JP2010524479A - タンパク質を安定化する方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、閉鎖されたときに容器が実質的に気体ヘッドスペースを欠くように、その容器に該溶液を充填する工程を含む、外因性ストレスに対してタンパク質水溶液を安定化するための方法に関する。タンパク質水溶液を安定化するための容器の使用もまた提供される。

Description

本発明は、外因性ストレスに対してタンパク質水溶液を安定化する方法およびタンパク質水溶液を安定化するための容器の使用に関する。
外因性ストレス、例えば振盪などの機械的ストレスに対するタンパク質水溶液の安定化は、依然として製薬工業における技術的困難を意味する。タンパク質水溶液が機械的ストレスを受けて凝集する傾向を有することは、公知の事実である。このような機械的ストレスは、例えば医薬品バイアルなどの容器中で、タンパク質水溶液を輸送する時にほぼ常に生じる。
当技術分野で採用される一般的な解決法は、例えばポリソルベートなどの安定化剤を用いた物理化学的安定化であり、その中でもTween 20(商標)としても公知であるポリソルベート20もしくはポリソルベート80(Tween 80(商標))、ポロキサマー188または他の界面活性剤が広く使用されている。
しかし、化学製品を使用しない安定化が大いに有利であろうと、容易に理解することができる。特に、ヒトの安全性に及ぼす化学安定化剤の影響が関係づけられるおそれがある。したがって、監督機関は普通、薬学的製剤に含まれる化学安定化剤の数および量を最小にすることを願っている。
健康上の関心事に比べると低い考慮は、タンパク質水溶液を安定化するために添加しなければならない化学安定化剤のコストである。
それ故に、化学安定化剤を使用せずに、機械的ストレスに対してタンパク質水溶液を安定化する方法の必要性があることが明白である。
閉鎖されたときに容器が気体ヘッドスペースを実質的に欠くように、その容器にタンパク質水溶液を充填する工程を含む方法を使用して、外因性ストレス、例えば機械的ストレスに対して該タンパク質水溶液を驚くほど安定化することができること、そしてこれに安定化剤を用いないことを本出願人らが見出したのは、この目標を心に留めてのことである。
この発見は、一般に確立された技術的先入観を考慮すると、なおさらに驚くべきであるが、その先入観を克服した。実際に、本発明に記載の方法は、機械的ストレスに対してタンパク質水溶液を安定化するために化学安定化剤を使用しなければならないという周知の技術的先入観を克服している。
本発明の方法により水溶液中で安定化することができるAbeta抗体のグリコシル化部位を示す図である。 様々な量のPS20(■0%;□0.0025%;▲0.005%;△0.01%)を有する10mg/ml抗体(Mab A)製剤を三つの充填容量(A)2.5ml、(B)5.3ml、(C)9.0mlで6mlバイアルに入れたものに、5℃で振盪ストレスを与えて、可視粒子計数、濁度および可溶性凝集産物により分析したときの経時変化を示す図である。 様々な量のPS20(■0%;□0.0025%;▲0.005%;△0.01%)を有する10mg/ml抗体(Mab A)製剤を三つの充填容量(A)2.5ml、(B)5.3ml、(C)9.0mlで6mlバイアルに入れたものに、25℃で振盪ストレスを与えて、可視粒子計数、濁度および可溶性凝集産物により分析したときの経時変化を示す図である。 様々な量のPS20(■0%;□0.0025%;▲0.005%;△0.01%)を有する10mg/ml抗体(Mab A)製剤を三つの充填容量(A)2.5ml、(B)5.3ml、(C)9.0mlで6mlバイアルに入れたものに、5℃で振盪ストレスを与えて、1mlあたりの、≧2μm、≧10μmおよび≧25μmでの視認できない粒子により分析したときの経時変化を示す図である。 PS20量(■0%;□0.0025%;▲0.005%;△0.01%)を有する10mg/ml抗体(Mab A)製剤を三つの充填容量(A)2.5ml、(B)5.3ml、(C)9.0mlで6mlバイアルに入れたものに、25℃で振盪ストレスを与えて、1mlあたりの、≧2μm、≧10μmおよび≧25μmの視認できない粒子により分析したときの経時変化を示す図である。 様々な量のPS20(0%;0.0025%;0.005%)を有する二つの10mg/ml抗体Mab A■およびMab B
の(A)無ストレス条件での凝集形成、ならびにその抗体を三つの充填容量(B)2.5ml、(C)5.3ml、(D)9.0mlで6mlバイアルに入れたものに25℃で72時間の振盪ストレスを与えたときの凝集形成を、可視粒子計数、濁度および可溶性凝集産物により分析したものを示す図である。
様々な量のPS20(0%;0.0025%;0.005%)を有する二つの10mg/ml抗体Mab A■およびMab B
の(A)無ストレス条件での凝集形成、ならびにその抗体を三つの充填容量(B)2.5ml、(C)5.3ml、(D)9.0mlで6mlバイアルに入れたものに25℃で72時間の振盪ストレスを与えたときの凝集形成を、1mlあたりの、≧2μm、≧10μmおよび≧25μmでの視認できない粒子により分析したものを示す図である。
タンパク質水溶液を充填された容器(ここでは薬学的に許容されうるバイアル)に外因性ストレス(ここでは機械的ストレス)を与えた後の写真である。左側には、従来技術の場合と同様に、閉鎖されたときにタンパク質溶液と気体ヘッドスペースを内部に有する容器を示す。右側には、本発明に記載の方法により、閉鎖されたときに気体ヘッドスペースを実質的に欠くタンパク質溶液を内部に有する容器を示す。 タンパク質水溶液を充填された容器(ここでは薬学的に許容されうるバイアル)に外因性ストレス(ここでは機械的ストレス)を与えた後の写真である。左側には、従来技術の場合と同様に、閉鎖されたときにタンパク質溶液と気体ヘッドスペースを内部に有する容器を示す。右側には、本発明に記載の方法により、閉鎖されたときに気体ヘッドスペースを実質的に欠くタンパク質溶液を内部に有する容器を示す。
「安定化された」または「安定化」という用語は、タンパク質水溶液が、本明細書後記の実施例における対応する試験を用いて測定したときに、重大な量の凝集および/または濁度および/または視認できない粒子および/または可視粒子を実質的に含まないことを意味する。
「外因性ストレス」という表現は、外因性作用により誘導される、タンパク質水溶液に及ぼすストレスを表す。外因性作用は、容器およびタンパク質水溶液を含む系の外部からの作用を表す。外因性ストレスの例は機械的ストレスである。機械的ストレスの例は振盪である。製薬工業における振盪は、偶発的に、例えば輸送の間に、または随意的に、例えば溶液の均質化のために、のいずれかで起こりうる。
「容器」という用語は、薬学的に許容されうる容器を表す。適切な容器は、閉鎖手段および開口部に連結される受容部を含む。好ましくは、容器は、閉鎖キャップを装着される、標準的な薬学的に許容されうるバイアル、プレフィルドシリンジ、カプセルまたはアンプルなどの、閉鎖手段および開口部に連結される受容器からなる。なおさらに好ましくは、容器は、閉鎖キャップを装着される、標準的な薬学的に許容されうるバイアルであろう。容器は、バイアルを密封してタンパク質水溶液を周囲の外界雰囲気から保護するキャップなどの密封手段を装着しうる。
「タンパク質水溶液」という表現は、タンパク質を含有する水溶液を表す。タンパク質の濃度は、0.01〜280mg/mLの範囲でありうる。
「閉鎖されたときに気体ヘッドスペースを実質的に欠く」という表現は、容器にタンパク質水溶液を充填している当業者が、容器の最大容量まで容器に充填することを意味し、該最大容量は、例えば目視的に決定されるか、または計算により予備決定される。これは、例えば容器の最大可能容量まで容器にタンパク質水溶液を充填することによって達成することができ、測定精度は、最大容量で該溶液により形成されるメニスカスにより実験室で目視的に、または容器の秤量により重量測定的に、または製薬工業において生産規模で通常見られるように、当技術分野で公知の標準的な装置を用いた容量測定的に、のいずれかで決定される。充填容量は、溢れさせずになお、容器を適切に閉鎖可能にすることが意図されている。
それ故に、「閉鎖されたときに気体ヘッドスペースを実質的に欠く」という表現に関連して使用される「実質的に」という用語は、目視的に決定する場合には充填を行う者の精度、または決定が重量測定的または容量測定的な場合には使用された装置の精度に応じた、最大容量の目視的、重量測定的もしくは容量測定的決定の精度および/または気体ヘッドスペースの欠如を表す。
「通常の薬学的に許容されうる賦形剤」という用語は、ヒトまたは動物に投与するための市販製品または他の研究開発製品にすでに含有される賦形剤を表す。少数の例を挙げると、この用語は、クエン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、リン酸塩、ヒスチジン、グリシン、アルギニン(arginie)緩衝剤などの緩衝剤、アルギニン、グリシン、リシン、トリプトファン、メチオニンなどのアミノ酸、スクロース、トレハロース、マンニトール、ソルビトールなどの糖または糖アルコール、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポロキサマー188、ドデシル硫酸ナトリウム、トリトンXなどの界面活性剤、およびポリビニルピロリドン、シクロデキストリン、ポリエチレングリコールなどの他の賦形剤の種類からの賦形剤を含む。
本明細書に使用される「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一アミノ酸組成の抗体分子の調製物を表す。したがって、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列由来の可変および定常領域を有する単一結合特異性を示す抗体を表す。一態様では、ヒトモノクローナル抗体は、ハイブリドーマにより産生され、ハイブリドーマには、ヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスから得られたB細胞を、不死化細胞と融合したものが挙げられる。
タンパク質医薬品群の一部としての抗体分子は、変性および凝集、脱アミド、酸化および加水分解などの物理および化学分解に非常に感受性である。タンパク質の安定性は、タンパク質自体の特徴、例えばアミノ酸配列により、そして温度、溶媒pH、賦形剤、界面、振盪または剪断速度などの外部影響により影響される。そこで、製造、保存および投与の間の分解反応からタンパク質を保護するために最適な製剤条件を定義することが重要である。
「抗IGF−1Rヒトモノクローナル抗体」または「huMAb IGF−IR」という用語は、内容、特にクレームが参照により本明細書に組み入れられるWO2005/005635に記載および請求されているような抗体を表す。
「Abeta」は、アミロイド−βペプチドと特異的に結合することができるAbeta抗体(またはその混合物)を表す。Abetaと特異的に結合する抗体は、当技術分野において公知である。 本発明に記載の製剤に使用することができるAbeta抗体の特定の例は、内容が参照により本明細書に組み入れられる、公開されたPCT特許出願WO03/070760に、そして特にそのクレームに記載されている。
「アミロイドβ」、「Aβ」、「Aβ4」または「β−A4」、そして特に本発明に関連して「Abeta」とも名付けられる「アミロイド−βペプチド」は、アルツハイマー病などのアミロイド形成疾患に関連する細胞外老人斑の主成分である; Selkoe (1994), Ann. Rev. Cell Biol. 10, 373-403, Koo (1999), PNAS Vol. 96, pp. 9989-9990、米国特許第4,666,829号またはGlenner (1984), BBRC 12, 1131を参照されたい。このアミロイドβは、「アルツハイマー前駆タンパク質/β−アミロイド前駆タンパク質」(APP)に由来する。APPは、なくてはならない膜糖タンパク質であり(Sisodia (1992), PNAS Vol. 89, pp. 6075参照)、細胞膜プロテアーゼであるα−セクレターゼによりAbeta配列内でタンパク質内分解的に切断される(Sisodia (1992)、上記引用文中参照)。さらに、さらなるセクレターゼ活性、特にβ−セクレターゼおよびγ−セクレターゼ活性は、39個のアミノ酸(Aβ39)、40個のアミノ酸(Aβ40)、42個のアミノ酸(Aβ42)または43個のアミノ酸(Aβ43)のいずれかを含むアミロイド−β(Aβ)の細胞外放出を導く;Sinha (1999), PNAS 96, 11094-1053;Price (1998), Science 282, 1078 to 1083;WO00/72880またはHardy (1997), TINS 20, 154を参照されたい。
Aβは、いくつかの天然形態を有し、ヒト形態は上述のAβ39、Aβ40、Aβ41、Aβ42およびAβ43と呼ばれる。最も顕著な形態であるAβ42は、以下のアミノ酸配列(N末端から開始)を有する:
Aβ41、Aβ40、Aβ39では、それぞれC末端アミノ酸A、IAおよびVIAが欠けている。Aβ43形態では、追加のトレオニン残基が上述の配列(配列番号3)のC末端に含まれる。
適切なAbeta抗体は、免疫グロブリン分子、例えばIgG分子である。IgGは、2本の重鎖および2本の軽鎖を含むことを特徴とし(図1に図解)、これらの分子は、二つの抗原結合部位を含む。該抗原結合部位は、重鎖の部分(VH)および軽鎖の部分(VL)からなる「可変領域」を含む。抗原結合部位は、VHおよびVLドメインの並列により形成される。抗体分子または免疫グロブリン分子に関する一般情報については、Abbas "Cellular and Molecular Immunology", W.B. Sounders Company (2003)のような一般的な教科書も参照されたい。
一態様では、本発明のタンパク質水溶液に存在するタンパク質は、該抗体の重鎖可変領域の少なくとも一つがN−グリコシル化を含むAbeta抗体(またはその抗体の混合物)である。重鎖可変領域(VH)でグリコシル化されたアスパラギン(Asn)は、相補性決定領域2(CDR2領域)にありうるが、該グリコシル化されたアスパラギン(Asn)は、配列番号1に示すような重鎖可変領域(VH)における52位にありうる。
「モノグリコシル化抗体」という用語は、個別の抗体分子の一つの(V)領域にN−グリコシル化を含む抗体分子に関する;図1も参照されたい。「二重グリコシル化抗体」という用語は、両方の重鎖可変領域でN−グリコシル化された抗体を定義する(図1)。両方の重鎖(V)ドメインでN−グリコシル化を欠如する抗体分子は、「非グリコシル化抗体」と名付けられる(図1)。モノグリコシル化抗体、二重グリコシル化抗体および非グリコシル化抗体は、同一のアミノ酸配列または異なるアミノ酸配列を含みうる。
モノグリコシル化抗体および二重グリコシル化抗体は、本明細書において「グリコシル化抗体アイソフォーム」と呼ばれる。少なくとも一つの抗原結合部位が重鎖可変領域(VH)にグリコシル化を含むことを特徴とする精製抗体分子は、二重グリコシル化抗体および非グリコシル化抗体より選択されるアイソフォームを有さないか、またはそのアイソフォームを非常に低度に伴うモノグリコシル化抗体、すなわち「精製モノグリコシル化抗体」である。本発明に関連する二重グリコシル化抗体は、モノグリコシル化抗体および非グリコシル化抗体より選択されるアイソフォームを有さないか、またはそのアイソフォームを非常に低度に伴い、すなわち「精製二重グリコシル化抗体」である。
本発明の方法によるタンパク質水溶液中のタンパク質は、モノグリコシル化もしくは二重グリコシル化もしくは非グリコシル化抗体、または特異的に規定されたその混合物でありうる。本明細書に提供される抗体混合物または抗体プールは、本明細書において定義された、50%のモノグリコシル化抗体および50%の二重グリコシル化抗体を含みうる。しかし、30/70〜70/30の比もまた考えられている。なお、当業者は、本発明の抗体混合物における他の比もまた考えられていることを認識している。例えば、10/90または90/10、20/80または80/20、および40/60または60/40もまた本発明の状況で採用してもよい。本明細書上記と同義の二重グリコシル化抗体およびモノグリコシル化抗体を含む、本発明の方法に含まれる抗体混合物に特に有用な比は、40/60〜45/55の比である。
「有さないか、または非常に低度に」という用語は、それぞれ他の(グリコシル化)アイソフォームの完全な不在、または10%以下、例えば5%以下、例えば4%以下、例えば3%以下、例えば2%以下、例えば1%以下、例えば0.5%以下、例えば0.3%以下、例えば0.2%以下の濃度の別の(グリコシル化)アイソフォームの存在を表す。
「抗体」という用語は、本明細書において「抗体分子」という用語と同義的に使用され、本発明の状況で、例えばIgM、IgD、IgE、IgA、またはIgG1、IgG2、IgG2b、IgG3もしくはIgG4のようなIgGの完全免疫グロブリン分子のような抗体分子およびFab−フラグメント、Fab’−フラグメント、F(ab)2−フラグメント、キメラF(ab)2もしくはキメラFab’フラグメント、キメラFab−フラグメントまたは単離されたVH−もしくはCDR−領域などの、そのような免疫グロブリン分子の部分を含む(該単離されたVH−またはCDR−領域は、例えば対応する「フレームワーク」に組み込みまたは操作することができる)。したがって、「抗体」という用語はまた、単鎖抗体または単鎖Fvフラグメント(scAB/scFv)または二重特異性抗体構築物などの免疫グロブリンの公知のアイソフォームおよび改変を含み、該アイソフォームおよび改変は、本明細書において同義の少なくとも一つのグリコシル化VH領域を含むことを特徴とする。そのようなアイソフォームまたは改変の特定の例は、VHが本明細書に記載されるグリコシル化を含む、VH−VLまたはVL−VHの形式のsc(単鎖)抗体でありうる。例えばVH−VL−VH−VL、VL−VH−VH−VL、VH−VL−VL−VHの形式の二重特異性scFvもまた考えられている。ダイアボディー(diabody)、および少なくとも一つの抗原結合部分/ペプチドに結合したビヒクルとして抗体Fcドメインを含む分子、例えばWO00/24782に記載されているようなペプチボディー(peptibody)もまた「抗体」という用語に含まれる。上記から、本発明の方法に使用されるタンパク質水溶液がまた、抗体/抗体分子の「混合物」などのAbeta抗体水溶液も含むことが明らかである。該抗体の特定の「混合物」は、上記、すなわちAbetaに対する「モノ」および「二重」グリコシル化抗体の混合物である。
「抗体フラグメント」はまた、本質的にエフェクター機能(ADCC/CDC)を提供することができないが、適切な抗体定常ドメインと組み合わされた後で、本発明に記載の方法でこの機能を提供することができるフラグメントも含む。
本発明の方法においてタンパク質水溶液中のタンパク質として使用することができるAbeta抗体は、とりわけ組換え生産されたAbeta抗体である。これらは、哺乳動物細胞培養系、例えばCHO細胞で生産することができる。このような哺乳動物細胞培養系は、可変領域にN−グリコシル化を含む、本明細書に例示された特定のAbeta抗体などの、グリコシル化されたAbeta抗体またはAbeta抗体/抗体分子の調製に特に有用である。例えば、本明細書下記のような特定のグリコシル化抗体アイソフォームを精製するために、連続するクロマトグラフィーおよび濾過段階により、抗体分子をさらに精製することができる。
本明細書に使用されるような「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一アミノ酸組成の抗体分子の調製物を表す。したがって、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列由来の可変および定常領域を有する、単一の結合特異性を示す抗体を表す。一態様では、ヒトモノクローナル抗体は、ハイブリドーマにより産生され、ハイブリドーマには、ヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニック非ヒト動物、例えばトランスジェニックマウスから得られるB細胞を不死化細胞に融合したものが挙げられる。
Abeta抗体は、配列番号1:

に定義された可変領域を含むか、または有しうる。
この配列を本明細書下記にも示すが、CDR、CH領域、重鎖領域および二つのN−グリコシル化部位(Asn52およびAsn306)を表示する:
本明細書に記載される配列番号1を含む、例示されたAbeta抗体はまた、軽鎖を含みうるが、該軽鎖は、以下のアミノ酸配列を含むか、または有しうる:
本明細書に使用される「Abeta抗体A」という用語は、配列番号1と同義の重鎖および配列番号2と同義の軽鎖を含む、例示されたAbeta抗体に関する。
本明細書に使用される「モノグリコシル化抗体」という用語は、個別の抗体分子の、例えば免疫グロブリン、例えばIgG、例えばIgG1の、一つの(VH)−領域にN−グリコシル化を含む抗体分子に関する。例えば、該「モノグリコシル化形態」は、一つの重鎖可変領域に、例えば本明細書に記載される「Abeta抗体A」のアスパラギン「Asn52」位に、グリコシル化を含む。この「モノグリコシル化IgG1形態またはモノグリコシル化アイソフォーム」はまた、本明細書に例示するように、Fc部の十分に保存された部位に、例えば本明細書に例示された「Abeta抗体A」の非可変Fc部のアスパラギンAsn306にグリコシル化を含みうる。
本発明の意味における「二重グリコシル化抗体」という用語は、重鎖(VH)−領域の両方の可変領域に本明細書に定義されたグリコシル化を含む。また一方、この「二重グリコシル化形態」は、両方の重鎖の可変領域に、例えば本明細書に例示された「Abeta抗体A」のアスパラギンAsn52位にグリコシル化を含む。この「二重グリコシル化IgG1形態または二重グリコシル化アイソフォーム」はまた、本明細書に例示するように、非可変/定常Fc部の十分に保存されたグリコシル化部位に、特に、例示された「Abeta抗体A」の306位にグリコシル化を含みうる。添付の図1に、対応する抗体分子を示す。
可変領域、例えば重鎖の両方の可変領域(両方の(VH)−領域)にそのような翻訳後修飾を欠く抗体は、本発明の状況で、重鎖の可変領域にグリコシル化を含まない「非グリコシル化形態」とみなされる。それにもかかわらず、この「非グリコシル化形態」は、なお、抗体の定常領域(C−領域)に、例えば最も一般的にはFc部の十分に保存されたグリコシル化部位に、特に本明細書において同義の非可変/定常Fc部におけるアスパラギン(Asn)306に、グリコシル化を含みうる。配列番号1もまた参照されたい。
本発明の方法におけるタンパク質水溶液中のタンパク質は、本明細書において上記と同義の例示的な「Abeta抗体A]でありうる。したがって、該タンパク質は、上記と同義のモノグリコシル化Abeta抗体Aもしくは二重グリコシル化Abeta抗体Aもしくは非グリコシル化Abeta抗体Aまたはその混合物を含むAbeta抗体Aでありうる。
組換え発現されたAbeta抗体分子のグリコシル化アイソフォームの精製は、以下の工程を含みうる:
(1)プロテインAカラムの精製;
(2)イオン交換カラムの精製、例えば陽イオン交換クロマトグラフィー;および場合により、
(3)サイズ排除カラムの精製。
精製プロトコールは、さらなる濃縮工程、例えばダイアフィルトレーション、または分析工程、例えば分析カラムを含むものなどのさらなる工程を含みうる。特定のある工程を繰り返すこと(例えば2回のイオン交換クロマトグラフィー工程を実施してもよい)、またはある工程(例えばサイズ排除クロマトグラフィー)を省略してもよいこともまた考えられ、実行できる。
プロテインAは、大部分のIgG1アイソタイプのFc領域に結合する群特異的なリガンドである。これは、いくつかのStaphylococcus aureus株により合成され、その株から単離してクロマトグラフィー用ビーズに結合させることができる。数種類のゲル製品が市販されている。使用することができるプロテインAカラムの一例は、MabSelect(商標)カラムである。典型的には、カラムを25mM Tris/HCl、25mM NaCl、5mM EDTAで平衡化し、細胞培養上清をカラムにロードし、1M Tris/HCl(pH7.2)でカラムを洗浄し、そして100mM酢酸を使用してpH3.2で抗体を溶出する。
陽イオン交換クロマトグラフィーは、固定相における正に荷電した基と移動相における試料の間の相互作用を活用する。弱陽イオン交換体(例えばCM Toyopearl 650(登録商標))を使用する場合に、以下のクロマトグラフィー工程を行う:100mM酢酸(pH4)を用いた予備平衡化、プロテインA溶出液のロードおよび100mM酢酸(pH4)を用いた洗浄後に、250mM酢酸ナトリウム(pH7.8〜8.5)および500mM酢酸ナトリウム(pH7.8〜8.5)の工程を適用することにより抗体を溶出および分画する。第1工程で二重グリコシル化アイソフォーム画分およびモノグリコシル化アイソフォーム画分の混合物が通常は溶出し、第2工程を用いて、非グリコシル化アイソフォーム画分が通常は溶出する。
強陽イオン交換体(例えばSP Toyopearl 650)から、塩工程により抗体を溶出することができる:50mM酢酸(pH5.0)を用いたカラムの平衡化、pH4を有するプロテインA溶出液のロード後に、50mM酢酸および210mM塩化ナトリウムを用いた第1の溶出工程を行う。次に、50mM酢酸および350mM塩化ナトリウムの第2の溶出工程を適用する。第1の塩工程により、二重グリコシル化アイソフォーム画分およびモノグリコシル化アイソフォーム画分の混合物が通常は溶出し、第2の塩工程により、非グリコシル化アイソフォームが通常は溶出する。
加えて、抗体はまた、塩勾配により強陽イオン交換カラム(例えばSP-Sepharose(登録商標))から溶出しうる。予備平衡化、ロードおよびpH4.5でのカラムの洗浄後に、50mM MES(pH5.8)から50mM MES/1M塩化ナトリウム(pH5.8)まで塩勾配を適用する。ここで、二重グリコシル化アイソフォーム、モノグリコシル化アイソフォームおよび非グリコシル化アイソフォーム画分が通常は別々に溶出する。以下において、二重グリコシル化アイソフォーム画分およびモノグリコシル化アイソフォーム画分をプールする結果として、生成物プールおよび/または所望の抗体混合物を生じさせてもよい。
二重グリコシル化およびモノグリコシル化抗体分子の混合物、例えば免疫グロブリンのさらなる精製は、サイズ排除クロマトグラフィーによって行ってもよい。有用なカラムの一例は、Superdex 200(登録商標)カラムである。流出緩衝液の例には、ヒスチジン/塩化ナトリウム、例えば10mMヒスチジン/125mM塩化ナトリウム/pH6、およびリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。
流出モードでの陰イオン交換クロマトグラフィーに続く濃縮/ダイアフィルトレーションは、代替的な精製工程である。Q Sepharose(登録商標)は、陰イオン交換工程のための樹脂の一例である。例えば、SPクロマトグラフィーからの溶出液を、37.5mM Tris/HCl(pH7.9)で3倍に希釈して、それに25mM Tris/83mM酢酸ナトリウムで予備平衡化したQ-Sepharoseカラムを通過させてもよい。通過液を集め、pH5.5に調整し、例えばHydrosart 30kD(登録商標)膜を用いた限外濾過により濃縮する。以下において、例えば10容の20mMヒスチジン/HCl(pH5.5)に対して濃縮液をダイアフィルトレーションしてもよい。
上に定義したように、抗体アイソフォームはまた、抗体分子の定常/非可変部に、例えばIgGのFc部に、例えばIgG1のFc部に、さらなるグリコシル化を含みうる。Fc部における該グリコシル化は、例えば本明細書において定義された配列番号1によると重鎖のAsn306位に位置することを特徴とする、十分に保存されたグリコシル化に関する。
本発明の製剤に含まれる抗体のIgG−Fc領域は、鎖間ジスルフィド結合したヒンジ領域、CH2のアスパラギン306(Asn−306)にN−結合型オリゴ糖を担持するグリコシル化CH2ドメインおよび非共有結合的に対形成したCH3ドメインからなるホモ二量体でありうる。Asn−306でのグリコシル化のオリゴ糖は、複合二分岐型であり、外側のアームの糖の多様な付加を有するコア七糖構造を含みうる。
オリゴ糖は、Fcの構造と機能に影響するか、またはそれを決定する(Jefferis (1998) Immunol Rev. 163, 50-76)。特異的なIgG−Fc/エフェクターリガンド相互作用を数え入れているエフェクター機能が論じられている(Jefferis (2002) Immunol Lett. 82(1-2), 57-65 and Krapp (2003) J Mol Biol. 325(5), 979-89)。この保存されたFc部のAsn−306位は、Kabatシステム(Kabat (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda MD.)における「Asn−297」に対応する。
「安定化剤」という表現は、機械的ストレスに対してタンパク質水溶液を化学的に安定化することができる、薬学的に許容されうる安定化剤を表す。そのような安定化剤の例は、界面活性剤、例えばTween 20、Tween 80、Tween 40、Tween 60、ポロキサマー、SDSもしくはTriton Xもしくは任意の他の両親媒性分子、またはその混合物である。水溶液中の界面活性剤の作用は、当業者が熟知している当技術分野に広く記載されている。
「注射器具」という表現は、薬学的に許容されうる注射器具を表す。そのような器具の一例は、シリンジである。
本明細書上記に言及したように、本出願人らは、閉鎖されたときに容器が実質的に気体ヘッドスペースを欠くように、その容器に該タンパク質水溶液を充填する工程を含む、外因性ストレスに対してタンパク質水溶液を安定化する方法を見出した。
本発明に記載の方法の任意の態様では、気体ヘッドスペースの欠如は、例えば目視的に、重量測定的にまたは容量測定的に予備決定することができる。
本発明に記載の方法の任意の態様では、容器は、容器の総容量の約97%超まで充填することができる。
本発明に記載の方法の任意の態様では、気体ヘッドスペースは、容器の総容量の約3%未満、好ましくは2%、なおさらに好ましくは1%に相当しうる。
本発明に記載の方法の任意態様では、タンパク質は、抗体、特にモノクローナル抗体、例えばIgG1またはIgG2およびIgG4からなる群より選択されるもの、好ましくは以下のターゲットの少なくとも一つに対して有用なモノクローナル抗体からなる群より選択されるものでありうる:IGF−1R、CD20、CD19 CCR5、アミロイド、OX40、EGFレセプター、VEGF、HER、IL1R、IL13、IL6、IL17またはP−セレクチン(P-selecting)。
抗体はまた、Actemra、AvastinまたはHerceptinの名前で当技術分野において公知であり、公開されているものからなる群より選択することができる。
本発明に記載の方法はまた、タンパク質水溶液が外因性ストレス、特に機械的ストレスに対する安定化剤を欠くという事実を特徴としうる。
本発明に記載の方法の任意の態様では、機械的ストレスは振盪でありうる。機械的ストレスは、一般に約0〜約40℃の温度で生じる。
本発明に記載の方法で安定化されたタンパク質水溶液は、水、タンパク質および他の通常の薬学的に許容されうる賦形剤を含む。
タンパク質水溶液が、いったん安定化されたならば、振盪されたときに実質的に有意な濁度および/または凝集および/または可視粒子を欠くという事実を、本発明に記載の方法は特徴としうる。
本発明に記載の方法のある態様では、容器は注射器具ではなく、例えばシリンジではない。
容器は、閉鎖手段および開口部に連結される受容部を含みうる。ある態様では、容器は、閉鎖手段および開口部に連結される受容器、好ましくは密封手段および開口部に連結される受容器からなる。
本発明はまた、機械的ストレスに対してタンパク質水溶液を安定化するための、閉鎖手段および開口部に連結される受容部を含む容器の使用に関する。該使用は、本明細書の上記のように、本発明の方法により行うことができる。
以下の実施例に、本発明を例示するつもりであるが、そこに開示された唯一の態様に本発明を限定するつもりはない。
実施例
以下の実施例において、二つのモノクローナル抗体(IgG1)の凝集挙動を、振盪ストレス下で、二つの異なる温度、様々な充填容量および異なる量のポリソルベートで検討した。大きさおよび数の点から見た凝集物形成の検出およびモニタリングは、以下の様々な分析技法を用いて実施した:目視検査、濁度、光遮蔽、サイズ排除クロマトグラフィーおよび動的光散乱。
容器の容量および表面積を決定するために寸法6mlφ20mmのガラスバイアルを使用し、それを今度は、容量に対する表面積の比および容量に対するヘッドスペースの比により各充填容量についての気液界面の程度を計算するために使用した。実施例に示す全ての実験は、このようなバイアルで実施した。
本明細書後記の表1および表2から、充填容量が少ないほどヘッドスペースの容量は大きく、ヘッドスペースの容量は、振盪実験の間に気体容量が液体試料と相互作用するために重要な局面である。最大容量まで充填された試料は、ヘッドスペースを欠き、振盪の間のバイアル内の液体の物理的移動が限定される。充填容量に対する表面積の比は、充填容量の減少と共に増加し、このことは、撹拌時にガラス表面の、より大きい接触を可能にする(表2)。
PS20を0%、0.0025%、0.005%および0.01%(w/v)有するタンパク質製剤の経時変化を5℃および25℃で168時間にわたる選択された時点で観察することにより、ゴム栓およびアルミシールで閉鎖された6ml公称容量バイアル中で様々な充填容量(2.5ml、5.3mlおよび9ml)での振盪実験を行った。タンパク質が曝露される気液または液ガラス界面が、試料バイアルに存在する気液の容量に基づくことから、浸透の間のタンパク質の安定性にヘッドスペースが及ぼす影響を評価するために、これを実施した。振盪の間にPS20がこれらの界面から、すなわち変性および凝集に対して、タンパク質を保護した程度もまた評定した。振盪ストレスの結果としての濁度、可視粒子計数、視認できない粒子および可溶性凝集産物の結果を図2〜9にまとめる。
上記結果(図2〜9)から、5℃および25℃の両方の温度で振盪することによりストレスを与えた場合に、バイアル中のヘッドスペースの存在は、抗体製剤の安定性に大きな影響を与えた。
「最大」充填容量での全ての製剤(図2〜5、C欄および図6、7、D欄)および対照としてのプラセボ(データは示さず)は安定を維持し、ストレスを与えられた試料は、ストレスを与えられていない試料に匹敵する結果を示した。
最大容量まで充填された試料は、重大なヘッドスペース(3%未満のヘッドスペース容量)を欠くことから、バイアル内の液体の移動が抑制され、タンパク質への損傷は見られない。
市販の標準的な医薬品に採用される「標準的」なヘッドスペースを有する液体試料は、振盪の間にバイアル内で渦を巻き、はねを上げる能力を有し、これは、タンパク質の不安定性を導く気液相互作用を招く。
各製剤が1.1158±0.002mPa.sの動粘度を有したことから、全ての試料の液体は同様に動いた。ヘッドスペースを有する振盪と有さない振盪の間のタンパク質の安定性の差は明らかであったが、2.5mlまたは5.3mlの容量でヘッドスペースを有して振盪された試料の間で有意な変動はみられなかった。
両方の温度で可視粒子計数、濁度および視認できない粒子計数に関して分析した場合に、わずか0.0025% PS20の存在は、未填および名目量填でのタンパク質(図2〜5、AおよびB欄;図6、7、BおよびC欄)に、PSを有さずに最大まで充填された試料(図2〜5、C欄;図6、7、D欄)と同様の保護を与えた。
しかし、SECにより分析すると、0.0025% PS20は、5℃でMab Aについての可溶性凝集物形成を防止するために十分であった(図2、下列)が、25℃の振盪条件では、凝集産物の阻害のために有意に多量(0.01% PS20)が必要であった(図3、下列)。
故に、特にヘッドスペースを有する試料(2.5mlおよび5.3ml)について、可溶性凝集物形成に振盪ストレスが及ぼす負の作用は、5℃よりも25℃での方がずっと明白である。
しかし、0% PS20で2.5mlの充填容量を有する試料の濁度は、実験全体にわたり25℃よりも5℃でずっと高いFTU値を生じた。この濁度の結果は、Mab Aの同じ試料についての視認できない粒子計数および可溶性凝集物分析により得られたデータと対応しない。
濁度は、光を散乱および吸収して液体の光学的性質を与える、様々なサイズの視認できない個別の粒子により引き起こされる溶液の混濁または濁りとして説明される。
名目量填容量5.3mlを有するMab AおよびBの試料(図3B、6Cおよび7C)は、P20含量の増加と共に、予想通り可溶性凝集物および視認できない粒子の減少傾向を示した。P20濃度への可溶性凝集物形成の強い依存性はまた、充填容量2.5mlのMab A(図3、下列)にも見られたが、興味深いことに、充填容量5.3mlを有する試料とは対照的に、0% PS20よりも0.0025% PS20製剤の方が多量の凝集物を生じた。
全体的に見て、標準的なヘッドスペースを有する試料がストレスを受けたならば、PSが安定化剤として必要になるであろうが、製剤の開発中に「最大」まで充填された(すなわち最小のヘッドスペースを有する)振盪試料は粒子または凝集物の形成を阻害するためのPSを必要としないことを、データは示した(図2〜5、C欄、図6、7、D欄)。ガラスバイアルに入れて市販されているタンパク質液体製剤は、全てヘッドスペースを含む(プレフィルドシリンジを除く)。タンパク質溶液を内部に含むバイアルに必要な、義務的なヘッドスペース容量に、現在のところガイドラインも規格もない。市販品にとって、ヘッドスペースなしに、または最小のヘッドスペース(閉鎖充填容量の97%として定義される)をとって充填することは、生物製剤製品の安定性に大きな利点であろうし、タンパク質溶液に必要な安定化剤を最小限にさせるであろう。PS20の不在は、多数の視認できない粒子を生じるが、同じ製剤にヘッドスペースが存在しない場合に、これは完全に阻害される。
さらなる点は、凝集物を分析するときの直交法の重要性である。この場合のように、濁度分析のみに製剤の安定性を基づかせると、0.0025% P20は25℃で振盪時のタンパク質の保護に十分であったが、対照的に、SECのデータを考慮すると0.005%超のPS20が必要であるという指摘が与えられよう。
このデータは、振盪によりストレスを与えられた場合に、バイアルにおけるヘッドスペースの存在が、タンパク質製剤の安定性に大きな影響を及ぼすことを示した。
最大容量まで充填された試料は、重大なヘッドスペースを欠くことから、振盪時にバイアル内の液体の運動が抑制され、タンパク質への損傷は見られなかった。
ヘッドスペースの除去は、0.70cm3/cm3および2.61cm3/cm3の容量比までヘッドスペースを取って振盪されたときの、0.0025% PS20を有する製剤と同様の保護性質(これら二つの容量の間に有意差は見られなかった)を、PS20不在下の製剤に対して有した。

Claims (28)

  1. 閉鎖された場合に容器が実質的に気体ヘッドスペースを欠くように、該容器にタンパク質水溶液を充填する工程を含む、外因性ストレスに対して該タンパク質水溶液を安定化するための方法。
  2. 気体ヘッドスペースの欠如が、目視的または重量測定的または容量測定的のいずれかで予備決定される、請求項1記載の方法。
  3. 容器が、該容器の総容量の約97%よりも多く充填されている、請求項1または2のいずれか一項記載の方法。
  4. 気体ヘッドスペースが、容器の総容量の約3%未満に相当する、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
  5. 気体ヘッドスペースが、容器の総容量の約2%未満に相当する、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
  6. 気体ヘッドスペースが、容器の総容量の約1%未満に相当する、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
  7. タンパク質が、抗体である、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
  8. タンパク質が、モノクローナル抗体である、請求項1〜7のいずれか一項記載の方法。
  9. モノクローナル抗体が、IgG1またはIgG2またはIgG4である、請求項8記載の方法。
  10. モノクローナル抗体が、以下のターゲット:GF−1R、CD20、CD19 CCR5、アミロイド、OX40、EGFレセプター、VEGF、HER、IL1R、IL13、IL6、IL17またはP−セレクチンの少なくとも一つに対する、請求項9記載の方法。
  11. モノクローナル抗体が、Actemra、AvastinまたはHerceptinからなる群より選択される、請求項10記載の方法。
  12. タンパク質水溶液が、外因性ストレスに対する安定化剤を欠く、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
  13. 外因性ストレスが、機械的ストレスである、請求項12記載の方法。
  14. 機械的ストレスが、振盪である、請求項13記載の方法。
  15. 外因性ストレスが、0〜40℃の温度で生じる、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
  16. タンパク質水溶液が、水およびタンパク質を含む、請求項1〜15のいずれか一項記載の方法。
  17. タンパク質水溶液が、薬学的に許容されうる賦形剤をさらに含む、請求項1〜15のいずれか一項記載の方法。
  18. タンパク質水溶液が、振盪されたときに有意な濁度および/または凝集および/または可視粒子を実質的に欠く、請求項1〜17のいずれか一項記載の方法。
  19. 容器が、注射器具ではない、請求項1〜18のいずれか一項記載の方法。
  20. 容器が、シリンジではない、請求項1〜19のいずれか一項記載の方法。
  21. 容器が、閉鎖手段および開口部に連結される受容部を含む、請求項1〜20のいずれか一項記載の方法。
  22. 容器が、閉鎖手段および開口部に連結される受容器からなる、請求項1〜21のいずれか一項記載の方法。
  23. 容器が、密封手段および開口部に連結される受容器からなる、請求項1〜22のいずれか一項記載の方法。
  24. 外因性ストレスに対してタンパク質水溶液を安定化するための、閉鎖手段および開口部に連結される受容部を含む容器の使用。
  25. 外因性ストレスが、機械的ストレスである、請求項24記載の使用。
  26. 機械的ストレスが、振盪である、請求項25記載の使用。
  27. 請求項1〜25のいずれか一項記載の方法における、請求項24〜26のいずれか一項記載の使用。
  28. 本明細書において上記と同義の発明。
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