JP2011004519A - Ipmモータ用ロータとipmモータ - Google Patents

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Abstract

【課題】高強度が保障され、しかも、永久磁石からの漏れ磁束を効果的に解消することのできる、IPMモータ用ロータと該ロータを具備するIPMモータを提供する。
【解決手段】円柱状のロータコア10において、その側面に凹溝11が形成されており、凹溝11と非接触の姿勢で、該凹溝11内に配された磁石2を該凹溝11とともに挟持し、鋼板4が積層してなる抑え材40を備え、ロータコア10の端部に配される2つのエンドプレート30,30により、少なくとも、磁石2と抑え材40が固定されているIPMモータ用ロータ100である。
【選択図】図1

Description

本発明は、ステータの内側に配されたロータ内に磁石が埋設されている、IPMモータ用ロータと該ロータを具備するIPMモータに関するものである。
自動車産業においては、ハイブリッド自動車や電気自動車のさらなる走行性能の向上を目指して、駆動用モータの高出力化、軽量化、小型化への開発が日々進められている。また、家電製品メーカーにおいても、各種家電製品に内蔵されるモータのさらなる小型化、高性能化への開発に余念がない。
上記するモータには、ステータ内部に配されたロータが回転するインナーロータ型モータと、ステータの外周に筒状のロータが回転するアウターロータ型モータが存在する。ところで、インナーロータ型であって、永久磁石がロータ内に埋設されてなるIPMモータにおいては、永久磁石の端部とロータ内周面(ステータに対応する側面)との距離を可及的に狭くすることでこの領域における磁束を流れ難くし、漏れ磁束を低減して磁石の磁束をより有効利用することでモータのトルク性能の向上を図ろうとしている。これを図5を参照して説明すると、ロータR内に平面視でV字状に配された磁石穴E,Eに配された永久磁石に関し、その端部からロータ側面までの領域(領域A)の距離:Lを短くすることにより、漏れ磁束Mを生じ難くするというものである。
しかし、上記のごとく、磁石穴E(永久磁石)の端部からロータ側面までの距離:Lを短くすることにより、漏れ磁束は流れ難くなる一方、今度は領域Aが狭くなるためにロータ強度が低下することは理解に易い。特に、この領域Aには、ロータ回転によって永久磁石に遠心力が作用し、この永久磁石の遠心力が直接的に作用する部位であることから、当該領域Aには十分な強度が要求されている。そこで、領域Aを可及的に狭くしながらもその強度を向上させるために、たとえばロータを構成する電磁鋼板自体の強度を向上させようとすると、今度はロータの磁気特性が悪化し、モータのトルク性能を低下させることになってしまう。
そこで、上記する漏れ磁束を低減するべく、隣接する永久磁石同士の間や、永久磁石とロータ端部の間、等に高磁気抵抗部を設けたロータ(回転子)が特許文献1に開示されている。
特開2002−281700号公報
特許文献1に開示の回転子によれば、永久磁石側方の鉄心に相対的に高磁気抵抗部を設けることで、このような高磁気抵抗部を具備しない永久磁石に比して、該永久磁石の側方からの漏れ磁束を低減することはできる。しかし、永久磁石の側方は、依然として鉄心に連通しており、漏れ磁束を完全に解消することはできないことから、この回転子を具備するモータのトルク性能は、漏れ磁束が完全に解消できるロータを具備するモータのトルク性能に比して格段に劣るものである。
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、高強度が保障され、しかも、永久磁石からの漏れ磁束を効果的に解消することのできる、IPMモータ用ロータと該ロータを具備するIPMモータを提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明によるIPMモータ用ロータは、円柱状のロータコアにおいて、その側面に凹溝が形成されており、前記凹溝と非接触の姿勢で、該凹溝内に配された磁石を該凹溝とともに挟持し、鋼板が積層してなる抑え材を備え、ロータコアの端部に配される2つのエンドプレートにより、少なくとも、前記磁石と前記抑え材が固定されているものである。
本発明のIPMモータ用ロータは、磁極を構成する磁石を非接触で完全に縁切りされたロータコアと抑え材とで挟み、エンドプレートでこれらを締結したものであり、磁石の側方にロータコアが存在しないことで、磁石からの漏れ磁束を完全に解消することのできるIPMモータ用ロータである。
本発明のIPMモータ用ロータは、ロータコアに凹溝を設け、この凹溝の側面とともに磁石(永久磁石)を挟み込む適宜の抑え材を設け、エンドプレートでこれらを不動姿勢で締結したことにより、上記するいわゆるブリッジ部を完全に廃すことができ、したがって漏れ磁束を完全に解消し、もって従来構造のロータを具備するモータに比してトルク性能が格段に向上したモータに供されるロータとなる。
ここで、ロータコアに設けられた凹溝の側面との間で、磁石を挟み込んで固定する抑え材は、電磁鋼板等が積層してなる鋼板積層体であるのが好ましい。無垢なバルク材から形成された場合には、ステータ側から入り込んでくる磁束の通過面積が大きくなってしまい、鉄損が大きくなるためである。
ロータコアに形成される凹溝の形状は任意であるが、たとえば平面視矩形の永久磁石がVの字配置でロータコア内に固定され、一つの磁極を形成する形態においては、略円弧状の側面(直線部と湾曲部が連続した複合面)を有する凹溝を形成しておき、抑え材の形状も、双方がVの字配置の2つの永久磁石を挟んだ姿勢において、この凹溝の形状に対応する略円弧状の側面と、ロータコアの外周面となる側面を有する円弧状の側面と、を有する形態を適用できる。また、凹溝の側面に磁石の位置決めを保障する溝を形成しておき、凹溝と抑え材で磁石が挟み込まれた姿勢において、該磁石が移動不可となるような形態であってもよい。
また、上記する抑え材は、前記ロータコアに比して、相対的に高い磁束密度を有するものであるのが好ましい。
永久磁石よりもステータ側となる抑え材は、モータ駆動時にトルクに寄与する磁束(ティースから抑え材を通って隣接ティースに向かうリラクタンストルクに寄与する磁束や、永久磁石側面からステータ側に向かう磁束)が通過する領域であるとともに、磁束の変動も激しい一方で、永久磁石よりもロータコアの内側領域(ここでは、凹溝が形成されたロータコア本体)は、上記する磁束変動もなく、この領域の磁気特性がモータのトルク性能等に与える影響は極めて低い。
そこで、廉価な製造コストと、モータのトルク性能向上と、の双方を実現するための方策として、永久磁石よりもステータ側に配される抑え材をロータコアに比して、相対的に高い磁束密度を有する素材(の鋼板)、すなわち、磁気特性が相対的に高性能な素材(の鋼板)から形成するものである。
ここで、ロータコアを鋳鉄系磁性材料から一体成形し、抑え材を電磁鋼板、もしくは高グレード電磁鋼板から製造することができる。あるいは、ロータコアを電磁鋼板よりも磁気特性が劣る鋼板を積層してなる鋼板積層体から形成してもよい。ここで言う「鋳鉄系磁性材料」とは、鉄を主成分とした炭素含有の材料のことであり、その一例として鋳鉄や鋼を挙げることができ、さらには、これに添加元素である、ケイ素、ニッケル、コバルト、アルミニウム、バナジウム、ボロン(ホウ素)、タングステン、モリブデン、チタン及びリンなどを含む材料であり、電磁鋼板等に比して廉価であり、これを使用して鋳造することで、多様な形状のコア体(ロータコア)を容易に成形することができる。
また、抑え材をエンドプレートによって固定する際の固定強度を一層高めるための方策として、前記抑え材には、前記2つのエンドプレート側の両端に臨む貫通孔が形成されており、前記貫通孔に棒材が貫挿され、該棒材が前記2つのエンドプレートに固定されている形態を挙げることができる。
たとえば、エンドプレートに貫通孔を開設しておき、抑え材よりも長い棒材を該抑え材に形成された貫通孔に挿通させ、抑え材のエンドプレート側端面から突出する棒材の端部をエンドプレートの貫通孔に挿通する等の形態を挙げることができる。
そして、上記する棒材は、相対的に小断面の線材が束ねられたもの、もしくは、相対的に小断面の面材が積層されたもの、のいずれか一方であるのが好ましい。小断面の線材もしくは面材から形成されていることにより、この棒材を磁束が通過する際の通過面積を可及的に小さくでき、生じ得る鉄損を抑制できるためである。
たとえば、電磁鋼板を積層して棒材を形成し、この積層方向が抑え材の長手方向(棒材の挿通方向)に直交する方向となるようにし、さらに、各電磁鋼板の積層面がステータ側に沿うようにして(ロータコアの径方向)当該棒材を貫通孔に挿通させることで、鉄損の防止に加えて、棒材の最も高い断面剛性(曲げ剛性)を期待することができる。すなわち、2つのエンドプレートでその両端が拘束された棒材に関し、ロータ回転時に永久磁石に作用する遠心力が外力として抑え材を介して棒材に作用する場合において、最も高い曲げ剛性断面にてこの外力に抗し得ることができる。
また、本発明によるロータの他の実施の形態において、前記エンドプレートは、その外郭で屈曲する爪部を備えており、該爪部が前記抑え材をその外側から拘束しているものである。
ここで、エンドプレートは、たとえば、非磁性素材であるアルミニウムや銅、それらの合金、真鍮などから形成されるものである。
そして、エンドプレートに設けられた爪部は、たとえばそのリング状の外郭に沿って連続する環状形態のほか、一定の間隔をおいてエンドプレートの外郭から突出する突起形態のものなどを挙げることができ、この突起は、折り曲げ加工等することでロータコアの側面に当接させるようにできる。
ここで、この爪部には、ロータコアの長手方向に延びるスリットが形成されているのが好ましい。
ロータコアの長手方向に延びるスリットが爪部に形成されていることで、ステータ側から流れ込んだ磁束がこの爪部を通過する際に、その通過面積を可及的に小さくすることができるため、爪部にスリットが形成されていない場合に比して、該爪部に生じ得る鉄損を効果的に低減することができる。
上記する本発明のロータは、いわゆるブリッジ部を完全に廃することで磁石からの漏れ磁束を解消でき、さらに、ロータコアとの間で磁石を挟み込む抑え材に挿通された棒材をエンドプレートに固定することで、当該抑え材と磁石の双方の固定姿勢を保持するとともに、強度特性に優れたロータを提供することになる。特に、従来構造のロータを具備するモータのトルク性能に比して、上記する漏れ磁束抑止効果を奏する本発明のロータを具備するモータのトルク性能が向上することが、本発明者等の検証によって特定されている。
以上の説明から理解できるように、本発明のIPMモータ用ロータとこれを具備するIPMモータによれば、ロータの外周と磁石(永久磁石)との間のブリッジ部を完全に廃すことで、磁石からの漏れ磁束を抑止でき、もってトルク性能に優れたIPMモータを得ることができる。
本発明のIPMモータ用ロータの分解斜視図である。 図1のロータの組立て斜視図である。 本発明のIPMモータ用ロータの他の実施の形態の組立て斜視図である。 本発明のロータを具備するモータの解析モデル(実施例)と、従来構造のロータを具備するモータの解析モデル(比較例)の各トルクを比較した磁場解析結果である。 従来のインナーロータ型IPMモータ用ロータにおいて、永久磁石からの漏れ磁束を模式的に示した図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明のIPMモータ用ロータの分解斜視図であり、図2は、図1のロータの組立て斜視図である。
このロータ100は、鋳鉄系磁性材料が一体成形されてなるロータコア10と、このロータコア10の側面であってその周方向に複数設けられた凹溝11,…と、それぞれの凹溝11内に配設される2つの永久磁石2,2(これで1つの磁極20を形成)と、凹溝11の側面との間で永久磁石2,2を挟み込んで固定する抑え材40と、抑え材40に形成された貫通孔41に挿通される棒材50と、この棒材50の端部が挿通される孔31とシャフト用開口32を具備するエンドプレート30,30と、から大略構成されている。ここで、ロータコア10を形成する鋳鉄系磁性材料としては、たとえば鉄を主成分とした炭素含有の材料のことであり、その一例として鋳鉄や鋼を挙げることができ、さらには、これに添加元素である、ケイ素、ニッケル、コバルト、アルミニウム、バナジウム、ボロン(ホウ素)、タングステン、モリブデン、チタン及びリンなどを含む材料である。このような材料が成形型内で加圧成形されてロータコア10が成形される。
また、抑え材40は、電磁鋼板4,…が積層してなる鋼板積層体から形成されている。ステータ側へ発生する磁石の磁束等が通過する抑え材40を磁気特性に優れた電磁鋼板積層体から形成し、磁束変動がほとんどなく、トルクに寄与する磁束の通過もほとんどない図示するロータコア10を比較的安価な鋳鉄等から成形することで、磁気特性に優れ(したがってモータのトルク性能が高い)、可及的に安価なIPMモータ用ロータ100を製作することができる。
また、棒材50も電磁鋼板5,…を積層した鋼板積層体であり、これを抑え材40に開設された貫通孔41に挿通する際に、その電磁鋼板5の広幅面がロータコア10の径方向、すなわち、ステータ側に沿う方向に配設されるようにして挿通される。
このような配設態様で棒材50が貫通孔41内に挿通されることで、ロータ回転時に永久磁石2,2に遠心力が作用し、これが抑え材40を介して棒材50に作用した際の、該棒材50における最も高い曲げ剛性を期待することができる。
棒材50の両端部、すなわち、抑え材40の貫通孔41に挿通された際に該抑え材40の両端部から突出する棒材50の両端部は、非磁性素材であるアルミニウム等からなるエンドプレート30に開設された孔31に挿通され、これにより、図2で示す組立姿勢において、抑え材30と永久磁石2,2とをロータコア10に対して不動姿勢で強固に接合させることができる。
図1の分解斜視図から明りょうに理解できるが、図示する本発明のロータ100の構造によれば、従来構造のロータコアにおける、永久磁石とロータコア端部との間のブリッジ部が完全に廃された構造を呈することができる。
したがって、このブリッジ部が存在することでその発生を余儀なくされていた永久磁石からの漏れ磁束を効果的に抑止することができる。さらには、エンドプレート30に開設された孔31に棒材50の両端部が挿通されることで、抑え材30と永久磁石2,2とをロータコア10に強固に接合させることができるため、ロータ100全体の強度も極めて高いものとなる。
一方、図3は、本発明のIPMモータ用ロータの他の実施の形態の組立て斜視図である。このロータ100Aは、そのリング状の外郭に沿ってロータコア10の側面側に屈曲する爪部33,…を備えたエンドプレート30Aを具備するものである。この爪部33が抑え材40とロータコア10の間に形成された隙間に嵌り込んで、該抑え材40をその外側から締結することで、より一層強固なロータとなり得る。
また、この爪部33には、鉛直方向(ロータの軸方向)に延びる複数のスリット33a、…が形成されていることで、不図示のステータ側から入り込んできた磁束が爪部33を通過する面積を可及的に小さくすることができ、スリットが存在しない場合に比して、爪部に生じ得る鉄損を低減することができる。
[本発明のロータを具備するモータの解析モデル(実施例)と、従来構造のロータを具備するモータの解析モデル(比較例)の各トルクを比較した磁場解析とその結果]
本発明者等は、図2で示す本発明のロータを具備するモータの解析モデル(実施例)と、従来構造のロータ(図5で模式的に示すブリッジ部が存在するロータ)を具備するモータの解析モデル(比較例)をそれぞれコンピュータ内で形成し、1Tで周波数が1000Hzの磁気を作用させた磁場解析をおこない、双方の最大トルクを求めて比較した。その結果を図4に示している。なお、同図では、比較例の最大トルクを1に正規化し、実施例のトルクをそれに対する比率で示している。
同図より、比較例に比して実施例は、トルクが10%も向上することが実証されている。
以上の解析結果等より、本発明のIPMモータ用ロータを具備するモータでは、従来構造のモータに比してトルクが10%程度も向上すること、ロータコアの多くの部分を可及的に安価な鋳鉄等で成形できることでその全体の製造コストも安価となること、という多くの効果が奏されるものである。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
10…ロータコア、11…凹溝、2…永久磁石、20…磁極、30,30A…エンドプレート、31…孔、33…爪部(突起)、33a…スリット、4…電磁鋼板、40…抑え材、41…貫通孔、5…電磁鋼板、50…棒材、100,100A…IPMモータ用ロータ

Claims (7)

  1. 円柱状のロータコアにおいて、その側面に凹溝が形成されており、
    前記凹溝と非接触の姿勢で、該凹溝内に配された磁石を該凹溝とともに挟持し、鋼板が積層してなる抑え材を備え、
    ロータコアの端部に配される2つのエンドプレートにより、少なくとも、前記磁石と前記抑え材が固定されている、IPMモータ用ロータ。
  2. 前記抑え材は、前記ロータコアに比して、相対的に高い磁束密度を有するものである、請求項1に記載のIPMモータ用ロータ。
  3. 前記抑え材には、前記2つのエンドプレート側の両端に臨む貫通孔が形成されており、
    前記貫通孔に棒材が貫挿され、該棒材が前記2つのエンドプレートに固定されている、請求項1または2に記載のIPMモータ用ロータ。
  4. 前記棒材は、相対的に小断面の線材が束ねられたもの、もしくは、相対的に小断面の面材が積層されたもの、のいずれか一方である、請求項3に記載のIPMモータ用ロータ。
  5. 前記エンドプレートは、その外郭で屈曲する爪部を備えており、該爪部が前記抑え材をその外側から拘束している、請求項1〜4のいずれかに記載のIPMモータ用ロータ。
  6. 前記爪部に、ロータコアの長手方向に延びるスリットが形成されている、請求項5に記載のIPMモータ用ロータ。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載のロータと、その外側に配されたステータと、からなる、IPMモータ。
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