JP2010262423A - 情報処理装置、道路舗装投資計画の最適化処理方法およびプログラム - Google Patents

情報処理装置、道路舗装投資計画の最適化処理方法およびプログラム Download PDF

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Abstract

【課題】 道路舗装投資計画の策定を支援するための情報処理技術を適用すること。
【解決手段】 本発明の情報処理装置10は、解析対象の道路区間についての外部条件が入力される入力手段(50,52)と、入力された外部条件に従って、トレンド曲線により道路舗装の履歴を近似する最適制御モデルを用い、技術経済性を評価する目的関数が最適化される道路舗装投資計画の近似最適解を求める、第1工種解析手段74と、第2工種解析手段76とを含む最適制御解析手段70と、最適制御解析手段70により求められた近似最適解を初期解として、目的関数が改善される方向を見出し、解を逐次改善して道路舗装投資計画の最終的な最適解を探索する探索手段80と、最終的な最適解を出力する出力手段(50,52)とを含む。
【選択図】図4

Description

本発明は、道路舗装投資計画の策定を支援するための情報処理技術に関し、より詳細には、最適化された道路舗装投資計画を出力する情報処理装置、道路舗装投資計画の最適化処理方法およびプログラムに関する。
近年の行政における効率性および透明性の向上に対する要請の高まりを背景として、道路舗装投資計画の作成手法は、従来の道路設計要領および道路維持修繕要綱に定められた基準に基づいたものから、社会的費用のライフサイクルコストの最小化を目的とした技術経済評価に基づく手法へと大きく方向転換しつつある。特に欧米先進国においては、技術経済評価に基づき道路舗装投資計画を策定するために、HDM−4(Highway Development and Management tool)、RTIM(Road Transport Investment Model)、HERS(Highway Economic Requirements System)、RoSy(登録商標)などのWhat−Ifモデル(オプション評価システムともいう。)に基づくソフトウェア・ツールが用いられている(例えば、非特許文献1)。
上記What−Ifモデルにおいては、外生的に与えられた道路舗装投資計画のオプション案毎に、舗装の供用性の履歴(以下、単に舗装履歴ともいう。)、工事の必要量、舗装履歴に依存する利用者費用などが計算機上でシミュレートされ、オプション案それぞれについての費用便益が計算される。そして、道路公社等の策定を担う主体は、オプション案毎の費用便益を比較して、外生的に与えたオプション案の中から費用便益が最適化される案を選択することにより、道路舗装投資計画について一定の最適化を図ることができる。
上記道路舗装投資計画は、所与の道路区間における、初期舗装設計、10〜20年程度の道路舗装の耐用年数にわたる、維持修繕工事の施工回数、各維持修繕工事の工種、施工強度、施工時期等の種々の項目を計画するものである。ここで、道路舗装投資計画は、新設道路区間においては、初期舗装設計を含み、既設道路区間においては、打換えを含む。したがって、道路舗装投資計画の策定にあっては、通常、上述した種々の項目についてもっともらしいオプション案をまず立案しなければならない。しかしながら、上述した項目は、多岐にわたり、その組合せも無数存在するため、上記What−Ifモデルに基づくソフトウェア・ツールを用いる場合では、担当者は、評価すべきオプション案を経験と勘に頼って作成せざるを得ないという問題があった。
さらに、上記What−Ifモデルに基づくツールを用いる場合、得られる道路舗装投資計画の最適解は、担当者が予め想定したオプション案中の最適なものであるということができるとは言え、想定されるオプション案が限定的であるため、それが真の最適解であるとは限らない。つまり、外生的にオプション案を生成し、評価するという手法を取るWhat−Ifモデルでは、真の最適解を得ることは極めて困難であるという問題があった。
道路舗装投資計画の最適化に関連して、本発明者等は、これまで、舗装履歴をトレンド曲線によって近似した最適制御理論に基づくモデルを提案している(非特許文献2)。この最適制御理論に基づくモデルは、維持修繕工事の実施に応じて鋸歯形状に変化する実際の舗装履歴をトレンド曲線により近似し、舗装劣化、維持修繕効果、利用者費用等を表す連立微分方程式を制約条件とする最適制御問題の解として、解析的に道路舗装投資計画を求めるものである。
上記非特許文献2の最適制御理論に基づくモデルによれば、舗装履歴をトレンド曲線で近似することにより、舗装履歴の不連続性に起因する問題を回避しつつ、ある程度の精度でもって最適解を得ることができる。つまり、上記最適制御理論に基づくモデルによれば、上記What−Ifモデルにおいて問題となっていた解の外生選択肢依存性を回避することができるものと言える。しかしながら、解析的に解を得る手法を採っているため、モデルの連立微分方程式群が簡略化されており、得られる解の精度の観点から、充分なものとは言えなかった。さらに、上記非特許文献2の技術では、取り扱える維持修繕工事の工種がオーバーレイのみであり、適用できる範囲が限定的であるという点で充分なものではなかった。
道路舗装投資計画の最適化に関連して、より高い精度で解を求めることを目的として、本発明者等は、近年、最急勾配法をWhat−Ifモデルに適用したシミュレーション手法(GSOE:Gradient Search method with Option Evaluation System)を開発した(非特許文献3)。非特許文献3に開示されるGSOE法は、所与の初期解の近傍において、複数のオプション案を生成し、近傍のオプション案それぞれについての計算を行い、解の改良の方向を求めて、逐次的に最適解へ接近する手法を採っている。しかしながら、非特許文献3の技術は、初期解依存性が強く、与えた初期解によっては、局所最適解に陥ってしまい、必ずしも真の最適解を得ることができるものではなく、充分なものではなかった。
本発明者等は、上記外生選択肢依存性および初期解依存性を回避するために、さらに、上記最適制御理論に基づくモデルと、上記GSOEと呼ぶシミュレーション手法とを組み合わせた最適化手法を開発している(非特許文献4)。しかしながら、非特許文献4に開示される技術では、適用可能な維持修繕工事の工種がオーバーレイのみに限られているため、交通負荷や舗装状態によっては、実際的ではない解が求められる可能性があった。例えば舗装の強度に比べ交通負荷が高い場合などに、複数の厚めのオーバーレイが短期間に実施されるような計画が最適解として求められてしまったり、逆の場合に、長期間にわたって僅かの薄いオーバーレイだけが実施されるような計画が最適解として求められてしまったりするなど問題があった。上述のような場合では、それぞれ、打換えまたはリシーリングが考慮されることが好ましい。
特に種々の工種の維持修繕工事を考慮して最適化された道路舗装投資計画の策定は、道路公社等の道路舗装投資計画の策定の主体にとって重要であり、したがって、複数の工種の維持修繕工事の施工を含む道路舗装投資計画の策定を支援する技術の開発が望まれていた。
PIARC, "Highway Development and Management Model (version 1.3)", International Study of Highway Development and Management (ISOHDM), World Road Association, PIARC, Paris, France (2002). K. Tsunokawa et al., "Trend curve optimal control model for highway pavement maintenance: Case study and evaluation", Transportation Research Part A, vol. 28, No. 2, 151-166 (1994). K. Tsunokawa et al., "True optimization of pavement maintenance options with What-if models", Computer-Aided Civil and Infrastructure Engineering, 21, 193-204 (2006). R. Ul-Islam et al., "A combined optimization-simulation methodology for pavement maintenance", Proceedings of 22nd ARRB Conference, Canberra, Australia (2006).
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、外生選択肢依存性および初期解依存性を回避しながら、例えば管理者が負担する費用および利用者が負担する費用を含む社会的費用のライフサイクルコストを最小化する真の最適解として、交通負荷や舗装状態に応じた、適切な維持修繕工事の工種による道路舗装投資計画を出力することができる、情報処理装置、道路舗装投資計画の最適化処理方法およびプログラムを提供することを目的とする。
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、本発明では、解析対象の道路区間について入力された外部条件に従って、トレンド曲線により道路舗装の履歴を近似する最適制御モデルを用い、技術経済性を評価する目的関数が最適化される道路舗装投資計画の近似最適解を求める。なお、上記目的関数が社会的費用のライフサイクルコストなどである場合は、上記近似最適解は、目的関数を最小化するものとして求めることができる。また上記目的関数が純利益などである場合は、上記近似最適解は、目的関数を最大化するものとして求めることができる。また、道路舗装投資計画は、例えば、初期舗装設計および工種、施工時期および強度により規定される、各維持修繕工事および舗装打換え工事(以下、維持修繕工事は、舗装打換え工事を含み得るものとして参照する。)を含むことができる。
近似最適解を求めるために、第1工種(例えばオーバーレイ)の維持修繕工事について、上記最適制御モデルの定常状態制御および定常状態に導く過渡制御を求める。そして、第1工種による維持修繕工事の妥当な範囲を規定する制約条件と照合し、第1工種による第1計画案の妥当性を検証する。求められた制御が第2工種(例えばリシーリング)への適合可能性を示す第2工種適合条件に合致したと判定された場合には、第2工種解析処理に処理が渡される。この場合、第2工種解析処理では、第2工種の維持修繕工事について解析し、第2工種による第2計画案の妥当性を検証する。
そして、近似最適解が求められると、該近似最適解を初期解として、上述の計算法に従い目的関数が改善される方向を見出し、解を逐次改善して最終的な最適解を探索し、得られた道路舗装投資計画の最終的な最適解を出力する。
上記構成によれば、最適制御モデルにより解析的に求められた近似最適解を初期解として用いて、後段の勾配探索処理が行われるため、勾配探索の際に局所最適解に陥ってしまう蓋然性、つまり初期解依存性を好適に回避することができる。また、維持修繕工事として複数の工種が考慮されるため、交通負荷や舗装状態に応じた適切な計画の最適近似解が得られることとなる。また、後段の勾配探索の処理では、最適制御モデルよりも複雑なモデルをシミュレートに適用して、より実際的な最適化を図ることが可能とされるため、得られる最終的な最適解の精度を向上することができる。さらに、近似最適解を初期解として、解を逐次改善して行く手法をとっているため、外生選択肢依存性を回避することができる。また、近似最適解から探索をするため、勾配探索処理の収束が早いという利点も有する。
すなわち、上記構成によれば、得られる道路舗装投資計画の最終的な最適解は、外生選択肢依存性および初期解依存性を回避しながらも、技術経済性を評価する目的関数、例えば社会的費用のライフサイクルコストが最小化される最適解として、交通負荷や舗装状態に応じた適切な維持修繕工事の工種の選定を含む道路舗装投資計画が出力される。
さらに本発明では、第2工種解析処理では、第2工種(例えばリシーリング)の維持修繕工事を等価な第1工種の維持修繕工事に変換して、上記最適制御モデルに適用することができる。そして、上記目的関数が最適化される、最適制御モデルの定常状態制御および定常状態に導く過渡制御を求めることができる。この場合において、その定常状態制御および過渡制御がともに妥当であった場合に、これらの制御に対応して求められる第2計画案を上記近似最適解とすることができる。上記構成によれば、第2工種を含む計画を解析的に求めることができる。
また本発明では、第1工種解析処理では、目的関数が最適化される定常状態制御および該定常状態に導く過渡制御が、ともに妥当であった場合には、これらの制御に対応して求められる第1計画案を上述した近似最適解とすることができる。さらに、本発明では、最適制御モデルのパラメータに影響を与え得る道路区間の舗装強度の変更を含む第3工種(例えば打換え)の維持修繕工事について、舗装強度を変数とした上記目的関数を最適化する一次元探索により、上記目的関数が最適化される第3計画案を求めることができる。この場合、第3計画案は、第3工種の維持修繕工事と、後続する第1工種または第2工種の維持修繕工事とを含むことができる。
さらに、本発明では、第1工種解析処理または第2工種解析処理により求められた制御が、第3工種への適合可能性を示す条件に合致したと判定された場合に、第3工種解析処理に処理を渡すことができる。また本発明では、第2工種解析処理では、定常状態制御が妥当であっても、過渡制御が妥当ではなかった場合には、第2工種より程度の重い第1工種を含めた過渡制御の妥当性をさらに検証することができる。そして、妥当であった場合には、第1工種を含めた制御に対応して求められる、第1工種および第2工種による計画案を上記近似最適解とすることができる。
本発明では、さらに、探索手段は、複数の工種間で共通する維持管理強度の共通尺度を用いて計画案を表し、現在の解の近傍の近傍計画案を生成し、現在の解の計画案および該近傍計画案の前記目的関数の値から前記現在の解を中心とした勾配を算出して、改善される方向を見出すことができる。
さらに本発明では、解析対象の道路区間について与えられた外部条件から上記制御モデルで用いるパラメータを生成することができる。また第1工種解析処理では、第1工種の維持修繕工事について、上記最適制御モデルを用いて、求めた制御を第1工種による維持修繕工事の妥当な範囲を規定する第1制約条件と照合し、第1工種による第1計画案の妥当性を検証することができる。さらに、第2工種解析処理では、第2工種の維持修繕工事について、前記最適制御モデルを用いて、求めた制御を第2工種による維持修繕工事の妥当な範囲を規定する第2制約条件と照合し、第2工種を含む第2計画案の妥当性を検証することができる。
なお、上記第1制約条件は、より具体的には、例えば、定常状態制御に対しては、維持修繕工事の頻度に関連する妥当な範囲を表す下記式(13)、および第1工種の強度に関連する妥当な範囲を表す下記式(20)を適用することができ、過渡制御に対しては、下記式(20)および維持修繕工事の頻度に関連する妥当な緩和された範囲を表す下記式(28)を適用することができる。また、上記第2制約条件は、より具体的には、例えば、定常状態制御に対しては、下記式(13)を適用することができ、過渡制御に対しては、下記式(28)を適用することができる。
また本発明では、第2工種への適合可能性を示す条件は、第1工種解析処理の結果、第1制約条件に合致する定常状態の制御が存在せず、一方、前記第1工種による最小の維持修繕工事よりも程度の軽い範囲に緩和された制約条件に合致する定常状態の制御が存在することを条件とすることができる。
また本発明では、第3工種への適合可能性を示す条件は、第1工種解析処理の結果、第1制約条件に合致する定常状態の制御が存在せず、かつ、第1工種による最大の維持修繕工事よりも程度の重い範囲に緩和された制約条件に合致する定常状態の制御が存在するか、または、目的関数を最適化する定常状態制御および過渡制御のうちの前記過渡制御が妥当ではないことを条件とすることができる。
本発明では、第1工種解析処理および第2工種解析処理では、それぞれ、すべての妥当な定常状態それぞれについて、対応する過渡制御を決定し、妥当な定常状態制御および妥当な定常状態に導く過渡制御に対する前記目的関数を評価し、該目的関数が最適化された妥当な制御を選択することで、目的関数を最適化する定常状態および過渡の制御を得ることができる。
さらに本発明では、最適制御モデルは、道路舗装の劣化を表す関数、維持修繕工事の効果を現す関数、道路利用者が負担する費用を表す関数、および道路管理者が負担する費用を表す関数を含むことができる。
すなわち、本発明によれば、上述した特徴を有する道路舗装投資計画の最適化処理を実行する、情報処理装置、道路舗装投資計画の最適化処理方法およびプログラムが提供される。
本発明の実施形態のシミュレーション装置のハードウェア構成を示す。 道路舗装投資計画の技術経済評価の概念を示す図。 本発明の実施形態による最適化処理における、道路舗装投資計画の技術経済評価のフレームワークを示す概念図。 本発明の実施形態のシミュレーション装置の機能ブロック図。 本発明の実施形態のシミュレーション装置が実行する道路舗装投資計画の最適化処理の概略を示すフローチャート。 本発明の実施形態の最適制御モデル・モジュールが実行する全体処理を示すフローチャート。 本発明の実施形態のパラメータ生成部が実行するパラメータ生成処理を示すフローチャート。 特定の交通負荷条件下における、(A)特定の舗装強度の舗装の経年劣化を一例として示すグラフと、(B)道路利用者が負担する費用を舗装ラフネスに対してプロットしたグラフ。 本発明の実施形態のオーバーレイ解析部が実行するオーバーレイ解析処理を示すフローチャート(1/2)。 本発明の実施形態のオーバーレイ解析部が実行するオーバーレイ解析処理を示すフローチャート(2/2)。 s−z平面におけるFSCおよびPSCの定常状態および安定なブランチを示す図。 本発明の実施形態のリシーリング解析部が実行するリシーリング解析処理を示すフローチャート(1/2)。 本発明の実施形態のリシーリング解析部が実行するリシーリング解析処理を示すフローチャート(2/2)。 本発明の実施形態の打換え解析部が実行する打換え解析処理を示すフローチャート(1/2)。 本発明の実施形態の打換え解析部が実行する打換え解析処理を示すフローチャート(2/2)。 本発明の実施形態の勾配探索モジュールが実行する勾配探索処理を示すフローチャート。
以下、本発明を図面に示した特定の実施形態をもって説明するが、本発明は、図面に示した実施形態に限定されるものではない。なお、以下に説明する実施形態では、本発明の情報処理装置の一例として、与えられた外部条件下における、道路舗装投資計画の最適解を求めて出力する、シミュレーション装置を用いて説明する。
セクション1:ハードウェア構成
図1は、本発明の実施形態のシミュレーション装置10のハードウェア構成を示す。図1に示すシミュレーション装置10は、概ねパーソナル・コンピュータやワークステーションなどのコンピュータ装置34として構成されている。図1に示すコンピュータ装置34は、中央処理装置(CPU)12と、CPU12が使用するデータの高速アクセスを可能とするL1およびL2などのレベルを有するキャッシュ・メモリ14と、CPU12の処理を可能とするRAM、DRAMなどの固体メモリ素子から形成されるシステム・メモリ16とを備えている。システム・メモリ16は、本発明において、道路舗装投資計画の最適解を求めるための処理(以下、道路舗装投資計画の最適化処理という。)中に生成される、各種中間データを格納するための記憶領域を提供する。
CPU12、キャッシュ・メモリ14、およびシステム・メモリ16は、システム・バス18を介して、他のデバイスまたはドライバ、例えば、グラフィックス・ドライバ20およびネットワーク・インタフェース・カード(NIC)22へと接続されている。グラフィックス・ドライバ20は、バスを介してディスプレイ24に接続されて、CPU12による処理結果をディスプレイ画面上に表示させている。また、NIC22は、物理層レベルおよびリンク層レベルでシミュレーション装置10を、TCP/IPなどの適切な通信プロトコルを使用するネットワークへと接続している。
システム・バス18には、さらにI/Oバス・ブリッジ26が接続されている。I/Oバス・ブリッジ26の下流側には、PCIなどのI/Oバス28を介して、IDE、ATA、ATAPI、シリアルATA、SCSI、USBなどにより、ハードディスクなどの記憶装置30が接続されている。記憶装置30は、本発明において、道路舗装投資計画の最適化処理で用いる各種データが格納される。また、I/Oバス28には、USBなどのバスを介して、キーボードおよびマウスなどのポインティング・デバイスなどの入力装置32が接続されていて、オペレータによる、道路舗装投資計画の対象となる道路区間についての基本データの設定入力、および計算実行の指令をコンピュータ装置34に指令している。
コンピュータ装置34は、Windows(登録商標)XP、Windows(登録商標)Vista、UNIX(登録商標)、LINUX(登録商標)などのオペレーティング・システム上で動作する、FORTRAN、COBOL、PL/I、C、C++、Visual C++、VisualBasic、Java(登録商標)、Perl、Rubyなどのプログラミング言語により記述されたアプリケーション・プログラムを格納し、実行し、コンピュータ装置34をシミュレーション装置10として機能させている。
セクション2:道路舗装投資計画の最適化処理の概略
以下、図2および図3を参照して、本発明の実施形態によるシミュレーション装置10が実行する、道路舗装投資計画の最適化処理の概略を説明する。図2は、道路舗装投資計画の技術経済評価の概念を示す。
図2(A)は、道路舗装の供用性、利用者について発生する費用および管理者について発生する費用の履歴を示す。道路舗装の供用性は、道路舗装の傷み具合を表し、通常、経時劣化により減少してゆく。利用者の費用は、道路利用者が負担する費用を表し、例えば道路利用者の車両のタイヤの摩耗、ガソリンの消費、車体への悪影響などを含む車両走行費用、および時間的損失費用が含められる。利用者の費用は、図2(A)に示すように、道路舗装の供用性に依存し、供用性の関数として計算することができる。
管理者の費用は、道路管理者が負担する費用を表し、例えば道路舗装の初期建設にかかる費用および維持修繕にかかる費用などが含められ、初期建設時、以降の各維持修繕工事の施工時期に発生する。初期の供用性のレベル、および工事による供用性に対する回復効果の大きさは、それぞれ、初期建設時の舗装設計(例えば、舗装強度、舗装ラフネス、舗装の層数、各層の厚みなど)、および各維持修繕工事の工種(オーバーレイ、リシーリング、打換えなど)および強度(オーバーレイの厚み、リシーリングの種類、打換え時の舗装設計)などに依存する。初期建設費用および維持修繕費用は、これら舗装設計や各維持修繕工事の工事内容などに従って計算することができる。そして、道路舗装の供用性は、図2(A)に示すように、経時劣化により時間とともに減少する一方で、維持修繕工事により回復されるため、時間に対して鋸歯形状に変動することとなる。
図2(B)は、管理水準と、利用者費用、管理者費用および社会的費用との関係を示す図である。なお、利用者費用および管理者費用は、それぞれ、利用者が負担する費用および管理者が負担する費用の所定の解析対象期間にわたる総和である。社会的費用は、利用者費用および管理者費用の合計となる。なお、社会的費用のライフサイクルコスト(LCC:Life Cycle Cost)は、初期建設費用(ICC:Initial Construction Cost)と総輸送費用(TTC:Total Transport Cost)との和である。また、上述した各費用は、通常、所定の社会的割引率を用いて、現在価値に換算され、技術経済評価に供される。
図2(B)に示すように、管理者費用が高い管理水準が採用される場合、道路舗装の供用性は、高いレベルで維持され、利用者費用が低減される。一方、管理者費用を低減させると、利用者費用が増大する。利用者費用および管理者費用の間には、トレードオフの関係が有り、社会的費用のライフサイクルコストが最小化される最適な管理水準が存在するものと考えられる。本実施形態による道路舗装投資計画の最適化処理では、道路舗装投資計画を最適化するにあたって、上記トレードオフの関係を考慮する。
図3は、本発明の実施形態による最適化処理における、道路舗装投資計画の技術経済評価のフレームワークを示す概念図である。本実施形態の最適化処理では、まず、解析対象の道路区間について、道路条件および交通条件などを含む外部条件が与えられる。道路条件は、例えば、道路区間の幾何学形状、舗装強度、現在の舗装状態、路盤強度、土質、気象条件などを含み、交通条件は、例えば、交通量、車種構成、車両特性、車両走行費用原単位などを含む。その他、外部条件は、利用可能な舗装材料、初期舗装や維持修繕工事の単位費用などを含む。また、外部条件としては、解析条件としての解析対象期間、社会的割引率などを含む。
政策変数(1)および(2)は、本発明の最適化処理により求められる道路舗装投資計画を構成する。政策変数(1)は、例えば、舗装強度、初期の舗装ラフネス、舗装の層数、厚みなどの舗装設計を含む。政策変数(2)は、例えば、解析対象期間内に実施される維持修繕工事の工種、その強度、施工時期などを含む。ここで強度とは、例えば、オーバーレイであれば、その厚みとなり、リシーリングであれば、その種類(例えば、1層表面処理(SBST)または2層表面処理(DBST)がある。)となる。
なお、上述した政策変数は、すべてが最適化の対象となることは、必ずしも要さないし、適宜追加または削除することもできる。例えば、舗装の層数などは、一般的な3層構成に固定しておくことができる。また既設道路区間に対する維持修繕計画を求めようとする場合などには、初期建設時の舗装設計などの政策変数を外部条件として与えてもよい。
舗装の供用性の履歴は、上述したように、経時的に進行する舗装劣化と、維持修繕工事による効果(以下、維持修繕効果とも言う。)とを含んで構成される。舗装劣化は、舗装設計の舗装強度や、外部条件の交通量、車種構成および車両特性などの交通負荷因子、気象などの環境因子に依存すると考えられる。維持修繕効果は、維持修繕工事の工種、工事直前の供用性のレベル、工事の強度に依存すると考えられる。管理者の費用は、初期建設時の舗装設計、対象期間内に施工される各維持修繕工事の工種、強度および施工時期に依存すると考えられる。利用者の費用は、舗装の供用性および交通負荷因子に依存すると考えられる。
本実施形態の道路舗装投資計画の最適化処理では、解析対象期間にわたる上記管理者の費用および利用者の費用の総和、つまり社会的費用のライフサイクルコストを最小化する道路舗装投資計画を求める。本実施形態による最適化処理では、道路舗装投資計画の最適解を求めるにあたって、2段階の処理によって最終的な真の最適解を得る。その第1段階では、トレンド曲線を用いた最適制御モデル(以下、トレンド曲線最適化モデルとも言う。なお、詳細については後述する。)を用いて、計画の近似最適解を解析的に求める。第2段階では、勾配探索法およびオプション評価法を組み合わせた勾配探索処理(詳細については、後述する。)により、第1段階で得られた計画の近似最適解を初期解として、解の改良の方向を見出して、逐次解を改善してゆき、計画の最終的な真の最適解を得る。
以下、図4および図5を参照して、本発明の実施形態による道路舗装投資計画の最適化処理を実行するシミュレーション装置10の機能構成について、最適化処理の概略フローとともに説明する。図4は、シミュレーション装置10の機能ブロック図を示す。シミュレーション装置10の各機能手段は、コンピュータ装置34がシステム・メモリ16にプログラムをロードし、CPU12がプログラムを実行することにより実現されている。図5は、シミュレーション装置10が実行する道路舗装投資計画の最適化処理の概略を示すフローチャートを示す。図5に示す処理は、オペレータから本最適化処理が呼び出されて、開始される(図5:ステップS100)。
コンピュータ装置34は、キーボードやマウスなどのポインティング・デバイスとして提供される入力装置32から、入出力インタフェース52を介して、上記道路舗装投資計画の最適化処理のための各種設定、計算開始の指令を行うことが可能とされている。またコンピュータ装置34は、入出力インタフェース52を介して、ディスプレイ24のディスプレイ画面上に表示させる各種設定の入力を行うためのGUI(Graphical User Interface)や実行結果を表示させている。最適化処理においては、まず、コンピュータ装置34が、オペレータがGUIを用いて入力した外部条件および計算指令を受ける(図5:ステップS101)。なお、入出力インタフェース52は、本実施形態の入力手段および出力手段を構成する。
コンピュータ装置34は、道路舗装投資計画の最適化処理を実行するため、上記第1段階目の処理を実行する最適制御モデル・モジュール70と、上記第2段階目の処理を実行する勾配探索モジュール80とを提供している。
最適制御モデル・モジュール70は、本実施形態の最適制御解析手段を構成し、入出力インタフェース52を介して入力された外部条件に従い、トレンド曲線最適制御モデルを用いて計画の近似最適解を求め、中間データとしてデータ格納部54に格納する(図5:ステップS102)。なお、データ格納部54は、例えばシステム・メモリ16や記憶装置30などの記憶領域として提供される。
最適制御モデル・モジュール70は、より詳細には、パラメータ生成部72、オーバーレイ解析部74、リシーリング解析部76および打換え解析部78を含んで構成される。パラメータ生成部72は、与えられた外部条件から本実施形態の最適制御モデルで用いるためのパラメータ・セットを生成する。
オーバーレイ解析部74は、本実施形態における第1工種解析手段を構成し、後述するトレンド曲線最適制御モデルを用いて、維持修繕工事の複数の工種のうちのオーバーレイによる維持修繕計画を求め、その妥当性(feasibility)を検証する。リシーリング解析部76は、本実施形態における第2工種解析手段を構成し、トレンド曲線最適制御モデルを用いて、維持修繕工事の複数の工種のうちのリシーリングを含む維持修繕計画を求め、その妥当性を検証する。打換え解析部78は、本実施形態における第3工種解析手段を構成し、複数の工種のうちの打換えと、後続するオーバーレイまたはリシーリングとによる妥当な維持修繕計画を求める。なお、オーバーレイ解析部74、リシーリング解析部76および打換え解析部78が実行する処理については、詳細を後述する。
勾配探索モジュール80は、本実施形態における探索手段を構成し、入出力インタフェース52を介して入力された外部条件に従い、最適制御モデル・モジュール70が求めた計画の近似最適解をデータ格納部54から読み出し、これを初期解として勾配探索処理(詳細については、後述する。)により、所定の解析対象期間Pにおける計画の最終的な最適解を求める(ステップS103)。
勾配探索モジュール80は、より詳細には、勾配解析部82およびオプション評価部84を含んで構成される。勾配探索モジュール80は、最適制御モデル・モジュール70が求めた近似最適解から、勾配探索の初期解として用いるオプション(道路舗装投資計画案)を生成し、勾配解析部82に渡す。勾配解析部82は、勾配探索法により、与えられた初期解のオプションを基点として、逐次、目的関数が改善する方向へ解を改善し、最終的な最適解を探索する。その際に、勾配解析部82は、改善する方向を求めるために近傍オプションを生成し、該近傍オプションを与えて、オプション評価部84に対しその評価を依頼する。
オプション評価部84は、所謂What−Ifモデルを用いて各近傍オプションの目的関数を算出して、勾配解析部82に渡す。なお、オプション評価部84は、HDM−4など、既知のWhat−Ifモデル(オプション評価システム)を採用することができる。また、勾配探索法としては、最急勾配法や共役勾配法(Conjugate Gradient:CG法)など種々の手法を採用することができるが、本実施形態では、計算のパフォーマンスおよび解の精度を勘案して、最急勾配法を好適に用いることができる。
勾配探索モジュール80は、最終的な最適解が得られると、それを入出力インタフェース52に送り、ディスプレイ24、またはページ・プリンタ(図示せず)を使用し、道路舗装投資計画の有力な候補として出力させ(ステップS104)、処理を終了させる(ステップS105)。上述した各モジュールは、内部バス56を介して相互接続されていて、プロセス間通信、ソフトウェア割込みなどのデータ伝送および相互通信を行っている。
なお、図4に示したシミュレーション装置10は、ネットワーク・インタフェース50を介してNIC22を制御して、イーサネット(登録商標)または光ネットワークなどのネットワークに接続されていても良い。この実施形態の場合、シミュレーション装置10は、ウェブ・サーバまたは分散コンピューティング基盤を提供するサーバとして構成することもできる。シミュレーション装置10を構成するコンピュータ装置34は、ネットワークを介してインターネットなどの公衆ネットワークに接続されたクライアント・コンピュータ90から計算実行指令を受信し、外部条件を取得する。その後、コンピュータ装置34は、本発明に従い道路舗装投資計画の最適化処理を実行し、実行結果として得られた最終的な最適解を道路舗装投資計画としてクライアント・コンピュータ90にレスポンスとして返すこともできる。すなわち、この実施形態の場合、ネットワーク・インタフェース50が入力手段および出力手段を構成する。
ネットワークを介して計算指令を受け付ける場合、コンピュータ装置34は、スタンドアローン使用ではなく、ウェブ・サーバまたは分散コンピューティング・サーバ機能を提供することができる。この目的のため、コンピュータ装置34は、HTTPプロトコル/ブラウザ・ソフトウェアを使用するファイル送受信を実行するウェブ・サーバ、CGI(Common Gateway Interface)、サーブレットなどのサーバ・プログラムを使用して実装されるアプリケーション・サーバ、RMI(Remote Method Invocation)またはCORBA(Common Object Request Broker Architecture)などの分散コンピューティング基盤を構成する分散コンピューティング・サーバとして実装することができる。また、上記最適制御モデル・モジュール70および勾配探索モジュール80を分離し、それぞれ個別のコンピュータ上に実装することもできる。
セクション3:トレンド曲線最適制御モデル
3.1.トレンド曲線最適制御モデルの基本構成
以下、最適制御モデル・モジュール70において構成される最適制御モデルの基本構成を説明する。本発明の実施形態による最適制御モデルでは、道路舗装の供用性は、道路舗装のラフネスによって表現する。舗装ラフネスの小さな値は、高い供用性を表し、逆に舗装ラフネスの大きな値は、低い供用性を表す。道路舗装のラフネスは、経時劣化および維持修繕工事を繰り返し受けて、通常、時間に対して鋸歯形状に変動する。そして、この道路舗装のラフネスの履歴は、下記式(1)〜(3)を用いて表現することができる。
Figure 2010262423
ここで、s(t)は、時間tにおける舗装ラフネスを表し、F(s(t))は、舗装ラフネスの関数としての劣化率を表す。また、Δsは、k回目の維持修繕工事の適用による舗装ラフネスの低減量を表す。G(w,s(t ))は、維持修繕工事の強度wと、適用直前の舗装ラフネスs(t )との関数としての舗装ラフネスへの工事による効果を表し、維持修繕効果関数という。t は、k回目の維持修繕工事の適用のタイミングtの直前のタイミングを表す。sは、所与の初期舗装ラフネスを表す。なお、本明細書において、変数の上に付される”・”は、微分演算子、すなわち(d/dt)を表す。総輸送費用(TTC)の正味現在価値Jは、利用者費用および管理者費用を含み、TTCの正味現在価値の最小化問題は、下記式(4)によって記述することができる。
Figure 2010262423
ここで、C(s(t))は、舗装ラフネスの関数としての利用者費用を表し、M(w)は、強度wの関数としてのk回目の維持修繕工事にかかる管理者費用を表す。またrは、現在価値割引率を表し、tは、ゼロである。有限の時間経過後の終端における残余価値についての恣意的な前提を回避するために、無限の時間経過後としている。なお、本実施形態では、舗装の供用性を表す変数として舗装ラフネスを用いているが、特に限定されるものではない。また、初期建設費用を含めて評価する場合には、上記式(4)は、初期建設費用(ICC)を含み、目的関数は、LCCとなる。
本発明の実施形態による最適制御モデルでは、鋸歯形状を有し不連続に変動する舗装ラフネスの履歴を、滑らかなトレンド曲線によって近似する。この目的のため、本発明では、さらに、下記式(5)および(6)に表される維持修繕の頻度関数h(t)および維持修繕の強度関数w(t)を用いて、上記式(1)〜(4)を定式化し直す。これらの関数h(t)およびw(t)は、詳細については後述するが、維持修繕計画((t,w)|k=1,2,…)を規定するものである。
Figure 2010262423
上記関数h(t)およびw(t)を用いることによって、上記式(1)〜(3)による舗装ラフネスの鋸歯形状の履歴のトレンドを、下記式(7)〜(10)によって定義される滑らかな曲線によって、近似することができる。
Figure 2010262423
ここで、K(w,s)は、有効維持修繕効果関数といい、sは、有効初期ラフネスという。上記式(8)中の有効初期ラフネスsと上記式(3)中の初期舗装ラフネスsと間には、下記式(11)で定義される関係を有する。なお、G(ハット)(w,s)は、上記式(10)によって維持修繕効果関数Gから導出される一種の逆関数を表す。
Figure 2010262423
さらに、上記関数h(t)および関数w(t)を用いると、上記式(4)の目的関数Jを下記式(12)により近似することができる。
Figure 2010262423
上述までの近似により、最適化問題は、上記式(7)〜(10)に示した制約条件の下目的関数Jを最小化する、関数h(t)およびw(t)を特定する問題へと置き換えられる。実際の維持修繕計画((t,w)|k=1,2,…)の最適解は、詳細については後述するが、関数h(t)およびw(t)が特定されれば、上記式(5)および(6)の関係から求めることができる。上記式(12)の目的関数Jおよび上記式(7)の制約条件がh(t)について線形であるため、このトレンド曲線最適制御モデルのハミルトニアンは、この変数について線形となる。したがって、上記問題を解くために、下記式(13)に示す、維持修繕頻度の妥当な範囲を表す制約条件を課す。
Figure 2010262423
ここで最小値hおよび最大値hは、予め外生的に与えられた正の有限数とされる。例えば、最小値hおよび最大値hは、現実の道路舗装事業において妥当であると考えられる維持修繕工事の頻度を勘案して、適宜設定することができる。例えば、
それぞれ、最小値0.1および最大値1を採用することができる。そして、このトレンド曲線最適制御モデルを解くための最適性条件は、下記式(14)で示すハミルトニアンによって記述される。なお、下記式(14)中、H(.)は、ハミルトニアンを表し、z(t)は、現在価値の随伴変数を表す。なお、トレンド曲線最適制御モデルに関連するより詳細な情報については、例えば、非特許文献2を参照することができる。
Figure 2010262423
3.2.維持修繕工事の複数の工種を取扱可能とするトレンド曲線最適制御モデル
本発明の実施形態において、維持修繕計画は、維持修繕工事のセット{(t,w),(t,w)…}として定義される。ここで、((t,w)|k=1,2,…)は、強度wで時期tにおいて施工されるk回目の維持修繕工事を表す。また、本発明の実施形態によるトレンド曲線最適制御モデルにおいては、維持修繕計画は、最適制御モデルの系が収束して定常状態に至るまでの過渡の計画と、収束した後の定常状態の計画とを含む。例示すると、維持修繕計画は、過渡の計画{(t,w)}と、以降同一頻度および強度の維持修繕工事が繰り返される定常状態の計画{(t,w)|k=2,3…}とを含むことができる。
本発明の実施形態による最適制御モデル・モジュール70は、まず、オーバーレイ解析部74により、トレンド曲線最適制御モデルを用いて、オーバーレイのみによる維持修繕計画について解析させる。本発明の実施形態による最適制御モデルを用いた解析では、求めた定常状態の計画および定常状態に至るまでの過渡の計画について、それらの妥当性を検証する。オーバーレイ解析部74は、定常状態について解析し、オーバーレイのみによる妥当な定常状態の計画が存在するか否かを判定する。妥当な定常状態の計画が存在しないと判定された場合には、その妥当性が無いとされた事由に応じて、リシーリング解析部76または打換え解析部78に処理が渡される。
またオーバーレイ解析部74は、オーバーレイのみによる妥当な定常状態の計画が存在する場合、さらに、妥当とされた定常状態へ至るまでの過渡の計画について解析し、求められたオーバーレイのみによる過渡の計画が妥当であるか否かを判定する。オーバーレイ解析部74により、過渡の計画が妥当はないと判定された場合には、打換え解析部78に処理が渡される。またリシーリング解析部76では、所定強度のリシーリングの維持修繕工事を、同等な維持修繕効果を奏する等価な強度のオーバーレイに変換することによって、トレンド曲線最適制御モデルに適用可能としている。本発明の実施形態による最適制御モデルでは、このように複数の工種を取扱可能としている。
以下、本実施形態によるトレンド曲線最適制御モデルの詳細について説明する。本発明の実施形態における最適制御モデルでは、上記式(7)〜(10)の各関数に対し、下記式(15)〜(18)に示す線形関数を設定する。
Figure 2010262423
ここで、劣化関数(Deterioration Function)、維持修繕効果関数(Maintenance Impact Function)、利用者費用関数(User Cost Function)、維持修繕費用関数(Maintenance Cost Function)についての各パラメータf,g,g,g,c,c,m,mは、詳細については後述するが、入力された外部条件に従ってパラメータ生成部72により生成される。
なお、本実施形態による最適制御モデルでは、上述したように、リシーリングが等価な強度のオーバーレイに変換されるため、維持修繕の強度関数wは、オーバーレイまたはリシーリングにかかわらず、オーバーレイの強度(厚み)に対応する。また、本実施形態では、一例として、上記式(15)〜(18)に示す線形関数を設定しているが、劣化関数F(s)、維持修繕効果関数G(w、s)、利用者費用関数C(s)および維持修繕費用関数M(w)の具体的な関数は、特に限定されるものではない。最適性条件は、上記式(14)により、下記式(19)で示すハミルトニアンによって記述される。
Figure 2010262423
なお、上記式(19)中のパラメータk,k,kは、上記式(9)および(10)に従って上記維持修繕効果関数G(w、s)から求められる、有効維持修繕効果関数K(w,s)に対して設定された線形関数(ks+kw+k)のパラメータである。上記線形関数によれば、上記式(19)に示すように、ハミルトニアンHは、オーバーレイの強度wについても線形である。したがって、上記式(13)と同様に、下記式(20)に示す、オーバーレイの強度wの妥当な範囲を表す制約条件を課す。
Figure 2010262423
ここで最小値wおよび最大値wは、予め外生的に与えられた正の有限数とされる。例えば、最小値wおよび最大値wは、現実の道路舗装事業において実施の可能性があると考えられるオーバーレイの厚みを勘案して、適宜設定することができ、例えば、最小値30mmおよび最大値100mmを採用することができる。上記制約条件とともに、最適性条件は、下記式(21)〜(24)に示す、一組の1階微分方程式によって記述することができる。
Figure 2010262423
ここで、wおよびhは、それぞれ、特異定常制御(Singular Steady Control)下におけるwおよびhの最適値である。上記式(21)〜(24)で記述される最適性条件の境界条件は、一方は、上記式(8)の有効初期ラフネスで与えられる。他方の境界条件は、無限の時間経過後においては、ds/dt=dz/dt=0となり定常状態に収束するものとして置き換えることができる。この定常状態では、wおよびhの両方が一定値に保たれ、wおよびhは、最適定常状態制御を規定する。上記一組の1階微分方程式の解を求めることにより、最適定常状態制御および所与の有効初期ラフネスから最適定常状態の舗装ラフネスへと導く最適過渡制御を特定することができる。
上述した最適性条件は、FSC(Full Singular Control)、PSC(Partial Singular Control)、BBC(Bang-Bang Control)の3つのタイプの最適制御について解くことができる。これらのタイプの最適制御における定常状態は、上記式(21)〜(24)に示した一組の1階微分方程式および式(13)および(20)に示した条件に従って、下記式(25)〜(27)で与えられる連立式から導出することができる。
Figure 2010262423
これら最適制御(FSC、PSCおよびBBC)は、それぞれが必ずしも存在するというものではないが、特定のパラメータ値によっては存在する可能性がある。また、hおよびwの値の異なる組合せにより相違する定常状態に対応して、複数のPSCおよびBBCが存在する可能性もある。そして、上記式(8)の有効初期ラフネスに対応する最適解は、上記式(12)の目的関数を最小化するいずれかの最適制御として求めることできる。
上述したように、本実施形態の最適制御モデルを用いた解析では、上記制約条件(13)および(20)を課している。一方、上記制約条件は、定常状態制御に対しては緩和することができないが、過渡制御については、頻度hに対する制約条件(13)を緩和することができる可能性がある。例えば、ある舗装において、舗装ラフネスの初期値が、定常状態の値よりも小さく、より高い供用性を有している場合には、オーバーレイの施工は、少なくとも定常状態よりも劣化するまで保留することができる可能性がある。すなわち、過渡制御においては、h<hであっても許容される可能性がある。あるいは逆に舗装ラフネスの初期値が、定常状態の値よりも大きく、初期より供用性が不充分である場合には、時期を早めたオーバーレイの適用を考慮することができる可能性があり、または打換えを考慮することができる可能性がある。すなわち、過渡制御においては、h>hであっても許容される可能性がある。そして、この制約条件の緩和により、より好ましい最適解が得られる可能性がある。
しかがって、本実施形態の最適制御モデルを用いた解析では、定常状態制御については、まず、上記制約条件(20)と、緩和された下記制約条件(28)とを用いて最適制御モデルを解き、得られた定常状態制御が制約条件(20)および(13)をさらに満たすか否かを判定する。制約条件(20)および(13)を満たす定常状態制御が見つかった場合には、定常状態の計画が妥当であるとし、オーバーレイによる最適な計画の候補として採用する。一方、見つからなかった場合には、リシーリングまたは打換えの解析が行われる。過渡制御については、上記制約条件(20)と、緩和された下記制約条件(28)とを用いて解析を継続する。緩和された条件下で得られた過渡制御が無限大の施工頻度(h→∞)を要求するものであった場合には、打換えの解析を行う。
Figure 2010262423
3.3.トレンド曲線最適制御モデルを用いた解析の全体処理フロー
以下、図6を参照して、最適制御モデルを用いた解析の全体処理フローを説明する。図6は、最適制御モデル・モジュール70が実行する全体処理を示すフローチャートである。図6に示す処理は、図5に示したステップS102で呼び出されて、ステップS200から開始する。
ステップS201では、最適制御モデル・モジュール70は、図5に示したステップS101で入力を受けた外部条件(道路条件および交通条件)をパラメータ生成部72に与えて、トレンド曲線最適制御モデルのパラメータ・セットを取得する。なお、パラメータ生成部72の処理の詳細については、後述する。ステップS202では、最適制御モデル・モジュール70は、取得したパラメータを与えて、オーバーレイ解析部74に対し、オーバーレイによる維持修繕計画の解析を依頼して、解析結果を取得する。
オーバーレイ解析部74は、最適制御モデルの定常状態および過渡について解析し、オーバーレイのみによる定常状態および過渡の計画の妥当性について検証する。オーバーレイ解析部74は、妥当な定常状態の計画が存在しないと判定した場合には、その妥当性が無いとされた事由に対応して、リシーリング解析要または打換え解析要として、解析結果を最適制御モデル・モジュール70に戻す。定常状態の計画が妥当であっても、過渡の計画が妥当ではないと判定された場合には、オーバーレイ解析部74は、打換え解析要として解析結果を最適制御モデル・モジュール70に戻す。オーバーレイ解析部74は、オーバーレイのみによる妥当かつ最適な定常状態および過渡の計画が得られた場合には、その計画を解析結果として最適制御モデル・モジュール70に戻す。
ステップS203では、最適制御モデル・モジュール70は、オーバーレイ解析部74から戻された解析結果に従って処理を分岐させる。オーバーレイ解析部74の解析により、オーバーレイのみからなる妥当かつ最適な計画が得られた場合(計画取得)には、ステップS204へ処理を進める。ステップS204では、最適制御モデル・モジュール70は、取得した計画を近似最適解としてデータ格納部54に格納し、ステップS205で本処理を終了させ、勾配探索モジュール80に処理を渡す。
一方、ステップS203で、オーバーレイ解析部74による解析の結果、リシーリングの解析が必要であると判定された場合(リシーリング解析要)には、ステップS206へ処理を進める。ステップS206では、最適制御モデル・モジュール70は、取得したパラメータを与えて、リシーリング解析部76に対し、リシーリングを含む維持修繕計画の解析を依頼して、解析結果を取得する。
リシーリング解析部76は、定常状態および該定常状態に至るまでの過渡について解析し、リシーリングのみによる定常状態および過渡の計画の妥当性について検証する。リシーリング解析部76は、過渡および定常状態の両方について妥当な計画を見出した場合には、その計画を解析結果として最適制御モデル・モジュール70に戻す。一方、定常状態の計画が妥当であるものの過渡の計画が妥当ではないと判定された場合には、リシーリング解析部76は、さらに限定的な数のオーバーレイによる過渡の計画の可能性について判定する。限定的な数のオーバーレイによる過渡の計画が妥当であると判定される場合には、リシーリング解析部76は、オーバーレイおよびリシーリングの両方を含む計画を解析結果として最適制御モデル・モジュール70へ戻す。一方、限定的な数のオーバーレイによる過渡の計画が妥当ではないと判定された場合には、リシーリング解析部76は、打換え解析要として解析結果を最適制御モデル・モジュール70に戻す。
ステップS207では、最適制御モデル・モジュール70は、得られた解析結果に従って処理を分岐させる。リシーリング解析部76の解析により、リシーリングを含む妥当かつ最適な計画が得られた場合(計画取得)には、ステップS204へ処理を進め、取得した計画を近似最適解としてデータ格納部54に格納し、ステップS205で本処理を終了させ、勾配探索モジュール80に処理を渡す。一方、ステップS203またはステップS207で、解析結果から打換えの解析が必要であると判定された場合(打換え解析要)には、ステップS208へ処理を進める。ステップS208では、最適制御モデル・モジュール70は、取得したパラメータを与えて、打換え解析部78に対し、打換えを含む維持修繕計画の解析を依頼して、解析結果を取得する。
打換え解析部78は、一次元探索により、目的関数を最小化する最適な打換えの舗装強度および打換えの施工時期を求める。最適な打換えの舗装強度を求める過程では、オーバーレイ解析部74およびリシーリング解析部76に対し、設定した舗装強度の打換え後のオーバーレイまたはリシーリングによる維持修繕計画および目的関数の算出を依頼し、結果を受け取る。打換え解析部78は、最適な打換えの舗装強度および打換えの施工時期が求められた場合には、上記施工時期後に実施される打換えの維持修繕工事と、後続するリシーリングまたはオーバーレイによる維持修繕工事とを含む計画を解析結果として最適制御モデル・モジュール70へ戻す。
ステップS209では、最適制御モデル・モジュール70は、得られた解析結果に従って処理を分岐させる。打換え解析部78の解析により、打換え、および後続するリシーリングまたはオーバーレイを含む妥当かつ最適な維持修繕計画が得られた場合(計画取得)には、ステップS204へ処理を進め、取得した計画を近似最適解としてデータ格納部54に格納し、ステップS205で本処理を終了させ、勾配探索モジュール80に処理を渡す。
一方、ステップS203、ステップS207またはステップS209で、解析結果がエラーであると判定された場合(エラー)には、ステップS210へ処理を進める。ステップS210では、最適制御モデル・モジュール70は、入出力インタフェース52を介してディスプレイ画面上にエラー表示を行い、ステップS205で本処理を終了させる。この場合、勾配探索モジュール80による処理は行われず、最適化処理自体が失敗したものとして終了される。
3.4.トレンド曲線最適制御モデルのパラメータ生成処理
以下、パラメータ生成部72が実行する、トレンド曲線最適制御モデルのパラメータ・セットの生成処理の詳細を説明する。図7は、本実施形態のパラメータ生成部72が実行するパラメータ生成処理を示すフローチャートである。図7に示す処理は、図6に示したステップS201で呼び出されて、ステップS300から開始する。なお、図5に示したステップS101においては、下記表1および表2に示すような外部条件が与えられ、最適制御モデル・モジュール70へ渡される。
Figure 2010262423
Figure 2010262423
上記式(15)〜(18)に示す各関数の各パラメータは、HDM−4などのWhat−Ifモデルのソフトウェア・ツールによって提供される、道路劣化モデル、利用者費用モデル、オーバーレイ効果モデル(Overlay Impact model)などを利用することができる。ステップS301では、パラメータ生成部72は、劣化関数F(s)のパラメータfを決定する。図8(A)は、表2に示した0.6million ESAL(Equivalent Single Axle Load:等価単軸荷重)/lane/yearの交通負荷条件下におけるSNP(Adjusted Structural Number)4の舗装強度の舗装の経年劣化を示すグラフである。図8(A)に示す各標本点は、例えばHDM−4の道路劣化モデルによって計算することができる。なお、図8(A)に示す例では、初期舗装ラフネスは2.75m/kmとしている。
パラメータfは、舗装の経年劣化のカーブフィッティングにより求めることができ、図8(A)の例では、パラメータf=0.0729が求められる。幅広い範囲の交通負荷条件(0.1〜2 million ESAL/lane/year)、舗装強度(SNP:2〜4)にわたる回帰分析による分析結果によると、fは、舗装強度Sおよび交通負荷Tの関数として下記式で表すことができる。なお、舗装強度Sは、SNP単位であり、交通量Tは、million ESAL/lane/yearの単位である。
Figure 2010262423
ステップS302では、パラメータ生成部72は、維持修繕効果関数G(w,s)および有効維持修繕効果関数K(w,s)のパラメータk,k,k,g,g,gを決定する。維持修繕効果関数G(w,s)のパラメータは、HDM−4が提供するオーバーレイ効果モデルによって生成したデータを重回帰分析することにより計算することができる。K(w,s)のパラメータk,k,kは、パラメータg,g,gを用いて上記式(9)および(10)から計算することができる。
ステップS303では、パラメータ生成部72は、利用者費用C(s)のパラメータcおよびcを決定する。図8(B)は、表2に示した0.6million ESAL/lane/yearの交通負荷条件下における、道路利用者が負担する費用を舗装ラフネスに対してプロットしたグラフである。図8(B)に示す各標本点は、例えばHDM−4の利用者費用モデルによって計算することができる。なお、費用データは、例えば"Roads and Highways Department of Bangladesh"などの道路管理者から提供されたものを用いることができる。
パラメータcおよびcは、舗装ラフネスに対する利用者費用のカーブフィッティングにより求めることができ、図8(B)の例では、パラメータc=9,442$/km,c=210,969$/kmが求められる。なお、車種構成が同一である場合には、パラメータc,cは、交通負荷に比例することとなる。
ステップS304では、パラメータ生成部72は、維持修繕費用関数M(w)のパラメータmおよびmを決定する。維持修繕費用関数M(w)のパラメータは、例えば"Roads and Highways Department of Bangladesh"や"Transport Planning and Research Institute of China"などの道路管理者から提供される維持修繕費用のデータセットを用いて、他の関数と同様に、カーブフィッティングにより算出することができる。
なお、上記関数を表す式および数値等は、例示を目的とするものであって、解析対象の道路区間の具体的構成、所望する解析の精度に対応して、種々の具体的な式および数値を取り得るものである。また、シミュレーション装置10の各利用者により、ユーザ定義の関数やデータセットとして予め保存しておくこともできる。パラメータ生成部72により生成した、種々の交通量におけるパラメータ・セットの値を表3に示す。
Figure 2010262423
3.5.トレンド曲線最適制御モデルを用いたオーバーレイ解析処理
以下、オーバーレイ解析部74が実行する、トレンド曲線最適制御モデルを用いたオーバーレイ解析処理の詳細を説明する。図9および図10は、本実施形態のオーバーレイ解析部74が実行するオーバーレイ解析処理を示すフローチャートである。なお、図9および図10は、ポイントAおよびBにより連結される。図9および図10に示す処理は、例えば図6のステップS202の処理で最適制御モデル・モジュール70から呼び出されて、ステップS400から開始される。
ステップS401では、オーバーレイ解析部74は、与えられたパラメータによるトレンド曲線最適制御モデルの定常状態の最適性条件を計算する。FSCおよびPSCの定常状態は、上記式(21)〜(24)に示した一組の1階微分方程式と、それぞれ上記式(25)および(26)とによって与えられる連立式の解として計算される。
式(25)および式(21)〜(24)で与えられる連立式は、線形連立方程式であり、実数空間において唯一の解を有する。この解を、(s ,z ,h ,w )と表す。式(26)および式(21)〜(24)で与えられる連立式は、2組の連立2次方程式であり、複素空間において4つの解を有する。これらの解を、H>0について(s ,z ,h ,w )(p=2,3:つまりw =wである。)H<0について(s ,z ,h ,w )(p=4,5:つまりw =wである。)と表す。
ステップS402では、オーバーレイ解析部74は、ステップS401で算出された解(s ,z ,h ,w )(p=1〜5)それぞれについて、条件(13)および(20)を満たすか否かを判定する。条件(13)および(20)を満たす定常状態制御は、妥当性の有る定常状態の計画に対応する。ステップS402で、妥当な定常状態の計画が存在すると判定された場合(YES)には、図10に示すステップS403へ処理を進める。一方、ステップS402で、妥当な定常状態の計画が存在しない判定された場合(NO)には、ステップS419へ処理を進める。
ステップS419では、オーバーレイ解析部74は、下記式(29)を満たす解(h ,w )が存在するか否かを判定する。下記式(29)が示す条件は、妥当性を有し得る最小のオーバーレイ(h,w)よりも軽度の維持修繕工事が、定常状態の計画として求められていることを表す。すなわち、オーバーレイよりも程度の軽い工種であるリシーリングに適合可能性があり、その可能性を考慮することが好ましい。ステップS419で、下記式(29)を満たす解が存在すると判定された場合(YES)には、ステップS420へ処理を進める。一方、ステップS419で、下記式(29)を満たす解が存在しないと判定された場合(NO)には、ステップS422へ処理を進める。
Figure 2010262423
ステップS422では、オーバーレイ解析部74は、上記式(30)を満たす解(h ,w )が存在するか否かを判定する。上記式(30)が示す条件は、妥当性を有し得る最大のオーバーレイ(h,w)よりも重度の維持修繕工事が定常状態の計画として求められていることを表す。すなわち、オーバーレイよりも程度の重い工種である打換えに適合可能性があり、その可能性を考慮することが好ましい。ステップS422で、上記式(30)を満たす解が存在すると判定された場合(YES)には、ステップS423へ処理を進める。そして、オーバーレイ解析部74は、ステップS423で、打換え解析要を解析結果として設定して、ステップS418で、本解析処理を終了させて、呼び出し元の最適制御モデル・モジュール70に処理を戻す。
一方、ステップS422で、上記式(30)を満たす解が存在しないと判定された場合(NO)には、ステップS424へ処理を進める。そして、オーバーレイ解析部74は、ステップS424で、エラーを解析結果として設定して、ステップS418で、本処理を終了させて、呼び出し元の最適制御モデル・モジュール70に処理を戻す。
一方、ステップS420では、オーバーレイ解析部74は、さらに上記式(30)を満たす解(h ,w )が存在するか否かを判定する。ステップS420で、上記式(30)を満たす解が存在すると判定された場合(YES)には、上記式(29)および(30)をともに満たすため、オーバーレイ解析部74は、ステップS424へ処理を進め、エラーを解析結果として設定して、ステップS418で、本処理を終了させて、呼び出し元の最適制御モデル・モジュール70に処理を戻す。
一方、ステップS420で、上記式(30)を満たす解が存在しないと判定された場合(NO)には、ステップS421へ処理を進める。オーバーレイ解析部74は、ステップS421で、リシーリング解析要を解析結果として設定して、ステップS418で、本オーバーレイ解析処理を終了させて、呼び出し元の最適制御モデル・モジュール70に処理を戻す。
表4は、表3に示した各交通負荷下において得られた定常状態の解のセットを示す。表3に示す0.2million ESAL/lane/yearの条件のように、上記式(29)に示す条件が満たされるが、上記制約条件(13)および(20)を満たさない場合には、リシーリング解析要と判定される。
Figure 2010262423
図10に示すポイントAからBまでの処理は、上述したように、少なくとも1以上の妥当な定常状態の計画が存在すると判定された場合に行われる。ステップS403では、オーバーレイ解析部74は、n=1に設定して適切な有効初期ラフネスの仮定値s (s )を設定し、ステップS404〜S408で示すループへと処理を進める。ステップS404〜S408のループは、ステップS402で判定された、条件(13)および(20)を満たす、すべての妥当な定常状態それぞれについて、行われる。
ステップS404〜ステップS408のループでは、オーバーレイ解析部74は、妥当な各定常状態について、該定常状態に至るまでの過渡制御を求めて、式(12)に示す目的関数を評価する。過渡制御とは、所与の有効初期ラフネスの仮定値s から定常状態のラフネスs へと導く制御(h,w)を言う。最適性条件の式(23)および式(24)は、条件(13)および(20)の下では、HおよびHの符号に従って、(h,w)、(h,w)、(h,w)または(h,w)のいずれかの制御となることを示している。
図11は、s−z平面におけるFSCおよびPSCの定常状態および安定なブランチ(Stable Branch)を図示する。図11(A),(B)および(C)は、それぞれ、FSCの場合、w =wであるPSCの場合、およびw =wであるPSCの場合を図示する。上記式(15)〜(18)の関数では、H=0が描く軌跡(locus)は、すべての舗装ラフネスsにわたって一定の随伴変数の値(z=z≡m/k)となる水平線で表される。一方、H=0が描く軌跡は、図11に示すように、広いパラメータの範囲にわたって、sの増加に伴いzが減少する曲線で表される。s−z平面は、すなわち、H=0およびH=0が描く軌跡により、最適制御の値(h、w)がそれぞれ(h,w)、(h,w)、(h,w)または(h,w)のいずれかとなる、4つの領域に分割される。
上記式(21)および(22)で示す連立微分方程式を、始端の境界条件s(0)=s および収束条件、すなわち無限の時間経過後(t→∞)において定常状態(s ,z )に収束するものとして解くことにより、定常状態(s ,z )へ至る安定なブランチを求めることができる。上記安定なブランチは、下記に示す式(31)により、sおよびzについての閉形式表現で表される。
Figure 2010262423
なお、上記式中γおよびγは、所定の境界条件を満たす積分定数である。妥当な定常状態(s ,z )に関連する過渡制御および目的関数(J で表す。)は、定常状態のラフネスs に対する有効初期ラフネスの仮定値s の相対的な大小に依存して、h→0またはh→∞の極限をとることにより、求めることができる。ステップS405では、オーバーレイ解析部74は、有効初期ラフネスの仮定値s がs を越える(s >s )か否かを判定する。ステップS405で、s がs を越えないと判定された場合(NO)には、ステップS406へ処理を進める。一方、ステップS405で、s がs を越えると判定された場合(YES)には、ステップS407へ処理を進める。
ステップS406では、オーバーレイ解析部74は、s がs を越えない場合の過渡制御を求め、その目的関数を評価する。条件(28)下での最適過渡制御は、hをゼロに等しくすることによって得られる。これは、過渡の計画において維持修繕工事が全く行われないことを意味する。すなわち、過渡において維持修繕工事が行われず、定常制御の計画のみからなる維持修繕計画がオーバーレイによる計画の候補となる。この場合の有効初期ラフネスから定常状態ラフネスへ劣化するまでにかかる時間τ は、上記式(31)より、下記式(32)で表され、算出することができる。そして、所与の有効初期ラフネスの仮定値s に対する目的関数J は、下記式(33)で表され、算出することができる。なお、目的関数J は、過渡制御に関連する項と、定常制御に関連する項とを含む。
Figure 2010262423
一方、ステップS407では、オーバーレイ解析部74は、s がs を越える場合の過渡制御を求めて、その目的関数を評価する。条件(28)下での最適過渡制御は、h→∞に極限をとることにより求めることができる。この場合、有効初期ラフネスから定常状態ラフネスへ変化するまでに必要な時間τ は、限りなく小さくなる。そして、ステップS407では、過渡制御およびその目的関数は、定常状態(s ,z )の性質に依存して、以下の2つの場合に分けて求めることができる。
まず、定常状態(s ,z )が、FSCまたはw =wのPSCに属する場合について説明する。この場合、図11(A)および(B)に示すように、安定なブランチ(s >s )がH=0が描く軌跡に交差しないため、安定なブランチ上では常にw=wである。したがって、hτ の極限値は、下記式(34)で表され、算出することができる。さらに、J が収束する極限値は、下記式(35)で表され、これにより算出することができる。
Figure 2010262423
定常状態(s ,z )が、w =wのPSCに属する他方の場合、図11(C)に示すように、安定なブランチ(s >s )がH=0の軌跡と交差するため、臨界ラフネスsに対するs の相対的な大小に応じて、wが一定である場合と、wが変化する場合とがある。ここで臨界ラフネスsとは、安定なブランチとH=0の軌跡との交点のラフネスを言う。臨界ラフネスsの極限値は、下記式で表される。
Figure 2010262423
そして、hτ およびJ の極限値は、s ≦sの場合と、s >sの場合とに応じて、下記式により計算される。
Figure 2010262423
ここで、τp1 およびτp2 は、それぞれ、s からsへ至るまでに必要とされる時間の極限値と、sからs へ至るまでに必要とされる時間の極限値である。hτp1 およびhτp2 の値は、下記式(38)および(39)により表され、計算することができる。
Figure 2010262423
ステップS404〜ステップS408のループにより、妥当なすべての定常状態それぞれについて過渡制御が求められ、その目的関数が算出されると、ステップS409へ処理が進められる。ステップS409では、オーバーレイ解析部74は、ステップS404〜S408のループで得られた制御のうち、目的関数が最小となる制御を選択し、実際のオーバーレイの強度および施工時期に変換する。目的関数が最小となる制御は、所与の有効初期ラフネスの仮定値s に対する、トレンド曲線最適制御モデルの最適解、すなわち最適な計画に対応する。実際の政策変数である、オーバーレイの強度および施工時期((w ,t )|k∈自然数)は、上記式(5)および(6)で示した関数h(t)およびw(t)を規定する関係式を用いて解釈される。なお、以下の説明では、下付のpは、最適制御の変数であることを示すために、下付のαにより置き換える。
がsα 以下である場合、k番目のオーバーレイの施工時期(t |k∈自然数)は、上記式(5)により導出される下記式(40)で表され、算出することができる。
Figure 2010262423
一方、s がsα を越える場合、上記式(34)および(36)〜(39)は、積hτα が有限の値に収束することを意味する。したがって、k番目のオーバーレイの施工時期(t |k∈自然数)は、上記式(5)により導出される下記式(41)で表され、算出される。
Figure 2010262423
ここで、Iは、hτα の極限値に最も近接しかつ該極限値を超えない整数である。オーバーレイの強度(w |k∈自然数)は、上記いずれの場合においても、決定された施工時期(t |k∈自然数)それぞれに対して、上記式(6)から算出される。
ステップS410では、オーバーレイ解析部74は、s が、所与の初期舗装ラフネスsに対応する有効初期ラフネスsに等しいか否かを判定する。なお、sは、上記の仮定値を用いて後述するステップS414で算出される。ステップS410で、s がsに等しいと判定された場合(YES)には、ポイントBを介して図9のステップS416へ処理を進められる。ステップS410で、s がsに等しくないと判定された場合(NO)には、ステップS411へ処理を進める。
ステップS411では、オーバーレイ解析部74は、上記式(11)の関係を用いて、設定した有効初期ラフネスの仮定値s に対応する、近似前の鋸歯形状の履歴における初期舗装ラフネスの仮定値s を算出する。ステップS412では、オーバーレイ解析部74は、所与の初期舗装ラフネスsに対応するsを計算するために充分な数のs および対応するs が得られたか否か、つまりnが所定のnmaxに達したか否かを判定する。ステップS412で、n<nmaxであり未だ不十分であると判定された場合(YES)には、オーバーレイ解析部74は、ステップS413で、nをインクリメントして、次の適切な有効初期ラフネスの仮定値s を設定し、ステップS404へ処理をループさせる。一方、ステップS412で、n=nmaxであり、充分な数のs および対応するs が得られたと判定された場合(NO)には、ステップS414へ処理を進める。なお、例示としては、nmaxは、処理のパフォーマンスおよび得られる結果の精度を勘案して、3または4とすることができる。
表5は、表4に示す定常状態の解のセットについて、種々s を設定して計算された維持修繕計画を示す。表5の例では、nmax=4であり、それぞれの交通負荷条件について、適切な4つの有効初期ラフネスの仮定値s および対応する初期舗装ラフネスの仮定値s が示されている。
Figure 2010262423
ステップS414では、オーバーレイ解析部74は、得られたセット((s ,s )|n=1…nmax)から、カーブフィッティングによりs およびs の関係を表す近似関数を求め、所与の初期舗装ラフネスsに対応する有効初期ラフネスsを算出する。ステップS415では、オーバーレイ解析部74は、nをインクリメントして、s に有効初期ラフネスsを設定し、ステップS404へループさせる。そして、所与のsに対応する有効初期ラフネスs (=s)について維持修繕計画の最適解が求められ、実際のオーバーレイの強度および施工時期((w ,t )|k∈自然数)が求められると、ステップS410において、ステップS416へ分岐させられる。
ステップS416では、オーバーレイ解析部74は、得られた最適解の過渡の計画が妥当であるか否かを判定する。sがsα 以下である場合には、過渡の計画が妥当であると判定される。一方、オーバーレイ解析部74は、sがsα を越える場合には、hτα が時間t=0において適用されるべきオーバーレイの数を示すため、hτα が2以上の場合は、過渡の計画が妥当ではないと判定する。また、1≦hτα <1かつt<1/hである場合は、系を定常状態に導くためには、実際上妥当ではない短期間のうちに2回のオーバーレイの施工が必要とされるため、過渡の計画が妥当ではないと判定する。これらの場合は、過渡の計画として打換えの可能性を示唆する。また、sがsα を越える場合において、上記以外の場合には、オーバーレイ解析部74は、過渡の計画が妥当であると判定する。
ステップS416で、得られた過渡の計画が妥当ではないと判定された場合(NO)には、ステップS423へ分岐させ、オーバーレイ解析部74は、打換え解析要を解析結果として設定して、ステップS418で、本解析処理を終了させて、呼び出し元の最適制御モデル・モジュール70に処理を戻す。
一方、ステップS416で、得られた過渡の計画が妥当であると判定された場合(YES)には、ステップS417へ分岐させ、得られたオーバーレイのみによる過渡および定常状態の最適かつ妥当な計画を解析結果として設定して、ステップS418で、本解析処理を終了させて、呼び出し元の最適制御モデル・モジュール70に処理を戻す。
3.6.トレンド曲線最適制御モデルを用いたリシーリング解析処理
以下、トレンド曲線最適制御モデルを用いたリシーリング解析処理の詳細を説明する。リシーリング解析処理は、最適な計画としてオーバーレイのみによる維持修繕計画が重すぎると判定された場合に、リシーリングを主とする維持修繕計画の可能性を検証するために呼び出される。通常、リシーリングとしては、15mm厚の1層表面処理(SBST)または25mm厚の2層表面処理(DBST)が採用されている。しかしながら、他の種類または厚みのリシーリングを採用することができる。本実施形態のリシーリング解析処理では、上述したように、上記所定強度のリシーリングの維持修繕工事を、同等な維持修繕効果を奏する等価な強度のオーバーレイに変換し、オーバーレイとして扱うことによって、トレンド曲線最適制御モデルに適用可能とする。
そして、リシーリング解析処理では、劣化関数(15)、維持修繕効果関数(16)および利用者費用関数(17)は、オーバーレイ解析と同様のパラメータおよび関数を用いることができる。さらに、オーバーレイ解析に類似して、維持修繕頻度に対する制約である、条件(13)を定常状態制御に適用し、緩和された条件(28)を過渡制御に適用する。一方、維持修繕強度に対する制約である条件(20)は、リシーリング解析では適切ではないため適用しない。
図12および図13は、本実施形態のリシーリング解析部76が実行するリシーリング解析処理を示すフローチャートである。なお、図12および図13は、ポイントCおよびDにより連結される。図12および図13に示す処理は、例えば、オーバーレイ解析処理の結果、リシーリング解析要と判定され、図6のステップS206の処理で最適制御モデル・モジュール70から呼び出されて、ステップS500から開始される。
ステップS501では、リシーリング解析部76は、所定強度のリシーリングを等価なオーバーレイの強度に変換する。本実施形態では、所定強度のリシーリングの一例として、SBSTおよびDBSTを用いて説明するが、特に限定されるものではない。SBSTおよびDBSTと等価なオーバーレイの強度wsbおよびwdbは、これら維持修繕工事の単位費用を用いて、例えば下記式により算出することができる。下記式中、Usb、UdbおよびUw1は、それぞれ、SBST、DBST、および最小強度wのオーバーレイの単位費用である。
Figure 2010262423
ステップS502では、リシーリング解析部76は、与えられたパラメータによるトレンド曲線最適制御モデルの定常状態の最適性条件を計算する。PSCの定常状態は、それぞれw=wsbまたはw=wdbとして、上記式(21)、(22)および(24)に示した一組の1階微分方程式と、上記式(26)とによって与えられる連立式の解として計算される。なお、FSCの定常状態は、強度が固定されるリシーリングでは存在しないことに留意されたい。ここで得られた解を、(s ,z ,h ,w )(p=1,2:w =wsbである。)および(s ,z ,h ,w )(p=3,4:w =wdbである。)と表す。
ステップS503では、リシーリング解析部76は、ステップS502で算出された解((s ,z ,h ,w )|p=1〜4)それぞれについて、オーバーレイの場合と同様に、条件(13)を満たすか否かを判定する。条件(13)を満たす定常状態制御は、妥当性の有る定常状態の計画に対応する。ステップS503で、妥当な定常状態の計画が存在しない判定された場合(NO)には、ステップS521へ処理を進める。リシーリング解析部76は、ステップS521で、エラーを解析結果として設定して、ステップS520で、本解析処理を終了させて、呼び出し元の最適制御モデル・モジュール70に処理を戻す。一方、ステップS503で、妥当な定常状態の計画が存在すると判定された場合(YES)には、図13に示すステップS504へ処理を進める。
図13に示すポイントCからDまでの処理は、上述したように、少なくとも1以上の妥当な定常状態の計画が存在すると判定された場合に行われる。ステップS504では、リシーリング解析部76は、n=1として適切な有効初期ラフネスの仮定値s を設定し、ステップS505〜S509で示すループへと処理を進める。ステップS505〜S509のループは、ステップS503で判定された条件(13)を満たす、すべて妥当な定常状態それぞれについて行われる。
ステップS505〜ステップS509のループでは、リシーリング解析部76は、妥当な各定常状態について、該定常状態に至るまでの過渡制御を求めて、上記式(12)に示す目的関数を評価する。ステップS506では、リシーリング解析部76は、s がs を越えるか否かを判定する。ステップS506で、s がs を越えないと判定された場合(NO)には、ステップS507へ処理を進める。一方、ステップS506で、s がs を越えると判定された場合(YES)には、ステップS508へ処理を進める。
ステップS507では、リシーリング解析部76は、s がs を越えない場合について、過渡制御を求め、その目的関数を評価する。これは、オーバーレイの場合と同様に、過渡において維持修繕工事が全く行われない場合であり、有効初期ラフネスから定常状態ラフネスへ劣化するまでにかかる時間τ は、上記式(32)を用いて算出することができる。また、所与の有効初期ラフネスの仮定値s に対する目的関数J は、上記式(33)を用いて算出することができる。
一方、ステップS508では、リシーリング解析部76は、s がs を越える場合について、過渡制御を求めて、その目的関数を評価する。リシーリング解析処理の場合は、p=1,2の定常状態の解に対しては、w=wsbとして、p=3,4の定常状態の解に対しては、w=wdbとして、時間τ および目的関数J の極限値を上記式(34)および(35)を用いて算出する。
ステップS505〜ステップS509のループにより、すべての妥当な定常状態それぞれについて過渡制御が求められ、その目的関数が算出されると、ステップS510へ処理が進められる。ステップS510では、リシーリング解析部76は、ステップS505〜S509のループで得られた制御のうち、目的関数が最小となる制御を選択し、実際の等価なオーバーレイの強度および施工時期に変換する。なお、以下の説明では、下付のpは、最適制御の変数であることを示すために、下付のαにより置き換える。
がsα 以下である場合、上記式(40)を適用して、k番目の等価なオーバーレイの施工時期(t |k∈自然数)を算出する。一方、s がsα を越える場合、上記式(41)を適用して、k番目の等価なオーバーレイの施工時期(t |k∈自然数)を算出する。なお、等価なオーバーレイの強度(w |k∈自然数)は、両方の場合において、wα (wsb/wdb)となる。
ステップS511では、リシーリング解析部76は、s が、sに対応する有効初期ラフネスsに等しいか否かを判定する。ステップS511で、s がsに等しいと判定された場合(YES)には、ポイントDを介して図12のステップS517へ処理を進める。ステップS511で、s がsに等しくないと判定された場合(NO)には、ステップS512へ処理を進める。
ステップS512では、リシーリング解析部76は、オーバーレイ解析処理の場合と同様に、上記式(11)の関係を用いて、設定した有効初期ラフネスの仮定値s に対応する初期舗装ラフネスの仮定値s を算出する。ステップS513では、リシーリング解析部76は、nがnmaxに達したか否かを判定する。ステップS513で、n<nmaxであると判定された場合(YES)には、リシーリング解析部76は、ステップS514で、nをインクリメントして、適切な有効初期ラフネスの仮定値s を設定し、ステップS505へ処理をループさせる。一方、ステップS513で、n=nmaxで、充分な数のs および対応するs が得られたと判定された場合(NO)には、ステップS515へ処理を進める。
表6は、表3に示した0.2million ESAL/lane/yearの交通負荷条件下において、種々のs を設定して計算された維持修繕計画を示す。表6の例では、nmax=4であり、該交通負荷条件について、適切な4つのs および対応するs が示されている。なお、表6中のオーバーレイの強度(Thickness, mm)w =12.2は、SBSTの等価なオーバーレイ強度である。
Figure 2010262423
ステップS515では、リシーリング解析部76は、得られたセット((s ,s )|n=1,…,nmax)から、カーブフィッティングによりs およびs の関係を近似する関数を求め、所与の初期舗装ラフネスsに対応する有効初期ラフネスsを算出する。ステップS516では、リシーリング解析部76は、nをインクリメントして、s に有効初期ラフネスsを設定し、ステップS505へループさせる。そして、所与のsに対応する有効初期ラフネスs (=s)について最適な維持修繕計画が求められ、等価なオーバーレイの強度および施工時期(w ,t |k∈自然数)が求められると、ステップS511において、ステップS517へ分岐させられる。
ステップS517では、リシーリング解析部76は、得られた過渡の計画が妥当であるか否かを判定する。sがsα 以下である場合には、等価なオーバーレイによる過渡の計画が妥当であると判定される。一方、sがsα を越える場合には、hτα が、時間t=0において適用されるべき等価なオーバーレイの数を示しているため、リシーリング解析部76は、hτα が2以上の場合は、過渡の計画が妥当ではないと判定する。また、1≦hτα <1かつt<h −1である場合は、系を定常状態に導くためには、実際上妥当ではない短期間のうちに2回の等価なオーバーレイの施工が必要とされるため、得られた過渡の計画が妥当ではないと判定する。これらの場合は、過渡の計画として、リシーリングよりも程度の重い工種であるオーバーレイまたは打換えの可能性を示唆する。また、sがsα を越える場合において、上記以外の場合には、リシーリング解析部76は、過渡の計画が妥当であると判定する。
ステップS517で、過渡の計画が妥当であると判定された場合(YES)には、ステップS518へ分岐させる。ステップS518では、リシーリング解析部76は、得られた計画における等価なオーバーレイを、強度に応じてSBSTまたはDBSTに置き換える。ステップS519では、リシーリング解析部76は、リシーリングのみによる過渡および定常状態の最適かつ妥当な計画を解析結果として設定して、ステップS520で、本解析処理を終了させて、呼び出し元の最適制御モデル・モジュール70に処理を戻す。
一方、ステップS517で、得られたリシーリングによる過渡の計画が妥当ではないと判定された場合(NO)には、ステップS522へ分岐させる。これは、過渡の計画としてリシーリングが軽すぎた場合に相当し、より程度の重い工種であるオーバーレイまたは打換えによる過渡の計画の可能性が考慮されることが好ましい。そこで、リシーリング解析部76は、ステップS522では、まずオーバーレイによる過渡の計画の妥当性の検証処理を実行する。
なお、以下の説明では、便宜上、オーバーレイによる過渡の計画には、時間t=0で施工されるただ1つのオーバーレイが含まれ、さらに、適宜、定常状態の計画と同一である1つの後続のリシーリングを含み得るものとして説明する。しかしながら、オーバーレイによる過渡の計画が含み得るオーバーレイおよび後続のリシーリングは、特に限定されるものではない。他の実施形態では、オーバーレイによる過渡の計画は、時間t=0ではなく所定時間後に施工されるオーバーレイや、複数のオーバーレイ、複数の後続するリシーリング、異なる種類のリシーリングなどを含むことができる。
リシーリング解析部76は、ステップS522では、単独で、または後続するリシーリングとともに、舗装のラフネスを定常状態まで導くために時間t=0で施工されるオーバーレイの最適な強度を決定し、さらに、必要に応じて、後続するリシーリングの施工時期を決定する。時間t=0で施工されるただ1つのオーバーレイによる過渡の計画の妥当性は、図9に示したオーバーレイ解析処理のステップS416について上述したように(段落0155参照。)、h→∞としたときhτの極限値が、時間t=0におけるオーバーレイ数を表しているということから検証することができる。つまり、時間t=0で施工される1つのオーバーレイを考慮する場合、hτが1(unity)であることが要求される。この場合、強度wのオーバーレイを時間t=0に施工した後の舗装ラフネスsは、上記式(31)により、下記式(42)で表される。
Figure 2010262423
上記式(42)のため、sが満たすべき最大値s maxおよび最小値s minが存在し、同様に、オーバーレイの強度の最小値wminおよび最大値wmaxが決定される。sの最小値s minは、sα であり、この場合、定常状態のラフネスsα へ減少させるための後続する過渡のリシーリングが不要とされる。上記式(42)に従って、s=sα を達成できるオーバーレイの強度wmaxは、下記式により計算することができる。
Figure 2010262423
条件(20)に従って、wmax>wの場合は、wmaxをwに置き換える。wmax<wの場合は、オーバーレイおよびリシーリングのいずれも過渡の計画を構成することができないため、エラーとして処理する。一方、s maxは、時間t=0でオーバーレイが施工されてその値となった後、最小のインターバル(h −1)で過渡のリシーリングを施工すことによって定常状態ラフネスsα に到達することが可能な値である。過渡のリシーリングにより定常状態ラフネスsα に到達するまでにかかる時間をμで表すと、過渡におけるリシーリングの適用時期は、上記式(41)により(1−hμ)/hα で表され、計算することができる。この場合、h→∞とした場合のhμの極限値は、下記式(43)により表される。
Figure 2010262423
さらに、tを最小のインターバルh −1に等しくすることにより、s maxは、下記式により表され、計算することができる。また、s maxで上記式(42)を置き換えると、過渡におけるオーバーレイの強度の最小値wminは、下記式により表され、計算することができる。
Figure 2010262423
条件(20)に従って、wmin<wの場合には、wminをwで置き換える。wmin>wの場合には、過渡の計画としてオーバーレイでは不充分であり、妥当ではないと判定されることになる。過渡におけるオーバーレイの最適な強度wは、下記式で示される一般的な一次元最小化問題となる。ここで、J[w]は、過渡におけるオーバーレイの強度の関数としてのTTCである。
Figure 2010262423
上記式中J[w]の第1項は、時間ゼロで施工されるオーバーレイの費用を表し、第2項は、時間ゼロ(トレンド曲線最適制御モデルにおける時間)で施工されるリシーリングの費用を表し、残りの項は、利用者費用と定常状態で施行されるリシーリングの費用である。なお、第2項は、w=wmaxの場合にゼロになる。
の最適値は、式(42)においてw=wに代入することにより算出することができる。hμの最適値は、得られたsの最適値を上記式(43)に代入することにより計算することができる。そして、k番目の等価なオーバーレイの施工時期(t |k∈自然数)は、hμの値を用いて、下記式で表され、計算することができる。
Figure 2010262423
ステップS523では、リシーリング解析部76は、ステップS522においてエラーが発生したか否かを判定する。ステップS523で、エラーが発生したと判定された場合(YES)には、ステップS521へ処理を分岐させ、エラーを解析結果として設定して、本解析処理を終了させて、呼び出し元の最適制御モデル・モジュール70に処理を戻す。ステップS523で、エラーが発生しなかったと判定された場合(NO)には、ステップS524へ処理を分岐させる。
ステップS524では、リシーリング解析部76は、限定された数(本実施形態では1つ)のオーバーレイを含む妥当な過渡の計画が見つかったか否かを判定する。ステップS524で、過渡の計画としてオーバーレイが充分な強度を有しておらず、妥当な過渡の計画が見つからなかったと判定された場合(NO)には、ステップS527へ分岐させ、リシーリング解析部76は、打換え解析要を解析結果として設定して、ステップS520で、本解析処理を終了させて、呼び出し元の最適制御モデル・モジュール70に処理を戻す。
一方、ステップS524で、妥当なオーバーレイを含む過渡の計画が見つかったと判定された場合(YES)には、ステップS525へ分岐させる。ステップS525では、リシーリング解析部76は、得られた計画における等価なオーバーレイとして表現されたリシーリングを、強度に応じてSBSTまたはDBSTに置き換える。ステップS526では、リシーリング解析部76は、オーバーレイと、SBSTまたはDBSTのいずれかのリシーリングとからなる計画を解析結果として設定して、ステップS520で、本解析処理を終了させて、呼び出し元の最適制御モデル・モジュール70に処理を戻す。
3.7.打換え解析処理
以下、打換え解析部78による打換え解析処理の詳細を説明する。打換え解析処理は、最適な計画としてオーバーレイまたはリシーリングのみによる維持修繕計画が軽すぎると判定された場合に、最適な打換えの舗装設計、打換えの施工時期、および後続するオーバーレイまたはリシーリング、またはこれらの両方による維持修繕計画を得るために呼び出される。打換えの舗装設計パラメータとしては、通常、舗装層の層数、各舗装層の厚みおよび強度などを含むことができる。なお、本実施形態では、説明の便宜上、表層、基層および路盤からなる3層構成を用いた場合について説明するが、特に限定されるものではなく、如何なる層構成の舗装に対して適用できる。
本実施形態の打換え解析部78は、打換えの舗装強度を探索キーとして、TTCを目的関数として用いる1次元探索により、最適な打換えの舗装設計および後続の維持修繕計画を求める。一次元探索では、まず、所与の舗装強度の値について、この舗装強度を与える最も経済的な舗装設計パラメータを特定し、オーバーレイ解析処理を呼び出して、打換え後の舗装に対する最適な維持修繕計画を見つけ出し、その目的関数の値を算出させる。なお、打換え解析処理においては、目的関数として用いられるTTCは、打換えの費用と、以降の維持修繕に関連する総輸送費用とを含むことに留意されたい。
上記処理は、設定した舗装強度の値の両脇の近傍の舗装強度についても行われ、続いて、目的関数であるTTCの舗装強度に対する1次および2次の微分の近似値を算出する。そして、これらの微分の近似値は、TTCを減少させるより良い舗装強度を計算するために用いられる。そして、舗装強度の改善が収束するまで繰り返され、打換えの最適な舗装設計および後続する最適な維持修繕計画が特定される。そして、本打換え解析処理では、さらに一次元探索により、打換えの最適な施工時期を決定する。
図14および図15は、本実施形態の打換え解析部78が実行する打換え解析処理を示すフローチャートである。なお、図14および図15は、ポイントE、FおよびGにより連結されている。図14および図15に示す処理は、例えば、オーバーレイ解析処理またはリシーリング解析処理の結果、打換え解析要と判定された場合に、図6のステップS208で最適制御モデル・モジュール70から呼び出されて、ステップS600から開始される。
ステップS601では、打換え解析部78は、一次元探索で用いる打換えの舗装強度の初期値を決定する。打換えの舗装設計は、新規の舗装設計と同様であり、この目的のため、”A Guide to the structural Design of Bitumen-Surfaced ROADS in Tropical and Sub-Tropical Countries”, Overseas Road Note 31, 4-th Edition, Overseas Center, Crowthrone, Berkshire, UK (1993)や、”Guide for Design of Pavement Structures”, American Association of State Highway and Transportation Officials (1986)を参照することができる。これらのガイドラインに従い、舗装が建設される国の発展ステージの影響を考慮すると、本発明者等による"Optimal pavement design and maintenance strategy for developing countries: An analysis using HDM-4.", International Journal of Pavement Engineering, 4(4), pp.193-208 (2003)によれば、最適な舗装強度を決定するために下記式(44)を用いることができる。
Figure 2010262423
上記式(44)中、Sは、SNPの単位の最適な舗装強度であり、Tは、million ESAL/lane/yearの単位の交通負荷であり、Dは、%単位の舗装が建設される国の社会的割引率である。上記式(44)を用いて、打換えの最適な舗装強度を探索するための初期値を決定することができる。なお、上記式(44)は、特定の材料による表層、基層および路盤からなるアスファルト・コンクリート(AC)のものについて計算されたものであり、特定の構成に応じて適切な式を用いることができ、上記式(44)に限定されるものではない。
ステップS602では、打換え解析部78は、任意の小さな舗装強度の増分ΔSNPを用いて、下記のように、舗装強度の探索における現在値SNPを中心として、3つの舗装強度の値(SNP|i=1,2,3)を設定し、図15のステップS603〜S610で示すループへと処理を進める。
Figure 2010262423
図15を参照すると、ステップS604〜S609の処理は、ステップS602で設定された3つの舗装強度(SNP|i=1,2,3)それぞれについて実行される。ステップS603〜S610のループでは、打換え解析部78は、各舗装強度について、最も経済的な打換えの舗装設計パラメータを決定し、打換え後の舗装に対する後続する維持修繕計画を決定し、その目的関数(J|i=1,2,3)を評価する。
ステップS604では、打換え解析部78は、所与の舗装強度を与える最も経済的な舗装設計パラメータを計算する。本実施形態の打換え解析処理では、J. Rolt等による”Characterization of Pavement Strength in MDH-III and Changes Adopted for HDM-4.”,TRL Project Report PR/ORC/587/97, Transport Research Laboratory, Crowhorne, UK (1997)において提案された下記式を用いて、表層、基層および路盤からなる3層の強度を計算する。
Figure 2010262423
ここで、u,u,uは、それぞれ、mm単位の表層、基層および路盤の厚みであり、a,a,aは、それぞれ、これらの層の材料の強度を表す係数であり、b,b,b,bは、それぞれ、1.6,0.6,0.008,0.00207とされるモデルの係数であり、CBRは、CBR(California Bearing Ratio)で表す路床の強度である。上記式により、舗装強度(SNP|i=1,2,3)を与えるu 、u およびu の最も経済的な値は、下記式で示す非線形計画問題の解として求めることができる。
Figure 2010262423
ここで、y,yおよびyは、それぞれ、$/mm/kmの単位の表層、基層および路盤の単位費用である。表層の最小厚みとしては、オーバーレイのものと同一の値を設定することができる。基層および路盤の最小厚みとしては、100mmを設定することができる。
最も経済的な舗装設計パラメータが得られると、ステップS605では、打換え解析部78は、パラメータ生成部72を呼び出し、得られた舗装設計パラメータに対応したパラメータ・セットを取得して再設定する。舗装設計パラメータが異なると、劣化関数(15)のパラメータfが異なってくるため、打換え解析部78は、パラメータ生成部72にfを再計算させる。なお、他の3つの関数(16)〜(18)は、ここでは変更しない。
ステップS606では、打換え解析部78は、再計算されたfを含めパラメータを与えて、オーバーレイ解析部74に対し、打換え後のオーバーレイによる維持修繕計画の解析および目的関数の計算を依頼して、解析結果を取得する。なお、打換えの場合は、初期ラフネスsとして、新たな舗装として妥当な値、例えば2IRI(International Roughness Index)を与えることができる。オーバーレイ解析部74は、図9および図10に示す処理フローにより、呼び出し元を打換え解析部78として、解析結果を渡す。
ステップS607では、打換え解析部78は、オーバーレイ解析部74から戻された解析結果に従って処理を分岐させる。ステップS607では、オーバーレイ解析部74の解析により、打換え後のオーバーレイのみからなる妥当な計画が得られた場合(計画取得)には、その妥当な計画およびその目的関数Jの値をメモリ上に保存し、ステップS610のループ端へ処理を進める。一方、ステップS607で、オーバーレイ解析部74による解析結果、リシーリングの解析が必要であると判定された場合(リシーリング解析要)には、ステップS608へ処理を進める。ステップS608では、打換え解析部78は、再計算されたfを含めパラメータを与えて、リシーリング解析部76に対し、打換え後のリシーリングを含む維持修繕計画の解析および目的関数の計算を依頼して、解析結果を取得する。リシーリング解析部76は、図12および図13に示す処理フローにより、呼び出し元を打換え解析部78として、解析結果を渡す。
ステップS609では、打換え解析部78は、リシーリング解析部76から戻された解析結果に従って処理を分岐させる。ステップS609では、リシーリング解析部76の解析により、打換え後のリシーリングを含む妥当な計画が得られた場合(計画取得)には、その妥当な計画およびその目的関数Jの値をメモリ上に保存し、ステップS610のループ端へ処理を進める。
ステップS607またはステップS609で、戻された解析結果が打換え要またはエラーであった場合(その他)には、ループを抜け出し、ポイントGを介して図14のステップS617を処理を進める。ステップS617では、打換え解析部78は、エラーを解析結果として設定して、ステップS616で、本処理を終了させて、呼び出し元の最適制御モデル・モジュール70に処理を戻す。
ステップS603〜ステップS610のループにより、すべての舗装強度(SNP|i=1,2,3)それぞれについて、最も経済的な打換えの舗装設計パラメータ、打換え後の舗装の維持修繕計画が決定され、それらの目的関数の値が求められると、ポイントFを介して、図14のステップS611へ処理が進められる。
ステップS611では、打換え解析部78は、目的関数Jが改善される方向の打換えの舗装強度SNPを求める。目的関数JをSNP周りでテイラー展開すると、SNPの値xの関数としてのJ(x)は、SNP近傍において、下記式(45)で近似することができる。
Figure 2010262423
ここで、J’およびJ”は、それぞれ、目的関数(TTC)の1次および2次の微分の近似値である。J”≦0およびJ’<0の場合、SNPを改善される方向の舗装強度とすることができる。J”≦0およびJ’>0の場合、SNPを改善される方向の舗装強度とすることができる。一方、J”>0の場合、下記式のように上記式(45)を微分することによって、xが最小化されるxを計算することができる。この場合は、任意の収束の判定基準εを用いて、|J’/J”|>εが満たされた場合、xを改善される方向の舗装強度とすることができる。
Figure 2010262423
ステップS612では、打換え解析部78は、舗装強度の最適値が得られたか否かを判定する。上記ステップS611で改善される方向の舗装強度が見つかった場合には、舗装強度の現在値SNPは、未だ最適化の余地があるため、最適値が得られていないと判定する。ステップS612で、舗装強度の最適値が未だ得られていないと判定された場合(NO)には、ステップS613で、上記ステップS611で計算された改善の方向の舗装強度を現在値SNPに設定して、ステップS602へループさせ、次のイタレーションに処理を進める。一方、ステップS612で、舗装強度の最適値が得られたと判定された場合(YES)には、ステップS614へ処理を進める。
ステップS614では、打換え解析部78は、続いて打換えの最適な施工時期を算出する。上記ステップS612までの処理により得られた目的関数Jを、時間t=0で打換えが施工されたとしてJ[0]で表すと、任意の時間tにおいて打換えが施工された場合のTTC(J[t])は、下記式で表される。最適な施工時期tは、下記のJ[t]を最小化する1次元最小化問題の解として求めることができる。
Figure 2010262423
ステップS615では、打換え解析部78は、打換えの施工時期および舗装強度と、打換え後のオーバーレイまたはリシーリングによる維持修繕計画とを含む最適な計画を決定して、その計画を解析結果として設定し、ステップS616で、本解析処理を終了させて、呼び出し元の最適制御モデル・モジュール70に処理を戻す。なお、打換え後の維持修繕計画は、オーバーレイ解析部74またはリシーリング解析部76から取得したものに、打換えの施工時期t(年)分補正したものとなる。
表7は、打換え解析処理の結果として求められる、打換えおよび以降の計画を含む最適な維持修繕計画を示す。表7に示す例は、初期ラフネスを13.43m/kmとし、0.6million ESAL/lane/yearの交通負荷条件の下で求められたものである。表7に示す例では、式(44)を用いて舗装強度の初期値を2.5とし、表層の厚みの最小値および最大値をそれぞれ30mmおよび100mmとしている。ΔSNPおよび基準εは、それぞれ、0.05および0.01としている。なお、表7は、最適な計画が2回のイタレーションのうちに求められている場合を例示している。なお、表7の場合の打換えの最適施工時期は、ゼロであった(t=0)。
Figure 2010262423
上述したように、本発明の実施形態の最適制御モデル・モジュール70によれば、オーバーレイ、リシーリング、打換えなどの異なる維持修繕工事の工種について、計画の妥当性が検証され、複数の工種の維持修繕工事を含む道路舗装投資計画の近似最適解が求められる。なお、得られる道路舗装投資計画は、過渡の計画{(mw,t,w)|1≦k<Kss}と、定常状態の計画{(mw,t,w)|k≧Kss}とを含んで構成される。ここで、mwは、オーバーレイ、リシーリングまたは打換えなどの工種を示す値である。Kssは、定常状態が始まる工事の序数である。工種がオーバーレイの場合には、wは、オーバーレイの強度(厚み)を示す値となり、工種がリシーリングである場合には、wは、SBSTまたはDBSTを示す値となる。また、工種が打換えである場合には、施工時期tは、tの値となり、wは、SNP単位の舗装強度を示す値となる。最適化処理が新設道路区間を対象とする場合には、上述した打換え解析と同様な処理により初期舗装設計が求められ、道路舗装投資計画は、初期建設の舗装設計パラメータを含む。
セクション4:勾配探索処理
以下、最適制御モデル・モジュール70が求めた道路舗装投資計画の近似最適解を用いて、所与の解析対象期間Pについて、最適化された最終的な最適解を算出するための勾配探索処理の詳細を説明する。本発明の実施形態による勾配探索モジュール80では、上述したオーバーレイ、リシーリングおよび打換えといった複数の工種による維持修繕工事を含むオプション案について、勾配探索法を適用し、最終的な最適解を探索するために、各維持修繕工事の単位費用を維持管理強度の共通尺度vとして用いる。この去通尺度vを用いて表現されるオプション案が、本勾配探索処理における探索空間を構成する。
勾配探索モジュール80は、最適制御モジュール70が求めた近似最適解から、維持管理強度の共通尺度vを用いて、初期解のオプションを生成し、勾配解析部82に渡す。勾配解析部82は、与えられた初期解のオプションを基点として、近傍オプションを生成し、オプション評価部84を呼び出し、その評価を依頼する。オプション評価部84は、最小構成(do-minimum)または現状維持を表す基本オプション案に対する、与えられたオプション案の純利益(Net benefit)NBを算出し、勾配解析部82へ戻す。そして、勾配解析部82は、初期解のオプションを基点として、逐次、純利益NBが増大する方向を求め、純利益NBを最大化するオプション案を求める。なお、純利益NBは、所定のオプション案の総輸送費用TTCと、基本オプション案の総輸送費用TTCとを用いて、NB(X)=TTC−TTC(t ,t …t ;v ,v …v )で表される。また、本実施形態では、TTCを用いるが、初期建設費用を含めて評価する場合には、LCCを用いることとなる。
複数の工種を考慮して最終的な最適解を得る際の主要な課題は、上述した共通尺度vとしての単位費用と、オーバーレイ、リシーリングまたは打換えの舗装設計の技術仕様との間の一意的な関係を確立することである。打換えについては、層数および舗装材料特性が与えられると、各層の厚みが舗装設計の技術仕様となる。しかしながら、同一の舗装の単位費用を与える層構成は、無限の組み合わせが考え得るため、通常、単位費用から各層の厚みを一意的に決定することができない。そこで、本実施形態では、後述する一群の有効舗装設計を導入し、この一群の有効舗装設計に解析範囲を制限することによって、上記共通尺度vである単位費用と、舗装設計の技術仕様との間の一意的な関係を確立する。
オーバーレイおよびリシーリングについては、使用する舗装材料特性が与えられると、これらの工種の単位費用および設計技術仕様は、工事の強度(厚み)により決定することができる。すなわち、単位費用から、これらの工種についての所定の強度を安全に特定することができる。しかしながら、複数工種を考慮する場合には、ある単位費用の範囲において、所定の単位費用に対応して両方の工種が存在する場合があることに留意しなければならない。この場合、オーバーレイおよびリシーリングのうち、工事による効果が大きい方の工種を採用することとし、効果が小さい方の工種は、劣性のもの(以下、劣性工種という。)として予め除外する。この工事による効果は、工事によって増加する舗装強度(以下、舗装強度増加量ΔSNとして参照する。SN値(Structural Number)で表される。)により定量することができる。
また、工種として打換えを検討すると、その舗装強度増加量(ΔSN)の大きさは、各維持修繕工事の適用毎に変化している打換え直前の舗装強度に依存する。つまり、打換えの舗装強度増加量(ΔSN)は、予め算出しておくことができず、適切に劣性工種を除外するためには、勾配探索処理中に算出しなければならない。
以下、勾配探索処理フローの詳細について説明する。図16は、勾配探索モジュール80が実行する勾配探索処理を示すフローチャートである。なお、以下、打換えの舗装設計は、「3.7.打換え解析処理」で上述したように、表層、基層および路盤からなる3層構成を用いた場合について説明する。しかしながら、如何なる層構成の舗装設計に適用できることは言うまでもない。
図16に示す処理は、図5に示したステップS103で呼び出されて、ステップS700から開始する。勾配探索モジュール80は、道路区画の舗装強度、現在の舗装状態、CBRで表される路盤強度、交通量、車種構成および車両特性などの交通負荷因子、気象などの環境因子、利用可能な舗装材料、維持修繕工事の単位費用などを外部条件として取得する。なお、勾配探索モジュール80が取り扱う外部条件は、必ずしも最適制御モデル・モジュール70が取り扱うものと一致することを要さず、オプション評価部84がシミュレート可能であれば、より詳細な項目を含んでいてもよい。表8は、勾配探索モジュール80が取り扱う外部条件を例示する。表8には、2つの道路区間が示されている。
Figure 2010262423
ステップS701では、勾配探索モジュール80は、利用可能な舗装材料と、実際的な技術仕様とに従って、一定の範囲の単位費用に対してオーバーレイおよびリシーリングの工種を定義付け、オーバーレイおよびリシーリングの厚み(工事強度)および舗装強度増加量(ΔSN)を求める。また、上述したように、単位費用に対し工種の重なりがあれば劣性工種を除外する。ここでは、同一の単位費用を与える工種のうち、算出された舗装強度増加量(ΔSN)が大きく工事による効果が大きい方の工種が採用され、舗装強度増加量(ΔSN)が小さい方の劣性工種が除外される。表9は、一定の範囲の単位費用(Unit Cost)の各オーバーレイおよびリシーリングについて算出される各工事強度(Thickness)および各舗装強度増加量(ΔSN)を例示する。
Figure 2010262423
ステップS701の処理により、表9に示すように、各単位費用(Unit Cost)に対して、工種(オーバーレイまたはリシーリング)、工事強度(厚み)および舗装強度増加量(ΔSN)が関連付けられる。また勾配探索処理では、オーバーレイやリシーリングは、定期的な排水工事(Drain work)、所定の単位距離当たりのポットホール数に応答したポットホール補修工事(Pothole patching)、クラック率に応答したクラックシール(Crack sealing)などの日常整備(Routine Maintenance)と連携して実施されるものとして取り扱うこともできる。
ステップ702では、勾配探索モジュール80は、打換えの舗装設計について、舗装の単位費用の妥当な範囲を規定し、この範囲の各単位費用に対し、最も経済的に有効であると考えられる有効舗装設計の一群を生成する。有効舗装設計は、各単位費用に対して、最大強度を実現する舗装設計パラメータ(各層の厚み)を定義付けるものである。「3.7.打換え解析処理」で上述したように、表層、基層および路盤からなる3層構成を考えると、その強度は、上記[数34]に示す式を用いて計算することができる。この場合、舗装の単位費用UCは、下記式(46)に示す式で表される。
Figure 2010262423
ここで、UCは、$/m単位で表される打換え舗装の単位費用であり、q、q、qは、それぞれ、$/m単位で表される表層、基層、路盤の単位費用である。UCの妥当な範囲[UCmin,UCmax]は、上記式(47)により規定することができる。ここで、u minおよびu max(i=1,2,3)は、それぞれ、mm単位で表される表層、基層、路盤の最小厚みおよび最大厚みである。ΔUCは、一群の有効舗装設計を生成する際の舗装単位費用の増分であり、MRound(x,y)は、第1引数を第2引数の近接する倍数へ丸める演算子である。所定のΔUCが与えられると、下記式で表されるN+1個の舗装の単位費用UCが生成される。
Figure 2010262423
上記式(47)の最大厚みおよび最小厚みは、舗装設計ガイドラインや、現実の道路舗装事業において妥当であると考えられる範囲を勘案して、適宜設定することができる。UCmin≦UC≦UCmaxを満たす特定のUCに対する有効舗装設計の舗装設計パラメータ(各層の厚み)は、下記に示す非線形計画問題を解くことにより決定することができる。
Figure 2010262423
なお、打換え直後の舗装ラフネス(初期ラフネス)は、表層の材料、表層の厚さ、舗装構造全体の強度などに応じて、例えばアスファルト・コンクリート(AC)では、1.0IRI〜2.0IRI(m/Km)程度となり、適宜、想定することができる。表10は、それぞれが舗装の単位費用UCに対応して上記非線形計画問題の解として得られた一群の有効舗装設計のパラメータ値と、想定しうる初期ラフネスとを例示する。なお、表10に示す例では、25mm厚のDBSTと、種々の厚みのACとの2つのタイプの表層材料を利用可能な材料として想定した。具体的にガイドラインに従い、u min,u max,u min,u max,u min,u maxは、上述したそれぞれ、25mm,130mm,100mm,250mm,100mm,350mmとしている。
Figure 2010262423
ステップS703では、勾配探索モジュール80は、読み出した道路舗装投資計画の近似最適解から初期解のオプション(計画案)Xを生成する。ここでは、異種の工種を取り扱うために、まず近似最適解として求められた維持修繕工事の工種mwおよび工事の強度wから共通尺度vに変換し、またオプション評価部84で扱う離散的な数値に丸める。例えば、施工時期は、1年単位に丸めることができる。さらに、ここでは、所与の解析対象期間Pと、近似最適解の道路舗装投資計画の各工事の施工時期tとから、解析対象期間P内に施工される維持修繕工事の回数Kを求める。すなわち、t,t,…t<Pを満たすKを算出する。そして、初期解のオプションXは、下記式(52)で示すベクトルにより表される。また、初期建設費用を含めて評価する場合には、下記式(52)のベクトルの要素に初期建設時の共通尺度vを含めれば良い。そして、勾配探索モジュール80は、生成された初期解のオプションXを与えて、勾配解析部82に、初期解オプションXを基点として勾配探索処理を指令する。
Figure 2010262423
ステップS704では、勾配解析部82は、現在の解のオプションX(初回はi=0である。)の近傍オプションを生成する。近傍オプションは、各政策変数t ,v について、それぞれ任意の小さな変化量分Δt またはΔv 変化させたものである。すなわち、評価すべきオプションは、現在の解Xを含め下記式(53)に示す2K+1個のベクトルによって表される。なお、変化量分Δt およびΔv は、任意の小さな値とすることができるが、オプション評価部84の構成に依存して、制約される場合がある。例えばオプション評価部84にHDM−4を用いる場合には、最小の変化量分Δt を1年としなければならない。また、Δv に対しては、通常制約がなく、オペレータが適宜決定することができるが、その場合、計算負荷低減の観点からは、上記ΔUCと同一の値とすることが好ましい。なお、初期建設時の共通尺度vを含む場合には、2K+2個のベクトルのセットとなる。そして、ステップS705〜S708で示すループでは、現在の解のオプションとその近傍オプションとのそれぞれについて、ステップS706およびS707の処理が繰り返される。
Figure 2010262423
ステップS706では、勾配解析部82は、各オプション案について、オプション評価部84に渡すオプション案の評価条件データを得る。この際に、与えられた共通尺度v に対応して複数の工種がある場合には、舗装強度増加量(ΔSN)が小さい劣性工種を除外する。この評価条件データは、共通尺度vを用いて表現されたオプションX等に対応し、オプション評価部84が取り扱う具体的な工種の指定を含むオプション案である。
ステップS706では、より詳細には、以下に説明する処理が行われる。時間t で施工される単位費用v に対応してM種の工種が存在する場合には、各工種が適用された場合の舗装強度増加量(ΔSN)を下記式(54)を用いて算出する。下記式(54)中、左辺のΔSN(v )(m=1,…M)は、与えられた単位費用v に対応する各工種の維持修繕工事が時間t で施工された場合の各舗装強度増加量(ΔSN)である。下記式(54)の右辺中、ΔSN(v )は、与えられた単位費用v に対応するオーバーレイまたはリシーリングの維持修繕工事が時間t で施工された場合の各舗装強度増加量(ΔSN)であり、SNPREC(v )は、与えられたv に対応する打換え後の舗装強度であり、SNPは、時間t で打換えが施工される直前の舗装強度を表す。SNPは、理論的には、舗装劣化や環境からの影響に伴い僅かに低下するが、ここでは計算の簡単のため、経時変化が無く、維持修繕工事が適用される場合にのみ変化するものとして扱うことができる。
Figure 2010262423
そして、各オプション案について、ΔSN(v )(m=1,…M|k=1,2…K)を比較して、与えられた単位費用v に対応するもののうち、最大のΔSN値を与える工種を選択し、オプション評価部84に与える評価条件データを得る。なお、上述したように、オーバーレイおよびリシーリングについては、単位費用から所定の強度を安全に特定することができるため、勾配探索のループ(S704〜S713)に入る前にステップ701で、劣性工種を除外することができる。このため、オーバーレイ、リシーリングおよび打換えの三種を考慮する場合には、ステップS706では、ステップ701で採用されたオーバーレイまたはリシーリングのいずれかの工種と、打換えとの比較となる。このように、勾配探索処理中に劣性工種の除外処理を組み込むことにより、施工直前の舗装強度に依存してΔSNが決まるような工種を取り扱うことが可能となる。
表11は、オプション案から劣性工種が除去される様態を例示する。表11に示すオプション案では、$9.0、$5.0、$5.0の単位費用の維持修繕工事を、それぞれ2008,2019,2030年に施工するというものである。2008年の1回目の維持修繕工事についてみると、$9.0の単位費用に対して、オーバーレイ(OVL)および打換え(REC)の両方が重複しており、それぞれΔSNが計算されている。そして、表11に示す例では、$9.0の単位費用に対して、ΔSNが大きいオーバーレイが選択されることとなる。
Figure 2010262423
ステップS707では、勾配解析部82は、生成した各オプション案の評価条件データをオプション評価部84に与えて、その計算された純利益NBの値を取得する。オプション評価部84は、最小構成(do-minimum)または現状維持を表す基本オプション案に対する、与えられたオプション案の評価条件における純利益NBを算出し、勾配解析部82に戻す。
テップS705〜S708で示すループを抜けると、ステップS709では、勾配解析部82は、取得された各オプションのNBの値を用いて、下記式(55)で表される純利益NBの勾配∇NBを計算する。勾配∇NBは、2K次元の勾配ベクトルである。また初期建設時の共通尺度vを含む場合には、(2K+1)次元の勾配ベクトルとなる。下記式中Round(x,n)は、第1引数xを小数点n桁で四捨五入する演算子であり、例えばn=3を用いることができる。
Figure 2010262423
ステップS710では、勾配解析部82は、∇NB(X)が0であるか否かを判定する。ステップS710で、∇NB(X)が0であると判定された場合(YES)には、ステップS714へ分岐させ、勾配探索モジュール80は、現時点のXを最終的な最適なオプション案として、オプションXにおける共通尺度vに対応するオーバーレイ、リシーリングまたは打換えの強度を得て、道路舗装投資計画の最終的な最適解をデータ格納部54へ格納し、ステップS715で、図5に示した処理に戻す。一方、ステップS710で、∇NB(X)が0ではないと判定された場合(NO)には、ステップS711へ分岐させる。
ステップS711では、勾配解析部82は、下記式(56)を用いてNBが改善される(増加する)方向を求める。なお、探索ベクトルsに関し、下記式(57)は、最急勾配法の場合に用いられる式であり、下記式(58)および(59)は、共役勾配法を採用する実施形態で用いられる式である。下記式(57)を用いるか、下記式(58)および(59)を用いるかは、任意とすることができる。また下記式(56)中、αは、正のスカラー値である。
Figure 2010262423
変化量分Δt ,Δv は、通常、値が相違するため、上記式(56)におけるベクトルXi+1の要素は、下記式(60)に示すように、各変化量の倍数にて標準化することができる。
Figure 2010262423
ここで、stk ,svk は、探索ベクトルs≡(st1 ,st2 ,…stK ;sv1 ,sv2 ,…svK の各要素である。MRound(x,y)は、上述したように、第1引数を第2引数の近接する倍数へ丸める演算子である。上記式(56)中のαは、正のスカラー値であり、NB(Xi+1)を最大化するその最適値αi*は、複数回オプション評価部84を呼び出しながら、既知の一次元探索法を適用することにより求めることができる。以下、妥当な範囲内で最適値αi*を求める処理について説明する。
まず、探索ベクトルsの要素stk およびsvk のうち、ゼロになる要素を除去し、下記式(61)を用いて、αの妥当な範囲[a,b]を決定する。下記式(61)中、aは、ベクトルXの要素のうちの1つだけ変化させるαの値であり、一方bは、ベクトルXの非ゼロ要素すべてを変化させるαの値である。ただし、εは正の任意の小さな値である。
Figure 2010262423
≠bである場合には、(L+1)個の値α =α+L−1(b−a)(l=0,1,2…L)を定義付けて、(L+1)個のオプション案を生成し、それぞれについて、ステップS706(段落0251〜段落0254参照)で説明したものと同様の処理により、与えられた共通尺度に対応する工種のうちの舗装強度増加量(ΔSN)が小さい劣性工種を除外して、評価条件データを得る。なお、Lは整数であり、計算の精度と計算負荷のバランスから10とすることが好ましい。そして、オプション評価部84を呼び出して、純利益NB(Xi+1(α ))を計算させ、NBを最大化するαl* を見つけ出す。一方、a=bである場合、直接α l*≡αと設定し、同様に、オプション評価部84を呼び出して、純利益NB(Xi+1(α l*))を計算させる。
そして、NB(Xi+1(α l*))>NB(X)を満たす場合には、最適値αi*=α l*としてステップS712へ処理を進める。NB(Xi+1(α l*))>NB(X)を満たさない場合には、下記式(62)に従って、改善される方向のXi+1およびそのNB(Xi+1)を求めて、ステップS712へ処理を進める。なお、下記式(62)を用いる処理を誘因する状況とは、変化量Δt 、Δv が大きすぎるような場合である。
Figure 2010262423
ステップS712では、勾配解析部82は、収束の程度を示す収束指標値に対する所与の基準φを用いる下記式(63)の条件を満たすか否かを判定し、解の改善が収束したか否かを判定する。なお、下記式(63)の収束条件の収束指標値は、現在の解からのNBの改善率を表す。
Figure 2010262423
ステップS712で、上記式(63)が満たされず収束していないと判定された場合(NO)には、ステップS713へ分岐させる。ステップS713では、勾配解析部82は、iをインクリメントし、改善される方向の解を現在の解として、ステップS704へループさせ、上記式(63)に示す収束条件が満たされるまで処理を繰り返させる。一方、ステップS712で、上記式(63)が満たされ、解の改善が収束したと判定された場合(YES)には、ステップS714へ処理を分岐させる。ステップS714では、勾配探索モジュール80は、解の改善が収束したものとして、オプションXi+1に対応する評価条件データ(共通尺度vを実際のオーバーレイ、リシーリングまたは打換えの強度に戻したもの)を、道路舗装投資計画の最終的な最適解としてデータ格納部54へ格納し、ステップS715で、図5に示した処理に戻す。
なお、上述した実施形態の勾配探索処理では、解析対象期間P内に施工される維持修繕工事の回数Kを固定値として、道路舗装投資計画の最終的な最適解を求めているが、他の実施形態では、Kを探索キーとして一般的な一次元探索を適用するONM(Optimization of Number of Maintenance Work)処理により、さらにK自体を最適化することもできる。なお、ONM処理の詳細については、例えば非特許文献3を参照することができる。
表12は、勾配探索処理により解が収束するまでのイタレーション結果を例示する。表12は、ONM処理が行われる場合を例示し、この例では、計三回の$19.5,$8.0,$6.0の単位費用の維持修繕工事を、それぞれ、2008年、2019年、2029年に行うオプション案が最終的な最適解として求められていることを示す。これらの単位費用から、例えば、第1回目の維持修繕工事がAC19.5(表10に示すコードである。)の打換えであり、第2回目および第3回目の維持修繕工事が50mmおよび38mmのオーバーレイである(表9参照)、というように実際の維持修繕工事の道路舗装投資計画が求められる。
Figure 2010262423
以上説明してきたように、本発明の実施形態によれば、外生選択肢依存性および初期解依存性を回避しながら、管理者費用および利用者費用を含む社会的費用のライフサイクルコストを最小化する最適解として、交通負荷や舗装状態に応じた適切な維持修繕工事の工種の選定を含む道路舗装投資計画を出力することが可能な、情報処理装置、道路舗装投資計画の最適化処理方法およびプログラムを提供することができる。
最適制御モデル・モジュール70が求める計画の近似最適解は、最適制御モデルを用いて解析的に求められるため、後段の勾配探索処理が局所最適解(Local Optima)に陥ってしまう蓋然性、つまり初期解依存性を好適に回避することができる。さらに、後段の勾配探索モジュール80が実行する処理は、最適制御モデル・モジュール70が求めた近似最適解を基点として、高度なオプションの評価手法と組み合せて、より実際的な最適化が図られ、得られる最適解の精度を向上させることを可能とする。また、オプションの評価手法により評価されるオプションが、近似最適解を基点として最小数のものが自動的に生成されるため、勾配探索処理の収束が早く、外生選択肢依存性を回避することができるという利点を有する。
なお、上述までの実施形態では、維持修繕工事は、強度wおよび施工時期tの組で表現しているが、他の実施形態では、施工時期tに代えて、施工の契機とする舗装ラフネスの閾値rなどによって表現することもできる。また上述までの実施形態では、最適制御モデルにおいては、目的関数として総輸送費用(TTC)を用い、TTCを最小化する問題として取り扱っているが、これに限定されるものではない。他の実施形態では、利用者純利益を目的関数として、該利用者利益を最大化する問題として取り扱うこともできる。
さらに、上述までの実施形態では、維持修繕工事の工種として、オーバーレイ、SBSTまたはDBSTのリシーリング、および打換えについて説明してきたが、これらに限定されるものではない。維持修繕工事の工種としては、パッチング、切削打換、局部打換えおよび注入工法などの他の維持工法および修繕工法を含むことができる。また、解析対象となる舗装道路も特に限定されるものではなく、アスファルト、コンクリート、アスファルト・コンクリートなど、如何なる種類の道路舗装の解析に適用することができる。
なお、本発明につき、発明の理解を容易にするために各機能部および各機能部の処理を記述したが、本発明は、上述した特定の機能部が特定の処理を実行する外、処理効率や実装上のプログラミングなどの効率を考慮して、いかなる機能部に、上述した処理を実行するための機能を割当てることができる。
本発明の上記機能は、C++、Fortran、Pascal、Java(登録商標)、Java(登録商標)Beans、Java(登録商標)Applet、Java(登録商標)Script、Perl、Rubyなどのオブジェクト指向プログラミング言語などで記述された装置実行可能なプログラムにより実現でき、装置可読な記録媒体に格納して頒布または伝送して頒布することができる。
これまで本発明を、特定の実施形態をもって説明してきたが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
10…シミュレーション装置、12…CPU、14…キャッシュ・メモリ、16…システム・メモリ、18…システム・バス、20…グラフィックス・ドライバ、22…NIC、24…ディスプレイ、26…I/Oバス・ブリッジ、28…I/Oバス、30…記憶装置、32…入力装置、34…コンピュータ装置、50…ネットワーク・インタフェース、52…入出力インタフェース、54…データ格納部、56…内部バス、70…最適制御モデル・モジュール、72…パラメータ生成部、74…オーバーレイ解析部、76…リシーリング解析部、78…打換え解析部、80…勾配探索モジュール、82…勾配解析部、84…オプション評価部

Claims (16)

  1. 解析対象の道路区間についての外部条件が入力される入力手段と、
    入力された前記外部条件に従って、トレンド曲線により道路舗装の履歴を近似する最適制御モデルを用い、技術経済性を評価する目的関数が最適化される、道路舗装投資計画の近似最適解を求める最適制御解析手段であって、第1工種の維持修繕工事について、前記最適制御モデルの定常状態制御および定常状態に導く過渡制御を求め、前記第1工種による維持修繕工事の妥当な範囲を規定する制約条件と照合し、前記第1工種による第1計画案の妥当性を検証する第1工種解析手段と、第2工種の維持修繕工事について解析し、前記第2工種を含む第2計画案の妥当性を検証する第2工種解析手段とを含む、当該最適制御解析手段と、
    前記最適制御解析手段により求められた前記近似最適解を初期解として、前記目的関数が改善される方向を見出して解を逐次改善し、前記道路舗装投資計画の最終的な最適解を探索する探索手段と、
    得られた前記道路舗装投資計画の前記最終的な最適解を出力する出力手段と
    を含み、
    前記第1工種解析手段により、求められた制御が前記第2工種への適合可能性を示す条件に合致したと判定された場合に、前記第2工種解析手段に処理が渡される、情報処理装置。
  2. 前記第2工種解析手段は、前記第2工種の維持修繕工事を等価な前記第1工種の維持修繕工事に変換して前記最適制御モデルに適用し、前記目的関数が最適化される定常状態制御および定常状態に導く過渡制御を求め、該定常状態制御および該過渡制御がともに妥当であった場合、対応して求められる第2計画案を前記近似最適解とする、請求項1に記載の情報処理装置。
  3. 前記第1工種解析手段は、前記目的関数が最適化される定常状態制御および定常状態に導く過渡制御がともに妥当であった場合、対応して求められる前記第1計画案を前記近似最適解とする、請求項1または2に記載の情報処理装置。
  4. 前記最適制御解析手段は、前記道路区間の舗装強度の変更を含む第3工種の維持修繕工事について、前記舗装強度を変数とした前記目的関数を最適化する一次元探索により、前記第3工種の維持修繕工事と、後続する前記第1工種または前記第2工種の維持修繕工事とを含む、前記目的関数が最適化される第3計画案を求める第3工種解析手段をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
  5. 前記第1工種解析手段または前記第2工種解析手段により、求められた制御が前記第3工種への適合可能性を示す条件に合致したと判定された場合に、前記第3工種解析手段に処理が渡される、請求項4に記載の情報処理装置。
  6. 前記第2工種解析手段は、前記第2工種による前記過渡制御のみが妥当ではなかった場合に、前記第2工種よりも程度の重い前記第1工種を含めた過渡制御の妥当性をさらに検証し、妥当であった場合、対応して求められる前記第1工種および前記第2工種を含む計画案を前記近似最適解とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
  7. 前記探索手段は、複数の工種間で共通する維持管理強度の共通尺度を用いて計画案を表し、現在の解の近傍の近傍計画案を生成し、前記現在の解の計画案および該近傍計画案の前記目的関数の値から前記現在の解を中心とした勾配を算出して、前記改善される方向を見出す、請求項1〜6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
  8. 解析対象の道路区間について、入力された外部条件に従って、トレンド曲線により道路舗装の履歴を近似する最適制御モデルを用いて、複数の工種の維持修繕工事を含む計画案の妥当性を検証しながら、技術経済性を評価する目的関数を最適化する道路舗装投資計画の近似最適解を求める最適制御解析手段と、
    前記外部条件に従って、複数の工種間で共通する維持管理強度の共通尺度を用い、前記最適制御解析手段により求められた前記近似最適解を初期解とし、前記目的関数が改善される方向を見出して解を逐次改善し、前記道路舗装投資計画の最終的な最適解を探索する探索手段と
    を含む、情報処理装置。
  9. 道路舗装投資計画の近似最適解を計算する情報処理装置であって、
    解析対象の道路区間について与えられた外部条件から、トレンド曲線により道路舗装の履歴を近似する最適制御モデルで用いるパラメータを生成する生成手段と、
    第1工種の維持修繕工事について、前記パラメータにより規定される前記最適制御モデルを用いて、技術経済性を評価する目的関数が最適化される定常状態制御および定常状態に導く過渡制御を求め、前記第1工種による維持修繕工事の妥当な範囲を規定する第1制約条件と照合し、前記第1工種による第1計画案の妥当性を検証する第1工種解析手段と、
    第2工種の維持修繕工事について、前記最適制御モデルを用いて、前記目的関数が最適化される定常状態制御および定常状態に導く過渡制御を求め、前記第2工種による維持修繕工事の妥当な範囲を規定する第2制約条件と照合し、前記第2工種を含む第2計画案の妥当性を検証する第2工種解析手段と
    を含み、
    前記第1工種解析手段により求められた制御が前記第2工種への適合可能性を示す第2工種適合条件に合致したと判定された場合に、前記第2工種解析手段に処理が渡され、
    いずれかの前記工種解析手段により求められた前記目的関数が最適化された妥当な計画を道路舗装投資計画の近似最適解とする、情報処理装置。
  10. 情報処理装置は、さらに、前記道路区間の舗装強度の変更を含む第3工種の維持修繕工事について、前記舗装強度を変数とした前記目的関数を最適化する一次元探索により、前記第3工種の維持修繕工事と、後続する前記第1工種または前記第2工種の維持修繕工事とを含み、前記目的関数が最適化される第3計画案を求める第3工種解析手段を含み、
    前記第1工種解析手段により、求められた前記制御が、前記第3工種への適合可能性を示す第3工種適合条件に合致したと判定された場合に、前記第3工種解析手段に処理が渡される、請求項9に記載の情報処理装置。
  11. 前記第2工種適合条件は、第1制約条件に合致する定常状態制御が存在せず、一方、前記第1工種による最小の維持修繕工事よりも程度の軽い範囲に緩和された制約条件に合致する定常状態制御が存在することを条件とする、請求項9にまたは10に記載の情報処理装置。
  12. 前記第3工種適合条件は、前記第1制約条件に合致する定常状態制御が存在せず、かつ、前記第1工種による最大の維持修繕工事よりも程度の重い範囲に緩和された制約条件に合致する定常状態制御が存在するか、または、前記目的関数が最適化される定常状態および過渡制御のうち該過渡制御が妥当ではないことを条件とする、請求項10に記載の情報処理装置。
  13. 前記第1工種解析手段および前記第2工種解析手段は、それぞれ、すべての妥当な定常状態それぞれについて、対応する過渡制御を決定し、妥当な定常状態制御および妥当な定常状態に導く過渡制御に対する前記目的関数を評価し、該目的関数が最適化された妥当な制御を選択する、請求項9〜12のいずれか1項に記載の情報処理装置。
  14. 道路舗装投資計画を最適化する方法であって、
    解析対象の道路区間についての外部条件の入力を受けるステップと、
    入力された前記外部条件に従って、トレンド曲線により道路舗装の履歴を近似する最適制御モデルを用い、技術経済性を評価する目的関数が最適化される道路舗装投資計画の近似最適解を求めるステップであって、
    第1工種の維持修繕工事について、前記最適制御モデルの定常状態制御を求め、前記第1工種による維持修繕工事の妥当な範囲を規定する制約条件と照合し、前記定常状態制御の妥当性を検証するステップと、
    妥当な定常状態の制御が存在しない場合に、第2工種への適合可能性を示す条件に合致する定常状態の制御が存在するか否かをさらに判定するステップと、
    前記判定するステップで、前記合致する定常状態の計画が存在すると判定された場合に、第2工種の維持修繕工事について解析し、第2工種を含む第2計画の妥当性を検証するステップとを含む、当該近似最適解を求めるステップと、
    前記近似最適解を初期解として、前記目的関数が改善される方向を見出し、解を逐次改善して前記道路舗装投資計画の最終的な最適解を探索するステップと、
    得られた前記道路舗装投資計画の前記最終的な最適解を出力するステップと
    を含む、道路舗装投資計画の最適化処理方法。
  15. 前記第2計画の妥当性を検証するステップは、
    前記第2工種の維持修繕工事を等価な前記第1工種の維持修繕工事に変換するステップと、
    前記最適制御モデルに適用し、前記目的関数が最適化される、定常状態制御および定常状態に導く過渡制御を求めるステップと、
    前記定常状態制御および前記過渡制御がともに妥当であった場合、対応して求められる第2計画案を前記近似最適解とするステップとを含む、
    請求項14に記載の最適化処理方法。
  16. 解析対象の道路区間についての外部条件が入力される入力手段、
    入力された前記外部条件に従って、トレンド曲線により道路舗装の履歴を近似する最適制御モデルを用い、技術経済性を評価する目的関数が最適化される、道路舗装投資計画の近似最適解を求める最適制御解析手段であって、第1工種の維持修繕工事について、前記最適制御モデルの定常状態制御および定常状態に導く過渡制御を求め、前記第1工種による維持修繕工事の妥当な範囲を規定する制約条件と照合し、前記第1工種による第1計画案の妥当性を検証する第1工種解析手段と、第2工種の維持修繕工事について解析し、前記第2工種を含む第2計画案の妥当性を検証する第2工種解析手段とを含む、当該最適制御解析手段、
    前記最適制御解析手段により求められた前記近似最適解を初期解として、前記目的関数が改善される方向を見出して解を逐次改善し、前記道路舗装投資計画の最終的な最適解を探索する探索手段、および
    得られた前記道路舗装投資計画の前記最終的な最適解を出力する出力手段
    をコンピュータ上に実現するプログラムであって、
    前記第1工種解析手段により、求められた制御が前記第2工種への適合可能性を示す条件に合致したと判定された場合に、前記第2工種解析手段に処理が渡される、コンピュータ実行可能なプログラム。
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