JP2010501200A - microRNAの内在性mRNA標的のインビボでの同定のための方法 - Google Patents

microRNAの内在性mRNA標的のインビボでの同定のための方法 Download PDF

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Abstract

インビボの細胞において非コード調節RNA(ncRNA、例えばmicroRNA)の遺伝子発現プロフィールを生成する方法は、(a)細胞から少なくとも1つのmRNA−タンパク質(RNP)複合体を分離することであって、前記RNP複合体は、(i)RNA結合タンパク質(RNABP)またはRNA会合タンパク質、(ii)前記タンパク質と結合または会合した少なくとも1つのmRNA、および(iii)前記タンパク質と結合または会合した少なくとも1つのncRNAを含み、そしてその後(b)少なくとも1つのRNP複合体中の少なくとも1つのncRNAを同定し、それによりRNP複合体中のncRNAの固有情報を含む遺伝子発現プロフィールを作製することにより実行される。

Description

[政府の資金援助]
本発明は、米国国立癌研究所の助成金番号CA79907の下、政府の援助によりなされたものである。米国政府は本発明に対して一定の権利を有する。
[関連出願]
本出願は、2006年8月25日出願の米国特許仮出願第60/823,581号の恩典を主張し、その開示内容は参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
[発明の分野]
本発明は、microRNAおよび対応するそのmRNA標的を同定する方法に関する。
microRNA(miRNA)は、RNA結合タンパク質(RNABP)と共に、真核生物の転写後遺伝子発現の主な制御因子を構成し、広範な細胞プロセスにおいて機能する。miRNAは、標的メッセンジャーRNA(mRNA)の安定性または翻訳に影響を及ぼすことにより遺伝子発現を抑制する小さな非コードRNA(ncRNA)の大きなファミリーである(1〜3)。全体的なmRNAのmiRNAターゲッティングの現在の理解は、複数の種にわたる進化的相同性を検討することにより絞り込まれる相補的配列要素を計算によって予測することに基づく(4)。これらのアルゴリズムは1つのmiRNAにつき数百の可能性のあるmRNA標的を予測するが、各miRNAが一連の条件下で細胞中のこれらの標的mRNAに機能的に接近することは確かでない。実際に、最近の証拠から、RNABPが、条件に依存する形でmiRNAにより標的化されるmRNAの制御の方向付け(the regulatory fate)に影響を及ぼし得ることが示唆される(5、6)。
RNABPは、真核生物ゲノムにコードされている最大のタンパク質ファミリーの中で、複数の転写後レベルで遺伝子発現を調節することができる(7、8)。miRNAのように、RNABPも、標的mRNAの非翻訳領域(UTR)内にしばしば含有されている結合特異的RNA配列モチーフによって機能する。細胞質画分に生じる場合、これらの相互作用はmRNA局在性、安定性および/または翻訳活性化を決定し得る(9)。転写後の基礎構造は高度に組織化され、複数のシス−トランス相互作用を利用してより高次の遺伝子発現を組合せ的に調節することがますます明らかになってきている(7、10)。インビボの組成物およびこの転写後の基礎構造の組織化の全体的な探求は最近始まったばかりである。多数の研究が、類似の代謝過程を有するか、または機能的に関連のあるタンパク質をコードする、mRNAサブセットに会合したRNABPを同定した(7)。miRNAとmRNAとの間の予測された機能的相互作用のいくつかはレポーター系を用いて確認されているが、一方で、主に多数の生物情報学的アプローチにより、全ての細胞mRNAの大部分について、miRNAによる全体的なターゲッティングが予測された(2、4;11)。miRNAは、組合せ的にそれらのmRNA標的に作用すると予測されるが、一方、メッセンジャーリボヌクレオタンパク質(mRNP)複合体内の内在性miRNA、mRNAおよびRNABPの組成および組織化は不明なところが多い。
本発明の第1の態様は、インビボの細胞において非コード調節RNA(ncRNA)の遺伝子発現プロフィールを生成する方法であり、次のステップを含む。
(a)細胞から少なくとも1つのmRNA−タンパク質(RNPまたはmRNP)複合体を分離するステップと、ここで、前記RNP複合体は、(i)RNA結合タンパク質(RNABP)またはRNA会合タンパク質と、(ii)前記タンパク質と結合または会合した少なくとも1つのmRNAと、(iii)前記タンパク質と結合または会合した少なくとも1つのncRNAとを含み、
(b)少なくとも1つのmRNP複合体中の少なくとも1つのncRNAを同定するステップであって、それによりRNP複合体中のncRNAの固有情報を含む遺伝子発現プロフィールを作製するステップ。
一部の実施形態では、該ncRNAは、microRNAである。
一部の実施形態では、本発明は、1以上のmicroRNAのmRNA標的を同定および/または確認する方法を提供する。そのような方法は、
(a)生体試料から少なくとも1つのRNP複合体を分離する(前記複合体は、RNP複合体に会合したmRNAのサブセットを含む)ステップと、
(b)RNP複合体に会合したmicroRNAのサブセットを同定するステップと
を含み、それによりmicroRNAとmRNA標的との間の会合を決定する。一部の実施形態では、分離するステップは、RNP複合体を固相支持体上に捕獲するステップを含む。その他の実施形態では、該方法は、1以上の同定されたmRNAに関して、少なくとも1つの同定されたmiRNAの活性をアッセイするステップをさらに含んでよい。さらなる実施形態では、該方法は、コンピュータによる(in silicoの)方法を用いて(例えば、TargetScanSアルゴリズムを用いて)microRNAのmRNA標的を予測し、コンピュータによる結果を上記のように実験的に確認するステップを含んでよい。
細胞mRNAのサブセットは、生体試料中の全てのmRNAよりも少ないmRNAを含む、複数のmRNAである。一部の実施形態では、そのようなサブセットは、全てのmRNAの75%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、2%未満、1%未満またはそれ以下で表される。microRNAのサブセットは、生体試料中の全てのmicroRNAよりも少ないmicroRNAを含む、複数のmicroRNAである。一部の実施形態では、そのようなサブセットは、全てのmicroRNAの75%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、2%未満、1%未満またはそれ以下で表される。mRNAのサブセットは、少なくとも2つのmRNAであるが、3、4、5、10、15、20以上のmRNAを含んでよい。同様に、microRNAのサブセットは、少なくとも2つのmicroRNAであるが、3、4、5、10、15、20以上のmicroRNAを含んでよい。mRNAおよびmicroRNAのサブセットは、例えば、核酸アレイ、例えば、マイクロアレイ(例えば、cDNAアレイ)を用いることにより、本発明の方法において同定されてよい。
一部の実施形態では、分離するステップは、mRNP複合体を(i)mRNP複合体の少なくとも1つの成分に特異的に結合する抗体、または(ii)異所的に発現させたエピトープタグ付きRNA結合タンパク質もしくはRNA会合タンパク質に接触させるステップを含み得る。一部の実施形態では、抗体がRNA結合タンパク質またはRNA会合タンパク質に結合するためのmRNP複合体の成分は、mRNP複合体に存在する。一部の実施形態では、そのようなRNA結合タンパク質は、天然のHuタンパク質またはタグ付きHuタンパク質(例えば、HuR)またはポリ(A)結合タンパク質(PABP)である。一部の実施形態では、同定されたmicroRNAのサブセットには、miR−181a、miR−181b、miR−181c、miR−103、miR−107m miR−29c、miR−17−5p、miR−106a、miR−19b、miR−16、let−7a、let−7c、let−7d、およびlet−7fからなる群から選択されるmiRNAが含まれる。
一部の実施形態では、分離するステップは、細胞由来の前記RNP複合体を含む生体試料を、RNP複合体の少なくとも1種類の成分に特異的に結合する少なくとも1つのリガンドに接触させるステップと、リガンドと該リガンドに特異的な抗体とを結合させることによりRNP複合体を分離するステップと、ここで該抗体は固相支持体に固定されており、RNP複合体を固相支持体から取り外すことによりRNP複合体を回収するステップとを含み得る。
一部の実施形態では、前記RNP複合体中のmRNAは予め決められており、一部の実施形態では、本方法は、(c)mRNP複合体中のmRNAを同定するステップであって、それにより前記miRNAに会合したmRNAの固有情報をさらに含む遺伝子発現プロフィールを作製するステップをさらに含む。
任意の適した1以上の細胞を用いて本発明を行ってよく、それには、限定されるものではないが、植物細胞、動物細胞、細菌細胞、酵母細胞、および原生動物細胞が含まれる。
一部の実施形態では、分離するステップは、複数のRNP複合体を分離するステップを含み、同定するステップは、複数のRNP複合体に会合した複数のncRNAを同定するステップを含む。該方法は、(c)前記複数のRNP複合体に会合した複数のmRNAを同定するステップであって、それにより、mRNAのサブセットに会合したncRNAのサブセットの固有情報をさらに含む遺伝子発現プロフィールを作製するステップをさらに含む。
本発明は、本明細書中の図面および下記に示される本明細書において、より詳細に説明される。
HuRに会合したmRNAおよびmiRNAが、全細胞RNAの別個のサブセットであることを示す。ベン図は、全細胞RNA、PABP−mRNPおよびHuR−mRNP中に存在する別個の(A)メッセンジャーRNA(mRNA)および(B)microRNA(miRNA)を表す。全てのRNA集団を、対数期のジャーカット細胞由来の単一の試料として単離し、その後特定のマイクロアレイプラットフォームでのmRNAおよびmiRNAの解析のために分離した。3つの生物学的複製および三重のアレイ解析からデータを集めた。 RNA結合タンパク質およびmiRNAを介した、組合せ的転写後制御を示す。核(N)および細胞質に局在する遺伝子発現ネットワークの図である。核のネットワークにはDNA結合転写因子が関与し、一方、細胞質のネットワークにはRNABPおよびmiRNAが関与する。核において、複数のプロモータ要素が転写因子により制御され得る。転写後制御は、主に、RNA結合因子とmRNAの5’および3’非翻訳領域(UTR)との相互作用によって起こる。図示されるように、所与のRNABPにより調節されるmRNAサブセットは、組合せ的にmiRNAにより調節される別個のmRNA下位集団にさらに細分することができる。ここに図示される調整された結果は、コードされたタンパク質間の機能的関連または会合したmRNAの運命(安定性/翻訳状態)に反映される。
本発明は、下記の限定されない明細書および実施例においてより詳細に説明される。本明細書において引用される全ての米国特許参照文献の開示内容は、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
本発明の好ましい実施形態が示される、添付される図面および明細書を参照して、これから本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明は異なる形態で実現されてよく、本明細書に示される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が詳細かつ完全であり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。
本明細書における本発明の説明に用いられる用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためのものであり、本発明を制限することを意図するものではない。本発明の説明および添付される特許請求の範囲において用いられるように、単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに別のものを指している場合を除いて複数形も同様に含むことが意図される。別に定義されない限り、本明細書において用いられる全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において言及される全ての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参照文献は、参照によりその全文が援用される。
本明細書において用いられる「メッセンジャーRNA」または「mRNA」は、当分野においてその通常の意味を有し、一般に、翻訳によってそのmRNAからコード化された情報をタンパク質合成部位に運ぶ、DNAから転写されたRNAを指す。本明細書において用いられるmRNAは、プロセシングされていなくても(プレmRNA)またはプロセシングされていてもよく、従ってこの用語は両方を含む。本明細書において用いられるmRNAは任意の適した供給源、一般に脊椎動物、好ましくは、哺乳類(例えば、ヒト、イヌ、ネコ、サル、チンパンジー、マウス、ラット、ウサギなど)に由来してよい。
本明細書において用いられる「非コード調節RNA」または「ncRNA」は、当分野での通常の意味を有する。例としては、限定されるものではないが、piRNA、microRNA、リボソームRNA(rRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子核内RNA(snRNA)、低分子非メッセンジャーRNA(small non−mRNA)(snmRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA)、一過性低分子RNA(small temporal RNA)(stRNA)およびmRNAと相互作用してその機能を調節するその他のRNAが含まれる。例えば、PCT出願公開第2005/102298号参照。
本明細書において用いられる「microRNA」または「miRNA」は、当分野での通常の意味を有する。一般に、miRNAは、局所性RNA前駆体miRNA構造を形成することのできる転写物からプロセシングされたゲノム遺伝子座に由来するRNA分子である。成熟したmiRNAは、通常、20、21、22、23、または24ヌクレオチドを有するが、一部の例では、その他の数のヌクレオチド、例えば、18〜26ヌクレオチドが存在し得る。miRNAは多くの場合ノーザンブロットで検出可能である。miRNAは、ゲノムのフランキング配列と対になることができ、より長い前駆体転写物からそのプロセシングのために必要とされ得る不完全なRNA二本鎖の中に成熟miRNAを配置することができる。動物において、このプロセシングは、より長い一次転写産物のヘアピン部分由来のmiRNA二本鎖を切り出す、DroshaおよびDicerというエンドヌクレアーゼの作用によって起こり得る。miRNA二本鎖は、miRNAと、miRNA(miRNAスター)として知られている、ステムループのもう一方のアーム由来の同様の大きさのセグメントを含む。miRNAは、サイレンシング複合体に入る鎖であるのに対し、miRNAはサイレンシング複合体を分解する。さらに、miRNAは、一般に、予測されたタンパク質コード領域とは異なるゲノムのセグメントに由来する。例えば、米国特許出願公開第20060185027号参照。本明細書において用いられるmiRNAは、任意の適した供給源、一般に脊椎動物、好ましくは、哺乳類(例えば、ヒト、イヌ、ネコ、サル、チンパンジー、マウス、ラット、ウサギなど)に由来してよい。
本明細書において用いられる「mRNA結合タンパク質」または「RNABP」は、RNA会合タンパク質とともに、当分野でそれらの通常の意味を有し、全体的なRNABP(ユニーク配列を識別せずにほぼ全てのmRNAに結合するタンパク質)、グループ特異的RNABP(全体的なmRNA集団のサブセットに会合するタンパク質)、および種特異的RNABP(極めて特異なmRNA配列を認識するタンパク質、一部の場合では、高い特異性でただ1つのmRNAに存在する)が含まれる。例えば、J.Keene et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98,7018,7021(2001)参照。例としては、限定されるものではないが、ELAV/Huファミリー(例えばHuR/Hu1)、elF−4E、ポリ(A)結合タンパク質、PUMILIOファミリー(例えば、Puml)などが含まれる。さらなる例は、次のように、Keeneet al.、米国特許第6,635,422号の表1に示される。
Figure 2010501200
本明細書において用いられるRNABP−miRNA、およびmRNAは、任意の適した供給源に由来してよく、それには、細菌、原生動物、植物および動物が含まれる。植物は、単子葉植物および双子葉植物などの維管束植物であってよく、特定の例としては、限定されるものではないが、トウモロコシまたはメイズ、小麦、大豆、カノーラ、トマトなどが含まれる。動物は、一般に、脊椎動物、好ましくは哺乳類であり、特定の例としては、限定されるものではないが、ヒト、イヌ、ネコ、サル、チンパンジー、マウス、ラット、ウサギなどが含まれる。本発明の特定の実施形態では、RNABP、miRNA、およびmRNAはすべて、起源の同じ種由来の同じ細胞または組織に由来する天然(非トランスジェニック)のものであってよい。
mRNA、ncRNA、miRNAの「サブセット」は、当分野でその通常の意味を有し、その複数の形、一般にRNP複合体の形である。言い換えれば、サブセットは、特定のRNP複合体またはRNP複合体のサブセットの中における結合能力、または特定のRNP複合体またはRNP複合体のサブセットに対する結合能力により定義される。サブセットは、好ましくは、細胞の全集団の定量的もしくは定性的画分である。さらに、mRNA、ncRNA、またはmiRNAのサブセットの中のサブセットは、本発明を用いて同定することができる。例えば、米国特許第6,635,422号参照。
本明細書において用いられる「RNA干渉」または「RNAi」とは、天然のRNA(例えば、miRNA)または人工のRNA(例えば、外から投与された二本鎖RNA)が、例えば、その通常の翻訳を干渉する様式でのmRNAとのハイブリダイゼーションにより、標的または対応するmRNAの翻訳を干渉する、遺伝子発現を弱くするための転写後プロセスを指す。
本発明は、Keene et al.に対する米国特許第6,635,422号に一部記載される技法、または当業者に明らかなその変形形態を利用して、miRNAなどのncRNAのさらなる選択および同定段階が必要であるという条件で行ってよい(mRNAの選択および同定と本質的に同じ様式で、一般に、miRNAなどのncRNAの選択および同定のために最適化された異なるプローブセットまたはマイクロアレイチップで行ってよい)。
別に指定される場合を除いて、本発明に従うクローン化された遺伝子、発現カセット、ベクター、ならびに形質転換細胞および植物の作製のためには標準法を用いてよい。このような方法は当業者に公知である。例えば、J.Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual Second Edition(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989);F.M.Ausubel et al.,Current Protocols In Molecular Biology(Green Publishing Associates,Inc.and Wiley−Interscience,New York,1991)参照。
ヌクレオチドおよびアミノ酸は、本明細書において、IUPAC−IUB生化学命名法委員会、または(アミノ酸に関して)3文字コードに推奨される方法で、37C.F.R.§1.822および確立された使用法に従って表される。例えば、Patentin User Manual,99〜102(1990年11月)(米国特許商標局)参照。
用語「核酸」または「核酸配列」はまた、遺伝子、cDNA、および遺伝子によりコードされるmRNAに関して用いられ得る。用語「遺伝子」は、広く生物学的機能に関連するDNAの任意のセグメントを指すために用いられる。従って、遺伝子には、それらの発現に必要なコード配列および/または調節配列が含まれる。遺伝子にはまた、発現されないDNAセグメント、例えば、その他のタンパク質のための認識配列を形成するものも含まれる。遺伝子は多様な供給源から得ることができ、対象の供給源からのクローニング、あるいは、公知のまたは予測される配列情報からの合成がそれに含まれる。
本明細書において用いられる核酸分子は、RNA(用語「RNA」は全てのリボ核酸を包含し、それには、限定されるものではないが、ncRNA、プレmRNA、mRNA、rRNA、hnRNA、snRNAおよびtRNAが挙げられる);DNA;ペプチド核酸(PNA、例えば、Nielsen et al.に対する米国特許第5,539,082号、およびArlinghaus et al.に対する米国特許第5,821,060号に記載される通り);ならびにそれらの類似体および変更形態が含まれる。本発明の核酸分子は、直線状であっても環状であってもよく、全遺伝子であってもそのフラグメントであってもよく、全長であっても断片化/消化されていてもよく、複数の核酸を含むという意味で「キメラ」であってもよく、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。任意の供給源由来の核酸を本発明で用いてよい。つまり、本発明の核酸には、限定されるものではないが、ゲノム核酸、合成核酸、プラスミドから得た核酸、cDNA、組換え核酸、および本明細書にさらに記載されるよう公知の化学的手法により修飾されている核酸が含まれる。また、核酸は、インビトロ選択実験の産物(アプタマーとも呼ばれる)および、その他のリガンドにより結合するかまたは結合されるそれらの能力に関して有用なその他の核酸分子であってもよい。D.Kenan,TIBS 19,57−64(1994);L.Gold,et al.,Annu.Rev.Biochem.64,763−798(1995);S.E.Osborne and A.D.Ellington,Chem.Rev.97,349−370(1997)参照。
上記に要約されるように、本発明は、RNP複合体を細胞から分離するためのインビボ法に関する。本発明のmRNP複合体は、好ましくは、生体試料、例えば、組織試料、全組織、全器官(例えば、全脳、肝臓、腎臓など)、体液試料、細胞培養、細胞溶解物、細胞抽出物などに由来する。好ましい実施形態では、生体試料は、細胞の集団を含むか、または細胞の集団から得られる。「細胞の集団」は、本明細書において、少なくとも2個の細胞を意味し、少なくとも約10個が好ましく、少なくとも約10個が特に好ましく、少なくとも約10〜10個が特に好ましい。集団または試料は、一次培養かまたは二次培養のいずれかに由来する、あるいは腫瘍などの複合組織に由来する異なる細胞種の混合物を含んでよく、またあるいは単一の細胞種のみを含んでもよい。好ましい実施形態では、増殖型細胞が用いられる。あるいは、非増殖型細胞を用いてもよい。
上に要約されるように、本発明の一態様は、内在性細胞mRNA結合タンパク質(mRNP)複合体を分離するインビボ法である。「内在性」は、本明細書においてmRNP複合体が細胞中に生じることを意味するために用いられる(すなわち、インビボまたはインサイチュー)。mRNP複合体は、細胞中に自然に形成され得る(すなわち、mRNP複合体の成分が細胞中に自然に生じ、mRNP複合体を形成する)。あるいは、mRNP複合体は、たとえ複合体の1以上の成分が、例えば感染または形質転換により細胞に導入されている場合でも、細胞中で形成される。例えば、mRNP複合体は、mRNP複合体の成分であるRNA結合タンパク質が、(例えば)細胞を形質転換することにより、またはタンパク質をコードする核酸を有する発現ベクターに細胞を感染させることにより、細胞中で異所性発現された場合、細胞中で内在的に形成され、タンパク質の結合するmRNP複合体が形成される。
本方法は、一実施形態では、少なくとも1つのmRNP複合体を含む生体試料を、mRNP複合体の成分に特異的に結合するリガンドに接触させることを含む。mRNP複合体の成分は、RNA結合タンパク質、RNA会合タンパク質、mRNP複合体に関連する核酸(mRNA自体、ncRNA、またはmRNP複合体に会合する別の分子もしくは化合物(例えば、炭水化物、脂質、ビタミンなど)を含む)であってよい。成分は、それが約10〜約10のKdを有するmRNP複合体に結合するかまたあるいは付着するならば、mRNP複合体に「会合する」。好ましい実施形態では、成分は、約10〜約10のKdを有する複合体に会合する。より好ましい実施形態では、成分は、約10〜約10のKdを有する複合体に会合する。
リガンドは、mRNP複合体の成分に特異的に結合する任意の分子であってよい。例えば、リガンドは、成分に特異的に結合する抗体、成分に結合する核酸(例えば、アンチセンス分子、成分に結合するRNA分子)、または複合体の成分に特異的に結合する任意のその他の化合物または分子であってよい。特定の実施形態では、リガンドは、mRNP複合体特異的抗体またはタンパク質の産生が関与することが知られている障害を有する被験体(すなわち、ヒトもしくは動物被験体)の血清を用いることにより得ることができる。これらの障害の例としては、自己免疫障害、例えば全身性紅斑性狼瘡(「狼瘡」またはSLE)など、および多数の癌が含まれる。特定の実施形態では、リガンドは、リガンドの分離、観察または検出を促進するために、別の化合物または分子で「タグを付加されて(tagged)」いてよい。本発明の一実施形態では、リガンドは、当分野に記載されるように「エピトープタグが付されている」。適したタグは当分野で公知であり、限定されるものではないが、ビオチン、MS2タンパク質結合部位配列、U1snRNAの70k結合部位配列、U1snRNAのA結合部位配列、g10結合部位配列(Novagen,Inc.,Madison,Wis.,USAより市販されている)、およびFLAG−TAG(登録商標)(Sigma Chemical,St.Louis,Mo.,USA)が含まれる。
mRNP複合体は、次に、リガンド(現在mRNP複合体に結合している)をリガンドに特異的に結合する結合分子に結合させることにより、分離させることができる。結合分子は、リガンドに直接結合してもよいし(すなわち、リガンドに特異的な抗体またはタンパク質であってよい)、またはリガンドに間接的に結合してもよい(すなわち、抗体またはリガンド上のタグの結合パートナーであってよい)。適した結合分子としては、限定されるものではないが、プロテインA、プロテインG、ストレプトアビジンが含まれる。結合分子はまた、例えば、自己免疫障害または癌に罹患している被験体の血清を用いることにより得ることができる。特定の実施形態では、リガンドは、抗体のFab領域を介してmRNP複合体の成分に結合する抗体、および抗体のFc領域に順に結合する結合分子である。結合分子は、当分野で公知の固相支持体、例えば、ビーズ、ウェル、ピン、プレートまたはカラムなどに付着する。従って、mRNP複合体は、リガンドおよび結合分子を介して固相支持体に付着する。
次に、固相支持体からmRNP複合体を取り外すことにより回収することができる(すなわち、複合体は、当業者により決定され得る適当な溶媒を用いて、適当なストリンジェンシー条件下で固相支持体から洗い落とされる)。
本発明の特定の実施形態では、mRNP複合体をリガンドと結合させる前に、mRNP複合体を架橋することにより安定化することができる。本明細書において用いられる架橋とは、共有結合(例えば、mRNP複合体の成分との共有結合)を意味する。架橋は、一般に、非共有結合であるリガンド−標的結合、または結合分子−リガンド結合に対比され得る。架橋は、物理的手段により(例えば、熱または紫外線により)、または化学的手段により(例えば、複合体をホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、またはその他の公知の架橋剤に接触させることにより)行ってよく、それらの手段は当業者に公知であるか、または当業者により決定できる。その他の実施形態では、リガンドは、mRNP複合体への結合の後にmRNP複合体に架橋されてよい。さらなる実施形態では、結合分子は、リガンドへの結合の後にリガンドに架橋されてよい。さらに他の実施形態では、結合分子は固相支持体に架橋されてよい。
当業者は、本方法が複数のmRNP複合体の同定を同時に(例えば、「一斉に」)可能にすることを理解する。例えば、生体試料は、異なるmRNP複合体成分に特異的な複数のリガンドに接触させてよい。試料由来の複数のmRNP複合体は、多様なリガンドに結合する。次に、複数のmRNP複合体は、適当な結合分子を用いて分離することができ、従って複数のmRNP複合体を単離することができる。mRNP複合体ならびに複合体に含有されるmRNAおよびncRNAは、次に、本明細書に記載される方法および当分野で公知の方法により特性決定され、かつ/または同定されてよい。あるいは、本方法は1つの試料で何度も行ってよく、本発明の段階は、段階の各反復には異なるリガンドを利用して、連続法で行われる。
上記に示すように、mRNAおよび/またはncRNAのサブセットは、その試料中のRNAの構造的または機能的ネットワークの特徴であるパターン認識プロフィールを識別する。任意の特定の細胞または組織試料に対するmRNAおよび/またはncRNAサブセットのコレクションは、その細胞または組織に関する遺伝子発現プロフィール、より具体的には、リボノミック(ribonomic)遺伝子発現プロフィールを構成する。リボノミック発現プロフィールが、試料中の細胞の種類(例えば、その細胞がどんな種類または組織種であるか)、細胞の分化の状態、細胞の生存力(すなわち、細胞が有害な遺伝子、例えば癌遺伝子などに感染しているかまたはそれを発現しているか、あるいは、細胞が特定の遺伝子を欠くか、または特定の遺伝子を発現していないか)、mRNP複合体を単離するために用いた特定のリガンドなどに応じて、細胞ごとに異なり得ることは当然理解される。従って、細胞のリボノミック発現プロフィールは、細胞の識別子として用いることができ、当業者が異なる細胞のプロフィールまたはサブプロフィールを比較および識別することを可能にする。各リボノミックパターンに存在するRNAにより同定された遺伝子は、特定の細胞周期、分化の段階、アポトーシスもしくはストレス誘導、ウイルス感染、または癌に関連し得る別個のサブセットを形成する。
cDNAは、リガンドまたはmRNP複合体の成分に特異的なリガンドによって分離されたmRNP複合体を同定するために使用できる。cDNAマイクロアレイグリッドを、例えば、mRNAおよびncRNAサブセットを一斉に同定するために用いることができる。あるいは、ゲノムマイクロアレイ(例えば、標的核酸がイントロンとエキソンを含有し得るマイクロアレイ)を用いてよい。すなわち、マイクロアレイで検査されるそれぞれの遺伝子または標的核酸は、位置づけられる正確な位置情報を有しているため、結合を定量化することができる。シリコン化されたチップの形態のマイクロアレイまたはナイロンまたはニトロセルロース上のcDNAブロットに基づくマイクロアレイが市販されている。スライドガラスも、相補的RNA配列の検出のためのオリゴヌクレオチドまたはDNAでカスタマイズすることができる。これらの場合のすべてにおいて、ハイブリダイゼーションプラットフォームは、結合および洗浄のストリンジェンシーに基づく、試料中のmRNAおよびncRNAの同定を可能にする。これは、「ハイブリダイゼーションによる配列決定」と呼ばれている。マイクロアレイ技術は分析の一方法であるが、mRNAおよびncRNAサブセット中のmRNAおよびncRNAの同定および/または配列決定のための唯一の方法である。代替的アプローチとしては、限定されるものではないが、ディファレンシャルディスプレイ、ファージディスプレイ/分析、SAGEまたは単にmRNAおよびncRNA調製物からcDNAライブラリーを調製し、そのライブラリーの全てのメンバーを配列決定することが含まれる。
当分野で周知であり、一般に利用可能なDNA塩基配列決定法のための方法を用いて、本発明の実施形態のいずれかを実践することができる。該方法は、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、SEQUENASE(登録商標)(US Biochemical Corp,Cleveland,Ohio)、Taqポリメラーゼ(Perkin Elmer)、熱安定性T7ポリメラーゼ(Amersham,Chicago,Ill.)、または、Gibco/BRL(Gaithersburg,Md.)により市販されているELONGASE増幅システムに見出されるものなどのポリメラーゼと校正エキソヌクレアーゼの組合せなどの酵素を用いてよい。好ましくは、本プロセスは、機械、例えばHamilton Micro Lab 2200(Hamilton,Reno,Nev.)、Peltier Thermal Cycler(PTC200;MJ Research,Watertown,Mass.)ならびにABI触媒および373および377 DNA Sequencers(Perkin Elmer)などで自動化される。
好ましい実施形態では、本発明に従って単離されたmRNAおよびncRNA、および/またはmRNAから得たcDNAの増幅は、核酸の同定の間には行われず、本発明に必要または必須ではない。しかし、当業者であれば、便宜上同定の対象である核酸(例えば、マイクロアレイ解析および/または配列決定により同定される核酸)を増幅すること、好みの問題として、および/あるいは特定の市販のマイクロアレイまたはマイクロアレイ解析システムの仕様書/取扱説明書に従うことを選択することができる。従って、所望であれば、核酸は、当分野で周知の多数の公知の核酸増幅法(例えば、PCR、RT−PCR、QC−PCR、SDAなど)のいずれかに従って増幅させてよい。
本発明の方法は、実施者の必要に応じて、および本発明の実施される目的に従って、いくつかの方法で実施してよい。例えば、一実施形態では、対象の細胞種に特有のmRNA結合タンパク質複合体が同定される。そのような実施形態の例では、mRNP複合体に特異的な抗体を用いて、複合体をそれと会合したmRNAおよびncRNAとともに免疫沈降させることができる。次に、RNAを同定してその細胞種のリボノミック発現プロフィールを形成するか、またあるいは、(例として)薬物スクリーニングのために単離することができる。転写後制御のためのmRNAおよび/またはncRNA候補物を、サブセットとして、細胞周期または発生に伴う諸現象中のmRNAおよび/またはncRNA安定性の変化について一斉に解析してよい。特定の実施形態では、本方法は、発生または細胞周期の変化を受けている細胞から核を単離し、公知の技法に従う核ランオフアッセイを行って転写mRNAおよび/またはncRNAを得、次に、cDNAマイクロアレイを用いて同じ細胞中での転写mRNAおよび/またはncRNAを全体的なmRNAおよび/またはncRNAレベルと比較することにより実施され得る。これらの方法は、従って、定常状態のmRNAおよび/またはncRNAレベルでの転写の効果と転写後の効果を一斉に識別する能力をもたらす。
もう1つの実施形態では、培養中の細胞を形質転換してRNA結合タンパク質(RBP)または、対象の細胞種において特定のmRNAおよびncRNAのみと会合するRNA会合タンパク質(RAP)を発現させる。RBPまたはRAPをコードするDNAは、組換えベクター(例えば、プラスミド、ウイルスベクター)により運ばれ、公知の手段により細胞を形質転換することができ、その後RBPまたはRAPが細胞中で発現される。本明細書においてさらに説明されるような、任意のRBPまたはRAPを用いてよい。タンパク質はその天然の形態であってもよいし、細胞から回収しやすくするためにタグを付加されていてもよい(例えば、エピトープタグ)。RBPまたはRAPに結合または会合している複数のRNA標的のインビボでの検出は、必要に応じて、結合しやすいエピトープを用いて行ってよいが、好ましくはタグを用いずに実施する。RBPまたはRAP上のエピトープが結合しにくいかまたは不明瞭である場合、異所性発現した組換えタンパク質のエピトープタグを用いてよい。形質転換細胞は、その他の細胞種と混合してもよいし、動物またはヒト被験体に埋め込んでもよい。タンパク質に特異的なリガンド(例えば、抗体)を用いて、タンパク質をその会合したメッセンジャーRNAとともに、形質転換細胞を含有する組織の抽出物から免疫沈降させることができる。mRNAおよびncRNA複合体およびその会合したRNAは、次に同定されてその細胞種の発現プロフィールを形成するか、またあるいは分析される(例えば、薬品開発のため)。
さらに別の実施形態では、動物において特定の細胞種を1以上の細胞種特異的遺伝子プロモータを用いて操作して、対象の細胞種においてRBPまたはRAPを発現させる。上記に示したように、遺伝子プロモータおよびRBPまたはRAPは、1以上のベクターで運ばれ、細胞に形質転換されることができ、そこでRBPまたはRAPが発現される。一実施形態では、このタンパク質に特異的なリガンド(例えば、抗体)を用いて、タンパク質をその付着または会合したmRNAおよびncRNAとともに、対象の細胞種を含有する組織の抽出物から免疫沈降させることができる。次に、RNAを同定してその細胞種の発現プロフィールを形成するか、または、例えば、薬品開発のために単離する。
本発明の実践において有用なRNA結合タンパク質(RBP)およびRNA会合タンパク質(RAP)は、当分野で公知であり、またあるいは、本明細書に記載される方法により同定および発見され得る。RNA結合タンパク質は、現在、様々な細胞の調節および発生過程、例えばRNAプロセシングおよびコンパートメント化(compartmentalization)、RNA安定化、mRNA翻訳およびウイルス遺伝子発現などの制御に関与しているとして公知である。RNA結合タンパク質には、ポリA結合タンパク質(「PABP」、全mRNA集団とは定量的に異なる全mRNA集団のサブセットに生じる)、およびその他の一般的なRNA結合タンパク質、ならびに特定の細胞種において唯一または少数のメッセンジャーRNAに付着するRNA結合タンパク質が含まれる。その他の有用なタンパク質は、RNAおよびRNA結合タンパク質に反応性の自己抗体である。
有用なRNA結合タンパク質およびRNA会合タンパク質の例は、上に記載され、ショウジョウバエELAV−RNA結合タンパク質の4つのELAV/Hu哺乳類相同体を含む(Good(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92,4557−4561;Antic and Keene、前掲。HuA(HuR)は遍在的に発現し、一方、HuB、HuCおよびHuD(およびそれらの各自の選択的にスプライスされたイソ型)は主に神経組織で見出されるが、一部の小細胞癌、神経芽腫、および髄芽細胞腫において腫瘍細胞特異的抗原として発現することもできる(Keene(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96,5−7に概説)。全てのHuタンパク質は3つのRNA認識モチーフ(RRM)を含有し、それはそれらのAREに対する結合特異性を付与する(Antic and Keene,前掲;Kenan et al.(1991)Trends Biochem.Sci.16,214−220;Burd and Dreyfuss(1994)Science 265,615−621)。Huタンパク質によるARE結合の根拠は、組換えHuBでスクリーニングされたランダム化コンビナトリアルRNAライブラリー由来の、AUに富む結合コンセンサス配列の同定から始まった。(Levine et al.(1993)Mol.Cell Biol.13,3494−3504;Gao et al.,(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,11207−11211)。これらおよびその他の研究は、Huタンパク質がインビトロで、c−myc、c−fos、GM−CSFおよびGAP−43を含む数個のARE含有ERG mRNAと結合することを実証した(Levine et al.(1993)Mol.Cell Biol.13,3494−3504;Gao et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,11207−11211;King et al.(1994)J.Neurosci.14,1943−1952;Liu et a.(1995)Neurology 45,544−550;Ma et al(1996)J.Biol.Chem.271,8144−8151;Abe et al.(1996)Nucleic Acids Res.24,2011−2016;Chung et al.(1997)J.Biol.Chem.272,6593−6598;Fan and Steitz(1998)EMBO J.17,3448−3460;Antic et al.(1999)Genes Dev.13,449−461)。
Huタンパク質とARE含有mRNAの結合は、mRNA転写物の安定化および増大した翻訳可能性をもたらし得る(Jain et al.(1997)Mol.Cell Biol.17,954−962;Levy et al.(1998)J.Biol.Chem.273,6417−6423;Fan and Steitz(1998)EMBO J.17,3448−3460;Peng et al.(1998)EMBO J.17,3461−3470)。ニューロン特異的Huタンパク質は、テラトカルシノーマ細胞で産生され、その後レチノイン酸(RA)処理されてニューロン分化を誘導する最も初期神経細胞マーカーの1つである(Antic et al.,supra;Gao and Keene(1996)J.Cell Sci.109,579−589)。
一実施形態では、本発明を実施するために用いたリガンドは、プレメッセンジャーRNAプロセシングに関与する細胞タンパク質のRNA認識モチーフ(RRM)ファミリーから選択されるRNA結合タンパク質である。そのようなタンパク質の一例は、U1A snRNPタンパク質である。RRMスーパーファミリーの200を超えるメンバーがこれまでに報告され、その大多数は遍在的に発現し、系統発生において保存されている(Query et al,Cell(1989)57:89−101;Kenan et al,Trends Biochem.Sci.(1991)16:214−220)。大部分は、ポリアデニル酸mRNAまたは核内低分子リボ核酸(例えば、U1、U2など)トランスファーRNA、5Sまたは7SRNAに対する結合特異性を有することが公知である。それらとしては、限定されるものではないが、hnRNPタンパク質(A、B、C、D、E、F、G、H、I、K、L)、RRMタンパク質CArG、DT−7、PTB、K1、K2、K3、HuD、HUC、rbp9、elF4B、sxl、tra−2、AUBF、AUF、32KDタンパク質、ASF/SF2、U2AF、SC35、およびその他のhnRNPタンパク質が含まれる。RRMファミリーの組織特異的メンバーはあまり一般的ではないが、IMP、Bruno、AZP−RRMI、プレB細胞で発現するX16、パフ(puff)特異的ショウジョウバエタンパク質であるBj6、およびニューロン特異的なELAV/Huが含まれる。
本発明の実践に有用なRNA結合およびRNA会合タンパク質としては、限定されるものではないが、上に記載されるものが含まれる。
mRNP複合体に特異的に結合する抗体は公知であり、例えば、Keene et al.に対する米国特許第6,635,422号に記載されている。
本発明を用いて、ncRNA、例えば、RNPに結合するかまたはRNPの中で相互作用するmiRNA、疾病の進行に関係するタンパク質(対象のタンパク質)をコードするmRNAなどを同定することができる。そのようなmRNAは、予め決められていても、亜集団、本発明の方法により生成されたmRNAのサブセット(例えば、対象のタンパク質を発現することの分かっている細胞を本方法の実施に利用する場合)から同定されてもよい。このようなタンパク質をコードするmRNAの例としては、限定されるものではないが、Ranaに対する米国特許第6,503,713号の§5.1に記載されているものが含まれる。具体的な例としては、限定されるものではないが、タンパク質、例えば、アミロイドタンパク質、アミロイド前駆体タンパク質、アンギオスタチン、エンドスタチン、METH−1、METH−2、第IX因子、第VIII因子、コラーゲン、サイクリン依存性キナーゼ、サイクリンD1、サイクリンE、WAF1、cdk4阻害剤、MTS1、嚢胞性繊維症膜コンダクタンス制御因子遺伝子、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、エリスロポエチン、G−CSF、GM−CSF、M−CSF、SCF、トロンボポエチン、BNDF、BMP、GGRP、EGF、FGF、GDNF、GGF、HGF、IGF−1、IGF−2、KGF、ミオトロフィン、NGF、OSM、PDGF、ソマトトロフィン(somatotrophin)、TGF−β、TGF−α、VEGF、インターフェロン、TNF−α、TNF−β、カテプシンK、シトクロムP−450、ファメシルトランスフェラーゼ、グルタチオン−sトランスフェラーゼ、ヘパラナーゼ、HMG CoAシンセターゼ、n−アセチルトランスフェラーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、ホスホジエステラーゼ、rasカルボキシル末端プロテアーゼ、テロメラーゼ、TNF変換酵素、E−カドヘリン、N−カドヘリン、セレクチン、CD40、5−αレダクターゼ、心房性ナトリウム利尿因子、カルシトニン、コルチコトロピン放出因子、グルカゴン、ゴナドトロピン、ゴナドトロピン放出ホルモン、成長ホルモン、成長ホルモン放出因子、ソマトトロピン(somatotropin)、インスリン、レプチン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、副甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、抗体、CTLA4、血球凝集素、MHCタンパク質、VLA−4、カリクレイン−キニノゲン−キニン系、CD4、sis、hst、ras、abl、mos、myc、fos、jun、H−ras、ki−ras、c−fms、bcl−2、L−myc、c−myc、gip、gsp、HER−2、ボンベシン受容体、エストロゲン受容体、GABA受容体、EGFR、PDGFR、FGFR、NGFR、GTP−結合調節タンパク質、インターロイキン受容体、イオンチャネル受容体、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト、リポタンパク質受容体、オピオイド疼痛受容体、サブスタンスP受容体、レチノイン酸およびレチノイド受容体、ステロイド受容体、T細胞受容体、甲状腺ホルモン受容体、TNF受容体、組織プラスミノーゲン活性化因子;膜貫通型受容体、カルシウムポンプ、プロトンポンプ、ナトリウム/カルシウム交換輸送体、MRP1、MRP2、P170、LRP、cMOAT、トランスフェリン、APC、brca1、brca2、DCC、MCC、MTS1、NF1、NF2、nm23、p53およびRbなどをコードするmRNAが含まれる。例えば、米国特許第6,503,713号参照。さらなる例が米国特許出願第2003/0073610号の表1に記載され、それには、限定されるものではないが、異常な(aberant)タンパク質堆積に関与するタンパク質、例えば、α−シヌクレイン(パーキンソン病);アミロイド−β(アルツハイマー病)Tau(アルツハイマー病)、PrP(プリオン病);ハンチンチン(ハンチントン病);アタキシン−1(脊髄小脳失調症1型)アタキシン−2(脊髄小脳失調症2型);アタキシン−3(脊髄小脳失調症3型);カルシウムチャネル(脊髄小脳失調症6型);アタキシン−7(脊髄小脳失調症7型);アンドロゲン受容体(球脊髄性筋萎縮症);アトロピン(Atrophin)−1(歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症);SOD1(筋萎縮性側索硬化症);免疫グロブリン軽鎖(原発性全身性アミロイドーシス);トランスサイレチン(家族性アミロイドポリニューロパチー;老人性全身性アミロイドーシス);血清アミロイドA(続発性全身性アミロイドーシス);膵島アミロイドポリペプチド(2型糖尿病);インスリン(注射による局所性アミロイドーシス(Injection−localized amyloidosis));β2−ミクログロブリンン(血液透析に関連するアミロイドーシス);シスタチン−C(遺伝性脳アミロイド血管症);ゲルゾリン(フィンランド型遺伝性全身性アミロイドーシス(Finnish hereditary systemic amyloidosis));およびリゾチームをコードするmRNAが含まれる。
本発明の方法により同定されたncRNAおよびmiRNAは、RNA干渉(RNAi)活性物質、例えば米国特許第7,078,196号;米国特許第6,503,713号(特にその中の§5.2);および米国特許出願第2004/0086884号に記載されるものなどとして、天然型または誘導体型で有用である。さらに、本発明を用いて定義される分子間相互作用および相互作用部位は、化合物および試薬、例えば干渉RNAなどの開発のための有効な標的を提供することができる。
本発明により同定されるncRNAおよびmiRNAは、1以上の特定のタンパク質またはペプチドの産生を下方制御し(例えば、細菌細胞、植物細胞、動物細胞、または酵母細胞の増殖期の間のRNA干渉)、その後、続いて起こる産生期の間にその下方制御を除去することを望む場合に、インビトロまたはインビボでのタンパク質またはペプチドの産生に有用である。このような適用は、本明細書に記載されるものなどの疾患を治療する際に、さらに組換えタンパク質およびペプチドの産生において有用である。
一部の例では、例えば、タンパク質の発現の下方制御が望ましくないかまたは病態である場合、ncRNAまたはmiRNAをインビボで阻害または不活化することが望まれる。そのような場合には、本発明のncRNAおよびmiRNAは、それとハイブリダイズする抗miRNAまたは抗ncRNAオリゴヌクレオチド(AMO)を設計するのに有用であり、AMOは、そのように定義されたmRNA標的にコードされる所与タンパク質の発現を調節するために、公知の技法に従って設計および合成することができる。例えば、J.Weiler et al.,Anti−miRNA oligonucleotides(AMOs);ammunition to target miRNAs implicated in human disease,Gene Therapy 13:496−502(2006)参照。
本発明の方法により同定されたncRNASおよびmiRNA(またはそのサブセットおよび組合せ)は、それらが結合するかまたは会合するRNABPおよび対応するmRNA(またはそのサブセット)とともに、仮説上のまたは提案されるmiRNAを対応するmRNA、例えば、米国特許出願第2006/0185027号に記載されるものなどから同定または生成するためのモデルおよびアルゴリズムを改良するための、確認データ、検証データ、または訓練データを得るのに有用である。例えば、下の表2に示されるデータは、市販のアルゴリズムにより可能性のあるmiRNA標的と予測された1013のmRNAのクラスを108のmRNAのより小さなサブセットに絞り、それによりmiRNA標的の同定を加速および促進させることを例示する。
本発明を、以下の限定されない実施例においてより詳細に説明する。
microRNAおよび予測されたmRNA標的の個別のサブセットはHuR mRNPの成分に富む
内在性RNPのRNAおよびタンパク質成分を調査するため、本発明者らは、ヒトジャーカットT細胞系統中の調節RNA結合タンパク質HuRに会合したmiRNAおよびmRNA集団のゲノム規模での分析を行った。遍在的に発現した哺乳類HuRタンパク質は、全てが主に標的mRNAの3’UTR中のAUに富む要素(ARE)との会合によって機能し、その結果、伝達安定性および/または翻訳が強化されている、ELAV/Huファミリーの4つのメンバーの中の1つである(12〜14)。近年、HuRもストレス条件に付されたヒト肝細胞癌細胞系統において陽イオン性アミノ酸輸送体1(CAT−1)mRNAのmicroRNA miR−122翻訳抑制を抑制解除することが示された(6)。
本発明者らは、miRNAおよびmRNAの別個のサブセットは、ヒトジャーカットT細胞においてHuRと会合すること、およびmRNAの下位集団が、計算によって予測された、多くの成長調節タンパク質をコードするmiRNA標的について高度に濃縮されていることをここに報告する。HuRの中に見出された14のmiRNAの中で、mRNPは既に癌遺伝子に関連があるとされているmir−17−92クラスター、ならびにアポトーシス、慢性リンパ性白血病およびARE介在性mRNA崩壊に関連すると報告されているmiR−16のメンバーである(5、15〜17)。この報告は、miRNAのサブセットが、これも機能的に関連する標的mRNAについて濃縮されている、特定のRNP複合体の成分であることの最初の実証である。生物学的に誘導された共通のサブセットであるので、これらのHuR RNP会合miRNAおよびmRNAは、所与細胞内容におけるmiRNAターゲッティングおよび予測されたmiRNA:mRNA相互作用の成果を調べるための、非常に減少した配列スペースをもたらす。本発明者らはRNABPとmiRNAの間の可能性のある組合せの関係、標的化されたmRNA下位集団の調節および得られる遺伝子発現ネットワークに取り組む。本発明者らは、例えばRNABPなどの転写後機構によって調節されたmRNAが、選択的に進化するか、または遺伝子発現の結果を多様化または調整するためのさらなる転写後制御因子を獲得し得ることを提案する。
この研究において、内在性HuRおよびポリ(A)結合タンパク質(PABP)mRNPは、ジャーカット細胞溶解物から特異的抗体を用いた免疫沈降により直接単離された。これらのmRNP、ならびに全細胞RNAから抽出されたRNAを、市販のmRNAマイクロアレイプラットフォームおよび既に有効とされているmiRNAに特異的なアレイプラットフォームで解析した(「材料および方法」参照)。結果は、HuRがインビボで全細胞mRNAとmiRNAの両方の別個のサブセットに会合することを示す(図1)。興味深いことに、HuRは、mRNA(10%)よりも大きな細胞miRNAの画分(23%)に会合し、一方、PABPは各々比例的に会合する(それぞれ85%および84%)。その他の2つのRNABPについても試験したが、これらのRNAサブセットは作製されなかった(データは示さず)。HuRに会合した14のmiRNAを、シード配列保存(表1A)に基づくおよそ62の公知のファミリーの中から7つのmiRNAファミリーに分類する(18、19)。いくつかのHuR会合miRNAが、Huタンパク質が十分確立された制御因子であるARE介在性RNA安定性および翻訳にも関連するプロセスにおいて機能すると既に報告されている。これらには、miR−16、miR−17 oncomirクラスター(miR17−5pおよびmiR−19bを含む)およびlet−7ファミリー(13、15、16、20、21)による細胞増殖およびアポトーシスへの影響が含まれる。さらに、miR−16は、RNABPトリステトラプロリン(TTP)およびHuRの予期される結合部位でもあるARE配列モチーフによって介在されるTNF−αmRNAの不安定性に関与する(5)。
HuR会合miRNAサブセットによるmRNAターゲッティングに対処するため、本発明者らは、標的mRNAを予測するためのmiRNAシードマッチの進化的保存に依存するTargetScanSアルゴリズムを利用した(19)。7つのHuR会合miRNAファミリーが予測されて、5つの脊椎動物種の3’UTR中に保存された1084の位置づけられたmRNAを標的化する(「材料および方法」参照)。これらのmRNAの中の439は、ジャーカット細胞の全RNAで発現され、一方、108はHuRと会合する(表2)。これらの108のmRNAのHuRとの会合は、TargetScanSを用いて決定されるmiRNA標的の例外的な濃縮を表し、2.6e〜16のp値(HuR mRNP中のmiRNA標的の濃縮が偶然起こる確率)を生じる超幾何統計的検定(hypergeometric statistical test)により確認した。全miRNA(62ファミリーを表す)から無作為に選択される7つのmiRNAファミリーセットの群のさらなる分析も、HuR mRNP中のmRNAに対する標的濃縮を示す。興味深いことに、さらなる130のmRNAのみがこの場合標的化された下位集団に加えられる(データは示さず)。総合すると、これらのデータは、HuR会合mRNAの別個の下位集団がmiRNAにより選択的に標的化されることを実証する。これは、Huファミリータンパク質の多くのmRNA標的が、細胞増殖および分化に関与する初期応答遺伝子タンパク質をコードし、プロセスもmiRNA調節に関与するという事実に一致する(1、2、12、13、22)。
HuR会合miRNAの標的であると予測されたmRNAの遺伝子オントロジー分析により、いくつかの機能的アノテーショングループの濃縮が明らかとなる(表3)。HuR会合miRNA標的は、10のアノテーショングループにおいて統計上有意な濃縮を示すタンパク質をコードし、一方、包括的にジャーカット全RNAに発現されるものは16のカテゴリーにおいて濃縮されている。興味深いことに、2つの分析間でたった3つの官能基しか重複せず、この場合も、予測されたmiRNA標的のHuRとの会合が無作為ではなく、別個の機能クラスでの濃縮を表すことを示唆する。HuRと会合することが見出された予測されたmiRNAのmRNA標的は、主に転写制御およびRNA代謝に関する機能カテゴリーにおいて濃縮され、2つの区域はHuR調節にも寄与する(13、23)。これらの知見は、RNABPおよびmiRNAによる転写および転写後制御ネットワークの相互接続および潜在的協調に一致する(7、22〜24)。
miRNAに直接標的化され得るmRNAの包括的集団の現在の理解は、ほぼ完全に計算によるアプローチに依存し、これらのアルゴリズムは、これらの相互作用のかなり進化した機能予測を有する。しかし、これらの予測における厳密な進化的保存に対する信頼は、種特異的であるmRNA標的を見過ごす可能性がある。ここに報告される内在的に会合したmiRNA:mRNA下位集団の単離は、生産的相互作用について調査されるべき配列スペースを実質的に減らし、その多くは細胞種、成長条件または細胞内の状況に依存し得る。例として、RNABP、およびRNPは、概して、mRNA標的との条件依存性会合を提示することが実証されている(22)。RNABPおよび標的mRNAが所与細胞中に単に存在しているだけでは、それらのインビボ相互作用の単独の決定因子とならないことは明らかである。これらの動態に内在する機構は十分理解されていないが、細胞内コンパートメント化、RNPの成分の翻訳後修飾、タンパク質または非コードRNAアクセサリー因子のいずれかの存在、およびその他の転写後メディエーターとの競合または協調が含まれ得る(13、25)。RNABP TTPが、腫瘍壊死因子mRNAのARE介在性崩壊においてmiR−16と相互依存的に機能し、HuRがmiR−122に介在される翻訳阻害を条件的に抑制解除することができるという以前の報告も、転写後メディエーター間の機能的相互作用を調査する細胞の状況の重要性を示す(5、6)。HuRによるmiR−122抑制の開放の結果、活発に翻訳するポリソームに対して標的化mRNAが補充され、ニューロンHuBタンパク質を用いる以前の研究に一致する(12)。本発明者らの現在の結果は、miRNA:mRNA相互作用が同時に標的化された転写物のHuR結合により維持されるという示唆を支持する(6)。しかし、miRNAに介在される翻訳阻害の解除がHuRによるmRNAの同時標的化の普遍的な結果であるかどうかは不明である。これらのHuRによる活性ポリソームへのmRNA補充が、miRNA抑制解除のより一般的な機構であり、mRNAとのmiRNAの相互作用が維持されるならば、より包括的な抑制解除の動的可逆性に対する可能性が、細胞の条件変化およびHuR会合が失われた場合に、もたらされる。本明細書に報告されるHuRおよびHuR−RNP会合miRNAサブセットが、広範な同時会合mRNA集団および得られるタンパク質発現の状況的運命にどのように影響を及ぼすかを理解するためには、さらなる研究が必要である。
本明細書に提示されるデータは、転写後RNAオペロン理論に対する推論を支持する(7、24)。このモデルの中心的な断定は、機能的に関連する遺伝子が、転写後レベルでトランス活性化因子、例えば、それぞれのmRNA中の関連調節配列要素を認識するRNABPおよびmiRNAなどにより、組合せによって同時調節されるということである。本発明者らによる、HuR−mRNPにおいて別個のmiRNAサブセットと標的の濃縮された特定のmRNA群が会合するという実証は、このモデルを支持している。さらに、それはRNABP会合mRNAが、miRNAなどのその他の転写後調節因子による可能性のある調節に基づいて、さらに下位集団に分離され得ることを示唆する。組合せ的調節に加えられた層は潜在的に広大であり、遺伝子発現ならびにアジリティの広範な微調整を可能にし、同時に発達プログラムのより広範な方向付けを維持することができる(26)。
HuRは、miRNAの予測された標的について濃縮されたmRNAのサブセットに加えて、別個のmiRNAのサブセットと会合することが報告された最初のRNABPである。HuRはARE結合および調節タンパク質として確立されているので、これらのデータは、AUに富む3’UTRを含有するmRNAのヒトmiRNAによる選択的ターゲッティングを予測するために用いられてきた生物情報科学アプローチに一致する(27)。さらに、UTRの進化および遺伝子発現プログラムのロバスト性は、転写後制御因子によりかなりの影響を受けていると思われる(7〜9、28〜30)。本発明者らのデータは、異なるクラスの転写後因子の組合せ的効果がこの進化的前進を実際に仲介することを示唆する。哺乳類細胞において、HuR会合mRNAの下位集団が、予測されたmiRNA標的について高度に濃縮されたという本発明者らの知見から、本発明者らは、転写後制御されるmRNAの多くが進化し、または複数の機構を介した組合せ的調節を可能にする配列要素を獲得し得ることを提示する。これらのRNA−RNAおよびRNA−タンパク質相互作用の協調のより徹底した理解には、RNABP、miRNAおよびそれらが同時に標的化するメッセンジャーRNAを含む、生物学的に定義されたネットワークの解明が必要とされる。
[参考文献]
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<材料および方法>
細胞培養および細胞溶解物の調製。ヒト急性T細胞白血病ジャーカット細胞を、10%FBS(GIBCO/BRL)を添加したRPMI1640中で培養した。細胞溶解物は(1)に本質的に記載されるように調製した。例外としては、ポリソーム溶解バッファーに10%グリセロールを添加したことと、回収した細胞を溶解バッファーに再懸濁した後に細胞溶解物を27ゲージ針に10回通過させたことが含まれる。
IPアッセイおよびRNAの単離。内在性HuRおよびPABP−mRNP複合体のIPを用いて内在性標的mRNAの会合を評価した。アッセイは(1、2)に本質的に記載されるように行った。IPには、60μgの抗HuR(3A2)を負荷した、既に膨潤し充填された200μlのプロテインAセファロースビーズ(Sigma)(3)、抗PABP(4)、IgG1(BD PharMingen)または正常なウサギ血清免疫グロブリンを利用した。抗体負荷ビーズを、5mg(全タンパク質)細胞溶解物とともに4℃にて4時間インキュベートし、氷冷NT2バッファー(50mM Tris pH 7.4/150mM NaCl/1mM MgCl2/0.05% Nonidet P−40)で4回洗浄し、それに続いて1M尿素を追加した氷冷NT2で3回洗浄した。会合したRNAの抽出を(1)に記載されるように行い、トリゾール試薬(GIBCO/BRL)を用いて全RNAを単離した。全てのRNA試料を、mRNAもしくはmiRNAアレイによるその後の分析のために2つのアリコートに分けた。
mRNAアレイ解析。全RNAおよびRNP会合RNA(および陰性対照IP)を、mRNAについて2色のOperon社製Human Oligo Arrays(バージョン2.1)を用いて、(5)に記載されるようにアッセイした。プローブ作製には実験試料(Cy3)およびStratagene Universal Human Reference RNA(Cy5)の直接標識を用いた。GeneSpring GX7.3(Agilent)を用いて、スポットあたりおよびチップあたりの(lowess)正規化を行って結果を解析した。mRNAは、3つの生物学的複製アレイのうち2つについて、実験チャネルにおいてローカルバックグラウンドの2倍以上、ならびに平行陰性対照IP(IgG1または正常なウサギ血清)のシグナル/ノイズ比の10倍以上のレベルで存在するならば、全RNAの成分または所与RNABPの特定の内在標的であると決定された。
microRNAアレイ解析。全RNAおよびRNP会合RNA(および陰性対照IP)を、(6)に本質的に記載されるように、156のヒトmiRNAを検出できるカスタムアレイプラットフォームを用いてmiRNAについてアッセイした。例外として、標識バッファー中10μg/ml BSA、および標識のための基準オリゴヌクレオチド濃度0.05μMを使用した。アレイを、25℃にて2×SSC/0.025%SDS中で1回、23℃にて0.8×SSC中で3回、そして4℃にて0.4×SSC中で2回洗浄した。各アレイでの計算による解析を(6)に記載されるように行った。miRNAは、3つの生物学的複製アレイのうち2つについて、複製スポットにおいてローカルバックグラウンドの2倍以上、ならびに平行陰性対照IP(IgG1または正常なウサギ血清)のシグナル/ノイズ比の10倍以上のレベルで存在するならば、全RNAの成分または所与RNABPと会合した成分であると決定された。
microRNA標的濃縮解析。miRNA標的予測は、Lewis et al.の補足データから選んだ(7)。このアルゴリズムは複数のアラインメントを用いて、miRNAの8位に対するワトソン/クリック対の一方、または標的の1位の保存されたアデノシンのいずれかに隣接するmiRNAの2〜7塩基に対して対となる保存されたワトソン/クリック六量体を同定する。本発明者らは、5つの種のアラインメント(ヒト、マウス、ラット、イヌ、およびニワトリ)において保存された12928の予測を用いた。Lewis et al.は、これらの予測を、UCSCゲノムアノテーションから得たcDNAのIDとして提供し、それは1つの遺伝子に対して報告される数個のcDNAの形態で重複エントリーをもたらし得る。これら重複を取り除くため、本発明者らは、予測されたmRNA標的を2005年8月現在で特有のEnsembl遺伝子IDに位置づけ、10182の予測を残した。また、Ensembl IDにより、本発明者らは予測された標的遺伝子とmRNAマイクロアレイプローブを照合することが可能となった(表2)。本発明者らは、62全てのmiRNAファミリーに対する標的を、mRNAアレイプラットフォームに示された2518の遺伝子に対してマッピングし、その中の1003をジャーカット細胞において発現されたとして検出した。HuRに会合した標的mRNAの濃縮は、全細胞RNAと比較する超幾何学的試験により決定された。
遺伝子オントロジー濃縮解析。HuR会合miRNAの標的であると予測されたmRNAの遺伝子リストを、Pantherデータベースを用いて、完全なNCBI H.サピエンス遺伝子リストに対して比較した(8)。機能カテゴリー中の有意な濃縮は、多重検定のためのBonferroni補正をしたBinomial統計値により決定した(p値<0.05)。
[参考文献]
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前述の内容は本発明を例証するものであり、それを限定すると解釈されるものではない。本発明は以下の特許請求の範囲により定義され、その中には特許請求の範囲の同等物も含まれる。

Claims (25)

  1. インビボ細胞における非コード調節RNA(ncRNA)の遺伝子発現プロフィールを生成する方法であって、
    (a)細胞から少なくとも1つのmRNA−タンパク質(RNP)複合体を分離するステップと、ここで、前記RNP複合体は、(i)RNA結合タンパク質(RNABP)またはRNA会合タンパク質と、(ii)前記タンパク質と結合または会合した少なくとも1つのmRNAと、(iii)前記タンパク質と結合または会合した少なくとも1つのncRNAとを含み、
    (b)少なくとも1つのRNP複合体中の少なくとも1つのncRNAを同定するステップであって、これによりRNP複合体中のncRNAの固有情報を含む遺伝子発現プロフィールを作製するステップと
    を含む方法。
  2. 前記ncRNAはmicroRNAである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記分離するステップは、
    細胞由来の前記RNP複合体を含む生体試料を、RNP複合体の少なくとも1種類の成分に特異的に結合する少なくとも1つのリガンドに接触させるステップと、
    前記リガンドと前記リガンドに特異的な抗体とを結合させることによりRNP複合体を分離するステップと、ここで前記抗体は固相支持体に固定されており、
    RNP複合体を固相支持体から取り外すことによりRNP複合体を回収するステップと
    を含む、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記RNP複合体中の前記mRNAが予め決定されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. (c)mRNP複合体中のmRNAを同定するステップであって、これにより前記miRNAに会合したmRNAの固有情報をさらに含む遺伝子発現プロフィールを作製するステップをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記mRNAは、アミロイドタンパク質、アミロイド前駆体タンパク質、アンギオスタチン、エンドスタチン、METH−1、METH−2、第IX因子、第VIII因子、コラーゲン、サイクリン依存性キナーゼ、サイクリンD1、サイクリンE、WAF1、cdk4阻害剤、MTS1、嚢胞性繊維症膜コンダクタンス制御因子遺伝子、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、エリスロポエチン、G−CSF、GM−CSF、M−CSF、SCF、トロンボポエチン、BNDF、BMP、GGRP、EGF、FGF、GDNF、GGF、HGF、IGF−1、IGF−2、KGF、ミオトロフィン、NGF、OSM、PDGF、ソマトトロフィン(somatotrophin)、TGF−β、TGF−α、VEGF、インターフェロン、TNF−α、TNF−β、カテプシンK、シトクロムP−450、ファメシルトランスフェラーゼ、グルタチオン−sトランスフェラーゼ、ヘパラナーゼ、HMG CoAシンセターゼ、n−アセチルトランスフェラーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、ホスホジエステラーゼ、rasカルボキシル末端プロテアーゼ、テロメラーゼ、TNF変換酵素、E−カドヘリン、N−カドヘリン、セレクチン、CD40、5−αレダクターゼ、心房性ナトリウム利尿因子、カルシトニン、コルチコトロピン放出因子、グルカゴン、ゴナドトロピン、ゴナドトロピン放出ホルモン、成長ホルモン、成長ホルモン放出因子、ソマトトロピン(somatotropin)、インスリン、レプチン、黄体形成ホルモン、黄体形成ホルモン放出ホルモン、副甲状腺ホルモン、甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、抗体、CTLA4、血球凝集素、MHCタンパク質、VLA−4、カリクレイン−キニノゲン−キニン系、CD4、sis、hst、ras、abl、mos、myc、fos、jun、H−ras、ki−ras、c−fms、bcl−2、L−myc、c−myc、gip、gsp、HER−2、ボンベシン受容体、エストロゲン受容体、GABA受容体、EGFR、PDGFR、FGFR、NGFR、GTP−結合調節タンパク質、インターロイキン受容体、イオンチャネル受容体、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト、リポタンパク質受容体、オピオイド疼痛受容体、サブスタンスP受容体、レチノイン酸およびレチノイド受容体、ステロイド受容体、T細胞受容体、甲状腺ホルモン受容体、TNF受容体、組織プラスミノーゲン活性化因子;膜貫通型受容体、カルシウムポンプ、プロトンポンプ、ナトリウム/カルシウム交換輸送体、MRP1、MRP2、P170、LRP、cMOAT、トランスフェリン、APC、brca1、brca2、DCC、MCC、MTS1、NF1、NF2、nm23、p53およびRbからなる群から選択されるタンパク質をコードする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記分離するステップは、複数のRNP複合体を分離するステップを含み、
    前記同定するステップは、複数のRNP複合体に会合した複数のncRNAを同定するステップを含む方法であって、
    (c)前記複数のRNP複合体に会合した複数のmRNAを同定するステップであって、これによりmRNAのサブセットに会合したncRNAのサブセットの固有情報をさらに含む遺伝子発現プロフィールを作製するステップと
    をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記細胞は植物細胞である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 前記細胞は動物細胞である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記細胞は細菌細胞である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  11. 前記細胞は酵母細胞である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  12. 前記細胞は原生動物細胞である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  13. 1以上のmicroRNAのmRNA標的を同定および/または確認する方法であって、
    (a)生体試料から少なくとも1つのRNP複合体を分離するステップと、ここで、前記複合体は、RNP複合体に会合したmRNAのサブセットを含み、
    (b)RNP複合体に会合したmicroRNAのサブセットを同定するステップであって、これによりmicroRNAとmRNA標的との間の会合を決定するステップと
    を含む方法。
  14. 前記分離するステップは、RNP複合体を固相支持体上に捕獲することを含む、請求項13に記載の方法。
  15. 1以上の同定されたmRNAに関して、少なくとも1つの同定されたmiRNAの活性をアッセイすることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
  16. インシリコ(in silico)でmicroRNAのmRNA標的を予測することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
  17. mRNAのサブセットは、生体試料中の全mRNAの75%未満で示される、請求項13に記載の方法。
  18. mRNAのサブセットは、少なくとも2つのmRNAを含む、請求項13に記載の方法。
  19. miRNAのサブセットは、生体試料中の全miRNAの75%未満で示される、請求項13に記載の方法。
  20. miRNAのサブセットは、少なくとも2つのmiRNAを含む、請求項13に記載の方法。
  21. miRNAのサブセットおよび/または細胞miRNAのサブセットは、核酸アレイを用いて同定される、請求項13に記載の方法。
  22. 前記分離するステップは、mRNP複合体を、(i)mRNP複合体の少なくとも1つの成分に特異的に結合する抗体、または(ii)異所的に発現させたエピトープタグ付きRNA結合タンパク質もしくはRNA会合タンパク質に接触させるステップ含む、請求項13に記載の方法。
  23. 前記RNA結合タンパク質は、天然のHuタンパク質もしくはタグ付きのHuタンパク質またはポリ(A)結合タンパク質(PABP)である、請求項19に記載の方法。
  24. 前記同定されたmicroRNAのサブセットは、miR−181a、miR−181b、miR−181c、miR−103、miR−107m miR−29c、miR−17−5p、miR−106a、miR−19b、miR−16、let−7a、let−7c、let−7d、およびlet−7fからなる群から選択されるmiRNAを含む、請求項13に記載の方法。
  25. 1以上のmicroRNAのmRNA標的を同定および/または確認する方法であって、
    (a)mRNP複合体を含む生体試料を得るステップと、
    (b)mRNP複合体を、(i)mRNP複合体の少なくとも1つの成分に特異的に結合する抗体、または(ii)異所的に発現させたエピトープタグ付きRNA結合タンパク質(RBP)もしくはRNA会合タンパク質(RAP)に接触させるステップと、
    (c)固相支持体上に抗体、RBP、またはRAPを捕獲するステップであって、これにより生体試料から少なくとも1つのRNP複合体を分離するステップと、
    (d)RNP複合体に会合したmicroRNAのサブセットを同定するステップであって、これによりmicroRNAとmRNA標的との間の会合を決定するステップと
    を含む方法。
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