JP2010265323A - Psca:前立腺幹細胞抗原およびその使用 - Google Patents

Psca:前立腺幹細胞抗原およびその使用 Download PDF

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Abstract

【課題】前立腺幹細胞抗原(PSCA)と称され、高い程度の前立腺上皮内新形成(PIN)、アンドロゲン依存性およびアンドロゲン非依存性の前立腺腫瘍を含むすべての段階の前立腺癌で広く過剰発現する、新規の前立腺細胞表面抗原を提供すること。
【解決手段】PSCAに関連する癌を有する患者の寿命を延長するための方法であって、該癌細胞の増殖を阻害するのに十分な時間に亘ってPSCAと選択的に結合する一定量の抗体を被験体に投与する工程を包含し、これによって、該被験体の寿命を延長する、方法。
【選択図】なし

Description

本出願を通して、種々の刊行物が括弧内で言及される。これらの刊行物の開示は、それにより、その全体が本明細書中で参考として援用される。
(発明の背景)
癌は、冠状動脈疾患に次いで2番目の、人の主な死因である。世界中で、何百万もの人々が、毎年、癌によって死んでいる。米国だけでは、癌は、毎年約50万人をゆうに超える人々の死亡を引き起こし、1年あたりほぼ140万の新たな症例が診断される。心臓疾患による死亡は顕著に減少しているとはいえ、癌による死亡は徐々に増加している。次世紀の初めには、癌は、主な死因になると予測されている。
世界中で、いくつかの癌が、主な致命的なものとして突出している。特に、肺、前立腺、乳房、結腸、膵臓および卵巣の癌は、癌による死亡の主な原因を表す。これらの、および実質的に全ての他の癌は、共通の致死的特徴を共有する。非常に少ない例外があるが、癌からの転移性疾患が致死的である。さらに、その原発性癌を最初に生き伸びる癌患者についてさえも、肝臓が劇的に変更されるという共通の経験が示された。多くの癌患者は、再発または処置の失敗の可能性に気付くことによって強い不安を経験する。多くの癌患者は、処置後の顕著な身体的衰弱を経験する。
一般的にいって、最も死にそうな(deadliest)癌の管理における基本的問題は、有効でかつ非毒性の全身治療がないことである。分子薬剤は、その乳児期において非常に多いが、これらの癌が管理される方法を再検討することを約束する。疑いなく、癌の診断および処置に対する新規な分子的アプローチの開発を目的とした、世界中でのかなりの努力が存在する。例えば、診断および予後のマーカーおよび/または治療の標的もしくは薬剤として用いられ得る、本当に腫瘍特異的な遺伝子およびタンパク質を同定することに大きな興味がある。これらの領域における研究努力は助長されており、そして有用な分子技術の利用可能性が増加し続けていることは、癌についての意義のある知識の獲得を加速した。それにもかかわらず、進歩はゆっくりであり、そして一般に一様でない。
近年、種々の免疫治療ストラテジーまたは低分子処置ストラテジーのための標的として有用であり得る、細胞表面の腫瘍特異的抗原を同定することに特に強力な興味が存在している。多数のこのような細胞表面抗原が報告されており、そしていくつかは、1以上の癌と信頼性良く関連することが証明されている。これらの抗原を標的とする新規な治療ストラテジーの開発に多くの注目が集中している。しかし、真に有効な免疫学的癌治療はほとんどもたらされていない。
固形癌の処置における腫瘍特異的抗原または過剰発現される抗原に対するモノクローナル抗体の使用は有用である。抗体治療はほぼ20年間充分に調査されているが、非常にごく近年になって対応する薬剤が実現した。1つの例は、HER2/neuレセプターを過剰発現する転移性乳がんの処置における使用が近年承認された、ヒト化抗HER2/neuモノクローナル抗体であるHerceptinである。別の例は、非ホジキンリンパ腫の処置について承認された、ヒト/マウスキメラ抗CD20/B細胞リンパ腫抗体Rituxanである。いくつかの他の抗体は、上皮増殖因子レセプターについて特異的な、キメラの、および完全にヒトの、IgG2モノクローナル抗体を含めて、臨床試験または前臨床研究において癌の処置について評価されている(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3)。明らかに、抗体治療は、長い胎児段階から最終的に出現している。それにもかかわらず、抗体および他の生物学的治療の適用のための、新たな、より特異的な腫瘍抗原についての非常に大きな必要性が存在する。さらに、できれば、より早期の診断およびより大きな予後判断の精度の開発をもたらす、抗体に基づく診断方法および画像化方法のためのマーカーとして有用であり得る腫瘍抗原についての対応する必要性が存在する。
以下で考察するように、前立腺癌の管理は、分子生物学が、診療所における真の進歩へと移される制限された程度の良好な例として役立つ。限られた例外はあるが、この状況は、上記の他の主要な癌についても多かれ少なかれ同じである。
世界中で、前立腺癌は、ヒトにおいて4番目に有病率の高い癌である。北アメリカおよび北ヨーロッパでは、前立腺癌は、男性の断然最も普通の癌であり、そしてヒトにおける癌による2番目の主な死因である。米国だけで、40,000万人をゆうに超える人々がこの疾患によって毎年死亡しており、肺癌だけについて2番目である。これらの数字の大きさにもかかわらず、転移性前立腺癌についての有効な処置は依然として存在しない。外科的前立腺切除、放射線療法、ホルモン除去(ablation)治療、および化学療法は、主な処置様式として残っている。不幸にも、これらの処置は多くについては明らかに無効である。さらに、これらの処置はしばしば、かなりの望ましくない結果を伴う。
診断の前面では、血清PSAアッセイが非常に有用なツールである。それにもかかわらず、PSAの特異性および一般的有用性は、いくつかの点を欠くと広範に考えられている。PSA試験も、他の任意の試験も生物学的マーカーのいずれも、初期段階の疾患を信頼性高く同定し得ると証明されている。同様に、代表的に致死的な転移性段階のこの疾患の出現を予測するために利用可能なマーカーは存在しない。転移性前立腺癌の診断は、開放的外科的骨盤リンパ切除または腹腔鏡下骨盤リンパ切除、全身放射性核種スキャン、骨格X線撮影、および/または骨病巣生検分析によって達成される。明らかに、より良好な画像化および他のより侵襲性でない診断方法は、患者に対してこれらの手順が与える困難を容易にする見込み、ならびに治療選択肢を改善する見込みを提供する。しかし、初期の疾患を信頼性良く同定し得る前立腺腫瘍マーカー、転移に対する感受性を予測すること、および腫瘍を正確に画像化することが存在するまでは、前立腺癌の管理は極めて困難であり続ける。従って、より特異的な分子腫瘍マーカーは、前立腺癌の管理において明確に必要とされる。
前立腺において主に発現される、いくつかの公知のマーカー(例えば、前立腺特異的膜抗原(PSM)、ラットニューロペプチダーゼに対する85%同一性を有するヒドロラーゼ)が存在する(非特許文献4;非特許文献5)。しかし、小腸および脳(非特許文献6)におけるPSMの発現は、脳における神経ペプチド異化におけるその潜在的役割と同様に、抗PSM治療を用いた潜在的神経毒性の関心を高める。再発性の前立腺癌を画像化するためにインジウム−111で標識した抗PSAモノクローナル抗体を用いた予備的な結果は、いくらかの見込みを示す(非特許文献7)。より近年同定された前立腺癌マーカーとしては、PCTA−1(非特許文献8)が挙げられる。PCTA−1は、新規なガレクチンであり、発現する細胞の培地中に大部分が分泌され、そして前立腺癌についての診断血清マーカーとしての見込みを保持し得る(非特許文献8)。前立腺癌についてのワクチンもまた、PSMおよびPSAを含めて、種々の抗原を用いて活発に探索されている。
Slovinら、1997年、Proc.Am.Soc.Clin.Oncol.第16巻p.311 Falceyら、1997年、Proc.Am.Soc.Clin.Oncol.第16巻p.383 Yangら、1999年、Cancer Res.第59:1236 Carterら、1996年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 第93巻p.749 Bzdegaら、1997年、J.Neurochem.第69巻p.2270 Israeliら、1994年、Cancer Res.第54巻p.1807 Soddeら、1996年、Clin Nuc Med 第21巻p.759−766 Suら、1996年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 第93巻p.7252
本発明によって以下が提供される:
(1) PSCAに関連する癌を有する患者の寿命を延長するための方法であって、
該癌細胞の増殖を阻害するのに十分な時間に亘ってPSCAと選択的に結合する一定量の抗体を被験体に投与する工程を包含し、これによって、該被験体の寿命を延長する、方法。
(2) 循環抗体を用いて被験体中のPSCA発現腫瘍細胞を選択的に標的化するための方法であって、
一定量の抗体を、そのタンパク質が該被験体中で循環して該PSCA発現細胞に選択的に結合するのに十分な時間に亘って被験体に投与する工程
を包含し、それによって、該被験体内の該PSCA発現腫瘍細胞が標的化される、
方法。
(3) 被験体中のPSAの血清レベルを低減するための方法であって、
該PSAの血清レベルを低減するのに十分な時間に亘ってPSCAに選択的に結合する一定量の抗体を該被験体に投与する工程を包含する、方法。
(4) サンプル中のPSCAタンパク質の量を決定するための方法であって、
a.抗PSCA抗体を該サンプルに接触して、PSCA/抗PSCA抗体複合体を形成する工程;および
b.該PSCA/抗PSCA抗体複合体の量を決定するための工程
を包含する、方法。
(5) 項目1、2、3または4に記載の方法であって
PSCAに選択的に結合する抗体がモノクローナル抗体、その抗体のFabフラグメント、F(ab)フラグメント、Fvフラグメントまたは該PSCAタンパク質に結合する組み換えタンパク質である、方法。
(6) PSCAに選択的に結合する前記抗体が、治療剤に結合体化している、項目1,2、または3に記載の方法。
(7) 項目6に記載の方法であって、前記治療剤が、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、エチジウムブロマイド、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、Pseudomonas菌体外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サルシン、ゲロニン、ミトゲリン、レトストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、キュリシン、クロチン、カリーチアマイシン、サパオナリアオフィシナリスインヒビター、マイタンシノイド、および糖質コルチコイドからなる群より選択される、方法。
(8) 前記治療剤が、放射性同位体である、項目6に記載の方法。
(9) 前記放射性同位体が、212Bi、131I、131In、90Y、および186Reからなる群より選択される、項目8に記載の方法。
(10) 前記モノクローナル抗体が、キメラ抗体を包含する、項目5に記載の方法。
(11) 前記モノクローナル抗体が、ヒト化抗体である、項目5に記載の方法。
(12) 前記モノクローナル抗体が、ヒト抗体である、項目5に記載の方法。
(13) 前記PSCAに関連する癌が、前立腺癌である、項目1に記載の方法。
(14) 前記PSCAに関連する癌が、転移性癌である、項目1に記載の方法。
(15) 前記PSCAに関連する癌が、膀胱癌である、項目1に記載の方法。
(16) 前記PSCAに関連する癌が、転移性膀胱癌である、項目1に記載の方法。
(17) 前記PSCAに関連する癌が、すい臓癌である、項目1に記載の方法。
(18) 前記PSCAに関連する癌が、転移性すい臓癌である、項目1に記載の方法。
(19) 化学療法剤を前記被験体に投与する工程をさらに包含する、項目1、2または3に記載の方法。
(20) ホルモン除去治療を前記被験体に与える工程をさらに包含する、項目1、2または3に記載の方法。
(21) ホルモンアンタゴニストを前記被験体に与える工程をさらに包含する、項目1、2または3に記載の方法。
(22) 放射線治療を前記被験体に与える工程をさらに包含する、項目1、2または3に記載の方法。
(23) 前記被験体に、PSCAに結合するモノクローナル抗体の組み合せが投与される、項目1、2または3に記載の方法。
(24) 前記モノクローナル抗体の組み合わせが、少なくとも2つの異なるアイソタイプのモノクローナル抗体である、項目25に記載の方法。
(25) 前記モノクローナル抗体の組み合わせが、異なるエピトープ特異性の違いを有するモノクローナル抗体を包含する、項目25に記載の方法。
(26) 項目25に記載の方法であって、
前記モノクローナル抗体の組み合わせが、ATCCに寄託された、HB−12612、HB125612、HB−12614、HB−12616、HB−12618、HB−12615、HB−126517で示されるハイブリドーマによって、それぞれ、産生された、モノクローナル抗体である、1G8、2A2、2H9、3C5.3E6、3G3、および4A10を含む、方法。
(27) 項目2に記載の方法を包含する、被験体内のPSCA発現腫瘍細胞を検出するための方法。
(28) 項目2に記載の方法を包含する、被験体内のPSCA発現腫瘍細胞を死滅させる方法。
(29) 前記PSCA発現腫瘍が、局所的な腫瘍細胞、局所的に再発する細胞、および転移性腫瘍細胞からなる群より選択される
(30) 前記サンプルが、生物学的サンプルである、項目4に記載の方法。
(31) 前記生物学的サンプルが、尿、血清、血漿、および粘液からなる群より選択される、項目4に記載の方法。
(発明の要旨)
本発明は、前立腺幹細胞抗原(PSCA)と称され、高い程度の前立腺上皮内新形成(PIN)、アンドロゲン依存性およびアンドロゲン非依存性の前立腺腫瘍を含むすべての段階の前立腺癌で広く過剰発現する、新規の前立腺細胞表面抗原を提供する。PSCA遺伝子は、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)係留細胞表面抗原のThy−1/Ly−6ファミリーのメンバーである幹細胞抗原−2(SCA−2)に対して30%の相同性を示し、アミノ末端シグナル配列、カルボキシ末端GPI係留配列、および複数のN−グリコシル化部位を有する123アミノ酸のタンパク質をコードする。PSCA mRNA発現は、アンドロゲン依存性およびアンドロゲン非依存性の両方の前立腺癌の異種移植片において、高度に上方制御される。インサイチュでのmRNA分析は、前立腺の推定幹細胞区画である基底細胞上皮にPSCA発現を位置決定する。フローサイトメトリー分析は、PSCAが主に細胞表面で発現され、そしてGPI連結により係留されることを実証する。蛍光インサイチュハイブリダイゼーション分析は、80%を超える前立腺癌において得られる対立遺伝子(allelic gain)領域である、染色体8q24.2に対してPSCA遺伝子を位置決定する。
PSCAは、その細胞表面位置、前立腺癌細胞のような特定の型の癌における非常に上方制御された発現の観点から最適な治療標的であり得る。この点において、本発明は、そのような癌細胞の増殖を破壊もしくは阻害するために、またはPSCA活性をブロックするために治療的に使用できるPSCAに結合可能な抗体を提供する。加えて、PSCAタンパク質およびPSCAコード核酸分子は、PSCAを発現する腫瘍の免疫媒介破壊または増殖阻害を促進する種々の免疫治療方法に使用され得る。
PSCAはまた、理想の前立腺癌マーカーを示し得、それは、悪性の前立腺癌と、正常な前立腺と非悪性新形成とを識別するために使用され得る。例えば、PSCAは、良性の前立腺過形成(BPH)と比較して前立腺癌で非常に高いレベルで発現される。対照的に、広範に使用される前立腺癌マーカーPSAは、正常な前立腺およびBPHの両方で高いレベルで発現されるが、前立腺癌ではより低いレベルで発現され、PSA発現をBPHまたは正常な腺と悪性の前立腺癌とを区別するために役に立たなくする。PSCAの発現は、本質的にPSAの発現の逆であるから、PSCAの発現の分析は、非悪性状態と前立腺癌とを区別するために使用され得る。
ヒトおよびマウスの両方のPSCAコード遺伝子が単離され、そしてそれらのコード配列は本明細書中で解明され、そして提供される。ヒトおよびマウスの両方のPSCAのアミノ酸配列もまた提供される。本発明はさらに、核酸に基づいたアッセイおよび免疫学的なアッセイを含む、前立腺癌の検出、モニタリング、および予後のための種々の診断アッセイを提供する。PSCA特異的モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体、ならびに前立腺癌の処置の免疫治療方法および他の治療方法もまた提供される。本発明のこれらの局面および他の局面は、さらに以下に記載される。
図1は、ヒトPSCAをコードするcDNA(ATCC名称209612)のヌクレオチド配列(A)および翻訳されたアミノ酸配列(B)である。 図2は、マウスPSCAホモログをコードするcDNAのヌクレオチド配列である。 図3は、ヒトPSCA、マウスPSCAおよびヒト幹細胞抗原−2(hSCA−2)のアミノ酸配列のアラインメントである。影の領域は、保存されたアミノ酸を強調する。保存されたシステインを太字で示す。PSCAにおける4つの予測されたN−グリコシル化部位を星印で示す。タンパク質の最初および最後の下線のアミノ酸は、それぞれ、N末端の疎水性シグナル配列およびC末端GPI係留配列を示す。 図4は、ヒトPSCAの疎水性プロットである。 図5は、ヒトPSCAのChou−Fassman分析である。 図6は、モノクローナル抗体1G8が、LAPC9(PSCA陽性コントロール)および膀胱(Rob)と称される移行上皮癌(膀胱癌)に結合することを示すウェスタンブロットである。 図7は、正常組織および癌組織におけるPSCA mRNAの制限された発現である。A:前立腺、胎盤、および扁桃で高度な発現を示す正常ヒト組織におけるPSCA発現のRT−PCR分析。示された組織由来の1ngの逆転写された第1鎖cDNA(Clontech、Palo Alto、CA)を、PSCA遺伝子特異的プライマーを用いて増幅した。示されたデータは、30サイクルの増殖からである。B:前立腺癌異種移植片および正常組織における高いレベルを実証する、PSCA発現のRT−PCR分析。示された組織由来の逆転写されたcDNAの5ngがPSCA遺伝子特異的プライマーを用いて増幅された。β−アクチン遺伝子特異的プライマーを用いた増幅は、種々のサンプルの第1鎖cDNAの規準化を示す。示されたデータは、25サイクルの増幅からである。AD、アンドロゲン依存性;AI、アンドロゲン非依存性;IT、脛骨内異種移植片;C.L.、細胞株。 図8は、ヒトPSCA、マウスPSCA、およびヒトThy−1/Ly−6遺伝子構造の模式図である。 図9Aは、PSCA RNAの発現のノーザンブロット分析である。A:正常の前立腺およびLAPC−4アンドロゲン依存性(AD)前立腺癌異種移植片およびLAPC−4アンドロゲン非依存性(AI)前立腺癌異種移植片由来の総RNAを、PSCA特異的プローブまたはPSA特異的プローブを使用して分析した。等しいRNAローディングおよびRNA統合性を、18S RNAおよび28S RNAのエチジウム染色により別々に示した。 図9Bは、PSCA RNAの発現のノーザンブロット分析である。B:PSCA RNAのヒトの複数の組織のノーザンブロット分析。Clontech(Palo Alto、CA)よりフィルターを得た。そしてこのフィルターは、それぞれのレーンに2μgのポリA RNAを含む。 図10−1は、前立腺癌異種移植片および腫瘍細胞株におけるPSCA、PSMAおよびPSAのRNAの発現のノーザンブロット比較である。PSCAおよびPSMAは、高いレベルの前立腺癌特異的な遺伝子発現を示す。示された組織由来の10μgの総RNAが、アガロース/ホルムアルデヒドゲルにおいてサイズ分画され、ニトロセルロースに移され、そして続いてPSCA、PSMAおよびPSAのcDNAフラグメントを表す32Pで標識されたプローブと順次ハイブリダイズされた。膜の4時間および72時間のオートラジオグラフィーの露出、およびサンプルの等しいローディングを示す臭化エチジウムゲルを示す。BPH、良性前立腺過形成;AD、アンドロゲン依存性;AI、アンドロゲン非依存性;IT、脛骨内異種移植片;C.L.細胞株。 図10−2は、前立腺癌異種移植片および腫瘍細胞株におけるPSCA、PSMAおよびPSAのRNAの発現のノーザンブロット比較である。PSCAおよびPSMAは、高いレベルの前立腺癌特異的な遺伝子発現を示す。示された組織由来の10μgの総RNAが、アガロース/ホルムアルデヒドゲルにおいてサイズ分画され、ニトロセルロースに移され、そして続いてPSCA、PSMAおよびPSAのcDNAフラグメントを表す32Pで標識されたプローブと順次ハイブリダイズされた。膜の4時間および72時間のオートラジオグラフィーの露出、およびサンプルの等しいローディングを示す臭化エチジウムゲルを示す。BPH、良性前立腺過形成;AD、アンドロゲン依存性;AI、アンドロゲン非依存性;IT、脛骨内異種移植片;C.L.細胞株。 図10−3は、前立腺癌異種移植片および腫瘍細胞株におけるPSCA、PSMAおよびPSAのRNAの発現のノーザンブロット比較である。PSCAおよびPSMAは、高いレベルの前立腺癌特異的な遺伝子発現を示す。示された組織由来の10μgの総RNAが、アガロース/ホルムアルデヒドゲルにおいてサイズ分画され、ニトロセルロースに移され、そして続いてPSCA、PSMAおよびPSAのcDNAフラグメントを表す32Pで標識されたプローブと順次ハイブリダイズされた。膜の4時間および72時間のオートラジオグラフィーの露出、およびサンプルの等しいローディングを示す臭化エチジウムゲルを示す。BPH、良性前立腺過形成;AD、アンドロゲン依存性;AI、アンドロゲン非依存性;IT、脛骨内異種移植片;C.L.細胞株。 図11は、正常前立腺標本および悪性前立腺標本におけるヒトPSCA RNAに対するアンチセンスリボプローブとのインサイチュハイブリダイゼーションである。A:PSCA RNAは、基底細胞上皮内の基底細胞の部分集合により発現される(黒矢印)が、前立腺管の内側を覆う最後まで分化した分泌細胞により発現されない(拡大率400×)。B:PSCA RNAは、高い程度の前立腺上皮内腫瘍(PIN)により強く発現され(黒矢印)、侵襲性前立腺癌腺により強く発現される(黄矢印)が、正常の上皮においては、拡大率40倍で検出可能でない(緑矢印)。C:高い程度の癌の場合におけるPSCA RNAの強い発現(拡大率200×)。 図11は、正常前立腺標本および悪性前立腺標本におけるヒトPSCA RNAに対するアンチセンスリボプローブとのインサイチュハイブリダイゼーションである。A:PSCA RNAは、基底細胞上皮内の基底細胞の部分集合により発現される(黒矢印)が、前立腺管の内側を覆う最後まで分化した分泌細胞により発現されない(拡大率400×)。B:PSCA RNAは、高い程度の前立腺上皮内腫瘍(PIN)により強く発現され(黒矢印)、侵襲性前立腺癌腺により強く発現される(黄矢印)が、正常の上皮においては、拡大率40倍で検出可能でない(緑矢印)。C:高い程度の癌の場合におけるPSCA RNAの強い発現(拡大率200×)。 図12Aは、PSCAタンパク質の生化学的分析である。A:PSCAタンパク質を、材料および方法に記載されたように、PSCA構築物を用いて一時的にトランスフェクトされ、次いで、N−グリコシダーゼFまたはO−グリコシダーゼのどちらかを用いて消化した293T細胞から免疫沈降した。 図12Bは、PSCAタンパク質の生化学的分析である。B:PSCAタンパク質をトランスフェクトされた293T細胞、ならびこれらの細胞の訓化培地から免疫沈降した。細胞関連PSCAは、15%ポリアクリルアミドゲルにおいて、分泌されたPSCAまたは脱落したPSCAより速く移動する。 図12Cは、PSCAタンパク質の生化学的分析である。C:アフィニティー精製されたポリクローナル抗PSCA抗体を使用して、偽トランスフェクトされた293T細胞、PSCAをトランスフェクトされた293T細胞およびLAPC−4前立腺癌異種移植片細胞のFACS分析。細胞は、表面の発現のみを検出するために透過処理されなかった。y軸は、相対的な細胞数を示し、そしてx軸は、対数的なスケールにおける蛍光染色強度を示す。 図13は、フィトヘマグルチニンで刺激した末梢血液リンパ球由来のヒト分裂中期細胞に対するビオチン標識PSCAプローブのインサイチュハイブリダイゼーションである。第8染色体ホモログは、矢印で同定される;特異的標識が、8q24.2に観察された。はめ込み図は、8q24.2での特異的な標識を例示する2つの第8染色体ホモログの部分的な核型を示す(矢尻)。画像は、冷却式電荷結合デバイス(CCD)カメラを連結したZeiss Axiophot顕微鏡を使用して得た。DAPI染色した染色体およびハイブリダイゼーションシグナルの別々の画像が、画像分析ソフトウェア(NU200およびImage1.57)を使用して合わされた。 図14は、抗PSCAモノクローナル抗体1G8(緑)および3E6(赤)、マウス抗PSCAポリクローナル血清(青)、またはコントロールの2次抗体(黒)を使用した、前立腺癌異種移植片(LAPC−9)、前立腺癌細胞株(LAPC−4)および正常な前立腺上皮細胞(PreC)についての細胞表面PSCAタンパク質発現のフローサイトメトリー分析である。詳細は、実施例5を参照のこと。 図15は、(a)7つの開示された抗体のそれぞれのエピトープ地図である。(b)抗PSCAモノクローナル抗体のエピトープマッピングを、GST−PSCA融合タンパク質のウエスタンブロット分析により行った。 図16は、PSCAが、GPI係留タンパク質であることを示す模式図である。 図17は、前立腺癌におけるPSCAおよびc−mycの遺伝子コピー数のFISH分析を示す写真である。 図18は、FITC標識された1G8抗体が、PSCAでトランスフェクトされたLNCAP細胞上のPSCAタンパク質に強く結合することを示す写真である。 図19は、FITC標識された1G8抗体がPreC細胞に弱く結合することを示す写真である。 図20は、正常な前立腺基底細胞におけるPSCAのインサイチュRNAハイブリダイゼーションを示す写真である。 図21は、原発性前立腺癌におけるPSCAの免疫染色である。4人の患者由来の代表的なパラフィン包埋切片は、抗PSCA mAbを用いて染色された。患者1由来の標本は、グリースングレード(Gleason grade)4の腫瘍(矢印)におけるPSCAタンパク質の過剰発現を示し、そしてPSCA mAb 1G8を使用して隣接する正常な腺(矢尻)におけるPSCAの検出不可能な発現を示す。陽性染色の癌は、正常な腺を完全に包囲する。患者2由来の標本は、グリースングレード3+3/4の癌における異質な染色を示す。グリースンパターン3の腺(矢尻)は、より大きな癌と比較して弱く染色し、さらなる有孔形態はグリースンパターン3/4の腺(矢印)を表す。患者3由来の標本は、mAb 1G8を用いた弱く分化したグリースン5(矢印)の腫瘍によってPSCAの強い発現を示す。患者4は、弱く分化した腫瘍(矢尻)の大部分においてPSCAが染色していないこと、および標本中で同定された有孔形態の病巣において極度に弱く染色していることを示している生検標本である。患者4由来の一致した骨性転移は、図28に示される。 図22は、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化ストレプトアビジンに連結したビオチン化された1G8モノクローナル抗体により決定された場合の、前立腺癌の骨性転移を示す骨サンプルの写真である。 図23は、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化ストレプトアビジンに連結したビオチン化された1G8モノクローナル抗体により決定された場合の、前立腺癌の骨性転移を示す骨サンプルの写真である。 図24は、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化ストレプトアビジンに連結したビオチン化された3E6モノクローナル抗体により決定された場合の、前立腺癌の骨性転移を示す骨サンプルの写真である。 図25は、LAPC9および進行型膀胱癌の移行細胞癌におけるPSCA RNAの増加したレベルを示すノーザンブロットである。 図26は、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化ストレプトアビジンに連結したビオチン化された3E6モノクローナル抗体により決定された場合の初期段階にある前立腺癌の組織の写真である。 図27は、ヘマトキシリン染色された3E6モノクローナル抗体により決定された場合の前立腺癌の骨性転移を示す骨サンプルの写真である。 図28は、骨性転移の前立腺癌におけるPSCAの免疫染色である。上のパネルは、患者5由来の骨性病巣(bony lesion)のヘマトキシリン染色およびエオシン染色(左)ならびにPSCA(右)染色を示す。癌の疑いがある単一の病巣(矢印)は、H切片およびE切片において同定され、そして抗PSCA mAb 1G8を用いて強烈に染色することによって確認された(矢印)。下のパネルは、患者4由来の骨性病巣のH染色およびE染色(左)ならびにPSCA染色を示す。患者4由来の原発性病巣は、図21に示される。H染色およびE染色ならびにPSCA染色の両方は、前立腺癌(矢印)による拡散性の骨性併発を示す。また、骨性転移におけるPSCA免疫染色は均一かつ強烈である。 図29は、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化ストレプトアビジンに連結したビオチン化された1G8モノクローナル抗体によって決定された場合の、前立腺癌の初期段階にある組織の写真である。 図30は、ヘマトキシリン染色により決定された場合の、1G8が、LAPC9細胞に結合することを示す写真である。 図31は、1G8が、PSCAでトランスフェクトされたLnCaP細胞に結合することを示す写真である。 図32は、1G8が、LnCaP細胞(PSCAでトランスフェクトされていない)に結合しないことを示す写真である。 図33は、mAb 1G8、2H9、3H6、3C5、および4A10を使用した非透過化処理したLAPC−9ヒト前立腺癌細胞の細胞表面上のPSCAのフローサイトメトリー認識である。染色は、無関係のアイソタイプコントロール抗体と比較された。 図34は、PSCAを用いて一過性にトランスフェクトされた293T細胞およびPSCAモノクローナル抗体を用いてイムノブロットされた293T細胞を示す写真である。モノクローナル抗体2H9および3E6は、293T細胞において、脱グリコシル化されたPSCAに結合するが、グリコシル化されたPSCAには結合しない。対照的に、モノクローナル抗体1G8、3C5および4A10はグリコシル化されたPSCAを認識する。 図35は、非透過化処理した前立腺癌細胞におけるPSCAの細胞表面発現を示す免疫蛍光分析である。LNCaP細胞は、安定してPSCAでトランスフェクトされ、そしてmAb 1G8、3E6、3C5および4A10を用いて染色された。ネガティブコントロールは、無関係のアイソタイプ抗体を含み、そしてLNCaP細胞はコントロールベクターを用いてトランスフェクトされ、その全ては、延長した曝露後でさえ、染色を示さなかった。 図36は、LAPC9細胞に結合するモノクローナル抗体2H9を示す写真である。 図37は、抗PSCA mAbの免疫学的反応性を示す写真である。(A)mAb 1G8、2H9、3C5、3E6および4A10を用いてPSCAで一過性にトランスフェクトされた293T細胞由来のPSCAの免疫沈降。コントロールは、無関係のマウスIgG mAbであった。(B)5つの抗PSCA mAbを使用したPSCAを用いて一過性にトランスフェクトされた293T細胞のイムノブロット分析。mAb 1G8、3C5および4A10は全て、PSCAの等分子形態を認識し、ここで、このアッセイにおいてmAb 2H9および3E6は、293T−PSCA細胞におけるPSCAの脱グリコシル化された形態をわずかに認識するのみである。 図38は、抗PSCA mAbを用いた正常な前立腺の免疫組織化学的染色である。実施例は、ネガティブコントロールとして、無関係のアイソタイプ抗体を用いて染色された正常腺(矢印)、PSCA mAb 3E6およびmAb 1G8を含むことを示した。分泌細胞(矢尻)と比較した場合、PSCA mAb 3E6は、優先的に基底細胞(矢印)を染色したが、一方、mAb 1G8は、基底細胞(矢印)および分泌細胞(矢尻)の両方を等しく染色する。PSCA mAb 2H9を用いて染色された正常前立腺標本由来の萎縮性の単一層状腺の強い染色もまた示される。 図39は、正常な組織におけるPSCAタンパク質の発現である。(A)パネルaは、mAb 1G8を用いた膀胱の一過性の上皮の染色を示す。パネルbは、mAb 1G8を用いて染色した結腸神経内分泌細胞を示す。クロモグラニンを用いた二重染色は、陽性細胞が、神経内分泌起源であることを明らかにした(示さず)。パネルcは、mAb 3E6を用いた集合管(矢印)および細管の染色を示す。パネルdは、mAb 3E6を用いた胎盤栄養膜の染色を示す。(B)PSCA mRNA発現のノーザンブロット分析。正常な前立腺、腎臓、膀胱およびLAPC−9前立腺癌異種移植片に由来する総RNAは、PSCA特異的プローブを使用して分析された(上のパネル)。同膜は、負荷差異のコントロールに対してアクチンを用いてプローブされた(下のパネル)。 図40は、マウスPSCA遺伝子の標的化である。(A)パネルaは、PSCA標的化ベクターを作製するためのストラテジーを示す模式図である。(B)パネルbは、野生型(+/+)ES細胞および異種接合型(+/−)ES細胞の回復を示す3’プローブを使用したゲノムDNAのサザンブロット分析の写真である。 図41は、上のパネルが、前立腺癌のトランスジェニックマウスのモデルを産生するためのストラテジーの模式図である。下のパネルは、前立腺癌の既存のトランスジェニックマウスのモデルの一覧表である。 図42は、トランスフェクションアッセイのためのレポーター遺伝子構築物を示す模式図である。 図43は、増加した遺伝子発現活性を有する、9kbヒトPSCA上流調節領域の組織優勢発現(前立腺細胞および膀胱細胞)を示す棒グラフである。 図44は、増加した遺伝子発現活性を有する、PSCA上流領域(すなわち、9kb、6kb、3kbおよび1kbのPSCA領域)中の前立腺優勢発現エレメントを同定する棒グラフである。 図45は、検出可能なマーカーに作動可能に連結した9kbまたは6kbのヒトPCSA上流領域のいずれかを含むトランスジェニックベクターの設計を示す模式図である。 図46は、9kb PSCA上流領域が、インビボで前立腺、膀胱および皮膚におけるレポーター遺伝子の発現を駆動することを示す写真である。 図47は、ヒトおよびマウスのPSCA RNAの組織特異的発現パターンを示す多組織ノーザンブロット分析の写真である。 図48は、抗PSCAモノクロナール抗体での処置によるSCIDマウスにおけるLAPC−9前立腺腫瘍増殖の完全な阻害である。上のパネルは、LAPC−9が皮下注射され、マウスIgGコントロールを用いて処置されたマウスを示し、一方、下のパネルにおいて、マウスに、LAPC−9を皮下注射したが、抗PSCA mAbカクテルを用いて処置した。各データ点は、実施例18−A(前出)に記載された特定の時点における腫瘍の楕円体容量を示す。抗PSCA群において、20の任意の値は、線を書くために全てのデータ点について与えられたが、実際の腫瘍容量は、0であった(実施例18−A(前出))。 図49は、実施例18に記載されるインビボ腫瘍チャレンジ研究において利用される抗PSCAモノクロナール抗体の特徴である。(A)アイソタイプおよびエピトープマップ:PSCAタンパク質のうちの、抗PSCA mAbによって認識される領域は、PSCAの示されたアミノ酸をコードするGST融合タンパク質(50ng/ウェル)を用いてELISA分析によって決定された。ハイブリドーマ上清とともにウェルをインキュベートした後、抗マウスHRP結合体抗体が添加され、そして反応性が、3,3’5,5’−テトラメチルベンジジン塩基(TMB)基質の添加によって決定された。光学密度(450nm)は、二連の決定の平均である。(B)ウエスタン分析によって決定されたエピトープマップ:50ngの示されたGST−PSCA融合タンパク質は、SDS−PAGEによって分離され、そしてニトロセルロースに転写された。ウエスタン分析は、ハイブリドーマ上清、続いて抗マウスHRP二次Abを用いてブロットをインキュベーションして、そして増強された化学発光によって可視化することにより行われた。 図50は、PSCA捕獲ELISAの概略図である。(A)標準化抗原およびコントロール抗原:PSCAタンパク質のアミノ酸18〜98をコードするGST融合タンパク質が、未知サンプルの定量のための標準曲線を作成するために使用される。ELISAにおいて使用される抗PSCAモノクロナール抗体および抗PSCAポリクロナール抗体のおおよそのエピトープ結合領域もまた示される。PSCAの分泌された組換え哺乳動物発現形態が、ELISAアッセイの品質制御のために使用される。このタンパク質は、組換えタンパク質の分泌を指向するIgリーダー配列ならびにアフィニティー精製のためのMYCエピトープタグおよび6×Hisエピトープタグを含む。(B)ELISA形式の図。 図51は、組換え分泌PSCAタンパク質の定量である。(A)PSCA捕獲ELISA標準曲線。(B)哺乳動物細胞によって分泌されたPSCAタンパク質の定量。空のベクターまたは組換え分泌PSCA(secPSCA)をコードするベクターを用いてトランスフェクトされた293T細胞由来の2日間馴化組織培養物上清を、PBSまたは正常ヒト血清(Omega Scientific)のいずれかの等量と混合し、そしてPSCAタンパク質の存在について分析した。データは、二連の決定の平均±範囲である。NDは、検出不可能である。 図52は、抗PSCAモノクロナール抗体3C5を用いる細胞ペレット、LAPC9AD異種移植片、BPHサンプル、および前立腺癌組織の免疫組織化学的分析である。 図53は、抗PSCAモノクロナール抗体によるLAPC−9腫瘍増殖の阻害である。上のパネルは、1×106 LAPC−9を皮下注射し、そしてマウスIgGコントロールを用いて処置したマウス(n=10)を示す。中のパネルは、LAPC−9を皮下注射し、そして抗PSCA mAbカクテルを用いて処置したマウス(n=10)を示す。下のパネルは、LAPC−9を皮下注射し、そしてウシIgGを用いて処置したマウス(n=5)を示す。各データ点は、実施例18−Bに記載される特定の時点における腫瘍の楕円体容量を示す。 図54は、抗PSCAモノクロナール抗体1G8によるLAPC−9腫瘍増殖の阻害である。上のパネルは、1×106 LAPC−9を皮下注射し、そしてマウスIgGコントロールを用いて処置したマウス(n=6)を示し、一方、下のパネルにおいて、マウスは、LAPC−9を皮下注射したが、抗PSCA mAb 1G8を用いて処置した(n=7)。各データ点は、特定の時点における腫瘍の楕円体容量を示す。 図55は、抗PSCAモノクローナル抗体2A2および2H9によるLAPC−9腫瘍増殖の阻害である。上のパネルは、1×106LAPC−9を皮下に注射され、そしてマウスIgGコントロール(n=6)または2A2 mAb(n=7)のいずれかで処置されたマウスを表す。下のパネルは、LAPC−9を皮下に注射され、そして同じマウスIgGコントロール(n=6)または2H9 mAb(n=7)で処置されたマウスを表す。全てのデータ点は、特定の時点における腫瘍の平均楕円体体積(mm3)を表す。エラーバーは、平均値の標準誤差(SEM)を表す。 図56は、抗PSCA mAb 2A2およびmAb 2H9で処置された後のLAPC−9腫瘍注射マウスにおける循環PSAレベルである。上のパネルは、1×106LAPC−9を皮下に注射され、そしてマウスIgGコントロール(n=6)または2A2 mAb(n=7)のいずれかで処置されたマウスを表す。下のパネルは、LAPC−9を皮下に注射され、そして同じマウスIgGコントロール(n=6)または2H9 mAb(n=7)のいずれかで処置されたマウスを表す。各々のデータ点は、週毎の時点におけるマウスの血清から決定された平均PSAレベルを表す。エラーバーは、平均値の標準誤差(SEM)を表す。 図57は、確立されたLAPC−9前立腺癌異種移植片のPSCAモノクローナル抗体3C5による阻害である。詳細については実施例18−C4を参照のこと。 図58は、PSCAモノクローナル抗体1G8の重鎖可変ドメイン領域のアミノ酸配列である。CDRは、ラベルされそして下線を付されている。 図59は、PSCAモノクローナル抗体4A10の重鎖可変ドメイン領域のアミノ酸配列である。CDRは、ラベルされそして下線を付されている。 図60は、PSCAモノクローナル抗体2H9の重鎖可変ドメイン領域のアミノ酸配列である。CDRは、ラベルされそして下線を付されている。 図61は、PSCA mAb 1G8、PSCA mAb 4A10およびPSCA mAb 2H9のCDRのアミノ酸配列整列である。 図62は、正常な膀胱および種々の膀胱癌組織におけるPSCAタンパク質発現を示す、PSCA mAb 1G8を用いたパラフィン包埋サンプルの免疫組織化学的染色を使用した写真である。 図63は、いくつかの膵臓癌細胞株におけるPSCA発現のノーザンブロット分析である。正常な前立腺およびいくつかの前立腺癌異種移植片におけるPSCA発現のノーザンブロット分析は、比較のために並べて示される。全てのサンプル間のRNAレベルを、正規化した。 図64は、前立腺癌細胞株および膵臓癌細胞株におけるPSCAタンパク質発現の、PSCA mab 1G8を使用するウエスタンブロット分析である。 図65は、PSCA mAbが、PSCAタンパク質による増殖阻害効果を発揮する。LAPC−9およびPC−3前立腺腫瘍に対するPSCA mAb 1G8の増殖阻害効果が比較される。PC−3腫瘍(これはPSCA抗原を発現しない)に対しては全く効果が示さないが、LAPC−9腫瘍(これはPSCA抗原を発現する)における有意な増殖阻害が示される。詳細については、実施例18−C1、18−C3を参照のこと。 図66は、確立されたLAPC−9(AD)同所腫瘍の、抗PSCA mAb 1G8による増殖阻害である。(A)低レベルの血清PSAを有するマウス。2mgの1G8をこれらのマウスに10日目、13日目、および15日目に投与し、次いで、矢印でしめされるように、1mgを17、20、22、25、27、29、34、41、および49日目に投与した。(B)中程度のレベルの血清PSAを有するマウス。1mgの1G8を、矢印で示されるように、12、13、14、19、20、22、25、27、29、および33日目に投与した。 図67は、抗PSCA mAb 1G8での処置が、確立されたLAPC−9(AD)同所腫瘍を保有するマウスの生存率を増加する。(A)図66Aにおけるマウス(1G8で処置された)は、PBSで処置されたマウスと比較して生存率の増加を示した。(B)図66Bのマウス(1G8で処置された)は、PBSで処置されたマウスと比較して増加した生存率を示した。 図68は、確立されたLAPC−9 AD同所腫瘍の、抗PSCA mAb 3C5による増殖阻害である。(A)1mgの3C5を、矢印で示されるように、6、8、10、13、15、17、20、22、24、および29日目に腫瘍保有マウスに投与した。これらのマウスを、PSA測定のためにX軸上に示される日に採血した。(B)2mgの3C5を腫瘍保有マウスに、9、12、および15日目に投与し、次いで矢印で示されるように、18、20、22、25、27および29日目に1mgを投与した。これらのマウスをPSA測定のためにX軸上に示される日に採血した。 図69は、抗PSCA mAb 3C5での処置が、LAPC−9 AD同所腫瘍を保有するマウスの生存率を増加させる。(A)図68Aにおけるマウス(3C5で処置された)は、PBSで処置されたマウスと比較して、生存率の増加を示した。PBS処置した群には4匹のマウスが存在し、そして3C5処置した群には5匹のマウスが存在する。(B)図68Bのマウス(3C5で処置された)は、PBSで処置されたマウスと比較して生存率の増加を示した。PBS処置した群および3C5処置した群の両方に6匹のマウスが存在した。 図70は、確立されたPC3−PSCA腫瘍の、1G8単独またはドキソルビシンと組合せた1G8による増殖阻害である。1mgの1G8を、腫瘍保有マウスに、矢印で示されるように9、11、14、16、18、21、23、25および28日目に投与した。25μgのドキソルビシンを、(・)印で示されるように、9、16および23日目に投与した。 図71は、腫瘍保有マウスに投与された抗PSCA抗体が、循環し、そしてPSCAを発現する腫瘍を標的化する。A)確立されたPSCA発現腫瘍を保有し、3C5で処置されたマウス由来の腫瘍外植片の免疫組織化学。B)確立されたPSCA発現腫瘍を保有し、マウスIgGで処置されたマウス由来の腫瘍外稙片の免疫組織化学。 図72は、腫瘍保有マウスに投与された抗PSCA抗体が、循環し、そして腫瘍発現PSCAを標的化する。図71に記載されるマウスから外稙された腫瘍由来の腫瘍溶解産物の、ヤギ抗マウスIgG−HRP抗体を用いて調べられたウエスタンブロット分析。 図73は、腫瘍保有マウスに投与された抗PSCA抗体が、循環し、そして腫瘍発現PSCAを標的化する。確立されたPSCA発現腫瘍を保有し、1G18で処置されたマウスから外稙された腫瘍由来の腫瘍溶解産物のウエスタンブロット分析。このブロットを、ヤギ抗マウスIgG−HRP抗体を用いて調べた。
(発明の詳細な説明)
本発明は、前立腺幹細胞抗原(本明細書中以降「PSCA」)に関する。PSCAは新規の、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)−固着細胞表面抗原であり、これは、正常な細胞(例えば、前立腺細胞、尿路上皮、腎集合管、結腸神経内分泌細胞、胎盤、正常な膀胱細胞および尿管移行上皮細胞)において発現される(図16)。正常な細胞に加えてPSCAはまた、アンドロゲン依存性前立腺癌細胞およびアンドロゲン非依存性前立腺癌細胞の両方(図9〜11)、骨に転移する前立腺癌(図20〜24および26〜32)、膀胱癌腫(図6、25および26)ならびに膵臓癌腫(図63および64)によって過剰発現される。癌(例えば、前立腺癌および膀胱癌)におけるPSCAの発現は、増加する悪性度分類(grade)と相関するようである。さらに、癌(例えば、前立腺癌)を罹患する患者におけるPSCAの過剰発現(すなわち、正常な細胞において見い出される発現より高い発現)は、不良な予後の指標であるようである。
PSCA mRNAはまた、正常な前立腺において基底細胞のサブセットにより発現される。基底細胞上皮は、末期の分化型分泌細胞についての前駆体細胞を含むと考えられる(Bonkhoffら、1994,Prostate 24:114〜118)。サイトケラチンマーカーを使用した最近の研究は、基底細胞上皮が少なくとも2つの異なる細胞部分集団を含み、1つはサイトケラチン5および14を発現し、そしてもう一方は、サイトケラチン5、8および18を発現することを示唆する(BonkhoffおよびRemberger、1996、Prostate 28:98〜106)。PSCAは、基底細胞の1つのサブセットにしか発現されないという知見は、PSCAが、それら2つの基底細胞系統のうちの1つに対するマーカーであり得ること示唆する。
PSCAの生物学的機能は知られていない。Ly−6遺伝子ファミリーは、シグナル伝達および細胞−細胞の接着を含む、多様な細胞機能に関与する。SCA−2を通じたシグナル伝達は、未成熟の胸腺細胞におけるアポトーシスを妨ぐことが示されている(Nodaら、1996,J.Exp.Med.183:2355〜2360)。Thy−1は、T細胞の活性化に関与し、src様チロシンキナーゼを通じてシグナルを伝達する(Thomasら、1992,J.Biol.Chem.267:12317〜12322)。Ly−6遺伝子は、腫瘍形成および同型の細胞の接着の両方に関係している(BamezaiおよびRock,1995,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:4294〜4298;Katzら、1994,Int.J.Cancer 59:684〜691;Brakenhoffら、1995,J.Cell Biol.129:1677〜1689)。基底細胞、および基底細胞における制限された発現とそのSca−2との相同性に基づいて、本発明者らは、PSCAが、幹細胞機能/前駆体細胞機能(例えば、自己再生(抗アポトーシス)および/または増殖)において役割を果し得るという仮説を立てた。
PSCAは、マウスおよびヒトにおいて高度に保存される。前立腺に主に制限される保存された遺伝子の同定は、PSCAが正常な前立腺の発達において重要な役割を果し得るという仮説を支持する。
種々の局面において、以下に詳細に記載されるように、本発明は、PSCAタンパク質、抗体、核酸分子、組換えDNA分子、形質転換宿主細胞、産生方法、アッセイ、免疫的治療法、トランスジェニック動物、免疫学的アッセイおよび核酸に基づくアッセイ、ならびに組成物を提供する。
(PSCAタンパク質)
本発明の1つの局面は、種々のPSCAタンパク質、およびそのペプチドフラグメントを提供する。本明細書中で使用される場合、PSCAは、図1Bおよび3に提供されるような、ヒトPSCAのアミノ酸配列、図3に提供されるようなマウスPSCAホモログのアミノ酸配列、または他の哺乳動物のPSCAホモログのアミノ酸配列を有するタンパク質、ならびにPSCA活性を有するそれらタンパク質の対立遺伝子改変体、および保存的置換変異体をいう。本発明のPSCAタンパク質には、具体的に同定され、かつ特徴づけられた本明細書中に記載される改変体ならびに下記に要約される以下の方法に従って過度の実験をせずに単離/産生され、そして特徴づけられ得る対立遺伝子改変体、保存的置換改変体およびホモログが挙げられる。便宜のため、全てのPSCAタンパク質は集合的にPSCAタンパク質、本発明のタンパク質、またはPSCAといわれる。
用語「PSCA」は、図1Bおよび3に提供されるような、ヒトPSCAの全ての天然に存在する対立遺伝子改変体、アイソフォーム、および前駆体、ならびに図3に提供されるようなマウスのPSCAを含む。一般的に、例えば、天然に存在するヒトPSCAの対立遺伝子改変体は、図1Bおよび3において提供されるPSCAアミノ酸配列と有意な相同性(例えば、70〜90%)を共有する。対立遺伝子改変体は、わずかに異なるアミノ酸配列を有するが、GPI結合タンパク質として前立腺細胞の表面で発現され得るか、または分泌され得るか、もしくは解離され得る。典型的に、PSCAタンパク質の対立遺伝子改変体は、本明細書中に記載のPSCA配列からの保存的アミノ酸の置換を含むか、またはPSCAホモログ(例えば、本明細書中に記載のマウスPSCAホモログ)に対応する位置からのアミノ酸の置換を含む。
PSCA対立遺伝子改変体の1つのクラスは、図1Bおよび3に示されるPSCAアミノ酸配列の少なくとも小さな領域と高い程度の相同性を共有するタンパク質であるが、さらにその配列由来の遊離基離脱(例えば、非保存的置換、短縮、挿入またはフレームシフト)を含む。このような対立遺伝子は、PSCAの変異体対立遺伝子と呼ばれ、そして典型的に、同じ生物学的機能を行わないタンパク質を表す。
保存的アミノ酸置換は、タンパク質中において、しばしばタンパク質の高次構造またはタンパク質の機能のいずれかを変化させずになされ得る。このような変化には、イソロイシン(I)、バリン(V)、およびロイシン(L)のいずれかへの、これらの疎水性アミノ酸の他の任意のアミノ酸の置換;グルタミン(E)のアスパラギン酸(D)への置換、およびその反対の置換;アスパラギン(N)のグルタミン(Q)への置換、ならびにその反対の置換;およびスレオニン(T)のセリン(S)への置換、およびその反対の置換が挙げられる。特定のアミノ酸の環境、およびタンパク質の三次構造におけるそのアミノ酸の役割に依存して、他の置換はまた、保存的であるとみなされ得る。例えば、グリシン(G)とアラニン(A)は互換可能で有り得、しばしばアラニン(A)とバリン(V)も互換可能であり得る。比較的疎水性のメチオニン(M)は、しばしばロイシンおよびイソロイシン、そして時にはバリンと互換され得る。リジン(K)およびアルギニン(R)は、アミノ酸残基の有意な特徴がその電荷であり、かつこれら2つのアミノ酸残基の異なったpKが有意でない位置においてしばしば互換可能である。なお他の変化は、特定の環境中において「保存的」であるとみなされ得る。
ヒトPSCAタンパク質のアミノ酸配列は、図1Bおよび3に提供される。ヒトPSCAは、123個のアミノ酸の単一のサブユニットから構成され、そしてアミノ末端シグナル配列、カルボキシ末端GPI固着配列および多重Nグリコシル化部位を含む。PSCAは、造血発達の最初期段階を特徴付ける細胞表面タンパク質の群であるThy−1/Ly−6遺伝子ファミリーのメンバーである幹細胞抗原−2(SCA−2)と30%の相同性を示す。マウスPSCAホモログのアミノ酸配列は、図3に示される。マウスのPSCAは、ヒトPSCAおよび類似構造の生物とおよそ70%の相同性を有する123個のアミノ酸の単一のサブユニットタンパク質である。
PSCAタンパク質は、多くの形態で、好ましくは単離された形態で具体化され得る。本明細書中で使用される場合、タンパク質は、物理的方法、機械的方法または化学的方法を使用して、通常タンパク質に付随する細胞構築物からPSCAタンパク質を除去した場合、単離されたと言われる。当業者は、標準的精製方法を容易に使用し、単離されたPSCAタンパク質を入手し得る。精製されたPSCAタンパク質分子は、抗体または他のリガンドへのPSCAの結合を損なう他のタンパク質または分子を実質的に含まない。単離および精製の性質ならびに程度は、意図された使用に依存する。PSCAタンパク質の実施形態は、精製されたPSCAタンパク質および機能的な可溶性のPSCAタンパク質を含む。機能的な可溶性のPSCAタンパク質の1つの例は、図1Bにおいて示されるアミノ酸配列、またはそのフラグメントを有する。1つの形態において、そのような機能的な可溶性のPSCAタンパク質またはそのフラグメントは、抗体または他のリガンドを結合する能力を保持する。
本発明はまた、図1Bおよび3に示されるヒトおよびマウスのPSCAアミノ酸配列の生物学的に活性なフラグメントを含むペプチドを提供する。例えば、本発明は、アミノ酸配列TARIRAVGLLTVISKを有するペプチドフラグメント、アミノ酸配列VDDSQDYYVGKKおよびSLNCVDDSQDYYVGKを有するペプチドフラグメントを提供する。
本発明のペプチドは、PSCAに関連するエピトープと特異的に結合する抗体の産生を誘導する能力のような、PSCAの特性を示す。PSCAタンパク質のそのようなペプチドフラグメントは、標準のペプチド合成技術および本明細書中に開示されるヒトPSCAタンパク質またはマウスPSCAタンパク質のアミノ酸配列を用いて産生され得る。あるいは、組換え方法が、このPSCAタンパク質のフラグメントをコードする核酸分子を産生するために使用され得る。この点に関して、本明細書中に記載されるPSCAコード核酸分子は、PSCAの規定されたフラグメントを産生するための手段を提供する。
以下に議論されるように、PSCAのペプチドフラグメントは、:ドメイン特異的抗体の産生;PSCAまたはPSCAドメインに結合する因子の同定;PSCAまたはPSCAドメインに結合する細胞因子の同定;およびヒトPSCAのホモログまたは他の対立遺伝子型の単離において、特に有用である。特に興味深い構造を含むPSCAペプチドは、当該分野で周知の種々の分析技術(例えば、Chou−Fasman分析、Garnier−Robson分析、Kyte−Doolittle分析、Eisenberg分析、Karplus−Schultz分析またはJameson−Wolf分析、あるいは免疫原性に基づく方法が挙げられる)を使用して予想および/または同定され得る。例として、ヒトPSCAの疎水性プロットおよびChou−Fasmanプロットは、それぞれ、図4および5に提供される。そのような残基を含むフラグメントは、サブユニット特異的抗PSCA抗体の産生またはPSCAに結合する細胞因子の同定において特に有用である。
PSCAタンパク質の様々な領域は、抗PSCA抗体に結合し得る。このPSCAタンパク質の領域は、例えば、N末端領域、中間領域、およびC末端領域を含み得る(実施例18、図49)。このN末端領域は、アミノ酸残基2−50、好ましくは、残基18−50に含まれるPSCAタンパク質の任意の部分を含む。この中間領域は、アミノ酸残基46−109、好ましくは、残基46−98に含まれるPSCAタンパク質の任意の部分を含む。このC末端領域は、アミノ酸残基85〜123、好ましくは、残基85〜98に含まれるPSCAタンパク質の任意の部分を含む。
本発明のPSCAタンパク質は、以下に挙げられる使用を含む、種々の目的に対して有用であり得るが、これらの使用に限定されない:前立腺癌の診断および/または予後のマーカーとして、抗体の産生を誘導するための能力の診断および/または予後のマーカーとして、ならびに以下にさらに記載されるような種々の治療的物理療法に対する標的として。PSCAタンパク質はまた、PSCAに結合するリガンドおよび他の因子を同定および単離するために使用され得る。正常な前立腺において、PSCAは、基底細胞のサブセットにもっぱら発現し、これは、PSCAが、基底上皮内の特定の細胞系に関してマーカーとして使用され得ることを示唆する。さらに、本出願者らの結果は、基底細胞のこのセットが、悪性形質転換の標的を表すことを示唆する。従って、例えば、形質転換の原因である分子因子を除去または調節するように設計された治療的な戦略は、PSCA細胞表面タンパク質を介して細胞のこの集団を特異的に指向し得る。
(PSCA抗体)
本発明はさらに、PSCAに結合する抗体(例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、およびヒト化抗体)を提供する。最も好ましい抗体は、選択的にPSCAへ結合し、そして非PSCAタンパク質に結合しない(またはより弱く結合する)。最も好ましい抗体は、PSCAに特異的に結合する。用語「特異的に結合する」は、抗体が優性にPSCAに結合することを意味することが意図される。特に意図された抗PSCA抗体は、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体ならびにそれらのフラグメント(例えば、組換えタンパク質)を含み、このフラグメントは、抗原結合ドメインおよび/またはこれらの抗体の1つ以上の補体決定領域を含む。これらの抗体は、任意の供給源(例えば、ラット、イヌ、ネコ、ブタ、ウマ、マウス、およびヒト)由来であり得る。
1つの実施形態において、このPSCA抗体は、例えば、初代病巣および前立腺癌骨転移由来の前立腺癌細胞の細胞表面上のPSCAタンパク質の細胞外ドメインに特異的に結合する。用語「細胞外ドメイン」は、細胞の形質膜に対して外部であるPSCAタンパク質の任意の部分を意味することが意図される。他の実施形態において、このPSCA抗体は、PSCAタンパク質または前駆体(例えば、N末端領域、中間領域、またはC末端領域の部分;図49)の他のドメインに特異的に結合する。当業者によって理解されるように、抗体が指向するPSCAタンパク質の領域またはエピトープは、意図された適用により変化し得る。例えば、生存可能な前立腺癌細胞上の膜結合PSCAの検出のためのイムノアッセイにおける使用を意図される抗体は、膜結合PSCA上の到達可能なエピトープに指向されるべきである。そのような抗体の例は、以下の実施例に記載される。他のエピトープを認識する抗体は、損傷した細胞または瀕死の細胞中のPSCAの同定のため、分泌されたPSCAタンパク質またはそのフラグメントの検出のために有用であり得る。本発明はまた、PSCAタンパク質を特異的に認識する抗体フラグメントを含む。本明細書中で使用される場合、抗体フラグメントとは、その標的に結合する免疫グロブリン分子の可変領域の少なくとも部分(すなわち、抗原結合領域)であるとして定義される。免疫グロブリンの定常領域のいくつかが、含まれ得る。
例えば、アンドロゲン依存性およびアンドロゲン非依存性の前立腺癌細胞の両方におけるPSCAの過剰発現、およびPSCAの細胞表面位置は、スクリーニングアッセイ、診断アッセイ、予後アッセイおよび追跡(follow−up)アッセイおよび画像化方法のための優れたマーカーの特徴を示す。さらに、これらの特徴は、PSCAが、標的抗体療法、免疫療法、および遺伝子療法のような治療方法のための優れた標的であり得ることを示す。
本発明のPSCA抗体は、前立腺癌の治療技術における診断アッセイ、画像化方法論、および治療的方法において、特に有用であり得る。本発明は、PSCAタンパク質の検出および前立腺癌の診断に有用な、種々の免疫学的アッセイを提供する。そのようなアッセイは、一般的に、PSCAタンパク質を認識し結合し得る1つ以上のPSCA抗体を含み、そして以下に挙げられる当該分野で周知の種々の免疫学的アッセイ形式を含むが、これらに限定されない:種々の型の沈降、凝集、補体結合、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫測定法(ELISA)、酵素結合免疫蛍光測定法(ELIFA)(H.Liuら、Cancer Research 58:4055−4060(1998))、免疫組織化学的分析など。さらに、前立腺癌を検出し得る免疫学的画像化方法もまた、本発明によって提供され、標識したPSCA抗体を用いた放射性シンチグラフィー(radioscintigraphic)画像化方法を含むがこれに限定されない。このようなアッセイは、前立腺癌の検出、モニタリングおよび予後において、臨床的に有用であり得る。
1つの実施形態において、PSCA抗体およびそのフラグメント(例えば、Fv、Fab’、F(ab’)2)は、前立腺癌、膀胱癌腫、前立腺癌の骨転移、PIN、またはPSCAタンパク質を発現する基底上皮細胞の存在を検出することに使用される。種々の生物学的サンプル(血清、前立腺および他の組織生検標本、骨のような他の組織、尿などが挙げられる)中の、そのようなPSCA陽性(+)細胞の存在は、PSCA抗体を用いて検出され得る。さらに、PSCA抗体は、インジウム−111(または他の同位体)結合抗体を用いた免疫シンチグラフィーのような、種々の画像化方法論において使用され得る。例えば、In−111結合抗PSMA抗体を用いる最近記載されたプロトコールに類似した画像化プロトコールを、再発性および転移性の前立腺癌腫の検出に使用し得る(Sodeeら、1997、Clin Nuc Med 21:759−766)。例えば、SPMAのような前立腺癌の他のマーカーに関連して、PSCAは、アンドロゲン非依存性の前立腺癌細胞の標的化のために特に有用であり得る。PSCA抗体はまた、PSCA機能を阻害するために治療的に使用され得る。
PSCA抗体はまた、PSCAタンパク質およびペプチドの精製のための方法ならびにPSCAホモログおよび関連する分子の単離のための方法において使用され得る。例えば、1つの実施形態において、PSCAタンパク質を精製する方法は、以下の工程を包含する:固体マトリックス結合したPSCA抗体を、PSCAを含む溶解物または他の溶液とともに、そのPSCA抗体がPSCAに結合することを可能にする条件下でインキュベートする工程;不純物を除去するために固体マトリックスを洗浄する工程;そしてそのPSCAを結合した抗体から溶出する工程。さらに、PSCA抗体は、細胞ソーティング(sorting)および精製技術を用いてPSCA陽性細胞を単離するために使用され得る。前立腺腫瘍細胞上のPSCA(単独または他の細胞表面マーカーとの組み合わせ)の存在は、ヒト前立腺癌細胞を他の細胞から区別し、そして単離するために使用され得る。特に、PSCA抗体は、抗体に基づく細胞ソーティングまたはアフィニティー精製技術を使用して異種移殖腫瘍組織、培養中の細胞などから前立腺癌細胞を単離するために使用され得る。本発明のPSCA抗体の他の使用は、PSCAタンパク質を模倣する抗イディオタイプ抗体の産生を含み、例えば、モノクローナル抗イディオタイプ抗体は、1G8、2A2、2H9、3C5、3E6、3G3および4A10のような本発明の任意のモノクローナル抗体上のイディオタイプと反応性である。
多量の比較的に純粋なヒトPSCA陽性前立腺癌細胞(これは、組織培養において増殖し得るかまたは動物モデル(例えば、SCIDマウスまたは他の免疫不全マウス)における異種移植腫瘍として増殖し得る)を産生する能力は、多くの利点を提供し、例えば、前立腺癌細胞の比較的に均質な集団の増殖または他の表現型特徴に対する種々の導入遺伝子または候補治療的化合物の評価を可能にすることが挙げられる。さらに、本発明の特徴はまた、種々の分子操作のために十分な量の、ヒトPSCA陽性前立腺癌特異的核酸の非常に濃縮した調製物の単離を可能にする。例えば、多量なそのような核酸調製物は、前立腺癌疾患の進行に生物学的に関連した珍しい遺伝子の同定を補助する。
本発明のこの局面の別の価値がある適用は、局所的に進行した疾患または転移性の疾患を有する個体患者からクローン化した生存可能なPSCA陽性前立腺癌細胞の比較的に純粋な調製物を単離し、分析しそしてそれを用いて実験する能力である。このようにして、例えば、個々の患者の前立腺癌細胞は、制限された生検サンプルから増殖され得、次いで、潜在的に混乱させる混入している細胞という変数を伴わずに、診断および予後の遺伝子、タンパク質、染色体異常、遺伝子発現プロフィール、または他の関連する遺伝型および表現型の特徴の存在について試験される。さらに、そのような細胞は、動物モデルにおいて、新生物の攻撃性および転移性能力について評価され得る。同様に、患者特異的な前立腺癌ワクチンおよび細胞性免疫治療剤が、そのような細胞調製物から作製され得る。
抗体の調製についての種々の方法が当該分野で周知である。例えば、抗体は、単離形態または免疫結合体形態でPSCAタンパク質、ペプチド、またはフラグメントを用いて適切な哺乳動物宿主に免疫されることによって調製され得る(Harlow、Antibodies、Cold Spring Harbor Press、NY(1989))。さらに、PSCAの融合タンパク質(例えば、はまた、PSCA GST融合タンパク質)もまた、使用され得る。PSCAを発現または過剰発現する細胞PSCAもまた、免疫のために使用され得る。同様に、PSCAを発現するように操作された任意の細胞が、使用され得る。この戦略は、内因性PSCAを認識する能力が増強されたモノクローナル抗体の産生をもたらし得る。例えば、実施例5に記載の標準技術および標準のハイブリドーマプロトコール(HarlowおよびLane、1988、Antibodies:A Laboratory Manual.(Cold Spring Harbor Press))を使用することによって、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマが生成された。このハイブリドーマは、1G8(ATCC番号 HB−12612)、2A2(ATCC番号 HB−12613)、2H9(ATCC番号 HB−12614)、3C5(ATCC番号 HB−12616)、3E6(ATCC番号 HB−12618)、および3G3(ATCC番号 HB−12615)、4A10(ATCC番号 HB−12617)と呼ばれる。これらの抗体は、1998年12月11日、American Type Culture Collection(ATCC)、12301 Parklawn Drive、Rockville、MD 20852に寄託された。
本発明のキメラ抗体は、ヒト部分および非ヒト部分を含む、免疫グロブリン分子である。キメラ抗体の抗原結合領域(可変領域)は、非ヒト供給源(例えば、マウス)に由来し得、そしてその免疫グロブリンに生物学的エフェクター機能を与えるキメラ抗体の定常領域は、ヒト供給源由来であり得る。このキメラ抗体は、非ヒト抗体分子の抗原結合特異性およびこのヒト抗体分子により付与されるエフェクター機能を有するはずである。
一般的に、キメラ抗体を産生するために使用される手順は、以下の工程を含み得る:
a)抗体分子の抗原結合部分をコードする正確な遺伝子セグメントの同定およびクローニング;この遺伝子セグメント(重鎖についてVDJ領域(可変領域、多様性(diversity)領域および接合(joining)領域)または軽鎖についてVJ領域(可変領域、接合領域)として公知であるか、または単にV領域または可変領域として公知)は、cDNA形態またはゲノム形態のいずれかであり得る;
b)定常領域またはその所望される部分をコードする遺伝子セグメントのクローニング;c)完全なキメラ抗体が転写され得かつ翻訳され得る型でコードするように可変領域を定常領域と連結;
d)この構築物を、選択可能なマーカー、ならびにプロモーター、エンハンサーおよびポリ(A)付加シグナルのような遺伝子制御領域を含む、ベクター中に連結;
e)細菌中でこの構築物の増幅;
f)真核生物細胞(最も頻繁には、哺乳動物リンパ球)へのこのDNAの導入(トランスフェクション);
g)選択可能なマーカーを発現する細胞の選択;
h)所望するキメラ抗体を発現する細胞についてのスクリーニング;および
k)適切な結合特異性およびエフェクター機能についての抗体の試験。
幾つかの異なる抗原結合特異性の抗体が、キメラタンパク質を産生するためのこれらのプロトコールにより操作された[例えば、抗TNP:Boulianneら、Nature 312:643(1984);および抗腫瘍抗原:Sahaganら、J.Immunol.137:1066(1986)]。同様に、幾つかの異なるエフェクター機能が、この抗原結合領域をコードする配列に対する新規の配列を連結することによって達成された。これらの幾つかは酵素[Neubergerら、Nature 312:604(1984)]、別の種由来の免疫グロブリンの定常領域、および別の免疫グロブリン鎖の定常領域[Sharonら、Nature 309:364(1984);Tanら、J.Immunol.135:3565−3567(1985)]を含む。さらに、抗体分子を改変するため、および遺伝子改変を目標とするための相同組換えを用いたキメラ抗体分子の産生についての手順は、記載されている(Fellら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:8507−8511(1989))。
これらの抗体は、例えば、前立腺癌細胞の細胞表面上のPSCAに結合し得、これによって、PSCAの細胞表面位置が確認される。これらのmAbが、細胞表面の外側のエピトープを認識するので、これらのmAbは、前立腺癌の診断および治療のための有用性を有する。例えば、これらのmAbは、転移性の疾患の部位を位置付けるために使用された(実施例6)。別の可能性は、mAbが、単独あるいは放射性同位体または他の毒素と結合されて使用される際、前立腺癌細胞を治療学的に標的化するために(例えば、全身的に)使用され得ることである。
PSCA mAbは、細胞表面を斑点状の様式で染色し(実施例5参照)、これは、PSCAが、細胞表面の特定の領域に局在し得ることを示唆する。GPIに固着されたタンパク質は、細胞表面の界面活性剤不溶性の糖脂質に富んだマイクロドメイン(DIGS)において密集することが公知である。小胞およびスフィンゴ脂質(shingolipid)−コレステロールラフを含むこれらのマイクロドメインは、シグナル伝達および分子輸送において重要な役割を果たすと考えられている。PSCAの相同体であるThy−1は以前、脂質−マイクロドメインにおける相互作用を介してsrcキナーゼへシグナルを伝達することが示された。本発明者らの研究室における細胞下分画実験は、DIGS中のPSCAの存在を確認する。
さらに、本発明のいくつかの抗体は、内部移行する抗体であり、すなわち、この抗体は、結合の際または結合の後に、細胞内へ内部移行する。用語「内部移行する」とは、抗体が細胞に取り込まれることを意味することが意図される。さらに、いくつかの抗体は、PSCA陽性癌細胞の増殖の阻害を誘導する。
例えば、前立腺癌の検体におけるこれらの抗体の特徴は、PSCAタンパク質が、正常細胞と比較して前立腺癌において過剰発現していること、そしてこの発現が、前立腺癌の進行および転移の間にアップレギュレートされるようであることを示す。これらの抗体は、PSCA生物学および機能研究、ならびにPSCA関連癌(例えば、ヒト前立腺癌、前立腺癌の骨への転移、および膀胱癌腫)のインビボ標的化において有用である。
PSCAタンパク質の細胞外ドメインを特異的に認識しそして結合するPSCAmAbsが、本明細書中に記載される。これらのいくつかは、細胞表面量で発現されるとネイティブのPSCAに結合することが示されており、そしていくつかは前立腺腫瘍細胞のインビボ増殖を阻害することが示されている。
本明細書中に示されるPSCAのアミノ酸配列は、抗体を産生するためのPSCAタンパク質の特異的領域を選択するために使用され得る。例えば、このPSCAアミノ酸配列の親水性および疎水性の分析は、PSCAの構造における疎水性領域を同定するために使用され得る。免疫原性構造を示すPSCAタンパク質の領域ならびに他の領域およびドメインは、当該分野で公知の種々の他の方法(例えば、Chou−Fasman分析、Garnier−Robson分析、Kyte−Doolittle分析、Eisenberg分析、Karplus−Schultz分析またはJameson−Wolf分析)を用いて容易に同定され得る。これらの残基を含むフラグメントは、特定のクラスの抗PSCA抗体の産生に特に適する。特に有用なフラグメントには、配列TARIRAVGLLTVISKおよびSLNCVDDSQDYYVGKが挙げられるが、これらに限定されない。
以下の実施例2に記載されるように、ウサギポリクローナル抗体を、合成ペプチドとして調製した前者のフラグメントに対して産生し、そしてPSCA−グルタチオンSトランスフェラーゼ融合タンパク質を用いたアフィニティー精製をした。この抗体によるPSCAの認識は、PSCAを用いてトランスフェクトした293T細胞の抽出液およびGST−PSCA融合タンパク質の、イムノブロット分析および免疫沈降分析によって確立した。この抗体はまた、PSCAでトランスフェクトされた293T細胞およびLAPC−4細胞におけるPSCAの細胞表面発現を、蛍光細胞分析分離装置(FACS)を用いて同定した。
さらに、ヒツジのポリクローナル抗体を、合成ペプチドとして調製した後者のフラグメントに対して産生し、そしてペプチドAffi−ゲルカラムを用いてアフィニティー精製した(実施例2の方法にもよる)。この抗体によるPSCAの認識は、PSCAを用いてトランスフェクトしたLNCaP細胞の抽出液のイムノブロット分析および免疫沈降分析によって確立された。この抗体はまた、蛍光細胞分析分離装置(FACS)および免疫組織化学的分析を用いて、PSCAでトランスフェクトされたLNCap細胞におけるPSCAの細胞表面の発現を同定した。
免疫原としての使用のためのタンパク質を調製するための方法、およびキャリア(例えば、BSA、KLH、または他のキャリアタンパク質)とのタンパク質の免疫原性結合体を調製するための方法は、当該分野で周知である。いくつかの状況において、例えば、カルボジイミド試薬の使用による直接的な結合が、使用され得、他の場合において、Pierce Chemical Co.、Rockford、ILによって供給されるような結合試薬は、効果的であり得る。PSCA免疫原の投与は、当該分野で一般的に理解されるように、適切な期間に渡って、適切なアジュバントの使用と共に、注射によって一般的に行なわれる。免疫スケジュールの間、抗体の力価が、抗体形成の適切さを決定するために得られ得る。
この方法で産生されるポリクローナル抗血清は、いくつかの適用にとって十分であり得るが、薬学的組成物については、モノクローナル抗体調製物が好ましい。所望するモノクローナル抗体を分泌する不死化細胞株は、一般的に公知であるように、KohlerおよびMilsteinの標準的な方法、またはリンパ球細胞および脾細胞の不死化をもたらす改変形を使用して調製され得る。所望する抗体を分泌する不死化細胞株は、抗原がPSCAタンパク質またはPSCAフラグメントであるイムノアッセイによってスクリーニングされる。所望の抗体を分泌する適切な不死化細胞培養物が同定された場合、その細胞は、インビトロで培養され得るか、または腹水中の産生により培養され得るかのいずれかである。
次いで、所望のモノクローナル抗体を、培養上清または腹水上清から回収する。本発明のモノクローナル抗体またはポリクローナル抗血清の、免疫学的に重要な部分(すなわち、PSCAを認識し、そして結合する部分)を含むフラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2、Fvフラグメント、融合タンパク質)を、アンタゴニスト、およびインタクトな抗体として使用し得る。PSCAに対するヒト化抗体もまた、有用である。本明細書中において使用する場合に、ヒト化PSCA抗体とは、PSCAに結合し得、そしてヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を実質的に有するFR領域、および非ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列またはPSCAを結合するよう操作された配列を実質的に有するCDRを含む、免疫グロブリン分子である。1つ以上の非ヒト抗体CDRを対応するヒト抗体配列に置換することによって、マウスおよび他の非ヒト抗体をヒト化するための方法は、周知である(例えば、Jonesら、1986、Nature 321:522−525;Reichmnanら、1988、Nature 332:323−327;Verhoeyenら、1988、Science 239:1534−1536を参照のこと)。また、Carterら、1993、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4285およびSimsら、1993、J.Immunol.151:2296を参照のこと。
免疫学的に反応性のフラグメント(例えば、Fab、Fab’またはF(ab’)2フラグメント)の使用は、特に治療の観点において、しばしば好ましい。なぜならこれらのフラグメントは、一般に、免疫グロブリン全体より免疫原性が低いからである。さらに、2つ以上のエピトープに特異的な二重特異性抗体が、当該分野において一般的に公知の方法を使用して、生成され得る。さらに、抗体エフェクター機能が、癌に対するPSCA抗体の治療効果を増強するように、改変され得る。例えば、システイン残基がFc領域内に操作されて、鎖間ジスルフィド結合の形成およびホモダイマー(これは、インターナリゼーション、ADCCおよび/または相補体により媒介される細胞殺傷の増強された能力を有し得る)の生成を可能にし得る(例えば、Caronら、1992、J.Exp.Med.176:1191−1195;Shopes、1992、J.Immunol.148:2918−2922を参照のこと)。ホモダイマー抗体はまた、当該分野において公知の架橋技術によって、生成され得る(例えば、Wolffら、Cancer Res.53:2560−2565)。本発明はまた、本発明のモノクローナル抗体または抗イデオタイプモノクローナル抗体を有する、薬学的組成物を提供する。
細胞表面PSCAに結合し得るモノクローナル抗体(mAb)の生成を、実施例5に記載する。これらのmAbのエピトープマッピングは、これらがPSCAタンパク質上の異なるエピトープを認識することを示す。例えば、あるものはカルボキシ末端領域内のエピトープを認識し、そして他のものはアミノ末端領域内のエピトープを認識する。このようなPSCA抗体は、これらの異なるエピトープ結合特性を考慮すると、サンドイッチ形式のELISAにおける使用に特に良好に適切であり得る。
抗体またはフラグメントはまた、現在の技術を使用して、組換え手法により生成され得る。PSCAタンパク質の所望の領域に特異的に結合する領域もまた、多様な種を起源とするキメラ抗体またはCDR移植抗体の状況において生成され得る。本発明は、本発明のいずれかのモノクローナル抗体のPSCAに対する免疫特異的結合を競合的に阻害する抗体(例えば、モノクローナル抗体)を含む。
あるいは、ファージディスプレイおよびトランスジェニック方法を包含する、完全ヒトモノクローナル抗体を生成するための方法は、公知であり、そしてヒトmAbの生成のために、使用され得る(概説については、Vaughanら、1998、Nature Biotechnology 16:535−539を参照のこと)。例えば、完全ヒト抗PSCAモノクローナル抗体は、大ヒトIg遺伝子無作為配列ライブラリー(すなわち、ファージディスプレイ)を使用するクローニング技術を使用して、生成され得る(GriffithsおよびHoogenboom、Building an in vitro immune system:human antibodies from phage display libraries.:Protein Engineering of Antibody Molecules for Prophylactic and Therapeutic Applications in Man.Clark,M.(編)、Nottingham Academic、45〜64頁(1993);BurtonおよびBarbas、Human Antibodies from conbinatorial libraries.同書、65〜82頁)。完全ヒト抗PSCAモノクローナル抗体はまた、PCT出願公開WO98/24893(Jakobovitsら、1997年12月3日公開)に記載されるように、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含むよう操作されたトランスジェニックマウスを使用して、生成され得る(Jakobovits、1998、Exp.Opin.Invest.Drugs 7(4):607−614もまた参照のこと)。この方法は、ファージディスプレイ技術に関して必要とされるインビトロ操作を回避し、そして高親和性真正ヒト抗体を効率的に生成する。
標的抗原に対する抗PSCA mAbの反応性は、適切であるように、PSCAタンパク質、ペプチド、PSCA発現細胞またはその抽出物を使用して、多数の周知の手段(ウェスタンブロット、免疫沈降、ELISA、およびFACS分析を含む)によって確立され得る。抗PSCA mAbはまた、種々のインビトロアッセイ(相補体により媒介される腫瘍細胞溶解、抗体依存性細胞細胞傷害性(ADCC)、抗体依存性マクロファージ媒介性細胞傷害性(ADMMC)、腫瘍細胞増殖などを含む)において、特徴付けられ得る。このようなインビトロアッセイの例を、以下の実施例19に提供する。
本発明の抗体またはそのフラグメントは、これが結合する細胞に対して、細胞増殖抑制性であり得る。用語「細胞増殖抑制性」とは、その抗体が、PSCA陽性細胞の増殖を阻害し得るが、必ずしも殺傷する必要はないことを意味することが、意図される。
本発明の抗体またはそのフラグメントは、検出マーカーを用いて標識され得るか、または第2の分子(例えば、それによって免疫結合体を生じる治療剤(例えば、細胞毒因子))と結合体化され得る。例えば、この治療剤としては、抗腫瘍薬物、毒素、放射性因子、サイトカイン、二次抗体または酵素が挙げられるがこれらに限定されない。さらに、本発明は、本発明の抗体がプロドラッグを細胞毒薬物に変換する酵素と連結される、実施形態を提供する。
免疫結合体は、PSCA陽性細胞に対してこの第2の分子を標的とするために使用され得る(Vitetta,E.S.ら、1993、Immnotoxin therapy,DeVita,Jr.、V.T.ら編、Cancer:Principles and Practice of Oncology、第4版、J.B.Lippincott Co.、Philadelphia、2624−2636)。
細胞毒因子の例としては、リシン、リシンA鎖、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、エチジウムブロマイド、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシンD、ジフテリア毒素、Pseudomonas体外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、αサルシン(sarcin)、ゲロニン(gelonin)、ミトゲリン(mitogellin)、レトストリクトシン(retstrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、キュリシン(curicin)、クロチン(crotin)、カリーチアマイシン(calicheamicin)、サパオナリアオフィシナリス(sapaonaria officinalis)インヒビター、マイタンシノイド(maytansinoid)、およびグルココルチコイドならびに他の化学療法剤、ならびに放射性同位元素(例えば、212Bi、131I、131In、90Y、および186Re)が挙げられるがこれらに限定されない。適切な検出マーカーとしては、放射性放射性同位元素、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤または酵素が挙げられるがこれらに限定されない。抗体はまた、プロドラッグをその活性形態に変換し得る、抗癌プロドラッグ活性化酵素に結合体化され得る。例えば、米国特許第4,975,287号を参照のこと。
さらに、本発明の任意のモノクローナル抗体の抗原結合領域を含む本発明の組換えタンパク質は、癌を処置するために使用され得る。このような状況において、組換えタンパク質の抗原結合領域は、治療的活性を有する第2のタンパク質の少なくとも機能的に活性な部分と結合される。この第2のタンパク質としては、酵素、リンホカイン、オンコスタチンまたは毒素が挙げられ得るがこれに限定されない。適切な毒素としては、上記のものが挙げられる。
抗体に対して、治療剤を結合体化または結合するための技術は、周知である(例えば、Arnonら、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeldら、(編)、243−56頁(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstromら、「Antibodies For Drug Delivery」、Controlled Drug Delivery(第2版)、Robinsonら、(編)、623−53頁(Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」、Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications、Pincheraら、(編)、475−506頁(1985);およびThorpeら、「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody−Toxin Conjugates」、Immunol.Rev.、62:119−58(1982)を参照のこと)。治療剤としてのPSCA抗体の使用は、以下の小節「PROSTATE CANCER IMMUNOTHERAPY」においてさらに記載される。
(PSCAをコードする核酸分子)
本発明の別の局面は、PSCAタンパク質およびそのフラグメントをコードする種々の核酸分子を、好ましくは単離された形態において(DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、および関連分子、PSCAをコードする配列に相補的な核酸分子またはその一部、ならびにPSCA遺伝子またはPSCAコード核酸とハイブリダイズするものを含む)提供する。特に好ましい核酸分子は、本明細書中で開示されるヒトDNA配列またはマウスDNA配列と実質的に同一のヌクレオチド配列または相補的なヌクレオチド配列を有する。ゲノムDNA、cDNA、リボザイム、およびアンチセンス分子、ならびに天然供給源由来であろうと合成由来であろうと、代替の骨格に基づいた核酸または代替の塩基を含む核酸が、特に意図される。
例えば、アンチセンス分子は、RNA、または塩基対依存様式(base pair−dependent manner)においてDNAもしくはRNAを特異的に結合する他の分子(ペプチド核酸(PNA)または非核酸分子(例えば、ホスホロチオエート誘導体)を含む)であり得る。当業者は、本明細書中に記載されているPSCA配列を使用して、これらのクラスの核酸分子を容易に獲得し得る。便宜上、PSCAコード核酸分子は、本明細書中で、PSCAコード核酸分子、PSCA遺伝子またはPSCA配列といわれる。
ヒトPSCAの1つの対立遺伝子形態をコードするcDNAのヌクレオチド配列は、図1Aにおいて提供される。マウスPSCAホモログをコードするcDNAのヌクレオチド配列(「マウスPSCA」)は、図2において提供される。ヒトPSCAおよびマウスPSCAのゲノムクローンはまた、実施例4において記載されるように単離された。ヒトゲノムクローンおよびマウスゲノムクローンの両方が、PSCA遺伝子の翻訳領域および3’非翻訳領域をコードする3つのエキソンを含む。5’非翻訳領域をコードする4番目のエキソンが、Ly−6遺伝子ファミリーおよびThy−1遺伝子ファミリーの他のメンバーに対するPSCAの相同性に基づいて、存在を推定される(図8)。
ヒトPSCA遺伝子は、染色体8q24.2に位置する。ヒト幹細胞抗原2(RIG−E)、ならびに1つの他の最近同定されたヒトLy−6ホモログ(E48)もまた、この領域に局在し、関連遺伝子の大きなファミリーが、この遺伝子座に存在し得ることを示唆する(Brakenhoffら、1995、前出;Maoら、1996、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:5910−5914)。興味深いことに、染色体8qは、進行した前立腺癌および再発した前立腺癌の大部分において、対立遺伝子の増加および対立遺伝子の増幅の領域であることが報告されている(Cherら、1994、Genes Chrom.Cancer 11:153−162)。c−mycは、染色体8q24のPSCAの近位に局在し、そしてc−mycの過剰コピー(対立遺伝子の増加または対立遺伝子の増幅のいずれかを介して)が、初期前立腺腫瘍の68%および転移の96%において見出された(Jenkinsら、1997、Cancer Res.57:524−531)。
本発明のPSCAコード核酸分子の実施形態は、プライマー(これは、本発明の核酸分子またはその任意の特異的部分の特異的な増幅を可能にする)、および本発明の核酸分子またはその任意の部分と選択的にまたは特異的にハイブリダイズするプローブを含む。この核酸プローブは、検出マーカーを用いて標識され得る。検出マーカーの例としては、放射性同位元素、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤または酵素が挙げられるがこれらに限定されない。このような標識プローブは、PSCAタンパク質を発現している細胞を診断するための手段としてPSCAタンパク質の存在を診断するために使用され得る。DNAプローブおよびRNAプローブを生成するための技術は、周知である。
本明細書中で使用されるように、核酸分子は、この核酸分子がPSCA以外のポリペプチドをコードする夾雑核酸分子から実質的に分離される場合、「単離される」と言われる。当業者は、単離されたPSCAコード核酸分子を獲得するために核酸単離手順を容易に用い得る。
本発明は、本発明のPSCAコード核酸分子のフラグメントをさらに提供する。本明細書中で使用されるように、PSCAコード核酸分子のフラグメントは、PSCAコード配列全体の小さい部分をいう。このフラグメントの大きさは、その意図された使用により決定される。
例えば、このフラグメントが、PSCAタンパク質の活性部分(活性ドメイン、エフェクター結合部位またはGPI結合ドメインのような)をコードするように選択される場合、このフラグメントは、PSCAタンパク質の機能的領域をコードするのに十分に大きいことが必要とされる。このフラグメントが核酸プローブまたはPCRプライマーとして使用される場合、このフラグメントの長さは、プローブ化/プライミング化の間に比較的少数の疑陽性物を獲得するように選択される。
選択的ハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプライマーとして特に有用であるヒトPSCAのフラグメントは、当該分野で公知の方法を使用してPSCA配列全体から容易に同定され得る。RT−PCR分析のために有用であるPCRプライマーの1つのセットは、5’−TGCTTGCCCTGTTGATGGCAG−および3’−CCAGAGCAGCAGGCCGAGTGCA−を含む。
(他のPSCAコード核酸分子を単離するための方法)
本明細書中で記載されるPSCAコード核酸分子は、PSCAホモログ、あるいはPSCAタンパク質のスライスされたアイソフォーム、対立遺伝子改変体、および変異体形態、ならびにそれらのコード配列および遺伝子配列の単離を可能にする。PSCAホモログの最も好ましい供給源は、哺乳動物生物である。
例えば、本明細書中に記載されるPSCAコード配列の部分が、合成され得、そしてヒト以外の生物、本明細書中に記載されるヒトPSCAタンパク質の対立遺伝子改変体、およびPSCA遺伝子を含むゲノム配列由来のPSCAファミリーのタンパク質の1つのメンバーをコードするDNAを回収するためのプローブとして使用され得る。およそ18〜20ヌクレオチドを含むオリゴマー(約6〜7アミノ酸ストレッチ(stretch)をコードする)が、ストリンジェントな条件または過度のレベルの擬陽性物を除去するために十分にストリジェンシーな条件下で、ハイブリダイゼーションを獲得するためのゲノムDNAライブラリーまたはcDNAライブラリーをスクリーニングするために調製され、そして使用される。特定の実施形態において、ヒトPSCAをコードするcDNAが、本明細書中の実施例3に記載されるように、マウスPSCAホモログをコードする全長cDNAを単離するために、使用された。マウスクローンは、ヒトPSCAに対して70%のアミノ酸同一性を有するタンパク質をコードする。
さらに、ヒトPSCAタンパク質のアミノ酸配列は、細胞から調製される発現ライブラリーをスクリーニングするための抗体プローブを生成するために使用され得る。典型的に、哺乳動物(例えば、精製されたタンパク質(以下に記載されるような)を用いて免疫化されたウサギ)由来のポリクローナル抗血清またはモノクローナル抗体が、PSCAホモログのための適切なコード配列を獲得するために、標的生物から調製された発現ライブラリーをプローブ化するために使用され得る。クローンニングされたcDNA配列が、融合タンパク質として発現され得るか、それ自身の制御配列を使用して直接発現され得るか、またはその酵素の発現のために使用される特定の宿主に対して適切な、制御配列を使用して発現カセットを構築することにより発現され得る。
PSCA遺伝子を含むゲノムクローンが、当該分野において周知の分子クローニング方法を使用して、獲得され得る。1つの実施形態において、PSCA遺伝子のエキソン1〜4を含むおよそ14kbのヒトゲノムクローンが、本明細書中の実施例4でより完全に記載されるように、ヒトPSCA cDNAプローブを用いたλファージライブラリーをスクリーニングすることにより獲得された。別の実施形態において、マウスPSCA遺伝子を含むおよそ10kbのゲノムクローンが、マウスPSCA cDNA(実施例4にもまた記載される)を用いたマウスBAC(バクテリア人工染色体)ライブラリーをスクリーニングすることにより獲得された。
さらに、対のオリゴヌクレオチドプライマーが、PSCAコード核酸分子またはそのフラグメントを選択的に増幅/クローンニングするために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)における使用のために調製され得る。このようなPCRプライマーを使用するためのPCRの変性/アニーリング/伸長サイクルは、当該分野において周知であり、そして、他のPSCAコード核酸分子を単離する際の使用のために容易に適用され得る。プローブとしてまたはプライマーとしての使用のために特に十分に適切なヒトPSCA遺伝子の領域は、容易に同定され得る。
PSCAの非ヒトホモログ、PSCAの天然に存在する対立遺伝子改変体、およびゲノムPSCA配列は、本明細書中に記載されるヒトPSCA配列と高度な相同性を共有する。一般に、このような核酸分子は、ストリンジェントな条件下でヒトPSCA配列にハイブリダイズする。このような配列は、代表的に、ヒトPSCA配列に対して少なくとも70%の相同性、好ましくは少なくとも80%の相同性、最も好ましくは少なくとも90%の相同性を含む。
ストリンジェントな条件は、(1)洗浄のために低イオン強度および高温を用いる(例えば、50℃で0.015M NaCl/0.0015M硝酸ナトリウム/0.1%SDS)、または(2)ハイブリダイゼーションの間、ホルムアミドのような変性剤(例えば、42℃で、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/750mM NaCl、75mMクエン酸ナトリウムを含有するpH6.5の50mMリン酸ナトリウム緩衝液を含有する、50%(vol/vol)ホルムアミド)を用いる条件である。
別の例は、42℃で、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理されたサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%硫酸デキストラン(42℃で、0.2×SSCおよび0.1%SDS中において洗浄)の使用である。当業者は、明瞭かつ検出可能なハイブリダイゼーションシグナルを獲得するために適切な、ストリンジェンシー条件を容易に決定し得、そして変更し得る。
(PSCAコード核酸を含む組換えDNA分子)
本明細書中に記載されるようなPSCAコード配列またはそのフラグメントを含む組換えDNA分子(rDNA)もまた提供される。本明細書中において使用されるように、rDNA分子は、インビトロの分子操作に供されたDNA分子である。rDNA分子を生成するための方法は、当該分野において周知であり、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning(1989)を参照のこと。本発明の好ましいrDNA分子において、PSCAタンパク質またはPSCAのフラグメントをコードするPSCAコードDNA配列は、1つ以上の発現制御配列および/またはベクター配列と作動可能に連結される。rDNA分子は、PSCAタンパク質全体をコードし得るかまたはPSCAタンパク質のフラグメントをコードし得るかのいずれかである。
PSCAコード配列が作動可能に連結されるベクター配列および/または発現制御配列の選択は、当該分野において周知のように、所望される機能的特性(例えば、タンパク質発現)、および形質転換されるべき宿主細胞に直接的に依存する。本発明により意図されるベクターは、少なくとも複製または宿主染色体への挿入を指向することが可能であり、そして好ましくはrDNA分子に含まれるPSCAコード配列の発現もまた可能である。
作動可能に連結されるタンパク質コード配列の発現を調節するために使用される発現制御エレメントは、当該分野において公知であり、そして誘導プロモーター、構成性プロモーター、分泌シグナル、エンハンサー、転写ターミネーターおよび他の調節エレメントが挙げられるがこれらに限定されない。好ましくは、容易に制御される誘導プロモーター(例えば、宿主細胞培地における栄養素に応答性である)が、使用される。
1つの実施形態において、PSCAコード核酸分子を含むベクターは、それを用いて形質転換される原核生物レプリコン(すなわち、原核生物宿主細胞(例えば、細菌宿主細胞)において、染色体内に自律的複製および組換えDNA分子の維持を指向する能力を有するDNA配列)を含む。このようなレプリコンは、当該分野において周知である、さらに、原核生物レプリコンを含むベクターはまた、発現が薬物耐性のような検出マーカーを付与する遺伝子を含み得る。代表的な細菌性薬物耐性遺伝子は、アンピシリンまたはテトラサイクリンに対する耐性を付与する遺伝子である。
原核生物レプリコンを含むベクターは、細菌宿主細胞(例えば、E.coli)におけるPSCAコード配列の発現(転写および翻訳)を指向し得る原核生物プロモーターまたはウイルスプロモーターをさらに含み得る。プロモーターは、RNAポリメラーゼの結合および転写が起こること可能にするDNA配列により形成される発現制御エレメントである。細菌宿主と適合性のプロモーター配列は、代表的に、本発明のDNAセグメントの挿入のための都合の良い制限部位を含むプラスミドベクターにおいて提供される。当業者に周知である種々のウイルスベクター(例えば、多くの周知のレトロウイルスベクター)もまた使用され得る。
真核生物細胞に適合性の発現ベクター、好ましくは脊椎動物細胞に適合性のある発現ベクターはまた、PSCAコード配列を含むrDNA分子を改変するために用いられ得る。真核生物細胞発現ベクターは、当該分野で周知であり、そしていくつかの商業的な供給源から入手可能である。代表的に、そのようなベクターは、所望のDNAセグメントの挿入に関して都合のよい制限部位を含んで、供給される。このようなベクターの代表は、PSVLおよびpKSV−10(Pharmacia)、pBPV−1/pML2d(International Biotechnologies,Inc.)、pTDT1(ATCC,#31255)、本明細書中に記載されるベクターpCDM8、および真核発現ベクターのようなベクターである。
本発明のrDNA分子を構築するために使用される真核細胞発現ベクターは、真核細胞において効果的である選択マーカー、好ましくは薬物耐性選択マーカーをさらに含み得る。好ましい薬物耐性マーカーは、その発現がネオマイシン耐性を生じる遺伝子(すなわち、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)遺伝子)である(Southernら、J Mol Anal Genet(1982)1:327−341)。あるいは、選択マーカーは、別のプラスミド上に存在し得、その2つのベクターは、宿主細胞の同時トランスフェクションにより導入され、そして選択マーカーに対して適切な薬物の存在下で培養することにより選択される。
本発明の実施に従い、ベクターは、上記で議論されたcDNA分子をコードしているプラスミド、コスミドまたはファージベクターであり得る。さらに、本発明は、適切な真核宿主細胞中にトランスフェクトされるプラスミド、コスミド、またはファージベクターを含む宿主ベクター系を供給する。適切な真核宿主細胞の例は、酵母細胞、植物細胞、または哺乳動物細胞のような動物細胞を含む。適切な細胞の例は、LnCaP、LAPC−4、および他の前立腺癌細胞株を含む。この宿主ベクター系は、PSCAタンパク質の産生のために有用である。あるいは、宿主細胞は、細菌細胞のような真核細胞であり得る。
(形質転換された宿主細胞)
本発明は、PSCAタンパク質またはそのフラグメントをコードしている核酸分子で形質転換された宿主細胞をさらに提供する。この宿主細胞は、原核生物細胞または真核生物細胞のいずれかであり得る。PSCAタンパク質の発現に有用である真核生物細胞は、細胞株が、細胞培養方法に対して適合性があり、そして発現ベクターの増殖およびPSCA遺伝子の発現に適合性のある限り、限定されない。好ましい真核生物宿主細胞は、酵母、昆虫細胞および哺乳動物細胞、好ましくはマウス、ラット、サルまたはヒト繊維芽細胞株に由来するような脊椎動物細胞を含むが、これらに限定されない。LnCaP、LAPC−4細胞株のような前立腺癌細胞株もまた、使用され得る。任意の原核宿主が、使用され、PSCAをコードしているrDNA分子を発現し得る。好ましい原核宿主は、E.coliである。
本発明のrDNA分子を用いる、適切な細胞宿主の形質転換は、使用したベクターの型および利用された宿主系に代表的に依存した周知の方法により達成される。原核宿主細胞の形質転換に関しては、エレクトロポレーションおよび塩処理方法が、代表的に使用される(例えば、Cohenら、Proc Acad Sci USA(1972)69:2110;およびManiatisら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cole Spring Harbor,NY(1982)を参照のこと)。rDNAを含むベクターを用いる脊椎動物細胞の形質転換に関しては、エレクトロポレーション、陽イオン性脂質または塩処理方法が代表的に利用される(例えば、Grahamら、Virol(1973)52:456;Wiglerら、Proc Natl Acad Sci USA(1979)76:1373−76を参照のこと)。
首尾よく形質転換された細胞、すなわち本発明のrDNA分子を含む細胞は、周知の技術により同定され得る。例えば、本発明のrDNAの導入から生じる細胞は、クローニングされ、単一のコロニーを産生し得る。それらのコロニー由来の細胞は、回収され得、溶解され得、そしてそれらのDNA成分は、Southern,J Mol Biol(1975)98:503、もしくはBerentら、Biotech(1985)3:208により記載されるような方法、または免疫学的方法を介してアッセイされる細胞から産生されるタンパク質を使用して、rDNAの存在について実験され得る。
(PSCAタンパク質を産生する組換え方法)
本発明は、本明細書中に記載されるPSCAをコードしている核酸分子の1つを使用してPSCAタンパク質を産生するための方法をさらに提供する。大まかに言えば、組換え型PSCAタンパク質の生成は、代表的に以下の工程を含み得る(Maniatis、前出)。
第一に、図1Aに示される核酸分子のような、PSCAタンパク質またはそれらのフラグメントをコードする核酸分子が、得られる。次いで、PSCAをコードしている核酸分子は、上記のように、適切な制御配列と共に作動可能に連結して好ましくは、配置され、PSCAコード配列を含む発現ユニットを産生する。この発現ユニットは、適切な宿主を形質転換するために用いられ、そして形質転換された宿主は、PSCAタンパク質の産生を可能にする条件下で培養される。必要に応じて、そのPSCAタンパク質は、培地から、または細胞から単離され;いくつかの不純物が許容され得るいくつかの場合は、このタンパク質の回収および精製は不必要であり得る。
前述の工程の各々は、種々の方法で行われ得る。例えば、所望のコード配列は、ゲノムフラグメントから得られ得、そして適切な宿主において直接的に使用され得る。種々の宿主において作動可能である発現ベクターの構築は、レプリコンおよび制御配列の適切な組み合わせを使用して達成される。この制御配列、発現ベクター、および形質転換方法は、遺伝子を発現するために用いられる宿主細胞の型に依存しており、そして以前に詳細に議論された。適切な制限部位は、通常的には入手不可能な場合、切除可能な遺伝子を供給してこれらのベクター中へ挿入するために、コード配列の末端に付加され得る。当業者は、PSCAタンパク質を産生するPSCAコード配列を用いる用途のために、当該分野で公知の任意の宿主/発現系を容易に適合させ得る。
続く実施例に記載される特定の実施形態において、PSCAの分泌形態は、C末端6XHisおよびMYCタグ(pcDNA3.1/mycHIS、Invitrogen)でPSCAをコードするCMV駆動発現ベクターでトランスフェクトされた293T細胞に都合よく発現され得る。培養培地中の分泌されたHISでタグされたPSCAは、標準の技術を利用するニッケルカラムを用いて精製され得る。
(PSCAリガンドおよび他の結合剤を同定するためのアッセイ)
本発明の別の局面は、PSCAに結合するPSCAリガンドおよび他の因子ならびに細胞成分を、検出および同定するために使用され得るアッセイおよび方法に関する。具体的に、PSCAに結合するPSCAリガンドおよび他の因子ならびに細胞成分は、PSCAに結合するPSCAリガンドもしくは他の因子または細胞成分の能力、ならびに/またはPSCA活性を阻害/刺激する能力により同定され得る。PSCAタンパク質を使用するPSCA活性(例えば、結合)のためのアッセイは、高処理能スクリーニング方法における使用に関して適切である。
1つの実施形態では、このアッセイは、PSCAを試験剤または細胞の抽出物と混合する工程を包含する。この因子または抽出物の成分とPSCAの結合を可能にする条件下での混合後、その混合物は、分析され、因子/成分がPSCAに結合するか否かを決定する。結合因子/成分は、PSCAに対して結合し得るものとして同定される。あるいはまたは継続して、PSCA活性は、PSCA活性のアゴニストおよびアンタゴニストを同定するための手段として、直接的に評価され得る。
あるいは、PSCAタンパク質に結合する標的は、酵母ツーハイブリッド系(Fields,S.およびSong,O.(1989)、Nature 340:245−246)を使用して、または結合−捕獲アッセイ(Harlow、前出)を使用して、同定され得る。酵母ツーハイブリッド系において、2つのサブユニット転写因子の1つのサブユニットおよびPSCAタンパク質から作製される融合タンパク質をコードしている発現ユニットは、酵母細胞に導入され、そして発現される。この細胞は、(1)その発現が、発現のために2つのサブユニット転写因子を必要とする、検出可能なマーカーをコードしている発現ユニット、ならびに(2)転写因子の第二のサブユニットおよびDNAのクローン化セグメントから作製される融合タンパク質をコードしている発現ユニット、を含むようにさらに改変される。DNAのクローン化されたセグメントが、PSCAタンパク質に結合するタンパク質をコードする場合、その発現は、PSCAとそのコードされるタンパク質との相互作用を生じる。このことは、転写因子の2つのサブユニットを近位で結合させ、転写因子の再構築を可能にする。このことは、検出可能なマーカーの発現を生じる。酵母ツーハイブリッド系は、PSCAの細胞の結合パートナーに関する、cDNAをコードしているセグメントのライブラリーのスクリーニングにおいて、特に有用である。
上記アッセイにおいて使用され得るPSCAタンパク質は、単離されたPSCAタンパク質、PSCAタンパク質のフラグメント、PSCAタンパク質を発現するために改変された細胞、またはPSCAタンパク質を発現するために改変された細胞の画分を含むが、それらに限定されない。さらにPSCAタンパク質は、PSCAタンパク質の全体またはPSCAタンパク質の限定されたフラグメントであり得る。PSCAタンパク質が、結合している因子について、例えば、分子量または活性におけるシフトによりアッセイされ得る限り、本アッセイは使用され得ることが当業者には明白である。
薬剤/細胞の成分がPSCAタンパク質に結合するか否かを同定するために使用されるこの方法は、使用されるPSCAタンパク質の性質に主に基づく。例えば、ゲル遅延アッセイは、因子がPSCAまたはそのフラグメントに結合するか否かを決定するために使用され得る。あるいは、免疫検出およびバイオチップ技術は、PSCAタンパク質を用いる用途に適合され得る。当業者は、特定の因子がPSCAタンパク質に結合するか否かを決定するための多くの当該分野で公知の技術を容易に利用し得る。
因子および細胞の成分は、無細胞アッセイ系または細胞アッセイ系を使用して、PSCAタンパク質の活性を調節する能力についてさらに試験され得る。PSCAタンパク質の活性がより限定的になる場合、同定される活性に基づく機能的アッセイが利用され得る。
本明細書において使用されるように、薬剤がPSCA活性を減少する場合、その薬剤は、PSCA活性をアンタゴナイズするといわれる。好ましいアンタゴニストは、他の細胞性タンパク質のいずれにも影響せずに、選択的にPSCAをアンタゴナイズする。さらに、好ましいアンタゴニストは、PSCA活性を50%を超えるまで、より好ましくは、90%を超えるまで、最も好ましくは全てのPSCA活性を除去するまで減少させる。
本明細書において使用されるように、薬剤がPSCA活性を増加する場合、その薬剤は、PSCA活性をアゴナイズするといわれる。好ましいアゴニストは、他の細胞性タンパク質のいずれにも影響せずに、選択的にPSCAをアゴナイズする。さらに、好ましいアンタゴニストは、PSCA活性を50%を超えるまで、より好ましくは、90%を超えるまで、最も好ましくは二倍のPSCA活性を超えるまで増加させる。
上記の方法においてアッセイされる薬剤は、無作為に選択され得るか、あるいは合理的に選択または設計され得る。本明細書中で使用されるように、因子がPSCAタンパク質の特異的配列を考慮すること無しに無作為に選択される場合、この因子は、無作為に選択されると言われる。無作為に選択された因子の例は、化学的ライブラリーまたはペプチドコンビナトリアルライブラリーの使用、あるいは生物抽出物または植物抽出物の増殖培養物である。
本明細書において使用されるように、因子が標的部位の配列および/あるいはその因子の作用と関連するそのコンフォメーションを考慮する非無作為な基準に基づいて選択される場合、この因子は、合理的に選択または設計されると言われる。因子は、PSCAタンパク質を構成するペプチド配列を利用することにより、合理的に選択、または合理的に設計され得る。例えば、合理的に選択されるペプチド剤は、アミノ酸配列がPSCAタンパク質のフラグメントに対して同一であるペプチドであり得る。
本発明の方法において試験される因子は、例として、ペプチド、小分子、およびビタミン誘導体、ならびに糖質であり得る。当業者は、本スクリーニング方法において使用される因子の構造的性質に関しては制限が存在しないことを容易に認識し得る。本発明の因子の1つのクラスは、そのアミノ酸配列がPSCAタンパク質のアミノ酸配列に基づいて選択されるペプチド剤である。小ペプチド剤は、PSCAタンパク質アセンブリの競合的インヒビターとして働き得る。
ペプチド剤は、当該分野で公知のような標準の固相(または液相)ペプチド合成方法を使用して調製され得る。さらに、それらのペプチドをコードしているDNAは、市販のオリゴヌクレオチド合成機器を使用して合成され得、そして標準の組換え産生系を使用して組換え的に産生され得る。非遺伝子コードアミノ酸が含まれている場合、この固相ペプチド合成を使用した産物が、必要とされる。
本発明の薬剤の別のクラスは、PSCAタンパク質の重要な位置に対して免疫反応性の抗体である。上記のように、抗体は、抗原性領域として、抗体により標的化されるように意図されるPSCAタンパク質の部分を含むペプチドを用いた適した哺乳動物被検体の免疫化により得られる。重要な領域は、図15において同定されるドメインを含み得る。このような薬剤は、競合的結合研究において使用され得、第二世代の抑制性薬剤を同定する。
本発明の方法において試験される細胞の抽出物は、例えば細胞または組織の水性抽出物、細胞または組織の有機抽出物、あるいは部分的に精製された細胞画分であり得る。当業者は、本発明のスクリーニング方法において使用される細胞抽出物の供給源には制限がないことを容易に認識し得る。
PSCA抗体のようなPSCAタンパク質に結合する因子は、PSCAの活性を調節するため、抗癌剤を適切な哺乳動物細胞に標的化するため、またはPSCAとの相互作用をブロックする因子を同定するために使用され得る。PSCAを発現する細胞は、PSCAに結合する因子を使用することにより標的化あるいは同定され得る。
どのようにPSCA結合剤が使用されるかは、PSCA結合剤の性質に依存する。例えば、PSCA結合剤は、PSCA発現細胞にジフテリア毒素、コレラ毒素、リシンまたはシュードモナス外毒素のような複合毒物を送達するため;PSCA活性を調節するため;PSCA発現細胞を直接的に殺傷するため;または競合的結合剤を同定するためのスクリーニングにおいてに使用され得る。例えば、PSCA阻害薬剤は、PSCA発現細胞の増殖を直接的に阻害するために使用され得、一方、PSCA結合剤は診断的薬剤として使用され得る。
本発明の複数の診断的用途が存在する。例えば、本発明は、被検体(例えば、動物被検体またはヒト被検者)において、PSCAタンパク質の存在と関連する癌を診断するための方法を提供する。1つの実施形態において、この方法は、本発明の抗体の任意の1つまたは組み合せを使用して、サンプル(例えば、細胞または生物学的液体サンプル)中のPSCAタンパク質の数を定量的に決定する工程を包含する。次いで、そうして決定されるその数は、正常な被検体由来のサンプル中の量と比較され得る。このサンプル中のはっきりと異なる量の存在(すなわち、その試験サンプル中のPSCAの数が正常なサンプル由来の数を超える)は、癌の存在を示す。試験サンプル中のPSCAの数が正常なサンプル由来の数を超える場合、PSCAは、細胞で過剰発現される。
別の実施形態では、診断は、本発明の核酸を使用して、被検体由来のサンプルにおいてPSCAタンパク質をコードしているRNAの量を定量的に決定することを含む。そうして決定された量は、正常な被検体由来のサンプル中のRNAの量と比較され得る。ここでも、はっきりと異なる量の存在は、癌の存在を示す。
さらに、本発明は、種々の時点で被検体由来のサンプルにおけるPSCAの量を測定することにより、被検体中のPSCAと関連する癌(例えば、前立腺癌、前立腺癌の骨転移、膀胱癌、膵臓癌)または障害の経過をモニタリングするための方法を提供する。このことは、サンプルにおけるPSCAの量の変化を決定する(例えば、その変化が量的に小さな変化であるかまたは大きな変化(すなわち、PSCAの過剰発現)であるかを決定する)目的で行われる。1つの実施形態では、この方法は、被検体由来の第一のサンプルにおいて、PSCAタンパク質の存在を定量的に決定する工程、およびそのように決定された量をその被検体由来の第二のサンプル中に存在する量と比較する工程を包含し、ここでそのようなサンプルは、異なる時点で取り出されており、その決定された量における差は癌の経過を示している。
別の実施形態では、モニタリングは、被検体由来の第一のサンプルにおいてPSCAのRNAの存在を定量的に決定すること、およびそのように決定された量をその被検由来の第二のサンプル中に存在する量と比較することにより達成され、ここでそのようなサンプルは、異なる時点で取り出されており、その量における決定された差は癌(例えば、前立腺癌、前立腺癌の骨転移、膀胱癌、および膵臓癌)の経過を示唆している。
さらなる実施形態として、PSCAと関連する疾患または障害は、PSCA遺伝子コピー数における増加または増加したPSCA遺伝子コピー数を検出することにより、サンプルにおいてモニタリングされ得る。PSCA遺伝子コピー数における増加または増加したPSCA遺伝子コピー数は、重要である。なぜならば、乏しい結果と関連し得るからである。
このサンプルは、動物またはヒト由来であり得る。さらに、このサンプルは、細胞のサンプルであり得る。例えば、本発明の方法を使用して、前立腺組織、膵臓組織、膀胱組織、神経内分泌組織および骨(癌腫が転移し得る任意の組織、例えば、節、肺、肝臓、膵臓)は、癌または転移病巣の存在について評価され得る。あるいは、そのサンプルは、生物学的液体(例えば、尿、血清または血漿)であり得る。
本発明の実施に従って、検出は、組織学、ブロッティング、ELISAおよびELIFAを含む免疫学的検出手段により達成され得る。サンプルが組織サンプルまたは細胞サンプルである場合、そのサンプルは、ホルマリン固定、パラフィン包埋または凍結され得る。
本発明は、正常組織由来の組織切片におけるPSCAの量および分布と比較して、試験される新生物形成組織由来の組織切片中のPSCAの量および分布における差異を決定する方法を、さらに提供する。1つの実施形態において、この方法は、試験される組織と正常組織の両方を、PSCAとの複合体を特異的に形成するモノクローナル抗体と接触させる工程、それによって、PSCAの量および分布における差異を検出する工程を包含する。
さらに、本発明は、被験体における新生物形成状態または前新生物状態を診断する方法を提供する。この方法は、組織のサンプルを被験体から得る工程、上記の方法の使用においてPSCAの量および分布の差異(このような新生物形成状態または前新生物状態を示している明瞭な測定可能な差異)を検出する工程を包含する。
本発明の実施に従って、抗体は、本発明のモノクローナル抗体のいずれかが指向するエピトープに対して指向され得る。さらに、組織切片は、膀胱、前立腺、骨、リンパ組織、膵臓、他の器官、または筋肉由来であり得る。
本発明はまた、生物学的な流体サンプル中の、PSCAの濃度を検出し、そして定量的に決定する方法を提供する。1つの実施形態において、この方法は、モノクローナル抗体が固体支持体の表面に付着することを可能にする条件下で、PSCAと複合体を形成する(好ましくは、特異的に形成する)過剰の1つ以上のモノクローナル抗体と、固体支持体を接触させる工程を包含する。次いで、モノクローナル抗体が付着する得られた固体支持体が、生物学的な流体サンプルと接触され、その結果、生物学的な流体中のPSCAが抗体と結合し、そしてPSCA−抗体複合体を形成する。この複合体は、検出可能なマーカーで、直接的または間接的に標識され得る。あるいは、PSCAまたは抗体のいずれかが、複合体の形成前に標識され得る。次いで、この複合体が検出および定量的に決定され、それによって、生物学的な流体サンプル中のPSCAの濃度を検出および定量的に決定し得る。正常細胞と比較したサンプル中の高濃度のPSCAは、新生物形成状態または前新生物状態を示す。
本発明の実施に従って、生物学的な流体は、組織抽出物、尿、血液、血清および痰を含むが、これらに限定されない。さらに、検出可能なマーカーは、酵素、ビオチン、発蛍光団、発色団、重金属、常磁性同位体または放射性同位体を含むが、これらに限定されない。
さらに、本発明は、PSCAを認識および結合する抗体(抗PSCA抗体);ならびに検出可能な標識の結合体、ならびに抗PSCA抗体の特異的結合パートナーを含む診断キットを提供する。本発明の実施に従って、標識は、酵素、放射性標識、発色団および蛍光剤を含むが、これらに限定されない。
(癌免疫療法)
PSCAタンパク質は、多くの癌(前立腺腫瘍、前立腺腫瘍の転移(例えば、骨転移)、膀胱癌、および膵臓癌を含むが、これらに限定されない)に発現または過剰発現されるので、癌免疫療法の標的である。これらの免疫療法方法としては、抗体治療、インビボワクチンおよびエキソビボ免疫療法アプローチの使用が挙げられる。
1つのアプローチにおいて、本発明は、癌(例えば、前立腺癌、膀胱癌および膵臓癌)を処置するために全身的に用いられ得るPSCA抗体を提供する。PSCA抗体はまた、種々の他の良性腫瘍および悪性腫瘍の処置に有用であり得る。PSCAの細胞外ドメインに特異的に結合する抗体が、好ましい。腫瘍細胞を標的化するがその周りの非腫瘍の細胞および組織は標的化しない抗体が、好ましい。従って、本発明は、PSCA抗原を発現する癌に感受性であるかまたはこのような癌を有する患者の処置方法を提供し、この方法は、上記の患者に有効量の抗体(この抗体は、PSCAの細胞外ドメインに特異的に結合する)を投与する工程を包含する。別のアプローチにおいて、本発明は、PSCAを発現する腫瘍細胞の増殖の阻害方法を提供し、この方法は、患者へPSCAの細胞外ドメインに特異的に結合する抗体をその腫瘍細胞の増殖を阻害するのに効果的な量で投与する工程を包含する。PSCA mAbはまた、PSCA抗原を発現する細胞の増殖を選択的に阻害するかまたはこのような細胞を選択的に殺傷するための方法に使用され得、この方法は、PSCA抗体免疫結合体またはイムノトキシンを、この細胞の増殖を阻害するかまたはこの細胞を殺傷するのに有効な量でこの細胞と反応させる工程を包含する。
例えば、非結合体化PSCA抗体(モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全なヒト抗体およびそのフラグメント(例えば、組換えタンパク質)を含む)が、患者に導入され得、その結果、補体媒介性細胞溶解、抗体依存性細胞性細胞傷害性、PSCAの生理学的機能の変化、および/またはリガンド結合もしくはシグナル伝達経路の阻害を含み得る機構によって、抗体が、癌細胞上のPSCAに結合し、そしてこのような細胞および腫瘍の増殖阻害(この破壊を含む)を媒介する。本発明の非結合体化PSCA抗体、そのフラグメントおよび組換えタンパク質に加えて、リシンのような毒物と結合体化されたPSCA抗体がまた、治療的に用いられ、毒物を、PSCA保有腫瘍細胞へ直接的に送達し得、それによって、腫瘍を破壊する。
PSCA抗体を用いた癌免疫療法は、結腸癌(Arlenら、1998、Crit Rev Immunol 18:133−138)、多発性骨髄腫(Ozakiら、1997、Blood 90:3179−3186;Tsunenariら、1997、Blood 90:2437−2444)、胃癌(Kaspryzykら、1992、Cancer Res 52:2771−2776)、B細胞リンパ腫(Funakoshiら、1996、J Immunther Emphasis Tumor Immunol 19:93−101)、白血病(Zhongら、1996、Leuk Res 20:581−589)、結腸直腸癌(Mounら、1994、Cancer Res 54:6160−6166;Veldersら、1995、Cancer Res 55:4398−4403)および乳癌(Shepardら、1991、J Clin Immunol 11:117−127)を含むが、これらに限定されない他の型の癌に関して、首尾よく利用されている種々のアプローチから生じた技術に従い得る。
例えば、臨床的に抗腫瘍モノクローナル抗体を適用するための1つの方法は、抗腫瘍活性(例えば、ADCC活性およびCDC活性)ならびに/またはインビトロおよび/もしくは動物モデルにおいて内部移行化する能力を提示する、本発明のモノクローナル抗体を用いて、改変されない形態でその抗体を投与することである(例えば、Hellstromら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:1499−1502(1985)を参照のこと)。ADCC活性およびCDC活性を検出するために、モノクローナル抗体が、4時間のインキュベーション時間にわたり、培養された51Cr標識化腫瘍標的細胞の溶解について試験され得る。標的細胞は、51Crで標識され、次いで、エフェクター細胞(リンパ球分離培地の使用によって精製されたヒトリンパ球の形態で)と抗体との組み合わせに4時間曝露され得、これは例えば、0.1μg/mlと10μg/mlの間で変化する濃度で添加される。標的細胞からの51Crの放出が、腫瘍細胞溶解(細胞傷害)の証拠として測定される。コントロールは、標的細胞単独の、または別々にリンパ球もしくはモノクローナル抗体のいずれかとの標的細胞のインキュベーションを含む。放出され得る51Crの総量が測定され、そして単独でインキュベートされる標的細胞と比較して、ADCCが、モノクローナル抗体およびエフェクター細胞を用いて観察される標的細胞のパーセント殺傷として算出される。CDCについての手順は、補体の供給源としてのヒト血清(1:3から1:6に希釈された)が、エフェクター細胞の代わりに添加されることを除いて、ADCCを検出するために用いたものと同一である。
本発明の方法の実施において、細胞表面上にPSCAを発現する癌細胞の増殖を阻害し得る抗PSCA抗体は、癌患者(この患者の腫瘍は、PSCAを発現するかまたは過剰発現する)に治療有効量で投与される。本発明の抗PSCA mAb治療方法は、インビボにおいて前立腺癌の顕著な腫瘍増殖阻害を示す。従って、本発明は、前立腺癌の特異的、効果的かつ長期必要とされる処置を提供する。本発明の方法はまた、PSCAを発現するかまたは過剰発現する他の癌(膀胱癌および膵臓癌を含むがこれらに限定されない)の処置についても有用であり得る(なぜなら、これら両方の癌は、上昇したレベルのPSCAを発現するからである)。本発明の抗体治療法法は、化学療法、照射および/または他の治療レジメンと組み合わされ得る。
以下の実施例18Aに記載するように、個々のマウス抗PSCA mAbならびにこれらの抗PSCAモノクローナル抗体の組み合わせは、異種の前立腺癌SCIDマウスモデルを用いてインビボにおいて、前立腺癌増殖を有意に阻害し得る。ある研究において、ヒト前立腺癌異種移植片の注射を受けたSCIDマウスの集団は、いくつかのマウス抗PSCA mAbの組合せで処置された。この研究の結果によって、この処置が、腫瘍注射後61日でさえ、これらのマウス全てにおいて腫瘍形成が完全にブロックされ得たことが示された。対照的に、同じ前立腺腫瘍異種移植片を受けたがコントロールマウスのIgGで処置されたSCIDマウスのコンロトール群中の全ての動物は、その研究の間に有意かつ進行性のより大量の腫瘍を生じた。抗PSCA mAb調製物を用いたこれらの動物の処置と関連する明らかな毒性は存在しなかった。なぜなら、処置群の全てのマウスは実験の間中、生存しかつ健康なままであったからである。本研究に使用された異種移植片(LAPC−9)は、ホルモン難治性性転移性前立腺癌を有する患者の骨腫瘍生検から作製され、非常にアンドロゲン感受性の表現型によって特徴付けられ(PSAレベルは、レシピエントSCIDマウスにおける去勢後、ゼロまで低下する)、特に進行性の増殖特性、およびPSCAの高レベルの過剰発現によって特徴付けられる。LAPC−9は、さらに他の文献において記載される(PCT出願公開WO98/16628,Sawyersら、1998年4月23日)。これらの結果は、実施例18Bに記載される第2のインビボ研究において確認された。さらに、さらなるインビボ研究によって、抗PSCA mAbは、単独で使用される場合に治療的に有効であることが示された(実施例18C1、C2)。これら全てのインビボ研究において、抗PSCA mAb処置を受けるマウスにおける腫瘍は、有意に低速な増殖速度、より長い潜伏期間を有し、そしてコントロール抗体の処置を受けるマウスにおける腫瘍と比較してより小さいサイズであった。血清PSAレベルはまた、コントロール処置された動物に対してより低く、そして腫瘍阻害と相関していた。さらに、異なるPSCAエピトープを認識する抗体ならびに異なるIgGアイソタイプを有する抗体は、治療的に有効である。1つの研究において、抗PSCA mAbは、インビボにおいて、確立された前立腺癌の増殖を効果的に阻害した(実施例18、C4)。この特定の研究において処置されたマウスの数匹は、PSCA処置後に腫瘍の後退を示した(実施例18)。
さらに、腫瘍保有マウスに投与された3C5抗体は、PSCAを発現する腫瘍細胞を標的化した。LAPC−9腫瘍を保有するSCIDマウス(例えば、発現されたPSCA)は、3C5抗体で処置された。腫瘍は、外植され、そして免疫組織化学分析によって3C5抗体の存在について調べられた(実施例26、図71)。固定された組織切片を、ヤギ抗マウスIgGを用いてプローブした。3C5抗体は、PSCA発現腫瘍細胞の塊に局在し(図71)、そしてこの腫瘍を通じて検出し得た。SCIDマウスは免疫グロブリンを産生しないので、この腫瘍組織中で検出された抗体は、おそらく3C5処置に由来する。3C5抗体の局在を確認するために、ウエスタンブロット分析を、同じマウス由来の腫瘍外植片に対して実施した。このブロットは、腫瘍外植片由来のタンパク質抽出物、コントロールIgG抗体および3C5抗体を含んだ。そしてこのブロットを、ヤギ抗マウスIgG−HRP抗体でプローブした。IgGの重鎖および軽鎖が、3C5処置マウス由来の腫瘍溶解物中で容易に検出された(図72)。
異なる研究結果によってまた、抗PSCA抗体がPSCA発現腫瘍を標的化し得ることが示された。確立されたLAPC−9腫瘍を保有するSCIDマウスを、1G8抗体で処置した。外植された腫瘍を、ヤギ抗マウスIgG−HRP抗体をプローブとして用いたウエスタンブロット分析によって、1G8抗体の存在について調べた(実施例26、図72)。重鎖および軽鎖は、1G8処置されたマウスにおいて容易に検出可能であった。これらの結果により、被験体に投与された抗PSCAが、循環し得、そしてPSCA発現腫瘍を標的化することが示される。これは、抗PSCAモノクローナル抗体が、循環し得、そして腫瘍(これは、局所であり、局所的に再発し、そして転移性である)においてPSCA発現細胞を標的化し得ることを示唆する。さらに、これは、結合体化抗PSCAモノクローナル抗体が、PSCAを発現する細胞を標的化し得、そしてこの腫瘍細胞を殺傷し得ことを示唆する。
以下の実施例24に記載するように、個々の抗PSCA mAbは、異種前立腺癌SCIDマウスモデルにおいてインビボで前立腺癌増殖を阻害し得る。例えば、SCIDマウスの2つの集団は、LAPC−9の注射を受け、そして、1G8または3C5で処置された。これらの結果により、1G8または3C5を単独で用いた処置が、腫瘍保有マウスにおける腫瘍増殖を阻害したことが示された。対照的に、同じ前立腺癌異種移植片を受けたがマウスIgGまたはリン酸緩衝液で処置されたコンロトール群中のマウスは、その研究の間により大きい腫瘍を発生した。さらに、抗PSCA処置は、コントロールマウスに比べて、抗体処置を受けたマウスの生命を有意に延長した。抗体処置されたマウスの延長した生命は、腫瘍増殖の減少と関連し、血清PSAレベルのレベルに影響を与えた。これらの結果により、抗PSCA抗体を用いた処置が、腫瘍増殖を阻害することによって腫瘍保有動物の生命を延長し得ることが示される。
細胞毒性の薬剤と組み合わせた抗PSCA mAbの効果をまた、試験した。以下の実施例25に記載されるように、SCIDマウスの2つの集団は、PSCAを発現するように操作されたPC3細胞の注射を受け、そして、このマウスを、1G8単独でか、またはドキソルビシンとの組合せた1G8で処置した。この結果により、1G8を用いた処置が、PSCA陽性PC3細胞の腫瘍増殖を阻害し、そして、1G8とドキソルビシンとの組合せが、リン酸緩衝液またはドキソルビシン単独で処置されたマウスにおける腫瘍と比較して、腫瘍増殖の阻害に対して相乗効果を有することが示された。
従って、実施例24の結果は、異なるアイソタイプを有する抗PSCAモノクローナル抗体が、確立されたアンドロゲン依存性腫瘍の増殖阻害に効果的であることを示す。例えば、LAPC−9異種移植片を、ホルモン難治性転移性前立腺癌を有する患者の骨腫瘍生検から作製した。1G8抗体は、マウスγ−1のアイソタイプの中性抗体である、これは、PSCA抗原と直接相互作用する。3C5抗体は、マウスγ−2Aアイソタイプの抗体であり、これは、細胞および補体に結合する。従って、1G8抗体は、抗体依存性の細胞の細胞傷害性(ADCC)機構を介して、アンドロゲン依存性腫瘍の細胞の細胞傷害性に向くことができ、そして3C5抗体は、腫瘍に対して強力な免疫応答を開始することができる。同様に、実施例25の結果によって、抗PSCA抗体が、確立されたアンドロゲン依存性腫瘍の処置において効果的であることが示される。
患者は、腫瘍中のPSCA過剰発現の存在およびPSCA過剰発現のレベルについて評価され得、これは、好ましくは、腫瘍組織の免疫組織化学評価、定量的PSCA画像化、またはPSCA発現の存在およびPSCA発現の程度を容易に示し得る他の技術を用いる。腫瘍生検または外科的検体の免疫組織化学分析が、本目的に対して好ましい。腫瘍組織の免疫組織化学分析に関する方法は、当該分野で周知である。サンプル中のPSCA過剰発現のレベルを検出するのに有用な免疫組織化学分析技術の例は、以下の実施列の節に記載される。
癌の処置に有用な抗PSCAモノクローナル抗体としては、腫瘍に対して強力な免疫応答を開始し得るモノクローナル抗体、および細胞傷害性を指向し得るモノクローナル抗体が挙げられる。この点に関して、抗PSCA mAbは、補体媒介の細胞の細胞傷害性機構または抗体依存性の細胞の細胞傷害性(ADCC)機構(これらの両方は、エフェクター細胞Fcレセプター部位との相互作用のための免疫グロブリン分子のインタクトなFc部分または補体タンパク質を必要とする)のいずれかによって、腫瘍細胞溶解を誘発し得る。さらに、腫瘍増殖に対する直接的な生物学的効果をもたらす抗PSCA mAbが、本発明の実施に有用である。このようなmAbは、この効果をもたらすために完全な免疫グロブリンを必要としなくてもよい。このような直接的な細胞傷害性mAbによって作用し得る潜在的な機構としては、細胞増殖の阻害、細胞分化の調節、腫瘍新脈管形成因子プロフィールの調節、およびアポトーシスの誘導が挙げられる。特定の抗PSCA mAbが抗腫瘍効果をもたらすこの機構は、ADCC、ADMMC、補体媒介細胞溶解などを決定するように設計された任意の数のインビトロアッセイ(例えば、以下の実施例19に記載されるもの)を用いて評価され得る。
特定の抗PSCA mAbまたは抗PSCA mAbの組み合わせの抗腫瘍活性は、好ましくは、適切な動物モデルを用いて評価される。異種癌モデル(ここで、ヒト癌外植片または継代された異種移植片組織は、免疫易感染性動物(immune compromised animal)(例えば、ヌードマウスまたはSCIDマウス)に導入される)が、特に適切であり、そして公知である。ヒト前立腺癌の異種移植モデル(原発性腫瘍の発生、微小転移巣の発生、および後期疾患の特徴である骨芽細胞転移の形成を再発し得る)の例は、Kleinら、1997、Nature Medicine 3:402−408およびPCT特許出願WO98/16628、Sawyersら、1998年4月23日刊行に記載される。本明細書中の例は、インビボにおいて抗PSCA mAb調製物の抗腫瘍能力を評価するための詳細な実験プロトコールを提供する。確立された腫瘍の後退、転移の発生の妨害などを測定する他のインビボアッセイが、意図される。
マウスまたは他の非ヒトのモノクローナル抗体およびキメラmAbの使用が、数人の患者において強力な免疫応答に対する緩和を誘導し得ることに注意すべきである。最も重篤な場合、このような免疫応答は、強力に腎不全をもたらし得る免疫複合体の大規模な形成を導き得る。従って、本発明の治療方法の実施に使用される好ましいモノクローナル抗体は、完全なヒトモノクローナル抗体またはヒト化モノクローナル抗体のいずれか、および標的PSCA抗原と高い親和性で特異的に結合するが患者において低い抗原性を示すかもしくは抗原性を示さないモノクローナル抗体である。
本発明の方法は、単一の抗PSCA mAb、ならびに異なるエピトープを認識するもののような異なる個々のmAbの組合わせ(すなわち、カクテル)の投与を意図する。このようなmAbカクテルは、これらが異なるエピトープに結合するmAbを含み、そして/または異なるエフェクター機構を活用するか、もしくは細胞傷害性mAbと、免疫エフェクター機能に依存するmAbとを直接組合わせるmAbを含む限り、特定の利点を有し得る。組合わせたこのようなmAbは、相乗的治療効果を示し得る。さらに、抗PSCA mAbの投与は、他の治療薬剤(種々の化学療法剤、アンドロゲンブロッカー、および免疫モジュレーター(例えば、IL−2、GM−CSF)が挙げられるが、これらに限定されない)と組合わせられ得る。抗PSCA mAbは、それらの「裸の」または結合体化されていない形態で投与され得るか、または治療薬剤が抗PSCA mAbに結合体化された状態であり得る。
本発明の方法の実施において用いられる抗PSCAモノクローナル抗体は、所望の送達方法に適切なキャリアを含む薬学的組成物に処方され得る。適切なキャリアとしては、抗PSCA mAbと組合わせた場合に、抗体の抗腫瘍機能を保持し、そして被験体の免疫系と非反応性である任意の物質が挙げられる。例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:任意の多くの標準的薬学的キャリア(例えば、滅菌リン酸緩衝化生理食塩水溶液、静菌水など)(一般には、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16版、A.Osal編,1980を参照のこと)。
抗PSCA抗体処方物は、腫瘍部位に抗体を送達し得る任意の経路を介して投与され得る。潜在的に有効な投与経路としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、皮内など。好ましい投与経路は、静脈内注射による。静脈内注射のための好ましい処方物は、保存された静菌水、滅菌の保存されていない水の溶液中に、および/または0.9% 滅菌注射用塩化ナトリウム(米国薬局方)を含むポリ塩化ビニルもしくはポリエチレンのバッグ中に希釈された抗PSCA mAbを含む。抗PSCA mAb調製物は、凍結乾燥され得、そして好ましくは減圧下で滅菌粉末として保存され得、次いで、注射前に、例えば、ベンジルアルコール防腐剤を含む静菌水または滅菌水中に再構成され得る。
処置は、一般に、受容可能な投与経路(例えば、静脈内注射(IV))を介した有効用量の抗PSCA抗体調製物の反復投与を含む。投薬量は、当業者によって一般に理解される種々の因子に依存する。これらの因子としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ガンおよび重篤度の型、悪性度分類(grade)、すなわちガンの病期、使用したmAbの結合親和性および半減期、患者におけるPSCA発現の程度、循環している遊離(shed)PSCA抗原の程度、所望の安定期抗体濃度レベル、処置の頻度、ならびに本発明の処置方法と組合わせて用いられる化学療法剤の影響。代表的な1日用量は、約0.1〜100mg/kgの範囲であり得る。10〜500mg mAb/週の範囲の用量が有効かつ十分に寛容であるが、より高い1週間毎の用量ですら、適切かつ/または/または十分に寛容され得る。適切な用量を規定する際の重要な決定因子は、特定の状況において治療的に有効であるために必要な特定の抗体の量である。反復投与は、腫瘍阻害または後退を達成するために必要であり得る。最初の負荷用量は、より高くてもよい。最初の負荷用量は、注入として投与され得る。周期的な維持用量は、同様に投与され得るが、ただし、初期用量は十分に寛容されている。
PSCA mAbの直接投与もまた可能であり、そして特定の状況において利点を有し得る。例えば、膀胱癌の処置のために、PSCA mAbは、膀胱に直接注射され得る。膀胱に直接投与されたPSCA mAbは、患者から迅速に消失するので、抗原性の有意な合併症無く、非ヒトまたはキメラ抗体を効率的に使用することもまた可能であり得る。
患者は、最も有効な投薬レジメンおよび関連する因子の決定を補助するために、血清PSCAについて評価され得る。実施例20(後述)に記載のPSCA捕捉ELISAまたは類似のアッセイは、処置前に患者の循環PSCAレベルを定量するために用いられ得る。このようなアッセイはまた、治療全体を通してモニターする目的で使用され得、そして血清PSAレベルのような他のパラメーターの評価と組合わせて治療結果を測定するために有用であり得る。
本発明は、PSCAタンパク質またはそのフラグメントを含むように処方されたワクチンを、さらに提供する。抗癌治療における使用についての、体液性免疫および細胞媒介性免疫を産生するためのワクチンにおける腫瘍抗原の使用は、当該分野で周知であり、そして例えば、ヒトPSMA免疫原および齧歯類PAP免疫原を用いた前立腺癌において、利用されている(Hodgeら、1995、Int.J.Cancer 63:231−237;Fongら、1997、J.Immunol.159:3113−3117)。このような方法は、PSCAタンパク質もしくはそのフラグメント、または、PSCA免疫原を発現および適切に提示し得るPSCAをコードする核酸分子および組換えベクターの利用によって容易に実施され得る。
例えば、ウイルス遺伝子の送達系が、PSCAをコードする核酸分子の送達に使用され得る。本発明のこの局面の実施において用いられ得る種々のウイルス遺伝子の送達システムとしては、ワクシニア、鶏痘、カナリア痘、アデノウイルス、インフルエンザ、ポリオウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルスおよびシンドビスウイルス(sindbus virus)が挙げられるが、これらに限定されない(Restifo、1996、Curr.Opin.Immunol.8:658−663)。非ウイルス性送達システムがまた、患者に導入された(例えば、筋肉内に)PSCAタンパク質またはそのフラグメントをコードする裸のDNAの使用によって利用され、抗腫瘍応答を誘導し得る。1つの実施形態において、全長のヒトPSCA cDNAが利用され得る。別の実施形態において、特定の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エピトープをコードするPSCA核酸分子が、利用され得る。CTLエピトープが、特定のアルゴリズム(例えば、Epimer,Brown University)を用いて決定され、特異化されたHLA対立遺伝子に最適に結合し得るPSCAタンパク質内のペプチドを同定し得る。
種々のエキソビボ戦略がまた、利用され得る。1つのアプローチは、樹状細胞の使用を含み、患者の免疫系に対してPSCA抗原を提示する。樹状細胞は、MHCクラスIおよびMHCクラスII、B7同時刺激因子(costimulator)ならびにIL−12を発現し、従って、高度に特異化された抗原提示細胞である。前立腺癌においては、前立腺特異的膜抗原(PSMA)のペプチドを用いてパルスされた自己樹状細胞が、第I相臨床試験において用いられ、前立腺癌患者の免疫系を刺激する(Tjoaら、1996、Prostate 28:65−69;Murphyら、1996、Prostate 29:371−380)。樹状細胞は、PSCAペプチドをMHCクラスI分子およびMHCクラスII分子の状況におけるT細胞に提示するために用いられ得る。1つの実施形態において、自己樹状細胞は、MHC分子と結合し得るPSCAペプチドを用いてパルスされる。別の実施形態において、樹状細胞は、完全なPSCAタンパク質を用いてパルスされる。さらに別の実施形態は、アデノウイルス(Arthurら、1997、Cancer Gene Ther.4:17−25)、レトロウイルス(Hendersonら、1996、Cancer Res. 56:3763−3770)、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、DNAトランスフェクション(Ribasら、1997、Cancer Res.57:2865−2869)および腫瘍誘導性RNAトランスフェクション(Ashleyら、1997、J.Exp.Med.186:1177−1182)のような、当該分野において公知の種々の実行(implementing)ベクターを用いた樹状細胞におけるPSCA遺伝子の過剰発現を操作する工程を包含する。
抗イディオタイプ抗PSCA抗体はまた、PSCAタンパク質を発現する細胞に対する免疫応答を誘導するためのワクチンとして、抗癌治療において用いられ得る。特に、抗イディオタイプ抗体の産生は、当該分野で周知であり、そして、PSCAタンパク質上のエピトープを模倣する抗イディオタイプ抗PSCA抗体を産生するために、容易に適応され得る(例えば、Wagnerら、1997、Hybridoma 16:33−40;Foonら、1995、J Clin Invest 96:334−342;Herlynら、1996、Cancer Immunol Immunother 43:65−76を参照のこと)。このような抗イディオタイプ抗体は、腫瘍抗原に対して指向される他の抗イディオタイプ抗体を用いて現在実施される場合に、抗イディオタイプ治療において用いられ得る。
遺伝的免疫化方法は、PSCAを発現する癌細胞に対して指向される、予防的または治療的体液性免疫応答および細胞性免疫応答を産生するために、利用され得る。本明細書中で記載されるPSCAをコードするDNA分子を用いて、PSCAタンパク質/免疫原および適切な調節配列をコードするDNAを含む構築物が、個体の筋肉または皮膚に直接的に注入され得、その結果、筋肉または皮膚の細胞が、構築物を利用して、そしてコードされたPSCAタンパク質/免疫抗原を発現する。PSCAタンパク質/免疫原は、細胞表面タンパク質として発現され得るかまたは分泌され得る。PSCAタンパク質/免疫原の発現は、前立腺癌に対して、予防的または治療的な体液性免疫および細胞性免疫の産生を生じる。当該分野で公知の、種々の予防的および治療的な遺伝的免疫化技術が用いられ得る(概説については、インターネットアドレスwww.genweb.comで公開される情報および参考文献を参照のこと)。
本発明は、その細胞表面上の複数のPSCA抗原を発現する細胞の細胞活性(例えば、細胞増殖、細胞活性化または細胞繁殖)を阻害するための方法をさらに提供する。この方法は、本発明の免疫結合体(例えば、異種混合物または同種混合物)を細胞と反応させ、その結果、細胞表面上のPSCA抗原が、免疫結合体との複合体を形成する工程を包含する。細胞表面上のPSCA抗原の数が増加する程、用いられ得るPSCA抗体複合体の数も増加する。PSCA抗体複合体の数が増加する程、阻害される細胞活性も増加する。細胞活性の阻害が細胞死を生じる場合、新生物形成状態または前新生物形成状態を有する被験体が、この方法に従って、処置され得る。
異種混合物は、異なるエピトープまたは同一のエピトープを認識するPSCA抗体(各々の抗体は、同一の治療薬剤または異なる治療薬剤と結合体化されている)を含む。同種混合物は、同一のエピトープを認識する抗体(各々の抗体は、同一の治療薬剤と結合体化される)を含む。
本発明は、PSCAがそのリガンドと結合することをブロックすることによって、PSCAの生物学的活性を阻害するための方法をさらに提供する。この方法は、PSCA免疫結合体またはPSCA抗体複合体を可能にする条件下で、ある量のPSCAを、本発明の抗体または免疫結合体と接触させ、それによって、PSCAがそのリガンドと結合することをブロックし、そしてPSCAの活性を阻害する工程を包含する。
別の実施形態において、本発明は、本発明の免疫結合体のいずれか1つまたは組み合わせを、細胞を阻害するに十分な量で細胞と反応させることによって、PSCA抗原を発現する細胞を選択的に阻害する方法を提供する。このような量は、細胞を殺傷する量、または細胞成長または細胞増殖を阻害するに十分な量を含む。すでに議論した通り、用量および投薬レジメンは、PSCA、その集団、抗体が指向されるべき部位、特定の免疫毒素の特徴および患者に関連した処置されるべき疾患または障害の性質に依存する。例えば、免疫結合体の量は、0.1〜200mg/kg患者体重の範囲であり得る。
(PSCAタンパク質ならびにPSCA遺伝子およびRNAを同定するための方法) 本発明は、PSCAタンパク質またはPSCA遺伝子を発現する、細胞、組織または器官を同定するための方法を提供する。このような方法は、インビボまたはインビトロでPSCAタンパク質を発現する、細胞または器官の存在を診断するために用いられ得る。本発明の方法は、特に、前立腺の病理学的状態を媒介する細胞の存在の決定において有用である。特に、PSCAタンパク質の存在は、PSCAタンパク質またはPSCAタンパク質をコードする核酸が発現されるか否かを決定することによって、同定され得る。PSCAタンパク質の発現は、PSCAタンパク質またはPSCA遺伝子を発現する、細胞、組織または器官の存在を診断するための手段として、用いられ得る。
種々の免疫学的および分子遺伝学的技術が、PSCAタンパク質が、特定の細胞またはサンプル中で発現/産生されるか否かを決定するために、用いられ得る。一般に、核酸分子を含む抽出物またはタンパク質を含む抽出物が調製される。次いで、抽出物は、PSCAタンパク質またはPSCAをコードする核酸分子が細胞中で産生されるか否かを決定するために、アッセイされる。
当該分野で周知の種々のポリヌクレオチドを基にした検出方法が、PSCAをコードする核酸分子の検出のため、および生物学的試料中のPSCA発現細胞の検出のために、利用され得る。例えば、RT−PCR法は、PSCAのmRNAまたはそのフラグメントを選択的に増幅するために用いられ得、そしてこのような方法は、後述の実施例1において記載されるように、PSCAを発現する細胞を同定するために、利用され得る。特定の実施形態において、RT−PCRは、微小転移性の前立腺癌細胞、膀胱癌細胞もしくは膵臓癌細胞または循環性の前立腺癌細胞、膀胱癌細胞もしくは膵臓癌細胞を検出するために用いられる。種々の他の増幅型検出方法(例えば、分枝DNA方法のような)およびDNAプローブまたはRNAプローブを用いた種々の周知のハイブリダイゼーションアッセイはまた、PSCAをコードするポリヌクレオチドまたはPSCA発現細胞の検出のために用いられ得る。
タンパク質の検出のための種々の方法は、当該分野で周知であり、そしてPSCAタンパク質およびPSCA発現細胞の検出のために利用され得る。タンパク質に基づいた診断試験を行うために、適切なタンパク質サンプルが得られ、そして従来技術を用いて調製される。タンパク質サンプルは、例えば、単にSDSとともにサンプルをボイルすることによって調製され得る。次いで、抽出されたタンパク質は、公知の方法を用いて、PSCAタンパク質の存在を決定するために分析され得る。例えば、特異的なサイズのタンパク質の改変体または特異的に荷電したタンパク質の改変体の存在は、電場における移動度を使用して同定され得る。あるいは、抗体は、検出の目的のために用いられ得る。当業者は、公知のタンパク質分析方法を容易に適応し、サンプルがPSCAタンパク質を含むか否かを決定し得る。
あるいは、PSCA発現はまた、PSCA遺伝子の発現のレベルを減少させる薬剤を同定するための方法において、用いられ得る。例えば、PSCAタンパク質を発現する、細胞または組織が、試験薬剤と接触され、PSCA発現に対する薬剤の効果を決定し得る。PSCA発現を活性化する薬剤は、PSCA活性のアゴニストとして用いられ得、一方、PSCA発現を減少させる薬剤は、PSCA活性のアンタゴニストとして用いられ得る。
(PSCAプロモーターおよび他の発現調節エレメント)
本発明は、発現ベクターおよびトランスジェニック動物を産生するために用いられ得る形態において、新規に同定されたPSCA遺伝子の5’側で見出された、発現制御配列をさらに提供する。特に、PSCAプロモーター(PSCA遺伝子におけるATG開始コドンから5’側にあると容易に同定され得、そして作動可能に連結された、タンパク質をコードするDNA配列の発現を指向するために用いられ得る)のようなPSCA発現制御エレメント。PSCA発現が、前立腺細胞において主に発現されるため、発現制御エレメントは、組織特異的様式において誘導された導入遺伝子の発現の指向において、特に有用である。当業者は、当該分野で公知の方法を用いて、発現ベクターにおける、PSCA遺伝子プロモーターおよび他の調節エレメントを容易に使用し得る。
真核生物細胞において、調節配列は、遺伝子のコード領域の上流、下流および内部で見出され得る。真核生物調節配列は、プロモーター配列、そして時折、少なくとも1つのエンハンサー配列を含む。代表的な真核生物遺伝子において、プロモーター配列は、遺伝子のコード領域に対して上流および近接して存在し、そして1方向に方向付けられて、遺伝子の発現を制御するはずである。代表的な真核生物遺伝子において、エンハンサー配列は、遺伝子のコード領域の上流、下流および内部にさえも存在し得、そして遺伝子の発現を増強するような方向または抑制するような方向のいずれかに向き得る。
本発明はPSCAコード領域の上流の9kbの配列を含むDNAフラグメントを提供する。このPSCAフラグメントが作動可能に連結された導入遺伝子の発現を駆動する能力は、細胞にトランスフェクトされた一連のキメラレポーター構築物を用いて試験された。そのキメラレポーター構築物は、ネイティブな内因性PSCAと同様の発現パターンを示し、そしてそのPSCAフラグメントは順配向で連結した場合に、導入遺伝子の発現を駆動する。従って、このPSCAフラグメントは、プロモーター様の活性を示すPSCA上流の調節領域を含む。
PSCA転写物はまた、前立腺腫瘍細胞中に有意に高いレベルで存在するが、良性の前立腺過形成中には存在しない。従って、PSCA転写物は、前立腺優勢の様式において検出可能であり、そして前立腺腫瘍サンプルにおいてより高いレベルで検出可能である。有意により高いレベルのPSCA転写物、または当該分野で公知のような過剰発現は、正常な前立腺における検出可能なPSCA転写物の量の測定および、前立腺腫瘍サンプルとの比較によって決定され得る。この比較は、ノーザン分析およびRT−PCRアッセイを含む、当該分野で周知の方法によって行われ得、そして転写物レベルにおける相異が定量され得る。従って、サンプルにおける測定可能な程に異なる量のPSCA転写物(すなわち、正常なサンプルからのPSCA転写物の数を超える、試験サンプルにおけるPSCA転写物の数)の存在は、前立腺癌の存在を示すのに使用され得る。
PSCA発現はまた、他のヒトのガン(特に、膀胱および膵臓の癌腫)において観察され得る。膀胱癌腫の場合において、PSCA発現の程度は、疾患の重篤度と相関するようであり、侵襲性膀胱癌における過剰発現の最高レベルに達する(以下の実施例17を参照のこと)。
PSCAの転写物およびタンパク質の蓄積のパターンは公知であり、そしてPSCA上流調節領域が単離され、そして特徴付けられた。導入遺伝子に作動可能に連結したPSCA上流調節領域を含む一連のキメラ構築物が、試験された。そのPSCA上流調節領域は、種々の前立腺細胞および細胞株、ならびに膀胱において、導入遺伝子の発現を駆動し、そして腎臓においてより低い程度に駆動する。従って、PSCA上流領域は、前立腺優勢な様式において導入遺伝子の発現を駆動する。
好ましい実施形態において、図42に示される様な、PSCA遺伝子の5’上流領域由来の9kb、6kb、3kb、および1kbのDNAフラグメントが、本明細書で記載される技術によって産生された。9kbのPSCA上流領域(pEGFP−PSCA)は、遺伝子調節活性に関係し、そして1999年5月17日にAmerican Type Culture Collection(ATCC)、12301 Parklawn Drive,Rockville,MD 20852に寄託され、そしてそこで、以下のATCC番号PTA−80として同定される。この9kbのフラグメントはT7プライマーおよびRIhPSCA3’−5(5’−gggaattcgcacagccttcagggtc−3’)を用いた増幅によって得られた。
(遺伝子調節活性を有するフラグメントの使用)
本発明は、細胞/部位に対して、目的の遺伝子を標的化し、その結果、その遺伝子によりコードされたタンパク質が発現され得、それにより、疾患状態を直接または間接的に回復させるための方法(例えば、遺伝子治療法)を提供する。
感受性の細胞が、腫瘍細胞において有意に増大した遺伝子発現活性を有するPSCA上流領域の制御下で導入遺伝子(例えば、治療遺伝子)を発現する発現ベクターと共に導入される。腫瘍細胞において優勢に治療遺伝子を発現する発現ベクターの使用は、前立腺、膀胱および、膵臓腫瘍細胞のような標的細胞において治療遺伝子を発現させる。
感受性細胞を感染した後、導入遺伝子(例えば、治療遺伝子)が、その導入遺伝子によってコードされたタンパク質を発現するベクターにおいて、増大した遺伝子発現活性を有するPSCA上流領域によって駆動される。かなり特異的な前立腺特異的遺伝子ベクターの使用は、標的細胞(例えば、前立腺癌細胞)における特定の遺伝子の選択的な発現を可能にする。
増大した遺伝子発現活性を有するPSCA領域は、誘導体分子を産生するために、例えば配列の変異、欠失、および挿入によって改変され得る。改変は、前立腺細胞に特異的な調節タンパク質に結合し得る配列の数の増加、および遺伝子発現活性を有するPSCA領域において機能しない配列の欠失を含む。他の改変は、エンハンサーの付加を含み、それによって、プロモーター活性を有するPSCA領域の効率が改善される。エンハンサーは、位置独立的な様式において機能し得、そして、転写される領域の上流、内部または下流に位置し得る。
誘導体分子は、増大した遺伝子発現活性を有するPSCA上流領域の機能特性を保持する。すなわち、このような置換を有する分子は、フラグメントの3’に位置する目的の遺伝子の前立腺組織特異的な発現を、実質的に、なお可能にする。改変は、誘導体分子が、プロモーター活性のみを有するPSCAフラグメントと比較して、実質的に前立腺特異的な様式で遺伝子発現を駆動するその能力を保持している限り、許容される。
好ましい実施形態において、ベクターは、プロモーター活性を有するPSCA上流領域の下流に異種配列(治療遺伝子)を挿入することによって、構築された。
治療遺伝子の例には、自殺遺伝子(suicide gene)が挙げられる。これらは、その発現によって、腫瘍細胞の増殖または腫瘍細胞の死(例えば、前立腺腫瘍細胞)を阻害するタンパク質または因子が産生される遺伝子配列である。自殺遺伝子には、酵素(例えば、プロドラッグ酵素)をコードする遺伝子、癌遺伝子、癌抑制遺伝子、毒素をコードする遺伝子、サイトカインをコードする遺伝子、またはオンコスタチンをコードする遺伝子が挙げられる。治療遺伝子の目的は、癌細胞の増殖を阻害するか、または癌細胞を殺傷すること、あるいはサイトカインまたは直接もしくは間接的に癌細胞の増殖を阻害するか、もしくは前立腺癌細胞を殺傷する他の細胞傷害性因子を産生することである。
適切なプロドラッグ酵素には、チミジンキナーゼ(TK)、E.Coli由来のキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(GPT)遺伝子、またはE.Coliのシトシンデアミナーゼ(CD)、もしくはヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)が挙げられる。
適切な癌遺伝子および癌抑制遺伝子には、neu、EGF、ras(H ras、K ras、およびN rasを含む)、p53、網膜芽癌抑制遺伝子(Rb)、ウィルムス腫瘍遺伝子産物、ホスホチロシンホスファターゼ(PTPase)、およびnm23が挙げられる。適切な毒素には、Pseudomonas体外毒素AおよびS;ジフテリア毒素(DT);E.coli LT毒素、Shiga毒素、Shiga様毒素(SLT−1、−2)、リシン、アブリン、スポリン、およびゲロニン(gelonin)が挙げられる。
適切なサイトカインには、インターフェロン、GM−CSFインターロイキン、腫瘍壊死因子(TNF)(Wong Gら、Human GM−CSF:Molecular cloning of the complementary DNA and purification of the natural and recombinant proteins.Science 1985;228:810);WO9323034(1993);Horisberger MAら、Cloning and sequence analyses of cDNAs for interferon− and virus−induced human Mx proteins reveal that they contain putative guanine nucleotide−binding sites:functional study of the corresponding gene promoter.Journal of Virology,1990年3月,64(3):1171−81;Li YPら、Proinflammatory cytokines tumor necrosis factor−alpha and IL−6,but not IL−1,down−regulate the osteocalcin gene promoter.Journal of Immunology,1992年2月1日,148(3):788−94;Pizarro TTら、Induction of TNF alpha and TNF beta gene expression in rat cardiac transplants during allograft rejection.Transplantation,1993年8月,56(2):399−404)が挙げられる。(Breviario Fら、Interleukin−1−inducible genes in endothelial cells.Cloning of a new gene related to C−reactive protein and serum amyloid P component.Journal of Biological Chemistry,1992年11月5日,267(31):22190−7;Espinoza−Delgado Iら、Regulation of IL−2 receptor subunit genes in human monocytes.Differential effects of IL−2 and IFN−gamma.Journal of Immunology,1992年11月1日,149(9):2961−8;Algate PAら、Regulation of the interleukin−3(IL−3)receptor by IL−3 in the fetal liver−derived FL5.12 cell line.Blood,1994年5月1日,83(9):2459−68;Cluitmans FHら、IL−4 down−regulates IL−2−,IL−3−,and GM−CSF−induced cytokine gene expression in peripheral blood monocytes.Annals of Hematology,1994年6月,68(6):293−8;Lagoo,ASら、IL−2,IL−4,and IFN−gamma gene expression versus secretion in superantigen−activated T cells.Distinct requirement for costimulatory signals through adhesion molecules.Journal of Immunology,1994年2月15日,152(4):1641−52;Martinez OMら、IL−2 and IL−5 gene expression in response to alloantigen in liver allograft recipients and in vitro.Transplantation,1993年5月,55(5):1159−66;Pang Gら、GM−CSF,IL−1 alpha,IL−1 beta,IL−6,IL−8,IL−10,ICAM−1 and VCAM−1 gene expression and cytokine production in human duodenal fibroblasts stimulated with lipopolysaccharide,IL−1 alpha and TNF−alpha.Clinical and Experimental Immunology,1994年6月,96(3):437−43;Ulich TRら、Endotoxin−induced cytokine gene expression in vivo.III.IL−6 mRNA and serum protein expression and the in vivo hematologic effects of IL−6.Journal of Immunology,1991年4月1日,146(7):2316−23;Mauviel Aら、Leukoregulin,a T cell−derived cytokine,induces IL−8 gene expression and secretion in human skin fibroblasts.Demonstration and secretion in human skin fibroblasts.Demonstration of enhanced NF−kappa B binding and NF−kappa B−driven promoter activity.Journal of Immunology,1992年11月1日,149(9):2969−76)。
成長因子には、トランスフォーミング成長因子−α(TGFα)およびβ(TGFβ)、サイトカインコロニー刺激因子(Shimane Mら、Molecular cloning and characterization of G−CSF induced gene cDNA.Biochemical and Biophysical Research Communications,1994年2月28日,199(1):26−32;Kay ABら、Messenger RNA expression of the cytokine gene cluster,interleukin 3(IL−3),IL−4,IL−5,and granulocyte/macrophage colony−stimulating factor,in allergen−induced late−phase cutaneous reactions in atopic subjects.Journal of Experimental Medicine,1991年3月1日,173(3):775−8;de Wit Hら、Differential regulation of M−CSF and IL−6 gene expression in monocytic cells.British Journal of Haematology,1994年2月,86(2):259−64;Sprecher Eら、Detection of IL−1 beta,TNF−alpha,and IL−6 gene transcription by the polymerase chain reaction in keratinocytes,Langerhans cells and peritoneal exudate cells during infection with herpes simplex virus−1.Archives of Virology,1992,126(1−4):253−69)。
本発明の方法における使用に適切なベクターは、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)のベクターを含むウイルス性ベクターである。
好ましくは、選択されたウイルス性ベクターは、以下の基準を満たすべきである:1)そのベクターは、腫瘍細胞に感染し得なければならず、従って、適切な宿主範囲を有するウイルス性ベクターが選択されなければならない;2)転移される遺伝子は、長期間細胞中で持続し得、そして発現され得るべきである;そして3)そのベクターは、宿主に対して安全であるべきであり、そして最少の細胞の形質転換を引き起こすべきである。レトロウイルスベクターおよびアデノウイルスは、哺乳動物細胞に、外来の遺伝子を効率的に導入し、そして発現する、効率的で有用な、そして現在では最もよく特徴付けられた手段を提供する。非常に広い宿主および細胞型の範囲を有するこれらのベクターは、遺伝子を安定に、かつ効率的に発現する。これらのベクターの安全性は、多くの研究グループによって証明された。実際、その多くが臨床試験にある。
障害の補正のために細胞に遺伝子を転移するために使用され得る他のウイルスベクターには、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)のようなレトロウイルス;JC、SV40、ポリオーマのようなパポバウイルス;エプスタイン−バーウイルス(EBV);パピローマウイルス(例えば、ウシパピローマウイルスI型(BPV));ワクシニアおよびポリオウイルスならびに他のヒトおよび動物のウイルスが挙げられる。
アデノウイルスは、それ自身をクローニングビヒクルとして魅力的にするいくつかの特性を有する(Bachettisら、Transfer of gene for thymidine kinase−deficient human cells by purified herpes simplex viral DNA.PNAS USA,1977 74:1590;Berkner,K.L.:Development of adenovirus vectors for expression of heterologous genes.Biotechniques,1988 6:616;Ghosh−Choudhury Gら、Human adenovirus cloning vectors based on infectious bacterial plasmids.Gene 1986;50:161;Hag−Ahmand Yら、Development of a helper−independent human adenovirus vector and its use in the transfer of the herpes simplex virus thymidine kinase gene.J Virol 1986;57:257;Rosenfeld Mら、Adenovirus−mediated transfer of a recombinant α1−antitrypsin gene to the lung epithelium in vivo.Science 1991;252:431)。
例えば、アデノウイルスは、細胞核において複製する中間のサイズのゲノムを有し:多くの血清型が臨床的に無害であり;アデノウイルスゲノムは、外来の遺伝子を挿入するが、安定なようであり:外来の遺伝子は、欠失または再配列することなく維持されるようであり;そしてアデノウイルスは、4週間から数ヶ月までの発現期間を有する高いレベルの一過性発現ベクターとして使用され得る。広範な生化学および遺伝的研究は、ネイティブのアデノウイルス配列への7〜7.5kbまでの異種配列の置換によって、生存可能で、条件的な、ヘルパー独立性ベクターを作製可能であることを示唆する(Kaufman R.J.:identification of the component necessary for adenovirus translational control and their utilization in cDNA expression vectors.PNAS USA,1985 82:689)。
AAVは、約5kbの一本鎖DNAゲノムを有する小さなヒトパルボウイルスである。このウイルスは、いくつかのヒト細胞型において、組込み型プロウイルスとして増殖され得る。AAVベクターは、ヒトの遺伝子治療にとっていくつかの利点を有する。例えば、AAVベクターはヒト細胞に対して栄養性であるが、他の哺乳動物細胞にもまた感染し得る;(2)ヒトまたは他の動物において、AAVに関連する疾患はない;(3)組込まれたAAVゲノムは、その宿主細胞内で安定であるようである;(4)AAVの組込みが、宿主の遺伝子もしくはプロモーターの発現を変化させるか、またはその再配列を促進するという証拠がない;(5)導入された遺伝子は、アデノウイルスのようなヘルパーウイルスの感染によって、宿主細胞から奪還され得る。
HSV−1ベクター系は、非有糸細胞への実質的にいかなる遺伝子の導入をも容易にする(Gellerら、an efficient deletion mutant packaging system for a defective herpes simplex virus vectors:Potential applications to human gene therapy and neuronal physiology.PNAS USA,1990 87:8950)。
哺乳動物遺伝子の転移のための別のベクターは、ウシパピローマウイルスに基づくベクターである(Sarver Nら、Bovine papilloma virus DNA:A novel eukaryotic cloning vector.Mol Cell Biol 1981;1:486)。
ワクシニアおよび他のポックスウイルスに基づくベクターは、哺乳動物遺伝子転移系を提供する。ワクシニアウイルスは、120キロダルトン(kd)のゲノムサイズの巨大な二本鎖DNAウイルスである(Panicali Dら、Construction of poxvirus as cloning vectors:Insertion of the thymidine kinase gene from herpes simplex virus into the DNA of infectious vaccine virus.Proc Natl Acad Sci USA 1982;79:4927;Smithら、infectious vaccinia virus recombinants that express hepatitis B virus surface antigens.Nature,1983 302:490)。
レトロウイルスは、ウイルス遺伝子の宿主細胞への挿入のために設計されたパッケージである(Guild Bら、Development of retrovirus vectors useful for expressing genes in cultured murine embryonic cells and hematopoietic cells in vivo.J Virol 1988;62:795;Hock RAら、Retrovirus mediated transfer and expression of drug resistance genes in human hemopoietic progenitor cells.Nature 1986;320:275)。
基本的なレトロウイルスは、プロウイルスのタンパク質中にパッケージングされたRNAの2つの同一鎖からなる。そのコアはエンベロープと呼ばれる保護被膜によって囲まれ、そのエンベロープは、ウイルスによって寄与される糖タンパク質で改変される以外は、前の宿主の膜に由来する。
好ましくは、例えば、前立腺における細胞の欠損、疾患または損傷の処置にのために、本発明のベクターは、治療遺伝子または導入遺伝子(例えば、TKをコードする遺伝子)を含む。その遺伝的に改変されたベクターは、欠損、疾患(例えば、前立腺癌をインビボで改善効果を有する内因性分子の産生を増大する治療遺伝子産物の前立腺への導入によって)を処置するために前立腺に投与される。この同じ原理は、他の癌(例えば、PSCAを発現する膵臓癌、膀胱癌または他の癌)の処置に関して適用される。
本発明の方法のこの実施形態における基本的な課題は、目的の遺伝子の単離、遺伝子調節活性を有するフラグメントへの目的遺伝子の結合、目的の遺伝子を身体に送達するための適切なベクタービヒクルの選択、目的の遺伝子を有するベクターの身体への投与、および標的細胞への目的遺伝子の適切な発現の達成である。本発明は、クローン化された遺伝子(すなわち、目的の遺伝子)を、この遺伝子を必要とする患者の血流または関連する器官に直接注射され得るような様式でのパッケージングを提供する。そのパッケージングは、外来のDNAを、免疫系による排除から保護し、そしてそれを適切な組織または細胞へ指向させる。
ヒトまたは動物の目的の遺伝子と共に、別の遺伝子(例えば、選択可能マーカー)が挿入され得、改変されたレトロウイルスを取り込んだ細胞の同定が容易となる。遺伝子治療のプロセス上の重大な焦点は、新しい遺伝子が、標的細胞において、発現の十分な持続期間を有し、適切なレベルで発現されなければならないことである。
ベクターを改変するための、および標的器官(例えば、前立腺)にこのような改変されたベクターを投与するための以下に記載の方法は、単に例証の目的であり、そして使用され得る方法の典型である。しかし、他の手順もまた、当該分野で理解されるように使用され得る。
ベクターなどを構築するために使用される大部分の技術は、当該分野で広く実施されており、そして大部分の専門家は、特定の条件および手順を記載する標準的な供給源の試料に精通する。しかし、簡便のために、以下の段落が、ガイドラインとして役立ち得る。
(ベクター構築のための一般的方法)
所望の治療的遺伝子コード配列および制御配列を含む適切なベクターの構築は、当該分野で十分に理解されている、標準的連結および制限技術(Maniatisら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1982)を参照のこと)を使用する。単離されたプラスミド、DNA配列、または合成されたオリゴヌクレオチドを、所望の形態に切断し、改変し、そして再連結する。
部位特異的なDNA切断を、当該分野で一般的に理解されている条件下で、適切な制限酵素を用いて処理すること、およびこれらの市販されている制限酵素の製造業者によって特定化される詳細により、実行する(例えば、New England Biolabs Product Catalogを参照のこと)。概して、約1μgのプラスミドまたはDNA配列を、約20μlの緩衝溶液中で1単位の酵素により切断する。代表的に、過剰の制限酵素は、DNA基質の完全な消化を保証するために使用される。
変更を行い得るが、約37℃での約1時間〜2時間のインキュベーション時間は、実行可能である。各々のインキュベーションの後、タンパク質をフェノール/クロロホルムを用いた抽出により除去し、そして続いてエーテル抽出し得、そして核酸を、エタノールを用いた沈殿により水相から回収する。所望の場合、切断したフラグメントのサイズ分離を、標準的な技術を使用するポリアクリルアミドゲルまたはアガロースゲル電気泳動によって実行し得る。サイズ分離の一般的記述は、Methods in Enzymology 65:499−560(1980)中に見出される。
制限切断されたフラグメントを、4種類のデオキシヌクレオチドトリホスフェート(dNTP)の存在下、50mM Tris(pH7.6)、50mM NaCl、6mM MgCl2、6mM DTTおよび5〜10μM dNTP中で20℃〜25℃、約15〜25分のインキュベーション時間を用いて、E.coli DNAポリメラーゼI(Klenow)の大きなフラグメントを用いて処理することにより、平滑断端にし得る。このKlenowフラグメントは、4種類のdNTPが存在しても、5’粘着末端で充填するが、突出した3’一本鎖を消化する。所望される場合、選択的な修復を、粘着末端の性質により指示される制限内で、dNTPの一種類のみを提供することにより、または選択されたdNTPを用いて実行し得る。Klenowを用いた処置の後、この混合物をフェノール/クロロホルムを用いて抽出し、そしてエタノールを用いて沈殿する。S1ヌクレアーゼまたはBal−31を用いた適切な条件下での処理により、任意の一本鎖部分の加水分解が生じる。
連結を、T4 DNAリガーゼを用いて、次の標準条件および温度の下で、10〜15μlの容量において実行する。連結プロトコルは、標準である(D.Goeddel(編)Gene Expression Technology:Methods in Enzymology(1991))。
「ベクターフラグメント」を使用するベクター構築において、ベクターフラグメントを、5’ホスフェートを除去し、そしてベクターの再連結を妨害するために、一般的に、細菌アルカリホスファターゼ(BAP)または子ウシ腸アルカリホスファターゼ(CIP)を用いて処理する。あるいは、再連結を、好ましくないフラグメントのさらなる制限酵素消化により二重に消化されるベクターにおいて、妨害し得る。
適切なベクターは、ウイルスベクター系(例えば、ADV、RV、およびAAV(R.J.Kaufman 「Vectors used for expression in mammalian cells」Gene Expression Technology、D.V.Goeddel編(1991))を含む。
機能的DNA導入遺伝子を細胞へ挿入するための多くの方法は、当該分野で公知である。例えば、非ベクター的方法としては、細胞へのDNAの非ウイルス性物理的トランスフェクションが挙げられ;例えば、マイクロインジェクション(DePamphilisら、BioTechnique 6:662−680(1988));リポソーム媒介トランスフェクション(Felgnerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:7413−7417(1987),FelgnerおよびHolm、Focus 11:21−25(1989)およびFlegnerら、Proc.West.Pharmacol.Soc.32:115−121(1989))および当該分野で公知の他の方法。
(改変されたベクターの被験体への投与)
標的細胞へDNAを入れるための1つの方法は、膜結合された、嚢(sac)または小胞(例えば、スフェロプラストまたはリポソーム)の中へDNAを加えることであるか、またはリン酸カルシウム沈殿(CaPO4)による(Graham F.およびVan der Eb,A.,Virology 52:456 1973;Schaefer−Ridder M.ら、Liposomes as gene carriers:Efficient transduction of mouse L cells by thymidine kinase gene.Science 1982;215:166;Stavridis JCら、Construction of transferrin−coated liposomes for in vivo transport of exogenous DNA to bone marrow erythroblasts in rabbits. Exp Cell Res 1986;164:568−572)。
ベシクルを、その膜が標的細胞の外膜と融合するような方法において構築し得る。ベシクル中の本発明のベクターは、標的細胞の中へ向かわせ得る。スフェロプラストは、ポリエチレングリコールのような融合剤(fusogen)を用いて哺乳動物標的細胞を通して融合され得るまで、高いイオン強度の緩衝液中で保持される。
リポソームは、人工のリン脂質ベシクルである。ベシクルは、0.2〜4.0μmの範囲の大きさであり、そして高分子を含む緩衝水溶液の10%〜40%を包括し得る。このリポソームは、ヌクレアーゼからDNAを保護し、そして標的細胞へのその導入を容易にする。トランスフェクションはまた、エレクトロポレーションを介して生じ得る。
投与の前に、改変されたベクターを、注入のために選択された濃度で完全なPBS中に懸濁する。PBSに加えて、任意の浸透圧的に均衡の取れた溶液(この溶液は、被験体に対して生理学的に適合する)を使用し、改変されたベクターを懸濁し得、そして宿主へ注入し得る。
注入のために、細胞の懸濁液をシリンジの中へ引き上げ、麻酔したレシピエントへ投与する。多重注入をこの手順を用いて行い得る。ウイルス懸濁手順は、従って、遺伝子改変されたベクターを、標的器官(例えば、前立腺)の任意の予定された部位へ投与することを可能にし、比較的非外傷性であり、同じウイルス懸濁液を用いる、いくつかの異なる部位または同じ部位における同時の多重投与を可能にする。多重注入は、治療的遺伝子の混合物からなり得る。
(改変されたベクターの使用)
本発明は、発現活性を有するフラグメントを用いる治療的遺伝子の発現を保持および増加するための方法を提供する。
本発明の方法は、治療的遺伝子を保有する改変されたベクターが、被験体へ注入される実施形態によって例証される。
第1の実施形態において、宿主においてタンパク質を産生するように本発明の宿主ベクター系を増殖させる工程、およびそのようにして産生されたタンパク質を回収する工程を包含するタンパク質生成物が、発現される。この方法は、単細胞生物および多細胞生物の両方において目的の遺伝子の発現を可能にする。例えば、インビボのアッセイにおいて、目的の遺伝子(例えば、ras遺伝子)を含む本発明のベクターを有する前立腺細胞を、ras遺伝子産物に対して無制限のようにマイクロタイターウェルにおいて使用し得る。被験体由来のサンプルを、ras遺伝子に対して指向された抗体の存在を検出するためにこのウェルへ加える。このアッセイは、被験体の免疫系が、上昇したレベルのrasと関連する疾患と闘っているか否かの臨床的評価に対して、サンプル中のras抗体の存在の定量的決定および定性的決定を補助し得る。
第2の実施形態において、転移性の前立腺癌を、遺伝子治療、すなわち本発明の核酸分子の使用を通してインビボでの疾患表現型の補正を介して処置する。
本発明の実施に従って、遺伝子治療の被験体は、ヒト被験体、ウマ被験体、ブタ被験体、ウシ被験体、マウス被験体、イヌ被験体、ネコ被験体、またはトリ被験体であり得る。他の哺乳動物をまた、本発明において含む。
本発明の分子について投与および投与計画の最も有効な形態は、処置される前立腺腫瘍の正確な位置、癌の重症度および経過、処置に対する被験体の健康および応答、ならびに処置する内科医の判断による。従って、この分子の投与量を、個々の被験体に対して滴定すべきである。これらの分子を、別の細胞(自系細胞が好ましいが、異種細胞は本発明の範囲内に包含される)を介して直接または間接的に送達し得る。
表面積のmg/m2に基づく、種々の大きさおよび種の動物ならびにヒトに対する投与量の相互関係は、Freireich,E.J.ら、Cancer Chemother.,Rep.50(4):219−244(1966)によって記載される。投与計画における調節は、腫瘍細胞増殖を阻害または殺傷する応答を最適化するようになされ得、例えば、用量を毎日の基準に対して分割または投与し得るか、または用量を状況に依存して比例的に減少し得る(例えば、いくつかの分割された用量を、特異的な治療的状況に従って毎日投与するか、または比例的に減少し得る)。
処置を達成するために必要とされる本発明の分子の用量は、計画の最適化ともにさらに改変され得ることは明かである。
(トランスジェニック動物の産生)
本発明の別の局面は、PSCA核酸を含むトランスジェニック非ヒト哺乳動物を提供する。例えば、1つの適用において、PSCA欠失非ヒト動物を、PSCAホモログを不活性化するように標準ノックアウト(knock−out)手順を用いて産生し得るか、またはこのような動物が生存不可能な場合、誘導性のPSCAホモログアンチセンス分子を使用して、PSCAホモログ活性/発現を調節し得る。あるいは、動物を、ヒトPSCAコード核酸分子あるいはPSCAタンパク質またはアンチセンス分子の発現を組織特異的様式に指向するアンチセンスPSCAの発現単位を含むように変え得る。このような使用において、PSCAホモログ遺伝子の発現が、不活性化もしくは活性化によって変化し、そして/またはヒトPSCA遺伝子によって置換される、非ヒト哺乳動物(例えば、マウスまたはラット)を、産生する。このことを、標的化された組換えのような当該分野で公知の種々の手順を用いて達成し得る。一旦、産生されると、PSCAホモログ欠失動物、組織特異的様式でPSCA(ヒトもしくはホモログ)を発現する動物、またはアンチセンス分子を発現する動物、を使用して(1)PSCAタンパク質によって媒介される生物学的プロセスおよび病理学的プロセスを同定し得、(2)PSCAタンパク質と相互作用するタンパク質および他の遺伝子を同定し得、(3)PSCAタンパク質の欠失を克服するように外因的に提供され得る薬剤を同定し得、そして(4)活性を増加または減少するPSCA遺伝子の中の変異を同定するための適切なスクリーンとして役立ち得る。
例えば、組織特異的様式でPSCAをコードするヒトミニ遺伝子(minigene)を発現するトランスジェニックマウスを産生し得、そして通常はPSCAタンパク質を含まない、組織および細胞においてタンパク質の過剰発現の効果を試験し得る。このストラテジーは、他の遺伝子、すなわちbcl−2(Veisら、Cell 1993 75:229)に対して首尾良く使用されてきた。このようなアプローチは、PSCAタンパク質/遺伝子へ容易に適用され得、そして特定の組織におけるPSCAタンパク質の潜在的に有益なまたは有害な効果の問題に取り組むために使用され得る。
さらに、他の実施形態において、本発明は、癌遺伝子を含む、生殖細胞および体細胞を有するトランスジェニック動物を提供し、この癌遺伝子は、癌遺伝子に関連する癌のプロモーションに対して上記マウスの組織における上記遺伝子の発現に対して有効なPSCA上流領域へ連結され、それによってその癌のマウスモデルを産生する。
(組成物)
本発明は、本発明のPSCA核酸分子またはPSCAタンパク質をコードするかもしくはそのフラグメントをコードする発現ベクター、および必要に応じて、適切なキャリアを含む薬学的組成物を提供する。本発明は、さらに、PSCAタンパク質を認識および結合する、抗体またはそのフラグメントを含む薬学的組成物を提供する。1つの実施形態において、抗体またはそのフラグメントは治療薬剤または細胞毒性薬剤へ結合または連結される。
薬学的組成物のための適切なキャリアは、任意の物質を含み、本発明の核酸または他の分子と合わされる場合、この物質は、この分子の活性を保持し、そして被験体の免疫系と反応性でない。例としては、リン酸緩衝化生理食塩水溶液、水、水中油滴型エマルジョンのようなエマルジョン、および種々の型の湿潤剤のような任意の標準の薬学的キャリアが挙げられるが、これらに限定されない。他のキャリアとしてはまた、無菌溶液、コーティングされた錠剤およびカプセル剤を含む錠剤が挙げられる。代表的に、このようなキャリアは、デンプン、牛乳、砂糖、ある型の粘土、ゼラチン、ステアリン酸またはその塩、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム、滑石、植物性脂肪または植物性油、ゴム、グリコールあるいは他の公知の賦形剤のような賦形剤を含む。このようなキャリアとしてはまた、香味添加剤および彩色添加剤または他の成分が挙げられ得る。このようなキャリアを含む組成物は、周知の慣習的な方法によって処方される。このような組成物はまた、例えばリポソームのような種々の脂質組成物およびポリマーミクロスフェアのような種々のポリマー組成物中に処方され得る。
本発明はまた、PSCA核酸分子を含む診断用組成物、本発明の核酸分子もしくはその任意の部分へ特異的にハイブリダイズするプローブ、またはPSCA抗体もしくはそのフラグメントを提供する。核酸分子、プローブまたは抗体もしくはそのフラグメントは、検出可能なマーカーで標識され得る。検出可能なマーカーの例としては、放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤または酵素が挙げられるがこれらに限定されない。さらに、本発明は、RT−PCRのようなポリメラーゼ連鎖反応方法論を用いてPSCAコード配列を増幅し得るPSCA特異的プライマー対を含む診断用組成物を提供する。
(実施例1:新規な前立腺細胞表面抗原(PSCA)の同定および分子的特性付け)
(材料および方法)
(LAPC−4異種移植片) LAPC−4異種移植片を、Kleinら、1997,Nature Med.3:402−408に記載のように産生した。
(RDA、ノーザン分析およびRT−PCR) アンドロゲン依存性LAPC−4腫瘍およびアンドロゲン非依存性LAPC−4腫瘍の表象差異分析(representational difference analysis)を、以前に記載(Braunら、1995,Mol.Cell.Biol.15:4623−4630)のように実行した。全RNAを、製造業者の説明書に従ってUltraspec(登録商標)RNA単離システム(Biotecx,Houston,TX)を用いて単離した。ノーザンフィルターを、コード配列およびPSCAの3’非翻訳配列の部分に相当する660bpRDAフラグメントまたはPSAの約400bpフラグメントを用いてプローブした。ヒト多重組織ブロットを、Clontechから得、詳述されるようにプローブした。逆転写酵素(RT)−PCR分析について、第1鎖cDNAを、GeneAmp RNA PCRコアキット(Perkin Elmer−Roche,New Jersey)を用いて全RNAから合成した。ヒトPSCA転写物のRT−PCRについて、プライマー5’−tgcttgccctgttgatggcag−および3’−ccagagcagcaggccgagtgca−を、約320bpフラグメントを増幅するために使用した。熱サイクルを、95度で30秒間、60度で30秒間および72度で1分間の25〜25サイクル、続いて72度で10分間の伸長によって実行した。GAPDH(Clontech)についてのプライマーを、コントロールとして使用した。マウスPSCAについて、使用したプライマーは、5’−ttctcctgctggccacctac−および3’−gcagctcatcccttcacaat−であった。
(PSCA mRNAについてのインサイチュハイブリゼーションアッセイ)
mRNAインサイチュハイブリゼーションのために、全長のPSCA遺伝子を含む組換えプラスミドpCRII(1μg、Invitrogen,San Diego,CA)を線状にし、センスジゴキシゲニンおよびアンチセンスジゴキシゲニン標識したリボプローブを産生した。インサイチュハイブリゼーションを、以前に記載(Magi−Galluzziら、1997,Lab.Invest.76:37−43)のように自動化した機器(Ventana Gen II,Ventana Medical Systems)上で実行した。前立腺標本を、約130標本にまで拡大された以前に記載されたデータベース(Magi−Galluzziら、前出)から得た。スライドを、盲検的な様式において、二人の病理学者によって読み取り、そして点数化した。0〜3の点数を、陽性な細胞のパーセンテージ(0=0%;1=<25%;2=25〜50%;3=>50%)および染色の強度(0=0;1=1+;2=2+;3=3+)に従って割り当てた。2つの点数を掛けて、0〜9の全体の点数を所与した。
(結果)
(ヒトPSCA cDNA) 表象差異分析(RDA)(PCRに基づく差し引きハイブリダイゼーション技術)を、ヒト前立腺癌異種移植片(LAPC−4)のホルモン依存性改変体とホルモン非依存性改変体との間で、遺伝子発現を比較するため、およびアンドロゲン−非依存性LAPC−4亜系統においてアップレギュレートされたcDNAを単離するために、使用した。複数の遺伝子を、クローニングし、配列決定し、そして示差的発現について調べた。一つの660bpフラグメント(クローン番号15)を同定し、このフラグメントは、正常の前立腺と比較した場合、異種移植片腫瘍において高度に過剰発現されることが見出された。正常な前立腺および異種移植片腫瘍における、このクローンの発現とPSAの発現との比較は、クローン番号15が、比較的癌特異的であることを示唆した(図9)。
配列分析は、クローン番号15がデータベースで正確に適合するものを有さないが、幹細胞抗原2(グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)−アンカー型細胞表面抗原のThy−1/Ly−6スーパーファミリーのメンバー)と30%のヌクレオチド相同性を共有するということを明らかにした。クローン番号15は、123アミノ酸のタンパク質をコードし、このタンパク質は、SCA−2(RIG−Eとも呼ばれる)と30%同一であり、そしてLy−6/Thy−1遺伝子ファミリーに特徴的な、多数の高度に保存されたシステイン残基を含む(図3)。GPI−アンカー型タンパク質のファミリーとのその相同性と一致して、クローン番号15は、アミノ末端疎水性シグナル配列、および小さなアミノ酸の群(GPI結合についての切断/結合部位を規定する)に続く疎水性アミノ酸のカルボキシ末端ストレッチの両方を含む(UdenfriendおよびKodukula、1995、Ann.Rev.Biochem.64:563−591)。これはまた、四つの推定N−グリコシル化部位も含む。幹細胞抗原−2に対するその強い相同性のために、クローン番号15は、前立腺幹細胞抗原(PSCA)と改名された。次いで、5’および3’PCR RACE分析を、LAPC−4アンドロゲン非依存性異種移植片から得られたcDNAを使用して行い、そして全長cDNAヌクレオチド配列(コード領域および非翻訳領域を含む)を得た。ヒトPSCAをコードする全長cDNAのヌクレオチド配列は、図1Aに示され、翻訳されたアミノ酸配列は図1Bおよび図3に示される。
(PSCAは前立腺細胞において発現される) 正常ヒト組織中のPSCA mRNAの分布を、ノーザンブロット分析により調べた。その結果(図9Bに示される)は、PSCAが前立腺において優性に発現され、胎盤においてはより低レベルの発現が存在することを実証する。少量のmRNAを、長い露光の後、前立腺組織で見られたレベルの約100分の1のレベルで、腎臓および小腸において検出し得る。正常ヒト組織におけるPSCA発現のRT−PCR分析はまた、PSCA発現が制限されることを実証する。正常な組織のパネルにおいて、高レベルのPSCA mRNA発現を前立腺で検出し、有意の発現を、胎盤および扁桃で検出した(図7A)。種々の前立腺癌異種移植片の前立腺癌細胞株およびその他の細胞株、ならびに正常な前立腺におけるPSCA mRNA発現のRT−PCR分析は、正常な前立腺、LAPC−4およびLAPC−9前立腺癌異種移植片、ならびに卵巣癌細胞株A431に限定される高レベルの発現を示した(図7B)。正常な前立腺における主要なPSCA転写物は、約1kbである(図9B)。マウスのPSCA発現を、マウスの脾臓、肝臓、肺、前立腺、腎臓、および精巣におけるRT−PCRにより分析した。ヒトPSCAと同様に、マウスのPSCAは、前立腺で優性に発現される。発現はまた、ヒト組織のうち胎盤で見られたレベルと同様のレベルで、腎臓において検出され得る。
前立腺癌細胞株および異種移植片におけるPSCA、PSMAおよびPSAの発現を、ノーザンブロット分析により比較した。図10に示されるその結果は、PSCAおよびPSMAの両方の高レベルの前立腺癌に特異的な発現を実証する一方、PSA発現は前立腺癌特異的ではない。
(PSCAは正常な前立腺における基底細胞のサブセットにより発現される)
正常な前立腺は、二つの主要な上皮細胞集団(分泌性管腔細胞および下の基底細胞)を含む。インサイチュハイブリダイゼーションを、その発現を局在化するために、PSCAに特異的なアンチセンスリボプローブを使用して、正常な前立腺の複数の部分で行った。図11に示されるように、PSCAは、正常基底細胞のサブセットにおいて排他的に発現される。支質、分泌性細胞または浸潤性リンパ球において、染色はほとんど見られない。センスPSCAリボプローブを用いるハイブリダイゼーションは、バックグランド染色を示さなかった。GAPDHについてのアンチセンスプローブを用いるハイブリダイゼーションは、全ての細胞の型におけるRNAがインタクトであるということを確証した。基底細胞は、最終分化分泌性細胞の推定前駆細胞を表すため、これらの結果は、PSCAが前立腺特異的な幹細胞/前駆細胞のマーカーであり得るということを示唆する(Bonkhoffら、1994、Prostate 24:114−118)。さらに、基底細胞はアンドロゲン非依存性であるため、PSCAの基底細胞との関連は、PSCAが、アンドロゲン非依存性前立腺癌の進行において役割を果たし得るという可能性を生じる。
(PSCAは、前立腺癌細胞において過剰発現される) 正常な前立腺およびLAPC−4異種移植片腫瘍におけるPSCAの発現を比較する初期の分析は、PSCAが前立腺癌において過剰発現されることを示唆した。図9に示されるような、ノーザンブロット分析により明らかにされたように、LAPC−4前立腺癌腫瘍は、PSCAを強く発現するが、BPHのサンプルにおいて検出可能な発現はほとんど無い。対照的に、PSA発現は、正常な前立腺において明確に検出可能であり、LAPC−4腫瘍において見られたレベルの2〜3倍のレベルである。従って、前立腺癌におけるPSCAの発現は、PSAで見られた発現の逆であるようである。PSAは、悪性の前立腺組織よりも正常な前立腺組織において、より強く発現されるが、PSCAは、前立腺癌においてより高度に発現される。
前立腺癌の診断におけるPSCAの発現とその値を確かめるために、126個のパラフィンに包埋された前立腺癌の標本を、PSCA発現についてmRNAインサイチュハイブリダイゼーションにより分析した。標本を、一つを除く全ての場合において、根治的な前立腺切除または経尿道切除により除去された初期の腫瘍から得た。全ての標本を、バックグランド染色を制御するためにセンス構築物およびアンチセンス構築物の両方でプローブした。材料および方法に記載するように、スライドには複合スコアが与えられ、6から9のスコアは強い発現を示し、4のスコアは穏やかな発現を意味する。126個のうち102個(81%)の癌がPSCAについて強く染色されたが、126個のうち別の9個(7%)は穏やかな染色を示した(図11Bおよび図11C)。高段階の前立腺上皮内新形成(侵襲性前立腺癌の推定の前駆病変)は、標本の82%(118個のうち97個)においてPSCAについて強く陽性に染色された(図11B)(Yangら、1997、Am.J.Path.150:693−703)。正常な腺は、一貫して悪性腺より弱く染色された(図11B)。9個の標本を、手術の前にホルモン除去治療で処置された患者から得た。これらの残りの推定アンドロゲン非依存性の癌の9個のうち7個(78%)は、PSCAを過剰発現し、パーセントは未処置の癌で見られたものに類似であった。このような高いパーセントの標本が、PSCA mRNAを発現したため、PSCA発現と腫瘍病期および悪性度分類のような病理学的特徴との間に、統計学的相関はあり得ない。これらの結果は、PSCA mRNAの過剰発現が、アンドロゲン依存性および非依存性の前立腺癌に共通の特徴であるということを示唆する。
(PSCAは、アンドロゲン非依存性前立腺癌細胞株において発現される)PSCAを差し引きハイブリダイゼーションを使用して初めにクローニングしたが、ノーザンブロット分析は、アンドロゲン依存性LAPC−4異種移植片腫瘍およびアンドロゲン非依存性LAPC−4異種移植片腫瘍の両方における強いPSCA発現を実証した(図9)。さらに、PSCA発現を、全ての前立腺癌異種移植片(LAPC−4異種移植片およびLAPC−9異種移植片を含む)において検出した。
アンドロゲン非依存性の、アンドロゲンレセプター陰性前立腺癌細胞株PC3およびDU145におけるPSCAの発現をまた、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応分析により検出した。これらのデータは、PSCAが、機能的アンドロゲンレセプターの非存在下で発現され得るということを示唆する。
(実施例2:PSCAの生化学的特徴付け)
この実験は、PSCAが、グリコシル化された、GPIアンカー型細胞表面タンパク質であることを示す。
(材料および方法)
(ポリクローナル抗体および免疫沈降)ウサギポリクローナル抗血清を、合成ペプチド−TARIRAVGLLTVISK−に対して生成し、そしてPSCAグルタチオンSトランスフェラーゼ融合タンパク質を使用してアフィニティー精製した。293T細胞を、PSCA、CD59、E25を含むpCDNA II(Invitrogen、San Diego、CA)発現ベクターまたはベクターのみを用いてリン酸カルシウム沈殿により一過的にトランスフェクトした。免疫沈降を以前に記載されたように(HarlowおよびLane、1988、Antibodies:A Laboratory Manual.(Cold Spring Harbor Press))行った。簡単にいうと、細胞を、500uCiのトランス35S標識(ICN、Irvine、CA)を用いて6時間標識化した。細胞溶解産物および馴化培地を、1ugの精製されたウサギ抗PSCA抗体および20ulのプロテインAセファロースCL−4B(Pharmacia Biotech、Sweden)とともに2時間インキュベートした。脱グリコシル化のために、免疫沈降物を1uのN−グリコシダーゼF(Boehringer Mannheim)を用いて37℃で一晩処理するか、または0.1uのノイラミニダーゼ(Sigma、St Louis、MO)で1時間処理した後、2.5mUのO−グリコシダーゼ(Boehringer Mannheim)中で一晩処理した。
(フローサイトメトリー) PSCA細胞表面発現のフローサイトメトリー分析のために、単一細胞懸濁液を、2ug/mlの精製された抗PSCA抗体および1:500希釈のフルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識化抗ウサギIgG(Jackson Laboratories、West Grove、PA)で染色した。データをFACScan(Becton Dickinson)で取得し、LYSIS IIソフトウェアを使用して分析した。コントロールサンプルを、二次抗体のみを用いて染色した。グリコシルホスファチジルイノシトール結合を、2×106の細胞を0.5ユニットのホスファチジルイノシトール特異的ホスホリパーゼC(PI−PLC、Boehringer Mannheim)を用いて37℃で90分間消化することにより、分析した。細胞を、FACSスキャニングまたはイムノブロット法のいずれかによって、消化の前および後で分析した。
(結果)
(PSCAは、細胞表面に発現されたGPIアンカー型糖タンパク質である)
推定PSCAアミノ酸配列は、PSCAが高度にグリコシル化され、そしてGPI機構により細胞表面上に係留されているということを予測する。これらの予測を試験するために、本発明者らは、固有のPSCAペプチドに対して惹起された、アフィニティー精製されたポリクローナル抗体を産生した(材料および方法を参照のこと)。このペプチドは、グリコシル化部位を含まず、CD59(別のGPIアンカー型PSCAホモログ)の三次元構造との比較に基づいて、成熟タンパク質の露出された部分にあると推測された(Kieferら、1994、Biochem.33:4471−4482)。アフィニティー精製された抗体によるPSCAの認識を、PSCAおよびGST−PSCA融合タンパク質でトランスフェクトされた293T細胞の抽出物のイムノブロット分析および免疫沈降分析により、実証した。このポリクローナル抗体は、PSCAトランスフェクト細胞からの24kdのバンドを優性に免疫沈降したが、偽トランスフェクト細胞からは免疫沈降しなかった(図12A)。3つの小さなバンドも存在し、最小のものは、約10kdであった。この免疫沈降物を、これらのバンドがPSCAのグリコシル化形態を表すか否かを決定するために、NおよびO特異的グリコシダーゼで処理した。N−グリコシダーゼFはPSCAを脱グリコシル化したが、O−グリコシダーゼは、全く効果が無かった(図12A)。いくつかのGPIアンカー型タンパク質は、膜結合形態および分泌形態の両方を有することが公知である(FritzおよびLowe、1996、Am.J,Physiol.270:G176−G183)。図12Bは、いくつかのPSCAが、293T過剰発現系において分泌されるということを示す。PSCAの分泌形態は、細胞表面結合形態よりも低い分子量で移動し、これはおそらく共有結合性GPI結合の非存在を反映する。この結果は、高レベルの293T細胞株における発現を反映し得、前立腺癌細胞株およびインビボにおいて確認される必要がある。
蛍光活性化細胞分類(FACS)分析を、PSCA発現を、細胞表面に局在化するために使用した。非透過化処理した偽トランスフェクト293T細胞、PSCA発現293T細胞およびLAPC−4細胞を、アフィニティー精製された抗体または二次抗体のみで染色した。図12Cは、PSCAをトランスフェクトした293T細胞およびLAPC−4細胞におけるPSCAの細胞表面発現(偽トランスフェクト細胞では生じない)を示す。この細胞表面発現が、共有結合性GPI結合によって媒介されていることを確認するために、細胞を、GPI特異的ホスホリパーゼC(PLC)で処理した。PLCによる細胞表面からのPSCAの放出が、蛍光強度における1log換算(one log reduction)より大きいことによって示された。消化後の馴化培地におけるPSCAの回収をまた、イムノブロット法により確認した。GPIアンカー型タンパク質に対するホスホリパーゼC消化の特異性を、GPI結合抗原CD59またはGPI非結合膜貫通タンパク質E25aでトランスフェクトされた293T細胞に同じ実験を行うことで確認した(Deleernijderら、1996、J.Biol.Chem.271:19475−19482)。PLC消化は、CD59の細胞表面発現をPSCAと同じ程度まで減少させるが、E25には影響しなかった。これらの結果は、PSCAが、グリコシル化された、GPIアンカー型細胞表面タンパク質であるという予測を支持する。
(実施例3:cDNAをコードするマウスPSCAホモログの単離)
ヒトPSCA cDNAを、潜在的トランスジェニック実験およびノックアウト実験のためのホモログを同定するために、マウスESTデータベースを検索するために使用した。マウス胎児から得られた一つのESTおよび新生児腎臓から得られたもう一つのESTは、ヌクレオチドレベルおよびアミノ酸レベルの両方で、ヒトcDNAと70%同一であった。マウスクローンとヒトPSCAとの間の相同性は、ヒトPSCAとそのGPIアンカー型ホモログとの間の相違の領域を含み、このことは、これらのクローンがPSCAのマウスホモログをおそらく表すということを示す。これらのESTの整列化およびRACE−PCRを使用する5’伸長は、そのコード配列全体を提供した(図2)。
(実施例4:ヒトおよびマウスPSCA遺伝子の単離)
この実験は、PSCAが、第8染色体、バンドq24.2に位置することを示す。
(材料および方法)
(ゲノムクローニング)ヒトPSCA遺伝子を含むλファージクローンを、ヒトPSCA cDNAプローブを用いてヒトゲノムライブラリー(Stratagene)をスクリーニングすることにより得た(Sambrookら、1989、Molecular Cloning(Cold Spring Harbor))。マウスPSCA遺伝子を含むBAC(細菌性人工染色体)クローンを、マウスPSCA cDNAプローブを用いてマウスBACライブラリー(Genome Systems,Inc.、St. Louis、MO)をスクリーニングすることにより得た。14kbのヒトNotIフラグメントおよび10kbマウスEcoRIフラグメントを、pBluescript(Stratagene)にサブクローニングし、配列決定し、そして制限酵素地図を作成した。
(蛍光インサイチュハイブリダイゼーションによる染色体マッピング) 蛍光インサイチュ染色体分析(FISH)を、以前記載されたように、オーバーラップヒトλファージクローンを使用して行った(Rowleyら、1990、PNAS USA 87:9358−9362、H.Shizuya、PNAS USA、89:8794)。
(結果)
(PSCA遺伝子の構造) それぞれ約14kbおよび10kbのヒトおよびマウスゲノムクローンを得て、制限酵素地図を作成した。ヒトおよびマウスのPSCAおよびLy−6/Thy−1の遺伝子構造の概略図を、図8に示す。ヒトゲノムクローンおよびマウスゲノムクローンの両方は、PSCA遺伝子の翻訳領域および3’非翻訳領域をコードする3つのエキソンを含む。Ly−6およびThy−1遺伝子ファミリーの他のメンバーに対するPSCAの相同性に基づいて、5’非翻訳領域をコードする第4のエキソンの存在が推測される(図8)。
(染色体8q24.2に対するヒトPSCA遺伝子地図) LAPC−4ゲノムDNAのサザンブロット分析は、PSCAが、単一コピーの遺伝子によりコードされるということを明らかにした。他のLy−6遺伝子ファミリーのメンバーは4つのエキソンを含み、この4つのエキソンは、5’非翻訳領域をコードする第一のエキソン、ならびに翻訳領域および3’非翻訳領域をコードするさらに3つのエキソンを含む。その推定の5’第一エキソン以外の全てを含むヒトおよびマウスPSCAのゲノムクローンを、λファージライブラリーのスクリーニングにより得た。マウスおよびヒトPSCAクローンは、類似のゲノム構成を有していた。このヒトクローンを、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション分析によりPSCAを局在化するために使用した。オーバーラップヒトPSCAλファージクローンの同時ハイブリダイゼーションは、第8染色体のみの特異的標識を生じた(図13)。検出されたシグナルの97%は、染色体8q24に局在化し、そのうちの87%は、染色体8q24.2に特異的であった。これらの結果は、PSCAが第8染色体のバンドq24.2に位置していることを示す。
(実施例5:PSCAの異なるエピトープを認識するモノクローナル抗体の生成)
(材料および方法)
(モノクローナル抗体の生成および産生) BALB/cマウスを、PSCAアミノ酸22〜99(図1B)を含む、精製されたPSCA−グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質を用いて3回免疫化した。簡単にいうと、ヒトPSCAアミノ酸配列のアミノ酸18〜98に対応するPSCAコード配列を、以下のプライマー対
Figure 2010265323
を使用して、PCR増幅した。
増幅されたPSCA配列を、pGEX−2T(Pharmacia)にクローニングし、E.coliを形質転換するために使用しそして融合タンパク質を単離した。
脾臓細胞を、標準ハイブリドーマ技術を使用して、HL−1骨髄腫細胞と融合した。ELISAおよびFACS分析によりPSCAについて陽性であったハイブリドーマ(結果を参照のこと)を、サブクローニングした。腹水をC.B.17scid/scidマウスにおいて産生し、そしてモノクローナル抗体(mAb)をプロテインGアフィニティーカラム(Pharmacia Biotech、Piscataway、N.J.)を使用して精製した。PSCA mAb 1G8をまた、Cell−Pharm System 100で、製造業者(Unisyn Technologies、Hopkinton、MA)により推奨されるように、生産した。
(ハイブリドーマスクリーニングのためのELISA) GSTまたはPSCA−GSTを、Reacti−Bind無水マレイン酸活性化ポリスチレンプレート(Pierce、Rockford、IL)に固定化した。50ulのハイブリドーマ培地をそれぞれのウェルに添加し、そして、1時間、室温でインキュベートした。ウェルを、0.1%BSAおよび0.05%Tween20を含む200ulのPBSで3回洗浄し、そして、アルカリホスファターゼ(Promega、Madison、WI)で標識した100ulの抗マウスIgG(1:4000)と共に1時間インキュベートした。プレートをアルカリホスファターゼ基質(Bio−Rad、Hercules、CA)を用いて発色させた。
(細胞培養) LNCaPをATCCより入手し、PSCAを含むpCDNAII(Invitrogen)発現ベクター、または単独のベクターで安定にトランスフェクトした(Reiter,Rら、1998)。一過性にPSCAまたはベクターのみでトランスフェクトした293T細胞を、以前に記載されたように(Reiter,Rら、1998)調製した。1%プロナーゼ中で室温で18分間消化した後、LAPC−9異種移植片の外殖片を、PrEGM培地(Clonetics、San Diego、CA)中で増殖した。FACS分析の前に、LAPC−9細胞を40umのセルストレーナーに通し、単一の細胞懸濁物を得た。
(免疫蛍光) 細胞を、ポリ−L−リジンでコートしたカバーガラス上で増殖させた。免疫蛍光アッセイを、透過化処理した、および透過化処理していない固定細胞について行った。固定のため、細胞を、2%のパラホルムアルデヒドのPBS−CM(PBS、100uM CaCl2、1mM MgCl2)溶液で30分間、暗所で処理し、50uMのNH4ClのPBS−CM−BSA(PBS、100uM CaCl2、1mM MgCl2、0.2% BSA)溶液で10分間クエンチし、そしてPBS−CM−BSAで2回洗浄した。透過化処理のため、細胞をさらにPBS−CM−BSA−Saponin(0.075%のサポニン(Sigma)のPBS−CM−BSA溶液)で15分間、室温で処理した。一次mAbをPBS−CM−BSA(透過化処理の場合には、サポニンを追加)中、2〜5mg/mlで60分間添加し、そしてPBS−CM−BSAで2回洗浄した。FITCと結合したヤギ抗マウスIgG抗体(PBS−CM−BSA+/−サポニンに1:500で希釈;Southern Biotechnology、Birmingham、AL)を30分間添加し、そしてPBS−CMで3回洗浄した。スライドをベクターシールド(Vector Laboratory、Inc.、Burlingame、CA)に載せた。
(フローサイトメトリー) 細胞(1×106)を、2%のウシ胎児血清またはハイブリドーマ馴化培地を含むPBS中、2ug/mlで、100ulのmAbと共に30分間、4℃で、インキュベートした。洗浄後、細胞をFITCと結合したヤギ抗マウスIgG(Southern Biotechnology、Birmingham、AL)の1:500希釈液で染色した。FACScan(Becton Dickinson)でデータを得、そしてLYSIS IIソフトウエアを用いることにより分析した。
(イムノブロット法および免疫沈降)免疫沈降を、記載のように(Harlow,E.およびLane,D.、1988)行った。簡単には、細胞を500uCiのトランス35標識(ICN)で6時間、標識した。細胞溶解産物を、3ugのmAbおよび20ulのプロテインA−Sepharose CL−4B(Pharmacia Biotech)と共に、2時間インキュベートした。イムノブロット法のため、細胞を1× SDS Laemmliサンプル緩衝液中に溶解し、そして5分間、煮沸することによりタンパク質抽出物を調製した。タンパク質を12.5%SDSポリアクリルアミド上で分離し、そしてニトロセルロース膜に転写し、洗浄し、そして10mlのブロッキング緩衝液(TBST中5%無脂肪乳)中の2ug mAbと共にインキュベートした。ブロットをAmersham増強化学発光検出システム(Amersham、Arlington Heights、IL)を用いて発光させた。
(免疫組織化学) 正常な、ホルマリン固定したパラフィン包埋組織サンプルを、Departments of Pathology at Beth−Israel Deaconess Medical Center−Harvard Medical SchoolおよびUCLAから入手した。初期の根治的前立腺切除術の標本を、以前に記載されたデータベースから選択した(Magi−Galluzzi,Cら、1997)。骨転位およびそれに一致する初期の生検標本を、UCLA Department of Pathologyから入手した。再現性を保証するため、2つの研究所で独立に、正常組織を染色し、そしてスコア付けした。UCLAから入手した標本を、以前に記載された免疫ペルオキシダーゼ技術(Said,J.W.ら、1998)の改変法で染色した。抗原の検索を、業務用蒸し器および0.01Mクエン酸緩衝液(pH6.0)を用いて、パラフィン切片で行った。PSCA mAbsとの50分間のインキュベーションの後(以下を参照のこと)、スライドガラスを、ウサギ抗マウスIgG、ブタ抗ウサギIgGおよびウサギ抗ブタIgG(全てビオチン結合している)で続けて処理した。次いで、スライドガラスをストレプトアビジン−ペルオキシダーゼと共にインキュベートし、そしてジアミノベンジジン反応を用いて抗体局在化を行った。Beth−Israel−Deaconess−Harvard Medical Schoolから入手した標本を、以前に記載した自動化Ventana NexES機器(Ventana Medical Systems、Tucson、AZ)を用いて染色した(Magi−Galluzzi,Cら、1997)。750Wでのマイクロ波により、15分間、EDTA(pH8.05)において、抗原の検索を行った。SCID腹水から約1ug/ulの濃度で精製したmAbsを、以下の濃度で用いた:1G8=1:20;3E6=1:30;2H9=1:50;4A10=1:100;3C5=1:100。mAb1G8をCellPharm System 100中に産生し、1:10の濃度で使用した。陽性コントロールはLAPC−9およびLNCaP−PSCAを含み、そして陰性コントロールはLNCaP、およびアイソタイプが一致した無関係な抗体であった。最初の生検標本は、骨転位を有する3人の患者について入手可能であった。脱石灰の状態に近づけるため、PSCA mAbsで染色する前に、これらの標本からのスライドガラスを20分間、Decal−Stat(Lengers、NY)中で処理した。
モノクローナル抗体(mAbs)を、PSCAのアミノ末端およびカルボキシル末端のシグナル配列の両方を欠くPSCA−GST融合タンパク質に対して惹起した。PSCA−GST融合タンパク質およびGSTのみを用いるELISAによって、陽性の融合物を選別した。スクリーニングされた400のハイブリドーマの内、28はPSCA−GST融合物を認識したが、GSTのみは認識しなかった。これらの融合物を、PSCAでトランスフェクトした透過化処理していない293T細胞および偽トランスフェクトした293T細胞のフローサイトメトリーにより二次スクリーニングした。FACSによる二次スクリーニングは、細胞表面上のPSCAを認識可能なクローンが、後にインビボ標的化適用に有用であることを仮定して、それらを選別するために行った。7つの陽性融合物をこのように同定し(mAb 2A2、3G3、4A10、1G8、3E6、3C5および2H9)、そのうちの5つ(mAb 4A10、1G8、3E6、3C5および2H9)をサブクローン化し、そして精製した。
mAbを、PSCAを免疫沈降する能力、および/またはイムノブロット上のPSCAを認識する能力について試験した。全てのmAbは、293T−PSCA細胞に由来する、ならびに、高レベルの内因性PSCAを発現するLAPC−9前立腺癌異種移植片腫瘍に由来する、PSCAを免疫沈降し得た(図37)。同様に、全てのmAbは、イムノブロットによりPSCAを検出した。しかし、mAbs 2H9および3E6は、約12kdの脱グリコシド化形態のPSCAしか認識しなかった(図34)。
5つのmAbにより認識されるエピトープのPSCA上の位置を、3つの短縮型PSCA−GST融合タンパク質を用いるイムノブロット分析により決定した。mAb 4A10、2H9および3C5は、PSCAのアミノ末端部分に存在するエピトープ(すなわち、アミノ酸21〜50)を認識し;mAb 1G8はPSCAの中間部分に存在するエピトープ(すなわち、アミノ酸46〜85)を認識し;そして、mAb 3E6はPSCAのカルボキシル末端(アミノ酸85〜99)において反応する(図15)。5つ全てのmAbは、図15に記載するようにIgGである。これらの結果は、5つのmAbが、複合アッセイにおいてPSCAを検出することができ、そして少なくとも3つの異なるPSCA上のエピトープを認識し得ることを示す。
(PSCA mAbは前立腺癌細胞の細胞表面上を染色する)
PSCA生物学を研究するための、およびインビボ標的化適用のような潜在的臨床適用のためのmAbの有用性は、原形質膜上で目的の抗原を認識するそれらの能力に依存する(Liu,H.ら、1997;McLaughlin,P.ら、1998;Wu,Y.ら、1995;Tokuda,Y.ら、1996)。mAb 2H9、3E6、1G8、4A10およびC5が、特に前立腺癌細胞の細胞表面上のPSCAを認識する能力を決定するため、PSCAでトランスフェクトしたLNCaP細胞(LNCaP−PSCA)およびLAPC−9細胞をフローサイトメトリーおよび間接的免疫蛍光により調べた。293T−PSCA細胞についてと同様、5つ全てのmAbsは、透過化処理していないLNCaP−PSCAおよび/またはLAPC−9細胞の細胞表面上のPSCAを、フローサイトメトリーにより検出し得た(図33)。偽トランスフェクト(mock−transfected)したLNCaP、およびネオマイシン単独を含むベクター(LNCaP−neo)でトランスフェクトしたLNCaP(いずれも検出可能なPSCA mRNAを発現しない)は、共に陰性であった。
免疫蛍光分析を、PSCAタンパク質が細胞表面に局在するか否かを確認するために、透過化処理した細胞および透過化処理していない細胞の両方で行った(Liu,H.ら、1997)。透過化処理していないLNCaP−PSCAは、mAb 1G8、3E6、4A10および3C5に対して明らかな細胞表面反応性を示したが、mAb 2H9に対しては染色されなかった(mAb 2H9はまた、FACSによりLNCaP−PSCA細胞上のPSCAを検出しなかった)。LAPC−9細胞は、5つ全てのmAbに対して細胞表面反応性を示した(図35)。LNCaP−neoは、予想されたように、透過化処理の有無に関わらず陰性であった。LNCaP−PSCAおよびLAPC−9の透過化処理は、膜染色および細胞質染色の両方を生じた。全てのmAbは、細胞表面上に斑点の染色パターンを生じたが、それはmAb 3E6、3C5および4A10に関して最も顕著であった(図35)。このパターンは、PSCAの細胞表面の領域への凝集またはクラスター化を反映し得る。これらの結果は、5つ全てのmAbがインタクトな前立腺癌細胞の細胞表面上PSCAと反応することを示す。
(正常前立腺中のPSCAの免疫組織化学的染色)
PSCA mRNAは、正常前立腺中の基底細胞のサブセットに位置し、このことはPSCAが前立腺の幹細胞/前駆細胞に対する細胞表面マーカーであり得ることを示唆する(Reiter,R.ら、1998)。PSCAタンパク質が基底細胞のマーカーであり得る可能性を試験するため、正常前立腺のパラフィン包埋切片において、PSCA発現を免疫組織化学的に調べた。mAb 1G8および2H9は基底細胞および分泌細胞の両方の細胞質を染色し、一方でmAb 3E6は基底細胞と主に反応した(図38)。基底細胞サイトケラチンを発現する萎縮性腺は、全ての3つのmAbで強く染色された(図38)(O’Malley,F.P.ら、1990)。mAb 3C5および4A10は、パラフィン切片において強いバックグラウンド染色および/または非特異的な核染色を生じ、さらには使用されなかった。これらの結果は、PSCA mRNAが基底細胞において特異的に検出されるが、PSCAタンパク質は前立腺の上皮細胞層の両方(すなわち、基底および分泌)において検出され得ることを示唆する。しかし、それぞれの抗体の染色パターンにいくらかの違いはある。
(正常組織の免疫組織化学的分析)
本発明者らの初期の研究は、男性におけるPSCA発現が、腎臓および小腸において検出可能なRNAが低レベルであり、主に前立腺特異的であることを示した。PSCA mRNAを、胎盤においてもまた検出した。PSCAタンパク質発現の前立腺特異性を、mAb 1G8を用いて、20の組織の免疫組織化学染色により試験した(表1を参照のこと)。mAb 1G8での陽性の組織染色は、異なるエピトープに対するmAbとの再現性を保証するため、mAb 2H9および/または3E6で確認された。染色はまた、結果を確認するため、2つの研究所で独立に行い、そしてスコア付けした。RNA分析から予想されたように、胎盤は試験した全てのmAbについて陽性であり、細胞質染色が栄養膜で検出された(図39A)。腎臓において、染色は集合尿細管および遠位曲尿細管において検出されたが、糸球体においては検出されなかった(図39A)。膀胱および尿管の移行上皮(以前は、mRNAレベルで調べていなかった)は、試験した全てのmAbについて陽性であった(図39A)。有意な免疫反応性を有する他の唯一の組織は結腸であり、陰窩の奥深くで単一の細胞が強く陽性に染色された(図39A)。クロモグラニンを用いた二重染色は、これらの細胞が神経内分泌由来であることを示した。
膀胱におけるmAbの反応性がPSCAを表すことを確認するため、根治的膀胱切除で得られた3つの正常な膀胱サンプルに対してノーザンブロット分析を行い、前立腺、腎臓およびLAPC−9異種移植片におけるPSCA発現と比較した(図39B)。PSCA mRNAは、膀胱において、前立腺において見られたより低いレベルで検出され、免疫組織化学的結果を確証した。3つの腎臓標本において、シグナルは検出されず、腎臓におけるPSCA発現は前立腺よりも有意に低いという本発明者らの以前の結果と首尾一貫していた(Reiter,R.ら、1998)。骨転位から樹立された前立腺癌異種移植片LAPC−9は、正常な膀胱および前立腺と比較して非常に高いレベルのPSCA mRNAを発現する(Whang,Y.E.ら、1998)。これらの結果は、男性におけるPSCA発現が主に前立腺優性であることを確証するが;尿路上皮、腎臓の集合尿導管および結腸の神経内分泌細胞における検出可能なPSCAタンパク質発現もまた存在する。
(PSCAタンパク質は、局在化した前立腺癌の大部分で発現される)
本発明者らの以前の研究において、mRNAは約80%の腫瘍において発現し、そして悪性腺よりも正常腺においてより高度に発現するようである(Reiter,R.ら、1998)。PSCAタンパク質が前立腺癌において検出され得るか否か、およびPSCAタンパク質レベルが良性腺と比較して悪性腺において増加するか否かを決定するため、初期転位性前立腺癌のパラフィン包埋の病理標本をmAb 1G8で免疫染色した(図21および28)。単離された場合もまた、染色の特異性を確認するために、mAb 3E6または2H9で染色した。15の初期癌の内、12は陽性に染色された(図21)(高い段階の前立腺の上皮内新形成の病巣を含む2つの症例のうち2つを含む)。染色強度は異なり、7つの症例は癌および隣接する正常な腺において同等な染色を示し、そして5つは癌において有意に強い染色を示した。いくつかの場合においては、悪性腺において強い発現が存在し、そして隣接した正常組織において検出可能な発現は存在しなかった(図21;患者1)。また、染色が不均一であり、いくつかの悪性腺について、他と比べてより強く染色されるいくつかの症例も存在した(図21;患者2)。全体的に、あまり分化していない腫瘍は、十分に分化した腫瘍より強く染色され、このことはPSCA過剰発現が腫瘍段階の増進と相関し得ることを示唆した(図21;患者3)。これらの結果はPSCAタンパク質が前立腺癌において発現することを示す。本発明者らのインサイチュ研究における以前のmRNAと一致して、PSCAは、おそらく増進する腫瘍の段階と一致して、有意な割合の癌において過剰に発現すると思われる。
本研究は、PSCAに対する5つのモノクローナル抗体を用いたPSCAタンパク質発現の最初の特徴付けを記載する。これらのmAbは細胞表面の外側のエピトープを認識するので、これらは前立腺癌診断および治療のための有用性を有し得る(Liu,H.ら、1997)。1つの可能性は、PSMAに対する抗体を使用するProstascintスキャンと同様に、これらのmAbが転位性疾患の部位を位置決めするために用いられ得ることである(Sodee,D.B.ら、1996)。別の可能性は、それらが、単独でか、または放射性同位体もしくは他の毒素と結合されるかのいずれかで、前立腺癌細胞を治療的に標的化するために用いられ得ることである。同様のアプローチは、現在、PSMA上の細胞外エピトープに対する抗体を用いて評価されている(Murphy,G.P.ら、1998;Liu,H.ら、1997;Liu,H.ら、1998)。
PSCA mAbは、細胞表面を斑点状に染色し、PSCAが細胞表面の特定の領域に局所化し得ることを示唆する。GPI−アンカー型タンパク質は、細胞表面の界面活性剤の不溶性の糖脂質富化ミクロドメイン(detergent−insoluble glycolipid−enriched microdomain)(DIGS)においてクラスター化することが公知である(Varma,RおよびMayor,S.,1998)。カベオラおよびスフィンゴ脂質−コレステロールラフト(raft)を含むこれらのミクロドメインは、シグナル伝達および分子輸送において重要な役割を果たすと考えられている(Anderson,R.Caveolae,1993;Friedrichson,T.およびKurzchalia,T.V.,1998;Hoessli,D.C.およびRobinson,P.J.,1998)。Thy−1(PSCAの相同体)は以前、脂質−ミクロドメインにおける相互作用を介してsrcキナーゼにシグナルを送ることが示された(Thomas,P.M.およびSamuelson,L.E.,1992;Stefanova,I.ら、1991)。本発明者らの実験室における予備的な亜細胞分画実験は、DIGS中のPSCAの存在を確認する(Xavier,R.ら、1998)。
GPI−アンカー型タンパク質はまた、プロスタソーム(prostasome)(前立腺上皮細胞より放出された、膜結合保存小胞)に局在化すると報告された(Ronquist,G.およびBrody,I.、1985)。CD59(補体媒介性細胞溶解のGPIアンカー型インヒビター)は、正常な前立腺上皮細胞のプロスタソームおよび前立腺分泌物中に高濃度で見出される(Rooney,I.ら、1993)。PSCAタンパク質は、前立腺分泌細胞中に検出される。
PSCA mRNAが独占的に基底細胞に局在化するという本発明者らの以前の発見に反して、本結果は、PSCAタンパク質が基底細胞および分泌細胞の両方に存在し得ることを示唆する。前立腺におけるmRNAとタンパク質局在性との間の同様の違いは、PSMAおよびアンドロゲンレセプターについて記載されている(Magi−Galuzzi,C.ら、1997;Kawakami,M.およびNakayama,J.,1997)。分泌細胞中のPSCAタンパク質の存在についての1つの可能な説明は、PSCA mRNAが基底前駆細胞において転写されるが、そのPSCAタンパク質発現は、基底細胞が分泌細胞へ分化する際に存続するということである。別の可能性は、PSCAタンパク質が基底細胞から分泌細胞へ翻訳後に移され得ることである。
mAb 3E6、1G8および2H9による基底細胞および分泌細胞の染色強度における違いは、基底および分泌細胞において抗体および/またはPSCAの翻訳後修飾における違いにより認識される異なるエピトープを反映し得る。この可能性を支持するのは、5つのmAbが、全てのアッセイまたは細胞株においてPSCAと同等には反応しない、という知見である。mAb 2H9は、LAPC−9の細胞表面上のPSCAを認識するが、LNCaP−PSCAは認識しない。このことは、この抗体により認識されるエピトープが、後者の細胞型において改変され得るか、または覆い隠され得ることを示唆する。本発明者らはまた、mAb 3E6が、いくつかの場合、mAb 1G8および2H9と同じように強く癌を染色しないことを観測した。このことは、mAb 3E6がPSCAの特定の型と優先的に反応し得ることを示唆する。
男性においては大部分は前立腺特異的であるが、PSCAはまた、尿路上皮、直腸の神経内分泌細胞、ならびに腎尿細管および集合管において低レベルで発現される。腎尿細管および集合管において見られる染色は、これらの構造が発生学的に中腎管の尿管芽に由来することにおいて興味深く、腎臓において見られる染色パターンに対する考えられ得る理由を示唆する。検出可能なPSCA mRNAの腎臓検体における非存在は、低レベルの発現、または集合管が腎髄質中に位置するが故に、このサンプルが腎皮質から主に得られたという可能性のいずれかを反映し得る。
前立腺特異的な細胞表面遺伝子を同定するための主な起動力は、選択的な、無毒性の治療を開発することが望まれる。PSMA(別の「前立腺制限」タンパク質)はまた、十二指腸、結腸の神経内分泌細胞、および近位尿細管において発現されることが示されている(Silver,D.A.ら、1997)。PSMAワクチン治療の先の報告は、有意な毒性を生じていない(Tjoa,B.A.ら、1998)。
尿路上皮および腎臓におけるPSCAの発現は、正常な前立腺における発現より低く、そして評価された多くの前立腺癌において見られる発現よりも顕著に低いようである。PSCAに対して指示される治療は、それ故、Her−2/neuを過剰発現する乳癌を主に標的にするHer−2/neu抗体と同程度に、癌に対して相対的に選択的であり得る(Disis,M.L.およびCheever,M.A.,1997)。
尿路上皮および腎臓におけるPSCAの発現は、それが移行細胞癌および腎臓細胞癌において発現され得る可能性をもたらす。検査された2つの膀胱癌はPSCAを発現し、1つはLAPC−9と同様のレベルであり、これはPSCAが移行細胞癌のいくつかの場合において過剰発現され得ることを示唆する。膀胱癌検体のより完全な調査が、この可能性を試験するために必要とされる。
本明細書中のデータは、PSCAが前立腺癌の大多数において発現されるという本発明者らの初期の知見を支持する。同様に、PSCAタンパク質は、隣接する正常な腺と比較した場合に、いくつかの前立腺腫瘍において過剰発現され、前立腺癌治療のための標的としてのその使用を支持している。mRNAのインサイチュ研究と対照的に、現在の結果はPSCAタンパク質発現が、癌の段階および/または癌の程度と相関し得ることを示唆する。RNAとタンパク質発現との間の同様の差異は、チモシンBeta−15について記載されている(Bao,L.ら、1996)。
(表1.正常組織におけるPSCA発現)
(染色) (組織)
陽性 前立腺(上皮)
膀胱(移行上皮)
胎盤(栄養膜)
結腸(神経内分泌細胞)
腎臓(尿細管および集合管)*
陰性 腎臓(糸球体)
前立腺(間質)
膀胱(平滑筋)
精巣
子宮内膜
小腸
肝臓
膵臓
乳房
胆嚢
骨格筋

末梢神経
骨髄
胸腺
脾臓

気管支
心臓
*mAb 3E6は遠位曲尿細管と反応し、一方mAb 1G8は遠位尿細管と反応し、そしていくつかの場合には、近位尿細管と反応する。
**引続く実験分析はまた、正常な胃組織におけるPSCA発現を示す。
(実施例6)
(前立腺癌の骨転移におけるPSCA発現)
本実験は、PSCA発現が前立腺癌の骨転移において増幅されることを示す。
(材料および方法)
ウマ血清(NHS)(GIBCO #26050−070)を1%カゼイン、PBST中に希釈した(1/20希釈)。PSCAを認識する本発明の抗体を、1/100NHS、PBST中に希釈した。
検出システムは、HRP−ウサギ抗マウスIg(DAKO P260)、HRP−ブタ抗ウサギIg(DAKO P217)、HRP−ウサギ抗ブタIg(DAKO P164)を含んだ。それぞれを、1/100NHS、PBST中1/100に希釈した。
3,3’−ジアミノベンジジンテトラヒドロクロリド(DAB)(Fluka)ストックを、135mlの0.05Mトリス(pH7.4)中に5gm溶解することにより作製した。DABを、1ml/バイアル中に等分し、そして−20℃で凍結した。DABの検量用溶液を、1mlのDABを40mlのDAB緩衝液および40マイクロリットルの50%H22に加えることにより作製した。
DAB緩衝液を、1.36gmのイミダゾール(Sigma #I−0125)と100mlのD2−H2Oを混合し、次いで5N HClでpHを7.5に調整することにより調製した。pH調整後、20mlの0.5M Tris pH7.4および80mlのD2−H2Oを加えた。
抗体に対して陽性であることが既知であり、そしてそのことが先に示された組織/腫瘍の切片を、患者のスライドと共に実行した。このスライドは、その抗体に対する「陽性のコントロール」として役立つ。患者の試験検体の切片を、一次抗体の代わりに陰性のコントロール抗体とインキュベートした。このスライドは、試験のための「陰性のコントロール」として役立つ。
染色手順は以下のとおりである。骨サンプルをスライドに適用した。次いで、このスライドを、60℃で一晩ベーキングした。スライドを、5分間ずつ4交換のキシレン中で脱パラフィン化し、そして段階的な一連のエチルアルコール(100%×4、95%×2)から水道水までを通過させ、次いでNBFに移し、そして30分間固定した。固定されたスライドを、流水道水中に15分間置き、3%H22−MeOHに移し、10分間インキュベートし、そして流水道水で5分間洗浄し、次いで脱イオン水でリンスした。
次いで、スライドを0.01Mクエン酸塩緩衝液pH6.0に供し、45℃で25分間加熱し、15分間冷却し、次いでPBSで洗浄した。次いで、このスライドをPBSでリンスし、そして以下の4工程のプログラムを用いるプログラムされたDAKO自動染色機に配置した。この4工程のプログラムは以下の通りである。スライドをPBSでリンスし、そしてPBST中1%カゼイン中の1/20 NHSを用いて10分間ブロックする。次いで、一次抗体を適用し、そして30分間インキュベートし、続いて緩衝液でリンスする。次いで、HRP−ウサギ抗マウスIgを適用し、そして15分間インキュベートし、続いて別の緩衝液でリンスする。HRP−ブタ抗ウサギIgを適用し、そして15分間インキュベートし、続いて緩衝液でリンスする。HRP−ウサギ抗ブタIgを適用し、そして15分間インキュベートし、続いて緩衝液でリンスする。
次いで、DABをこのスライドに適用し、そして5分間インキュベートし、続いて緩衝液でリンスする。第二のDABを適用し、そして5分間インキュベートし、続いて緩衝液でリンスする。
このスライドを、自動染色機(Autostainer)から取り出して、そしてスライドホルダー中に置き、水道水でリンスし、そしてHarrisヘマトキシリンで対比染色する(15秒)。次いで、このスライドを水道水で洗浄し、酸アルコールに浸漬し、水道水で洗浄し、炭酸水素ナトリウム溶液に浸漬し、そして水道水で洗浄する。次いで、このスライドを、段階的なエチルアルコール(95%×2、100%×3)およびPropar×3で脱水し、そしてPermountでカバーガラスをする。
(PSCAタンパク質は、前立腺癌の骨への転移において強力に発現される)
前立腺癌は、優先的に骨に転移し、そして骨芽細胞の応答を誘導するその傾向において、ヒトの腫瘍の中でも独特である。前立腺癌の骨転移の9個の切片が、免疫組織化学的に検査された(図28)。全てが、mAb 1G8(および/または3E6)と強烈にそして均一に反応した。2つの例において、微小転移はヘマトキシリンで容易に検出可能ではなく、そしてmAb 1G8を用いる染色後に、エオシン切片が見られ得る(図28;患者5)。全体的に、骨転移における染色は、原発性腫瘍における染色よりも強力で、そしてより均一であった。3つの場合において、原発性腫瘍由来の生検試料は、比較のために利用可能である。対応する骨転移と比較した場合、全てはPSCAに対して弱く陽性であり、このことは、PSCA発現が骨で増加することを示唆した。1つの生検試料においては、悪性の腺の小さな病巣のみにおいて弱い染色が現れ、一方で残りの腫瘍は陰性であった(図21および28;患者4)。2つの場合においては、生検試料は骨転移の10年前および15年前に得られ、原発性病変の発生と転移病変の発生との間の長い潜伏期間を示した。骨における強力な染色が骨切片を調製するために用いられる脱灰プロセスにより引き起こされたという可能性を除外するため、3つの原発性生検試料をまた脱灰緩衝液で処理する。この処理はバックグラウンド染色を増加させたが、それは上皮の反応性を顕著には変化させず、このことは、骨における強力なシグナルは脱灰プロセスにより引き起こされたのではなさそうだということを示す。これらの結果は、PSCAが骨への前立腺癌の転移において選択され得るかまたは上方制御され得ることを示唆する。
図21〜23は、前立腺癌の骨転移の骨サンプルがPSCAに対して陽性であったことを示す。前立腺癌の骨転移の9つの切片が検査された。一貫して、強烈な染色が9つの前立腺癌の骨転移において見られ、そして全てがmAb 1G8(および/または3E6)と強烈にそして均一に反応した。2つの例において、病理学者は、1G8を用いる染色が病変を強調するまで転移を容易に同定し得ない。全体的に、骨転移における染色は、原発性腫瘍における染色よりも強力にそしてより均一に現れた。
これらの結果は、PSCAが骨への前立腺癌の転移において非常に過剰発現され得ることを示唆する。Sca−2(PSCAの近いホモログ)が骨髄において破骨細胞活性を抑制することが最近報告されたので、これは特に興味深い。PSCAが同様の活性を有する場合、破骨細胞活性の阻害は骨形成における骨の活性のバランスを傾けるので、PSCAの活性は、前立腺癌転移が破骨細胞応答を生じる傾向についての、1つの説明を提供し得る。別の可能性は、他のLy−6/Thy−1ファミリーのメンバーが同様のプロセスにおいて関与するので、PSCAが骨への接着に関与し得ることである。多数の原発性前立腺癌におけるPSCAの異種の発現が存在した。これらの結果は、進行した疾患のための新規の標的としてのPSCAの用途をさらに支持する。
本研究の最も興味深い結果の1つは、一貫して、強烈な染色が9つの前立腺癌の骨転移において見られたことである。LAPC−9(骨の転移より定着された異種移植片)はまた、PSCAについて強烈に染色される。3人の患者において、対応する原発性生検試料は骨の転移と比較して低レベルのPSCA発現を示した。検査された3人の患者の原発性腫瘍における強力なPSCA発現の領域は、生検のみが分析のために利用可能であるので、避けられ得た。PSCAの異質な発現は、少なくとも1つの対応する原発性腫瘍、および対応する転移病変が利用可能ではなかったいくつかの原発性腫瘍において検出された。また、2つの場合において、原発性腫瘍は、骨転移の少なくとも10年前にサンプリングされ、それは、原発性腫瘍内に高レベルのPSCAを発現するクローンが、初期の生検に続いて発生し得る可能性を生じた。これらの結果は、明らかに骨転移におけるPSCA発現を示し、さらに、進行した疾患についての新規な標的としてそれを支持する。
(実施例7:膀胱癌および膵臓癌におけるPSCA過剰発現)
本実験は、PSCA発現が、膀胱癌において通常の膀胱よりも高いことを示す。
前立腺、膀胱、腎臓、精巣、および小腸由来の組織(前立腺癌ならびに膀胱癌および腎臓癌を含む)を患者から得た。次いで、これらの組織を、以下の通りにノーザンブロット分析およびウエスタンブロット分析を用いて、PSCAへの結合について検査した。
ノーザンブロット分析については、組織サンプルを切除し、そして0.5×0.5cmより小さい組織サンプルを、液体窒素で急速冷凍した。これらのサンプルを、Biotecxにより提供されたプロトコルを用いるpolytronホモジナイザー(UltraspecTM RNA単離システム、Biotecx Bulletin No:27,1992)を用いて、7mlのUltraspec(Biotecx、Houston、Texas)中でホモジナイズした。
定量した後、各サンプル由来の20μgの精製RNAを、1%アガロースホルムアルデヒドゲル上にロードした。運転条件およびブロッティング条件は、実施例1において用いられた条件と同じであった。フィルターを、標識化PSCAおよび内部標準(アクチン)で、別々にプローブした。フィルターを洗浄し、そして数時間〜終夜で曝した。
ウエスタンブロット分析については、組織サンプルを切除し、そして0.5×0.5cmより小さい組織サンプルを取り出して、そして素早くミンスし、そして同容積の熱い2X Sample Buffer(5%SDS、20%グリセロール)中でボルテックスした。サンプルを100℃で5分間インキュベートし、30分間ボルテックスし、そして透明にした。タンパク質濃度を、Biorad’s DC Protein Assayキット(Richmond,CA)により決定した。40μg/サンプルを、12%ポリアクリルアミドタンパク質ゲル上でロードした。ニトロセルロースフィルターへの転写を標準的な方法(Towbinら、PNAS 76:4350(1979)により行った。ウエスタンブロットを、フィルターをIG8一次抗体、続いてIG8二次抗体(すなわち、ヤギαマウスIgG HRP)とともにインキュベートすることにより行った。検出は、Amersham ECL Detectionキット(Arlington Heights,IL)によった。
1G8は、ウエスタンブロット分析において、LAPC9および膀胱癌(指定された膀胱(Rob))の細胞表面上のPSCAを認識し、結合した(図6)。図6において、LAPC9を除く全ての組織は正常であった。ノーザンブロット分析によって、膀胱癌組織(指定された膀胱(Rob)(Rob’s Kid CAともいう)およびLAPC9)における増強したPSCAを確認した(図25)。
ノーザンブロット分析を実施して、以下の膵臓癌細胞株から単離した転写物を試験した:PANC−1(類上皮、ATCC番号CRL−1469)、BxPC−3(腺癌、ATCC番号CRL−1687)、HPAC(類上皮腺癌、ATCC番号CRL−2119)、およびCapan−1(腺癌、肝臓転移、ATCC番号HTB−79)。ノーザンブロットをPSCAの全長cDNAクローンを用いてプローブして、2つの膵臓癌細胞株(HPACおよびCapan−1)におけるPSCA転写物を検出した(図63)。
PSCA mAb 1G8を用いたウエスタンブロット分析は、HPAC細胞株において、高レベルのPSCAタンパク質を検出し、そしてCapan−1およびASPC−1(腺癌、腹水、ATCC番号CRL−1682)においては、より低レベルを検出した(図64)。
(実施例8)
(前立腺癌におけるPSCA遺伝子増幅)
本実験は、PSCA遺伝子コピー数がc−mycのコピー数の増加と同様に増加することを示す(図17)。c−myc増幅は不幸な結果と相関するので、これは重要である。従って、このデータは、PSCA増幅はまた、不幸な結果に対する前兆となり得ることを示唆する。
(染色体列挙プローブおよびc−Mycに対するプローブを用いるFISH)
FISHの方法は周知である(Qian,J.ら、「Chromosomal Anomalies in Prostatic Intraepithelial Neoplasia and Carcinoma Detected by Fluorescence in vivo Hybridization」、Cancer Research,1995,55:5408−5414)。手短には、組織切片(サンプル34および75は2人の患者由来であった)を脱パラフィン化し、脱水し、2X SSC中75℃で15分間インキュベートし、37℃で15分間ペプシン溶液中(0.9%NaCl(pH1.5)中4mg/ml)で消化し、室温で5分間2X SSCでリンスし、そして空気乾燥した。
PSCAに対しておよび8q24(c−myc)領域に対して直接的に標識された蛍光DNAプローブを選択した。PSCA cDNA(図1)を、製造者のプロトコル(Genome Systems Inc.)に従ったFISH分析において次に用いられる、130kbの細菌性人工染色体(bac)クローン(PSCAプローブ)を同定するために用いた。このように同定され、FISH分析において用いられたbacクローンは、BACH−265B12(Genome Systems,Inc.コントロール番号17424)であった。
SG標識PSCAプローブと共に、8q24(c−myc)に対するSO標識プローブを用い、連続的な5μm切片上でデュアルプローブハイブリダイゼーションを行った。プローブおよび標的DNAを、80℃のオーブンで5分間、同時に変性させ、そしてそれぞれのスライドを37℃で一晩インキュベートした。
1.5M尿素/0.1X SSC中、45℃で30分間、および2X SSC中、室温で2分間、ハイブリダイゼーション後の洗浄を行った。核を、4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドールおよびanilfade化合物p−フェニレンジアミンで対比染色した。
FISHシグナルの数を、トリプルパスフィルター(I02−104−1010;VYSIS)を装備したZeiss Axioplan顕微鏡を用いて数えた。c−mycシグナルおよびPSCAシグナルの数を、各々の核について数え、そしてc−myc:PSCA比の全体的な平均値を計算した。結果を図17に示す。
この結果は、PSCA遺伝子コピー数が、前立腺癌サンプルにおいて増加したことを示す(図7)。PSCA遺伝子は、8q24.2に位置する。遺伝子コピー数の増加は、第8染色体の増加、およびPSCA遺伝子の増幅の両方による(図17)。興味深いことには、PSCA遺伝子コピー数の増加は、これもまた8q24に位置するc−mycの遺伝子コピー数の増加と類似する(図17)。先の研究は、第8染色体の増加およびc−mycの増幅は、前立腺癌の進行の潜在的なマーカーであることを示した(R B Jenkinsら 1997 Cancer Research 57:524−531)。
(実施例9)
(ルシフェラーゼ発現を駆動するためのhPSCA 9kb上流領域を使用したレポーター遺伝子構築物)
実施例4に記載されるように、ヒトPSCA遺伝子をコードする14kb NotIゲノムフラグメントを、全長ヒトPSCA cDNAプローブでライブラリーをスクリーニングすることにより、ヒトゲノムDNA(Stratagene)をコードするλF[XI]ライブラリーから単離した(Sambrookら、1989、Molecular Cloning(Cold Spring Harbor)。14kb ヒトPSCAゲノムフラグメントはレポーター遺伝子の発現を駆動するために使用された9kbのPSCA上流配列を含む。
レポーター遺伝子ベクターは図42に示され、そして以下のように構築した。14kb NotIフラグメントをλベクターからBluescript KSベクター(Stratagene)ヘサブクローニングし、pBSKS−PSCA(14kb)構築物を生じた。PSCA上流配列を、Bluescriptベクターの中に含まれるT7配列に対応するプライマーおよびPSCAエクソン1の中に含まれる配列に対応するプライマー(プライマーH3hPSCA3’−5、このプライマーの配列は以下の通りである:H3hPSCA3’−5の配列は5’−gggaagcttgcacagccttcagggtc−3’である)を使用して、PCR増幅によりpBSKS−PSCA(14kb)からサブクローニングした。PSCAエクソン1に対応するプライマーは、PCR増幅後のさらなるサブクローニングを可能にするために導入されたHindIII配列を含んだ。生じた増幅されたフラグメントを、HindIIIで消化し、そして、pGL3−基本ベクター(Promega)の中にサブクローニングし、ルシフェラーゼ遺伝子と作動可能に連結された種々の長さのPSCA上流配列を含む一連の欠失レポーター遺伝子構築物を生成するのに使用されたpGL3−PSCA(7kb)を生成した(図42)。PSCA上流領域の欠失された部分をpGL3−PSCA(7kb)から制限フラグメントをサブクローニングすることにより得た。−9kbと−7kbの間のPSCA上流領域をpBSKS−PSCA(14kb)構築物からサブクローニングし、NotI部位をKlenowによって平滑末端へ変換し、そして、そのフラグメントをpGL3−PSCA(9kb)構築物を得るためにpGL−PSCA(7kb)のSacI/HindIII部位にクローニングした。PSCAコード領域の上流配列に対する表示は(例えば−9kbおよび−6kb(など))ATG翻訳開始コドンと関連する。レポーター遺伝子構築物pGL3−PSCA(9kb)、pGL3−PSCA(6kb)、pGL3−PSCA(3kb)およびpGL3−PSCA(1kb)をルシフェラーゼ遺伝子と作動可能に連結した(図42)。プラスミド、pGL3−CMVは、ルシフェラーゼ遺伝子に連結されたサイトメガロウイルスプロモーター(Boshart,M.ら、1985 Cell 41:521−530)を含み、そして陽性コントロールとして使用した。また、プラスミドpGL3はプロモーター配列を含まず、そしてこれをネガティブコントロールプラスミドとして使用した。
(実施例10)
(hPSCA上流領域を含むレポーター遺伝子構築物を使用したトランスフェクションアッセイ)
前立腺細胞株および非前立腺細胞株の3通りの皿を、Tfx50(Boeringer Manheim)により、PSCA構築物pGL3−PSCA(9kb)または陽性コントロール構築物であるpGL3−CMV(両方とも上記実施例9に記載される)を用いてトランスフェクトし、そしてルシフェラーゼ活性についてアッセイした(図43)。トランスフェクトされた細胞および細胞株には、PrEC(アンドロゲン非依存性前立腺基底細胞)、LNCaP(アンドロゲン依存性前立腺分泌細胞株)、LAPC4(アンドロゲン依存性前立腺細胞株)、HT1376(膀胱細胞株)および293T(腎臓細胞株)が挙げられる。その構築物の発現活性はCMVプロモーターの活性の割合として表される。標準誤差がバーの上に示される。
結果は、9kbのヒトPSCA上流配列が、図10に示された天然hPSCAに見られるmRNA発現パターンと類似する組織特異的様式においてルシフェラーゼ遺伝子の発現を駆動することを示す(実施例1)。ルシフェラーゼは、アンドロゲン依存性前立腺細胞株およびアンドロゲン非依存性前立腺細胞株ならびに膀胱の両方において容易に検出可能であった。ルシフェラーゼもまた、低レベルではあるが、腎臓細胞で検出可能であった。
(実施例11)
(PSCA上流領域内の調節エレメントの同定)
PrEC(Clonetech)またはLNCaP細胞の3通りの皿を、上記実施例9に記載されたレポーター遺伝子構築物または陽性コントロール構築物でトランスフェクトし、ルシフェラーゼ活性についてアッセイした。レポーター遺伝子構築物は、ルシフェラーゼ遺伝子に作動可能に連結された種々の長さのhPSCA上流領域を含む。陽性コントロール構築物であるpGL3−CMVは、ルシフェラーゼに作動可能に連結されたCMVプロモーターを含む。その細胞をTfx50トランスフェクション系(Promega)を使用して、トランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞におけるルシフェラーゼの発現をDual Luciferase Reporter Assay System(Promega)を使用して、アッセイし、ルシフェラーゼ発現のレベルを相対的単位(RLU)で測定した。
種々の長さのhPSCA上流領域がルシフェラーゼ発現を駆動する能力は、CMVプロモーターを含む陽性コントロール構築物の活性の割合として表される。標準誤差を示す。
図44に示される結果は、PrEc細胞およびLNCaP細胞の両方において3kbのhPSCA上流配列はルシフェラーゼの発現を駆動することを実証するが、PrEC細胞と比較して、LNCaP細胞における検出可能なルシフェラーゼのレベルは6倍高い。この比較は検出可能なルシフェラーゼのレベルに基づいた。対照的に、1kbのhPCSA上流配列は、いずれの細胞株のルシフェラーゼの発現をも駆動しなかった。
(実施例12)
(標的ベクター)
標的ベクターを相同組換えによって、内因性PSCAコード領域を欠失するように設計した。図40は、マウスPSCA遺伝子の標的ベクター、およびマウス細胞に含まれる内因性PSCA遺伝子を欠失させるためにこの標的ベクターを使用するためのストラテジーを示す。標的ベクターは、マウスPSCA上流配列を含む12kb SpeIフラグメント、pGT−N29ベクター(New England Bio Labs)由来のneor遺伝子に作動可能に連結されたPGKプロモーターを含むNotI/EcoRIフラグメント、およびマウスPSCA下流配列を含む3.5kbBstXI/XhoIフラグメントを含む。ネオマイシン耐性遺伝子の構成的発現はPGKプロモータにより制御され、標的ベクターを含む標的細胞の抗生物質選択を可能にする。
当業者に理解されているように、本明細書に記載される標的ベクターとしては、標的ベクターを含むか、または選択レポーター遺伝子を含み得ない細胞の選択のためのneor遺伝子が挙げられるがこれに限定されない。標的ベクターはまた、トランスジェニックマウス(当該分野で公知の、それぞれ標的ベクターがレポーター遺伝子を含むか否かに依存する、ノックインマウスまたはノックアウトマウス)の生成に使用され得る。トランスジェニックマウスは、マウスの前立腺発達におけるPSCA遺伝子の機能を研究するための動物モデルとして使用され得る。
限定することを意図しない1つの例として、標的ベクターを使用して、欠失されたPSCA遺伝子を含む、ヘテロ接合性の細胞を生成するために、胚性幹細胞(ES)細胞中の野生型内因性ゲノムマウスPSCAコード配列を欠失させた。例えば、標的ベクターを使用して生成したヘテロ接合性細胞は、図40に結果として示されるようなPSCA+/neorである。ヘテロ接合性細胞またはトランスジェニックマウスの表現型は野生型PSCA細胞または動物と比較され得る。
標的ベクターは以下のように構築される。PSCA上流およびエキソン1配列の一部を含む12kb SpeIフラグメントの末端を、平滑末端化し、そしてネオマイシン耐性遺伝子を含むpGT−N29(Bio Labs)由来の平滑末端化されたNotI/EcoRIフラグメントに連結した。ネオマイシン耐性遺伝子の3’末端を、PSCA エキソン3の一部および下流配列を含む平滑末端化された3.5kbBstXI/XhoIフラグメントに連結した。生じたフラグメントを、標的ベクターpGT−N29−mPSCA5’/3’を生成するためにpGT−N29へクローニングした。
標的ベクターを、以下に記載される方法を使用して、エレクトロポレーションによりES細胞へトランスフェクトした:Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells;A Practical Approach.IRL Press、Oxford(1987)。ネオマイシン耐性細胞を、選択し、そしてゲノムDNAを選択された細胞から単離した。ゲノムサザン分析を実施して、相同組換え反応の結果を決定した。相同組換え反応および非標的ES細胞由来の10μgのDNAをEcoRIで消化し、そしてサザンブロット法によって分析した(Southern、EM 1975 J.Molec.Biol.98:503)。ブロットをPSCAコード領域に対する配列3’を含むXhoI/EcoRIフラグメントを用いてプローブした。その結果は、このプローブが、PSCA+/PSCA+であるコントロール非標的細胞に対応する10kbフラグメントおよびヘテロ接合性であり、そしてPSCA+/neorを含む標的細胞に対応する4kbフラグメントを検出することを示す。
(実施例13)
(前立腺癌についてのトランスジェニックマウスモデル)
本発明は、前立腺基底細胞における腫瘍形成を誘導するために、オンコジーンの発現を駆動するようにPSCA遺伝子の上流領域を使用して、前立腺癌についてのトランスジェニックマウスモデルを作製するためのストラテジーを意図する。図41に示されるように、このストラテジーは、投与(例えば、腫瘍形成を誘導する遺伝子産物をコードする導入遺伝子に作動可能に連結されたPSCA遺伝子の上流領域を含む、キメラオンコジーンベクターのマイクロインジェクション)を含む。他の研究者らは、オンコジーンに作動可能に連結された異なる前立腺調節配列および非前立腺調節配列を使用する、この技術を使用してきた。例えば、C3(1)は、前立腺優勢調節配列であり(Moroulakouら、1994、Proc.Nat.Acad.Sci.91:11236〜11240)、そしてプロバシン(probasin)は、前立腺特異的調節配列であり(Greenbergら、1995、Proc.Nat.Acad.Sci.92:3439〜3443)、そしてこれらの両方の調節配列は、前立腺分泌細胞において、導入遺伝子の発現を駆動する。クリプトジン(cryptdin)2は、前立腺内分泌細胞におけるオンコジーンの発現を引き起こした小腸優勢調節配列である(Garagenianら、Proc.Nat.Acad.Sci.95:15382〜15387)。対照的に、本発明は、前立腺癌についてのトランスジェニックマウスモデルを作製するために、前立腺基底細胞におけるオンコジーンの発現を駆動するPSCA上流領域を使用することを意図する。
誘導された前立腺腫瘍の臨床的特徴は、キメラオンコジーンベクターを構築する際に使用される特定のオンコジーンにより生じる腫瘍の既知の特徴を用いて分析および比較され得る。さらに、トランスジェニックマウスの種々の組織および器官は、そのキメラオンコジーンベクターの存在および発現パターンを確認するために、DNA分析、RNA分析およびタンパク質分析により分析され得る。
(実施例14)
(hPSCA上流配列および導入遺伝子を含むキメラベクターを保有するトランスジェニックマウス)
hPSCA上流領域の制御下における導入遺伝子の発現パターンを試験する。この目的のために、hPSCA上流配列および導入遺伝子を含むキメラベクターを保有するキメラマウスを作製した。導入遺伝子と作動可能に連結された9kbまたは6kbのhPSCA上流配列を含むキメラベクターを構築し、そしてそれは、図45において図式的に表されている。その導入遺伝子としては、SV40ポリアデニル化配列と連結された緑色蛍光タンパク質(GFP、Clontech)cDNA(PSCA(9kb)−GFPおよびPSCA(6kb)−GFP)、mRNAに安定性を与えるイントロンカセットを含むヒト成長ホルモンの3’領域と連結された緑色蛍光タンパク質cDNA(PSCA(9kb)−GFP−3’hGHおよびPSCA(6kb)−GFP−3’hGH)(Brinsterら、1988 PNAS 85:836〜840)ならびにイントロンを含む、SV40小T抗原およびSV40大T抗原をコードするゲノムフラグメント(PSCA(9kb)−SV40TAGおよびPSCA(6kb)−SV40TAG)(Brinsterら、1984 Cell 37:367〜379)が挙げられる。
キメラベクターを使用して、始祖トランスジェニックマウスの系統を作製した。線状キメラベクターを、C57BL/6X C3Hハイブリッドマウスの異種交配に由来するマウス受精卵内に微量注入した。キメラベクターを保有する始祖マウスを、プローブとしてGFPcDNAまたはSV40ゲノムDNAを使用して、テールDNAのサザン分析によって同定した。各々のトランスジェニックマウス系統の始祖数は、図45の右パネルに示される。
(実施例15)
(hPSCA上流配列は、トランスジェニックマウスの導入遺伝子の発現を駆動する)
PSCA(9kb)−GFP導入遺伝子を保有する、2匹の独立始祖マウスをBalb/cマウスと交配させて、その子孫を得た。8週齢および12週齢において、雄性および雌性のトランスジェニック同腹子または非トランスジェニック同腹子を屠殺した。屠殺後、全ての泌尿生殖組織および他の組織を、蛍光性照明下において、固定された組織を観察することによって、GFP発現について試験した。図46に示される結果は、非トランスジェニックマウスおよびトランスジェニックマウスに由来する前立腺組織、膀胱組織および皮膚組織の緑色蛍光画像を示す。2つの始祖系統のうち1つの系統が、前立腺、膀胱および皮膚においてGFPタンパク質を発現した(図46)。GFPを発現しなかった組織としては、精嚢、肝臓、胃、腎臓、肺、脳、精巣、膵臓、心臓、骨格筋、小腸、結腸、胎盤が挙げられる。
(実施例16)
(ヒト組織およびマウス組織におけるPSCAの転写発現パターン)
図47の上部パネルは、全長ヒトPSCA cDNAプローブを用いて検出された、複数のヒト組織のノーザンブロットを示す(Clonetechより入手)。この結果は、ヒトPSCA転写物は、前立腺に豊富に存在し、そして胎盤には容易に検出可能であるがあまり豊富に存在せず、脾臓、胸腺、精巣、卵巣、小腸、結腸、末梢血白血球(PBL)、心臓、脳、肺、肝臓、筋肉、腎臓および膵臓においては検出不可であるということを実証している。
図47の下部パネルは、種々のマウス組織におけるマウスPSCA転写発現パターンのRT−PCR分析のエチジウムブロマイド染色したアガロースゲルを示す。そのRT−PCRを、Ultraspec.RNA(Biotex)およびcDNAサイクルキット(Invitrogen)を使用して調製した。PSCAのエキソン1およびエキソン3内の領域に対応するプライマーを使用して、320bpフラグメントを増幅した。エキソン1プライマー配列は以下の通りである:5’プライマー:5’−TTCTCCTGCTGGCCACCTAC−3’。エキソン3プライマー配列は以下の通りである:3’プライマー:5’−GCAGCTCATCCCTTCACAAT−3’。コントロールとして、種々のマウス組織から単離されたRNAサンプルの完全性を実証するために、300bpのG3PDフラグメントを増幅した。
図47の下部パネルに示される結果は、マウスPSCA転写物は、背側/外側前立腺、腹側前立腺、膀胱、胃(噴門、本体および幽門)ならびに皮膚において検出可能であるということを実証している。対照的に、マウスPSCA転写物は、前方前立腺、腹側前立腺、精嚢、尿道、精巣、腎臓、十二指腸、小腸、結腸、唾液腺、脾臓、胸腺、骨髄、骨格筋、心臓、脳、眼、肺および肝臓において検出されない。このG3PDHの結果は、種々のマウス組織から単離された転写物がインタクトであったということを実証している。
(実施例17)
(膀胱癌におけるPSCAの高レベルの過剰発現の免疫組織化学的証拠)
以下の実施例は、PSCA mAb 1G8を使用して、パラフィン包埋した膀胱組織切片および膀胱癌組織切片の免疫組織化学染色によって決定される場合、PSCAタンパク質は、種々の段階の膀胱癌において高度に過剰発現されているということを実証している。詳細には、以下の4組織を試験した:(A)正常膀胱、(B)非浸潤性表面乳頭(non−invasive superficial papillar)、(C)上皮内癌(高段階の前癌性病変)、(D)浸潤性膀胱癌。
その結果は、図62に示される。PSCAは、正常膀胱組織の移行上皮において低レベルで発現される。非常に高いレベルの発現が、全ての細胞層において、上皮内癌サンプルにおいて検出された。浸潤性膀胱癌サンプルにおいて、非常に強い染色が、再び全ての細胞において観察された。低レベルの染色が、表面乳頭サンプルにおいて観察された。これらの結果は、PSCA発現レベルは、段階が進むことと相関し得ることを示唆する。
上記の研究に加えて、多数の膀胱組織標本および膀胱癌組織標本におけるPSCA発現の免疫組織化学的分析に由来する予備結果は、以下を示す:(1)正常膀胱は、移行上皮において低レベルのPSCAを発現する;類似の発現レベルが低い段階の乳頭状非浸潤性病変において観察される;(2)上皮内癌(高い段階の、しばしばかなり急速進行性の前癌性病変)は、全ての細胞において、PSCAに対してほとんどいつも(90%)極度に陽性である;(3)PSCAは、約30%の浸潤性癌によって、極度に発現される(すなわち、正常膀胱と比較した場合、過剰発現されている);そして(4)転移は、PSCAについて極度に陽性である。
(実施例18)
(PSCAモノクローナル抗体は、インビボにおいて前立腺腫瘍の阻害を媒介した)
以下の実施例は、非結合体化PSCAモノクローナル抗体が、単独または組み合わせて投与された場合の両方で、SCIDマウスにおいて増殖するヒト前立腺腫瘍異種移植片の増殖を阻害するということを実証している。
(A.複数の非結合体化PSCA mAbを使用する腫瘍阻害−研究1)
(材料および方法)
(抗PSCAモノクローナル抗体)
マウスモノクローナル抗体を、標準的なモノクローナル抗体産生方法を利用して、PSCAアミノ酸配列のPSCAアミノ酸残基18〜98(図1B)を含み、そしてE.coliにおいて発現させたGST−PSCA融合タンパク質に対して惹起した。以下の7つの抗PSCAモノクローナル抗体(1998年12月11日にAmerican Type Culture Collectionに寄託された対応するハイブリドーマ細胞株によって産生される)をこの研究に使用した:
抗体 アイソタイプ ATCC No.
1G8 IgG1 HB−12612
2H9 IgG1 HB−12614
2A2 IgG2a HB−12613
3C5 IgG2a HB−12616
3G3 IgG2a HB−12615
4A10 IgG2a HB−12617
3E6 IgG3 HB−12618。
抗体は、PSCAを結合する能力について、ELISA、ウェスタンブロット、FACS、および免疫沈降により特徴づけされた。図49は、添付の図面説明に記載されるように、ELISAおよびウェスタン分析により決定される場合の上記の7つの抗PSCA mAbについてのエピトープマッピングデータを示す。これは、7つの抗体がPSCAタンパク質上の異なるエピトープを認識することを実証する。これらの抗体を用いる前立腺癌組織および細胞の免疫組織学的分析は、以下の実施例5および6に記載される。
(抗体処方物:)
上記のモノクローナル抗体は、プロテインGSepharoseクロマトグラフィーによりハイブリドーマ組織培養上清から精製され、PBSに対して透析され、そして−20℃で保存された。タンパク質決定をBradfordアッセイ(Bio−Rad,Hercules,CA)により行った。
以下の表2に示されるような、7つの個別のモノクローナル抗体の混合物を含む治療用抗体カクテルを調製し、そしてLAPC−9前立腺腫瘍異種移植片の皮下注射を受けているSCIDマウスの処置に用いた。マウスIgG(ICN(Costa Mesa,CA)から購入)を、非特異的コントロール抗体として用いた。マウスへの注射の前に、全ての抗体を0.22μのフィルターを用いて滅菌した。
(表2:抗PSCA抗体カクテル)
Figure 2010265323
(前立腺癌異種移植片のSCIDマウスへの導入)
ヒト前立腺癌異種移植片株LAPC−9(これは、非常に高レベルのPSCAを発現する)は、SCIDマウスにおける腫瘍を生成するために用いた(PCT出願番号WO98/16628、前出、Kleinら、1987、前出)。
IcR−SCIDマウス(Taconic Farms,Germantown,NY)への注射のために、LAPC−9の単一細胞懸濁液を、以下のように調製した。約2.0gの大きさのLAPC−9異種移植片腫瘍を、SCIDマウスから収集し、ハサミまたはピンセットを用いて微小片へと切り刻み、RPMI中で1回洗浄し、そしてプロナーゼの1%溶液中で20分間消化した。消化の後、細胞懸濁液を、RPMI中で2回洗浄し、そして10mlのPrEGM培地(Clonetics,Walkersville,MD)中に再懸濁した。一晩のインキュベーションの後、細胞を収集し、PrEGM中で1回洗浄し、次いで200μのナイロンフィルターを通過させて大きな凝集塊および細片を取り除いた。フィルターを通過した細胞を、収集し、遠心分離し、そしてPrEGM培地中に再懸濁した。次いで、細胞を計数し、そして適切な数の細胞を、新しいチューブに移し、遠心分離し、そして2X濃度でRPMIに再懸濁した。次いで、当量の氷冷マトリゲルを細胞懸濁液に添加し、そしてその懸濁液を注射まで氷上に保った。注射のために、雄性IcR−SCIDマウスは、その側腹を剃毛し、そして各マウスは、右側腹に100μlの容量中に1×106細胞の単回の皮下(s.c.)注射を受けた。腫瘍細胞を注射したマウスを、以下に記載されるように、コントロール抗体かまたは抗PSCAモノクローナル抗体調製物のいずれかを用いて処置した。
(処置プロトコル:)
腫瘍細胞を注射した20匹のSCIDマウスを、以下のように、コントロール抗体(マウスIgG)かまたは抗PSCAモノクローナル抗体カクテル(上記)のいずれかを用いて処置した。10匹のマウスを、マウスIgGコントロール抗体で処置し、そして10匹のマウスを抗PSCAモノクローナル抗体調製物で処置した。マウスIgGコントロール抗体または抗PSCAモノクローナル抗体カクテルの200μgの注射物を、腫瘍細胞の注射に対して、−1日、+3日、+7日、+11日、+14日、および+21日目に腹腔内投与した。LAPC−9腫瘍の増殖を、カリパス測定により追跡して、腫瘍細胞の注射に対して、+32日、+35日、+39日、+42日、+47日、+54日、および+61日目に腫瘍容積を決定した。さらに、マウスを、市販のPSA試験(American Qualex,San Clement,CA)を用いて循環PSAレベルをアッセイするために、周期的に採血した。
コントロール群(マウス#2)のマウスの1匹は、研究の期間の間に死に、そしてこの時点で検出可能な腫瘍は有していなかった。
(結果)
LAPC−9前立腺癌異種移植片の皮下注射を受けているSCIDマウスを、上記のように、抗PSCA mAb調製物またはマウスIgGコントロール抗体のいずれかで処置した。明白な腫瘍は、腫瘍細胞注射後4週間で、マウスIgGコントロール群において始めに現れた。腫瘍容積測定を、+32日目に開始した。
結果(以下の表3に作表され、そして図48に図示される)は、コントロールmAb処置マウスの全てが腫瘍を発症した(生存する9匹の内9匹、マウス#1、#3−10)ことを示すが、抗PSCA mAb処置マウスは、検出可能な腫瘍増殖を発症しなかった(10匹の内0匹、マウス#11−20)こと示す。コントロール処置動物は、殆どの例において有意な腫瘍を急速に発症し、そしてこれらのマウスは、時間と共に、次第により大きな腫瘍サイズになる、一定の腫瘍増殖を経験した。54日目までに、全てのコントロール処置マウスは、検出可能な腫瘍を発症した。コントロール処置群に対して際立って対照的には、抗PSCA mAb調製物で処置した10匹のマウスは、異種移植片注射の61日後でさえ、検出可能な腫瘍を発症しなかった。
(表3:記録した腫瘍容積(mm3)測定)
Figure 2010265323
*マウス#1−10は、マウスIgGコントロール抗体を用いて処置した群を示す。マウス#11−20は、抗PSCA mAbカクテルを用いて処置した群を示す。
*腫瘍容積は、長さ(L)×幅(W)×高さ(H)測定(mm)に対応する。図1に示される楕円体容積(これは、腫瘍質量を正確に示す(TomaykoおよびReynolds,1989))を決定するために、本発明者らは、式L×W×H×1/2を用いた。
臨床的に、コントロール処置マウスは、全て、腫瘍が発症および拡大した場合、次第に不健康な視覚的症状を示した。対照的に、抗PSCA mAb処置群のマウスは、処置期間を通じて、外見上は、活発(active)、強健(vigorous)、かつほぼ健康なままであった。このことは、明かな毒性または明白な副作用がこの処置に付随しないことを示唆する。
腫瘍容積に加えて、マウスを循環PSAの決定のために採血した。循環PSAレベルは、コントロール群における腫瘍容積の漸増と相関したが、検出可能なPSAは、実験を通じて抗PSCA mAb処置群において観察されなかった。
(B.複数の非結合体化PSCA mAbを用いる腫瘍阻害−研究2)
実施例18、前出、に記載の結果を検証するために、新規に調製した抗PSCA mAbカクテルを、本質的に上記のように、インビボでのLAPC−9腫瘍異種移植片の増殖阻害について評価した。簡単に言えば、各mAbの新規のバッチを調製し、そして表4に示した比率に従って共に混合した。全ての抗体を、PSCA反応性について試験した。SCIDマウスは、上記のようにLAPC−9異種移植片細胞の皮下注射を受けた。マウスを、抗PSCA mAbのカクテルまたはマウスIgGのコントロール調製物、または精製したウシIgGのいずれかで処置した。ウシIgGコントロール群をこの研究に入れて、プロテインG−Sepharoseにおける抗PSCA抗体を用いて共精製したウシIgGの効果を研究した。200マイクログラムの抗体を、腫瘍細胞の注射に対して−1日、+3日、+7日、+11日、+14日、および+21日目に腹腔内注射により各マウスに投与した。長さ(L)×(W)×(H)(mm)に対応する腫瘍容積を、カリパス測定によりモニターし、そして血清を週間隔で収集した。腫瘍の楕円体容積(これは、腫瘍質量を正確に示す)を決定するために、本発明者らは、式L×W×H×1/2(TomaykoおよびReynolds,1989)を用いた。
(表4:抗PSCA抗体カクテル2)
Figure 2010265323
*このカクテルを処方するために用いたモノクローナル抗体調製物の1つである、3G3は、弱い反応性を示した。
本研究の結果を、図53に示し、そしてこれは前出の実施例18−Aに記載した研究から生じた結果を確かめる。抗PSCA処置群の動物は、コントロール群の両方と比較して、腫瘍細胞増殖の有意な阻害を経験した。腫瘍増殖における検出可能な差異は、ウシIgGまたはマウスIgGのいずれを受けたマウスにおいても、観察されなかった。コントロール群における腫瘍は、等しい速度で増殖し、そして類似の潜伏期を有した。対照的に、抗PSCA抗体反応混液を受けたマウスにおけるLAPC−9腫瘍は、実験の最後に、より長い潜伏期で、有意に遅い増殖速度およびより小さなサイズを示した。最終時点での平均の腫瘍容量は、マウスIgGで処置したマウス(46日)で1,139mm3であり、ウシIgGで処置したマウス(42日)で1091mm3であり、そして抗PSCA処置マウス(46日)で391mm3であった。ウシIgG処置群における大きな腫瘍サイズに起因して、これらのマウスを、他の群のマウスよりも早く屠殺した。さらに、腫瘍容量は、処置マウスの血清中のPSAレベルに相関した。抗PSCA抗体を受けたいくらかのマウスは、前出の実施例1に記載した研究において以前に観察されたように、非常に小さな腫瘍を示すかまたは全く腫瘍増殖を示さず、実施例18−Aに記載した研究と一貫して、この抗体反応混液調製物のいずれの投与も、明らかな毒性を付随しなかった。
(C.単一の非結合体化PSCA mAbを用いるインビボ腫瘍阻害)
(材料および方法:)
本明細書中に記載のモノクローナル抗体のいくつかを、以前に記載した腫瘍チャレンジアッセイ(上記の実施例18−Aおよび18−Bを参照のこと)を使用して、その非結合体化(すなわち「裸の」)形態での、前立腺腫瘍異種移植片の増殖を阻害するその能力について研究した。一般にこの研究は、アッセイした抗体の各々について以下で示す結果の節に記載するようなわずかな改変を伴って、上記のように行った。
(C1:PSCA mAb 1G8)
抗PSCAモノクローナル抗体1G8は、IgG1アイソタイプ抗体である。1G8の抗腫瘍効果を、LAPC−9異種移植片およびコントロールとしてマウスIgGを使用して評価した。図54に示す結果は、1G8抗体でのマウスの処置が、腫瘍増殖を阻害したことを実証する。詳細には、コントロール群についての最終時点での平均腫瘍容量は、1G8抗体処置群の平均腫瘍容量が335mm3であることに対して854mm3であった。これらの結果は、1G8モノクローナル抗体が、単独で使用される場合に前立腺腫瘍の増殖を阻害し得ることを示す。前出に記載された研究を用いる場合、1G8 mAbで処置したこれらの動物の処置には、明らかな毒性を付随しなかった。
PC−3細胞を用いて作製された前立腺癌の増殖に対する1G8モノクローナル抗体の効果もまた、決定した。PC−3細胞は、PSCAを発現しない。図65に示されるように、1G8抗体は、PSCA発現LAPC−9異種移植片に対するその効果とは著しく対照的に、PC−3異種移植片腫瘍の発達に対して効果を有さなかった。これらの結果は、1G8抗体が、PSCA抗原を介して腫瘍の細胞増殖を阻害することを明瞭に示す。
(C2:PSCA mAb 2A2および2H9)
異なるアイソタイプの2つの抗PSCAモノクローナル抗体を、前立腺腫瘍増殖のインビボ阻害について同時に評価した。抗PSCA mAb 2A2(IgG2aアイソタイプ)および2H9(IgG1アイソタイプ)を、直前に記載した実施例18−C1に記載するような前立腺腫瘍の阻害について試験した。図55に示すこの結果は、コントロール群に対して、抗PSCA mAb処置群における腫瘍細胞増殖の著しい阻害を実証する。詳細には、最終時点での平均腫瘍容量は、マウスIgGで処置したマウス(42日)について483mm3であり、2A2 mAbで処置したマウス(42日)について49mm3であり、そして2H9 mAbで処置したマウス(42日)について72mm3であった。より顕著には、腫瘍発生率は、2A2処置群について2/7および2H9処置群について1/7であったのに対して、マウスIgGコントロール群において6/6マウスであった。2A2処置群において、最初の腫瘍は25日で現れ、そして第2の腫瘍は42日で現れた。2H9処置群において、1つの腫瘍の存在は21日で現れた。マウスIgGコントロール群において、マウスの4/6が21日で腫瘍を発達した。上記のインビボ研究を用いる場合、2A2または2H9 mAbでのこれらの動物の処置は、明らかな毒性を付随しなかった。
処置マウスの血清におけるPSAレベルは、コントロールマウスよりも有意に低く、そして腫瘍の容量に直接相関した(図56)。6週目で、マウスIgGコントロール群における平均PSA血清レベルは35ng/mlであり、2A2群では2ng/mlであり、そして2H9群では8ng/mlであった。
この研究は、単一の「裸の」抗PSCAモノクローナル抗体が、抗腫瘍活性に十分であるという結論をさらに支持する。さらに、これらのデータは、異なるPSCAエピトープを認識するmAbが有効であり、そして抗腫瘍効果は、単一のIgGアイソタイプに依存しない(なぜなら、IgG1(IG8、2H9)mAbおよびIgG2a(2A2)mAbの両方が、腫瘍増殖を阻害したからである)ことを実証する。
(C3:PSCA mAbは、特異的にPSCAを介して増殖阻害効果を及ぼす)
PSCA mAbが、特異的にPSCAタンパク質を介して腫瘍増殖阻害を及ぼすことを実証するために、1G8 mAbおよびPC−3腫瘍異種移植片を用いて腫瘍阻害研究を行った。PC−3細胞は、内因性PSCAを発現しない。この研究は、上記の実施例のC1節に記載されるように行った。図65に示されるこの結果は、PSCA mAb 1G8が、40日の期間にわたって、マウスのPC−3腫瘍の増殖に効果を有さないことを示す。比較のために、LAPC−9前立腺腫瘍異種移植片(実施例C1,上記)に対する1G8の効果の並行研究と一緒に、この結果を示す。
(C4:PSCA mAb 3C5は、確立したLAPC−9前立腺腫瘍の増殖をインビボで阻害する)
PSCA mAbが、確立した腫瘍の増殖に影響し得るか否かを決定するために、以下の研究を行った。手短に言うと、本質的に実施例C1およびC2に記載されるように、SCIDマウスの同齢集団に106のLAPC−9細胞SQを注射した。腫瘍が約100立方ミリメートルのサイズに達した後、マウスを2つの群(マウスIgGを受けたコントロール群およびPSCA mAb 3C5を受けた処置群)に分けた。各マウスに、以下のプロトコルに従ってコントロールIgGまたは3C5 mAbを用いてIP注射した:注射1回当たり1mg、最初の2週間は1週当たり3回、続いて3週目は1週当たり2回。腫瘍の容量およびPSA測定を、上記のようにして決定した。図57に示すこの結果は、3C5 mAbが、確立したLAPC−9前立腺腫瘍の増殖をインビボ阻害することを示す。処置群のマウス少なくとも数匹において、腫瘍の最初の前処理したサイズの50%までの腫瘍の後退を観察した。
(実施例19:)
(PSCAモノクローナル抗体を特徴付けるためのインビトロアッセイ)
(19−A:抗体依存性細胞傷害性アッセイ)
抗PSCA mAbが、腫瘍細胞をADCCに対して感作するか否かを決定するために、以下のアッセイを実施した。第1に、NK細胞媒介ADCCについて、SCIDマウス由来の脾臓細胞を、Hooijbergら、1995,Cancer Res.55:2627−2634に記載されるように、インビトロで5日間培養する。次いで、活性化細胞を、抗PSCA mAbまたはコントロールマウスIgGのいずれかの存在下で、51Cr標識LAPC−9、LNCaP−PSCA、またはLNCaP標的細胞と共に4時間共存培養した。LNCaPは、全てのアッセイにおいてネガティブコントロールとして役立つ。なぜなら、これはPSCAを発現しないからである。単一のmAbを使用する場合、それぞれのマウスIgGアイソタイプコントロールをまた、使用する。活性化脾臓細胞のNK活性を、マウスNK感受性標的YAC−1とのインキュベーションによって決定する。全ての場合において、死滅は、培地への51Crの放出によって決定する。自発的放出を、標識細胞のみのインキュベーションの後に決定し、そして全放出を、5% Triton X−100との標識細胞のインキュベーションによって決定する。特定の細胞の溶解のパーセントを、以下によって決定する:
%細胞溶解 = 実験の 51 Cr放出−自発的 51 Cr放出
51Cr放出−自発的51Cr放出
(19−B:抗体依存性マクロファージ媒介細胞傷害性アッセイ)
抗PSCA mAbが、腫瘍細胞をADMMCに対して感作するか否かを決定するために、以下のアッセイを実施する。腹膜マクロファージを、Larsonら、1988,Int.J.Cancer 42:877−882に記載されるように、Brewerのチオグリコレート培地でのSCIDマウスの腹腔内注射によって活性化する。4日後、細胞を腹腔内洗浄によって収集し、そして活性化マクロファージのパーセントを、Mac−1染色によって決定する。アッセイのために、活性化マクロファージを、抗PSCA mAbまたはコントロールマウスIgGのいずれかの存在下で、3H−チミジン標識LAPC−9、LNCaP−PSCA、およびLNCaP標的細胞と共に48時間共存培養する。アッセイの最後に、上清をウェルから収集し、そして上記の51Cr放出について記載したように、放出された3H−チミジンの量によって死滅を決定する。
(19−C:補体媒介腫瘍細胞溶解アッセイ)
補体依存性溶解による腫瘍標的の破壊を、Huangら、1995,Cancer Res.55:610−616に記載される方法に従って実施し得る。例えば、LAPC−9、LNCaP−PSCA、およびLNCaP細胞を、51Crで標識し、次いで、抗PSCA mAbまたはマウスIgGコントロールのいずれかと共に氷上で30分間インキュベートする。洗浄して未結合の抗体を除去した後、この細胞を、ウサギ補体と共に37℃で2時間インキュベートし、そして細胞溶解を、上清への51Cr放出によって測定する。細胞溶解のパーセントを、上記のように決定する。
(19−D:細胞増殖アッセイ)
細胞増殖に対する抗PSCA mAbの効果を、MTTアッセイによって決定し得る。手短に言うと、LNCaP−PSCAまたはLNCaP細胞を、抗PSCA mAbまたはコントロールとしてのマウスIgGのいずれかの種々の量と共に、72時間培養する。インキュベーション期間の最後に、この細胞を洗浄し、そしてMTTの溶液中で4時間インキュベートする。増殖は、MTT溶液の、紫色へのデヒドロゲナーゼ媒介転換によって示され、そして570nmの波長で測定される。
(19−E:ソフトアガーにおけるコロニー形成についてのアッセイ)
抗PSCA mAbの存在下でのコロニー形成を、ソフトアガー中の細胞の増殖によって測定し得る。要するに、1×104のLNCaP−PSCA細胞またはLNCaP細胞を、Nobelアガーを含む培地にプレートする。次いで、抗PSCA mAbの一連の希釈物をプレートに2連で添加し、コロニー増殖に対する効果を決定する。マウスIgGを、コントロールとして使用する。巨視的コロニーを、培養物中で14〜21日後に計数する。
(実施例20:)
(PSCA捕捉ELISA)
PSCA捕捉ELISAを、抗PSCA mAbでの処理前の血清中のPSCAレベルを測定するために開発し、そしてこれは、治療投薬レジメンの決定において有用な情報を提供する。このアッセイはまた、治療に応答して患者をモニタリングする際に有用であり得る。
このアッセイ形式の概略図を、図50Bに示す。手短に言うと、アフィニティー精製した抗PSCAペプチドヒツジポリクローナル抗体(PSCAタンパク質のアミノ酸67〜81に対する)および抗PSCAモノクローナル抗体1G8を、捕捉抗体として使用し、そしてマイクロタイターウェルにコートする。コーティング後、試験抗原の一連の希釈物とのインキュベーションを、標準曲線を作製するために行う。患者の血清をウェルに添加し、そして室温でインキュベートする。インキュベーション後、結合していない抗体をPBSで洗浄する。抗PSCAモノクローナル抗体2A2、3C5および4A10(IgG2aアイソタイプ)(これらは、PSCAタンパク質上の異なるエピトープを認識する)を検出抗体として使用し、そしてウェルに添加し、インキュベートし、そしてウェルを洗浄して、結合していない抗体を除去する。次いで、この捕捉反応を、抗マウスIg2a西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化二次抗体の添加、その後の3,3’5,5’テトラメチルベンジジンベース基質での発色によって可視化し、OD測定を行う。
標準化の概略図およびコントロール抗原を、図50Aに示す。手短に言うと、PSCAのアミノ酸18〜98をコードするGST融合タンパク質を、未知サンプルの定量化のための標準曲線を作製するために使用する。PSCAの分泌組換え哺乳動物発現形態を、このELISAアッセイの質的制御のために使用する。このタンパク質は、この組換えタンパク質の分泌を指向するためのIgリーダー配列、ならびにアフィニティー精製のためのMYCおよび6×HISエピトープタグを含む。
PSCAを発現および分泌するよう操作された293T細胞から分泌された組換えPSCAの定量化を、図51に示す。
(実施例21:)
(PSCA mAb遺伝子の配列)
マウスモノクローナル抗体1G8、4A10および2H9の重鎖可変領域をコードする遺伝子のヌクレオチド配列を、Colomaら、1992,J Immunol.Methods 153:89−104に記載の方法を使用して決定した。mAb 1G8および4A10の重鎖可変領域配列決定のためのプライマーは、以下のとおりであった:
Figure 2010265323
mAb 2H9の重鎖可変領域配列決定のためのプライマーは、以下のとおりであった:
Figure 2010265323
総RNAを、トリゾール試薬(Trizol Reagent)(Gibco−BRL カタログ番号15596)を使用して、1G8、2H9および4A10ハイブリドーマ細胞から単離した。5μgのRNAに対する第1鎖合成反応物を、Gibco−BRL Superscript II逆転写酵素反応(製造業者のプロトコルに従って)およびCH3’を使用して生成した。この30μlの第1鎖反応物のうちの2μlを、可変領域を増幅するためのPCRにおいて使用した。
第1鎖cDNAを、重鎖の定常領域由来のプライマー(CH3’)を使用して、ハイブリドーマRNAから合成した。可変領域を、CH3’およびリーダー配列に対して設計されたプライマー(HLEAD.1およびHLEAD.2)を使用して増幅した。得られたPCR産物を配列決定し、そして相補性決定領域(CDR)を、Kabatの法則を使用して決定した。これらの配列を、図58、59および60に示す。これら3つのmAbのCDRのアミノ酸アライメントを、図61に示す。
(実施例22:)
(PSCA mAb結合親和性)
PSCAモノクローナル抗体1G8(上記)の親和性を、BIAcoreTM装置(Uppsala,Sweden)を使用して決定した。この装置は、表面プラズモン共鳴(SPR、Welford K.1991,Opt.Quant.Elect.23:1+MortonおよびMyszka,1998,Methods in Enzymology 295:268)を使用し、リアルタイムで生体分子の相互作用をモニターする。製造業者(Pharmacia)によって概要された一般手順に基づいて、この抗体の速度論分析を、センサ表面上に低密度(30RU)で固定した組換えPSCAを使用して行った。組換えPSCAは、以下のように生成した。一過的にトランスフェクトした293T細胞またはC末端6×HisおよびMYCタグを有するPSCAをコードするCMV駆動発現ベクター(pcDNA3.1/mycHIS、Invitrogen)を安定に発現する293細胞を、精製のための分泌可溶性PSCAタンパク質の供給源として使用した。このHISタグ化PSCAタンパク質を、標準的な技術を使用して、ニッケルカラム上で精製した。会合速度および解離速度を、製造業者によって提供されたソフトウェアを使用して決定した。以下に作表した(表5)結果は、1G8が1ナノモルのKDを有することを示し、これはPSCA抗原に対する強い親和性を示す。
Figure 2010265323
本発明は、本明細書中に開示される実施形態によって範囲を限定されず、これらの実施形態は、本発明の個々の局面の単一の例示として意図され、そして機能的に等価な任意のものが、本発明の範囲内にある。本明細書中に記載されるものに加え、本発明のモデルおよび方法に対する種々の改変が、前述の記載および教示から当業者に明らかであり、そして本発明の範囲内にあることが同様に意図される。このような改変または他の実施形態は、本発明の真の範囲および精神から逸脱することなく実施され得る。
(実施例23:)
(免疫組織化学的分析)
本実施例は、上記の7つの抗PSCA mAbを用いた、種々のホルマリン固定したパラフィン包理組織の免疫組織化学的(IHC)分析を記載する。
(材料および方法)
7つの抗PSCAモノクローナル抗体の各々を、以下に対して試験した:(1)PSCAを過剰発現するLNCaP細胞、LNCaP親細胞および293T細胞からなる細胞ペレット;(2)LAPC9AD異種移植片;および(3)良性前立腺肥大(BPH)、前立腺癌および正常前立腺組織。全ての組織染色を、QualTek Molecular Laboratories,Inc(Santa Barbara,CA)によって行った。組織ブロックを4ミクロンで切片化し、そして正に荷電したCapillary Gap顕微鏡スライド(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)上にプレートした。キシレン中での脱ろう化、その後の一連のアルコールでの水和後、組織切片を、抗体反応性を最適化するために、クエン酸ナトリウム(10mM、pH6.0)の存在下で20分間スチーマー中で前処理した。
5分間の冷却後、スライドを、ABCペルオキシダーゼ技術を使用して免疫染色した。手短に言うと、スライドを、ブロッキング血清(正常ヤギ)中で5分間その後、2μg/mlの抗PSCAモノクローナル一次抗体または2μg/mlのマウスIgG(ネガティブコントロールとして)中(25分)、ビオチン化二次抗体ヤギ抗マウスIgG中(25分)およびペルオキシダーゼ酵素に結合体化したアビジン−ビオチン複合体(ABC)(Vector Labs,Burlingame,CA)中(25分)で、インキュベートした。これらのインキュベーション工程の間、切片を緩衝液中でリンスした。DAB−ジアミノベンジジン色素原(QualTek Molecular Labs)を使用してこの反応を発色させた(褐色沈殿物を生じる)。引き続いて、スライドをヘマトキシリンで対比染色し、次いでカバーガラスをかけた。染色を、TechMate 1000自動染色装置(Ventana Medical Systems,Inc.,Tucson,AZ)上、室温で行った。
(結果)
図52は、細胞ペレット、LAPC9AD異種移植片、BPHサンプルおよび前立腺癌組織(左パネル)における、抗PSCAモノクローナル抗体3C5についてのIHC結果を示す。細胞ペレット混合物は、3つの細胞型を含み、その1つのみ(LNCaP−PSCA細胞)が、抗PSCAモノクローナルで染色されると予測される。予測されたように、3C5は、これらの細胞の約1/3を強く染色した。この染色は、同じスライド上の陽性染色および陰性染色している細胞型を都合よく示す。LAPC9AD異種移植片は、3C5抗体で非常に強く染色される。BPH組織の管における基底細胞および上皮細胞は、よく染色するが、基底細胞が特に優性である。最後に、前立腺癌組織は、腫瘍性の管における強い染色を示す。右側のパネルは、免疫前マウス血清からなるバックグラウンドコントロールを表す。評価したいかなるサンプルにおいても、バックグラウンド染色は検出されなかった。
(実施例24:)
抗PSCA抗体処置後の確立されたLAPC−9腫瘍増殖の阻害および長期の生存。ホルモン抵抗性転移性前立腺癌を有する患者の骨腫瘍生検材料から、LAPC−9異種移植片を生成した。
以下の実施例は、抗PSCAモノクローナル抗体である、1G8および3C5が、SCIDマウスにおいて確立された同所LAPC−9前立腺腫瘍の増殖を阻害し、有意にそれらの生存を延ばしたことを実証する。腫瘍の増殖を、血清PSAのレベルを追跡することによってモニタリングした。
(同所注入)
LAPC−9腫瘍の単一の細胞懸濁液を、実施例18−Aに記載の方法に従って調製した。細胞懸濁液を、1:1の希釈でMatrigelと混合した。細胞懸濁液を、同所注入の前に氷上に置いた。同所注入を、ケタミン/キシラジンを使用した麻酔下の雄性IcR−SCIDマウスに対して行った。麻酔されたマウスの下腹部を剪毛し、5〜8mmの切開を、ペニスのちょうど上に作製し、腹壁および筋肉を露出させた。切開を腹筋を貫いて作製し、膀胱および精嚢を露出させ、次いで膀胱および精嚢を切開部を通して摘出し、背側の前立腺を露出させた。LAPC−9細胞懸濁液を、500μlのHamiltonシリンジを使用して、各背側の葉に注入した。各葉に、約5×105細胞に対応する、10μlの細胞懸濁液を注入した。注入の後、両方の切開を直線(running)縫合を用いて閉じ、そしてマウスを回復のためにヒートランプの下に維持した。注入の後、PSAの血清レベルをモニタリングした。マウスを、PSAの血清レベルに依存して、1G8抗体または3C5抗体の異なるレジメンで処置した。抗体処置の後、マウスを生存させ続けて、腫瘍の増殖の測度としてPSAレベルを決定し、そして各処置群におけるマウスの生存を決定した。
(PSAの血清レベルのモニタリング:)
血清PSAのレベルを、腫瘍サイズを追跡するために使用した。マウスを、ほぼ毎週基準で採血し、血清PSAのレベルをモニタリングした。血清PSAのレベルを、市販のPSAキット(American Qualex,San Clemente,CA)を使用して測定した。マウスを、血清PSAのレベルに基づいて2つの処置群に分離した。例えば、これらの群としては、以下が挙げられる:低レベルのPSA(例えば、2〜3ng/ml;図66A);および中程度のレベルのPSA(例えば、64〜78ng/ml;図66B)。血清PSAレベルを、腫瘍が腹部にわたって目に見えるまでモニタリングした。
血清PSAレベルを、腫瘍細胞の注入の日に対して、+9、+15、+22、+30、+37、+44、および+51日目にモニタリングした(図66A)。同様に、血清PSAレベルを、+13、+21、+27、および+34日目に(図66B)、+9、+16、+22、+29、および+36日目に(図68A)、そして+7、+14、+21、および+28日目に(図68B)、モニタリングした。
(1G8を用いた処置:)
同所性の腫瘍を保有するマウスを、上記の方法に従って確立した。(i)低レベルの血清PSA(2〜3ng/ml)、または(ii)中程度のレベルの血清PSA(64〜78ng/ml)を示す2群の動物を、処置のために選択した。
低レベルのPSA(例えば、2〜3ng/ml)を有するマウスを、1週間の1週あたり3回の、2mgの1G8抗体の腹腔内注入、それに続く、次の2週間の1週あたり3回の、1mgの1G8、それに続く、次の3週間の1週あたり1回の、1mgの1G8で処置した(図66Aにおいて矢印によって示されるように)。
中程度のレベルのPSA(例えば、64〜78ng/ml)を有するマウスを、3週間連続で1週あたり3回の1mgの1G8抗体の、腹腔内注入、それに続く、翌週の1mgの1G8の単回注入で処置した(図66Bにおいて矢印によって示されるように)。
低レベルまたは中程度のレベルのPSAを有するコントロールマウスを、約0.5〜0.8mlのリン酸緩衝溶液(Gibco)で処置した(図66AおよびB)。
(3C5を用いた処置:)
同様の処置を、3C5抗体を使用して、同所腫瘍を保持するマウスに対して行った。第1の実験において、1mgの3C5抗体を、3週間連続で1週あたり3回、腹腔内に投与し、それに続いて1mgの3C5を単回注入した(図68A)。第2の実験において、2mgの3C5を第1週に1週あたり3回投与し、それに続いて次の2週間に1週あたり3回の、1mgを投与した(図68B)。注入を、図68AおよびBにおいて矢印で示される日に投与した。
(結果−1G8を用いた処置は、腫瘍の増殖の阻害および生存の増大を生じる)
腫瘍保有マウスの血清PSAレベルを、腫瘍の増殖を追跡するために使用した。なぜなら、血清PSAレベルは、腫瘍サイズに非常に関連するからである。抗PSCAモノクローナル抗体である1G8で処置されたLAPC−9 AD腫瘍を保有するマウスは、血清PSAレベルの増加速度の減少を示した(図66AおよびB)。この結果は、1G8が、PSCAを発現する腫瘍の増殖を阻害することを示す。
図66Aにおいて、各データポイントは、PBS(n=6)または1G8(n=6)を受けたマウスについての平均PSAレベルを表す。マウスを、PSA定量のためにX軸に示される日に採血した。
図66Bに示されるように、マウスを、PSAの定量のためにX軸に示される日に採血した。各データポイントは、PBS(n=4)または1G8(n=5)を受けたマウスの平均PSAレベルを表す。図67において、PBS処置群におけるマウスは4匹であり、そして1G8処置群におけるマウスは5匹である。
さらに、1G8抗体で処置した、より低い血清PSAレベルを有するマウスは、1G8抗体で処置した、より高い血清PSAレベルを有するマウスと比較して、血清PSAのレベルの増加速度の減少を示した(例えば、図66AおよびBにおいて
Figure 2010265323
によって記載されるデータと比較して)。この結果は、1G8抗体が、本研究の投与プロトコル下で、より小さな腫瘍身体負荷量が存在した場合に、腫瘍の増殖を減少させるのにより有効であったことを示唆する。
腫瘍保有マウスの生存に対する1G8処置の影響をまた、モニタリングした。一般的に、PBSのみで処置されたマウスは、局所的な腫瘍の増殖および転移のために、注入後5〜6週間以内に死亡し始めた。対照的に、1G8抗体で処置されたマウスは、長期の生存を示した。例えば、生存への影響は、低い血清PSAレベルを有するマウスにおいて、より劇的であり(図67A)、ここでPBS処置マウスにおける中間生存時間は、56.5日(42〜71日の範囲)であり、そして、1G8処置マウスにおける中間生存時間は、89日(77〜101日の範囲)であった。中程度の血清PSAレベルを有するマウスにおいて(図67B)、PBS処置マウスにおける中間生存時間は、40日(32〜48日の範囲)であり、これに比較して、1G8処置マウスにおける中間生存時間は、78.5日(52〜105日)であった。このことは、1G8処置マウスにおける38.5日の中間生存時間の増加を示唆する。
腫瘍の増殖の阻害は、長期の生存に関連する。まとめると、これらの結果は、1G8処置が、腫瘍の増殖を阻害し、そして同所腫瘍を保有するマウスの生存時間を増加したことを実証する。従って、これらの結果は、1G8を用いた処置が、腫瘍の増殖を阻害することによって生存時間を増加させたことを示唆する。
1G8を用いた処置は、より小さな同所腫瘍に対する腫瘍の増殖を効果的に阻害した。従って、1G8は、再発性の局所疾患(一次処置の後)および転移性腫瘍の形成における、最小の残存性疾患のための効果的な治療処置を表し得る。
3C5抗体で処置されたマウスの結果は、1G8抗体で処置されたマウスから得られたデータと同様である。抗PSCAモノクローナル抗体である3C5で処置された、LAPC−9 AD腫瘍を保有するマウスは、血清PSAレベルの減少を示した。この結果は、3C5が、PSCAを発現する腫瘍の増殖を阻害することを示す。
2つの別の実験を、3C5処置の効果を評価するために行った。3C5抗体で処置されたマウスは、リン酸緩衝溶液で処置されたマウスに比べると、血清PSAのレベルのより低い増加速度を示した(図68AおよびB)。この結果は、3C5抗体が、腫瘍の増殖を阻害したことを示唆する。
図68Aにおいて、各データポイントは、PBS(n=4)または3C5(n=5)を受けたマウスについての平均PSAレベルを表す。図68Bにおいて、各データポイントは、PBS(n=6)または3C5(n=6)を受けたマウスについての平均PSAレベルを表す。
3C5抗体で処置されたマウスは、PBSで処置されたマウス(図69B)と比較して、長期の生存を示した(図69A)。第1の実験において、PBS処置マウスの中間生存時間は、52日(45〜59日の範囲)であり、これに比較して、3C5処置群における中間生存時間は、92日以上(59〜+125日の範囲)(図69A)(1匹のマウスはまだ生存している)であった。第2の実験において、PBS処置マウスにおける中間生存時間は、43日(29〜57日の範囲)であり(図69B)、これに比較して、3C5処置マウスにおける中間生存時間は、57.5日(33〜82日の範囲)であった。
腫瘍増殖の阻害は、長期の生存に関連した。まとめると、これらの結果は、3C5処置が、腫瘍の増殖を阻害し、それによって同所腫瘍保有マウスの生存時間を増加したことを実証した。従って、これらの結果は、3C5での処置が、腫瘍の増殖を阻害することによって、生存時間を増加したことを示す。
(実施例25:)
単独またはドキソルビシンと組み合わされた抗PSCA抗体処置後の確立されたPC3−PSCA腫瘍の増殖の阻害および長期の生存。
以下の実施例は、1G8(抗PSCAモノクローナル抗体)が、SCIDマウスにおいて増殖する確立された皮下のPC3−PSCA前立腺腫瘍(AI)の増殖を阻害したことを実証する。さらに、1G8は、単独またはドキソルビシンと組み合わされて投与される場合、前立腺腫瘍の増殖を阻害した。さらに、1G8を用いた処置は、単独またはドキソルビシンと組合されて投与される場合に、これらのマウスの生存を延ばす。1G8およびドキソルビシンを用いた処置は、腫瘍の増殖および生存に対する相乗的な阻害効果を生じるようである。
(PSCA発現PC3細胞)
PC3−PSCA細胞を、レトロウイルス遺伝子移入によって得た。簡潔には、PSCA cDNAを、レトロウイルスベクターpSR−α(Mullerら、1991 Molec.Cell.Biol.11:1785−1792)中に挿入した。アンホトロピックレトロウイルスを、PSCA含有pSR−αおよびアンホトロピックエンベロープタンパク質含有レトロウイルスヘルパープラスミドでの293T細胞の同時トランスフェクションによって生成した。引き続いて、PC3細胞に、このPSCA含有アンホトロピックレトロウイルスを感染させ、そして感染後48時間目に、PC3細胞を、ネオマイシン類似体G418を含有する培地における増殖によって選択した。選択および増大の2〜3週間後、ウェスタンブロットを実施して、PC3−PSCA細胞がPSCAタンパク質を発現することを確認した。PSCAを含まない空のベクターを感染させた、親のPC3またはPC3細胞は、両方ともPSCAタンパク質発現について陰性であった。
(皮下注射)
PC3−PSCA細胞を、注射前に、T−150フラスコ内においてDMEM+10%FBS中で増殖させた。細胞を、対数期まで増殖させ、収集し、洗浄し、カウントし、次いで、1:1の希釈度でマトリゲル(Matrigel)と混合し、そして氷上で維持した。注射のために、雄性IcR−SCIDマウスを、それらのフラスコ内で剪毛し、そして右側のフラスコにおいて、各マウスに、100μl容量中約1×106細胞の単回皮下注射を与えた。PC3−PSCA腫瘍の増殖に次いで、増殖腫瘍のカリパス測定を行った。皮下注射後約9日目に腫瘍が100〜200mm3のサイズに到達した場合に、処置のためにマウスを選択した。腫瘍サイズを、注射後+9日目、+15日目、+23日目、+29日目、+36日目、および+43日目に測定した。
(PBSでの処置)
コントロールマウスを、約0.5〜0.8mlのリン酸緩衝化溶液(Gibco)で処置した(図66AおよびB)。
(1G8での処置)
1G8で処置されたマウスは、連続3週間にわたって1週間あたり3回、1mgの1G8を投与された。
(ドキソルビシンでの処置)
ドキソルビシンの最大耐量を決定するために、LD50実験を実施した。ドキソルビシン(Sigma)を、滅菌PBS中に再懸濁した。ドキソルビシンを、以下の用量:50μg、25μg、12.5μg、および6.75μgで、腹腔内注射によって投与した。最高用量である50μgでは、すべてのマウスが2週間以内に死滅した。より低い用量範囲では、マウスは、4週間より長く生存した。最大耐量は25μgであった。
ドキソルビシンのみで処置されたマウスは、連続3週間にわたって1週間あたり1回、25μgを投与された。
(1G8およびドキソルビシンでの処置)
1G8およびドキソルビシンで処置されたマウスは、連続3週間にわたって1週間あたり3回、1mgの1G8を投与され(図70;1G8=矢印)、そして連続3週間にわたって1週間あたり1回、25μgのドキソルビシンを投与された(図70;ドキソルビシン=( ))。
(結果−1G8単独での処置またはドキソルビシンとの組み合わせにおける1G8での処置は、腫瘍増殖の阻害を生じる)
抗PSCAモノクローナル抗体、1G8単独、またはドキソルビシンとの組み合わせにおける1G8で処置された、PC3−PSCA腫瘍保有マウスは、リン酸緩衝化溶液またはドキソルビシン単独で処置されたマウスと比較して、腫瘍増殖の減少を示した(図70)。これらの結果は、1G8が、PSCAを発現する腫瘍の増殖を阻害することを示す。これらの結果はまた、1G8とドキソルビシンとの組み合わせが、相乗作用的に、腫瘍増殖を阻害するように作用することを示唆する。
各データポイントは、PBS(n=5)、ドキソルビシン(n=6)、1G8(n=6)、または1G8+ドキソルビシン(n=6)を受容したマウスの平均腫瘍体積を示す。
ドキソルビシンで処置されたマウスは、PBSで処置されたマウスと比較して、わずかにより低い腫瘍増殖率を示した(例えば、43日目に4%の増殖阻害)。対照的に、1G8抗体単独で処置されたマウスは、PBSで処置されたマウスと比較して、腫瘍増殖率において、より大きな減少を示した(例えば、43日目に20%の増殖阻害)。1G8およびドキソルビシンの組み合わせで処置されたマウスは、PBSで処置されたマウスと比較して、腫瘍増殖率において、わずかにより大きな減少を示した(例えば、43日目に36%の増殖阻害)。
PC3−PSCA異種移植片を用いるこの皮下モデルにおいて、1G8単独での処置は、確立されたアンドロゲン非依存性腫瘍(例えば、PC3細胞は、ホルモン難治性である)における腫瘍増殖を効率的に阻害した。さらに、1G8とドキソルビシンとの組合せは、腫瘍増殖阻害効果の増大を示した。従って、1G8とドキソルビシンとの組合せでの処置は、ホルモン除去療法(hormone ablation therapy)に失敗した、転移性疾患を有する前立腺癌患者に対する有効な治療的処置を示す。
(実施例26)
(抗PSCAモノクローナル抗体は循環し、そしてPSCA発現腫瘍を標的化する)
1つの研究では、上記の実施例18 C4に記載の確立された皮下LAPC−9 AD腫瘍を保有するSCIDマウスを、コントロールマウスIgGまたは記載のような3C5抗PSCA mAbのいずれかで処置した。34日目(最後の抗体処置の6日後)に、マウスを屠殺し、そして腫瘍を外植した。異なる研究では、腫瘍保有SCIDマウスを、コントロールマウスIgGまたは1G8で処置した。両方の研究からの腫瘍サンプルにおける抗体の存在を、ウェスタンブロット分析または免疫組織化学(IHC)のいずれかによって検出した。
(免疫組織化学)
外植した腫瘍をホルマリン中で固定し、そして免疫組織化学分析のためにパラフィン中に包埋した(QualTek Molecular Labs、Santa Barbara、CAによって実施された)。このパラフィンブロックをスライスし、このスライスをスライド上に固定し、そしてこのスライドを、ビオチン化ヤギ抗マウスIgG、次いでペルオキシダーゼ酵素に結合体化されたアビジン−ビオチン複合体(ABC)(Vector Labs、Burlingame、CA)で探索した。DAB(ジアミノベンジジン)色素原を使用して、この反応(これは、褐色沈殿を生じる)を現像した。引き続いて、スライドを、ヘマトキシリンで対比染色し、次いで、カバーガラスをかけた。染色を、室温でTechMate 1000自動化染色装置(Ventana Medical Systems,Inc.、Tucson、AZ)において実施した(図71)。
(結果−免疫組織化学)
図71は、3C5抗体が、コントロールIgG処置マウスではなく、3C5処置マウス由来のLAPC−9 AD腫瘍に局在化したことを示す。さらに、抗体は、腫瘍全体を通して検出され得た。
(ウェスタンブロッティング)
IgG処置群および3C5処置群における3匹のマウス(例えば、上記実施例18 C4に記載のようなマウス)から外植された腫瘍を、沸騰したSDSサンプル緩衝液中に溶解した。細胞溶解産物を、SDS−PAGEゲルにおいて電気泳動し、ニトロセルロースフィルターに転写し、ヤギ抗マウスIgG−HRP抗体(Southern Biotech、Birmingham、AL)で探索し、そして増強された化学発光によって可視化した。マウスIgGコントロール抗体および3C5もまた、コントロールとしてゲルにおいて泳動した(図72)。
同様の実験において、LAPC−9 AD皮下腫瘍保有マウスを、コントロールマウスIgGまたは1G8抗PSCA mAbのいずれかで処置した。30日目(最後の抗体処置の7日後)に、マウスを屠殺し、そして腫瘍を外植した。ウェスタンブロット分析を、各群の3匹のマウスから外植された腫瘍において実施した。この外植された腫瘍を、沸騰したSDSサンプル緩衝液中に溶解した。細胞溶解産物を、SDS−PAGEゲルにおいて電気泳動し、ニトロセルロースに転写し、ヤギ抗マウスIgG−HRP抗体(Southern Biotech、Birmingham、AL)で探索し、そして増強された化学発光によって可視化した。マウスIgGコントロール抗体および1G8もまた、コントロールとしてゲルにおいて泳動した(図73)。
(結果−ウェスタンブロッティング)
図72は、IgGの重鎖および軽鎖が、マウスIgGコントロール処置マウスにおいてではなく、3C5処置マウス由来の腫瘍溶解産物において容易に検出され得たことを実証する。
図73は、IgGの重鎖および軽鎖が、マウスIgGコントロール処置マウスにおいてではなく、1G8処置マウス由来の腫瘍溶解産物において容易に検出され得たことを実証する。
これらの結果は、抗PSCA mAb(例えば、3C5および1G8)が、腫瘍保有マウスへの投与後に、循環し得、そしてPSCA発現腫瘍を標的化し得ることを実証する。さらに、抗体の局在性は特異的であった。なぜなら、PSCAを認識しないコントロールマウスIgGには、腫瘍が存在しないか、または抗PSCA処置マウス由来の腫瘍と比較して非常に低いレベルで存在するかのいずれかであるからである。これらの結果は、抗PSCA mAbが、癌患者において、身体を通して循環し、そして原発性および転移性のPSCA発現腫瘍に局在化する能力を有することを示唆する。さらに、結合体化された抗PSCA mAbは、局所的に再発しかつ転移性の疾患に対して、PSAC発現腫瘍を局所で効率的に破壊し得る。

Claims (1)

  1. PSCAに関連する癌を有する患者の寿命を延長するための方法であって、該癌細胞の増殖を阻害するのに十分な時間に亘ってPSCAと選択的に結合する一定量の抗体を被験体に投与する工程を包含し、これによって、該被験体の寿命を延長する、方法。
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