JP2011011131A - 遠心分離機用ロータ - Google Patents

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Abstract

【課題】
ロータの大径化及び重量増加を抑制しつつ、一度に遠心分離できる試料の量を増大させた遠心分離機用ロータを実現する。
【解決手段】
試料容器を保持する複数の保持穴32を有する遠心分離機用ロータであって、前記ロータの保持穴32の横断面形状は、内周側に1つの頂点部55Aを有する略三角形であり、前記略三角形の2つの頂点部が前記ロータの回転軸から等距離となるように外周側に配置され、前記横断面でみて、保持穴32の最内周位置から外周側へ保持穴の径方向の長さの60%以上に渡って、その円周方向の間隔(a1〜a8)が徐々に拡大するように形成される。また、略三角形の内周側に位置する頂点部55Aを挟む2つの辺部の接線が成す角度は、45度以上90度未満に構成した。特に好ましくは、その角度が60度となるようにすると好ましい。
【選択図】図15

Description

本発明は、医学、薬学、遺伝子工学、化学工業、食品製造、医薬品製造等の分野で使用されている遠心分離機に関し、一度に処理できる液体試料の量を増加することができるアングルロータを有する遠心分離機用のロータに関するものである。
液体試料の分離に使用される遠心分離機は、液体試料を収容した複数の試料容器を円周上に均等配置された試料容器保持穴に保持するロータと、ロータをロータ室内で回転駆動するモータなどの駆動手段を備え、ロータ室内で大気圧下または減圧下でロータを高速回転することによって試料容器内の液体試料を遠心分離して目的物を収集するものである。本発明で主に対象とする遠心分離機は、最高回転速度が5,000〜30,000rpm程度であって、用途に応じて種々の仕様のロータが使用できるものである。
液体試料としては、血液成分、菌体やウイルスなどの培養液、DNAやRNAを含む液体等の生体成分、ポリマー懸濁液、インク、或いは食品用加工液体など様々なものがある。これらの液体試料は研究、実験、検査、製造等の工程において、様々な目的で遠心分離されている。
遠心分離機用のロータは、例えば特許文献1にて知られている。図21に従来のアングル式のロータ130の側面図を示し、左半分にその断面を示す。図21において、ロータ130には、複数の試料容器用の保持穴132(図21には1ヶ所のみ図示)が円周に沿って等角度ピッチで形成され、各保持穴132には、液体試料が注入された試料容器150が挿入される。ロータ130の上面開口部にはロータカバー140が取り付けられ、ロータカバー140がハンドル141によってロータボディ131に固定されることによってロータ130内が密閉される。また、ロータボディ131の中心軸下部には駆動軸穴131Aが形成され、この駆動軸穴131Aは、遠心分離機の駆動軸部(図示せず)に接続されている駆動部112に装着され、ロータ130は、駆動手段によって所定の速度で回転される。
図22は、特許文献2にて知られている、従来のロータボディ131の保持穴132に装着される試料容器150の形状を示す斜視図である。通常、蓋付きの試料容器を用いる遠心分離機においては、試料容器150の胴体部151が円柱形状である。胴体部151の上部には、ねじ込み式の蓋152が取り付けられ、液体試料を密封する。蓋152は、外蓋と内蓋により構成される。通常、試料容器150は、ポリプロピレン、ポリカーボネ―ト、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック材料を用いた成形品となっており、何度も再使用される場合が多い。胴体部151及び蓋152の横断面形状は正円形であり、ロータ130の保持穴132に挿入する際に、試料容器151の長手方向中心軸を基準にした回転位置を気にする事なく、任意の位置にて装着することができる。ここで、「横断面」とは、試料容器の上下方向に対して垂直な面で切った断面をいう。
アングル式のロータ130に使用される蓋付きの試料容器150は、用途に応じて容量が2ml/本程度〜1,000ml/本までのものが実用化されている。また、ロータ130に形成される試料容器用の保持穴132の本数は、4本/ロータ〜20本/ロータ程度まで各種ある。ロータ130は、一般的には軽量で高強度なアルミニウム合金、チタン合金、或いはカーボンファイバー複合材料等を用いて製作される。これらのロータ130は、例えば容量が300mlの試料容器を6本収容できるロータ(以下「300ml×6本」と称す)、500ml×6本のロータ、或いは1,000ml×4〜6本等の大容量形アングルロータが市販されており、時代の変遷と共に試料容器の大容量化が進んできている。また、試料容器の大容量化に伴い、ロータボディの大きさも大きくなっている。例えば、試料容器容量が300〜1,000mlのロータは、ロータボディの最大直径が概ね直径300mmを超えるサイズとなる。
ところで、遠心分離機へのロータの着脱は作業者が行うが、出願人を含む遠心分離機の製造業者は、ロータの構造上の工夫によって、ロータの軽量化や操作性の向上に努めてきた。さらに、試料容器の大型化により一度に遠心分離できる試料容量の増加を図ってきた。近年では、1,000ml×4本の大容量形のアングル型のロータを使った遠心分離機が広く使われている。また、試料容器は、特許文献2に開示されたような蓋付きであって、蓋152に取り出し用の貫通穴152Aが形成され、試料容器の取り出しを容易にすると共に、遠心分離中に試料が漏れないような試料容器が開示されている。
特開2008−119649号公報 特開2004−290746号公報
一般に遠心分離工程で液体試料から目的物の収集を効率良く行うためには、ロータの回転速度を増加させて液体試料に与える遠心加速度を大きくし、遠心効果を高めて目的物を早く沈降させたり、回収率を向上させるとともに、一度に処理することができる試料量を増やすようにする。また、遠心分離作業に要するコストの低減は、試料容器、ロータを含む遠心分離機を安価に構成することはもとより、一度に遠心分離処理できる試料量を増加させることによって、出来高を向上させることも重要である。
一度に多量の液体試料を遠心分離するためには、ロータに用いられる試料容器の本数の増加や、各試料容器の容量を増加させることが効果的である。しかしながら、従来の円柱形の試料容器のまま容量を増加させるには、胴体部151の外径を大きくしたり、その高さを高くする必要があり、それによってロータの試料容器の保持穴が隣接する保持穴と干渉するので、保持穴の配置位置を回転中心から半径方向遠方(外周側)にずらす必要がある。その結果、ロータ自体が大径化して質量が増加することになり、作業者によるロータの持ち運び性や遠心分離機への着脱性が悪くなる。
また、ロータの大径化は、遠心分離機で高速回転する際の空気抵抗(風損)の増大につながるため、対策として遠心機の駆動装置の高出力化、ロータを冷却するための冷却装置部の大出力化が必要となる。さらに、ロータの大径化に伴う遠心分離機のロータ室(チャンバ)の大形化を図る必要が生じ、遠心分離機の設置面積が大きくなり、遠心分離機の価格が上昇するといった問題が生ずる。
発明者らはこれらの問題を解決する過程で、円柱形の試料容器を配したロータを上方から見て、隣り合う試料容器の保持穴間に、重量増加の原因となるロータの構成材部分(以下、「余肉」と称す)が存在することに着目し、これら余肉の部分を出来るだけ少なくする改良を試みた。また、この改良の過程で、ロータの外周近傍の余肉部はロータ質量増加の一因となり、この部に加わる遠心荷重によってロータの強度を低下させる要因になることを見いだした。
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、ロータの大径化及び重量増加を抑制しつつ、一度に遠心分離できる試料の量を増大させることができる遠心分離機用ロータを提供することにある。
本発明の他の目的は、遠心分離特性を向上させて、短時間で効率良く作業を行うことができる遠心分離機用ロータを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、大容量で使い勝手の良い試料容器を装着できる遠心分離機用ロータを提供することにある。
本願において開示される発明のうち代表的なものの特徴を説明すれば次の通りである。
本発明の一つの特徴によれば、試料容器を保持する複数の保持穴を有する遠心分離機用ロータであって、ロータの保持穴の横断面形状は、内周側に1つの頂点部を有する略三角形であり、略三角形の2つの頂点部がロータの回転軸から等距離となるように外周側に配置され、横断面でみて、保持穴の最内周位置から外周側へ保持穴の径方向の長さの60%以上に渡って、その円周方向の間隔が徐々に拡大するように形成される。また、略三角形の内周側に位置する頂点部を挟む2つの辺部の接線が成す角度は、45度以上90度未満に構成した。特に好ましくは、略三角形の保持穴の各辺部の接線が成す内周側の角度が60度となるようにすると好ましい。
本発明の他の特徴によれば、試料容器の横断面形状は略正三角形であり、試料容器はロータの保持穴に、円周方向に回転させた複数位置において装着可能とした。ロータの直径は350mm以上450mm以下、高さ200mm以上250mm以下であって、保持穴に装着される試料容器の容積が1200ミリリットル以上とする。さらに、ロータに形成される保持穴は、ロータの回転軸に軸対称な位置に4個又は6個配置するように構成した。
本発明のさらに他の特徴によれば、ロータは金属合金の一体成型で構成され、保持穴の中心軸が下方に行くほどロータの回転軸から離れるように、保持穴がロータの回転軸に対して傾斜するように形成した。保持穴がロータの回転軸に対して傾斜する角度は、保持穴の数が4個の際には20度以上25度未満とすると好ましい。また、保持穴がロータの回転軸に対して傾斜する角度は、保持穴の数が6個の際には15度以上20度未満とすると好ましい。
請求項1の発明によれば、ロータの保持穴の横断面形状は、内周側に1つの頂点部を有する略三角形であり、略三角形の2つの頂点部がロータの回転軸から等距離となるように外周側に配置され、横断面でみて、保持穴の最内周位置から外周側へ保持穴の径方向の長さの60%以上に渡って、その円周方向の間隔が徐々に拡大するので、従来の円柱形形状の試料容器に比較して、より多くの試料を収容する試料容器を収容することができる遠心分離機用ロータを実現できる。
請求項2の発明によれば、略三角形の内周側に位置する頂点部を挟む2つの辺部の接線が成す角度は、45度以上90度未満であるので、試料容器の保持穴を効果的に隣接させてロータに配置することができる。また、従来の円筒形状の保持穴と比較して外周部の頂点付近の余肉部が削除され、ロータにかかる遠心荷重が減少し、ロータ全体の応力低減及び軽量化を図ることができ、ロータの最高回転速度の上昇による遠心分離性能の向上が期待できる。
請求項3の発明によれば、略三角形の保持穴の各辺部の接線が成す内周側の角度は、60度であるので、試料容器を4個、円周方向に効率的に配置できる遠心分離機用ロータを実現できる。
請求項4の発明によれば、試料容器の横断面形状は略正三角形であり、試料容器はロータの保持穴に、円周方向に回転させた複数位置において装着可能であるので、試料容器の装着位置が特定の位置に固定されることが無く、試料容器が装着しやすく使いやすい遠心分離機用ロータを実現できる。
請求項5の発明によれば、ロータの直径は350mm以上450mm以下、高さ200mm以上250mm以下であって、保持穴に装着される試料容器の容積が1200ミリリットル以上であるので、限られたロータにおいて大容量の試料容器を保持できる遠心分離機用ロータを実現できる。
請求項6の発明によれば、ロータに形成される保持穴は、ロータの回転軸に軸対称な位置に4個又は6個配置されるので、回転バランスが良く使いやすい遠心分離機用ロータを実現できる。
請求項7の発明によれば、ロータは金属合金の一体成型で構成され、保持穴の中心軸が下方に行くほどロータの回転軸から離れるように、保持穴がロータの回転軸に対して傾斜するように形成されるので、ロータの重心を低くすることができ、回転安定性が増す。
請求項8の発明によれば、保持穴がロータの回転軸に対して傾斜する角度は、保持穴の数が4個の際には20度以上25度未満であるので、保持穴間の肉厚を適切な値に設定できる。
請求項9の発明によれば、保持穴がロータの回転軸に対して傾斜する角度は、保持穴の数が6個の際には15度以上20度未満であるので、保持穴間の肉厚を適切な値に設定できる。
本発明の上記及び他の目的ならびに新規な特徴は、以下の明細書の記載及び図面から明らかになるであろう。
本発明の実施例に係る遠心分離機1の正面図であり一部にその断面を示す。 本発明の実施例におけるロータ30の縦断面図である。 本発明の実施例に係る試料容器50の外観を示す斜視図である。 本発明の実施例に係るロータボディ31の斜視図である。 本発明の実施例に係るロータボディ31の上面図である。 本発明の実施例に係るロータボディ31に試料容器50を装着した状態の上面図である。 本発明の実施例に係る試料容器50の上面図であり、(1)はキャップ部52を付けた状態を示し、(2)はキャップ部52を外した状態を示す。 本発明の実施例に係る試料容器50の縦断面図である。 図2のネックサポート部材70の形状を示す図であり、(1)は斜視図であり、(2)は上面図である。 本発明の実施例に係るロータボディ31に試料容器50及びネックサポート部材70を装着した状態を示す上面図である。 本発明の実施例に係る試料容器50の縦断面図であり、試料を最大容量入れた状態を示す。 本発明の実施例におけるロータ30の縦断面図である。 図12のA−A部の断面図である。 本実施例による試料容器50の胴体部51の形状と、従来の円筒形の試料容器150の胴体部151の形状68との位置関係を比較するための図である。 図12のA−A部の断面における保持穴32の水平面断面形状と、遠心力がかかる方向との関係を示す図である。 本発明の試料容器と従来の円形の試料容器による遠心分離状態を示す模式図である。 本発明の実施例に係る試料容器50を横に置いた状態を示す図である。 本発明の第2の実施例に係るロータ80に試料容器50及びネックサポート部材70を装着した状態の上面図である。 本発明の第3の実施例に係る試料容器90を示す図で、(1)は上面図、(2)は斜視図である。 本発明の第4の実施例に係る試料容器95を示す図で、(1)は上面図、(2)は斜視図である。 従来のアングル式のロータ130の側面図を示し、左半分にその断面を示す図である。 従来の試料容器150の形状を示す斜視図である。
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、遠心分離機の上下左右の方向は図1に示す方向であるとし、試料容器の上下方向は図3に示す方向であるとして説明する。
図1は本発明の遠心分離機1の正面図であり、一部を断面で示す図である。遠心分離機1は、矩形箱型の筐体2を備え、筐体2の内部には水平な仕切り板2Aによって上下2段の空間に仕切られる。仕切られた上段の空間には、上面が開口する円筒状のチャンバ3が設けられる。チャンバ3の外周部には図示しない冷媒循環用パイプが接着され、遠心分離機1内に設けられた図示しない冷却機から供給される冷媒を流すことによりチャンバ3の内部空間、即ち、ロータ室4を冷却する。チャンバ3の周囲は断熱材9と防護壁2Bが設けられる。チャンバ3の上側には、開閉可能なドア10が設けられ、ドア10を閉じることによってロータ室4が密閉される、このロータ室4内にはロータ30が収容される。筐体2の上部、右側には操作・表示部13が設けられる。
筐体2内の仕切り板2Aによって仕切られた下段には、駆動部5が仕切り板2Aに取付けられる。駆動部5はモータハウジング6を含み、モータハウジング6の内部には駆動源としての電気式のモータ7が設けられる。モータハウジング6は、ダンパ8を介して仕切り板2Aに固定される。モータハウジング6の上方側には軸支持部6Aがチャンバ3の底部に設けられた穴3Bを貫通してロータ室4内に達するように配置される。また、モータ7の回転軸7Aは、軸支持部6Aにより回転可能に支持され、ロータ室4内にまで上方に延びる。回転軸7Aの上端部には駆動軸部12が設けられ、駆動軸部12にはロータ30の駆動軸穴31Aが固定される。ロータ30が、駆動軸部12に対して着脱可能に構成しつつ、モータ7によってロータ30が回転される。通常、使用する試料容器に応じた保持穴を有するロータ30を選択して装着する。ロータ30に形成された試料容器の保持穴32には、試料を充填した試料容器50が装着される。
次に、本発明のロータと試料容器を図2及び図3を用いて説明する。図2は図1のロータ30の縦断面図である。ロータ30には、複数の試料容器用の保持穴32が円周方向に等角度ピッチで形成される。各保持穴32には、液体試料が注入された試料容器50が装着される。ロータ30の上側には、遠心分離中に万一試料容器50から試料が漏れた場合にロータ30からの液漏れを防ぐための液封環状溝31Eが設けられ、その上部に開口部31Fが形成される。開口部31Fにはロータカバー40が取り付けられ、このロータカバー40がハンドル41によってロータボディ31にねじ締結されることによってロータ30内が密閉される。ロータボディ31の中心軸下方には、駆動部5の駆動軸部12に装着するための駆動軸穴31Aが形成される。駆動軸穴31Aは、駆動軸部12に対して相対的に回転不能なように固定されることが重要であり、遠心分離機の分野で公知の固定方法を用いて装着できる。この装着方法によりロータ30は、モータ7によって所定速度で回転駆動される。
試料容器50は上部に開口部51Aを有し、その開口部51Aにキャップ部52が取り付けられる。キャップ部52は外蓋53と内蓋54によって構成され、キャップ部52をねじ締めすることによって開口部51Aを密閉する。本実施例で特徴的なことは、試料容器50の上下方向の中心線35から垂直方向に、容器の内周側の側壁までの距離L1が、中心線35から容器の外周側の側壁までの距離L2よりも大分大きいことである。一方、開口部51Aにおいては、中心線35から開口部内側までの距離C1と外側までの距離C2は等しい。尚、これら距離L1、L2、C1、C2は、中心線35から垂直方向に測定するものとする。また、中心線35とは、キャップ部52の中心位置又は開口部51Aを通る線である。尚、中心線35は、試料容器50の底面の中心位置(又は重心)と、キャップ部52の中心位置(後述する凸部54が有る位置)を通る仮想線であり、中心線35と外蓋53の上面は垂直な位置関係になる。
図3は試料容器50の外観を示す斜視図であり、キャップ部52を外した状態を示す。図3において、試料容器50は、胴体部51とキャップ部52とに分けられる。胴体部51は、遠心分離される液体試料を収容する容器の部分であり、上部には試料の出し入れ口となる円形の開口部51Aが設けられ、開口部51Aの外周側には雄ねじ部51Bが形成される。キャップ部52は、図2にその断面が示されたように、試料容器50の開口部51Aを密封するためのOリング57(図2参照)が内蓋54に取り付けられ、それらを覆うように外蓋53が設けられる。外蓋53の内面には、胴体部51の開口部51Aの雄ねじ部51Bに、締結される雌ねじ部52B(後述)が形成される。外蓋53の上部には、内蓋54の凸部54Aにより形成される空間部分を貫通する複数の取り出し用の貫通穴53Aが形成される。このような形状にすれば外蓋53と内蓋54の間にキャップ内の空間が確保できる。この空間は外蓋53の中心部に近い程外蓋との隙間が空くように形成され、外蓋53と内蓋54の隙間は、成人が指で掴めるように3〜10mm程度の深さにしてある。そして、貫通穴53Aを親指と人差し指で、または中指を加えて掴むことができ、ロータボディ31の保持穴32に装着された試料容器50を容易に引き出すことが可能である。
貫通穴53Aの形状は、取り出し易ければどのような形状、数でも良いが、成人の指先、特に親指が入る程度の大きさにすることが望ましく、直径20mm程度が好ましい。尚、貫通穴53Aは必ず必要というものではなく、本実施例のロータ30の場合、キャップ部52の外周側を掴んでロータボディ31から試料容器50を引き出すことが可能なので、貫通穴53Aを設けなくても良い。外蓋53の外周部には、作業者が手で掴んでキャップ部52を回しやすいように、円周方向に等間隔にスベリ防止用の突起53Bが設けられる。
試料容器50の胴体部51は、その横断面形状が、正三角形をベースに、正三角形の辺の部分(辺部56A、56B、56C:但し56Cは後述)を外側に緩やかな凸状となる大きな曲率半径の曲面とし、正三角形の3カ所の頂点部分(頂点部55A、55B、55C:但し55Bは後述)を小さな曲率半径の曲面で接続した形状の容器である。胴体部51の雄ネジ部51Bから外側には水平方向に平面な肩部51Dが形成される。肩部51Dは、上から見るとその外縁の輪郭が略三角形(おむすび型)である。
肩部51Dから辺部56A〜56C及び頂点部55A〜55Cへ至る部分は、縦断面で見た時に小さな曲率半径を有する緩やかな曲面により接続される。この部分は肩部から辺部、肩部から頂点部に至る接続部分となり、できるだけ曲率半径の小さな形状とすることにより、強度を増大させるためである。同様にして底面51Eから辺部56A〜56C及び頂点部55A〜5Cへ至る部分は、縦断面で見た時に小さな曲率半径を有する緩やかな曲面により接続される。図3の斜視図により、本実施例における非円筒形の試料容器50が、従来の円筒形の試料容器150(図22)とは大きく異なことが理解できるであろう。試料容器50では、キャップ部52は、従来の試料容器150の蓋152と同一構造で良い。従って、従来の試料容器150の蓋152と同一直径であるならば、そのままキャップ部52として用いることができる。同じ蓋を用いた場合は、胴体部51が図22の胴体部151よりもはるかに太くなっているので、収容できる試料の容量が著しく増加していることが理解できるであろう。
試料容器50の胴体部51及びキャップ部52は、材料としてポリプロピレンやポリカーボネートなどの熱可塑性プラスチックで製造すると好ましく、胴体部51はブロー成形法やインジェクションブロー成形法で容易に製造することが可能である。キャップ部52はインジェクション成形法で容易に製造することが可能である。プラスチックで形成することにより、耐薬品性が良く取り扱いが容易な試料容器を実現できる。また、Oリング57はゴム製が適当であり、市販品が利用可能である。胴体部51の色は、透明になるように構成しても良いし、着色されて中が見えないように構成しても良い。
次にロータボディ31の形状について図4及び図5を用いて説明する。図4は本発明の実施例に係るロータボディ31の斜視図であり、図5はロータボディ31の上面図である。ロータボディ31には試料容器50を装着するための4つの非円柱形の保持穴32が設けられる。保持穴32は試料容器50の外形とほぼ同形の形状であり、その大きさは試料容器50を無理なく着脱でき、しかもできるだけ小さい隙間とすると好ましい。例えば、保持穴32の壁面と試料容器50の胴体部51の外面との隙間が0.1乃至1mm程度である。この隙間が大きすぎると遠心分離時に試料容器50に加わる液圧や遠心力による胴体部51の変形の度合いが大きくなるので、試料容器50の耐久性が低下する恐れがある。保持穴32は、図5で示す底部31Cと2つの内周側壁部31B(試料容器50の辺部の2つが主に当接)と、図4に示す外周側壁部31D(試料容器50の辺部の2つが主に当接)、の主に4つの面から形成される。外周側壁部31Dは試料容器50に対応した大きな曲率半径の曲面であるが、この曲面の曲率半径が、ロータボディ31の外周の曲率に略平行になるように形成される。このように形成すれば、曲率の違いによる外周側壁部31D周辺の肉厚の不要な増加を抑えることができ、ロータ30の軽量化が図れるからである。保持穴32は、図3に示したように内周側の一部を除き、胴体部51のほぼ全部の面と底部を覆うように形成する。このように覆う箇所を極力大きくすることにより、遠心分離作業中の試料容器50自体の変形を防ぐことができる。
ロータボディ31は試料容器50の容量が増加した分、保持穴32が大きくなり、保持穴32の周囲が減肉されて金属部の体積が減少することになるので、軽量化を図ることができる。さらに、本実施例のロータボディ31は。中央部を下方向にえぐるように減肉したえぐり部(減肉部)31Gを形成した。これは、その付近における試料容器50にかかる遠心荷重は、外周方向になり、内周側の保持は重要ではないからである(この遠心荷重については図12で後述する)。このようにえぐり部(減肉部)31Gを形成したことによりロータボディ31の中心軸上部の重さを軽くすることができ、ロータ30のさらなる軽量化を図ることができる。また、えぐり部(減肉部)31Gを設けることによって、ロータ30の低重心化を図ることができる。ロータボディ31の中央には、ハンドル41をネジ締めすることによってロータカバー40を固定するためのネジ穴31Hが形成される。
ロータボディ31は、アルミ合金やチタン合金材料を用いて機械加工で製作された一体構造(中実型)である。また、CFRPコンポジット材で製作することも可能である。金属材料からの機械加工の際、保持穴32の加工は、フライス盤を使用し、刃物としてエンドミルを使用することにより容易に加工することができる。ロータボディ31の外寸は、チャンバ3(図1参照)の大きさによってその外寸が限定されるので、従来と同サイズで構成すれば、従来の遠心分離機においても、本実施例に係るロータ30を用いることができる。
図6は、ロータボディ31に試料容器50を装着した状態の上面図である。図6においては、試料容器50の装着状況がわかるように、後述するネックサポート部材70を取り付けていない状況を示している。本実施例によるロータボディ31は、保持穴32の底面側31Cがロータ30の上下方向中心線(回転軸の軸線)から離れるように所定の角度の付けられた、いわゆるアングルロータである。アングル角は、20度以上25度未満であるのが好ましく、本実施例ではアングル角は23度である。そのため、図6に示すように、容器50のキャップ部52の上面が回転軸に向かって斜めになるように配置される。また、試料容器50を保持穴32に装着すると、上から見た時に各試料容器50の肩部51Dが露出し、キャップ部52の外周側は、保持穴32の外周側の壁部によって保持されないことが理解できるであろう。
次に本発明の試料容器50の寸法について図7、図8を用いて説明する。図7は、試料容器50の上面図であり、(1)はキャップ部52を付けた状態を示し、(2)はキャップ52部を外した状態を示す。図中の括弧内に示した数字は、曲率半径の寸法(単位mm)である。図7において、試料容器50の胴体部51の外形は、上から見た際に略正三角形をベースにした形状で、胴体部51の外形位置は、キャップ部52の外形位置よりも外側に位置し、3つの頂点部55A、55B、55Cと3つの辺部56A、56B、56Cを有する。頂点部55A、55B、55Cは、尖った角ではなく、その角を小さな曲率半径R1で接続した形状とした。また、辺部56A、56B、56Cは、上から見た際に直線ではなく試料容器50の外側に凸形状の大きな曲率半径R2の円弧状とした。
本実施例による試料容器50は、上から見た際に3つの曲率半径R1と3つの曲率半径R2によって形成され、曲率半径R1、R2の曲線との接続位置を図中の黒塗りの三角マークで示している。このように、試料容器50の胴体部51の3辺(辺部56A、56B、56C)を大きな円弧状の面で形成し、頂点部55A、55B、55Cの3ヶ所を小さな円弧状の面とし、試料容器の上から見た状態又は横断面が略正三角形となる、筒状の容器とすることで、大幅な容量増加を図ることができた。尚、試料容器50の3辺(辺部56A、56B、56C)を円弧状ではなく直線状に形成しても良いが、外側にふくらむような円弧状の面で形成することによって、僅かながら容量を増加することができるとともに、遠心分離運転時に内部の試料から受ける内圧に対して強度上有利となる。
図7(2)において、一つの頂点部を挟む辺部56B、56Cの接線を延長した交差角θは60度となる。図中、辺部56A、56Bの接線、及び、辺部56C、56Aの接線について図示していないが、胴体部51の外形は略正三角形であるので、これらの接線の交差角θはすべて60度である。また、頂点部55A、55B、55Cの中心(図7(1)で矢印で示す位置であって、黒塗りの三角マーク間の中心位置)の間の距離はそれぞれ等しくなる。胴体部51の上部に設けられた開口部51Aは、その半径がR5であり、開口部51Aの外周側には雄ネジ部51Bが形成され、雄ネジ部51Bの外周側の半径はR3である。このように、胴体部51は外形よりも十分小さい開口部51Aを形成したので、開口部51Aから辺部56A〜56C、および、頂点部55A〜55Cに至る肩部51Dが形成される。肩部51Dは、試料容器50を縦置きした際に、水平になる面である。この肩部51Dが形成されることによって、胴体部51の強度をさらに高くすることが可能となる。また、肩部51Dを設けたことによって後述するネックサポート部材70を取り付けやすくなる。
図8は、本実施例に係る試料容器50の縦断面図であり、各部の寸法(単位mm)を記入してある。胴体部51の鉛直部分と肩部51Dとの接合点付近は曲率半径R6の緩やかな曲面状とされ、胴体部の下方、底面部51Eと胴体部51の鉛直部分は曲率半径R7の緩やかな曲面状とされる。さらに、底面部51Eの中央部付近は上方にやや盛り上がった形状であり、その曲率半径R8は240mm程度とする。このように構成すれば試料容器50を載置台等に縦置き(図8の状態で置くこと)した際に、底面の下側と載置台が接触する面積が小さくなり、試料容器50を置いた際に安定する。尚、本実施例で床面の形状が略三角形という意味は、床面との接触部分の面積をいうのでなく、床面の上部、つまり胴体部の内面側の形状をいう。
市販されている円柱形状の試料容器150(図22参照)の寸法は、胴体部151の外径(直径)98mm、胴体部長が133mmであり、試料容量は900mlであった。本実施例の試料容器50を従来の円柱形状の試料容器150の外径に外接するようにR2寸法のみを変化させ、容器高さ、開口部径、外蓋及び内蓋を試料容器150と同一とすると、その内容量は1075mlとなり、収容できる容量を19.5%増加させることができる。略三角形形状による容量増加効果とR2寸法、容器高さを図8に示したようにすることで従来の公称1000mlの20%の容量アップである1200mlの目標容量を大幅にクリアすることができ、本実施例では約1500mlの容量を達成することが可能となった。
次に図9を用いて、ネックサポート部材70を説明する。図9は図1に示したネックサポート部材70の形状を示す図であり、(1)は斜視図であり、(2)は上面図である。図1に示したように、ネックサポート部材70は、試料容器50のキャップ部52と保持穴32との間に設置されるもので、試料容器50のキャップ部52が遠心力方向へ変形することを防止する作用をする。
遠心分離機1においてロータ30は高速回転する。本実施例の遠心分離機1においては、キャップ部52の外周部とロータボディ31の外周側壁部31Dの間は距離が離れていて、しかもキャップ部52の外周側を保持する部分がないので、キャップ部52の遠心荷重によって容器51の開口部51A付近、肩部51Dが破損してしまう恐れがある。図21で示した従来の円筒形の試料容器150の場合は、胴体部151と蓋152の外形が同じであったため、保持穴132の壁面で蓋152の外周側を保持することができ、このような現象が生じ得なかった。そこで、本実施例においては、キャップ部52の外周部を支えるために、キャップ部52と保持穴32の隙間を埋めるように作用するネックサポート部材70を設けた。
ネックサポート部材70は、外形をロータボディ31の保持穴32にフィットさせ、保持穴32との隙間が0.1乃至1mm程度となるように形状付けられる。また、ネックサポート部材70の内側には試料容器50のキャップ部52の外径よりも0.1乃至1mm程度大きい蓋挿入穴70Aが形成される。ネックサポート部材70の厚さは、キャップ部52を支承するに十分な厚さであれば十分であり、必ずしも同じ厚さでなければならないという訳ではない。本実施例ではキャップ部52の強度も考慮し、キャップ部52の高さ(厚さ)の50%程度としている。
ネックサポート部材70の使用法としては、ロータボディ31に試料容器50を装着した後、上方よりキャップ部52を囲むように肩部51D上に載置する。尚、ネックサポート部材70は、試料容器50の上にただ置くだけで良い。ネックサポート部材70を使用することにより、遠心分離時にキャップ部52が遠心力方向へ変形するのを防止することができる。ネックサポート部材70の材質は、容器51の材質と同様に、ポリプロピレンやポリカーボネートなどの熱可塑性プラスチックで製造することができ、インジェクション成形法で容易に製作することが可能である。但し、ネックサポート部材70は、弾力性のない材質で構成することが重要である。
ネックサポート部材70は、本来ならキャップ部52のほぼ外周側の半分(外側)だけを保持すれば本来の目的は達成できるが、本実施例では製造上の容易さから図9(2)のように、試料容器50とほぼ同じ形状とし、頂点部71Aと辺部71Bを有するように構成した。このようにすれば、ネックサポート部材70を円周方向に3箇所の位置でロータボディ31の保持穴32に装着できるので、取り付けが容易になる。尚、ネックサポート部材70の形状は、図9で示した形状にこだわる必要はなく、種々の変形が可能である。
図10は、ロータボディ31に試料容器50及びネックサポート部材70を装着した状態を示す上面図である。ロータボディ31の保持穴32は、所定のアングルが形成されるので、試料容器50及びネックサポート部材70はロータボディ31に対して鉛直でなく、アングル分だけ斜めに装着されることになる。このように、ネックサポート部材70を装着した後に、ロータカバー40をかぶせて遠心分離作業を開始する。
以上、本実施例においては、試料容器50の横断面形状を非円形として容量を増加させたので、試料容器50を装着したロータ30の重量が増大することになる。しかしながら、試料増加とロータ体積減少を質量換算してみると、本発明のロータボディ31は、試料量を増加しつつ、試料容器保持穴周りの余肉部を削除することができ、また余肉部に試料増加分を収容することができるので、従来形式の同一外径を有するロータ131と比較して、ロータの大径化と質量増加を抑制することができる。
次に、図11〜15を用いて本実施例の遠心分離機1における遠心分離状況を説明する。図11は、試料容器50の上限位置58まで試料60を入れた状況を示す。本実施例の試料容器50では、上限位置58まで試料60を入れると1500mlの容量となる。上限位置58まで試料をきっちり入れたとしても、内蓋54と上限位置58との間には空間59Bができてしまい、この部分に空気が存在することになる。この状態で遠心分離作業を行ったのが図12で示す断面図である。図12にはさらに、1500mlの容量を収容するロータ30の各部のサイズを記載しており、単位はmmである。ロータボディ31の直径は350mm以上450mm以下であることが好ましく、本実施例では最太部が397mmである。ロータボディ31の高さは200mm以上250mm以下であることが好ましく、本実施例では高さが225mmである。また、ロータボディ31の開口部の直径は276mmである。試料容器50のアングル角θは23度である。試料容器50間の最内周部分間の距離は52.2mmであり、ネックサポート部材70間の最内周部分間の距離は32.7mmである。このサイズを有するロータ30は、収容されるチャンバ3(図1参照)の大きさによって制限されるが、本実施例の場合、チャンバ3の内側の直径は430mm、内側の最大高さは276mmである。
ロータ30の回転時には、図12に示すように遠心力によって試料60は外周側に移動する。図12に示すロータ30の縦断面図は、目標回転数で回転中のロータ30の状態を示すもので、試料60の液面61は遠心力により鉛直方向になる。また、試料容器50の内部の空気が移動し、その結果、液面61の内周側には移動した空気が存在する空間62ができることになる。試料60に遠心荷重が加わると、試料容器51の各部には液圧により図12の右側に複数の矢印で記載したような遠心荷重による圧力がかかる。このとき、内蓋54のスカート部54Bは自身の遠心荷重とこの圧力により外周方向に変形するので、胴体部51の開口部51Aの内面に強く密着させることができる。また、内蓋54の一部に形成されたツバ部54Cと外蓋53は自身にかかる遠心荷重によりOリング57を胴体部51側に押し付けるように変形するので、Oリング57は内蓋54及試料容器の開口部51Aに対して密着するので、試料60がキャップ部52から外部に漏れることはない。
試料容器50の外周側には、液体が容器の外部に押し出されるような力がかかる。一方、空間62においては、試料容器50の壁部が外側に遠心力により押しだされるような方向の荷重がかかる。通常、この試料容器50の壁部にかかる遠心荷重が大きくなると、最悪の場合は試料容器50が破壊されることになる。しかしながら、本実施例においては、この荷重がかかる試料容器50の部分が内周側の頂点部付近になり、その頂点部は小さい曲率半径R1で構成されており、剛性が高くかつエッジが無いため応力集中も無く、遠心荷重に抗する力が強い。また、試料容器50の開口部51Aは円形であり、しかも、キャップ部52を取り付けるために内側に絞りこまれ、肩部51Dが形成される。従って、本実施例の試料容器50においては、特に負荷のかかる部分である空間62の位置する部分の剛性が高くなっているので、容量を増加させつつ試料容器の強度を増加させることが可能になり、結果として耐久性に優れた試料容器50を実現することができる。
図13は図12のA−A部の断面図である。図13において理解できるように液面61は図の位置にでき、空間62はその内周側にできる。従って、試料容器50の胴体部51内の空間62に位置する頂点部55Aには、遠心力によって発生する液圧から頂点部55Aに作用する、頂点部55Aを膨らませるような力が働かないため、頂点部55Aを胴体部51内側に変形させる力(荷重)が加わる。そのため、空間62に位置する頂点部55Aは自身の剛性のみで遠心荷重に耐えることになる。この頂点部の曲率半径は、横断面図でみても従来の円筒形の試料容器150の曲率半径に比べて小さいので、格段に強度が高い。さらに、頂点部55を曲率半径R1(半円形)で形成することにより、エッジが無くなり応力集中も防げる。
図14は、本実施例による試料容器50の胴体部51の形状と、従来の円筒形の試料容器150の胴体部151の形状68の位置関係を比較するための図である。保持穴32の底部の外側輪郭を細かい点線32で示す。また、形状68は間隔の広い点線で示している。本実施例に係る胴体部51の断面形状(但し、図12のA−A部の断面なので、試料容器50の中心線35(図2参照)と垂直な断面でなく、ロータ30の回転軸と垂直な断面である)は、略三角形状である。点線で示す楕円形の形状68は、従来の円柱形試料容器の形状である。従来の胴体部151の形状68と本発明の試料容器50の間の斜線部が試料量増加分であり、この部分は金属であるとそれが余肉スペース67となる。また、余肉スペース67は、ロータボディ31の保持穴32の質量減少分に相当する面積を表してもいる。試料容器50および保持穴32を略三角形状とすることで、従来の円柱形状の試料容器150を利用する際に、余肉となってロータ自体の質量を大きくし、また、ロータ自体に加わる遠心荷重を大きくしていた部分である余肉スペース67を削除することができる。この結果、ロータ31を大径化することなく試料の処理容量を増加させることができ、他方で、ロータ30の質量を減少せしめることが可能となる。
次に図15を用いて保持穴32の水平面断面(図12のA−A部の断面)形状と、遠心力がかかる方向との関係を説明する。保持穴32に収容される胴体部51の内周側の頂点部55Aの中心と、ロータボディ31の中心穴を通る仮想線69を引いた際に、仮想線69と垂直に胴体部51の内壁までの距離、つまり横幅a1〜a8を見ると、最内周側の点から外周側に行くに従ってその幅が順々に広くなる。これは、仮想線69を基準に見ると内周側から少なくとも半分以上、本実施例では2/3を超えた68%の位置まで幅が広がることとなる。このような遠心分離の方向に行くに従って横方向に広がる試料容器51は、効率的かつ高精度な遠心分離を行うのに役に立つ。つまり、粒子の容器壁に沿って移動することがほとんどないので、粒子がスムーズに移動することができ、遠心時間の短縮ができ、さらに、粒子の比重のそろったバンドが短時間に綺麗にできる。
この状態をさらに説明するのが図16である。図16は、本発明の試料容器50と従来の円形の試料容器150による遠心分離状態を示す図であり、発明の理解のために模式的に粒子を大きく描いている。また、ロータの大きさ(図中の半径R16に関係)と、θとθを同じ角度で図示している。左側の楕円で示す横断面が試料容器150の胴体部151を示し、右側のおにぎり型の略三角形の横断が本実施例による試料容器50の胴体部51を示す。遠心分離作業においては、試料容器の胴体部151、51中に存在する粒子が、ロータの回転に伴う遠心力により外周側に移動する。試料容器150側の回転中心位置を示すのが点77であり、試料容器50側の回転中心位置を示すのが点78である。点78は図4及び5で示すネジ穴31Hの位置と一致する。
左側に示す従来の試料容器においては、内周側に位置する粒子72Aは、ロータの回転によって外周側に移動し、粒子72Bの位置を通り、さらに外周側の粒子72Cの位置にまで移動する。一方、試料容器150の円周方向側面付近の粒子73Aは、同様に粒子73Bの位置まで移動して、試料容器150の壁にぶつかり、壁に沿って粒子73C、73Dのように移動する。このように試料内に含まれる密度の高い粒子(重い粒子)が外周側に移動することにより、ペレット74として蓄積する。
右側に示す本実施例に係る試料容器においては、内周側に位置する粒子75Aは、ロータの回転によって外周側に移動し、粒子75Bの位置を通り、さらに外周側の粒子75Cの位置にまで移動する。一方、試料容器50の円周方向側面付近の粒子76Aは、同様に粒子76B、76Cの位置まで移動して、試料容器50の壁にぶつかり、壁に沿って粒子76Dのように移動する。このように試料内に含まれる密度の高い粒子(重い粒子)が外周側に移動することにより、ペレット77として蓄積する。
ここで両者を比較してみると、従来の試料容器50は円形の壁を有するので、粒子73B〜73Dの位置で壁に沿って真ん中に集まるので粒子が壁との摩擦によって動きにくいため、長時間遠心分離する必要がある。一方、本実施例のように試料容器50が略三角形だと、粒子76Cの壁に当たる度合いが格段に少ない。壁に沿って移動する粒子があったとしても、壁に沿って移動する距離が少なくなるので、遠心分離時間が短くてすみ、同一の試料を分離する場合であれば、遠心分離効果が良くなる。
遠心分離作業をした後に、試料容器50内に沈殿したペレット77を取り出すのに、容器を横にして作業をすることも多い。図16は、本実施例の試料容器50のキャップ部52を取り外し、胴体部51を載置面65に横置きした状態を示す。図では、沈殿したペレット77を図示していないが、横にする際に、ペレット77がたまっている辺部が下になった状態で床置きできる。この際、胴体部51の横断面形状が略三角形なので、試料容器50がころがることがないので、載置面65上で安定して作業ができるので、作業性がよい。特に、ペレットを掻き出して他の容器に移す場合も、胴体部51を横にした方が掻き出しやすいので有利である。試料容器50が転がらないようにするためには、辺部56A、56B、56Cの曲率半径R2を170mm以上とすることが好ましい。
以上説明したように、本実施例によるロータ30と試料容器50を用いることによって、多くの容量の試料を一度に処理することができる。また、本実施例の試料容器50では外周方向に向かうに従って広がる構造なので、壁付近の粒子の壁面に達する位置がより外周に近くなり、粒子が壁面に沿って移動する際に受ける摩擦の影響を少なくすることができる。さらに、試料容器50の胴体部51の外形を丸でなく略三角形にしたので、作業者が片手で胴体部51を掴み、もう一方の手でキャップ部52を回す際も、回しやすいという効果が得られる。特に、遠心分離作業後は、ロータ室4が冷やされて試料も冷えていることが多く、取り出した試料容器50に水滴が付くことがある。しかし、濡れた試料容器50であっても、3ヶ所の頂点部55A、55B、55Cにより胴体部51をつかみやすいというメリットがある。
次に図18を用いて、本発明の第2の実施例を説明する。図18は、ロータ80に形成された保持穴82の間隔を詰めて、6個の試料容器50を収容できるようにしたものである。このように構成することにより、隣り合う保持穴82どうしの間隔がさらに詰まり、無駄なスペースが少なくなる。尚、第2の実施例による試料容器50の取り付けアングル角は、図12より少なくするのが好ましく15度以上20度未満とすることが良い。本実施例では17度に設定して試料容器50をやや立て気味に装着するようにして、装着時及び脱着時の隣接する試料容器50への干渉を防止している。この結果、ロータ80の最太部の直径が431mmの場合、対向するネックサポート部材70間の最内周側の距離は図中に示すように104.9mm程度となる。このように、第2の実施例によれば、1つのロータ80に容量1500mlの試料容器50を6本装着可能に構成したので、1回の遠心分離作業において9リットルもの試料を遠心分離することができる。
次に図19を用いて本願発明の第3の実施例に係る試料容器90を説明する。試料容器90は、上からみた形状を略扇形としたものであって、図中下側がロータの回転中心となるように配置される。図19(1)において試料容器90は、内周側に位置する第1の頂点部93Aの角度を広げると共に、第1の頂点部93Aを一つの曲率半径で構成するのではなく、2つの曲率半径93AA、93ACとそれらを接続する辺部93ABで構成した。辺部93ABを形成したのは、ロータの回転軸側にぎりぎり接近させて装着するためである。辺部93ABの輪郭は、直線状であっても緩やかな曲線状であっても良い。
第1の頂点部93Aの両側に接続される辺部94A、94Bは、本実施例では平面状に構成しているが、緩やかな曲面状としても良い。外周部に位置する辺部94Cは、外側に緩やかなRを有する曲面で構成され、辺部94Cの両側に位置する第2の頂点部93B、第3の頂点部93Cは、キャップ部92の外形の曲率半径よりも小さい曲率半径を有する曲面で形成される。
図19(2)は、試料容器90の斜視図である。本実施例による試料容器90は、ロータに4つ装着するのに最適な形状に構成した。尚、試料容器90を用いる場合は、ロータの保持穴に装着する方向は特定の一方向だけに限られてしまうが、この限られるというデメリットの代わりに、限られたロータの容積の中で最大限の試料容器容量を達成できるというメリットを得ることができる。また、試料容器90を用いることによってロータ形状の扁平度合いを高めることができ、回転時の安定性を向上させることができる。
次に図20を用いて本願発明の第4の実施例に係る試料容器95を説明する。試料容器95は、上からみた形状を略二等辺三角形としたものであって、図中下側がロータの回転中心となるように配置される。図20(1)において試料容器95は、内周側に位置する第1の頂点部98Aの角度を狭めるようにし、その両側に接続される辺部99A、99Bの接線がなす内角を52度とした。辺部99A、99Bはきわめて緩やかな曲面状に構成しているが、平面状としても良い。外周部に位置する辺部99Cは、外側に緩やかなRを有する曲面で構成され、辺部99Cの両側に位置する第2の頂点部98B、98Cは、キャップ部97の外形の曲率半径よりも小さい曲率半径を有する曲面で形成される。
図20(2)は、試料容器95の斜視図であり、試料容器95はロータに6つ装着させることができ、その場合の図12で示すアングル角θと同様にθ=23度くらいに設定することができる。試料容器95を用いる場合は、ロータの保持穴に装着する方向は特定の一方向だけに限られてしまうが、この限られるというデメリットの替わりに、限られたロータの容積の中で最大限の試料容器容量を達成することができる。本実施例では、内周側に位置する頂点部98Aの角度を60度未満、具体的には52度にしたので、円周方向に6個以上配置できる遠心分離機用のロータを実現できる。
以上、本発明の実施例によれば、試料容器の底部の外周部分はロータの外半径と互いに曲線的平行を保つように設定して保持穴のロータに対する位置関係を有効に利用しているので、これによりロータの余肉部の効果的な削除を達成すると共に、遠心分離の処理量増加を図ることが可能となる。また、横断面形状を略正三角形状にした試料容器により、収容できる試料量を増加したにも関わらず、ロータにおける隣り合う保持穴の間隔があまり減少しないので、ロータの強度保持上も有利である。
更に、本発明の構造であれば試料容器を保持する穴をロータと同一加工により形成できる。一般に、円筒形でない保持穴を実現するために、円筒穴に樹脂等で製造されたアダプタ等を介して容器を保持するように構成するが、本実施例によるロータボディでは、アダプタの追加は不要であり、部品点数の少ない比較的安価な遠心分離機用のロータを提供することができる。
尚、試料容器の胴体部を略正三角形とすることは、ロータに対して挿入する向きが3ヶ所あるので、遠心分離時に空間62に曝される頂点部、及び、ペレットが集まる辺部が特定の頂点部、辺部に偏ることがないので、繰り返し多数回使用する際にも、特定の部分だけが劣化してしまうという問題は生じにくい。
さらに、試料容器の頂点部の曲率半径は比較的小さい寸法となっているので、この部の剛性が非常に高く、遠心時の試料量が少なくロータの中心向き側の内部に空気層が多くある状態で遠心分離運転をしたとしても、強度上有利である。
以上説明した本実施例を実現するに当たって、容量増大に伴うロータにかかる遠心荷重へのロータ自身の強度対策と、モータの強化を除き、遠心分離機本体側に大きな変更を加えることが無く、ロータと試料容器を変えるだけで比較的容易に大容量化を実現することができる。
以上、本発明を示す実施例に基づき説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施例ではロータを一体成型で製造したが、別体製造であっても良い。また、容器が保持される保持穴を画成する部材を、ロータ本体とは別部材のアダプタで構成し、アダプタをロータ本体から着脱可能に構成しても良い。
さらに、本実施例では略三角形の横断面形状を有する試料容器を実現したが、三角形だけにこだわらず、5角形、7角形等の、奇数角形の形状をベースとした試料容器としても同様に実現できる。また、四角形であっても、図19のように内周側の辺の長さが短く、外周側の辺の長さが長く、これらを結ぶ辺の間隔が外周側に広がるように構成すれば、同様の効果が得られる。
1 遠心分離機 2 筐体 2A 仕切り板 2B 防護壁
3 チャンバ 3B (チャンバの)孔 4 ロータ室
5 駆動部 6 ハウジング 6A 軸支持部 7 モータ
7A (モータの)回転軸 8 ダンパ 9 断熱部
10 ドア 12 駆動軸部 13 操作・表示部
30 ロータ 31 ロータボディ
31A 駆動軸穴 31B 内周側壁部 31C 底部
31D 外周側壁部 31E 液封環状溝 31F 開口部
31G えぐり部(減肉部) 31H ネジ穴
32 保持穴 32A (保持穴の)底部想像線
40 ロータカバー 41 ハンドル
50 試料容器 51 胴体部 51A 開口部 51B 雄ネジ部
51C 絞り部 51D (試料容器の)肩部
52 キャップ部 52B 雌ネジ部 53 外蓋
53A (取り出し用)貫通穴 53B スベリ防止用の突起
54 内蓋 54A 凸部 54B スカート部 51C ツバ部
55A、55B、55C 頂点部 56A、56B、56C 辺部
57 Oリング 58 上限位置 59A、59B 空間
60 試料 61 液面 62 空間
65 載置面 67 余肉スペース 68 円柱状試料容器外径想像線
70 ネックサポート部材 70A 蓋挿入穴 70B 外周部
70C 平面部 71A 頂点部 71B 辺部
74、77 ペレット 80 ロータ 81 ロータボディ
82 保持穴 90 試料容器 91 胴体部 95 試料容器
96 胴体部 112 駆動部
130 ロータ 131 ロータボディ 131A 駆動軸穴
132 保持穴 140 ロータカバー 141 ハンドル
150 試料容器 151 胴体部 152 蓋
152A 貫通穴

Claims (9)

  1. 試料容器を保持する複数の保持穴を有する遠心分離機用ロータであって、
    前記ロータの保持穴の横断面形状は、内周側に1つの頂点部を有する略三角形であり、
    前記略三角形の2つの頂点部が前記ロータの回転軸から等距離となるように外周側に配置され、
    前記横断面でみて、前記保持穴の最内周位置から外周側へ保持穴の径方向の長さの60%以上に渡って、その円周方向の間隔が徐々に拡大するように形成されることを特徴とする遠心分離機用ロータ。
  2. 前記略三角形の内周側に位置する頂点部を挟む2つの辺部の接線が成す角度は、45度以上90度未満であることを特徴とする請求項1に記載の遠心分離機用ロータ。
  3. 前記略三角形の保持穴の各辺部の接線が成す内周側の角度は、60度であることを特徴とする請求項2に記載の遠心分離機用ロータ。
  4. 前記試料容器の横断面形状は略正三角形であり、前記試料容器は前記ロータの保持穴に、円周方向に回転させた複数位置において装着可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の遠心分離機用ロータ。
  5. 前記ロータの直径は350mm以上450mm以下、高さ200mm以上250mm以下であって、
    前記保持穴に装着される前記試料容器の容積が1200ミリリットル以上であることを特徴とする請求項4に記載の遠心分離機用ロータ。
  6. 前記ロータに形成される前記保持穴は、前記ロータの回転軸に軸対称な位置に4個又は6個配置されることを特徴とする請求項5に記載の遠心分離機用ロータ。
  7. 前記ロータは金属合金の一体成型で構成され、前記保持穴の中心軸が下方に行くほど前記ロータの回転軸から離れるように、前記保持穴が前記ロータの回転軸に対して傾斜するように形成されることを特徴とする請求項6に記載の遠心分離機用ロータ。
  8. 前記保持穴が前記ロータの回転軸に対して傾斜する角度は、前記保持穴の数が4個の際には20度以上25度未満であることを特徴とする請求項7に記載の遠心分離機用ロータ。
  9. 前記保持穴が前記ロータの回転軸に対して傾斜する角度は、前記保持穴の数が6個の際には15度以上20度未満であることを特徴とする請求項7に記載の遠心分離機用ロータ。
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