JP2010540595A - アルツハイマー病に対する細胞外標的 - Google Patents

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Abstract

本発明は、神経疾患の分野、とりわけ、アルツハイマー病の分野に関する。具体的に、本発明は、テトラスパニンウェブファミリー及び関連タンパク質から選択されるアルツハイマー病に対する細胞外標的を提供する。さらに、アミロイド−β生成の阻害のための、標的に対するsiRNA及び抗体の使用のための、ゆえにアルツハイマー病の治療のための、方法を提供する。

Description

本発明は、神経性疾患の分野及び、とりわけアルツハイマー病の分野に関する。具体的に、本発明は、テトラスパニンウェブファミリー及び関連タンパク質から選択されるアルツハイマー病に対する細胞外標的を提供する。さらに、アミロイド−β産生の阻害のための、ゆえにアルツハイマー病の治療のための、標的に対するsiRNA及び抗体の使用のための方法を提供する。
全ての細胞生物学的プロセスは、一時的又は安定的なタンパク質の物理学的相互作用に依存し、これらは、脂質、糖及びその他の生体分子と会合して、細胞において複合体及び機能的ネットワークを形成する。これらの相互作用は、タンパク質機能の極めて重要な局面である。「膜内切断プロテアーゼ(iCLiPs)」ファミリーのアスパルチルプロテアーゼであるγ−セクレターゼは、アルツハイマー病(AD)患者の脳における老人斑の主要成分であるβ−アミロイドペプチド(Aβ)の生成に関与する多タンパク質複合体である。アミロイド前駆タンパク質(APP)以外に、γ−セクレターゼはまた、Notch受容体、N−カドヘリン、ErbB−4及びシンデカン−3などの多岐にわたる生物学的プロセスに関与する多くの1型膜タンパク質も切断する。細胞表面、エンドソーム区画及び再生区画は、γ−セクレターゼ活性の主要な場所として示唆されている
γ−セクレターゼのコアは、4つの高度疎水性タンパク質からなる(即ち、プレセニリン(PS)、ニカストリン(NCT)、咽頭前部欠損(Aanterior pharynx defective−1(Aph−1)及びプレセニリンエンハンサー−2(Pen−2)。2つの異なるプレセニリン(PS1及びPS2)は、元来、早期発症常染色体優性遺伝ADに対する主要な遺伝子座の産物として同定された。PS1及びPS2は、γ−セクレターゼ複合体に対する、2つの隣接する膜貫通ドメイン内のアスパラギン酸塩のペアからなる触媒部位を提供する4、5。NCTは、基質認識に関与し、一方、Aph−1及びPen−2の機能的役割は完全には明らかになっていない。これらの4つのタンパク質は、活性複合体を形成するために必要とされる最小構成要素である。例えば、これらのタンパク質を発現しない酵母細胞において、4つの構成要素が一緒に発現された場合のみ、γ−セクレターゼ活性が再構成された。哺乳動物及び昆虫細胞において、これらの4つの構成要素は不可欠であり、それらの同時過剰発現の結果、Aβ分泌増加により測定されるように、γ−セクレターゼ活性が向上する8、9。しかし、活性の向上は、得られるタンパク質発現レベルから予測されるものよりも小さく、このことから、γ−セクレターゼ活性の制御にその他の因子が関与することが示唆される。実際に、γ−セクレターゼ活性を有する高分子量複合体の大きさは、使用される実験条件に依存して、〜250kDaから〜2000kDaで変動し、このことから、コア構成要素と一時的又は安定して相互作用するγ−セクレターゼ複合体又は関連タンパク質のオリゴマー組み立ての何れかが示唆される10−14
実際に、いくつかのタンパク質が、β−カテニン15、Tmp2116、CD14717及びその他などのPS及び/又はγ−セクレターゼ複合体と相互作用することが示されている。しかし、γ−セクレターゼ活性と相互作用し制御する全てのタンパク質を同定するための包括的アプローチは現在まで公開されていない。
Parks A.L.及びD.Curtis、Trends Genet.23、2007年、p.140−150 Kaether C.、C.Haass及びH.Steiner、Neurodegener.Dis.、3、2006年、p.275−283 De Strooper B.Neuron 38、2003年、p.9−12 De Strooper B.他、Nature 391、1998年、p.387−390 Wolfe M.S.他、Nature 398、1999年、p.513−517 Shah S.他、Cell 122、2005年、p.435−447 Edbauer D.他、Nat.Cell.Biol.5、2003年、p.486−488 Kimberly W.T.他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100、2003年、p.6382−6387 Takasugi、N.他、Nature 422、2003年、p.438−441 Capell A.他、J.Biol.Chem.273、1998年、p.3205−3211 Yu G.他、J.Biol.Chem.273、1998年、p.16470−16475 Li Y.M.他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97、2000年、p.6138−6143 Edbauer D.、E.Winkler、C.Haass及びH.Steiner、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99、2002年、p.8666−8671 Evin G.他、Biochemistry 44、2005年、p.4332−4341 Zhou J.他、Neuroreport 8、1997年、p.1489−1494 Chen F.他、Nature 440、2006年、p.1208−1212 Zhou S.、H.Zhou、P.J.Walian及びB.K.Jap、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102、2005年、p.7499−7504
γ−セクレターゼを制御するタンパク質の同定によってまた、ADに対する薬剤の開発のための新しい分子標的も提供され得る。従って、発明者らは、PSにおいてタンデムアフィニティータグ(TAP−タグ)を使用し、そのインタラクトームをマッピングするためにタンデムアフィニティータグ精製(TAP)を適用した。TAPは、酵母S.cerevisiae18、19において主に使用されてきたが、最近、TNF−α/NF−κB経路のインタラクトームもこの方法で哺乳動物細胞においてマッピングされた20。TAPアプローチの主要な長所は、2つの高親和性結合段階及び2つの特異性が高い溶出段階の組み合わせであり、その結果、相互作用するタンパク質が効率的に濃縮される。
このストラテジーを用いることにより、発明者らは、細胞膜においてγ−セクレターゼが部分的にテトラスパニンウェブと会合することを初めて示すことができた。発明者らは、RNAi実験及び分別実験を用いてこのタンパク質を確認した。そのようにすることによって、テトラスパニンウェブファミリー由来の3つのタンパク質が、アルツハイマー病に対する細胞外標的であることが分かった。従って、標的において結合する分子は、ADを治療するために使用することができる。
dTag PS及びdTag SPPL3の安定発現及びTAP−タグ精製。(a)PS dKO MEF細胞におけるdTag PSの安定発現。γ−セクレターゼ構成要素及びFLAG(M2)に対する抗体を用いてウエスタンブロットによってMEF細胞の細胞溶解液を分析した。dTag PS1又はPS2の発現により、ニカストリンの成熟及びPen−2の安定化が回復した。ニカストリンの、PS1全長(fl)、N−末端断片(NTF)、成熟(m)及び未成熟(i)形態を示す。(b)PS dKO MEF細胞におけるdTag SPPL3の安定発現。ウエスタンブロット分析から、dTag SPPL3によりγ−セクレターゼ成熟が回復できないことが示される。(c)TAP−タグ精製の略図。(d)dTag PS1のTAP−タグ精製。ウエスタンブロットにより各分画の当量を分析した。γ−セクレターゼ構成要素は精製分画において定量的に維持された(M2及びCaM溶出液)。CTF、C末端断片。(e)精製分画のインビトロγ−セクレターゼアッセイ。各分画の当量を組み換え基質APP C99−3xFLAGと混合し、37℃で温置し、抗Aβ抗体(W0−2)を用いてウエスタンブロットにより分析した。Aβのデノボ生成から、活性γ−セクレターゼの定量的回収が示される。(f)SDS−PAGEでTAP精製dTag PS1分画(3段階)を分離し、クーマシーブルーで染色した。矢印はγ−セクレターゼ構成要素の予想位置を示す。左レーン、分子標準。 dTag PS2、SPPL3及びPS dKO MEF細胞のTAP−タグ精製。(a)dTag PS2のTAP−タグ精製。ウエスタンブロットにより各分画を分析した。精製分画においてγ−セクレターゼ構成要素が保持された。(b)dTag SPPL3のTAP−タグ精製及び各分画のウエスタンブロット分析。γ−セクレターゼ構成要素はM2フロースルー中に残存した。(c)PS dKO MEF細胞からの対照TAP−タグ精製。 膜輸送及び膜構成に関与するPS相互作用タンパク質。(a)膜輸送及び膜構成に関与するPS相互作用タンパク質を説明とともに示す。(b)パネルに列挙されたタンパク質は、ERとゴルジとの間の順行性及び逆行性経路及び原形質膜から/原形質膜へのエンドサイトーシス/再循環経路に寄与する。PM、原形質膜;EE、初期エンドソーム;LE、後期エンドソーム;LY、ライソソーム;ERAD、ER関連分解。 PS相互作用タンパク質及びAβ分泌におけるsiRNA介在ノックダウンの影響。(a)テトラスパニンウェブの略図。タンパク質間の矢印は、文献において実験的に示されている結合相互作用を指す35、36、50。点線は、相互作用の様々なレベルに相当する。テトラスパニンウェブの形成に関与するか又はテトラスパニンウェブと側方に会合するPS相互作用タンパク質が示される。(b)HEK293 APPSw細胞におけるPS相互作用タンパク質のRNAi介在ノックダウンの影響は、Aβ分泌におけるテトラスパニンウェブに関与する。遺伝子移入から48時間後に、分泌されたAβ40及びAβ42を特異的ELISAによって測定した。Y軸は、Aβ対照レベルに対する%を表す(対照siRNAプールを用いた遺伝子移入)。6回の試験の平均値及びSEMとしてデータを表す。有意差は、P<0.05;**P<0.01;及び***P<0.001で設定した。(c)HeLa細胞におけるテトラスパニンウェブタンパク質のsiRNA介在ノックダウン。遺伝子移入から48時間後、可溶化総細胞溶解液をウエスタンブロットにより分析した。結果は二つ組の試験で示される。(d)HeLa細胞におけるテトラスパニンウェブタンパク質のノックダウンにおけるγ−セクレターゼ活性。パネルcのように、HeLa細胞にsiRNAを遺伝子移入し、続いて、APPSwの発現を促進する組み換えアデノウイルスを感染させた。分泌されたAβ40及びAβ42をELISAにより測定した。Aβレベルは、対照siRNAプールで処理された細胞におけるものと関連する。3回の独立した実験の平均値及びSEMとしてデータを示す。有意差はP<0.05及び***P<0.001で設定した。 γ−セクレターゼ調節因子に対するRNAiスクリーニング。膜輸送及び、輸送体活性を有するタンパク質及び細胞接着分子などのその他のものに関与するPS相互作用タンパク質のヒトオルソログを標的とするsiRNAをHEK293 APPSw細胞に遺伝子移入した。遺伝子移入から48時間後に特異的ELISAによって、分泌されたAβ40及びAβ42を測定した。Y軸は、対照細胞におけるAβレベルに対するRNAi処理細胞のAβレベルを表す(対照siRNAプールを用いた遺伝子移入)。4回の実験の平均値及びSEMとしてデータを示す。有意差は、P<0.05;**P<0.01;及び***P<0.001で設定した。 γ−セクレターゼ調節因子に対するRNAiスクリーニング。RNAiにおける全長APP、APP CTF及びγ−セクレターゼ構成要素のレベルをウエスタンブロットにより分析した。ノックダウンによりAβ40、42又はこの両方の何れかのレベルを有意に変化させたタンパク質を分析用に選択した。VCPのRNAi、Myadm及び4F2lcもまた、APP発現及びAPP−CTFのレベルに影響を与えたことに注意。このことから、これらのタンパク質が、γ−セクレターゼのレベルだけでなく、APP輸送のレベルでもAPPプロセシングに影響を与えることが示唆される。 p24ファミリータンパク質のsiRNA介在ノックダウン。(a)Tmp21及びp24a siRNAを遺伝子移入したHEK293 APPSw細胞のウエスタンブロット。この細胞にsiRNAを2回遺伝子移入し、2回目の遺伝子移入から56時間後に細胞を溶解させた。既に示されるように、Tmp21のノックダウンにより、p24aのレベルが低下し、逆もまた同様であった。p24a RNAiはAPPレベルに影響を与えた。(b)分泌されるAβをELISAにより測定した。Tmp21のノックダウンによりAβ40が僅かに増加し、一方、p24aによりAβ40及びAβ42の両方が減少した。3回の独立した実験の平均値及びSEMとしてデータを示す。有意差は***P<0.001で設定した。 テトラスパニン関連タンパク質の過剰発現。(a)FPRP、PGRL、CD98hc(左パネル)、CD81−V5、Upk1b−V5(中央パネル)及びCD9(右パネル)を一時的に発現したHEK293 APPSw細胞のウエスタンブロット分析。遺伝子移入から36時間後にこの細胞を回収した。FPRP又はPGRLの発現によりCD98hcのレベルが上昇した。(b)分泌されるAβをELISAにより測定した。3回の独立した実験の平均値及びSEMとしてデータを示す。有意差は、P<0.05;***P<0.001で設定した。 γ−セクレターゼとテトラスパニンウェブ関連タンパク質との間の生理学的相互作用。(a)免疫共沈降による、γ−セクレターゼ複合体とテトラスパニンウェブタンパク質との間の相互作用の確認。抗Aph−1a(B80.3)又は免疫前血清(対照)により1%CHAPSO−可溶化HEK293膜を沈殿させ、沈殿物をウエスタンブロットにより分析した。テトラスパニンCD9(MS実験で同定されなかった。)もまたγ−セクレターゼ複合体と会合することが分かったことに注意。(b)FPRP免疫共沈降γ−セクレターゼ構成要素。抗FPRP(1F11)又はアイソタイプ対照抗体とともに1%CHAPSO−可溶化HEK293膜を温置し、ウエスタンブロットにより分析した。HEK293細胞におけるFPRP(c)及びPGRL(d)の安定過剰発現。安定細胞からのFPRP(1F11)及びPGRL(8A12)の免疫沈降から、wt細胞と比較して、γ−セクレターゼ構成要素との会合が増加することが示された。アスタリスクはIgバンドを示す。HEK293細胞における内因性PGRLの発現レベルは、検出レベル未満であり、PGRLは、抗PGRL(d)との沈降後のみ検出された。 CD81及びCD9欠損MEFにおけるγ−セクレターゼ基質のCTFの蓄積。CD81又はCD9が欠損したMEF細胞における内因性γ−セクレターゼ基質のC末端断片(CTF)のレベルをウエスタンブロットにより分析した(左パネル)。CTFの蓄積を示すために、10μM γ−セクレターゼ阻害剤DAPTで処理したWt MEF細胞を対照(wt+阻害剤)として使用した。これらの細胞における個々のγ−セクレターゼ構成要素又は基質のレベルは不変である(右パネル)。 ショ糖密度勾配におけるテトラスパニンウェブタンパク質及びγ−セクレターゼ構成要素の共分布。1%Triton X−100、0.5%DDM、1%CHAPSO又は1%Brij99でHEK293細胞を可溶化し、不連続ショ糖密度勾配で分離した。13個の分画を最上部から回収し、ウエスタンブロットにより分析した。これらの実験において、膜/脂質ドメインは、それらが会合し続ける場合、最上部の分画に浮上する。相互作用を破壊する界面活性剤が使用される場合、タンパク質は最下層の分画に再分布する。テトラスパニンドメインは1%CHAPSO及び1%Brij99中で維持され続け、γ−セクレターゼ構成要素はこの勾配においてこれらのドメインとともに一緒に分布する。ラフトに対するカベオリン−1マーカーもまた、予想されるようにこれらの実験において浮上することに注意。ERマーカーカルネキシンは、より重い分画中に残る。ラフトを維持するTX−100又は0.5%DDMのような界面活性剤はテトラスパニンドメインを解離させており、γ−セクレターゼ複合体はもはや軽い分画で浮上しない。ラフトに対するカベオリンマーカーは軽い分画にとどまり、このことから、実際にラフトドメインがこれらの条件で保持され続けることが示される。 テトラスパニンウェブと会合されるγ−セクレターゼは、より長いAβ種を生成する。テトラスパニンウェブと会合されるγ−セクレターゼのタンパク質分解活性をインビトロアッセイにより測定した。(a)FPRPを発現するwtHEK293細胞及びHEK293からの1%CHAPSO−可溶化ミクロソーム膜を抗FPRP、PS1、Aph−1a又は対照抗体との免疫沈降に供した。組み換え基質C99−3xFLAGと結合複合体を37℃で3時間温置し、抗FLAG(M2)を用いて、得られたAICDをウエスタンブロットにより分析した(上パネル)。γ−セクレターゼ阻害剤L−685、458の存在下で温置した(インプット+阻害剤)wt細胞の膜の反応によって、反応に対する特異性を確認した。抗Aβ(82E1)を用いて、尿素−SDS PAGE及びウエスタンブロットによって、Aβ種の生成を測定した(下パネル)。アスタリスクは、基質由来の非特異的バンドを示す。分子標準(Aβ std)として合成Aβペプチドを使用した。(b)3回の独立実験の免疫ブロットからAβ生成を定量した。Aβバンドの強度を測定し、各個々の反応においてAβの合計に対して正規化した。平均値及びSEMとしてデータを示す。有意差は、P<0.05及び**P<0.01で設定した。(c)MEF細胞の1%CHAPSO−可溶化ミクロソーム膜からの抗CD81、CD9及びPS1抗体との免疫沈降と、それに続くインビトロアッセイ。ウエスタンブロットによりAICD及びAβ種を視覚化した。総Aβあたりの長いAβ種の相対比率を測定し、示した(下パネル)。(d)4回の独立実験の免疫ブロットからAβ生成を定量した。
γ−セクレターゼは、I型膜タンパク質を切断する、プレセニリン、ニカストリン、Aph−1及びPen−2を含有する高分子量複合体である。これらの4つの構成要素は、γ−セクレターゼ活性に必要であり十分であるが、さらなるタンパク質が相互作用し得る。従って、発明者らは、タンデムアフィニティー精製(TAP)法を用いて、再構成プレセニリン−欠損繊維芽細胞から活性γ−セクレターゼ複合体を精製した。発明者らは、複合体成熟、膜輸送及びテトラスパニンウェブファミリーに関与するタンパク質を同定した。小さな、4つの膜貫通ドメインタンパク質(350アミノ酸以下)のテトラスパニンスーパーファミリーは、ヒト及びマウスにおいて33のメンバーからなり、卵−精子融合、免疫学的反応及び組織分化と同じように多様な生理的プロセスに関与するタンパク質を含む。
トポロジー予測に従い、テトラスパニンは、2つの細胞外ドメイン(小細胞外ループ及び大細胞外ループ(LEL)と呼ばれることが多い。)及び3つの比較的短い細胞質領域を有する。以前の実験からテトラスパニンが互いに相互作用し、ミクロドメインの新規クラスの組み立てに対する構造プラットフォームを形成することが証明された(テトラスパニンに富むミクロドメイン(TERM、TEM)又は「テトラスパニンウェブ」と呼ばれる。)。同型及び異型相互作用のネットワークを通じて、テトラスパニンは原形質膜において会合膜貫通受容体(例えば、インテグリン、受容体チロシンキナーゼ)の空間的並置を制御し、その結果、シグナル伝達経路が調整されることが提案されている。
テトラスパニンがそれらの会合パートナーの生合成成熟及び輸送を制御する新たな証拠もある。本発明において、発明者らは、γ−セクレターゼ複合体と生理学的に相互作用するだけでなく、アミロイドβの生成にも影響を与える3つのテトラスパニンウェブファミリーメンバーを同定した。従って、この3つのテトラスパニンウェブファミリーメンバー(CD81、PTGFRN及びSLC3A2)は、γ−セクレターゼ複合体の活性に影響を与える。この3つのテトラスパニンウェブファミリーメンバーのそれぞれの活性の下方制御により、アミロイドβの生成が減少する。従って、アルツハイマー病の治療のための薬剤を製造するために、CD81、PTGFRN及び/又はSLC3A2の発現を阻害する分子を使用することができる。
PTGFRN(又はプロスタグランジンF2−α受容体関連タンパク質又はプロスタグランジンF2−α受容体制御タンパク質又はプロスタグランジンF2受容体の負の制御因子の前駆体又はCD315抗原又はFPRP)のヌクレオチド及びアミノ酸配列はそれぞれ配列番号1及び2で示す。
CD81のヌクレオチド及びアミノ酸配列(又は増殖抑制抗体1又はテトラスパニン−28又はTAPAIの標的)はそれぞれ配列番号3及び4で示す。
SLC3A2(又はCD98抗原又はMDU1又はNACAE又は4f2細胞表面抗原重鎖)のヌクレオチド及びアミノ酸配列はそれぞれ配列番号5及び6です。
特定の実施形態において、PTGFRN、CD81又はSLC3A2の発現を阻害する分子は低分子干渉RNA分子である。
従って、本発明は、アルツハイマー病を予防及び/又は治療するための薬剤の製造のための、PTGFRN(配列番号1)、CD81(配列番号3)及びSLC3A2(配列番号5)からなるリストから選択されるテトラスパニンウェブファミリーメンバーをコードするRNA分子とハイブリッド形成する低分子干渉RNA(siRNA)の使用を提供する。siRNA配列は表2で示す。
別の実施形態において、本発明は、センスRNA鎖及びアンチセンスRNA鎖を含む単離siRNAの有効量を含む医薬組成物を提供し、この場合、センス及びアンチセンスRNA鎖はRNA2本鎖を形成し、センスRNA鎖は、配列番号1又は3又は5における約19から約25連続ヌクレオチドの標的配列と同一であるヌクレオチド配列を含む。従って、特に、本発明は、配列番号1、3及び/又は5の標的mRNAに標的化される、約19から約25ヌクレオチド長の短い2本鎖RNAを含む単離siRNAを提供する。このsiRNAは、標準的ワトソン−クリック塩基対形成相互作用によって(本明細書中で以後「塩基対形成される」と呼ぶ。)一緒にアニーリングされるセンスRNA鎖及び相補的アンチセンスRNA鎖を含む。センス鎖は、標的mRNA内に含有される標的配列と同一である核酸配列を含む。本siRNAのセンス及びアンチセンス鎖は、2つの相補的な1本鎖RNA分子を含み得るか、又は、2つの相補的部分が塩基対形成され、1本鎖「ヘアピン」領域により共有結合される、単一分子を含み得る。「単離された」という用語は、人間の介入を通じて天然の状態から改変されるか又は除去されることを意味する。例えば、生きている動物において天然に存在するsiRNAは「単離され」ていないが、合成siRNA又は、部分的又は完全にその天然状態の共に存在する物質から分離されるsiRNAは、「単離され」ている。単離siRNAは、実質的に純粋な形態で存在し得るか又は例えばiRNAが送達された細胞などの非天然環境に存在し得る。
本発明のsiRNAは、部分的に精製されたRNA、実質的に純粋なRNA、合成RNA又は組み換え産生RNAならびに、1以上のヌクレオチドの、付加、欠失、置換及び/又は改変により天然のRNAとは異なる改変RNAを含み得る。このような改変には、siRNAをヌクレアーゼ消化に対して耐性となるようにする修飾を含む、siRNAの末端又はsiRNAの1以上の内部ヌクレオチドになどに対する、非ヌクレオチド物質の付加が含まれ得る。
本発明のsiRNAの一方又は両方の鎖はまた3’突出部も含み得る。「3’突出部」は、RNA鎖の3’末端から伸びる少なくとも1つの不対ヌクレオチドを指す。従って、ある実施形態において、本発明のsiRNAは、1から約6ヌクレオチド(リボヌクレオチド又はデオキシヌクレオチドを含む。)長の、好ましくは1から約5ヌクレオチド長の、より好ましくは1から約4ヌクレオチド長の、及び特に好ましくは約1から約4ヌクレオチド長の、少なくとも1つの3’突出部を含む。
siRNA分子の両鎖が3’突出部を含む実施形態において、突出部の長さは、各鎖に対して同じ又は異なり得る。最も好ましい実施形態において、3’突出部は、siRNAの両鎖に存在し、2ヌクレオチド長である。本siRNAの安定性を促進するために、3’突出部はまた分解に対しても安定化され得る。ある実施形態において、この突出部は、アデノシン又はグアノシンヌクレオチドなどのプリンヌクレオチドを含むことにより、安定化される。
あるいは、修飾類似体によるピリミジンヌクレオチドの置換、例えば、2’−デオキシチミジンでの3’突出部におけるウリジンヌクレオチドの置換は、許容され、RNAi分解の効率に影響を与えない。特に、2’−デオキシチミジンにおいて2’ヒドロキシルがないことにより、組織培養液中での3’突出部のヌクレアーゼ耐性が顕著に促進される。
何らかの標的mRNA配列(「標的配列」)において、本発明のsiRNAがおよそ19−25連続ヌクレオチドのなんらかのストレッチに標的化され得、この配列は配列番号1、3及び5で示される。siRNAに対する標的配列を選択するための技術は当技術分野で周知である。従って、本siRNAのセンス鎖は、標的mRNAにおける約19から約25ヌクレオチドの何らかの連続ストレッチと同一であるヌクレオチド配列を含む。
本発明のsiRNAは、当業者にとって公知の多くの技術を用いて得ることができる。例えば、当技術分野で公知の方法を用いて、siRNAを化学合成するか又は組み換え産生することができる。好ましくは、適切に保護されたリボヌクレオシドホスホールアミダイト及び従来のDNA/RNA合成装置を用いて、本発明のsiRNAを化学合成する。2つの個別の相補的RNA分子として、又は2つの相補領域を有する単一RNA分子として、本siRNAを合成することができる。合成RNA分子又は合成試薬の市販業者としては、Proligo(Hamburg、Germany)、Dharmacon Research(Lafayette、Colo、USA)、Pierce Chemical(Perbio Science、Rockford、Ill.、USAの一部)、Glen Research(Sterling、Va.、USA)、ChemGenes(Ashland、Mass.、USA)及びCruachem(Glasgow、UK)が挙げられる。
あるいは、siRNAはまた、何らかの適切なプロモーターを用いて、組み換え環状又は直鎖DNAプラスミドからも発現され得る。プラスミドから本発明のsiRNAを発現させるための適切なプロモーターには、例えば、U6又はH1 RNA pol IIIプロモーター配列及びサイトメガロウイルスプロモーターが含まれる。その他の適切なプロモーターの選択は当技術分野の技術範囲内である。本発明の組み換えプラスミドはまた、特定の組織における又は特定の細胞内環境におけるsiRNAの発現のための誘導性又は制御性プロモーターも含み得る。組み換えプラスミドから発現されるsiRNAは、標準的技術により培養細胞発現系から単離され得るか又はニューロンにおいて細胞内で発現され得るかの何れかである。
本発明のsiRNAはまた、ニューロンにおいて細胞内で組み換えウイルスベクターからも発現され得る。この組み換えウイルスベクターは、本発明のsiRNAをコードする配列及びsiRNA配列を発現させるための何らかの適切なプロモーターを含む。適切なプロモーターには、例えば、U6又はH1RNA pol IIIプロモーター配列及びサイトメガロウイルスプロモーターが含まれる。その他の適切なプロモーターの選択は当技術分野の技術の範囲内である。本発明の組み換えウイルスベクターはまた、脳における(例えば海馬ニューロンにおける)siRNAの発現のための誘導性又は制御性プロモーターも含み得る。
本明細書中で使用される場合、siRNAの「有効量」は、標的mRNAのRNAi介在分解を引き起こすのに十分な量又は対象において斑形成(又はアミロイド−β40/42形成)の進行を阻害するのに十分な量である。標的mRNAのRNAi介在分解は、上述のようにmRNA又はタンパク質を単離及び定量するための標準的技術を用いて、対象の細胞において標的mRNA又はタンパク質のレベルを測定することにより検出され得る。
当業者は、対象の大きさ及び体重;疾患侵入の程度;対象の年齢、健康及び性別;投与経路;及び投与が局所的であるか又は全身性であるかなどの因子を考慮することによって、ある一定の対象に投与されるべき本発明のsiRNAの有効量を容易に決定することができる。一般に、本発明のsiRNAの有効量は、約1nM(nM)から約100nM、好ましくは約2nMから約50nM、より好ましくは約2.5nMから約10nMの細胞内濃度を含む。siRNAのより多い又はより少ない量を投与し得ることが企図される。
本方法は、アルツハイマー病に罹患している患者の脳におけるアミロイド−βの斑形成を予防及び/又は治療するために使用することができる。アルツハイマー病を治療するために、本発明のsiRNAとは異なる薬剤と組み合わせて、本発明のsiRNA(1、2又は3つの標的に向けられた1以上のsiRNA)を対象に投与することができる。あるいは、アルツハイマー病を治療するために設計された別の治療法と組み合わせて、対象に本発明のsiRNAを投与することができる。
本方法において、裸のsiRNAとして、送達試薬と組み合わせて、又はsiRNAを発現する組み換えプラスミド又はウイルスベクターとしての何れかで、本siRNA(1又は2又は3つの標的に向けられたsiRNAの少なくとも1つ又はその組み合わせ)を対象に投与することができる。特定の実施形態において、最初にポリアルギニンストレッチ(YTIWMPENPRPGTPCDIFTNSRGKRASNGGGGRRRRRRRRR)にカップリングされるRabiesウイルス由来のペプチドにsiRNAを結合させる(P.Kumarら(2007)Nature 448(7149):39−43参照)(配列番号35)。本siRNAと組み合わせた投与のための適切な送達試薬には、Mirus Transit TKO脂溶性試薬;リポフェクチン;リポフェクタミン;セルフェクチン;又はポリカチオン(例えばポリリジン)又はリポソームが含まれる。好ましい送達試薬はリポソームである。
リポソームは、siRNAの血中半減期を延長させ得る。本発明での使用に適切であるリポソームは標準的小胞形成脂質から形成され、これには、一般に、中性又は負電荷リン脂質及びステロール(コレステロールなど)が含まれる。脂質の選択は一般に、所望のリポソームの大きさ及び血流中でのリポソームの半減期などの因子を考慮することにより導かれる。好ましくは、本siRNAを封入するリポソームは、脳に対してリポソームを標的化することができるリガンド分子を含む。好ましいリガンドは、Rabies Virus由来のペプチド(YTIWMPENPRPGTPCDIFTNSRGKRASNG)(配列番号36)であるが、これは、このペプチドリガンドが脳血管関門を越えることができ、ニューロン膜を越えることもできるからである。
特に好ましくは、本siRNAを封入するリポソームは、単核マクロファージ及び網内系によるクリアランスを回避するように、例えば、本構造の表面に結合するオプソニン化阻害部分を有することにより、修飾される。ある実施形態において、本発明のリポソームは、オプソニン化阻害部分及びリガンドの両方を含み得る。
本発明のリポソームの調製における使用のためのオプソニン化阻害部分は、通常、リポソーム膜に結合している大きな親水性ポリマーである。本明細書中で使用される場合、オプソニン化阻害部分は、例えば、膜そのものへの脂質溶解性アンカーの挿入によって又は膜脂質の活性基に直接結合させることによって、それが膜に化学的又は物理的に連結されている場合、リポソーム膜に「結合」している。これらのオプソニン化阻害親水性ポリマーは、マクロファージ−単球系(「MMS」)及び網内系(「RES」)によりリポソームの取り込みを顕著に低下させる表面保護層を形成する。従って、オプソニン化阻害部分で修飾されたリポソームは、非修飾リポソームよりもかなり長く循環中に残存する。このため、このようなリポソームは、「ステルス」リポソームと呼ばれることがある。好ましくは、オプソニン化阻害部分は、PEG、PPG又はその誘導体である。PEG又はPEG誘導体で修飾されたリポソームは、「PEG付加リポソーム」と呼ばれることがある。
多くの周知の技術の何れか1つにより、オプソニン化阻害部分をリポソーム膜に結合させることができる。例えば、ホスファチジル−エタノールアミン脂溶性アンカーにPEGのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルを結合させ、次いで膜に結合させることができる。siRNAはまた、遺伝子銃、エレクトロポレーションによって、又はその他の適切な非経口もしくは腸内投与経路によって、対象に投与することもできる。適切な腸内投与経路には、経口、直腸又は鼻内送達が含まれる。適切な非経口投与経路には、静脈内投与投与(例えば、静脈内ボーラス注入、静脈内点滴、動脈内ボーラス注入、動脈内点滴及び血管系へのカテーテル点滴);組織周囲及び組織内注入(例えば、腫瘍周囲及び腫瘍内注入、網膜内注入又は網膜下注入);皮下点滴(subcutaneous infusion)を含む皮下注入又はデポジション(deposition)(浸透圧ポンプによってなど)が含まれる。特定の実施形態において、脳への定位注入を通じて(例えば脳室内注入を通じて)siRNAが送達される。単回投与で又は複数回投与で本発明のsiRNAを投与することができる。本発明のsiRNAの投与が点滴による場合、点滴は、単回の持続投与であり得るか又は複数回の点滴により送達され得る。
当業者はまた、ある対象に本発明のsiRNA(即ち少なくとも1つのsiRNA)を投与するための適切な投与計画を容易に決定し得る。例えば、siRNAは、対象に一度、例えば単回注射又は脳へ直接、デポジション(deposition)として投与され得る。あるいは、siRNAは、対象に1日1回又は2回、約3日から約28日の期間にわたり、より好ましくは約7日から約10日の期間にわたり、投与することができる。投与計画が複数回投与を含む場合、対象に投与されるsiRNAの有効量は、投与計画全体にわたり投与されるsiRNAの総量を含み得ることを理解されたい。
本発明のsiRNAは、当技術分野で公知の技術に従い、好ましくは対象への投与前に医薬組成物として製剤化される。本発明の医薬組成物は、少なくとも無菌であり発熱物質不含であることを特徴とする。本明細書中で使用される場合、「医薬製剤」には、ヒト及び獣医学での用途のための製剤が含まれる。本発明の医薬組成物を調製するための方法は当技術分野の技術の範囲内であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第17版、Mack Publishing Company、Easton Pa.(1985)(その全体の開示を参照により本明細書中に組み込む。)に記載されるとおりである。
本医薬製剤は、生理学的に許容可能な担体媒体と混合される、本発明のsiRNA(例えば、0.1から90重量%)又は生理学的に許容可能なその塩を含む。好ましい生理学的に許容可能な担体媒体は、水、緩衝水、生理食塩水、0.4%食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸などである。本発明の医薬組成物はまた、従来の医薬賦形剤及び/又は添加物も含み得る。適切な医薬賦形剤には、安定化剤、抗酸化剤、浸透圧調整剤、緩衝剤及びpH調整剤が含まれる。適切な添加物には、生理学的に生体適合性の緩衝剤(例えば、トロメタミン塩酸塩)、キレート剤(chelant)(例えば、DTPA又はDTPA−ビスアミドなど)又はカルシウムキレート錯体(例えば、カルシウムDTPA、CaNaDTPA−ビスアミドなど)の添加又は場合によってはカルシウムもしくはナトリウム塩の添加(例えば、塩化カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム又は乳酸カルシウム)が含まれる。
本発明の医薬組成物は、液体形態での使用のために包装され得るか又は凍結乾燥され得る。固形組成物の場合、従来の非毒性固形担体を使用し得る;例えば、医薬グレードの、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどである。例えば、経口投与のための固形医薬組成物は、上記で列挙される担体及び賦形剤の何れか及び1以上の本発明のsiRNA 10−95%、好ましくは25%−75%を含み得る。エアロゾル(吸入)投与のための医薬組成物は、上述のようにリポソームに封入された1以上の本発明のsiRNA 0.01−20重量%、好ましくは1%−10重量%を含み得る。必要に応じて担体もまた含まれ得る(例えば、鼻内送達のためのレシチン)。
さらに別の具体的な実施形態において、本発明は、アルツハイマー病を予防及び/又は治療するための薬剤の製造のために、PTGFRN(配列番号2)、CD81(配列番号4)及びSLC3A2(配列番号6)からなるリストから選択されるテトラスパニンウェブファミリーメンバーに結合する抗体を使用する。
「抗体(antibody又はantibodies)」という用語は、配列番号2、4及び/又は6又はその何らかの機能的誘導体に特異的に向けられていることを特徴とする抗体に関し、この抗体は好ましくはモノクローナル抗体;その抗原結合断片、F(ab’)、F(ab)もしくは1本鎖Fv型のもの又はそれ由来の組み換え抗体の何れかのタイプである。配列番号2、4及び/又は6又はその何らかの機能的誘導体に対して調製される特異的ポリクローナル抗血清を含む本発明のこれらの抗体は、その他のタンパク質との交差反応性がない。
本発明のモノクローナル抗体は、例えば、配列番号2、4及び/又は6又はその何らかの機能的誘導体に対して免疫付与された動物の、特にマウス又はラットの脾臓細胞及び骨髄腫細胞株の細胞から古典的方法に従い形成され、配列番号2、4及び/又は6又はその何らかの機能的誘導体(これは、最初、動物の免疫付与のために使用された。)を認識するモノクローナル抗体を産生する能力により選択されるべき何らかのハイブリドーマにより産生され得る。本発明のこの実施形態に従うモノクローナル抗体は、H及びL鎖をコードするマウス及び/又はヒトゲノムDNA配列又はH及びL鎖をコードするcDNAクローンとは異なり、組み換えDNA技術により作製されたマウスモノクローナル抗体のヒト化型であり得る。
あるいは、本発明の実施形態に従うモノクローナル抗体はヒトモノクローナル抗体であり得る。このようなヒトモノクローナル抗体は、例えば、PCT/EP99/03605に記載のような重症複合型免疫不全症(SCID)マウスのヒト末梢血リンパ球(PBL)再生により、又は米国特許第5,545,806号に記載のようなヒト抗体を産生できるトランスジェニック非ヒト動物を用いることによって、調製される。また、Fab、F(ab)’及びscFv(「1本鎖可変断片」)などのこれらのモノクローナル抗体由来の断片は、それらが元の結合特性を維持しているならば、本発明の一部となる。このような断片は、一般に、例えば、パパイン、ペプシン又はその他のプロテアーゼによる抗体の酵素消化により生成される。
モノクローナル抗体又はその断片が様々な使用に対して修飾され得ることは、当業者にとって周知である。本発明に関与する抗体は、酵素的、蛍光又は放射性型の適切な標識で標識され得る。特定の実施形態において、配列番号2、4及び/又は6又はその機能的断片に対する抗体は、ラクダ由来である。ラクダ抗体はWO94/25591、WO94/04678及びWO97/49805で詳述されている。
「治療するための薬剤」という用語は、アルツハイマー病を予防及び/又は治療するための、上述のような分子及び医薬的に許容可能な担体又は賦形剤(この両用語は交換可能に使用され得る。)を含む組成物に関する。当業者にとって公知の適切な担体又は賦形剤は、食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、ハンクス溶液、固定油、オレイン酸エチル、食塩水中の5%デキストロース、等張性及び化学的安定性を促進する物質、緩衝剤及び保存料である。その他の適切な担体には、タンパク質、多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマー性アミノ酸及びアミノ酸コポリマーなど、組成物を投与される個体に有害な抗体の産生をそれ自身が誘導しない何らかの担体が含まれる。
「薬剤」は、当業者の知識の範囲内の何らかの適切な方法により投与され得る。投与の一経路は非経口経路である。非経口投与において、本発明の薬剤は、上記で定義されるような医薬的に許容可能な賦形剤と組み合わせて、溶液、縣濁液又はエマルジョンなどの単位投与注射形態で処方される。しかし、投与量及び投与形式は個々に依存する。一般に、本薬剤は、本発明の抗体が1μg/kgから10mg/kgの間、より好ましくは10μg/kgから5mg/kgの間、最も好ましくは0.1から2mg/kgの間の用量で与えられるように、投与される。好ましくは、これは、ボーラス投与として与えられる。連続点滴も使用され得る。その場合、本薬剤は、5から20μg/kg/分の間、より好ましくは7から15μg/kg/分の間の用量で点滴され得る。
アルツハイマー病を予防及び/又は治療するための薬剤の製造のための例えば配列番号2、4又は6に対する抗体を含む治療組成物の使用が、以下に限定されないが、非経口、皮下、腹腔内、肺内、脳室内及び鼻内投与を含む何らかの適切な手段により投与され得ることは、当業者にとって明らかである。非経口点滴には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内又は皮下投与が含まれる。さらに、本治療組成物は、パルス点滴により、特に抗体の用量を減少させながら、適切に投与される。
1.dTag PS及びPSH1のタンデムアフィニティー−タグ精製
発明者らは、PS1、PS2及びプレセニリンホモローグ1(PSH1)のN末端に、3倍のFLAG配列が続くカルモジュリン結合タンパク質(CBP)から構成される二重タグ(dTag)を付加した。SPP−様プロテアーゼ3(SPPL3)とも呼ばれるPSH1は、プレセニリンホモローグファミリーのメンバーであるが、PSに対して逆の膜トポロジーを有し、今回はこれを対照として使用する21、22。dTag PS1又はdTag PS2を安定的に遺伝子移入することにより、PS1−/−PS2−/−(dKO)MEFにおけるγ−セクレターゼ複合体成熟が回復したが、dTag PSH1によって回復しなかった(図1、パネルa及びb)。dTag PSとのこれらの複合体は、APP、Notch、シンデカン−3及びN−カドヘリンの切断により示されるように(結果は示さず。)、酵素活性があった23
CHAPSO又はCHAPSを用いてミクロソーム膜を可溶化し、抗FLAG抗体(M2)及びカルモジュリン(CaM)結合ビーズを用いてTAPを行った(図1、パネルcで要約)。ウエスタンブロット分析から、dTag−タンパク質の定量的回収が示された(図1、パネルd)。その他の(内因性)γ−セクレターゼ構成要素、NCT、Aph−1a及びPen−2を同時精製したが、これらのタンパク質の相当量がまた最初のフロースルー中にあると思われた。第二の結合段階において、全ての構成要素が安定して会合したままであるので、発明者らは、定常状態条件下でこれらのタンパク質のプールがPSと緩く結合しているか又は結合していないと推測する。γ−セクレターゼ複合体の活性は、最終試料において殆ど完全に回収された(図1、パネルe)。
発明者らは、溶出されたγ−セクレターゼが、固定化された過渡状態類似体阻害剤WPE−III−31Cにどの程度まで結合し得るかを試験した(これは、活性γ−セクレターゼ複合体に対して濃縮するはずである。)24。SDSを含有する緩衝液で結合タンパク質を溶出し、ゲル上で分離し、クーマシーブルー染色により視覚化するか(図1、パネルf)又は質量分析により同定した。発明者らは、ゲル染色及び質量分析を用いて、3段階(阻害剤ビーズによる)及び2段階精製により精製したタンパク質パターンを比較したが、有意差がないことが分かった。ある可能な解釈は、活性プロテアーゼのみがこの阻害剤カラムに結合するはずであるので、TAP精製γ−セクレターゼ複合体が主に活性形態にあるということである24。しかし、全長PS1の相当量はまた溶出液中にも存在し、このことから、この手順が活性複合体に対して完全に特異的ではないことが示唆される。
発明者らは、dTag PS2を用いて精製を行い、同様の結果を得た(図2)。発明者らがdTag PSH1を精製した際、全てのγ−セクレターゼ構成要素は、フロースルー分画中に留まっていた。最終的対照として、発明者らは、PS dKO膜を用いて「模擬」精製実験も行った。ここでまた、全てのγ−セクレターゼ構成要素がフロースルー分画に留まった。dTag PS1の精製により、最大数のバンドが得られ、一方、dTag PS2で検出されたバンドはより少なく、dTag PSH1及びPS dKO MEF精製ではバンドが殆ど見られなかった。
2.PS/γ−セクレターゼ相互作用タンパク質のプロテオーム分析
クーマシーブルー染色したバンド(及びPS dKO MEFにより生成したゲルからの対応領域)を切り出し、ゲル中でトリプシン消化し、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC−MS/MS)により分析した。全部で5個の独立したdTag PS1及び4個のdTag PS2精製を行い、分析した。PS及びNCTが容易に同定されたが、Aph−1a及びPen−2ペプチドの数は非常に限定されていた。これらのタンパク質は極度に疎水性であり、同定された全てのペプチドは親水性ループ領域由来であった。従って、配列決定されたペプチドの存在量は必ずしも精製物質中のタンパク質の存在量又はPSとの相互作用の強度と相関しない。Aph−1b及びAph−1cが同定されなかったが、これは、繊維芽細胞においてそれらの発現レベルが低いことを反映すると思われる。
発明者らが非特異的結合物とみなしたPS dKO MEFからの精製において同定されるタンパク質を排除した後、発明者らは、PS1及びPS2の少なくとも2つの独立精製において59種類のタンパク質を同定した。興味深いことに、この基準を用いて選択されたPS2相互作用タンパク質はまたPS1インタラクトームでも存在した。従って、PS2及びPS1複合体は、細胞において同様のタンパク質と相互作用する。さらなる分析に対して、発明者らは、dTag PSH1で精製されたタンパク質、リボソーム及びミトコンドリアタンパク質も考慮に入れなかった。発明者らは現実の生理学的相互作用を一部反映する可能性を排除できないが、リボソーム及びミトコンドリアタンパク質のいくつかがPS dKO及びPSH1対照精製において存在したという事実は、これらのタンパク質が容易にTAP精製に混入することを示唆するものである25
PS1相互作用タンパク質における文献は幾分広がっているが、興味深いことに、発明者らは、いくつかの既に公開された、即ち、Tmp21/p23、α−カテニン、β−カテニンγ−カテニン及びRab11との会合を確認することができた16、17、26、27。発明者らはまた、δ−カテニン、N−カドヘリン、ApoER2及びFKBP8も同定したが、1回の精製においてのみであった28、31。PSとのその他の相互作用が公開されているかについては確認されなかった。発明者らのアッセイの検出限界未満でこれらのタンパク質のいくつかが繊維芽細胞において発現された可能性がある。
3.PS1/γ−セクレターゼ相互作用タンパク質の機能
文献検索及び遺伝子オントロジーデータベース(http://www.geneontology.org/)に従い、PS相互作用タンパク質に様々な分子機能及び生物学的プロセスを割り当てた(表1)。小胞介在性膜輸送及び膜構成を含む機能的サブグループから、PS/γ−セクレターゼの正常機能に対する細胞内輸送の重要性が示される(図3、パネルa)。Sec22bは、cis−ゴルジ膜とのER由来COPII被覆小胞のドッキングプロセスに関与するv−SNAREである。p24ファミリータンパク質p24及びTmp21のメンバーが、COPIコートタンパク質に対する積み荷受容体として働くことが提案された。ERGIC−53は、ER−ゴルジ−中間体−区画(ERGIC)に主に局在するレクチンである。AAA−ATPase VCP/p97は、SNARE複合体を分解するために分子シャペロンとして働くが、ERから細胞質への異常な折り畳みタンパク質のエクスポートとそれに続くプロテアソーム分解にも関与するとされている。VAMP8は、エンドソームソーティングのレベルで作用するv−SNAREタンパク質である。Rab11は、対照エンドソーム再生ならびにTGNへの輸送に対して考えられるRas関連低分子量GTPaseファミリータンパク質の1つである。さらに、アネキシン−2及びErlinは、それぞれ原形質膜及びERにおいて、脂質ラフト様膜構成に関与するとされている32、33。PSは主にERに存在し、一方、完全に組み立てられた複合体はERを出て、分泌経路の後期区画及び原形質膜に到達する。
その活性の重要な一部分はエンドソーム区画で起こることも推測される34。γ−セクレターゼ複合体の細胞内分布は、これらの膜輸送/構成関連タンパク質の局在に基づき推測され得る(図3、パネルb)。これらの相互作用の機能的重要性は、RNAi法及び内因性タンパク質の共沈を用いてさらに確認された(下記参照)。
上述のタンパク質に加えて、一連の同定タンパク質は主にERに存在し、タンパク質合成、グリコシル化又はクオリティーコントロール(リボホリン、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ及び熱ショックタンパク質など)に関与する。これらのタイプのタンパク質はまた、PS2又はPSH1(SPPL3)の分析でも見出され、このことから、最初期膜分画(Eearliest membrane compartment)において共通の合成機構が示唆される。タンパク質複合体における天然の折り畳みのいくつかの変性を含む精製プロトコール中に、これらのシャペロンタンパク質のいくつかが結合する可能性もある。
さらに、文献検索に基づき、発明者らは、テトラスパニンウェブと呼ばれる特異的膜ミクロドメインを形成するタンパク質のサブセット及びこのドメインと会合し得るいくつかのタンパク質を同定した(表1、図4、パネルa)。
4.機能的相互作用
発明者らは、生理的に適切なタンパク質−タンパク質相互作用が本複合体の機能特性に影響を与えるはずであると推論した。従って、発明者らは、さらなる検証のために24種類のタンパク質を選択した。γ−セクレターゼ基質APPSwを安定して過剰発現するヒト胎児腎臓(HEK)293細胞に、48時間にわたり、個々の標的タンパク質に対するsiRNAを遺伝子移入した。細胞培養液を回収し、ELISAを用いてγ−セクレターゼで生成されたAβ40及びAβ42ペプチドを評価した(図4b、図5)。対照(非標的)siRNAの遺伝子移入と比較して、24種類の候補から8及び9が、それぞれAβ40及びAβ42種の統計学的に有意な変化を示した。膜輸送タンパク質の中でも、VCP/p97ノックダウンにより、Aβ40及びAβ42分泌両方が約50%、有意に増加した。一方、Sec22b、Rab11及びVAMP−8のノックダウンの結果、Aβ生成が比較的軽度に低下した。有意な影響があるその他の候補は、Slc2a1(GLUT−1)(〜50%増加)及びテトラスパニンウェブに関与するタンパク質であった(図5)。いくつかの候補のノックダウンは、APPそのもののレベルに影響を及ぼすと思われる(図5b、VCP/p97、Myadm又は4F2lc)。注意すべきこととして、この最初の特性評価試験は単に、同定されるタンパク質がAPPのγ−セクレターゼプロセシングに対する生理的関連性を有するということをさらに裏付けるだけであるが、それらの作用機構をさらに明らかにする必要がある。これらのデータの解釈に対して、発明者らはまた、特に代謝回転時間が長いタンパク質に関する問題であるRNAi下方制御を発明者らが最適化しなかったことも考慮に入れなければならない。従って、発明者らの、Aβ分泌に影響を与えるタンパク質の同定は保守的であり、将来の研究から、さらなる機能的相互作用が明らかにされ得る。
発明者らは、p24ファミリータンパク質のタンパク質ファミリーがγ−セクレターゼ制御に関与するとされているので、p24ファミリータンパク質Tmp21及びp24aのノックダウンを個別に調べた。Tmp21ノックダウンによりAβ40分泌が僅かに増加し、一方で、p24aのノックダウンにより逆の影響が示された(図6)。
5.γ−セクレターゼ及びテトラスパニンウェブ分子
テトラスパニンは、4つの膜貫通ドメイン及び保存的アミノ酸残基を特徴とする内在性膜タンパク質である。これらは、その他のテトラスパニン及び多くのパートナー(例えば膜貫通)タンパク質との相互作用のネットワークを形成するための構造ブロックとして機能し、これらは、「テトラスパニンウェブ」又は「テトラスパニンに富むミクロドメイン」と呼ばれる35、36。最初の複合体は、テトラスパニン及び、EWIタンパク質及びインテグリンα3β1及びα6βなどの直接的パートナータンパク質からなり、これは、より高次の二次レベル複合体を形成するために同種親和性の側方相互作用を介して組み立てられる。これらには、相互作用の第三のレベルにおけるさらなる相互作用タンパク質が含まれる。テトラスパニンウェブは、細胞移動性、融合及び様々なシグナル伝達プロセスにおいて重要な役割を果たす24、25。テトラスパニンサブドメインは、細胞膜、エンドソーム(など)において低分子量のラフト様ミクロドメインを形成し、スクロース勾配でそれらを浮上させる特異的な脂質を組み込む。テトラスパニンウェブのコアタンパク質は、PS1精製中に存在する(表1、図4a)。とりわけ、CD81、PGRL/EWI−2(Igsf8)、α3β1インテグリンが同様にPS2インタラクトームで同定されたが、SPPL3による精製では同定されず、γ−セクレターゼとのこれらの相互作用の特異性が示唆される。
発明者らは、発明者らのさらなる実験において、テトラスパニンパートナータンパク質FPRP/CD9P−1/EWI−F(Ptgfrn)、PGRLのホモローグであり、PS1精製で一度同定された別のEWIタンパク質も包含した。さらに、PS1及びPS2精製の両方において、CD98hc(SLC3A2)由来のペプチドを頻繁に配列決定した。CD98hcは、CD98軽鎖に会合して、及びインテグリンシグナル伝達において、アミノ酸輸送複合体の制御に関与するとされており、このことから、三次相互作用のレベルでテトラスパニンウェブとの相互作用の可能性があることが示される51。HEK293細胞における一次RNAiスクリーニングから、CD81、FPRP及びCD98hcのノックダウンによってAβ分泌が減少し(図4n)、一方、インテグリンRNAiによってAβレベルが変化しなかったことが示された。このことから、元のテトラスパニンウェブ構成要素がγ−セクレターゼ活性制御に関与し、一方でインテグリンが、同じミクロドメインへのそれらの組み込みによってγ−セクレターゼとのみ会合すると思われることが示唆される。発明者らは、HeLa細胞において機能的相互作用を確認した(図4c及び4d)。両アッセイにおいて、Aβ分泌におけるテトラスパニンタンパク質のノックダウンの影響は中程度であるが(〜20−40%減少)有意であり、つまり、テトラスパニンネットワークとのγ−セクレターゼの会合が機能的に関連性があることが示される。一方、EWIタンパク質及びCD98hcの過剰発現により、Aβレベルが上昇した(図7)。興味深いことに、EWIタンパク質及びCD98hcの発現レベルは、ノックダウン及び過剰発現実験の両方で互いに影響を及ぼした。これは、テトラスパニンウェブの維持に対する、それらの相互の相互依存関係を反映し得る。発明者らは、テトラスパニンウェブとのγ−セクレターゼの会合をさらに確認するために、HEK293細胞において免疫共沈降実験を行った。CD81及びFPRPを内因性PS1(データは示さず。)及びAph−1a(図8、パネルa)と共沈させた。興味深いことに、CD81と同様の特性を共有するテトラスパニンタンパク質CD9も共沈した。相互に、FPRPの免疫沈降から、内因性γ−セクレターゼ構成要素ならびに、テトラスパニンパートナーCD81、CD9及びまたCD98hcの会合が明らかになった(図8、パネルb)。HEK293細胞におけるFPRP又はPGRLの安定的な過剰発現により、γ−セクレターゼ複合体との相互作用が促進された(図8、パネルc及びd)。
発明者らは、独立に、CD81又はCD9欠損マウス由来の細胞を用いて、相互作用の機能的重要性を確認した。内因性γ−セクレターゼ基質APP、APLP−2、ADAM10、N−カドヘリン及びシンデカン−3のカルボキシ末端断片はそれらの細胞で蓄積し(図9)、一方で、個々のγ−セクレターゼ構成要素又は基質の発現レベルは不変であった。このことから、これらのテトラスパニンタンパク質非存在下でその基質とのγ−セクレターゼ相互作用が部分的に破壊されることが示される。
テトラスパニンタンパク質は、コレステロール及びガングリオシドと会合し、脂質ラフト様のテトラスパニンに富むミクロドメイン(TEM)を形成し、穏やかな界面活性剤を用いたショ糖密度勾配で浮上する42、43。γ−セクレターゼはまた、界面活性剤耐性膜分画でも浮上する44、45。従って、発明者らは、この特性を利用してTEMとのγ−セクレターゼ構成要素の会合を調べた。Triton X−100、DDM(n−ドデシル−β−マルトシド)、CHAPSO又はBrij99の何れかで可溶化したHEK293細胞溶解液を不連続スクロース勾配で分離した。図10で示されるように、膜を穏やかな界面活性剤(CHAPSO及びBrij99)で可溶化した場合、テトラスパニンウェブタンパク質CD81、FPRP及びCD98hcは、一部、低密度分画(分画2、3及び4)にγ−セクレターゼ構成要素と一緒に分布した(しかしERマーカーカルネキシンと一緒には分布せず。)。コレステロールに富む軽い膜に対する標準的マーカーであるカベオリンは、同様に最上部の分画中で共に分布し、このことから、コレステロール及びスフィンゴ脂質に富む「ラフト」又は「カベオラ」がこの手順で維持されたことが示された。しかし、テトラスパニンウェブタンパク質ならびにγ−セクレターゼ複合体は、Triton X−100及びDDMなどのより強い界面活性剤での可溶化の際、最下層の分画に留まり、一方、カベオリンは軽い膜分画中に留まった。従って、γ−セクレターゼ構成要素は、テトラスパニンウェブタンパク質を含有する分画とともに両条件下で共分布する。これらの結果からまた、浮上分画に分布する全部ではないとしても殆どのγ−セクレターゼがそれらと会合することが示唆される。
発明者らは、テトラスパニンドメインとのγ−セクレターゼの会合がその活性において直接的な機能的影響を有し得るか否かと考えた。従って、発明者らは内因性FPRP、CD81又はCD9と会合するγ−セクレターゼ活性を免疫沈降させ、その活性をインビトロアッセイにより細胞膜中に存在する総γ−セクレターゼ活性と比較した。APP細胞内ドメイン(AICD)のデノボ生成により示されるように、活性γ−セクレターゼは、テトラスパニンタンパク質と共沈した(図11a及び11c)。HEK293細胞におけるFPRPの発現上昇によって共沈活性が上昇し、これは図8cで示される結果と合致し、一方で、非関連抗体又は阻害剤対照の中で反応の特異性を示すものはなかった。興味深いことに、テトラスパニンウェブ会合γ−セクレターゼにより生成される尿素−SDS PAGEで分析した場合のAβ種のスペクトルは、抗PS又はAph−1a抗体の何れかで破壊されるγ−セクレターゼの全体的活性とは異なった。テトラスパニン会合γ−セクレターゼ活性は、より長いAβ種(>Aβ1−42)の生成を増加させ、Aβ1−38及びAβ1−42は減少させることを示す(図11b及び6cの表)。より長いAβ種を生成させるテトラスパニンウェブ会合γ−セクレターゼのこの特性は、インビトロ酵素反応から16時間後でも保存されており、このことから、テトラスパニンウェブとの会合が、むしろ好ましくはγ−セクレターゼの連続的切断反応を単純に遅延させる長いAβを生成させることが示される。これらのデータから、これらのミクロドメインの異なる膜又はタンパク質組成が実際に適切にγ−セクレターゼ複合体の活性に影響を及ぼすことが示唆される。
材料及び方法
抗体
ウサギポリクローナル抗Aph−1A(B80.3)、抗Pen−2(B126.2)、抗APP(B63.9)及びマウスモノクローナル抗ニカストリン(9C3)は他所に記載されている25。その他の抗体は購入した:PS1に対する抗体(MAB5232)はCHEMICONから;抗AβN末端(WO−2)はGenetics Companyから;抗FLAG M2及び抗β−アクチンはSigmaから;抗CD81、抗CD9、抗CD98hc及び抗カベオリン−1はSanta Cruzから;抗カルネキシンはTransduction lab.から、購入した。FPRP(1F11)及びPGRL(8A12)に対するモノクローナル抗体は、Eric Rubinstein博士(Inserm、France)の厚意により提供された。
安定細胞株の細胞培養及び作製
10%ウシ胎仔血清(Sigma)を添加したダルベッコの改変イーグル培地F−12(Invitrogen)中で不死化マウス胚繊維芽細胞(MEF)、HEK293及びHeLa細胞を培養した。5%COを含有する湿潤大気中で37℃にて培養物を維持した。PS1−/−PS2−/−マウス胚及びそれらの同腹子対照からMEF細胞を作製した25。複製欠損レトロウイルス系(Clontech)を使用して、dTagマウスPS1、PS2又はヒトPSH1の何れかを発現するPS dKO MEFを作製した25。5μg/mLピューロマイシン(Sigma)を用いて、安定的に遺伝子移入された細胞を選択した。
細胞溶解液の調製及びウエスタンブロット
1%Triton−X100及びコンプリートプロテアーゼ阻害剤(Roche Applied Science)を含有するTBS(50mM Tris−HCl pH7.4、150mM NaCl)中で総細胞抽出物を調製した。4℃にて15,000xgで15分間遠心することにより、不溶性分画を除去した。ブラッドフォード色素結合法(Bio−Rad)によりタンパク質濃度を測定した。4−12%、10%又は12%NuPAGE Bis−Trisゲル(Invitrogen)でタンパク質を分離し、ニトロセルロース膜に転写した。TBS中の5%スキムミルクで膜をブロッキング処理し、抗体を用い、次いでホースラディッシュペルオキシダーゼ結合抗体(Bio−Rad)とともに温置して調べた。Renaissance(ParkinElmer)でバンドを検出した。
γ−セクレターゼ複合体のタンデムアフィニティー精製
コンプリートプロテアーゼ阻害剤を添加したSTE緩衝液(5mM Tris−HCl pH7.4、250mMスクロース、1mM EGTA)中で、回収したMEF細胞を再懸濁した。ボールベアリング細胞クラッカーに10回通過させることによりこの細胞を溶解し、次いで4℃にて800xgで10分間遠心することによって核及び細胞残屑を除去した。4℃にて100,000xgで60分間、上清をさらに遠心した。コンプリートプロテアーゼ阻害剤を添加した可溶化緩衝液(HEPES緩衝液;1%3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホネート(CHAPSO、Calbiochem)又は0.5%3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホネート(CHAPS、Calbiochem))入りの、50mM HEPES pH7.2、150mM NaCl)中でミクロソーム膜ペレットを再懸濁し、4℃で3時間可溶化した。4℃にて100,000xgで60分間遠心した後、上清を採取し、タンパク質濃度を測定した。可溶化膜を前もって平衡化した抗FLAG M2アフィニティーゲル(Sigma)に添加した。可溶化緩衝液でこのゲルを洗浄し、FLAGペプチド(Sigma)20μg/mL入りの可溶化緩衝液で結合タンパク質を溶出した。溶出物に2mM CaC(最終)を添加し、カルモジュリン−セファロースビーズ(Amersham Biosciences)上に添加した。洗浄後、5mM EGTAで結合タンパク質を溶出した。dTag PS1に対するさらなる精製のために、カルモジュリンビーズからの溶出物をγ−セクレターゼ阻害剤ビーズ上に添加した(これは、ヒドロキシエチル−尿素過渡状態類似体阻害剤、WPE−III−31Cと結合したアガロースレジンaffi−gel 102(Bio−Rad)であった。)26。可溶化緩衝液でビーズを洗浄した後、0.5%SDSを含有する緩衝液で、結合タンパク質を溶出した。
MS分析
精製物質を濃縮し、4−12%NuPAGE Bis−Trisゲル上で分離した。製造者の説明書に従い、GelCode Blue染色試薬(Pierce)でこのゲルを染色した。タンパク質バンドを切り出し、トリプシンによりゲル中で消化し、次いで他所で記載のようにLC−MS/MS分析を行った49。SwissProt又はNCBI非冗長タンパク質データベースでタンパク質を同定した。
APPプロセシングの分析
遺伝子移入の24時間前に、Swedish突然変異(KM670/671NL)を有するAPPを安定的に発現するHEK293細胞を24ウェルプレートに播種した。LipofectAMINE2000(Invitrogen)を用いて、ON−TARGET plus SMARTpool又はDuplex(Ptgfrn、Igsf8、Itgb1、Itga3、Slc3a2、CD81、CD9及びATP1A1に対して)siRNA(Dharmacon)を細胞に遺伝子移入した。対照遺伝子移入に対しては、siCONTROL非標的プールsiRNAを使用した。遺伝子移入から32時間後、1%FBSを添加したDMEMへと培地を交換し、16時間後、培地を回収した。細胞を除去するために、4℃にて800xgで5分間培地を遠心した。Aβ40及びAβ42を検出するために、製造者の説明書に従い、特異的ELISAにおいて上清を使用した(The Genetics Company)。Hela細胞での分析のために、細胞を24ウェルプレートに播種し、細胞にsiRNAを遺伝子移入した。20時間後、50の感染多重度を用いて、ヒトAPP−Swedish−695(APP695Sw)アデノウイルスを細胞に感染させた。遺伝子移入から6時間後、DPBSで細胞を一度すすぎ、1%FBSを添加したDMEMへと培地を交換した。16時間後、培地を回収し、ELISAに供した。
溶解緩衝液(コンプリートプロテアーゼ阻害剤入りのHEPES緩衝液中の1%TritonX−100、1%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDS)中で総細胞抽出物を調製し、4℃にて15,000xgで15分間遠心することにより、不溶性分画を除去した。SDS−PAGEによってタンパク質の等量を分離し、ウエスタンブロットにより検出した。
インビトロγ−セクレターゼアッセイのために、C99−FLAGを発現するE.コリから精製した組み換え基質APP C99−FLAGと試料を混合した。37℃で温置した後、デノボ形成されたAβペプチドを12%NuPAGE Bis−Trisゲルで分離し、続いてウエスタンブロットを行った。
免疫共沈降
1%CHAPSOで可溶化したミクロソーム膜を図面で示される抗体とともに4℃で一晩温置した。タンパク質Gアガロースビーズを添加し、3時間温置した。可溶化緩衝液でビーズを3回洗浄し、NuPAGE試料緩衝液中で免疫沈降物を溶出した。
ショ糖密度勾配
HEK293細胞を氷冷PBSで2回洗浄し、コンプリートプロテアーゼ阻害剤を添加した界面活性剤含有緩衝液:MES緩衝液(25mM MES pH6.5、150mM NaCl)中の1%Triton X−100、0.5%n−ドデシル−β−マルトシド(DDM)、1%CHAPSO又は1%Brij99(Sigma)で可溶化した。18ゲージの針に5回通し、26ゲージの針に10回通すことによって細胞を溶解した。4℃にて15,000xgで15分間遠心することにより不溶性物質を除去した後、スクロースの45%最終濃度に溶解物を調整し(4.8mL)、遠心管に移した。35%スクロース(4.8mL)及び5%(2.4mL)スクロースを重層することにより、不連続スクロース勾配を調製した。4℃にてBeckman SW41ローター中で38,000rpmで16時間、試験管を遠心し、960μLの分画を勾配の最上部から回収した。
統計分析
平均値及び平均の標準誤差(SEM)を示すエラーバーとしてデータを示す。ダネットの事後多重ペアワイズ比較検定又は両側スチューデント検定を用いて、分散の片側分析(ANOVA)により処置群を比較した。有意差は、P<0.05;**P<0.01;及び***P<0.001で設定した。統計計算は、PRISMバージョン4統計ソフトウェア(GraphPad Software)を用いて行った。
考察
本願において、PS/γ−セクレターゼのインタラクトームがTAP法を用いて体系的に実証される。特許文献において、ヒト神経芽腫細胞でアフィニティータグ付加PSと同時精製される一連のタンパク質が開示されている(WO05023858)。これらには、この複合体の既知の構成要素が含まれ、また、カテニンファミリー及びカドヘリンファミリーのメンバーも含まれる。しかし、発明者らが今回同定したいくつかのタンパク質は新規であり、機能的分析又はテトラスパニンウェブとの会合はWO05/023858で開示されなかった。発明者らの実験における潜在的な問題は、穏やかな界面活性剤の使用である。これらは、γ−セクレターゼ複合体をインタクトで活性がある状態に保つために必要であるが、非特異的相互作用の数が増えると予想される。発明者らは、2種類の重要な陰性対照、即ち、非特異的にアフィニティーマトリクスに結合するタンパク質を同定するための非遺伝子移入細胞の模擬精製及び、PSとして、同様の疎水性タンパク質に結合するタンパク質を同定するための、dTag SPPL3を使用した。発明者らは、同定されたタンパク質のうち一部が、より大きなプロテオリピド構造の一部として複合体と間接的に相互作用すると推測する。しかし、発明者らがテトラスパニンウェブタンパク質を用いた実験で見たように、このような二次及び三次相互作用は、細胞生物学的な状況において重要である。発明者らのプロテオーム分析の信頼性は、1)4つのγ−セクレターゼ構成要素の存在、2)相互作用タンパク質の反復同定、3)PS1−及びPS2−相互作用タンパク質の重複パターン及びSPPL3−インタラクターとの違い及び4)いくつかの報告されているPS−相互作用タンパク質の同定により、さらに確認される。発明者らは、(単回精製において)一度同定されたタンパク質をさらに分析しなかったが、これらのうち一部は、発明者らが複数回精製したものと生物学的機能を共有した。FPRPを用いた実験から、1回のヒットで正真PS相互作用タンパク質が実際に同定され得ることが示される。発明者らは、NCT又はPen−2の何れかと結合することが想定されるRer1pを同定しなかった37、38。しかし、これは、完全複合体が組み立てられるとRer1pが解離するからであると予想される。
発明者らの研究によりγ−セクレターゼ活性の強力な制御因子は同定されなかったが、同定されたタンパク質のいくつかの発現の変化によりAβ生成が上方又は下方制御され得ることが明らかである(図4)。注目すべきこととして、ADの遺伝型を有する患者由来の細胞での多くの実験から、Aβ分泌の同様の軽度の変化が示されている。発明者らは、今回発明者らが同定するインタラクトームが、散発性ADでのAβペプチドの蓄積を導き得、同定されたタンパク質がゲノムワイド会合実験において浮かび上がり得るリスク遺伝子である可能性があるという、複数の衝撃的な知見をもたらすことを示唆する。
最後に、発明者らは、今回の研究において、γ−セクレターゼの予想外で新規の局面、即ちテトラスパニンウェブの形成に関与するタンパク質のサブセットとのその会合、に焦点を当てた。テトラスパニンは、細胞膜におけるダイナミックなコレステロール含有微小環境を確立し、細胞移動性、融合及びシグナル伝達などの様々な生物学的プロセスを制御する様々なレベルの相互作用を介して多分子複合体を組織する35、36。γ−セクレターゼ構成要素はテトラスパニンウェブ分子と相互作用し、同時に浮上する。テトラスパニンウェブの発現レベルの変化から、様々な基質のγ−セクレターゼ依存性切断に対する顕著な影響が示された。以前の研究から、γ−セクレターゼ活性が浮遊性の界面活性剤耐性膜(DRM)において存在することが示唆された44、45。テトラスパニンに富むミクロドメインは脂質ラフトと類似しているが異なり42、43、テトラスパニンは、原形質膜だけではなく、エンドサイトーシス小胞にも分布し、これは、活性γ−セクレターゼ複合体の全体的な空間的分布と一致する。さらに、増え続けるプロテオーム研究から、脂質ラフト及びTEMが異なることが示されている48。発明者らの研究から、DRM会合γ−セクレターゼの大部分が実際にテトラスパニンミクロドメインにあることが示唆される(図10)。
テトラスパニンは、質量分析から容易に漏れる小さな疎水性タンパク質である。これにより、おそらく、発明者らの研究において活性γ−セクレターゼと明確に相互作用するCD9(図8b及び11c)が発明者らのTAP分析においてなぜ直接同定されなかったかということが説明される。従って、発明者らは、その他のテトラスパニン分子がミクロドメインにおけるγ−セクレターゼの局在にも寄与すると推測する。
いくつかの証拠から、APPのアミロイド形成的プロセシングにおける界面活性剤耐性ミクロドメインに対する役割が示唆された44、45。今回、発明者らは、テトラスパニンウェブにおけるγ−セクレターゼが酵素的に活性であり、Aβ生成パターンの変化を示し、その結果、全体的にAβがより長くなることを示す。このような長いAβペプチドの生物学的及び病理学的意義は不明であるが、これらは、細胞と会合し続けると思われる。最近の研究から、これらの長いAβ種が、γ−セクレターゼのε−及びγ−切断によるより短いAβ種への連続的APP CTFプロセシングの中間体であることが示唆され52、従って、テトラスパニンウェブのミクロドメインがこれらのペプチドのさらなるプロセシングに影響を及ぼすと思われる。また、テトラスパニン欠損細胞における様々なγ−セクレターゼ基質の蓄積から、テトラスパニンウェブとのγ−セクレターゼ複合体会合が、その様々な基質での活性又はそれらとの相互作用の何れかに対する制御機構であることがさらに示唆される。その点で、最近の刊行物から、それが存在する膜の脂質組成に関してγ−セクレターゼ活性の強力な依存が明らかになった53。TEMの詳細な脂質組成がまだ報告されていないが、一方で、テトラスパニンはエキソソームに豊富に存在することが知られており54、エキソソームは、より多くのスフィンゴミエリン及びコレステロールを含有する55。結論として、発明者の実験によりγ−セクレターゼ複合体のインタラクトームが提供され、テトラスパニンウェブが細胞内部位及び活性γ−セクレターゼの制御因子の1つであることが明らかになる。
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Claims (3)

  1. アルツハイマー病を予防及び/又は治療するための薬剤の製造のための、PTGFRN(配列番号2)、CD81(配列番号4)及びSLC3A2(配列番号6)からなるリストから選択される、テトラスパニンウェブファミリーメンバーに結合する抗体の使用。
  2. アルツハイマー病を予防及び/又は治療するための薬剤の製造のための、PTGFRN(配列番号1)、CD81(配列番号3)及びSLC3A2(配列番号5)からなるリストから選択されるテトラスパニンウェブファミリーメンバーをコードするRNA分子とハイブリッド形成する低分子干渉RNA(siRNA)の使用。
  3. センス及びアンチセンスRNA鎖がRNA2本鎖を形成し、センスRNA鎖が、配列番号1又は3又は5の約19から約25の連続ヌクレオチドの標的配列と同一であるヌクレオチド配列を含む、センスRNA鎖及びアンチセンスRNA鎖を含む単離siRNAの有効量を含む医薬組成物。
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