JP2010265190A - Rna干渉による遺伝子発現抑制のためのターゲット遺伝子としてのugt遺伝子の使用 - Google Patents

Rna干渉による遺伝子発現抑制のためのターゲット遺伝子としてのugt遺伝子の使用 Download PDF

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Abstract

【課題】培養細胞から哺乳動物に至る広範囲の検体を使用可能とする実験系で、UGT遺伝子の発現を特異性高く簡便且つ迅速に抑制する方法の開発が求められていた。
【解決手段】RNA干渉による遺伝子発現抑制のためのターゲット遺伝子としてのUGT(UDP glucuronosyltransferase)遺伝子の使用等。
【選択図】なし

Description

本発明は、RNA干渉による遺伝子発現抑制のためのターゲット遺伝子としてのUGT遺伝子の使用等に関する。
薬物代謝酵素は、ホルモン等の生体内由来物質や、毒物・薬物等の生体外物質を分解又は排出する為の代謝反応を担うことから、生物の生命維持において重要な酵素である。その機能は大きく分けて、エステル化や酸化還元を行う第一相反応と、抱合化を行う第二相反応とに分けることが出来、それらに関与する個々の酵素は基質特異性を持つことが知られている。UGT(UDP glucuronosyltransferase)遺伝子ファミリーは、第二相反応に関わる酵素であり、ビリルビンや甲状腺ホルモン等の生体内由来物質や、抗がん剤であるイリノテカン等の様々な生体外物質のグルクロン酸抱合反応に関わる(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)。
Jemnitz et al 1999 Drug Metab Dispos. 28 34-37 Ando et al 2000 Cancer Res 60 6921-6926
UGT遺伝子の発現を抑制する一つの方法として、ジーンターゲティング法が挙げられるが、株化細胞やES細胞においてはUGT遺伝子発現抑制株の選別等に通常2ヶ月以上の時間が掛かる上、初代培養細胞等では遺伝子を発現抑制した細胞を得ることが困難である。更にこのようなES細胞を用いてノックアウト哺乳動物を作製する場合、例えば、マウスでは、通常作製に2年程度かかり迅速性に欠けることに加え、ホモ欠損体はヘテロ欠損体の両親から1/4の確率で生まれることから、ホモ欠損体を多数使用する実験では大変な労力とを要する。また、マウス以外の哺乳動物では、ノックアウト哺乳動物を作製すること自体が必ずしも容易でない場合があり、特に薬理・毒性評価試験で一般的に用いられるラットにおいては、ノックアウト哺乳動物の作製が未だに不可能な状況にある。更にUGT遺伝子の発現を発現抑制する別の形態としては、化学物質を利用した酵素機能の阻害法が挙げられるが、当該化学物質の標的特異性が低い為に同時に目的とする酵素以外の複数の酵素も発現抑制してしまうことで副作用や評価精度の低下等につながる場合がある。
これらの状況から、培養細胞から哺乳動物に至る広範囲の検体を使用可能とする実験系で、UGT遺伝子の発現を特異性高く簡便且つ迅速に抑制する方法の開発が求められていた。
本発明者等は、かかる状況のもと鋭意検討した結果、本発明に至った。
即ち、本発明は
1.RNA干渉による遺伝子発現抑制のためのターゲット遺伝子としてのUGT(UDP glucuronosyltransferase)遺伝子の使用(以下、本発明使用と記すこともある。);
2.前記UGT遺伝子の使用が、RNA干渉による遺伝子発現抑制下における被験物質投与系でのターゲット遺伝子の発現抑制に基づく代謝量変化を指標とした当該被験物質の代謝評価の為のターゲット遺伝子としての使用である前記1記載のUGT遺伝子の使用;
3.前記UGT遺伝子の使用が、RNA干渉による遺伝子発現抑制下における被験物質投与系でのターゲット遺伝子の発現抑制に基づく表現形レベルを指標とした当該被験物質の毒性評価の為のターゲット遺伝子としての使用である前記1記載のUGT遺伝子の使用;
4.前記UGT遺伝子の使用が、医薬品物質の代謝に関連するUGT遺伝子の発現を抑制することにより、薬物の代謝速度を減少させ、薬効を改善することである前記1記載のUGT遺伝子の使用;
5.前記UGT遺伝子の使用が、RNA干渉による遺伝子発現抑制下における医薬品物質投与系でのターゲット遺伝子の発現抑制に基づく前記医薬品物質の薬効改善(又は代謝速度減少化)の為のターゲット遺伝子としての使用である前記1記載のUGT遺伝子の使用;
6.物質の代謝評価方法であって、
(1)検体内でのUGT遺伝子の発現をRNA干渉によって抑制する第一工程、
(2)第一工程により得られた検体に対して被験物質を接触させる第二工程、及び、
(3)第二工程により得られた検体における被験物質の代謝量に係る値を測定し、測定された値と対照との差異に基づき前記被験物質の代謝量を評価する第三工程
を含むことを特徴とする代謝評価方法;
7.物質の毒性評価方法であって、
1)検体に対して被験物質を接触させる第一工程、
2)第一工程により得られた検体における表現形レベルを指標とした正の毒性学的変化量に係る値を測定する第二工程
3)UGT遺伝子の発現をRNA干渉によって抑制された検体に対して被験物質を接触させる第三工程、
4)第三工程により得られた検体における表現形レベルを指標とした正の毒性学的変化量に係る値を測定する第四工程、及び、
5)第二工程で測定された正の毒性学的変化量に係る値に対して第四工程で測定された正の毒性学的変化量に係る値を減弱させる被験物質を、UGT遺伝子の発現誘導を介した毒性を有すると評価する第五工程
を含むことを特徴とする毒性評価方法;
8.前項7記載の毒性評価方法により評価された、物質が有する毒性の有無に基づきUGT遺伝子の発現誘導を介した毒性を有する化学物質を除去する工程を有することを特徴とする化学物質の探索方法;
等を提供するものである。
本発明により、UGT遺伝子の発現を特異性高く簡便且つ迅速に抑制する方法等が提供可能となる。
図1は、UGT1A遺伝子の発現量に係る値であるmRNA(即ち、転写産物)相対発現量(%)を示す図であり、左から順に「無処置群」「siRNA(Cont)投与群」「siRNA(UGT1A)投与群」の結果を示している(平均±標準偏差、N=3)。因みに、当該mRNA相対発現量(%)は、無処置群を100%とした相対値とした。尚、siRNA(UGT1A)投与群はsiRNA(Cont)投与群比で有意差があり、有意水準はP<0.01であった。 図2は、UGTB1遺伝子の発現量に係る値であるmRNA(即ち、転写産物)相対発現量(%)を示す図であり、左から順に「無処置群」「siRNA(Cont)投与群」「siRNA(UGT1A)投与群」「siRNA(UGT2B1)投与群」「siRNA(UGT2B2)投与群」の結果を示している(平均±標準偏差、N=3)。因みに、当該mRNA相対発現量(%)は、無処置群を100%とした相対値とした。尚、siRNA(UGT2B1)投与群はsiRNA(Cont)投与群比で有意差があり、有意水準はP<0.01であった。 図3は、UGT2B2遺伝子の発現量に係る値であるmRNA(即ち、転写産物)相対発現量(%)を示す図であり、左から順に「無処置群」「siRNA(Cont)投与群」「siRNA(UGT1A)投与群」「siRNA(UGT2B1)投与群」「siRNA(UGT2B2)投与群」の結果を示している(平均±標準偏差、N=3)。因みに、当該mRNA相対発現量(%)は、無処置群を100%とした相対値とした。尚、siRNA(UGT2B2)投与群はsiRNA(Cont)投与群比で有意差があり、有意水準はP<0.01であった。 図4は、UGT1A遺伝子の発現量に係る値であるmRNA(即ち、転写産物)相対発現量(%)を示す図であり、左から順に「siRNA(Cont)投与群」「siRNA(UGT1A)投与群」の結果を示している(平均±標準偏差、N=3)。因みに、当該mRNA相対発現量(%)は、siRNA(Cont)投与群を100%とした相対値とした。尚、siRNA(UGT1A)投与群はsiRNA(Cont)投与群比で有意差があり、有意水準はP<0.01であった。 図5は、UGTB1 UGT2B2遺伝子の発現量に係る値であるmRNA(即ち、転写産物)相対発現量(%)を示す図であり、左から順に「siRNA(Cont)投与群」「siRNA(UGT2B1)投与群」の結果を示している(平均±標準偏差、N=3)。因みに、当該mRNA相対発現量(%)は、siRNA(Cont)投与群を100%とした相対値とした。 図6は、UGT1A遺伝子の発現量に係る値であるmRNA(即ち、転写産物)相対発現量(%)を示す図であり、左から順に「siRNA(Cont)投与後1日目群」「siRNA(UGT1A)投与後1日目群」「siRNA(Cont)投与後2日目群」「siRNA(UGT1A)投与後2日目群」「siRNA(Cont)投与後3日目群」「siRNA(UGT1A)投与後3日目群」の結果を示している(平均±標準偏差、N=3)。因みに、当該mRNA相対発現量(%)は、siRNA(Cont)投与後1日目群を100%とした相対値とした。尚、各siRNA(UGT1A)投与群はsiRNA(Cont)投与群比で有意差があり、有意水準はP<0.01であった。 図7は、UGT1A遺伝子の発現量に係る値である蛋白(即ち、翻訳産物)相対発現量(%)を示す図であり、左から順に「無処置群」「siRNA(Cont)投与後3日目群」「siRNA(UGT1A)投与後3日目群」の結果を示している(平均±標準偏差、N=3)。因みに、当該蛋白相対発現量(%)は、siRNA(Cont)投与後3日目群を100%とした相対値とした。尚、siRNA(UGT1A)投与後3日目群はsiRNA(Cont)投与後3日目群比で有意差があり、有意水準はP<0.05であった。 図8は、ALP平均値(U/L) を示す図であり、左から順に「PB無投与群」「PB投与群(siRNA無投与)」「siRNA(Cont)及びPBの投与群」「siRNA(UGT1A)及びPBの投与群」の結果を示している(平均±標準偏差、N=4)。尚、siRNA(UGT1A)及びPBの投与群はsiRNA(Cont)及びPBの投与群比で有意差があり、有意水準はP<0.05であった。 図9は、UGT1A遺伝子の発現量に係る値であるmRNA(即ち、転写産物)相対発現量(%)を示す図であり、左から順に「PB無投与群」「PB投与群(siRNA無投与)」「siRNA(Cont)及びPBの投与群」「siRNA(UGT1A)及びPBの投与群」の結果を示している(平均±標準偏差、N=4)。因みに、当該mRNA相対発現量(%)は、PB無投与群を100%とした相対値とした。尚、siRNA(UGT1A)及びPBの投与群はsiRNA(Cont)及びPBの投与群比で有意差があり、有意水準はP<0.01であった。 図10は、甲状腺重量(体重比)の平均値を示す図であり、左から順に「PB無投与群」「PB投与群(siRNA無投与)」「siRNA(Cont)及びPBの投与群」「siRNA(UGT1A)及びPBの投与群」の結果を示している(平均±標準偏差、N=4)。因みに、当該平均値は、PB無投与群を100%とした相対値とした。
本明細書に記載される発明は記載されている特定の方法論、プロトコール、及び試薬に限定されず、可変であると考えられる。また、本明細書で用いる用語は単に特定の実施形態を記載するためのものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではないと考えられる。
特に断りの無い限り、本明細書で用いる全ての技術用語及び化学用語は、本発明が属する技術分野の熟練者に共通に理解されているものと同じ意味を持つ。本発明を実施又は試験する上で、本明細書に記載されているものと同様又は同等の方法及び材料のいずれを用いてもよいが、以下、好ましい方法、装置及び材料を記載する。
本発明における「RNA干渉」は、短い二本鎖(ds)オリゴリボヌクレオチドを細胞内に導入することにより、標的遺伝子であるUGT遺伝子を特異的に発現抑制させることで達成されることを意味する。このような標的遺伝子特異的発現抑制用dsオリゴリボヌクレオチドは短鎖干渉RNA(本siRNA)(以下、本siRNAと記すこともある。)とも本明細書では呼ばれる。
本siRNAは、UGT遺伝子の塩基配列に基づき作製すればよく、また市販の試薬としても購入可能である。肝臓への送達を効率良くするために、コレステロール等の修飾がなされたものでもよい。また、安定性を高める為に、sense鎖又はantisense鎖に、例えば、2’−O−メチル又は2’−デオキシ等の化学修飾がされたものでもよい。
本発明において「UGT遺伝子」とは、UDP glucuronosyltransferase family遺伝子群であり、当該遺伝子群には、例えば、ラットにおいては、UGT1A(UGT1A1:配列番号23(ラット)、配列番号24(マウス)、UGT1A2、UGT1A3、UGT1A4、UGT1A5、UGT1A6、UGT1A7、UGT1A8、UGT1A9、UGT1A10、UGT1A11等)、UGT1B(UGT1B1、UGT1B2、UGT1B3、UGT1B4、UGT1B5等)、UGT2A(UGT2A1等)、UGT2B(UGT2B1:配列番号22(マウス)、配列番号25(ラット)、UGT2B2、UGT2B3等)といった、複数のサブタイプが含まれる。それぞれのサブタイプは基質となり得る物質が異なる。従って、遺伝子群に共通の塩基配列をターゲットに選択して遺伝子群全体の発現を抑制するのか、又は、個々のサブタイプ特異的な塩基配列をターゲットにして個々のサブタイプを発現抑制するのか選択する必要があり、目的に応じてどちらかの選択肢を選択すればよい。
本発明におけるUGT遺伝子発現抑制の方法を以下に具体的に説明するが、これらの説明に記載される内容に限定するものではない。
本siRNAを培養細胞内へ送達方法としては、例えば、塩化カルシウム法やリポフェクション法、エレクトロポレーション法等を用いたフォワード及びリバーストランスフェクション法等が挙げられる。より好ましくはリポフェクション法であるが、導入する培養細胞の種類によって、最適な送達方法を選択すればよい。
一方、哺乳動物生体内の細胞へ本siRNAを送達方法として、例えば、対象哺乳動物への投与が挙げられる。好ましい投与方法として、例えば、経口投与、経皮投与、皮下投与、腹腔内投与、経気道投与、経眼投与、筋肉内投与、血管内投与、肝臓内直接投与等が挙げられる。このとき、本siRNAは、外包せずにそのまま投与してもよく、より好ましくは、リポソーム等のキャリヤーに内包又は結合させて投与してもよい。より好ましくは、リポソームとコレステロールとの混合物、より好ましくはDMRIE-Cに内包又は結合させて投与してもよい。尚、前記経口投与を行うとき、本siRNAを食物に混合して生物に摂食させてよい。前記血管内投与における血管としては、例えば、生物体内の動脈及び静脈全てを挙げることができる。好ましくは、例えば、肝門脈、肝動脈、尾静脈、頚静脈等が挙げられる。
投与する本siRNAの有効量は、対象とするターゲット遺伝子、培養細胞種、哺乳動物種、投与方法等によって異なり、適当な量はそれぞれの条件毎に変更することができる。例えば、哺乳動物生体内への一日一回の投与において、例えば、マウスの尾静脈内投与の場合には、好ましくは0.01〜1000mg/kg体重/日、より好ましくは10mg/kg体重/日であり、例えば、ラットの尾静脈投与の場合、例えば、好ましくは0.01〜1000mg/kg体重/日、より好ましくは10mg/kg体重/日である。尚、1日あたりの投与量を複数回に分割して投与することもできる。
本siRNAを反復投与する場合には、肝門脈や肝動脈等への血管内投与としては、例えば、当該血管へのカテーテルの留置又は本siRNAを含有した浸透圧ポンプの埋め込み等による投与を好ましく挙げることができる。また、外科的処置が好ましくない場合には、尾静脈や頚静脈への血管内投与が好ましく挙げられる。
尚、反復投与の間隔及び回数は、実施形態の条件毎に変更することができる。例えば、マウスの尾静脈内投与の場合には、好ましくは0.01〜1000mg/kg体重/日、より好ましくは10mg/kg体重/日の本siRNAを複数日間行う。また、投与日の間隔を1日以上空けて投与を行うこともできる。例えば、ラットの尾静脈内投与の場合には、好ましくは0.01〜1000mg/kg体重/日、より好ましくは10mg/kg体重/日の本siRNAを複数日間行う。また、投与日の間隔を1日以上空けて行うこともできる。
ターゲット遺伝子であるUGT遺伝子の発現量の測定は、単位細胞量当りの当該遺伝子の転写産物量を測定する方法や同翻訳産物量を測定する方法等により行うことができる。
UGT遺伝子の転写物量を測定するには、当該遺伝子の転写産物であるmRNA量を測定する。このmRNA量の測定は、具体的には、例えば、定量的リアルタイム−ポリメラ−ゼチェイン反応(以下、定量的RT−PCRと記す)、ノ−ザンハイブリダイゼ−ション法[J.Sambrook, E.F.Frisch,T.Maniatis著;モレキュラ−・クロ−ニング第2版(Molecular Cloning 2nd edition)、コ−ルドスプリング・ハ−バ−・ラボラトリ−(Cold Spring Harbor Laboratory)発行、1989年]、DNAアレイ法、インサイチュ−ハイブリダイゼ−ション法等により実施することができる。
また、当該遺伝子の翻訳産物量を測定するには、当該遺伝子の塩基配列にコ−ドされたアミノ酸配列からなる蛋白質量を測定する。この蛋白質量の測定は、具体的には、当該蛋白質に対する特異抗体を用いた免疫学的測定法(例えば、ELISA、ウェスタンブロット、RIA、免疫組織化学的検査等)、二次元電気泳動法、高速液体クロマトグラフィ−を用いた方法等により実施することができる。尚、当該蛋白質に対する特異抗体は、常法に準じて、当該蛋白質を免疫抗原として調製することができる。
次に、UGT遺伝子の発現抑制を利用した、被験物質の代謝評価法(以下、本発明代謝評価方法と記すこともある。)を説明する。
本発明代謝評価方法は、下記の3つの工程を含む。
(1)検体内でのUGT遺伝子の発現をRNA干渉によって抑制する第一工程;
(2)第一工程により得られた検体に対して被験物質を接触させる第二工程;
(3)第二工程により得られた検体における被験物質の代謝量に係る値を測定し、測定された値と対照との差異に基づき前記被験物質の代謝量を評価する第三工程;
本発明代謝評価方法の第一工程に関しては、例えば、上記で説明した本siRNA処理によるUGT遺伝子の発現抑制方法を挙げることができる。
本発明代謝評価方法の第二工程に関しては、例えば、検体(例えば、哺乳動物、それから採取された組織、或いは、分離された細胞又は培養細胞)に対して被験物質を接触させる方法としては、より具体的には、培養細胞の場合、例えば、第一工程により本siRNAを処理した後に、被験物質を含む溶液を培地へ添加する。また別の方法としては、例えば、培養細胞を回収した後、培養細胞の全タンパク質、S9又はミクロソームを抽出し、それらを含む溶液に被験物質を添加する。いずれの場合も、添加する濃度に関しては、使用する検体、被験物質の組み合わせに応じて予め第三工程での被験物質の代謝量に係る値が検出・測定できる濃度を検討することが望ましい。
検体が哺乳動物生体内の細胞の場合には、例えば、第一工程により本siRNAを処理した後に、好ましくは、複数日後に、哺乳動物に対して被験物質を投与する。被験物質を投与する方法としては、例えば、経口(強制又は飲料水や餌に混じる)、筋肉内、静脈内、皮下、腹腔内、経気道等への投与により行うことができる。投与量、投与回数及び投与期間は、例えば、全身状態、全身諸器官組織等に重篤な影響を及ぼさない範囲内(例えば、投与量は、最大耐量)とすればよい。また別の方法としては、検体から目的とする組織を採取し、そこから全タンパク質、S9又はミクロソームを抽出し、それらを含む溶液に被験物質を添加する。いずれの場合も、添加する濃度に関しては、使用する検体、被験物質の組み合わせに応じて予め第三工程での代謝量に係る値が検出・測定できる濃度を検討することが望ましい。
このようにして、哺乳動物、それらから採取された組織、或いはその組織から分離された細胞又はその培養細胞等の検体と、被験物質とを接触させることができる。
より具体的には例えば、第一工程により処置された哺乳動物に対して被験物質を投与するには、以下のように行えばよい。
前記被験哺乳動物に対して被験物質を、成獣哺乳動物を用いる場合には3日間以上、幼若哺乳動物を用いる場合には3日間、少なくとも1日1回以上、例えば、経口投与、皮下投与又は吸入投与する。
第二工程における被験物質の経口投与は、例えば、以下の手順で行えばよい。
まず、投与液の調製に関して、被験物質を必要量秤量し、これをそのまま投与液とする。必要に応じて適当な溶媒(コーンオイルや約0.25〜0.5%のメチルセルロース溶液等)を用いて溶液又は均一な懸濁液を調製する。経口投与は注射筒及び弾性カテーテル等を用いて1匹当たり望ましくは5mL/kg/day以下の液量で少なくとも1日1回以上経口投与する。これを3日間以上(成獣哺乳動物)又は3日間(幼若哺乳動物)継続して行う。
第二工程における被験物質の皮下投与は、例えば、以下の手順で行えばよい。
まず、投与液の調製に関して、被験物質を必要量秤量し、これをそのまま投与液とする。必要に応じて適当な溶媒(コーンオイルや約0.25〜0.5%のメチルセルロース溶液等)を用いて溶液又は均一な懸濁液を調製する。皮下投与は注射筒及び注射針等を用いて、望ましくは1匹当たり4mL/kg/day以下の液量で少なくとも1日1回以上皮下投与する。これを3日間以上(成獣哺乳動物)又は3日間(幼若哺乳動物)継続して行う。
第二工程における被験物質の吸入投与は、例えば、以下の手順で行えばよい。
まず、投与液の作製に関して、被験物質を必要量秤量し、これをそのまま投与液とする。必要に応じて適当な溶媒(コーンオイルやアセトン等)を用いて溶液又は均一な懸濁液を作製する。調製した投与液を噴霧装置に装着する。吸入投与は適当な曝露チャンバーを用いて、実験哺乳動物の自発呼吸により吸引させることにより行う。少なくとも、1日1回以上、1回当たり連続約4時間以上吸入投与する。これを3日間以上(成獣哺乳動物)又は3日間(幼若哺乳動物)継続して行う。
本発明代謝評価方法の第三工程に関しては、第二工程により得られた検体における被験物質の代謝量に係る値を測定するには、当該分野における通常の測定方法により行えばよい。より具体的には例えば、単位量の検体当たりの被験物質又はその代謝物の変化量に係る値を測定することで代謝量に係る値を測定することができる。
被験物質又はその代謝物の量に係る値を測定する方法としては、例えば、レポーター遺伝子アッセイ法により測定する方法、吸光光度計により測定する方法、蛍光量を測定する方法、放射線標識体を用いその放射線量を測定する方法、当該被験物質又は代謝物に対する特異抗体を用いた免疫学的測定法(例えば、ELISA、ウェスタンブロット、RIA、免疫組織化学的検査等)、二次元電気泳動法、高速液体クロマトグラフィ−等により測定する方法等により実施することができる。
このようにして測定された代謝量に係る値と、対照との差異に基づき前記被験物質の代謝量を評価すればよい。ここで対照としては、例えば、被験物質に予め接触していない検体において、当該被験物質に予め接触させられた検体の場合と同様な工程を実施することにより得られる値を挙げることができる。また、例えば、UGT遺伝子の発現をRNA干渉によって抑制されていない検体において、UGT遺伝子の発現をRNA干渉によって抑制された検体の場合と同様な工程を実施することにより得られる値が挙げられる。また更に、これらの組み合わせ条件から得られる値を挙げることができる。
第三工程における「測定された値と対照との差異に基づき前記被験物質の代謝量を評価する」には、例えば、対照が被験物質に予め接触していない検体における値である場合には、測定された値と対照(値)とを比較して、前記の「測定された値」と対照(値)とが異なれば、その差異に基づいて、前記被験物質の代謝量の変化(例えば、増減)を評価すればよい。また、例えば、対照がUGT遺伝子の発現をRNA干渉によって抑制されていない検体における値である場合には、測定された値と対照(値)とを比較して、前記の「測定された値」と対照(値)とが異なれば、その差異に基づいて、前記被験物質の代謝量の変化(例えば、増減)を評価すればよい。この場合には、前記代謝量の変化が減少であれば、前記被験物質の代謝は、UGT遺伝子の発現誘導を介した代謝であると評価することもできる。
次に、被験物質によるUGT遺伝子の発現誘導を介した毒性発現の評価方法(以下、本発明毒性発現評価方法と記すこともある。)を説明する。
本発明毒性発現評価方法は、下記の5つの工程を含む。
1)検体に対して被験物質を接触させる第一工程;
2)第一工程により得られた検体における表現形レベルを指標とした正の毒性学的変化量に係る値を測定する第二工程;
3)UGT遺伝子の発現をRNA干渉によって抑制された検体に対して被験物質を接触させる第三工程;
4)第三工程により得られた検体における表現形レベルを指標とした正の毒性学的変化量に係る値を測定する第四工程;
5)第二工程で測定された正の毒性学的変化量に係る値に対して第四工程で測定された正の毒性学的変化量に係る値を減弱させる被験物質を、UGT遺伝子の発現誘導を介した毒性を有すると評価する第五工程;
本発明毒性発現評価方法の第一工程に関しては、本発明代謝評価方法の第一工程及び第二工程で説明した方法において、「UGT遺伝子の発現をRNA干渉によって抑制された検体」の代わりに「UGT遺伝子の発現をRNA干渉によって抑制されていない検体」を用いること以外は同様な方法に準じた方法により実施すればよい。
本発明毒性発現評価方法の第二工程に関しては、本発明代謝評価方法の第三工程で説明した方法において、「UGT遺伝子の発現をRNA干渉によって抑制された検体」の代わりに「UGT遺伝子の発現をRNA干渉によって抑制されていない検体」を用いること以外は同様な方法に準じた方法により実施すればよい。
本発明毒性発現評価方法の第三工程に関しては、本発明代謝評価方法の第一工程及び第二工程で説明した方法に準じた方法を挙げることができる。
本発明毒性発現評価方法の第四工程及び第五工程に関しては、本発明代謝評価方法の第三工程で説明した方法に準じた方法を挙げることができる。
第四工程に関しては、第二工程で測定の対象とした「表現形レベル」と同じ種類の「表現形レベル」を指標とした正の毒性学的変化量に係る値を測定すればよい。これらの値は、例えば、当該技術分野における通常の毒性試験法に従い測定してもよいし、ターゲット遺伝子であるUGT遺伝子の発現量として、単位細胞量当りの当該遺伝子の転写産物量又翻訳産物量を測定してもよい。
本発明は、本発明毒性評価方法により評価された、物質が有する毒性の有無に基づきUGT遺伝子の発現誘導を介した毒性を有する化学物質を除去する工程を有することを特徴とする化学物質の探索方法を含む。
本発明は、検体内で発現するUGT遺伝子の発現を抑制することにより、(1)病態の治療薬や治療法を開発することに利用することができる。また、 (2)病態モデルや(3)物質の代謝評価方法、更には、(4)物質の毒性評価方法にも利用することができる。
詳細には、(1)医薬品の場合、治療目的に投与された薬物がUGT蛋白により速やかに代謝される為、その血中濃度を長時間維持し難い場合がある。その場合、代謝に関連するUGT遺伝子の発現を抑制することにより、薬物の代謝速度を減少させることができ、薬効増強に繋がる。更に、(2)UGT1A遺伝子は、ビリルビンや甲状腺ホルモンの代謝に関わることから、例えば、UGT1Aの発現を抑制した哺乳動物は高ビリルビン症(Crigler-Najjar症候群)や甲状腺機能亢進症等の病態モデルとしての使用も期待される。また、(3)UGT遺伝子の発現を抑制した検体に、注目する物質を接触させ、その代謝物の生成量変化から代謝の有無を評価できる。更に、(4)物質による影響として、検体内でのUGTの発現誘導が亢進された結果、生体内由来の物質が過剰代謝され、そのために毒性を発現するようなケースを予めシミュレーション又は再現することも可能となる。言い換えれば、注目する物質をUGT遺伝子の発現を抑制した哺乳動物に曝露することにより、当該物質によるUGT遺伝子の発現誘導を介した毒性発現を評価することも可能であり、このようにUGT遺伝子を発現抑制することは非常に大きな効果を生むことが期待される。
以下、実施例を挙げてさらに詳細に本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 (培養細胞を用いたUGT遺伝子の発現抑制)
(1)哺乳動物由来の培養細胞の調製
肝臓初代培養細胞は、Wistarラット10週齢雄単一個体の肝臓より調製した。
培養細胞の調製は、摘出された肝臓からコラゲナーゼ肝環流により採取し、William's培養液で洗浄した後、コラーゲンコート6穴プレートへ3.5x10細胞/wellの濃度で播種した(0日目)。3時間後に死細胞を除去するために、培養液の交換を行った。1群当り2〜4wellの培養細胞を用いて実験を行った(N=2〜4)。尚、培養液は毎日交換を行った。
(2)RNA干渉
UGT1Aファミリーの共通領域をターゲットとした本siRNA(本siRNA(UGT1A):sense鎖 配列番号1:5'- GCU ACA CCG GAA CUA GAC CAU CGA A -3'及びantisense鎖 配列番号2:5'- UUC GAU GGU CUA GUU CCG GUG UAG C -3')、又は、UGT2B1をターゲットとした本siRNA(本siRNA(UGT2B1):sense鎖 配列番号3:5'- CCA CAG AAU ACA GCC ACU GGA UUA A -3'、及びantisense鎖 配列番号4:5'- UUA AUC CAG UGG CUG UAU UCU GUG G -3')、又は、UGT2B2をターゲットとした本siRNA(本siRNA(UGT2B2):sense鎖 配列番号5:5'- CCC ACC ACC GUA GAU GAG ACA AUG A -3'及びantisense鎖 配列番号6:5'- UCA UUG UCU CAU CUA CGG UGG UGG G -3')を作製し(インビトロジェン社製)、作製されたsiRNAを培養細胞へLipofectamine RNAiMax導入試薬(インビトロジェン社製)を用いて導入した。RNA干渉の効果は、いかなる遺伝子の塩基配列とも相補的でない塩基配列を持つ、対照(コントロール)siRNA(Stealth RNAi Negative Control with Midium GC、インビトロジェン社製、カタログ番号:12935-300)(対照(コントロール)siRNA)を対照として評価した。
上記siRNAの導入は、培養細胞を播種した翌日に行い(1日目)、最終濃度100nMで処理し、4時間後に新しい培養液に交換した。細胞密度は、導入時でおよそ50%コンフレントであった。
(3)total RNAの調製
RNAの調製は、siRNAの導入から72時間後に行った( 4日目)。培養細胞をPBS(リン酸ナトリウム緩衝液)で洗い、1 mlのISOGEN(株式会社 ニッポンジーン社製)を加え、氷冷しながらピペッティング及びボツテックスにてホモジナイズし、5分間室温で放置した。次いで、これに0.2mlのクロロホルム(関東化学社製)を添加し、15秒間上下に激しく撹拌した後、5分間室温で放置した。得られた混合物を4℃、12,000g、15分間遠心分離した後、得られた水層を1.5mlアシストチューブ(アシスト社製)に回収した。更に、これに0.5mlの2-プロパノール(関東化学社製)を添加して、転倒混和後、これに室温で10分間静置した。得られた混合物を4℃、12,000g、10分間遠心分離後、上清を除去することによりペレットを得た。得られたペレットは、1mlの70%エタノール溶液で洗浄した。得られたペレットにDEPC処理滅菌蒸留水を20μl添加した後、溶解することにより、total RNA溶液を得た。得られたRNA溶液に対して更に、RNeasy Kit(Qiagen社製)を使用し、取り扱い説明書に従い、DNase処理及び精製を行った。
(4)cDNAの調製
TaqMan Reverse Transcription Regents(ABI社製)に含まれる試薬(10x Taq Man RT buffer 1μL、25mM MgCl2 2.2μL、DeoxyNTPs Mixure 2μL、Oligo dT 0.5μL、RNase Inhibitor 0.2μL、MultiScribe RT 0.25μL)及びDEPC処理滅菌蒸留水2.85μLを混合した。得られた混合物に、上記(3)で調製されたtotal RNA 1μLを添加した。次いで、得られた混合物を、25℃、10分間、次いで48℃、30分間保温した後、95℃、5分間加熱することにより、逆転写反応を行った。反応後、混合物を4℃で冷却して、cDNA溶液とした。
(5)定量的RT-PCRを用いた各UGT遺伝子の発現解析
上記(4)で調製されたcDNAを鋳型として、以下のようにしてPCRを行って増幅されたDNAを定量した。即ち、前記cDNA 2μl、UGT1A用Forwardプライマ−(配列番号7:5'- CCA TCA CCG GCC TTT CC - 3')22.5pmol、UGT1A用Reverseプライマー(配列番号8:5'- GCT GCA CCA TGA AAG TAT TGA TAT CT - 3')22.5pmol、UGT1A用プローブ(配列番号9:5'- CCT GGC CCC CGT GTT GCC T -3')6.25pmol、又は、UGT2B1用Forwardプライマ−(配列番号10:5'- GGA GCC TGT GGA AAA GTG CTA -3')22.5pmol、UGT2B1用Reverseプライマー(配列番号11:5'- TGG GCA AGT TCA TTC AGA ATT ATC - 3')22.5pmol、UGT2B1用プローブ(配列番号12:5'- TGG CCC ACA GAA TAC AGC CAC TGG A - 3')6.25pmol、又は、UGT2B2用Forwardプライマ−(配列番号13:5'- CAA GGA ATG GGA CAC GTT TTA CA - 3')22.5pmol、UGT2B2用Reverseプライマー(配列番号14:5'- AAG CCA TAT TTC TAC TTT GCT CAT TG - 3')22.5pmol、UGT2B2用プローブ(配列番号15:5'- ATT TTG GGA AGG CCC ACC ACC G -3')6.25pmol及びTaqMan Universal Master Mix(ABI社) 12.5μlを含む25μlの反応液を調製し、調製された反応液に対してGeneAmp5700 Sequence detection System(ABI社)を用いて、50℃、5分間、次いで95℃、10分間保温した後、95℃、15秒、次いで60℃、1分間の保温を1サイクルとしてこれを40サイクル実施する条件でPCRを行った。増幅されたDNAの量から、各UGT遺伝子のmRNAの量を測定した。
また、対照遺伝子としてGlyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase(GAPDH)遺伝子(配列番号26(ラット)、配列番号27(マウス))のmRNAの量も同様の操作で測定した(Forwardプライマー 配列番号16:5'- GCT GCC TTC TCT TGT GAC AAA GT- 3'、及び、Reverseプライマー 配列番号17:5'- CTC AGC CTT GAC TGT GCC ATT - 3'、並びに、プローブ 配列番号18:5'- TGT TCC AGT ATG ATT CTA CCC ACG GCA AG - 3')。各UGT遺伝子のmRNAの量と、GAPDH遺伝子のmRNAの量との比を算出することにより、各UGT遺伝子の発現量に係る値とした。無処置群、対照(コントロール)siRNA処置群、本siRNA(UGT1A)、又は、本siRNA(UGT2B1)、又は、本siRNA(UGT2B2)処置群の培養細胞における各UGT遺伝子の発現量に係る値もそれぞれ求めた。その結果、本siRNA(UGT1A)処置群におけるUGT1A、UGT2B1 、UGT2B2遺伝子の発現量に係る値が、対照(コントロール)siRNA処置群における発現量に係る値と比較して、それぞれ31%、9%、6%まで抑制されたことが明らかとなった(図1、図2、図3)。尚、mRNA発現は、本siRNA の標的以外のUGT遺伝子に関しては見られなかったことから(図2、図3)、標的特異性が高いことがわかる。
実施例2 (本siRNA(UGT1A)及び本siRNA(UGT2B1)の単回尾静脈内投与によるラット肝臓におけるUGT1A及びUGT2B1遺伝子の発現抑制)
(1)被験哺乳動物の準備
4週齢のCrl:CD(SD)雄ラット(日本チャールス・リバーから購入)を、1週間の検疫期間の後、5週齢で実験に供した。
(2)UGT1A及びUGT2B1を標的遺伝子とした本siRNA又は対照(コントロール)siRNAを含む投与液の準備
UGT1Aファミリーの共通領域をターゲットとした本siRNA(UGT1A)(sense鎖 配列番号1:5'- GCU ACA CCG GAA CUA GAC CAU CGA A -3'、及びantisense鎖 配列番号2:5'- UUC GAU GGU CUA GUU CCG GUG UAG C -3')又はUGT2B1をターゲットとした本siRNA(UGT2B1)(sense鎖 配列番号3:5'- CCA CAG AAU ACA GCC ACU GGA UUA A -3'、及びantisense鎖 配列番号4:5'- UUA AUC CAG UGG CUG UAU UCU GUG G -3')(インビトロジェン社製)を0.8mg/mLの濃度でリンゲルに溶かした後、これに同容量のDMRIE-Cを混和する。また、対照(コントロール)siRNAは、Stealth RNAi Negative Control with Midium GC(インビトロジェン社製、カタログ番号:12935-300)を0.8mg/mLの濃度でリンゲルに溶かし、同容量のDMRIE-Cと混和する。
(3)被験哺乳動物への投与
(1)で準備された被験哺乳動物について天秤を用いて固体別に体重を測定し後、(2)で準備された本siRNA(UGT1A)又は本siRNA(UGT2B1)を含む投与液を10mg/kg/dayの投与量で、且つ、12mL/mg/dayの液量で、1日1回、注射により尾静脈内投与した(以下、本siRNA(UGT1A)及び本siRNA(UGT2B1)投与哺乳動物と記すこともある。)。尚、対照哺乳動物として、本siRNA(UGT1A)又は本siRNA(UGT2B1)を含む投与液の代わりに、対照(コントロール)siRNAを含む投与液を、本siRNA(UGT1A)又は本siRNA(UGT2B1)投与哺乳動物と同様にして投与した被験哺乳動物(以下、対照(コントロール)siRNA投与哺乳動物と記すこともある。)を準備した。更に、上記の処置によって生じる影響を把握する目的で、何も投与しない哺乳動物(以下、無処置哺乳動物と記すこともある。)を設定した。尚、いずれの場合も、3匹の被験哺乳動物を用いた。
(4)検査標本の採取及び保存
投与24時間後、解剖直前の体重を測定し、エーテル等の適切な麻酔薬を用いて解剖対象哺乳動物に麻酔をかけた後、腹大動脈からの採血にて安楽死させた。致死後、全身の諸器官の剖検(肉眼的病理観察)を行った後、肝臓を摘出し、速やかに天秤を用いて湿重量を測定した。湿重量の測定後、肝臓を切り分け、一部はRNA発現解析用肝臓組織としてRNA later(アンビオン社製)中に入れ、遺伝子解析まで4℃で保存した。また、一部は蛋白解析用肝臓組織として液体窒素で凍結し、その後、遺伝子解析まで-80℃で保存した。
(5)total RNAの調製
上記(4)で保存した肝臓組織について、それぞれ湿重量10〜50mgに対して1mlのISOGEN(株式会社 ニッポンジーン社製)を加え、氷冷しながらポリトロンホモジナイザーにてホモジナイズし、5分間室温で放置した。次いで、これに0.2mlのクロロホルム(関東化学社製)を添加し、15秒間上下に激しく撹拌した後、5分間室温で放置した。得られた混合物を4℃、12,000g、15分間遠心分離した後、水層を1.5mlアシストチューブ(アシスト社製)に回収した。更に、これに0.5mlの2-プロパノール(関東化学社製)を添加して、転倒混和後、室温で10分間静置した。4℃、12,000g、10分間遠心分離後、上清を除去することにより、ペレットを得た。得られたペレットは、1mlの70%エタノール溶液で洗浄した。得られたペレットにDEPC処理滅菌蒸留水を20μl添加し、溶解し、total RNA溶液を得た。このRNA溶液はさらに、RNeasy Kit(Qiagen社製)を使用し、取り扱い説明書に従い、DNase処理及び精製を行った。
(6)cDNAの調製
TaqMan Reverse Transcription Regents(ABI社製)に含まれる試薬(10x Taq Man RT buffer 1μL、25mM MgCl2 2.2μL、DeoxyNTPs Mixure 2μL、Oligo dT 0.5μL、RNase Inhibitor 0.2μL、MultiScribe RT 0.25μL)及びDEPC処理滅菌蒸留水2.85μLを混合した。得られた混合物に、上記(5)で調製されたtotal RNA 1μLを添加した。次いで、得られた混合物を、25℃、10分間、次いで48℃、30分間保温した後、95℃、5分間加熱することにより、逆転写反応を行った。反応後は4℃で冷却して、これをcDNA溶液とした。
(7)定量的RT-PCRを用いたUGT1A及びUGT2B1 遺伝子の発現解析
上記(6)で調製されたcDNAを鋳型として、以下のようにしてPCRを行って増幅されたDNAを定量した。即ち、前記cDNA 2μl、UGT1A用Forwardプライマ−(配列番号7:5'- CCA TCA CCG GCC TTT CC - 3')22.5pmol、UGT1A用Reverseプライマー(配列番号8:5'- GCT GCA CCA TGA AAG TAT TGA TAT CT - 3')22.5pmol、UGT1A用プローブ(配列番号9:5'- CCT GGC CCC CGT GTT GCC T -3')6.25pmol、又は、UGT2B1用Forwardプライマ−(配列番号10:5'- GGA GCC TGT GGA AAA GTG CTA - 3')22.5pmol、UGT2B1用Reverseプライマー(配列番号11:5'- TGG GCA AGT TCA TTC AGA ATT ATC -3')22.5pmol、UGT2B1用プローブ(配列番号12:5'- TGG CCC ACA GAA TAC AGC CAC TGG A -3')6.25pmol及びTaqMan Universal Master Mix(ABI社) 12.5μlを含む25μlの反応液を調製し、調製された反応液に対してGeneAmp5700 Sequence detection System(ABI社)を用いて、50℃、5分間、次いで95℃ 10分間保温した後、95℃ 15秒、次いで60℃ 1分間の保温を1サイクルとしてこれを40サイクル実施する条件でPCRを行った。増幅されたDNAの量から、UGT1A及びUGT2B1遺伝子のmRNAの量を測定した。
また、対照遺伝子としてGlyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase(GAPDH)遺伝子のmRNAの量も同様の操作で測定した(Forwardプライマー 配列番号16:5'- GCT GCC TTC TCT TGT GAC AAA GT -3'、及び、Reverseプライマー 配列番号17:5'- CTC AGC CTT GAC TGT GCC ATT -3'、並びに、プローブ 配列番号18:5'- TGT TCC AGT ATG ATT CTA CCC ACG GCA AG -3')。UGT1A及びUGT2B1遺伝子のmRNAの量とGAPDH遺伝子のmRNAの量との比を算出することにより、UGT1A及びUGT2B1遺伝子の発現量に係る値とした。また、対照(コントロール)siRNA投与哺乳動物群、 本siRNA(UGT1A)投与哺乳動物群の肝臓組織におけるUGT1A遺伝子の発現量に係る値を個体別にそれぞれ求めた。その結果、本siRNA(UGT1A)投与哺乳動物の肝臓組織におけるUGT1A遺伝子の発現量に係る値が、対照(コントロール)siRNA投与哺乳動物の肝臓組織におけるUGT1A遺伝子の発現量に係る値と比較して、投与後1日間(投与翌日)では23%まで抑制されたことが明らかとなった(図4)。また同様にして、本siRNA(UGT2B1)投与哺乳動物の肝臓組織におけるUGT2B1遺伝子の発現量に係る値が、対照(コントロール)siRNA投与哺乳動物の肝臓組織におけるUGT2B1遺伝子の発現量に係る値と比較して、投与後1日間(投与翌日)では37%まで抑制されたことも明らかとなった(図5)。
実施例3 (マウスにおけるUGT1A遺伝子の発現抑制)
5週齢のCrj:CD-1雄マウス(日本チャールス・リバーから購入)を、1週間の検疫期間の後、5週齢で実験に供した。実施例2(2)に記載される操作と同様にして、UGT1Aファミリーの共通領域をターゲットとした本siRNA(UGT1A)(sense鎖 配列番号1:5'- GCU ACA CCG GAA CUA GAC CAU CGA A -3'及びantisense鎖 配列番号2:5'- UUC GAU GGU CUA GUU CCG GUG UAG C -3')を含む投与液を準備し、実施例2(3)の操作に従い尾静脈内投与した。尚、対照哺乳動物として、本siRNA(UGT1A)を含む投与液の代わりに、対照(コントロール)siRNAを含む投与液を、本siRNA(UGT1A)投与哺乳動物と同様にして投与した(以下、対照(コントロール)siRNA投与哺乳動物と記すこともある)。更に、上記の処置によって生じる影響を把握する目的で、なにも投与しない哺乳動物(以下、無処置哺乳動物と記すこともある。)を設定した。尚、いずれの場合も、3匹の被験哺乳動物を用いた。
検査標本は、投与後24時間、48時間、72時間後に、実施例2(4)から(6)までに記載される操作を行うことにより、cDNAを調製した。この調製されたcDNAを鋳型として、実施例2(7)に記載の操作にて、UGT1A遺伝子及び対照遺伝子としてGlyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase(GAPDH)遺伝子のPCRを行い、増幅されたDNAを定量した。ただし、定量的RT-PCRを行う際のプライマー及びプローブに関しては、UGT1A用Forwardプライマ−(配列番号7:5' - CCA TCA CCG GCC TTT CC - 3')、UGT1A用Reverseプライマー(配列番号8:5' - GCT GCA CCA TGA AAG TAT TGA TAT CT - 3')、UGT1A用プローブ(配列番号9:5' - CCT GGC CCC CGT GTT GCC T - 3')及びマウスGAPDH遺伝子用(Forwardプライマー 配列番号19:5'- TGT GTC CGT CGT GGA TCT GA -3'、及び、Reverseプライマー 配列番号20:5'- CCT GCT TCA CCA CCT TCT TGA -3'、並びに、プローブ 配列番号21:5'- CCG CCT GGA GAA ACC TGC CAA GTA TG -3')を使用した。UGT1A遺伝子のmRNAの量とGAPDH遺伝子のmRNAの量との比を算出することにより、UGT1A遺伝子の発現量に係る値とし、対照(コントロール)siRNA及び本siRNA(UGT1A)投与哺乳動物群の肝臓組織におけるUGT1A遺伝子の発現量に係る値を個体別にそれぞれ求めた。その結果、本siRNA(UGT1A)投与哺乳動物群の肝臓組織におけるUGT1A遺伝子の発現量に係る値が、対照(コントロール)siRNA投与哺乳動物群の肝臓組織におけるUGT1A 遺伝子の発現量に係る値と比較して、投与後72時間後までおよそ40%まで抑制されたことが明らかとなった(図6)。
実施例4 (蛋白発現解析を用いたUGT1Aの発現解析)
実施例3にて保存した蛋白解析用肝臓組織は、ホモジナイザー(ポリトロン社製)により、20mLの磨砕用緩衝液(プロテアーゼインヒビターとして10mg/mLのロイペプシン、1mg/mLのペプスタチン、200μMのPMSFを含むPBS溶液)中でホモジナイズした。サンプルの一部を1.5mLのチューブ(エッペンドルフ社製)へ分注し、これを4℃で30分間、15,000rpmで遠心分離した。上清を蛋白解析に用いた。含まれる蛋白の濃度は、Protein assay試薬(Biorad社製)を用い、吸光光度系により595nmの吸光度から測定した。ウエスタンブロッティングは、プレキャストゲル(Biorad社製)に蛋白サンプル50μgをロードし、電気泳動条件(120V、30mA、80min)で電気泳動を行った。トランスファーは、Hybondメンブレン(GE Healthcare社製)を用い、電気泳動条件(270V、350mA、60min)で行った。一次抗体処理は、5%スキムミルクを含むTBST溶液で1時間ブロッキングした後、メンブレンをTBST溶液で数回洗浄し、1:1000希釈の抗UGT1Aポリクローナル抗体(サンタクルズ社製)を含むTBST溶液中、4℃の条件下で約12時間処理した。二次抗体処理として、メンブレンをTBST溶液で数回洗浄したのち、1:1000希釈の抗ラビットIgG抗体(サンタクルズ社製)を含むTBST溶液中、室温で約2時間処理した。抗体の検出は、Chemi-Lumi One試薬(ナカライテスク社製)を用いてバンドを可視化し、46KD付近にあるUGT1Aのバンドをルミノ・イメージアナライザー(富士フィルム社製)で測定した。次に、内在蛋白の対照(コントロール)としてβアクチンを測定する為に、メンブレンを20mLのストリッピングバッファー(PIERCE社製)で処理して抗体を除去した後、上記と同様の行程を、一次抗体に抗βアクチン抗体(サンタクルズ社製)を用いて行った。UGT1Aのバンドとβアクチンのバンドとの比を算出することにより、UGT1A蛋白の発現量に係る値とした。また、無処置哺乳動物群、対照(コントロール)siRNA投与哺乳動物群、本siRNA(UGT1A)投与哺乳動物群の肝臓組織におけるUGT1A蛋白の発現量に係る値を個体別にそれぞれ求めた。その結果、本siRNA(UGT1A)投与哺乳動物群の肝臓組織におけるUGT1A蛋白の発現量に係る値が、無処置哺乳動物群及び対照(コントロール)siRNA投与哺乳動物群の肝臓組織におけるUGT1A蛋白の発現量に係る値と比較して、投与後3日間でおよそ58%まで抑制されたことが明らかとなった(図7)。
実施例5
マウスにおける被験物質(フェノバルビタール)の甲状腺毒性発現の評価
(1)マウスにおけるUGT1A遺伝子の発現抑制
5週齢のCrj:CD-1雄マウス(日本チャールス・リバーから購入)を、1週間の検疫期間の後、5−7週齢で実験に供した。実施例2(2)に記載される操作と同様にして、本siRNA(UGT1A)(sense鎖 配列番号1:5'- GCU ACA CCG GAA CUA GAC CAU CGA A -3'、及びantisense鎖 配列番号2:5'- UUC GAU GGU CUA GUU CCG GUG UAG C -3')を含む投与液を準備し、実施例2(3)の操作に従い、1日1回、2日間隔で2週間、尾静脈内反復投与した。さらに上記の処置によって生じる影響を把握する目的で、何も投与しない哺乳動物(本siRNA無投与哺乳動物)、及び、対照哺乳動物として対照(コントロール)siRNAを含む投与液を投与した哺乳動物(対照(コントロール)siRNA投与哺乳動物)を設定した。尚、いずれの場合も、4匹の被験哺乳動物を用いた。
(2)マウスへのフェノバルビタールの投与
マウスへのフェノバルビタール(PB)の投与は、フェノバルビタールナトリウム1000ppmの混餌飼料を上記(1)に記載される全哺乳動物に関して、本siRNA(UGT1A)投与開始翌日から14日間食べさせた。混餌飼料に関しては、1週間毎に新しい物に交換し、投与が行われていることを、体重増加量及び飼料の減り具合等から確認した。更に上記の処置によって生じる影響を把握する目的で、何も投与しない哺乳動物(PB無投与哺乳動物)を4匹設定した。
(3)観察、測定及び検査
全哺乳動物に関して、常法に従って、生死確認、体重測定(本siRNA投与日及び解剖時)、解剖時の剖検、血液生化学的検査(例えば、ALT、AST、ALP、LDH、γ-GTP等)、肝重量測定を実施し、PB投与群での肝重量の増加を確認した。また、血液生化学的検査から、本siRNA(UGT1A)投与及びPB投与の哺乳動物群で、他の群に比較して有意にALPが上昇した(図8)。このことは、UGT1Aが甲状腺ホルモンの代謝に関与し、ALPが甲状腺ホルモンの上昇に伴い増加することを踏まえると、甲状腺ホルモン濃度が上昇したことを示唆している。
(4)検体標本の採取及び保存
本siRNA及びフェノバルビタールの投与終了後、解剖直前の体重を測定し、エーテル等の適切な麻酔薬を用いて解剖対象哺乳動物に麻酔をかけた後、腹大動脈からの採血にて安楽死させた。致死後、全身の諸器官の剖検(肉眼的病理観察)を行った後、肝臓を摘出し、速やかに天秤を用いて湿重量を測定した。湿重量の測定後、肝臓を切り分け、一部はRNA発現解析用肝臓組織としてRNA later(アンビオン社製)中に入れ、遺伝子解析発現まで4℃で保存した。また、一部は蛋白解析用肝臓組織として液体窒素で凍結し、その後、遺伝子発現解析まで-80℃で保存した。甲状腺に関しては、正確な重量測定を目的として、気管と一緒に切り出した後、10%中性緩衝ホルマリン液中で24時間固定し、慎重に気管から切り分け重量測定を行った。
(5)定量的RT-PCRを用いたUGT1A 遺伝子発現の解析
実施例2の(4)から(6)までに記載される方法によりで調製されたcDNAを鋳型として、実施例3と同様に以下のようにしてPCRを行い、増幅された各遺伝子のDNA量を定量した。即ち、前記cDNA 2μl、UGT1A用Forwardプライマ−(配列番号7:5'- CCA TCA CCG GCC TTT CC -3')22.5pmol、UGT1A用Reverseプライマー(配列番号8:5'- GCT GCA CCA TGA AAG TAT TGA TAT CT -3')22.5pmol、UGT1A用プローブ(配列番号9:5'- CCT GGC CCC CGT GTT GCC T -3')6.25pmol、及びTaqMan Universal Master Mix(ABI社) 12.5μlを含む25μlの反応液を調製し、調製された反応液に対してGeneAmp5700 Sequence detection System(ABI社)を用いて、50℃、5分間、次いで95℃、10分間保温した後、95℃、15秒、次いで60℃、1分間の保温を1サイクルとしてこれを40サイクル実施する条件でPCRを行った。増幅されたDNAの量から、UGT1A遺伝子のmRNAの量を測定した。
また、対照遺伝子としてGlyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase(GAPDH)遺伝子のmRNAの量も同様の操作で測定した(Forwardプライマー 配列番号19:5'- TGT GTC CGT CGT GGA TCT GA -3'及びReverseプライマー 配列番号20:5'- CCT GCT TCA CCA CCT TCT TGA -3'、並びに、プローブ 配列番号21:5'- CCG CCT GGA GAA ACC TGC CAA GTA TG -3')。UGT1A遺伝子のmRNAの量とGAPDH遺伝子のmRNAの量との比を算出することにより、UGT1A遺伝子の発現量に係る値とし、PB無投与哺乳動物群、本siRNA無投与+PB投与哺乳動物群、対照(コントロール)siRNA投与及びPB投与の哺乳動物群、本siRNA(UGT1A)投与+PB投与哺乳動物群の肝臓組織におけるUGT1A遺伝子の発現量に係る値を個体別にそれぞれ求めた。PB無投与哺乳動物群と本siRNA無投与及びPB投与の哺乳動物群におけるUGT1A遺伝子の発現量に係る値を比較した結果、PB投与の影響によりUGT1A遺伝子の発現量に係る値はおよそ170%にまで亢進されたことが明らかとなった。当該亢進は対照(コントロール)siRNA投与+PB投与哺乳動物群でも同様に観察された。一方、本siRNA(UGT1A)投与及びPB投与の哺乳動物群に関しては、PB投与の影響によるUGT1A遺伝子の発現亢進は認められず、UGT1A遺伝子の発現が抑制されたことが明らかとなった(図9)。
(6)甲状腺重量を指標とした被験物質のUGT遺伝子を介した甲状腺毒性発現評価系の検証
上記(4)で測定した甲状腺重量及び解剖時の体重から比を算出し、PB無投与哺乳動物群、本siRNA無投与+PB投与哺乳動物群、本siRNA(UGT1A)及びPB投与の投与哺乳動物群の値を個体別にそれぞれ求めた。その結果、PB無投与哺乳動物群に比べて本siRNA無投与及びPB投与の哺乳動物群では甲状腺重量(体重比)がおよそ148%に増加したが、一方、本siRNA(UGT1A)及びPB投与の投与哺乳動物群では112%と甲状腺重量(体重比)の増加が減弱傾向にあることが明らかとなった(図10)。
以上のことは、PB投与による甲状腺重量増加が、UGT1Aを介していることを示している。
本発明により、UGT1A遺伝子の発現を特異性高く簡便且つ迅速に抑制する方法等が提供可能となる。本発明を利用することにより、病態の治療薬や治療法の開発、病態モデル哺乳動物や安全性評価モデル哺乳動物の作製に繋がる方法を提供可能とすることになり、極めて有用である。

Claims (8)

  1. RNA干渉による遺伝子発現抑制のためのターゲット遺伝子としてのUGT(UDP glucuronosyltransferase)遺伝子の使用。
  2. 前記UGT遺伝子の使用が、RNA干渉による遺伝子発現抑制下における被験物質投与系でのターゲット遺伝子の発現抑制に基づく代謝量変化を指標とした当該被験物質の代謝評価の為のターゲット遺伝子としての使用である請求項1記載のUGT遺伝子の使用。
  3. 前記UGT遺伝子の使用が、RNA干渉による遺伝子発現抑制下における被験物質投与系でのターゲット遺伝子の発現抑制に基づく表現形レベルを指標とした当該被験物質の毒性評価の為のターゲット遺伝子としての使用である請求項1記載のUGT遺伝子の使用。
  4. 前記UGT遺伝子の使用が、医薬品物質の代謝に関連するUGT遺伝子の発現を抑制することにより、薬物の代謝速度を減少させ、薬効を改善することである請求項1記載のUGT遺伝子の使用。
  5. 前記UGT遺伝子の使用が、RNA干渉による遺伝子発現抑制下における医薬品物質投与系でのターゲット遺伝子の発現抑制に基づく前記医薬品物質の薬効改善(又は代謝速度減少化)の為のターゲット遺伝子としての使用である請求項1記載のUGT遺伝子の使用。
  6. 物質の代謝評価方法であって、
    (1)検体内でのUGT遺伝子の発現をRNA干渉によって抑制する第一工程、
    (2)第一工程により得られた検体に対して被験物質を接触させる第二工程、及び、
    (3)第二工程により得られた検体における被験物質の代謝量に係る値を測定し、測定された値と対照との差異に基づき前記被験物質の代謝量を評価する第三工程
    を含むことを特徴とする代謝評価方法。
  7. 物質の毒性評価方法であって、
    1)検体に対して被験物質を接触させる第一工程、
    2)第一工程により得られた検体における表現形レベルを指標とした正の毒性学的変化量に係る値を測定する第二工程
    3)UGT遺伝子の発現をRNA干渉によって抑制された検体に対して被験物質を接触させる第三工程、
    4)第三工程により得られた検体における表現形レベルを指標とした正の毒性学的変化量に係る値を測定する第四工程、及び、
    5)第二工程で測定された正の毒性学的変化量に係る値に対して第四工程で測定された正の毒性学的変化量に係る値を減弱させる被験物質を、UGT遺伝子の発現誘導を介した毒性を有すると評価する第五工程
    を含むことを特徴とする毒性評価方法。
  8. 請求項7記載の毒性評価方法により評価された、物質が有する毒性の有無に基づきUGT遺伝子の発現誘導を介した毒性を有する化学物質を除去する工程を有することを特徴とする化学物質の探索方法。
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