JP2010511692A - イオントフォレシスを通じての核酸の強化された網膜送達 - Google Patents

イオントフォレシスを通じての核酸の強化された網膜送達 Download PDF

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Abstract

本発明は、哺乳動物の眼のミュラー細胞の一過性伸長を誘発するためにイオントフォレシスを利用する、核酸治療薬の強化された網膜送達のためのデバイスおよび方法を提供する。強化された網膜内の沈着は、核酸組成物の局所適用、結膜下注射または硝子体内注射のいずれかを、イオントフォレシス適用の前に行うこと、後に行うこと、またはそれと同時に投与することによって達成することができる。本発明はそれ故に、疾患の症状を緩和しうる核酸のインビボ投与を含み、その核酸の送達がイオントフォレシスを用いることによって強化される、眼疾患の治療のための特に有利な方法を提供する。この方法は特に、遺伝子発現の変化および/または特定の増殖因子の過剰発現に起因する網膜の疾患に適用することができる。疾患には、血管新生性疾患(加齢性黄斑浮腫、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、その他)および網膜色素変性症などの遺伝性網膜症を含む、ヒトの眼の網膜症が非限定的に含まれる。

Description

発明の分野
本発明は、眼の組織への核酸の強化された送達のためのデバイスおよび方法に関する。より具体的には、本発明の方法は、核酸治療用物質または診断用物質の強化された網膜送達を目的として、哺乳動物の眼のミュラー細胞の一過性伸長を誘発するためにイオントフォレシスを利用する。
発明の背景
核酸などの薬物を、組織への局所的な適用もしくはその中への注射、エレクトロポレーション、イオントフォレシス、リポソームもしくはポリマー球体などのコロイド系もしくは他の化学的担体の中への核酸の封入といった手法の使用、またはウイルス性もしくは非ウイルス性ベクターの使用によって、標的の細胞または組織の中に導入するための方法は公知である。
従来の送達系の使用は幅広く検討されているものの、真核細胞への核酸のインビボ導入に往々にして付随する多くの問題が依然として存在する。典型的には、異種核酸によるトランスフェクションの標的とされた細胞のうち、関心対象の遺伝子、とりわけ関心対象のタンパク質を満足なレベルで実際に発現するのはわずかなパーセンテージに過ぎない。加えて、ある種の治療用組成物、例えば合成オリゴヌクレオチドを含むものなどは非常に高価で、有毒で、分解性であり、その結果として、限局的な適用および標的細胞内への効率的な内部移行を必要とする。
標的細胞への核酸のインビボ移入を強化することに向けられた方法の中でも、エレクトロポレーションを特に挙げることができる。エレクトロポレーションは、核酸などの化学物質に対する標的組織の細胞の細胞膜および/またはある部分の透過性を増大させる手段であり、ここで透過性の増大は、細胞または組織の少なくとも一部分を横断する高いパルス電圧の適用によって引き起こされる。透過性の増大は、組織または細胞が適した化学物質の存在下にある場合に、組織を通っての、または細胞膜を横断しての化学物質の細胞内への輸送または移動を可能にする。
エレクトロポレーションは典型的には、組織表面に適用された一対の電極の間に高電圧パルスを適用することによって行われる。電圧は電極間の距離に比例して適用されなければならない。電極間の間隔が大きすぎる場合には、生み出された電場が組織中の深部まで入り込み、そこで好ましくない神経および筋肉の反応を引き起こす。
イオントフォレシスは1747年にVerratiによって提唱された手法であり、弱い電圧を伴う電場を用いた組織を通しての体内への投与、特に医薬品の投与に本質がある。1つの電極を処置しようとする部位に配置し、電気回路を閉じることを意図した第2の電極を身体上のもう1つの部位に設置する。電場は活性生成物の移動を促し、および/または好ましくはイオン化している生成物に対する細胞の透過性を高める。これは、皮膚疾患またはリウマチ性疾患を治療するためによく用いられている経皮的な手法である。また、エクスビボでのオリゴヌクレオチドのイオントフォレシス送達を通じて遺伝子の誘導を達成しうることも、ウサギの眼のモデルで示されている。
広い間隔で置かれた電極間に低い電圧を適用するイオントフォレシスは、既存の経路および/または作り出される経路を通じて、荷電分子を輸送しうることが公知である。しかし、輸送される分子の体積が極めて小さく、特定組織におけるインビボ適用のためには不十分であることも公知である。
前述のことから、特に眼の治療法または診断を目的とする、網膜細胞への核酸のインビボ送達を強化するための簡単で効率的な方法を提供することは、当技術分野における進歩であると考えられることは理解されるであろう。
既存の需要を克服するために、1999年12月28日に発行された特許文書である米国特許第6,009,345号における核酸送達のためのエレクトロポレーションおよびイオントフォレシスの両者の同時使用を含む、材料および方法が開示される。本発明は、眼の組織への核酸の強化された送達のためのデバイスおよび方法を提供する。
1つの態様において、本発明の方法は、核酸治療用物質または診断用物質の強化された網膜送達を目的として、哺乳動物の眼のミュラー細胞の一過性伸長を誘発するためにイオントフォレシスを利用する。本方法は、イオントフォレシスの段階によって哺乳動物網膜のミュラー細胞を一過性に伸長させる段階;および核酸を含む組成物を哺乳動物の眼に投与する段階を含み、ここでイオントフォレシスの段階は哺乳動物網膜のミュラー細胞を一過性に伸長させ、かつ哺乳動物の眼の網膜細胞内への核酸のインビボ送達を強化する。イオントフォレシスの段階は、核酸組成物を投与する段階の前、最中または後に行うことができる。
核酸は治療用物質または診断用物質のいずれであってもよい。核酸は、デオキシリボ核酸(「DNA」)、リボ核酸(「RNA」)、およびDNA塩基とRNA塩基の両方を含むキメラ核酸であってよく、これにはオリゴヌクレオチドDNA、アンチセンスDNA、プラスミドDNA、プラスミドDNAの構成要素、ベクター、発現カセット、キメラDNA配列、染色体DNA、安定化されたDNA、アプタマー、安定化されたアプタマー、オリゴヌクレオチドRNA、転移RNA(tRNA)、低分子干渉性RNA(siRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、リボソームRNA(rRNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、マイクロRNA(miRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、アンチセンスRNA、リボザイム、安定化されたRNA配列、キメラRNA配列、キメラDNA/RNAオリゴヌクレオチド、アプタマー性オリゴヌクレオチド、またはこれらの核酸のいずれかの誘導体が非限定的に含まれる。1つの態様において、核酸はオリゴヌクレオチドDNAまたはオリゴヌクレオチドRNAであり、ホスホロチオエート結合を有してもよい。1つの代替的な態様において、核酸は一本鎖核酸、二本鎖核酸、三本鎖核酸または四本鎖核酸である。さらにもう1つの態様において、核酸は線状または環状の形態にある。さらにもう1つの態様において、核酸は一本鎖オリゴヌクレオチドDNA(ssODN)または一本鎖オリゴヌクレオチドRNA(ssORN)である。
核酸組成物は、眼への局所滴注(topical instillation)によって、眼瞼への局所滴注によって、または哺乳動物の眼内への注射によって投与することができる(本発明者らは、直接的な眼イオントフォレシスによって、を含めるべきか?)。局所滴注物は溶液、ペーストまたはヒドロゲルの形態で投与することができる。局所滴注物を発泡マトリックス(foam matrix)中に包埋すること、またはリザーバー中に保持させることもできる。哺乳動物の眼内への注射は、眼房内(intracameral)注射、角膜内注射、結膜下注射、テノン嚢下(subtenon)注射、網膜下注射、硝子体内注射、および前房内への注射でありうる。
イオントフォレシスの段階は、眼イオントフォレシスまたは経眼瞼イオントフォレシスでありうる。1つの態様において、経眼瞼イオントフォレシスは、約1〜5mAの電流を用いて約1〜7分間にわたって行われるアニオン性またはカチオン性イオントフォレシスである。1つの代替的な態様において、経眼瞼イオントフォレシスは、約1〜3mAの電流を用いて約3〜6分間にわたって行われるアニオン性またはカチオン性イオントフォレシスである。さらにもう1つの態様において、経眼瞼イオントフォレシスは、約2mAの電流を用いて最長5分間にわたって行われるカチオン性イオントフォレシスである。
ヘマルンで染色したラット網膜の組織学的切片の顕微鏡写真を提示している。図1A:対照網膜。図1B:ビオチン化キメロプラスト(biotynilated chimeroplast)の硝子体内への注射後の網膜。網膜内にもRPE内にも染色は観察されず、このことはキメロプラストはいずれも網膜内に浸透しなかったことを示している。図1C:キメロプラストの硝子体内への注射に続いて、食塩水のイオントフォレシスを行った後の網膜。網膜層、RPEおよび脈絡膜の内部に明瞭な褐色のDAB染色が認められ、このことはキメロプラストの浸透が電流の適用によって強化されたことを示している。 β-cGMPホスホジエステラーゼcDNAの制限断片長分析の顕微鏡写真を提示している。生後27日(生後10日に分析したレーン4〜7を除く)の抽出網膜に対して、rd β-PDE mRNA特異的プライマーを用いてRT-PCRを行った。コドン347におけるrdナンセンス点突然変異は、DdeI制限部位を生み出し、野生型配列からBsaAI部位を除去する。359bpのβ-PDE cDNAをBsaAIまたはDdeIで消化すると、120bpおよび239bpの2つの診断的断片が生じる。この方法は、突然変異配列rd/rd(DdeI感受性)と野生型のもの+/+(BsaAI感受性)とのmRNAレベルでの識別を可能にする。図2中のゲルは、電気泳動分離による制限断片長分析を表している:レーン1〜3:処置を行わなかった野生型cCDA配列(+/+)に関する;レーン4〜18:処置を行わなかった(レーン4〜6)、水注射処置(レーン7〜9)を行った、イオントフォレシス移入を伴わずにキメロプラスト注射を行った(レーン10〜12)、イオントフォレシス移入を伴ってキメロプラスト注射を行った(レーン13〜15)、イオントフォレシス移入を伴って対照キメロプラスト注射を行った(レーン16〜18)、突然変異配列(rd/rd)に関する。 杆体の生存を免疫染色により例証している顕微鏡写真を提示している。図3A:生後27日(P27)のキメラプラスト(chimeraplast)処置動物(「活性キメラ」)および対照(「スクランブル化キメラ」)のフラットマウント(flat-mounted)網膜上の杆体-光受容器の量を計数した。結果は平均±平均値の標準誤差(SEM)として表示されている。図3B:オプシン-免疫組織化学をホールマウント(whole-mounted)網膜に対して行った。キメラプラスト処置動物(「活性キメラ」、右の画像)および対照(「スクランブル化キメラ」、左の画像)のフラットマウント網膜の蛍光顕微鏡検査による走査写真。 事前の食塩水イオントフォレシスを伴う、または伴わない、標識ODNの注射から1時間後の網膜細胞へのODNの浸透を例証している顕微鏡写真を提示している。事前の食塩水イオントフォレシスを伴わない標識ODNの硝子体内注射後のPN7 rd1/rd1眼切片(パネルA)。事前の食塩水イオントフォレシスを伴わないHexの硝子体内注射後のPN7 rd1/rd1眼切片(パネルB)。イオントフォレシス用デバイスは、アルミニウム箔でできた眼鏡形の電極、および単回用途の使い捨て医療用親水性ポリウレタンスポンジ、およびマウスの頸部に接続された戻り電極(矢印)で構成される(パネルC)。事前の陰極食塩水イオントフォレシスを伴う標識ODNの硝子体内注射後のPN7 rd1/rd1眼切片(パネルD)。事前の陰極食塩水イオントフォレシスを伴うHexの硝子体内注射後のPN7 rd1/rd1眼切片(パネルE)。事前の陰極食塩水イオントフォレシスを伴うPBSの硝子体内注射後のPN7 rd1/rd1眼切片(パネルF)。眼(A)、(D)および(F)からの網膜構造物を示す、より高倍率の像が、それぞれ(a)、(d)および(f)に示されている。挿入図は、対応する画像の高倍率像を示している。ONL:外顆粒層、INL:内顆粒層、GCL:神経節細胞層。スケールバー:A、DおよびF(×2.5)、1mm;a、B、d、Eおよびf(×25)、100μm;挿入図、10μm。 ONLへのODN送達に対する多様なイオントフォレシス条件の分析を描写している。ONLにおける相対蛍光強度を、平均±SDとして表示したヒストグラムによって表した(縦のバー)。ONLにおける蛍光は、いずれの電流適用条件を用いた場合にも、イオントフォレシスを伴わない注射(P<0.05)または非処置(P<0.05)(*、**)と比較して強度の有意な増加を示した。ONL蛍光は、陰極食塩水イオントフォレシスを用いた場合、陽極食塩水イオントフォレシスと比較して強度の有意な増加を示した(P<0.05)(**)。ONL蛍光は、陰極食塩水イオントフォレシスをODN注射の直前に用いた場合に、ODN注射の直後と比較して有意の増加を示した(P<0.05)(**)。 ONLにおけるODNの浸透に対するイオントフォレシス強度の分析を示している。ONLにおける相対蛍光強度を、平均±SDとして表示したヒストグラムによって表した(縦のバー)。ONLにおける蛍光は、陰極食塩水イオントフォレシスを1.5mAで用いた場合に、0.5mAでの陰極食塩水イオントフォレシスと比較して強度の有意な増加を示した(P<0.05)(*)。 ONLへのODN送達に対するイオントフォレシス効果の持続時間の分析を描写している。PN7 rd1/rd1マウスにおいて、陰極食塩水イオントフォレシスを、標識ODNの硝子体内注射の直前、1時間、3時間または6時間前に行った。注射の1時間後に、ONLにおけるODNの浸透を定量した。ONLにおける相対蛍光強度を、平均±SDとして表示したヒストグラムによって表した(縦のバー)。 事前の食塩水イオントフォレシスを伴う、標識ODNの注射後のさまざまな時点での網膜細胞へのODNの浸透の分析を描写している。処置(硝子体内注射の直前に陰極食塩水イオントフォレシス)から1時間(パネルA)、4時間(パネルB)、6時間(パネルC)、8時間(パネルD)および24時間(パネルE)後の、PN7 rd1/rd1眼切片の赤色のHex標識ODN。上のパネルの青色のDAPI染色が、中央のパネル(F〜J)に対応して示されている。青色のDAPIとHex標識ODNによる二重染色が、対応する下のパネル(K〜O)に示されている。挿入図は、二重染色によるONLの高倍率像を示している。ONL:外顆粒層、INL:内顆粒層、GCL:神経節細胞層。スケールバー:A、B、C、DおよびE(×25)、100μm;挿入図、10μm。 食塩水イオントフォレシス後のさまざまな時点でのPN7 rd1/rd1マウスからの眼切片の顕微鏡写真を提示している。処置(硝子体内注射の直前に陰極食塩水イオントフォレシス)から1時間(パネルA)、6時間(パネルB)および24時間(パネルC)後の眼構造の完全性を示す、PN7 rd1/rd1マウス由来のヘマトキシリンおよびエオシンで染色した眼切片。眼(A)、(B)および(C)からの網膜構造を示すより高倍率の像は、それぞれ(a)、(b)および(c)に示されている。ONL:外顆粒層、INL:内顆粒層、GCL:神経節細胞層。スケールバー:A、BおよびC(×2.5)、1mm;a、bおよびc(×25)、100μm。 事前の食塩水イオントフォレシスを伴う、または伴わない、標識ODNの注射後のさまざまな時点での眼の準薄切片の顕微鏡写真を提示している。対照非処置PN7 rd1/rd1眼切片の準薄切片(パネルA)。事前の食塩水イオントフォレシスを伴わない(パネルB)、または事前の陰極食塩水イオントフォレシスを伴う(パネルC)、標識ODNの硝子体内注射から1時間後のPN7 rd1/rd1眼切片。眼(B)および(C)からの網膜構造を示すより高倍率の像は、それぞれ(b)および(c)に示されている。事前の食塩水イオントフォレシスを伴わない(D)、または事前の陰極食塩水イオントフォレシスを伴う(E)、標識ODNの硝子体内注射から24時間後のPN7 rd1/rd1眼切片。矢印は空胞を表す。RPE:網膜色素上皮細胞、ONL:外顆粒層、INL:内顆粒層。スケールバー:A、B、C、DおよびE(×25)、50μm;bおよびc、25μm。 事前の食塩水イオントフォレシスを伴う、または伴わない、標識ODNの注射後のさまざまな時点でTEMによって観察した超薄眼切片の顕微鏡写真を提示している。対照非処置PN7 rd1/rd1眼切片の超薄切片(パネルA)。事前の食塩水イオントフォレシスを伴わない(パネルB)、または事前の陰極食塩水イオントフォレシスを伴う(パネルC)、標識ODNの硝子体内注射から1時間後のPN7 rd1/rd1眼切片。事前の食塩水イオントフォレシスを伴わない(パネルD)、または事前の陰極食塩水イオントフォレシスを伴う(パネルE)、標識ODNの硝子体内注射から24時間後のPN7 rd1/rd1眼切片。矢印は空胞を表す。RPE:網膜色素上皮細胞、IS:内節、ONL:外顆粒層。スケールバー:A、B、CおよびD(×25)、5μm。 イオントフォレシス用デバイス、および処置1時間後のPN7 rd1/rd1マウスからの眼切片を描写している。イオントフォレシス用デバイス:(パネルA)アルミニウム箔でできた眼鏡形の電極、および単回用途の使い捨て医療用親水性ポリウレタンスポンジ、(パネルB)イオントフォレシス発生装置および戻り電極。経眼瞼イオントフォレシスから1時間後の眼切片:(パネルC)イオントフォレシス後の眼構造の完全性を示す、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した眼切片(挿入図:高倍率像)。CY3タグ付加ODNの硝子体内注射から1時間後の眼切片:(パネルD)事前のイオントフォレシスを伴わない、(パネルE)事前のイオントフォレシスを伴う(挿入図:二重染色によるONLの高倍率像、DAPIは核を青色に染色し、CY3は赤色である)。(パネルF)事前のイオントフォレシスを伴う、1μLのPBSを注射されたrd1/rd1マウスからの対照網膜。スケールバー:A、B、1cm;C、1mm;D、E、Fおよび挿入図C、100μm;挿入図E、5μm。 処置および対照PN28 rd1/rd1マウスの眼切片の顕微鏡写真、ならびにONL細胞の計数を提示している。ODN処置眼のONLにおける核の列(矢印)の数の増加を示す、rd1/rd1眼のヘマトキシリン-エオシン染色切片:(パネルA)非処置マウス、(パネルB)PBS処置マウス、(パネルC)WTAS ODN処置マウス、(パネルD)WTS ODN処置マウス。(パネルE)ONLにおける核の計数は、PBS処置眼(P<0.05)および非処置眼(P<0.01)(*)と比較して、WTS ODN処置における核の有意な増加を示している。ONL(外顆粒層)。スケールバー:A、B、CおよびD、100μm。 野生型の眼切片およびrd1/rd1ホールフラットマウント網膜に対するロドプシン免疫組織化学を描写しており、これは網膜変性および治療効果の経時的推移を反映している。(パネルA)PN28のマウス由来の野生型眼切片。(パネルB)正常マウス血清を用いたPN28の野生型マウス由来の対照眼切片。(パネルC)PN19のマウス由来のrd1/rd1フラットマウント網膜(挿入図:高倍率像)。(パネルD)正常マウス血清を用いたPN19のrd1/rd1マウス由来の対照フラットマウント網膜。(パネルE)PN28のマウス由来のrd1/rd1フラットマウント網膜。(パネルF)PN4、6および8での事前のイオントフォレシスを伴う、WTSによる注射を受けたPN28 rd1/rd1フラットマウント網膜。(パネルG)PN4、6および8での事前のイオントフォレシスを伴わない、WTSによる注射を受けたPN28 rd1/rd1フラットマウント網膜。(パネルH)PN4、6および8でのODN注射を伴わない、イオントフォレシスを受けたPN28 rd1/rd1フラットマウント網膜。(パネルI)PN4、6および8での事前のイオントフォレシスを伴う、WTSscr7による注射を受けたPN28 rd1/rd1フラットマウント網膜。スケールバー:AおよびB、100μm;C、D、E、F、G、HおよびI、1mm;挿入図、10μm。 種々のODN処置に対するロドプシン免疫反応の応答性を描写している。(パネルA)PBSによる3回の処置(PN 4、6および8)。(パネルB)PN 4でのODNによる1回の処置。(パネルC)ODNによる2回の処置(PN 4および6)。(パネルD)ODNによる3回の処置(PN 4、6および8)。スケールバー:A、B、CおよびD、1mm。 PN28のPBSまたはODN処置rd1/rd1マウス由来の眼切片に対するロドプシン免疫組織化学を描写している。(パネルA)PN28 PBS処置rd1/rd1網膜由来の切片に対する青色のDAPI染色および緑色のrho-4D2免疫染色(矢印)。(パネルB)PN28 ODN処置rd1/rd1網膜由来の切片に対する青色のDAPI染色および緑色のrho-4D2免疫染色(矢印)。スケールバー:AおよびB、150μm。 β-PDE免疫組織化学およびウエスタンブロットを描写している。(パネルA)PN 12のマウス由来の野生型+/+眼切片。(パネルB)正常ウサギ血清を用いたPN 12のマウス由来の対照野生型+/+眼切片。(パネルC)PN 28のマウス由来の野生型+/+眼切片。(パネルD)正常ウサギ血清を用いたPN 28のマウス由来の対照野生型+/+眼切片。ONL(外顆粒層)、INL(内顆粒層)。(パネルE)抗β-PDEウエスタンブロット:レーン1は分子量マーカーであり(サイズは左に表示)、レーン2は抗体がそれに対して産生されたポリペプチド抗原であり、レーン3はC3H(rd1/rd1)マウス網膜由来のタンパク質であり、レーン4はrd1/rd1マウス網膜由来のタンパク質であり、レーン5はFVB(rd1/rd1)マウス網膜由来のタンパク質であり、レーン6はCCRC(野生型+/+)マウス網膜由来のタンパク質であり、レーン7はBaln/C(野生型+/+)マウス網膜由来のタンパク質である。スケールバー:A、B、CおよびD、100μm。 PN28のPBSまたはODN処置rd1/rd1マウス由来の眼切片に対するロドプシンおよびβ-PDE免疫組織化学を描写している。(パネルA)PN28 ODN処置rd1/rd1網膜由来の切片に対する青色のDAPI染色および赤色のβ-PDE免疫染色(矢印)。(パネルB)PN28 ODN処置rd1/rd1網膜由来の切片に対する、赤色のβ-PDE免疫染色、緑色のrho-4D2免疫染色および青色のDAPI染色の複合蛍光。スケールバー:A、150μm;B、10μm。 アレル特異的リアルタイムPCRの代表的プロットを描写している。グラフは、二本鎖PCR産物へのSybrGreen蛍光色素のインターカレーションに起因する蛍光のリアルタイム検出を示している。テンプレートDNAは、BALB/cマウス(WT)、WTS ODNにより処置したrd1/rd1マウスの網膜(ODN処置)、またはPBSにより処置したrd1/rd1マウスの網膜(PBS処置)から単離した。プライマーは野生型アレルに対して特異的であった。各実験試料を5〜10回ずつ反復してアッセイした。 ODN注射の前に食塩水経眼瞼イオントフォレシスを適用した場合には、ODN注射後のその適用と比較して光受容器ターゲティングが有意に増加したことを描写している。 標的網膜細胞におけるイオントフォレシスの結果を示している。 光受容器の用量依存的レスキューを示す、特定のコード性ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを示している。 処置後のマウス由来の眼切片(β-ホスホジエステラーゼタンパク質が眼切片中に検出されたことを示している)。 ラットに対する標識オリゴヌクレオチドのイオントフォレシスの定性的評価を示している。 野生型β-PDE DNAとの反応が、非処置rdテンプレートとの反応よりも非常に少ないサイクルで閾値に達したことを示している。SRT-PCR分析はODN処置試料の反応プロフィールにおける統計学的に有意な左方推移を示しており、これは処置がゲノムDNAの修復を誘導することを指し示している。
発明の詳細な説明
本発明は、眼の組織への核酸の強化された送達のためのデバイスおよび方法を提供する。本発明の方法は、さまざまな種類の核酸を眼の種々の組織に送達するために用いることができる。これらの核酸は診断薬または治療薬として用いることができる。
核酸
「核酸」という用語は、少なくとも2つのヌクレオチドを含むポリマーのことを指す、当技術分野の用語である。「ヌクレオチド」は、糖であるデオキシリボース(DNAの場合)またはリボース(RNAの場合)、塩基およびリン酸基を含む。ヌクレオチドはリン酸基を介して結び付いている。「塩基」はプリンおよびピリミジンを含み、これらはさらに天然化合物であるアデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシル、イノシン、ならびにプリンおよびピリミジンの合成誘導体または天然類似体を含む。
「核酸」という用語はまた、公知のヌクレオチド類似体、修飾ヌクレオチド(または修飾ヌクレオシドもしくは修飾塩基)または修飾主鎖残基もしくは結合を含む核酸も含み、これらは合成性、天然性および非天然性であり、参照核酸と類似の結合特性を有する。
本明細書において、「核酸」という用語はまた、修飾されていてもよい、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100ヌクレオチドの正確な連続物を指定する、天然および/または非天然ヌクレオチドを含む単離された天然性または合成性のDNAおよび/またはRNA断片のことも意味すると解釈される。
「修飾ヌクレオチド」または「修飾ヌクレオシド」または「修飾塩基」という用語は、リボ核酸(すなわち、A、C、GおよびU)およびデオキシリボ核酸(すなわち、A、C、GおよびT)に存在する標準的な塩基、糖および/またはリン酸主鎖化学構造の変形物のことを指す。例えば、Gmは2'-メトキシグアニル酸を表し、Amは2'-メトキシアデニル酸を表し、Cfは2'-フルオロシチジル酸を表し、Ufは2'-フルオロウリジル酸を表し、Arはリボアデニル酸を表す。オリゴヌクレオチドには、シトシン、または5-メチルシトシン、4-アセチルシトシン、3-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、2-チオシトシン、5-ハロシトシン(例えば、5-フルオロシトシン、5-ブロモシトシン、5-クロロシトシンおよび5-ヨードシトシン)、5-プロピニルシトシン、6-アゾシトシン、5-トリフルオロメチルシトシン、N4,N4-エタノシトシン、フェノキサジンシチジン、フェノチアジンシチジン、カルバゾールシチジンもしくはピリドインドールシチジンを含む任意のシトシン関連塩基が含まれうる。修飾にはさらに、グアニン、または6-メチルグアニン、1-メチルグアニン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルグアニン、7-メチルグアニン、2-プロピルグアニン、6-プロピルグアニン、8-ハログアニン(例えば、8-フルオログアニン、8-ブロモグアニン、8-クロログアニンおよび8-ヨードグアニン)、8-アミノグアニン、8-スルフヒドリルグアニン、 8-チオアルキルグアニン、8-ヒドロキシルグアニン、7-メチルグアニン、8-アザグアニン、7-デアザグアニンもしくは3-デアザグアニンを含む任意のグアニン関連塩基が含まれうる。オリゴヌクレオチドにはさらに、アデニン、または6-メチルアデニン、N6-イソペンテニルアデニン、N6-メチルアデニン、1-メチルアデニン、2-メチルアデニン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、8-ハロアデニン(例えば、8-フルオロアデニン、8-ブロモアデニン、8-クロロアデニンおよび8-ヨードアデニン)、8-アミノアデニン、8-スルフヒドリルアデニン、8-チオアルキルアデニン、8-ヒドロキシルアデニン、7-メチルアデニン、2-ハロアデニン(例えば、2-フルオロアデニン、2-ブロモアデニン、2-クロロアデニンおよび2-ヨードアデニン)、2-アミノアデニン、8-アザアデニン、7-デアザアデニンもしくは3-デアザアデニンを含む任意のアデニン関連塩基が含まれうる。また、ウラシル、または5-ハロウラシル(例えば、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル)、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、1-メチルプソイドウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、5'-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メトキシウラシル、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸、プソイドウラシル、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、5-メチルアミノメチルウラシル、5-プロピニルウラシル、6-アゾウラシルもしくは4-チオウラシルを含む任意のウラシル関連塩基も含まれる。当技術分野で公知の他の修飾塩基変異体には、37 C.F.R. §1.822(p)(1)に列記されたもの、例えば、4-アセチルシチジン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウリジン、2'-メトキシシチジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン、ジヒドロウリジン、2'-O-メチルプソイドウリジン、β-D-ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、1-メチルアデノシン、1-メチルプソイドウリジン、1-メチルグアノシン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアノシン、2-メチルアデノシン、2-メチルグアノシン、3-メチルシチジン、5-メチルシチジン、N6-メチルアデノシン、7-メチルグアノシン、5-メチルアミノメチルウリジン、5-メトキシアミノメチル-2-チオウリジン、β-D-マンノシルキューオシン、5-メトキシカルボニル-メチルウリジン、5-メトキシウリジン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン、N-((9-β-D-リボフラノシル-2-メチルチオプリン-6-イル)カルバモイル)トレオニン、N-((9-β-D-リボフラノシルプリン-6-イル)N-メチル-カルバモイル)トレオニン、ウリジン-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウリジン-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウリジン、キューオシン、2-チオシチジン、5-メチル-2-チオウリジン、2-チオウリジン、4-チオウリジン、5-メチルウリジン、N-((9-β-D-リボフラノシルプリン-6-イル)カルバモイル)トレオニン、2'-O-メチル-5-メチルウリジン、2'-O-メチルウリジン、ワイブトシン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジンが非限定的に含まれる。ヌクレオチドにはまた、米国特許第3,687,808号、第3,687,808号、第4,845,205号、第5,130,302号、第5,134,066号、第5,175,273号、第5,367,066号、第5,432,272号、第5,457,187号、第5,459,255号、第5,484,908号、第5,502,177号、第5,525,711号、第5,552,540号、第5,587,469号、第5,594,121号、第5,596,091号、第5,614,617号、第5,645,985号、第5,830,653号、第5,763,588号、第6,005,096号および第5,681,941号に記載された修飾核酸塩基の任意のものも含まれる。当技術分野で公知の修飾ヌクレオシドおよびヌクレオチド糖主鎖変異体の例には、例えば、F、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2、CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、OCH2CH2OCH3、O(CH2)2ON(CH3)2、OCH2OCH2N(CH3)2、O(C1-10アルキル)、O(C2-10アルケニル)、O(C2-10アルキニル)、S(C1-10アルキル)、S(C2-10アルケニル)、S(C2-10アルキニル)、NH(C1-10アルキル)、NH(C2-10アルケニル)、NH(C2-10アルキニル)およびO-アルキル-O-アルキルなどの2'リボシル置換基を有するものが非限定的に含まれる。望ましい2'リボシル置換基には、2'-メトキシ(2'-OCH3)、2'-アミノプロポキシ(2'OCH2CH2CH2NH2)、2'-アリル(2'-CH2-CH=CH2)、2'-O-アリル(2'-O-CH2-CH=CH2)、2'-アミノ(2'-NH2)および2'-フルオロ(2'-F)が含まれる。2'-置換基はアラビノ(上向き)位置にあってもリボ(下向き)位置にあってもよい。
「核酸」という用語にはまた、5'-5'および3'-3'逆向きヌクレオチドキャップを含む核酸も包含される。本明細書で用いる場合、「5'-5'逆向きヌクレオチドキャップ」という用語は、以下に示すように、第1のヌクレオチドが、オリゴヌクレオチドの5'末端と、第1のヌクレオチドの5'位とオリゴヌクレオチドの5'末端との間のホスホジエステル結合を介して共有結合していることを意味する。
Figure 2010511692
「3'-3'逆向きヌクレオチドキャップ」という用語は、本明細書において、以下に示すように、最後のヌクレオチドが、オリゴヌクレオチドの3'末端と、最後のヌクレオチドの3'位とオリゴヌクレオチドの3'末端との間のホスホジエステル結合を介して共有結合していることを意味して用いられる。
Figure 2010511692
そのほかの修飾には、5'末端または3'末端での以下のものとのコンジュゲーションが含まれる:ポリエチレングリコール、ポリエステル、ポリ酸無水物(polyanyhdrides)、ポリカーボネート、ポリウレタン、メタクリレート、脂質、生体高分子(ヒアルロン酸、セルロース誘導体、キトサン、アルギン酸塩、その他)、熱応答性ポリマー(プルロニクス(pluronix))、デンドリマー、ポリアミン、タンパク質、ポリペプチド、抗体、金属(金、銀、その他)、キレート化剤、検出に役立つ分子(蛍光団および発色団)。
本明細書において、「核酸」という用語にはまた、ハンマーヘッド型リボザイム、DNAザイム、アロザイム、アプタマー、デコイ(decoy)およびsiRNA(RNAi)といったアンチセンス性および酵素性の核酸分子を非限定的に含む、1つまたは複数の標的遺伝子の発現または機能をモジュレートする核酸分子も含まれると解釈される。
オリゴヌクレオチド性薬剤はインビトロで機能的活性を有することが示されており、それ故に治療能力を持つ見込みがある。しかし、ヌクレアーゼ消化に対する高い感受性のために、オリゴヌクレオチド性薬剤は不安定であり、それ故にインビボ投与は実用に適さない。しかし、結合性の高いヌクレアーゼ耐性オリゴヌクレオチドをその特異性を保ちながら生産するために用いることのできる、核酸またはオリゴヌクレオチドを安定化するための方法は、当技術分野において開発されている。1つの例では、2002年7月23日に発行された米国特許第6,423,493号は、修飾ヌクレオチドを含めることによってヌクレアーゼ耐性が付与される、オリゴヌクレオチドアプタマーの構築に関して開示し、ランダムコンビナトリアル選択方法を開示している。修飾ヌクレオチドがPCR増幅中に組み込まれて、アキラルな修飾オリゴヌクレオチドが形成される。もう1つの例では、配列を修飾して翻訳のために最適化することによってmRNAが安定化される。米国特許出願第2005/0032730A1号および第2005/0250723A1号を参照のこと。本明細書において、「核酸」という用語は、安定化された核酸分子も含むものと解釈される。
本発明のオリゴヌクレオチドは、投与のために適した薬学的組成物中に組み入れることができる。薬学的組成物は一般に、対象への投与のために適した形態にある少なくとも1つのオリゴヌクレオチドおよび薬学的に許容される担体を含む。薬学的に許容される担体は、一部には、投与される具体的な組成物、ならびに組成物の投与に用いられる具体的な方法によって決まる。したがって、オリゴヌクレオチド組成物を投与するためには、薬学的組成物の多岐にわたる適した製剤が存在する(Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA 18th ed., 1990)。薬学的組成物は一般に、無菌で実質的に等張性であり、米国食品医薬品局の医薬品の製造および品質管理に関する基準(Good Manufacturing Practice(GMP))のすべての規制に完全に準拠している。
「薬学的に許容される」、「生理的に忍容性がある」およびそれらの文法上の変形物は、それらが組成物、担体、希釈剤および試薬を指している場合、互換的に用いられ、対象またはその表面へのその材料の投与を、組成物の投与が禁じられるような度合いの望ましくない生理的影響を生じることなく行いうることを表す。例えば、「薬学的に許容される添加剤」とは、一般に安全で無毒性で望ましい薬学的組成物を調製するのに有用な添加剤を意味し、これにはヒトへの薬学的使用のためのものだけではなく、獣医学的使用のために許容される添加剤も含まれる。そのような添加剤は、固体、液体、半固体であってよく、またはエアロゾル組成物の場合には気体であってもよい。「薬学的に許容される塩およびエステル」は、薬学的に許容され、かつ所望の薬理特性を有する塩およびエステルを意味する。そのような塩には、オリゴヌクレオチド中に存在する酸性プロトンが無機または有機塩基と反応しうるような場合に形成されうる塩が含まれる。適した無機塩には、アルカリ金属、例えばナトリウムおよびカリウム、マグネシウム、カルシウムおよびアルミニウムなどと形成されるものが含まれる。適した有機塩には、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、Nメチルグルカミンといったアミン塩基などの有機塩基と形成されたものが含まれる。そのような塩にはまた、無機酸(例えば、塩酸および臭化水素酸)および有機酸(例えば、酢酸、クエン酸、マレイン酸、ならびにメタンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸などのアルカンスルホン酸およびアレーンスルホン酸)と形成された酸付加塩も含まれる。薬学的に許容されるエステルには、オリゴヌクレオチド中に存在するカルボキシ基、スルホニルオキシ基およびホスホノオキシ基と形成されるエステル、例えば、C1-6アルキルエステルが含まれる。2つの酸性基が存在する場合には、薬学的に許容される塩またはエステルは、一酸一塩もしくは一エステルまたは一酸二塩もしくは二エステルであってよい;同様に、2つを上回る酸性基が存在する場合には、そのような基のいくつかまたはすべてが塩化またはエステル化されうる。本発明のオリゴヌクレオチドは、塩化されていない形態もしくはエステル化されていない形態で存在すること、または塩化および/もしくはエステル化された形態で存在することができ、そのようなオリゴヌクレオチドの名称には、本来の(塩化もエステル化もされていない)化合物ならびにその薬学的に許容される塩およびエステルの両方が含まれるものとする。当業者は、本発明の特定の薬物および組成物に関する投与の適切な時機、順序および投与量を難なく決定しうるであろう。
そのような担体または希釈剤の例には、水、食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液および5%ヒト血清アルブミンが非限定的に含まれる。リポソーム、および固定油などの非水性媒体を用いることもできる。薬学活性物質に対するそのような媒質および化合物の使用は当技術分野で周知である。任意の従来の媒質または化合物がオリゴヌクレオチドに対して非適合性である場合を除き、組成物中でのそれらの使用が想定される。また、補助的な活性化合物を組成物中に組み入れることもできる。
本発明の薬学的組成物は、その意図する投与経路と適合するように製剤化される。いくつかの方法では、本発明のオリゴヌクレオチドは、徐放性組成物またはMedipad(商標)デバイスなどのデバイスとして投与される。
本発明のオリゴヌクレオチドは、任意で、種々のオリゴヌクレオチド関連疾患を含む種々の疾患を治療するのに少なくとも部分的には有効である他の薬剤と組み合わせて投与することができる。
非経口的、皮内または皮下適用のために用いられる溶液または懸濁液は、以下の成分を含むことができる:無菌の希釈剤、例えば注射用水、食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒など;抗菌化合物、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベンなど;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなど;キレート化合物、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)など;緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩など、および張性の調整のための化合物、例えば塩化ナトリウムまたはデキストロースなど。pHは、酸または塩基、例えば塩酸または水酸化ナトリウムを用いて調整することができる。非経口的な調製物は、ガラスまたは合成樹脂でできたアンプル、使い捨てシリンジまたは多回投与用バイアルの中に封入することができる。
いかなる場合でも、組成物は無菌でなければならない。それは製造および保存の条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されるべきである。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適した混合物などを含む溶媒または分散媒であってよい。適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液の場合には必要な粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持しうる。微生物の作用の防止は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの種々の抗菌薬および抗真菌薬によって達成することができる。多くの場合には、例えば糖類、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、塩化ナトリウムなどの等張剤を組成物中に含めることが好ましいと考えられる。注射用組成物の持続的吸収は、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅延させる化合物を組成物中に含めることによって達成することができる。
無菌溶液は、必要な量のオリゴヌクレオチドを、適切な溶媒中に、必要に応じて以上に列挙した成分の1つまたは組み合わせとともに組み入れ、その後で滅菌濾過を行うことによって調製することができる。一般に、分散液は、基本的な分散媒および以上に列挙したもののうち必要な他の成分を含む無菌媒体中に活性化合物を含めることによって調製される。無菌注射用溶液の調製のための無菌粉末の場合には、調製の方法は、あらかじめ滅菌濾過された溶液から活性成分の粉末に加えて望ましい任意の追加の成分が得られる真空乾燥および凍結乾燥である。
投与はまた、経粘膜的または経皮的な手段によるものであってもよい。イオントフォレシス投与による眼投与のためには、透過させようとする障壁に適した浸透剤が製剤中に用いられる。そのような浸透剤は当技術分野で一般に公知であり、例えば、経粘膜的投与のためのものには、界面活性剤、胆汁酸およびフシジン酸誘導体が含まれる。オリゴヌクレオチドは、当技術分野で一般に公知である軟膏、膏薬、ゲルまたはクリーム剤の中に製剤化される。
1つの態様において、オリゴヌクレオチドは、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出型製剤のような、オリゴヌクレオチドを迅速排出から保護すると考えられる担体とともに調製される。エチレンビニルアセテート、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステルおよびポリ乳酸などの生分解性、生体適合性の重合体を用いることができる。そのような製剤の調製のための方法は当業者には明らかであると考えられる。
本発明の核酸分子は、ベクター中に挿入して遺伝子治療ベクターとして用いることができる。遺伝子治療ベクターは、例えば静脈内注射、局所投与(米国特許第5,328,470号)または定位的注射(Chen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:3054-3057, 1994)によって対象に送達することができる。遺伝子治療ベクターの医薬製剤は、許容される希釈剤中に遺伝子治療ベクターを含むことができ、または遺伝子送達媒体が包埋された徐放性マトリックスを含むことができる。または、例えばレトロウイルスベクターのように、組換え細胞から完全な遺伝子送達用ベクターを無傷の状態で作製しうる場合には、医薬製剤は遺伝子送達システムを生成する1つまたは複数の細胞を含むことができる。薬学的組成物は、投与のための指示書とともに、容器、パックまたはディスペンサーの中に含めることができる。
個々の核酸配列はまた、「スプライス変異体」も暗黙的に包含する。同様に、核酸によってコードされる個々のタンパク質は、その核酸のスプライス変異体によってコードされる任意のタンパク質も暗黙的に包含する。「スプライス変異体」は、その名称が示唆するように、遺伝子の選択的スプライシングの産物である。転写後に、最初の核酸転写物は、異なる(代替的な)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされる可能性がある。スプライス変異体の産生の機序はさまざまであるが、これにはエクソンの選択的スプライシングが含まれる。読み過ごし転写によって同一の核酸から導き出される代替的なポリペプチドも、この定義に包含される。スプライス産物の組換え形態を含む、スプライス反応のあらゆる産物が、この定義に含まれる。
液体の水性媒質または他の材料は、それが眼組織と適合性があるならば、すなわちそれが眼組織と接触させられた時に重大なまたは過度の有害な影響を引き起こさないならば、眼科的に許容される。本発明の眼科的組成物または薬学的組成物は、眼組織と適合性のある組成物、例えば眼への投与のために適した組成物である。
「組換え」という用語は、例えば細胞または核酸、タンパク質またはベクターに言及して用いられる場合、その細胞、核酸、タンパク質またはベクターが、異種核酸もしくはタンパク質の導入またはネイティブ性の核酸もしくはタンパク質の変更によって改変されていること、または細胞がそのように改変された細胞に由来することを指し示している。したがって、例えば、組換え細胞は、ネイティブ(非組換え)型の細胞には見いだされない遺伝子を発現する、または通常であれば異常に発現される、低発現されるもしくは全く発現されないネイティブ性遺伝子を発現する。
「薬学的に許容される添加剤」とは、一般に安全で無毒性で望ましい薬学的組成物を調製するのに有用な添加剤を意味し、これにはヒトへの薬学的使用のためのものだけではなく、獣医学的使用のために許容される添加剤も含まれる。そのような添加剤は、固体、液体、半固体であってよく、またはエアロゾル組成物の場合には気体であってもよい。
「治療的有効量」とは、疾患を治療するために対象に投与された場合に、その疾患の治療を生じさせるのに十分な量を意味する。
指摘する場合を除き、「対象」または「患者」という用語は互換的に用いられ、ヒト患者および非ヒト霊長動物などの哺乳動物、ならびにウサギ、イヌ、ネコ、ラット、マウスおよび他の動物などの実験動物のことを指す。したがって、「対象」または「患者」という用語、本明細書で用いる場合、本発明の組成物を投与することのできる任意の哺乳動物患者または対象を意味する。本発明のいくつかの態様において、患者は疾患、例えばHIVに対する抵抗性の低下を引き起こす病状に罹患していると考えられる。本発明の1つの例示的な態様においては、本発明の方法に従った、1つまたは複数のコレクチンおよび/またはサーファクタントタンパク質を含む薬学的組成物による治療の対象患者を同定するために、許容されるスクリーニング方法を用いることで、対象における既存の疾患もしくは病状、または標的となるか疑われる疾患もしくは病状の状態を決定する。これらのスクリーニング方法には、例えば、対象が眼疾患に罹患しているか否かを判定するための眼検査が含まれる。これらおよび他の慣例的な方法により、臨床医は、治療法を必要とする対象を選択することが可能になる。本発明のある態様において、コンタクトレンズを保存、洗浄、再湿潤化および/または消毒するための眼科的組成物、ならびに人工涙液組成物および/またはコンタクトレンズは、1つまたは複数のコレクチンおよび/またはサーファクタントタンパク質を含み、それによってコンタクトレンズ装着者における眼疾患の発生を抑制すると考えられる。
オリゴヌクレオチドのイオントフォレシス
電流誘起電場における分子の移動はいくつかの要因に依存し、中でもサイズ、親水性およびイオン状態が特に重要である。これらの要因が比較的一定に保たれる同族化合物系列の内部では、系列の各メンバーのイオントフォレシス移動度は同程度であると根拠をもって予想することができる。オリゴヌクレオチドはそのような一連の化合物に相当する。
開示されているデバイスには種々のものがある(それらの一部は市場で販売されている)(例えば、以下の特許文書を参照のことを:1979年2月27日に発行された米国特許第4,141,359号;1981年1月17日に発行された米国特許第4,250,878号;1981年11月24日に発行された米国特許第4,301,794号;1988年4月31日に発行された米国特許第4,747,819号;1988年6月21日に発行された米国特許第4,752,285号;1990年4月10日に発行された米国特許第4,915,685号;1990年12月25日に発行された米国特許第4,979,938号;1993年10月5日に発行された米国特許第5,252,022号;1994年12月20日に発行された米国特許第5,374,245号;1996年3月12日に発行された米国特許第5,498,235号;1998年3月24日に発行された米国特許第5,730,716号;1999年12月14日に発行された米国特許第6,001,088号;2000年1月25日に発行された米国特許第6,018,679号;2000年10月31日に発行された米国特許第6,139,537号;2000年11月14日に発行された米国特許第6,148,231号;2000年11月28日に発行された米国特許第6,154,671号、および2000年12月26日に発行された米国特許第6,167,302号)。
治療的に意義のあるオリゴヌクレオチドの典型的な分子量は〜10kDである。各ヌクレオチドはホスホジエステルまたはチオジエステルを介して連結しているため、各結合は負電荷を有する。ヌクレオチドの平均分子量は335であり(RNAの場合は330、DNAの場合は340)、各オリゴヌクレオチドは29またはそれ以上の負電荷を有する。糖部分に対するいかなる修飾(2'修飾)も電荷密度を低下させることはなく、修飾によってもたらされる親油性のいかなる増加もこの固有の負電荷によって十二分に打ち消される。
van der Geestらによる1件の研究(Pharm. Res., 13:553-558, 1996)は、2つの代表的な塩基:ウラシル(RNA)およびアデニン(DNA);2つの代表的なヌクレオシド:ウリジン(RNA)およびアデノシン(DNA);ならびに代表的なヌクレオチド:AMP、ATP、GTPおよびイミド-GTPの哺乳動物皮膚を通してのインビトロでのイオントフォレシス移動度を検討している。彼らは、送達の効率は水溶性の違いに弱く依存し、分子量とは逆に反応し、電荷によっては強く影響されることを報告している。
Brandらによる別の研究(J. Pharm. Sci., 87:49-52, 1998)はさらに、イオントフォレシスで補助される経皮的送達に対するサイズおよび配列の影響を調べている。試験には6〜40塩基(2kD〜13.5kD)の範囲にわたるオリゴヌクレオチドが含まれ、それらは反復単位の異なるさまざまなヌクレオチド単位で構成された。彼らは、特定の塩基反復単位を用いた場合の経皮的な流れのレベルの違いを観察した。グアニジンのテトラマー配列は安定なG-カルテット(G-quartet)を形成することが知られている。これらのカルテットは表面積が大きく、著者らは分子半径の増大が流速に影響を及ぼすことを示唆している。この増大は、分子量500未満の化合物の受動的送達を角質層が制約するという経皮的送達に対しても非常に重要である可能性がある。
強膜は、分子量が最大150kDまでのタンパク質および多糖の経強膜的送達を受動的に許容することが示されている。また、Asaharaは、4.7kBのプラスミド(〜174kD)の経角膜的送達も示している。眼は皮膚よりも治療薬の透過性が非常に高いことが明らかに実証されている。オリゴヌクレオチド連続物の内部の配列特異的二次構造により引き起こされる、皮膚において観察されるいかなる流れの遅延も、眼組織においては要因とはならないと考えられる。イオントフォレシス移動度を左右する主な要因は、具体的な配列にかかわらず電荷密度であると根拠をもって予想しうると考えられる。
オリゴヌクレオチドの強化された網膜送達は、キメラオリゴヌクレオチドを利用した実施例1で実証されている。RNAおよびDNAヌクレオチドの両方で構成されるキメラオリゴヌクレオチドは、送達することが考えられるオリゴヌクレオチドの種類のすべてを包含する例である。キメラオリゴヌクレオチドの送達の成功を受けて、当業者は、アプタマー、アンチセンス、siRNAなどのサブカテゴリーに属する広範囲にわたるオリゴヌクレオチドの送達の成功を予測することに至ると考えられる(Jayasena, S., Clinical Chemistry, 45:1628-1650, 1999; Henry, S. et al., Exp. Opin. Pharmacother., 2:1-15, 2001; Marro, D. et al., Drug Delivery Pharm. Res., 18:1701-1708, 2001)。
本発明はまた、本発明の組成物中に含まれる核酸が、前記標的細胞に属する標的核酸、好ましくは標的遺伝子(ゲノムDNA)、または標的タンパク質の一部と特異的にハイブリダイズしうるような方法に向けられる。本発明の方法によって送達されうる核酸の中には、または以上に引用した文書、または以下のように本明細書において開示される、機能的に欠損のある遺伝子の是正または欠損遺伝子の作出と関係のあるオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド(DNAもしくはRNA)またはキメラオリゴヌクレオチドに加えて、引用しうる細胞の標的遺伝子の発現産物をモジュレートすることのできるオリゴヌクレオチドセンスまたはアンチセンスまたは三重らせん体がある。
「特異的にハイブリダイズする」とは、核酸標的、DNAまたはRNA標的と、本発明の方法によって送達しうる核酸との間で、安定かつ特異的な結合が起こるような、十分な度合いの相補性を指し示すために用いられる用語である。
1つのさらに好ましい態様において、本発明は、組成物中に含まれる核酸、特に以上に定義したようなオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)またはキメラオリゴヌクレオチドが、前記標的遺伝子において挿入または欠失または置換されることが望まれる少なくとも1つのヌクレオチドを例外として、少なくとも細胞の標的遺伝子に対して相補的な配列を含むポリヌクレオチドであるような方法に関する。
「標的遺伝子に対して相補的な配列」とは、標的遺伝子配列の一部、特に、本発明の文脈において、前記少なくとも1つのヌクレオチドが挿入(もしくは欠失)または変更されることが望まれる標的配列の断片を含む標的遺伝子配列の一部と、ワトソン-クリック塩基対を形成する配列のことを意味する。グアニン/シトシンまたはアデニン/チミン(または/ウラシル)は、それらの間に水素結合を形成することが公知である相補的塩基の例である。
「キメラオリゴヌクレオチド」という用語は、第1の鎖に修飾性または非修飾性のリボヌクレオチド、およびデオキシリボヌクレオチドの両方を有し、かつ第2の鎖にはデオキシリボヌクレオチドのみを有するポリヌクレオチドと定義され、ここでこれらの鎖はワトソン-クリック相補性を有し、ポリヌクレオチドが多くとも単一の3'末端および単一の5'末端を有するようにオリゴヌクレオチドによって結び付けられており、これらの末端はポリヌクレオチドが単一の連続した環状ポリマーとなるように連結することができる。
ヌクレオチドは、核酸ポリマーのモノマー単位である。「ポリヌクレオチド」は、80個を上回るモノマー単位を含むという点で、本明細書では「オリゴヌクレオチド」と区別される;オリゴヌクレオチドは2〜80個のヌクレオチドを含む。核酸という用語は、デオキシリボ核酸(「DNA」)およびリボ核酸(「RNA」)を含む。DNAは、アンチセンス、プラスミドDNA、プラスミドDNAの部分、発現ベクター、発現カセット、キメラ配列、染色体DNA、またはこれらの群の誘導体の形態にありうる。RNAは、オリゴヌクレオチドRNA、tRNA(転移RNA)、snRNA(核内低分子RNA)、rRNA(リボソームRNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、shRNA(低分子ヘアピンRNA)、miRNA(マイクロRNA)、siRNA(低分子干渉性RNA)、アンチセンスRNA、リボザイム、キメラ配列、またはこれらの群の誘導体の形態にありうる。
加えて、DNAおよびRNAは、線状または環状の形態、究極的には閉鎖状である、一本鎖、二本鎖、三本鎖または四本鎖でありうる。
「アンチセンス」とは、DNAおよび/またはRNAの機能と干渉する核酸のことである。これは発現の抑制をもたらしうる。天然の核酸はリン酸主鎖を有し、人工核酸は他の種類の主鎖、ヌクレオチドまたは塩基を含みうる。これらには、PNA(ペプチド核酸)、ホスホロチオエート、およびネイティブ性核酸のリン酸主鎖の他の変異体、例えばホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド-核酸(PNA)などが含まれる。このため、アンチセンス核酸分子とは、標的タンパク質をコードするセンスターゲティング核酸またはセンス核酸に対して相補的な(二本鎖cDNA分子のコード鎖に対して相補的な、またはmRNA配列に対して相補的な)分子を指定することを意図している。このため、アンチセンス核酸はセンス核酸と水素結合を形成することができる。アンチセンス核酸はタンパク質コード鎖の全体に対して相補的でもよく、例えばタンパク質コード領域(またはオープンリーディングフレーム)の全体または一部といった、その一部のみに対して相補的でもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60または75ヌクレオチド長でありうる。
本発明の方法の投与される核酸、例えばオリゴヌクレオチドDNA、オリゴヌクレオチドRNAまたはキメラオリゴヌクレオチドは、当技術分野で公知の手順を用いた化学合成および酵素連結反応を用いて構築することができる。例えば、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド核酸を、天然に存在するヌクレオチド、または例えばホスホロチオエート誘導体のように、核酸分子の生物的安定性を高めるように、もしくはアンチセンス核酸とセンス核酸との間に形成される二本鎖の物理的安定性を高めるように設計された種々の修飾を受けたヌクレオチドを用いて、化学合成することができる。または、内部に核酸がサブクローニングされた発現ベクターを用いて、核酸を生物的に産生させることもできる。
「発現カセット」とは、タンパク質を発現することができる、天然の、または組換え的に作製された核酸のことを指す。DNA発現カセットは、典型的には、プロモーター(転写開始を可能にする)、および1つまたは複数のタンパク質をコードする配列を含む。任意で、発現カセットは転写エンハンサー、非コード性配列、スプライシングシグナル、転写終結シグナルおよびポリアデニル化シグナルを含みうる。RNA発現カセットは典型的には、翻訳開始コドン(翻訳開始を可能にする)、および1つまたは複数のタンパク質をコードする配列を含む。任意で、発現カセットは翻訳終結シグナル、ポリアデノシン配列、配列内リボソーム進入部位(IRES)および非コード性配列を含んでもよい。
siRNA、shRNA、miRNAという用語は、アンチセンス核酸(DNAまたはRNA)と同様に、前記核酸が標的核酸とおなじ細胞に導入されるかそこで発現された場合に標的核酸配列の発現(転写および/または翻訳)を低下させるか阻害する核酸のことを指す。前記核酸は標的遺伝子の相補的配列に対して実質的または完全な同一性を有し、このためそれとハイブリダイズすることができる。典型的には、前記核酸は少なくとも約15〜80ヌクレオチド長、好ましくは約15〜50ヌクレオチド長であり、20〜30ヌクレオチド長がより好ましい。
「核酸」という用語はまた、標的RNAを選択的に破壊することのできるリボザイム(文書EP 321201号を参照)を指定することも意図している。
1つのさらなる好ましい態様において、本発明は、組成物中に含まれる前記核酸がアプタマーである、本発明による方法にも関する。
本明細書で用いる場合、「アプタマー」という用語は、非共有結合性の物理的相互作用を介した非ポリヌクレオチド性分子(タンパク質など)に対する選択的結合親和性を有する、任意のポリヌクレオチドまたはその塩を指す。アプタマーとは、抗体のそのエピトープに対する結合と類似した様式でリガンドと結合するポリヌクレオチドのことである。
アプタマーは、特異的な三次元構造をとり、指数的濃縮(exponential enrichment)によるリガンドの系統的進化(SELEX)と称されるインビトロ選択の過程によって特定の標的に対するその親和性の点から選択される、化学合成された核酸の短鎖である。SELEXは、膨大な数のオリゴヌクレオチドを、任意の標的に対する適切な結合親和性および特異性を有する特異的配列に関して迅速にスクリーニングする、コンビトナリアル化学の方法である。この過程を用いて、特定の標的に対して特異的な新規なアプタマー核酸リガンドを作り出すことができる。SELEX過程の全般、ならびにVEGFアプタマーおよび製剤の詳細については、例えば、米国特許第5,270,163号、第5,475,096号、第5,696,249号、第5,670,637号、第5,811,533号、第5,817,785号、第5,958,691号、第6,011,020号、第6,051,698号、第6,147,204号、第6,168,778号および第6,426,335号に記載されており、そのそれぞれの内容は参照により本明細書中に明確に組み入れられる。抗VEGFアプタマーは、ヒトVEGFの165kDaアイソフォームと高親和性で結合する低分子量の安定なRNA様分子である。
さまざまな他の生物標的を標的とする、数多くの他のアプタマー配列が開発されている。例えば、以下のものを標的とするアプタマー配列が開発されている:PDGF(米国特許第5,668,264号、第5,674,685号、第5,723,594号、第6,229,002号、第6,582,918号および第6,699,843号)、塩基性FGF(米国特許第5,459,015号および第5,639,868号)、CD40(米国特許第6,171,795号)、TGFβ(米国特許第6,124,449号;第6,346,611号;および第6,713,616号)、CD4(米国特許第5,869,641号)、絨毛性ゴナドトロピンホルモン(米国特許第5,837,456号および第5,849,890号)、HKGF(米国特許第5,731,424号、第5,731,144号、第5,837,834号および第5,846,713号)、ICP4(米国特許第5,795,721号)、HIV逆転写酵素(米国特許第5,786,462号)、HIV-インテグラーゼ(米国特許第5,587,468号および第5,756,287号)、HIV-gag(米国特許第5,726,017号)、HIV-tat(米国特許第5,637,461号)、HIV-RTおよびHIV-rev(米国特許第5,496,938号および第5,503,978号)、HIVヌクレオキャプシド(米国特許第5,635,615号および第5,654,151号)、好中球エラスターゼ(米国特許第5,472,841号および第5,734,034号)、IgE(米国特許第5,629,155号および第5,686,592号)、タキキニンサブスタンスP(米国特許第5,637,682号および第5,648,214号)、分泌型ホスホリパーゼA2(米国特許第5,622,828号)、トロンビン(米国特許第5,476,766号)、腸ホスファターゼ(米国特許第6,280,943号、第6,387,635号および第6,673,553号)、テネイシン-C(米国特許第6,232,071号および第6,596,491号)、ならびにサイトカイン(米国特許第6,028,186号)、7回膜貫通型Gタンパク質-共役型受容体(米国特許第6,682,886号)、DNAポリメラーゼ(米国特許第5,693,502号、第5,763,173号、第5,874,557号および第6,020,130号)、補体系タンパク質(米国特許第6,395,888号および第6,566,343号)、レクチン(米国特許第5,780,228号、第6,001,988号、第6,280,932号および第6,544,959号)、インテグリン(米国特許第6,331,394号)および肝細胞増殖因子/分散因子(HGF/SP)またはその受容体(c-met)(米国特許第6,344,321号)。SELEXを基にした方法の適応性からして、所望の生物標的を標的とするさらにより多くのアプタマーが可能である。
本発明のさらなる態様において、アプタマーは、ICAM-lまたはその結合性LFA-1などの接着分子に向けられる。さらなる態様において、アプタマーは任意の公知のリガンドまたはその受容体に向けられる。本発明の立体的に強化されたアプタマー結合物を用いたターゲティングのためのリガンドおよび/またはそれらの受容体の例には、TGF、PDGF、IGFおよびFGFが含まれる。ターゲティングのためのそのほかのリガンドおよび/またはそれらの受容体には、以下のものが含まれる:サイトカイン、リンホカイン、増殖因子または他の造血因子、例えばM-CSF、GM-CSF、TNF、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IFN、TNF0、TNF1、TNF2、G-CSF、Meg-CSF、GM-CSFなど;トロンボポエチン、幹細胞因子およびエリスロポエチン、肝細胞増殖因子/NK1、または血管新生をモジュレートする因子、例えばアンジオポエチンAng-1、Ang-2、Ang-4、Ang-Y、ならびに/またはヒトアンジオポエチン様ポリペプチド、ならびに/または血管内皮増殖因子(VEGF)。本発明の組成物を用いたターゲティングのための具体的な他の因子には、アンジオゲニン、骨形成タンパク質-1などのBMP、骨形成タンパク質受容体IAおよびIBなどの骨形成タンパク質受容体、神経栄養因子、走化性因子、CD3、CD4、CD8、CD19およびCD20などのCDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;イムノトキシン;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロンα、βおよびγなどのインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M-CSF、GM-CSFおよびG-CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL-1からIL-10まで;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス抗原、例えばAIDSエンベロープの一部分など;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;調節タンパク質;インテグリン、例えばCD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA-4およびVCAMなど;HER2、HER3またはHER4受容体などの腫瘍関連抗原;ならびに以上に列記したポリペプチドの任意のものの断片および/または変異体、が含まれる。
本発明はさらに、例えばリガンドまたはその受容体などを標的とする公知のアプタマー核酸配列の任意のもの、例えば、ウェブサイト、aptamer.icmb.utexas.eduで入手可能なアプタマーデータベース中に集約されているものを含む組成物を含む。
いくつかの態様において、本発明に用いられる核酸分子は、例えば分子の安定性、ハイブリダイゼーション、溶解性などを改善するために、塩基部分、糖部分またはリン酸主鎖を修飾することができる。例えば、核酸のデオキシリボースリン酸主鎖を修飾してペプチド核酸(「PNA」)を生成することができる。
1つの態様において、本発明は、組成物中に含まれる前記核酸がキメラオリゴヌクレオチドDNA/2'OMeRNA型であり、そのDNA/RNA配列の少なくとも一部が前記細胞の標的突然変異遺伝子のゲノムDNA断片配列に対して、前記標的突然変異遺伝子中に復帰されることが望まれる突然変異を例外として、相補的であるような、本発明による方法に関する。
もう1つの態様において、核酸はオリゴヌクレオチドDNAまたはオリゴヌクレオチドRNAであり、ホスホロチオエート結合を有してもよい。
もう1つの態様において、核酸は一本鎖オリゴヌクレオチドDNA(ssODN)または一本鎖オリゴヌクレオチドRNA(ssORN)である。
標的細胞
1つの態様において、核酸は、前記網膜細胞に含まれるゲノムDNAの配列と特異的にハイブリダイズすることができる。
もう1つの態様において、核酸は、前記網膜細胞の核内に位置する配列と特異的にハイブリダイズすることができる。
もう1つの好ましい態様において、核酸は細胞外タンパク質と結合し、それによってタンパク質とその指定される受容体との結合を阻害することができる。
もう1つの態様において、標的細胞は光受容器細胞または網膜色素上皮細胞(RPE細胞)であり、光受容器細胞が好ましい。
もう1つの好ましい態様において、核酸標的細胞/タンパク質は網膜の外顆粒層に位置する。
本発明の、インビボで核酸を標的細胞内に送達するための方法の第2の局面において、前記核酸を含む前記組成物の注射の段階は、前記核酸を含む組成物の眼周囲(結膜下、眼球周囲、眼球側方、テノン嚢下)、網膜下、脈絡膜上方、眼房内、角膜内および硝子体内注射からなる群より選択される。
また、本発明の、インビボで核酸を標的細胞内に送達するための方法においては、核酸を含む組成物の投与が前記組成物の局所浸透の段階によって実施されることも好ましい。好ましい適用は、2000年11月28日に発行された米国特許第6,154,671号に開示されているデバイスを利用する、イオントフォレシスの時点での局所適用であると考えられる。
イオントフォレシスで補助されるオリゴヌクレオチドの経角膜的送達が実施可能であることは立証されている。Ashara, T.ら(Jpn. J. Opthamol., 45:31-39, 2001)は、4.7kBのプラスミド(ほぼ174kD)の前房への、および23塩基対のホスホロチオエート(ほぼ8kD)の後房への経角膜的送達の成功を報告している。また、強膜の透過性は、Ambati, J.ら(IOVS, 41:1186-1191, 2000; IOVS, 41:1181-1191, 2000)による一連の実験によって十分に立証されている。IgGおよび最大で150kDaまでのDextranポリマーの後房への受動的な経強膜的送達が実施可能であることは立証されている。
本発明の、インビボで核酸を標的細胞内に送達するための方法のもう1つの局面において、イオントフォレシスは眼イオントフォレシスまたは経眼瞼イオントフォレシスである。
眼イオントフォレシスまたは経眼瞼イオントフォレシスを通じての眼組織の標的細胞内への治療用物質または診断用物質の送達のためのデバイスは一般的に用いられており、それ故にすでに開示されている。当業者は、イオントフォレシス用デバイスおよびその使用条件、特に電流密度、電流を適用する期間、ならびに電極の形状および場所などを、核酸の送達が行われることが望まれる標的細胞を含む組織に適応させて、容易に選択および決定しうると考えられる。
眼イオントフォレシスシステム
1つの態様において、本発明の方法で用いられる眼イオントフォレシスシステムは、以下の特許において開示されているデバイスからなる群より選択されるデバイスである:1979年2月27日に発行された米国特許第4,141,359号;1981年1月17日に発行された米国特許第4,250,878号;1981年11月24日に発行された米国特許第4,301,794号;1988年4月31日に発行された米国特許第4,747,819号;1988年6月21日に発行された米国特許第4,752,285号;1990年4月10日に発行された米国特許第4,915,685号;1990年12月25日に発行された米国特許第4,979,938号;1993年10月5日に発行された米国特許第5,252,022号;1994年12月20日に発行された米国特許第5,374,245号;1996年3月12日に発行された米国特許第5,498,235号;1998年3月24日に発行された米国特許第5,730,716号;1999年12月14日に発行された米国特許第6,001,088号;2000年1月25日に発行された米国特許第6,018,679号;2000年10月31日に発行された米国特許第6,139,537号;2000年11月14日に発行された米国特許第6,148,231号;2000年11月28日に発行された米国特許第6,154,671号、および2000年12月26日に発行された米国特許第6,167,302号。
1つの好ましい態様において、本発明の方法で用いられる眼イオントフォレシスシステムは、2000年11月28日に発行された米国特許第6,154,671号に開示されているデバイスからなる群で選択されるデバイスであり、前記デバイスは、緩衝化されていてもよいさまざまな電解質を含む水性溶液を収容するように構成されたリザーバーを含むことを特徴とし、内壁、外壁および内壁と外壁を橋渡しする端壁を有し、内壁および外壁は輪状であって、眼球に適用するように構成された自由端を有しており、前記デバイスはリザーバー内に配置された少なくとも1つのアクティブ電極、パッシブ電極および電流発生装置をさらに含み、ここで少なくとも1つのアクティブ電極は端壁の内面に配置された表面電極であり、内壁は所定の直径と少なくとも等しくなるように構成された外径を有し、この場合に所定の直径はヒト角膜の直径に相当する。
もう1つの好ましい態様において、本発明の方法で用いられる経眼瞼イオントフォレシスシステムは、2004年12月30日の米国特許出願第US 2004/267188号に開示されている経眼瞼イオントフォレシス用デバイスである。本デバイスは、絶縁層、および絶縁層を導電層と結合させうる接着層を有する主電極を含み、主電極は眼瞼と接触させることのできる領域を有することを特徴とする。カチオン性イオントフォレシスは経眼瞼イオントフォレシスのためにも好ましいが、経眼瞼イオントフォレシスはアニオン性またはカチオン性イオントフォレシスであってよい。経眼瞼イオントフォレシスは好ましくは、約1〜5mAの電流を用いて約1〜7分間にわたって行われ;より好ましくは約1〜3mAの電流を用いて約3〜6分間にわたって行われ;より好ましくは、約2mAの電流を用いて最長5分間にわたって行われることがより好ましい。
眼疾患
1つの局面において、本発明は、欠損性タンパク質に起因する眼疾患の、前記欠損性タンパク質をコードする標的DNAまたはRNA配列と特異的にハイブリダイズしうる治療用核酸を用いての治療のための方法に向けられる。
1つの態様において、本発明は、標的細胞において発現される突然変異遺伝子に起因する眼の遺伝性病態の、その遺伝子のゲノムDNA配列に対して相補的な少なくとも1つの配列を含む核酸組成物を用いた治療のための本発明の方法に関し、ここで好ましくは、核酸組成物の少なくとも一部は、前記標的遺伝子中に復帰されることが望まれる突然変異を例外として、標的細胞において発現される突然変異遺伝子のゲノムDNA配列に対して相補的である。
本発明はまた、その遺伝子発現がその疾患と関連している、標的眼細胞の遺伝子における突然変異を復帰または導入させることのできる核酸を用いて、そのような治療を必要とする非ヒト動物またはヒト対象において、眼疾患を治療するための方法も包含する。
本明細書において、「突然変異遺伝子」とは、その配列が野生型参照物に比して少なくとも1つの突然変異または多型を含むような遺伝子を意味すると解釈される。突然変異は例えば、野生型遺伝子と比較しての少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、付加または置換でありうる。突然変異は少なくとも部分的には病態または病気の原因となる可能性があり、特に野生型の機能的遺伝子によってコードされるタンパク質の正常な機能の喪失と関連している。
本発明の方法によって治療しうる標的遺伝子の中でも、世界中で2000人の個体のうちおよそ1人が罹患する、遺伝的および表現型の上で異種混交的な疾患群である遺伝性網膜症の原因となる遺伝子を特に挙げることができる(Sohocki et al., Hum. Mutat., 17:42-51, 2001)。
これらの標的遺伝子の中でも、遺伝子の一部のcDNAのコドン347におけるナンセンスC→A突然変異が網膜色素変性症をもたらす、cGMP-ホスホジエステラーゼβ-サブユニットをコードするマウス遺伝子を挙げることができる。
突然変異が網膜色素変性症および他の遺伝性網膜症を引き起こすこれらの標的遺伝子の中でも、RP1遺伝子を特に挙げることができる。実際に、そのRP1遺伝子において、ロドプシン遺伝子における活性部位Lys-296のミスセンス突然変異、例えばK296Eなどは、発色団結合部位を伴わず、このため光によって活性化されないオプシンを生じさせ、常染色体優性網膜色素変性症(ADRP)を引き起こすことが見いだされており、またはナンセンス突然変異R677-STOPもRP1座位との結び付きのある家族性において網膜色素変性症と関連があることが見いだされている(Payne et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 41:4069-4073, 2000;Guillonneau et al., Hum. Mol. Genet., 8:1541-1546, 1999;Pierce et al., Nat. Genet., 22: 248-254, 1999;Li et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92: 3551-3555, 1995)。
低酸素誘導因子-1(HIF-1)は、HIF-1αおよびHIF-1βサブユニットで構成される転写因子である。HIF-1は、その産物が酸素恒常性において重要な役割を果たす複数の遺伝子をトランス活性化する(Ozaki et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci., 40:182-189, 1999)。例えば、炎症および血管新生に関与するいくつかの遺伝子の発現を司る転写因子HIFαをコードする遺伝子をターゲティングして、眼血管新生、主として網膜血管新生を有する患者を治癒させることができる(Wenger, J. Exp. Biol., 203:1253-1263, 2000)。その正常配列であるPCDHGは、ヒト(439-464)およびマウス(669-693)で保存されている。発現されたタンパク質が、ヒトまたはマウスにおいて低酸素誘導性血管新生を促進できないようにするために、終止コドンを運ぶキメロプラスト(本明細書において、キメラオリゴヌクレオチドを同じく指定するために用いられる用語)を設計することができる。
もう1つの局面において、本発明は、その遺伝子発現がその疾患と関連している、標的細胞の標的遺伝子における突然変異を復帰または導入させることのできる、核酸、好ましくはオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)または以上に定義したキメラオリゴヌクレオチドの投与を含む、そのような治療を必要とする非ヒト動物またはヒト対象において疾患を治療するための方法にも向けられ、ここでインビボで前記核酸を前記標的細胞内に送達するために用いられる方法は、本発明に従ってインビボで核酸を送達するための方法である。
1つの態様において、本発明の方法によって治療される疾患は、遺伝性網膜症を含む遺伝性病態である。本発明の方法によって治療しうる眼疾患には、バルデー-ビードル症候群、常染色体劣性;網脈絡膜萎縮または変性、常染色体優性;錐体または錐体杆体ジストロフィー、常染色体優性;錐体または錐体杆体ジストロフィー、常染色体劣性;錐体または錐体杆体ジストロフィー、X連鎖性;先天停止性夜盲、常染色体優性;先天停止性夜盲、常染色体劣性;先天停止性夜盲、X連鎖性;レーバー先天黒内障、常染色体劣性;黄斑変性症、常染色体優性;黄斑変性症、常染色体劣性;眼-網膜発達障害、常染色体優性;視神経萎縮、常染色体優性;視神経萎縮、常染色体劣性;視神経萎縮、X連鎖性;網膜色素変性症、常染色体優性;網膜色素変性症、常染色体劣性;網膜色素変性症、X連鎖性;網膜症を伴う症候群性/全身性の疾患、常染色体優性;網膜症を伴う症候群性/全身性の疾患、常染色体劣性;網膜症を伴う症候群性/全身性の疾患、X連鎖性;アッシャー症候群、常染色体劣性;その他の網膜症、常染色体優性;その他の網膜症、常染色体劣性;その他の網膜症、ミトコンドリア性;およびその他の網膜症、X連鎖性、が非限定的に含まれる。
標的疾患を疾患カテゴリー別に以下の表1に提示している。
Figure 2010511692
Figure 2010511692
1つの好ましい態様において、前記網膜疾患は、常染色体優性、常染色体劣性またはX連鎖性の網膜色素変性症からなる群より選択される。
また、本発明の方法によって予防または治療しうる他の眼疾患の中でも、網膜血管新生疾患を特に挙げることができる。
治療または予防しうる網膜血管新生は、糖尿病性網膜症、静脈閉塞、鎌状赤血球網膜症、未熟児網膜症、網膜剥離、眼虚血または外傷によって引き起こされうる。治療または抑制されるべき硝子体内血管新生は、糖尿病性網膜症、静脈閉塞、鎌状赤血球網膜症、未熟児網膜症、網膜剥離、眼虚血または外傷によって引き起こされうる。治療または抑制されるべき脈絡膜血管新生は、加齢性黄斑変性症の網膜もしくは網膜下障害、推定眼ヒストプラスマ症候群、近視性変性、網膜色素線条または眼外傷によって引き起こされうる。
1つの好ましい態様において、投与される核酸は、RP1遺伝子の突然変異を復帰または導入させることができる。
本発明はまた、投与される核酸が、転写因子HIF1αをコードする遺伝子の突然変異を復帰または誘導させることのできる、本発明による方法も含む。
もう1つの局面において、本発明は、その動物の標的細胞の標的遺伝子における突然変異を復帰または誘導させることのできる、核酸、好ましくは以上に定義したようなオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)またはキメラオリゴヌクレオチドの投与を含む、動物モデルを入手するための方法に向けられ、ここでインビボで前記核酸を前記標的細胞内に送達するために用いられる方法は、本発明に従ってインビボで核酸を送達するための方法である。
もう1つの局面において、本発明は、薬学的または美容用化合物のスクリーニングのための方法であって、試験しようとする前記薬学的または美容用化合物を本発明の方法によって入手した動物モデルに投与する段階を含み、動物モデルが核酸、好ましくは以上に定義したような標的遺伝子における突然変異を復帰または誘導させることのできるオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)またはキメラオリゴヌクレオチドの投与によって修飾されている方法に向けられ、ここでインビボで前記核酸を前記標的細胞内に送達するために用いられる方法は、本発明に従ってインビボで核酸を送達するための方法である。
本発明の理解を助けるために、一連の実験の結果を記載している以下の実施例が含められる。本発明に関するこれらの実施例は例証的であり、当然ながら、本発明を特定的に限定するものとみなされるべきではない。さらに、当業者の範囲内にあると考えられる、現在知られているか後に開発される、本発明のそのような変形物は、以下に特許請求の範囲として記される本発明の範囲の内部にあると判断されるべきである。
ミュラー細胞
ミュラー細胞の統合体の一要素としての性質(integral nature)および電気生理学は、Bringmann and Reichenbachによる総説(Frontiers in Bioscience, 6:77-92, 2001)に記載されている。彼らは、正常な網膜機能を維持するためにこれらの細胞が果たしている構造的ならびに機能的な役割を記載している。特に彼らは、カリウムの流出およびナトリウムの流入(適切なイオンチャンネルによる)によって作り出される負の膜電位の能動的維持を記載している。固有の膜電位があるため、適用された電流はこれらの細胞に影響を及ぼし、おそらくこれらのイオンチャンネルの活性化を引き起こすと予想される。Choら(FASEB, 13:678-683, 1999;FASEB, 8:771-776, 1994;およびそれらの内部に含まれる参考文献)は、AC電流を適用して形態変化を誘導させる一連の実験を記載しており、彼らはそれが電場により誘発されるカルシウム流入に起因するものと提唱している。彼らはまた、細胞膜内部の構造変化を引き起こした、dc電場により誘発されるミクロフィラメント再配列も報告している。その論文の中のいくつかの参考文献は、電場に曝露されると形態変化を生じる細胞種を数多く記載しているように思われる。
ミュラー細胞は網膜の奥行き方向の全体に及び、硝子体と直接的に接触している。その結果として、チャンネルが人為的に開口されるおよび/または損なわれると、硝子体内にあるオリゴヌクレオチドなどの分子がミュラー細胞内に受動的に入り込み、その統合体の一要素としての性質により、残りの網膜層内への拡散が可能になると考えられる。
ミュラー細胞の統合体の一要素としての性質は、治療薬、すなわちオリゴヌクレオチドの硝子体から網膜細胞のさまざまな層への移動におけるそれら(ミュラー細胞)の関与を必要にすると考えられる。
前記のことから、特に眼遺伝子治療のために、網膜細胞内への治療用核酸の移動を促すようなミュラー細胞の超微細構造変化のための簡単で効率的な方法を提供することが当技術分野における進歩と考えられることは理解されるであろう。にもかかわらず、ミュラー細胞の構造を一時的に変化させ、光受容器は変化させない、そのような新たな方法の開発に対しては需要が存在する。
本発明者らは、イオントフォレシスがミュラー細胞の一時的伸長のための簡単で効率的な方法であること、およびこの一過性伸長が光受容器を変化させることなく核酸の網膜内浸透を促進することを実証した。実際に、イオントフォレシス電流適用から1時間後に分析した眼は、光受容器核の正常な完全性を伴いながら、ミュラー細胞延長部の拡大を示した。ミュラー細胞延長部の拡大は、処置した眼をイオントフォレシスから24時間後に検査した時には検出されなかった。したがって、電流誘起性の観察されたミュラー細胞の変化は一時的であり、永続的な微細構造変化はイオントフォレシスによって誘発されなかった。特に、光受容器の変化を検出することはできなかった。
実施例
ここで本発明を、例としての具体的な態様に関してさらに詳細に説明するが、これらは例証に過ぎないことを意図しており、本発明はそこに記載された材料、量、手順および過程のパラメーターなどに限定されないことが理解されるべきである。そこに記載された部およびパーセンテージはすべて、別の指定がない限りは重量による。
実施例1
インビボで網膜細胞にキメラオリゴヌクレオチドをイオントフォレシス移入することによるrdマウスの網膜変性の治療
I RDマウスにおける網膜変性の分子的基盤
rd突然変異に関してホモ接合性であるマウスは、遺伝性網膜変性を呈し、ヒト網膜色素変性症のモデルとして役立つ。罹患動物では、網膜杆体の光受容器細胞は生後約8日で変性し始め、4週までに錐体は全く残らなくなる。変性に先立って網膜内のサイクリックGMPの蓄積が起こり、これは杆体cGMP-ホスホジエステラーゼの活性欠損と相関する。この酵素欠損は、rd β-PDE遺伝子におけるナンセンスC→A突然変異に起因する。このナンセンス突然変異はエクソン7内部にオーカー終止コドン(347位)を生み出し、その結果生じるcGMP-ホスホジエステラーゼβ-サブユニットの短縮を招く。rd/rdマウスにおける機能的cGMP-ホスホジエステラーゼタンパク質の欠如が網膜変性の原因となる。
rd β-PDE遺伝子の終止突然変異の復帰は、光受容器における機能的タンパク質を招き、疾患が治癒すると仮定することができる。点突然変異に起因する遺伝性疾患の他のモデルで効率的なことが証明されている、キメラオリゴヌクレオチドを用いる戦略をこの取り組みのために選択した。このため、rdマウスの網膜変性の原因であるナンセンス突然変異を是正するためにキメラ形成法を用いた。
キメラオリゴヌクレオチドを、局所注射およびイオントフォレシスの両方の組み合わせを用いて、標的とした組織中に送達した。
II 材料および方法
材料
1)キメラオリゴヌクレオチド
DNA/2'OMeRNAキメラオリゴヌクレオチドの合成および高圧液体クロマトグラフィーによる精製は、GensetOligos(France)によって行われた。オリゴヌクレオチドを蒸留水中に再懸濁させ、260nmの紫外吸光度によって定量した。キメラオリゴヌクレオチドの配列は以下の通りである。
以下の配列を有する、特異的なキメラオリゴヌクレオチド(Chiと命名)(2'OMe RNAヌクレオチドには下線を施している):
Figure 2010511692
対照キメラオリゴヌクレオチド(Ctrと命名)(2'OMe RNAヌクレオチドには下線を施している):
Figure 2010511692
2)動物
ナンセンス突然変異(347位)を有するC3H/HeNマウスを購入した(Iffa Credo)。rd/rd突然変異の有無を検証するための遺伝子型判定は、尾部生検で得たDNAのPCRおよびその後の制限断片分析によって行った。動物には食餌および水を自由に摂取させ、明12時間/暗12時間の病原菌不在条件下で飼育した。
3)クーロン制御イオントフォレシス(CCI)システム
イオントフォレシスは、OPTIS France(2000年11月18日に発行された米国特許第6,154,671号に開示)により設計された薬物送達デバイスを用いて行った。容器は経角強膜イオントフォレシスを可能にするように設計した。白金電極を容器の底部に配置し、2本のシリコーンチューブを側方に設置した。1本のチューブは食塩水緩衝液を注入するために用い、もう1本は泡を吸引するために用いた。CCI電子装置は最大2,500μAを600秒間出力することができる。音声映像アラームが電気回路における中断をその都度指し示し、それにより産物の較正および制御された送達が保証された。イオントフォレシス処置を進行させるために、CCI眼カップを眼の上に配置し、もう1つの電極は動物に接触させた状態に保った。
方法
1)注射およびイオントフォレシス
実験は、眼科および視覚の研究における動物の使用に関するARVOステートメントに準拠して実施した。以下の処置を生後(P)7日に投与し、P9に繰り返した:マウスにはクロルプロマジンおよびケタミンの腹腔内注射による麻酔を施した。眼内注射は、顕微鏡観察下でガラス製マイクロキャピラリーを用いて硝子体内に行った。硝子体内注射の直後に、クーロン制御イオントフォレシスを行った。イオントフォレシスのパラメーターは300μA、300秒間とした。負荷電電極を眼の上面に配置した。リン酸緩衝食塩水(PBS)の溶液を薬物容器にポンプで連続的に供給した。
2)ビオチン化キメラオリゴヌクレオチドを用いたオリゴヌクレオチドトランスフェクション分析
ビオチン化キメラオリゴヌクレオチドを注射し、その後に上記の通りにイオントフォレシスを行った。処置から1時間後に眼を摘出し、直ちにOCT(Tissue Tek, USA)中で凍結させ、切片化した(10μm)。それらを-20℃のメタノール中で10分間かけて固定した。続いて切片を1% Triton X-100 PBS中で洗浄し、1/100ストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼPBS溶液中にて室温で2時間インキュベートした。切片を洗浄し、H2O2の存在下で3.3'ジアミノベンジジン四塩酸を用いて複合体を描出した。最後に、切片をヘマルンを用いて対比染色した。
3)RT-PCR産物の制限断片分析によるrd-突然変異の検査
最終処置(P27)から18日後のrd/rdマウスの単一の網膜から、酸グアニジニウム-チオシアン酸-フェノール-クロロホルム法を用いて全RNAを抽出した。網膜の全RNA(1μg)を、200Uのモロニー白血病ウイルス(MLV)逆転写酵素を用いて20μl容積中でcDNAを合成するためのテンプレートとして用いた(21℃で10分間、42℃で1時間、55℃で5分間、42℃で10分間)。オリゴヌクレオチドプライマーには、β-cGMP-ホスホジエステラーゼcDNAのヌクレオチド位置921〜943および1258〜1279にそれぞれ位置する、配列
Figure 2010511692
を含めた。RT産物を、3UのTaqポリメラーゼおよび上記のプライマーを用いる100μl容積中でのPCRによって増幅した。94℃の初期変性を5分間、94℃の変性温度を1分間、55℃のアニーリング温度を1分間、72℃の伸長温度を1分間、および72℃での最終伸長を10分間用いて、30回のPCRサイクルをサーマルサイクラー中で行った。PCR緩衝液にはα-32P dCTPを含めた。各PCR反応の後に、産物を、2.5単位のBsaAIおよび/または5単位のDdeIにより、用意された緩衝液中にて37℃で一晩かけて消化し、続いてエタノール沈降させ、洗浄して、10μlのゲルローディング緩衝液中に再懸濁させた。産物を、8%非変性ポリアクリルアミドゲルにより500ボルトで3時間かけて泳動させた。ゲルをフィルムに3日間露出させた。+/+網膜および非処置rd/rd網膜に由来するRNAを対照として利用した。
4)フラットマウント網膜の免疫組織化学
対照および対照処置動物における杆体-光受容器の生存率を分析するために、ホールマウント網膜に対してオプシン-免疫組織化学検査を行った。抗体Rho4D2は、杆体光受容器の光色素であるオプシンを特異的に認識する。眼を摘出し、PBS/パラホルムアルデヒド4%中で30分間かけて固定した。網膜を切離し、-20℃のメタノール中で10分間かけて固定し、1% Triton X-100 PBS中で3回洗浄して、1/100 Rho4D2、1% Triton X-100 PBS溶液中にて一晩インキュベートした。続いて網膜を洗浄し、1/250抗マウスAlexa 40抗体とともに室温で2時間インキュベートし、洗浄して、グリセロール/PBS中にてフラットマウントを行った。それらを蛍光顕微鏡検査によって観察して写真を撮影した(図3B参照)。写真はすべて、同じフィルム(Illford 400ASA)、露出時間(1時間30分)を用いて記録し、厳密に同じ様式で現像した。フラットマウント網膜の写真をスキャニングした。コンピュータ画像解析システム(NIH)を用いて杆体光受容器の数を測定した。
5)統計分析
結果は平均±平均値の標準誤差(SEM)として表示した(図3A参照)。統計分析はノンパラメトリックMan Whitney U検定を用いて行った。
III 結果および考察
キメラプラストの設計
キメラ形成法の規則を用いて、マウスrd β-PDE遺伝子のコドン347に位置するC→A点突然変異を復帰させる可能性のあるDNA/RNA2'OMeオリゴヌクレオチド(Chiと命名)を設計した。対照オリゴヌクレオチド(Ctrと命名)は、活性キメラオリゴヌクレオチドと同じ塩基組成を有するが、配列は異なる。
キメラオリゴヌクレオチドによる光受容器トランスフェクション
ビオチン化オリゴヌクレオチドを用いた実験により、イオントフォレシスが硝子体内注射のみと比較して、網膜細胞におけるオリゴヌクレオチド取り込みを強化することが明らかに実証されている。注目に値することとして、光受容器における取り込みを図1A〜1Cに明らかに認めることができる。
rd β-PDE mRNA内部の点突然変異の是正
摘出した網膜に対して、rd β-PDE mRNA特異的プライマーを用いてRT-PCRを行った。コドン347におけるrdナンセンス点突然変異は、DdeI制限部位を生み出し、野生型配列からBsaAI部位を除去する。359bpのβ-PDE cDNAをBsaAIまたはDdeIで消化すると、120bpおよび239bpの2つの診断的断片が生じる。この方法は、突然変異配列(DdeI感受性)と野生型のもの(BsaAI感受性)とのmRNAレベルでの識別を可能にする。
硝子体内注射およびイオントフォレシスを生後7日および生後9日のマウスに対して行った。生後27日でのrd β-PDE mRNAの是正に対するキメラオリゴヌクレオチドの影響を確かめるために、RT-PCR実験およびその後の制限消化を種々の条件で行った。
図2中のゲルは以下のことを示している:
・rd/rd β-PDE cDNAはDdeIのみによって完全に切断され、それは突然変異配列のみを認識した(レーン4〜6);
・+/+β-PDE cDNAはBsaAIのみによって完全に切断され、それは野生型配列のみを認識した(レーン1〜3)。しかしながら、BsaAI消化産物のわずかな存在により、BsaAIの特異性は幾分欠如していることが指し示された;
・キメラプラスト処置マウス由来のβ-PDE cDNAは、BsaAIによって切断され、部分的にDdeIによって切断されたが、それは硝子体内注射に続いてイオントフォレシスを行った場合のみであった(レーン13〜15)。このことは、キメラオリゴヌクレオチドChiがrd点突然変異を野生型ヌクレオチド中に復帰させることができたことを実証している。さらに、これにより、キメラプラストを介した遺伝子是正を可能にしたのは、両方の手法(硝子体内注射およびイオントフォレシス)の組み合わせのみであることが示された。
・対照キメラプラスト処置マウス由来のβ-PDE cDNAはDdeIによって切断され、BsaAIによって幾分切断された(レーン16〜18)。このBsaAIの反応性は、rd/rd β-PDE cDNA消化(レーン5)の後にすでに観察されている特異性の欠如によって説明しうると考えられる;ならびに
・水処置マウス由来のβ-PDE cDNAはDdeIのみによって切断され、このことは遺伝子是正がキメラオリゴヌクレオチドの存在下のみで起こることを示している(レーン7〜9)。
光受容器のレスキュー
P27のキメラプラスト処置動物および対照のフラットマウント網膜上の杆体-光受容器の量を計数した。非処置動物および対照処置動物、ならびに硝子体内水注射に続いてイオントフォレシスの処置を受けた動物において、疾患のそのステージでの生存はごくわずかであった。杆体-光受容器生存の極めて有意な増加は、キメラプラスト/イオントフォレシス処置動物のみで観察可能であった。
イオントフォレシスは、低強度の電流を用いる、薬物を送達するための非侵襲的な過程であることが知られている。これは、イオン性薬物を組織中に運び入れるために、薬物上の電荷と同じ極性の電極を用いる。本発明者らは、イオントフォレシスを用いて、細胞組織中への、特に眼内注射または眼球周囲注射の後の眼細胞内への、DNA/2'OMeRNA型のキメラオリゴヌクレオチドなどの核酸浸透を強化しうること、および眼内注射の後または前または同時での網膜移入または浸透を強化しうることを実証した。
実施例2 新生rd1/rd1マウスにおける光受容器へのODNの送達に対する、オリゴヌクレオチド(ODN)、硝子体内注射および食塩水経眼瞼イオントフォレシスの組み合わせ
序論
直接イオントフォレシスは、実験モデルおよび患者の両方で、局所的に適用された薬物の眼内レベルを高める。さまざまな形状および材料の容器内にある、眼表面への薬物適用を伴って、角膜、強膜またはその両方に対して電流を適用するための種々のタイプのデバイスが設計されている。このタイプのイオントフォレシス手順は、「直接的眼イオントフォレシス」として認定することができる。直接的眼イオントフォレシスは、オリゴヌクレオチド(ODN)の組織内および細胞内浸透を強化するためにも用いられている。イオントフォレシスによる薬物浸透促進の機序には、電気反発、電気浸透および電流誘起性の組織透過が含まれる。薬物のイオントフォレシス後輸送が皮膚で記載されており、これは電流適用から限られた期間にわたって持続しうる組織変化に起因する。新生rd1/rd1マウスの眼の光受容器細胞へのODNの浸透について検討するために、食塩水経眼瞼イオントフォレシスを用いた眼表面での電流適用をODNの硝子体内注射と関連づけるもう1つの手順を評価した。イオントフォレシスのさまざまな条件(陽極か陰極か、電流強度、および注射と電流適用との間の時間)を評価した。
材料および方法
動物
β-PDE遺伝子におけるナンセンス突然変異(アミノ酸位置347)に関してホモ接合性であるC3H/HeNマウス(Janvier, Le Genest, France)を用いた(マウス36匹、眼球72個)。マウスを透明なプラスチックケージの中で飼育し、標準的な12時間毎の明:暗サイクルを与えた。実験は、眼科および視覚の研究における動物の使用に関するARVOステートメント、ならびに眼科および視覚の研究における動物実験に関する施設内ガイドラインに従って実施した。
オリゴヌクレオチド(ODN)
ODNの合成および高圧液体クロマトグラフィーによる精製は、Proligo(Paris, France)によって行われた。センス野生型β-PDE遺伝子配列をコードし
Figure 2010511692
、Hexで5'標識された、25merのホスホロチオエートODNを、ODN分布の組織学的評価のために用いた。
イオントフォレシスおよび硝子体内注射
PN7 rd1/rd1マウスの眼瞼を、局所テトラカイン1%の滴下麻酔(Novartis Ophthalmics SA, Rueil Malmaison, France)下で、小刀(Swann Morton, Peynier, France)を用いて開かせた。
経眼瞼イオントフォレシスシステム(特許第FR2830766号)を用いた。眼鏡形のアルミニウム箔および使い捨て医療グレードの親水性ポリウレタンスポンジ(3.2mm厚、長さ×幅1.5×0.7cm、Optis, Levallois, France)をPBS(リン酸緩衝食塩水:0.2g/L KCl、0.2g/L KH2PO4、8g/L NaCl、2.16g/L Na2HPO4 7H2O、pH7.4)中に浸漬させ、アクティブ電極として用いた(図1C)。処置した新生マウスの閉じた両方の眼瞼を電極で覆った。戻り電極はマウスの頸部に接続した。電気回路の中断を指し示す音声映像アラームにより、電流の制御送達が保証された。
眼内注射には、ES TransferTipsマイクロキャピラリー(Leica, Rueil Malmaison, France)および端から2mmの箇所の切れ目から得た60μmの注射孔を用いた。マイクロキャピラリーは、Micro4TMマイクロシリンジポンプ制御装置(World Precision instruments, Sarasota, USA)と連結させた。1μLのODN(500μM)を200nL/秒の定圧で硝子体内に注射した。針の位置は、角膜表面に載せたガラス製カバースリップを通しての解剖顕微鏡での観察によってモニターした。注射した溶液の損失を抑え、眼内圧を平衡化させるために(正常な虹彩灌流の回復によって観察される)、マイクロピペットの針を注射後10秒間はそのままに置き、その後に抜去した。
処置プロトコール
ODNの分布を、手順の終了から1時間後に評価した。陽極または陰極経眼瞼食塩水イオントフォレシス(それぞれ正または負の電極を眼瞼に接続)を1.5mAの電流を5分間(1.43mA/cm2)用いて行い、その後にODNの硝子体内注射を行った(各実験につき眼4個)。続いて、ODNの硝子体内注射の直後に適用した場合の陰極イオントフォレシスについて試験した(眼4個)。この最初の組の実験によって得られた結果から、硝子体内注射の前に行った陰極イオントフォレシスがONLへの最も高度なODN浸透をもたらしたことが示された。このため、この条件を、より弱い電流強度(0.5mAを5分間)またはより強い電流強度(2.5mAを5分間)、ならびにイオントフォレシス後のさまざまな時点(急性、1、3および6時間)でODNを注射することによって電流誘起性透過の持続時間の影響を評価するために用いた(各実験につき眼4個)。最適な条件を定めた上で、蛍光性ODN分布の動態を、処置から1、6および24時間後に評価した(各条件につき眼4個)。対照動物には、事前の陰極イオントフォレシスを伴う、または伴わずに、1μLのHex(500mM)(Invitrogen, Cergy Pontoise, France)またはPBSの硝子体内注射を行った(各条件につき眼4個)。別の4個の眼には、注射したODNの完全性をアクリルアミドゲル電気泳動によって評価するために、1時間の時点で処置して屠殺した。
マウスは、致死量のペントバルビタール(6g/100ml;Ceva Sante Animale, Libourne, France)の腹腔内投与によって屠殺した。眼を摘出し、以下に述べるさまざまな試験のために加工処理した。
蛍光性ODN分布の評価および定量
処置後のさまざまな時点で眼を摘出し、PBSですすぎ洗いした上で、凍結切片作製のためにTissue-Tek OCTコンパウンド(凍結手法のために最適な化合物、Bayer Diagnostics, Puteaux, France)中に包埋した。切片(10μm)を4%パラホルムアルデヒド(Merck Eurolab, Strasbourg, France)中にて室温で5分間かけて固定し、PBS中で洗浄し、DAPI(4',6-ジアミノ-2-フェニルインドール)(1/3000)(Sigma-Aldrich, Saint-Quentin Fallavier, France)による対比染色を2分間行って、PBS中で洗浄し、Gel Mount(Microm Microtech, Francheville, France)中にマウントした。標識ODNの位置決定のために、切片を蛍光顕微鏡(Aristoplan, Leica)で検査し、画像をデジタルSPOTカメラ(Optilas, Evry, France)により3秒間(倍率2.5倍の場合)または0.8秒間(倍率25倍の場合)という一定の露出時間で取り込んだ。
蛍光定量のためには、各々の眼につき、眼の全体にわたる5枚の矢状切片の写真を撮影した(1枚の切片につき3画像、各々の眼についてn=15の値)。画像はすべて25倍対物レンズにより、0.8秒間という同程度の露出時間を用いて記録した。外顆粒層(ONL)蛍光の強度は、Photoshopの明度特性を用いることによって定量した。組織および背景の領域は手作業で選択した。各領域について「ヒストグラム」画像特性を用いることによって平均ピクセル輝度を決定した。画像間の背景レベルの違いを調整するために、組織領域のピクセル当たりの平均輝度レベルを、各切片画像からの背景領域によって除算した。
ODNの完全性
事前の陰極食塩水イオントフォレシス(1.5mAを5分間)を伴うHex標識ODNの硝子体内注射から1時間後に神経網膜を切離した(n=4)。2つの網膜のプールを、0.5mg/mlのプロテイナーゼKを含む500μLの消化用緩衝液(50mM Tris pH 8、10mM EDTA pH 8、0.5%SDS)に入れて、56℃で90分間インキュベートした。インキュベーションの後に、DNA試料をフェノール(1/1;v/v)で1回、クロロホルム/イソアミルアルコール(1/1;v/v;24/1;v/v)で1回抽出した。続いて試料をイソブタノール(1/2;v/v)で1回、ジエチルエーテル(1/1;v/v)で1回抽出し、エタノール/酢酸アンモニウム(1/2/1/3、v/v/v)で沈降させ、乾燥させ、20μlのTE緩衝液(10mM Tris、pH 8、1mM EDTA、pH 8)中に再懸濁させて、DNアーゼ1で処理した。各試料の10μlを2.5μlのホルムアミド(90%ホルムアミド、0.05%ブロモフェノールブルー)で変性させ、続いて12%変性ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動を行い、蛍光性Hex ODNを描出して写真撮影した(Typhoon, Amersham)。
網膜の構造分析
眼球全体の構造分析のために、硝子体内注射の前に陰極1.5mAイオントフォレシスで5分間処置した眼を調べた。マウスを硝子体内注射から1、6および24時間後に屠殺して、眼球を摘出し、固定した上で調べた(各条件につき眼4個)。視神経レベルでの凍結切片をヘマトキシリンおよびエオシンで対比染色し、Aristoplan光学顕微鏡(Leica, Rueil Malmaison, France)を用いて検査して、デジタルSPOTカメラ(Optilas)を用いて写真撮影した。処置手順に伴う組織変化について評価するために、透過型電子顕微鏡検査(TEM)を行った。この目的で、眼4個にイオントフォレシスおよびそれに続いてODN注射を行い、眼4個にはイオントフォレシスを伴わずにODN注射を行い、他の眼4個にはイオントフォレシスのみを行った。処置から1時間後および24時間後の時点で(各時点につき眼2個)、マウスを屠殺し、眼を摘出して、2.5%グルタルアルデヒドを含むカコジル酸緩衝液(Na 0.1M、pH7.4)中で固定した。1時間後に、眼球を輪部で切離し、眼球後部を3時間にわたり後固定して、4つの部分に分けた。組織をカコジル酸緩衝液(Na 0.1M、pH7.4)中の1%四酸化オスミウム中で後固定し、段階的エタノール溶液(50、70、95、100%)により脱水した。続いて組織をエポキシ樹脂中に含ませて順応させた。ウルトラミクロトームReichert Ultracut E(Leica)を用いて得た準薄切片(1μm)をトルイジンブルーで染色した。超薄切片(80nm)に酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛によりコントラストを与えて、電子顕微鏡JEOL 100CX(JEOL, Tokyo, Japan)を80kVで用いて観察した。
統計
結果は平均±SDとして表示し、分散分析(ANOVA)検定を事後Fisher検定とともに用いて比較した。P<0.05を有意とみなした。
結果
rd1/rd1マウスの網膜細胞への強化されたODN送達
電流の適用を伴わない、rd1/rd1 PN7マウスにおけるHex標識WTS ODNの硝子体内注射から1時間後に、神経節細胞層(GCL)の核内および内顆粒層(INL)の最表側の核内で蛍光が観察された(図4A、4aおよび4a中の挿入図)。外顆粒層(ONL)では蛍光が全く検出されなかった(図4Aおよび4a)。蛍光団(Hex)のみの硝子体内注射から1時間後に、硝子体内および内顆粒層の細胞内でびまん性蛍光が観察されたが、細胞核内に特異的な蓄積はみられなかった(図4B、挿入図)。
食塩水イオントフォレシス(図4C、4Dおよび4E)を適用し、その直後に標識ODNの注射を行った場合には、すべての網膜層で強い蛍光が観察された(図4Fおよび4f)。これらの場合には網膜細胞核への特異的局在が認められた(挿入図、図4f)。食塩水イオントフォレシスを適用し、その直後に蛍光団(Hex)のみの注射(ODNを伴わない)を行った場合には、びまん性蛍光がすべての網膜層で観察された(図4G)。しかし、この蛍光は細胞核内に特異的には蓄積しなかった(図4G中の挿入図)。PBSで処置した眼(図4Hおよび4h)および注射を行わなかった対照眼(食塩水イオントフォレシスの有無にかかわらず)の網膜層ではいずれも蛍光が全く観察されなかった(非提示データ)(各条件につき眼4個)。
ODNの完全性は、イオントフォレシスに続いて注射を行って1時間後に、処置した眼の網膜から抽出したDNAのアクリルアミドゲル電気泳動によって確かめられた(非提示データ)。
ODN浸透に対するイオントフォレシスのパラメーターの影響
感染リスク、および眼瞼上のプローブの機械的圧力による眼球からのODNの逆流を抑える目的で、イオントフォレシスをODN注射の前に行った。ODNの硝子体内注射の前の陰極または陽極イオントフォレシス(1.5mAを5分間)により、電流の適用がイオントフォレシスを伴わない注射(P<0.05)または非処置(P<0.05)と比較してODN浸透を強化したことが示された(図5:*および**)。さらに、事前の陰極食塩水イオントフォレシスは、陽極食塩水イオントフォレシスと比較して、ONL細胞におけるODN浸透を有意に強化した(P<0.05:**)。陰極食塩水イオントフォレシスを硝子体内ODN注射の直前に行ったところ、ODN注射の直後の陰極イオントフォレシスの適用と比較して、ONLにおけるODN浸透は有意に強化された(P<0.05:**)。すべての試験条件で、ODN注射の直前に行った陰極イオントフォレシスは、処置したマウス眼のONLにおける最も高度なODN浸透を生じさせた。このため、後の条件をそのほかのパラメーターを評価するために用いた。
電流強度の影響
0.5mAを用いたイオントフォレシスは、1.5mAと比較してONLにおけるODN浸透を有意に低下させ(P<0.05:*)、このことはONLにおけるODN浸透が適用された電流の量に依存することを示している(図6)。電流強度を2.5mA(5分間)に高めると、皮膚電気熱傷および疼痛が誘発された(非提示データ)。このため、この条件はそれ以上は検討しなかった。
ODN浸透のイオントフォレシス後の促進の持続時間
ODN浸透のイオントフォレシス後の強化は、イオントフォレシスと注射との間隔が長くなるほど低下した。ONLにおけるODN浸透の促進は、間隔が最も短い場合に最も高度であり、少なくとも3時間の間はみられ、ODN注射を食塩水イオントフォレシスの6時間後に行った場合は消失した(図7)。これらの結果は、網膜内浸透のイオントフォレシス性促進が一時的であることを実証している。
網膜におけるODN分布の動態
最適な処置パラメーター(硝子体内注射の前に陰極イオントフォレシス1.5mAを5分間)を用いたところ、ODN注射の1時間後に最も強いONL蛍光が観察され、その後の時点では急速に減少した(図8)。実際に、処置からすでに4時間後および6時間後に、網膜外層における蛍光の減少が減少していることが認められた(図8Bおよび8C)。8時間の時点ではODN蛍光は神経節細胞層のみに残り(図8D)、24時間の時点では神経網膜(neurotina)で蛍光は観察されなかった(図8E)。この動態は、Hex標識ODNが細胞内浸透後に急速に分解される可能性を示唆している。
光学顕微鏡および電子顕微鏡による観察
眼の肉眼的組織構造はイオントフォレシス適用による影響を受けなかった。処置から1時間後(図9Aおよび9a)、6時間後(図9Bおよび9b)および24時間後(図9Cおよび9c)のいずれの時点でも、病変も細胞障害も検出されなかった。
準薄切片の分析により、食塩水イオントフォレシスの適用1時間後にINLおよびONL内部の核間空間が増加していることが判明した。INLの外側列から外境界膜までの線状の拡大をたどることができる。この局在はミュラーグリア細胞(RMG)延長部を示唆する。INLおよびONLにおける核が正常構造を有し、アポトーシスおよび壊死の徴候を示していないことに注目されたい(図10Cおよび10c)。そのような変化は、非処置対照網膜でも電流適用を伴わない眼でも観察されなかった(図10A、10Bおよび10b)。イオントフォレシス適用の24時間後には、核間空間はもはや観察されず、ONLは正常な構築を再び獲得した(図10E)。
TEM分析により、電流の適用を伴わずに注射を受けた眼または非処置対照眼では網膜が正常構造を保ち、検出可能な変化を伴わないことが示された(図11Aおよび11B)。イオントフォレシス電流適用から1時間後に分析した眼は、RMG延長部の拡大(図11C、矢印)を示し、光受容器核の正常な完全性を伴った。処置した眼をイオントフォレシスの24時間後に検査した時には、RMG延長部の拡大はもはや検出されなかった(図11E)。したがって、電流誘起性の観察されたRMG変化は一時的であり、永続的な微細構造変化はイオントフォレシスによって誘発されなかった。特に、光受容器の変化を検出することはできなかった。
考察
これらの結果は、経眼瞼食塩水イオントフォレシスの適用が光受容器内へのODN浸透を強化することを示している。浸透の促進および強化は電流の強度と関連があり、この検討からは5分間にわたり適用した1.5mA(1.43mA/cm2)の電流が新生マウス眼に対して効率的かつ安全であることが明らかになった。これらのイオントフォレシスパラメーターを新生(PN7)マウスに用いたところ、処置した眼の構造障害は観察されず、網膜の正常な構築が保持された。直接的眼イオントフォレシスの場合は、アクティブ電極が薬物溶液と接触した状態にあり、電気反発が眼組織への薬物の浸透を促進すると考えられる。しかし、非荷電分子の促進拡散も起こりうるため、電気反発は電流の影響の一部の原因であるに過ぎない。電気浸透は、流れ(容積/距離/時間)の過程を通じて作用する薬物浸透のもう1つの機序である。電気浸透により誘発される薬物浸透は、より大型の分子にとって特に重要である。電流適用後の限られた期間にわたっての「受動的」透過性の増大は皮膚でも観察された。これらの実験では、イオントフォレシス後の皮膚インピーダンスの緩徐な回復は電場に反応したイオンの移動に起因すること、およびその結果生じたイオントフォレシス後の強化された拡散は皮膚障壁への障害を伴わないことが示されている。フェニレフリンの局所滴注前の食塩水イオントフォレシスの適用は、この薬物の観察される血管収縮効果を増大させた。イオントフォレシス薬物浸透および促進のさまざまな機序を解明している研究のほとんどは、皮膚に対して実施されている。本研究によって得られた結果は、食塩水イオントフォレシスがODNなどの荷電分子に対する眼内組織の透過性にも影響を及ぼすことを示している。硝子体内注射の前のイオントフォレシスは、電流が注射後に適用されるならば、より効率的である。1つの仮説は、イオントフォレシスが硝子体内注射後に適用された場合には、機械的圧力に起因する注射されたODNの外眼性拡散がこの観察された現象の原因になりうるというものである。
本研究に用いたODNは負に荷電しており、分子量は7591g/molであった。これらの特徴は、それらが内境界膜を通して浸透することを可能にする。しかし、網膜内層から光受容器細胞への輸送の原因となる正確な機序は依然としてほとんど解明されていない。そのような輸送はおそらく高度に調節されており、受動拡散としては流れない。ODNの単純な直接的硝子体注射は光受容器内へのそれらの浸透をもたらさない。これに対して、食塩水イオントフォレシスをODNの硝子体内注射とともに行った場合には、光受容器の細胞核内への浸透が観察される。準薄組織検査を用いて網膜で観察された唯一の変化は、食塩水イオントフォレシスの1時間後にINLの外側列から外境界膜まで観察された、拡大した線状空間であった。これらの空間の局在は、変化がRMG延長部で起こったことを示すと考えられる。興味深いことに、この現象は電流の適用から24時間後には観察されなかったため、可逆的であった。1つの仮説は、RMG細胞が光受容器におけるODN浸透の増大に関与しているというものである。直接的な一定電流のイオントフォレシスを適用した場合には、角膜上皮で輸送空胞の増大が観察された。この影響は一時的であり、2〜3時間しか続かなかった。本研究では、正常な網膜微細構造(RMG伸長部の永続的な拡大を伴わない)が電流適用の24時間後に観察された。
結論として、ODNの硝子体内注射の前の食塩水イオントフォレシスは、これらの荷電分子の移動を促進し、網膜光受容器内へのそれらの浸透を強化することが実証された。このため、荷電分子のイオントフォレシス後の強化が網膜で実証された。事前の食塩水イオントフォレシスがより大きなサイズのODN分子またはプラスミドの網膜内浸透も促進しうるか否かは、今後検討すべき課題である。
実施例3 rd1/rd1網膜における一本鎖オリゴヌクレオチドを介したインビボ遺伝子修復
本研究の目的は、オリゴヌクレオチドのイオントフォレシス送達の後に、イオントフォレシスが光受容器の核内へのオリゴヌクレオチドの浸透を強化し、インビボでの点突然変異の標的遺伝子修復を誘導することを検証することであった。
rd/rd1マウスは急速な網膜変性のモデルである。これは一部には、杆体受容器cGMP-ホスホジエステラーゼのβ-サブユニット(β-PDE)をコードする遺伝子における点突然変異に起因し、それは終止コドン(Tyr347Ter)およびその結果として短縮型タンパク質をもたらす。rd/rd1マウスにおいて、杆体光受容器の喪失は生後(PN)21日までに完了する。この同じ遺伝子における突然変異が、網膜色素変性症の患者における網膜変性の原因となる。
標的遺伝子修復は非ウイルス的な遺伝子治療戦略であり、RNA/DNAオリゴヌクレオチド(RDO)または一本鎖DNAオリゴヌクレオチド(ssODN)を用いることによってゲノムDNA中の突然変異を是正することを目的とする。この遺伝子治療戦略は、ゲノムDNAの永続的な是正、および是正された遺伝子のその内因性プロモーターによる正常な生理的調節を可能にすべきである。標的遺伝子修復は、インビトロ、ならびに血友病、クリグラー‐ナジャー症候群1型、白皮症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、高脂血症2型および鎌状赤血球症といった種々の障害のいくつかの動物モデルの両方において、遺伝子型および表現型の是正を誘導する効果が得られている。インビボ試験の大半はRDOを用いている。最近、ホスホロチオエートssODNを用いたインビボでの修復の成功が記載された。ssODNはRDOと比較した場合に利点がある。それらの合成はより容易でより安価であり、それらはより安定である。さらに、誘導される修復の再現性がより高い。再現性はRDOを用いる遺伝子修復の主な限界の1つであり、ssODNによる強化された再現性は非常に大きな関心の的となる可能性がある。
ODNの硝子体内または網膜下注射を用いたインビボでのrd1/rd1マウスにおける遺伝子是正に向けた以前の取り組みは決定的なものではなかったが、これはおそらく光受容器の核への効率的なDNA送達が非効率的であったためである(Stodulkova E. et al. IOVS, 42:ARVO Abstract 1873, 2001)。眼の内部では、光受容器のトランスフェクションが網膜遺伝子治療における決定的な課題の1つであり、注射されたODNは光受容器細胞を効率的には標的としない可能性がある。β-PDE遺伝子における点突然変異を是正するために設計されたLNAおよびホスホロチオエートODNを用いた種々の非眼細胞系における遺伝子修復により、rd1突然変異を是正しうることが示されている。これらの結果をインビボでのrd1/rd1マウスに置き換えるために、網膜におけるODNの光受容器送達を強化するための電流の影響を本明細書において評価した。低電流密度のイオントフォレシスは実際に、薬物および遺伝子断片の眼内浸透を安全に促進する。イオントフォレシスが角膜細胞における無傷ODNの細胞内浸透を強化することは以前に観察されている。ODNの硝子体内注射の直前に行われたイオントフォレシスがマウス光受容器核内へのそれらの浸透を強化するか否かが評価されている。rd1/rd1マウス網膜にホスホロチオエートおよびLNA ODNを送達するためにこのイオントフォレシス手順を用いたインビボの結果から、光受容器の生存に対する有益な効果が示されている。β-PDE遺伝子における点突然変異を是正するために設計された特異的なホスホロチオエートODNの、イオントフォレシスを用いた最適化された送達は、rd1/rd1網膜の遺伝子型および表現型の変化を誘導することが本明細書において示されている。このモデルにおける突然変異型塩基の野生型への変換は、網膜細胞におけるβ-PDE免疫反応性の出現、ロドプシン免疫反応性の部分的保持、および光受容器細胞数の増加を伴う。遺伝子型および表現型のデータは、rd1/rd1神経網膜においてインビボで限定的な標的遺伝子修復が達成されたことを指し示している。
方法
動物
β-PDE遺伝子におけるナンセンス突然変異(アミノ酸位置347)に関してホモ接合性であるC3H/HeNマウス(Janvier, Le Genest, France)を用いた。野生型マウスC57B16/Sev129を陽性対照として利用した。マウスを透明なプラスチックケージの中で飼育し、標準的な12時間毎の明:暗サイクルを与えた。実験は、眼科および視覚の研究における動物の使用に関するARVOステートメント、ならびに眼科および視覚の研究における動物実験に関する施設内ガイドラインに従って実施した。
オリゴヌクレオチド
ODNの合成および高圧液体クロマトグラフィーによる精製は、Proligo(Paris, France)によって行われた。蒸留水の中のODNを260nmの紫外吸光度によって定量した。β-PDE遺伝子配列のセンス(S)およびアンチセンス(AS)野生型アレルをアッセイした
Figure 2010511692
(命名法:WTS/AS=野生型センス/アンチセンス、25=25mer、6x6PS=各々の5'位および3'位に6個のホスホロチオエート結合、*=ホスホロチオエート結合、scr7/25=7個の中央塩基のスクランブル化配列/全体で25merのODN)。ODN分布の組織学的評価のために用いた一本鎖ODN WTSは、CY3で5'標識した。
イオントフォレシスおよび注射
経眼瞼(閉じた眼瞼を通しての)イオントフォレシスシステム(特許第FR2830766号)を用いた。ODNの硝子体内注射の直後または前に経眼瞼イオントフォレシスを適用すると同じ浸透効率がもたらされることが見いだされた。このため、注射を受けた仔の眼の操作を避けるため、および二次感染の危険性を低下させるために、ODNの硝子体内注射の直前にイオントフォレシスを行った。イオントフォレシスの前に、テトラカイン1%の滴下(Novartis Ophthalmics SA, Rueil Malmaison, France)を行った。眼鏡形のアルミニウム箔および使い捨て医療グレードの親水性ポリウレタンスポンジ(3.2mm厚、長さ×幅1.5×0.7cm、Optis, Levallois, France)をPBS(リン酸緩衝食塩水:0.2g/L KCl、0.2g/L KH2PO4、8g/L NaCl、2.16g/L Na2HPO4 7H2O、pH7.4)中に浸漬させ、アクティブ電極として用いた(図12A)。処置した新生マウスの閉じた両方の眼瞼を電極で覆った。戻り電極はマウスの尾部および後肢底部に接続した。アニオン性イオントフォレシス(負電極を眼瞼に接続)を、1.5mAの電流を5分間(1.43mA/cm2)用いて行った(図12B)。音声映像アラームが電気回路の中断を指し示し、これにより電流の制御送達が保証された。
続いて仔の眼瞼を小刀(Swann Morton, Peynier, France)を用いて開かせ、ピペットプラー(モデル720、Kops lnstrument, Tujunga, CA, USA)を用いて引き出し作製したホウケイ酸マイクロピペット針(Phymep, Paris, France)および端から2mmの箇所の切れ目から得た60μmの注射孔を用いて眼内注射を行った。マイクロピペット針はEppendorf微量注入器5242(Roucaire, Velizy, France)と連結させた。1μLのPBSまたはODN(濃度は以下および図面の説明文に記載)を硝子体内に注射した。針の位置は、角膜表面に載せたガラス製カバースリップを通しての解剖顕微鏡での観察によってモニターした。注射した溶液の損失を抑え、眼内圧を平衡化させるために(正常な虹彩灌流の回復によって観察される)、マイクロピペットの針を注射後10秒間はそのままに置き、その後に抜去した。
組織採取のために、マウスを致死量のペントバルビタール(6g/l00mL;Ceva Sante Animale, Libourne, France)の腹腔内注射によって屠殺した。
ODNの位置決定
PN7のrd1/rd1マウスの眼8個に対して単回の経眼瞼イオントフォレシス(アニオン性、5分間、1.5mA)を行い、その後に1μLのCY3標識WTS ODN(272μMを1μL)の硝子体内注射を行った。対照群に関しては、PN7のrd1/rd1マウスに対して、イオントフォレシスおよびその後のPBS注射、イオントフォレシスを伴わないODN注射、注射を伴わないイオントフォレシス、または非処置のいずれかを行った(各条件につき眼8個)。動物を処置から1時間後に屠殺した。眼を摘出し、PBSですすぎ洗いした上で、凍結切片作製のためにTissue-Tek OCTコンパウンド(Bayer Diagnostics, Puteaux, France)中に包埋した。切片(10μm)を4%パラホルムアルデヒド(Merck Eurolab, Strasbourg, France)中にて室温で5分間かけて固定し、PBS中で洗浄し、DAPI(4',6-ジアミノ-2-フェニルインドール)(1/3000希釈)(Sigma-Aldrich, Saint-Quentin Fallavier, France)による対比染色を2分間行って、PBS中で洗浄し、Gel Mount(Microm Microtech, Francheville, France)中にマウントして、HBO103wランプおよびデジタルSPOTカメラ(Optilas, Evry, France)を用いて蛍光顕微鏡(Aristoplan, Leica, Rueil Malmaison, France)下で観察した。各々の眼について、視神経レベルでの切片を構造分析のためにヘマトキシリンおよびエオシンで対比染色した。
表現型変化に基づく最適なODNおよび投与法の選択
ONL細胞の計数
PN4、6および8日の時点で、rd1/rd1マウスに対して、PBSまたはODN(500μMを1μL)の硝子体内注射の前に食塩水イオントフォレシスを行った。以降のすべての実験に用いるための最適なODNのタイプの選択は、網膜切片上での直接的なONL計数によって決定されるPN28での光受容器生存の定量に基づいた。
PN28の非処置(眼6個)、PBS処置(眼6個)またはWTAS ODN処置およびWTS処置(それぞれ眼8個)rd1/rd1マウスの眼を摘出し、Tissue-Tek OCT-コンパウンド(Bayer Diagnostics)中で急速凍結させて、切片化した(10μm)。各々の眼につき、視神経を含む5枚の切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。各切片について、視神経の各縁端から400μmの箇所にある同じ領域内で400μmの長さにわたってONL内の核の数を計数した(各々の眼についてn=10の値)。最大の生存度はSODNを用いて観察されたため、それを以降のすべての実験に用いた。
ホールフラットマウント網膜上でのロドプシン免疫組織化学
非処置(対照)マウスのフラットマウントrd1/rd1網膜上でPN19および28に行ったロドプシン免疫組織化学により、ロドプシンシグナルの進行性喪失を追跡することが可能になる(結果の項(図14Cおよび14E)を参照)。このため、PN28ホールフラットマウントのrho-4D2免疫組織化学を、光受容器のレスキューについて評価するための全体的かつ迅速な方法として用い、それ故にスクランブル化ODNの投与効果を評価およびアッセイするために用いた。
ロドプシン免疫組織化学は、以前の記載の通りにホールフラットマウント網膜上で評価した。手短に述べると、PN19および28の時点で、眼球を4%パラホルムアルデヒド(Merck Eurolab)中で1時間かけて固定した。網膜を単離して、1.5mL微量遠心管内のPBS中に入れ、PBS、0.1% Triton X-100(Sigma-Aldrich)中で5分間かけて透過化処理を行った上で、ブロッキング緩衝液(0.1%ウシ血清アルブミン(Sigma-Aldrich)、0.1% Tween 20(Sigma-Aldrich)および0.1%アジ化ナトリウム(Sigma-Aldrich)を含むPBS)中で15分間インキュベートした。網膜を、杆体光受容器特異的なモノクローナルマウス抗体rho-4D2(ブロッキング緩衝液中に1/100希釈;University of British Columbia, Vancouver BC, CanadaのDr. Robert Moldayから寄贈された)中でインキュベートした。陰性対照として、正常マウス血清(Nordic Immunological Laboratories, Tebu-bio, Le Perray en Yvelines, France)、またはマクロファージおよび単球を対象とするマウスモノクローナル抗体Leu-M5(BD Biosciences, Pont-de-Claix, France)を、rho-4D2抗体の代わりに用いた(ブロッキング緩衝液中に1/100希釈、1時間)。続いて、網膜をブロッキング緩衝液中で5分間ずつ3回洗浄して、Alexa Fluor 488と結合させたヤギ抗IgGマウス二次抗体(ブロッキング緩衝液中に1/250希釈;Molecular Probes, Leiden, Neitherlands)ととともにインキュベートした。インキュベーション容積は、抗体インキュベーションについては0.2mLとし、ブロッキングおよび洗浄の段階については1.5mlとした。PBS中で5分間ずつ3回洗浄した後に、網膜を光受容器層を上向きにしてPBS-グリセロール(1/1)中にマウントして、2.5倍対物レンズによる蛍光顕微鏡検査を行い、デジタルSPOTカメラ(Optilas)を用いて写真撮影した。画像はすべて露出時間を5秒として記録した。各々の網膜につき、網膜表面全体をカバーするために3画像を記録した。フラットマウントの写真をPhotoshop 7.0で合成して網膜全体を再構成した。
ロドプシン免疫反応性の強度は、raw画像に関してPhotoshopの明度特性を用いることによって定量した。組織および背景の領域は手作業で選択した。残存性の色素上皮はすべて除外した。各領域について「ヒストグラム」画像特性を用いることによって平均ピクセル輝度を決定した。画像間の背景レベルを標準化するために、組織領域のピクセル当たりの平均輝度レベルを、各フラットマウント画像からの背景領域によって除算した。
WTS ODN、対応する2つのスクランブル化ODN(WTSscr7/scr25)および非処置またはPBS処置対照を用いた追跡実験を、さらに3回ずつ繰り返した(各条件につき眼6個×3)。他の対照には、イオントフォレシスを伴わないWTS ODNの注射、および注射を伴わないイオントフォレシスを含めた(各条件につき眼4個)。
処置の数は、PN4の時点で1回、PN4および6の時点で2回、PN4、6および8の時点で3回、またはPN6、8および10の時点で3回行われる、イオントフォレシス後のWTS ODN(500μMを1μL)の注射としてアッセイした(各条件につき眼4個)。
S-ODNで処置したrd1マウスの網膜において観察される表現型変化のさらなる評価
眼切片上でのロドプシン免疫組織化学
PN28の野生型(眼4個)、PBS処置(眼6個)またはODN処置(眼8個)rd1/rd1マウスの眼を摘出し、Tissue-Tek OCT-コンパウンド(Bayer Diagnostics)中で急速凍結させて、切片化した(10μm)。各々の眼につき、視神経を含む切片を構造分析のためにヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。切片を4%パラホルムアルデヒド(Merck Eurolab)中にて室温で5分間かけて固定し、PBS中で洗浄し、マウスrho-4D2抗体(PBS中に1/100希釈)中で1時間インキュベートした。陰性対照として、正常マウス血清(Nordic Immunological Laboratories)またはマウスモノクローナル抗体Leu-M5(BD Biosciences)を一次抗体の代わりに用いた(PBS中に1/100希釈)。スライドをPBS中で3回洗浄し、Alexa Fluor 488と結合させたマウス抗IgG(PBS中に1/250希釈;Molecular Probes)とともにインキュベートした。続いて、スライドをPBS中で3回洗浄し、PBS/グリセロール(1/1)中にマウントして、蛍光顕微鏡(Leica)下で検査した。
眼切片上でのβ-PDE免疫組織化学
rho-4D2で以前に標識した、PN28の非処置およびPBS処置またはODN処置rd1/rd1マウス由来の眼切片におけるβ-PDEの存在について評価した。免疫組織化学は、ウサギIgG PDE6β抗体(1/100希釈;Affinity Bioreagents, Golden, CO, USA)または非免疫ウサギ血清(1/100希釈)を一次抗体として、Texas red Fluorと結合させたヤギ抗IgGウサギ抗体(1/100希釈;Molecular Probes)を二次抗体として用いて行った。切片をPBS/グリセロール(1/1)中にマウントし、蛍光顕微鏡(Leica)下で検査した。
S-ODNで処置したrd1網膜において誘導される遺伝子型変化
rd1/rd1網膜由来のゲノムDNAを、製造元の指示(Qiagen, Courtaboeuf, FranceおよびValencia, CA, USA)に従って、個々の全フラットマウント網膜(PN28)からDNeasy Tissueキットを用いて抽出し、200μLのAE緩衝液中に溶出させた。野生型網膜、非処置およびPBS処置rd1/rd1網膜由来のゲノムDNAを対照として利用した。
ODN処置によって生じた少量の野生型配列を検出するために、アレル特異的リアルタイムPCRを用いた。処置した網膜および非処置網膜から単離したDNA試料を、突然変異型β-PDE配列よりも野生型配列を選好的に増幅するように設計したプライマーを用いるPCR反応におけるテンプレートDNAとして用いた。一方のプライマーの3'塩基は、GenBankアクセッション番号X60133の1048位で野生型配列に対して相補的であるが、rd1/rd1配列に対してはそうでない。野生型β-PDE配列の選好的増幅のために用いたプライマーは、
Figure 2010511692
であった。標準化の計算のためには、テンプレートDNAの同じ源のアリコートを用いる並行した反応を、β-PDE配列を非特異的に増幅するために設計したプライマー:
Figure 2010511692
を用いて進行させた。
反応はBio-Rad iCycler iQリアルタイムPCR検出システム中で進行させ、融解曲線分析を行った(Bio-Rad, Hercules, CA)。最終容積20μlの反応物は、テンプレートDNA(10ng)、プライマー(50nM)、ならびに、SYBR Green I(dsDNAと結合した時に強く蛍光を発する色素)、HotStarTaq DNAポリメラーゼ、dNTPおよび製造元により最適化された緩衝成分で構成されるQuantiTect SYBR Green PCR Master Mix(Qiagen, Valencia, CA)を含んだ。非特異的なPCR産物を減少させるために、1アッセイ当たり20ngのポリ(dI:dC)を添加した。
定量に関する検出限界は、通常はサイクル2から10までに及ぶウィンドウにわたっての蛍光強度の二乗平均平方根ノイズの10倍と判断した。産物がこの検出閾値を上回って蓄積した時点のサイクル数(Ct)を、標準量の野生型β-PDE遺伝子を用いて作成した較正曲線により、反応物における特定のテンプレートアレルの出発時コピー数と関連づけた。非処置rd1/rd1対照と比較してCtが少ないことは特定のアレルの存在、この場合には、野生型配列(突然変異型のアデニンが野生型のシトシンへと変換)に修復された推定的なrd1/rd1アレルの存在を指し示す。各テンプレートDNAについて、全DNAの出発濃度の違いを補正するために、突然変異型または野生型アレルに特異的なβ-PDE反応によるCtを、アレル非特異的反応のCtから差し引く。標準化反応は、18s-RNA遺伝子に対して特異的なPCRプライマーをテンプレートDNAの増幅のために用いた点を除き、β-PDE反応と同一であった。Ctデータは、5〜10回反復してアッセイした5〜6件の実験試料の平均±SEMである。アッセイの効率を決定するために、野生型ゲノムDNAの量を増やしながら(1pg〜10ng)、10ngのrd1/rd1ゲノムDNAと混合して用いて、遺伝子コピーと閾値サイクルとの間の較正曲線を作成した。
別の対照アッセイでは、さまざまな修復ODN(野生型配列を含む)を、それらの存在がCtの人為的な減少を引き起こすか否かを判定するために、DNAテンプレート試料中にいくつかの濃度で添加した。それらの存在は、広範囲にわたる濃度で、Ctに何ら影響を及ぼさなかった(非提示データ)。
統計分析
結果は平均±SDとして表示し、ノンパラメトリックMann Whitney検定および分散分析(ANOVA)検定を事後Student-Newman-Keuls検定とともに用いて比較した。P<0.05を有意とみなした。
結果
硝子体内注射の前にイオントフォレシスを用いた、rd1/rd1マウスの眼の網膜細胞への標識オリゴヌクレオチドの強化された送達
アルミニウム箔およびスポンジを用いて作製し、電源と接続した眼鏡形の電極(図12A)を用いて、経眼瞼イオントフォレシスを行った(図12B)。それはマウスの眼に対して検出可能な臨床的または組織学的な病変を何ら引き起こさなかった(図12C)。電流の適用を伴わない、CY3標識WTS ODNの硝子体内注射から1時間後に、神経節細胞層(GCL)内で、および内顆粒層(INL)内部の少数の細胞内で蛍光が観察された。PN7マウスの外顆粒層(ONL)では蛍光が検出されなかった(図12D)。対照的に、食塩水イオントフォレシスをODN注射の直前に適用した場合には、INLおよびONLの核内でいずれも強い蛍光が観察された(図12E)。PBS処置した眼の網膜層(図12F)および注射しなかった対照眼(イオントフォレシスを伴う、または伴わない)ではいずれも蛍光は観察されなかった(非提示データ)(各条件につき眼8個)。
PN28の眼切片上でのβ-ホスホジエステラーゼタンパク質の検出
β-PDEを対象とする抗体は、PN28の野生型マウスにおいて杆体外節を特異的に標識した(図17、上のパネル)。抗β-PDE抗体の特異性は、野生型網膜上に特異的シグナルがみられ、rd1/rd1網膜上にはシグナルが存在しなかったことが、ウエスタンブロットによって確かめられた(図17E)。
rd1/rd1マウスにおいて、β-PDE免疫反応性はいずれのステージでも存在しなかった。しかし、500μMのWTS ODNで処置したrd1/rd1眼切片では、β-PDEに関する陽性蛍光シグナルが観察された(図18A)。ODN処置したフラットマウント網膜由来の切片全体(長さ3.5mm×厚さ10μm)上には、平均26±6個のβ-PDE免疫陽性細胞が検出された。長さ3.5mm×厚さ10μmの切片は、0.035mm2の表面積、または1mm2当たり743個の陽性細胞に対応する。網膜の推定表面積は球の表面(4πr2)の3分の2であり、PN28での半径1.25mmに対しては、これは13.1mm2である。したがって、網膜全体ではおおよそ743×13.1=9730個のβ-PDE陽性細胞を有する。rho-4D2による二重標識では、β-PDEに関して陽性の細胞はロドプシンに関しても陽性であった(図18B)。しかし、ロドプシン発現細胞はβ-PDEを発現するものよりも多かった(図16Bおよび18A)。他の点では完全な処置においてODNを省いた場合、有意な蛍光は観察されなかった(非提示データ)。
rd1/rd1から野生型へのゲノムDNAの変換の分析
ODNまたはPBSで処置したrd1/rd1網膜から、および野生型網膜から抽出したDNAを、野生型DNAのみを増幅するように設計したプライマーを用いるアレル特異的リアルタイムPCRにおけるテンプレートとして用いた。閾値サイクル値(Ct)は、ODN処置群については35±0.6(網膜6個)であり、陰性対照PBS群については37±0.5(網膜5個)であった。同量の純粋な野生型ゲノムDNAに関するCtは26±0.1(網膜6個)であった(図19)。本発明者らの研究で行ったようなrd1/rd1マウスの処置は、陰性対照PBS群と比較して有意に少ないCtをもたらし(独立t検定;p=0.0334)、これはODN処置群が野生型DNAを含んでいたことを指し示すとともに、処置がrd1/rd1マウスにおけるゲノムDNAの修復を誘導したことを示唆する。効率分析によれば、野生型β-PDE DNAのコピー数の出現に対する処置の影響は1.95(a−b)とされ、ここでa=ODN処置に関するCtであり、b=野生型ゲノムDNAに関するCtである。1.95(a−b)の値で100%を除算することにより、突然変異型アデニンのアデニンへの変換率、すなわち、100/1.95(a−b)=100/1.95(35−26)=0.2%が得られる。
考察
これらの結果は、イオントフォレシスをホスホロチオエート一本鎖ODNの硝子体内注射と組み合わせた場合に、光受容器細胞における遺伝子修復が実施可能であるという証拠を与えるものである。β-PDE遺伝子修復は、処置したrd1/rd1網膜のゲノムDNAの0.2%で検出された。表現型の上では、この修復は、非処置またはモック処置マウスがβ-PDEを全く発現しない、または有意にロドプシンを発現しない段階である、PN28の処置したrd1/rd1マウス網膜におけるβ-PDEおよびロドプシンタンパク質の発現によって確認された。変換されたゲノムDNAのコピー数が比較的少ない数であったにもかかわらず、光受容器の有意なレスキューが観察された。本研究は、神経網膜におけるこの非ウイルス性ODN標的遺伝子修復戦略の実施可能性を実証している、概念実証の行使である。
標的遺伝子修復のためには、標的細胞への十分な量のODNの適切な送達が決定的に重要である。眼において、直接的な硝子体内注射は、無傷のODNを光受容器の核に到達させるのに十分ではない。分布試験によって示されたように、ODNの注射前のイオントフォレシスの適用は光受容器の核におけるODNの浸透の増大をもたらす。イオントフォレシスの後に行った場合、2回または3回の注射の反復は光受容器の有意なレスキューを誘導する。したがって、光受容器細胞のレスキューのためには、反復的な送達および/または決定的な量の硝子体内ODNと、標的細胞への強化された浸透効率との組み合わせが必要である。これらの観察所見は、単純な注射によってrd1/rd1遺伝子の修復を達成しようとした以前の試みが失敗した理由の説明になると考えられる(JH Boatright and JM Nickersonの未刊行の観察所見)。他の研究により、イオントフォレシスは小さな遺伝子断片の細胞内浸透を増大させることが示されている。しかし、本研究において、注射の後のイオントフォレシスのほかに、硝子体内注射の前のイオントフォレシスも奏功したことは驚きに値しよう。1つの説明は、本発明者らの実験におけるイオントフォレシスはDNAを移動させるために決定的に重要なのではなく、イオントフォレシスは、細胞膜構成物の内部での電気浸透または電流誘起性変化および電荷によってODN輸送を増強する可能性があるということである。皮膚では、イオントフォレシス後の期間における輸送が記載されており、薬物適用の前の食塩水イオントフォレシスの使用が薬物浸透を増大させることが以前に示されている。この現象を解明するためには、さらなる実験が必要と考えられる。
特異的ODNによるrd1/rd1処置マウス由来のPN28の網膜切片上で観察された光受容器の数の増加
非処置rd1/rd1網膜のONLではPN28時点で単回の列またはそれに満たないまばらな細胞が観察されたが(図13A)、WTAS ODNおよびWTS ODNで処置したマウスではONL全体にわたって2つまたは3つの細胞列を含む不連続区域が観察され、図13Cおよび13Dは最大限のレスキューが観察されたそのような2つの区域を表している。PBSで処置した眼では、ONL内の細胞の限定的な増加が観察された(図13B)。PN28時点で、ONL内の細胞数に関して、以前に記載した条件を用いてWTAS ODNおよびWTS ODNで処置した網膜の間に有意差はなかった(長さ400μm上でそれぞれ101±15個および103±14個;各条件につき眼8個、P>0.05)。しかし、rd1/rd1マウス由来の、PBSで処置した網膜(74±5個;眼6個)または処置していない網膜(55±8個;眼6個)と比較すると有意に増加していた(それぞれP<0.05およびP<0.01)。
PN28でのロドプシン免疫染色は特異的オリゴヌクレオチドによって増加した
rho-4D2を一次抗体として用いた場合、PN28の野生型眼切片において、ロドプシンに関する広範な陽性免疫反応性シグナルが観察された(図14A)。rho-4D2の代わりに正常マウス血清と反応させた切片では陰性の結果が得られた(図14D)。rd1/rd1フラットマウント網膜では、PN19時点でロドプシン陽性シグナルが全体にわたって観察された(図14C)。PN19時点で低倍率で観察された強い蛍光は、より高倍率の像で示された散在性の免疫反応性光受容器に対応する(図14C中の挿入図)。PN19のrd1/rd1フラットマウント網膜に対して正常マウス血清を対照として用いた場合には、陽性シグナルは検出されなかった(図14D)。PN28時点でロドプシンシグナルは極めて弱く、このことはこの時点でのこれらの網膜における杆体の進行性またはほぼ完全な変性を反映しており(図14E)、これはrd1/rd1網膜変性の経時的推移と並行している。
ロドプシンは最も大量に発現される光受容器特異的タンパク質であり、杆体光受容器細胞の存在を検出するためのマーカーとしてしばしば用いられる。センスホスホロチオエートODNが、遺伝子是正およびそれに続いての光受容器の生存を誘導する能力を評価するために、ロドプシン免疫組織化学をPN28の処置したフラットマウントrd1/rd1網膜に対して行った。イオントフォレシスの後の1μLの500μM 特異的ODNの注射からなる遺伝子修復処置を、PN4、6および8のrd1/rd1マウスに対して行った。表1に示されているように、算出された組織蛍光と背景蛍光との比(組織F1/Bkgd F1)は、非処置、PBSのみによる処置、またはスクランブル化ODNのいずれか(WTSscr25およびWTSscr7;ODNの命名法は表1の説明文に記されている)による処置については1.75未満であった。WTS ODNによる処置は最も強いロドプシン免疫染色を生じさせ、2.57という再現性のある組織F1/Bkgd F1比をもたらした(図14F)。この増加は、ノンパラメトリックMann-Whitney検定による判定で、他のすべての処置と比較して統計学的に有意であった(WTS処置群と他の任意の処置群との比較でP<0.004)。
WTS ODN注射を電流の適用と連係させなかった場合(図14G)、または硝子体内注射を伴わずに電流を適用した場合(図14H)には、ロドプシン免疫染色に対する影響は観察されなかった。さらに、ホスホロチオエートセンススクランブル化ODN(WTSscr25およびWTSscr7)もロドプシン免疫染色の増加を誘導せず(表1、図3I、P>0.05、PBS処置との比較)、このことはイオントフォレシス/WTS ODNによる注射処置の組み合わせに対する応答の特異性を示している。
PN4時点での単回の組み合わせ処置は光受容器の生存に影響を及ぼさなかったが、PN4および6での2回の組み合わせ処置はロドプシン免疫染色の検出可能な増加を誘導した(表2、図15)。ホールフラットマウント網膜上でのロドプシン免疫染色によって評価した光受容器の生存は、1μLの500μM WTS ODNによる3回の連続的処置によって有意に増加した。PN6、8および10で処置を行ったところ、PN4、6および8で処置を送達した場合に観察されたものと同程度のレスキューが観察された。
PN4、6および8での、1μLの500μM WTS ODNのによる3回の連続的処置の適用(注射の前にイオントフォレシス)は、PN28 rd1/rd1マウスにおけるロドプシン発現に対して有意な影響を及ぼし、このことは光受容器の生存の増加を指し示している。これらの条件を以降のすべての実験のために用いた。
PN28の眼切片上でのロドプシン免疫染色
WTS ODNで処置したマウスの網膜ではロドプシン陽性細胞のクラスターが複数の列に均一に散在していたが(図16B)、PBSで処置した眼ではいくつかの細胞が残存性ONLの単一の列において標識され(図16A)、このことはイオントフォレシスに続く特異的ODNの注射による処置が杆体光受容器の生存を誘導したことを示している。
ODNのタイプは遺伝子修復における決定的な課題の1つである。本モデルにおいて、センスODN(ゲノムDNAの転写された鎖を標的とする)およびアンチセンスODN(ゲノムDNAの転写されない鎖を標的とする)は、おおよそ同等なゲノム修復を誘導した。いくつかの研究により、ODNの極性はそれらの標的指向的修復効率に影響を及ぼすことが示されている。より以前のインビトロ試験では、アンチセンスODNは、遺伝子修復を誘導することに関してセンス ODNよりも有効であることが見いだされた。しかし、アンチセンスODNの方が有効性に優れることが普遍的に観察されているわけではない;最近のインビトロ試験およびインビボ試験では、センス ODNが有意により有効であることが見いだされている。転写活性化、細胞周期の相および/または標的突然変異の周囲のゲノム配列といったいくつかの要因が、鎖のバイアスに影響を及ぼす可能性がある。本明細書において、遺伝子修復における標的DNA配列の重要性に関する検討を可能にするインビトロモデルが開発された。これは、293細胞における単一の同一なゲノム部位での異なる標的配列の導入に基づく。このモデルを用いて、鎖のバイアスが配列特異的であることが示されている。このモデルにおいてrd1突然変異を含む配列を遺伝子修復による標的とした場合、アンチセンスおよびセンス ODNは同じくおおよそ同等であった。このインビトロモデルは網膜細胞上に実在してはいなかったが、rd1是正に影響を及ぼす可能性のある要因を分析することは有用と考えられる。最適化されたパラメーターの選択が、rd1突然変異の修復を強化するためにインビボで適用されると考えられる。
フラットマウント網膜上でのロドプシン免疫組織化学で観察されたような、非処置対照と比較した、光受容器の生存に対するPBSまたはスクランブル化ODN処置の軽微な影響(表I参照)は、rd1/rd1マウスモデルにおける網膜変性を遅らせることが知られている内因性神経栄養因子の誘導のためと考えることができる。そのような影響は、外科的介入および他の形態のモック処置、偽処置または媒体対照処置の後の眼で検出されている。おそらくは神経栄養作用も、β-PDE陽性細胞よりもはるかに数多くレスキューされたロドプシン陽性細胞の説明になると考えられる。このため、本発明者らの治療アプローチを神経栄養因子の追加的使用と組み合わせた戦略は、弱いゲノム修復の効果を増強する可能性がある。
これらの結果は概念実証とみなされなければならず、ヒトの網膜ジストロフィーに外挿することはできない。rd1/rd1マウスにおいて、網膜変性は出生後間もなく始まって急速に進行するため、有効な遺伝子修復が可能となる機会は限られている。さらに、このマウスモデルでは、広範かつ極めて急速な変性過程が、是正された細胞にとって有害な環境をもたらす。ヒトでは、変性疾患のほとんどが緩徐に進行するため、治療ウィンドウはより長い期間となる。現在、緩徐に進行する網膜変性の他のモデルが本発明者らの研究室で評価されている。これらのモデルを用いることで、多数の処置を適用することが標的遺伝子修復効率を高めると考えられるか否か、および遺伝子修復が光受容器の永続的なレスキューを可能にするか否かを判定することが可能である。
結論として、本研究は、イオントフォレシスと特異的ODNの眼内注射との組み合わせを用いた、rd1/rd1マウスの光受容器における非ウイルス性標的遺伝子修復の概念実証を与え、眼変性および失明性眼疾患の治療のための新たな道を開く。
略号
β-PDE:杆体光受容器cGMP-ホスホジエステラーゼのβ-サブユニット、PN:生後、ODN:オリゴヌクレオチド、GCL:神経節細胞層、INL:内顆粒層、ONL:外顆粒層、CY3:シアニン3、PBS:リン酸緩衝食塩水、chim:キメラ、WTS/AS:野生型センス/アンチセンス、o:2'-O-メチルRNA塩基、25または45:25または45mer、PO:ホスホジエステル、ポリU:ポリU保護、6x6PS:各々の5'位および3'位に6個のホスホロチオエート結合、scr7/25:7個の中央塩基のスクランブル化配列/全体で25merのODN。
実施例4 オリゴヌクレオチドの硝子体内注射と組み合わせた経眼瞼イオントフォレシスは、インビボでの光受容器細胞のターゲティングを可能にする
遺伝性網膜変性は進行性の光受容器喪失をもたらし、これはβ-PDE遺伝子における厳密なナンセンス突然変異によって引き起こされうる。遺伝子修復のターゲティングを行うことは、改変が必要なゲノムDNA配列へのオリゴヌクレオチド(ODN)のターゲティングによって厳密な突然変異を是正することができる、新たな遺伝子治療法である。この手法における主な制約段階の1つは、標的とした細胞内への大量のODNの効率的な送達が必要なことである。硝子体内注射の後に、ODNは内顆粒層に集中し、最終的にはRPE細胞内に蓄積する。しかし、光受容器の核へのそれらの浸透は極めて乏しく、潜在的可能性のある遺伝子修復の妨げとなる。
イオントフォレシスは角膜におけるODNの細胞内浸透を増大させることから、本研究は、仔マウス網膜におけるODNの網膜内送達を最適化することを目的として、ODNの硝子体内注射をイオントフォレシス電流の適用と関連づける可能性について評価した。
材料および方法
本研究の材料および方法は、本質的には以上の実施例2および3で記載された通りである。センス野生型β-PDE遺伝子配列をコードする赤色標識ODNの硝子体内注射と関連づけた食塩水経眼瞼イオントフォレシスを、β-PDE遺伝子におけるナンセンス突然変異(アミノ酸347位)に関してホモ接合性であるrd1/rd1マウスに対して生後7日に適用した。微量注入器を用いて、顕微鏡で制御しながら、1μLのODN(500μM)を硝子体内に注射した。
さまざまな処置パラメーターについて試験した。標識したODNの硝子体内注射の直前または後に、カチオン性またはアニオン性経眼瞼イオントフォレシス(それぞれ正または負の電極を眼瞼に接続)を、1.5mAの電流を5分間用いて行った(各組み合わせにつき眼4個)。より弱い電流強度を用いる条件(0.5mAを5分間)についても試験した(各条件につき眼4個)。イオントフォレシスとODN硝子体内注射との時間間隔(1、3および6時間)の影響についても調べた(各条件につき眼4個)。対照群に関しては、PN7のrd1/rd1マウスに対して、イオントフォレシスおよびその後のPBS注射、イオントフォレシスを伴わないODN注射、または非処置のいずれかを行った(各条件につき眼4個)。外顆粒層蛍光の蛍光強度を凍結切片の画像解析によって定量した。各々の眼の5枚の切片から一定の露出時間を用いて記録し、平均ピクセル輝度±SDとして表示した3枚の顕微鏡写真をこの解析のための基盤として利用した。得られた相対OLN強度の値を統計学プログラムによって比較して分析した。
結果
経眼瞼食塩水イオントフォレシスのすべての条件は、イオントフォレシスを伴わない注射と比較して、網膜層におけるODNの浸透を増大させる。処置から1時間後に無傷のODNを網膜から抽出した。図20に例証されているように、ODN注射の前に食塩水経眼瞼イオントフォレシスを適用した場合には、ODN注射後のその適用と比較して光受容器ターゲティングが有意に増加した。アニオン性イオントフォレシスはカチオン性イオントフォレシスよりも効率的である。試験したすべての条件のうち、最適な光受容器ターゲティングは、ODN注射の前に1.5mAを5分間用いて経眼瞼食塩水アニオン性イオントフォレシスを適用することで達成される。イオントフォレシスによる眼内浸透の促進は少なくとも3時間は明らかなままに保たれ、その後は顕著な低下が観察された。イオントフォレシス適用後に眼内組織の損傷は観察されなかった。
実施例5 インビボでのrd1マウスにおける遺伝子形成術(Genoplasty)
rd1突然変異に関してホモ接合性であるマウスは遺伝性網膜変性を呈し、ヒト網膜色素変性症のモデルとして役立つ。rd1マウスは杆体c-GMP-ホスホジエステラーゼ(PDE)β-サブユニット遺伝子におけるC→A突然変異を示し、それはタンパク質の短縮を招く終止コドンを生み出す。これらの動物において、網膜杆体光受容器の細胞死は生後約8日に始まり、4週までに完全な変性が達成される。
この研究の目的は、rd1マウスに対する遺伝子形成戦略を評価すること、ならびにrd1突然変異を是正するために設計された種々のタイプのODNの網膜内浸透および作用を調べることである。
材料および方法
本研究の材料および方法は、本質的には以上の実施例2および3で記載された通りである。
結果
イオントフォレシスによる、注射した標識オリゴヌクレオチドの網膜層への強化された送達:低電流密度を用いて安全なやり方で薬物を送達するための過程
イオントフォレシスによる、注射した標識オリゴヌクレオチドの網膜層への送達を、イオントフォレシス後のまたはイオントフォレシスを行わない硝子体内注射から1時間後の眼切片において、CY3標識オリゴヌクレオチド(およそ8kDa)の蛍光顕微鏡検査によって検出した。図21に例証されているように、イオントフォレシスは網膜細胞へのターゲティングのために極めて効率的であった。
マウスにおけるrd1突然変異を是正することに関する、コード性または非コード性DNA鎖を標的とする特異的キメラオリゴヌクレオチド、ホスホジエステルオリゴヌクレオチド、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドおよびポリU保護オリゴヌクレオチドの能力の比較
rd1マウスに対して、生後4、6および8日の時点で、イオントフォレシスの後に、特異的キメラオリゴヌクレオチド、ホスホジエステルオリゴヌクレオチド、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドおよびポリU保護オリゴヌクレオチドを注射した。全フラットマウント網膜に対するオプシン免疫組織化学によって評価した光受容器の生存は、rd1突然変異のゲノム是正を間接的に反映する。PN28時点の処置したマウス由来の網膜を、Rho-4D2を用いるオプシン免疫組織化学のために用いた。図22に例証されているように、最良の結果は、光受容器の用量依存的なレスキューを示す特異的コード性ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを用いて得られた。
処置したrd1マウスの眼切片上でのβ-ホスホジエステラーゼタンパク質の検出
処置したrd1マウスに対して、PN 4、6および8の時点で、イオントフォレシスの後にコード性ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドを注射した。PN12のマウス由来の眼切片を、Alexa Fluor 488と結合させた二次抗体を用いる抗β-PDE(Affinity Bioreagents)免疫組織化学のために用いた。それらを共焦点顕微鏡下で検査した。図23に例証されているように、β-ホスホジエステラーゼタンパク質が、処置後のマウス由来の眼切片で検出された。処置したrd1マウスにおけるβ-ホスホジエステラーゼタンパク質の強化された網膜発現は、イオントフォレシスを介した網膜送達をさらに裏づけるものである。
ラットに対する標識オリゴヌクレオチドのイオントフォレシスの定性的評価も図24に提示されている。
マウスゲノムDNA上のrd1突然変異に対する是正率の分析
PN28の時点でODNまたはPBSで処置したマウスの網膜からDNAを抽出した。DNAは、野生型β-PDE DNAのみを増幅するように設計したアレル特異的プライマーを用いるリアルタイムPCRにおけるテンプレートとして用いた。テンプレート濃度の測定における誤差を補うために、アレル非特異的β-PDEプライマーを用いる対照PCRを実施した。
予想された通り、かつ図25に例証されている通り、野生型β-PDE DNAを用いた反応は、非処置rdテンプレートを用いたものよりも非常に少ないサイクルで閾値に達した。SRT-PCR分析はODN処置試料の反応プロフィールにおける統計学的に有意な左方推移を示しており、これは処置がゲノムDNAの修復を誘導することを指し示している。
追加の参考文献
Figure 2010511692
Figure 2010511692
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等価物
本発明を、本発明の具体的な態様に関連して説明してきたが、さらなる変更も可能であることは理解されるであろう。さらに、本出願は、本発明が関連する技術分野において公知または慣習的である慣行の範囲に含まれるような本発明の開示からの逸脱を含め、本発明のあらゆる変形物、使用法または改変物をカバーすることを意図しており、それらは添付の特許請求の範囲に含まれる。
本明細書中に引用された参考文献はすべて、参照により本明細書に組み入れられる。

Claims (18)

  1. 哺乳動物の眼の網膜細胞内への核酸のインビボ送達を強化するための方法であって、以下の段階:
    (a)イオントフォレシスの段階によって哺乳動物網膜のミュラー細胞を一過性に伸長させる段階;および
    (b)核酸を含む組成物を哺乳動物の眼に投与する段階、を含み、
    イオントフォレシスの段階が哺乳動物網膜のミュラー細胞を一過性に伸長させ、かつ哺乳動物の眼の網膜細胞内への核酸のインビボ送達を強化する、方法。
  2. 核酸が治療用物質または診断用物質である、請求項1記載の方法。
  3. 核酸が、デオキシリボ核酸(「DNA」)、リボ核酸(「RNA」)、およびDNA塩基とRNA塩基の両方を含むキメラ核酸からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
  4. 核酸が、オリゴヌクレオチドDNA、アンチセンスDNA、プラスミドDNA、プラスミドDNAの構成要素、ベクター、発現カセット、キメラDNA配列、染色体DNA、安定化されたDNA、アプタマー、安定化されたアプタマー、オリゴヌクレオチドRNA、転移RNA(tRNA)、低分子干渉性RNA(siRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、リボソームRNA(rRNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、マイクロRNA(miRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、アンチセンスRNA、リボザイム、安定化されたRNA配列、キメラRNA配列、キメラDNA/RNAオリゴヌクレオチド、アプタマー性オリゴヌクレオチド、およびこれらの核酸のいずれかの誘導体からなる群より選択される、請求項3記載の方法。
  5. 核酸がオリゴヌクレオチドDNAまたはオリゴヌクレオチドRNAであり、ホスホロチオエート結合を有してもよい、請求項4記載の方法。
  6. 核酸が、一本鎖核酸、二本鎖核酸、三本鎖核酸および四本鎖核酸の群から選択される、請求項1記載の方法。
  7. 核酸が線状または環状の形態にある、請求項6記載の方法。
  8. 核酸が一本鎖オリゴヌクレオチドDNA(ssODN)または一本鎖オリゴヌクレオチドRNA(ssORN)である、請求項7記載の方法。
  9. 核酸組成物が、局所滴注(topical instillation)によって、または哺乳動物の眼内への注射によって投与される、請求項1記載の方法。
  10. 局所滴注物が、溶液、ペーストおよびヒドロゲルからなる群より選択される形態にある、請求項9記載の方法。
  11. 局所滴注物が発泡マトリックス(foam matrix)中に包埋されている、請求項10記載の方法。
  12. 局所滴注物がリザーバー中に保持されている、請求項10記載の方法。
  13. 注射が、眼房内(intracameral)注射、角膜内注射、結膜下注射、テノン嚢下(subtenon)注射、網膜下注射、硝子体内注射、および前房内への注射からなる群より選択される、請求項9記載の方法。
  14. イオントフォレシスの段階が眼イオントフォレシスまたは経眼瞼イオントフォレシスである、請求項1記載の方法。
  15. 経眼瞼イオントフォレシスが、約1〜5mAの電流を用いて約1〜7分間にわたって行われるアニオン性またはカチオン性イオントフォレシスである、請求項14記載の方法。
  16. 経眼瞼イオントフォレシスが、約1〜3mAの電流を用いて約3〜6分間にわたって行われるアニオン性またはカチオン性イオントフォレシスである、請求項15記載の方法。
  17. 経眼瞼イオントフォレシスが、約2mAの電流を用いて約5分間にわたって行われるカチオン性イオントフォレシスである、請求項16記載の方法。
  18. イオントフォレシスの段階が、核酸組成物を投与する段階の前、最中または後に行われる、請求項14記載の方法。
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