検査時にサテライトや異物が付着していないかを検知している。この方法は、インクジェットヘッド14のノズルプレート23の近傍に、光学センサ30をその検出光33が一部遮光するように相対的に適切な高さに設定し、ノズルプレート23近傍を全面スキャンして、そのときの遮光量変化の有無を確認するものである。この液ダレ検知により、インクジェット装置の信頼性が高くなり、上記に示す不備で基板22を汚すことを防ぎ、不良基板の発生頻度を少なくすることを可能とする。
以上説明のように、本実施例における吐出検査装置19においては、予備吐出機能性材料の吐出検査機能、液ダレ検知機能を有し、さらには、吸引口36の下部に保湿液43を貯留する貯留部42を備えれば、保湿機能も有する。この構成によれば、第1のメンテナンスユニットと第2のメンテナンスユニットとを備えるインクジェット装置2においても信頼性の高い機能性材料の吐出検査を実現することができる。
また、インクジェットヘッド14を備えるキャリッジ15が、移動中でも予備吐出動作を行うことや保湿状態で待機することが可能となる。このことにより、予備吐出後から進行するインクジェットヘッド14のノズル付近の機能性材料の乾燥や固化を抑制することができる。また、インクジェットヘッド14が基板22へ機能性材料を吐出処理動作する直前で吐出状態の検査を行うことが可能となるので、より信頼性の高いインクジェット装置を提供することができる。さらに、液ダレ検知によりインクジェットヘッドのノズル付近やノズルプレート全体に機能性材料や異物が付着してないかを検知して機能性材料や異物のよる不良基板の発生頻度を少なくすることができる。
さらに、吐出検査装置19上で機能性材料の吐出検査を行った結果、吐出異常があり、その位置で予備吐出動作のメンテナンスを行うことで吐出状態を回復することができれば、一方のメンテナンス位置に移動してメンテナンス処理するのに必要な移動時間を削減することができ、装置の処理タクトを短縮化することができる。なお、基板サイズが大きくなればなるほど、インクジェットヘッド14が所望の位置に移動する距離は長くなり、移動時間もかかるので、この構成のインクジェット装置は有効である。
図10に示すように一般に機能性材料の吐出検査を行うとき、吐出された機能性材料を受け取る吐出台35には、多孔質素材の吸収材61が敷き詰められており、この吸収材61を介して、吸引排出口37が接続されており、機能性材料を吸引回収する。このように吐出台36に吸収材61を利用するのは、インクジェットヘッド14のノズルより吐出された機能性材料が吸収材61の表面に着弾され、毛細管現象により下部に浸透していくとともに吸引手段により回収され、吐出した機能性材料が気化されにくくなり、ミストの発生を少なくしているためである。また、ミストが発生した場合でも吸引手段により空気とともに吸引すれば、吸収材61は多孔質素材であるため流路抵抗が大きく、吐出に影響しない程度で浮遊するミストを除去し、良好に吐出状態を検知することができる。
しかし、蒸発速度が速く乾燥しやすい溶媒、もしくは、析出あるいは増粘されやすい溶質を含む機能性材料をインクジェットヘッド14が吐出する場合、吸収材61に捕集される機能性材料は、初期では吸引手段により回収されるが、吸引動作を断続的に行っていくと吸収材61の多孔質素材の中で徐々に機能性材料が乾燥固化していき、図11に示すように、流速分布63で流速が低いノズル端チャンネル部の下方から析出あるいは増粘されはじめて目詰まりを起こす。その上に、さらに機能性材料を吐出し続けると、析出あるいは増粘された箇所に機能性材料が凝集し堆積していき、ついには堆積物62が発光素子31と受光素子32を結ぶ検出光33にかかり、光学センサ30は遮光されたと判断し吐出状態を誤検知してしまうか、もしくは吐出状態を検知できない状態に陥ってしまう。この時に予備吐出動作を吐出台35で行えば、機能性材料の吐出検査時の吐出回数に比べ、予備吐出動作時の吐出回数の方がはるかに多いため、さらに顕著に堆積物62が現れる。検出光33を吐出台35の上面に対して距離を設ければ、インクジェットヘッド14から吐出された機能性材料のミストが広範囲に飛散してしまい、ミストの除去に時間がかかるうえに吸引動作により発生した周囲の空気流の影響により、インクジェットヘッド14のノズル付近の乾燥を促進させてしまう。
そこで、本実施例に示す吐出検査装置19であれば、上述したように、インクジェットヘッド14のノズル下方に被着弾物がないため機能性材料が堆積されることはなく、吐出された機能性材料がミスト化された直後に吸引除去しており、端チャンネル間以上に長尺なスリット状の吸引口36を備えるので、ノズル列方向に流速分布を一様にし、さらに吸引口36で一定の流速を維持できるような吸引手段を備えているので、チャンネル毎に信頼性の高い吐出状態の検知を行うことを可能にする。
また、吸引口36のスリット幅を検出光33の径よりも1mm〜4mm大きくすることで、検出光33の検出領域部分に舞うミストを僅かな吸引力で効率的に除去することができる。
また、インクジェットヘッド14のノズルから機能性材料が吐出される状態が悪ければ、サテライトやヨレが発生し、さらにはノズルが目詰まりしてノズルから飛沫をあげてしまうことがある。このような場合、吸引排出口37へと機能性材料やミストが運ばれず、吐出台上面41を汚してしまい、その吐出台上面41に付着した機能性材料がインクジェットヘッド14のノズル面までも汚してしまう恐れがある。吸引口36周辺部に吸収材61を備えておれば、機能性材料やミストが吸引口36に到達しなくても、吸収材61に付着してその多孔質素材の毛細管現象により吸収材61の下部へと浸透されるので、吐出台上面41には堆積物は存在しておらず、インクジェットヘッド14のノズル面を汚すことを回避することができる。
さらには、負圧調整可能な吸引手段を備え、予備吐出時と機能性材料の吐出検査時との間にミストを除去するインターバルを設けるとともに、予備吐出時(全チャンネル吐出時)と、インターバルおよび機能性材料の吐出検査時(非吐出時およびチャンネル毎吐出時)とで、吸引力の大きさが小さくなるように負圧調整することで、吐出検査装置上において十分な吐出回数を伴う予備吐出動作を行っても、機能性材料の吐出検査初期でミストが除去されており、検査中においてもインクジェットヘッドのノズルの乾燥を抑制し正確な吐出状態の検査を行うことができる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる形態例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。